広島県補助事業 平成 27 年度 大学連携による 新たな教育プログラム 開発・実施事業 グローバル化時代の も の づ くり 技 術 者 像 報 告 書 2015 大 学 連 携 プログラム主 催 者 挨 拶 平成 27 年度大学連携による新たな教育プログラム開発・実施事業 「グローバル化時代のものづくり技術者像」終了に寄せて 広島工業大学 学 長 鶴 衛 本学は、昨年度に引き続き、平成 27 年度も広島県からのご支援及び連携校等のご協力を いただき、大学生及び社会人を対象とした教育プログラム「グローバル化時代のものづくり 技術者像」を開講いたしました。 本プログラムは、昨今の産業界、経済界等における急速なグローバル化に伴い、大学に対 し強く求められている「グローバル人材育成」という大きな課題に向けて、産学官で取組ん でいこうとするものです。 そのため、講師の方々には、本事業の連携校である広島大学、県立広島大学及び広島国際 学院大学の先生方を、また、私共が長年ご支援・ご協力いただいておりますマツダ株式会社、 株式会社フジタ、株式会社インタフェース、独立行政法人中小企業基盤整備機構、株式会社 ジェイ・エム・エス及びアンデルセングループ等から造詣の深い方々をお招きいたしました。 プログラムは、 「異文化コミュニケーション」 「海外ものづくり事情」 「海外文化事情」と いう 3 つのカテゴリーから構成し、特定の分野に特化するのではなく、様々な分野を横断的 に学ぶ内容といたしました。 また、実施方法としては、講義(スクール)形式のみでなく、ディスカッションやグループ ワーク等によるアクティブラーニング形式を導入いたしました。 受講いただいたのは大学生 17 人、大学院生 1 人、社会人 21 人の計 39 人です。受講生の 皆さまには、全 15 回の講義を通して幅広い知識をしっかり修得され、さらには、それをベー スとして、 「グローバル化時代のものづくり技術者」に成長していかれますことを大いに願っ ております。 最後になりましたが、本プログラムの実施にあたり、多くの皆さま方にご支援、ご尽力い ただきましたことに、心よりお礼申し上げます。今後も変わらぬご支援を賜りますようお願 い申し上げます。 2 目 次 3 あいさつ ……………………………………………………………………………………………… 2 目 次 ……………………………………………………………………………………………… 3 1 プログラムの構成 ……………………………………………………………………………… 4 2 講義紹介 ………………………………………………………………………………………… 5 3 海外現地研修 …………………………………………………………………………………… 20 4 全体のアンケート結果 ………………………………………………………………………… 23 5 各講義のアンケート結果 ……………………………………………………………………… 25 1 . プ ロ グラムの構成 「グローバル化時代のものづくり技術者像」 区 分 内 容 講 師 日 時 ガイダンス 第 1 回 ガイダンス 本講義の目的および目標を確認する。 また、 グローバル化時代を概観するとともに 海外事業に関わる社会人として求められる技術者像の概要を理解する。 濱﨑 利彦 (広島工業大学) 平成27年 9月26日 (土) 13:00 ∼14:30 第 2 回 異文化コミュニケーション全般 日本の技術者が、 異文化を持つ技術者とコミュニケーションを図る上で知っておくべき ことを全般的に学ぶ。 上水流 久彦 (県立広島大学) 平成27年 9月26日 (土) 14:40 ∼16:10 第 3 回 英語圏における異文化コミュニケーション 日本の技術者が、異文化、特に、英語圏文化を持つ技術者とコミュニケーションを 図る上で知っておくべき文化や習慣、また、特別な言語表現などの素養を学ぶ。 三熊 祥文 (広島工業大学) 平成27年10月3日 (土) 13:00 ∼14:30 異文化コミュニケーション 第 4 回 グローバル化する日本社会と異文化理解 崔 博憲 平成27年10月3日 (土) グローバル化が進展する日本社会の実態をふまえたうえで、異なる文化や価値観 (広島国際学院大学) 14:40 ∼16:10 をもつ人びととともに働き暮らすための考え方や知識について学ぶ。 第 5 回 ものづくりにおける海外事業展開と技術移転 ものづくりにおける海外事業展開と技術移転について、歴史的背景、現状と今後の 動向など実例を挙げながらその考え方と知識を学ぶ。 高田 忠彦 (広島大学) 平成27年10月24日 (土) 13:00 ∼14:30 第 6 回 海外ものづくり事情(自動車分野) 豊田 裕三 平成27年10月24日 (土) 自動車分野における海外での事業展開を念頭におき、 ものづくりをベースにしながら、 (マツダ株式会社) 14:40 ∼16:10 海外での勤務や現地の技術者との協同作業に必要な知識を学ぶ。 第 7 回 海外ものづくり事情(電気電子工学分野) 小西 善彦 電気電子分野における海外での事業展開を念頭におき、ものづくりをベースにしながら、 (広島工業大学) 海外での勤務や現地の技術者との協同作業に必要な知識を学ぶ。 平成27年 11月7日 (土) 13:00 ∼14:30 第 8 回 海外ものづくり事情(デジタル情報家電機器商品企画・戦略分野) 杉木 雄三 デジタル情報家電機器事業の海外展開を念頭におき、 グローバルと地域の両視点から商 (クリプトメリア経営コンサルティング) 品企画をすすめる上で、 海外商社との連携やカスタマとの関係構築に必要な知識を学ぶ。 平成27年 11月7日 (土) 14:40 ∼16:10 海外ものづくり事情 第 9 回 海外ものづくり事情(食品分野) 加賀田 知穂 平成27年 11月21日 (土) 食品分野における海外での事業展開を念頭におき、ものづくりをベースにしながら、 (アンデルセングループ) 13:00 ∼14:30 海外での勤務や現地の技術者との協同作業に必要な知識を学ぶ。 第 10 回 海外ものづくり事情(建設分野) 古屋 朋寛・西田 裕 平成27年 11月21日 (土) 建設分野における海外での事業展開を念頭におき、ものづくりをベースにしながら、 (株式会社フジタ) 14:40 ∼16:10 海外での勤務や現地の技術者との協同作業に必要な知識を学ぶ。 第 11 回 ものづくりにおける海外事業展開 海外での事業展開を念頭におき、ものづくり技術者が海外事業展開で注意する 点、また、知っておくべき知識などの全般について学ぶ。 深田 進 平成27年 12月12日 (土) (中小企業基盤整備機構) 13:00 ∼14:30 第 12 回 海外ものづくり事情(コンピュータシステム分野) 鈴木 誠 平成27年 12月12日 (土) コンピュータシステム分野における海外での事業展開を念頭におき、 ものづくりをベース (株式会社インタフェース) 14:40 ∼16:10 にしながら、海外での勤務や現地の技術者との協同作業に必要な知識を学ぶ。 第 13 回 海外文化事情(日本企業勤務の現地管理社員の視点) 趙 鵬海 海外現地社員にとって日本企業はいわゆる 「外資企業」 である。 そこには彼ら独自 平成28年1月9日 (土) 呂 暁鵬 の視点があり、 日本人が描くイメージとは明らかな違いがある。 この意識の違いを討 13:00 ∼14:30 (大連 JMS 医療器具有限公司) 論し、 それぞれの文化をさらに深く理解する。 海外文化事情 まとめ 第 14 回 海外文化事情(留学生の視点) 文化の違いなどを、留学生を交えて討論や体験的な演習を行いながら理解する。 長坂 康史 たとえば、 留学生から見た自国と日本の違いなどのテーマをもとに、 それぞれの文化を (広島工業大学) 理解するとともに、日本の文化についても再認識する。 平成28年1月9日 (土) 14:40 ∼16:10 第 15 回 まとめ グローバル化時代のものづくり技術者像をまとめる。 長坂 康史 (広島工業大学) 平成28年1月23日 (土) 13:00 ∼14:30 中国 平成 28 年2月29日 (月) ∼ 3月5日 (土) 講義終了後の海外現地研修(希望者のみ) 海外現地研修 海外で事業展開している地元広島の企業を訪問し、意見交換および作業体験 などを行う。 (※海外現地研修に係る渡航費等については、半額程度の自己負担が生じます。 ) 4 2 . 講 義 紹介 平成 2 7 年 9月 26 日(土)13:00 ∼14:30 第 1 回 テーマ: 「ガイダンス」 講 師:広島工業大学 情報学部情報工学科 教授 濱﨑 利彦 〈概要〉 ■講師紹介/広島大学工学部旧電子工学科で学ぶ。博士学位取得と同時に東芝 ULSI 研究所に入社。7 年勤務後、1991 年米国のバー・ブラウンに転職、マルチメディア集積回路のデザインマネージャ。 M&A により 2001 年からテキサス・インスツルメンツ (TI) にて同分野のアナログテクノロジセンター 長として勤務、2004年に TI フェローアワードを授与される。2010 年より現職。 ■本論/半導体業界を例に、自身の経験とビジネスモデルの変遷を解説。 ドイツは Industrie4.0 という改革を展開し、アメリカは「すべてのものがインターネットにツナガル ● IoT」を強力に押し進めているという事例を経済産業省「2015 ものづくり白書」の報告も交えながら説明。今後も継続的にインターネッ ト上の情報量が増え続けることを力説した。一方、産業先進国において得られた知識ベースが、新興 国へどんどん移転され「フラット化する世界」が形成されていることも指摘。 ● 半導体のビジネスモデル:70 年代はマーケティング・知的財産・設計・製造のすべてを行う IDM (Integrated Device Manufacture)の形態。80 年代には製造だけを行う Foundry の登場で Fabless と呼 ばれる半導体の事業形態が生まれ、90 年代にはそのビジネスモデルが急速に発展した。さらに 2000 年 代にはマーケティングと製造以外、すなわち設計だけを行う Design House が登場し、中国でそのビジ ネス形態が伸びている。いずれにしてもアメリカの半導体業界では Fabless が圧倒的に伸びている。 ものづくりの難しさ:日本のものづくりの精神からすれば、品質が高く高性能なハイエンドのものを ● つくりたいという想いが一般的に強い。しかし本質的に生産技術が鍵を握るものづくりではコスト を下げて広く普及させる事が求められ、両者のバランスを取るのがとても難しい。デザインマネー ジャだった当時は大量消費時代の芸術のあり方を革新したアンディ・ウォーホルの「大衆化そのもの に価値がある」という考え方に勇気づけられた。今後さらなるインターネットの普及により情報が経 済の主体となった世界で産業新興国がさらに発展することは、日本が高度経済成長を遂げた時代と は大衆化するものづくりの概念は大きく異なる。パーソナルとソーシャルでは、ますますソーシャルが重要になってくるであろう。 半導体の戦略: 「基幹・民生系」から「環境系」 、 「情報系」 、そして「次世代基幹系情報融合」へ。今後は IoT、すなわち、 “情報と○○” ● という時代になるだろう。 日本の会社の海外現地法人の動向:その国にとけ込んでビジネスを展開する。 ● 広島県の産業の動向:パーセンテージの高い食品が重要。 ● ■本プログラムの目的/「グローバルに通用する製品と技術の発信」と「海外企業との連携」が求められている中、 広島で「あらたな海外事業」 に取り組む人材の育成は急務。本講義では、 「海外実務経験者との討論」を交えながら、「広島の『ものづくり』を中心とした現場」で活躍 できる力の修得と「多様性の理解」を目的とする。 ■本プログラムの講義内容/異文化コミュニケーション・海外ものづくり事情・海外文化事情・海外現地研修の 4 部で構成。座学のみでなく、 講師および受講者を交えた討論やグループワークなどの体験的な演習などを取り入れたアクティブラーニング手法によって知識を身に付ける。 新鮮な驚きを感じた初講義。全体を通してしっかり学びたい 受講生よりひとこと 広島工業大学 情報学部情報工学科3年 木村 元紀さん 私は情報学部が実施している人間力育成プログラム FBIT(Friendship before IT)というチームに所属しています。 これは IT 企業に就職する前に友情やコミュニケーションを学ぼうという組織です。そうしたご縁から、先生にこの講義 への参加を勧められました。ガイダンスを聞いてまず驚いたのは、グローバル化ということの意味です。これまでは、 外に出ていくもの、英語を学んで海外で活動するものだと思っていたので、「多様な価値観を理解する」といったお話 はとても新鮮でした。また、このプログラムで一番楽しみなのは、海外企業の方の声を実際に講義を通して聞けること です。社会人の方と一緒に受講したり討論をすることも初めてのことなので、貴重な経験ができる場となりそうです。 5 平成 2 7 年 9月 26 日(土)14:40 ∼16:10 第 2回 テーマ: 「異文化コミュニケーション全般」 講 師:県立広島大学 地域連携センター 准教授 上水流 久彦 〈概要〉 ■講師紹介/専門は文化人類学。世界各地に出かけて多様な文化を見て、人間とはどういう存 在なのかを考える学問。台湾を中心に中国や韓国、パラオ、日本の対馬や石垣島などを調査。 ■ウォーミングアップ/・事例研究(おごらない日本人、乾杯しない日本人) ・ハイコンテクス トとローコンテクスト・知ることの落とし穴(ステレオタイプ批判、括られない個人) ・気を つけたいダブルスタンダード∼〔小括〕ミスコミュニケーションもコミュニケーション。差 別の発生は不寛容と不学習の賜物 ■講義の目的/異文化に身を置く場合の基本的な考え方、あり方を講義。人間は差別する動物 である。差別する動物となる仕組みを明らかにし、文化相対主義への理解を深める。 ■本論/●差別する人間:例として、虫を食べるバカバカ村を扱う TV 番組を視聴。 自文化中心主義=自分の文化の基本的な価値観を絶対視し、それを基準に異なる文化を価値 判断する態度や見方。 文化とは:①特定の社会の人々によって習得され、共有され、伝達される生活様式の体系 ②人間が物事を意味づけ、行動する、頭の中にある何か 文化の身に付け方:小さい頃から繰り返し教えられ、 違反すると注意されて「身体化」するため、 それを本質的と考え、異なる文化を異常と認識する。 日本にはびこる問題「オリエンタリズム」 :欧米の近代文明を文化進化の頂点とみなし、他民 族の文化は定向的進化段階のいずれかに位置するという「一線(単線)進化論」に基づくもの。「オリエンタリズム」は、ヨーロッパ対 オリエント(東洋)という二項対立によって割り切る考え方。ヨーロッパと対比的に、後進性・ 受動性などの負の表象が割り当てられ、政治的権力と学術的権威とに繰り返し強制された結 果、嘆かわしいオリエントを進歩したヨーロッパが救済するという図式が生まれ、近代の植 民地主義等を正当化する根拠となった。 ●文化相対主義:文化の根本は「分ける」こと。「文化相対主義」とは、ある行為(習慣)を、 それを含む文化全体から理解していく姿勢。モノの分け方に善悪はない。メアリー・ダグラ スの「out of place(場違い) 」の穢れ(けがれ)の概念を参考に。 ■まとめ/●基本的なマナー:文化に優劣がないと分かっていてもそう自然に思ってしまう自分 を自覚しよう。その上で、自文化が絶対的に正しいものではないことを知る。さらに、安易に 「おかしい」 「変」と言わない。次に、相手がそうする理由を考え、理解する。究めるならば、 「求 同存異(同じところを求めて、異なる点は残しておく) 」という姿勢を。同じ人間なのだから、 異文化にも共通性・共有点を見出したい。 ● 異文化への対応のまとめ:・寛容と学習の重要性・人は多要素であり、ステレオタイプはいない・ 根拠のないダブルスタンダード・異文化への適応の肝は、自文化への冷めた目と他文化への温 かい目を持つこと 自分にない視点を得て、変化を捉える方法を獲得したい 受講生よりひとこと マツダ株式会社 原田 千花子さん 私は、企画部門で将来の車に関する課題の発見・特定と対応の立案を役割としております。こうした役割を果たす 上で、将来の自動車や弊社を取り巻く内部 / 外部変化を洞察することが重要と考えています。そこで本講座は外部の 見識にも触れながらこれらを考え尽くす機会になると参加しました。 今日の講義は、人中心のものづくりをする私たちにとって『人の本質とはなんぞや』の一端を学べ、人への理解が 深まると共に、関心の幅が広がり、有意義でした。引き続き、本講座では、多面的に将来課題を洞察する視点からも、 多様な考え、動き、学術論拠に触れ、深く解説頂けると期待しています。 6 平成 2 7 年 10 月 3 日(土)13:00 ∼14:30 第 3回 テーマ: 「英語圏における異文化コミュニケーション」 講 師:広島工業大学 生命学部食品生命科学科 教授 三熊 祥文 〈概要〉 ■講師紹介/専門は英語教育およびスピーチコミュニケーション(プレゼンテーションも含む) 。 ■講義内容/英語圏におけるコミュニケーションについて、 「スピーチコミュニケーション」に 焦点をあてて解説。 ■はじめに/コミュニケーションの日米比較:「高コンテキスト」対「低コンテキスト」 。前者 は状況が意味を持ち、後者は言葉が意味を持つ。文化土壌の影響と聖書由来の立場から、基 本的に英語圏の文化は「スピーチ中心主義・スピーチ文化」である。 ■本論/ スピーチの文化は古代ギリシャで確立したと言われている。 ●スピーチの目的:大 きく分けて①情報を与えるスピーチ②楽しませるスピーチ③説得のスピーチ④儀礼的スピー チの 4 つがある。日本人に尋ねると大半が「私を伝えるため」 「理解してもらうため」と答え、 この 4 つの目的をイメージできない。 ●スピーチの 5 規範:目的が決まった後、発表までの準 備のステップ。① Invention (発想 ・構想)② Disposition (配列)③ Elocution (修辞)④ Memory (記 憶)⑤ Action(所作)。特に重要なのは「配列」。 ●スピーチの配列:日本式の「起承転結」はグ ローバルスタンダードではない。 【受講者二人一組で資料文のおかしいところを相談、発表】 「突 然違う話が出てきた」との意見。こうした「転」の部分は英語のスピーチには向かないというこ とを知っておこう。その上で、英語圏の人が学ぶ説得のための配列について解説する。 ● 説得のための配列法: 【受講者二人一組でイラストを見て、何が起こっているのかを相談、発表】 イラストでは、①注意を引く②必要性を説く③必要を満たす④効果を示す⑤行動に訴えるという流れ。これは、アメリカで行われている スピーチ教育の中でも、問題解決型の高度な例。こうした説得のための配列法は「モンロー の動機配列」というもの。① Attention ② Need ③ Satisfaction ④ Visualization ⑤ Action 【広 島工業大学の学生が英語弁論大会で本選進出した際の英語スピーチを視聴】前述の配列法か らこのスピーチの構成を見てみる。彼は、 金属の引張試験を人間のストレステストと結びつけ、 これが説得力を増した。こうしたメタファー (隠喩)は“要するに”という「かみ砕き」である。 これができれば、全く関係のないものも結びつけられる。 ■まとめ/●「グローバリズム」とは何か?: 「要するに」思考は、プレゼンテーションの必要 性がある場合に立ちあがってくる。こうした考え方は、外国語によるプレゼンテーションや 非専門家へのプレゼンテーションなどの場合にも非常に重要。それは、 「分野の壁を超えるカギ」 となる。 ● アハ英作文: 【受講者二人一組で資料を見て英作文を考える】このように、普段から分野や立 場の違う人と、お互いに理解するための共通点を見つけながらコミュニケーションしていくと いうことがすでに異文化コミュニケーションの準備になっている。それに気づくかどうかだ。 英語文化を起爆剤として、日本人同士も含めた、より幅広いグローバルコミュニケーションの 達人を目指してほしい。 楽しく学べたスピーチ学習の基礎知識。受講生の発表も参考に 受講生よりひとこと 広島工業大学 情報学部情報工学科3年 川野 真理子さん 英語があまり得意ではなく、資料を見たときは理解できるかな?と思いましたが、講義はとてもおもしろかったで すし、ペアワークも楽しかったですね。日本語での弁論大会に出た経験があるので、 その時に勉強していた起承転結が、 英語でのスピーチコミュニケーションでは良くない配列だということにとても驚きました。人前でスピーチをする経 験もこれからゼミで増えていくと思うので、今回学んだことを生かしていきたいと思います。異文化理解にはまだ勉 強を深めていかないといけませんが、社会人の方が発表されるのを見ていると、考え方も話し方も全然私たちと違う ので、大いに参考にしていきたいですね。皆さんと一緒に、最後まで頑張って受講できそうだと思いました。 7 平成 2 7 年 10 月 3 日(土)14:40 ∼16:10 第 4回 テーマ: 「グローバル化する日本社会と異文化理解」 講 師:広島国際学院大学 情報文化学部現代社会学科 准教授 崔 博憲 〈概要〉 ■講師紹介/横浜生まれの在日韓国朝鮮人 3 世。専門はマイノリティ論・人類学・社会学。大 学卒業後、タイでのボランティアを経験。帰国後、大学院で学び、2011 年から広島在住。タ イの山地民や在日韓国朝鮮人について、近年は東南アジア出身の移住労働者について研究。 ■本論/《異文化理解について》 ●自身の経験を中心に:日本社会にとって「内なる他者」であ る在日韓国朝鮮人を生きるとは?国籍・民族・文化が一致しない自分とはどういう存在なの か? ●タイでの山地民との出会い:北部タイの山岳地帯に暮らす少数民族の貧困や差別、教 育問題に取り組む NGO 活動に参加。同化政策が進められる一方で、共産主義・麻薬・環境破 壊者といったレッテルが貼られた彼 / 彼女たちも、タイ社会の「内なる他者」であった。 ● タイで気付いたこと:世界には「○○国家=○○民族=○○文化」という見方からこぼれ落ち る人々が大勢いる。彼 / 彼女たちの多くはそれに合致しない「自分とは何者か」と悩み苦しむ 者が少なくない。 ●異文化と自文化の相対化:文化という言葉は集団のあり方を意味づけたり 評価したりする文脈で用いられるが、原理的には「1 人 1 文化」。異文化であれ、自文化であれ、 その意味や評価を相対化し、一人ひとりが違う存在という認識を持ち続けることが重要。 ● まとめ:同時代に生きる多様な他者とどのように共に生きるかを考えなければならない。その ためには、他者だけでなく自分をも相対化し、他者と自分が「違うけど同じ」ということに向 き合う必要があるのではないだろうか。 《グローバル化する日本社会について》 多文化・多様化・多民族化する日本:少子高齢化が進む現代日本では、国外からの活力導入が ● 大きな課題。戦前・戦中、日本は現在以上に多文化・多民族社会だったが、いま再び、新た なグローバル化のなかにある。 ● 労働現場を支える外国人技能実習生:日本は公的には単 純労働者を国外から受け入れていないが、法や制度の改正・緩和により外国人研修・技能実 習生の受入を拡大してきた。3K 職場を支える彼 / 彼女たちは単純労働者に他ならない。 ●外 国人研修・技能実習制度:元々は日本の先進技術を途上国に移転するための国際貢献事業。 