グローバル化時代のモノづくり技術者像

広島県補助事業
平成 26 年度 大学連携による
新たな教育プログラム
開発・実施事業
グローバル化時代のモノづくり技術者像
―報 告 書―
2014
大学連携プログ ラ ム 主 催 者 挨 拶
平成 26 年度大学連携による新たな教育プログラム開発・実施事業
「グローバル化時代のものづくり技術者像」終了に寄せて
広島工業大学
学 長 鶴 衛
本学は、これまでもさまざまな教育プログラムを開発してまいりましたが、今回は、広
島県のご支援及び連携校等のご協力をいただき、
「グローバル化時代のものづくり技術者
像」というプログラムを開講させていただきました。
本プログラムは、昨今の産業界、経済界等における急速なグローバル化に伴い、大学へ
の「グローバル人材育成の期待」も大きくなっており、そのグローバル人材育成という大
きな課題に向けて、産学官で取組んでいこうとするものです。
そのため、講師の方々には、本事業の連携校である広島大学、県立広島大学及び広島国
際学院大学の先生方を、また、私共が長年ご支援・ご協力いただいておりますマツダ株式
会社、株式会社フジタ、株式会社インタフェース及び(独法)中小企業基盤整備機構等か
ら各分野で造詣の深い方々をお招きいたしました。
プログラム全体は、
「異文化コミュニケーション」
「海外ものづくり事情」
「海外文化事情」
という 3 つのカテゴリーから構成し、特定の分野に特化するのではなく、様々な分野を横
断的に学ぶプログラムといたしました。
また、実施方法としては、講義(スクール)形式のみではなく、ディスカッションやグルー
プワークを取入れ展開することで、学生、社会人双方にとって、有益な内容となったこと
と思います。
受講いただいたのは大学生 15 人、大学院生 4 人、社会人 17 人の計 36 人です。受講生
の皆さまには、全 15 回の講義を通して幅広い知識をしっかり修得され、さらには、それ
をベースとして、
「グローバル化時代のものづくり技術者像」そのものに成長していかれ
ますことを大いに願っております。
最後になりましたが、本プログラムの実施にあたり、多くの皆さま方にご支援、ご尽力
いただきましたことに、心より御礼申し上げます。今後も変わらぬご支援を賜りますよう
お願い申し上げます。
2
目 次
あいさつ…… ……………………………………………………………………………………………
2
目 次…………………………………………………………………………………………………
3
1 プログラムの構成…………………………………………………………………………………
4
2 講義紹介……………………………………………………………………………………………
5
3 海外現地研修……………………………………………………………………………………… 20
4 全体のアンケート結果…………………………………………………………………………… 23
5 各講義のアンケート結果………………………………………………………………………… 25
3
1. プログラムの 構 成
「グローバル化時代のものづくり技術者像」
区 分
内 容
講 師
日 時
ガイダンス
第 1 回 ガイダンス
本講義の目的および目標を確認する。
また、
グローバル化時代を概観するとともに
海外事業に関わる社会人として求められる技術者像の概要を理解する。
濱﨑 利彦
(広島工業大学)
平成26年 9月27日
(土)
13:00 ~14:30
第 2 回 異文化コミュニケーション全般
日本の技術者が、
異文化を持つ技術者とコミュニケーションを図る上で知っておくべき
ことを全般的に学ぶ。
上水流 久彦
(県立広島大学)
平成26年 9月27日
(土)
14:40 ~16:10
第 3 回 英語圏における異文化コミュニケーション
日本の技術者が、異文化、特に、英語圏文化を持つ技術者とコミュニケーションを
図る上で知っておくべき文化や習慣、また、特別な言語表現などの素養を学ぶ。
三熊 祥文
(広島工業大学)
平成26年10月11日
(土)
13:00 ~14:30
第 4 回 中国語圏における異文化コミュニケーション
日本の技術者が、
異文化、
特に、
中国語圏文化を持つ技術者とコミュニケーションを
図る上で知っておくべき文化や習慣、また、特別な言語表現などの素養を学ぶ。
桂弘
(広島工業大学)
平成26年10月11日
(土)
14:40 ~16:10
第 5 回 ものづくりにおける海外事業展開と技術移転
ものづくりにおける海外事業展開と技術移転について、歴史的背景、現状と今後の
動向など実例を挙げながらその考え方と知識を学ぶ。
高田 忠彦
(広島大学)
平成26年10月25日
(土)
14:40 ~16:10
異文化コミュニケーション
第 6 回 海外ものづくり事情(自動車分野)
高橋 雅通
平成26年10月25日
(土)
自動車分野における海外での事業展開を念頭におき、
ものづくりをベースにしながら、
(マツダ株式会社)
16:20 ~17:50
海外での勤務や現地の技術者との協同作業に必要な知識を学ぶ。
海外ものづくり事情
第 7 回 海外ものづくり事情(マルチメディア機器商品企画・戦略分野)
杉木 雄三
マルチメディア機器事業の海外展開を念頭におき、
グローバルと地域の両視点から商品
(クリプトメリア経営コンサルティング)
企画をすすめる上で、海外商社との連携やカスタマとの関係構築に必要な知識を学ぶ。
平成26年11月8日
(土)
13:00 ~14:30
第 8 回 海外ものづくり事情(マルチメディア機器開発分野)
マルチメディア機器事業の海外展開を念頭におき、
ものづくりをベースにした製品開発
をすすめる上で、海外企業との連携や技術者との協同作業に必要な知識を学ぶ。
濱﨑 利彦
(広島工業大学)
平成26年11月8日
(土)
14:40 ~16:10
第 9 回 海外ものづくり事情(経営分野)
MOT
(Management of Technology)
の観点から日本企業の海外での事業展
開を念頭におき、
オープン・イノベーション
(Open Innovation)
の進展による海外の
技術者との協力作業について必要な知識を学ぶ。
朴 唯新
(県立広島大学)
平成26年11月22日
(土)
13:00 ~14:30
第 10 回 海外ものづくり事情(建設分野)
古屋 朋寛・山下 剛 平成26年11月22日
(土)
建設分野における海外での事業展開を念頭におき、ものづくりをベースにしながら、
(株式会社フジタ)
14:40 ~16:10
海外での勤務や現地の技術者との協同作業に必要な知識を学ぶ。
第 11 回 海外ものづくり事情(応用科学分野)
松尾 邦昭
平成26年12月13日
(土)
ものづくりのベースとなる基礎学力への取り組みに関して、
海外、
特に、
アメリカの
13:00 ~14:30
(広島国際学院大学)
例を挙げ、教える側と教わる側それぞれの立場でその違いについて学ぶ。
第 12 回 海外ものづくり事情(コンピュータシステム分野)
鈴木 誠
平成26年12月13日
(土)
コンピュータシステム分野における海外での事業展開を念頭におき、
ものづくりをベース
14:40 ~16:10
(株式会社インタフェース)
にしながら、海外での勤務や現地の技術者との協同作業に必要な知識を学ぶ。
海外文化事情
まとめ
第 13 回 ものづくりにおける海外事業展開
海外での事業展開を念頭におき、ものづくり技術者が海外事業展開で注意する
点、また、知っておくべき知識などの全般について学ぶ。
深田 進
(中小企業基盤整備機構)
平成27年1月10日
(土)
13:00 ~14:30
第 14 回 海外文化事情
文化の違いなどを、
留学生を交えて討論や体験的な演習を行いながら理解する。た
とえば、
留学生から見た自国と日本の違いなどのテーマをもとに、
それぞれの文化を
理解するとともに、日本の文化についても再認識する。
長坂 康史
(広島工業大学)
平成27年1月10日
(土)
14:40 ~16:10
第 15 回 まとめ
グローバル化時代のものづくり技術者像をまとめる。
長坂 康史
(広島工業大学)
平成27年1月24日
(土)
14:40 ~16:10
中 国
平成 27 年3月2日
(月)
~ 7日
(土)
講義終了後の海外現地研修(希望者のみ)
海外現地研修
中国あるいは東南アジアで事業展開をしている地元広島の企業を訪問し、意見
交換および作業体験などを行う。
(※海外現地研修に係る渡航費等については、
半額程度の自己負担が生じます。
)
4
2. 講義紹介
第1 回
講 師:広島工業大学 情報学部情報工学科 教授 濱﨑
「ガイダンス」
利彦
テーマ:
平成 2 6 年 9 月 27 日(土)13:00 ~14:30
●概要
■
