詳細版 - GEC

H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
調査の背景(ホスト国の新メカニズムに対する考え方)
1.
モルドバ共和国(以下、モルドバ)は、環境省管轄の下、CDM プロジェクトに積極的に取り組ん
でいる。これまで、世界銀行等のプロジェクトを含む以下の 4 件が UNFCCC に登録されている。
【2006 年登録】
 Moldova Biomass Heating in Rural Communities (Project Design Document No. 1)

・公共施設 120 か所の高効率ボイラへの転換及び燃料転換(石炭→天然ガス)
Moldova Biomass Heating in Rural Communities (Project Design Document No. 2)

・公共施設 120 か所の高効率ボイラへの転換及び燃料転換(石炭→バイオマス利用)
Moldova Energy Conservation and Greenhouse Gases Emissions Reduction
・小学校、幼稚園 27 か所の高効率ボイラへの転換もしくは燃料転換(石炭→天然ガス)
【2009 年登録】
 Moldova Soil Conservation Project
・20,289.91 ha の植林プロジェクトを通じた地盤改良事業
モルドバ環境省は、本 JCM/BOCM 調査に高い関心を示しており、全面的なサポートを表明し
ている。また、従来の CDM に関する手続きの複雑さを指摘しており、JCM/BOCM の目指すシン
プルな手続きや、理解し易く経済的(地元で負担可能)なモニタリングシステムの構築を日本政府
に期待している。
2.
(1)
1)
調査対象事業・活動
事業・活動の概要
GHG 削減活動概要
本事業・活動は、冬季(10 月~3 月)にかけて稼働する暖房熱源用ボイラを入れ替えて、試
用する燃料を化石燃料(石炭/天然ガス)からバイオマス燃料へ転換することで GHG 排出を
抑制するものである。
図 III- 2-1
GHG 削減方法
III-1
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
農業残渣(トウモロコシ)
麦藁(角形梱包)
農業残渣(大豆藁)
ペレット
ペレットボイラ
直接燃焼型ボイラ
III-2
H24 MRV DS
旧式の石炭ボイラ
2)
最終報告書(詳細版)
直接燃焼型ボイラ
背景
旧ソ連時代には化石燃料が連邦内各国より供給されてきたため、モルドバでは一般的にバ
イオマス暖房は“後退技術”として捉えられてきたが、ソ連崩壊以後の度重なるエネルギー保障
問題に直面し、2005 年に世界銀行の支援によって導入されて以来、モルドバでは徐々にバイ
オマスを利用した施設が増加しつつある。現在では世界銀行の他、日本政府(JICA 経由)、
EU(UNDP 経由)等の支援も行われている。
2012 年度に JICA によって実施された“モルドバ・バイオマス燃料有効活用計画準備調査”
でも、モルドバの公共施設に対するバイオマスボイラ導入に関する調査が実施され、今後の政
府間協議と実施が期待される
3)
事業・活動内容
① 調査内容
本調査では、2007 年~2008 年に日本政府の“草の根無償資金援助”や、その他ドナ
ー等によって導入されてきた直接燃焼型ボイラ(麦藁ボイラ)並びにペレットボイラを
取り上げ、方法論並びに MRV の構築と実際の運用並びに有効性を確認し、現地及び周
辺国の第三者検証機関等の評価を経て、最終的に簡易計算フォーマットを作成する。
② バイオマスボイラの運営に関する基本作業フロー
本調査の対象ボイラのひとつである直接燃焼型ボイラ(麦藁ボイラ)における基本作
業フローは以下の通り;
【作業 1】 刈取り時期(麦藁であれば毎年 7 月末頃)に農家から購入する。麦藁の回収
には梱包機(ベイラー)が用いられ、簡易梱包される。藁は乾燥のために一
年程度、一次保管施設内で保管される。
【作業 2】 翌年の暖房使用時期になると、乾燥を経た藁はボイラ付近にある二次保管施
設に随時切り出され、設置されたバイオマスボイラに投入される
【作業 3】 温水としてボイラで熱を回収し、一次温水循環パイプを介して暖房対象施設
内にある熱交換器にて建物内の二次温水循環パイプと熱交換し、熱を各部屋
III-3
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
の暖房設備に供給する。
ペレットボイラについては以下の点に変更・追加が生じる。地産地消が中心の直接燃
焼型ボイラと比べ、運搬時並びにペレット製造時のプロジェクト排出量に留意する必要
が生じる。
【作業 1】 上記同様(乾燥機を用いて一次保管時の乾燥工程を省く場合がある)
【作業 2】 ペレット化設備にバイオマスを集め、乾燥したバイオマスを破砕し、直径 10
~15mm 程度のペレットを製造する。ペレットは各地に配送され、ペレット
ボイラに投入される。
【作業 3】 上記同様
ペレットはこの間、運搬→製造→配送が入る
図 III- 2-2
基本作業フローイメージ
③ 調査対象サイト
本事業・活動では、表 III- 2-1 に示す 10 基・7 サイト(バイオマス残渣の直接燃焼型ボイラ(麦
藁ボイラ)4 基・4 サイト及びペレットボイラ 6 基・3 サイト)を対象とし、温水配管経路の都合上、
合計 8 台の積算熱量計を設置した。
III-4
H24 MRV DS
施設
番号
(PA)
施設名称*1
PA1
PA2
Hirtopul Mare Gymnasium
Hirtopul Mare 幼稚園
PA3
“Moldagrotehnica” SA
PA4
“Moldagrotehnica” SA
PA5
PA6
PA7
PA8
Chiscareni Lyceum &
Gymnasium
Viisoara Gymnasium
Fundurii Vechi Community
Center
Balatina Community Center
図 III- 2-3
モルドバ共和国位置図
表 III- 2-1
事業・活動内容の概要
事業活動の内容・設備規模
カウンター
パート
190 kW 麦藁ボイラ×1 基
150 kW 麦藁ボイラ×1 基
75 kW ペレットボイラ×1 基
(ペレット)
75 kW ペレットボイラ×1 基
(石炭)
CFU
CFU
600 kW 麦藁ボイラ×1 基
最終報告書(詳細版)
オーナー
積算熱
量計*2
村
村
Moldagrotehnica
Moldagrotehnica
1台
1台
CFU
村
1台
300 kW 麦藁ボイラ×1 基
CFU
村
1台
50 kW ペレットボイラ×2 基
CFU
村
1台
50 kW ペレットボイラ×2 基
10 基
CFU
村
1台
8台
*1) Gymnasium:小中一貫校(1~9 年生)、Lyceum:高校(10~12 年生)
*2) SHARKY775
III-5
CFU
CFU
1台
1台
H24 MRV DS
図 III- 2-4
III-6
対象サイト
最終報告書(詳細版)
H24 MRV DS
図 III- 2-5
最終報告書(詳細版)
対象サイト(Hirtopul Mare Gymnasium, 幼稚園)
III-7
H24 MRV DS
図 III- 2-6
対象サイト(”Moldagrotehnica” SA)
III-8
最終報告書(詳細版)
H24 MRV DS
図 III- 2-7
最終報告書(詳細版)
対象サイト(Chiscareni Lyceum & Gymnasium)
III-9
H24 MRV DS
図 III- 2-8
