ICF(国際生活機能分類)の視点を ケアマネジメントに どう活かすか 北のくらしと地域ケア研究所 (キタライフ) 鈴木 眞弓 事例紹介① 「バリアフリーのつもりがバリアフルになっていた事例」 <Key Word> ○ バリア(障害・壁)フリー(ない状態)フル(最大限ある) ○ ユニバーサルデザイン(普遍的;きわめて大きな範囲に あてはまる) ○全ての人に共通(ユニバーサル)しているのは? 「老化」という現象 人間としての願い、欲求 事例紹介② なぜ、「それ」に、きづかなかったか? 事例紹介③ 自分の価値観を変える努力と 思い込みを解除する努力 「介護」から「介護不要」へのシフト Value(バリュー) 価値観 Innovation(イノベーション) 革 新 「CHANGE」 「CHANCE」 「CHALLENGE」 【ICFの説明の前に】 「世界保健機構」 (WHO:WorldHealthOrganization)は健康を基本 的人権のひとつととらえ、その達成を目標として設 立された国連の専門機関です。 WHOにおける「健康」の定義 健康とは、「完全な肉体的、精神的及び社会福 祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しない ことではない。」(WHO憲章前文より) 「人権(じんけん)」とは 「人間が 生まれながらにして持っている、 当然に有する権利」 「ICIDH(国際障害分類)1980年」 「疾病(病気や事故など)」に起因する、「機能障 害(Impairment)」「能力障害(Disability)」「社会的 不利(Handicap)」という3つの言葉で表現。 しかし、これらの否定的部分だけの「障害」定義 では、限界があることがはっきりしてきました。 ICFの分類 (活用は今後の課題) ICFが扱う範囲 • ICFは、障害のある人だけに関するものでは ない。 • ICFは全ての人に関する分類です。 • あらゆる健康状態に関連した健康状況や健 康関連状況はICFで記述することができます。 ICFの対象範囲は普遍的です。 ICF(アイシーエフ;国際生活機能分類) とは何か International Classification Functioning, Disability and Health • ICFは障害の発想を転換して、生理的・心理的機能、解剖 学的構造、いろいろな活動内容といった、全ての人に共通 するものを基準にすることにしました。つまり、普遍的な人 間の様々な生命、生活に関する機能の分類をつくるという、 まったく違った発想の分類をつくることになりました。 • そこで、2001年5月、世界保健機構(WHO)総会において、 • ICFが採択されました。この特徴は、これまでの国際障害分 類(ICIDH)が、マイナス面を分類するという考え方が中心で あったのに対し、ICFは生活機能という、プラス面からみるよ うに視点を転換し、さらに環境因子等の観点を加えたところ です。 ICFは「生活機能」に問題のある人をトータルにとらえるのに、 最も適した枠組みを与え、また、専門家と当事者(利用者・患 者・家族)とのあいだの 「共通言語」として最も有効なものです。 ICF(国際生活機能分類)は、 • 「障害」 (人が生きることに関してのマイナス面) の分類ではなく、 • 「生活機能」 (人が生きることに関してのプラス面) の分類であることが、画期的です。 国際障害分類と国際生活機能分類 「スティーブン W ホーキング博士」の例 Stephan W.Hawking • 1942年オックスフォード生まれ。理論物理学の第一人者。 • ケンブリッジ大学ルーカス記念講座教授。 • ALSによる全身の筋肉麻痺で、発声もできず、わずかに動く指先で、人 • 工発声装置などを利用してコミュニケーションをとる。 世界各国で講演したり、数々の著書を発刊。 Hawking教授は何故働けるのか? 健康状態(ALS) 職業的目標 職業関連活動 機能障害 全身の筋麻痺、 呼吸・心臓機能 障害、発声機能 障害 環境因子 職住接近、段差のない家の提供、人的資 源(公的援助サービス、私的な看護師) 人 口呼吸器(車椅子据付)、電動車椅子、特 殊な入力機、コンピューター読み上げ機 (物理学者、 講義の免除) 個人因子 ・ 興味 ・ スキル ・知識や経験 各次元の大分類(第1レベル分類) 心身機能 • • • • • • • • 1章 2章 3章 4章 5章 6章 7章 8章 精神機能 感覚機能と痛み 音声と発話の機能 新血管系・血液系・免疫系・呼吸器系の機能 消化器系・代謝系・内分泌系の機能 尿路・性・生殖の機能 神経筋骨格と運動に関連する機能 