自己紹介~広島大学工学部旧電子工学科で学び、大学院博士課程修了。その後、東芝に就職し、
集積回路設計に携わる。7 年後、アメリカのバー・ブラウンに転職。その後 10 年間、マルチメディ
ア系の半導体設計を担当。2001 年買収に伴い、日本テキサス・インスツルメンツ(TI)に異動。
10 年間デザイナーとして勤務の後、現職。
■
本プログラムの目的の確認~「グローバルに通用する製品と技術の発信」と「海外企業との連携」
が求められている中、
広島で「あらたな海外事業」に取り組む人材の育成は急務。本講義では、
「海
外実務経験者との討論」を交えながら、
「広島の『ものづ
くり』を中心とした現場」で活躍できる力を修得する。
■
なぜ今、日本がグローバル化を進めなければいけないか~
日本の GDP が減る中で海外現地法人の売上は微増。業績
を上げないと企業は存続できない。市場は成長率を見る
ため、企業競争力は常に右肩上がりにしていく必要があ
り、ここに海外に活路を求める必然性がある。
■
いま増えている半導体のビジネスモデルの解説~産業構造上、最先端のもの。デジタル化できる
部分では勝負ができない。マーケティング感度を徹底的に高める必要性がある。
■
マーケティングのポイント~より汎用性のある製品展開をしないと利益率を維持できないが、大
量消費により飽きられることも。最終商品の価値はお客様が
どんなものを欲しがるかにかかっている。
■
本プログラムの講義内容~異文化コミュニケーション・海外
ものづくり事情・海外文化事情・海外現地研修の 4 部で構成。
座学に限らず、講師および受講者を交えた討論やグループワー
クなどの体験的な演習などを取り入れたアクティブラーニン
グ手法によって知識を身に付ける。
海外で働くという夢の準備に相応しい内容
受講生よりひとこと
大学の講義でも習ったことのある先生でしたが、より専門的で詳
細な内容を聞くことができたのが印象的でした。難しい部分もあり
ましたが、情報系の学びを深めていく中で、将来的に海外へ出てい
くことも視野に入れていますので、今後の講義にも期待したいです。
広島から世界に発信することも大事だと改めて思いました。
広島工業大学 情報学部情報工学科3年 岩井 慎之介さん
5
第
2回
講 師:県立広島大学 地域連携センター 講師 上水流
久彦
「異文化コミュニケーション全般」
テーマ:
平成 2 6 年 9 月 27 日(土)14:40 ~16:10
●概要
■
自己紹介~専門は文化人類学。世界各地に出かけて多様な
文化を見て、人間とはどういう存在なのかを考える学問。
メインフィールドは台湾。中国や韓国、パラオ、日本の
対馬や石垣島などを調査している。
■
講義内容~異文化にどう接するか、どう考えればいいかを
一般論的に解説する。
■
本講義の目的~「人間は差別する動物だ」ということをま
ずは認識して欲しい。
●差別する人間:自文化中心主義⇔文化相対主義。
「自文化中心主義」=自文化の基本的な価値観
を絶対視する=それを以って他の文化を価値判断する考え方。
「文化相対主義」=“文化に優劣
はない”という考え方。
●文化とは:①特定の社会の人々によって習得され、共有され、
伝達される生活様式の体系②人間が物事を意味づけ、行動す
る、頭の中にある何か →変化する・後天的 →本質的なも
のではない →世界共通のものではない。
しかし、身体にしみついているため、異文化を異常だと判断
する →自分の属している社会で生きていく上で必要な装置。
●日本にはびこる問題:
「オリエンタリズム」=欧米の近代文化を文化進化の頂点とみなし、他民
族の文化は定向的進化段階のいずれかに位置するという「単線進化論」に基づく →研究・美
術・政治の世界でイメージ付け →欧米への憧れとアジアへの蔑視がどうしても日本の中にあ
る。また、アジア人ということで蔑視されることも。
■
まとめ~ 他の文化に対してマイナスの感情を持つことは
避けられない →異文化にどう対処していくか →異文
化に接するときに「人間の教養」というものが問われて
くる →思うのは仕方がないが、立場の違いにも気づい
た上で、「言わない」という教養も必要。異文化への対処
には、「自文化への距離感」が大事。
上手なコミュニケーションを取るきっかけに
受講生よりひとこと
耳新しいことばかりの講義でした。今回、特に中国語圏の具体的
な文化についてもお聞きして、社内にいる中国人留学生さんをこれ
までより身近に感じられるようになった気がします。
海外拠点に行く社員さんのフォローに役立てたいと思って受講し
ましたが、彼らの思いを知る手がかりが得られたように思います。
株式会社東洋シート 椿谷 真未さん
6
第
3回
講 師:広島工業大学 生命学部食品生命科学科 教授 三熊
祥文
「英語圏における異文化コミュニケーション」
テーマ:
平成 2 6 年 10 月 11 日(土)13:00 ~14:30
●概要
■
自己紹介~専門は英語教育およびスピーチコミュニケー
ション。プレゼンテーションも含まれる。
■
講義内容~英語圏におけるコミュニケーションについて、
「スピーチコミュニケーション」に焦点をあてて解説。
■
はじめに~コミュニケーションの日米比較:
「高コンテキ
スト」対「低コンテキスト」
。前者は状況が意味を持ち、
後者は言葉が意味を持つ →文化土壌の影響と聖書の教
えにより、基本的に欧米の文化は「スピーチ中心主義・スピーチ文化」である。
■
本論~●スピーチの目的:①情報を与えるスピーチ②楽しませるスピーチ③説得のスピーチ④儀
礼的スピーチ
●スピーチの 5 規範:目的が決まった後、発表までの準備の
ステップ。①発想・構想②配列③修辞④記憶⑤発表。特に重
要なのは「配列」
。
●スピーチの配列:日本式の「起承転結」はグローバルスタン
ダードではない →受講者二人一組で資料の読み聞かせを実
施 →読み手を交代して同文をスピーチ風に実践 →文章で
おかしいところを相談、発表 →「転」の部分が英語圏の人には違和感を与える →欧米の人
はどんな技術を使っているのか知っておく必要 →彼らが学ぶ説得のための配列について解説
●説得のための配列法:受講者二人一組でイラストを見て何が起きているか相談 →説得型スピー
チの典型 =「モンローの動機配列」① Attention ② Need ③ Satisfaction ④ Visualization ⑤
Action
■
まとめ~ 何かの枠を超えたらグローバル →「要するに」
思考 = かみ砕き・言い換え →国や言語文化、年齢、立
場の枠を超える ●アハ英作文の解説● →「グローバ
リズム」 =「相手に分かってもらう」ために、相手のも
のの見方に合わせてコミュニケーションを見直すこと =英語だけでなく専門外の人に話す時にも通じる考え方
スピーチの効果的な手法を習得。今後に活用したい
受講生よりひとこと
欧米の考え方について、筋道立てて習ったのは初めてのことで、
非常に参考になりました。会社でレポートを書く際にも、配列法と
いう考え方で書けばよいと納得。今後は自分やひとの書いたものを
そうした視点で見るともっと良くなるのではと思います。プレゼン
テーションのやり方もご紹介いただいて理解が深まりました。
マツダ株式会社 平岡 哲男さん
7
第
4回
講 師:広島工業大学 情報学部知的情報システム学科 准教授 桂
弘
「中国語圏における異文化コミュニケーション」
テーマ:
平成 2 6 年 10 月 11 日(土)14:40 ~16:10
●概要
■
自己紹介~大学で中国語の授業を担当。その他に、国際交
流の仕事をしている。
■
テーマ~ 結婚儀礼を通じて見る中国と異文化コミュニ
ケーション。映像資料を通じて中国の姿を見せたい。
■
本講義の目的~日本の技術者が中国語文化圏でものづくり
の仕事をする上で、知っておくべき人々の生活、文化や
習慣、また特別なコミュニケーションの方法などを学ぶ。
■
本論~●ものづくりとは:ものを使う人のことを理解し、ものを使う人のニーズを理解し、ものを
使う人のニーズを創造すること。ものづくりの生産現場の従業員のことをよく理解し、対応する管
理制度や企業文化を構築することができないか。中国の内陸地方で一般的な儀礼から、中国の真の
姿を見て、そこからその点を考えてみたい。
●内陸地方の儀礼を見る理由:中国は奥深く重層的な経済体。
経済発展と対外開放が沿岸部から中心部に拡散し、物価や生
活コストが内陸へ向けて次第に安くなり、中国で投資する日
本企業の工場も内陸都市の郊外に置かれるようになっている。
それは日本の技術者・管理者が多く接する中国人が、生活・行
動様式がより伝統的かつ保守的な人々となることを意味して
いる。特に内陸の人は結婚を重視する伝統があり、
これを通じて中国の伝統の一面を理解できる。
●画像紹介:伝統的な習俗の残る「徽州(きしゅう)