対象サイト(Viisoara Gymnasium)
III-10
最終報告書(詳細版)
H24 MRV DS
図 III- 2-9
最終報告書(詳細版)
対象サイト(Fundurii Vechi / Balatina Community Center)
III-11
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
PA1 及び PA2 は、2007 年から 2008 年にかけて日本政府の“草の根無償資金援助”で供与
され、現在も稼働中の麦藁ボイラである。PA1 の積算熱量計はボイラ運転管理者の休憩室の配
管に 1 基、PA2 の積算熱量計は予備暖房である石炭ボイラ建屋内のボイラ配管に 1 基設置し
た。
PA3 及び PA4 は、バイオマスボイラの製造業者 Moldagrotehnica 社場内に自己資金で設置
されたペレットボイラであり、同じ建屋内に並列で設置されている。現在の稼働状態は、1 基
(PA3)をペレットボイラ燃焼用、もう 1 基(PA4)を石炭燃焼用として使用している。積算熱量計は、
ボイラ建屋内の各ボイラ出口配管に対して 1 台ずつ設置した。
PA5 は、2005 年に世界銀行の支援を受けて行われたプロジェクトを通じてモルドバで初めて
設置された麦藁ボイラであり、本調査の対象ボイラ内では最大発熱能力(600kW)を持つ施設
である。積算熱量計は、ボイラ運転管理者の休憩室内のボイラ配管に 1 台設置した。
PA6 も、2005 年の世銀プロジェクトで設置された麦藁ボイラである。積算熱量計は、ボイラ運
転管理者の休憩室のボイラ配管に 1 台設置した。
PA7 は 2012 年 2 月に開館したばかりの多機能型コミュニティセンターであり、ペレットボイラ
は、MSIF(Moldova Social Investment Fund)の支援により設置された。各ボイラ配管は、同じ室
内で 1 本に合流する形となり、積算熱量計は、合流後の配管に 1 台設置した。
PA8 は、上記 PA7 と同規模の多機能型コミュニティセンターであり、2012 年 3 月に開館して
いる。各ボイラ配管は、同じ室内で合流しており、積算熱量計は、合流後の配管に 1 台設置し
た。
各事業・活動の詳細を表 III- 2-2 から表 III- 2-8 に示す。
表 III- 2-2
施設番号
施設名称
事業・活動
稼働開始時期
稼働状況
既存ボイラ
燃料供給者
排出削減への貢献
Hirtopul Mare Gymnasium における事業・活動内容
PA1
実施地域
Hirtopul Mare village, Criuleni rayon(県)
Hirtopul Mare Gymnasium
内容
暖房熱源の化石燃料(石炭)からバイオマス残渣燃料(麦藁)への
燃料転換
設備規模
190 kW 麦藁ボイラ×1 基
メーカー
“Moldagrotehnica” SA (モルドバ)
ボイラ型式 AKU-190
採用技術
バイオマス残渣(麦藁)を使用する温水ボイラ、熱交換器
C/P
CFU
オーナー
Hirtopul Mare 村
管理者
村長
2008 年
毎年 10 月から 3 月まで稼働。今まで特にトラブルはない。
石炭ボイラ
農家
バイオマス残渣燃料への転換による CO2 排出量削減
III-12
H24 MRV DS
表 III- 2-3
施設番号
施設名称
事業・活動
稼働開始時期
稼働状況
既存ボイラ
燃料供給者
排出削減への貢献
稼働開始時期
稼働状況
既存ボイラ
燃料供給者
排出削減への貢献
表 III- 2-5
施設番号
施設名称
事業・活動
稼働開始時期
稼働状況
既存ボイラ
燃料供給者
排出削減への貢献
Hirtopul Mare 幼稚園における事業・活動内容
PA2
実施地域
Hirtopul Mare village, Criuleni rayon(県)
Hirtopul Mare 幼稚園
内容
暖房熱源の化石燃料(石炭)からバイオマス残渣燃料(麦藁)への
燃料転換
設備規模
150 kW 麦藁ボイラ×1 基
メーカー
Gros Induo International (モルドバ)
ボイラ型式 RAU-2-181
採用技術
バイオマス残渣(麦藁)を使用する温水ボイラ、熱交換器
C/P
CFU
オーナー
Hirtopul Mare 村
管理者
村長
2008 年
毎年 10 月から 3 月まで稼働。今まで特にトラブルはない。
石炭ボイラ
農家
バイオマス残渣燃料への転換による CO2 排出量削減
表 III- 2-4
施設番号
施設名称
事業・活動
最終報告書(詳細版)
Moldagrotehnica における事業・活動内容
PA3+PA4
実施地域
Balti (municipality)
“Moldagrotehnica” SA
内容
暖房熱源の化石燃料(石炭)からバイオマス残渣燃料(麦藁)への
燃料転換
設備規模
75 kW ペレットボイラ×2 基(ペレット 1 基、石炭 1 基)
メーカー
“Moldagrotehnica” SA (モルドバ)
ボイラ型式 CGM75
採用技術
ペレットを使用する温水ボイラ、熱交換器
C/P
CFU
オーナー
Moldagrotehnica
管理者
Moldagrotehnica
2010 年
毎年 10 月から 3 月まで稼働。今まで特にトラブルはない。
石炭ボイラ
S.C. “Floarea Soarelui” S.A.(ひまわり油製造メーカー)
バイオマス残渣燃料への転換による CO2 排出量削減
Chiscareni Lyceum & Gymansium における事業・活動内容
PA5
実施地域
Chiscareni village, Singerei rayon(県)
Chiscareni Lyceum & Gymnasium
内容
暖房熱源の化石燃料(石炭)からバイオマス残渣燃料(麦藁)への
燃料転換
設備規模
600 kW 麦藁ボイラ×1 基
メーカー
"Южтеплоэнергомонтаж" (ウクライナ)
ボイラ型式 RAU-2-600
採用技術
バイオマス残渣(麦藁)を使用する温水ボイラ、熱交換器
C/P
CFU
オーナー
Chiscareni 村
管理者
村長
2005 年
毎年 10 月から 3 月まで稼働。今まで特にトラブルはない。
石炭ボイラ
農家
バイオマス残渣燃料への転換による CO2 排出量削減
III-13
H24 MRV DS
表 III- 2-6
施設番号
施設名称
事業・活動
稼働開始時期
稼働状況
既存ボイラ
燃料供給者
排出削減への貢献
表 III- 2-7
施設番号
施設名称
事業・活動
稼働開始時期
稼働状況
既存ボイラ
燃料供給者
排出削減への貢献
稼働開始時期
稼働状況
既存ボイラ
燃料供給者
排出削減への貢献
Viisoara Gymnasium における事業・活動内容
PA6
実施地域
Viisoara village, Glodeni rayon(県)
Viisoara Gymnasium
内容
暖房熱源の化石燃料(石炭)からバイオマス残渣燃料(麦藁)への
燃料転換
設備規模
300 kW 麦藁ボイラ×1 基
メーカー
Gros & Co. International (モルドバ) ※技術ライセンス:デンマーク
ボイラ型式 RAU331
採用技術
バイオマス残渣(麦藁)を使用する温水ボイラ、熱交換器
C/P
CFU
オーナー
Viisoara 村
管理者
村長
2005 年
毎年 10 月から 3 月まで稼働。今まで特にトラブルはない。
石炭ボイラ
農家
バイオマス残渣燃料への転換による CO2 排出量削減
Fundurii Vechi Community Center における事業・活動内容
PA7
実施地域
Fundurii Vechi village, Glodeni rayon(県)
