特集 計測標準フォーラム講演会 (2) コピー機 ・プリンターにおける放散微粒子の規制動向と測定技術 ― ドイツ環境ラベル ブルーエンジェルマークについて ― 富士ゼロックス株式会社 国際認証センター 宮田 大資 … 2 特許から見るフルーク・スーパー・サーモメーターの紹介 株式会社 TFF フルーク社 川部 直人 … 7 定量 NM R の適用性 ― 貝毒標準品の値付けについて ― 一般財団法人 日本食品分析センター 加藤 毅 … 13 西野 朋恵 … 18 JCSS 標準ガス及び国際基幹比 に関する取り組み 一般財団法人 化学物質評価研究機構 東京都立産業技術研究センター城南支所 ∼ ものづくりおおたの最前線と計測技術 ∼ 地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター 上本 道久 … 24 (株)デンソーにおける計測管理レベルの向上活動 株式会社 デンソーエムテック 田浦 浩之 … 32 本永 充 … 37 中央精機株式会社 高井 哲哉 … 43 産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質 独立行政法人 産業技術総合研究所 大畑 昌輝 … 50 硬さの JCSS の認定取得について 山本 充範 … 53 JCSS 校正への取り組みと計量管理 株式会社 エー・アンド・デイ 測定の不確かさ 簡易推定マニュアルの概要 株式会社 中京試験機 NMIJ 計測クラブの紹介 独立行政法人 産業技術総合研究所 IAJapanコーナー 編集後記 小見山耕司、竹歳尚之 … 56 山田達司、臼田 孝 独立行政法人 製品評価技術基盤機構 … 62 事 務 局 … 68 特集 計測標準フォーラム講演会 (2 ) コピー機・プリンターにおける放散微粒子の規制動向と測定技術 ― ドイツ環境ラベル ブルーエンジェルマークについて ― 富士ゼロックス株式会社 国際認証センター 宮 田 大 資 総揮発性有機化合物、Ozone:オゾン、Dust:粉塵、 はじめに Fine Particle(FP) and Ultra Fine Particle(UFP): 近年、家庭内やオフィス内の環境の快適性が注目さ 微粒子と超微粒子 (測定規格においては、放散微粒子 れるようになったことで、室内環境を良好に保つため、 をこの様に表現している。 )が挙げられる。現在、これ 建材や電子・電気機器等から排出/放散される化学物 らのケミカルエミッション項目には、各国の環境ラベ 質 (ケミカルエミッション)の制限を 慮することが ル取得の際に必要な規制として基準値が設けられてい 求められるようになった。その中でも、自動車排ガス る。そのため、コピー機・プリンターメーカーの多く 中に含まれる微粒子についてヨーロッパで規制化が始 は、安心で安全な製品の提供を目指して、ケミカルエ まるなど注目が集まっている。コピー機・プリンター ミッションの低減に努めており、その証として環境ラ で使用されるトナーは、平 ベルの取得を進めている。 粒径 5∼ 10μm 程度の固 として分 特に、ドイツ環境ラベル The Blue Angel (以下、 類されるが、コピー機・プリンターから排出される粉 BA)は、世界で初めて導入されたエコラベル制度であ 塵は、重量測定法に基づく総量の測定により極めて少 り、認証を受けた製品およびサービスにのみラベルの 量であることが確認されている。しかし、新たにコピ 使用を認めるものである。BA は世界でもっとも厳し ー機・プリンターの加熱印字過程において発生しうる い環境ラベルとされており、EU 域内で広く認識され 100nm 以下の微粒子:超微粒子(Ultra Fine Particle, ているだけでなく、日本やアジア各国の環境基準値が UFP)を含めた放散微粒子について関心が集まってお これに追従するなど、その影響力は大きい。そのため、 り、予防原則の 日本のコピー機・プリンターメーカーの関心も高く、 体粒子であり、粒径<10μm の粒子:PM え方に基づきドイツを中心に各国で 規制化の動きが進んでいる状況である。本稿では、コ 多くの機種が BA ラベルを取得している。 ピー機・プリンターにおけるケミカルエミッションの 中でも、放散微粒子に関する規制動向と測定技術につ . ケミカルエミッション評価の歴史 いて中心に説明する。