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Title
Studies on In Vitro Maturation of Canine Oocytes( 内容と審査
の要旨(Summary) )
Author(s)
ABDEL-GHANI, Mohammed Ali
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第365号
Issue Date
2012-09-18
Type
博士論文
Version
none
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/47991
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
ABDEL-GHANI,Mohammed
氏名(本(国)籍)
主
指
導一教 員
名
帯広畜産大学
類
博士(獣医)
学
位
の
種
学
位
記
番、号
学位授与年月
Ali(エジプト・アラブ共和国)
教授
鈴
木
宏
志
獣医博甲第365号
平成24年9月18日
日
学位授与の要件
学位規則第3条第1項該当
研究科及び専攻
連合獣医学研究科
獣医学専攻
帯広畜産大学
研究指導を受けた大学
学
位
論
文
題
Studies
目
onIn
Vitro
Maturation
of
Canine
Oocytes
(イヌ卵子の体外成熟に関する研究)
審
査
委
員
岐阜大学
教
授
村
槻
副査
帯広畜産大学
教
授
鈴
木
副査
岩手大学
教
授
橋
爪
副査
東京農工大学
教
授
渡
辺
副査
岐阜大学
教
授
志
水
文
の
内
容
の
要
哲
宏一
論
主査
磨
志
善
元
泰
武
旨
家畜やヒトを含む晴乳動物の生殖を補助する技術,いわゆる生殖工学的技術は,マウス
を始めとして多くの軸物種で開発が進み,動物の改良・増殖,迫伝子㌍源の保全・有効利
用あるいは不妊治療に応用されてきている。イヌの育種・繁殖においても生殖工学技術の
適用が期待され,特に,慢性的な供給不足が継続している盲導犬や介助犬などの身体障害
者補助犬,あるいは麻薬探知犬,検疫犬などの効率的育成への貢献が望まれている。しか
しながら,イヌにおいては,その複雑な繁殖生理の理解に乏しいことを始めとする幾つか
の要因によって,他の動物と比較して生雛工学技術の閲発が著しく遅れており,イヌの体
細胞クローンの誕生の報告はなされているものの,未だに,体外受輩出こよる産仔すら得ら
れていない。現在のところ,イヌの人工整如において,唯一,実用化されている技術は人
工授柵のみであり,未成抱卵子の体外成熟,体外受半乱
あるいは胚の凍結保存技術等,雌
側からの改良が期待される技術聞発が切望されている。
イヌでは適切な過剰排卵技術も定′肯していないことから,卵巣由来の未成典卵子を体外
培養によって成ブ;ざ!もさせて体外受非嗣こ供し受半.7卵を得る技術の弥立が,生机工学技術開発の
第一歩であると考えられるが,未成熟卵子の体外培j如こよる成魚率も満足な成紡が得られ
ていない状況にある。そこで,本研究では,イヌ未成熱卵子の体外成熱におけるウシの体
外受精時の培鬼上沼の添加効果(第1章)を検討した。TCM-199を基礎培地として,培養
上沼を郁々の割合で混合し,卵巣から採取した卵子一卵丘複合体(COC)を72時帽」あるいは
96時問培養して核の成熟程度を観察した。その結果,培養上菅l-iを30%添加したTCⅣ卜199
で72時制J音養した均合に卵核胞眉娩∼節二成熟分裂中期に達した卵子の割合が最もi‡一石く
(42ワム),この割合は対照のTCM-199(27%)と比l校して有訊こ高い成紙であった。また,培養
時間を96時間に延長した喝合には,退行卵子の割合が上昇する傾向が認められた。以上の
成紙より,ウシCOCの培養上手--i(体外受桃培地)は,イヌ未受納卵の核成熱を促進する効
-83-
黒があることが示唆された。また,培席上i1一子の効果は,岬柁購細胞から分泌される細々の
成長因子に起因するもの`と考えられた。
これらの成約を受け,ウシ怖拉屑細胞のモノレイヤー(BGlIL)およびイヌ岬拉屑細胞のモ