Fundurii Vechi Community Center
内容
新規施設に対するバイオマス残渣燃料(ペレット)ボイラの導入
設備規模
50 kW ペレットボイラ×2 台
メーカー
“Moldagrotehnica” SA (モルドバ)
ボイラ型式 CG-50
採用技術
ペレットを使用する温水ボイラ、熱交換器
C/P
CFU
オーナー
Fundurii Vechi 村
管理者
村長
2012 年
毎年 10 月から 3 月まで稼働。今まで特にトラブルはない。
なし
“BIOS-GRM”(2012-2013)
バイオマス残渣燃料使用による CO2 排出量削減(天然ガスの供給配管が接続さ
れていないため、石炭との比較)
表 III- 2-8
施設番号
施設名称
事業・活動
最終報告書(詳細版)
Balatina Community Center における事業・活動内容
PA8
実施地域
Balatina village, Glodeni rayon(県)
Balatina Community Center
内容
新規施設に対するバイオマス残渣燃料(ペレット)ボイラの導入
設備規模
50 kW ペレットボイラ×2 台
メーカー
“Moldagrotehnica” SA (モルドバ)
ボイラ型式 CG-50
採用技術
ペレットを使用する温水ボイラ、熱交換器
C/P
CFU
オーナー
Balatina 村
管理者
村長
2012 年
毎年 10 月から 3 月まで稼働。今まで特にトラブルはない。
なし
“BIOS-GRM”(2012-2013)
バイオマス残渣燃料使用による CO2 排出量削減(天然ガスの供給配管が接続さ
れていないため、石炭との比較)
III-14
H24 MRV DS
1)
最終報告書(詳細版)
サイト毎の燃料種類、保管庫、移送距離
本事業・活動に係るサイト毎の燃料種類、バイオマス残渣燃料保管庫、移送距離を表 III2-9 に示す。本調査においては、麦藁の燃焼効率や燃焼時の煤塵排出量に大きな影響を及
ぼすバイオマスの含水率に着目し、1 次保管庫あるいは 2 次保管庫における保管状況が良い
状態と判断される保管庫(建屋内)と悪い状態と判断される保管庫(屋根のみ、又は野ざらし)
の両方を含めて、調査対象サイトを選定した。
PA1:Hirtopul Mare Gymnasium
麦藁ボイラ
1 次保管庫
2 次保管庫
バイオマス残渣(麦藁)
III-15
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
PA2:Hirtopul Mare 幼稚園
麦藁ボイラ
1 次保管庫
2 次保管庫
バイオマス残渣(麦藁)
PA3/PA4:”Moldagrotehnica” SA
ペレット製造工場 SA “Floarea Soarelui”
ペレットボイラ
III-16
H24 MRV DS
2 次保管庫
最終報告書(詳細版)
ペレット(ひまわり種殻)
PA5:Chiscareni Lyceum & Gymnasium
麦藁ボイラ
1 次保管庫
2 次保管庫
バイオマス残渣(アカシア・ニレの木/麦藁)
III-17
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
PA6:Viisoara Gymnasium
麦藁ボイラ
1 次保管庫
2 次保管庫(麦藁)
バイオマス残渣(松)
PA7:Fundurii Vechi Community Center
2 次保管庫
ペレットボイラ
III-18
H24 MRV DS
ペレット製造工場 “BIOS-GRM” SRL
最終報告書(詳細版)
ペレット(ひまわり種殻)
PA8:Balatina Community Center
ペレットボイラ
2 次保管庫
ペレット製造工場 “BIOS-GRM” SRL
ペレット(ひまわり種殻)
III-19
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
表 III- 2-9 各サイト毎の燃料種類・バイオマス残渣燃料保管庫、移送距離
施設番号(PA)
PA1
PA2
PA3
PA4
PA5
PA6
Hirtopul Mare
Gymnasium
Hirtopul Mare
幼稚園
“Moldagrotehnica
” SA
“Moldagrotehnica
” SA
Chiscareni
Lyceum &
Gymnasium
Viisoara
Gymnasium
燃料種類
ベール麦藁
(直方体)
ベール麦藁
(円筒形)
1 次保管庫(畑側)
・建屋内
・畑
・建屋内
ペレット
(ひまわり種
殻)
-
石炭
-
①ベール麦藁
(直方体)
②薪(アカシア、
ニレ(Elm))
①屋根のみ
②-
①ベール麦 藁
(直方体)
②薪(松の木)
PA7
Fundurii
Vechi
Community
Center
PA8
Balatina
Community
Center
ペレット
(ひまわり
種殻)
ペレット
(ひまわり
種殻)
-
-
建屋内
建屋内
“BIOS-GRM”
“BIOS-GRM”
SRL
SRL
①②建屋内
①屋外(ビニール
2 次保管庫(ボイラ側)
・建屋内
・屋外
・建屋内
・建屋内
①②建屋内
シートカバー)
②屋外
ペレット製造業者
平均距離
(畑~1 次保管庫)
平均距離
(1 次保管庫~2 次保管庫)
平均距離
(ペレット工場~2 次保管庫)
-
-
3km
4km
3km
-
SA “Floarea
-
-
-
-
-
27.5km
9.2km
-
-
1.6km
-
-
3km
1km
-
-
-
5.5km
-
-
-
158km
191km
Soarelui”
出典:GEC Study Team
III-20
H24 MRV DS
2)
最終報告書(詳細版)
積算熱量計
本調査では、SHARKY775 を採用した。
製品名:SHARKY 775
メーカー:SAPPEL
販売代理店・設置業者:”PIROTERM SERVICE” SRL
各サイトにおける導入状況を表 III- 2-10 に示す。
積算熱量計の設置場所については、麦藁ボイラ本体から近い位置(10~15m)にあるボイラ
運転管理者の休憩室や石炭ボイラ建屋内、又はペレットボイラ室内に設置した。ボイラとの距
離が遠くなる場合には、配管からの熱発散により積算熱量値がより小さくなり、積算熱量から試
算する CO2 排出削減量はボイラにより近い位置に設置した場合より小さくなり、より保守的な値
を示す。したがって、積算熱量計の設置位置について、方法論に組み込むことはしないこととし
た。
積算熱量計における流量計測方式には、一般的に超音波式と積算式の 2 タイプがあるが、
SHARKY775 は、前者のタイプである。一般的に積算式は超音波式に比べ計量精度が高いと
されるが微差であり、積算式の方が金額が高く、またモルドバの熱供給事業での導入実績が多
かったため本機種を採用することに決定した。
表 III- 2-10
施設番号
(PA)
PA1
各サイトに設置された積算熱量計導入状況
施設名称
設置台数
パイプ直径
設置日
Hirtopul Mare Gymnasium
1
DN 40mm
24 Oct 2012
PA2
Hirtopul Mare 幼稚園
1
DN 40mm
24 Oct 2012
PA3
“Moldagrotehnica” SA
1
DN 25mm
23 Oct 2012
PA4
“Moldagrotehnica” SA
1
DN 25mm
23Oct 2012
PA5
Chiscareni Lyceum & Gymnasium
1
DN 65mm
05 Nov 2012
PA6
Viisoara Gymnasium
1
DN 50mm
29 Oct 2012
PA7
