排水・用水処理用オゾン処理装置に関する JIS を制定

排水・用水処理用オゾン処理装置に関する JIS を制定
-今後の更なる普及並びに設置及び設置後の運用の基盤として-
平 成 23年 11月 21日
経済産業省産業技術環境局
産 業 基盤 標 準 化 推 進 室
水環境への種々の課題に対応することが強く求められています。それに呼応するため
には高度な水処理技術の普及がなお一層必要です。オゾンには強い酸化力があり、この
強い酸化力を利用して脱色・脱臭処理、微量有害物質の分解や消毒処理に有効であるこ
とから、多方面の分野でオゾン活用が広がってきていますが、排水・用水の処理をする分
野でも装置の技術開発が加速度的に進んでおり、今後の一層の普及拡大が期待されて
います。
この状況を踏まえ、排水処理・用水処理に利用するオゾン処理装置について、現状の利
用における利便性を考慮しつつ、適切で安全な普及が進むようオゾン処理装置の仕様項
目とオゾン濃度測定方法について規格化をし、平成23年11月21日に制定・公示しまし
た。
処理対象水
(工業排水、工業用水原水、下水、し尿、上水原水など)
(網掛け部分が規格検討対象範囲)
対象水前処理装置
最大発生オゾン量
≧0.5kg/h
オゾン処理装置
原料ガス供給部
O2
オゾン発生部
未反応
O3
オゾン反応部
O
O3
排オゾン処理部
O
排オゾン処理部
オゾン濃度測定方法
(処理装置内及び装置周辺)
対象水後処理装置
化学分析
濃 度 計
検 出 器
排水・用水
効果
・有機物及び微量有害物質の分解
・消毒、脱色・脱臭
など
排水・用水処理用オゾン処理装置の全体概念図
1
O2
1.目的及び背景
(1)オゾンは強い酸化力があり、脱色・脱臭、微量有害物質の除去や、病原微生物、ウ
イルスなどの殺菌に効果的なことから、工業分野では、工業排水の処理、工業用水
の製造から、下水処理、プール浄化さらには半導体洗浄などのハイテク技術の利用
にも用途が及んでいます。また、工業分野以外でも医療、農作物、土壌浄化、福祉
施設などの他分野においても応用がされています。
このように幅広い用途で活用されているオゾン応用技術ですが、工業排水処理、
工業用水製造、下水、し尿、上水処理などの産業・公共用用途においては、大型の
オゾン発生器が用いられてオゾン処理装置の構成要素数も最大となり、加えて、取
扱うオゾン発生量や濃度は大容量、高濃度となるにも関わらず、製品構造、仕様項
目、オゾン濃度管理方法、オゾン濃度測定方法に係る規格が定められていない状況
にありました。そのため、製造、受注、売買などを行う際に、装置の技術的な裏付け
を確保する方策が各社各様で進んできており、何らかの標準化を行う必要性が高ま
っていました。
(2)このような状況を踏まえ、特定非営利活動法人日本オゾン協会 1)は、それまでに蓄積
された研究開発成果等を基礎として、規格策定のための検討を鋭意進めました。JIS
原案作成においては海外のオゾン応用技術の活用状況調査や、オゾン濃度測定方
法の実地での検証をしました。
注 1) 人為的に製造するオゾンの普及、オゾンに関する技術を高めることを目的としたNPO法人で
あり、設立の趣旨に賛同する会員によって構成しています。法人会員には主に、オゾン発生装
置メーカー、オゾン関係プラントメーカーなどの企業が参画しています。
(3)人為的に製造するオゾンを扱う場合、そのオゾンの濃度管理が重要です。つまり、製
造したオゾンが、処理工程での反応に適切かつ必要な濃度・量で供給され、過不足
が生じてない状況で運転が進むことが必要です。処理から残ってしまったオゾンがで
きてしまった場合には、その余ってしまったオゾンが外部に漏洩しないように機器を
運転管理することが、安全対策上からも大事なことになります。
そこで、今回策定したJISにおいては、処理装置全体の構成を明確化し、かつ、そ
の構成中でのオゾン濃度を測定する測定点を整理し、この測定点を「オゾン濃度管
理点」として定義づけています。この管理点でのオゾン濃度測定が処理装置の効率
的で安全な運転のための測定要素として重要だからです。もちろん、その測定点で
のオゾン濃度測定方法についても標準化しています。
(4)また、処理装置の受注、売買、メンテナンス等おいて、具体的に能力、性能などを決
めておくべき具体的な仕様項目も標準化する対象としています。今後、さらなるオゾ
ン処理装置の普及を鑑みた場合、新規にオゾン処理装置を導入する関係者に対し
て装置の構成に対する理解を容易にし、その新規導入する現況に合致するために
必要な仕様項目について、一般的なものを標準化で新規導入等の取引の円滑化に
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資することができるよう意図しているものです。
この一般的な仕様項目の標準化は、先に述べた「オゾン濃度管理点」の検討に際
して、まずもって処理装置全体の構成を明確化しなければならず、その構成を規定し
た以上、処理装置の関係者に対し便益になる構成上の標準化対象を模索・検討した
成果です。現状の技術進展が逐次進んでいて開発途上段階にある処理装置であり、
かつ、処理対象である排水・用水が千差万別の用途・成分等である状況から、処理
装置の構造そのものを一定の枠に当てはめるような標準化ではなく、当事者間での
協議が円滑に進むよう、決めるべき仕様内容項目について考えられる範囲で標準化
検討した成果になっています。
2.制定した JIS のポイント
この規格の主な規定項目は次のとおりです。
(1)構成においては、次の図を示し、かつ、その詳細を規定することによって装置の構成
を明確化しています。
※M1~M4(処理装置内),M5(処理装置周辺)はオゾン濃度を測定する管理点です。
(2)オゾン濃度測定については、「設置・切替時」、「運用時」それぞれの場合に各管理
点で用いることができる測定方法を規定しています。また、その濃度測定方法の詳細
も規定しています。
(3)定期保守・点検の規定も設け、作業従事者が留意すべき注意事項なども規定してい
ます。
3
3.JISの閲覧方法
平成23年11月21日付で JIS B9946(排水・用水用オゾン処理装置-仕様項目
及びオゾン濃度測定方法) として制定公示し、次の日本工業標準調査会のJIS検索の
URLで閲覧が可能です。
http://www.jisc.go.jp/app/JPS/JPSO0020.html
(本件に係る問合せ先)
産業技術環境局 基準認証ユニット 産業基盤標準化推進室
産業機械分野担当
電話:03-3501―1511(内線 3423~3425)
03-3501-9277(直通)
(参考1) 市場動向
排水・用水処理用オゾン処理装置の生産動向次のグラフのとおりです。
60
50
40
生産額(億円)
輸出額
輸入額
30
20
10
0
2001
2005
2007
2008
2009
2010
情報提供 : 特定非営利活動法人日本オゾン協会
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