同期整流式の 60V 大電流降圧 LED ドライバ デザインノート508 Hua (Walker) Bai はじめに 「大電力 LED」という用語の意味は急速に進化していま す。350mA の LED は、数年前なら容易に「大電力」と 認められましたが、現在の 20A LED や 40A レーザー・ ダイオードとは比較になりません。大電力 LED は、今や DLP プロジェクタ、手術用機器、舞台照明、自動車照明 など、従来は高輝度の電球がその役割を果たしていたア プリケーションに使用されています。これらのアプリケー ションの光出力要件を満たすため、大電力 LED は、多く の場合、直列で使用されます。問題は、数本の直列接続 LED では、高電圧の LEDドライバ回路が必要になること です。LEDドライバの設計は、PWM 調光信号に対する LED 電流の高速応答が必要なアプリケーションによってさ らに複雑化しています。 1)出力電圧レギュレーション・ループにより、固定出力電 圧動作が可能になります。これを使用して、開放 LED 保護機能またはバッテリ・チャージャの充電終了機能を 実現することができます。 2)2 番目の電流レギュレーション・ループを使用すると、 入力電流制限値を設定できます。 3)入力電圧レギュレーション・ループを使用すると、太 陽電池駆動アプリケーションでの最大出力追従制御 (MPPT)機能を実現できます。 効率を高めるために最適化された 48V 入力 /35V 出力の 10A LED ドライバ 48V 電源から 350W の出力電力を供給して最大 7 本の LED を直列に駆動する設計回路を図 1 に示します。こ ® LT 3763 は、20A までの LED 電流を正確に安定化する の大電力レベルでは電力損失が主な懸案事項なので、高 目的で設計された 60V 同期整流式降圧 DC/DC コント 効率がきわめて重要です。 効率を 1% 改善すれば、そ ローラで、高速 PWM 調光機能を備えています。このデ のたびに損失を 3.5W 減らすことができます。 全電力損 バイスは先行品種である LT3743 の高電圧版です。 以 失の要求が 7W より小さい場合、これはかなりの数値で 下に示す 3 つの付加的なレギュレーション・ループにより、 す。この回路は全負荷時に 98.2% の効率で動作するよ う最適化されています。 図 2 は、LED 電流が 3A より多 応用できるアプリケーションが他にもいくつかあります。 いとき効率が 98% に達していることと、約 6A になると 98.4% でピークになることを示しています。 C1-C2 2.2µF 100V 84.5k 15.4k IVINP IVINN EN/UVLO VREF 2.2µF LT3763 45.3k VIN TG 220nF BOOST Q1 Q2 L1 6.0µH SW 5mΩ C4-C9 10µF 50V 47.5k 22µF Q3 Q4 BG GND CTRL1 SENSE+ FBIN SENSE– IVINMON 200k SS VC 5k 4.7nF Q1-Q4: RJK0851DPB L1: HC2-6RO C1-C2: GRM32ER72A225K C3: GRM31CR72A105K C4-C9: UMK325C7106MM 図 1.48V 入力、35V 出力、10A 11/12/508 97 96 95 931k FAULT FB 10nF 33nF 98 PWMOUT ISMON PWM SYNC RT 99 VOUT 35V, 10A INTVCC CTRL2 50k L、LT、LTC、LTM、Linear Technology および Linear のロゴは、リニア テクノロジー社の登録商標です。その他すべての商標の所有権は、それぞれの 所有者に帰属します。 C3 1µF EFFICIENCY (%) VIN 48V TYP 30.9k DN508 F01 94 1 2 3 5 7 4 6 LED CURRENT (A) 8 9 10 DN508 F02 図 2.48V 入力 /35V 出力 回路の効率 電圧が高いときは、MOSFET およびインダクタのスイッ チング損失の方が導通損失より重要です。スイッチング 損失を最小限に抑えながら小型のソリューション・サイズ を維持するため、スイッチング周波数は 200kHz に設定 されています。 最大限の負荷で動作させると、この回路 のホット・スポットが上側 MOSFET に発生します。