」という文化圏の結婚式を紹介。建築(うだつが
特徴的)
、伝統的な道具、村の様子、
「徽州」の結婚式当日の様子と、3 年後の住宅新築の様子を紹介。
■
まとめ~ 以上のことから分かること:
[A] 経済的状況~中国の農村も豊かになりつつある。
[B] 人間関係の状況~伝統を守り、信頼と親しみを表わすための業がある。
[C] 伝統と現代の融和~例えば色。喜事には白でなく赤。白のウエディング
ドレスでも手袋は赤。
[D] 漢字に対する認知~漢字の形が意味に影響し、漢字の音がかけことば
のように意味に影響することもある。
未知の世界を知り、社会人と共に学べる意義を実感
受講生よりひとこと
写真の紹介で、リアルな中国の様子を知ることができたのが大変興
味深かったです。メディアではなかなか取り上げられないような農村
部の結婚式はおもしろいですね。また、質疑応答で社会人の方が、世
の中の情勢を交えた質問をあれこれされていたのに驚かされました。
学生だけでは経験できない、新鮮で充実した講義だったと思います。
広島工業大学 環境学部地球環境学科3年 米田 有沙さん
8
第
5回
講 師:広島大学 大学院工学研究科 客員教授 高田
忠彦
「ものづくりにおける海外事業展開と技術移転」
テーマ:
平成 2 6 年 10 月 25 日(土)14:40 ~16:10
●概要
■
自己紹介~繊維会社で 31 年間技術開発をしていた。1999
年から同社のタイの関係子会社に赴任し、3 年 3 か月タイ
で暮らす。2002 年より広島大学大学院工学研究科教授と
なり、2008 年定年退職。現在は同研究科客員教授ほか。
■
はじめに~バブル経済以降、海外への生産拠点づくりと技
術移転が盛んに。最も重要なのは関連技術をいかにスムー
ズに移転させるか。受入側のメリットを考える。
■
本論~●海外進出について:
〔背景〕国内産業の環境変化と製造業のグローバル化の進展。
〔狙い〕
製造業の生き残りをかけた経営戦略の一つ。生産拠点づくりと他国への販路拡大。
〔考え方〕移
転側への直接投資・技術移転・移転側に人材がいること・受入側の体制が整っていること・双方に
メリットがあること。
〔プロセス〕投資目的の明確化→フィ
ジビリスタディ
(事業化可能性調査)→投資計画の策定→投資
計画決定→資金手当て→計画実行→工場稼働・営業開始 〔現
状〕
海外生産比率:直近データで約 33%。分布はアジアが多い。
●技術、技術移転とは:技術とは?=知識(質的・観念的)、技
術≠技術情報であり、
技術移転は技術情報の移転ではない。
〔技
術の概念〕技術(=形式知)vs 技能(=暗黙知)
技術移転が
難しいのは、技術に「暗黙知」の部分があるから。
「暗黙知」=属人的
技術移転とは?=技術に関連する知識や情報を移転し、具現化し、製品を作ること。
●発展途上国への技術移転:海外生産技術移転には「組立て型」と「装置型」がある。成否の要因は
暗黙知の移転。日本との「違い」への認識などに留意。
●拠点工場の立ち上げの要点
■
まとめ~ 受入側の実情を理解し、国内で実績のある技術・
設備を移転すること。移転側の事前人材育成が重要。属
人的な「暗黙知の移転」が成否の鍵。
■
海外での経営経験から感じたこと
■
質疑応答
海外進出に関する学術的な解説が実に興味深かった
受講生よりひとこと
私自身、海外赴任経験があるので、お話には共感できるところも
多くありました。一方で、マニュアル化できない暗黙知の指導につ
いては、困難でもあくまでもマニュアル化していくべきだと思って
います。Win-Win の関係を目指して、最終的には海外生産拠点を現
地人化していくというのが理想。現状はまだまだ難しそうですね。
マツダ株式会社 寺野 隆志さん
9
第
6回
講 師:マツダ株式会社 人事室グローバル人事グループ主幹 高橋
雅通
「海外ものづくり事情(自動車分野)
」
テーマ:
平成 2 6 年 10 月 25 日(土)16:20 ~17:50
●概要
■
自己紹介~ 1992 年マツダ入社。本社工場勤務の後、2009
年~ 20012 年中国南京市にて勤務。2012 年~現職。現在、
海外出向者の支援業務に従事。
■
講義内容~海外経験および人事部門での経験から、マツダ
のグローバル人材育成についてレクチャーする。
■
本論~●マツダの紹介:日本の自動車生産は、2007年を境
に海外生産比率が優位に。現在、マツダからの駐在員派遣
先は 14カ国 30 都市 551名。
〔海外生産拠点の特徴〕基本構造:製造は必ずマツダ主導。マザープラ
ントから生産方式を輸出するスタイル。オペレーション:工場建設等は落下傘部隊方式。出向者
が現地社員をマネージメント。プロジェクトの規模に応じて日本から出張や短期出向でサポート。
●グローバル人材の定義:グローバル人材=外国人と協働し
て成果をあげる人材 →マツダにおける海外オペレーション
に求められる能力とマインド:マツダのものづくりの心を伝
達 / 徹底する能力、技術力をベースにコミュニケーションで
きる力、先入観を持たず現地社員の信頼を勝ち取る力、外国
の習慣・文化・考え方を理解し適応する力、異文化の丁々発止
の中でリーダーシップを取る力
●南京工場での経験より:① Ford 等 3 社合弁会社のアルミ鋳造部門の管理者として駐在②赴任時
の状況③赴任直後、毎朝 1 時間の品質会議を実施~女性品質担当を泣かせる④新設アルミ鋳造マ
シンで手の挟まれ災害発生⑤他部門で通勤時の二輪車災害発生⑥労務費比率年々アップ⑦中国
人の特性~助け合いはしない・謝らない・評価につながら
ないことはしない⑧離職率が高い(製造直接工は 26%)⑨
見習うこともたくさん~存在価値の積極的アピールなど
■
まとめ~ ・先入観に基づかない判断とコミュニケーショ
ンが必要 ・安全など譲れない領域は明確に主張する必要
性 ・会社に対するロイヤリティよりも個人のキャリアアッ
プを重視 ・本人のメリットを意識した動機づけが必要
これからのコミュニケーションづくりに生かしたい
受講生よりひとこと
中国の方は指示がないと動かないといったような、日本人の感覚
では考えられないようなこともある一方で、積極性や向上心がある
ということをお聞きして、見習っていかなければと思いました。先
生の実体験に基づくお話はとても新鮮で、身に付くことも多いと思
います。外国の方と接する際にはぜひ参考にしていきたいですね。
広島工業大学 情報学部情報工学科 4 年 小幡 紗織さん
10
第
7回
講 師:クリプトメリア 経営コンサルティング 杉木
雄三
「海外ものづくり事情(マルチメディア機器商品企画・戦略分野)」
テーマ:
平成 2 6 年 11 月 8 日(土)13:00 ~14:30
●概要
■
自己紹介~外資系半導体メーカー(日本バー・ブラウン、
日本 TI)で製品企画、マーケティング、営業などに従事。
2013 年、経営コンサルティングオフィス開業。
■
本論~●製造業のグローバル展開:需要地としてのグロー
バル展開と、生産・開発地点としてのグローバル展開が
ある。本講義では前者を対象とする。
●新製品開発におけるマーケティングプロセスの概要:
〔製品開発プロセスと主なマーケティング・フレームワーク〕■マーケティング環境分析= PEST
分析、3C 分析 →
■
市場機会の発見= SWOT 分析 →
ポジショニング →
■
製品企画 →
セグメンテーション・ターゲティング・
■
営業・販売促進活動=マーケティング・ミックス [4P]
■
●事例紹介:日本バー・ブラウン入社後に担当した開発製品
の例を紹介。
〔開発製品と事業体制〕
「DA/AD コンバータ」
の開発について 〔マルチメディア機器の時代変遷〕LD、CD、
VHD、Video CD、SVCD、DVD、SACD、DVD Audio など 〔世
界のマルチメディア機器顧客〕アジア(除く中国)
・中国・米国
(シリコンバレー)
・ヨーロッパ それぞれの電子産業集積地
の分布解説 〔製品開発における日本メーカーと中国メーカー
の違い〕日本メーカー=全て自社開発の重視、中国メーカー=リファレンス・デザインの重視
〔代理店との仲立ち〕現地ニーズをよく知る現地代理店との連携により新製品が大ヒットへ
■
まとめ~ グローバル展開で重要だったこと:強い目的意識・コアコンピタンス・多面的視野・パー
トナーシップ
《 第 7・8 回連動 》
グループワーク
両氏の講義の後、
6班に分かれて対
象となる会社を決め、SWOT分析を
実施。分析結果と今後取るべき戦略
提案について話し合いの後、模造紙
に記入。各班代表が発表を行った。
[ 対 象 と な っ た 会 社:SONY・APPLE・
Samsung・小米 ]
▶
各班で進行役を決定。各自が分析結果を付
箋に記入した後、それぞれに分類していく
▶
付箋の内容を突き合わせながら、グループ
としての意見にまとめていく作業
