欧州の日系部品メーカー:フランスとポーランドで、生産体制

2016/4/5
欧州の日系部品メーカ ー:フラ ン スとポーラ ン ドで、生産体制拡充 ­ マークラ イ ン ズ 自動車産業ポータル
欧州の日系部品メーカー:フランスとポーランドで、生産体制拡充
英国では生産体制縮小、ドイツでは現地メーカーと開発提携
2009.4.24 No.771
ポーランドにトヨタ紡織が新拠点、日本電産とニフコも生産体制を拡充
住友電工とフジクラが、ワイヤーハーネス生産を中欧から北アフリカに移管
英国で、デンソーが子会社解散、ミネベアと武蔵精密工業も工場閉鎖
フランスで、イビデンがDPF工場を増設、NTNとトヨタ紡織が現地工場を買収
ドイツで、住友金属と日本ピストンリングが、現地企業と開発提携
オランダ/オーストリア/スイス/スウェーデンでの動向
要 約
日本の自動車メーカーは、2008年後半からの自動車市場縮小に対応し、欧州各国でも生産調整を行っている。ト
ヨタと日産は英国工場でシフトを削減し、ホンダは英国工場の稼動を4ヶ月停止中。スズキは、ロシア工場着工を延
期した。
日系自動車メーカーと欧州自動車メーカーの減産に対し、日系部品メーカーも人員削減や工場閉鎖等を実施して
いる。ワイヤーハーネスでは、コスト削減のため、中欧から北アフリカへの生産移管が始まっている。
以下は、欧州における、日系自動車部品メーカーの最近動向の概要である (収録対象は、2009年4月中旬までの
約1年間)。英国では、工場閉鎖を含めて生産体制縮小の動きが多く、フランスでは現地工場買収を含めて生産体制
拡充の動きが多い。ドイツでは、住友金属と日本ピストンリングが、現地企業と開発提携した。
日本の自動車メーカー:欧州での減産と計画延期 (2008~2009年)
英国
中型車 Avensis 等を生産。08年 7月から 1~2割減産。08年 9月から 5ヶ月間、2直稼働を 1直に変
工場
更。年産能力は 28.5万台だが、08年生産は 21.3万台 (07年比 20% 減)。
ポー
ランド Avensis 向けディーゼルエンジンを生産。08年 9月から 2ヶ月半、2直稼働を 1直に変更。
工場
ト
フラ
ヨ
ンス
タ
工場
トルコ
工場
ロシ
ア工
場
2009年 1~3月に、Yaris (日本名 Vitz) を約 20% 減産。
小型車の Auris と Verso を生産。08年夏から 1~2割減産。
中型車 Camry を生産。09年 3~4月に 6日間の生産調整を実施。年産能力は 2万台だが、08年生
産は 0.6万台。
Qashqai (日本名 Dualis) 等の SUV を生産する第 1ラインを、08年 6月に 2直稼働から 3直に変更
英国
工場
したが、09年 1~3月には 2直に変更、Micra (日本名 March) や Note 等の小型車を生産する第 2ラ
インも 2直から 1直に変更。
日
2009年 4月以降は、両ラインとも 2直稼動とする。年産能力は 50万台 (3直) だが、08年生産は 38.7
産
万台 (07年比 9.3%増)。
スペ
イン
2008年生産は、07年比 29.5% 減の 15.7万台。
工場
ホ
英国
小型車の Civic と SUV の CR-V を生産。09年 2月から 4ヶ月間稼動を停止し、約 4.8万台減産す
工場
る。Jazz (日本名 Fit) の現地生産は、09年 6月に予定通りにプレ生産を開始し、10月から量産する。
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ン
ダ
トルコ 2008年 9月に発表した増産計画を (09年半ばまでに 5万台 → 6.3万台)、先送りする (08年12月発
工場
表)。
ハン
ス
ガリ
2008年12月に、ハンガリー工場 Magyar Suzuki の 08年生産目標を 30万台から 28.2万台に下方
ー工
修正した。
場
ズ
キ
Grand Vitara (日本名 Escudo) と SX4 を生産する新工場稼動を09年秋に予定していたが (年産 3
ロシ
万台の計画で、伊藤忠商事と折半出資)、ロシア市場の需要低迷と建設予定地の地盤の悪さのため、
ア工
08年秋の着工を延期した。
場
