2011.06.02 地球サミット連続セミナー 第1回 地球サミットの 20 年を振り返る-地球サミットって何だろう? UNCSD(国連持続可能な開発会議、Rio+20)に対する日本の市民の課題 原田 泰(参加型環境教育研究会 [email protected]) (自己紹介) 1992 年のリオサミット(UNCED)は、’92 国連ブラジル会議市民連絡会の事務局長として関わった。その 10 年後の ヨハネスブルグサミット(WSSD、2002)ではヨハネスブルグサミット提言フォーラムの環境教育分科会のまと め役を引き受けた。 (はじめに) 主催者より、市民として UNCSD(リオ+20、2012)をどう見るかについて話すように依頼を受けた。 そこで次の内容でお話をしたい。時間の都合で話は短くするので、この資料を参考にして欲しい。 1.国連環境会議の流れ 2.世界の動きと国連環境会議 3.市民参加 4.日本の市民社会の関わり 5.日本の市民社会の課題 UNCSD のロゴマーク 1. 年 1972 1992 2002 2012 国連環境会議の流れ 会議名 国連人間環境会議 国連環境と開発会議 持続可能な開発に関する世界首脳会議 国連持続可能な開発会議 略称 UNCHE UNCED WSSD UNCSD 日本語通用名 ストックホルム会議 リオサミット ヨハネスブルグサミット リオ+20 開催地 ストックホルム リオデジャネイロ ヨハネスブルグ リオデジャネイロ (1)ストックホルム会議(1972 年) 国連レベルでの地球環境問題の取り組みは、公害と資源枯渇が世界中で問題となった 1972 年の国連人間環境会 議(UNCHE)に始まる。この会議では"Only One Earth"(かけがえのない地球)が標語となり、「人間環境宣言」と 「環境国際行動計画」が採択され、地球環境問題に取り組む国連機関として国連環境計画(UNEP)が設立された。 (2)リオ会議(1992 年) ストックホルム会議以降、先進国による環境破壊が激化する一方、途上国における開発と破壊も大きくなり、 1992年のリオ会議では「持続可能な開発」(Sustainable Development)が重要な概念として登場した。リオ会議で は「環境と開発に関するリオ宣言」「森林保全原則」「アジェンダ21」などが採択されたが、先進国と途上国 の対立が明らかになった。 (3)ヨハネスブルグサミット(2002 年) ヨハネスブルグサミットではリオ会議から10年間の進展について、問題意識は正しかったが成果は上がってお らず、世界の環境問題はさらに悪化し危険が迫っていると評価したが、サミット自体目立った成果は得られなか った。先進国間また先進国と途上国との間の対立が解消できず「ヨハネスブルグサミット実行計画」「政治声明」 各国の計画の集成である「約束文書」が採択された (リオ+20 の準備スケジュール) が、数値や時期などの具体的な目標は示されなかっ 2010 た。 5/17-19 第 1 回準備会合(PrepCom1) 2011 (4)リオ+20(2012 年) 1/10-11 第 1 回インターセッショナル会合(ism1) 2009 年 12 月 24 日の国連総会で 2012 年にリオ 3/07-08 第 2 回準備会合(Prepcom2) デジャネイロで地球サミットを開催することが決 5/02-13 国連持続可能な開発委員会(UNCSD) 定した。第 2 回準備会合で会期は 2012 年 6 月 4-6 8/22 非公式コンサルテーション会議(ブラジル政府) 日となった。 10 月-12 月 地域準備会合(regional prep com) 右表は本会議までの準備スケジュールである。 12/15-16 第 2 回インターセッショナル会合(ism2) リオ+20 は名称のとおり 20 年前のリオサミット以降 20 年 2012 の成果と残された課題、そして新たに現れてきた問 3/5-7 第 3 回インターセッショナル会合(ism3) 題を検討して今後の取り組みを決めることを目的 5/28-30 第 3 回準備会合(PrepCom3) としている。 