ノレイヤー(CGITL)を■朋度して,イヌ未成熟卵子の体外培養におけるBGllLあるいはCGlfLと
の共培二長の効果について検討した(第2章)。その結果,発情期あるいは発情問順にあるイ
ヌから採取したCOCをBGllLと72時間共培養した場合に,卵子の第二成;;チt与分裂中期への成
熟が最も促進される(27%)ことが明らかとなり,この成縮も
CGllL
との共培養(弘)および
培養液のみで成典を促した実験区(3%)と比較して有意に由、成試であった。また,BGllLが
卵子の成熟促進効果を発押するためには,BGhlLとCOCとの直接的な接触が常習であること
が示咤された。加えて,卵子提供雌の発情周期の時期が,採取した卵子の体タト成熟童に足
部を及ぼすことも示唆された。
さらに,摘出した卵巣からより多くの体外成典に供し得る卵胞を確保することを可能と
することを目的に,卵=狼組織片の体外培適における卵胞の成長に及ぼす分化成長因子
(GDト9)および血管内皮成長因子(VEGF)の添加効果について検討した(第3輩)。ヒト組換
えGDF-9およびVEGF存在下で凍結融解したイヌ卵巣片をミリセル上で7∼14日間培養し,
卵胞の発育段階を組織学的に検索した結果,単位面積あたりの卵胞数が成長因子を添加し
ていない対照と比較して,一次卵胞,二次卵胞および前胞状卵胞で有意に多い成績であっ
た。これらの成績から,卵巣片の体外培養におけるGDF-9およびVEGFの添加は,卵胞の成
長を促進する効果があることが示唆された。
以上,本研究においては,イヌ未成熟卵子の体外培養に対して有効な新たな培養系を提
供するとともに,卵巣片の器官培養系を開発した。今後,これらの系の活用によってイヌ
における生殖工学技術の開発が進展するとともにイヌの繁殖生理の理解がより深まるもの
と期待される。
審
査
結
果
の
要
旨
哺乳劇物の生殖を補助する技術,いわゆる生殖工学的技術は,マウスを始めとして多く
の軸物輔で開発が進み,拗物の改良・増舛,迫伝子持源の保全・有効利用あるいは不妊治
腑に応用されてきている。イヌの脊椎・禁如においても生卵工学技術の適用が期待され,
特に,慢性的な供給不足が継続している身体障憲者補助犬や使役犬などの効三キ三的育成への
芦献が望まれている。しかしながら,イヌにおいては,その粗雑な禦殖生理の理解に乏し
いことを始めとする幾つかの要因によって,他の動物と比較して生殖工学技術の開発が著
しく遅れており,翼在のところ,イヌの人工整那において実用化されている技術は人工授
精のみであり,未成典卵子の体外成軋
体外受納等,雌側からの改良が期待される技術開
発が望まれている。
イヌでは適切な過刺排卵技術も定常していないことから,卵巣由来の未成熟卵子を体外
培j引こよって成熟させて体外受柑こ供し受精卵を得る技術の確立が,生難工学技術開・雅の
第一歩であると考えられるが,未成熟卵子の体外培養による成熟率も消足な成紙が得られ
ていない状況にある。そこで,本研究では,イヌ未成熟卵子の体外成熟におけるウシの体
外受脚寺の培席上消の添加効果(第1窄)を検討した。Tn卜199を基礎培地として,培凍
上消を稚々の割合で混合し,卵巣から採取した卵子一卵丘複合体(COC)を培轟して核の成熟
程度を観察した。その結果,培養上菅I写を30%添加したTCh卜199で72時間培展した場合に
卵核胞崩壊∼第二成熟分裂中期に達した卵子の割合が最も高く(42%),この割合は対照の
TCM-199(27%)と比較して有意に高い成績であった。また,培養時間を96時間に延長した
場合には,退行卵子の割合が上昇する傾向が認められた。以上の成績は,ウシCOCの培養
上清(体外受精培地)は,イヌ未受精卵の核成熟を促進する効果があることを示唆したも
のであった。また,培養上清の効果は,顆粒層細胞から分泌される種々の成長因子に起因
するものと考えられた。これらの成績を受け,ウシ顧粒層細胞のモノレイヤー(BGML)およ
ー84-
びイヌ顆粒屑細胞のモノレイヤー(CGML)を調整して,イヌ未成熟卵子の体外培二養における
BGMLあるいはCGMLとの共培養の効果について検討した(第2章)。その結果,発情期ある
