流行関心と情報メディアへの接触が 美容室選択に与える影響

流行関心と情報メディアへの接触が
美容室選択に与える影響
筑波大学 第三学群 社会工学類
平成15年度 卒業研究論文
指導教官:石井 健一
筑波大学 第三学群 社会工学類
社会経済専攻
200001023
高橋 拓也
1
流行関心と情報メディアへの接触が美容室選択に与える影響
<目次>
第1章
研究目的
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
1.1 はじめに
1.2 研究目的
1.3 流行について
1.3.1
流行の種類と分類
1.3.2
流行の受容・伝播と媒介者
1.3.3
流行研究の歴史
1.3.4
ファッションとヘアスタイルの研究における2つの視点
1.4 仮説の設定
第2章
研究方法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
2.1 調査方法
2.1.1
質問紙によるアンケート調査
2.1.2
容姿観察調査
第3章
結果および考察
・・・・・・・・・・・・・・・・・14
3.1 流行関心の分析
3.1.1
人のタイプを分類する尺度
3.1.2
容姿観察調査による尺度
3.2 利用者から見た美容室の分類
3.3 美容室についての分析
3.2.1
美容室のタイプと料金設定との関係
3.2.2
美容室のタイプと所在地との関係
3.2.3
美容室のタイプと設備との関係
3.4 流行関心と美容室選択の関係
3.5 情報メディアへの接触と美容室選択の関係
3.5.1
情報源と美容室選択との関係
3.5.2
情報内容と美容室選択との関係
3.5.3
美容室選択における最重要情報とは
第4章
結論
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
4.1 本研究における結論と今後の展望
2
第1章
1.1
研究目的
はじめに
1999年ごろに「カリスマ美容師」という言葉が世間を飛び交った。空前の美容師ブ
ームである。カリスマ美容師の手にかかれば、誰もが素敵な女性に変身できると評判にな
り、テレビや雑誌に数多く取り上げられ、話題を集めた。そして、そのブームに比例する
ようにして美容業界や美容師への世間の見方が変わり始めた.以前は、「キツイ、汚い、給
料が安い」と3K 職の代表格でもあった美容師という職業が、今や子供達の憧れの職業と
なった。これらの現象は、美容室に対して「ただ髪を切ってもらう所」から「おしゃれな
で綺麗に、格好良くしてもらう所」といった人々の意識の変化をもたらした。更には美容
室もまた、施術に対して付加価値を付けるべく様々な形で新たなサービスを提供し、更な
る顧客獲得に向けてその美容室独自のスタイルを確立していこうとしている。このように
して人々や美容室自体の意識の変化は、近年の美容室による顧客獲得競争に火をつけるこ
ととなったのである。それとともに、多くの顧客を獲得する為に、あらゆる形で宣伝を展
開していくようになった。特に雑誌でも取り上げられるような有名な美容室が数多く並び、
通称「美容室通り」と呼ばれる通りまで存在する渋谷、原宿、青山周辺では、カリスマ美
容師ブームが過ぎ去った現在もなお、激しい顧客獲得競争が行われている。
美容業界は経済の善し悪しにさほど影響を受けないものである。なぜなら、第一に髪は
伸びたら切らなければならない。また、社会人として生きる上で自分の身だしなみは最低
限度整えられた状態を保っておかなければならないだろう。これは特に中高年層の女性で、
社会の規範を重視する人々に多くあてはまる。さらにこうした社会規範を重視していなく
とも、特に若年層の女性については、髪型はファッションであり、自分を表現する手段の
一つであると考える人も多い。いずれの場合も、美容室というものは日々の生活の中で必
ず利用しなければならないものであるといえるだろう。
しかし、美容室を利用することは一つの消費行動であることは言うまでもなく、施述し
てもらう代わりに代金を支払っている以上、消費者は自分の要求を満たしている美容室を
選ぶであろう。また、景気が悪くなれば技術はそこそこであっても価格の安い美容室を選
び、逆によくなれば多少値が張っても技術のある美容室を選ぶかもしれない。このように
経済に幾分影響されることも考えられる。
3
1.2
研究目的
では、現在不景気と言われている中で、人々はどのような理由から自分の利用する美容
室を決定するのだろうか。また、美容室を選択するにあたりその理由となった情報はどう
いったメディアから得たものなのか。それらを明らかにすることにより、これから美容室
がどのような宣伝方法で、さらにどういった宣伝内容や情報を発信することでより多くの
顧客を獲得することができるのだろうかと考えた。これらのことを明らかにし,最適な宣
伝方法とその内容を提案することが、本研究の最大の目的とする。
ここで、美容室と一言で言ってもそのタイプは様々であり、またお客さんのタイプも様々
である。先に述べたような渋谷などの有名な大きい美容室もあれば、地域に密着している
小さな美容室もある。さらに渋谷にも地域に密着した美容室があるだろうし、郊外にも大
型美容室は存在し得る。またお客さんのタイプでも、ファッションに関心を持ち流行に敏
感な人、逆に流行などは意識せず社会規範を重視しようとする人、ファッションにはなん
ら関心もない無頓着な人などが考えられる。そこで、「人のタイプ」と「美容室のタイプ」
をそれぞれ以下のように分類した。「人のタイプ」を分類する際には、飽戸弘(著)『コミュ
ニケーションの社会心理学』を参考にした。
人のタイプ
・ 「個性派流行型」 典型的なおしゃれタイプの女性。流行に敏感で、個性化志向であり、
規範や経済性は気にしない。主に 10 歳代∼20 歳代に多いと思われる。
・ 「流行同調型」
ファッションや流行には関心があるが、「個性派流行型」のようにど
んどん取り入れることもなく、社会の常識には反しない程度のファッションや髪型でい
ようとする女性。また、個性化志向というよりも同調志向の強い女性である。あらゆる
年齢層にいると思われる。
・ 「社会規範重視型」 仕事や年齢、性別などの社会規範を重視しようとする女性。流行
への関心よりも社会の常識に従った髪型であればいいとする女性。20 歳代後半∼40 歳
代の仕事をしている女性に多いと思われる。
・ 「身だしなみ重視型」 最低限の身だしなみとして髪を整えるために、定期的に決まっ
た美容室で決まった髪型にする女性。50 歳代以上の年配者に多いと思われる。
・ 「無頓着型」 髪型にはほとんど無頓着で関心がない女性。あらゆる年齢層にいると思
われる。
美容室のタイプ
・ 「流行発信型」 渋谷・原宿・青山などの有名店が並ぶ激戦区にあり、若年層を中心と
するファッションや流行に関心の高い女性を顧客ターゲットとし、新しいヘアスタイル
といった流行を発信する美容室。店の規模も大きく、値段も高めである。
・ 「高級感重視型」 高級感があり、値段は高い。中高年の美意識の高い女性や仕事をし
4
ている女性を顧客ターゲットとする美容室。
・ 「地域密着型」
渋谷などの流行中心地からは離れたところにあり,地域に密着した、
アットホームな雰囲気の規模の小さな美容室。幅広い層の女性が利用していると予想さ
れる。
これらを踏まえると、特に激しい顧客競争を展開している渋谷、原宿、青山周辺の美容
室は規模も大きく、さまざまな方法で宣伝を行っていると考えた。また、小さな美容室ま
で調査対象とすることは、あまりに細かな研究となってしまうので、本研究では「流行発
信型」の特徴を持つ美容室を主とした調査対象とする。また、調査対象の美容室は渋谷、
原宿、青山周辺に位置することから、若者を中心とする流行やファッションに関心の高い
人々をターゲットにしていると仮定した。また、若年層は美容室が多く載っているファッ
ション雑誌などの情報メディアを利用することが多いので,分析の上でもはっきりした結
果が期待できるということも考慮して,「個性派流行型」、
「流行同調型」の傾向にある人を
主とした調査対象とする。
よって、本研究における最大の目的は、流行やファッションに関心の高い人がどのよう
な情報源からどのような情報を得ることで、利用する美容室を選択するのかについて明ら
かにすることである。そして、その分析から最適な宣伝方法は何であるのかを提唱するこ
とである。
5
1.3
流行について
ここで、流行とはどのようなものであり、ファッションやヘアスタイルに関する人々の
行動にどのような影響を与えているかを見ていくことにする。
1.3.1
流行の種類と分類
まず、流行の様相は多種多様である。規模に関しては、日本や世界全土をおおうような
大流行もあれば、仲間内だけで流行するような小規模のものもある。速度に関しては、フ
ラフープなどのようなパッと広まりパッと消えてしまうようなものもあれば、パチンコな
どのように数年や数十年に渡って持続し定着してしまうものもある。また、髪型について
の流行でいえば、古くは男性の“断髪”、女性の“パーマネント・ウェーブ(パーマ)”な
どが定着したものである。
表 1-3-1
流行の内容
さらに流行の分類について考えると、最も常識的な分類はどの
項目
%
服飾
29.7
ような領域あるいは内容についての流行であるかにより分類す
髪型
17.1
る方法である。この点については様々な整理の仕方が考えられる
流行歌
15.7
が、斎藤定良は、表 1-3-1 のように、9つの具体的内容により分
賭博
11.0
類し、その頻度分布を明らかにした。この表より、一般的にファ
音楽
8.7
ッションや髪型などの領域での流行が最も多いことが分かる。
言葉
7.0
(斎藤,1957)また、流行の伝播の形式に関連した分類として、
スポーツ
3.6
池内一は、①「一般化型」流行の初期に上昇し、一定の水準に達
機械器具
3.5
すると、その水準を維持しつつ定着していくもの、②「減衰型」
人生観
2.0
急激な普及に続いて、すぐに急激な衰退が起こるものであり、世
その他
1.9
に「流行」といわれているものの典型的なもの、③「循環型」ほ
ぼ同一の様式が、ある程度周期的に普及と衰退を繰り返すもの、
〔斎藤(1957)〕
という3つに分類した。
(池内,1968)それぞれの例として、①
にはテレビやパソコン、さらに女性のパーマがあり、②には流行語や歌手による流行歌、
ヒット曲があり、③にはヨーヨー、コマ、スカートの長さ、流行色がある。
さらに、流行の「規模」や「速度」は時代の流れによって大きく変化していると考えら
れる。マスコミの浸透、経済水準の向上により、流行は大規模化しやすくなっている。一
方、価値観の多様化に伴う個性化への欲求の増大は、流行へのより高度な同調を促す反面、
流行の画一化に対する反発も強めることになっている。(飽戸,1992)
1.3.2
流行の受容・伝播と媒介者
流行を受容し、伝達していく媒体者である人々には、一貫した特徴があるかについて見
ていくために、次のような人の特質について触れることにする。
6
①
デモグラフィック要因:性、年齢、学歴、職業、社会的・経済的地位に関して、流行
を受容しやすいかどうかを一般化することは難しいが、「年配
層よりは若年層」、
「男性よりは女性」で受容しやすいことは一
般的な傾向として確認されている。
その他のデモグラフィックな特性に関しては、一貫した傾向は
見出されていない。その理由は、階層によって流行するものの
内容や形式が異なるためである。(Graham,1956)
②
心理的特性:「神経質な人」「趣味の多い人」「派手好みの人」は、そうでない人よりも
流行を受け入れやすいことは明らかにされている。(斎藤,1957)
③
社会的条件:流行、しかも大規模でかつ急速な流行は、社会的に不安定な時期に蔓延
しやすい。(斎藤,1957)また、社会構造が安定または停滞している時代
では、例えば封建社会の法度や原始社会のタブーなどが流行の普及を阻害
する方向に作用する。一方、今日のような流動的な社会は流行を促進する
方向に作用する。(池内,1968)
一般に、個々の流行やそれを媒介する個々人を包みこむ大きな状況として
の社会的・文化的背景が大きく影響していることは明らかである。また、
小さな状況として、個々人が属する集団や地域社会からも影響を受けてい
ることも事実である。(飽戸,1992)
1.3.3
流行研究の歴史
ここで簡単に、流行研究を歴史的に見ると、クリスチャン・ディオールなどの世界的流
行に拍車をかけられるようにして、1940 年代から 50 年代にかけて理論的にも実証研究の
分野でも多くの優れた研究を蓄積してきた。この時代の流行研究の特徴は、基本的には流
行を階層や階級と結び付けて考えられていたことであり、その代表として「トリックルダ
ウン理論」がある。この理論では、流行はそれぞれの階層を誇示するために存在し、階層
の高いところから低いところへ転がり落ちていくように広がるものである、としている。
その後、1960 年代末には特にアメリカでの若者文化やカウンター・カルチャーによるフー
テン、ヒッピーが新しいライフスタイルを提案していった。また、男性も流行に積極的に
参加すると同時に、強い個性化への欲求が流行を拒否するようになる。その結果、大流行
というようなものはなくなってしまった。ヨーロッパにおいてもアメリカほどではないが
紛争は起こり、階級意識も薄れていった。こうして、トリックルダウン理論は世界的に衰
退し、崩壊していった。さらに、マスコミの発達と普及のため、流行のスピードが著しく
速められ、これにより流行の寿命が短くなり、研究そのものが難しくなっていった。しか
し、高級一眼レフカメラ、ノート型パソコン、携帯電話の普及など、流行現象は大きく変
質したが、消えたわけではない。また、階層から独立し女性だけでなく男性も参加するよ
7
うになった今日の流行は、その重要度を高めているといえるだろう。
1.3.4
ファッションとヘアスタイルの研究における2つの視点
ここで、本研究のテーマとなるファッションやヘアスタイルについて考えていく時、と
ても重要な視点が二つある。一つは、ファッションやヘアスタイルに関する関心度が、人
によって非常に異なることであり、もう一つは、何のためにそのファッションやヘアスタ
イルを採用したいと思っているのかという、採用の動機の問題である。
前者については、今日のファッションやヘアスタイルに関する情報は、色や形、素材な
ど非常に膨大である。これらの中から自分の気になる情報を集めることは大変な労力を使
い、よほどの関心がない限りは容易にはできないことである。これにより、少数の“通”
と多数の無関心層とに大きく分けられているのがファッションの分野の特徴である。
(飽戸,
1992)この特徴は、ヘアスタイルについても同様のことが言えよう。後者については、ド
イツの社会学者 simmel が、流行に関する「個性化と同調」というモデルを考え、すなわち、
人が流行を採用する場合、自分の個性を主張したいために流行を取り入れる側面(これを
個性化という)と、あまり目立ちたくないから皆と一緒の物を取り入れる側面(これを同