尚、本稿は 2013年 11月に開催 ケミカルエミッション評価の歴史は、1980年代に された計測標準フォーラム第 11回講演会での同テー コピー機からのオゾンやトナーの放散に対する健康被 マの講演から抜粋したものであり、その際に使用した 害が懸念され始め、1992年に BA において、オゾン・ スライド も参照されたい。 粉塵の基準値が制定されたことに始まる。1995年に ケミカルエミッション評価について . ケミカルエミッションとは はスチレンの基準値が BA に追加され、その後、日本 のエコ マ ーク基準にも、BA 同様にオゾン ・粉塵 ・ス チレンの基準値が制定された。2004年には、BA にお ケミカルエミッションとは、建材や電子・電気機器 い て、ベ ン ゼ ン ・ TVOCs (Total volatile organic 等から排出/放散される化学物質のことである。コピ compounds)基準値が追加設定され、基準値も濃度か ー機・プリンターから排出されるケミカルエミッショ ら放散速度に変更、測定で使用するチャンバーも密閉 ンとしては、Volatile organic compounds (VOCs): 式から換気 式 チャンバ ー に変更され た。2006年には、 計測標準と計量管理 特集 計測標準フォーラム講演会 (2 ) 特許から見るフルーク ・ スーパー ・サーモメーターの紹介 株式会社 TFFフルーク社 川 部 直 人 れ て い る 標 準 白 金 抵 抗 温 度 計(SPRT = Standard はじめに Platinum Resistance Thermometer)は、温度の国家 高精度な温度の測定には標準白金抵抗温度計とブリ 標準を管理 ・運営している産総研、や JCSS の登録事 ッジが用いられる。フルークの“スーパーサーモメー 業者の参照標準として用いられる温度計で、数 mK 以 ター(写真①)”はデジタルの温度指示計でありなが 下の不確かさという極めて高精度な温度測定が可能で ら、ブリッジに相当する測定の不確かさを持ち、さら ある。SPRT は白金線に余計な力が加わらないよう、 に使い易さも兼ね備えた測定器である。そこで白金抵 ストレインフリーという構造を持つたいへんデリケー 抗温度計の校正や温度の測定について基本的な事柄を トな製品である。そのため製品の取り扱いには振動や 紹介したうえで、白金抵抗温度計の読み取り装置であ 衝撃を与えないよう十分な注意が必要となる。 るスーパーサーモメーターが持つ技術的な特長につい 図1の温度のトレーサビリティの体系で SPRT の て紹介する。このとき、特に米国で特許を取得した技 次に位置する PRT は温度の校正事業者の作業用標準 術や機能を中心に製品についての説明をしたい。 としてや、企業の品質管理部門の参照標準に用いられ る温度計である。PRT は数 mK から数十 mK の不確 かさを持ち、SPRT ほどデリケートではないが、やは り精度の維持のためには振動や衝撃に注意する必要が ある。 これらの SPRT や RPT は温度の校正における参照 標準としてや、管理用の温度計として使用される。ト レーサビリティの体系で SPRT と PRT の次に測温抵 写真①:Fluke xA スーパーサーモメーター 抗体(RTD = Resistance Thermal Device)がある。 これは一般には Pt-100と呼ばれる、いわゆる JIS の 白金抵抗温度計 規格に準拠した温度計で、石油精製や化学系のプラン ト、発電所、製薬、食品の製造工場といった広い分野 産業界および科学研究において、高精度な温度測定 で、製品の品質を保つ目的から、現場での温度の測定 には白金抵抗温度計(PRT = Platinum Resistance および管理に多く用いられている。ところで RTD の Thermometer) が用いられる。PRT とは高純度な白 場合は、JIS 規格に従って作られるため特に校正を行 金線の電気抵抗がそれ自身の温度変化に従って変化す わなくとも、製造メーカーにより JIS の精度等級が保 るという現象、つまり電気抵抗の温度特性を利用して 証されることとなる。しかし、より高い精度で管理し 温度を測る測定器である。 たい場合や、本当に正しいかどうかを検証したい場合 白金抵抗温度計は大きく3種類に分類することがで き、それぞれの位置付けを、図①の温度のトレーサビ には、より正しい温度計である PRT による校正が必 要となる。 