2008年10月1日 株式会社トキメックは に 社名変更いたしました。 〒144-8551 東京都大田区南蒲田2-16-46 TEL.03-3732-2111 FAX.03-3736-0261 http://www.tokyo-keiki.co.jp/ 2 0 0 0 W I N T E R Whole number 99 油 圧 機 器 の高 度 化 、 技 術 革 新 2000 WINTER Whole number 99 1 9 油圧機器の高度化、 技術革新 豊富な熱資源を生かし 日本の将来のベースエネルギーに 12 15 土壌汚染の浄化 特 集 経営資源の有効活用で航海機器ビジネスのグローバル 化を推進! トキメックと米国 Litton Marine Systems 社は戦略 的業務提携を行いました。 油圧機器の高度化、 技術革新 情報コミュニケーションの充実で安全航海を推進! 自動船舶識別システム AIS トランスポンダ R3 油圧技術が 成熟 ドプラースピードログ TD-310 と評されることがある。これは、伝達効率や維持管理について旧来の イメージが払拭されていないことに起因するものだ。しかしながら、現状、油圧の実態は かなりの変貌を遂げてきている。旧来の、そして今後の課題を克服しまた取り組んでいく、 耐候性と使いやすさをグレードアップ! 電波レベル計 RTG-40 がマイナーチェンジしました。 油圧機器の技術革新をレポートする。 図1. 力の伝達・増幅 W w 力の小さいイチロー選手が大リーグ 油圧や水圧などの液圧技術、および空気圧技術は、流体を媒体とした伝達機構である。電気方式の 機構もあり、それぞれ一長一短の特性がある。油圧はそのなかでも特に応答性に優れ、高出力を取 り出せるというメリットがある。一方、近年の要求水準の高まりは急激であり、既存の要素技術だ けでは追従して行くことが困難な部分もでてきた。今回は油圧の基本原理を改めてまとめつつ、こ れら課題への対応を含めた、高度化への工夫を紹介していこう。 で互角に活躍するには、スピードで W/A = w/a=P (パスカルの原理) 彼らに勝ることがキーポイントになろ う。表1に示す様に、油圧システム の扱い得るパワーは他のシステムと比 較し断然有利である。 p a ■ 設計上の柔軟性 A 制御システムを構築する際、油空 圧は配管やパイプを使うことにより W w システムのスペース上の制約が比較 的自由であり、制御する力や速度も、 制御弁の設定を変えることによって W×l=w×L (てこの原理) 容易に変更可能である。電気制御シ 油圧システムが日本の産業界に本 後退を余儀なくされている。また、 格的に浸透し始めた時期は1950 年代 18 世紀から続いた工業化社会に対し 後半であり、半世紀近い歴史を迎え て地球環境の視点から見直す必要に ようとしている。この間、日本は敗 迫られている。 ステムはディジタル技術の発達でよ 油圧システムの特長と課題 (なぜ、油圧なのか……) り容易にこれらの変更が可能である。 その点、機械システムでは力の伝達 油圧システムは 大きな動力を、 戦後の混乱から世界史に例を見ない 他方、情報通信技術の革新は目を スピードで先進国の仲間に入り、経 見張るものがあり、機械産業界にも 比較的高速で、比較的正確に制御伝 油圧制御システムを使うメリット 済大国へと大きく飛躍した時期でも 大きな変革を促している。さらに、 達できる システムである。表1 に各 は油圧が最も得意とする 極めて大 あった。このような時代背景の中、 情報網の拡大により世界各国の壁は 制御システムの比較を示す。 きなパワー を 高速 油圧産業も 暁の産業 と言われ飛 低くなり開発,生産,販売,サービ ■ 伝達エネルギーとその応答 廉価 躍的な成長を遂げ、日本の産業界に スに至るまで、グローバルな視野で 深く根を張った。 対応しなければ市場ニーズに応えら の積(掛け算)で決まる仕事量であ ト性 しかしながら1990 年前半にバブル れない状況である。本特集では、こ る。ある重さの物体をある距離移動 ムを組み合せた 油圧/電気のハイブ 経済は崩壊し、日本経済は戦後最悪 のような世界の潮流をにらみながら した場合の仕事量はどのシステムで リッド化 な状況に陥り、油圧産業も土木建設 油圧システムの特長と課題 を整理 行おうと同じであるが、どの位の時 ムの応用範囲を広げ、機械制御の基 機械,金属加工機械,自動車などの し、 油圧システムの動向 について 間をかけて行うかにより、そのシステ 幹部品、技術として活躍している。 主要な需要業界の低迷により大きな 述べていくことにする。 ムの仕事率(これをパワーと言う) エネルギーは力と移動量(距離) ク比の変更が必要で容易ではない。 例えて言うと大リーガーと日本の 油 圧 空 圧 電 気 機 械 プロ野球の選手を比較する際、日本 極めて大きい 小から中 極小から大 極めて広い の選手は大リーガーと比較しパワー (バックラッシュ等) 広い 極めて広い 狭い(リンク機構等) 廉価 生産量次第 高価 速い 中程度 設計上の柔軟性 広い 経済性 比較的廉価 遅れ時間 極めて速い 応答性 2 L で実現できるからであり、さ らに 柔軟性 正確性 が無いとよく言うが、これは選手の 図2. 油圧エネルギーの伝達と制御 方向制御弁 流量制御弁 圧力制御弁 で 比較的 コンパク 仕事 60 方向 の良さを持つ電気制御システ 重量 が、いっそう油圧システ は異なる。 表 1 各制御システムの比較 伝達エネルギー l ひとつ変更するにも、歯車比やリン 油圧の歴史 (その起源と発達のきっかけ) 油圧の歴史を遡ると、紀元前1200 流量 年と言う長い歴史の過程で、1650年、 として利用するまでに至らしめた。 パスカルが圧力伝達の原理(パスカル この原理の発見、発明により水圧技 の原理)を発見し、その後の産業革命 術は飛躍的に各種機械に応用された を経て蒸気機関の発明に至る。この が、19 世紀末、電動機の発明を境と 蒸気機関の発明は流体に連続的な圧 し流体動力機械は次第に衰退した。 腕力とスピードを掛け合わせた量、 年、ジョセフの井戸ポンプが発明さ 力エネルギーを与える事を可能にし、 即ちパワーの大小を言っている。腕 れた水圧機械となろう。以来、3000 流体の利用価値を圧力のエネルギー 3 その後、たび重なる戦争が強力で 正確、迅速な制御と作動とを兼ね備 えた高性能な兵器を要求するに及び、 素として活用範囲を広げ、今日に至 たのは1950 年代で、45 年余りの歴史 拡大、駆動装置の機械式から油圧式 技術,販売,製造に国境は無くなる。 当時急速に進歩しつつあった石油精 っている。 