調)というように相反する二つの動機がつねに並存していることを指摘している。一般に、
流行の初期の採用者は個性化を志向し、後期の採用者は、皆が採用してしまったのでその
集団の圧力によって、同調により採用する、と考えられる。(飽戸,1992)
さらに、流行はもともと「トリックルダウン理論」(上述参照)のように階層や階級、地
位などと結び付いて生まれ、発展してきた。この要素が、流行を採用するにあたっては、
身分相応とか、男は男らしく女は女らしくとか、若者は若者らしく年輩者は年輩者らしく
とか、そういった“らしく”という社会的規範が、一部の人々にとって重要な役割を果た
している可能性がある。
(飽戸,1992)
これらのファッションとヘアスタイルの研究における重要な視点については、人をタイ
プ別に分類するときに十分考慮し、参考にした。
8
1.4
仮説の設定
本研究では流行への関心およびファッションへの関心を中心とした以下のような仮説を
設定した。
〔仮説Ⅰ〕
流行発信型の美容室は次のような特徴を持つ。
◎仮説Ⅰ−ⅰ
「流行発信型」の美容室ほど、料金設定が高い。
◎仮説Ⅰ−ⅱ
「流行発信型」の美容室ほど、郊外よりも都市部に多い。
◎仮説Ⅰ−ⅲ
「流行発信型」の美容室ほど、規模が大きい。
〔仮説Ⅱ〕
各個人の流行志向およびファッション志向が選択する美容室を決める。
◎仮説Ⅱ−ⅰ
流行やファッションへの関心が高い人ほど、「流行発信型」の美容室を
利用する。
◎仮説Ⅱ−ⅱ
社会的規範を重視する人ほど、「高級感重視型」の美容室を利用する。
◎仮説Ⅱ−ⅲ
流行やファッションに無頓着な人ほど、「流行発信型」や「高級感重視
型」の美容室は利用しない傾向がある。
〔仮説Ⅲ〕 各個人の流行志向およびファッション志向が接触する情報メディアを決める。
◎仮説Ⅲ−ⅰ
流行やファッションへの関心が高い人ほど、利用する美容室の情報を
ファッション誌(ヘアスタイルなどの美容室の情報が多く掲載されてい
る雑誌)から得ている。
◎仮説Ⅲ−ⅱ
社会的規範を重視する人ほど、利用する美容室の情報を信頼できる知人
や友人から得ている。
◎仮説Ⅲ−ⅲ
流行やファッションに無頓着な人ほど、利用する美容室の情報を信頼
できる知人や友人から得ている。
〔仮説Ⅳ〕
各個人の流行志向およびファッション志向によって、美容室を選択した理由
が異なる。
◎仮説Ⅳ−ⅰ
流行やファッションへの関心が高い人ほど、流行のヘアスタイルや店の
雰囲気の紹介を見て利用する美容室を決める。
◎仮説Ⅳ−ⅱ
社会的規範を重視する人ほど、店の雰囲気の紹介を見て利用する美容室
を決める。
◎仮説Ⅳ−ⅲ
流行やファッションに無頓着な人ほど、価格や割引内容を見て利用する
美容室を決める。
仮説Ⅰでは、ヘアスタイルにおける流行を発信している、おしゃれな雰囲気で人気があ
り有名な美容室についての仮説である。このような「流行発信型」の美容室は、郊外では
9
なく渋谷や原宿、青山に代表されるファッションの流行の最先端に位置付けられた街(本
研究ではこれらの地域を都心部とする)に多く、それ以外の街(本研究ではこれらの地域
を郊外とする)よりも料金は高く設定され、店の規模も大きいのではないかと考え、仮説
Ⅰ−ⅰ、Ⅰ−ⅱ、Ⅰ−ⅲのような仮説を立てた。
仮説Ⅱ−ⅰ,Ⅲ−ⅰ,Ⅳ−ⅰでは、
「個性派流行型」と「流行同調形」といった、流行へ
の関心とファッションへの関心が高い人についての仮説である。流行に敏感であり、ファ
ッションに高い関心を持つ人は、その情報源をファッション雑誌に求めている。他にも友
人との会話やテレビ、街にいる人などから流行やファッションの情報を得ることもあるが、
やはりファッション雑誌に掲載されている内容からどのようなファッションが流行してい
るかを知ることが多いと考えられる。また、近年のファッション雑誌には髪型(ヘアスタ
イルやヘア・アレンジなど)の内容が季節に関係なく毎月のように掲載されている。さら
に、そのヘアスタイルなどは渋谷や原宿などの美容室から提案されているものであり、同
時にその美容室についての宣伝の役割を果たしている。よって、流行やファッションに関
して関心の高い人はファッション雑誌に掲載されている流行のヘアスタイルなどの情報を
見て、それらを提案している「流行発信型」の美容室を選択しているのではないか、とい
う仮説を立てた。
仮説Ⅱ−ⅱ,Ⅲ−ⅱ、Ⅳ−ⅱでは、「社会規範重視型」といった、流行に囚われることは
なく社会規範を重視する人についての仮説である。流行にそこまで関心の無いことや「流
行発信型」の美容室の顧客は若者が中心となっていることからそのようなタイプの美容室
は利用せず、
「高級感重視型」の美容室を利用すると考えた。なぜならば、まずそのような
タイプの美容室は仕事をしている女性をターゲットにしているからである。さらにこのよ
うなタイプの人はファッション雑誌からではなく職場などで美容室の情報交換を行ってい
ることが多いと考えた。よって、社会的規範を重視する人は「高級感重視型」の美容室を
選択することが多いのではないか、という仮設を立てた。
仮説Ⅱ−ⅲ,Ⅲ−ⅲ、Ⅳ−ⅲでは、前述のように本研究の調査対象外であるから検証す
ることはできないかもしれない。しかし、若年層の中にもファッションに無頓着な人もい
るので、そのようなタイプの人についての仮説を設定した。流行やファッションに無頓着
な人は、「家の近く」などにある「地域密着型」の美容室を利用し、「流行発信型」の美容
室はあまり利用する傾向にないと考えた。また、美容室を選択する理由は、距離の問題よ
りもむしろ価格についてこだわるのではないかと仮定した。美容室を利用することは消費
行動であるから、より安い美容室を選択するのは当然であり、スタイルなどにこだわりが
ないこのタイプの人はよりその傾向が強くあらわれると考え、このような仮説を立てた。
10
第2章
2.1
研究方法
調査方法
2.1.1
質問紙によるアンケート調査
本研究における調査として主に把握したい内容は「ファッション」および「流行」に関
する意識、現在利用している美容室の特徴とその美容室を選ぶ理由、さらにどういった情
報メディアを通してその美容室を知ることになったのか、という以上4点である。各内容
に関する質問を中心に、アンケート調査を以下の通り実施した。
日時
2003 年 11 月 3,7,8,9 日の 4 日間
場所
11 月 3 日・・・・・・青山学院大学(以下、「青学」とする)
11 月 7,8,9 日・・・渋谷周辺(以下、「渋谷」とする)
・渋谷駅のハチ公前
・モヤイ像前
・QFRONT(スターバックス・カフェ)前
・表参道(神宮前交差点から営団千代田線表参道駅)
天気
11 月 3 日・・・曇ときどき雨
11 月 7 日・・・晴ときどき曇
11 月 8 日・・・晴
11 月 9 日・・・雨
調査対象
16 歳から 40 歳代までの女性をその範囲とし、中心は 10 歳代、20 歳代の女性とした。
サンプル数
11 月 3 日・・・・・・回答者数 62 名、うち有効回答者数 60 名、有効回答率 96.8%
<年齢別内訳>
16∼20 歳
70.0%
21∼25 歳
26.7%
26∼30 歳
1.7%
31∼40 歳
1.7%
11 月 7,8,9 日・・・回答者数 100 名、うち有効回答者数 97 名、有効回答率 97.0%
<年齢別内訳>
16∼20 歳
61.9%
21∼25 歳
29.9%
26∼30 歳
6.2%
31∼40 歳
1.0%
40 歳以上
1.0%
11
調査方法
4 日間のいずれの調査も、街頭にいる若い女性を中心に、その場で質問紙を渡し、無記
名で記入していただいた後、その場で回収する方法で実施した。また、青学では校内
をまわりながら、渋谷では上に挙げた5ヶ所をまわりながら、1ヶ所に長時間留まる
ことなく、場所を変えながら調査を行った。
なお、本研究において、青学で調査して得たデータと渋谷でのそれとは区別し、分けて分
析することとする。これは、それぞれの場所に集まる人々が青学では主に学生であるのに
対し、渋谷では様々な属性を持つ人々であることから、それぞれの回答者の属性に違いが
見られる為、両者を合わせて分析することは信頼性に欠けると考えたからである。
今回の調査を渋谷・原宿・青山周辺の街頭で行った理由は二点ある。ひとつは、流
行やファッションへの関心が高い人についての情報を得るためである。もうひとつは、
渋谷や原宿などに多く見られる大規模な有名美容室についての情報を得るためである。
このような街に来ている人ならばその周辺の美容室を利用している人の割合も多いと
予測したからである。だが、渋谷・原宿・青山で、しかも路上にて調査を行ったこと
で、データの内容以前にデータ自体をなかなか思うように集めることはできなかった。
これは、渋谷などの街に来ている人たちは、このような声をかけられることにかなり
敏感になっており、友好的にアンケートに回答してくれる人は少なかった。さらに、
年齢別に見ると、年配層の方たちは特に警戒心が強く、多くのデータを得ることはで
きなかった。このような調査結果から、若年層と年配層の違いなどの年齢を軸にした
分析は行うことが出来なくなった。
2.1.2
容姿観察調査
さらに、本調査では被調査者のファッションや流行への関心をアンケート調査によって
内面から分析するだけでなく、容姿・外見からも分析することを試みた。このような調査
方法を「容姿観察調査」とした。その方法は、被調査者の容姿・外見を調査者が観察し、
その時期に流行しているファッション・アイテムを身に付けているかどうかをチェックす
るというものである。ここで、このような調査を実施する場合、例えば「グレーの上着」
とするアイテムをチェックする時、どの範囲の色までをグレーとするかが調査者によって
異なるようでは、正確なデータにはならない。よってチェック項目について細かく定義さ
れた資料を予め用意しておくことが重要になってくる。このような点を考慮した上で、本
調査における調査者は、青学では私と知人の二人一組で、渋谷では私一人で行うことにし
た。また、どのようなアイテムをチェック項目として採用するかは、インターネット上の
サイトである『WEB アクロス』を参考とした。
12
『WEB アクロス』は(株)パルコが運営するウェブジンである。前身は 1977 年創刊の
マーケティング雑誌『月間アクロス』で、98 年 7 月号に紙媒体は終了したが、2000 年
10 月よりウェブジン『WEB アクロス』として新創刊した。その中に「定点観測」とい
う企画がある。これは、単にファッションのトレンドを追いかけるだけでなく、インタ
ビューなどを通して、その時代に台頭する若者たちの志向や行動など、ライフサイクル
全般から彼らの特性を分析するというものである。毎月、渋谷・原宿・新宿の3地点を
基本拠点とし、それぞれ街に台頭するファッションを考現学的手法により、定点で観測
しカウント、そして分析を行っている。
『WEB アクロス』の「定点観測」の特徴は、フ
ァッショントレンドを数値データによって表現する点である。個々のアイテムの着用率
をカウントすることで、流行しているか否かを客観的に示すことになるのである。もち
ろん、着用率が高いことがトレンドに直接結びつくとは限らないが、いわゆるトレンド
の細分化や複合・混在化、世代間特性など、時代の変化を絡めて分析することを可能に
している。
このウェブジンから抽出した 27 項目について、被調査者の容姿・外見を観察しチェック
した。これも個人の流行やファッションの関心を示す指標の一つとして加えて分析を行う
こととした。
13
第3章
3.1
結果と考察
流行関心の分析
ここでは、ファッションやヘアスタイルの分野を考える時に重要な視点である、それぞ
れの人のファッションやヘアスタイルに関する“関心度”とファッションやヘアスタイル
を採用する動機という2つの視点から、それぞれの人がどのようなタイプであるかを分類
する。まず、各個人について、ファッションとヘアスタイルへの関心度と採用動機を具体
的な指標に分けて18項目の質問に3段階評定で回答してもらい、これらのデータをもと
に α係数を用いて尺度構成を行った。
なお、本研究における分析は、基本的に「青学」と「渋谷」のデータを区別することに
していたが、人のタイプを分類する尺度は共通にするため、 α係数は「青学」と「渋谷」
とを区別しないで見ていくことにした。
質問紙において、Q4の質問項目のうち「ヘアスタイルもファッションのひとつだと思っ
ている」「自分のヘアスタイルをアレンジするのが好きだ」「雑誌に出ている流行の服装や
髪型はなるべく取り入れるようにする」以外は、飽戸弘著『コミュニケーションの社会心
理学』pp18∼37 を参考にした。
3.1.1
人のタイプを分類する尺度
第一尺度は、ファッションに関する関心度を測るもので、「ファッション関心度」と名付
けた。この尺度を構成する質問には、服装やヘアスタイルについての記事や質問に興味が
ある、どんなファッションが流行しているかよく友達と話をする、いろいろなタイプの服
を買って変化を楽しむほうだ、といったファッションに関する質問の他に、ヘアスタイル
もファッションのひとつだと思っている、といったヘアスタイルに関する質問も含まれて
いるのが面白い。また、そもそもファッションや髪型、流行などには興味がなく、そのこ
とについて考えることが煩わしいという人の程度を測る質問項目が 1 項目あり、
「無頓着度」
と名付けた。これとの相関を見たところ、相関係数は-0.537 となり1%水準で有意であった。
よって、「無頓着度」をネガティブな質問項目として加えることとした。
<ファッション関心度を構成する質問項目>( α係数=0.5898)
・ 服装やヘアスタイルについての記事や話に興味がある。
・ いろいろなタイプの服を買って、変化を楽しむほうだ。
・ 雑誌に出ている流行の服装や髪型はなるべく取り入れるようにしている。
・ 自分のヘアスタイルをアレンジするのが好きだ。
・ へアスタイルもファッションのひとつだと思っている。
(ネガティブな項目)
14
・ 服装にあれこれ気を使うのはわずらわしいと思う。
第二尺度は、流行に関する関心度を測るもので、「流行関心度」と名付けた。流行には敏
感なほうである、どんなファッションが流行しているかよく友達と話をする、雑誌に出て
いる流行の服装や髪型はなるべく取り入れるようにする、といった「流行」という言葉が
入った質問のグループである。また、この尺度についても「無頓着度」をネガティブな項
目としてグループに加えた(相関係数=-0.509、1%水準で有意)。
なお、本研究において、流行への関心はファッションへの関心に含まれるとも考えられ、
ファッション関心度の尺度と重なる質問もあるが、あえて分けた理由としては、ファッシ
ョン自体に関心があっても世の流行には興味が無いといった人がいる可能性があることと、
流行への関心と美容室選択との関係を明らかにするという更に細かく見た分析をするため
である。
<流行関心度を構成する質問項目>( α係数=0.6723)
・ 流行には敏感なほうである。