リティの体系図に示す。体系図で右上の位置に記載さ Vol.64, No.1, 2014 特集 計測標準フォーラム講演会 (2 ) 定量 NM R の適用性 ― 貝毒標準品の値付けについて― 一般財団法人 日本食品分析センター エキスパート 加 藤 毅 いを利用して、物質の分子構造を官能基レベルもしく はじめに は原子核レベルで識別し、さらにその原子核の数を直 食品をはじめ、医薬品、化粧品及び化学工業品など 接かつ正確に定量することができる。図①に NM R 装 の成分分析や、残留農薬、残留動物用医薬品及び環境 置とスペクトルの例としてエタノ ー ル の プ ロ ト ン 汚染物質などの微量分析では、機器分析法が普及して NMR スペクトルを示した。プロトン NMR は測定対 おり、多くの標準試験法や試験規格に採用されている。 象が持つ水素原子の情報を得ることができるが、エタ 当財団も中立公正な第三者分析機関として、より信頼 ノール分子 (図1) ではメチル基 (CH )、メチレン基 性の高い分析結果を提供することを念頭に、多様な分 (CH ) 及び水酸基 (OH) を構成する水素核のシグ 析試験を受託しており、多くの結果を分析機器の応答 ナルが観察され、それぞれのシグナル強度は水素原子 値から導き出している。機器分析によって正確な試験 の数を反映して3:2:1の面積比を示すことがわか 結果を得るためには、何よりも使用する標準品の正確 る。このように、NMR は官能基の形のみならず、原子 な値を知ることが大切であり、標準品の初期純度に限 の数に関する情報をも取得することができることから、 らず、ロット間のばらつきや保存安定性の確認も重要 構造解析の分野では定量的な解析技術として広く活用 である。こうした標準品の純度を客観的に調べる方法 されてきた。有機合成などにおいて、反応前後の特定 としては、最近は、定量 NMR が正確かつ迅速な測定 の官能基の数から反応回収率を求めたり (図②) 、 ある 方法として有効なことが明らかとなってきている。こ いは繰り返し分子構造へ任意の官能基を導入したとき こでは脂溶性貝毒標準品の値付けの事例を紹介する。 の置換率の分析などは、定性・定量2つの分析を同時 にこなすことができる NMR のアドバンテージを利 定量 NMR 用した分析手法である。 核磁気共鳴分光法 (NMR) は原子核のスピン状態 このような特徴から NMR による定量試験は、定性 を調べる測定法である。本測定法は、磁気的環境の違 的な活用と区別して定量 NMR と呼ばれている。国内 図①:NMR 装置 分光計(左) 、マグネット(中)とエタノールのプロトン NMR スペクトル Vol.64, No.1, 2014 特集 計測標準フォーラム講演会 (2 ) J CS S 標準ガス及び国際基幹比較に関する取り組み 一般財団法人 化学物質評価研究機構 東京事業所 化学標準部 西 野 朋 恵 れる。詳細は 2.3にて述べる。 はじめに 特定二次標準ガスは登録事業者が製造・維持管理を 一般的な分析機器を用いて、試料に含有されている 行い、指定校正機関が特定標準ガスを用いて値付けを 物質の濃度を測定するためには、濃度と測定装置の出 行う。標準ガスの分野における登録事業者は、住友精 力との関係を示す検量線をあらかじめ作成する必要が 化株式会社、ジャパンファインプロダクツ株式会社及 ある。このときに、濃度が既知であるもの、つまり標 び高千穂化学工業株式会社の3社4事業所である。登 準物質が必要になる。計測の信頼性を確保するために 録事業者は、ISO/IEC 17025 への適合が要求されて は、トレーサビリティの確保された精確な標準物質を いる。 用いることが重要である。日本においては JCSS 標準 JCSS 実用標準ガスは登録事業者により製造され、 物質が供給されており、様々な場面で使用されてい 特定二次標準ガスを用いて値付けがされる。現在、登 る 録事業者から供給されている成分及び濃度範囲を表② 。 本稿では、 標準ガス分野に的を絞り、 JCSS 実用標 に示す。示した濃度範囲内の任意の濃度の標準ガスを 準ガス及びその供給体系について紹介する。また、海 得ることができるようになっている点は、JCSS 実用 外における動向の一つとして、国際基幹比 標準ガスの大きな特徴である。