2009年 4月には、今後 1年で、市場環境や地盤問題を見極めて、工場建設計画を再検討する方針
を固めたとされ、計画続行の場合も、稼動は 2011年以降となる見込み。
資料:各社広報資料, 各紙報道
ポーランドにトヨタ紡織が新拠点、日本電産とニフコも生産体制を拡充
ポーランドでは、トヨタ紡織がシートフレームとカバーの生産拠点を新設する (アイシン精機も出資)。また、日本電
産が車載モーターの第 2工場を建設し、ニフコも樹脂部品の生産能力を 2倍強に拡充する。
チェコでは、日本化薬がエアバッグやシートベルト・プリテンショナー用のガス発生装置・点火装置の生産体制を縮
小した。
欧州の日系自動車部品メーカー:ポーランドとチェコでの最近動向
(2009年 4月中旬までの約 1年を中心とする動向で、配列は企業名 50音順)
■トヨタ紡織とアイシン精機:ポーランドで、2011年からシートフレームとカバーを生産
トヨタ紡織とアイシン精機は、08年 9月、シート部品を生産する TBAI Poland Sp.z.o.o. を、ポーランド南西部の
ドルヌィ・シロンスク (Dolonoslaskie) 県に設立すると発表した。両社の欧州地域統括会社の Toyota Boshoku
Europe N.V. が 70%、Aisin Europe S.A. が 30% 出資し、資本金は約 42億円。2011年から、シートフレームとシ
ートカバーを年間 30万台分生産し、トヨタ紡織のロシア工場やフランス工場に供給する。用地を含めた投資額は
約 49億円。
■日鍛バルブ:ポーランド工場に、エンジンバルブの低コスト生産ラインを導入
日鍛バルブは、山陽工場で開発したエンジンバルブの低コスト生産ラインを、09年から海外 6拠点に水平展開す
る。ポーランドでは、米国 Eaton Corp. との合弁会社 Nittan Euro Tech Sp.z o.o. (日鍛 51%、Eaton 49% 出資)
の工場に導入する計画。鋼材を最終製品に近い形状に鍛造して余肉の除去作業を不要にしたり、各製品を均等
に高精度に熱処理する等の、工程改良を施したラインで、製造コストの約 20% 低減が可能で、設備投資も従来の
半分弱の数億円で済む見込み。
■日本化薬:チェコのガス発生装置・点火装置工場の人員を 20% 削減
日本化薬は、09年 1月までに、チェコの統括会社 Nippon Kayaku CZ, s.r.o. の子会社 Indet Safety Systems
a.s. (ISS) の人員を 110人削減する (全従業員の 20%)。ISS は、エアバッグやシートベルト・プリテンショナー用の
ガス発生装置や点火装置のスクイブを生産し、火薬専用工場も有するが、生産数量が大幅に減少している。
■日本電産:車載モーターを生産するポーランド第 2工場を建設、2008年11月に稼動
日本電産は08年 4月、フランスの子会社 Nidec Motors & Actuators が、車載モーターを生産するポーランド第
2工場を建設すると発表した。既存のポーランド工場が手狭になったためで、新工場は Krakow 市郊外の
Niepolomice 市に用地を確保し、延床面積 11,170㎡ の第 1期棟を建設し、08年11月に生産を開始する計画。総
投資額は約 2,000万Euro。新工場建設により、09年度にはポーランドで 700万台分の車載モーターを生産し、売
上高 7,000万Euro とする計画 (いずれも 07年度のほぼ 2倍)。
■ニフコ:ポーランド工場の生産能力を、2倍強に拡充
ニフコは、ポーランドの Nifco Poland sp.z o.o. に、09年稼動予定で床面積 3,000㎡ 強の第 2工場棟を新設
し、さらに 2年後を目処に同規模の第 3工場も着工する (08年 4月発表)。樹脂成形機も現在の 11台から、09年
末には 25台に増やし、生産能力を 2倍強とする。従来はプラスチックファスナーを手掛けてきたが、飲み物用樹脂
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ホルダーの量産も開始する。07年に 2億円弱だった売上高を、2012年には 26億円に引き上げる計画。
資料:各社広報資料, 各紙報道
住友電工とフジクラが、ワイヤーハーネス生産を中欧から北アフリカに移管