1990 年代以降、安価な労働力を供給する仕組みとして運用が拡大し、さまざまな問題が発生。 2010 年、研修制度から技能実習制度となり、2015 年には受入期間の延長も決まる。現在国内 で約 16 万人の外国人技能実習生が働いている。広島で働く約 1 万 7 千人の外国人労働者の半 分が外国人技能実習生。 ●まとめ:少子化や市場が縮小するなかで、誰がデッド・エンド・ジョ ブ(誰もやりたがらないステップアップできない仕事)を担うのかという問いが日本社会に突き 付けられている。また、国外からの労働力をどのようにして受け入れるべきか。現状のサイド ドアからか?それともフロントドアからか?しかし、経済成長する中国や東南アジアと日本の賃 金や生活の格差は縮小している。魅力が減退する日本に彼 / 彼女たちはやってきてくれるだろ うか。いつまでも日本が上から目線で受け入れの可否を決めることはできない。 実情に驚き。 今後も知識を得ながら、 受講者との会話を楽しみたい 受講生よりひとこと 株式会社熊平製作所 茶之原 大輔さん 外国人技能実習制度のことはニュース等で知ってはいましたが、社長と研修生 1 人などの体制で働かれているところ もあるというのが意外でした。もう少し規模の大きな会社が利用されていると思っていました。労働人口が減っていく これからの日本は、まずは国内の企業努力で女性やリタイヤされた方なども活用しながらでないと、経済力を維持でき ないのではと思います。うちの会社は海外へは販売のみで、拠点はまだありませんが、海外進出という時に役立つ知識 を得られたらという思いと、社会人として資質を高めたいというのが受講の動機です。また、他の受講者の方とコミュ ニケーションを取ることも大変意義のあることで、他分野の方と話せる貴重な場として毎回楽しみにしています。 8 平成 2 7 年 10 月 24 日(土)13:00 ∼14:30 第 5回 テーマ: 「ものづくりにおける海外事業展開と技術移転」 講 師:広島大学 産学・地域連携センター EDGE プログラムシニアアドバイザー 高田 忠彦 〈概要〉 ■講師紹介/繊維会社で 31 年間技術開発に従事。1999 年から同社のタイの関係子会社に赴任し、 技術移転と経営に関与。2002 年より広島大学大学院工学研究科教授となり、2008 年定年退職。 同研究科客員教授を経て、2015 年より現職。 ■はじめに/バブル経済以降、海外への生産拠点づくりと技術移転が盛んになり、近年は販路 拡大の役割も担う。重要なのは受入側のメリットを考えながら、関連技術をいかにスムーズ に移転させるか。本講義では、タイへの技術移転の経験を基に、技術移転と拠点立ち上げの 要点を解説する。 ■本論/《海外進出について》 〔背景〕国内産業の環境変化と製造業のグローバル化の進展。〔狙 い〕製造業の生き残りをかけた経営戦略の一つ。生産拠点づくりと他国への販路拡大。〔考え方〕 移転側へ直接投資すること・技術移転・移転側に人材がいること・受入側の体制が整っている こと・双方にメリットがあること。〔プロセス〕投資目的の明確化▶フィジビリスタディ(事 業化可能性調査)▶投資計画の策定▶投資計画決定▶資金手当て▶計画実行▶工場稼働・営業 開始 〔成功の鍵〕ものづくりにおいては、技術移転を成功させることが最大のポイント。成功 といえるのは、受入側で移転側と同性能の品質を継続的に生産できる状態になった時である。 《技術、 技術移転とは》●技術とは何か:定義の一例は「ものの作り方にかかわる知識」。すなわち、 技術は質的・観念的なものであり、技術情報を通して第三者に理解される。技術情報は技術の 部分的現象形態であり、技術≠技術情報である。また、技術移転は技術情報の移転ではない。 ● 技術の概念:技術=技術+形式知+暗黙知(若干)であり、技能=暗黙知である。技術移転が 難しいのは、技術に「暗黙知」の部分が含まれるから。 (暗黙知は属人的であるため、 真似が困難) 技術移転とは:技術に関連する知識や情報を移転し、具現化し、製品を作ること。 ● 《発展途上国への技術移転》日本企業の場合、海外への生産技術移転が中心。それには、「組 立て型」と「装置型」がある。技術移転成否のポイントは属人的な技術(暗黙知)をどのよう に移転していくか。留意すべきは、日本との認識・考え方・社会の仕組み・離職率などの「違 い」、あるいは、日本で実績のある技術や生産設備を移転することや、マニュアルの整備、受入側のキーマンの移転教育などである。 《拠点工場の立ち上げの要点》受入側の実情を理解し、国内で実績のある技術・設備を移転すること。移転側の事前人材育成が重要。属 人的な「暗黙知の移転」が成否の鍵。 ■質疑応答/親会社との間の具体的な苦労は?人材を離職させない方策は?マニュアルを守っ て仕事をしてもらうためにされたことは? ■グローバル人材に必要な要件/コミュニケーション能力、リーダーシップ、経営の知識、マ ネジメント能力、強靭な精神力、明るい性格、グローバル人材に相応しい見識など ■海外での経営経験から感じたこと/仕事に対する考え方の違い、コミュニケーション能力の 重要性、離職・転職の多さ、倫理観の違い、女性が勤勉など 技術のマニュアル化など、技術移転の難しさを改めて認識 受講生よりひとこと 株式会社ウッドワン 林 和幸さん 私のいる部署で毎年一人、こうしたプログラムに参加することになっているのと、個人的にもグローバルな視点を 身に付けることでスキルアップになったり、今後の仕事にも活かせそうだと思って参加しています。ここまで受講し てみて、どの先生のお話もすべてプラスになることばかりで、自分になかった知識が蓄積されていくのを実感します。 業界こそ違いますが、弊社も海外で事業展開しているため、私も現地スタッフとやりとりをする場面がよくあります。 技術移転のお話も、国内でさえ技術の伝承が難しいなか、海外ではなおさらだろうと改めて考えさせられる内容でし た。具体的な事例の紹介に共感するところも多くあり、考え方なども大いに参考にしたいと思っています。 9 平成 2 7 年 10 月 24 日(土)14:40 ∼16:10 第 6回 テーマ: 「海外ものづくり事情(自動車分野) 」 講 師:マツダ株式会社 人事室 新興国チーム 担当部長 豊田 裕三 〈概要〉 ■講師紹介/ 1991 年マツダ入社。2011 年∼ 2015 年メキシコ工場の立ち上げに人事・安全チー ムとして参加。2015 年∼現職。現在、海外生産拠点の人事・労務および人材育成を支援。 ■講義内容/海外・人事部門での経験から、 マツダのグローバル人材育成について解説する。 ■本論/《マツダのプロフィール》1920 年創業。2020 年に 100 周年を迎える。従業員数は連結 約 4 万 4 千人。今年度まで 4 年間の構造改革プランと来年度からの同ステージ 2 に取り組ん でいる最中。① SKYACTIV によるビジネス革新②モノ造り革新による更なるコスト改善の 加速③新興国事業強化とグローバル生産体制の再構築④グローバルアライアンスの推進 《マ ツダのグローバルビジネス》●グローバル拠点は、主要生産拠点がタイ、メキシコなど 9 カ所。主 要事業および販売統括会社がアメリカ、中国など 10 カ所、ほか。 ● マツダのビジネス構造の特 徴:日本でたくさんつくって輸出するモデル (国内他社は海外でたくさんつくる)。しかし、円高 になると業績が悪化する経験を何度も経て、構造改革プランの中で海外生産比率を高めている。 同時に、グローバル共通の量産準備を現地メンバーが参画して一括で行い、各地域での量産準備 の手戻りをなくし、 商品導入の同時立ち上げを行うグローバル一括量産準備も導入している。 《メキシコへの進出》●工場のロケーション:メキシコ中央高原グアナファト州に位置。 ●メキ シコが選ばれた理由:広範な自由貿易網、良質・安価な労働力、地理的優位性とインフラ網の整 備 グアナファトが選ばれた理由:物流、自動車産業の集積、州政府の熱心な誘致政策、良質かつ豊富な若い労働力 《メキシコでの事 ● 業の概要》●メキシコ工場の概要:能力/立ち上げ期 140K 台 / 年・フル稼働時 250K 台 / 年、 従業員数 立ち上げ期約 3000 名・フル稼働時約 5200 名 ●組織構成 ●立ち上げ経緯:2011 年 10 月鍬入れ式、2012 年 1 月造成開始、2014 年 1 月生産開始、2014 年 12 月生産累計台数 10 万台達成(11 ヶ月) 、生産累計台数 20 万台達成(17 ヶ月) 《メキシコ人の特性、採用・処遇、 教育など》 ●人材特性:真面目・勤勉。教育効果への期待大。比較的集団志向。採用困難職種 として、経理、購買、生産管理等。転職が多い。欠勤率は低め。対日感情は良好 ●処遇:賃 金水準は階層間あるいは直接・間接社員間で格差大 ●教育:会社での「教育・研修」を歓迎し、 積極的に参加する ■まとめ/《グローバル人材に求められるもの》●ビジネスにおけるグローバル人材とは:海外の相手先・人とのビジネスにおいて、成果 をあげることができる人材。何が、どんなことが必要か。 (近隣の受講者と相談・発表) 経験から思うグローバル人材とは、①外国人と 協働できること②海外において、心身の健康を保てること の 2 つ。それぞれのために必要なこ と:①約束を守る、仕事の基本(5S、5 ゲン主義など日本のモノ作りの根幹)、興味・関心を持つ、 違いを受け入れる(譲れないところ、譲るところを切り分ける)、誠実 ②安全、郷に入っては 郷に従う、興味・関心、家族 ●マツダが現地で行っていること:工場建設にあたって環境に配 慮した施設整備や環境保護施策を実施、家族参観、日本人補習校の設立、地域交流など 《グローバル化について》会社単独の取組みから、グループ、地域との協働・共創へ 実体験に基づくお話に興味津々。現地研修までに知識を吸収したい 受講生よりひとこと 広島工業大学 情報学部情報工学科3年 倉本 大輔さん 将来、企業に入れば否が応でも海外へということはあると思うので、このプログラムを通してグローバル人材につい ての見識を深められたらと思っています。マツダのメキシコへの進出という具体的なお話を聞いて、やはり日本とメキ シコは随分違うんだなぁと改めて感じました。 「考え方が違う」ということは、どの先生も繰り返しおっしゃっていま したが、右腕と思っていた現地スタッフがある日突然いなくなるといった実体験を教えていただけると、聞いているだ けでおもしろく、興味が一段とわいてきました。最終段階で海外現地研修に参加するつもりなので、それまでに必要な 知識をできるだけ多く吸収したうえで、実際に海外の企業がどうなっているのかを体験してきたいと思います。 10 平成 2 7 年 11 月 7 日(土)13:00 ∼14:30 第 7回 テーマ: 「海外ものづくり事情(電気電子工学分野) 」 講 師:広島工業大学 工学部電気システム工学科 教授 小西 善彦 〈概要〉 ■講師紹介/ 1984 年三菱電機入社。衛星通信等に使用するアンテナの研究開発・製品開発・設 計に従事。海外勤務経験はなし。2013 年より現職。 ■本論/《携わってきた仕事の特徴》個産製品(いわゆる受注生産)を海外顧客から受注し、 国内工場で設計・生産・出荷する。技術部隊は必要に応じて出張。海外顧客の技術者との技 術内容の調整・議論が必要。 《携わってきた仕事の内容》民間航空機用 Ku 帯衛星通信システ ムの受注検討。これは、ブロードバンド通信を飛行機上で可能にしたシステム(2004 年に世界 で初めて商用化)であり、現在も別会社がこれを運用している。電話しかできなかった当時、 電話の kbps 級の 1000 倍の Mbps 級の通信を実現するもので、いかに軽く性能の良いものを つくるかが課題だった。最終的に、 「超低姿勢長楕円開口反射鏡アンテナ」を提案し、 採用となる。 