皮膚および関連する構造の機能 各次元の大分類(第1レベル分類) 身体構造 • • • • • • • • 1章 2章 3章 4章 5章 6章 7章 8章 神経系の構造 目・耳および関連部位の構造 音声と発話に関わる構造 心血管系・免疫系・呼吸器系の構造 消化器系・代謝系・内分泌系の構造 尿路性器系および生殖器系に関連した構造 運動に関連した構造 皮膚および関連部位の構造 各次元の大分類(第1レベル分類) 活動と参加 • • • • • • • • • 1章 2章 3章 4章 5章 6章 7章 8章 9章 学習と知識の応用 一般的な課題と要求 コミュニケーション 運動・移動 セルフケア 家庭生活 対人的相互作用と対人関係 主要な生活領域 コミュニティライフ・社会生活・市民生活 各次元の大分類(第1レベル分類) 環境因子 • • • • • 1章 2章 3章 4章 5章 生産物と機器 自然環境と、環境に対して人間がもたらした変化 支持と関係 態度 サービス・制度・政策 各次元の大分類(第2レベル分類) 活動と参加 第5章 セルフケア(d510-599) • • • • • • • • • d510 d520 d530 d540 d550 d560 d570 d598 d599 自分の身体を洗うこと 身体各部の手入れ 排泄 更衣 食べること 飲むこと 健康に注意すること その他特定のセルフケア 詳細不明のセルフケア ICF分類項目のレベルとコード 例;b21021 色覚 • • • • • 次元 第1レベル 第2レベル 第3レベル 第4レベル b b2 b210 b2102 b21021 心身機能(body functio 感覚機能と痛み 視機能 視覚の質 色覚 各要素共通の評価点 • • • • • • • XXX.0 XXX.1 XXX.2 XXX.3 XXX.4 XXX.8 XXX.9 問題なし 軽度の問題 中等度の問題 重度の問題 完全な問題 詳細不明 非該当 たとえば • b16700.2 = 「話し言葉の理解」の中等度の 機能障害」 • d7104.3 = 「社会的な合図」への対応の重 度の活動制限 • d9201.0 = 「スポーツ」への参加制約なし 活動と参加の評価の仕方 「援助」:補助用具と人的支援を含む 実行状況(第1評価点) (援助なしでの)能力(第2評価点) 援助付での能力(第3評価点) 援助なしでの実行状況(第4評価点) d4500. 活動の評価の記入例 d6402=居住部分の掃除 特に問題なく行われている d6402 .0 3 0 杖を使えば、普通にできる 杖がなければ非常に困難 ICFの活用の4レベル 基礎レベル=「共通言語」としての活用 第2レベル=なにを?(どの属性・どんな特徴) (概念モデル、分類、分類+評価点) 第3レベル=どの分野で? (教育・雇用・福祉・交通・医療など) 第4レベル=どの用途で? (統計調査、臨床、政策、など) ICFの特徴 • プラスをみること • 能力と実行状況の区別をすること。 隠れた「プラス=能力」には2種類あります。 もともともっているが、 使っていない能力 専門的な技術や生活 環境を変えることで引 き出せる能力 泳げるが、今は 泳いでいない。 片足が悪くなっ ても装具をつけ ると歩ける 1 まずICFから出発するのではない。 利用者の意向・希望から。 • まず、アセスメントからはじまるのではない。利用者の意向・ 希望の確認・予測がある。その意向・希望によってケアプラ ンはもちろんアセスメントの重点も変わってくる。 • ただし、アセスメントやケアプラン作成段階、さらにモニタリン グ過程でも、意向・希望は新たに表明され、変更される。 • ICFは、利用者の意向・希望とは直接関係はない。 • しかし、①「心身機能重視」から、「心身機能・活動・参加の総 合的な視点」への意向、②「障害」だけではなく、「生活機能」 もみる。 このため、「利用者の土俵」でことがすすみ、意向・希望を自 覚し、表明しやすくなる。 2 意向・希望は参加次元 • • • • 時々は旅行に行きたい。 自分の家で暮らし続けたい。 子供や孫の姿を見ながら暮らしたい。 俳句をつくり、句会にも顔を出したい。 実現できていることであれば、それを可能にしている要因はな にか。その継続を危うくする、リスク要因はなにか…. 実現できていないことであれば、その実現に必要な要因はな にか..... 2(つづき) • トイレに行けるように • 買い物に行けるように 表面的には活動 • 握力を強めたい • 下肢の力をつけたい 表面的には 心身機能 • 脳梗塞の再発を防ぎたい • 糖尿病の管理をしたい 表面的には 健康状態 2(つづき) • 「参加」の希望・意向は、 今の暮らしを続けたい。 