FIAT 500 TWINAIR LOUNGE(5段M/T

ROAD TEST
No.4987
フィアット500ツインエア
FIAT 500 TWINAIR
テスト車輌概要 MODEL TESTED
●モデル名:FIAT 500 TWINAIR LOUNGE(5段M/T仕様)●車輌本体価格:245.0万円(日本仕様:デュアロジック)
●日本発売時期:2011年3月●最高出力:85ps/5500rpm
●最大トルク:14.8kgm/1900rpm●0-97km/h加速:11.7秒●113-0km/h制動距離:53.7m
●最大求心加速度:na●テスト平均燃費:12.6km/ℓ●CO₂排出量:95g/km
オートカーの結論
★★★★★★★☆☆☆
3
4
2
1
1
WHEELS
ホイール
ラウンジは15インチアルミホイールが標準となる。試乗車
は欧州でオプション設定の16インチを装着。
076 AUTOCAR 7/2011
2
SECONDARY LIGHTS
補助ライト
往年の500を模したデザインだが、オリジ
ナルにはこのような補助ライトはない。
3
BONNET
ボンネット
オリジナルではクロームストリップだったラインが生産技術
の向上により、プレス加工とされている。
4
ENGINE
エンジン
1.4ℓユニットと同等の加速力をもたらす875ccの2気筒
エンジンのテクノロジーは、いずれ他社にも供給される。
FIAT 500 TWINAIR ROAD TEST
CO₂排出量の低減を至上命題とし、
フィアットが導き出した解答が、
HISTORY
この500に搭載されている、
小排気量、
2気筒、
ターボ過給というツインエア・ユニットだ。
やっぱりこうでなくちゃ
けれど環境性能も重要であるが、
それ以上に問われるのは走らせて愉しいクルマに
仕上がっているかどうかという一点だ。公称0-100km/h加速11秒フラットと、
額面上では環境性能とパフォーマンスの両立を実現しているように見えるが、
果たしてロードテスターを満足させうるハンドリング性能を備えているのだろうか。
WE LIKE
オリジナルの500もツインエアと同じく、2気筒を搭載していた。
Smooth and eager engine, Characterful sound, Style and finish, Low CO₂ figure
初代チンクェチェントの誕生から50年後の2007年に発表さ
スムーズで良く回るエンジン、個性的なサウンド、スタイルとフィニッシュ
れた500は、フィアットにとってはかなりのヒット作となり、利益
WE DON'T LIKE
をもたらしただけでなく、ブランドイメージの向上に大きく寄与
した。このツインエアはメカニカル的にもっとも先進的なバージ
Poor economy, Gearing limits tractability, Ride sometimes choppy, Price
ョンで、フィアットの誇るマルチエアバルブシステムを落とし込
経済性、高いギアでは低速域からの加速が鈍い点、ときどき揺さぶられるような乗り心地、価格
んだ2気筒エンジンを初めて搭載するモデルとなる。
7
6
5
5
EXHAUST
エグゾースト
ツインエアを表すバッジもなければテールパイプも他
バージョンと同一。素性を明かすのは排気音だけだ。
6
PARKING SENSORS
パーキングセンサー
日本仕様のラウンジでは標準となるリアパーキングセンサーだが、欧州仕様では
260ポンド
(=約3万5000円)のオプションとなる。
6
GLASS-ROOF
ガラスルーフ
ラウンジに標準の固定式ガラスルーフ(オプションで電動開閉式も用意)の開口部
は、オリジナル500のフリップバック式トップと同じプロポーションだ。
www.autocar-mag.com 077
2
007年にフィアットは1957年生まれのチンクェ
チェントを個性豊かな現代版として甦らせ、さらに
それ以降その新しいバージョンを毎年送り出すと約束し
た。公約どおり、アバルト・ブランドのモデルとコンバー
1
2
DASH