世の中の多様な考え方を知る絶好の機会に
▶
話し合いが進むうち、新たな意見が追加され
ることも。和やかに話し合いが続いていく
受講生よりひとこと
半導体業界の専門的なお話は大変興味深かったですね。私も製品
開発部門に所属しているので、実体験として共感できる部分もあり、
テストデザインについての考え方などは新しい発見ができたという
思いです。また、グループディスカッションでは、金融など他業界の
方と議論ができたのも大変有意義な経験になりました。
マツダ株式会社 河渕 量平さん
11
第
8回
講 師:広島工業大学 情報学部情報工学科 教授 濱﨑
利彦
「海外ものづくり事情(マルチメディア機器開発分野)」
テーマ:
平成 2 6 年 11 月 8 日(土)14:40 ~16:10
●概要
講義内容~「マルチメディア技術の発信と連携」
■
■
本論~●エンジニアとして開発に関わった経歴の紹介
●日本の GDP の構成比:我が国の 40%以上の GDP は 1%
の半導体によって創出されている
●開発に携わった製品:① Palm(パーム=タッチスクリー
ンコンピュータ)②オーディオシステムの D/A コンバー
ター③ ASSP(特定用途向 LSI、
ニンテンドー DS 用に開発)
●重厚長大型ゲームソフトビジネスは 2013 年を機にプラスに転換
●組織ギャップと Concurrent Engineering:量産に向けて同時並行的に開発を行う必要性。終
盤のテストを予め開発段階で入れておくことでテストコストを削減 →日本メーカーにはない
体制
●半導体のビジネスモデルの解説:最も成功しているのはア
メリカの Fabless。
●最先端半導体に関する国際会議 ISSCC について:直近 5 年
間の基本方針~いずれもユーザー目線
●今後の動向:ものづくりはますますグローバルに。インター
ネット・デバイスは今後いっそう活用され、いろいろなもの
がつながる時代に。
●音楽産業を例に:2013 年、CD 購入をダウンロードが上回る → サブスクリプション方式の増
加 = 情報は売れるがモノは売れない時代へ
■
まとめ~ ボリュームの大きさがモノを言う時代へ。安くても大量であればビジネスになる。
▶
SWOT 分析は、自社の強み・弱み、将来の機
会・脅威を検討するフレームワーク
▶
最後は前に出て、分析結果を班ごとに発表。
分析結果から導き出された新戦略も提案
▶
発表にはプレゼンテーションスキルも求め
られる。語りとアクションに個性がにじむ
得るものが多かったディスカッション。進路の考え方に変化も
分析対象となった会社へエールを送るグ
ループも。戦略も複数提案された熱い内容
受講生よりひとこと
大学で濱﨑先生のゼミを受講していますが、今回は海外進出に絞った内
容で、より深い理解ができたと思います。グループワークでは、社会人の
方々の意見が自分の上をいくものばかりで、自分の勉強不足や経験不足を
思い知らされました。一方で、これまで私には無理と思っていたグローバ
ルな進路に少し希望が持てる話も聞けたのがうれしかったですね。
広島工業大学 情報学部情報工学科 3 年 竹本 香奈子さん
12
第
9回
講 師:県立広島大学 経営情報学部経営学科 准教授 朴
唯新
海外ものづくり事情(経営分野)
テーマ:
平成 2 6 年 11 月 22 日(土)13:00 ~14:30
●概要
■
自己紹介~専門は経営戦略論、
技術経営論。主な研究は「日
韓の情報家電企業の経営戦略の比較」
。2013 年より現職。
■
講義内容~ MOT の観点からイノベーションの進展と経営
環境の変化を経営理論の面から解説。
■
本論~●日本の情報家電企業:ROIC
(投下資本利益率)の
推移に見る経営状況~ 90 年代は競争力が失われた時代→
技術の選択が会社の成果を左右する。 ●イノベーション
とは何か:日本語訳の
「技術革新」は元来意味が違う。最初の提唱者は Joseph Schumpeter。そ
の定義の中に
「技術」という意味は含まれない。→ 経営学でいうイノベーションとは:①新しい
仕入先の獲得②新しい生産方法の導入③新しい財貨の生産④
新しい販売先の開拓⑤新しい組織の実現(独占の形成やその
打破)この 5 つを組み合わせることがイノベーション。 ●イ
ノベーション企業の栄枯盛衰:市場から駆逐されるケースも
(例:集積回路)
●イノベーション=広い意味での革新:連
続的・斬新的イノベーションと非連続的イノベーションの 2
タイプがある。 ●イノベーションのジレンマ:最初の提唱者
は C.M. Christensen。持続的イノベーションを行う企業がいずれ他社の破壊的イノベーション
の前に屈することになるという経営理論。 ●イノベーションと企業文化:SONY と Apple の
共同プロジェクトは失敗 ●新しい競争優位性の創造が必要:企業は、活用型
(例:TOYOTA)
vs 探索型(例:Google)
、その統合によるもの
(例:BP)
に分かれる。 ●相互依存と密接な結合:
2 つのモデルと学習様式を維持するには異なった A
(構造)
R(ルーティン)
C
(文化)が必要。→ 組織部門間の相互依
存度によって適合の可否が変わる。活用型企業は
「密接な
結合」の方が有効、探索型企業は
「ゆるい結合」
の方が有効。
●探索型と活用型の ARC ●探索と活用の組み合わせ
■
自身の研究成果について~ 日本と外国の優良 ICT 企業に
よる技術開発戦略を比較・検討
経営戦略の専門的な知識に触れられたのは新鮮な驚き
受講生よりひとこと
イノベーションの定義やイノベーションのジレンマなど、初めて知
ることも多く、正しい知識を得られたのがとても良かったです。古い
ものが新しいものに勝てないという状況はなんとも悲しいことなの
で、日本の企業も経営戦略によって競争力をつけて頑張っていって
欲しいですね。紹介された本もぜひ読んでみたいと思いました。
広島工業大学 情報学部情報工学科3年 田中 博登さん
13
第
10 回
講 師:株式会社フジタ 総務部主任 古屋
朋寛・設備部担当課長 山下 剛
海外ものづくり事情(建設分野)
テーマ:
平成 2 6 年 11 月 22 日(土)14:40 ~16:10
●概要
■
自己紹介~古屋氏:入社 9 年目。2013 年より広島支店に
て現職。山下氏:入社 12 年目。広島支店を皮切りに名古屋・
四国・メキシコ支店勤務を経て 2013 年より現職。
■
テーマ~建設分野における海外での事業展開の具体例とし
て、株式会社フジタの海外事業について紹介する。
■
本論~●フジタってどんな会社?:建築・土木工事全体を
マネジメントするゼネコン
(総合建設業)の中でも、売上
高 2000 億円超の準大手ゼネコンに属する。日本で売上高 10 位前後を推移。
1910 年、
広島で創業。
●作業所での一日 ●フジタの海外事業:
〔売上高の推移〕海外工事の比率は今後もますます高
まる見通し 〔海外進出地域〕中国・韓国・インド・ベトナム・インドネシア・メキシコ。中で
もシェアの高いところは、韓国・メキシコ・中国・ベトナム。
日本企業の海外進出を土地選定から計画設計・施工・アフター
サービスまでサポート。
●メキシコ進出の実例紹介:メキシコ進出の理由と拠点
●マツダ新工場建設の概要:主要 30 数棟を同時施工
●作業所における具体的な仕事:昼食・スペイン語教室・
iPad 活用による現場管理など画像で紹介 ●メキシコの日本
との違い:①州や市で工事の基準が違う
(日本よりゆるい)②建築認可を
「ペリート」がやる(ご
きげんをとる必要。随時報告を心がける)③設備決めに保険との絡みが大きい
(発注者次第)④
契約+前途金
(契約金額の 30%)が必要
(日本では確認後の支払)⑤組織形態の違い
(担当者の
下にローカルスタッフが並ぶ)
●学んだこと・苦労したこと:①設計~「モックアップ」
という現地の材料でつくる方式で成功 ②品質管理の方
法~・ローカルスタッフにやり方を粘り強く指導・施工
図で仕事をする習慣の植え付け = フジタルールの教育
●海外勤務者に求められる資質:語学力は最低限、尊重
する心、我々が外国人、
体力 ◎最後に質疑応答
私にとってタイムリーな内容。海外への思いも高まる
受講生よりひとこと
マツダさんと取引のある当社も 90 年代にメキシコに進出している
ので、
いつ関連業務が回ってきても対応できるようにと思い、本プログ
ラムを受講しました。
メキシコの実際の様子に関するお話は、かなり参
考になりましたし、海外に行ってみたいという思いも強まった気がし
ます。学生の方々と一緒に学べることもいい刺激になっています。
株式会社ヒロテック 三宅 一典さん
14
第
11 回
講 師:広島国際学院大学 工学部生産工学科 教授 松尾
邦昭
海外ものづくり事情(応用科学分野)
テーマ:
平成 2 6 年 12 月 13 日(土)13:00 ~14:30
●概要
■
講義内容~ものづくりのベースとなる基礎学力について、
特にアメリカでの具体例を紹介。なかでも、アメリカの
理系学生がどんな風に勉強しているか、それを支える図
書館などの施設等がどうなっているかを解説する。
■
本論~●アメリカ理系学生の基礎学力:指標として国別
ノーベル賞受賞者数ランキング~ 1 位はアメリカ。日本は
8 位。しかも桁違い。なぜこんなに差があるか。 ●全米で
最難関のコロンビア大学の概要:2 学期制・1 学期平均で 16 単位(約 5 科目※日本は 10 科目程
度)、最低 12 単位を必修とする単位制・卒業には必修科目 124 単位(40 科目)が必要・学生と教
員の比率= 6:1 ●各教科のプログラムをシラバスから紹介
(応用物理・応用数学・数学・一般物理・物質化学・工学部電
気系の大学院など)
。 ●授業の特徴:宿題は必ず出る。TA
(学生によるティーチングアシスタント)が必ず付いて授業の
補助や支援を行う。宿題は自分でやるもの。 ●アメリカの
進学事情:アメリカでは 18 で社会に出て働いてお金を貯めて
から大学へ行く。 ●アメリカのキャンパスの様子:学生は
前から詰めて座る。学生支援室では院生の TA が必ず付いてオフィスアワーの間、指導をする。
コロンビア大は各国から学生が集まる(一番勉強するのはユダヤ人)
。5 ~ 6 か所食堂があるが、
学生は昼ご飯をつくってきたもので済ませる。 ●教員の教育への熱意がすごい:休講はない・
教科書は教室に持ち込まない・質問を促す・丁寧な授業・授業後の対応も充実・名教科を持ち
回りで行う・FD 委員会や学生アンケートの結果でクビに
なる ●アメリカの大学院教育:難解な宿題がたくさ
ん課される ●図書館:米国屈指のアカデミック・ライ
ブラリー・システム。22 の図書館がある。 ●アメリカ
の教科書:問題はあるが解答はない。 ●アメリカの教育:
ニューヨークはアメリカ最大、約 60 万人の大学生が学ぶ
大学都市。 ●コロンビア大学の紹介
日米の教育状況の違いに大いに触発された
受講生よりひとこと
アメリカの学生たちの学びの様子がよく理解できました。アメリカの
方がかなり厳しく、日本はお金のことにものんびりしていますね。TA は
僕も広島工業大学でさせてもらっていますが、仕事内容や支給される金
額がかなり違うようです。将来的には日本企業の海外拠点等で仕事がし
たいと考えているので、
学習意欲をさらに高めていかねばと思いました。
広島工業大学 工学系研究科電気電子工専攻 1 年 汪 施政さん
15
第
12 回
講 師:株式会社インタフェース 取締役 鈴木
誠
「海外ものづくり事情(コンピュータシステム分野)」
テーマ:
平成 2 6 年 12 月 13 日(土)14:40 ~16:10
●概要
■
講義内容~日本の製造業について各分野を概観。自身の経
験にも基づいて、
「5W1H」で海外生産に関して講義する。
■
本論~●国会予算委員会でのやりとり:
「日本企業の海外
生産が進むことで、日本での空洞化は起こらないか」
→
安倍総理「アベノミクス効果で円安に。この状況でも海
外生産を考える経営者はどうかしている」~ ◆三菱重
工が米国テキサス州に工場を建設という報道。果たして
「どうかしている」のだろうか?
● WHY「なぜ海外生産を行うのか」
:安い労働力・輸送費が高くつくから・政府の規制が厳しいか
ら・市場がそこにあるから・エネルギーコストが安いから・原料がそこにあるから・災害のリ
スク分散のため・円高のため など理由は多岐に渡る。
●海外生産と空洞化:海外に生産をシフトするため、国内工
場が空になる=空洞化? →空洞化に近い現象の一例紹介 →海外生産により新たな需要が喚起されれば、空洞化にはな
らない。
● HOW「どうやって海外生産を行うか」
:①自力で新工場
を 建 設 す る = Green Field ② 当 該 国 の 企 業 を 買 収 す る =
M&A ③当該国の企業と合弁会社を作る= Joint Venture ④当該国の企業に技術を供与する=
License ~それぞれの利害損失は?= コストは④→①に向けて大きくなり、経営面では④→
①の方向で良好に向かう。 ~ Joint Venture と M&A を同時に行った例 =目的は①売上を上
げること②営業マンとエンジニアという人材の確保
●海外生産の新たな動き:高い技術力と比較的安いコスト
で実現 ~メキシコ・タイ・インドでの例
●コンピュータシステム分野:インタフェース社が Made
in 日本を標榜している理由~労働力、輸送費、市場、エネ
ルギーコスト、
政府の規制、災害リスク、原料(部品)
、円高・
円安 それぞれの面での理由を解説 ◎最後に質疑応答
興味のある題材についてよく理解でき、有意義な時間となった
受講生よりひとこと
事例を中心にしたお話は大変分かりやすく、また、私自身にとって
も興味のある題材でしたので、率直におもしろいなと感じました。海
外進出する企業を助ける動きをしていくのが私が勤めている地方銀行
の役割ということもあって、本プログラムの受講を決めたので、具体
的な企業の動きや現地での苦労話なども大変参考になりました。
株式会社もみじ銀行 岡田 泰明さん
16
第
13 回
講 師:中小企業基盤整備機構 販路支援部 シニアアドバイザー 深田
「ものづくりにおける海外事業展開」
進
テーマ:
平成 2 7 年 1 月 10 日(土)13:00 ~14:30
●概要
■
自己紹介~電機メーカー出身。17 年間の海外駐在経験あり。
■
講義内容~生産の現場は、国内から海外へシフトしつつあ
る。海外事業の展開を支え、グローバルに活躍できる技
術者にとって大事なことは何かを学ぶ。
■
本論~●海外事業展開のポイント:いかに現地化と向き
合うか →大事なこと=異文化理解 ●日本的経営:①
外国人から見たポイント~経営幹部も制服姿・従業員を
大事にする・プロセスを重視・品質にとことんこだわる ②特質~年功序列・終身雇用・企業
内組合 →成果主義・通年採用・組合離れへと変化 ③日本的経営とものづくり~「人づくり」
の企業文化・人材育成は OJT とチームワーク・現場力重視 ●海外事業展開:4W の明確化の
必要性~ WHY? 何故必要か・WHAT? 何をしようとしている
か・WHO? どのような体制を組むか・WHERE? どこに進出す
るか ●海外事業取り組みへの必要最低条件:①社長の強い
意志②技術力のある商品③組織
(人材)④国内市場での実績 ●海外事業の形態:代理店・現地法人・事業連携。現地法人
設立には、市場調査を十分に行い、撤退のシナリオを持って
おくことが大事。 ●海外事業展開の拡大化(製造業)
:輸出
→一部生産工程現地移管→現地生産 ◎企業事例紹介 ●海外展開先人気 TOP3
(製造業)
:タイ・
インドネシア・ベトナム →これからはアセアンという捉え方が必要=「AEC
(アセアン経済共
同体)」 ●本社の国際化:海外事業展開に合わせて本社の国際化が必要。◎企業事例紹介 ●
生産現場の常識:日本のものづくりは海外の生産現場に
まで広がっている~〈生産性向上〉5S 活動・見える化・
提案制度・QC サークル活動 〈原価低減〉ものづくりは
原価との戦い。コストは下げるもの 〈品質改善〉ビジネ
スは QCD。特にクオリティは妥協してはダメ。
■
まとめ~ ものづくりを経営改革として捉えるべき。経営
理念が大切。理念は不変。成功の秘訣は「七転び八起き」
。
海外展開する会社はどうあるべきかをきちんと学べた
受講生よりひとこと
海外のことについては、
会社の人からもいろいろ聞いていましたが、
改めて認識することが多々ありました。例えば、海外事業に取り組む
企業力のお話など、きちんと論理立てて整理してあり、スムーズに理
解できましたね。企業の方や企業をサポートする立場の方の生の声
に触れることで、気付かないことを知る有益な時間になりました。
株式会社ヒロテック 中本 宏利さん
17
第
14 回
講 師:広島工業大学 情報学部情報工学科 教授 長坂
「海外文化事情」
康史
テーマ:
平成 2 7 年 1 月 10 日(土)14:40 ~16:10
●概要
■
本講義の目標~多様化するグローバル産業経済社会に適応
するグローバル人材として活躍するため、
「海外と日本の
文化の違い」を理解する。
■
講義内容~ 留学生を交えた討論やグループワークを行い
ながら文化の違いを理解する。
イントロダクション(15分)
・グループワーク(40分)
・プ
レゼンテーション(30分)
・まとめ(5分)
■
留学生自己紹介~中国人留学生 4 名とベトナム人留学生 2 名が出身地の紹介と日本に来て驚いた
ことを披露。
■