いは発情間期にあるイヌから採取したCOCをBGMLと72時間共培養した場合に,卵子の第
二成熟分裂中期への成熟が最も促進される(27%)ことが明らかとなり,この成紙は,CGML
との共培養(8%)および培養液のみで成熟を促した実験区(3%)と比較して有意に高い成綴で
あった。また,BGMLが卵子の成熟促進効果を発挿するためには,BGMLとCOCとの直接的な
接触が重要であること,卵子提供雌の発情周期の時期が採取した卵子の体外成熟率に影轡
を及ぼすことも明らかにした。さらに,摘出した卵巣からより多くの卵胞を確保すること
を目的に,卵巣組織片の体外培弟における卵胞の成長に及ぼす分化成長因子(GDト9)および
血管内皮成長因子(VEGF)の添加効果について検討した(第3二章)。ヒト組換えGDト9および
VEGF存在下で凍結融解したイヌ卵巣片を培適し,卵胞の発育段階を検索した結果,単位面
硯あたりの卵胞故が成長因子を添加していない対照と比較して,一次卵胞,二次卵胞およ
び前胞状卵胞で有意に多い成純であった。これらの結果は,卵巣片の体外培鹿における
GDF-9およびVEGFの添加は,卵胞の成長を促進する効果があることを示している。
以上,本研究においては,イヌ未成熟卵子の体外培展に対して有効な新たな培廣系を提
供するとともに,卵巣片の器官培養系を制発した。今後,これらの系の活用によってイヌ
における生殖工学技術の開発が進展するとともにイヌの繁殖生理の理解がより深まるもの
と期待されるところである。
以上について,審査委員全員一致で本-i■論文が岐阜大学大学院迎合状医学研究科の学位論
文として十分価値があると認めた。
基礎となる学術論文
目:E脆ctofbovinecumulus-00CyteCOmPlexes-COnditionedmediumonin-Vitro
1)題
maturationofcanineoocytes
著
者
名:Abdel-Ghani,M.A.,Abe,Y,Asano,T.,Hamano,S.andSuzuki,H.
学術雑誌名:ReproductiveMedicineandBiology
巻・号・頁・発行年:10(l):43-49,2011
目:hvitromaturationofcanineoocytesco-Culturedwithbovineandcanine
2)題
granulosace11monolayers
著
者
名:Abdel-Ghani,M.A.,Shimizu,T.,Asano,T.andSuzuki,H.
学術碓誌名:Theriogenology
巻・号・頁・発行年:77(2):347-355,2012
既発表学術論文
目:Vitri丘cationofcaninecumulus-00CyteCOmPlexesinDAP213withacryotop
1)題
bolder
著
者
名:Abe,Y,Asano,T.,Ali,M.andSuzuki,H.
学術雑誌名:ReproductiveMedicineandBiology
巻・号・頁・発行年:9(2):115-120,2010
題著
2 )
目名 Cryopreservationofcamineembryos
者
Abe,Y,Suwa,Y,Asano,T.,Ueta,YY,Kobayashi,N.,Ohshima,N.,
Shirasuna,S.,Abdel-Ghami,M.A.,Oi,M.,Kobayashi,Y,Miyoshi,M.,
Miyahara,K.andSuzuki,H.
学術雑誌名:BiologyofReproduction
巻・号・頁・発行年:84(2):363-368,2011
-85-
目‥Efftctofgra食siteandgonadotrophintreatmentonfblliculardevelopmentof
3)題
Canineovariangra鮎transplantedtoNOD-SCIDmice
著
者
名:Abdel-Ghani,M.A.,Abe,Y,Asan0,T.andSuzuki,H.
学術雑誌名:ReproductiveMedicineandBiology
巻・号・頁・発行年:10(4):259-266,2011
-86-