JCSS 実用標準ガスで について 紹介する。 JCSS 標準ガス . あるかどうかは、校正証明書に JCSS ロゴマークが表 示されているかどうかで判別が可能である。 JCSS (計量法トレーサビリティ制度) JCSS (Japan Calibration Service System、計量法 トレーサビリティ制度)は計量標準供給制度と校正事 業者登録制度から成る。このうち、計量標準供給制度 は、国家計量標準とトレーサビリティの確保された標 準を供給するための制度である。供給される標準には 長さ、質量等 24の区分があり、濃度 (標準物質)の区分 では標準ガスのほかに pH 標準液、pH 以外の標準液 (金属標準液、イオン標準液、有機標準液)がある。 . JCSS 標準ガス供給体系 JCSS 標準ガスの供給体系を図①に示す。 国家計量標準である特定標準ガス (34種類、表①) は、指定校正機関である本機構により製造・維持管理 が行われており、特定二次標準ガスの値付けに用いら 計測標準と計量管理 図①:JCSS 標準ガスの供給体系 特集 計測標準フォーラム講演会 (2 ) 東京都立産業技術研究センター城南支所 ∼ ものづくりおおたの最前線と計測技術 ∼ 地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター城南支所長・上席研究員 東京都城南地域中小企業振興センター長 本 道 久 統合し、2006年(平成 18年)に地方独立行政法人東京 はじめに . 上 都立産業技術研究センターとして、東京都の関連団体 としてスタートを切った。都産技研の役割の概略を 都産技研の概要 筆者の勤務する東京都立産業技術研究センターは、 図①に示す。 主に中小企業への技術支援をおこなうことにより、東 京の産業振興を図り都民生活の向上に貢献することを . いくつかの拠点施設について 目的として、東京都により設置された試験研究機関で 都産技研は、地方独立行政法人化の際や、2011年の ある。中小企業は我が国の企業数全体の 99% 以上、 北区西が丘から臨海部(江東区青海)への本部移転の際 製造業の付加価値額(利益)の約 50% を占める 日本 に組織改正を行い、現在は図②に示す2拠点3支所体 出や産業転換の原動 制となっている。臨海部に本部、多摩地区(立川市) 力となるばかりか地域経済の活動も支える、いわば日 に多摩拠点を設置した上で、3支所は更に該当地域に 本経済の根幹といえる存在である。これらに対する技 特化した産業技術支援を行うことになっている。 経済の基盤 であり、新産業の 術支援(依頼試験、研究開発、技術相談、人材育成な ど)を行うべく、1921年(大正 10年)府立東京商工奨励 . 城南支所について 館として設立された弊所は、東京都立工業奨励館、東 城南支所は大田区南蒲田にあり、国道 15号を挟ん 京都立工業技術センター、東京都立産業技術研究所と で京浜急行線京急蒲田駅の斜め対面に位置する。羽田 名称を変化させつつ、関連する産業系試験研究機関を 空港国際線ターミナルまで5分、JR 品川駅まで6分 図①:東京都立産業技術研究センターの役割 計測標準と計量管理 計量管理事例 (株)デンソーにおける計測管理レベルの向上活動 株式会社 デンソーエムテック 計測管理部副部長 田 浦 浩 之 はじめに (株)デンソーは、先進的な自動車技術、システム、製品を世界の主要カーメーカに提供しているトップレベル の自動車部品サプライヤーです。主な製品を図①に示す。 環 境 ハイブリッド車・電気自動車用製品、 ガソリンエンジンマネジメントシステム、 ディーゼルエンジンマネジメントシステム、 スタータ、オルタネータ、ラジエータ、など 快適・利便 カーエアコンシステム、バス用エアコン、 空気清浄器、カーナビゲーションシステム、 ETC 車載器、リモートセキュリティシステム、 リモートタッチコントローラ、スマートキー 安心・安全 走行支援システム用センシングシステム、 ABS/ESC 用アクチュエータ&コンピュータ、 ヘッドランプコントロールシステム (AFS) 、 エアバッグ用センサ&コンピュータ 図①:主な製品 表①:計測管理の歩み 計測管理の歩み 年 デンソーの計測管理は歴史が古く(表①参照) 、会社 設立と同時に計量自治取締を実施し、全社規程である 計測器管理要領に基づき計測器の購入・校正・維持・ 廃却に至る総ての業務を規定し運用している。 