ロシアでは、横浜ゴムが乗用車用タイヤの生産拠点を新設する (日系タイヤメーカー初)。
また、EU加盟した中欧での人件費上昇を背景に、住友電工が中欧 6ヶ国からエジプトに、フジクラがルーマニアか
らモロッコに、ワイヤーハーネス生産を移管する。
欧州の日系自動車部品メーカー:ロシアと北アフリカでの最近動向
(2009年 4月中旬までの約 1年を中心とする動向で、配列は企業名 50音順)
■住友電気工業と住友電装:ワイヤーハーネス生産を、中欧からエジプトに移管
住友電気工業と住友電装の英国合弁会社 Sumitomo Electric Wiring Systems (Europe) Limited は、エジプト
のスエズ運河北端に位置する Port Said 市に、欧州地域向けワイヤーハーネスを生産する SE Wiring Systems
Egypt S.A.E. を設立した (08年 9月発表)。09年 8月に生産を開始予定で、2010年の売上高目標は約 50億円。
住友電工グループ初の、エジプトにおける自動車用ワイヤーハーネス生産拠点。
住友電気工業は、ポーランド, スロバキア, ルーマニア等の中欧 6ヶ国に所在する 14 のワイヤーハーネス製造
拠点を、09年度から順次閉鎖する (08年 9月発表)。中欧諸国が EU 加盟し、人件費が上昇したため。低賃金の
チュニジア, エジプト, モロッコ等の北アフリカやウクライナに新工場を建設、生産移管する計画。
■フジクラ:ルーマニアのワイヤーハーネス生産を、モロッコに移管
フジクラは、09年度上期中に、モロッコでレンタル工場を利用してワイヤーハーネス工場を開設し、ルーマニアか
ら生産を移管する。欧州の生産拠点として、ルーマニアには 4工場があるが、要員採用が難しく、賃金上昇も激し
い都市部の拠点を閉鎖する。
■横浜ゴム:ロシアで、市販用の乗用車用タイヤを2011年から生産
横浜ゴムは、08年12月、ロシアにタイヤ工場を建設すると発表した (日系タイヤメーカー初)。モスクワ南方
450kmの Lipetsk 特別経済区に年産能力 140万本の工場を建設し、市販用乗用車用タイヤを2011年から生産す
る。設備投資金額は約 110億円。同社は05年 4月にモスクワに販売会社を設立し、高性能乗用車用タイヤを中心
に拡販するとともに、販売網の整備/拡大を進めてきた。
資料:各社広報資料, 各紙報道
英国で、デンソーが子会社解散、ミネベアと武蔵精密工業も工場閉鎖
英国では工場休止や閉鎖が多く、デンソーがオルタネーターやスターターの生産子会社を解散、ミネベアが小径
ボールベアリング工場、武蔵精密工業がミッション・足回り部品工場を閉鎖する。
エイチワンと八千代工業は、ホンダ工場の 4ヶ月間休止を受け、プレス部品工場を 4ヶ月間休止中。
欧州の日系自動車部品メーカー:英国での最近動向
(2009年 4月中旬までの約 1年を中心とする動向で、配列は企業名 50音順)
■エイチワンと八千代工業:ホンダの英国工場休止に対応、プレス部品工場を 4ヶ月間休止
エイチワンと八千代工業が各 35%、ホンダが 30% 出資する英国のプレス部品工場 UYT Limited は、09年 2月
から 4ヶ月間、操業を停止する。ホンダの英国工場が09年 2~6月の 4ヶ月間、休止するため。UYT Limited の従
業員は一時帰休とする。
■デンソー:英国のオルタネーター・スターター生産事業を、イタリアに集約
デンソーは、08年11月、オルタネーターやスターターを生産し、赤字経営が10年続いてきた英国 Denso
Manufacturing Midlands Ltd. の解散を決定した。イタリアの Denso Manufacturing Italia S.p.A に生産・販売を
集約して、欧州での電気機器事業を効率化する。
■ファルテック:日産の英国 Sunderland 工場との同期生産を開始
ファルテックは、英国でウインドウモールなど外装樹脂部品を成形から塗装まで一貫生産している Hashimoto
Limited に、日本の主力工場で実施している生産改善活動を導入し、日産の英国 Sunderland 工場との同期生産