《グループ討議①:技術力とは何か》ひとりで考えた後、グループで討議。意見発表を行う。 〔発表〕C グループ:スキルと創作力と観察、人に伝える力など。 G グループ:人類の知恵、 積み上げてきた経験、ひとの役に立つものとして使われていく、それによって効率化が図れる、 マニュアル化して共用、文化に昇華できるものなど。 《技術力とは》◆理科系としての技術力:高性能・高品質の実現、他社に勝てるコストの実現、 性能とコストの両立、技術力の誇示・宣伝・広報など。 ◆営業・SE の技術力:経営分析能力 に優れ、損益分岐点を見極められること、顧客の要求をフォローできること、スケジュール管 理能力に優れ、納期を厳守できること。 《アンテナ受注までの流れ》小西先生は専門家としてすべて出張と TV 会議で対応。当初は、 別アンテナでのシステム実現を要求されていたが、実現不可能なことを丁寧に説明。相手方 技術者の意地悪な質問にも根気強く対応していったところ、最終的には納得を得る。その後、 三菱とイタリアの 1 社に代替案の継続検討の連絡が入る。競合他社の技術レベルが拮抗する なか、三菱が 2 社の中に選ばれた理由は、丁寧に、しかも、意地悪にも根気強く対応したこ とと、技術的には最大限のレベルで対応したことが認められたから。すなわち、“技術的信頼 を得た”ことによると考える。その後 4 か月間、知恵をひたすら出し続けたが、一時検討作 業は中断。再度、三菱の独自技術で勝負をかけた、まったく異なる技術コンセプトのアンテ ナを提案した。最終的にこれにより受注決定となる。 《グループ討議②:海外顧客から受注を獲得するために必要な技術力とは》 〔発表〕Eグループ: 目新しさ、オリジナリティ、品質がいい、コスト、目を向けてもらう売り、根気が大事など。 H グループ:製品に関する技術(要求に応える、オリジナリティ) 、ロジック、人間性(信頼性、 誠実さ) 、対応力(根気、柔軟性)など。 ■まとめ/グローバル化の進展に伴い、ますます海外受注、海外進出は活発にならざるを得ない。 ぜひ皆さんにも技術力を発揮していただきたい。また、更なる技術力の発揮の仕方を考えたい。 海外企業との具体的なやりとりは貴重な勉強材料に 受講生よりひとこと 中国塗料株式会社 谷野 聡一郎さん 以前受講した大学連携プログラムで知り合った仲間からこのプログラムを紹介されました。弊社は船舶用塗料をグ ローバルに展開しており、今後に生かせる知識を得たいと思って参加しています。毎回、企業出身の講師の方からお 話しいただく、海外展開における具体的な成功事例などを大変興味深く拝聴しています。いろいろなやり方があるこ とを知ったり、ノウハウにも触れることができて、とても勉強になっています。小西先生の講義では、引き合いから 受注に至るかなり踏み込んだ内容をお聞かせいただき、大変貴重な経験の場となりました。プロセスとしては、弊社 でも似たようなものがありますので、根気よく要望に応えていく姿勢など、共感できる内容でもありました。 11 平成 2 7 年 11 月 7 日(土)14:40 ∼16:10 第 8回 テーマ: 「海外ものづくり事情(デジタル情報家電機器商品企画・戦略分野)」 講 師:クリプトメリア 経営コンサルティング 杉木 雄三 〈概要〉 ■講師紹介/外資系半導体メーカー(日本バー・ブラウン、日本テキサス・インスツルメンツ) で主に AV 機器用 DA コンバータ、AD コンバータの製品企画やマーケティングに従事。現 在は中小企業診断士として経営コンサルティングオフィスを開業。 ■事例紹介/日本バー・ブラウンで担当した開発製品の例を紹介。 ◎「DA/AD コンバーター」の開発について ●マルチメディア機器の時代変遷:当時はデジタ ル情報機器の黎明期。オーディオ用 DA コンバーターで世界№ 1 シェアとなる。 《成功要因①》ニッチだが、世界に通用する非常に強い技術力を持っていた。2010 年 IEEE Milestones 賞を受賞。 《成功要因②》日本のトップ AV 企業との関係を築き、最先端のニーズを他社に先駆けて入手できた。 《成功要因③》優れた製品開発力・企画力により、次々とヒット商品を開発した。 新製品開発プロセスと主なマーケティング・フレームワーク [ 現状把握・分析 ]・市場調査:PEST 分析 ・市場機会の発見:SWOT 分析 ・3C 分析 [ 製品企画 ] セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング [ 製品開発 ] [ 市場導入 ] マーケティング・ミックス(4P) 《成功要因④》グローバルチームワークにより、市場変化に対応したグローバル展開を図った。 ○グローバル展開のタイプ:本講義の対象となるのは「需要地としてのグローバル展開」 「BtoB」 ○製品開発における日本メーカーと中国メーカーの違い : 日本メーカー=全て自社開発の重視、 中国メーカー=リファレンス・デザインの重視 ○現地代理店との仲立ち:現地ニーズをよく知る現地代理店との連携により新製品が大 ヒットへ ○シリコンバレーとアジア:経営資源の交流 《成功要因⑤》世界一を達成する、 強い目的意識がチームで共有されていた。 ■グループワーク/任天堂・ソニー・マイクロソフトのどれか 1 社について SWOT 分析を行う。 (各自検討、グループ・ディスカッション、発表) 《発表①》A グループ「任天堂」●強み: ファミリー向け、本体コストが安い、持ち運べる、体験型が多い ●弱み:やりこみ型が少な い、画像処理に時間がかかる ●脅威:スマホゲームの台頭、据え置き型ゲーム機など ●機会: 昔ゲームに親しんだ世代が大人に ●戦略:スマホゲームに近いものを普及させていく 《発 表②》F グループ「ソニー」●強み:総合的、ソフト面でも実績、ブランド力、海外にも浸透 ●弱み:高価、子ども向けが弱い ●脅威:少子高齢化、スマホゲーム ●機会:中国市場の開拓、 ブルーレイの普及 ●戦略:ターゲットを絞る、ハイスペックを売り出す、拡張性のあるものを 《発表③》D グループ「マイクロソフト」●強み:世界シェア、ピンポイントなユーザー向け、 他のエンターテインメント ●弱み:歴史が浅い、日本でのシェアが少ない ●脅威:― ●機会: オンラインゲームの普及 ●戦略:中国での展開など ■まとめ/《グローバル展開で重要だったこと》強い目的意識・コアコンピタンス・多面的視野・ パートナーシップ 勉強不足を実感。講義やグループワークから多くを学びたい 受講生よりひとこと 広島工業大学 情報学部情報工学科3年 片山 慶子さん グローバルなものづくりに関する知識はこれから必要になると先生から常々言われているので、しっかり学びたいと 参加しているのですが、毎回知らないことばかりだなと思っているところです。そうしたなか、今回の家庭用ゲーム機 の3大メーカーについてのグループワークは、私たちにも身近な内容だったので、分析をする際にも割と考えやすかっ たです。ディスカッションも楽しくできましたが、付箋に各自書き出す際には、社会人の方とは枚数が比べものになら ないくらい違っていました。 「社会人になったら、こういうことをよくやるからね」と言われていたので、やはり社会人 の方は経験値が全然違うんだなと実感しました。そうした刺激も受けながら、これからもたくさん学んでいきたいです。 12 平成 2 7 年 11 月 21 日(土)13:00 ∼14:30 第 9回 テーマ: 「海外ものづくり事情(食品分野) 」 講 師:株式会社アンデルセン・パン生活文化研究所 海外事業部 加賀田 知穂 〈概要〉 ■本論/《パン業界及びアンデルセングループについて》●パンの総市場規模推移:1 兆 4000 億 円程度でほぼ横ばい。 ●パンの末端チャネル別市場構成比:リテイルベーカリー・コンビニ エンスストア・量販店がほぼ同シェアで大半を占める。 ●パン市場のメーカーシェア:アン デルセングループは 5 位 ●冷凍パン生地のシェア:市場規模は約 1500 億円。同社はトップシェ ア。 ●アンデルセングループの紹介:1948 年広島で創業。1967 年日本初のパンのセルフサー ビスを導入。1970 年日本初の冷凍パン専門工場完成に伴い、ベイクオフショップ展開開始。 ●デンマーク王室との交流:1992 年デンマーク王国より高木現会長が名誉領事に任命される。 ●アンデルセングループ構成図: (株)アンデルセン(スクラッチ(粉からつくるパン)の直営店)、 (株)マーメードベーカリーパートナーズ(冷凍生地を使った FC) 、 (株)タカキベーカリー(袋 入りパン) 、 (株)タカキフードサービスパートナーズ(カフェやレストランなど) ほか。 《AN ブランドの展開(アメリカ、デンマーク) 》●海外進出に必要となるのは:どのようなパン が好まれているのか、それをビジネスベースで提供できるのか、市場の成熟度の見極め 〔アメリカの事例〕1981 年サンフランシスコのベイエリアに資本参加。なかなか売上が伸びず、 オーダーサンドイッチ主体の Bread Store へ転換し、成功。現在 19 店舗を展開。 〔デンマー クの事例〕2008 年コペンハーゲンに 1 号店を開店。同社創業にまつわるデンマークとの縁の物 語によるブランディングとキオスクタイプの店舗で苦戦。日本と異なる食生活や購買行動を考 慮し、それに合わせたスタイルに転換し、成功。一方で、デンマークでは労働者の権利保護が徹底し、高い人件費に苦しめられる。 《冷凍生地ビジネス(香港、東南アジア) 》 ●パンの製造工程 〔香港の事例〕2003 年より FC で展開。●課題:職人養成のむずかしさ、冷凍生地輸送による高価格化 ●デニッシュバーの 展開 ●冷凍生地工場の設立:東日本大震災による冷凍生地輸出禁止を受けて急遽、現地に製 造拠点を開設。厳しい規定や日本と同品質のものの製造、スタッフ教育などに苦労する。 《インドネシア市場》●基礎情報:ムスリム人口が多く、イスラム教徒向けのハラル市場。親 日家が多く、日本のアニメが人気。甘いもの好き。購買力は高くない。 ●グループワーク: インドネシア市場にどのように進出していくか。コンセプトやビジネスモデル、その際の課 題も併せて考える。 〔発表〕F グループ:チープなブランドでパンを食べる文化を根付かせ る。現地の日本人向けに日本と同様のパンを提供。高級パンを現地のホテルに提供。 B グルー プ:若いひと向けに安いパンを提供。甘いもの好きなのでチョコレートなどを使う。アニメのキャ ラクターを採り入れる。暑い国なので、冷やしたパンが受けるのでは など。 ●インドネシア での状況:国内の CVS に協力して自社ブランドのパンを展開。苦労しながらも現地スタッフに 製パン技術を指導。製パン工場を新設。2015 年 11 月合弁会社を設立。 ■まとめ/スクラッチと冷凍生地の特性を活用した海外展開策や、市場性の違いに柔軟に対応 することなどが必要。思いもかけない事態も笑い飛ばせれば大丈夫。きっと良いキャリアになる。 ビジネス展開策をどう考えていくか、豊富な実例が興味深い 受講生よりひとこと 株式会社ジェイ・エム・エス 中尾 典彦さん 会社からの案内もあり、他の会社の方がどう考えてビジネス展開されているのかということに、個人的にも興味が あって受講しています。言葉も文化も環境も異なるなかで、皆さんかなり苦労されていますね。そうした状況でも、 お互いを尊重して進めていくことで新しいことができるんだなと思います。今回の、いろいろな地域に進出されてい るアンデルセン・グループの方のお話からは、それぞれの特性に合わせてビジネス展開しないと成功しないというこ とを改めて学ぶことができました。また、グループワークでは、柔らかい頭の学生さん達と話せてとてもおもしろかっ たですね。今後、受講の機会があれば、日本に進出されている外資系企業の方のお話もぜひ聞いてみたいと思います。 