当社 (デンソーエムテック)の紹介 ら機能分社した。現在、デンソー及びデンソーグルー プ会社を中心に校正業務の拡販に努め(Q・C・D) 会社設立 1952年 計量器使用事業所指定 1958年 全社規程 計測器管理要領制定 1961年 デミング賞受賞 1984年 通産大臣賞受賞 計量管理実施優良事業所 2000年 計測管理機能分社 デンソーエムテック設立 2002年 JCSS 取得 2004年 ISO/TS 16949取得 2007年 JCSS 取得 直流電圧測定装置 ・ 直流抵抗器 でお客様に認められ、約 240社と取引をさせて頂いて いる。 計測標準と計量管理 目 1949年 当社は、2000年に計測管理機能の総て及び生産用設 備の設計・組立・改造・保全部門の一部がデンソーか 項 計量自治取締実施 ブロックゲージ 計量管理事例 J CS S 校正への取り組みと計量管理 株式会社 エー・アンド・デイ 校正室 校正課長 本 永 充 れるものではありませんでした。 はじめに そ こ で、校 正 試 験 所 の 国 際 規 格 で あ る ISO/IEC 計量法トレーサビリティ制度(JCSS)が始まってか 17025 (JIS Q17025)に基づき、第三者機関が校正事業 ら、昨年 20周年を迎えました。この間、JCSS 校正機 者の品質保証体制、標準器、校正手順、トレーサビリ 関は、260事業者を超え、発行された校正証明書は、年 ティ体系を審査、登録する制度が開始されました。こ 間約 45万枚に達しています。弊社 校正室も JCSS 校 れにより、JCSS 校正事業者が発行する校正証明書は、 正事業者の一つとして、JCSS 校正事業の一翼を担っ トレーサビリティが確実に担保されていることになり、 ております。この機会を、利用して弊社の JCSS 校正 また、国際相互認証(MRA)により、加盟国間では、 の取り組みにつきまして、まとめてみました。 JCSS 校正証明書が有効となり、ワンストップ・テステ ィングが実現されます。 JCSS 校正の成り立ち A&D JCSS 校正の歩み JCSS 校正が始まる以前の校正は、いわゆるメーカ 校正(一般校正)と呼ばれ、計測計量器メーカや校正 弊社では、校正を取り巻く社会環境の変化、ユーザ 事業者、販売店などにより、それぞれ独自の標準器、 のニーズを踏まえ、計測計量器メーカとして、JCSS 校正手順、トレーサビリティ体系を持ち、各事業者へ 校正事業者への登録をするべく、準備を開始し、関連 の信頼関係により実施されていました。その後、ISO 会社であるリトラ (株)校正室が 2001年に、弊社校正 9000s の普及により、国際規格への適合と第三者機関 室が 2002年に JCSS 校正事業者として登録されました。 による認証の重要性が認識されはじめ、計測計量器の 表①に校正区分および登録年をまとめてあります。 校正の重要性が増してきましたが、校正に関しては、 JCSS 校正事業者では、4年に一度登録更新を行う ISO 対応校正、校正書類3点セット(校正証明書、検 必要があり、(独)製品評価技術基盤機構(NITE)によ 査成績書、トレーサビリティ体系図)などと呼ばれる る審査を受けます。さらに MRA 認定事業者は2年に 一般校正が主流でした。しかし、こういった一般校正 1度の定期検査を受けます。 では、校正事業者の発行する校正証明書は、自己宣言 校正範囲の拡大や最高測定能力(CMC)の向上を行 によるものであり、トレーサビリティが確実に担保さ うためには、登録更新審査を受けなければなりません。 表① (株)エー・アンド・デイ校正室 (JCSS 0107) リトラ (株)校正室 (JCSS 0099) 区 分 質 量 分 量 は 力 質 力 トルク 種 類 銅 一軸試験機 力 か 校正範囲 1mg ∼ 20kg 初回登録年 2002年 0.2N ∼ 300kN 2003年 り 0.1g ∼ 300kg 2007年 計 10N ∼ 10MN 2001年 5N・m∼ 1000N・m 2008年 トルクメータ MRA 対応 2009年 2008年 Vol.64, No.1, 2014 測定の不確かさ事例 測定の不確かさ 簡易推定マニュアルの概要 中央精機株式会社 高 不確かさ はじめに 井 哲 哉 は測定の方法・計測器の校正・測定者 の能力・測定場の環境変化・測定する製品の性質など ISO/JISQ10012では測定の不確かさを把握するこ が要因となって発生する測定値の バラツキ(標準偏 とが要求されている。