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を09年 1月に開始する。工程内搬送の改善などを英国に移植し、07年に 1.7% だった営業利益率を、2012年を目
処に 5% に引き上げる計画。
■ミネベア:英国の小径ボールベアリング工場を閉鎖
ミネベアは、09年 1月、英国子会社 NMB-Minebea UK Ltd. の Skegness 工場を閉鎖すると発表した。小径ボ
ールベアリングを製造していたが、欧州市場の縮小により、生産能力の維持が困難になったため。労働組合との
90日間の協議を経て、工場閉鎖の手続きを進める。ロッドエンドおよびスフェリカルベアリングを生産する Lincoln
工場の操業は継続する。
■武蔵精密工業:英国のミッション・足回り部品工場を閉鎖し、ハンガリーに生産集約
武蔵精密工業は、英国でトランスミッション部品や足回り部品を生産する Musashi Auto Parts UK Limited を
09年上期中に閉鎖し、Musashi Hungary Manufacturing を中心に生産を集約する (09年 2月発表)。ホンダが、
09年 2月から英国工場を 4ヶ月間休止する影響もあるが、英国事業そのものの収益性が低いため。今後は、ハン
ガリーや国内工場から、ホンダの英国工場に供給する。
資料:各社広報資料, 各紙報道
フランスで、イビデンがDPF工場を増設、NTNとトヨタ紡織が現地工場を買収
フランスでは、イビデンがDPF工場を増設、NTN とトヨタ紡織が現地メーカーの工場を買収した。トヨタ紡織は、買
収した工場を、EU 域内における初のシート組立拠点として、2010年頃に稼動させる。この他、ブリヂストンが高性能
タイヤを増産する。
スペインでは、オムロンが現地企業と合弁で先進運転支援システムを開発・生産する。KYB はショックアブソーバ
ーやサスペンション工場の人員を 25% 削減する。
欧州の日系自動車部品メーカー:フランスとスペインでの最近動向
(2009年 4月中旬までの約 1年を中心とする動向で、配列は企業名 50音順)
■イビデン:フランスで、DPF 新工場建設用地を取得
イビデンのフランス生産子会社 Ibiden DPF France S.A.S. は、欧州の排出ガス規制強化に伴う需要拡大に応
えるため、ディーゼルエンジン用粒子状物質減少装置 (DPF) の新工場建設用地を取得する。敷地面積は既存工
場の 1.6倍の約 9万㎡。現工場の年産能力は 60万個で、09年 1月に 90万個とする予定だが、新工場は現工場
を上回る規模にすることも可能。新工場の建設時期や生産能力は今後決定する。(08年 6月発表)
■NTN:フランスの鍛造メーカー Setforge グループの工場を買収
NTN の等速ジョイント製造子会社 NTN Transmissions Europe (NTE) は、08年 6月、フランスの鍛造メーカー
Setforge Group の Crezancy 工場 (パリの東約 100km) を買収し、新会社 NTN Transmissions Europe
Crezancy とした。NTE は鍛造品の約半分を 同工場から調達しており、07年の同工場の NTE 向け売上高は約
20億円。買収により現地調達を拡大するほか、製品開発等を迅速に進めて、高品質・低コスト化を目指す。
■トヨタ紡織:Faurecia のシート工場を買収、2010年からフランスでシート生産を開始
トヨタ紡織は08年 8月、フランス Somain 市に Toyota Boshoku Somain S.A.S. を設立した。現地シートメーカー
Faurecia の Sieto 工場を買い取り、EU 域内における、トヨタ紡織初のシート組立拠点として、2010年頃に稼動さ
せる。買収費用を含む投資額は約 39億円。トヨタが現地生産する次期型 Yaris (日本名 Vitz) に供給する他、欧
州メーカーからの受注も拡大する計画。
■ブリヂストン:フランスで、日産 1,000本の高性能タイヤ生産能力を追加
ブリヂストンは09年に、Bridgestone Europe のフランス Bethune 工場の乗用車用タイヤ生産能力を増強する。
08年 9月時点の日産能力は 25,000本だが、1日あたり 1,000本の高付加価値タイヤ (高性能タイヤや冬用タイヤ)