13 平成 2 7 年 11 月 21 日(土)14:40 ∼16:10 第 10 回 テーマ: 「海外ものづくり事情(建設分野) 」 講 師:株式会社フジタ 総務部主任 古屋 朋寛・建築工事部工事長 西田 裕 〈概要〉 ■講師紹介/古屋氏:入社 10 年目。2013 年より広島支店にて現職。西田氏:入社 16 年目。広 島支店を皮切りに大阪・メキシコ支店勤務を経て 2015 年より現職。 ■事例紹介/《フジタってどんな会社?》建築・土木工事全体をマネジメントするゼネコン(総 合建設業)の中でも、売上高 2000 億円超の準大手ゼネコンに属する。日本で売上高 10 位前後 を推移。1910 年広島で創業。2015 年 10 月、大和小田急建設と合併し、新たなステージへ。 《作業所での一日》定時は 8:00 ∼ 17:00。朝礼・現場巡回・デスクワーク・工程打合せ など。 《フジタの海外事業》●売上高の推移:海外事業が成長。海外工事の比率は今後ますます高ま る見通し。 ●海外進出地域:東アジア/中国・韓国・台湾、東南アジア/インド・ベトナム・ インドネシア、 中南米/メキシコ。日系ゼネコンの中でシェアの高いところは、中国がシェアトッ プクラス、メキシコは 1 位。日本国内の海外進出企業に対して、土地選定から計画設計・施工・ アフターサービスまでサポート。 ●国際事業の歩み:1962 年ペルー進出〔南米に強いフジタ〕、 その後、中東各国に進出し、大型 PJ を完成させてきた。1986 年中国進出。2003 年中国に現地 法人立ち上げ。日系ゼネコンの中で売上高 No.1 となる〔中国に強いフジタ〕。2012 年インドに 現地法人設立。2013 年インドネシアに現地法人設立。2013 年ミャンマーに現地法人設立。 《メキシコ進出の実例紹介》●メキシコの基本情報:中南米の中央部分、サンタフェ工業団地に 1 物件を担当。自動車メーカーの進出のある地域。 ● 作業所の工事概要:自動車部品製造工場(工期 7.5 か月、2013.3.1∼2013.10.15、鉄筋造1階) ●メキシコで建物ができるまで:写真で紹 介 ●作業所における具体的な仕事:8時に朝礼、13 時昼食・昼休み、15 時現地巡回、17 時 半スタッフミーティング、 19 時∼ 20 時帰宅。iPad 活用による現場管理(3 次元 CAD を活用し、 絵で伝えていく) ● 日本との違い:①建築認可に「ペリート」という専門家のお墨付きが必要 ②契約から工事 までの順序で、前払い金(契約金の 50 ∼ 30%)の支払いが必要 ③業者の取り合い ④組織形 態の違い(担当者の下にローカルスタッフが並ぶ。サブコンと呼ばれる協力業者と一緒に進 める) ● 学んだこと・苦労したこと:①設計: 「モックアップ」という現地の材料で小さい建物をつくっ て検証する方式で成功。ローカルスタッフやサブコンにやり方を粘り強く指導 ②時間の感覚・ 指導方法・自然環境の違いに苦労。納期に対する感覚を伝える。「叱って育てる」よりは、ほめ てほめて教えていく。雨季と乾季があり、どう乗り切るかに苦労。 ● 海外勤務者に求められる資質:語学力は最低限、尊重する心、我々が外国人、適応力:日本流 を押し付けてもうまくいかない。まず現地のやり方を聞くのが大事。 ■まとめ/《これから海外で働くことをめざしている人へ》住宅事情・文化など 《私が海外で学んだこと》マネジメント力 働くうえで大切なことは、 きっとすべてに共通するはず 受講生よりひとこと 広島工業大学 情報学部知的情報システム学科3年 藤井 静香さん どの講師の先生も仰っている、海外で求められる資質、適応力や相手を尊重しあう態度などというのは、海外に限らず、日本 の企業で働く際にも重要なことなのではと最近思い始めました。学生が地元企業を取材してその魅力を紹介するという、中国 経済産業局による事業「魅力発信グランプリ」に参加した際にインタビューした、ある会社の社長も、このプログラムの講義と 同様のことを言われていたなと思うことがあります。そうしたことから、仕事をしていく上で大切な理念というのは、どんな 場合にも変わらないんだなと感じますし、実際に経験されて分かったことをお聞きできて、大変勉強になっています。今回の 講義では、いろんな企業をまとめながら安全も守っていくというゼネコンの仕事は、責任もすごく大きいんだなと感じました。 14 平成 2 7 年 12 月 12 日(土)13:00 ∼14:30 第 11 回 テーマ: 「ものづくりにおける海外事業展開」 講 師:中小企業基盤整備機構 販路支援部 シニアアドバイザー 深田 進 〈概要〉 ■はじめに/中小企業基盤整備機構でのミッションは、日本全国に眠っている優れた技術・部品・ 製品を発掘し、海外事業展開に向けて、企業の背中を押すことである。 ■講義内容/グローバル経営は生産の現場を国内から海外へシフトさせている中、海外事業の 展開を支え、グローバルに活躍できる技術者にとって大事なことは何かを学ぶ。 ■本論/海外事業展開は、異文化を理解し、いかに現地化と向き合うかがポイントとなる。 ● 日本的経営 ①外国人から見ると Cafeteria Communication! 経営幹部も作業着姿に象徴さ れる現場主義。Quality minded culture! 品質にとことんこだわり、妥協しない価値観。 Process oriented rather result! 結果も大事だ がプロセスを重視し中期で評価する。 ②特質「年功序列・終身雇用・企業内組合」から「成果主義・通年採用・組合離れ」へと変化 ③ モノづくり〈モノづくり〉の前に OJT とチームワークによる〈人づくり〉の企業文化がある。現 場にこそ真実があるという徹底した現場重視の姿勢で、3現3即3徹をモットーにしている。 ● 海外展開をどうすすめるかは経営戦略そのものである。自社の経営で海外ビジネスをどう位置 づけるかを5W 1H で紐解く。・WHY ?海外販路の開拓。海外展開が必要な背景の明確化。 ・ WHAT ?経営革新を海外展開でどうおこなうか。 ・WHO ?どのような形態でおこなうか。 ・ WHERE ?ターゲット市場はどこか。・WHEN/HOW ?どのように進めるか。 ●海外事業の取 り組みには、社長が強い意志とやり抜く覚悟で、他社にはない技術力のある商品を海外事業ス タッフという組織で、国内市場での実績をもとに戦略を策定する必要がある。ビジネスには「営業」 「メンテナンス」 「生産」などの機能 を持つ現地拠点が求められ、その形態としては「代理店」 「現地法人」 「事業連携」から自社戦略に最適なものを検討していく。現地法人 設立には、市場調査を十分に行い、同時に撤退のシナリオを持っておくことが大事である。製 造業において、海外事業展開を拡大するには、 [輸出]→ [一部生産工程現地移管]→[現地生産] へとステージをステップアップさせていく。 ●海外展開先人気 TOP 3(製造業)タイ・インド ネシア・ベトナム。タイはサプライチェーンが整った生産拠点。インドネシアは内需志向が 旺盛、自動車関連の集積が進行中でポテンシャルが一番高い。ベトナムは人件費削減狙いの 委託加工傾向。 ● AEC(アセアン経済共同体)では関税がほぼ撤廃され、さまざまな自由化が 進む。中国やタイから周辺国へのリスク分散へと企業戦略が変化。 ●アセアン域内内陸物流 : メコン川に分断されていた陸路が 2015 年に開通したつばさ橋により1本の道路でつながり、ベトナム、カンボジア、タイをつなぐ南部経 済回廊として注目の物流ルートとなる。 ●同機構の国際化支援アドバイス件数:2014 年度実績でアセアンではタイ・ベトナム・インド ネシアが多い。 ●本社の国際化:海外事業展開に合わせて社内の国際化が必要。 ●生産現場の常識:日本のものづくりは海外の生産現場 にまで広がっている。 ●モノづくり− KAIZEN 活動:5S 活動・3TEI 活動・見える化・各社独 自の活動・3M(MURI、MUDA、MURA)の排除・原価管理の VE 活動 /VA 活動・品質改善のた めの PDCA サイクルの実践。 ● KAIZEN 活動 5 ヶ条:①現場は改善の宝庫②まずは Say YES。 そしてできる方法を考える③ WHY を 5 回繰り返す④みんなで知恵を出し合う⑤改善は無限 ● 経営理念の大切さ:理念は不変。 ● 成功の秘訣は「七転び八起き」 :信念を持って続けること。 海外で起きている事実に触れることができる有意義な学習の場に 受講生よりひとこと 株式会社ダイクレ 佐伯 利将さん 弊社は 3 年前からタイ・台湾に工場を持っていて、海外でうまくやっていくにはどういう風にすればよいか勉強でき たらと思って受講しており、毎回の講義は報告書にまとめて社内で共有させてもらっています。私自身は研究開発の仕事 で、海外の市場でどういうものを出していけるかを検討していますから、いろいろな講師の方からご自身の体験談をお聞 きできるのがとてもいいなと思っています。なにより実際に起きている事実を知ることができ、非常に勉強になりますね。 今回の講義でお話のあった 5W1H のうち、我々開発にとって大切なのは WHY だと思っていたんですが、それを踏まえ たうえで、どこにどうやってというその後のプロセスまで考えていくことの大切さを改めて考えさせられました。 15 平成 2 7 年 12 月 12 日(土)14:40 ∼16:10 第 12 回 テーマ: 「海外ものづくり事情(コンピュータシステム分野)」 講 師:株式会社インタフェース 取締役 鈴木 誠 〈概要〉 ■講義内容/日本の製造業について各分野を概観。自身の経験にも基づいて、「5W1H」で海外 生産に関して講義する。 ■本論/●国会予算委員会にて: 「日本企業の海外生産が進むことで、日本での空洞化は起こらな いか」という質問に対し、安倍総理は「アベノミクス効果で円安になった。この状況でも海外生 産を考える経営者はどうかしている」と発言。同日、 NHK テレビで「三菱重工が米国テキサス 州に工場を建設」という報道。果たして三菱重工の経営者は “どうかしている” のだろうか? ● WHY「なぜ海外生産を行うのか」 :安い労働力・市場がそこにあるから・政府の規制が厳しいから・輸送費が高くつくから・エネルギー コストが安いから・原料がそこにあるから・災害のリスク分散のため・円高のため など理由は多岐に渡る。 ● 海外生産と空洞化:海外に生産をシフトするため、国内工場が空になる=空洞化?∼空洞化に 近い現象の一例を紹介。海外生産により新たな需要が喚起されれば、空洞化にはならない。 ● HOW「どうやって海外生産を行うか」 :①自力で新工場を建設する= Green Field ②当該国 の企業を買収する= M&A ③当該国の企業と合弁会社を作る= Joint Venture ④当該国の企業 に技術を供与する= License ∼それぞれの利害損失は?コストは④→①に向けて大きくなり、 経営面では④→①の方向で良好へと向かう。Joint Venture と M&A を同時に行った例(半導体 製造装置)を紹介。目的は①売上を上げること②営業マンとエンジニアという人材の確保 ● 海外生産の新たな動き:高い技術力と比較的安いコストで実現∼メキシコ・タイ・インドでの例を紹介。 ●コンピュータシステム分野: インタフェース社が Made in 日本を標榜している理由∼労働力、輸送費、市場、エネルギー コスト、政府の規制、災害リスク、原料(部品) 、円高・円安 それぞれの面での理由を解説。 いまのところ、海外生産をする理由があまりない。 ■グループディスカッション/インタフェース社のような産業用コンピュータのメーカーとし て、今後どのように海外生産を展開すべきか(或いは国内生産だけに留まるべきか)を次の 3 テーマを基にしてグループディスカッションを行った。