である事は前に触れた。ちなみに、 への転換が進み、 暁の産業 と言わ これは社会、地球という世界が発展 製技術と相い交えて、流体動力機械 日本で最初に油圧機器を導入し事業 れて大きな注目を浴びた。表2に鉱 していく過程において当然である。 は油圧機械としてその形を変え、優 化を図ったのはトキメック――当時 工業出荷指数と油圧出荷額の推移を の社名は東京計器製作所――で1954 示す(1985 年を100 とした指数) 。 油圧需要の変遷と社会背景 ( 暁の産業 から 基幹産業 へ) れた動力伝達装置として脚光を浴び て登場した。さらに、 大きなパワー を迅速に正確に制御 できる油圧制 御の特長が、各種機械の動力伝達要 日本で油圧産業が本格的に始まっ 年のことである。60 年代には土木建 90 年後半から日本経済は大きな落 設機械,金属加工機械,船舶,自動 ち込みを経験しているが、70 年から 車等の需要業界において生産規模の 90 年の間、公害問題,省エネルギー, PL問題,環境問題等の社会ニーズ, 表 2 鉱工業出荷指数と油圧出荷額の推移 油圧出荷額 GDP指数 鉱工業出荷指数 GDP指数 160 3,000 (億円) 140 120 油圧出荷額 2,000 100 鉱工業出荷指数 80 60 1,000 40 20 1950 朝 鮮 戦 争 起 60 70 80 O 東 新 ド 日 一 二 ス 日 国 E 京 幹 ル 中 次 ミ 次 米 連 石 ソ C シ 石 五 線 ョ 国 油 ニ 安 加 D 油 輪 開 ッ 交 シ ア 全 盟 加 シ ク (64) 保 (56) 盟 回 ョ ン 通 ョ ッ 体 (71) 障 復 (64) ッ (64) ク 条 (72) 制 ク (73) 崩 (79) 約 壊 (73) 神武景気 なべ底不況 (55−57) いざなぎ景気 (65−70) 90 93 95 97 99(年) 98 ブ 湾 バ ラ 岸 ブ ッ 戦 ル ク 崩 マ 争 壊 ン(91) (91) デ ー (87) 円高 (86−94) *50 年代前半は油圧の黎明期、海外から の輸入品が主流。 *60 年代に入り油圧が各種機械へ積極的 に使われ始めると同時に油圧機器の国産 化が進む。 (機械メーカの海外メーカと の技術提携が活発化) *70 年代は産業機械、建設機械等の国産 化が進み、これに伴い油圧機器も国産 機器が主流に成る。 *80 年代前半は米国の国際収支の赤字化 に見られる様に、各種機械の米国輸出 が著しく伸長し、これに伴い油圧機器需 要も激増。 *80 年代中頃から90 年代中頃までの約8 年、円高が著しく(80¥/U$ と最高値を 付ける)日本製品の輸出が落ち込むが、 国内景気は依然堅調で油圧も順調に伸 びる。 *70 年から90 年までの20 年間で油圧需 要は3倍に伸びる。この間の年間平均成 長率は8.7 %、鉱工業生産指数は年平 均 5.4 %、実質経済成長率は年平均 5.2 %であるから、油圧機器の成長はこ の間、いかに高かったか推測できよう。 *90 年代中頃、バルブ崩壊後、日本経済 は戦後未曾有の最悪状態に陥り、需要 業界の低迷成熟化の中で伸び悩んでい るものの、油圧制御システムは産業界に 浸透し 基幹産業 として定着してい る。 (97 年から99 年にかけ激しく変動 しているが、これは鉱工業生産と同一歩 調であり、いかに油圧がこれらの機械産 業の基幹部品産業になっているかを端的 に示している) 動力伝達効率の向上のため、制御 弁の圧損はここ十年の間に著しく低 減しており、ポンプ,アクチュエータ 油圧機器の高度化と 技術革新 (社会ニーズに応える油圧) の効率も著しく高くなっている。大 きなエネルギーを迅速に効率良く運 び、機械を動かす以上、これらの技 術対応は必要不可欠であり、常に進 油圧技術が 成熟 と評されるの オイルショック,ニクソンショック, は、伝達効率や維持管理について旧 バブル崩壊等の経済環境変化に対し 来のイメージが付きまとうからだ。し て油圧技術も敏感に反応し、低騒音 かし、現在、低電力化,環境対策, 化,省エネ化,油漏れ対策,電子化 新技術の開発等によって高度化が確 等確実な変革を遂げて来ている。 実に進みかなり変化してきている。 歩を目指し高度化する。それを成す 工夫の一部をご紹介しよう。 ●エネルギー伝達効率の向上を目指 す取り組み ―― 省エネ化へのあくなき挑戦! その進歩の速さと比較すると、電子 多くの機器を使いエネルギーを伝 機器の急速な進歩に対し油圧技術の 達すると、各機器を油が通過する毎 変化は遅いと危惧する方もいるだろ に圧力損失と言う無駄が生じる。こ SQP/P ** V ポンプ、TCG 圧力制 うが、機械技術を源にしている以上、 れを極小化するため、機能統合によ 御弁の低騒音化 革新的、斬新な急激な変化がないの る複合弁、可変ポンプを使用する事 当社の製品を例に挙げると次のよ うになる。 [低騒音化対応] [省エネ対応] ロードセンシング制御、電子式ヨー ク角制御可変ポンプの開発 [油漏れ対応] ネジ配管 → ガスケット弁 → DGM シリーズ集積弁 → カートリッジ弁 → スクリューインカートリッジ弁 [電子化対応] EPCG/EP(F)RG/EPFXG 等比例弁, ST3 サーボ弁の開発、普及 今後、電子化がさらに進む中で、 情報通信の急速な普及により油圧シ ステムもこの影響を受け、ますます 市場ニーズは高度化、オープン化を 社団法人日本油空圧学会におけるアン ケート調査結果では、右表に示す様に油 空圧機器科目類を独立科目として設けて いる所は約26 %である。その他は直接の 科目は無いがほとんどメカトロニクス、制 100 (%) 80 60 40 御機器、制御工学の科目の中で油空圧関 連授業は行われている。学科で独立科目 が無い所でも大学院で独立科目として授 業が行われている所が多くあり、この科目 の重要性が認識されている。 20 0 独 立 科 目 余儀無くされよう。また、開発途上 注)流体工学実験は油空圧関連実験を行っている大学・高専を含んだ数字である。 国と先進諸国の格差は小さくこそな れ、大きくはならない。この結果、 4 はやむを得ないものと言える。 5 関 連 科 目 関 連 実 験 流 体 工 学 ▲コムニカ弁 による制御弁の減少、スクリューイ 種データの電送も当たり前になろう。 る。地球環境問題しかり、PL 問題し このことは、今まで日本製機械に ンカートリッジ弁による配管の極小 この場合、究極は遠くにいて機械を かり、単に一国で対応できる次元で は日本製機器を使用するのが当たり 化が実現されている。 制御監視することになる。