6/4-6 UNCSD 1 (会議の目的) 1.持続可能な開発に関する新たな政治的コミットメントの確立 2.持続可能な開発に関する主要なサミットの成果の実施状況についての進捗と残されたギャップの検討 3.新たに顕在化しつつある課題への挑戦 (テーマ) 1.持続可能な開発と貧困撲滅の文脈におけるグリーン経済 2.持続可能な開発のための制度的な枠組み また最後に「成果文書(outcome document)」を採択することが決まっており、会議の準備と別に成果文書の文 案を作成するプロセスが進められる。 UNCSD 成果文書草案作成のプロセス 2011/11/1 第ゼロ草案文案提出締め切り(各国政府、国連機関、ステイクホルダー) 2012/1 月 3 日間調整会議 2012/2,3,4 月 それぞれ 1 週間の調整会議 ③平行イベント NGO 側でも平行イベントとして"the Peoples Summit for Sustainable Development -Rio+20"(持続可能な開 発のためのピープルズサミット)を企画している。 2.世界の動きと国連環境会議 (1)地球環境問題-持続可能な開発-グリーン経済 過去 3 回の地球サミットでは、その開催に合わせるかのように世界政治経済システムの大きな事件が起こって いる。 ①ストックホルム会議の翌年 1973 年に石油危機が起こり、リオ会議では前年 1991 年にソ連が崩壊した。ヨハネ スブルグサミットに際してはその前年 2001 年にニューヨークで 9.11 事件が起こっている。 ②石油危機は世界中の人々に地球上の資源の有限性を実感させるとともに、世界の政治経済システムにおいて途 上国の主張が無視できなくなったことを明らかにした事件であった。 ③ソ連崩壊は、第 2 次世界大戦後続いてきた自由主義国家群と共産主義国家群の均衡が崩れて、このあとの世界 は政治では自由主義が、経済では資本主義経済システムが支配するようになる。 2001 年 9 月 11 日の事件は、世界の政治経済システムの頂点に立っていたアメリカ合衆国が攻撃を受け、その支 配体制が必ずしも安定していないことを明らかにした。 1970 年代の初頭では地球環境問題が資源と環境の重大問題として取り上げられたが、その後は環境問題は政治 経済問題の一部となり、40 年後のリオ+20 では「グリーン経済」が主要テーマになった。 第 2 次世界大戦の後の世界の政治経済の動きと合わせて簡単な年表にまとめた。 政治 経済 国連会議 そのほかの動き 1940 1945第二次世界大戦終結 1950 1960 1973 1991 2001 1971 世界経済フォーラム 1979 1981 1982 サッチャー就任 レーガン就任 中曽根就任 1972 1992 WTOシアトル会議 2008 世界金融危機 総評結成 1964 英バーミンガム大CCCS 1975 スト権スト 1984-2003 アメリカ、UNESCO脱退 1987 国鉄民営化、総評解散 ソ連崩壊 1999 1950 UNCHE 石油危機 1980 2000 ブレトンウッズ会議 GATT 1954-1962 アルジェリア戦争 1965-1975 ベトナム戦争 1966-1976 文化大革命 1968 パリ5月革命 1970 1990 1944 1948 9.11事件 2010 2 UNCED 2002 WSSD 2012 UNCSD 1995 第4回世界女性会議 2001 第1回世界社会フォーラム (2)国連の重要性の低下 国連は世界の国々の政府の集まりで国際的な調整を行ってきたが、世界的な資本主義システムの力が大きくな るにつれて、政治的な影響力は低下していった。国連の環境関連会議も UNCED(1992)は期待があったが、WWSD (2002)では最初から限界が予想されていた。UNCSD(2012)においては予算面の制約もあってテーマが絞り込まれ 準備作業も縮小されている。NGO に関しても同様である。 3.市民参加 (1)NGO の影響力の拡大 1960 年代から環境問題や開発問題を扱う非政府組織 (NGO)は国家の政策に対する影響力を強めてきたが、1970 年代には国際的な影響力を持つようになり、1992 年のリオ会議では各国の政府代表団への参加や国連の公式会合 での発言ができるようになった。