close

Enter

Log in using OpenID

産学交流で開発したチタンのレインボー・カラー着色 藤森常昭、佐藤敏彦

embedDownload
産学交流で開発したチタンのレインボー・カラー着色
藤森常昭、佐藤敏彦
産学交流で成果を挙げる方法、チタン表面処理の文献紹介
と今回の開発した新着色技術を報告する。
1. はしがき
産学交流ブームであるが、必ずしも研究
成果を生むとは限らない。2004 年度に産学
交流による共同研究を実施した筆者らは幸
運にも「チタンのレインボー・カラー着色」
を技術開発できた。この産学交流が成功し
た経過と開発した技術を以下に報告する。
なお、新技術解説の予備知識として最近の
チタン表面処理文献の紹介も行った。
2. 「昔の産学交流」と「昨今の産学交流」
現在の産学交流ブーム以前にも「産学交
流」は行われていた。
「昔の産学交流」を説
明するに際して、他の大学教員に迷惑を掛
けるといけないので、佐藤敏彦が経験した
数十年前の事例を述べる。表面処理関連の
学会で知り合った会社社長から、
「先生、ウ
チの会社の若い技術屋にいろいろ教えてや
ってくださいヨ!」と言われて、
「じゃー酒
を飲みにいきましょう!」で「昔の産学交
流」が開始された。しかし、教授は授業や
学内行事、学会行事に忙殺されて、学生に
「研究をマル投げ」。一方、会社も教授に「研
究をマル丸投げ」で、報告書は求めない。
しかし、
「昨今の産学交流」は図 1 に示す
流れで委託研究が行われている。このシス
テムで、図 2 に示す藤森常昭の会社が芝浦
工業大学産学交流課に「チタン着色」の委
託研究を申し込んだ。そして、研究開始。
図 1 芝浦工業大学産学交流での技術相
談・評価と委託・共同研究のステップ
(https://office.shibaura-it.ac.jp/
sangaku/)
本節の趣旨は、大学教員に面識が無くて
も、小さい会社でも、FAXや電子メール
で大学に産学交流を申し込める事のPRで
ある。
図2
委託研究を依頼してきた会社
(http://www.fuji-plan.co.jp/)
1
3. 産学交流での電子メールの活用
「昔の産学交流」の名残で、佐藤敏彦は
年度末までには「なんとかしなくては!」
と思っていた。しかし、4 月に化学研磨さ
れている数十枚のチタン板が藤森常昭から
送られてきた。そして、数週間後に産学交
流課から、
「6 月のビックサイト展示会で藤
森さんが自社製品展示の為に上京されるの
で、佐藤先生は御挨拶に行ってください」
と言われた。そこで、6 月迄には多少の実
験結果を報告しなくてはならないので、佐
藤敏彦は例年よりも早めにチタン着色の実
験を開始した。藤森と佐藤が初対面した以
降、藤森は頻繁に電子メールを送ってきた。
藤森による着色実験結果のカラー写真は電
子メールの添付ファイルで送られてきた。
藤森から幾つかの質問や要望も電子メール
で送られていた。また、藤森は地元や東京
の展示会にレインボー・カラーの試作品を
展示して、来場者の意見を参考にして、レ
インボー・カラーの用途開発に努力してい
た。この状況も電子メールで佐藤に連絡し
ていた。藤森は委託研究を「マル投げ」せ
ずに、藤森自身も実験を行い、電子メール
で佐藤敏彦を叱咤激励した事が産学交流を
成功させた理由である。
表 1
陽極酸化電圧あるいは加熱温度とチ
タン酸化皮膜の色調
電圧
温度
皮 膜 厚
(V)
(℃)
さ(μ)
酸化皮膜の色
10
385
0.035
淡黄味の銀色
20
412
0.046
黄土色
30
440
0.06
濃黄土色
40
468
0.0658
パープル
50
496
0.0825
ブルー
60
523
0.1075
水色
70
551
0.13
淡い水色
80
579
0.15
淡黄味の水色
90
607
0.17
薄黄色
100
635
0.19
薄ピンク
110
648
0.2+
濃藤色
1 号、39 頁―43頁(1998))の総説論文は
インターネット情報が太刀打ちできないハ
イレベルな情報である。「4.1 チタン酸化
物薄膜の耐食性と腐食挙動」の節では、
「チ
タンがカソード分極されると、皮膜の TiO2
が TiOOH に変質して電気的絶縁性が失われ
るとともに、耐食性も低下すると思われる」
と書かれている。「4.3 チタン酸化物薄膜
の着色」の節では、
「チタンのアノード酸化
物皮膜がECデバイスとして潜在的に充分
な性能を発揮できることを示している」な
どの解説がされている。また、科学技術文
献抄録によると、幅崎浩樹は新素材設計開
発施設共同利用研究報告書(2002 号、3 頁
-4 頁(2003))で「電解キャパシタの容量向
上のために誘電率の高いチタン酸化物が望
まれている。チタンを中性又は酸性溶液中
でアノード酸化すると,低い電圧で結晶酸
化物皮膜が生成するが,成長中にガスが発