ダッシュボード
INSTRUMENT POD
メーター
ボディ同色の光沢のあるフィニッシュ。ガラスのようなマテリアルのスイッ ヴィンテージスタイルのメーターには、同心円型レブカウンターやトリップ
チ類もまた魅力的だ。
メーターなど、様々な情報が盛り込まれる。
ティブルの500Cが導入され、そして今回、ツインエア
と呼ばれるラディカルな2気筒エンジン搭載車が登場し
た。このモデルに搭載されたエンジンのシリンダーの数
が1957年の500のそれと同じなのは単なる偶然である
(往年のファンには嬉しい偶然だが)。フィアットの狙い
はCO₂排出量が可能な限り少ないエンジンを開発する
ことにあり、そして果たせるかなターボチャージャー付き
で排気量875ccのバーチカルツインという解決策を導
き出した。この完全新設計のエンジンは、EU公認燃費に
よる比較で、現在市販されているガソリンエンジン車と
してCO₂排出量と燃料消費がもっとも少ない。またこれ
は2014年から実施予定のより厳しい排ガス規制Euro
6にも適合している。
フィアットはこのツインエアを、1.2ℓ4気筒モデルより
も上位に位置づけている。エントリーグレードが215万
2
円の“ポップ”、装備内容の充実した上級グレードが245
万円の“ラウンジ”で、今回テストするのは後者である。
DESIGN & ENGINEERING●意匠と技術
★★★★★★★★☆☆
1
最高出力85ps、最大トルク14.8kgm、CO₂排出量
1
5
110g/kmという数値を見ると、このニューモデルのエ
ンジンは小型のディーゼルユニットだと思ってしまうかも
しれない。そのピークトルクはわずか1900rpmという低
回転で発生するうえ、CO₂排出量が100g/kmを切るガ
ソリン車はきわめて少ないからだ。ツインエアのスペック
は、500マルチジェットに搭載されたディーゼルエンジン
の出力75ps、
トルク14.8kgm/1500rpm、CO₂排出量
104g/kmというそれに近い。だが異なるのはツインエ
4
アが、それらの数値をマルチジェットの半分の気筒数と、
ディーゼルではなくガソリン燃料で達成している点だ。こ
れはちょっとした偉業である。フィアットが直近で2気筒
エンジン車を作ったのは1980年のことだが、それは自
然吸気でわずか30psのパンダだったからだ。
小排気量、2気筒、ターボーチャージャー付きというこ
のエンジンの構成は、CO₂排出量の低減を絶対的な優
先課題とした結果、導き出されたものだ。またこのユニッ
トは2014年から強制される排ガス規制Euro6にも適合
する。だが、その出力数値が示しているように、優れたパ
フォーマンスの達成も目標であった。2気筒であろうとな
かろうと、このエンジンを搭載した500の0-100km/h
加速タイムはフィアットの公称で11秒フラットである。こ
れは見事なパフォーマンスといえる。
しかも公称燃費が
21.2km/ℓであることを考えればなおさらだ。
燃費向上の手助けとなるのが、フィアットのストップ&
スタートシステムとシフトインジケーター、ダッシュボード
に備えるエコボタンである。このエコボタンを押すとエン
ジンのトルク上限が14.8kgmから10.2kgmに引き下げ
られる。これは加速能力がさほど重要視されない低速度
3
GEARLEVER
シフトノブ
5段M/T仕様のボール型シフトノブは握りやす
い。日本仕様はデュアロジックのみの設定。
4
MP3 PLAYER
MP3プレーヤー
ポップ/ラウンジともに、iPodなどのMP3プレー
ヤー対応のオーディオを標準とする。
5
STEERING WHEEL
ステアリング
使 いやす いオーディオコントローラー付きレ
ザーステアリングが標準装備だ。
での市街地走行向けに用意されたものだ。このモードで
はステアリングの操舵力でも軽減される。
シリンダー配置は直列で、エンジンは横置きとなって
ではより軽量なドライブシャフトとブレーキの装着を正当
いる。日本仕様では、ギアボックスは5段セミA/Tのデュ
化できない。ツインエア・モデルはクローズドボディ