これに伴 はない。それというのも、今や、海 前であったが、今後この種の考えで さらにインバータによるポンプ回転 い、油圧機器も遠隔地でシステムの 外市場を無視した日本の機械産業ビ は通用しなくなることをも意味する。 数制御で無駄なエネルギー消費のな 状態を把握でき、未然に故障に対処 ジネスはないからだ。日本製工作機 い、回生エネルギーを使ったCPS (注) し機械の運転に支障を来さないこと 械,建設機械,射出成型機,半導体 等のシステムとしての高効率化も進 ができるようになるだろう。このため 製造装置と、どれをとっても世界中 んでいる。 には、油圧システムとIT 機器とのイ の至る所で稼動している。日本で生 ンターフェイスの開発をまず急ぐ必 産されている工作機械の70 %、射出 よりいっそうの低騒音化,エネル 要がある。 成型機の65 %、建設機械の70 %が ギー消費量の低減,油汚染から地球 油圧式の立体駐車装置や家庭用エ また、取りも直さずIT 革命の主人 海外市場で販売されているのだ。故 を守るなど単に一企業で解決できな レベータがその一例だ。立体駐車装 公たるコンピュータ、携帯電話その にPL 問題、CE マークと海外の基準 い大きな問題も命題に含むが、確実 置では、機械電動式に比べ、低騒 コンピュータ技術を有効に活用し ものが、既に成型機、金属加工無く を無視した油圧製品はあり得ない。 にこの様な波は高くなる。従って企 音・低振動の実現を特長としてある たディジタル弁(DDC 弁)、コムニ しては存在できない。携帯電話、コ 世界的規模の油圧メーカの日本市場 業間を乗り越え、産学共同、国と国 ほか、車両を降ろす際の動作につい カ弁(COM 弁) 、シーケンサで直接 ンピュータ等は多くのプラスチック部 への上陸も真剣に視野に入れた対応 での共通認識を持ち問題解決にあた ては電力を使用せずコストダウンに 駆動出来る微少電流ソレノイド弁 品で構成されており、これらのプラ が必要不可欠になろう。 る必要はますます増してくるだろう。 なるメリットもある。構造は多段式 マイコンの搭載によって、流量制御をも可能にした全く 新しいタイプの電磁切換弁。 ●電子技術と協調した油圧システム ――制御の高精度化の追求 (DG4VL)等が実現されている。 ●安全への取り組み (身近になる油圧) 操作が非常に容易になり、安全性 が高く、メンテナンスフリーに近い油 ●地球環境保全 (地球にやさしい油圧 ) 圧システムの確立で、日常生活に近 い所での活用が広がる。介護機器, 医療機器,ホームエレベータ等への 応用などがキーポイントとなる。 スチック部品を生産するには、射出 成型機、金属加工機が不可欠なので ▲TMCDブロック ある。従って、これらの機械の基幹 ●地球環境保護 アルミ製のブロックの中に油路を形成することによって 複雑な油圧システムをコンパクトに集約化できる。配管 レスなので、油漏れの心配はほとんど無い。 ――地球に優しい油圧 部品である油圧の存在価値、そのニ ーズはますます上がると思われる。 油漏れを極力無くすスクリューイ ンカートリッジ弁(TMCDブロック) 、 (注)CPS 絞り機構を全く使わないCPSと呼ばれるシステムが研 究され、油圧システムの効率化が進んでいる。CPSは、 「Constant Pressure System(定圧力システム) 」の略称 であるが、ヨーロッパでは特にセカンダリーコントロー ルと称されることが多い。絞り機構を使わない省エネ型 の油圧システムの制御方式には大きく2つあり、動力源 に近いポンプ側の制御、および機械を駆動させるアクチ ュエータ(負荷)側の制御のどちらを行うか、で分類す ることができる。CPSは、このうちの後者、圧力源から 必要なだけ動力を取り出せるアクチュエータ制御であり、 発生したエネルギーを複数の出力の形で取り出すことが できる利点がある。さらに、油圧回路中のアキュムレー タにエネルギーを一時的に蓄えることで、エネルギーの 有効活用ができる理想的な省エネ型油圧システムとして 評価が高い。トキメックではこの技術を発展、応用した システム「トランスフォーマ」を開発している。 CPSは油圧駆動バスなど高トルク出力が必要とされる 車両関連にも応用が期待され、実用化が始まっている。 今後、油圧機器それぞれの効率化と併せ、こうしたシス テムそのものに着眼した技術革新が、新たな社会インフ ラを構築する可能性を秘めている。 水ベース作動油に対応する機器(F11 モデル) 、さらには生分解作動油の使 油圧システムの新しい潮流 (これからの油圧はどうな るのか……) 用(未だ始まったばかり)等が実現 されている。 ●国際化の波 (日本の産業の行方を決める場) ●IT革命の油圧システムに対する影響 ――情報化社会に向けて 「国際化」「ボーダレス」「グロー バリゼーション」と表現は異なるが、 今や世界中どこに居ても、いつで 過去何度かこうした言葉が流行した。 も希望する相手と即時に連絡がとれ そして今、まさにその言葉が現実の る。機械は常に故障と向かい合わせ ものになっている。油圧の世界も既 で稼動しているため、機械の状態監 に、世界的規模でビジネスを考えね 視、生産品の監視,故障診断等,各 ば産業として成り立たなくなってい 6 精密な位置決めや速度制御を得意とするAC サーボモータは省 ーニングが全体の精度を決めるため、かなり熟練した調整技能が 力化,大容量化,応答性の改善などが進み、工作機械,半導体製 必要とされる。それゆえ、チューニング方法は一律にしにくく、チ 造装置,ロボット向けと言った代表的な用途から、射出成型機な ューニング者によって設定がまちまちになる可能性は否定できな ど油圧機器が組み込まれた一般産業機械を代替する電動化システ い。サーボモータの最も苦手とする制御が「力の制御」である。 ムの中心的要素として多用されはじめた。回転モータを使用した このためにベルトやチェーン等を介してボールネジにモータのトル 位置決めや速度制御には精度を出すため、フィードバック機構が クを伝え、ボールネジがこのトルクを力に変換し機械的なリンク 多用される。これはあらかじめ設定された位置や速度の指令信号 機構を動かす。この力を力検出器で検知し、フィードバック信号 と、検出器により検出された実際の位置、速度信号を比較し、こ としてサーボモータが正逆回転を繰り返し行い力制御する。力制 の両信号の差異をゼロに補正しながら目標値に近づける制御シス 御の点では油圧は圧力を適時圧力制御弁で制御できるため、簡単 テムである。油圧でもこの手法を使い、圧力,流量(速度) ,位置 に精度良く制御ができる。