Fundurii Vechi Community Center
1
DN 40mm
07 Jan 2013
PA8
Balatina Community Center
1
DN 40mm
14 Jan 2013
積算熱量計(Hirtopul Mare Gymnasium)
III-21
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
牧草水分計
3)
本調査では、バイオマス残渣燃料の含水率をデフォルト化するために、㈱ケツト科学研究所
製の牧草水分計 HX-700 を利用し、現地にて実測した。本水分計は、電気抵抗式水分計であ
り、麦藁等の農業残渣の水分測定に適している。測定範囲は、8~30%である。
牧草水分計
麦藁水分測定の様子(Viisoara Gymnasium)
含水率計
本調査では、特に PA5(Chiscareni Lyceum & Gymnasium)及び PA6(Viisoara Gymnasium)
において、木質系バイオマスが麦藁と混焼されていることから、薪の水分率簡易測定に用いら
れるモルソー社の含水率計(モイスチェーゲージ)を用いて現地で含水率測定を実施した。
4)
薪専用含水率計
薪含水率測定の様子(Viisoara Gymnasium)
(2) 企画立案の背景
モルドバは人口 360 万人(2011 年、世銀)、面積 33,840km2 の欧州最貧国(一人当たり GNI:
$1,810)であり、ウクライナとルーマニアに挟まれた内陸の小国である。9 月から 4 月にかけての冬
期は、気温がマイナス 25℃に達することもある地域である。国土の大部分がなだらかな丘陵で、農
業を主要産業としていたことから、麦藁をはじめとするバイオマスが豊富である。同国には化石燃
III-22
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
料等の資源が無く、古来バイオマスを燃料として使用してきたが、旧ソ連邦時代以来、使用燃料
がウクライナからの石炭やロシアからの天然ガスに転換された。その後、ソ連崩壊に伴い独立した
モルドバはウクライナやロシアから燃料を購入し続けたが、この 10 年程度の度重なる価格上昇に
伴い、ただでさえ脆弱な財政を圧迫し、特に農村部の貧困地域においては暖房費を確保できな
いことから幼稚園や小学校などの公共施設が冬期に閉鎖されることもあった。
我が国は同国に対してこれまで農業関連の無償資金協力を行ってきており、両国の関係は良
好である。こうしたなか、前述の通り、我が国はモルドバの農村貧困地域が直面している問題をど
の国よりも早くから着目し、2007 年~2008 年に“草の根無償資金協力”のスキームを用いてバイオ
マスボイラの導入(PA1,PA2 の 2 基)を行い、これを成功させてきた。この“草の根”活動の中で燃
料費負担が削減され、また雇用を生み出すなどの経済効果が証明され、日本の支援を受けて、
世界銀行や UNDP も同様にバイオマスボイラの設置を支援しているところである。
このような大きな流れを作るきっかけとなった我が国も 2009 年、モルドバ政府(農業食品産業省)
より同取組への更なる支援の要請を受けたことから、2010 年に JICA 基礎調査を行い、更に 2011
年~2013 年には JICA 協力準備調査を実施している。
この活動は明らかに GHG 排出削減につながる事業であるものの、京都議定書における現状の
CDM 制度下においては無償資金協力で行われた事業に対する排出権は追加性の確保の面か
ら、CDM 事業として認められるためにはハードルが高いとされている。
モルドバ環境省は同国における CDM の普及が遅れていることを懸念しており、また欧州の排
出権市場が低迷する中、実施が有望視されている事業で JCM/BOCM の検討を行い、選択肢を
増やすことで、GHG 排出削減案件が増えることを大いに期待している。
本事業によって教育環境などが整備されるだけでなく、GHG が削減されるほか、これまで化石
燃料購入に充てられていた資金の国外流出防止、バイオマス残渣燃料の地産地消による新たな
産業の形成、並びに新たな就労機会の創出などが見込まれる。
このような背景から、既に実施されている事業・活動に対して、MRV を行い JCM/BOCM の下で
の新たな排出権創出を目指すため、本調査を実施した。
(3) ホスト国における状況
モルドバでは、農村から大量に得られるバイオマス資源である麦藁や木質系バイオマスである
薪を代替エネルギーとして利用することにより、国内エネルギー事情の改善や、農村地域におけ
る新たな産業創出が期待されている。
1)
再生可能エネルギー政策
“Energy Strategy of the Republic of Moldova until 2020”によれば、2010 年までにエネルギ
ー源における再生可能エネルギーシェアを 6%まで引き上げ、2020 年までに 20%を達成する目
標が掲げられている。更に、最新版の“Energy Strategy of the Republic of Moldova until 2030”
では、2020 年までに国内総燃料消費量におけるバイオ燃料シェアを 10%まで引き上げること、
並びに、再生可能エネルギーを利用した年間総発電量シェアを 2020 年までに 10%まで引き上
げることなどを目標として掲げている。
また、“Plan Governmental action for the period 2011 - 2014”では、2015 年までに 10%の代
替エネルギー利用を目指し、学校、幼稚園、病院などの公共施設に対するエネルギー使用効
率化と再生可能エネルギーの利用プロジェクトを実施するとされている。
III-23
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
気候変動に関する施策としては、“Low Emissions Development of the Republic of Moldova
to the year 2020”において、国内における総 GHG 排出量を 2020 年までに 1990 年比で 25%以
上削減することを目標として掲げている。
以上より、モルドバ政府は、引き続きバイオマス残渣燃料の普及拡大を強く望んでおり、バイ
オマス暖房施設及びペレット製造工場等の関連産業拡大のインセンティブになると考えられ
る。
2)
天然ガスの動向
SA “Moldovagaz”のデータによれば、2012 年 1 月 1 日現在、モルドバにおける天然ガス配
管敷設率は、56.5%となっており、モルドバ国内全 1531 自治体中 865 自治体(3 つの首都、49
市、及び 813 か村)に接続されている状況である。主要なガス配管の総距離は 2,000km、これ
に付随する家屋等への配管網は 20,000km に及ぶ。
最新版“Energy Strategy of Republic of Moldova till 2030”によれば、天然ガスセクターに対
する 2008~2010 年の投資計画が承認され、2008 年当時の 15 百万ユーロから 2010 年には 28
百万ユーロまで引き上げる計画がなされた。その結果、2009 年には Ungheni 市と Balti 市まで
配管が延長された。2013~2014 年の投資計画では、末端消費者までのガス配管が 500km 超
敷設される計画である。また、近隣諸国との相互接続配管約 40km も計画されており、そのうち
一本が Ungheni 市と Iasi 市(ルーマニア)を結ぶことになる。
上記のように、一般家庭へのガス配管敷設は拡大傾向にある。一方、天然ガスボイラの運転