(ポッ
であるが、レトロ調で華やかなデザインのおかげで、そん
アロジックが組み合わされる。デュアロジック装備車で
プおよびラウンジ)とコンバーティブルバージョン(ラウ
なふうには感じられない。フィニッシュのクオリティはシ
は、欧州仕様に設定されている5段M/T車よりCO₂排出
ンジのみ)の両方に設定される。
ティカーの平均水準よりも高い。光沢のあるボディ同色
エンジン以外の部分については、4気筒エンジン搭載
INTERIOR●室内
リッシュなステアリングホイールが魅力的だ。このステア
モデルと大きな違いはない。ツインエアの車重は4気筒
★★★★★★★★★☆
リングホイールのアジャストはチルトのみだが、シートの
1.4ℓモデルと比べて10kg軽くなっているだけで、これ
キャビンについてはツインエアのために特に変更され
背もたれの角度が無段階で調節できるので、テレスコが
量がさらに3g/km軽減される。
078 AUTOCAR 7/2011
た部分はない。そしてこれは紛れもないエコノミーカー
のダッシュボード、対照的な色使いの計器パネル、スタイ
FIAT 500 TWINAIR ROAD TEST
HOW BIG IS IT?
SMALLER, LIGHTER, FASTER
Cd=0.32
良いこと尽くめ
860mm
185
litres
5
73 20m
0m m
m min
ma
x
min
m ax
0m m
86 70mm
10
CO₂排出量の低減がこのツインエアのセールスポイ
1488mm
965m
980m m min
m max
0.32
ントである。これはフィアット・パワーテクノロジーズ社
が開発したモジュラーエンジンで、1気筒あたり400〜
450ccの排気量がもっとも熱効率に優れているという
研究成果に基づいている。2気筒化と低フリクションタイ
703mm
2300mm
63%
ミングチェーンの採用でフリクションロスを低減。マルチ
543mm
39%
37%
3546mm
幅は狭いが、前席のスペースは十分。シートはサポート性が不足気味だ。
エア燃焼制御と、ターボチャージャーによって、875ccの
2気筒から十分なパワーを発生する。マルチエア・テクノ
ロジーの採用によってスロットルバタフライをなくし、ポ
装備しており、これとターボチャージャー、ツインエアの
1408mm
1413mm
リジッドブロックのために、4気筒1.2ℓユニットと比べた
1627mm
ircle: 10.68m
Turning c
ンピングロスを10%低減した。だがバランサーシャフトを
ときの重量軽減は10%にとどまる。だがパワーは15%大
きい。
7.1º
obscured
後席は大人が座るには狭い。
サイドパネルの窪みは機能性を考慮している。
幅:1020mm
高さ:
570/890mm
9.1º
obscured
VISIBILITY TEST
奥行き:
540/1180mm
視認性テスト
幅が狭いボディと直立したスクリーンのために、
Aピラーが特に邪魔に感じる。
新開発の2気筒ユニットは4気筒1.2ℓよりも10%軽く、
15%パワフルだ。
トランクは意外に広い。容量はリアシートを起こした状態で185ℓだ。
「2気筒875ccのユニットは緩慢であるどころか、強力なトルクと
よく回るエンジン特性のおかげで、存分にドライビングが愉しめる」
ない不便さを軽減できる。
ドライバーズシートはハイト調
されている。
節が可能だが、ランバーサポートがないため、長距離走
であり、また個性的なユニットでもある。
さらにこのエンジンはトルクも強力だ。ラグはほとんど
行での快適性には不満を感じる。
PERFORMANCE●動力性能
感じられず、ターボチャージャー付きであることを忘れ
この500のキャビンはお世辞にも広々としているとは
★★★★★★★☆☆☆
てしまいそうだ。だが50km/hで4速ギアに入れると、
いえないが(特に横幅)、前席は妥当な広さがある。だが
2気筒で875ccのエンジンと聞くと、緩慢なパフォー
少々不快な騒音が聞こえる。この時点でエンジンはピー