グループワーク~日本文化を 2 国間の違いと重要度を考えて分類する。6 班に分かれ、各班に 1
名ずつ留学生が参加。以下の手順でグループワークを実施した。①自己紹介・テーマ決め(5分)
:
「衣」
「食」
「住」
「働」のうち 2 テーマを決定 ②記述(10分)
:2 つのテーマに関して、
日本の文化(特
徴)を 1 つずつ付箋に記入 ③紹介・整理(20分)
:それぞれの項目をグループ内で紹介し、中国
もしくはベトナムの状況を留学生にインタビュー。その後、2 国間の違いと重要度を考え、模造
紙に付箋を貼付し、整理 ④発表準備(5分)
■
プレゼンテーション~各班代表数名が模造紙を提示しながら順次発表を行った。
■
まとめ~ 日本の文化や特徴について挙げてみたが、なかなか書けないことが分かったことと思
う。異文化を理解するにはまず、自分の国のことを理解する必要があることに気付いて欲しい。
また、今日のグループワークからグローバル人材となるヒントを持ち帰って欲しい。
留学生との会話や複数での話し合いは新鮮な体験に
受講生よりひとこと
留学生を招いてのグループワークでは、自分の国について考える
のは意外と難しいことを実感したものの、話をしてみることで文化
の違いに触れることができました。また、外国への理解も深まった
気がします。将来的には海外での活動も視野に入れているので、海
外の人と交流したり、経営など他分野の勉強もしていきたいですね。
広島工業大学 情報学部情報工学科 4 年 西村 俊彦さん
18
第
15 回
講 師:広島工業大学 情報学部情報工学科 教授 長坂
「まとめ」
康史
テーマ:
平成 27 年 1 月 24 日(土)14:40 ~16:10
●概要
■
講義内容~【目標】グローバル人材像をまとめる 【内容】・グローバル人材の定義と企業
・グローバル人
材像 ・まとめ
■
本論~●グローバル人材像とは:
「グローバル人材育成戦
略(グローバル人材育成推進会議 審議まとめ)
」から紹介
①グローバル化とは~ヒト・モノ・カネ・情報が国境を
越えて高速移動することで、あらゆるものを全地球的規
模で捉えることが不可欠となった時代状況。→「情報」がグローバル化を支えている。 ②グロー
バル人材の要素~Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力 Ⅱ:主体性・積極性、チャレンジ精
神、協調性・柔軟性、責任感・使命感 Ⅲ:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティ
ティー◎このほか、深い教養と専門性、課題発見能力・解決能力、チームワークとリーダーシッ
プ、公共性・倫理観、メディア・リテラシーなど ●企業側からみたグローバル人材像とは:
「大学におけるグロー
バル人材育成のための指標調査
(みずほ情報総研)
」※グローバル
人材推計のための企業へのアンケート調査から紹介
①企業へのヒアリング調査~・現在保有する / 求められるグロー
バル人材像(人物像、スキル、経験、資格等)
・
過去(5~ 10年前)と比した貴社におけるグローバル人材像の変化 ・今後(5
年後程度)求められるグローバル人材像 ②グローバル人材需要量発生率を推
計(外国人・企業規模別・業種別)
● 2 つの設問について考える:①あなた
の考える「グローバル人材」とは ②その「グローバル人材」になるために、どの
ような力をつけなければならないと考えるか →各自記述ののち、受講者 3 ~ 4
名でグループを作り、意見交換し、発表。積極性・コミュニケーション・情報等
が共通ワードとなった。◎発表後、
本プログラム講師陣の回答を配布
■
まとめ~ 本プログラムを受講してきたからこそ、先生方の回答に近いものがた
くさん出てきた。すでにグローバル人材への一歩を踏み出しているのではない
か。今後も自分の力、知識を深めていって欲しい。
グローバルな進路に興味がわき、意見交換は大きな刺激に
受講生よりひとこと
グローバル人材というと、単純に英語ができる人と考えていまし
たが、それはほんの一部にすぎないと分かりました。こうしたグルー
プディスカッションや発表は、毎回経験する度に大変得るものが多
かったので、ぜひ毎回やっていただきたいですね。SE を目指してい
るのですが、グローバルな活躍にもがぜん興味がわいてきました。
広島工業大学 情報学部知的情報システム学科 3 年 福田 悠人さん
19
3. 海外現地研修
研 修 先
研修期間
参加学生
引 率 者
大連 JMS 医療器具有限公司(遼寧省大連経済技術開発区黄海西路25号)
平成 27 年 3 月 2 日(月)~ 7 日(土)
広島工業大学大学院 大学院生 1 人
広島工業大学 学部生 3 人
情報工学科 教授 濱﨑 利彦
学 務 部 事務部長 猫島 幹爾
■研修企業~大連 JMS 医療器具有限公司
輸液輸血、透析などの分野において、医療機器・医薬品を製造販売する株式会社ジェイ・エム・
エス(本社、広島)の海外グループ会社として、中華人民共和国遼寧省大連経済技術開発区で、当
該分野製品を製造する企業である。設立は 1988年、大連経済特区
へ進出した日本企業としては先頭集団に属しており、売上高 2 億
3 千万元(約45億円)
、従業員数 934名(2014 年12月末)である。
■本海外研修の目的の確認
単なる企業訪問ではなく、真の海外研修プログラムとして、現
地幹部管理職及び現地技術者との積極的な意見交換、また、製造
現場において具体的な作業を体験することによって、異文化環境
でのものづくり企業活動と技術者に求められる能力を深く理解す
大連 JMS 前にて
ること。
■研修プログラムの概要
研修プログラムは以下の6要素で構成されている。
1. マネジメント学習(経営の基本、技術管理者のビジョン、生産ライン管理者の心得)
2. ものづくり学習(マーケティング / 開発、生産技術、検査技術、ERP システム)
3. 製造体験学習(全製造工程理解、工程の単位作業、セル方式によるモデュール作業)
4. ものづくり経済成長の実際(大連経済技術開発区概観の見学)
5. 報告会(幹部への研修結果プレゼンテーション)
6. 日中歴史探訪(旅順見学)
大連 JMS 有限公司においての計 3.5 日間(36 時間)の中で、これら 1 ~ 4 の要素を効果的に組み合
わせながら現地社員と密接な時間を共有し、全く無駄のない研修内容となった。さらに、大連経
済技術開発区の様々な規模の企業群を概観することで、中国経済成長の原動力を実感した。また、
将来のグローバル人材として、歴史から学ぶことの大切さを知った。
マネジメント学習
グローバル化時代のものづくり技術者に求められる必須能力はコミュニケーション力である。
その本質を知るために、今回の研修では総経理/幹部の講話及び現地スタッフとの意見交換(現地
上級管理スタッフ、日本人技術スタッフ、現地技術スタッフ)を実施した。
20
●経営の基本
本海外研修に入る前に、グローバル人材として最も重要なことは「現地を知ること」であるとい
うことを 15 回の講義の中で理解してきている。それを受けて本研修プログラム筆頭の幹部講話は
極めて印象深く有効なものになった。中国におけるコミュニケーショ
ンの基本として以下の 3 点について分かり易い説明があった。自己人
/外人による社会的区別、さらに農民/非農民による経済生活的区別
を理解すること。中国が日本を見る目を理解すること。社会システム
を理解すること。さらに、製造ものづくりの心得として、節約の五箇
条、人間尊重、三現主義、4S、について具体的な事例の紹介があった。
●技術管理者
製品組み立ての説明
「育てる環境」を作ることが最大の仕事であり、現地社員から信頼を得るためには「何か武器或
いは強味を持つ」ことが重要であると力説された。
●生産ライン管理者
ほぼ全員が女性作業員であり、また、監督管理者も現地女性である。
「いかに分かり易く」伝え
るか、自信をもって的確な言葉を使うことの重要性を理解した。
ものづくり学習
●マーケティング/開発
日本国内向けと現地向けニーズの違いをしっかりと認識すること。
医療現場システム及び環境、医療従事者のスキルには国ごとに大きな
違いがあり、さらには、医療市場の階層構造との整合性、また、医療行
政の関わりなど、考慮しなくてはいけないファクターは多岐にわたる。
機器そのものの差別化、サポート体制の差別化のポイントがそこにあ
ることを実感できた。
●生産技術
機械メンテナンス説明
医療精密機器事業ならではの一環品質保証体制のためのライン構築。
加工原材料製造から部品成型、組み立て、完成品梱包、滅菌までのフル自社生産、全行程をじっ
くりと見学。精密部品の成型装置の自動化と組立て行程の自動化によるシステム指向及びその自
動化率(対人件費)は生産コストの最適化を図る基本要素であることを学ぶ。製造装置の一部も自