費用がバイオマスボイラの約 2.5 倍かかる点や、モルドバ政府がバイオマス暖房施設の普及に
注力している点から、公共施設に対して新たにガスボイラが新設される可能性は低いと考えら
れる(モルドバ工科大学 Arion 教授)。
なお、天然ガスの将来価格動向については、近年の米国におけるシェールガス開発等のガ
ス価格低下というトレンドはあるものの、地政学的な条件など不安定要素が多く、見積もることは
困難である。天然ガスが、100%ウクライナ経由でロシアから輸入されている現状を考えると、モ
ルドバ国内の安定した資源であるバイオマスの有効活用を進める傾向はしばらく変わらないと
考えられる。
3)
石炭の動向
石炭についても、モルドバでは産出しないため、ほとんどがウクライナやロシアからの輸入と
なっており、今後もこの輸入ルートは変わらないと予想される。Moldagrotehnica のようにペレット
ボイラで石炭を燃焼させている事業者も見られるが、家庭や公共施設で利用されているストー
ブでも石炭が用いられている。なお、モルドバにおける一般的な石炭(通称“AM”製品)の
2011~2012 年の市場価格は、1 トン当り 2,500MDL 前後となっている。
4)
ペレット製造業の動向
モルドバにおけるペレット製造会社の数は年々増加傾向にある。これは、UNDP 等の他国ド
ナーが積極的にペレットボイラを設置しているため、需要を見込んでのものであると考えられる。
実際、ペレット供給量は需要に追い付いておらず、今後もしばらくは増加傾向が続くと思われる。
また、国内での需要が過多になったとしても、ペレットは EU 諸国へ輸出することも可能であり、
既にポーランド等の近隣諸国に輸出している業者もある。
III-24
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
ペレット販売価格は、毎年大きく変動しており、かつ原料種によって価格に開きがあるが、
2012 年 12 月の時点では、1,400~1,800MDL/トンであった。
一方、ペレット製造会社の多くは、農家や製油(ひまわり油)会社が農業残渣の価格を引き
上げていることを懸念しており、より安価な原料を求めて競争が激しくなる傾向にある。また、モ
ルドバにはペレットに関する品質基準がなく、劣悪な品質の製品も出回っている。
モルドバ国内のペレット製造工場を表 III- 2-11 に示す。
表 III- 2-11 ペレット工場一覧(2012 年 12 月末現在)
会社名
“Beta Service” SRL
Pohoarna Agro SRL
場所
SRL “DIVEXIM”
Grupo Boieru
“BIOS-GRM” SRL
Otaci
Pohoarna,
Soldanesti
Balti
Bucovat,
Straseni
Sociteni,
Ialoveni
Chisinau
Burlaceni, Cahul
Criuleni, Baltata
“Ecobricheta”
Balti
Floarea Soarelui S.A.
Bucovat
“Arina Alb” SRL
Pomic Nord SRL
“Domullterra” SRL
“Bejan Valerian Pavel”
SRL
出典:CFU
-
-
-
種類
ペレット
ペレット・
ブリケット
ペレット
ペレット
原料
Energy crop(木材)
麦藁
不明
自社農場
ひまわり種殻
ひまわり種殻
自社ひまわり油工場
ひまわり油工場
ペレット
木材残渣
個人事業主
ペレット
ペレット
ペレット
ひまわり種・種殻
麦藁、木材
ひまわり種殻・おがく
ず
麦藁、ひまわり軸、お
がくず
木材、穀物殻
木材、穀物殻
木材、穀物殻
ひまわり油工場
不明
ひまわり油工場、家具
店等
ひまわり油工場、家具
工場
自社の果樹園、農場
自社の果樹園、農場
自社の果樹園、ブドウ
園、農場
ペレット・
ブリケット
ペレット
ペレット
ペレット
原料購入先
(4) CDM の補完性
本事業・活動は、日本政府による“草の根無償資金協力”や世銀により供与されたバイオマスボ
イラのほか、民間企業が自己資金にて設置したペレットボイラを対象とする。
JICA により実施されている準備調査“モルドバ国・バイオマス燃料有効活用計画”でも、日本政
府の無償資金協力によって、ペレットボイラが複数台導入される計画である。
いずれの施設でも化石燃料からバイオマス残渣燃料への転換による GHG 排出削減に繋がる
活動であるが、現在の京都議定書における CDM 制度下では、無償資金協力で実施された事業
に対する排出権は、追加性の確保の面から、国際社会からの同意を得ることは困難であると考え
られる。
また、小規模暖房施設であることから、各サイトにおける GHG 排出削減量が小さく、かつサイト
数が多いため、CDM の認証プロセスが適用されれば、経済的観点からも採算に合わない事業と
なる可能性が高い。このような同じタイプの麦藁ボイラ又はペレットボイラが多数導入されるケース
においては、CDM のプログラム CDM のようなスキームも参考にできる。
また、本調査のカウンターパートである CFU(Carbon Finance Unit)は、これまでも世銀の CDM
III-25
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
プロジェクトのモルドバ側窓口になっており、経験も豊富であるため、JCM/BOCM の実施に関して
も、業務を円滑に進める上で支障になる要因は考えられない。
以上より、モルドバにおける本事業・活動に対しては、簡易なプロセスとなる JCM/BOCM の適
用が適していると考えられる。
本事業において JCM/BOCM による排出権取引が成立すれば、モルドバ国内におけるバイオ
マスボイラのみならず、他国のバイオマスボイラに対しても本方法論の適用が適用できるものと期
待できる。
(5) 事業・活動の普及
モルドバ共和国は年間の半分程度の期間で暖房を要する気候条件である。現状の主要燃料
である化石燃料の殆どを周辺諸国からの輸入に頼っており、また価格変動も大きく、国家のエネ
ルギー保障にもかかわる事態になっている。一方、農業国であることでバイオマス残渣燃料の原
料は 205 万トン/年超と豊富であり、全量がモルドバ国内で消費された場合、2009 年の石炭価格
ベースで約 1.25%の貿易収支改善に貢献する。石炭や天然ガス価格の高騰につれてバイオマス
残渣燃料の価格も上昇することが見込まれるが、継続して安定した供給が確保できることから、化
石燃料代替として同種の活動に対する需要は今後も伸びることが予想される。
今後各援助機関の成果を併せると 200 件程度のバイオマスボイラが設置されることになる。モル
ドバには 1,600 以上の村落があり、旧式の化石燃料ボイラを使用しつづけている公共施設(学校・
幼稚園・市庁舎・病院・レクリエーションセンターなど)が数多く存在する。
またモルドバとの JCM/BOCM において、排出権に対価がつくとなった場合は、各村のバイオマ
スボイラ運転維持管理費が充実することになり、結果的にバイオマスボイラが安定して稼働し続け、
農村が社会・環境・経済面でも便益を享受することになる。また、同国との JCM/BOCM 制度を更
に発展させ、日本の資金で実施されるものに限らず、今後据え付けられるあらゆるバイオマスボイ
ラに本取組みが適用されることになれば、バイオマスボイラへの転換インセンティヴがさらに働くこ
とが予想される。
ペレットボイラに関しては日本のメーカーでも供給できることから、JCM/BOCM の効果によって
更にバイオマスボイラの導入機運が高まることで本邦技術の普及が進む可能性もあると考えられ
る。
III-26
H24 MRV DS
3.