後席に大人が座ると、頭が天井に触れ、膝は前席の背も
マンスを想像するかもしれないが、実際にはこのツイン
クトルクを発生する1900rpmで回っているにもかかわ
たれに押しつけられる状態になる。とはいえ、短距離なら
エアはキビキビと走り、最高速度も174km/hに達する。
らずである。その結果、
ドライバーは4速ギアの代わりに
問題ない。サイドパネルの窪みが単なるデザインのため
さらにその強力なトルクと、よく回るエンジン特性のおか
3速を使うことが多くなる。この3速は広範な速度域で使
のものではないことにも気づくだろう。
げで、
ドライビングが愉しめる。魅力的なサウンドもそれ
用可能で、130km/hでも十分使える。ツインエアは4速
室内の収納スペースとしては助手席前のシェルフ、
を促してくれる。普通に走らせているときは穏やかな騒
と5速ギアがかなりハイギアードに設定されており、高速
センターコンソールの運転席側の小さな小物入れ、
ドア
音しか聞こえないが、6000rpmのレッドライン近くまで
道路を高いギアで巡航できる。ただし、いったん速度を
ポケット、カップホルダーなどが用意されている。助手席
回すと(このツインエンジンは5500rpm以上回しても
落としてしまうと、元の速度に加速するのにシフトダウン
シートクッション下にも収納ボックスが隠れている。
トラ
あまり意味がない)、少し甲高くなり、一般的なスーパー
をしなければならない。
ンクは、滑稽なほど小さいパーセルシェルフから想像さ
ミニとはかなり異なる1957年当時の500のエンジンを
このツインエアでは、選択したギアによる加速能力の
れるほどは狭くはない。リアシート
(5:5分割式)を倒す
彷彿とさせるサウンドが聞こえてくる。ただし、より静か
違いが顕著に表われる。高い位置にマウントされたギア
と、使い勝手のいい荷物スペースとなる。
で、またボディを震わせる振動は伴わない。このツインエ
レバーのおかげでシフト操作はスムーズだが、加速と減
装備は充実しており、7個のエアバッグを備え、NCAP
アの排気音を少々荒々しいと感じる人がいるかもしれな
速を繰り返す状況で速いペースを維持して走るには、か
衝突安全テストで最高評価の5つ星を獲得している。今
い。また巡航速度では、低い周波数の騒音が聞こえるこ
なり頻繁なシフトチェンジを強いられる。これが今回のテ
回テストしたラウンジ(ベースグレードのポップより30万
とがあり
(特に上り坂でエンジンを酷使しているとき)、
ストでの燃費が12.6km/ℓという不満足な結果となった
円高い)には前席パワーウィンドウ、固定式のグラスルー
それを多少不快に思う人もいるかもしれない。だがたい
理由であろう。このテスト結果は公称燃費の21.2km/ℓ
フ、エアコン、革巻きステアリングホイール(オーディオ
ていの状況では、Bピラー周辺の風切り音のほうがより
に遠く及ばない。メーカー公称値が現実的な数字と異な
コントロール付き)、リアパーキングセンサーなどが装備
耳障りだ。全体的にこれは洗練度の高いパワーユニット
るのは自動車業界の半ば常識だが、このクルマの場合、
www.autocar-mag.com 079
TRACK NOTES
「ツインエアは素晴らしいサウンドを発する。そしてハンドリングも格段に良くなった」
■ドライサーキット
■発進加速
ラップタイム:na
(フォードKa 1.2スタイル+
参考タイム:1分29秒9)
今回、
ドライサーキットでの計測は
不可能だった。
テストトラック条件:天候雨、湿潤路面、気温摂氏3.0度
0-402m発進加速:19.1秒(到達速度:117km/h)
0-1000m発進加速:35.5秒(到達速度:143km/h)
T3
T6
T2 T5
T7
FIAT 500 TWINAIR
T1
T4
Start/finish
48km/h 64km/h
3.8s
80km/h
97km/h
113km/h
8.3s
11.7s
16.8s
5.4s
0
5s
10s
129km/h
24.2s
15s
20s
FORD KA 1.2 STYLE+