社開発であり、特に制御工学の応用領域の広さをあらためて知った。
●検査技術
実際のライン内数工程での品質検査及びオフラインでの品質検査機器の稼働により、その原理
とデータの読み取り方を実習。さらに加速試験の考え方を学んだ。
●ERPシステム
かなり初期段階に導入した ERP システムは、製造ラインの変化
に対応させながら、拡張させてきている。製造工程の自動化が進
む中、ERP システムもフレキシブルに対応させて行かなくてはい
けない。このことを肌で感じ取ることができた。
輸液セット組み立て体験
製造体験学習
手作業による単一組み立て工程及び梱包工程をそれぞれ1ロット体験実習。練習を 2 クール実施し
た後、
タイムトライアルの形で実際のライン横にサブラインを用意いただき、
実製品の作業を行った。
また、セル方式によるモデュール組立てを同様にサブラインで実際に行い、単一工程を組み合わ
21
せたパイプライン処理との違いも体験。引率者である濱﨑も研修生と並んで体験学習をした。
ものづくり経済成長の実際
キャノン、マブチ、日本電産など大連経済技術開発区への早期進出企業のエリアは、時の経過
の結果、居住区が隣接して建設されており、さらに、リョービ、セイコー他、中規模日系工場団
地が周囲に小刻みに発展している。後発組のインテルは広大な敷地を外周で展開し、フォルクス
ワーゲン、日産など自動車メーカの大型施設は、輸送面から港湾部に広大なエリアを確保している。
報告会
最終日に研修生は1人 20 分のプレゼンテーション(研修結
果報告)を幹部に対して行った。3.5 日間の短い研修であった
が、それぞれの研修内容が極めて濃く、また、効果的に組み
合わされていたことで、それぞれ得たものは大きかったよう
である。彼らが「明らかに成長したことがわかる」と幹部か
らも高い評価をいただいた。
研修報告会
最後に濱﨑より総括として、
「グローバル化時代のものづく
り技術者像プログラム」における現地研修の目的に対して、以下のような十二分な成果が得られた
ことを述べさせていただいた。
1. 文化には多様性があることを肌で感じ取ることができた。
2. 自分(自国)を知り、相手(他国)を知ることで初めて交流は可能になることを理解できた。
3. 技術は客観的な事実に基づいて伝えなくてはならないことを再認識できた。
以上、初日に大連 JMS 有限公司、会
時 間
議室スクリーンに映し出された藤井総経
1日目 午前
理の「熱烈歓迎」の文字に始まった研修
1日目 午後
プログラムは、最終日に我々から「熱烈
2日目 午前
感謝」の文字で応えさせていただき、無
2日目 午後
事終了した。
午後一番の出発では、寒い中、旅順に
3日目 午前
区 分
内 容
マネジメント学習
幹部の講話と意見交換
ものづくり学習
商品知識習得
製造体験学習
全製造工程の理解
ものづくり学習
ライン内検査技術実習
ものづくり学習
マーケティング 中国国内市場調査と販売展開
マネジメント学習
技術管理者のビジョン 海外で働く事
製造体験学習
製造機器メンテナンス作業の理解
マネジメント学習
大卒新人技術者との意見交換
製造体験学習
単一組立工程、梱包工程の実習
ものづくり学習
ERP システム学習 ものづくり学習
品質検査技術学習
製造体験学習
セル方式モデュール組立工程の実習
ものづくり経 済成長の実際
大連経済技術開発区概観の見学
向かう迎えのバスが社屋外の道路に出て
3日目 午後
見えなくなるまで手を振っておられた幹
4日目 午前
報告会
幹部への研修結果プレゼンテーション
部管理職の方々にあらためて感謝した。
4日目 午後
日中歴史探訪
旅順見学
日中歴史探訪
大連市のある遼東半島はあまりにも日中の関わりが深い場所である。研修生にはあらかじめ、
歴史的な背景(領有権も絡んで幾度かの大戦の舞台になった場所であること。その結果、歴史的に
も日中双方に複雑な思いはあるが、産業界では経済的、技術的なプラスの関係が多方面にあること)
を予習させておいた。太平洋戦争ですら知らない我々教職員及び学生にとって、日露戦争、旅順
での激戦は遠い過去のことである。しかし、203 高地の傾斜面を登りながら、塹壕跡と感じられる
窪みで姿勢を低くしてみた時、
震えるような初めての感覚が体に起こったことは事実である。また、
改革開放経済の中、中国の人々は犠牲者でしかない日露戦争の日本軍・ロシア軍の戦死者を慰霊
する白玉山塔が、旅順市民の憩いの場所として親しまれている様子を見て、多様性を知る真のグ
ローバル人材の意味をあらためて理解できたことと思う。
22
4. 全体のアンケー ト 結 果
■グローバル化時代のものづくり技術者像に関するアンケート結果(受講者)
性 別
申込方法 所 属
16%
20%
84%
■
男
■
女
32%
68%
■
社会人
■
大学生
■ 所属する大学・
企業からの推薦
■
80%
TOEIC
海外勤務(社会人のみ)
56%
25%
■
0 ~ 399 点
■
400 ~ 599 点
■
600 点以上
29%
71%
■
携わっている
■
携わっていない
全て出席
3分の2以上出席
36%
半分以上出席
3分の1以上出席
52%
3分の1未満出席
出 席 4% 0%
8%
19%
個人で申し込み
<プログラム内容の理解度・満足度等>
内容は理解できましたか。
16%
0% 0%
36%
48%
仕事に役立ちましたか。
(社会人のみ回答) 内容は満足できましたか。
0%
8% 0% 0%
14%
■
よく理解できた
■
大変満足できた
■
理解できた
■
満足できた
■
ふつう
■
ふつう
■
あまり理解できなかった
■
あまり満足できなかった
■
理解できなかった
■
満足できなかった
52%
40%
14%
<海外勤務に対する意識について>
大学生と社会人が一緒に講義を受
講することで、学習効果が高まり
ましたか。
海外企業との取引など、海外と関
わりのある仕事に携わりたい気持
ちが強くなりましたか。
25%
62%
4%
■
強くそう思う
■
そう思う
■
ふつう
■
あまりそう思わない
■
そう思わない
29%
22%
17%
強くそう思う
■
そう思う
■
ふつう
■
あまりそう思わない
■
そう思わない
35%
42%
ホームページ
■
広報チラシ
■
新聞記事
■
知人の紹介
■
その他
■
強くそう思う
■
そう思う
■
ふつう
■
あまりそう思わない
■
そう思わない
来年度も、このプログラムが実施される場
合、同僚・友人等に推奨したいと思いますか。
0%
92%
23
39%
17%
役立たなかった
8%
■
あまり役立たなかった
■
17%
■
<プログラムの周知方法、実施時期について> このプログラムをどこでお知りに 実施時期、時間について意見をお
なりましたか。
聞かせください。
33%
ふつう
■
9% 0%
25%
役立った
■
将来、機会があれば海外に赴任し
て働きたいと思いますか。
0%
57%
0%
大変役立った
■
<プログラムの学習効果>
13% 0% 0%
43%
■
■
今の時期、
時間でよい
■
別の時期、
時間がよい
46%
37%
■
強くそう思う
■
そう思う
■
ふつう
■
あまりそう思わない
いそう思わない
■
<自分にとって最もよかった講義とその理由>
異文化コミュニケーション全般
海外ものづくり事情(経営分野)
・単純に面白かった。
(社会人)
・分かり易い講義であった。
(大学生)
・違って当然ということは目からうろこであった。
(社会人)
海外ものづくり事情(建築分野)
・一番具体的な内容であった。
(社会人)
英語圏における異文化コミュニケーション 海外ものづくり事情(応用科学分野)
・海外の大学の講義など興味深いことが多数あった。
・為になるものだった。異文化コミュニケーションにおいて
(大学生)
相手への理解の必要性を最も感じた。
(大学生)
海外ものづくり事情(コンピュータシステム分野)
・スピーチという視点からコミュニケーションの方法論を学
ぶことができ、教わった内容は実務 ( プレゼンテーション ・海外のニーズが分かった。
(大学生)
など ) で活用していく。説得するための論理構想。
(社会人) 海外文化事情 ものづくりにおける海外事業展開と技術移転 ・企業経営を実際行い、苦労した点、良かった点、キーにな
る点など大変参考になった。
(社会人)
海外ものづくり事情(自動車分野)
・いろんな人の考えが聞けた。
(社会人)
・日本について興味が出た。実際に他国籍の人と議論できて
よかった。
(大学生)
まとめ ・同じ状況の顧客と話題作りが出来た。
(社会人)
海外ものづくり事情(マルチメディア機器開発分野)
・グループワークがとても良い練習になった。
(大学生)
海外ものづくり事情(マルチメディア機器商品企画・戦略分野)
