学びは「祭りの準備」 ∼第1回デネブ杯争奪 インビテーショ ナル英語スピーチコンテスト∼ 広島工業大学 生命学部 食品生命科学科 教 授 三 熊 祥 文 1. はじめに 杯 争 奪 英 語 弁 論 大 会 」に応 募し、見 んじゃない、現場で起こってるんだ!」と 表ができること、であり、見 方を変えれ 広島工業大学には留学や語学試験 事 本 選 進出を果たし、激しく3位 入 賞 いうときの「 現 場 」とは、 この「コミュニ ば「 就 活 力」とも重なるものです。 この 対策講座など、様々なグローバル教育 を争うほどのパフォーマンスを見 せま ティ」のことです。あるコミュニティを構 ような力が、 「 祭り」に参 加する中で自 の環境が整っています。その中でも、今 した。 これは本学の英語教育にプレゼ 成 するメンバー間で「 共‐身 体 的 」な 然に身に付くことが 何にも増してデネ 年 度から始まった「デネブ杯 争 奪イン ン志 向の息 吹を吹き込む画 期 的な出 体 験を積み重ねることによりお互いの ブ杯の魅力であり、利点でしょう。本学 ビテーショナル英語スピーチコンテスト 来 事でした。その余 勢を駆って、本 学 共感能力を開発すること (コミュニティ 学 生にはどんどんチャレンジしてほし (以下「デネブ杯」 という)」の開催は意 学 生に更なる機 会を提 供 する目的で を成 熟させ て いくこと)に「 語り( 学 いと願っています。 義深いものでしょう。デネブ杯は、以下 開 催されたこの大 会には、以 下のよう び)」は関わっています。 の日程と趣旨で開催されました。 な理論的背景があります。 2. 「 学びは教室で起こってるんじゃ 日程:平成25年10月5日 (土)13:00∼ 場所:広島工業大学 デネブホール 趣 旨 :K E S S A( 関 西 英 語 会 連 盟) からの招待選手に工大 生が挑む *KESSAとは Kansai English Speaking Society Association(関西英語会連盟) 関西圏の大学のE.S.S.が加盟してい る団 体 。加 盟 大 学は関 西 大 学 、関 西 学 院 大 学 、同 志 社 大 学 、立 命 館 大 学 の4大学。関西最強のレベルを誇る。 結果は、本学からの出場者2名のう 3. 学びは「祭りの準備」 現 場としてのコミュニティ (人の集ま ない、現場で起こってるんだ!」 り)は「祭り」にたとえられます。 「祭り」 しかも、それには学生たちが真剣に 興味のありそうな学生に声をかける形 化させることができたと思います。 で有 志を募りましたが、次 回からは公 現 代 教 育 学の理 論を援 用するなら とは、 「『 非日常 』を参加者が意識する 取り組 むにふさわしい 重 厚さが 欲し 実 践 共 同 体において、 『 短・中期 的ゴ い。 とはいえ、前 述の上 智 大 学のコン 4. スピーチは「超」英語学習 を学ぶ際 、 「わかった」という感 覚は、 ール設 定 』のもと特 定 の 技 芸 の 披 露 テストのようなオープン大 会に応 募 す スピーチで学 べること、それは単に 上 智 大 学で健 闘した学 生は、新たに 募という形にする予定です。 今 回デネブ 杯で優 勝した学 生 や、 実は俗にいう 「わかったつもり」であっ の 応 酬を期 待される活 動を立 案 、実 ると原 稿 審 査という関 所があり、準 備 英 語が身に付く以 上のトータルな力と 本 学の一 員となる若い世 代の道しる て身に付 いていないことが 多 いので 行してゆく 『コミュニティの 発 展 的 再 すれば 必 ず 発 表できるという保 証は いえます。古代ギリシア以来西洋文化 べ であり、同 時 にきわ めて 具 体 的な すが、その感覚は自分のことばで再構 生 産 』」です 。例えば 部 活 動では「 各 ありません。そこで、 「重厚さ」と「機会 の 根 底に脈々と流 れるスピーチの 技 「 なれる自 分 」のイメージでもありま 築して語ることによって使える知識とし 種 大 会 」が「 祭り」の機 能を持ってい 保 証 」の両 立を果たすための働きか 法は、いわゆるスピーチ5規 範の中に す。 「 就 職には 英 語 ができないと『ダ て定着します。 ます。 けが K E S S A からの出 場 者の招 聘な 凝 集されています 。 5規 範とは ① 発 メ』なんだ」 「社会に出ると英語が『 必 その際 、鍵になるのがオーディエン 「祭り」に参加してこそ、すなわち大 のでした。その働きかけは私が個人的 想・構 想 、② 配 列 、③ 修 辞 、④ 記 憶 、 要 』なんだ」と自分を追いつめるだけ スの存 在です 。聞き手を思いやり、伝 会 出場を目指してこそ、メンバーが心 に行い、K E S S Aから8名の出場 者を ⑤ 発 表を指します。 これらは言い換え でなく、是 非「 祭り」を興す一員になっ えたい 内 容を分 かりや すくするため を合わせて日々の訓 練に取り組み、い 招 待 することに成 功しました。 「インビ れば ① 内 容を持 つこと、② 発 言 の 構 ていただきたい。そうすれば英 語に対 「要するに」 と何度も吟味しながら説き わゆる「協同学習」を成立させて実践 テーショナルコンテスト」とすることによ 成 が 適 切であること、③ 言 葉 遣 いが する姿 勢もずっとポジティブなものに 語ると、自身の納 得 感が増 すようにな 的な力をつけることができるのです 。 って、本学学生同士で競わせるコンテ 適切であること、④必要な情報を必要 なるでしょう。 ストよりも迫 真の準 備となり、学 習を深 な時に引き出せること、⑤ 魅 力的な発 ります。 よく 「他人に教えると分かるよう 「 学び 」の 技 術 的 側 面( 英 語 の 場 合 になる」といいますが、 まさにその通り は語 彙 や 文 法を覚える、適 切な英 作 なのです。そしてその知識は語り合い 文をする、発 音を練 習する、英 文を暗 による修正に開かれています。その意 唱 するなど )は、 「 祭りの準 備 」として 味 で、 「 学 び 」とは「コミュニケーショ 位置づいてこそ効果が上がります。 ン」であるといえます。 私たちが 考えたのは、英 語 学 習の 英語の知識も、 コミュニケーションの ための「祭り」の創出であり、その目的 K E S S Aを向こうに回してなんと「 優 中で「 語る」ことによってモノになりま にもっとも適うのがスピーチコンテスト 勝」 という快挙を成し遂げたのです。 す 。このような「コミュニケーションとし だったのです。 昨 年 、本 学 機 械システム工 学 科の ての 学び 」は、様々な聴き手によって 学 生 が 東 京 の 上 智 大 学で行われた 構成される「コミュニティ」の存在を前 「第35回上智大学短期大学部学長 提とします。 「学びは教室で起こってる 生態系と景観の価値評価 この「祭り」は、第1回の今年は私が 新たな試み、 「字幕つき」スピーチコンテスト ば、 「理解」とは「語り」です。ある事項 ち食 品 生 命 科 学 科の2年 生が、強 豪 2 5. 工大生のための「祭り」 優勝した種将太郎君(食品生命科学科2年) JCDを代表して飯田智絵梨さん(食品生命科学科2年) 3
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