会長就任挨拶 コーポレートガバナンス・コード原案の 策定について

ISSN 0287-9964
通巻第817号 平成27年4月20日発行(毎月1回20日発行)
2015.4
金融
会長就任挨拶
全国銀行協会会長 佐 藤 康 博
コーポレートガバナンス・コード原案の
策定について
金融庁 油 布 志 行
金融庁 中 野 常 道
「コーポレート・ガバナンスに関する法制
度の近時の動向~改正会社法施行規則を
踏まえた金融機関の実務対応を中心に~」
アンダーソン・毛利・友常法律事務所
塚 本 英 巨
金融機関におけるマイナンバー対応
野村総合研究所 岩 崎 千 恵
今通常国会に提出されている金融関連法
案(その2)
4
金融
会長就任挨拶
no.
817
2015
一般社団法人全国銀行協会会長 佐 藤 康 博   3
コーポレートガバナンス・コード原案の策定について
金融庁総務企画局企業開示課長 油 布 志 行 金融庁総務企画局企業開示課専門官 中 野 常 道   9
「コーポレート・ガバナンスに関する法制度の近時の動向
~改正会社法施行規則を踏まえた金融機関の実務対応を中心に~」
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー弁護士 塚 本 英 巨 16
金融機関におけるマイナンバー対応
株式会社野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室上級研究員 岩 崎 千 恵 24
今通常国会に提出されている金融関連法案(その2)
32
【全銀協資料】国税の預金口座振替に係る手数料について
39
【全銀協会長コメント】預金保険料率の変更について
40
内外経済日誌/2015年2月中旬-2015年3月中旬 41
銀行図書館の受入新刊書/2015年2月中 50
銀行定期刊行物の論文・記事 53
会員紹介(第25回) 54
金融資料/2015年2月中旬-2015年3月中旬
国 内
[政治・経済]
財務省および独立行政法人造幣局、ラオス銀行から記念銀貨幣の製造の受注を公表
44
[金 融]
金融庁、平成26年改正保険業法(2年以内施行)に係る政府令・監督指針案を公表
44
金融庁、「主要行等向けの総合的な監督指針」、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)を
公表
金融庁、りそなホールディングスの経営健全化計画の変更計画を公表
45
45
金融審議会、第34回総会・第22回金融分科会合同会合を開催/金融グループを巡る制度のあり方に関する検討を
諮問
45
全銀協、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)による市中協議文書「トレーディング勘定の抜本的見直し:検討中の
論点について」に対するコメントを提出
46
全銀協、企業会計基準委員会による実務対応報告公開草案第44号(実務対応報告第18号の改正案)「連結財務諸表
作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い(案)」に対する意見を提出
46
全銀協、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)による「重要インフラにおける情報セキュリティ確保に係る
『安全基準等』策定指針(第4版)(案)」に対する意見を提出
47
全銀協、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)による市中協議文書「安定調達比率の開示基準」に対するコメントを
提出
全銀協、外貨建て金利スワップ取引等の取扱いに係る制度要綱に対する意見等を提出
47
48
全銀協、「『主要行等向けの総合的な監督指針』及び『金融検査マニュアル』等の一部改正(案)」に対する意見を
提出
48
海 外
ユーロ圏財務相会合、ギリシャに対する金融支援の延長等に関する声明を公表
48
欧州銀行監督機構(EBA)、健全な報酬方針および開示に関するガイドラインに係る市中協議文書を公表
49
統 計 表
Kin’yu(ISSN 0287-9964)
本文用紙は再生紙を使用しています。
S1
©2015 by Japanese Bankers Association
〔全銀協ホームページ http://www.zenginkyo.or.jp〕
コーポレートガバナンス・コード原案の策定について
金融庁総務企画局企業開示課長 油 布 志 行
金融庁総務企画局企業開示課専門官 中 野 常 道
Ⅰ.策定の経緯等
Ⅱ.コーポレートガバナンス・コード原案の目的・
スタンス
Ⅲ.「プリンシプルベース・アプローチ」および「コ
ンプライ・オア・エクスプレイン」
Ⅰ
Ⅳ.本コード(原案)の構成と概要
Ⅴ.本コード(原案)の適用
~」(以下「本コード(原案)」という)のパ
策定の経緯等
ブリック・コメント案を取りまとめ1、寄せ
られた意見の内容等を踏まえて、平成27年3
平成26年6月に閣議決定された「
『日本再
月5日に本コード(原案)を最終確定させた。
興戦略』改訂2014」において、いわば一丁目
本コード(原案)は、今後、東京証券取引
一番地の施策として「コーポレートガバナン
所においてコーポレートガバナンス・コード
スの強化」が取り上げられ、上場会社に適用
として制定されることが予定されており、併
される
「コーポレートガバナンス・コード」を、
せて、これに関連する上場規則等の改正がな
本年の株主総会シーズンに間に合うように策
されることが見込まれている。
定することが明記された。
本コード(原案)は、実効的なコーポレー
これを受けて、平成26年8月、金融庁およ
トガバナンスの実現を図る上で、極めて大き
び東京証券取引所を共同事務局とする「コー
な意義を有するものと考えられるが、後述す
ポレートガバナンス・コードの策定に関する
るとおり、プリンシプルベース・アプローチ
有識者会議」
(座長・池尾和人慶應義塾大学