しかし、測定の不確かさを求め 差) を示す。本マニュアルでは標準偏差のことを 標 るためには高い専門知識が必要である。測定の不確か 準不確かさ さを広く適用するため、統計学をはじめとする専門知 と記載している。 多くの要因によって発生する測定値の バラツキ 識が無くても簡易的に不確かさが求められる様に、多 を測定量の単位でまとめたものが くの企業の過去の経験を基に一連の手順をマニュアル で、測定値の信頼性を評価して、改善活動につなげて 化した いくためのものである。 測定の不確かさ簡易推定マニュアル を作成 測定の不確かさ 実際の測定で知ることの出来る値は した。本稿ではその概要を紹介する。 真の値 定範囲で、図①に示す概念のように測定値は 測定の不確かさとは何か はなく、 範囲 測定の不確かさについて測定関係者に広く展開を図 るため、不確かさを求める目的とその概要を以下のよ うに分かり易く解説している。 の推 点 で を持っている。 不確かさの要因 現場で行われている測定の不確かさの要因は多く、 不確かさ は測定の結果に付随する 疑わしさ を その取扱いが難しくなる。そこで、モノづくりの現場 意味し、いかに精巧な計測器を使用しても、どれほど で多く行われている長さ測定を例に不確かさの要因の 細心に測定を行っても、その測定の結果には常にある え方を述べている。 程度の疑わしさが残る。 測定の不確かさは様々な要因が重なって生まれる。 図①:測定の不確かさの概念 Vol.64, No.1, 2014 標準物質紹介 産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質 独立行政法人 産業技術総合研究所 計量標準管理センター 計量標準計画室 大 畑 昌 輝 (独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター が、NMIJ ホームページから閲覧できるようになりま (以下、NMIJ)では、ISO/IEC 17025:2005及び ISO した(https: www.nmij.jp rminfo ) 。NMIJ CRM だ Guide 34:2009に適合する品質システムに基づき、国 けでなく国内外の多くの標準物質について、NM IJ ホ 家計量機関として国際的に認められる認証標準物質 ームページから情報が得られるようになりましたので、 (CRM )の開発・供給を行っています。また、この品質 是非ご利用頂ければと思います。また、NM IJ CRM システムは、(独)製品評価技術基盤機構認定センター とは別に、純度校正サービス(依頼試験)も 2011年7 の ASNITE プログラムによる認定を受けています。 月 15日から開始しています。これは主に、定量 NM R NMIJ で開発された認証標準物質(NMIJ CRM ) を用いた高純度有機標準物質について純度測定を行う は、EPMA 用、膜厚測定用、超微細空孔測定用、イオ サービスです。詳細は、https: www.nmij.jp service ン注入量測定用、ナノ粒子計測用、ファインセラミッ C calib または https: www.nmij.jp service P クス分析用および蛍光X線分析用の材料系 CRM をは calibration iraishiken140215.pdfの試験校正の種類 じめ、無機高純度 CRM 、有機 CRM (純物質、標準 31. 純度 をご覧頂ければと思います。2013年5月か 液、臨床検査用、定量 NMR 用)、高分子材料 CRM 、 らは、 32. 薄膜・多層膜 の 膜厚 についての校正 環境組成 CRM(環境分析用、食品分析用、化学形態分 サービスも新規に開始しました。また 2014年度から 析用標準液)、グリーン調達対応 CRM 、ガス CRM 、 は、三ふっ化窒素 (NF )ガスの校正サービスも加わ 熱物性 CRM と多岐にわたり、これまでに 200物質以 る予定です。情報は随時更新していく予定ですが、不 上の CRM が開発されてきました。これら CRM の認 足、不明な点などありましたら、NMIJ ホームページ 証 書 の 見 本 は、NMIJ ホ ー ム ペ ー ジ(https: www. からお問い合わせ頂ければ幸いです(https: www. nmij.jp service C crm ) から閲覧 ・ダウンロードす 。 