同時に NGO 間の国際連携も強まり、リオ会議では平行イベント「グローバルフ ォーラム」を開催し共同施策「NGO 条約」を締結し、国際的なネットワークができた。 (しかし続かなかったが。 ) (2)政策決定への市民参加 国連会議での市民参加は、1960 年代から進行していた欧米における政策決定に対する市民参加の歴史の反映で ある。開発 NGO は途上国での開発支援においても住民参加の手法を導入した。 日本の場合は 1970 年代までは行政、 産業界と市民運動との対立が強く、その後市民の政策決定への参加は少しずつ進んでいるが、現在でも十分機能 しているとは言えない。 (3)「市民」の枠の拡大 1992 年のリオ会議で採択されたアジェンダ 21 では NGO を含めて9つの社会セクタ ーを主要グループ(メジャーグループ、major group)として参加と役割を明記し、リオ会 議以降の国連の主要な会議では主要グループの参加が原則となった。これらはそれぞれ が固有の権利を持った対等なグループとして認められている。 この区分は当然ながら国連における政治的な関係を反映したものであり、現場の社会 状況とは異なる場合があるとともに、各主体の働きかけにより変わりうるものである。 日本ではこのようなセクターで社会が構成されているという認識は全くないと言ってい いと思う。 (主要グループ) 産業界 自治体 非政府組織 労働者及び労働組合 科学的・技術的団体 女性 子供及び青年 先住民 農民 (4)民衆の直接行動 民間非営利の専門家集団である NGO の役割は現在でも重要だが、1999 年のシアトルでの WTO 閣僚会議に対する 抗議行動など 1990 年代の後半から国際的な交渉の中で民衆の直接行動が大きな力を持つようになってきた。2001 年にはブラジルのポルトアレグレで第 1 回世界社会フォーラムが開催された。世界の市民社会の取り組みは地球 環境問題そのものから、それを生み出している世界の政治経済システムの問題に主軸を移し、2002 年のヨハネス ブルグサミットはリオサミットほどの盛り上がりを見せなかったのではないか。現在の世界の市民運動からする とリオ+20 はさらに小さな会議となるのではないか。 4.日本の市民社会の関わり (1)過去の会議に対する日本の市民の関わり ①ストックホルム会議では水俣病の患者グループが自ら出席して日本の「公害」の現実を世界にアピールし、日 本の公害被害者と研究者たちは 1970 年代、80 年代に世界各地の公害問題の告発と解決に働きかけた。 ②1992 年のリオ会議では、日本の市民運動グループは「92 国連ブラジル会議市民連絡会」(ブラ連)を結成して取 り組んだ。この運動でそれまで国内でまじわることのなかった環境 NGO と開発 NGO の連携が生まれた。会議後、 国内で活動を継続するグループがいくつか作られたが大きな運動にはならなかった。 ③ヨハネスブルグサミットに際しては、環境庁が市民グループに声をかけて情報交換の連絡会議を開催し、その 中から「ヨハネスブルグサミット提言フォーラム」(JFJ)が作られた。JFJ への NGO の参加は広がらず、最終的 に活動は森林問題と環境教育の 2 つのテーマに絞られた。政府との連携は強く代表者は政府代表団に参加した。 JFJ は会議終了後解散したが、「国連持続可能な開発のための教育の 10 年推進会議」(ESD-J)が結成され、活動 を継続している。 (2)リオ+20 に対する取り組み UNCSD に対する日本の市民団体の関心は前回以上に低く、2011 年 5 月現在、演者が情報を得ているのは次の 2 つのみである。 1. 地球サミット 2012japan 準備事務局 「地球サミット 2012Japan」はリオ+20 に向けて世界と日本を結ぶための開かれたプラットフォームを提案・ 実践する非営利のネットワークである。5 月 1 日現在、準備事務局であるが、5 月中に正式発足するとしている。 