・グループ内での議論を介してアイデアや展望を考えること
によって、他人の意見と自分の意見の違いを知ることの面
白さや、
新たなアイデアを生み出すことがためになった。
(大
学生)
・学んだことを振り返ることでより考えが深まった。社会人
も含めてディスカッションをするというのは、良い経験に
なったと思う。
(大学生)
その他の回答 ・グループワークがあった講義:実際に仕事をされている社
会人の意見も聞くことができたため。
(大学生)
・社会人の方とのグループを組んで意見交換をした講義:自
分では考えつかなかった意見を聞けたため。
(大学生)
■グローバル化時代のものづくり技術者像に関するアンケート結果(受講者が所属する企業等)
<本プログラムについて>
内容は目的の人材育成に役に立ち
ますか。
0% 0% 0%
17%
83%
社員の評価はいかがでしたか。
0% 0%
■
強くそう思う
■
そう思う
■
ふつう
■
あまりそう思わない
■
そう思わない
33%
67%
来年度も、このプログラムが実施される場
合、同僚・友人等に推奨したいと思いますか。
0% 0% 0%
■
大変満足できた
■
満足できた
■
ふつう
■
あまり満足できなかった
33%
67%
■
強くそう思う
■
そう思う
■
ふつう
■
あまりそう思わない
■
そう思わない
≪ 考 察 ≫
実施形式の観点からは、アンケートの設問「大学生と社会人が一緒に講義を受講することで、学習効果が高ま
りましたか。
」に対して、
「強くそう思う(25%)」
「そう思う(62%)」と回答しており、
「良かった講義とその理由」
からも、大学生と社会人の討論や意見交換が受講生にとって非常に有意義であったと判断できる。このことを踏
まえ、次年度も討論や意見交換の場を組込みながら、実施形式に工夫を凝らす予定である。
また、
「来年度も、このプログラムが実施される場合、同僚・友人等に推奨したいと思いますか。」に対して、
「強
くそう思う(37%)
」
「そう思う(46%)
」
、
「仕事に役立ちましたか。(社会人のみ回答)」に対して、「強くそう思
う(43%)
」
「そう思う(29%)
」と回答しており、一定の評価は得ていると言える。
しかしながら、社会人から「
(仕事に)あまり役に立たなかった(14%)」との回答に加え、受講生からの改善
の希望等もあることから、見直し及び修正等を行い、満足度の向上を図る予定である。
24
5. 各講義のアンケ ー ト 結 果
■グローバル化時代のものづくり技術者像に関するアンケート結果(受講者)
内容は理解できましたか。
内容は満足できましたか。 仕事に役立ちましたか。
(社会人のみ回答)
大変満足できた
満足できた
ふつう
■ あまり満足できなかった
■ 満足できなかった
よく理解できた
■ 理解できた
■ ふつう
■ あまり理解できなかった
■ 理解できなかった
■
大変役立った
役立った
ふつう
■ あまり役立たなかった
■ 役立たなかった
■
■
■
■
■
■
第2回
0% 0%0%
4% 0%0%
10% 0% 10%
10%
26%
26%
70%
74%
第3回
7%
0%0%
11% 0%0%
48%
33% 56%
45%
第4回
8% 0%11%
第5回
4%
4%
50%
0%
46%
37%
25%
8% 0%
4%
3%
37%
17%
25%
50%
41%
第6回
0% 0%
0%0%
0%
4%
7%
21%
29% 57%
42% 42%
68%
16%
第7回
0% 0%
47%
46%
・日本と欧米のスピーチの違い、これ
は普段学ぶことのない内容であり、
このことについて知れたことはきっ
と仕事を始めた際に役立つと思う。
25%
15%
59%
7%
0%0%
13% 0%
27%
33%
14%
8% 0%
19%
31%
・人種間の文化や価値観の違いについ
て改めて考えさせられた。
50%
0%
14%
36%
0% 0%0%
33%
50%
67%
第8回
0% 0%
15%
44%
41%
第9回
20%
16%
20% 24%
13% 0%
12%
56%
22%
45%
0%0%
60%
25
22%
41% 52%
0%
4%
11% 0%
3%4% 0%
25%
50%
・普段聞くことのない講義内容であり、
非常に興味を持てた。今後、世界の
見方を変えてみたいと思う。
70%
25% 25%
《受講生の感想》
・コミュニュケーションを理論的に説
明されてとても分かりやすく、新鮮
でした。
・仕事で中国へ行く機会があるため、
とても参考になりました。
・今回は中国でも農村部の話であった
が、都市部の話も聞けたらいいなと
思った。
・私自身も海外業務で現地の方への教
育で大変苦労したので、共感できる
部分も多く勉強になりました。
・技術移転をする際には他国の言語の
みではなく、宗教観や倫理観、文化
の違いなどについても理解する必要
があることが分かった。
・実体験に基づいた説得力のある内容
でありとても参考になった。
・中国での経験から外国で働くことの
注意点や外国人から学ぶべきことが
分かり、これからの生活に役立てる
ことができると思った。
・マーケティングで重要な分析につい
て詳しく話を聞くことができいい知
識になったと思う。
・マーケティングやグローバル展開に
おいて重要な事柄を分かりやすく説
明されていたので良く理解すること
ができました。
・グループディスカッションで普段話
をしない業界、学生との討論ができ、
とても良い刺激になりました。
・SWOT 分析を実際にやってみるなど
の体験ができて良かった。
・ものづくりを経営的な視点から考え
る事の重要性が理解できてよかっ
た。
・具体的な企業の例をあげて、その経
営の型を学ぶことができたのでわか
りやすかった。
内容は理解できましたか。
内容は満足できましたか。 仕事に役立ちましたか。
(社会人のみ回答)
大変満足できた
満足できた
ふつう
■ あまり満足できなかった
■ 満足できなかった
よく理解できた
■ 理解できた
■ ふつう
■ あまり理解できなかった
■ 理解できなかった
■
第
回
10
■
■
■
■
■
12% 0% 0%
0% 0%
20%
36% 52%
36%
第
回
11
4%
32%
第
回
第
回
13
18% 28%
25%
25%
13% 0% 12%
25%
48%
0%0%
0%0%
18% 23%
第
0%0%
14%
45%
回
45%
9%
57%
5% 0%
41%
50%
14% 0% 15%
23% 32%
25%
50%
18% 30%
63%
41%
62%
13% 0% 12%
4% 0%
59%
14
13%
28%
33%
14%
44%
4%
32%
12
13% 0% 12%
4%
4% 0%0%
大変役立った
役立った
ふつう
■ あまり役立たなかった
■ 役立たなかった
■
45%
14%
14%
15%
43%
14%
第
回
15
4% 0%0%
28%
68%
4% 0%0%
32%
64%
《受講生の感想》
・実際の海外の経験の話と合わせて、
建設分野の話を聞くことができたの
で分かりやすかった
・自分とは違う分野で、海外で仕事を
することについて視野が広がった。
・内容的には興味深いものであったが、
これから留学を目指す若い学生等に
有用な講義であったと思った。
・日本の大学と大きく違っており、グ
ローバルとは何かと考えた。
・自社でも、国内生産より海外生産量
が今後は増える見通しであるので、
その背景を考えながら、イメージす
ることができました。
・海外生産についての理解が深まりま
した。ことが分かった。
・今回は海外といったくくりだけでは
なく現在の日本国内の職場(現場)で
も生かせる講義内容だと思った。
・海外事業展開するにあたっての具体
的な活動や考え方を初めて聞くこと
ができよい勉強になりました。
・諸外国と日本の文化の違い、その違
いから留意すべき点など議論を介し
て学ぶことができた。
・文化の違いの情報交換が出来て良
かった。
0%0%
29%
43%
28%
・今まで考えてこなかったグローバル
人材について考えることができ、理
解が深まった。
・グループ内での議論を重ねて、グロー
バル人材とは何かという重要なテー
マを考えたことは、新たなグローバ
ル人材を知る上でもためになった。
広島県補助事業 平成26年度大学連携による新たな教育プログラム報告書
2015 年
(平成27年)3 月 31日
編集・発行
広島工業大学 学務部(教務担当)
広島市佐伯区三宅 2-1-1
E-mail
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広
島
広
県
工
島
立
業
(代表校)
広
大
大
島
学
学
大
学
広 島 国 際 学 院 大 学