48km/h
64km/h
3.9s
0
■ウェットサーキット
ラップタイム:1分18秒5
(フォードKa 1.2スタイル+
参考タイム:1分15秒6)
横方向のグリップ不足が500のタ
イムが遅い主な理由である。
タイ
トな曲率のコーナーではひどいア
ンダーステアに苦しみ、高速コー
ナーではスロットルを戻すとオー
バーステアが出た。
T2でトラクション不足に苦しみ、車速が35k m / h
に落ちた。フォードK aはそのタイトなヘアピンでも
42km/hまでしか落ちなかった。
80km/h
97km/h
113km/h
9.1s
13.6s
19.3s
6.1s
5s
10s
15s
129km/h
29.0s
20s
25s
■制動距離
乾燥路面
48km/h-0
9.8m
DRY
0
10m
WET
20m
113km/h-0
53.7m
30m
40m
26.6m
48km/h-0
スロットルを残してT5に進入すると、500のリアアクスルは
ドライバーが適切な操作をしないとトラクションを失う。
80km/h-0
50m
57.4m
113km/h-0
湿潤路面
FIAT 500 TWINAIR DATA
エンジン
9.7m
80km/h-0
26.6m
計測テストデータ
シャシー/ボディ
エンジン性能曲線
車輌重量:900kg
形式:直列2気筒ターボ, 875cc
最高出力:85ps/5500rpm
100
最大トルク:14.8kgm/1900rpm
90
許容回転数:6000rpm
80
比出力:97ps/ℓ
ボア×ストローク:80.5×86.0mm
バルブ配置:4バルブDOHC
圧縮比:10.0:1
Power output (bhp)
ブロック:スティール/ヘッド:アルミニウム
150
14.8kgm at
1900rpm
60
50
100
40
Torque (lb ft)
駆動方式:フロント横置き前輪駆動
ホイール:
(前)6.5J╳16、
(後)6.5J╳16
タイヤ:
(前)195/55R16、
(後)195/55R16
70
馬力荷重比:94ps/t
抗力係数:0.32
200
85ps at
5500rpm
30
50
20
5段M/T
ギア比/1000rpm時車速<km/h>
①4.10/6.92②2.16/13.0③1.34/21.1
④0.97/29.0⑤0.77/36.9
最終減速比:3.876
10
0
変速機
0
Engine (rpm)
2000
4000
6000
0
あまりにも差が大きすぎる。実は現実的な燃費において
8000
はマルチジェット・ディーゼル搭載の500のほうが、ずっ
と優れている。
燃料消費率
サスペンション
静粛性
メーカー公表値:
前:マクファーソン・ストラット式/コイル
アイドリング:47dB
市街地/郊外/混合モード
後:
トーションビーム式/コイル
3速最高回転時:75dB
20.4/27.0/24.4km/ℓ
RIDE & HANDLING●乗り心地と操縦安定性
3速48km/h走行時:66dB
ステアリング
オートカー実測値
総平均/動力性能計測時/ツーリング
12.6/7.0/14.9km/ℓ
★★★★★★★★☆☆
3速80km/h走行時:69dB
形式:電動アシストラック&ピニオン
ロック・
トゥ・ロック:3.0
500のシャシーは以前はこのクルマでもっとも注目さ
3速113km/h走行時:71dB
れていなかった部分だった。揺さぶられるような乗り心
安全装備
最小回転半径:10.7m
地と平凡なハンドリングは、そのほかの領域における磨
ABS/EBD
燃料タンク容量:35ℓ
ブレーキ
現実的な航続距離:438km
き上げられた魅力とは対照的に不満足な仕上がりだった
Euro NCAP/★★★★★
のである。だが昨年7月にデビューした500Cモデルで
前:
φ240mm通気冷却式ディスク
はサスペンション(主にリアアクスルの動きに影響する
後:
φ180mmドラム
CO₂排出量:95g/km
部分)に変更が加えられ、かなりの改善が見られた。とき