生するためち密で均一な皮膜が得られない。
結晶化を抑えてち密で均一な皮膜を得るた
め,チタンにジルコニウムを添加した。アノ
ード酸化皮膜の構造,成長挙動および電気
4. チタン表面処理の文献
インターネット上にチタン着色の技術情
報や広告が多数ある。特に着色皮膜の鮮や
かな色調がカラー画像で示されている点は
雑誌情報が太刀打ちできない点である。こ
れらのインターネット情報の一つとして
「津田孝司のホームページへようこそ!」
( http://homepage1.nifty.com/k_tsuda/t
i22/tikaisetsu.html)に掲載されている表
1 を示す。なお、同表の横幅をちじめる目
的で「酸化皮膜の色」を短文に改めた。
一方、安住和久著;
「チタンのアノード酸
化物薄膜の構造と物性」
(表面技術、49 巻、
2
容量に及ぼす影響を,SEM,TEM,GR-OES,RBS,
交流インピーダンスおよび漏れ電流の測定
により研究した。ジルコニウム添加により,
アノード酸化皮膜中のアナターゼ型 TiO2
の生成が抑制され,高い電圧まで均一な皮
膜が形成した。また,誘電率も高く漏れ電流
も小さいことを確認した」との報告をして
いる。
「株式会社ホリエ チタンとのかかわり
ー今後のチタンへの思いー」(チタン、49
巻、2 号、88 頁―91頁(2001))の報文で
の有益情報は「3. 販売の方法」の章であ
る。「弊社は小さな会社です。(中略)営業
の専門もいないのが現状です」と書いてあ
るが、
「展示会では3~4名で交代でアテン
ダーに立ちます,その間は会社の機能が半
減しますがそれ以上に得るものが有ります
ので一番大切な行事としております。今は
年三回の展示会に出展して,お客様の反応
や意見を聞いて商品創りの参考とさせて戴
いております。インターネットによるお客
様との交流も活発になり,多くの効果をあ
げております。ホームページを見て,日本
だけでなく,米・ベルギー・イタリー・ス
ペイン・シンガポール・韓国・台湾その他,
多くの国からも問合せや引き合いがe-m
ailで参ります。その人達との直接の交
流は弊社にとって,とてもプラスになって
おります」と述べている。この努力には感
服させられる。
歯科大学歯学部の先生が、
「チタン陽極酸
化皮膜の電解着色に対する電流密度の影
響」(佐藤正紀著、日本歯科大学紀要、第
32 巻、63頁―65頁(2003))の論文を
発表している。そして、論文の緒言で、
「チ
タンの生体適合性の良さを利用して、口膣
インプラントにも応用されるようになっ
た」と述べている。この論文の最大の特徴
は「ハルセル試験器」
(図 3)と言う特殊な
電解槽でチタンの陽極酸化実験を行った点
図3
実験に使用されたハルセル試験器
である。なお、
「ハルセル試験器」は世界中
の電気めっき関係者が知っている「めっき
浴の性能を試験する電解槽」である。
ハルセル試験器による実験結果の一部分を
表 2 に示す。実験結果である表 2 の表示方
法について、
「チタン板は電流密度に対応し
て、色調が連続的な変化を生ずるため、主
色調として認められる中心の位置と、その
電流密度について記した」と述べている。
歯科大学の先生は学術研究として本実験を
行ったが、
「ハルセル試験器での陽極酸化で
チタンの虹色着色が可能!」と言う事実は
チタン製アクセサリーの製造技術者には有
益な情報であろう。この論文には、
「電解着
色は交流を適用しても直流で行った場合と,
ほぼ同様な色調の皮膜を形成する。しかし,
直流電解の場合,着色後のチタンは重量増
加を生じるが,交流電解による着色後の重
量は減少していることが観測された。すな
わち,交流電解はチタンの溶解と皮膜の形
成が同時進行しているものと考えられる」
との研究結果も報告されている。
3
表 2
ハルセル試験器によるチタン陽極酸
化実験の結果
ー・カラー着色の実演している藤森常昭で
ある。なお、藤森常昭のブログ(http://
blog.goo.ne.jp/suwaplan/c/4dc10aa
68742f793ccd3c592ad45e0f5 ) に は 多 数 の
「レインボーチタン」のカラー写真が掲載
されている。
写真 1
5. 今回の開発した着色技術
チタン試料の全面に均一な電圧を加えれ
ば、チタンは均一着色になる。しかし、前
節で紹介した歯科大学の先生の陽極酸化実
験のように、チタン試料に連続的に変化す
る電圧を印加すればチタン試料はレインボ
ー・カラー着色になる。そこで、チタン試
料に連続的に変化する電圧を印加する装置
を開発した。この装置で最初に陽極酸化実
験したチタン試料のレインボー・カラーを
写真 1 に示す。試料左端の「赤」から、
「紫」
→「青」→「緑」→「黄土」へと色調が変
化しながら試料の右端に至っている。
写真 1 の実験は小さいガラス製ビーカー
