第12回 ウェゲナー:大陸は移動する 15年12月3日木曜日 1 アルフレッド・ウェゲナー アルフレッド・ウェゲナー(1880∼ 1930年)はドイツの気象学者で地球 物理学者でもある。 1912年、フランクフルトで開催され た地質学会で大陸移動説を発表し、 1915年に「大陸と海洋の起源」を出 版した。発表当時、センセーショナル な話題となった。大陸移動の原動力が 説明できず、新たな証拠を見つけよう と、50歳の誕生日にグリーンランドの 探検に単独で出発したが遭難してしま った。 1924年44歳のウェゲナー 15年12月3日木曜日 2 アルフレッド・ウェゲナー アルフレッド・ウェゲナーはベルリン で牧師の子として生まれ、ハイデルベ ルグ、インスブルック、ベルリンの各 大学で学び、天文学の博士号を取得し た。しばらくの間、天文学者として勤 め、その後、マールブルグ大学の気象 学の講師となる。 15年12月3日木曜日 3 気球の滞空コンテストでの優勝 気球を使った高層大気研究の先 駆者で、1906年、兄のクルト とともに気球の滞空コンテスト に出場し、52時間という世界記 録をつくった。当時の世界記録 は35時間であった。 1906年パリでの気球コンテスト 15年12月3日木曜日 気球を用いた大気の調査(左から二人目がウェゲナー) 4 グリーンランド探検 ウェゲナーは生涯3回 のグリーンランド調査 を行っている。 氷河の大陸からの分離 を目の当たりにみて、 大陸移動説の正しさを 確信したという。 1912年第2回グリーンランド調査。基地で研究計画をたてるウェゲナー。 15年12月3日木曜日 5 ウェゲナーの家族 グリーンランドの探検後ドイ ツに帰国し、1913年には気 象学者ケッペンの娘エルザと 結婚した。その後、大気の熱 力学の研究からオーストリア のグラーツ大学の地球物理学 の教授となる 大陸と海洋の起源」を出版した翌年1916年の写真。 2歳の娘ヒルデをはさんで、エルザとアルフレッドの幸せそ うなワンショット。 15年12月3日木曜日 6 ウェゲナーの家族 写真は、左よりアルフレッド・ウェ ゲナー、妻のエルサ、義母のマリ ー・ケッペン、兄のクルトの4人。 この時、グラーツ大学の教授となっ ていた。 15年12月3日木曜日 7 恩師ケッペン 妻エルザの父は、高名なドイツの気象 学者・気候学者・植物学者。植物の分 布と気候を関連づけて、1923年に気 候区分を作った。 ケッペンはウェゲナーを優れた気象学 者にしたいと考えており、あまり広範 囲に興味を分散させないようにと忠告 を行っていた。 しかし、後にケッペンもウェゲナーの 情熱に負け、古生物の分布から白亜紀 の南極点の一を求め、大陸移動説の証 拠に一役をかっている。 15年12月3日木曜日 8 ケッペンの気候区分 この気候区分は、地理の授業で世界の高校生が必ず学ぶ区分となっている。 15年12月3日木曜日 9 大陸移動説の着想 1910年30歳のウェゲナー 1910年のある日、何気なく世界地図を眺めていると、大西洋を はさむ両岸の地形の類似に気づき大陸移動説を着想する。 15年12月3日木曜日 10 大陸移動説の着想 1910年30歳のウェゲナー 後年の研究者がコンピュータ でフィットさせた大陸の配置 ウェゲナーは当初、大陸が分裂・移動することが到底不可能と思 い、大陸移動について深く考えることをしなかった。 15年12月3日木曜日 11 大陸移動説の着想 1910年30歳のウェゲナー 後年の研究者がコンピュータ でフィットさせた大陸の配置 1911年、古生物の分布からブラジルとアフリカに陸橋があったと いう説に刺激され、大陸が移動したと確信を持つこととなった。 15年12月3日木曜日 12 巨大大陸パンゲア ウェゲナーは巨大大陸をパンゲアと 呼び、北方をローラシア、南方をゴ ンドワナとして細分した。また、当 時の海洋をテチス海とパンサラサ海 として区分した。 15年12月3日木曜日 13 大陸移動説 「大陸と海洋の起源」に書かれたオリジナルの図 15年12月3日木曜日 14 大陸移動の様子 大陸の分裂・移動を再現したアニメーション 15年12月3日木曜日 15 大陸の形のジグソーパズル 巨大大陸が存在したことを証明するた めには、大陸の形がたまたまフィット するだけでは証拠とならない。 ジグソーパズルに描かれた絵が一致し することが証拠となる。 15年12月3日木曜日 16 証拠1:岩石・地層の一致 大陸の岩石を20億年前の ブロック、20億年より新 しい変成した岩石の2つの 区分で比較した様子。 ジグソーパズルの模様が一 致することが分かる。 15年12月3日木曜日 17 証拠1:岩石・地層の一致 左図は、ウェゲナーの「大陸と海洋の 起源」に示されているアフリカ大陸と 南アメリカ大陸の岩石・地層の様子で アフリカの研究者、デュ・トワの論文 を引用したもの。 デュ・トワもウェゲナーの大陸移動説 に大賛成してくれた。 