nmij.jp inquiry ) ることができます。2013年9月から、本ページに検 表①に、2013年度に新規に開発・認証された NM IJ 索機能が追加されましたので、これまでよりも簡便 CRM を示します。これらの CRM のうち、窒素希釈酸 に NMIJ CRM を検索・閲覧して頂けるようになり 素(受注生産品) 、デルタ BN 多層膜、L-メチオニン、 ました。また、NM IJ 認証標準物質カタログ 2013- L-シスチン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタ 2014(https: www.nmij.jp service C CRM Catalog ン、水分分析用標準液、玄米粉末については、既に頒 20140203.pdf)お よ び NMIJ CRM 有 効 期 限 ・供 給 布を開始しており、NMIJ ホームページから認証書の 状況一覧 (https: www.nmij.jp service C crmlist- 見本などを閲覧することができます。その他のものに J 20140228.pdf) も、NMIJ ホームページから閲覧 ・ ついては、2014年度になってからの頒布開始を予定し ダウンロードすることができます。これら CRM は、 ています。また、準備が出来次第、NMIJ ホームペー 取り扱い業者(https: www.nmij.jp service C ジにも認証書の見本などを掲載する予定です。酸化チ 20140203.pdf)から購入することができます。2013年 タンナノ粒子は、NMIJ 標準物質(NMIJ RM )であ 10月から、日本国内標準物質検 索 デ ー タ ベ ー ス の り、NMIJ CRM ではありません。表1に示した通り、 RMinfo と、国際標準物質データベースの COMAR 無機高純度 CRM が1物質、ガス CRM が1物質、有 計測標準と計量管理 認定事業者紹介 硬さの J CS S の認定取得について 株式会社 中京試験機 校正技術部 品質管理者 山 本 充 範 登録に係わる区分:硬さ はじめに 校正手法の区分の呼称:ロックウェル硬さ試験機等 (ロックウェル硬さ試験機) 株式会社中京試験機は、東海地区を中心に金属材料 試験機の、修理、校正、販売を行っている事業者であ 恒久的施設で行う校正╱現地校正の別:現地校正 る。2014年3月 20日付けで、JCSS 登録事業者として 校 正 範 囲:表①参照 認定された。 . 当社の概要 . 登 革 1979年 4 月 録 番 在 中京試験機製作所として 立、 硬さ試 験機、ダイヤルゲージ、マイクロメー 登録内容 ター、ノギスの修理及び販売を開始 号:0312 事 業 所 の 名 称:株式会社中京試験機 所 沿 1990年 12月 法人組織に改め、株式会社中京試験機 とする。 地:愛知県名古屋市天白区池場三丁 硬さ試験機、試料作成機、材料試験 目 1617番地 機、光学測定機、関連消耗品、販売開 始 1992年 3 月 現在の名古屋市天白区池場に事務所 移転 2014年 3 月 硬さ区分にて JCSS 登録事業者とし て認定 表①:最高測定能力 校正手法の 区分の呼称 種 類 ロックウェル ロックウェル 硬さ試験機等 硬さ試験機 図①:認定証 校正範囲 最高測定能力 (信頼水準 約 95%) 20HRC 以上 25HRC 以下 0.45HRC 25HRC 超 35HRC 未満 0.54HRC 35HRC 以上 45HRC 以下 0.48HRC 45HRC 超 55HRC 未満 0.50HRC 55HRC 以上 65HRC 以下 0.45HRC Vol.64, No.1, 2014 産総研コーナー NMIJ 計 測 ク ラ ブ の 紹 介 独立行政法人 産業技術総合研究所 計測標準研究部門計測クラブ事務局 計量標準管理センター計量標準計画室長 計量標準管理センター計量標準計画室 (現 計測標準研究部門電磁気計測科応用電気標準研究室) 計量標準管理センター長 小 見 山 竹 歳 山 田 臼 田 耕 尚 達 司 之 司 孝 はじめに NMIJ 計測クラブは 2005年に発足し、この年度にい くつかの技術分野で個別の計測クラブが活動を開始し た。