の生産を追加する。投資額は約 50億円。西欧を中心に、一部東欧にも出荷する。
■スペイン
■オムロン:スペイン社 Ficosa と、先進運転支援システムで合弁
オムロンは、08年 7月、スペインの自動車システム・部品メーカー Ficosa International SA と、先進運転支援シ
ステムを開発/生産/販売する合弁会社設立を基本合意した。08年10月に折半出資で新会社を設立し、ドイツ
Weissensberg に本社、スペイン Barcelona に子会社を置く予定。オムロンの車載用電子部品やセンサー等の技
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術と、Ficosa の車載システムや部品組み込みのノウハウを融合し、車線逸脱警報、前方障害物検知、後側方死角
検知、標識認識、後方監視、駐車支援システム等を開発する計画。
■KYB:スペイン工場で、2009年度上期までに従業員 200人を削減
KYB は、海外拠点の主力のひとつで、ショックアブソーバーやサスペンションを生産する、スペイン Navarra 州
の KYB Suspensions Europe, S.A. で、800人いる従業員を、08年度下期と 09年度上期に約 100人ずつ削減し
て、採算を改善する。人員整理に伴う退職引当金は 800万Euro (約 10億円) の見込み。
資料:各社広報資料, 各紙報道
ドイツで、住友金属と日本ピストンリングが、現地企業と開発提携
ドイツでは、JSR が低燃費タイヤ素材の溶液重合スチレンブタジエンゴムの委託生産を開始する。また、住友金属
工業が Voith Turbo とトッラクとバス用の補助ブレーキ装置の開発/生産で合弁、日本ピストンリングが
Kolbenschmidt とエンジン部品の共同開発を開始する。
■欧州の日系自動車部品メーカー:ドイツでの動向
(2009年 4月中旬までの約 1年を中心とする動向で、配列は企業名 50音順)
■KYB:世界 4極で原材料を集中購買、欧州ではドイツの統括会社に調達機能を集約
KYB は、各生産拠点が独自に行っていた原材料の調達体制を見直し、日本・米州・欧州・アジアの 4極で、それ
ぞれ集中購買を進める (08年 8月発表)。増量効果で原価を引き下げ、原材料高騰の一部を吸収する狙い。原材
料の組成等を 4極で均質化するため、各生産拠点に評価・実験設備を導入する。欧州では、ドイツにある欧州統
括会社 KYB Europe に、スペイン 2工場とチェコ工場の調達機能を集約する。
■JSR:ドイツで、低燃費タイヤ向け S-SBR の委託生産を開始
JSR はドイツで、S-SBR (溶液重合スチレンブタジエンゴム) の委託生産を09年 3月に開始する。委託先のスイス
Dow Europe が、ドイツ Schkopau 工場に新ラインを完成したことに伴い、07年 6月の契約に従い、年産能力の
50% に相当する 30,000t の引取権を実施する。S-SBR は低燃費タイヤ向けで、排出ガス規制強化が進む欧州
で、需要拡大が見込まれている。
■住友金属工業:ドイツ Voith Turbo と、トラック・バス用補助ブレーキ装置で合弁
住友金属工業は、08年 6月、ドイツの輸送機械メーカー Voith Turbo と合弁で、トラックとバス用補助ブレーキ
装置を開発/生産する Voith Turbo SMI Technologies, GmbH & Co. KG (ドイツ Heidenheim 市) を設立した
(住友金属の出資は 49%)。住友金属独自の永久磁石式リターダーの技術を応用して、小型・軽量化した新型リタ
ーダーを開発し、欧州の中型トラック・バスメーカー向け販売に本格参入する計画。
■タカタ:欧米で、今後 2年間で 2,500人を削減、拠点統廃合も検討
タカタは欧米拠点で、2008年12月までに従業員を 3,600人削減した。今後 2年間で、さらに 2,500人を削減する
計画で、そのためのリストラ費用を 100億円程度、リストラ効果を 200億円程度と見込んでいる。欧州には、ドイツ,
チェコ, ポーランド, ルーマニア等にシートベルトやエアバッグ生産拠点があり、その統廃合も検討する。
■日本ピストンリング:ドイツ Kolbenschmidt と、エンジン部品を共同開発