・ どんなファッションが流行しているかよく友達と話をする。
・ 雑誌に出ている流行の服装や髪型はなるべく取り入れるようにする。
(ネガティブな項目)
・ 服装にあれこれ気を使うのはわずらわしいと思う。
第三尺度は、
「ヘアスタイル関心度」と名付け、ヘアスタイルに関する関心度を測る尺度
である。これもファッション関心度に含まれる尺度と考えられるが、本研究は美容室につ
いての研究であることから、流行関心度と同様にして分けた尺度を考えた。この尺度には、
ヘアスタイルもファッションのひとつだと思っている、自分のヘアスタイルをアレンジす
るのが好きだ、といった髪に関する質問のグループである。この尺度についても、「無頓着
度」は負の相関が見られたので、前述の尺度と同様ネガティブな項目としてグループに加
えた(相関係数=-0.391、1%水準で有意)。
<ヘアスタイル関心度を構成する質問項目>( α係数=0.4723)
・ 服装やヘアスタイルについての記事や話に賞味がある。
・ 自分のヘアスタイルをアレンジするのが好きだ。
・ ヘアスタイルもファッションのひとつだと思っている。
・ 雑誌に出ている流行の服装や髪型はなるべく取り入れるようにする。
(ネガティブな項目)
・ 服装にあれこれ気を使うのはわずらわしいと思う。
第四尺度は、個性化の志向を示す尺度であり、
「個性化志向度」と名付けた。洋服を買う
ならなるべく自分を目立たせるようなものを買いたい、服装は自分の個性を表すのに重要
15
な方法のひとつである、多くの人が着ているような平凡なスタイルの服は着たくない、と
いった個性化の質問が入っている。また、友人の中で自分だけ目立つような髪型をするの
は気が引ける、自分の服装が仲間と同じようなものでないとなんとなく不安になる、とい
った同調に関する質問は個性化と相反するものと考え、「個性化志向度」に対してネガティ
ブな尺度「同調志向度」としてグループに入れた。なお、信頼性分析をした中で「友人の
中で自分だけ目立つような髪型をするのは気が引ける」という項目は取り除く方が α係数
は高くなったが、質問の内容を踏まえてこの尺度のグループに入れることとした。また、
この尺度においても「無頓着度」は負の相関があったので、前述の尺度と同様にネガティ
ブな項目としてグループに加えた(相関係数=-0.379、1%水準で有意)。
<個性派志向度を構成する質問項目>(α係 数=0.4707)
・ 洋服を買うなら、なるべく自分を目立たせるようなものを買いたい。
・ 多くの人が着ているような平凡な服は着たくない。
・ いろいろなタイプの服を買って、変化を楽しむほうだ。
・ 季節の変わり目には、いち早く次のシーズンの服に着替えるほうだ。
・ 自分のヘアスタイルをアレンジするのが好きだ。
・ ヘアスタイルは自分の個性を表すのに重要な方法のひとつだと思う。
・ 服装は自分の個性を表すのに重要な方法のひとつだと思う。
(ネガティブな項目)
・ 服装にあれこれ気を使うのはわずらわしいと思う。
<同調志向度を構成する質問項目>( α係数=0.6187)
・ 自分の服が仲間と同じでないようなものでないとなんとなく不安になる。
・ 友人の中で自分だけ目立つような髪型をするのは気が引ける。
・ みんなが着ている服と同じような服を選ぶようにしている。
第五尺度として、社会的規範をどのくらい重視するかを示す尺度を考え、「規範重視度」
と名付けた。自分の服を買う時は年齢相応ということを重視している、女性は女性らしい
デザインの服を着るべきだと思う、といった伝統的規範を尊重する項目が入った質問で構
成されている。この尺度は、2項目だけなので相関係数を見ると、r=.307 となり1%水準
で有意であった。また、この尺度と「無頓着度」には相関は見られなかった。
<規範重視度を構成する質問項目>( α係数=0.4648)
・ 自分の服を買う時は、年齢相応ということを重視している。
・ 女性は女性らしいデザインや色の服を着るべきだと思う。
以上5つの尺度を変数とし、それぞれの変数について相関分析を行った。表 3-1-1、表 3-1-2
は、その結果である。
16
表 3-1-1 各尺度におけるピアソンの相関係数 <青学>
Ⅰ
Ⅰ.ファッション関心度
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
1
Ⅱ.流行関心度
0.862(**)
1
Ⅲ.ヘアスタイル関心度
0.917(**)
0.796(**)
1
Ⅳ.個性化志向度
0.570(**)
0.349(**)
0.443(**)
1
0.085
0.107
0.051
-0.001
Ⅴ.規範重視度
(**).相関係数は1%水準で有意である。
(*).相関係数は5%水準で有意である。
まず、青学の結果からみると、「ファッション関心度」と「流行関心度」について、高い
正の相関係数 0.862(1%水準で有意)が見られた。つまり、ファッションへの関心が高い
人ほど、流行への関心が高いといえる。また、
「ファッション関心度」と「ヘアスタイル関
心度」について、高い正の相関係数 0.917(1%水準で有意)が見られた。これは、ファッ
ションへの関心が高い人ほど、ヘアスタイルへの関心が高いといえる。さらに、
「ファッシ
ョン関心度」と「個性化志向度」について、正の相関係数 0.570(1%水準で有意)が見ら
れた。つまり、ファッションへの関心が高い人ほど、個性化志向が強いといえる。また、
「流
行関心度」と「ヘアスタイル関心度」について、高い正の相関係数 0.796(1%水準で有意)
が見られた。流行への関心が高い人ほど、ヘアスタイルへの関心が高いといえる。また、
「流
行関心度」と「個性化志向度」について、正の相関係数 0.349(1%水準で有意)が見られ
た。つまり、流行への関心が高い人ほど、個性化志向が強いといえる。最後に、
「ヘアスタ
イル関心度」と「個性化志向度」について、正の相関係数 0.443(1%水準で有意)が見ら
れた。つまり、ヘアスタイルへの関心が高い人ほど、個性化志向が高いといえる。これら
をまとめると、「ファッション関心度」「流行関心度」「ヘアスタイル関心度」「個性化志向
度」という4つの変数は、各々の相関係数の大きさに差はあるものの、互いに正の相関を
持つということがいえる。これは、各々の変数を構成する項目が数多く重なっていること
から当然ともいえるが、やはり前述の1章3節「流行について」の内容のとおり、ファッ
ションへの関心度と採用動機を示すファッション関心度、流行関心度、個性化志向といっ
た人の内面的な部分(性格ともいえる)には大きな関連があり、さらに髪型への関心も関
連しているということを意味する。一方、「規範重視度」とその他の変数との相関は見られ
なかった。
17
表 3-1-2 各尺度におけるピアソンの相関係数 <渋谷>
Ⅰ
Ⅰ.ファッション関心度
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
1
Ⅱ.流行関心度
0.760(**)
1
Ⅲ.ヘアスタイル関心度
0.848(**)
0.623(**)
1
Ⅳ.個性化志向度
0.451(**)
0.133
0.434(**)
1
Ⅴ.規範重視度
0.239(*)
0.243(*)
0.082
-0.063
(**).相関係数は1%水準で有意である。
(*).相関係数は5%水準で有意である。
次に、渋谷の結果を見ると、「ファッション関心度」と「流行関心度」について、高い
正の相関係数 0.760(1%水準で有意)が見られた。つまり、ファッションへの関心が高い
人ほど、流行への関心が高いといえる。また、
「ファッション関心度」と「ヘアスタイル関
心度」について、高い正の相関係数 0.848(1%水準で有意)が見られた。つまり、ファッ
ションへの関心が高い人ほど、ヘアスタイルへの関心が高いといえる。さらに、
「ファッシ
ョン関心度」と「個性化志向度」について、正の相関係数 0.451(1%水準で有意)が見ら
れた。つまり、ファッションへの関心が高い人ほど、個性化志向が強いといえる。「流行関
心度」と「ヘアスタイル関心度」について、高い正の相関係数 0.623(1%水準で有意)が
見られた。つまり、流行への関心が高い人ほど、ヘアスタイルへの関心が高いといえる。
「ヘ
アスタイル関心度」と「個性化志向度」について、正の相関係数 0.434(1%水準で有意)
が見られた。つまり、ヘアスタイルへの関心が高い人ほど、個性化志向が強いといえる。
以上より、青学での結果同様、ファッションへの関心度と採用動機を表すこれらの変数に
は大きな関連があるといえる。しかし、渋谷での結果で注意する点は、流行への関心と個
性化志向との相関は見られなかった点である。これは、渋谷という街が原因となっている
と考えられる。その理由は、渋谷では流行しているファッションをしている人がとても多
く、いわば当たり前のファッションとなっている。その中で個性化志向の強い人は、皆と
同じようなファッションを採用するよりも「自分流」にコーディネートしてファッション
を楽しんでいると考えられるからである。よって、個性化志向の強い人だからといって、
流行への関心が高いとは言えない結果となったのである。さらに、青学での結果と異なる
点として、
「ファッション関心度」と「規範重視度」について、低い正の相関係数 0.239(5%
水準で有意)が見られ、
「流行関心度」と「規範重視度」について、低い正の相関係数 0.243
(5%水準で有意)が見られた。つまり、渋谷には年齢相応で女らしくといった社会的な規
範を重視している人でも、ファッションや流行に敏感な人が多く集まってくるといえる。
よって、個性や社会的規範を意識しながら自分なりのファッションを楽しむ人や流行に敏
感な人が多く集まっているのが渋谷という街であるといえるだろう。
18
3.1.2
容姿観察調査による尺度
次に、人のファッション関心度と採用動機について、容姿観察調査から得たデータに基
づいて尺度構成を行った。この場合も人のタイプの尺度と同様に、尺度を共通に見るため
「青学」と「渋谷」を区別しないこととした。
第一の尺度として、チェックする27項目すべてを対象とし、信頼性分析により α係数
が最大になるよう項目を選んだ。最終的に11項目が残り、これらの総和を尺度とした( α
係数=0.4402)。この尺度を構成する項目は採用している人が少ないという共通点があるこ
とから「レア・アイテム尺度」としておく。
<レア・アイテム尺度を構成するアイテム>
・デザイン・トップス着用
・スカート ON パンツ
・ジャケット着用(コーディロイ or ベルベット素材)
・レイヤード・トップス着用
・片耳ピアスあり
・ギャザー・バック
・斜め掛けバック
・首に巻きものあり
・黒髪
・バングスのあるヘアスタイル
・バングスのあるヘアスタイル(ショート・レングス)
第二の尺度として、チェックする27項目の中でより具体的なアイテムを示す5つの項
目について値を0(当てはまらない)は0に、1(当てはまる)は2にそれぞれ再割り当てして
から「レア・アイテム尺度」と同様の方法で尺度を作成した。このように再割り当てした
理由は、これらのアイテムを採用することはファッションや流行をより敏感に感じ取って
いるからだと考え、それを尺度の中に反映させる為である。最終的には4つの項目で構成
され、この中に再割り当てされた項目は2つ入る結果となった( α係数=0.5862)。しかし
本調査では、これらの尺度を構成する 4 項目はチェック項目の中でも多くの人が採用して
いるアイテムであった。多くの人が取り入れているということで「スタンダード・アイテ
ム尺度」と名付けておく。
<スタンダード・アイテム尺度を構成するアイテム>
・ブラウンアイテム着用
・ブラウンアイテム着用(トップスに着用)*
・ブーツ着用
・ブーツ着用(茶色)*
(*再割り当てされたアイテム)
では、この二つの尺度の相関を見ると、青学では相関係数=-0.008、有意確率=0.954 で
あり、5%水準で有意な相関は見られなかった。また、渋谷では、相関係数=-0.153、有意
確率=0.136 であり、こちらも5%水準で有意な相関は見られなかった。つまり、これらの
アイテム同士には関連が見られないことを意味する。
では、このような流行しているアイテムとそれらを採用する人との間には関連はあるの
だろうか。つまり、人の内面(性格)と外見とでどのような関連があるかを見てみることにす
19
る。ここでは、レア・アイテム尺度およびスタンダード・アイテム尺度と人のファッショ
ンに関する関心度と採用動機を表す変数との相関分析を行った。その結果は、表 3.1.3 のと
おりである。
表 3-1-3 レア・アイテム尺度、スタンダード・アイテム尺度とそれ以外との相関係数
レア・アイテム尺度
青学
スタンダード・
アイテム尺度
レア・アイテム尺度
渋谷
スタンダード・
アイテム尺度
ファッション
流行
ヘアスタイル
個性化
関心度
関心度
関心度
志向度
0.073
0.000
0.050
0.124
0.060
0.128
0.083
0.167
0.014
0.200
0.211(*)
0.123
0.237(*)
0.165
-0.173(*)
0.004
0.175(*)
0.079
-0.184(*)
-0.034
規範重視度
(*).相関係数は5%水準で有意である。
表 3-1-3 より、青学では、レア・アイテム尺度、スタンダード・アイテム尺度ともに相関
は見られなかった。一方、渋谷では、「レア・アイテム尺度」と「ファッション関心度」に
ついて、低い正の相関係数 0.211(5%水準で有意)が見られた。つまり、本調査において
採用者が少なかったアイテムを身に付けている人ほど、ファッションに関心が高いという
ことがいえる。また、「レア・アイテム」と「ヘアスタイル関心度」について、低い正の相
関係数 0.237(5%水準で有意)が見られた。つまり、本調査において採用者が少なかった
アイテムを身に付けている人ほど、ヘアスタイルへの関心が高いといえる。また、「レア・
アイテム尺度」と「規範重視度」について、低い負の相関係数-0.173(5%水準で有意)が
見られた。つまり、本調査において採用者が少なかったアイテムを身に付けている人ほど、
社会的規範を重視する度合は低いといえる。よって、採用者が少ないアイテムを身に付け
ている人は、ファッションやヘアスタイルに関心があり、それらについて今までの古い考
えではなく斬新な考えをもっているといえる。一方、「スタンダード・アイテム尺度」につ
いては、「流行関心度」と低い正の相関が見られ、さらに「個性化志向度」と低い負の相関
が見られた。相関係数はそれぞれ 0.175、-0.184 であった(5%水準で有意)。つまり、本研
究において採用している人が多かったアイテムを身に付けている人ほど、流行への関心は
高いが、それらを採用した動機は皆と同じような服装でありたいという「同調志向」の強
いことが原因であると考えられる。
青学と渋谷で結果が異なることについては、対象者が大学生に限られる青学と学生だけ