その時点では、まだすべての分野にわたってクラ ブが立ち上がったわけではなく、標準整備の状況に応 じて順次計測クラブ活動の準備が進められてきた。初 期の計測クラブは計測標準とその開発の進展に伴う技 術の蓄積の教育・普及を主目的にしていた。そのため、 図①:NMIJ 計測クラブ設立の動機 全体の事務局はあったものの活動の主体は個々のクラ ブに任されており、それぞれの技術分野に適合した方 法で活動を開始した。 今年度からこれまでの分野毎の活動に加え、経済産 外の一般ユーザに接するルートはなかった。これを実 現する方法として計測クラブが設立された。 業省(知的基盤課)として公開したわが国の標準整備 計画 を推進すべく産業界の方々からの協力を仰ぎ、 . 計測クラブの目的 横断的な活動も拡大する方針とした。そのひとつの成 設立当時からその目的は、図②の左下の4項目に示 果として、2014年1月 23日と 24日に産総研つくばサ すように①安全安心社会の構築、②活力ある産業・工 イトにおいて計測クラブ総会を開催したので、その内 業の 容をまとめる。次項は開催日ごとに説明を実施した計 進があり、これらの普遍的な目的に加えてより具体的 測クラブの全体活動についての説明であり、さらに第 な目的を設定した。右下の3項目にある、供給体制の 生、③科学技術への支援、④行政サービスの推 3項には各技術分野のクラブの活動報告を2日間に分 けて実施した内容をまとめた。 計測クラブの活動全体報告 (クラブ総会期間中の両日で実施) . 計測クラブ設立の動機 計測クラブ以前にも産総研と外部をつなぐ組織には 国際計量研究連絡委員会 や産業技術連携推進会議 があったが、委嘱された委員や、公設試験研究機関を 対象としたものであって、計測計量のエンドユーザに 直接交流できる組織的な活動はなかった。また図①の ように校正業務により直接結ばれる限られたユーザ以 計測標準と計量管理 図②:計測クラブの目的 IAJ apan コーナー 独立行政法人 製品評価技術基盤機構 認定センター http://www.iajapan.nite.go.jp/iajapan/ 本コーナーは、MLAP、JCSS、JNLA、ASNITE を中心に IAJapan の各認定プログラムの認定実績等につい てお知らせしております。 特定計量証明事業者認定制度(MLAP) 平成26年1月から平成26年3月末までの間に新たに認定又は認定更新された事業所は、次のとおりです。 認定番号 認定又は更新日 事 業 所 の 名 称 N-0151-01 2014年2月1日 野村興産株式会社 N-0123-01 2014年2月28日 常磐開発株式会社 環境本部 超微量化学物質分析センター N-0152-01 2014年3月24日 株式会社ユニチカ環境技術センター 関西事業所 大気中のダイオキシン類 水又は土壌中のダイオキシン類 N-0159-01 2014年3月26日 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合 研究所 環境科学センター 水又は土壌中のダイオキシン類 ヤマト環境センター 対策部 認 定 区 分 大気中のダイオキシン類 水又は土壌中のダイオキシン類 大気中のダイオキシン類 水又は土壌中のダイオキシン類 計量法校正事業者登録制度(JCSS) 平成26年1月から平成26年3月末までの間に認定範囲の拡大も含め、登録又は登録更新が承認された事業所 は、次のとおりです。 登録番号 登録又は更新日 0064 平成26年1月23日 一般財団法人日本品質保証機構 0104 平成26年1月23日 一般財団法人日本品質保証機構 0143 平成26年1月23日 株式会社ナガノ計装 0177 平成26年1月23日 有限会社三協エンジニアリング 質量、力 0253 平成26年1月23日 三和屋計器株式会社 質量 0064 平成26年2月6日 一般財団法人日本品質保証機構 計測標準と計量管理 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分 長さ、質量、温度、密 度・屈折率、力、トル ク、圧力、音響・超音 波 九州試験所 計測器校正サービスセンター 中部試験センター 質量、温度、音響・超 音波 圧力 電気(直流・低周波)、 質量
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