NEC トーキンの圧電テクノロジー 電位と変位を自在に変換する圧電デバイス。その多様な可能性に、今、世界は大きな関心を向けています。 ●時代をリードする圧電テクノロジー 圧電(ピエゾ)とは、ある種の結晶に備わっ た性質で、電気を加えることで変形し、変形を 加える事で電気を発生する現象です。 それは、自然がもたらす、神秘の一つといって いいでしょう。 その結晶を材料に、セラミック化・積層化し、 素子にして、さらにデジタル機器の心臓部を担う ユニットに練り上げたのが、圧電デバイスです。 この圧電デバイスには、様々な優れた性質が備わっています。 強い力、素早い応答性、高い変位精度を備えながら、エネルギー効率に優れ、発熱やノイズも極めて小さく安全性 に優れています。そのうえ、構成も極めてシンプルで、サイズも小さく、薄く、限られたコンパクトな場所に収める ことが可能です。 圧電セラミクスの機能 1 近年、家電の「新三種の神器」として、薄型テレビ、デジタルカメラ、DVDレコーダーが、景気浮上の駆動役 としてクローズ・アップされてきました。これらに代表されるデジタル家電は、そのほとんどが、高性能化と軽薄短 小化の相矛盾する性質を、同時に厳しく追求しなければならない宿命を負っています。 そのため、デジタル家電を構成する部品は、ますます高密度な実装が、行われるようになっています。一方で、さ らに高い周波数での動作が求められるため、つねにノイズや熱の発生に悩まされ続ける状態にあります。 このような過酷な条件への対応は、旧来から使われてきた電磁部品では、もはや限界に近くなっています。これか ら先、さらにデジタル家電のレベルを上げていくためには、何か新しい考え方が必要です。 そんな、新しい時代を切り開くキー・テクノロジーの一つが、他ならぬ圧電デバイスなのです。 圧電型と電磁型の比較 当社には、この圧電デバイスに関して、40年以上のとり組みの歴史があります。 この分野に対して、非常に初期から可能性を見抜き、数多くの開発を重ねて、技術の蓄積を行ってきました。その 歴史の中で、様々なノウハウを身につけ、所有する知的財産も多数に上ります。 たとえば材料のセラミックスについていえば、組成や不純物、焼結密度、空孔径などの基本的な物性のみならず、 結晶粒径や粒径分布、粒界構造、空孔分布といった、高品質セラミックスを創り上げるために欠かせない、高度な物 性制御を行う能力を持っています。また、デバイス化のための積層プロセスにおいても、先見の明がもたらした、全 面電極構造という、シンプルかつ王道的な特許技術を使って、圧電デバイスの弱点を回避し、新たな幅広い用途を開 拓しつつあります。さらに、セラミックスを素子に加工し、ユニット化する技術や、できあがったデバイスやユニッ トの性能を、客観的に評価する計測技術にも、古くからの実績があります。 このように、当社の持ち味は、最も基本の材料技術から、ユニット化技術、計測技術まで、圧電デバイスを創り上 げる全てのプロセスについて、確固とした体系的技術力を持つことです。NECトーキンの、圧電技術の全体を展望 しつつ、顧客のニーズに即応できる体勢は、一つの文化といっていいかもしれません。 NEC トーキンの特徴 2 21世紀において、圧電デバイスは、もとからあった市場のさらなる拡大はもちろん、電磁型が主流だった市場の 置き換えや、今までにない全く新しい用途開拓など、ますます利用が拡大していくと予想されています。 その時代に向けて、当社の優れた技術力は、大いに社会に貢献していく事でしょう。 NEC トーキン圧電事業のコアコンピタンス 3 NEC トーキンの圧電デバイス 一口に圧電デバイスといっても、その応用範囲は広く、とても全貌を語り尽くす事はできません。 そこで、ここでは 2 つの製品について、当社の取組みをご紹介しましょう。 ● 圧電アクチュエータ 超小型圧電アクチュエータ 圧電アクチュエータには、油圧や空気圧、電磁式など、他のタイプには真似のできない、優れた特徴がいくつも備 わっています。0.01 ミリ秒の応答性。0.01 ミクロンの精密な動き。低い消費電力。そして、1平方ミリあたり3キ ログラムの強い力。これらのほとんどは、他に比べて何桁も優る特性です。 アクチュエータとは 4 当社では、全面電極という技術を使って、圧電セラミックスの薄い層と、電極層を交互に 200 ∼ 300 層ほど積 層した、積層圧電アクチュエータを提供しています。全面電極は、その名の通り、電極がセラミックス層全体に一様 に広がるシンプルな構造です。この構造では、まず圧電セラミックスと電極の積層体を、大きな固まりとして作り、後 から必要なサイズや形に切り分け、最後に電極をつけてアクチュエータに仕上げられます。そのため、他では真似の できない、0.6 ミリ角の小さな素子や、円柱形や円筒形、リング型などにも加工が可能。限られた組み込みスペース や、特殊な形状が要求されるアプリケーションにも幅広く対応できるのです。 積層 PA の製造工程 圧電アクチュエータは、従来、半導体製造や産業装置などの精密制御に広く用いられてきました。一方、近年は、 民生用途として、デジタルカメラやカメラ付き携帯での応用が、急速に拡大しています。高機能を追求するデジタル カメラでは、より精細な画像を求めて画素数が増加し、小型で10倍以上のズーム機能を持たせた製品も多く登場し ています。そのため、手ぶれ補正機能が、デジタルカメラの必須の機能となりつつあります。圧電アクチュエータは この手ぶれ補正の他、オートフォーカス用のレンズの駆動や、ズーム機能など、色々なところで利用されています。 消費電力が低く、コンパクトで、高速かつ精密な動作ができる圧電アクチュエータは、従来用途に留まらず、新た な用途を獲得してより一層の利用拡大が進むでしょう。 5
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