欧州経済社会評議会(EESC)インターンシップ報告 国際基督教大学行政学研究科 博士前期課程2年 佐藤亜紀子 私は、2006 年 9 月 18 日から 12 月 15 日までの 3 ヶ月間、ブリュッセルの欧州経済社 会評議会にてインターンシップの機会を頂きました。現在、私は修士課程で、グローバ ル市民社会の形成過程を研究テーマとしており、 「国境を越える市民社会」の利害関心、 EUIJ 合意形成過程、そしてその役割と影響力を EU 市民社会の実際の経験から学びたく、 からの奨学金をいただき、今回のインターンシップをさせて頂きました。 欧州経済社会評議会(以下:EESC)は、EU 域内の経済、社会問題に関する政治過程 に市民社会の利害関心を反映させるための公式な機関として各国の代表から成る評議 員によって構成されています1。各国から選出された評議員は、それぞれ、雇用者、労 働者、その他の利益団体を代表していますが、同時に、課題別に設けられた各部門に所 属することになります。私が配属されたのは、その中の対外関係部門(REX 部門)で した。 EU 域外の国との関係全般を担当する対外関係部門では、総勢 14 名の事務官が評議員 の活動を支えています。私のスーパーバイザーのロイック・ディファイエ氏は、バルカ ン半島および日本の担当官で、インターン生としての私の研修内容は主に、1)欧日関 係情報収集、2)アジア諸国および ACP(アフリカ・カリブ・太平洋)諸国の関連情報 収集、3)テーマ課題のリサーチによる REX 部門事務官への情報提供、4)REX 部門全 体の補助としての日常業務補佐、でした。1)の欧日関係情報収集に関しては、EESC 議長の日本訪問に向けた、訪問機関先の準備資料や、安倍新政権に関する資料作成、ま た、ブリュッセルで開かれる日本関係のセミナーへの参加と情報収集、2)のアジアお よび ACP 諸国関連では、EU−インドネシア会議、EU−アフリカ会議などで、市民社会 関連事項の会議メモ作成、3)のテーマ課題のリサーチでは、他の研修生とともに、EU の対外関係における人権と民主主義促進動向の現状と、日本、中国、北米、ロシアなど の国々と第 3 国との関係における同様の動きについての比較調査、4)の日常業務補佐 に関しては、全評議員が一堂に会する「総会」 、および対外関係部門に配属されている 評議員の「対外関係部会」の準備等を中心に行いました。 EU 機関におけるインターンの位置付けとしては、 若き優秀な人材に EU 機関での様々 な研鑽の機会を提供するという人材育成的側面が強いように見受けられ、よって、配属 先での業務とは別に様々な研修機会を得ることができます。たとえば、我々インターン 生が積極的に希望を出して、NATO 本部、トルコやクロアチア、アフリカ連合(AU) といった在ブリュッセルの各国代表部、パリの OECD および UNESCO 本部、フランス 経済社会評議会、また、オランダ・ハーグの旧ユーゴ国際刑事裁判所 (ICTY) および 欧州司法協力組織 (Eurojust)といった EU 関連機関、国際機関の数々を訪問しました。 1 EESC の概要については、http://www.eesc.europa.eu/index_en.asp 参照。 また、他の欧州機関のインターン生もあわせて 1000 名ほどがブリュッセルにおり、彼 らとの様々な交流を通じて、他の機関の役割についても多くの情報交換を行うことがで きました。 3 ヶ月の短期インターンでしたが、様々な学びを得た大変充実したものでした。 特に、 文献だけではなかなか想像しづらい実際の EU のダイナミズムを肌で感じられたことが 大変印象的です。EU の中心であるブリュッセルに身をおくことが出来て初めて、日々 変化する情勢、そしてそれに対応するダイナミズム、いわば「動き続ける EU」といっ た点を感じることが出来ました。また、EU 内の多様性に改めて目を開かされるともに、 その中での公式・非公式の合意形成がはかられ、結果として意見が収斂されていくプロ セスが、大変印象深かったことがあげられます。さらには、EU 官僚の優秀さに多くの 刺激を受けました。私のスーパーバイザーであったロイック氏および対外関係部門部長 の効率の高い仕事振りから学ばせていただくことが大変多くありました。そして、各国 からのインターン生との交流・討論も、大変有意義であり、多くの示唆を得ることがで きました。 現在私は修士論文を執筆中ですが、経済社会評議会でのインターンシップを通じて得 られた知見の数々が、自身の研究に大きく役立っていると日々実感しています。これも ひとえに今回、このインターンシップの機会と、奨学金を与えてくださった EUIJ 及び 関係諸機関の皆様のおかげと、感謝しております。今後とも、今回の大変貴重な経験を 生かしていくべく、研鑽を重ねていきたいと考えております。
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