経済広報センター活動報告 経済広報センター活動報告 これからの 戦略イノベーションとガバナンス りといった 「近くて 便利」が、公益的に も活用されている ビジネスの紹介が あ っ た。 ま た、 コ ~欧州ビジネススクール教授招聘プログラム~ マツ粟津工場では、 2014年 竣 工 の 広 々 とした組立工場で、 経済広報センターでは、7月13日~ 17日、欧州のビジネススクール教授を招聘し、日本経済・企業に関 大型建機の最新鋭 製 造 ラ イ ン や、 省 する幅広い理解を深めてもらうことを目的に「欧州ビジネススクール教授招聘プログラム」 を実施した。 今回来日したのは、英国・シティ大学Cassビジネススクールのアンドレ・スパイサー教授、フランス・ HEC経営大学院のエレーヌ・ミュシカス客員教授、フランス・ESSECビジネススクールのマリー =ロー 7/15 コマツ粟津工場・こまつ の杜見学と金沢探訪 エネ操業に資する 地下水を活用した ル・ジェリック教授。いずれも、組織論、イノベーション、ビジネスモデル開発、コーポレート・ガバナン 冷暖房システムも地下ピットで見学したほか、地元 ションの組み合わせ)を目指すべきかという論点に ス、CSR(企業の社会的責任)などの専門家で、訪日期間中は、これらの分野を中心に企業関係者、研究者、 への「恩返し」として、建機活用による水田整地の省 関し、①欧州では米国流を取り入れつつも、これを 力化や、未利用間伐材チップのバイオマス燃料への 疑問視しマルチステークホルダー志向を見直す動き 活用など、農林業振興への取り組みの紹介があっ もある、②日本ではいずれの方向を目指すのかの分 た。これらは、企業の社会的責任に関する教授陣の 岐点にあり、米国型・欧州型のいずれも目指し得 関心を満たした。 る (コーポレート・ガバナンスコードもいずれの方 政府関係者などと意見交換した。 プログラム前半では日本経済・企業を概観した。 まず慶應大学の竹森俊平教授が、世界経済の中での コーポレート・ガバナンスについては、関芳弘経 向性も許容) 、③技術型とビジネスモデル型のイノ 日本経済の現状と今後について解説した。議論は折 済産業大臣政務官(自由民主党衆議院議員)、東京証 ベーションは二者択一ではなく両立が必要、④技術 しもヤマ場を迎えていたギリシャ債務問題にも及ん 券取引所、東京大学の岩井克人名誉教授との面談に やビジネスモデルのみでなく、製品・サービスのプ だ。また、日本総研の足達英一郎理事、一橋大学の おいて、適用開始間もないコーポレート・ガバナン レゼンテーションの改革がビジネス革新を生む「文 花崎正晴教授から、それぞれ日本企業のCSRと スコードの含意、日本企業のガバナンスの戦後から 化的イノベーション」も重要であり、日本企業には の変遷などに関し説明を受け、意見交換した。ま その潜在力がある、といった、欧州の研究者ならで た、第一生命保険、三菱UFJフィナンシャルグ はの視点からの議論が交わされた。 コーポレート・ガバナンスについて解説を受けた。 また、自ら投資も手掛ける経営コンサルティング会 7/14 富士フイルム 古森重隆会長・CEO(右) 「富士フイルムの経営改革」をテーマに 社であるドリームインキュベータの山川隆義社長 ループから各社の成長戦略とガバナンスにつき説明 と、同社の事業を通して見た日本のビジネス環境や を受け懇談した。 イノベーションなどについて議論した。 招聘教授陣には、5日間という短い滞在期間の 中、各プログラムを通じ、日本企業の様々な側面や 日本企業を取り巻く環境について十分理解しても これらを念頭に、一連の企業訪問を実施した。イ らった。また、日本は企業の戦略やガバナンスにお ノベーション・ビジネスモデル開発面では、富士フ いて米国流の思考や手法、システムに範を取るこ イルムの古森重隆会長から、フィルム事業が先細る とが多く、日本のビジネス環境・風土に照らし、そ 逆境下での事業構造改革の舵取りにつき、経営者自 身の視点からの説明を受けた。デジタル技術やフィ ルムにおける既存技術を活用しての医療機器、医薬 れらをどこまで取り込むかは常に議論のあるところ だが、そうした中、第三の視座を持つ欧州のビジネ 7/14 NTTデータ 岩本敏男社長(中央) イノベーションをテーマに。技術陣からのデモも ス研究者と相互交流を図ることができた点でも、意 7/16 関芳弘 経産大臣政務官 (右より2人目) コーポレート・ガバナンスやイノベーション政策を中心に 品、化粧品など新分野での成功は、同様の変革を迫 て説明を受けた。小売業界ではセブン&アイ・ホー られたコダック社との比較の面でも大いに教授陣の ルディングスから、主にコンビニ事業について、ド 探究意欲をかき立てた。NTTデータでは、岩本 ミナント戦略によるリアル店舗網を基盤としたeコ 最終日のシンポジウムでは、早稲田大学ビジネ ナンスといった経営学的な関心事への回答だけでな 敏男社長から同社のイノベーション戦略の解説を マースの取り込み(商品の支払い・受け取りサービ ススクールの入山章栄准教授のモデレーションの く、日本企業関係者や各界有識者との人脈、日本 受け、また、ウェアラブル端末によるビジネスソ ス)など先進的なビジネスモデル開発の説明を受け もと、「これからのイノベーションとガバナンス」を 製品やサービスの心、日本文化・おもてなしなど、 リューションなどの技術陣からの説明とデモに目を た。 テーマに、プログラムで得られた理解も踏まえ議 見張った。学界からは金沢大学の山崎光悦学長に、 イノベーションを支える産学連携や大学改革につい 18 7/17 シンポジウム「これからのイノベーションとガバナン ス〜欧州研究者の視点」 (左より、入山准教授、ジェリック教授、ミュシカス客員教 授、スパイサー教授) 〔経済広報〕2015年10月号 CSR面では、同じくセブン&アイ・ホールディ 論した。欧州企業や日本企業が米国流 (株主価値志 ングスから、近距離の宅配を通した高齢者の見守 向のガバナンスとビジネスモデル中心のイノベー 義深いプログラムとなった。さらに、滞在中に教授 陣が得たものは、日本企業のイノベーション、ガバ フェース・ツー・フェースでしか得難い多様な日本 「体験」でもあった。 k (文責:国際広報部主任研究員 田中 勲) 2015年10月号〔経済広報〕 19
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