ホット・ スポットは温度上昇が 50℃に達しないうちに安定状態に なりますが、これは MOSFET にとって非常に好適な範囲 です。 最高速 PWM 調光機能を備えた 36V 入力 /20V 出力の 10A LED ドライバ PWM による LED 調光方式は、大電力、高性能の照明 アプリケーションでは標準の調光方式です。DLP プロジェ クタなどの画像生成アプリケーションでは、PWM 信号に 対する LED 電流の高速応答が重要です。 高速の LED PWM 調光に合わせて最適化されたアプリケーションでの LT3763 を図 3 に示します。 PWM 信号に対する LED 電流の高速応答を実現するた め、LT3763 には革新的な機能が多数盛り込まれていま す。入力電圧が決まっている場合、インダクタンスを小さ くすればするほどインダクタ電流の増加速度が高くなり、 より高速な LED 電流応答につながります。この回路では、 PWM 調光信号がオンしたとき、LED 電流が 0 から最大 に達するまでに要する時間は、わずか数マイクロ秒です。 PWM 調光アプリケーションの性能を図 4 に示します。最 大負荷時の効率は 97% です。 VIN 36V TYP C3 1µF IVINP IVINN EN/UVLO VREF LT3763 45.3k VIN TG 220nF BOOST 47.5k まとめ LT3763 は、最新の大電力 LED を駆動するために使用 できる 60V の同期整流式、大電流降圧 LEDドライバ・ コントローラであり、必要に応じて高速の PWM 調光応 答が可能です。LT3763 は、3 つの付加的な電圧および 電流レギュレーション・ループがあり、その他にもいくつか の強力な機能を備えているので、そのアプリケーションは LEDドライバだけにとどまりません。 L1 2.8µH 5mΩ PWM 5V/DIV VOUT = 5V/DIV VOUT 20V, 10A C4-C9 22µF 25V SENSE+ FBIN 20µs/DIV PWMOUT ISMON PWM 931k FAULT SYNC RT 100k IL1 = 5A/DIV 33nF SENSE– IVINMON FB SS VC 10nF 30.9k 4.7nF VLED– = 5V/DIV Q3 Q4 GND CTRL1 LT3763 の入力電圧レギュレーション・ループでは、出力 電流を調整することにより、パネルの電圧を最大電力点 の範囲内に維持します。 定電流、定電圧(CCCV)動作 とC/10 機能により、 デバイスはそのままの状態でバッテリ・ チャージャ・アプリケーションに適合します。 22µF BG 50k すべての太陽電池パネルには、パネル照度、電圧、パネ ルの出力電流に依存する最大出力電力点があります。一 般に、ピーク電力は、パネルの電圧がある狭い範囲から 外れないようにする必要がある場合、 出力電流を減少して、 パネルの電圧をこの範囲内に維持することで得られます。 これは最大出力追従制御(MPPT)と呼ばれます。 Q1 Q2 SW INTVCC CTRL2 LT3763 は、その出力電流を調整することによって、そ の入力電圧を安定化することもできます。これは、太陽 電池駆動のバッテリ・チャージャ内など、ピーク入力電力 に追従する必要があるアプリケーションで役立ちます。 C1-C2 2.2µF 100V 84.5k 15.4k 太陽電池駆動のバッテリ・チャージャ Q1-Q4: BSC100N06LS3 L1: WE7443551280 C1-C2: GRM32ER72A225K C3: GRM31CR72A105K C4-C9: GRM32ER71E226K 49.9k DN508 F04 図 4.図 3 の回路の PWM 調光性能 DN508 F03 図 3.36V 入力、20V 出力、10A データシートのダウンロード:http://www.linear-tech.co.jp リニアテクノロジー株式会社 102-0094 東京都千代田区紀尾井町 3-6 紀尾井町パークビル 8F TEL(03)5226-7291 FAX(03)5226-0268 http://www.linear-tech.co.jp dn508f LT/AP 1112 • PRINTED IN JAPAN © LINEAR TECHNOLOGY CORPORATION 2012
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