3 (参考資料 5) 2. リオ+20 に向けた NGO ミーティング 2011 年 1 月 6 日に国際協力 NGO センター(JANIC)、環境パートナーシップ会議(EPC)、「環境・持続社会」 研究センター(JACSES)などのメンバーが集まり情報交換が行われ、1 月 28 日には NGO 連携について話し合い が持たれたが、具体化の議論には至っていないようである。これに参加した関係者の話では NGO の関心はまだ低 いとのことであった。5 月にさらに会合が開かれるとのことである。(参考資料 6) 5.日本の市民社会の課題 (1)日本にとっての「持続可能な開発」と「グリーン経済」は何か リオ会議のあと日本でも「持続可能な開発」の用語が紹介されたが、日本政府は国際的な関係以外ではこの言 葉を使用せず「循環型社会」「低炭素社会」などを用いている。持続可能な開発は「環境」「社会」「経済」の3つ の柱で説明されるが、リオ+20 では、経済の比重を高めて「グリーン経済」に置き換えられようとしている。今 後「グリーン経済」が使われる場面が多くなるだろうが、具体的に何を意味するのか十分に検証する必要がある。 (2)国際的な環境政策の議論への積極的な参加 これまでの地球サミットでは、日本の市民は NGO を含めて、自分たちの活動や主張、要求を表明することに力 を入れて、国際的な NGO などの政策的な交渉に参加してこなかった。今回もその傾向が見られるが、国内の状況 だけでなく、国際的な NGO の共通の関心事にも参加すべきである。 (3)日本における主要グループへの配慮 リオ会議以降、市民組織(NGO)だけでなく女性、子供、労働者、農民、先住民族、学術・技術者の組織、自治 体、企業、産業組織などを主要グループとして国家と対等の地位を認めるようになっている。今回は、とくに各 国の国内準備の段階で主要グループを参加させるように推奨している。日本ではこれらの社会構成員の連携は十 分に行われていない。とくに先住民(アイヌ)の権利を重視すべきである。 (4)国内準備委員会をめぐる政治的交渉 環境省は、国内の主要グループとの交渉を行わずに官庁内だけで国内準備委員会の設置準備を進めて、4 月に国 内準備委員会の運営委託に関する入札の公募を始めた。5 月には第 1 回会合を開く計画が示されている。市民の対 応準備が間に合わなければ、これまで以上に日本の参加は政府主体になるおそれがある。(参考資料 7) (5)震災と放射能汚染の経験と対応 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災と福島第一原発事故は、UNCSD で日本市民が世界に報告し議論を行うべき 重要なテーマである。まず文書を 2011 年 11 月締め切りの成果文書第ゼロ草案に提出すること、また本会議、NGO イベントへの報告を準備すべきである。 (参考資料) 1) http://www.uncsd2012.org/files/OD/ARES64236E.pdf 2) http://www.iisd.ca/download/pdf/enb2701e.pdf 3) http://www.iisd.ca/download/pdf/enb2703e.pdf 4)http://www.inesc.org.br/news/2010/dezember/call-for-participation-for-the-peoples-summit-for-sustainabledevelopment-rio-20-1/ 5) http://earthsummit2012.jp/about/concept/index.html 6) http://ameblo.jp/janic10/archive1-201101.html 7) http://www.env.go.jp/kanbo/chotatsu/021003484.html 4 (資料) 日 本 市 民 リ オ 宣 言 -1992年6月14日・リオデジャネイロ- 地球サミットは、世界市民の多大な期待にかかわらず、真に地球を守るにたる条約を作ることができなかった。 