やコンプライ・オア・エクスプレインなど、
経済学部教授。以下「本有識者会議」という)
我が国ではいまだ馴染みの薄い枠組みを採用
が設置された。本有識者会議は、計8回にわ
している面もあり、その適用に当たっては、
たる議論を経て、同年12月12日に「コーポレ
本コード(原案)の趣旨・精神について幅広
ートガバナンス・コード原案~会社の持続的
い関係者からの理解をいただくことが肝要で
な成長と中長期的な企業価値の向上のために
ある。
1 当該パブリック・コメント案は和英両文により公表され、合計121の個人・団体(和文が80、英文が41)から
意見が寄せられたが、その約3分の2が、本コード(原案)の策定に賛成・歓迎の意を明らかにしている意
見であった。なお、コード策定そのものに対する反対の意を明らかにしているものは数件、その他の意見(コ
ード策定へのスタンスを示さずにコードの内容について確認を求めるものや、コードの将来的な見直しにつ
いてコメントするもの等)は約3分の1であった。
金 融 2015. 4
9
「コーポレート・ガバナンスに関する法制度の近時の動向
~改正会社法施行規則を踏まえた金融機関の実務対応を中心に~」
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー弁護士1 塚 本 英 巨
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.総論―会社法施行規則の改正の3月決算の会
社における適用関係
Ⅰ
はじめに
Ⅲ.平成27年3月期の事業報告及び定時株主総
会において対応を要する改正項目
Ⅳ.平成28年3月期の事業報告及び定時株主総
会において対応を要する改正項目
Ⅱ
総論―会社法施行規則の改正の3
月決算の会社における適用関係
昨年6月に成立した「会社法の一部を改正
改正省令の下では、特に、株主総会参考書
する法律」
(平成26年法律第90号。以下「改
類の記載内容及び事業報告の記載内容が改正
正法」
という。
)
及び本年2月に公布された「会
対象となっている。
社法施行規則等の一部を改正する省令」(平
株主総会参考書類の記載内容の改正につい
成27年法務省令第6号。以下「改正省令」と
て、経過措置が設けられており、施行日であ
いう。
)が、いよいよ本年5月1日に施行さ
る本年5月1日より前に「招集の手続が開始
れる。
された株主総会」であれば、基本的に、その株
改正法を踏まえた金融機関における実務対
主総会参考書類の記載には改正前の規定が適
応について、本誌810号及び811号において解
用されるとされている(改正省令附則2条5
説したが、本稿では、改正省令における会社
項。なお、同条2項~4項において別途の経
法施行規則の改正内容を踏まえた金融機関の
過措置が設けられている改正項目も一部ある
実務対応を中心に、コーポレート・ガバナン
が、本稿では割愛する。)。株主総会の「招集
スに関する法制度の近時の動向について解説
の手続が開始された」とは、株主総会参考書
する。
類の記載事項を含めて会社法298条1項各号
なお、以下において、条文番号は、特に断
に掲げる事項が取締役会の決議によって決定
らない限り、改正法及び改正省令による改正
2
された時点を指すと解されている 。3月決
後のものである。また、文中において意見に
算の会社においてそのような決定がされるの
わたる部分は、筆者の私見である。
は、通常、5月中である。したがって、本年
6月開催の定時株主総会の株主総会参考書類
の記載内容について、上記の経過措置の適用
1 前法務省民事局付
2 坂本三郎=堀越健二=辰巳郁=渡辺邦広「会社法施行規則等の一部を改正する省令の解説〔Ⅱ〕
」旬刊商事法
務2061号18頁~ 19頁(平成27年)
16
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金融機関におけるマイナンバー対応
株式会社野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室上級研究員
Ⅰ.「あなたにも、マイナンバー。はじまります。」
Ⅱ.マイナンバー制度の目的
Ⅲ.マイナンバー制度の概要
Ⅳ.民間事業者に求められる対応
Ⅰ
「あなたにも、マイナンバー。は
じまります。」
岩 崎 千 恵
Ⅴ.金融機関に求められる対応
Ⅵ.制度対応の流れ
Ⅶ.個人番号取得に係る留意点
Ⅷ.実務への対応に向けて
図表1 マイナンバー啓蒙ポスター
マイナンバー制度の政府広報が本格的に始
まって1カ月余りが経った。人気女優とマイ
ナンバーキャラクター「マイナちゃん」によ
るテレビCMをはじめ、新聞等の広告をご覧
になられた方も多くいらっしゃることだろ
う。(図表1:マイナンバー啓発ポスター)
番号の通知開始まで6カ月を切り、利用開
始までは10カ月を切った。いよいよ秒読み段
階に入ったと言えよう。
個人番号(マイナンバー)は本年10月5日
時点の住所情報に基づいて作成され、「通知
カード」により地方自治体から通知される予
定である。早い地域では、10月半ばには通知
カードが届く。2016年1月からは番号の利用
が開始され、申請により個人番号カード(写
真付のICカード)の発行も始まる。(図表2:
想定対応スケジュール)
金融機関は民間事業者としての対応のほ
か、金融業務における対応も必要となる。本
(出所)内閣官房 社会保障・税番号制度
ホームページ
Ⅱ
マイナンバー制度の目的
稿ではマイナンバー制度の概要と民間事業者
2013年5月、「行政手続における特定の個
に求められる対応、および主に銀行における
人を識別するための番号の利用等に関する法
個人番号対応の概要について述べる。
律」(「番号法」または「マイナンバー法」、
以下、番号法)が成立した。法律名のとおり、
「マイナンバー制度」は、番号を利用するこ
24
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