日本ピストンリングは、2010年を目処に、ドイツの Kolbenschmidt とエンジン部品の共同開発を開始する。実務
はドイツで行い、性能評価は Kolbenschmidt の拠点を活用する。両社は 07年に開発販売で業務提携したが、現
在はピストンとピストンリングをセットで受注する販売面での協力にとどまっている。今後はピストン設計を共同で進
め、欧州の乗用車メーカーのほか、トラックメーカーのディーゼルエンジンにも採用拡大を目指す。
資料:各社広報資料, 各紙報道
オランダ/オーストリア/スイス/スウェーデンでの動向
オランダでは、積水化学が合わせガラス用中間膜の原料樹脂生産を倍増する。オーストリアでは、日本板硝子が
子会社 Pilkington のガラス加工工場を閉鎖した。日本板硝子は、欧州全域でも Pilkington 拠点を再構築中。
スイスでは、中央発條が Mubea Engineering と合弁のばね開発会社を清算する。スウェーデンでは、鈴木金属工
業が弁ばね用ワイヤー大手の Haldex を買収する。
■欧州の日系自動車部品メーカー:オランダ/オーストリア/スイス/スウェーデンでの動向
(2009年 4月中旬までの約 1年を中心とする動向で、配列は企業名 50音順)
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欧州の日系部品メーカ ー:フラ ン スとポーラ ン ドで、生産体制拡充 ­ マークラ イ ン ズ 自動車産業ポータル
■鈴木金属工業:スウェーデンの弁ばね用ワイヤー大手の Haldex を買収し、グローバル展開
新日鉄グループの鈴木金属工業は、08年12月、弁ばね用ワイヤー世界最大手の Haldex Garphyttan AB (スウ
ェーデン) を買収すると発表した。買収予定額は約 90億円で、09年 4~6月頃に手続きを完了し、完全子会社化
する。スウェーデン、米国、中国に生産拠点を有する同社を買収することにより、グローバルな事業展開、技術力・
競争力の向上を図り、世界シェアを約 15% から 40% 強に拡大する計画。
■積水化学:オランダで、合わせガラス用中間膜の原料樹脂生産を倍増
積水化学は、オランダの Sekisui S-LEC BV に約 100億円を投じ、合わせガラス用中間膜の原料樹脂の第 2ラ
インを増設する。2010年 7月に稼動予定で、フロントガラス用中間膜原料のポリビニルブチラールを年間 1,500万
台分生産し (第 1ラインは 1,200万台分)、オランダ/北米/アジアの中間膜工場に供給する。自動車向け中間膜の
世界シェアは 07年度に 42% だが (同社調べ)、2010年度には 44% を目指す。
■中央発條:ドイツ Mubea Engineering との、自動車用ばね共同研究会社を清算
中央発條は、ドイツの自動車用ばね大手 Mubea Engineering と折半出資で、1999年に設立したスイスの
Mubea Chuo S.A. を清算すると発表した (08年 5月)。ばねの共同研究等を手掛け、欧州市場を開拓する計画だ
ったが、成果が乏しいため、合弁を解消し、1年以内に清算する。
■日本板硝子:子会社 Pilkington のオーストリア工場を閉鎖、欧州全域の体制も再構築
日本板硝子は、欧米を中心に人員と設備のリストラを進める計画で、対策費総額は 250億円の見込み (09年 4
月発表)。欧州では、完全子会社 Pilkington Group のオーストリア Eisenerz 工場 (自動車用ガラス加工) を閉鎖
する (08年11月発表)。自動車用ガラス専用フロート釜であるフィンランド Lahti 工場は、生産を無期限停止する。
ドイツ Braunschweig 工場の加工ラインと英国 Kings Norton 工場の合わせガラス生産ラインは閉鎖し、フィンラン
ド Ylojarvi 工場, スペイン Sagunto 工場, スウェーデン Orja (ウーリヤ) 工場, イタリア San Salvo 工場も生産能
力を削減する。
資料:各社広報資料, 各紙報道
出典:マークラインズ
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