最近ボールネジを使わないリニアーサ 制御をするシステムがあるが、最も高精度に制御できるのが電気 ーボと言う方法もではじめているが、力制御に関してはまだまだ サーボモータを使用したシステムである。しかし、その分コストは 油圧制御に一日の長があると言える。 一般に高くなる。ただし、機械系を含め全システムの最適なチュ 7 高温岩体発電 の油圧シリンダを用い、台を押し上 いる。しかしながら、電子技術だけ げるだけという簡易なものが主に採 ではこれら機械の制御は不可能であ 用され、滑車やローブなどを利用し ることを認識しておかねばならない。 た比較的複雑な制御機構を持つ機械 物を動かす最終段階はあくまでメカ 電動式より、作動速度を高速化した なのである。 り、導入が容易であるといった優位 一方、電子技術と油圧技術が融合 して良いシステムが構築できたとは言 性がある。 え、油圧の基本は パスカルの原理 ▲ 低騒音ベーンポンプSQPシリーズ 終わりに 地熱発電の一つ、高温岩体発電が自然エネルギーとして注目 であり、これに代わる電気要素技術、 されている。1972 年にアメリカで提案されたこの技術は、80 機械要素技術は見当たらない。いず 年代に日・米・西独による国際共同研究が行われ、日本ではこ れにせよ、油圧は重要な機械要素技 の流れをくんで新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 術、システムであり、特に生産材に ▲ 可変容量形ピストンポンプP**Vシリーズ 豊富 な熱資源 を生 かし 日本 の将来 のベースエネルギーに 技術はその革新によって時代を変 は必要不可欠なことは昔も今も変わ え、また時代背景の中で育まれてい らない。そして、将来に渡ってもそ くものである。油圧システムも20 世 の価値は変わらないはずだ。しかし、 紀の中で大きな技術革新を遂げてき その普遍性に甘んじることなく、よ た。そして、昨今は電子技術の革新 り精密な制御,高性能化,高機能化 が目覚しく、全ての制御は電子技術 を追求することが私たち油圧メーカ と融合し新しいシステムを構築して に課せられた使命である。 が2020 年の実用化をめざして研究を進めている。その実働部 隊として、開発の一翼を担っているのが天満氏である。 通商産業省 工業技術院 資源環境技術総合研究所 地殻工学部 地殻エネルギー研究室 主任研究官 天満則夫 屋外で使用される建設機械や、多くの産業機械を休みなく て、材料には樹脂系のものや、耐蝕性に優れたセラミックスの 稼働させる大規模な工場などでは、漏れた油の総量も相当な 活用などが想定される。しかし、水圧システムは研究開発の結 規模にのぼるといわれる。こうした点から欧州では、仮に地中 果、潤滑特性や耐腐食性、加工技術などの問題点を克服しつ に油が浸透していった場合でも土壌が汚染されないよう、鉱物 つある段階に達してきた。 地熱発電の55 万 kW に対して 高温岩体発電は2900 万 kW 氏 戸を作ることによって自然に吹き出して れ目を作るんです。井戸を掘って地上か きますから、地上でタービンを回して発 ら水を入れ、その水圧によって岩石を破 電できるわけです。しかし、この3条件 砕します。岩石というのは、圧縮に強い の揃ったところがどこにでもあるわけで 反面で引っぱりに弱いという性質を持っ 油の代替として生分解性作動油を使用することも試されてい 現在、試作的な製品は登場している。 プール施設向けの水 る。そこで、油にこだわらず、水で代替できないかという液圧 道圧リフト は、水圧シリンダを組み込みスムーズな動作が可 技術における 回帰的な発想 も出てきた。 能で、プールを作動流体で汚濁しない。水道水のみで得られ ―― まず高温岩体発電システムとはどうい はありません。むしろ、熱源はあるが水 ているために、こうしたことが可能にな しかし、油の代わりに水を使うとなると、現在の油圧システ る負荷能力は約 1,470N。ポンプを利用せず、現行の油圧シ うものか、概要を教えていただけますか。 分がない、といったところは結構ある。 ります。一方の水分に関しては、同様に ム全体を見直す必要がある。たとえば、金属材料では錆など ステムをすぐに代替できるというわけではないが、身近にある 天満 一般の地熱発電には、 (1)水分、 こうした「熱資源」を「高温岩体」とい 井戸(注入井)から水を入れ、高温岩体 の原因になり、装置の構造や使用環境の温度管理なども現状 水を活用して家庭用などの小規模液圧システムを構成する要素 (2)貯留層構造、つまり岩石の「割れ います。高温岩体発電システムはこれを の熱によって作られた蒸気を別な井戸 をそのまま流用することはできない。少なくとも防錆対策とし としては、比較的近い将来、選択肢の1つにはなるだろう。 目」「すき間」ですね、それと(3)熱 利用して発電させようというものです。 (生産井)から回収します。回収した水 源、この3要素が必要といわれています。 では足りない2つの要素、水分と貯留 分はまた地下に入れる。つまり循環させ 地下に熱源があって、高温の蒸気や熱水 層構造をどうするのかというと、まず が貯留しているという状態があれば、井 「水圧破砕」という方法で高温岩体に割 8 9 るわけです。 この技術は1972 年にアメリカのロス アラモス研究所で提案されたものです。 すので、安定したエネルギー供給ができ いの規模の循環系が必要なのか、水の流 このように、地下の循環系システムは しかしまだ実用化はされていません。現 ます。太陽光発電は日中しか使えません 量がどれくらいになるか、といったモデ 想像して作り上げていく部分が大きいん 在までに必要な知識がだんだん貯えられ し、風力発電も風があることが前提にな ル計算をすることになると思います。 です。断片的な情報をつなぎ合わせて図 てきていて、NEDO では2020 年の実用 りますが、高温岩体ならそういう制限が 化をめざしています。 ありません。 ■図 2 人工貯留層(割れ目)のイメージ・マップ 示し、その循環系が全体でどのくらいの 大都市集中の生活スタイルが どこかで変わらないか 1500 熱量を持ってこれるのか、10 年、15 年 高温岩体という資源は、1 9 9 3 年の もう一つ、CO2 の排出量がきわめて少 N E D O の調査によると、日本国内で ないという点が挙げられます。大まかに 2900 万kW の発電ができると見積もられ いえば、太陽光発電の5分の1、風力発 ――天満さんご自身はこの研究にどういう 数ある生産井の間隔をどれくらいあけれ ています。従来の地熱発電での発電量は 電の2分の1くらいです。