でなく様々なタイプの人々を対象とした渋谷というように、各々の場所における人の属性
の違いが影響したと考えられる。また、「容姿観察調査」によって得られたデータを分析し
て内面と外見を比較するには、本調査でのケース数では少なすぎたことも違いから明らか
となった。今後、さらにケース数を増やして調査していくことで「容姿観察調査」の信頼
20
性は確かめられるだろう。しかし、渋谷の結果から弱い相関ではあるが内面と外見の関連
は見られた。そして、このような調査では皆が採用しているアイテムとそうでないものが
調査を進めていく中ではっきりしてくるので、これらを分けて各個人に当てはめれば、そ
の人がどのような動機の下に流行しているアイテムを採用しているのかが明らかになるだ
ろう。よって、このような分析方法も有効であると考える。
21
3.2
利用者から見た美容室の分類
ここでは、美容室をその店の雰囲気や特徴などによって分類することを試みた。その方
法として、利用した美容室の特徴について具体的な指標に分けて24項目の質問をし、そ
の中であてはまるものすべてを選んで回答してもらい、それらのデータをもとに α係数を
用いて尺度構成を行った。具体的な指標とは、1.流行発信型の特徴、2.地域密着型の
特徴、3.高級感重視型の特徴、の3つである。これらを3つの尺度を各々の美容室に当
てはめてその特徴を測る。これらの3つの尺度は、どれも利用者が主観的に感じた印象を
もとに構成された尺度であり、客観的に見て区別することは難しい。しかし、本研究では
実際に利用した人が美容室に対してどのような印象を受けたかが重要であり、よってこれ
らの尺度を使用して美容室の特徴を見ていくこととする。
なお、ここでも各尺度は共通にするため、「青学」と「渋谷」は区別せずに分析した。
第一の尺度は「ポピュラー尺度」と名付け、人気がある、流行に敏感である、有名であ
る、おしゃれである、といった“都心の有名美容室”の特徴を含んだ項目のグループであ
る。また、若者が多い、という項目が入っていることも特徴のひとつである。
<ポピュラー尺度を構成する項目>( α=0.7297)
・人気がある
・有名である
・おしゃれである
・流行に敏感である
・若者が多い
第二の尺度は「ローカル尺度」と名付け、価格が安い、家から近い、といった利用者に
とって便利な印象の項目や、お気に入りの美容師がいる、丁寧に施術してくれる、親しみ
がもてる雰囲気だ、リラックスできる、などといった“地元にある行きつけの美容室”の
印象を示す尺度である。流行やファッションについての印象は弱いので、
「ポピュラー尺度」
と対になると考えられる。
<ローカル尺度を構成する項目>( α=0.4742)
・価格が安い
・技術がある
・リラックスできる
・親しみがもてる雰囲気だ
・家から近い
・気分転換できる場所である
・お気に入りの美容師がいる
・丁寧に施術してくれる
第三の尺度は、「高級尺度」と名付けた。高級感がある、清潔感がある、技術がある、と
いった洗練された大人の女性が利用する美容室といった印象の項目によって構成される。
マダムが多い、という項目が入ることもこの尺度の特徴である。ポピュラーでもローカル
でもないハイセンスな美容室を示す尺度と考えられる。
<高級尺度を構成する項目>( α係数=0.4746)
・高級感がある
・技術がある
・丁寧に施術してくれる
・清潔感がある
・リラックスできる
・マダムが多い
22
以上より、これらの尺度と本研究における3つ美容室のタイプ(上述参照)との関係を
考える。それぞれの尺度を構成する項目より、ポピュラー尺度は流行発信型の特徴を測る
尺度であり、ローカル尺度は地域密着型の特徴を測る尺度であり、高級尺度は高級感重視
型の特徴を測る尺度であるといえる。また、各々の美容室について、ポピュラー尺度が高
いほど「流行発信型」の性格を持ち、ローカル尺度が高いほど「地域密着型」の性格を持
ち、高級尺度が高いほど「高級感重視型」の性格を持つ、といえる。なお、以後これらの
尺度をまとめて、「美容室分類尺度」とする。
では、次に美容室分類尺度同士のそれぞれの相関を見てみる。それぞれの特徴を示す尺
度には関係があるだろうか。結果は、表 3-2-1、表 3-2-2 のとおりである。
表 3-2-1 美容室分類尺度の相関係数<青学>
Ⅰ
Ⅰ.ポピュラー尺度
Ⅱ.ローカル尺度
Ⅲ.高級感尺度
Ⅱ
Ⅲ
1
0.084
1
0.402(**)
0.653(**)
1
(**).相関係数は1%水準で有意である。
青学では、ポピュラー尺度、ローカル尺度、高級尺度の各々の相関を見ると、ローカル
尺度と高級尺度の相関係数が 0.705(1%水準)と高い正の相関が見られた。また、ポピュラー
尺度と高級尺度の相関係数が 0.241(1%水準)と低い正の相関が見られた。これは、高級尺度
が他の2つの尺度の性格を併せ持つからと考えられる。そして、相関係数の値を比較する
と、高級尺度はよりローカル尺度よりの性格であると言える。高級感のある地域密着型美
容室のほうが高級感のある流行発信型美容室よりも多いと考えられる。
表 3-2-2 美容室分類尺度の相関係数<渋谷>
Ⅰ
Ⅰ.ポピュラー尺度
Ⅱ
Ⅲ
1
Ⅱ.ローカル尺度
-0.049
1
Ⅲ.高級尺度
0.162
0.734(*)
1
(**).相関係数は1%水準で有意である。
渋谷では、ローカル尺度と高級尺度について、正の相関係数 0.734(1%水準で有意)が
見られた。つまり、ローカル尺度が高い美容室ほど、高級尺度が高いと言える。よって、
地域密着型の特徴を持つ美容室と高級感重視型の美容室とでは、区別ができないというこ
とを意味している。これは、それぞれの尺度を構成する項目のうち「技術がある」「リラッ
クスできる」
「丁寧に施術してくれる」という 3 つの項目において重なっていることが原因
23
と考えられる。しかし、ローカル尺度を構成するの項目の「価格が安い」と高級尺度を構
成する項目の「高級感がある」において両者は正反対の印象を表し、またその項目が最も
各々のタイプの美容室を捕らえているといえるので、このような高い正の相関が見られた
がこのままの構成で分析していくことにした。ポピュラー尺度とローカル尺度、ポピュラ
ー尺度と高級尺度においては、それぞれ相関は見られなかった。
24
3.3
美容室についての分析
ここでは、美容室を客観的に評価した「料金設定」「所在地」「規模」という3つの尺度
を用いて、それぞれの美容室分類尺度との関係を見ていく。それぞれの尺度は美容室につ
いて次のような評価を下すものである。
① 利用者が支払う料金は、割高であるか割安であるか。
② その美容室がある場所は都市部であるか、郊外であるか。
③ 美容室の設備として考えられる、スタッフ数およびセット面数は多いか少ないか。
以上3つの尺度から、美容室における利用者の主観的な印象と客観的な特徴との関係を明
らかにしていく。なお、今回用いる3つの尺度についても、前述の尺度と同じように構成
段階では青学と渋谷を分けずに作成した。
3.3.1
美容室のタイプと料金設定との関係
はじめに、客観的に美容室を分類するものとして、料金についての尺度を作成する。下
の表 3-3-1 を参照していただきたい。渋谷や原宿、青山といった都心の美容室は郊外や地方
の美容室に比べて、料金が高く設定されている。地域だけではなく、同じ美容室内でもス
タイリストによって料金が違うところもある。その美容室の看板美容師に施術してもらう
なら、それだけ高い料金を支払うことになるのである。例えば、都内に 6 店舗、福岡にも
1店舗をかまえる有名な美容室の「SHIMA」では、トップスタイリストは通常料金に 500
円プラスされる。
表 3-3-1 美容室の都市別の施術料金(単位:円)
パーマ料金
カット料金
カラーリング料金
東京都区部
8,592
3,651
5,486
立川
7,301
−
−
府中
7,125
−
−
札幌
6,575
2,894
5,159
仙台
6,822
3,017
5,156
長野
7,275
3,575
5,625
名古屋
7,580
3,469
4,831
大阪
7,636
3,202
5,566
福岡
7,236
2,969
4,881
全国計
7,319
3,119
5,214
(『美容と経営 http://www.shinbiyo.com/byk/date.html』より抜粋)
利用者が施術に支払った料金が割高であったか、割安であったかを各個人について見て、
25
割高であればその人は高い料金設定をしている美容室を利用していることになる。分析方
法としては、支払った価格を従属変数、美容室での施術項目を独立変数として重回帰分析
を行い、その残差を見て正なら割高であり負なら割安の料金を支払ったとする。また、独
立変数の中に「シャンプー」を投入しなかったのは、ほとんどの美容室で必ず1回以上は
シャンプーしてもらうものと考えたからである。また、「エクステンション」も独立変数か
ら除いた。これは、値段設定が一定ではなく本数によって料金が異なるためである。さら
に、「パーマ」と「ストレートパーマ」と「縮毛矯正」の3項目は一度の来店でこれらすべ
ての施術を行うことは考えづらいので、回答した調査票を見てこれらの項目のうち2つを
選んでいるケースには両者の変数値を 0.5 とし、3つ選んでいる場合は3つの変数値をそれ
ぞれ 0.33 として値の再割り当てを行った。以上の方法で得られた結果は、表 3-3-2 のとお
りである(R =.910,R²=.828,調整済み R²=.820,F=111.25,有意確率.00)。なお、回帰
式の定数項は排除して考えた。
表 3-3-2 施術内容を従属変数とした重回帰分析(強制投入)
施術項目
非標準化係数
(投入された変数)
B
標準誤差
カット
4172
カラーリング
T値
有意確率
666
6.26
0.00
5379
801
6.71
0.00
パーマ
2281
902
2.53
0.01
ストレートパーマ
5222
1440
3.63
0.00
縮毛矯正
9129
1747
5.23
0.00
ヘアエステ(トリートメント)
1470
894
1.64
0.10
それぞれの施術の料金が係数Bによって示されている。これら係数の値と表 3-2-3 にある
全国計の料金を比較すると、カット料金は 1000 円ほど高く、パーマ料金は 1000 円ほど安
く、カラーリング料金は 4000 円ほど高くなってしまった。この誤差は、ケース数が少なか
ったことと回答者がはっきりと料金を覚えていなかったことが考えられる。しかし、本研
究ではこの回帰式のモデルを用いて見ていくこととする。
では、この回帰式からそれぞれのケースの残差を求め、これを「料金尺度」とし、これ
らと美容室の所在地との関係を見ていく。
質問紙の項目を都市部(渋谷、原宿、青山、代官山、銀座、恵比寿、自由が丘、新宿、
下北沢、吉祥寺)と郊外(その他)に分類し、都市部と郊外の平均値を見てみた。その後、
それらに有意な差があるかを T 検定により分析した。結果は表 3-3-3 のとおりである。
26
表 3-3-3 都市区と郊外についての残差統計量
平均値
人数
標準偏差
都区部
794
73
4927.7
郊外
-81
72
3862.8
合計
359
145
4437.5
t値
有意確率
1.192
0.236
―
―
結果は、それぞれの平均値が 794、-81 となった。統計量では都市部と郊外の料金に差が
見られるが、T 検定の結果はt値=1.192、有意確率=0.236 となり、都市部と郊外におけ
る料金尺度の平均値に有意な差は見られなかった。しかし、本研究では、都市区の美容室
は割高の料金に設定される傾向にあり、郊外の美容室は割安に設定される傾向にあるとし、
この尺度によって料金設定について分析していくこととする。
では次に、美容室分類尺度と料金尺度の相関関係を見ていく。これによって、仮説Ⅰ−
ⅰ「流行発信型の美容室ほど、料金設定が高い」という仮説を検証する。結果は、表 3-3-4
のとおりである。
表 3-3-4 回帰式から得られた残差と美容室分類尺度の相関係数
料金尺度
ポピュラー尺度
ローカル尺度
高級尺度
青学
-0.062
-0.146
-0.045
渋谷
0.065
-0.047
-0.119
表 3-3-4 より、その結果は、青学と渋谷ともに有意な相関は見られなかった。よって、ポ
ピュラー尺度が高いほど、料金設定は割高であるという相関は見られなかった。つまり、
仮説Ⅰ−ⅰ「流行発信型の美容室は、料金設定が高い」は支持されない。
また、表 3-3-3 の結果から都市部の美容室は割高設定であり、郊外の美容室は割安設定で
あることも考慮すると、流行発信型の美容室も地域密着型の美容室も高級感重視型の美容
室もともに料金設定とは相関が見られず、これはそれらの美容室の所在地についても都市
部に多いか、郊外に多いかというような区別ができないことを意味している。
3.3.2
美容室のタイプと所在地との関係
次に前述したように、美容室のタイプと所在地については相関が見られないのであろう
か。それらを確かめるために美容室分類尺度が都市部と郊外において、各々平均値に差が
あるかをT検定により分析した。その結果は表 3-3-5、表 3-3-6 のとおりである。
27
表 3-3-5 美容室分類尺度による都市部と郊外との比較<青学>
ポピュラー尺度
ローカル尺度
高級尺度
場所
人数
平均値
標準偏差
都心部
25
1.240
1.508
郊外
35
0.800
1.158
都心部
25
2.320
1.520
郊外
35
3.371
1.664
都心部
25
1.680
1.108
郊外
35
1.857
1.438
t値
有意水準
1.224
0.228
-2.593
0.014
-0.539
0.592
表 3-3-6 美容室分類尺度による都市部と郊外との比較<渋谷>
ポピュラー尺度
ローカル尺度
高級尺度
場所
人数
平均値
標準偏差
都心部
53
1.642
1.520
郊外
44
0.818
1.352
都心部
53
2.509
1.705
郊外
44
2.773
1.803
都心部
53
1.664
1.270
郊外
44
1.364
1.331
t値
有意水準
2.822
0.006
-0.734
0.465
1.116
0.267
表 3-3-5 より、青学の結果を見ると、ローカル尺度においてt値=-2.539、有意確率=0.014
となり、1%水準で平均値に有意な差がある。つまり、帰無仮説「都市部の美容室と郊外の
美容室の、ローカル尺度の平均値に差はない」は棄却され、都市部よりも郊外のほうがポ
ピュラー尺度の平均値は有意に高いといえる。これは、都市部よりも郊外の美容室のほう
が地域密着型の特徴を持っていることを意味する。また、ポピュラー尺度においては、平
均値に有意な差が見られず、帰無仮説「都市部の美容室と郊外の美容室の、ローカル尺度
の平均値に差はない」が支持された。これは、都市部の美容室と郊外の美容室とではどち
らの方が流行発信型の特徴を持っているかは分からないということを意味する。さらに、