15年12月3日木曜日 18 証拠2:古生物の分布の一致 5つの大陸に共通する古生物の分布こそ、大陸が1つであったことの証拠となる 15年12月3日木曜日 19 証拠2:古生物の分布の一致 メソサウルス、古生代二畳紀に生息した60cm程度の小型は虫類 で、川や池をワニのように泳ぎながら淡水魚を食べていた。 15年12月3日木曜日 20 証拠2:古生物の分布の一致 キノグナータス 三畳紀のほ乳類型は虫類で、温血で 体毛を持ち、小動物や植物を食べて いた。体長は1.5∼2.5m リストロサウルス 三畳紀のほ乳類型は虫類で、植 物を食べていた。上あごに2本 の牙があり、樹木の根を掘り起 こし食べていた。 どちらもほ乳類型は虫類といわれる動物で、恐竜が栄える前の時代の生物。 15年12月3日木曜日 21 証拠2:古生物の分布の一致 古生代二畳紀の寒冷な気候を示す植物化石(グロソプテリス) 15年12月3日木曜日 22 証拠3:現在の生物分布の一致 北米大陸とユーラシア大陸との間で、カタツムリ、ミミズ、スズキ科の 淡水魚などの分布に共通性がある。 15年12月3日木曜日 23 証拠4:過去の氷河の流れた方向の一致 古生代の石炭紀から二畳紀にかけての氷河の痕跡が南アフリカ、インド、 オストラリア、南極大陸に見られるが、氷河が流れた方向が大陸を重ね 合わすと一致。 15年12月3日木曜日 24 証拠4:過去の氷河の流れた方向の一致 高い山から流れ下る氷河は、大地の岩盤に大きなひっかき傷を残す。 15年12月3日木曜日 25 大陸を動かす原動力は何? ウェゲナーは大陸を動かす原動力を、極離力(遠心力)と潮汐力に 求めた。 15年12月3日木曜日 26 大陸を動かす原動力は何? ウェゲナーは大陸を動かす原動力を、極離力(遠心力)と潮汐力に 求めた。しかし、他の研究者の計算により、遠心力と潮汐力では大 求めた。 陸は動かないと反論されてしまった。 15年12月3日木曜日 27 3回目のグリーンランド探検 15年12月3日木曜日 28 3回目のグリーンランド探検 15年12月3日木曜日 29 3回目のグリーンランド探検 ウェゲナー(右)と同行したイヌイットのラスムス・ヴィルムデン(左) 15年12月3日木曜日 30 3回目のグリーンランド探検 パイプで煙草を吸うウェゲナーとラスムス・ヴィルムセン 15年12月3日木曜日 31 3回目のグリーンランド探検 1930年11月1日、50歳の誕生日のウェゲナー 15年12月3日木曜日 32 ウェゲナーの埋葬 ウェゲナーは探検中に心臓麻痺で亡くなる。ウェゲナーを看取ったラスムスも遭難してしまった。 翌年、友人の研究者、兄のクルトによって遺体が発見され、埋葬しているところ。 15年12月3日木曜日 33 大洋底の解明:音波探査 1950年代後半、音波探査によって海底地形図が作成されるようになる。 15年12月3日木曜日 34 中央海嶺の発見 大西洋の中央に活火山からなる中央 海嶺と呼ばれる大山脈が存在するこ とが判明した。この中央海嶺こそ、 大陸を切り裂いた本人であった。 15年12月3日木曜日 35 世界の大洋底 大西洋中央海嶺はインド洋から太平洋へと延々と連なる大山脈であった。 15年12月3日木曜日 36 大洋底の年齢 深海掘削計画では、中央海嶺から離れるほど海底の年齢が古くなることが判明した。 15年12月3日木曜日 37 プレートテクトニクス 中央海嶺で作られた岩盤は左右に広がり、海溝に沈み込んでいく。 15年12月3日木曜日 38 プレートテクトニクス 地球表層は10数枚のプレートによって形成されている。 15年12月3日木曜日 39 プレートテクトニクス 日本列島にはハワイとオーストラリアが、数cm/年の速さで近づいてきてい る。 15年12月3日木曜日 40 プレートテクトニクス 中央海嶺で作られた岩盤は 左右に広がり、海溝に沈み 込んでいく。 大西洋は大陸を左右に押し 広げているが、太平洋は海 溝でプレートが沈み込んで おり、地震・火山が多発す る条件となっている。 15年12月3日木曜日 41 日本付近のプレート 15年12月3日木曜日 42 グリーンランドで防寒具を着たウェゲナー なぜ大陸移動説を思いついたかとい えば「もともと1枚の新聞であった 証拠には、断面同士が裂け目でつな がるではないか。」 15年12月3日木曜日 43 授業のまとめ ・古生代に存在していた巨大大陸はパンゲアといい、北方をローラ シア、南方をゴンドワナとよんだ。 ・大陸移動の証拠は、①岩石・地層の一致、②古生物の分布の一致、 ③生物分布の一致、④氷河の流れた方向の一致があげられる。 ・大陸を動かす力はマントルの熱対流が原動力。 ・大陸移動説はプレートテクトニクスへと進化し、地震や火山など、 地球表面の活動を包括的に説明できる。 ・大胆な発想だけでなく、専門を超えた多角的な視点で物事を捉え ることが大切。 15年12月3日木曜日 44
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