ただ、いたずらに資金問題を先行させて、さらなる地球環境破壊を引き起こす契機となりうる可能性が十分にあ る。住民参加を組込まず、地域の伝統的知恵に学ぶ姿勢をもたない政府援助の増額や地球環境基金(GEF)の 強化は、北への富の集中をさらに加速し、南における貧困と環境破壊を増大させる。また、アジェンダ 21 の項目 から多国籍企業の規制、国際開発機関の改革、核問題などの重要問題が除外されたことは、今後の地球環境保全 に大きな遺恨を残すことになった。 地球サミットの不成功は、はからずも国家主義の限界を露呈している。世界の首脳が集まり、4回にわたる準 備会とたび重なる各種条約交渉会議の努力をもってしても、環境と開発の矛盾を解く効果的な条約と行動計画を 作ることができなかった。 いまや、世界は一つである。互いに支え合うという意味において生態的に一つである。しかし、過去からの遺 物である国家という枠組が、富めるものと貧しきものとを区分し、この仕組みを非難する人々を軍隊をもって鎮 圧する。この意味で、日本におけるPK0 (PEACE KEEPING OPERATION)法案の可決は、軍事力の国際輸出 であり、これに強く反対する。 世界市民の広場、グローバル・フォーラムに集まった私たちは、世界市民が一つであることを身をもって体験 した。私たちは、他人を収奪する、あるいは他人から収奪されるという同じ悩みを語り合った。韓国、タイ、イ ンドをはじめとするアジアの人々、西サモアを中心とする太平洋諸島の人々、ジャパン・ピープルズ・センター に押し寄せてきたアフリカの人々、日本の経済進出にともなう環境破壊を激しく訴えにきたラテン・アメリカの 人々、そしてより強い連携を求める欧米のNGOなど、日本市民は地球上での全方位連帯を求められている。地 球市民の誕生であり、地球市民の広がりこそ地球を救う唯一の道である。 日本政府は、地球サミットの場を利用して、日本は技術革新によって公害を克服し、途上国への環境援助を増 大する「持続可能な開発の典型国」であるとのイメージを世界に売り込もうとした。しかし、私たちは、日本は 決して公害を克服した国ではなく、世界に深刻な環境破壊をまき散らす「非持続可能な開発の典型国」の一つで あることを訴えてきた。日本に関する正確な情報、すなわち日本国内における水俣や大気汚染などの公害患者の 未救済、東京圏の超巨大化、農村と農業の危機、公共交通機関の後退と自動車優先、水環境の破壊やリゾート法 による乱開発、また国外における熱帯林をはじめとする資源収奪とそれにともなう伝統的社会組織の破壊、人権 無視の政府援助(ODA)や公害輸出など、国の内外にわたって深刻な環境破壊を生みだしてきた事実を訴えた。 グローバル・フォーラムに参加し、ジャパン・ピープルズ・センターを中心として世界市民との交流を進めて きた私たちは、今日まで築いてきた市民ネットワークを継承し、より強化していくことの必要性を確認した。今 後、私たちは、私たち自身の大量生産、大量消費、大量廃棄の生活を改めるとともに、このシステムによって甚 大な人権侵害と生活破壊に追い込まれている世界各地の人々と情報を交換し、システム変革のための連帯行動を 起こしていきたい。環境と開発に関する新しい哲学を築き、国際的に徹底した情報公開・住民参加・アセスメン トの確立を前提に、国連と政府の施策に対する代替案を提起していきたい。 1995年に予定されている国連改組にむけて、地球市民の意見がより政治的な力として反映されるよう、あ らゆる努力を払っていくことをここに誓う。 5 (資料) 代替 NGO 条約 Alternative NGO treaties (1993 原田解説より) 「NGO条約は 1992 年 6 月 3 日~14 日にブラジル、リオデジャネイロで開かれた国際NGOフォーラムの場 で、世界各地から集った NGO が作成した NGO 間の国際的な協力体制、地球規模の環境、政治、経済などの問題、 青少年、女性、先住民の運動などに関する数十の宣言、条約である。 NGO条約は単なる原則的な宣言、協定を越えて、具体的な目標を設定した共同行動、連帯、協力の解決策を 示すことを意図している。 