高級尺度においても、ポピュラー尺度と同様のことがいえる。以上より、ローカル尺度に
おいてのみ、料金尺度での結果と矛盾する。しかし、それぞれの支払った料金をその都度
覚えている人はなかなかいない。それを考慮しカテゴリー化したが、あまり正確なデータ
が得られなかったのかもしれない。また、回帰式の係数もいい結果ではなかったことを考
えると、この結果の違いは料金尺度に問題があったと推測できる。よって、本研究では、
表 3-3-5 からの結果を支持する。しかし、それらを踏まえたとしてもポピュラー尺度と所在
地の平均値に有意な差は見られないことから、青学においては、仮説Ⅰ−ⅱ「流行発信型
の美容室ほど、郊外よりも都市部に多い」は支持されない。
表 3-3-6 より、渋谷の結果を見ると、ポピュラー尺度においてt値=2.822、有意確率=
28
0.006 となり、1%水準で平均値に有意な差がある。つまり、帰無仮説「都市部の美容室と
郊外の美容室の、ポピュラー尺度の平均値に差はない」は棄却され、郊外よりも都市部の
方がポピュラー尺度の平均値は有意に高いといえる。これは、郊外よりも都市部の美容室
のほうが流行発信型の特徴を持っていることを意味する。この結果は料金尺度のそれと矛
盾するものだが前述のとおり表 3-3-6 の結果を支持する。よって、渋谷では、仮説Ⅰ−ⅱ「流
行発信型の美容室は、郊外よりも都市部に多い」は支持された。その他の尺度においては、
平均値に有意な差が見られず、それぞれの帰無仮説は支持された。したがって、都市部の
美容室と郊外の美容室ではどちらの方が地域密着型の特徴を持っているか、さらに高級感
重視型の特徴を持っているかは分からないといえる。
次に、青学と渋谷の各尺度における統計量から都市部と郊外を比較してみる。すると、
青学と渋谷ともにポピュラー尺度の平均値は都市部の美容室の方が郊外の都市部の美容室
よりも高い。さらに、ローカル尺度の平均値は郊外のほうが都市部よりも高い。最後に高
級尺度の平均値を見ると、青学では郊外、渋谷では都市部の方が大きい値となっている。
この結果から、都市部の美容室を利用する人ほどその美容室を流行発信型の美容室と感じ
ているといえる。ゆえに、T 検定では青学と渋谷とで異なる結果であった、仮説Ⅰ−ⅱ「流
行発信型の美容室ほど、郊外よりも都市部に多い」は統計量から見ると支持できることが
分かる。また、郊外の美容室を利用する人ほどその美容室を地域密着型の美容室と感じて
いるといえる。したがって、流行発信型の特徴を持つ美容室は都市部に、地域密着型の特
徴を持つ美容室は郊外にそれぞれ多いことがいえる。しかし、高級尺度では都市部と郊外
それぞれの平均値に差は見られなかった。よって、高級感重視型の特徴を持つ美容室は都
市部にも郊外にもあると言え、そのような美容室を場所によって説明することは出来ない
とことがわかった。断っておくが、これは統計量からの推測であり、統計的検定では有意
な差が見られなかったので、本研究においては、渋谷でのみ仮説Ⅰ−ⅱは支持されたとす
る。
3.3.3
美容室のタイプと設備との関係
ここでは、美容室のスタッフの人数と利用者が座る席(セット面)の数を「覚えていない」
を除く4つのカテゴリーに分けて質問し、あてはまるものを回答してもらった。
(付録参照)
青学と渋谷を合わせたデータにおいて、スタッフ数とセット面との相関係数は、0.566 とな
り1%水準で有意(両側)であった。当然のことであるが、スタッフ数とセット面数には正の
相関が見られ、両者がともに大きいほど大規模な美容室であるといえる。両者は美容室の
規模を見るための尺度ということで、規模尺度と名付ける。
では、美容室の規模と利用者の感じる美容室の雰囲気にはどのような関係があるのかを
見るために、規模尺度と美容室分類尺度との相関分析を行った。結果は、表 3-3-7 のとおり
29
である。
表 3-3-7 <青山>規模を示す尺度と雰囲気を示す尺度の相関係数
青学
渋谷
ポピュラー尺度
ローカル尺度
高級尺度
スタッフ数
0.230(**)
-0.307(*)
-0.167
セット面数
0.345(**)
-0.177
-0.060
スタッフ数
0.326(**)
-0.088
-0.013
セット面数
0.423(**)
-0.229(*)
-0.106
(**).相関係数は1%水準で有意である。
(*).相関係数は 5%水準で有意である.
表 3-3-7 より、青学の結果から見ると、ポピュラー尺度とスタッフ数の相関係数は 0.230
(1%水準)で有意な正の相関が見られ、セット面数との相関係数は 0.345(1%水準)で
有意な正の相関が見られた。よって、ポピュラー尺度の高い美容室、つまり流行発信型の
特徴を持つ美容室ほど規模が大きくなると言える。ゆえに、仮説Ⅰ−ⅲ「流行発信型の美
容室ほど、規模が大きい」は支持された。さらに、ローカル尺度とスタッフ数について負
の相関係数-0.307(5%水準で有意)が見られた。セット面数との相関は見られなかったが、
ローカル尺度の高い美容室、つまり地域密着型の美容室ほど、規模は小さくなるといえる
だろう。また、高級尺度については有意な相関は見られなかった。よって、高級尺度が高
い、つまり高級感重視型の美容室は規模が大きいものも規模が小さいものもあるといえる。
渋谷では、ポピュラー尺度とスタッフ数の相関係数は 0.326(1%水準)で有意な正の相
関が見られた。ゆえに、青学と同様のことが言え、仮説Ⅰ−ⅲ「流行発信型の美容室ほど、
規模が大きい」は渋谷でも支持された。さらに、ローカル尺度とセット面数との相関係数
は-0.229(5%水準)で負の相関が見られた。渋谷では、ローカル尺度とスタッフ数には相
関が見られなかったが、青学と同様に、ローカル尺度の高い美容室、つまり地域密着型の
特徴を持つ美容室ほど規模が小さくなると言える。また、渋谷でも高級尺度との相関は見
られなかった。つまり、規模の大きさと美容室の高級感とは関係がないことが言える。
30
3.4
流行関心と美容室選択の関係
ここでは、前述した人のタイプを分類する尺度と美容室を分類する尺度との関係を見る
ことで、どのような人がどのような美容室を選択するのかを明らかにしていく。
まず、人のタイプを分類する尺度と利用者の主観的な見方から美容室を分類する尺度と
の相関係数を見てみた。その結果は、表 3-4-1 のとおりである。
表 3-4-1 人分類尺度と美容室分類尺度の相関係数<青学>
ファッション関心
度
流行関心度
ヘアスタイル
個性化
関心度
志向度
規範重視度
ポピュラー尺度
0.190
0.276(*)
0.214
0.040
0.246(*)
ローカル尺度
-0.173
-0.041
-0.137
-0.167
0.109
高級尺度
-0.026
0.056
-0.015
-0.012
0.203
(*).相関係数は5%水準で有意である。
表 3-4-1 より、青学では、
ポピュラー尺度と流行関心度について、正の相関係数 0.276(5%
水準で有意)が見られた。つまり、流行関心への関心が高い人は、流行発信型の美容室を
利用するという相関があると言える。よって、仮説Ⅱ−ⅰ「流行やファッションへの関心
が高いほど、流行発信型の美容室を利用する」は支持された。しかし、ファッション関心
度やヘアスタイル関心度、個性化志向度とポピュラー尺度との相関はそれぞれ見られなか
ったので、必ずしも流行に関心がある人がそのような美容室に行くわけではないとも言え
る。だが、このような相関が見られたことで、ファッションに関心がある人ではなく、流
行に関心がある人が流行発信型の特徴を持つ美容室をよく利用するということが言える。
従来、ファッションに関心がある人は流行に関心があると思われ、双方に相関がある結果
が出ると予想されたが、本研究において、さらに細かく見たことで、ファッションに関心
があっても流行にはあまり囚われないような人は、都市部の流行発信型の特徴を持つ美容
室に行くわけではないことが明らかになった。
また、ポピュラー尺度と規範重視度についても、正の相関係数 0.246(5%水準で有意)
が見られた。つまり、社会規範を重視する人も、流行関心型の美容室を利用するという相
関があると言える。これは、学生という立場から社会の規範を重視しつつ、流行を意識し
て美容室を選択していると考えられる。また、青学が渋谷にあることも考慮しなければな
らないだろう。なぜなら、学校から近いという理由だけで渋谷にあるおしゃれな流行発信
型の美容室を利用しているとも考えられるからである。
31
表 3-4-2 人分類尺度と美容室分類尺度の相関係数<渋谷>
ファッション関心
度
流行関心度
ヘアスタイル
個性化
関心度
志向度
規範重視度
ポピュラー尺度
0.154
0.146
0.135
-0.048
-0.105
ローカル尺度
0.188(*)
0.108
0.106
0.078
0.145
高級尺度
0.097
0.020
-0.004
-0.004
0.109
(*).相関係数は5%水準で有意である。
表 3-4-2 より、渋谷では、ファッション関心度とローカル尺度について、正の相関係数
0.188(5%水準で有意)が見られた。つまり、ファッションへの関心が高い人ほど、地域
密着型の美容室を利用するということである。美容室のタイプを考えれば、地域密着型と
流行発信型とでは相反するタイプであると言えるので、この結果は青学のそれと反対の相
関を意味する。この結果には驚いたが理由を考えてみると、ローカル尺度を構成する項目
に「技術がある」や「リラックスできる」「お気に入りの美容師がいる」など、流行以前に
美容室として魅力的な要因が含まれていることが影響しているのではないかと推測した。
要するに渋谷での結果は、ファッションに関心のある人でも、美容室を選ぶ時は技術や親
しみがもてる雰囲気を重視していると考えられる。
また、青学と渋谷の両者において、規範重視度と高級尺度は相関が見られなかったため、
青学、渋谷ともに仮説Ⅱ−ⅱは支持されなかった。同様にして、ファッション関心度や個
性化志向度とポピュラー尺度との間に負の相関は見られなかったため、仮説Ⅱ−ⅲも支持
されなかった。
では次に、人の流行への関心と支払う料金との関係を見るために、回帰式から出したそ
れぞれの残差と人分類尺度の相関分析を行った。結果は表 3-4-3 のとおりである。
表 3-4-3 <青学・渋谷>回帰式による残差と人分類尺度の相関係数
場所
残差
ファッション関心
度
流行関心度
ヘアスタイル関
心度
個性化志向度
規範重視度
青学
0.206
0.202
0.008
0.175
0.079
渋谷
-0.207(*)
-0.136
-0.254(**)
0.018
-0.022
(**).相関係数は1%水準で有意である。
(*).相関係数は5%水準で有意である。
結果を見ると、青学では、どれも有意な相関は見られなかった。よって、どんなタイプ
の人でも割安割高といった値段ついての相関は見られないと言える。
一方、渋谷ではファッション関心度とヘアスタイル関心度について負の相関が見られた。
相関係数はそれぞれ、-0.207(5%水準)、-0.254(1%水準)である。つまり、ファッショ
32
ンへの関心が高い人ほど、割安の料金を支払っているということである。また、ヘアスタ
イル関心度についても同様のことが言える。ファッションに関心のある人については、地
域密着型の美容室を利用することからも、都心部ではなく郊外の割安料金で施術を受ける
傾向にあるということである。この料金設定がファッション関心度とローカル尺度との相
関を生んだ原因とも考えられる。ヘアスタイルへの関心が高い人の相関については、あく
まで推測だが、美容室に行く頻度も高いため割安の美容室を選んで利用しているのかもし
れない。
次に、人のタイプと利用する美容室との関係について見ていく。都市部と郊外では各々
の人分類尺度に有意な差があるかを T 検定により分析した。その結果は、表 3-4-4、表 3-4-5
のとおりである。
表 3-4-4 人分類尺度による都市部と郊外との比較<青学>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
場所
人数
平均値
標準偏差
都心部
25
14.760
2.934
郊外
35
13.829
3.120
都心部
25
4.760
2.087
郊外
35
4.600
2.018
都心部
25
8.480
1.873
郊外
35
8.029
1.978
都心部
25
10.480
2.551
郊外
35
8.371
3.971
都心部
25
3.040
1.060
郊外
35
3.657
1.187
t値
有意確率
1.168
0.247
0.299
0.766
0.891
0.377
2.501
0.015
-2.075
0.042
表 3-4-4 より、青学では、個性化志向度においてt値=2.501、有意確率=0.015 となり、
5%水準で平均値に有意な差がある。つまり、帰無仮説「都市部の美容室と郊外の美容室の、
個性化志向度の平均値に差はない」は棄却され、都市部の方が郊外よりも平均値は有意に
高いといえる。これは、郊外にある美容室よりも都市部の美容室を利用する人のほうが個
性化志向が高いことを意味する。その他の尺度においては有意な差が見られなかった。
表 3-4-5 人分類尺度による都市部と郊外との比較<渋谷>
ファッション関心度
場所
人数
平均値
標準偏差
都心部
53
15.377
2.331
郊外
44
14.727
2.424
t値
有意確率
1.343
0.182
33
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
都心部
53
4.925
1.651
郊外
44
4.773
1.878
都心部
53
8.774
1.527
郊外
44
8.591
1.618
都心部
53
10.887
2.614
郊外
44
10.523
2.510
都心部
53
3.245
1.159
郊外
44
3.182
1.040
0.424
0.673
0.571
0.569
0.695
0.489
0.281
0.779
表 3-4-5 より、渋谷では、どの尺度においても都市部と郊外に有意な差は見られなかった。
よって、都市部の美容室を利用する人と郊外の美容室を利用する人とでは、それぞれの尺
度によって示される特徴に差がないことがいえる。しかし、平均値を見ると、すべての尺
度において都市部の方が郊外よりも高い値となっている。よって、統計的検定では有意な
結果は得られなかったが、統計量を見ると、ファッションへの関心、流行への関心、ヘア
スタイルへの関心がそれぞれ高い人の方が都市部の美容室を利用すると言える。また、個
性化志向が強い人および社会的規範を重視する人の方が都市部の美容室を利用していると
も言える。
最後に、人のタイプと美容室の規模についての関係を分析するために、人分類尺度とス
タッフ数およびセット面数との相関を見てみた。その結果は、表 3-4-6 のとおりである。
表 3-4-6 人分類尺度と美容室の規模を示す尺度の相関係数