で行ったが、その後、藤森常昭は写真 2 に
示すレインボー・カラー着色専用の電解槽
を作成して、写真 3~写真 7 に示す「レイ
ンボーチタン」の実験をした。写真 6 の後
ろ向きの人は展示会で来場者にレインボ
写真 2
4
最初の着色皮膜
レインボー・カラー着色装置
写真 3
写真 6
東京ビックサイト展示場でのチタ
ン陽極酸化実験の実演
写真 7
長野県精密工業試験場での小池明
夫部長(写真右)によるレインボ
ー・カラー着色の確認実験
写真 4
「レインボーチタン」(1)
6. 小池部長とのディスカッション
デューティ電源式アルマイト法を開発し
た大久保敬吾元場長が勤務していた長野県
精密工業試験場が藤森の会社からクルマで
20 分の所にあったので、同試験場化学部の
小池明夫部長とチタン陽極酸化皮膜の干渉
色について数回の有益なディスカッション
を行った。
初対面の時に、佐藤は「可視光線の波長
オーダーの厚さの透明皮膜は干渉色を示す
のですよ!」と小池部長に説明したところ、
「干渉色は“厚さ”だけでなくて、透明酸
化皮膜の“屈折率”にも関係するのです
よ!」と小池部長から逆に教えられた。こ
の説明で、ステンレス鋼やチタンでは干渉
写真 5
「レインボーチタン」(2 と 3)
「レインボーチタン」(4)
5
色皮膜が形成されやすいが、アルミニウム
では鮮やかな干渉色皮膜ができにくい理由
がわかった。また、以下の問題も討議した。
● チタンのカラー着色については、シャボ
ン玉や他の酸化皮膜と違い見る方向を
変えても色が変わらない。干渉色であれ
ば、違った色に見えるはずである。
● 「アノード酸化皮膜のTEM観察によ
れば、素地側60%は結晶性酸化物、電
解液側はアモルファス」と報告している
論文がある。この場合、干渉現象を起こ
す皮膜の「厚さ」は何か?
なお、平成 17 年 4 月 1 日より組織改正に
より、同試験場は「長野県工業技術総合セ
ンター精密・電子技術部門」に名称変更で、
小池部長の現在の職位は「化学チームリー
ダー」である。
写真 8
大気中での加熱によるチタンのレ
インボー・カラー皮膜
た。「スパッターリングの際の温度上昇で、
アルミニウムが軟化してしまいます」と言
っていた。この試料を大気中で加熱して、
直ちに試料を水中に投げ入れた。その結果、
試料はレインボー・カラー着色され、アル
ミニウムの「焼入れ効果」で試料は硬くな
った。
7. 大気中でのチタン加熱によるレインボ
ー・カラー着色
陽極酸化法とは、全く別の方法によるチ
タンのレインボー・カラー着色法も開発し
た。表 1 の「陽極酸化電圧あるいは加熱温
度とチタン酸化皮膜の色調」のデータにも
示されているように、チタンを大気中で加
熱すると各種色調の着色酸化皮膜が形成さ
れる。そこで、チタンを加熱する温度を連
続的に変化させて、チタンをレインボー・
カラー着色する方法を考えた。その結果、
写真 8 に示すレインボー・カラー着色がで
きた。この試料の左端は「黄」で、右に向
かって「赤」→「青」→「空色」→「白」
へと色調が変化している。
9. むすび
レインボー・カラー着色したチタンはア
クセサリーなどの装飾品としての用途はあ
るが、
「センサー」などの工業的用途として
レインボーチタンが利用できないかと考え
ている。
「チタンのレインボー・カラー着色
皮膜」は、安住和久が示唆したように、
「厚
さが連続的に変化している n 型半導体薄
膜」なのである。アイディアを思いついた
人は藤森常昭(fujimori@fuji-plan.com)
なり、佐藤敏彦([email protected] ne.
jp)に御連絡をして下さい。
最後に、有益なアドバイスを頂いた小池
明夫化学チームリーダーと安清一社長に深
謝する。
8. アルミニウムにチタンをスパッター・コ
ーテイングした試料のレインボー・カラ
ー着色
韓国の友人であるANODA社長の安清
一氏はアルミニウムへチタンをスパッター
リングでコーティングした試料を持ってい
6
R&D
of
rainbow-coloring
of
titanium
through
collaboration between industry and university
Tuneaki FUJIMORI,
Fuji Plan Co. LTD
〒392-0015
株式会社
TEL
長野県諏訪市中 4464-1
フジプラン
0266-53-1504
FAX
0266-53-5959
Toshihiko SATO
Retired professor of Shibaura Technical University
7
Author
Document
Category
Uncategorized
Views
1
File Size
576 KB
Tags
1/--pages
Report inappropriate content