①日本 / なぜ日本で開発・生産を続 けるべきか?②タイ / なぜタイに開発・生産拠点を作るのか?③アメリカ / なぜアメリカに開発・生産拠点を作るのか?〔ヒント〕 ・同 社の製品の特徴:産業用コンピュータ(厳しい環境での使用に耐える頑丈さ・同じ製品を 10 年 20 年と作り続ける・即納体制が必要・自 動車製造工場の需要が最多) ・いちばん大事なのはクオリティ 〔発表〕E グループ:②タイ /・WHY? 安価な労働力、自動車産業のニー ズがある、隣国へ運ぶコストが安い など。 ・HOW? 自社で新工場を建設(土地・人件費が安い) 、日本に来ていた研修生を雇う、災害 リスク対策として在庫をたくさんつくる など。 F グループ:③アメリカ /・WHY? インテルやマイクロソフトなど技術が集中、工場回帰が進む、 為替コストが安い など。 ・HOW? 合弁会社を設立し、アメリカの会社の販売チャネルを利用し て日本生まれのアメリカブランドを展開していく など。 B グループ:①日本 /・WHY? 品質が安定、納期の厳守、離職率が低い、技術力が高い、言葉 の壁がない など。 ・HOW? 技術者教育を次世代に向けて徹底する など。 国内での外国人の人材育成がその後の海外展開に生きてくることに驚き 受講生よりひとこと 広島工業大学 情報学部情報工学科 4 年 今池 怜生さん 私は今後、 大学院への進学が決まっており、 将来は自動車関係への就職を希望しているので、海外への事業展開のお話 を大変興味深く受講しました。なかでも、 海外展開の際には、 日本人だけが現地に行くのではなくて、 日本の国内で外国 人の方を従業員にするなどして人材育成を図ったうえで、 海外での事業展開の際に、 帰国した彼らをうまく活用していく というやり方が印象的でした。そういう方法もあるんだという驚きとともに、 文化なども互いによく知ることができる、 とてもいい方法だなと感心しました。グループディスカッションでは、 知識の豊富な社会人の方々から意見がポンポン 出てきました。毎回、 社会人の方との意見交換は、 緊張感と共にワクワク感もあり、 楽しみな時間になっています。 16 平成 28 年 1 月 9 日(土)13:00 ∼ 14:30 第 13 回 テーマ: 「海外文化事情(日本企業勤務の現地管理社員の視点)」 講 師:大連 JMS 医療器具有限公司 開発課 趙 鵬海・営業推進課 呂 暁鵬 〈概要〉 ■講義内容/海外文化事情を異なる 2 つの視点から紹介し、グローバル人材として活躍するため、 日本人の意識および文化の違いを理解する。 ■講師紹介/趙氏:1998 年 7 月大連 JMS 医療器具有限公司に入社。2012 年 9 月より 2 年間、広 島本社内の(株)JMS 中央研究所に出向。2014 年 9 月より現職。 呂氏:2001 年 7 月大連 JMS 医療器具有限公司に入社。開発課、生産技術課を経て 2012 年 9 月 より 2 年間、広島本社内の (株) JMS 中央研究所にて研修。2014 年 9 月より現職。 ■本論/《JMS および大連 JMS 医療器具有限公司の概要紹介》JMS は 1965 年創業の医療機器、 医薬品メーカー。大連 JMS 医療器具有限公司は海外生産拠点の 1 つとして、医療機器製品を 製造・販売している。 《中国と日本の生活、仕事経験(趙氏) 》●日系企業に働く動機:中国では国営企業に配置されるが、 外資系企業では、業務によっていろいろな国の会社と繋がり、視野が広がるのが大きな魅力。 ● 大連・日本で経験したこと: 〔大連〕①仕事中の体験:・日本人駐在員と中国人社員の交流は 通訳を介することが多く、優秀な通訳の採用が大事。・現地の国情を理解する必要性。・中国は 急速に変化している最中。・在中の日系企業は「輸出生産拠点」として進出したが、 「国内市場向 け拠点」へと変わりつつある。〔日本〕①日本への出向では生活・言葉・仕事面で不安を感じた。 ②日本の役所はサービスが良く効率的。③狭いアパートでも、部屋のレイアウトが良く、住みや すい。空気・水・町がキレイ。④公共交通機関は、定刻率が高く便利。⑤買物のサービスがとても良く、信頼感が高い。⑥食費は高いが 安全性が高い。油が少な目であっさり。⑦仕事のルールは中国と同じだが、レベルが高い。 ● 製品開発と改良の仕事を担当。心臓手術で使用される医療機器は、中国産の安価な物よりも、 高価でも、性能と安全性の高い輸入品の割合が顕著に増加している。 ● まとめ:中日間にはまだいろいろ問題があるが、密接な経済的関係は友好関係を発展させて いく。わだかまりを取り除く一番の方法は、現地へ行き、自分の目、耳、心で感じること。 《中日での文化の違いに関して(呂氏) 》● JMS に就職した理由:外資系企業は管理及び技術力 に優れる。個人の成長を期し、経営が安定している企業で働きたかったため。 中国・日本で経験したこと:政治体制・人の振る舞い・生活慣習・言葉の違いを実感。 ● ● 担当の業務内容:マクロ情報を収集し、市場の傾向を把握。ミクロ情報を収集し、ライバルの 情報を把握。SWOT 分析で企業の戦略を考え出す。中国は老齢化社会に入り、医療の格差解消 が国の課題に。その医療市場は価格競争が激しく、高付加価値製品への関心が高まっている。中 日の違いを認知したうえで、自分で分析・判断することが大事。 ■グループディスカッション/本講義の重要点をグループで意見交換し、発表する。〔発表〕 ・日 本との文化の違いが印象深かった。・日本のゴミの分別についてベトナムからの留学生が発言さ れたのが新鮮だった。・日本はマザー工場として海外の工場をサポートしていく必要 など。 海外への不安が払拭でき、行ってみたい思いを強くする契機に 受講生よりひとこと 広島工業大学 情報学部情報工学科 4 年 相原 啓紀さん 私は来春から IT 系企業に就職し、海外支店への転勤の可能性もあるため、海外に対する不安があったのも受講の動機 のひとつでした。受講を重ねていく中で、そうした不安な思いよりはむしろ、 「行ってみたい」という気持ちの方が次第 に強くなってきました。やはり海外での実情を聞いたり、外国の方と触れあうことによって、文化の違いはあるものの、 根幹的な部分は似たようなところがあることなどが分かって、外国の方も自分と同じ人間なんだとしっかり感じられた ことが大きいと思います。いいことも悪いことも包み隠さず話してくれるのは、外国の方の信頼できるところだと思い ますし、違いがあることを認識したうえでお互いを理解していくことの大切さを学べたことは大きな収穫となりました。 17 平成 28 年 1 月 9 日(土)14:40 ∼16:10 第 14 回 テーマ: 「海外文化事情(留学生の視点)」 講 師:広島工業大学 情報学部情報工学科 教授 長坂 康史 〈概要〉 ■講義内容/【目標】留学生を交えた討論やグループワークを行いながら文化の違いを理解する。 ■イントロダクション/ 留学生より、日本で自国と異なると感じた点の紹介。(以下は一例) ・インド人留学生:日本人は優しく、 時間を守り、 きれいに並ぶ。ゴミを分別して道路もきれい。 ・韓国人留学生:サービスがすごくいい。 ・ ベトナム人留学生:ベトナムでは歩きながら食べるのが日常的だが、日本では良くないこと。 逆に、日本には立ち飲みの店が多くあり、ベトナムにはない。 ・中国人留学生:冬も短いスカートをはくのに驚き。 ■グループワーク/日本文化を 2 国間の違いと重要度を考えて分類する。6 班に分かれ、各班に 1 名ずつ留学生が参加。以下の手順でグループワークを実施した。 ①テーマ決め(2 分):日本の文化を分類するために、「衣」 「食」「住」 「働」のうち、 「働」と もう 1 つのテーマを選択。 ②記述(8 分):2 つのテーマに関して、日本の文化(特徴)を 1 つずつ付箋に記入。 ③紹介・整理(20 分):それぞれ記入し たものをグループ内で紹介し、留学生 にインタビューすることで内容を深める。その後、縦軸に重要度、横軸に 2 国間 の違いの大小を据え、付箋を模造紙に貼付する。その際、縦横ともに大となる右 上の部分にくるものに注意を払うと良いとアドバイス。 ④発表準備(5 分) ■プレゼンテーション/各班代表が模造紙を提示しながら順次発表を行った。 テーマ: 〔A 班〕働と衣〔B 班〕働と食〔C 班〕働と食〔D 班〕働と住〔E 班〕働 と食〔F 班〕働と食 〔F 班〕働:国営化と民営化の違い。 食:お酒の飲み方の違い(中国はつぶれるまで飲む)。 〔E 班〕食:日本は自分の食器があり、いただきます・ごちそうさまを言う。生も のを食べる。 〔D 班〕住:日本にはゴミが少なく、生水が飲める。住みやすい。 〔C 班〕食:日本は水道水が飲めるが外国では飲めない。 働:日本は時間厳守、外国は契約事項などを正確に伝える。 〔B 班〕働:最大の違いは女性の社会進出。日本はアジアの中でも幹部社員が少な いことで有名。ベトナムは出産を経てもちゃんと昇進する。 〔A 班〕衣:スカート丈が短い。ファッションの移り変わりが激しい。 働:価格よりも品質重視。 ◎最後に、第 13 回の講師の趙氏と呂氏より感想をいただく。 グローバルに対応するための気付きを得ることができた 受講生よりひとこと デルタ工業株式会社 新川 勉さん 弊社からは昨年度も受講し、今年度も2名が参加しています。受講目的としては複数ある世界各拠点で同時に生産を開始する には「世界で同一価値の製品を最高品質でつくる」必要があります。そのためにも現地スタッフとの接し方、現地と共に改善を 推進するにはどのような考え方が必要かを学びたいと思い受講を決めました。ここまで受講して、従来は日本手法を定着させる ことばかり意識していましたが、文化の違いから理解が難しい事項が多くあることを知り、それらを明文化することがグローバ ル展開に必要であることに気付かされました。今後はお互いの良い面を共有化しながら、お互いが相互研鑽していくことでグロー バルにビジネスへ貢献して行きたいと思います。また、このような機会があれば他のメンバーにも受講を勧めたいと思います。 18 平成 2 8 年 1 月 23 日(土)13:00 ∼14:30 第 15 回 テーマ: 「まとめ」 講 師:広島工業大学 情報学部情報工学科 教授 長坂 康史 〈概要〉 ■講義内容/【目標】グローバル人材像をまとめる。 【内容】 ・グローバル人材の定義と企業 ・グローバル人材像 ・まとめ ■本論/●グローバル人材像とは: 「グローバル人材育成戦略(グローバル人材育成推進会議 審議ま とめ 2012 年 6 月)」から紹介。 ①グローバル化とは∼ヒト・モノ・カネ・情報が国境を越えて高 速移動し、あらゆるものを全地球的規模で捉えることが不可欠となった時代状況。 ②グローバ ル人材の要素∼Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力 Ⅱ:主体性・積極性、チャレンジ精神、 協調性・柔軟性、責任感・使命感 Ⅲ:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー ◎このほか、深い教養と専門性、課 題発見能力・解決能力、チームワークとリーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシーなど。 ● 企業側からみたグローバル人材像とは: 「大学におけるグローバル人材育成のための指標調査(平成 23 年度・みずほ情報総研) 」※グロー バル人材推計のための企業へのアンケート調査から紹介。 企業へのヒアリング調査∼ ・現在保有する / 求められるグローバル人材像(人物像、スキル、経験、資格等) ・過去(5∼ 10 年前)と 比較した貴社におけるグローバル人材像の変化 ・今後(5年後程度)求められるグローバル人材像(その際の「グローバル人材」の定義は、 ①他の国籍の人と意思疎通を行う必要がある ②意思疎通を英語(あるいは母国語以外の言語)で行う必要がある ③ホワイトカラー職の常 用雇用者である―のすべてに該当する者) グローバル人材需要量を推計。