場所
青学
渋谷
ファッション
関心度
流行関心度
ヘアスタイル関
個性化
心度
志向度
規範重視度
スタッフ数
0.045
0.069
0.058
0.085
-0.072
セット面数
-0.123
-0.115
-0.045
-0.063
0.137
スタッフ数
-0.102
-0.121
-0.098
-0.034
-0.180(*)
セット面数
-0.001
0.011
0.063
0.041
-0.174(*)
(*).相関係数は5%水準で有意である。
結果を見ると、青学では、それぞれの尺度間に有意な相関は見られなかった。よって、
人のタイプで利用する美容室の規模は変わることはないと言える。
一方、渋谷の結果では、規範重視度とスタッフ数およびセット面数について、それぞれ 5%
水準で有意な負の相関が見られた。よって、社会的規範を重視する人ほど、規模の小さい
美容室を利用する傾向にあるといえる。
34
3.5
情報メディアへの接触と美容室選択の関係
ここでは、人がどのような形で美容室の情報を得て、またどのような情報を得ることで
利用する美容室を選択したのかということについて、人分類尺度の平均値の差を見ながら
明らかにしていく。さらに、どのようなタイプの人が美容室を選択する上で、どのような
情報を最も重要視しているかについても考察していく。
3.5.1
情報源と美容室選択との関係
まず、ここでは情報源との接触について考える。どのようなタイプの人がどのような情
報源から美容室の情報を得ているのかについて見ていきたい。本研究では、質問紙 Q11 の
項目を以下の4つのカテゴリーに分類する。また、それぞれを構成する項目はカッコ内の
とおりである。なお、質問紙には接触した情報源を全て選んでもらったため、一人の人が
複数の情報源を利用している場合もある。また「その他」の項目は除いて分析した。
・雑誌(ファッション雑誌、ヘアカタログ雑誌の計2項目)
・雑誌以外のメディア(新聞広告、チラシ、テレビ、インターネット、街頭などにあるフ
リーペーパー(Hot Pepper など)の計5項目)
・友人や知人(友人や知人からの情報)
・たまたま見かけた(たまたま見かけた)
では、4つのカテゴリーに分けた情報源について、それらの情報源から美容室の情報を
得た人とそうでない人との平均値を人分類尺度別に見ていき、それぞれ T 検定によってそ
の平均値に有意な差があるかを分析する。
まずは、雑誌から情報を得た人とそうでない人について比較する。結果は表 3-5-1、表 3-5-2
のとおりである。
表 3-5-1 雑誌から情報を得た人とそうでない人の比較<青学>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
人数
平均値
標準偏差
×
55
14.000
3.073
○
5
16.600
1.517
×
55
4.546
2.008
○
5
6.000
2.000
×
55
8.136
1.979
○
5
8.800
1.303
×
55
9.164
3.620
○
5
10.200
3.347
t値
有意確率
-1.860
0.068
-1.552
0.126
-0.702
0.485
-0.616
0.540
35
規範重視度
×
55
3.290
1.149
○
5
4.600
0.548
-4.516
0.002
※雑誌から情報を得た人を○、そうでない人を×とする。
表 3-5-1 より、青学での結果は、規範重視度においてt値=-4.516、有意確率=0.002 と
なり、1%水準で平均値に有意な差が見られた。つまり、雑誌以外から情報を得た人とそう
でない人との間には規範重視度について有意な差がある。この結果から、雑誌から情報を
得た人の方がそうでない人よりも社会的規範を重視すると言える。しかし、統計量を見る
と雑誌から情報を得た人は全体の8%しかいないため、この結果の信頼性は低いと考える。
また、その他の尺度においては雑誌から情報を得た人とそうでない人に5%水準で有意な
平均値の差は見られなかった。よって、仮説Ⅲ−ⅰ「流行やファッションへの関心が高い
人ほど、利用する美容室の情報をファッション誌(ヘアスタイルなどの美容室の情報が多
く掲載されている雑誌)から得ている」は支持されない。
表 3-5-2 雑誌から情報を得た人とそうでない人の比較<渋谷>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
82
15.037
2.338
○
15
15.333
2.690
×
82
4.805
1.774
○
15
5.133
1.642
×
82
8.671
1.556
○
15
8.800
1.656
×
82
10.768
2.583
○
15
10.467
2.503
×
82
3.244
1.095
○
15
3.067
1.163
t値
有意確率
-0.441
0.660
-0.666
0.507
-0.293
0.770
0.418
0.677
0.571
0.569
※雑誌から情報を得た人を○、そうでない人を×とする。
表 3-5-2 より、渋谷では、どの尺度においても雑誌から情報を得た人とそうでない人の平
均値には5%水準で差は見られなかった。よって、仮説Ⅲ−ⅰ「流行やファッションへの
関心が高い人は、利用する美容室の情報をファッション誌(ヘアスタイルなどの美容室の
情報が多く掲載されている雑誌)から得ている」は支持されない。
どちらのデータにも当てはまるが、雑誌から情報を得ている人の割合は青学で8%、渋
谷でも15%にしかならない。このことから、ファッションやヘアスタイルの情報源とし
て雑誌は大きな役割を果たしているが、美容室の情報源としては十分な役割を果たしてい
ないと推測できる。
36
次に雑誌以外のメディアから情報を得た人とそうでない人を同様の方法で比較する。結
果は表 3-5-3、表 3-5-4 のとおりである。
表 3-5-3 雑誌以外のメディアから情報を得た人とそうでない人の比較<青学>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
49
14.020
3.288
○
11
15.091
1.446
×
49
4.571
2.179
○
11
5.091
1.136
×
49
8.061
2.066
○
11
8.909
0.944
×
49
9.449
3.446
○
11
8.364
4.202
×
49
3.469
1.226
○
11
3.091
0.831
t値
有意確率
-1.670
0.103
-1.122
0.271
-2.068
0.046
0.907
0.368
0.971
0.335
※雑誌以外のメディアから情報を得た人を○、そうでない人を×とする。
表 3-5-3 より、青学では、ヘアスタイル関心度においてt値=-2.068、有意確率=0.046
となり、5%水準で平均値に有意な差が見られた。つまり、雑誌以外のメディアから情報を
得た人とそうでない人との間にはヘアスタイル関心度について有意な差がある。この結果
から、雑誌以外のメディアから情報を得た人の方がそうでない人よりもヘアスタイルへの
関心か高いと言える。この結果についても、雑誌と同様にデータ数が少ないので信頼性は
低いと考えられる。
表 3-5-4 雑誌以外のメディアから情報を得た人とそうでない人の比較<渋谷>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
人数
平均値
標準偏差
×
86
14.988
2.413
○
11
15.818
2.089
×
86
4.744
1.709
○
11
5.727
1.902
×
86
8.593
1.604
○
11
9.455
0.934
×
86
10.884
2.605
○
11
9.455
1.809
t値
有意確率
-1.088
0.279
-1.774
0.079
-1.739
0.085
1.762
0.081
37
規範重視度
×
86
3.151
1.112
○
11
3.727
0.905
-1.648
0.103
※雑誌以外のメディアから情報を得た人を○、そうでない人を×とする。
表 3-5-4 より、渋谷での、どの尺度においても雑誌以外のメディアから情報を得た人とそ
うでない人では5%水準で平均値に有意な差は見られなかった。
また、雑誌以外のメディアを情報源とした人の割合は、青学では 18%、渋谷では 11%で
あった。特に青学での割合はかなり高く、これはカリスマ美容師などがテレビに数多く取
上げられたり、駅の近くや飲食店などに置いてあるクーポンマガジンが増えていること、
そして地域新聞などに割引券を添えた広告を出す美容室などが増えてきていることと関係
しているのではないかと推測できる。
次に、友人や知人などの人から美容室の情報を得た人とそうでない人を同様の方法で比
較する。その結果は表 3-5-5、表 3-5-6 のとおりである。
表 3-5-5 友人や知人からの情報を得た人とそうでない人の比較<青学>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
33
14.636
3.060
○
27
13.704
3.023
×
33
4.818
2.228
○
27
4.481
1.784
×
33
8.545
1.889
○
27
7.815
1.942
×
33
9.545
3.153
○
27
8.889
4.079
×
33
3.212
1.139
○
27
3.630
1.182
t値
有意確率
1.181
0.242
0.636
0.527
1.472
0.146
0.703
0.485
-1.389
0.170
※友人や知人から情報を得た人を○、そうでない人を×とする。
表3-5-5より、青学では、どのタイプの人においても友人や知人から情報を得ている人
とそうでない人の平均値には5%水準で有意な差は見られなかった。よって、仮説Ⅲ−ⅱ
「社会的規範を重視する傾向にある人ほど、利用する美容室の情報を信頼できる知人や友
人から得ている」および仮説Ⅲ−ⅲ「流行やファッションに無頓着な人ほど、利用する美
容室の情報を信頼できる知人や友人から得ている」は支持されないと言える。
38
表 3-5-6 友人や知人からの情報を得た人とそうでない人の比較<渋谷>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
45
15.044
2.713
○
52
15.115
2.083
×
45
4.911
1.952
○
52
4.808
1.572
×
45
8.733
1.789
○
52
8.654
1.356
×
45
10.689
2.410
○
52
10.750
2.707
×
45
3.111
1.092
○
52
3.308
1.112
t値
有意確率
-0.145
0.885
0.289
0.773
0.248
0.804
-0.117
0.907
-0.876
0.383
※友人や知人から情報を得た人を○、そうでない人を×とする。
表 3-5-6 より、渋谷での結果は青学と同様に、どのタイプの人についても友人から情報を
得た人とそうでない人の平均値には5%水準で有意な差は見られなかった。よって渋谷に
おいても、仮説Ⅲ−ⅱおよび仮説Ⅲ−ⅲともに支持されない。
最後に、美容室の前を通りがかったり、看板が目に入ったから利用してみた、といった
たまたま見かけたときに美容室の情報を得た人とそうでない人を同様の方法で比較する。
その結果は表 3-5-7、表 3-5-8 のとおりである。
表 3-5-7 たまたま見かけた人とそうでない人の比較<青学>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
49
14.510
2.931
○
11
12.909
3.390
×
49
4.878
1.996
○
11
3.727
2.005
×
49
8.367
1.811
○
11
7.545
2.382
×
49
9.306
3.537
○
11
9.000
3.950
×
49
3.469
1.120
○
11
3.091
1.375
t値
有意確率
1.592
0.117
1.726
0.090
1.282
0.205
0.254
0.800
0.971
0.335
※たまたま見かけた人を○、そうでない人を×とする。
39
表 3-5-7 より、青学では、どのタイプの人においても利用した美容室をたまたま見かけた
という人とそうでない人の平均値に5%水準で有意な差は見られなかった。
表 3-5-8 たまたま見かけた人とそうでない人の比較<渋谷>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
78
15.141
2.334
○
19
14.842
2.630
×
78
4.949
1.690
○
19
4.474
1.982
×
78
8.744
1.463
○
19
8.474
1.954
×
78
10.731
2.572
○
19
10.684
2.583
×
78
3.244
1.059
○
19
3.105
1.286
t値
有意確率
0.488
0.626
1.062
0.291
0.673
0.503
0.071
0.944
0.489
0.626
※たまたま見かけた人を○、そうでない人を×とする。
表 3-5-8 より、渋谷でも青学と同様、利用した美容室をたまたま見かけたという人とそう
でない人との平均値には5%水準で有意な差は見られなかった。
偶然に美容室を見かけて利用するということは、あまり美容室自体に関心がなく、どこ
の美容室も同じであるという考えがあるからなのかもしれない。さらに、何も調べること
なく、人からの情報もなく、ただ通りがかったり偶然見つけたような美容室を利用すると
いう人が、青学では 18%、渋谷では 20%とかなり高い割合を占めていた。
では次に、各々の人分類尺度について情報源のグループ間には平均値の差があるのだろ
うか。それを見るために各人分類尺度を従属変数、4つの情報源を独立変数として分散分
析を行った。なお、各個人について情報源が複数である場合は分析から除いて考えた。こ
のときの各情報源の度数は表 3-5-9 のとおりである。また、分散分析の結果は表 3-5-10 の
とおりである。
表 3-5-9 分散分析における各グループの度数
度数(青学)
度数(渋谷)
雑誌
4
9
雑誌以外のメディア
8
6
友人や知人
22
46
たまたま見かけた
8
17
40
合計
42
78
表 3-5-10 人分類尺度について情報源のグループ間の比較
青学
渋谷
F値
有意確率
F値
有意確率
ファッション関心度
1.747
0.174
0.208
0.891
流行関心度
2.633
0.064
0.313
0.816
ヘアスタイル関心度
0.745
0.532
0.337
0.798
個性化志向度
0.212
0.888
0.426
0.735
規範重視度
2.036
