軽油価格の高騰と運賃転嫁に関する調査 (平成25

平成25年4月10日
軽油価格の高騰と運賃転嫁に関する調査
(平成25年3月調査結果)
公益社団法人全日本トラック協会
【概 要】
イラン情勢を背景とした原油高騰が続き、原油価格(ドバイ)は 3 月には 1 バレル 105.5 ドル(平
均値)と高止まりしている。そのような状況で、急激に円安が進み、トラック運送事業者が調達する
軽油価格(2 月、消費税抜き)は、1㍑あたり 116.90 円(スタンド)
、116.18 円(カード)、109.98
円(ローリー)となった(全ト協調べ)
。なお、現在も軽油価格は上昇傾向が継続している。
このような中、3 月の調査結果では、軽油の値上がりが「収益の悪化に大きく影響している」とす
るトラック運送事業者の割合は 66.4%となった。また燃油価格の運賃転嫁ができていない事業者は、
87.8%にのぼっていることから、運賃転嫁に関する状況は依然厳しいと推察される。
燃料高騰が高止まりする事業環境において、事業者は「軽油引取税の減税」
(82.6%)
、
「燃油サー
チャージを法制化し、実行性を担保」(61.9%)
、
「燃料費を補填する補助金の創設」(41.5%)、など
を要望する意見が多い。
・軽油価格が高騰し、トラック運送事業者の経営を圧迫する事業環境となっていることから、本調
査は平成 23 年 6 月から定期的に定点調査を実施
・今回の調査時期:平成 25 年 3 月 6 日調査開始、3 月 25 日回答分までを集計
・回
収
数:592 サンプル
※本調査は、アンケート調査画面にアクセスできるウェブサイトのアドレスを電子メールにて送
付し、調査画面にアクセスすることにより回答する方法で調査を実施
1.軽油価格の高騰が収益に与える影響
昨今の軽油価格の高騰が収益の悪化に影響しているかどうかについて、66.4%の回答者が「大きく影
響」していると回答している。
「やや影響している」
(30.9%)を合わせると 97.3%の回答者が「影響を
受けている」と回答している。
図 1 軽油価格の高騰による収益悪化への影響の有無
0%
20%
H23. 6(n=626)
60%
40%
65.5
H23. 9(n=614)
62.9
H23.12(n=583)
60.7
H24. 5(n=826)
80%
31.2
2.3 0.8
35.5
2.9 0.9
29.5
66.4
大きく影響
1.6 1.8
34.0
69.5
H25. 3(n=592)
100%
30.9
やや影響
1
影響していない
1.0
2.7
無回答
2.トラック運送事業の継続
軽油価格の高騰が今後続いた場合、トラック運送事業を継続できるかについては、54.1%の回答者が
「経営努力にも限界があり、将来の事業継続には不安がある」と回答している。
「事業規模の縮小、廃業
まで視野に入れ、検討中である」
(6.6%)と合わせると、全体の 6 割の回答者が、事業継続に困難さを
感じている。
図 2 トラック運送事業の継続
0%
(n=592)
20%
5.6
40%
60%
33.8
80%
100%
54.1
6.6
経営上の創意工夫により、事業経営に取り組む余地は十分にある
厳しい経営状況にあるが、なんとか事業の継続ができる
経営努力にも限界があり、将来の事業継続には不安がある
事業規模の縮小、廃業まで視野に入れ、検討中である
3.軽油価格高騰分の運賃転嫁の有無
主たる荷主との交渉において、軽油価格の高騰分(コスト上昇分)を運賃に転嫁できているかどうか
については、
「全く転嫁できていない」とする回答は全体の 87.8%であった。一方、
「転嫁できている」
とする事業者(
「ほぼ転嫁できている」+「一部転嫁できている」の合計)は、12.2%となっている。な
お、平成 20 年 9 月には、
「転嫁できている」とする事業者は過半数であったが、徐々にそのような回答
は低下している。
図 3 軽油価格高騰分の運賃転嫁の有無
0%
H17.12(n=523) 1.0
H20. 9(n=542) 3.5
20%
60%
40%
23.1
80%
2.9
73.0
47.6
100%
48.5
0.4
H23. 6(n=626) 2.2
H23. 9(n=614) 1.5
24.8
71.4
1.6
24.3
73.0
1.3
H23.12(n=583) 1.4
H24. 5(n=826) 3.4
24.9
72.7
1.0
18.5
78.1
H25. 3(n=592) 0.7 11.5
87.8
ほぼ転嫁できている
一部転嫁できている
全く転嫁できていない
無回答
2
4.運賃転嫁についての割合
軽油価格の高騰分の運賃転嫁について「一部転嫁できている」と回答した者に対して、どのくらい運
賃に転嫁できているかを質問したところ、
「1%以上 20%未満」が 60.0%、
「20%以上 40%未満」が 19.4%
となっており、平成 24 年 5 月調査と顕著な差異はなく、依然として軽油価格の高騰分(コスト上昇分)
の運賃転嫁の割合は相対的に低い状況となっている。
図 4 軽油価格の高騰分(コスト上昇分)について運賃転嫁できた割合
0%
20%
40%
60%
80%
H24. 5
58.0
22.0
H25. 3
60.0