効率が良く、 関わり方をされてきたんですか。 ば効率的か、といったことの数値モデル 年間55 万kW ですから、50 倍以上です。 かつクリーンなエネルギーを考えた場合、 天満 1990 年に京都大学の大学院を終 を作るわけです。実際の運用システムの いま日本のエネルギーは、石油で約半分、 かなり有望な存在と言えます。 えてから、この研究所に入りました。そ 基礎部分の仕事ですね。目に見えないも 残りを石炭、ガス、原子力で3分の1く ―― 高温岩体発電システム研究のこれま のときから高温岩体発電システムには関 のを、様々な地下情報を基に作っていく、 らいずつ賄っていて、地熱は0.2%程度で での歩みと、今後の展開について簡単にお わっています。大学院では反射法の研究、 非常に難しいと同時に大変に面白い課題 しょう。それが高温岩体発電が実用化さ 教えいただけますか。 これは地下で弾性波がどう伝わっていく だと思っています。人間の手で創り出し れた場合、一気にほかの3つと肩を並べ 天満 1972 年が起点ですが、その後 80 かなどを調べるもので、いわば「手段」 ていく楽しみがあるんですね。 るくらいになるのではないかと思ってい 年から86 年にかけて日・米・西独によ の方を先にやっていたようなものです。 ――自然エネルギーというと、やはり地球 ます。 る国際共同研究が行われました。その後、 そのときはエネルギーのことを考えてい 環境の維持という大テーマにつながってき ―― 高温岩体発電は、従来の地熱発電に この国際共同研究に参加した研究者等が たわけではありませんので。 ますが、問題の一つに、こうした科学技術 は適さなかった場所を開発していける利点 中心となって、各国で研究が始まりまし 浅い と安定して熱を取るために必要な空間 (割れ目)の大きさはどれくらいか、複 2000 がまずあると思いますが、ほかの点はどう ですか。 天満 高温岩体発電は従来の地熱発電 と異なり、地表に戻ってきた水を注入水 として再利用するシステムです。これま での試験や調査等によって、循環する水 に溶け込む鉱物量は少なく、pH も中性 に近いことがわかっており、従来の地熱 発電よりスケール等の問題が小さいと予 測されています。 また、高温岩体発電の長所というより は地熱全般に言えることなんですが、日 本はエネルギー資源が乏しい国と言われ た。また、1997 年3月に仙台において IEA(国際エネルギー機関)地熱実施協定 の調印が行われました。現在、この協定 には高温岩体の研究を行っている日本、 EC、アメリカ、スイス、イギリス、オ ーストラリアといった5か国1機関が、 さらに活発な研究活動を進めるための情 報交換を目的に参加しています。 それで、この研究の中で私自身が何を やっているかというと、水圧破砕で作っ た割れ目部分の調査やシミュレーション が主です。地下の状況は実物を目で見る ことができません。例えば、どのように 割れ目ができているかおおよその見当を 得るために、注水によって生じる微細な 破砕音を拾い、その位置をマッピングし ていきます。 肘折実験場は国際共同研究の直後の 86 年からで、91 年に循環試験をやって、 ■図 1 高温岩体発電の概念図 ごたえが出てきました。というのは、循 環させる水の回収率を、それまで3割く ていますが、世界でも有数の火山国であ らいだったのが8割にすることができた り、地熱資源は豊富です。NEDO の研 んです。 ポンプ 発電所 注 入 井 生 産 井 2500 (図: NEDO 提供) に対する一般の人たちの関心の低さがあり 感としてその点をどう見ておられますか? 電子会議などができるようになったりし ます。そこで研究者からの情報発信という 天満 私は、将来ベースエネルギーにな て、こういうものが本格化していくと、 手もあると思いますが、これについてはど るのはやはり地熱だと思います。なかで 東京のような大都市に人が集中する必要 んなお考えをお持ちですか? も、熱源さえあれば発電できる高温岩体 もなくなるし、「会議のために、仕事の 天満 研究者が情報発信できる場所とい 発電は、地球自体をエネルギー源として ためにどこかへ行く」ということもなく うと、学会など、どうしても社会との接 見なすような、大きな可能性を持った技 なってくるかもしれない。すると、エネ 点が薄いところになってしまいますね。 術だと思います。しかしながら、研究の ルギーでいえば、火力や原子力は大量開 そこで、いい例かどうか分かりませんが、 スタートからすでに20 年近く経ってい 発・送電できるのがメリットですから、 実際のフィールドの活用ということは考 て、実用化までさらに20 年ほどかかる。 そんな大きな発電システムを用いなくて えられると思います。 ほかのエネルギー開発と比べて歩みが遅 も、小さな発電でよくなる。そうやって いのも事実です。ですから、自負と申し 分散してしまえば、地熱などの小さな発 と、近所に住んでいる方々が「何やって 訳なさが相半ば、といった感じですね。 電で、各地域ごとのエネルギー供給がで いるんだろう」と見に来られるんです。 ただ現実問題として、太陽光や風力、い きる仕組みになるかもしれない。地域密 私たちが簡単に説明すると、「ああなる まの地熱等の発電で、この先社会のサス 着型の社会ということですね。どこかで ほどね」「すごいね」と分かってもらえ ナビリティを支えていかれるかというと、 そういうふうに転換していかないかと、 る。こういうのは、文字などでは伝わら それは難しい気がします。 思ったりしているんです。 ない部分があるような気がします。ちな ―― この先のエネルギー問題を、悲観し 肘折の実験場で蒸気が上がっている このときに発電ができそうだなという手 深い 図の球は微少な破砕音の震 源をマッピングしたもの。 その破砕音の大きさから割 れ目をイメージしたものが 楕円として描かれている。 「割れ目」を浅深2段階に 設置したものをマルチ構造 という。「割れ目」を水平 方向に広げすぎると回収効 率が落ちるため、垂直方向 に多層的に設置する方法が 研究されている。 究では山形県の肘折というところに実験 91 年の試験は3か月間という短期の 場がありますが、ここで言うと、地下 ものでしたが、発電となると、10 年、15 みに肘折の実験場は、NEDO にご連絡 ているか楽観しているか、あえて言えばど 2.2km 掘って270 ℃の熱源に当たる。こ 年安定供給できるものが求められます。 をいただければ誰でも見学できます。現 ちらでしょう。 れに対してヨーロッパの実験場では5km それを今後の20 年で構築していくことを に学生さんなんかが見に来られています。 