0.125
1.278
0.288
表 3-5-10 より、青学においても渋谷においても、情報源のグループ間には5%水準で平
均値に有意な差は見られなかった。この結果を、仮説Ⅲ−ⅰ「流行やファッションへの関
心が高い人は、利用する美容室の情報をファッション誌(ヘアスタイルなどの美容室の情
報が多く掲載されている雑誌)から得ている」にあてはめて考えると、雑誌から情報を得
た人とそれ以外の情報源から得た人とでは流行関心度に差はないと言えるので、この分析
結果においても、仮説Ⅲ−ⅰは支持されない。同様に考えて、友人や知人から情報を得た
人とそれ以外の情報源から得た人とでは規範重視度に差はなく、流行関心度にも差はない
といえるので、この分析においても、仮説Ⅲ−ⅱ「社会的規範を重視する傾向にある人は、
利用する美容室の情報を信頼できる知人や友人から得ている」および仮説Ⅲ−ⅲ「流行や
ファッションに無頓着な人は、利用する美容室の情報を信頼できる知人や友人から得てい
る」はともに支持されない。
3.5.2
情報内容と美容室選択との関係
ここでは、美容室についての情報の内容と人のタイプとの関係を見ていく。どのような
人がどのような内容の情報を見て、利用する美容室を決めたのだろうか。さらに、美容室
の選択をする時に、最も重要だと思う内容はどういったものなのかということを人のタイ
プと関連させて見ていくことにする。
まず、実際に上述した「雑誌」
「雑誌以外のメディア」
「友人や知人」
「たまたま見かけた」
といった4つの情報源から、どのような情報を得たのかについて見ていく。そこで、本研
究では質問紙 Q12 にある情報の内容を以下のような3つのカテゴリーに分けて分析してい
くこととする。また、それらを構成する項目はカッコ内とおりである。なお、質問紙の項
目の中で「店の地図」「最寄り駅などからのアクセス方法」については、ほとんどの情報の
中に含まれる項目であること、また美容室の本質に関わらない情報ということを考慮し、
41
分析から除くこととした。また、「その他」についても除いて分析する。
・流行のヘアスタイル(流行のヘアスタイル)
・価格についての内容(価格、割引内容、クーポン券、の計3項目)
・美容室についての内容(店の写真、店の雰囲気などの紹介、美容師の紹介・コメント、
の計3項目)
では、このように3つのカテゴリーに分けた美容室に関する情報の有無により、各々の
人分類尺度の平均値に有意な差が見られるかについて、T 検定による分析を行った。
まずは、流行のヘアスタイルの有無について各人分類尺度の平均値に差が見られるかを
分析した。その結果は表 3-5-11、表 3-5-12 のとおりである。
表 3-5-11 流行のヘアスタイルの有無による比較<青学>
人数
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
平均値
標準偏差
×
53
13.868
3.051
○
7
16.857
1.345
×
53
4.415
1.926
○
7
6.571
1.902
×
53
8.057
1.946
○
7
9.429
1.397
×
53
9.151
3.682
○
7
10.000
2.828
×
53
3.302
1.170
○
7
4.143
0.900
t値
有意確率
-2.545
0.014
-2.788
0.007
-1.779
0.077
-0.586
0.560
-1.827
0.073
※流行のヘアスタイルの情報があった場合を○、なかった場合を×とする。
表 3-5-11 より、青学では、ファッション関心度について、t値=-2.545、有意確率=0.014
となり、5%水準で平均値に有意な差が見られた。つまり、流行のヘアタイルを見て美容
室を選択した人とそうでない人との間にはファッション関心度について有意な差がある。
この結果から、流行のヘアスタイルを見て美容室を選択した人の方がそうでない人よりも
ファッションへの関心が高いと言える。また、流行関心度について、t値=-2.788、有意確
率=0.007 となり、1%水準で平均値に有意な差が見られた。つまり、流行のヘアタイルを
見て美容室を選択した人とそうでない人との間には流行関心度についても有意な差がある。
この結果から、流行のヘアスタイルを見て美容室を選択した人の方がそうでない人よりも
流行への関心が高いと言える。その他の尺度については、流行のヘアスタイルの有無によ
る各尺度の平均値に有意な差は見られなかった。
42
表 3-5-12 流行のヘアスタイルの有無による比較<渋谷>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
78
15.127
2.339
○
19
14.889
2.632
×
78
4.949
1.790
○
19
4.444
1.542
×
78
8.709
1.537
○
19
8.611
1.720
×
78
10.772
2.390
○
19
10.500
3.276
×
78
3.266
1.140
○
19
3.000
0.907
t値
有意確率
0.380
0.705
1.106
0.272
0.238
0.812
0.333
0.743
0.923
0.358
※流行のヘアスタイルの情報があった場合を○、なかった場合を×とする。
表 3-5-12 より、渋谷では、全ての尺度について、流行のヘアスタイルを見て美容室を選
択した人とそうでない人との平均値には有意な差が見られなかった。
次に、価格情報の有無による比較を同様の方法で分析した。結果は表 3-5-13、3-5-14 の
とおりである。
表 3-5-13 価格情報の有無による比較<青学>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
27
13.259
3.504
○
33
15.000
2.411
×
27
4.074
2.401
○
33
5.151
1.544
×
27
7.778
2.242
○
33
8.576
1.582
×
27
9.259
3.644
○
33
9.242
3.588
×
27
3.407
1.118
○
33
3.394
1.223
t値
有意確率
-2.192
0.034
-2.016
0.049
-1.559
0.126
0.018
0.986
0.044
0.965
※価格についての情報があった場合を○、なかった場合を×とする。
表 3-5-13 より、青学では、ファッション関心度について、t値=-2.192、有意確率=0.034
43
となり、5%水準で平均値に有意な差が見られた。つまり、価格情報を見て美容室を選択
した人とそうでない人との間にはファッション関心度について有意な差がある。この結果
から、価格情報を見て美容室を選択した人の方がそうでない人よりもファッションへの関
心が高いと言える。また、流行関心度について、t値=-2.016、有意確率=0.049 となり、
5%水準で平均値に有意な差が見られた。つまり、価格情報を見て美容室を選択した人と
そうでない人との間には流行関心度についても有意な差がある。この結果から、価格情報
を見て美容室を選択した人の方がそうでない人よりも流行への関心が高いと言える。その
他の尺度については、価格情報の有無による各尺度の平均値に有意な差は見られなかった。
表 3-5-14 価格情報の有無による比較<渋谷>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
57
15.017
2.482
○
40
15.175
2.263
×
57
4.807
1.777
○
40
4.925
1.730
×
57
8.561
1.637
○
40
8.875
1.453
×
57
10.877
2.733
○
40
10.500
2.309
×
57
3.298
1.149
○
40
3.100
1.033
t値
有意確率
-0.319
0.751
-0.325
0.746
-0.972
0.333
0.712
0.478
0.872
0.386
※価格についての情報があった場合を○、なかった場合を×とする。
表 3-5-14 より、渋谷では、全ての尺度について、価格情報を見て美容室を選択した人と
そうでない人との平均値には有意な差が見られなかった。
次に、接触した情報源の内容の中に美容室についての情報があったか無かったかによる
比較を同様の方法で分析した。結果は表 3-5-15、3-5-16 のとおりである。
表 3-5-15 美容室情報の有無による比較<青学>
ファッション関心度
流行関心度
人数
平均値
標準偏差
×
27
13.815
3.397
○
33
144.546
2.751
×
27
4.519
2.173
○
33
4.788
1.933
t値
有意確率
-0.921
0.361
-0.508
0.613
44
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
×
27
8.000
2.173
○
33
8.394
1.767
×
27
9.667
3.669
○
33
8.909
3.530
×
27
3.000
1.177
○
33
3.727
1.069
-0.783
0.437
0.813
0.420
-2.506
0.015
※流行のヘアスタイルの情報があった場合を○、なかった場合を×とする。
表 3-5-15 より、青学では、規範重視度について、t値=-2.506、有意確率=0.015 となり、
5%水準で平均値に有意な差が見られた。つまり、美容室情報を見て選択した人とそうで
ない人との間には規範重視度について有意な差がある。この結果から、美容室情報を見て
美容室を選択した人の方がそうでない人よりも社会的規範を重視すると言える。その他の
尺度については、美容室情報の有無による各尺度の平均値に有意な差は見られなかった。
表 3-3-16 美容室情報の有無による比較<渋谷>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
37
14.216
2.616
○
60
15.617
2.076
×
37
4.460
1.865
○
60
5.100
1.644
×
37
8.270
1.836
○
60
8.950
1.320
×
37
9.865
2.417
○
60
11.250
2.522
×
37
3.027
1.040
○
60
3.333
1.130
t値
有意確率
-2.764
0.004
-1.770
0.080
-1.961
0.055
-2.696
0.009
-1.336
0.185
※流行のヘアスタイルの情報があった場合を○、なかった場合を×とする。
表 3-5-16 より、渋谷では、ファッション関心度について、t値=-2.764、有意確率=0.004
となり、1%水準で平均値に有意な差が見られた。つまり、美容室情報を見て選択した人
とそうでない人との間にはファッション関心度について有意な差がある。この結果から、
美容室情報を見て選択した人の方がそうでない人よりもファッションへの関心が高いと言
える。また、個性化志向度について、t値=-2.696、有意確率=0.009 となり、こちらも1%
水準で平均値に有意な差が見られた。つまり、美容室情報を見て選択した人とそうでない
人との間には個性化志向度についても有意な差がある。この結果から、美容室情報を見て
選択した人の方がそうでない人よりも個性化志向が高いと言える。その他の尺度について
は、美容室情報の有無による各尺度の平均値に有意な差は見られなかった。
45
以上の結果を踏まえて仮説Ⅳを検証していく。
まず、青学においては、流行のヘアスタイルを見て美容室を選択した人の方がそうでな
い人よりもファッションへの関心および流行への関心が高いという結果となった。しかし、
美容室情報の有無によるファッション関心度と流行関心度には有意な平均値の差が見られ
なかった。よって、仮説Ⅳ−ⅰ「流行やファッションへの関心が高い人ほど、流行のヘア
スタイルや店の雰囲気の紹介を見て利用する美容室を決める」は、流行のヘアスタイルに
ついては支持されたが、店の雰囲気の紹介といった美容室情報については支持されなかっ
た。また、美容室情報を見て選択した人の方がそうでない人よりも社会的規範を重視する
という結果となったことから、仮説Ⅳ−ⅱ「社会的規範を重視する傾向にある人ほど、店
の雰囲気の紹介を見て利用する美容室を決める」は支持された。しかし、価格情報におい
ては、それらの情報を見て美容室を選択した人の方がそうでない人よりもファッションへ
の関心が高いという結果となった。よって、仮説Ⅳ−ⅲ「流行やファッションに無頓着な
人ほど、価格や割引内容を見て利用する美容室を決める」は支持されなかった。
一方、渋谷においては、美容室の情報を見て選択した人の方がそうでない人よりも個性
化志向が高く、ファッションへの関心も高い結果が見られたが、流行のヘアスタイルの有
無による平均値の有意な差は見られなかった。よって、仮説Ⅳ−ⅰは店の雰囲気の紹介と
いった美容室情報の部分で支持されたが、流行ヘアスタイルの部分では支持されなかった。
また、美容室情報の有無についての規範重視度の平均値には有意な差が見られないことか
ら、仮説Ⅳ−ⅱは支持されない。さらに、仮説Ⅳ−ⅲは価格情報の有無による全尺度の平
均値に有意な差が見られなかったことから、支持されないと言える。
次に、情報内容の間には人分類尺度の平均値に有意な差があるかを見るために分散分析
を行った。まず、流行のヘアスタイル、価格情報、美容室情報といった3つのカテゴリー
のうち、グループ間で重複するケースは除いて分析を行った。しかし、青学でのデータ数
が少ないことにより、流行のヘアスタイルの水準が1となってしまった為、信頼できる結
果が得られないと判断し、渋谷の結果のみを記すこととする。分散分析による結果は表
3-5-17 のとおりである。また、グループ間に有意な差があった尺度についてはダンカンの
多重範囲検定を行い、具体的にどのグループ間で差があるかを検定した。その結果は表
3-5-18 のとおりである。
表 3-5-17 人分類尺度について情報内容のグループ間の比較<渋谷>
F値
有意確率
ファッション関心度
6.779
0.004
流行関心度
2.778
0.077
ヘアスタイル関心度
3.781
0.034
個性化志向度
10.036
0.000
46
規範重視度
0.404
0.671
表 3-5-18 情報内容のグループ間における差の検定結果<渋谷>
度数
ファッション関心度 ヘアスタイル関心度 個性化志向度
Ⅰ
流行のヘアスタイル
2
12.000
価格情報
8
13.375
美容室情報
25
Ⅱ
Ⅰ
Ⅱ
6.500
13.375
15.760
7.750
Ⅰ
Ⅱ
6.500
7.750
8.760
9.125
9.125
12.040
※Ⅰ,Ⅱはそれぞれサブグループを表す。
表 3-5-17 より、渋谷での結果は、ファッション関心度について、F 値=6.779、有意確率