調理、洗濯などの役割を担い続けたい しかし(個人差は大きいが、 ・嫁にこれ以上負担をかけたくないからと か、面倒だからという理由で、ヘルパーさ んの派遣を希望する場合もある。 相談・支援プロセスのイメージ ニーズ ニーズ ・専門家と ディマンド しての判断 ディマンド 乖 離 ・情報提供 ニ-ズ=ディマンド 一部重なり合い 一 致 ケアマネジメントの経過の中でディマンドをニーズに一 致できるよう共に考えていくことが重要 相談・支援プロセスのイメージ 筋力向上・歩行訓練により、 外出でき、ヘルパー同行で 買い物にいけるようになる。 (専門家の判断) ヘルパーに買い物を頼みたい (利用者の要望) 乖 離 ・ディケアで歩 行訓練 歩行機能が向上し、 ヘルパーと同行で買い物 に行けるようになる。 自宅内での廊 下歩行とスト レッチ 庭先なら歩け る(自信につ ながる) 専門家の判断 ヘルパーと一緒に 近くのスーパーまで 買い物に行きたい 一 致 ・機能を低下させずにどのような生活を送りたいか ・生活するうえで、できること・したいことを見つけ、そのために 自らが努力できるように助言・支援 3 総合的アセスメントをICFで • ICFの分類でチェックすることも可能 (全ての項目、あるいは重要項目のみ使って、または第2レベ ルまで) (「ICFチェックリスト」日本語訳もあり:国立特殊教育総合研究 所の徳永亜希雄氏による) • 見落としを防いだり、多くの「プラス」を発見で きたり。 3(つづき) • 国際生活機能分類(ICF)は、Maximam (最大限の)data (情報)Setと言えるのではないか。 今改めて、 • 「MDS-HC」は • Minimam(最低限の) Data Set-Home Care。 MDS-HCの「在宅ケアアセスメント票」は、在宅サービスの 利用者一人ひとりの個別的ニーズを包括的に把握し、ケアプ ランを作成するために最低限(ミニマム)必要な情報を標準 化した形で網羅しています。 <医学書院> 山田ゆかり 慶應義塾大学医学部助手・医療政 策看護学 五十嵐千嘉子 北海道総合研究調査会常務理事 池上直己 慶應義塾大学医学部教授・医療政 策管理学 予防版MDS-HCアセスメント項目(大項目) • 認知 • コミュニケーション • 視覚 • 気分と行動 • 社会的機能 • インフォーマル支 援 • IADLとADL • 排泄 • 疾患 • 健康状態 • 栄養 • 口腔 • 皮膚 • 環境 • 特別な治療 • 薬剤 予防版MDS-HCアセスメント項目(89項目) • 認知 • 社会的機能 短期記憶 認知能力 対人関係 社会的活動 孤立 • コミュニケー • インフォーマル ション 聴覚 伝達能力 支援 • 視覚 視力 視野制限 • 気分と行動 悲しみの気分 継続した怒り 非現実的な恐 れ 健康上の不満 心配ごと 苦痛の表情 涙もろい 主介護者の同居 本人との関係 IADL援助 ADL援助 副介護者の同居 本人との関係 IADL援助 ADL援助 予防版MDS-HCアセスメント項目(つづき) • IADLとADL IADL実施(食事) IADL実施(家事) IADL実施(金銭) IADL実施(服薬) IADL実施(電話) IADL実施(買物) IADL実施(交通) IADL困難(食事) IADL困難(家事) IADL困難(金銭) IADL困難(服薬) IADL困難(電話) IADL困難(買物) IADL困難(交通) ADL実施(屋外移動) ADL実施(食事) ADL実施(個人衛生) ADL実施(入浴) 屋外移動手段 階段昇降 外出頻度 活動時間 • 排泄 尿失禁 • 疾患 脳血管障害 冠動脈疾患 高血圧 不整脈 白内障 予防版MDS-HCアセスメント項目(つづき) • 健康状態 下痢 発熱 食欲不振 便秘 めまい 息切れ 痛みの頻度 生活の支障 痛みの頻度 痛みの強さ 生活の支障 痛みの箇所 鎮痛剤の使用 転倒回数 不安定な歩行 • 栄養 外出制限 危険な飲酒 喫煙 主観的健康観 病態の不安定 介護者の恐れ 体重減少 水分摂取不足 嚥下問題 • 口腔 咀嚼の問題 歯磨きの問題 • 皮膚 皮膚の問題 足の問題 • 環境 環境(床) 環境(浴室) 環境(空調) 環境(玄関) 予防版MDS-HCアセスメント項目(つづき) • 特別な治療 遵守(通院) 遵守(治療食) • 薬剤 薬剤の種類 催眠薬 医学的管理 薬剤遵守 予防版アセスメント表のアセスメント項 目は、以上の89項目で、オリジナルの 全アセスメント項目247項目(基本情報 と自由記載の項目を除く)から、予防訪 問対象者にとって関わりのある項目を 抜粋して作成された。
© Copyright 2024 Paperzz