1991 年 8 月にブラジル NGO フォーラムが発起人となって 200 ほどの国際 NGO から構成される「国際委員会」 (International Task Force)が創設された。その後、大陸別に地域会議を開いて検討を重ね、1991 年 12 月パリで 開かれた「世界NGO会議」で集約し、1992 年 6 月のグローバルフォーラムの「国際NGO・社会運動フォーラ ム」(International NGOs and Social Movements Forum)で最終文書の作成、署名がなされた。 国際NGOフォーラムで「リオ以後」の国際的な協力体制について議論がなされ、中央管理型の巨大な組織を 作るのではなく、問題ごとに、また地域ごとに分散した連絡のための中継地を設置し、国際的には情報交換のシ ステムを作ることが合意された。国際的な情報交換システムとしてコンピューター通信ネットワークの活用が重 視され、APC(Association for Progressive Communications)ネットワークを中心に進めることになった。NG O条約の国際的な取りまとめはウルグァイ、モンテビデオをベースとするNGOネット(NGO Net)が集約し、英 語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語で正式文書を整理し、署名の整理を行ない、さらに今後の実行につ いてもとりまとめを行うことが決った。1992年12月にNGOネットはAPCネットワーク上に最終文書を 登録した。 [宣言および一般原則] 1:市民による地球宣言 2:リオデジャネイロ宣言 3:地球憲章 4:地球規模のエコロジカルな態度と行動のための倫 理規範 [気候、エネルギー および廃棄物] 23:気候変動に関する非政府間のオルターナティブな 合意事項 24:エネルギー条約 25:廃棄物条約 26:原子力問題に関する条約 [教育、コミュニケーションおよび協力] 5:持続可能な社会と地球規模の責任のための環境教 育に関する条約 6:コミュニケーション、情報、メディアおよびネッ トワーキングに関する条約 7:NGOの協力と資源共有のための条約 8:技術交換のための技術銀行連帯システムに関する 条約 9:NGOの地球規模の意志決定に関するリオ枠組み 条約 10:非政府組織のための経営規範 [土地と自然資源] 27:森林条約 28:乾燥地帯および半乾燥地帯に関する条約 29:セラド(潅木地帯)に関する条約 30:海洋の環境汚染 31:海洋環境系の物理的改変を最小にとどめるための 条約 32:地球規模の大気変化かた海洋を保護するための条 約 33:海洋の保護地域に関する条約 34:グアナバラ湾を回復させるための条約 [オルターナティブな経済に関する条項] 11:オルターナティブな経済モデルに関する条約 12:貿易と持続可能な開発に関する条約 13:債務に関する条約 14:アメリカの人々の条約 15:資本逃散と汚職に関する条約 16:多国籍企業に関する条約:多国籍企業の経営に対 する民主的な規制 [生物の多様性とバイオテクノロジーに関する問題] 35:生物の多様性に関する市民の誓約 36:海洋における生物多様性に関する条約 37:生物の多様性保護のための科学的研究要素に関す る協定草案 38:バイオテクノロジーに関する市民の誓約 [社会階層間の問題] 39:正義と健康を希求する地球規模の女性の条約 40:人口、環境および開発に関する条約 41:若者による条約 42:子供と青年の保護のための条約 43:NGOと先住民族との関係に関する国際条約 44:人種差別に反対する条約 45:軍事、環境および開発に関する条約 46:都市化に関する条約 [消費、貧困、食糧および生活] 17:消費とライフスタイルに関する条約 18:貧困に関する条約 19:食糧の安全保障に関する条約 20:持続可能な農業に関する条約 21:淡水に関する条約 22:漁業に関する条約 http://habitat.igc.org/treaties/index.html 6
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