=0.004 となり、1%水準で情報内容のグループ間の平均値に有意な差が見られた。また、
ヘアスタイル関心度について、F 値=3.781、有意確率=0.034 となり、5%水準で情報内
容のグループ間の平均値に有意な差が見られた。さらに、個性化志向度について、F 値=
10.036、有意確率=0.000 となり、1%水準で情報内容のグループ間の平均値に有意な差が
見られた。また、表 3-5-18 より各尺度における情報内容の水準間で検定した結果、どの尺
度においても、流行のヘアスタイルと美容室情報の間に統計的に差があることが明らかと
なった。このことから、流行のヘアスタイルを見た人の方が美容室情報を見た人よりもフ
ァッション関心度、ヘアスタイル関心度、個性化志向度がそれぞれ高いということが言え
る。
3.5.3
美容室選択における最重要情報とは
次に、美容室を選択する時、最も重要視する情報は何であるかについて、人のタイプと
の関係を見ながら明らかにしていく。
質問紙 Q13 の選択肢は Q12 と同じであるので、先述した分け方と同様に、3 つのカテゴ
リーに分類する。そして、それぞれの要因の間で人分類尺度に平均値の差があるのかを分
散分析により見たところ、どの要因間にも有意な平均値の差が見られない結果となった。
そこで、各要因についてもっと詳しく分析するために、
「流行のヘアスタイルとその他の
情報」、「価格情報とその他の情報」、「美容室情報とその他の情報」というように独立変数
を2つにして、T 検定を行い、人分類尺度の平均値の差を検定した。これにより、各々の情
報について最も重要視するのはそういったタイプの人であるかが明らかになると考えた。
まずは、流行のヘアスタイルを最も重要視する人とそうでない人の比較である。その結
果が表 3-5-19、表 3-5-20 である。
47
表 3-5-19 流行のヘアスタイルを最も重要視する人とそうでない人の比較<青学>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
57
14.702
3.028
○
3
17.000
1.000
×
57
4.544
1.983
○
3
7.000
1.732
×
57
8.123
1.928
○
3
10.000
1.000
×
57
9.175
3.621
○
3
10.667
2.887
×
57
3.333
1.123
○
3
4.667
1.528
t値
有意確率
-1.643
0.106
-2.100
0.040
-1.665
0.101
-0.700
0.487
-1.975
0.053
※ 流行のヘアスタイルを最も重要視する場合を○、そうでない場合を×とする。
表 3-5-19 より、青学では、流行関心度について、t値=-2.100、有意確率=0.040 となり、
5%水準で平均値に有意な差が見られた。つまり、美容室選択において流行のヘアスタイル
を最も重視する人とそうでない人との間には流行関心度について有意な差がある。この結果
から、流行のヘアスタイルを最も重要視する人の方がそうでない人よりも流行への関心が高
いと言える。
表 3-5-20 流行のヘアスタイルを最も重要視する場合とそうでない場合の比較<渋谷>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
89
15.101
2.445
○
8
14.875
1.642
×
89
4.888
1.799
○
8
4.500
1.069
×
89
8.719
1.581
○
8
8.375
1.408
×
89
10.843
2.513
○
8
9.375
2.875
×
89
3.157
1.096
○
8
3.875
0.991
t値
有意確率
0.256
0.799
0.598
0.551
0.594
0.554
1.565
0.121
-1.785
0.077
※流行のヘアスタイルを最も重要視する人を○、そうでない人を×とする。
表 3-5-20 より、渋谷では、全ての尺度について、流行のヘアスタイルを最も重要視する
48
人とそうでない人との平均値には有意な差が見られなかった。
次に、価格情報を最も重要視する人とそうでない人の比較である。結果は表 3-5-21、表
3-5-22 のとおりである。
表 3-5-21 価格情報を最も重要視する人とそうでない人の比較<青学>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
31
14.613
3.343
○
23
13.435
2.873
×
31
5.097
2.196
○
23
4.217
1.906
×
31
8.226
2.045
○
23
7.913
1.929
×
31
9.903
3.841
○
23
8.174
3.143
×
31
3.548
1.179
○
23
3.260
1.137
t値
有意確率
1.358
0.180
1.537
0.130
0.569
0.572
1.764
0.084
0.900
0.372
※価格情報を最も重要視する人を○、そうでない人を×とする。
表 3-5-21 より、青学では、全ての尺度について、価格情報を最も重要視する人とそうで
ない人との平均値には有意な差が見られなかった。
表 3-5-22 価格情報を最も重要視する人とそうでない人の比較<渋谷>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
58
15.328
2.219
○
28
15.429
2.185
×
58
4.879
1.579
○
28
5.250
2.066
×
58
8.776
1.475
○
28
9.036
1.347
×
58
10.983
2.704
○
28
10.214
2.200
×
58
3.259
1.085
○
28
3.321
1.188
t値
有意確率
-0.199
0.843
-0.838
0.406
-0.787
0.434
1.308
0.195
-0.244
0.808
※価格情報を最も重要視する人を○、そうでない人を×とする。
49
表 3-5-22 より、渋谷では、全ての尺度について、価格情報を最も重要視する人とそうで
ない人との平均値には有意な差が見られなかった。
最後に、美容室情報を最も重要視する人とそうでない人の比較である。結果は表 3-5-23、
表 3-5-24 のとおりである。
表 3-5-23 美容室情報を最も重視する人とそうでない人の比較<青学>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
規範重視度
人数
平均値
標準偏差
×
23
13.435
2.873
○
31
14.613
3.343
×
23
4.218
1.905
○
31
5.097
2.196
×
23
7.913
1.929
○
31
8.226
2.045
×
23
8.174
3.143
○
31
9.903
3.841
×
23
3.261
1.137
○
31
3.548
1.179
t値
有意確率
-1.358
0.180
-1.537
0.130
-0.569
0.572
-1.764
0.084
-0.900
0.372
※美容室の情報を最も重要視する人を○、そうでない人を×とする。
表 3-5-22 より、青学では、全ての尺度について、美容室情報を最も重要視する人とそう
でない人との平均値には有意な差が見られなかった。
表 3-5-23 美容室情報を最も重視する人とそうでない人の比較<渋谷>
ファッション関心度
流行関心度
ヘアスタイル関心度
個性化志向度
人数
平均値
標準偏差
×
28
15.429
2.185
○
58
15.328
2.219
×
28
5.250
2.066
○
58
4.879
1.579
×
28
9.036
1.347
○
58
8.776
1.475
×
28
10.214
2.200
○
58
10.983
2.705
t値
有意確率
0.199
0.843
0.920
0.406
0.787
0.434
-1.308
0.195
50
規範重視度
×
28
3.321
1.188
○
58
3.259
1.085
0.244
0.808
※美容室の情報を最も重要視する人を○、そうでない人を×とする。
表 3-5-23 より、渋谷では、全ての尺度について、美容室情報を最も重要視する人とそう
でない人との平均値には有意な差が見られなかった。
以上の結果をまとめると、青学での流行のヘアスタイルを最も重要視する人とそうでな
い人の流行関心度に有意な平均値の差が見られた以外は、すべて有意な差は見られなかっ
た。つまり、青学での結果のみ言える事だが、統計的に差がある流行のヘアスタイルの情
報は流行への関心の高い人に向けた情報として利用していけばよいといえる。言い換えれ
ば、流行への関心の高い人の集客率を高めるためには、流行のヘアスタイルについて情報
を発信するような美容室の宣伝をしていけばよいと言えるのではないか。しかし、青学で
は流行のヘアスタイルを最も重要視する人の割合が5%にしか達していないことから、信
頼性の高い結果とは言えないかもしれない。その他の二つの情報については、各尺度の平
均値に統計的な差を与えるものは見られなかった。よって、各タイプの人の集客率を上げ
る為には、どのような情報によって美容室宣伝を行えばよいかという問題を解決するため
の方法は導き出すに至らなかった。
51
第4章
4.1
結論
本研究における結論と今後の展望
本研究における最大の目的は、流行やファッションへの関心が高い人が美容室選択にお
いてどのような行動をとるかについて明らかにし、それをもとに最適な宣伝方法を提唱す
ることにあった。その見地から、本研究の分析結果を青学、渋谷の順に見ていくことにす
る。
まず、青学では、情報源については仮説Ⅲ−ⅰの棄却により、流行やファッションへの
関心度とファッション雑誌との関係は見られなかった。しかし、ヘアスタイルへの関心が
高い人については雑誌ファッション雑誌以外のメディアから情報を得ているという結果が
見られた。さらに、情報源についての度数分布を見ると、
「友人や知人からの情報」が最も
多く、全体の 45%を占めていた。
情報内容については仮説Ⅳ−ⅰの支持からも分かるとおり、流行への関心が高い人とフ
ァッションへの関心が高い人において流行のヘアスタイルと価格情報を見て美容室の選択
を行うことが分かった。
さらに仮説Ⅱ−ⅰが支持されたことからも分かるとおり、流行関心の高い人は流行発信
型の美容室を利用することが言えた。
これらを踏まえた上で最適な宣伝方法は、まず、雑誌以外のメディアに流行のヘアスタ
イルとクーポン券などの割引価格の情報を掲載し宣伝する方法が考えられる。さらに、来
店してくれる人に十分なサービスを施し、満足して帰ってもらうことである。そして、そ
の評判が人から人へと伝えられ、結果的にはより多くの顧客を獲得できると考える。ここ
で、統計的に支持されなかった「人」を情報媒体にした理由は、流行に関心のある人の情
報源において最適なものが統計的に明らかにできなかったことと友人や知人を情報源とし
た人の割合が最も高かったからである。さらに、このような流行への関心が高い人に対す
る宣伝は、流行発信型の特徴を持つ美容室で特に有効な方法といえる。その理由は仮説Ⅱ
−ⅰが支持されたことからも明らかである。
次に、渋谷における結果について考える。情報源についてはこちらも統計的に明らかに
なるものは無かった。しかし、渋谷のおいてもと同様に「友人や知人から」情報を得てい
る人の割合が最も高かった(53%)。
また、情報内容については、流行のヘアスタイルではなく美容室の情報を見て選択を行う
ことが分かった。
さらに、ファッションへの関心が高い人は、地域密着型の美容室に行くことが明らかに
なった。しかし、これは次のように考えられる。渋谷の人は流行への関心があっても美容
室にはそれを求めず、技術があり、気分転換できて、お気に入りの美容師がいるというこ
とを求めるのである。したがって、これらの項目で構成されるローカル尺度、つまり地域
密着型の美容室を利用するという結果になったと考えられる。
52
これらを踏まえた上で最適な宣伝方法は、やはり来店してくれる人に対し、十分なサー
ビスを施し、満足して帰ってもらうことである。この理由は青学と同様である。さらに、
雑誌などのメディアを介して宣伝を行う場合は、流行のヘアスタイルの提案よりもその美
容室はどんな雰囲気でどんなサービスがあるか、などの美容室情報を中心にアピールする
ことが有効な宣伝と言える。
本研究で、最も単純なことを改めて実感した。人の性格と行動を予測することはとても
難しいということである。そして、人が美容室を選択することに関しても、そこにはいく
つもの要因が重なりなっていることを実感した。また、美容室における最も重要なことは、
その店の質を高めることだということも、再度実感できた点である。それを気づかせてく
れたのは、アンケート調査において情報媒体と情報内容における質問において、最も多か
った回答がそれぞれ「友人や知人から」と「店の雰囲気などの情報」であったことである。
これは、人が美容室についてどう感じるかが、そのまま宣伝になるということを意味する。
つまり、技術があったり、リラックスできる雰囲気であったり、サービスが行き届くよう
な美容室ならば、お客さんはいい印象を持ち、それが人伝いに広がって顧客の獲得に繋が
ると言えるのではないか。本研究において、実際の人々の声をアンケート調査できたから
こそ、このようなことを再度確認できたのである。
今後、流行に関する研究は、時の流れが速くなっている今の時代だからこそ行われるべ
きだと感じた。また、美容室の調査においては、さらに細かく美容室の中で人はそのよう
に感じ、どんなことを望むのかという人間の心理を調査するべきである。その調査によっ
て明らかになったことを踏まえ、美容室自体を改善していくことで来客者にとってより良
い美容室となり、さらにはその評価が顧客増大に繋がると考えられるからである。
53
<引用文献リスト>
・ 飽戸 弘(1992) 第 1 章 パーソナル・コミュニケーション『コミュニケーションと社
会心理学』筑摩書房、pp18∼37
・ 斎藤 定良(1957)「流行」、千輪 浩編『社会心理学』誠進書房、pp201∼214
・ 池内 一(1968)「流言」、八木冕編『心理学Ⅱ』培風館、pp310∼317
・ Graham,S ( 1956 ) Class
and
Conservatism
in
the
Adoption
of
Innovations,Human Ralations,vol.
・ Simmel,G ( 1904 ) Fasion,Int.Quart.,10.1904 〔 Reprinted in American
J.Social.62,1957〕
・ http://www.shinbiyo.com/byk/date.html(『美容と経営』データ・バンクより抜粋、新
美容出版)
54