2012 年初より 2017 年初では約2.4倍になると予測。 ③グローバル人材需要発生率を推計。製造業・ 情報通信業で増加。 ④入社時に求められる能力・性質 / 主体性・好奇心・チャレンジ精神・規則性など。 ⑤入社後に育成する能力・性 質 / 課題発見力・計画力・想像力・ストレスコントロール力・異文化理解力など。 ■グループワーク/①あなたの考える「グローバル人材」とは ②その「グローバル人材」になるために、どのような力をつけなければなら ないと考えるかの 2 つをグループで話し合い、模造紙にまとめ、発表。 ◎発表後、本プログラム講師陣の回答を配布。 ■まとめ/本プログラムを受講してきた皆さんは、グローバル人材と聞かれたときに、語学力のみに注目するのではなく、異文化理解にも 着目するようになってきたのではないか。伝わらないのは、相手が聞きたくないとき。相手が聞きたいと思えるような場をつくれること も大事。受講の成果は必ずどこかで力として残ってきているはず。今後に活かして欲しい。 異文化交流の基本姿勢はコミュニケーションの場に共通すると理解 受講生よりひとこと 広島工業大学 情報学部情報工学科 3 年 坂栄 幸実さん 私は将来、情報関連企業で保守・運用の仕事に就きたいと考えています。海外との関わりも当然出てくると思いますし、 転勤で海外へ行ってみたいという想いもあって、このプログラムに興味がわきました。これまでの受講で特に印象的だった のは、 “異文化交流・異文化理解”に関する講義です。これにより、異文化に接する際には、他人を思いやって行動することが 重要であると知りました。さらにグループワークの際に、他の人の意見をよく聞きながら自分の意見とうまく合わせていく ということを、社会人の方がとても上手にされていたのに触れて、これも同様の考え方からだと気付きました。人とコミュ ニケーションを取るのがあまり得意ではない私にとって、受講で得たものは大変大きく、参加して良かったと感じています。 19 3 . 海 外 現地研修 研 修 先 研修期間 参加学生 引 率 者 大連 JMS 医療器具有限公司(遼寧省大連経済技術開発区黄海西路25号) 平成 28 年 2 月 29 日(月) ∼3月5日 (土) 広島工業大学 学部生 3 人 情報工学科 教授 濱﨑 利彦 学務部 事務員 永野 慎介 ■研修企業∼大連 JMS 医療器具有限公司 輸液輸血、透析などの分野において、医療機器・医薬品を製造販売する株式会社ジェイ・エム・エス(本社、広島)の海外グループ会社 として、中華人民共和国遼寧省大連経済技術開発区で、当該分野製品を製造する企業である。設立は 1988 年、大連経済特区へ進出した日 本企業としては先頭集団に属しており、売上高 2 億2千 7 百万元(約 4 4億円)、従業員数約 930 名(2015 年 12 月末)である。 ■本海外研修の目的の確認 単なる企業訪問ではなく、真の海外研修プログラムとして、現地幹部管理職及び現地技術 者との積極的な意見交換、また、製造現場において具体的な作業を体験することによって、 異文化環境でのものづくり企業活動と技術者に求められる能力を深く理解すること。 ■研修プログラムの概要 研修プログラムは以下の6要素で構成されている。 1. マネジメント学習(経営の基本、技術管理者のビジョン、生産ライン管理者の心得) 2. ものづくり学習(マーケティング開発、生産技術、 検査技術、 品質管理技術、 ERP システム) 3. 製造体験学習(全製造工程理解、工程の単位作業、セル方式によるモデュール作業) 4. 現地若手社員との意見交換 5. ものづくり経済成長の実際(大連経済技術開発区概観の見学) 6. 報告会(幹部への研修結果プレゼンテーション) 大連 JMS 前にて 7. 日中歴史探訪(旅順見学) 大連 JMS 有限公司においての計 3.5 日間(36 時間)の中で、これら 1 ∼ 5 の要素を効果的に組み合わせながら現地社員と密接な時間を共 有し、全く無駄のない研修内容となった。さらに、大連経済技術開発区の様々な規模の企業群を概観することで、中国経済成長の原動力を 実感した。また、将来のグローバル人材として、歴史から学ぶことの大切さを知った。 マネジメント学習 グローバル化時代のものづくり技術者に求められる必須能力はコミュニケーション力である。その本質を知るために、今回の研修では総 経理/幹部の講話及び現地スタッフとの意見交換(現地法人経営陣スタッフ、現地管理職スタッフ、日本人技術スタッフ、現地技術スタッ フ)を実施した。 ●経営の基本 本海外研修に入る前に、グローバル人材として最も重要なことは「現地を知ること」であるということを 15 回の講義の中で理解してき ている。それを受けて本研修プログラム筆頭の総経理講話は極めて印象深く有効なものになった。中国におけるコミュニケーションの基本 として以下の 3 点について分かり易い説明があった。自己人/外人による社会的区別、さらに農民/非農民による経済生活的区別を理解 すること。中国が日本を見る目を理解すること。社会システムを理解すること。また、製造ものづくりの心得として、節約の五箇条、人間 尊重、三現主義、4S、について紹介があった。 さらに、昨年からの中国経済成長の鈍化の中でも医療分野は引き続き 15% 強の高い成長率が見込まれる事が詳しく解説された。 ●技術管理者 「育てる環境」を作ることが最大の仕事であり、現地社員から信頼を得るためには「何か武器或いは強味を持つ」ことが重要であると力 説された。 ●生産ライン管理者 ほぼ全員が女性作業員であり、また、監督管理者も現地女性である。「いかに分かり易く」伝えるか、自信をもって的確な言葉を使うこ との重要性を理解した。 20 ものづくり学習 ●マーケティング/開発 日本国内向けと現地向けニーズの違いをしっかりと認識すること。医療現場システム及び 環境、医療従事者のスキルには国ごとに大きな違いがあり、さらには、医療市場の階層構造 との整合性、また、医療行政の関わりなど、考慮しなくてはいけないファクターは多岐にわ たる。機器そのものの差別化、サポート体制の差別化のポイントがそこにあることを実感で きた。 ●生産技術 医療精密機器事業における一環品質保証体制のためのライン構築。加工原材料製造から部 品成型、組み立て、完成品梱包、滅菌までのフル自社生産、全行程をじっくりと見学。精密 部品の成型装置の自動化と組立て行程の自動化によるシステム指向及びその自動化率(対人 件費)は生産コストの最適化を図る基本要素であることを学ぶ。製造装置の一部も自社開発 透析回路の説明 であり、特に制御工学の応用領域の広さをあらためて知った。 ●検査技術・品質管理技術 現場ライン内数工程で品質検査データの読み取り方を実習。さらにオフラインの品質管理 室において、加工精度試験、接続部加重試験など実際に稼働させてその原理を学んだ。 ●ERPシステム かなり初期段階から導入した ERP システムは、製造ラインの変化に対応させながら、拡張 させてきている。製造工程の自動化が進む中、ERP システムもフレキシブルに対応させなく てはいけない。また情報セキュリティの徹底のため、社内ネットワークのアクセスをアプリ ケーションソフトウェア単位で管理しており、その実情を見聞したことは情報工学の学生に とってはまたとない貴重な体験となった。 製造体験学習 射出・押出成型の説明 手作業による単一組立工程及び梱包工程をそれぞれ1ロット体験実習。練習を 2 クール実 施した後、実際のライン横にサブラインを用意いただき、実製品の作業を行った。作業速度は実ラインに対して 3-4 倍以上かかり、黙視検 査レベルでも不良品が出るなど、 ものづくりの難しさを肌で感じ取る事ができた。ものづくり作業者に対して尊敬の念をもった様子である。 また、セル方式によるモデュール組立てを同様にサブラインで実際に行い、単一工程を組み合わせたパイプライン処理との違いも体験。 ものづくり経済成長の実際 キャノン、マブチ、日本電産など大連経済技術開発区への早期進出企業のエリアは、時の経過の結果、居住区が隣接して建設されており、 さらに、リョービ、セイコー他、中規模日系工場団地が周囲に小刻みに発展している。後発組のインテルは広大な敷地を外周で展開し、フォ ルクスワーゲン、日産など自動車メーカの大型施設は、輸送面から港湾部に広大なエリアを確保している。 報告会 最終日に研修生は1人 20 分のプレゼンテーション(研修結果報告)を幹部に対して行った。 3.5 日間の短い研修であったが、それぞれの研修内容が極めて濃く、また、効果的に組み合わ されていたことで、それぞれ得たものは大きかったようである。彼らが「明らかに成長した ことがわかる」と幹部からも高い評価をいただいた。 最後に濱﨑より総括として、「グローバル化時代のものづくり技術者像プログラム」におけ る現地研修の目的に対して、以下のような十二分な成果が得られたことを述べさせていただ いた。 1. 文化には多様性があることを肌で感じ取ることができた。 2. 自分(自国)を知り、相手(他国)を知ることで初めて交流は可能になることを理解できた。 3. 技術は客観的な事実に基づいて伝えなくてはならないことを再認識できた。 21 輸液セット組み立て体験 研修報告会 以上、 初日に大連 JMS 有限公司、会議室スクリーンに映し出された藤井総経理の「熱烈歓迎」 の文字に始まった研修プログラムは、最終日に我々から「熱烈感謝」の文字で応えさせてい ただき、無事終了した。 午後一番の出発では、寒い中、旅順に向かう迎えのバスが社屋外の道路に出て見えなくな るまで手を振っておられた幹部管理職の方々にあらためて感謝した。 研修報告会 時 間 1日目 午前 1日目 午後 2 日目 午前 2 日目 午後 3 日目 午前 3 日目 午後 4 日目 午前 4 日目 午後 区 分 内 容 マネジメント学習 幹部の講和と意見交換 ものづくり学習 商品知識習得 製造体験学習 全製造工程の理解 ものづくり学習 ライン内検査技術実習 ものづくり学習 マーケティング 中国国内市場調査と販売展開 マネジメント学習 技術管理者のビジョン 海外で働く事 製造体験学習 製造機器メンテナンス作業の理解 マネジメント学習 大卒新人技術者との意見交換 製造体験学習 単一組立工程、梱包工程の実習 ものづくり学習 ERP システム学習 ものづくり学習 品質検査技術学習 製造体験学習 セル方式モデュール組立工程の実習 ものづくり経済成長の実際 大連経済技術開発区概観の見学 マネジメント学習 現地管理スタッフとの意見交換 報告会 幹部への研修結果プレゼンテーション 日中歴史探訪 旅順見学 日中歴史探訪 大連市のある遼東半島はあまりにも日中の関わりが深い場所である。研修生にはあらかじめ、歴史的な背景(領有権も絡んで幾度かの大 戦の舞台になった場所であること。その結果、歴史的にも日中双方に複雑な思いはあるが、産業界では経済的、技術的なプラスの関係が多 方面にあること)を予習させておいた。太平洋戦争ですら知らない我々教職員及び学生にとって、日露戦争、旅順での激戦は遠い過去のこ とである。しかし、戦火を交えた痕跡が生々しく残る東鶏冠山のトーチカ、110 年経っても崩れず地形を留める 203 高地の塹壕跡など、広 島原爆ドームしか見た事のない学生にはあらためて戦争の悲惨さ、国の繁栄と平和の意味を理解できたのではないかと思う。また、改革開 放経済の中、中国の人々は犠牲者でしかない日露戦争の日本軍・ロシア軍の戦死者を慰霊する白玉山塔が、旅順市民の憩いの場所として親 しまれている様子を見て、多様性を知る真のグローバル人材の意味をあらためて理解できたことと思う。 