天満 現在の生活スタイルのままでいく 掘って200 ℃くらいですから、半分の距 目指しています。そこで、今年 11 月か そうやって実際に現場を見てもらうこと なら、悲観せざるを得ないですね。今の によって興味を持ってもらえる、そうい 社会は多くの人が良い生活ができる反 ● うところがあるのではないでしょうか。 面、エネルギーを消費する方、消費する 高温岩体発電 ―― 高温岩体発電には将来的に大きな可 方に向かっていっている。有限なエネル 能性と期待がうかがえますが、研究者の実 ギー資源はなくなっていくばかりです。 離でより温度の高い熱源を得られる。日 ら2年間の長期循環試験を予定していま 本の土地の特質を考えたら、地熱発電は す。水の注入量と回収できる熱の関係、 もっと推進されてもいいと思います。 また、どれだけ安定供給できるかを調べ そして何より、地下の熱源というのは 天候や昼夜に関係なくいつでも存在しま 基盤岩 伝導型伝熱 人工貯留層 るものです。この試験結果を踏まえて、 実際的な発電を考えたときに、どのくら 10 マグマ ただ、最近はインターネットを使った 11 土壌汚染対策についても環境庁が 化学反応による除去法の例は、大 般的であったが、その費用と、産業 ネスとして注目を集めてきている。 「土壌・地下水汚染に係る調査・対 成建設の「低温加熱浄化技術」であ 廃棄物として処理する費用がかさむ 土壌汚染といえば、足尾鉱毒事件や 策指針」というガイドラインを出し る。これは、水銀やカドミウムなど という問題が指摘されていた。同社 イタイイタイ病、六価クロム汚染な ている。これは例の24 物質に限定し に汚染された土壌を「掘削」したあ のシステムはこれを解決したところに ど、古くから社会問題になった経緯 たものであるが、これによると、浄化 と、掘削土に添加物を混入し、 大きな意義を持たせている。 を持ちながらも、地味なテーマとい 対策はまず(1)「原位置浄化」と 200 ℃から300 ℃といった低温の熱を 2つの例はいずれも、途中経過は う印象を持ち続けてきた感があるが、 (2)「掘削除去」という2つに大き 加えることによって揮発させるという 異なるものの、有害物質に悪さをさ 最近、汚染土壌の浄化対策がビジ ここに来て「地殻変動の兆し」が見 準では、24 の化学物質についての基 り、ここには近年話題のダイオキシ く分けられる。 「原位置浄化」とは位 もの。揮発させた水銀等は再利用も せないようにするという最終目標は えたのだろうか。今回はこの点をレ 準値が設けられている。つまり、基 ンが含まれていないし、放射性物質 置を変えないで浄化する、つまり掘 可能で、当然浄化した土壌は埋め戻 同じである。この「途中経過」をど ポートする。具体的には、土壌汚染 準値を超えた場合それは「汚染」と も考慮されていない。そのうえ、本 削しない方法であり、これがさらに しをすることになる。同社は、水銀 う工夫するか、つまり、スピード、 とはどういうことを言うのか、浄化 されるわけである。 来生態系を支えるべき土壌がその能 「原位置抽出」と「原位置分解」の 等は重金属であるため沸点が高く、 コストなどというところにビジネス展 通常は800 ℃から1000 ℃といった高 開の余地があるのだ。 対策にはどのようなものがあるのか、 この「24 の汚染物質」というのは、 力を失ってしまう「砂漠化」という そのなかでどのようなビジネス展開が 「 重 金 属 」 と「 揮 発 性 有 機 化 合 物 問題も含まれていないからである。 なされているのか、といった点を検証 ( VOC : Volatile Organic Com- する。 pound)」の2つに分けられていて、 2つに分けられる。 だが、 「原位置抽出」した物質もも 温で処理する必要があるが、添加物 また、上記2例はいずれもゼネコ そこで、もう少し範疇を広げて考え ちろん分解の必要があるので、どち の性質により低温で処理することが ンによるものだが、鹿島やフジタな てみたい。 らの場合も分解するわけである。 できるようになった点がきわめて有用 ど、ほかのゼネコン各社もそれぞれ浄 もう一方の「掘削除去」という方 だとしている。なおこの技術は、同 化対策の研究開発に取り組んでいる。 法においても、最終的には有害物質 社と国立水俣病総合研究センターに 浄化ビジネスはこれまでのところ、こ 合計で24 ある。重金属とは、カドミ 1999 年7月に「PRTR 法」という 24 の汚染物質は 重金属と揮発性有機化合物 ウム、六価クロム、PCB など、比重 法律が公布されたが、この「PRTR」 が四より大きい金属のことで、土壌 (Pollutant Release and Transfer を分解処理することになる。結局、 よる共同研究の成果から得られたも れらゼネコンを軸に進んできたと言え まず、土壌汚染とはどういうこと 環境基準には 1 3 物質指定されてい Register :環境汚染物質排出移動登 汚染土壌を浄化するということは、 のだという。 る。 を言うのか、この問題のおおよその る。日本の公害史に登場してきた名 録)という名の制度では、政令で指 「退けた」だけでは不十分で、いずれ もう1つの「バイオレメディエーシ しかし、競争は建設業界だけでは 輪郭を押さえておきたい。 前が並んでいることからも分かるとお 定する354 の化学物質について、そ にせよ「分解」しなければならない ョン」の例は、竹中工務店の「TCE 収まりそうにない。それは現在、ゼ り、しかるべく規制がなされてきたも れらを排出する事業者に行政への報 のである。 分解気相バイオリアクターシステム」 ネコン以外の業種も参入してきてい のである。 告が義務付けられている(最初の報 ではその「分解」の方法にはどの である。これは、TCE(トリクロロ るからである。 ここで言う「汚染」とは、もちろ ん「化学物質による汚染」である。 銅、カドミウム、六価クロム、ダイ 一方のVOC とは、トリクロロエチ 告は2002 年を予定)。この354 物質 ようなものがあるのだろうか。実はこ エチレン)によって汚染されている土 たとえば、新日本製鐵グループの オキシンなど、人体に有害な作用を レン(TCE) 、テトラクロロエチレン のなかにはダイオキシンなども含まれ こに各企業のビジネスチャンスが潜 壌を「原位置抽出」したあと、微生 環境エンジニアリングは「ホットソイ もたらす化学物質が土壌に入り込む などのことで、土壌環境基準には11 ているので、現在あるいは今後にお んでおり、各社さまざまな方法を研 物がTCE を分解、無害化するという ル工法」という技術を提供している。 