(1)
最終報告書(詳細版)
調査の方法
調査実施体制
1) 外注先
 一般財団法人日本気象協会(日本)
▪ MRV 構築支援(計画、設計・プロトタイプフォーマット作成支援、実証試験分析支援、
検証・修正)

Carbon Finance Unit (CFU), Ministry of Environment(ホスト国)
▪ モニタリング実施(第三者検証機関に対するモニタリング報告書作成)
▪ ボイラ運転管理者への教育(気候変動・GHG 排出削減に関する一般情報提供、
JCM/BOCM プロジェクトの目的、CDM と JCM/BOCM の説明、SHARKY775 の使用
方法、運転日誌(Daily Record Sheets)の記入方法、等)
▪ モルドバ国内各種情報収集支援


RINA SIMTEX Organismul de Certificare SRL(ルーマニア)
East-Europe Consulting Associates” SRL(ホスト国)
▪ 第三者検証機関として、提案する MRV の適格性検証(検証報告書作成)
2) その他協力機関
 “PIROTERM SERVICE” SRL(ホスト国)
▪ 各サイトへの積算熱量計設置
▪ データ取得支援
 Agrarian State University of Moldova(モルドバ農業大学)
▪ モルドバ各地のバイオマス残渣(麦藁、トウモロコシ、ひまわり等)及び木材(松、アカ
シア等)に関する発熱量測定
図 III- 3-1
調査体制図
III-27
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
(2) 調査課題
 第三者検証機関
当初想定していた National Institute of Standardization and Metrology (NISM) が検証機
関として相応しくないことが判明したため、ISO 認証機関等、民間企業を含めて CFU より候補
先リストの提供を受けて、再度候補先を選定した。その結果、上記 2 社に対し検証業務を委託
することとなった。

暖房開始時期
モルドバでは、例年 10 月初旬から暖房が稼働され始めることを想定し、モニタリング期間を
10 月 1 日としていたが、2012 年は暖冬であったことから、11 月中旬から暖房が使われ始めた
ため、モニタリング開始時期が予定より 1 ヶ月以上遅れる結果となった。
本調査では、モニタリング期間を 2 期に分けた(第 1 モニタリング期間:2012 年 10 月 1 日
から同年 11 月 30 日、第 2 モニタリング期間:2012 年 12 月 1 日から 2013 年 1 月 15 日)。し
かし、上記理由のため、第 1 モニタリング期間は、約 2 週間となった。第 2 モニタリング期間は、
PA7 及び PA8 への積算熱量計設置時期が豪雪のため 1 月初旬となったため、1 月 23 日まで
延長することとなった。
(3)
調査内容
1)
第1回現地調査概要
調査日程:2012 年 7 月 8 日(日)~7 月 18 日(水)
出張者:池田博(三井共同建設コンサルタント)
倉澤壮児・小川顕宏(日本環境コンサルタント)
調査内容:
 環境大臣 Mr. Gheorghe SALARU との面談を実施し、本調査に対する協力及び環境省
傘下の Carbon Finance Unit(CFU)を本調査の主要カウンターパートとすることに関する
承諾を得た。
 モニタリングに必要な積算熱量計の設置・データ記録・メンテナンス等について、地元
計装機器業者 PIROTERM SERVICE SRL と打合せを行なった。
 ペレット工場 BIOS-GRM SRL や温室栽培農場 Fructagrocom Cooperative へのヒアリン
グにより、ペレット製造コスト、電気料金等の情報を入手した。
2)
第 2 回現地調査概要
調査日程:2012 年 9 月 22 日(土)~10 月 6 日(土)
出張者:池田博・奈良幸雄(三井共同建設コンサルタント)
倉澤壮児(日本環境コンサルタント)
山口高明・工藤泰子(日本気象協会)
調査内容:
 表 III- 3-1 に示す 5 か所のボイラ施設に対し、積算熱量計を設置することとした。
III-28
H24 MRV DS
表 III- 3-1
第 2 回現地調査時におけるモニタリングサイト一覧
1
2
3
4
県名
(Rayon)
Criuleni
Singerei
Glodeni
Balti
村名
Hirtopul Mare
Chiscareni
Visoara
Balti
1) 幼稚園
施設種類 2) Gymnasium
最終報告書(詳細版)
高校・小学校
燃料種類
麦藁ベール
麦藁ベール
施設規模
1) 150 kW×1 基
2) 190 kW×1 基
3) 600 kW×1 基
小学校
麦藁ベール
4) 300 kW×1 基
5
Ialoveni
Bardar
Moldagrotehnica
(ボイラ製造工場)
Fructagrocom
cooperative
(温室栽培農場)
ペレット・石炭
ペレット
5) 6)75 kW×2 基
7) 8) 9)500 kW×3
基
 対象施設を訪問し、オーナー(校長等)へ積算熱量計の設置並びに本調査への協力
要請を行った。また、各施設における麦藁の第一次保管施設(収穫地近く)及び第二次
保管施設(ボイラ近く)について、状況を確認した。
 ペレット製造工場 3 社(BIOS-GRM SRL、Pohoarna Agro SRL、Floarea Soarelui SRL)を
訪問し、原料・製品の移動距離、電力消費量等に関する情報を入手した。
 9 月 28 日、環境省会議室において、“BOCM 並びに実証内容説明セミナー”を開催し、
CFU 職員を始め、State Ecological Inspectorate、経済省 Agency for Energy Efficiency、
環境省 Climate Change Office 等の省庁関係者や、第三者検証の候補機関が参加し
た。
 モルドバ農業大学の Grigore MARIAN 教授の研究室に対し、バイオマスボイラの燃料
となる麦藁、大豆藁、トウモロコシ残渣、ひまわり種殻、及び木材の発熱量測定について
説明し、CFU から委託することとした。
 第三者検証機関候補先である 4 社と面談を行い、提案書及び見積書の提出を依頼し
た。
3)
第 3 回現地調査概要
調査日程:2012 年 12 月 8 日(土)~12 月 22 日(土))
出張者:池田博・奈良幸雄(三井共同建設コンサルタント)
山口高明・工藤泰子(日本気象協会)
調査内容:
 第三者検証機関を選定し、RINA SIMTEX Organismul de Certificare SRL(本社:ルー