どき表出していた急に跳ねるような挙動(特にスポーツ
中間加速〈秒〉
発進加速
実測車速mph(km/h) 0-30
(48)
0-40
(64)
0-50
(80)
0-60
(97)
0-70
(113)
0-80
(129)
0-90
(145)
0-100
(161)
0-110
(177)
0-120
(193)
0-130
(209)
0-140
(225)
0-150
(241)
0-160
(257)
080 AUTOCAR 7/2011
秒
3.8
5.4
8.3
11.7
16.8
24.2
35.6
ー
ー
ー
ー
ー
ー
ー
mph(km/h)
モデルで顕著だった)はほとんど消え失せた。小さなバ
各ギア最高速度
2速
3速 4速 5速
20-40
(32-64)
3.8
30-50
(40-80)
ー
40-60
(64-97)
ー
50-70
(80-113)
ー
60-80
(97-129)
ー
70-90
(113-145)
ー
80-100
(129-161) ー
90-110
(145-177) ー
100-120
(161-193) ー
110-130
(177-209) ー
120-140
(193-225) ー
130-150
(209-241) ー
140-160
(193-257) ー
6.2 ー ー
5.9 8.615.4
6.5 9.013.2
8.410.715.3
ー13.319.0
ー18.6 ー
ー ー ー
ー ー ー
ー ー ー
ー ー ー
ー ー ー
ー ー ー
ー ー ー
42km/h 126km/h 174km/h*
6000rpm 6000rpm 4706rpm
1
3
5
ンプは吸収され、キャビンに伝わるような揺れは表われ
ない。隆起を通過する際のピッチングが、この500のホ
イールベースの短さを実感させることがあるが、前ほど
不満には感じない。また、テスト車はオプションの16イン
チホイールを装着していたが、乗り心地にはさほど大き
な影響を与えなかった。サスペンションも落ち着いたも
ので、伝わってくる衝撃とロードノイズはこのクラスの一
2
部のクルマよりも小さい。結果として、この500はこれま
4
でよりも快適に乗れるようになった。
電動パワーステアリングも改善された。依然、フィール
79km/h 174km/h
6000rpm 5984rpm
*claimed
が豊潤な部類とはいえないが、少なくとも人工的な抵抗
FIAT 500 TWINAIR ROAD TEST
ROAD TEST
No.4987
FIAT 500 TWINAIR
AUTOCAR VERDICT ★★★★★★★☆☆☆
「個性的でスタイリッシュだが、
現実的な経済性が難点」
感がより自然なタッチになり、電動パワステにありがちな
中立付近の手応えのなさが多少軽減された。エコモード
に切り替えても、いまひとつなステアリングのダイレクト
感に変わりはないが、操舵に要する力は軽減される。
ハンドリングも向上している。跳ねるような動きが少な
くなり、ずっと安定感が増し、コーナーを走らせるのが愉
しくなった。ステアリングもシャープになっている。さらに
ハードに走らせると、ラインをスロットルで調節できるこ
とにも気がつく。ただしシートの横方向のサポート性と一
体感の不足が愉しみをスポイルする。ESP(装備車の場
合)も同様だ。ブレーキの効き具合は良好で、急ブレーキ
での制動能力も十分に備えている。
BUYING & OWING●購入と維持
★★★★★★★☆☆☆
ツインエアは特別安いクルマというわけではないが
フィアット500は見事に造り込まれた現実的な解釈のチンクェ
だが現実の使用条件では、このエンジンの燃費は公称値とは
(1.2ℓユニット搭載車よりも高い)、オプションリストの
チェントとしてわれわれを魅了し続けている。フィニッシュも丁寧
かけ離れている。だが、この500を究極のエコノミーモデルとし
誘惑に駆られて購入価格をアップさせすぎなければお買
い得なクルマである。さらにCO₂排出量が110g/kmで
良心の呵責にさほど苛まされずにすむ。組み立て品質は