ことによって、生態系のサイクルに 物質指定されている。特にTCE は半 いてはこれらの物質を含んだもののほ 究し開発しているのだが、大まかに ものである。 「原位置抽出」自体は従 これは、TCE によって汚染されてい 乗ってしまう。土壌汚染とは簡単に 導体製造工程で使われることで知ら うが、より現実に即した土壌汚染の 分けて2種類の方法が挙げられる。 来からある方法で、汚染土壌に井戸 る土壌を「掘削」したあと、掘削土 言えばこういう問題である。 れているが、危険性が認識され有害 定義(のイメージにつながる)とい 1つは、何らかの形で化学反応を を掘ってTCE を含んだ土壌ガスを吸 に「ホットソイル」という無機化合 「土壌汚染」と私たちは簡単に口 物質として規制されたのは1989 年の えるだろう。 起こさせることによって有害物質を 引していくものだが、同システムでは 物を混入」することによって無害化 にしてしまうが、では、何をもって汚 こと。すなわち、それまでの間は火 無害化する方法である。 そのガスをバイオリアクターに入れ、 するものである。TCE などの揮発性 染と言うのだろう。 災の危険性の少ない有用な物質とし 「T C E 分解菌」によって塩化水素、 有機化合物(VOC)は沸点が低いた ョン」 、すなわち微生物を使って有害 炭酸ガス、水に分解する(塩化水素 め、その特性を利用して、水,熱, 物質を無害化する方法である( 「レメ は微量であるため環境への影響の心 ホットソイルによって分解することが 配はないという) 。 できるという。もちろん浄化された土 その判断をする際の一つのスタン ダードとされるのが、環境基本法に て多用されてきたため、広い範囲で の汚染が懸念されている。 化学反応による除去と バイオレメディエーション さて、土壌汚染への対策である。 もう1つは「バイオレメディエーシ 基づいて定められている「土壌環境 しかし、この定義は決して十分な 問題は化学物質が有害な作用をもた ディエーション」とは「環境修復」 基準」 (1991 年8月23 日、環境庁告 ものではない。なぜなら、対象が24 らすのであるから、そういう作用が働 の意) 。それぞれどのようなものなの 示第46 号)である。この土壌環境基 物質という限られた範囲のものであ かない状態にしなければならない。 か、例を示しながら説明していこう。 12 これまで、 「原位置抽出」したあと 壌は埋め戻しすることになる。同社 のTCE は活性炭に吸着させるのが一 はまた、一般的とされている土壌ガ 13 information ス吸引法などが日数を要するもので その背景にあるのは、この時期に あったのに対して、このホットソイル 集中して行われている土壌汚染の法 工法はその代替手段になると位置付 整備や各種規制である。先に示した けている。 PRTR 法のほか、2000 年1月に施行 もう一例挙げてみよう。日本鋼管 されたダイオキシン類対策特別措置 (NKK)は、アメリカのバイオジェネ 法、さらには国際環境規格 シス社から汚染土壌の浄化技術(化 「ISO14000 シリーズ」の浸透などが 学反応による除去法)を導入し、三 相まって、市場拡大の追い風になっ 菱商事と手を携えてビジネス展開を ていると考えられる。 ――――――[参考文献]―――――― ●環境庁水質保全局 「平成10 年度土壌汚染調査・対策事例及 び対応状況に関する調査結果の概要」 2000.3. ●環境庁水質保全局 「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指 針の概要」1999.1. ●都留信也 『地球を丸ごと考える 6 土のある惑 星』岩波書店、1994.10.27. また、土壌汚染という問題は、こ の技術は、重金属やVOC によって汚 れまでの環境行政の流れから言えば、 染されている土壌を「掘削」したあ 国による社会保障政策の一つとして と、掘削土を高圧水で砕いたうえ、 扱われるべきものなのかもしれない。 ▼環境庁ホームページ http://www.eic.or.jp/eanet/ 高速でプレートにぶつけて化学物質 しかし、見落としてはならないのは、 を分離させるというものである。また 今や町工場といった、ごく小規模、 ▼大成建設ホームページ http://www.taisei.co.jp/cab/B01-2.html これは、現場に処理設備を持ち込む 限定範囲のものまでもが問題の矢面 ことがことが可能なため処理が比較 に立つことになる点だ。ここでは、 担保となっていた土地が汚染土壌と 大きな特徴だという。 されることでいきなり無価値になるケ このほか、新聞等で報道されたも ースが想定され、 公害問題 ばかり のだけでも、三井造船や三菱重工業、 でなく 経済問題 出光興産などがこの分野に参入する ことが事態を一層複雑にする。必ず ことを表明している。 しも行政では賄いきれない部分に対 なぜ今、浄化ビジネスがこんなに も活況を呈しているのだろうか。 にまで発展する し、浄化ビジネスという切り込みが 危急に求められてきているのだ。 トキメックは米国 Litton のです。両社の優れた特長を ス拠点などの共有化すること れています。こうした強力な Marine Systems 社と航海 最大化することによって、お を通じて、商品の合理性を高 パートナーシップを通じて新た 機器分野における業務提携を 客様のニーズにマッチした商 めたり迅速なサービス対応に な価値の創出を指向している 行うことにいたしました。 品を今まで以上にリーズナブ 努めてまいります。もちろん両 のです。トキメックは Litton 提携の内容は、航海機器の開 ルな形でお届けすることを目 社の販売拠点を相互活用して Marine Systems 社とのパ 発、マーケティング、販売お 的としています。 お客様にきめ細かな対応を図 ートナーシップを通じて新たな よびサービスなど両社の舶用 たとえば、両社のマンパワ り技術交流によって新商品を 価値の創出を指向してまいり 事業全般にわたる包括的なも ーや商品、生産/販売/サービ 共同開発することも視野に入 ます。どうぞご期待ください。 ●日本地盤環境浄化推進協議会 (JASERA)監修 『土壌・地下水汚染の実態とその対策』オ ーム社、2000.1.10 図っていくことを発表している。こ 的簡易で、コストが低減できる点も 経営資源の有効活用で航海機器ビジネスのグローバル化を推進! トキメックと米国 Litton Marine Systems 社は戦略的業務提携を行いました。 ●安原昭夫 『しのびよる化学物質汚染』合同出版、 1999.11.15. ▼竹中工務店ホームページ http://www.takenaka.co.jp/techno/index. html ▼環境ビジネスとエコグッズのページ http://www.dango.ne.jp/kankyo/tuti.htm products 情報コミュニケーションの充実で安全航海を推進! 自動船舶識別システム AIS トランスポンダ R3 安全航海を遂行する上でマ 入手できるので、船舶間の交 海機器と有機的な結合をすれ ◆問い合わせ先 リンレーダやワッチによる航路 信が確実・スピーディに行え ば、A I S の持 つ優 れた機 能 、 制御システム事業部 の監視は欠かせません。しか るようになり、安全航海の実 可能性を最大限に活かすこと 船舶港湾 SBU し、マリンレーダーや肉眼で 現に役立ちます。また、船舶 が可能です。 電話: 03-3737-8611 は相手の船名や船速、積荷な 同士のみならず陸上基地局と トキメックは航行安全、航 どの情報を窺い知ることがで の情報交換も緊密に行えるの 行管理に大きく寄与するトータ きないというのも事実です。 で「海上版 ITS」のキーデバ ルシステムとして付加価値の もし、こうしたデータが事前 イスとしても活躍が期待され 高い AIS をご提供いたします。 に分かっていれば、さらに安 ています。 全で確実な航海に結びつける ことができるでしょう。 トキメックがお届けする 本 機 は 、 IMO MSC 決 議 ※ AIS : Automatic Identification System 【おもな特長】 74(69) Annex3、 ITU-R 勧告 M.1371、ITU-R 無線 AIS トランスポンダ R3 は、 通信規則付録第 S18 号、 船名,船位,船速,目的地,ETA, IEC61993-2 等各国際規格 積荷などの情報を内蔵の VHF に準拠した信頼性の高いシス 装置によって送受信する装置 テムであり、北欧において数 です。従来の方法では分から 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れの列の中で連続して塗るマスの数を表わします。 ②1つの列に2つ以上の数字があるときは、その数字 の並び順通りに、数字が指定しているマスの数を塗っ ていきます。ただし、違う数字の指定によって塗られ たマス(のかたまり)同士は、その間に1マス以上の 空きを作ることが条件です。 ●ヒント イラストは 年中行事の人物 を描いています。 ※数字の合計が大きく、また連続して塗る数の大きな 列に注目。塗るマス(のかたまり)をこの列のどこに 配置するにしても、1) 、2)のルールから、必ず塗れ るマス(絶対に塗れないマス)というのが存在する。 これを順次見つけていくのがポイント。 ■回答と応募の方法 答えを、ハガキ、FAX、Eメールいずれかの方法で、 (株)トキメック 総務部 広報グループ宛にお送り下さ い。その際、本誌へのご感想も添えて頂ければ幸いで す。 ご応募頂いた方の中から、抽選で100名の方に、弊社 オリジナル・テレホンカードを差し上げます。締切 は、2001年1月31日と致します。 ●解説用の例題 ①右図の場合、まず上側の数字の「5」に注目。タテ列のマス目 の数は5、指定の数も5だから、この列は全部塗りつぶすことに なる。②次に左側数字の一番上、 「1」に注目。このヨコ列にお いて1マス塗るという指定だが既に①で1マス塗れているから、 リモートディスプレイユニット RDU40 た。RDU40 はレベル計本体 このヨコ1列は他のマスは塗られないことがわかる。そこで全 部×を付けておく。③次に左側の上から2番目「4」に注目。既 に塗られている1マスが、数字が指定する4マスの内の1つである。ということで、この列にも絶対に塗られな いマスが存在するのでそこに×を付ける。このようにして、塗れるマスを論理的に見つけていく。 16 17 TOKIMEC REPORT 2000 WINTER 新聞紙上などで「A社の売上は前年同月比で○○%の 最善の選択を推定することが変革への第一歩につなが マイナス」という記事をしばしば目にする。しかし、 る。そのためにはまず、新しいモノサシの準備と起点 その隣の記事に「右肩上がりの成長時代が終わった今 の再設定が必要だ。 では」などという表現があったりすると、おやっ?と その1つは、好むと好まざるとに関わらず「IT」だろ 思ってしまう。右肩上がりの時代が終わった、とする う。これを企業活動に当てはめた e-ビジネス が、 のなら、過去の実績と現在とを比較しても無意味では もはや現在のビジネス・スタイルのスタンダードであ ないだろうか。 るかのように喧伝されている。 「エコノミスト」グルー 変革や構造改革が声高に叫ばれて久しいが、新しいム プの調査会社とIBMが共同で行なった調査でも、回答 ーブメントを古いモノサシで評価すれば否定的な結果 者(上級管理職)の半分はインターネット技術が従来 がでることもしばしばある。よく考えてみれば、過去 のビジネスモデルを変革すると考えているそうだ。 の実績を起点に現在を考えなければならない理由など 一方、 e-ビジネス が必ずしも即座に利益をもたらさ どこにも無い。こうした根拠のない「常識」に縛られ ないことは、いわゆるドットコム企業の事例が物語っ ると、変革に向けたチャレンジなどできくなってしま ている。実はここにも先程のモノサシと基準の話が絡 う。過去の実績を冷静に受け止めて検証する姿勢は大 んでくる。速効的な売上向上が成功の基準なのか。e- 切だ。しかしそれよりも、一歩先を読んで合理的に今 ビジネスの本質は、むしろ顧客サポートの充実だとの を推量することの方が重要である。自らの意志決定に 意見もある。一見遠回りな施策がより大きなリターン よって究極的にどうなるかを予測し、それに基づいて を生む、そうした基準もまた必要だと思うのだが。 平成 12 年 12 月発行(通巻 99 号) 発 行/ 株式会社トキメック 総務部 広報グループ 〒 144-8551 東京都大田区南蒲田 2-16-46 TEL.03-3730-7013 FAX.03-3733-3690 発 行 人/ 鈴 木 富 雄 編 集 人/ 田 中 伸 幸 編 集 協 力/ (株)パルナス 本誌に対するご意見、お問い合わせは広報グループまで URL :http://www.tokimec.co.jp/ Mail:[email protected]
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