マニア・ブカレスト)及び I.M. “East-Europe Consulting Associates” SRL(本社:モルドバ・
キシナウ)の二社に対して委託した。
 当初、モニタリングサイトとして予定していた温室栽培農場 Fructagrocom cooperative は、
諸事情により今冬の栽培をしないことが判明したため、Glodeni Rayon のコミュニティー
センター2 か所を新たにモニタリング対象施設とした。表 III- 3-2 に本調査のモニタリング
対象施設及び積算熱量計設置台数を示す。
III-29
H24 MRV DS
表 III- 3-2
施設
番号
PA1
PA2
PA3
PA4
PA5
PA6
PA7
PA8
4)
最終報告書(詳細版)
第 3 回現地調査時におけるモニタリングサイト一覧
施設名称*
Hirtopul Mare Gymnasium
Hirtopul Mare 幼稚園
Chiscaren Lyceum & Gymnasium
Viisoara Gymnasium
“Moldagrotehnica” SA
“Moldagrotehnica” SA
Fundurii Vechi Community Center
Balatina Community Center
ボイラサイズ・台数
190 kW 麦藁ボイラ×1 基
150 kW 麦藁ボイラ×1 基
600 kW 麦藁ボイラ×1 基
300 kW 麦藁ボイラ×1 基
75 kW ペレットボイラ×1 基(ペレット)
75 kW ペレットボイラ×1 基(石炭)
50 kW ペレットボイラ×2 基
50 kW ペレットボイラ×2 基
10 基
積算熱量計
(SHARKY775)
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
1台
8台
第 4 回現地調査概要
調査日程:2013 年 2 月 10 日(日)~2 月 22 日(金)
出張者:池田博・奈良幸雄(三井共同建設コンサルタント)
倉澤壮児・小川顕宏(日本環境コンサルタント)
調査内容:
 環境大臣 Mr. Gheorghe SALARU と面談し、JCM/BOCM 実現へ向けての協力を確認し
た。
 バイオマス熱量分析について、モルドバ農業大学の Marian 教授と面談し、提出された
農業残渣(麦藁、とうもろこし軸、ひまわり種殻、大豆藁)、葦(Reed)、及び木材(アカシ
ア、ブドウの木、楡(ニレ)の木、松、家具廃材)の地域別熱量測定結果について報告を
受けた。本調査では、モルドバ北部・中部・南部からサンプルを提供したが、熱量に大き
な差はないことが明らかになった。これらの測定結果に基づき、本事業・活動の低位発
熱量(NCV)の事業固有値を設定する。
 第三者検証機関 East-Europe Consulting Associates の専門家 Mr. Dumitru Braga と面談
し、第 1 モニタリング報告書に対する第 1 検証報告書の CL 及び CAR について質疑応
答を行った。
 第三者検証機関 Rina Simtex 社 Mrs. Mariana IONESCU と面談した。第 1 検証報告書
については、既に CL、CAR 共に解決されており、第 2 検証報告書の早期提出を求め
た。
 今回の現地調査では、木材を混焼している Chisinareni Lyceum & Gymnasium 及び
Viisoara Gymnasium において、水分計を用いて含水率を測定した。
III-30
H24 MRV DS
4.
(1)
最終報告書(詳細版)
調査結果
事業・活動の実施による排出削減効果
このプロジェクトの実施により、従来、石炭や天然ガスなどの化石燃料を使用していた暖房熱源
用ボイラの燃料を麦藁等のバイオマス残渣燃料で代替することにより、GHG の排出が削減され
る。
モルドバ国は冬季の寒さが厳しく、月平均気温の平年値でみると、11 月から 3 月は 5℃を下回り、
12 月~2 月は氷点下、特に最寒月の 1 月は-3.3℃となる(State Hydrometeorological Service, 2011)
ことから、暖房期間は 6~8 か月であり、熱需要は非常に大きい。暖房の形態として、首都キシナウ
などいくつかの都市部には地域熱供給システムがあるが、農村部には普及しておらず、家庭では
薪や石炭が使われている。また、学校や保育園、地方自治体庁舎では、しばしば石炭を熱源とす
る効率の悪い旧式暖房用ボイラが用いられている(Kjellberg,2010)。
一方、農業国で あるモ ルド バ において、麦藁 など農業廃棄物の利 用可能量は大きい 。
(USAID-HELLENIC AID COOPERATION)
したがって、現状で公共施設や学校などで使用されている化石燃料ボイラをバイオマス残渣を
燃料とするバイオマスボイラに代替していくことによる二酸化炭素排出削減効果は、個々のボイラ
についてみると大きくはないが、普及することによって大きくなると期待される。
(2)
MRV 方法論の概要
1)リファレンス排出量
後述するように、本方法論ではリファレンスシナリオを以下のように設定している。
 このプロジェクトがない場合、既存ボイラが従来と同じ化石燃料で引き続き稼働する。
ただし、既存ボイラのボイラ効率を 1 とする。
 このプロジェクトがない場合、バイオマス残渣は廃棄あるいは放置か鋤き込みされ、主
に好気的条件下で腐敗(分解)するか、もしくはエネルギー利用されず管理されない状
態で焼却される。
リファレンスシナリオを保守的にするため、既存ボイラの効率は、モルドバにおいて実際はカタロ
グ値で 0.67 であるところを 1 とした。また、バイオマス残渣の畑での放置あるいは鋤き込みにおい
ては、「4.(8)事業固有値の設定」で詳述するように嫌気的発酵は起こっていないものと想定される。
また、野焼きによるメタンの発生は算入しないものとし、保守的にした。
リファレンス排出量は、プロジェクトにより代替されるバイオマス残渣により得られる熱量に等しい
熱量が、プロジェクトが実施されなかった場合に化石燃料の使用によって得られていたとして算定
する。ただし、その際、既存ボイラのボイラ効率は 1 とする。具体的には、熱需要が変わらないとし
て、現在バイオマス残渣の燃焼によって得られる熱量を求め、その値に既存ボイラで使用してい
た化石燃料の二酸化炭素排出係数をかけることによって算定する。その方法は 2 種類あり、以下
の(1)、(2)式によって示される。1つは、積算熱量計をボイラに設置し、産生する熱量を直接測定
する方法である((1)式)。もう一つは、ボイラで燃焼されるバイオマス残渣の重量、含水量、真発熱
量、バイオマスボイラの効率から算定する方法である((2)式)。
III-31
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最終報告書(詳細版)
