為替介入 マクロ金融論2010 1 為替介入とは? 為替介入とは? =外為市場において民間部門による外貨の 超過需要(超過供給)が発生した場合に、 通貨当局が超過需要(超過供給)相当分 の外貨を外為市場に供給(需要)すること。 マクロ金融論2010 2 為替介入vs為替管理 為替介入=市場メカニズムを利用。通貨 当局が介入することによって外国為替市 場での不均衡が解消される。 為替管理=外国為替取引そのものを規 制する。外国為替市場で不均衡が発生し たまま。 マクロ金融論2010 3 為替介入の目的 為替相場安定化(スムージング) 為替相場目標(ターゲット) *為替相場ターゲットの目的には、いろいろ ある。 →貿易収支安定化、経済成長、インフレ抑 制etc. マクロ金融論2010 4 通貨当局のバランスシート 資産 負債 国内信用残高 (対政府信用+対民間信用) ハイパワードマネー ハイパワードマネー 外貨準備残高 マクロ金融論2010 5 為替介入(外貨買い介入) と通貨当局のバランスシート 資産 負債 国内信用残高 (対政府信用+対民間信用) ハイパワードマネー ハイパワードマネー 外貨準備残高 外貨買い介入による 外貨準備残高増 ハイパワードマネー増 マクロ金融論2010 6 為替介入と不胎化政策 為替介入→外貨準備残高増減 ①不胎化政策を伴わない場合 国内信用残高を一定としたまま、外貨準備残高 増減がハイパワードマネーの増減に結びつく。 ②不胎化政策を伴う場合 外貨準備残高増減を相殺するように国内信用残 高を調整して、ハイパワードマネーを一定に保 つ。 マクロ金融論2010 7 不胎化政策を伴う為替介入と 通貨当局のバランスシート 資産 負債 国内信用残高 (対政府信用+対民間信用) 国内信用残高減 ハイパワードマネー ハイパワードマネー 外貨準備残高 外貨買い介入による 外貨準備残高増 マクロ金融論2010 8 不胎化政策を伴う為替介入 自国通貨の減価を抑える為替介入を不胎化す ると、 ①為替介入によって外貨準備残高が減少するが、 貨幣供給量は不変。 ②ファンダメンタルズが変化しないために、自国通 貨減価圧力が続く。 ③外国通貨売り介入を続けなければならない。 ④いずれは外貨準備残高が尽きる。 マクロ金融論2010 9 為替介入の効果(1) 不胎化政策を伴わない為替介入=貨幣 供給残高(ファンダメンタルズ)の変化を通 じた効果 (例) 円高抑制の為替介入(=ドル買い介入) ⇒貨幣供給量の増加 ⇒金利低下or物価上昇 ⇒円安ドル高 マクロ金融論2010 10 為替介入の効果(2) 不胎化政策を伴う為替介入=貨幣供給 残高(ファンダメンタルズ)の変化がない。 ⇒金利の変化がない。 マクロ金融論2010 11 為替介入の効果(3) 内外資産が完全代替 s0 = i − i + s * e 1 ①金利(不胎化政策を伴わない介入) e s ②シグナリング効果( 1 ) 不胎化政策を伴う為替介入が将来の金 融政策の変化を予想させる場合に、有効。 マクロ金融論2010 12 為替介入の効果(4) 内外資産が不完全代替 β 1 * e s0 = i − i + s1 + (b − f − α ) 1+ β 1+ β ( ) ①リスク・プレミアムを通じた効果 不胎化政策を伴う為替介入=自国通貨建 て債券と外国通貨建て債券のスワップ取 引⇒bとfを通じて有効。 マクロ金融論2010 13 不胎化政策を伴う為替介入と 通貨当局のバランスシート 資産 負債 国内信用残高 (対政府信用+対民間信用) 円建て債券売りオペ ハイパワードマネー ハイパワードマネー 外貨準備残高 ドル建て債券買いオペ マクロ金融論2010 14 為替介入の効果(5) 円高を抑制する為替介入 円建て債券売りオペ+ドル建て債券買い オペ ⇒民間部門に利用可能な供給残高(bの増 加とfの減少) ⇒ドル建て債券に対する円建て債券のリス ク・プレミアムが上昇 ⇒ドル高円安 マクロ金融論2010 15 為替介入の現実 外貨準備残高の変動から為替介入を推 計 財務省の「外国為替平衡操作の実施状 況」(http://www.mof.go.jp/1c021.htm)の データを利用 マクロ金融論2010 16 外貨準備残高変動と為替相場 億ドル 円/ドル 図4-2:為替相場と為替介入 10000 330 280 為替相場 230 通貨当局対外純資産(短期) 1000 ① ② ③ 180 ④ ⑥ ⑤ 100 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 マクロ金融論2010 130 80 17 円高・円安と為替介入 ①③⑤円高進行←ドル買い介入(円高抑制) ②④円安進行←ドル売り介入(円安抑制) ⑥円安進行←ドル買い介入(円安加速) マクロ金融論2010 18 BOJ Interventions and Dollar/Yen Movement (Jan/1991-Dec/2004) BOJ Intervention ( 100Million Yen) BOJ Intervention (against USdollar : 100Million Yen) Dollar/Yen (average of month) Dollar/Yen (Ave. of month) 150 70000 60000 140 50000 130 40000 125円/ドル 30000 120 20000 110 10000 0 100 -10000 90 -20000 80 Jan-91 May-91 Sep-91 Jan-92 May-92 Sep-92 Jan-93 May-93 Sep-93 Jan-94 May-94 Sep-94 Jan-95 May-95 Sep-95 Jan-96 May-96 Sep-96 Jan-97 May-97 Sep-97 Jan-98 May-98 Sep-98 Jan-99 May-99 Sep-99 Jan-00 May-00 Sep-00 Jan-01 May-01 Sep-01 Jan-02 May-02 Sep-02 Jan-03 May-03 Sep-03 Jan-04 May-04 Sep-04 -30000 マクロ金融論2010 19 第2.3 表 ドル・円介入日の中心値水準ごとの介入回数・総額 介入日の中心値 以上 未満 介入の方向 介入日数 介入総額(億円) 140 ~145 ドル売り 3 2,736 135 ~140 ドル売り 1 139 130 ~135 ドル売り 8 30,581 125 ~130 ドル売り 20 15,338 120 ~125 ドル買い 2 17,109 115 ~120 ドル買い 4 21,568 110 ~115 ドル買い 17 13,815 105 ~110 ドル買い 28 38,310 100 ~105 ドル買い 50 63,977 95 ~100 ドル買い 35 27,257 90 ~95 ドル買い 9 5,406 85 ~90 ドル買い 16 20,718 80 ~85 ドル買い 7 3,680 ドル売り累計 32 48,794 ドル買い累計 168 211,860 総合計 200 260,654 (注)これ以外に、ドル売り・マルク買い 1 回、マルク買い・円売り 1 回、ドル売り・ルピア 買い 5 回、ユーロ買い・円売り 5 回、があった。 ドル売り介入日の円・ドル中心値の最安値 126.50円 ドル買い介入日の円・ドル中心値の最高値 122.65円 マクロ金融論2010 伊藤隆敏「日本の通貨当局による為替 介入の分析」 2001年 20 為替介入の実際 (1) (2) 125円/ドルを境にして、それ以上におい て円買い介入。それ以下において円売り 介入。 1995年以前と1995年以降で為替介入が 変化。 1995年以前:頻繁かつ小規模 1995年以降:頻度が低下し、大規模 マクロ金融論2010 21
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