で、オプションも豊富だ。今回のツインエアは先進のエンジニア
てではなく、活発でサウンド的に個性的なモデルとして見なせ
リングでさらに魅力を高めている。2気筒エンジンはディーゼル
ば、期待はずれの度合いは著しく少なくなるだろう。デビュー当
と同等のパワーとトルクを、より高い洗練度で提供する。そして
初よりもベターなクルマになっている。そしてスタイルはもちろ
そのサウンドはかつての500を知る者の記憶を蘇らせる。
ん、ほかの領域におけるその魅力は衰えていない。
良好で、高い信頼性が証明されている。だが燃費はとて
も残念なテスト結果に終わった。年間の走行距離が少な
TESTERS' NOTES テスターのひと言コメント
いひとはさほど大きな問題にはならないだろうが、長距
●残念ながら、
エンジンルームはスタイリッシュなプラスティックカバーで覆われ、
ツインエア・ユニットは完全に隠れて見えない。
ジェイミー・コースターフィン
離を走るひとはいま一度検討する余地はあると提言して
●われわれのツーリングルートのテストは、高速道路を105〜115km/h で巡航するような状況を再現したものだ。速度を 90km/h
まで落とせば、18km/ℓ弱の燃費が達成できるかもしれないが、これは特に驚きの数字というわけではない。
マット・プライアー
ヴィッキー・パロット
●このツインエアは以前われわれがテストした1.4ℓのラウンジに比べて10kg軽いだけである。
おきたい。ただ、高回転で走らせてもこれほどの燃費で
あるという見方もできるだろう。
JOBS FOR THE FACELIFT マイナーチェンジ時に望むこと
●燃費を向上させてほしい。 ●巡航時に低周波の騒音が出ないようにしてほしい。 ●風切り音を低減してほしい。
TOP FIVES
HYUNDAI i10 1.2 STYLE
実用的シティカー
FIAT PANDA 1.2 DYNAMIC ECO FIAT 500 TWINAIR LOUNGE MINI FIRST
フィアット・パンダ1.2ダイナミック・エコ
車輌価格
邦貨換算約180万円
邦貨換算約175万円
245.0万円(日本仕様:デュアロジック) 邦貨換算約230万円
邦貨換算約220万円
最高出力
78ps/6000rpm
60ps/5000rpm
85ps/5500rpm
76ps/6000rpm
69ps/5500rpm
12.0kgm/4000rpm
10.4kgm/2500rpm
14.8kgm/1900rpm
14.4kgm/2250rpm
10.5kgm/3000rpm
12.8秒
(0-100km/h)
13.9秒
11.7秒
13.2秒
(0-100km/h加速)
13.6秒
164km/h
155km/h
174km/h
175km/h
159km/h
20.0km/ℓ
20.0km/ℓ
24.4km/ℓ
18.5km/ℓ
19.6km/ℓ
1010kg
860kg
900kg
1060kg
940kg
119g/km
119g/km
95g/km
127g/km
119g/km
個性的なエンジンで運転が愉しいが、
経
済性は期待はずれ。
500ツインエアほどエコではないが、依
然として維持費が安く、魅力的。
何事もそこそこで、
特に素晴らしいわけで
はない。
ライバルほど安くも愉しくもない。
★★★★★★★☆☆☆
★★★★★★★☆☆☆
★★★★★★★☆☆☆
最大トルク
0-100km/h加速
最高速度
燃料消費率(欧州/混合)
車輌重量
(公称値)
CO₂排出量
われわれはこう考える
結論
万能なシティカーのベスト。愉しくて安くて 古くさいが依然素晴らしい。安っぽい感じ
快適で便利。
もするが、
実用的で愉しい。
★★★★★★★★☆☆
★★★★★★★★☆☆
フィアット500ツインエア・ラウンジ
ミニ・ファースト
FORD Ka 1.2 TITANIUM
ヒュンダイi10 1.2スタイル
フォード・カー1.2タイタニアム
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