19.4
100%
2.7
15.3 2.0
11.1 8.3
1%以上20%未満
20%以上40%未満
40%以上60%未満
60%以上80%未満
1.1
80%以上100%未満
5.運賃転嫁(値上げ)の内容
運賃転嫁できている事業者を対象に、転嫁できた内容について質問したところ、平成 24 年 5 月調査と
顕著な差異はなく、
「現行の運賃単価自体を値上げした」
(39.9%)
、「現行の運賃とは別途に、サーチャ
ージ(燃料特別付加運賃)を導入した」
(37.5%)とする回答が多くなっている。
図 5 軽油価格の高騰分(コスト上昇分)について運賃転嫁できた内容
0%
20%
(複数回答)
40%
60%
36.5
39.9
現行の運賃単価自体を値上げした
33.1
37.5
現行の運賃とは別途に、サーチャージ
(燃料特別付加運賃)を導入した
荷主に請求する運賃総額に対して、
軽油高騰分(比率)を設定して付加した
8.7
独自の運賃転嫁のルール
(転嫁率、転嫁頻度)を導入した
8.3
9.4
5.5
その他
3
19.3
13.8
H24. 5
H25. 3
6.運賃転嫁に成功した事例
運賃転嫁できている事業者を対象に、運賃転嫁に成功した事例について質問したところ、
「荷主・元請
に理解がある事例」が 52.3%となっており、最も多い。次いで「荷主・元請の社長との信頼関係、現場
担当者とドライバーとの信頼関係が盤石な事例」(27.1%)
、
「特に、高い輸送品質を求める運送の事例」
(21.5%)となっている。
図 6 運賃転嫁に成功した事例
(複数回答)
0%
20%
40%
60%
52.3
荷主・元請に理解がある事例(安全運行に特に配慮)
荷主・元請の社長との信頼関係、現場担当者と
ドライバーとの信頼関係が盤石な事例
27.1
特に、高い輸送品質を求める運送の事例
21.5
突発的な依頼にも迅速かつ、柔軟に対応し運送する事例
20.6
荷主から見ると、長期にわたり運送会社1社専属取引している事例
20.6
17.8
ドライバーの経験、実績など熟練が必要な運送の事例
車両に特殊な装置が必要で、競合他社が
車両を保有していない事例
13.1
特殊な輸送(競走馬、美術品、超大型重量貨物、危険物等)で、
競合他社がいない事例
11.2
特定地域での高い配車能力を持ち、競合他社が少ない事例
9.3
得意とする地域での運送で、競合他社がいない事例
8.4
5.6
わからない
10.3
その他
4
80%
7.運賃値上げにかかる交渉の状況
取引先との交渉の状況について質問したところ、
「交渉したが、
『導入ができない』という結論が出た」
(35.3%)が最も多く、次いで「現在も継続して、交渉している」
(22.1%)となっている
図 7 運賃転嫁に向けた交渉の状況
0%
20%
35.3
全体(n=430)
40%
7.7
80%
60%
22.1
100%
19.8
8.1 7.0
交渉したが、「導入ができない」という結論が出た
交渉し、導入することができた
現在も継続して、交渉している
今後、交渉する予定だ
今後は、交渉する予定はない
その他
8.運賃転嫁対策に関する支援要望
行政やトラック協会への支援の要望については、回答数の多い順に「軽油引取税の減税」
(82.6%)
、
「燃
料サーチャージを法制化し、実効性を担保」
(61.9%)
、
「燃料費を補填する補助金の創設」
(41.5%)、
「燃
料サーチャージ緊急ガイドラインの厳格な運用」
(41.5%)
、
「荷主業界、大手元請運送会社などへ強力な
協力要請」
(41.2%)となっている。
図 8 軽油価格の高騰に伴う支援策の要望について
0%
○燃料価格引下げに関する要望
20%
(複数回答,n=592)
40%
60%
80%
82.6
軽油引取税の減税
41.5
燃料費を補填する補助金の創設
36.0
国の備蓄一時放出、燃料の売り渋り防止等、量的に安定した供給体制の整備
31.1
燃料価格高騰時の「トリガー条項」一時凍結の解除
28.7
石油製品価格の監視強化と不当な価格への指導
13.1
燃料高騰時にも安価な燃料購入を可能とするため、各協同組合による燃料共同購入への助成
○適正取引の実現に向けた要望
61.9
燃料サーチャージを法制化し、実効性を担保
41.5
燃料サーチャージ緊急ガイドラインの厳格な運用(国による事情聴取、立入検査、改善命令、荷主勧告等)
41.2
荷主業界、大手元請運送会社などへ強力な協力要請
38.4
下請法違反、優越的地位の濫用による公正取引委員会(中小企業庁)による強力な指導、罰則の強化
26.8
税制以外の優遇策の拡充
○トラック、設備等の整備に関する支援要望
省エネ機器導入助成事業の拡充、低公害トラック導入助成事業の拡充
12.2
金融支援の拡充(近代化基金融資等による運転資金の融資制度の導入等)
11.6
8.5
燃料供給施設設置助成事業の拡充
7.3
軽油の代替エネルギーとしてのCNG車の導入・利用への助成拡大
大型車両のCNG化の促進、既存CNG車両の改良
1.8
○情報提供に関する要望
原価計算等のコスト把握のためのセミナー、情報提供等
9.8
運賃転嫁交渉の成功事例、交渉方法などのセミナー開催、冊子による情報提供
9.5
○その他の要望
その他
5
100%
3.0