22 4 . 全 体 のアンケート結 果 ■グローバル化時代のものづくり技術者像に関するアンケート結果(受講者) 性 別 所 属 申込方法 15% 23% ■ 男 ■ 女 38% 85% 社会人 ■ 大学生 所属する大学・ 企業からの推薦 ■ 62% TOEIC 25% 70% 5% ■ 海外勤務(社会人のみ) ■ 0 ∼ 399 点 ■ 400 ∼ 599 点 ■ 600 点以上 ■ 77% 40% ■ 携わっている ■ 携わっていない 60% 個人で申し込み 出 席 42% 58% <プログラム内容の理解度・満足度等> 内容は理解できましたか。 内容は満足できましたか。 仕事に役立ちましたか。 (社会人のみ回答) 4% 36% 60% ■ よく理解できた ■ 理解できた ■ ふつう ■ あまり理解できなかった ■ 理解できなかった 12% 40% 48% ■ 大変満足できた ■ 満足できた ■ 大変役立った ■ ■ 役立った ふつう ■ ふつう ■ あまり満足できなかった ■ あまり役立たなかった ■ 満足できなかった ■ 役立たなかった <プログラムの学習効果> <海外勤務に対する意識について> 大学生と社会人が一緒に講義を受 講することで、学習効果が高まり ましたか。 海外企業との取引など、海外と関 わりのある仕事に携わりたい気持 ちが強くなりましたか。 8% 4% 15% 18% 27% 55% 将来、機会があれば海外に赴任し て働きたいと思いますか。 9% 31% 42% ■ 強くそう思う ■ そう思う ■ ふつう ■ あまりそう思わない ■ そう思わない 13% 30% 57% 9% ■ 強くそう思う ■ 強くそう思う ■ そう思う ■ そう思う ■ ふつう ■ ふつう ■ あまりそう思わない ■ あまりそう思わない ■ そう思わない ■ そう思わない 43% 39% <プログラムの周知方法、実施時期について> このプログラムをどこでお知りに なりましたか。 39% 35% 23 来年度も、このプログラムが実施される場 合、同僚・友人等に推奨したいと思いますか。 9% 9% 17% 実施時期、時間について意見をお 聞かせください。 ■ ホームページ ■ 広報チラシ ■ 新聞記事 ■ 知人の紹介 ■ その他 ■ 91% ■ 今の時期、時間でよい 別の時期、時間がよい 26% 17% 57% ■ 強くそう思う ■ そう思う ■ ふつう ■ あまりそう思わない ■ そう思わない <自分にとって最もよかった講義とその理由> 異文化コミュニケーション全般 海外ものづくり事情(コンピュータシステム分野) ・映像もあり印象に残りやすかった。 (大学生) ・自分が学んでいる分野なので一番印象に残っている。 (大学生) 英語圏における異文化コミュニケーション ・異文化に関わらず、プレゼン、話のまとめ方が分かった。 (大学生) ・英語を学習する機会が少ないため。 (社会人) 海外ものづくり事情(自動車分野) ・メキシコでの事業を立ち上げるときの注意点で始めから事 業を起こす難しさを知れたから。 (大学生) ・マザー工場と海外工場との関係性のスタンダード化につい て考えさせられた。 (社会人) 海外ものづくり事情(デジタル情報家電機器商品企画・戦略分野) ・実例をまじえた内容が良かった。 (社会人) 海外ものづくり事情(デジタル情報家電機器商品企画・戦略分野) 海外文化事情(日本企業勤務の現地管理社員の視点) ・外から見た日本とそれに対しての日本からの意見が聞け た。 (社会人) 海外文化事情(留学生の視点) ・海外からの留学生をまじえたグループディスカッションが とても新鮮で勉強になった。 (大学生) その他の回答 ・実際に海外事業展開をした企業の話を聴くことができて、 興味を持つ事が出来た。 (大学生) ・大学教授講師の方々の講義すべて、研究、論拠が明らかで 応用しやすいため。 (社会人) ・市場参入するには、その国のことを調べる必要があり、非 常に難しい問題ということが分かったから。 (大学生) ・海外で奮闘されたご経験が共感できたため、分かりやす かった。(社会人) ■グローバル化時代のものづくり技術者像に関するアンケート結果(受講者が所属する企業等) <本プログラムについて> 内容は目的の人材育成に役に立ち ますか。 14% 86% ■ 強くそう思う ■ そう思う ■ ふつう ■ あまりそう思わない ■ 社員の評価はいかがでしたか。 そう思わない 29% 71% ■ 大変満足できた ■ 満足できた ■ ふつう ■ あまり満足できなかった 来年度も、このプログラムが実施される 場合、社員に推奨したいと思いますか。 29% 71% ■ 強くそう思う ■ そう思う ■ ふつう ■ あまりそう思わない ■ そう思わない ≪ 考 察 ≫ 実施形式の観点からは、アンケートの設問「大学生と社会人が一緒に講義を受講することで、学習効果が高まりまし たか。」に対して、 「強くそう思う(31%)」 「そう思う(42%)」と回答しており、大学生と社会人の討論や意見交換が受 講生にとって非常に有意義であったと判断できる。しかし、「ディスカッションをする際に、同じ方と何回も一緒のテー ブルになり、一回もディスカッションしたことがない方もいたため改善してほしい。」との要望もあることから、対応を 図る予定である。 また、「①来年度も、このプログラムが実施される場合、同僚・友人等に推奨したいと思いますか。 」に対して、 「強くそ う思う(17%)」 「そう思う(57%) 」 「②仕事に役立ちましたか。 、 (社会人のみ回答) 」に対して、 「大変役立った(18%) 」 「役 立った(55%)」と回答があり、一定の評価は得ていると言えるが、昨年度と比較し、①はポイント減、②は横ばいであ ることから、満足度の向上を目指したい。 24 5 . 各 講 義のアンケート 結 果 ■グローバル化時代のものづくり技術者像に関するアンケート結果(受講者) 内容は理解できましたか。 よく理解できた ■ 理解できた ■ ふつう ■ あまり理解できなかった ■ 理解できなかった ■ 内容は満足できましたか。 仕事に役立つと思いますか。 (社会人のみ回答) 大変満足できた 満足できた ■ ふつう ■ あまり満足できなかった ■ 満足できなかった 強くそう思う そう思う ■ ふつう ■ あまりそう思わない ■ そう思わない ■ ■ ■ ■ 第2回 6% 39% 36% 61% 64% ・グローバル化が進む今、相手の文化 を知ることが、相手のマーケットを 知る一番の近道であると感じた。 44% 50% 第3回 3% 30% 67% 69% 第4回 3% 8% 33% 10% 50% 第5回 9% 3% 3% 6% 10% 40% 40% 6% 6% 23% 32% 32% 59% 第6回 29% 71% 68% 第7回 25% 41% 38% 第8回 10% 47% 47% 8% 8% 4% 48% 53% 第9回 7% 47% 43% ・現地において、 「譲れるところ」「譲 れないところ」を明確化する必要が あると感じた。 ・ディスカッション方式だったので、 自分とは異なる意見を取り入れるこ とができた。 31% 31% ・現地に行かないと分からないことが 非常に多くあるので、実際に行って みることが大切だと分かり、とても ためになった。 ・新規市場開拓、新製品開発において 市場の流れ、ニーズ、自社、他社の 分析の重要性を感じた。 38% 3% 14% 37% 60% 57% 25 ・技術移転における海外の人との違い や対応の仕方を学ぶことができて良 かったと思う。 ・何を技術力というのか、自分には何 の技術があるのか、考えさせられた。 29% 30% 63% ・異文化を理解することと、日本の外 国人労働者の労働環境について考え させられる良い機会になった。 59% 10% 37% ・異文化理解について今後さらに理解 を深めていく必要があると感じた。 ・グローバル人材に必要な要素につい て学ぶことができ、将来私が海外で 仕事をする機会があれば活かしてい こうと思った。 6% 29% ・プレゼン・スピーチに関する基本的 な知識を学ぶことができ、大変有意 義だった。 ・実体験に基づく内容で、リアリティ があり、共感するところがたくさん ある。 65% 56% 3% 59% 74% 25% 22% 59% ・今までになかった視点でのお話が聴 け、自分を新たな視点で振り返る良 い機会となった。 ・グローバルなコミュニケーションや スピーチについて、参加型の講義で 楽しく理解することができた。 26% 31% 《受講生の感想》 ・異業種の方の貴重なお話を聞かせて いただき、大変参考になった。 ・市場を見極めること。そして、どう 戦略をたてるのか、ケースごとに説 明していただいたので大変勉強と なった。 内容は理解できましたか。 よく理解できた 理解できた ふつう ■ あまり理解できなかった ■ 理解できなかった 内容は満足できましたか。 仕事に役立つと思いますか。 (社会人のみ回答) 大変満足できた 満足できた ふつう ■ あまり満足できなかった ■ 満足できなかった ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 第 回 17% 30% 23% 33% 53% 第 7% 回 45% ・尊重する心や順応力があれば、語学 力は完璧でなくても単語トークで通 じるという話が面白く、参考になっ た。 31% 69% 40% 7% 48% 第 3% 48% 45% 15% 23% 62% 11% 回 43% 43% 12 21% 29% 46% 54% 第 回 13 《受講生の感想》 4% 10 11 強くそう思う そう思う ふつう ■ あまりそう思わない ■ そう思わない ■ 3% 53% 44% 41% 56% 27% 33% 40% 第 回 33% 50% 第 4% 4% 4% 回 38% 33% 57% 58% 42% ・なぜ海外生産するかについて網羅的 に整理されていて勉強になった。 ・なかなか自社の社員でもこんなに国 の違いを改めて聞くこともないの で、とても貴重な機会となった。 ・外国で働くには、その国のことだけ でなく自国のこともしっかり理解 し、違いを知らなければならないと 感じた。 20% 33% 40% ・コミュニケーションするための構成 要素を考える良い機会になった。 9% 50% ・撤退のシナリオを用意しておくこと や、本社を国際化することが海外進 出に必要というのは、思いもよらな かった。 ・留学生や海外の方をまじえて文化に ついて交流を持ち、互いの文化につ いて知れて良かったと思う。 17% 14 15 7% 10% ・海外事業の形態の種類やその内容や 企業の取り組みについての話を知る ことができて良かった。 ・ディスカッションによって実践的な 検討ができ、良かった。 50% 3% ・実際に海外で仕事をされている人の 仕事を聞けてとても勉強になった。 9% 82% ・15 回の講義を振り返ることで、学び を整理でき次の行動につなげること ができそう。 ・グローバル人材に対する認識が、英 語が話せれば良いのだろうと思って いたが、気持ち・意識の方面で異文 化を理解しようとすることが大事な んだと感じた。 広島県補助事業 平成27年度大学連携による新たな教育プログラム報告書 2016 年(平成28年)3月 31日 編集・発行 広島工業大学 学務部(教務担当) 広島市佐伯区三宅 2-1-1 E-mail [email protected] 広 島 工 業 大 学 (代表) 広 県 島 立 広 大 島 学 大 学 広 島 国 際 学 院 大 学
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