(1)式においては、ボイラ効率が1であることから、積算熱量計により測定された年間積算熱量に
二酸化炭素排出係数をかけることにより、リファレンス排出量が求まる。この手法では、モニタリン
グが非常に簡易であるのに加え、実際にボイラで産生した熱量が測定されることから、積算熱量
計の測定精度がある程度確保されていれば、算定値の信頼性は高い。
一方、(2)式においては、(1)式では積算熱量計で測定される熱量に相当する値を、ボイラで燃
焼されたバイオマス残渣の乾燥重量(湿潤重量を測定し含水率をもとに算定)に真発熱量(乾燥
ベース)をかけて求める。その際、ボイラに投入されるバイオマス残渣等の種類が 1 種類でない場
合は、種類別にデータを収集して産生熱量を算定し、それらを合計する。したがって、この手法は、
バイオマス残渣の重量及び含水率の測定(あるいは推定)において、ヒューマンエラー、測定に伴
う誤差などいくつもの誤差を生じる可能性を内在している。
以下では、(2)式における誤差について、現地調査で得られたデータに基づいて考察した結果
を示す。結論から言えば、本方法論では、燃焼するバイオマス残渣の重量ベースでリファレンス排
出量を算定する手法は算定オプションとして残しているが、モニタリングに労力を必要とする上に、
モニタリングにおける測定誤差やヒューマンエラーの可能性が(1)式より大きいこと、また、ボイラ運
転の変動に伴うボイラ効率の変動が把握できないことにより、排出削減量の算定結果は非常に不
確かさが大きくならざるを得ない。したがって、本方法論においては、モニタリングの簡素化と排出
削減量算定値の精度を確保するため、積算熱量計を用いてリファレンス排出量を求める方法を推
奨する。また、やむを得ず(2)式を用いる場合は、その不確かさの中で保守的に排出削減量が求
まるよう、デフォルト値や事業固有値の設定において配慮した。
RE y  QBM , y 
1
 RE
 EFCO2, PFi
..
...
(1)
M

 
RE y    PC BM ,k , y  (1  BM ,k )  NCVBM ,k   PJ  EFCO2, PFi
100
k 
  RE
...
..
(2)
RE y
リファレンス CO2 排出量 [tCO2/y]
QBM , y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣による年間積算発熱量 [GJ/y]
PC BM ,k , y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣 k の年間消費量(湿潤重量) [t/y]
M BM ,k
プロジェクトにおけるバイオマス残渣 k の含水率 [%]
NCVBM ,k
プロジェクトにおけるバイオマス残渣 k の真発熱量(乾燥ベース)[GJ/t]
 PJ
プロジェクトにおける暖房熱源用ボイラの燃焼効率
 RE
リファレンスにおける暖房熱源用ボイラの燃焼効率
EFCO2, PFi リファレンスにおける化石燃料 i の CO2 排出係数 [tCO2/GJ]
III-32
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
(2)式における誤差についての考察
①バイオマス残渣の湿潤重量
バイオマス残渣には、ペレットに加工されているもの、ベール状(ロール状もしくはキューブ状)
になっているもの、もしくは薪や剪定枝などがある。
ペレット
ロール状バイオマス残渣
キューブ上バイオマス残渣
薪(松の木)
これらの湿潤重量(水分を含んでいる状態)は、それぞれ以下のような手法で各ボイラサイトに
おいてモニタリングされる。
ペレット
ボイラに投入する際に用いるバケツなど 1 杯分の重量を単位重量として測定してお
き、そのバケツ等でボイラに投入した回数と単位重量をかけて総重量を求める。
含水量が比較的安定しており、形状も決まっていることから、単位重量に対する実際
投入される重量の誤差はそれほど大きくはないものと想定される。
ベール
ロール状のものはトラックスケール、キューブ状のものはバネ秤によって重量を測定し
て、その平均値を単位重量とし、ボイラに投入した個数と単位重量をかけて総重量を
求める。
現地における調査もしくはヒアリングによると、ロール状のものは重量 120~150kg、キ
III-33
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
ューブ状のものは重量 10~20kg である。ここでは、現地で測定した値の平均値を用
いているが個々のベールの重量のばらつきは小さくないことから、単位重量を固定し
て年間投入個数をかけて重量を求める方法では、かなり大きな誤差が生じることも想
定される。また、トラックスケールが近傍にあり利用可能であるという保証もない。
薪、剪定
枝
ボイラサイトによっては、藁などのベールに加え薪やブドウの剪定枝などを混焼して
いるところがある。調査サイトでの混焼割合は、わら:薪がおよそ 6:4 であった。薪など
を購入している場合については、伝票に記載されている購入重量を年間で積算す
る。購入せずに調達している場合は、ボイラに投入したおおよその体積に密度をかけ
て求める。
伝票に記載されている購入重量の精度については確認できないが、ある程度の誤差
は避けられないと考えられる。また、ボイラに投入する体積から求める方法について
は、体積を測定するときの間隙率が把握できないこと、密度もその時の含水率によっ
て変わりうることを考慮すると誤差はかなり大きいと想定される。しかしながら、精度を
確保するために、ボイラに投入する前にバイオマス残渣の重量をモニタリングするこ
とは、設備面、作業面から考えて現実的ではない。
トラックスケール(Hirtopul Mare 村)
②バイオマス残渣の含水率
バイオマス残渣の含水率は、現地調査において水分計で測定した。測定は、各サイトの保管
施設及びボイラ脇の保管場所においてペレット及び麦藁のベールについては牧草水分計
(M70X-7000)、薪については薪含水率計(モルソー・モイスチェーゲージ)を用いて行った(図 III4-1)。この結果の詳細については、「4.(6)デフォルト値の設定」において詳述するが、含水率のば
らつきは保管状況や保管されている位置によって非常に大きく変動する。したがって、仮にモニタ
リングを行ったとしても、誤差が大きくなるのは避けられず、保守的に妥当性を確保するには、変
動の範囲の上限を設定する以外にないと考えられる。
III-34
H24 MRV DS
牧草水分計(M70X-7000)
図 III- 4-1
最終報告書(詳細版)
薪含水率計(モイスチャーゲージ)
牧草水分計及び薪含水率計
③バイオマス残渣の真発熱量
バイオマス残渣の真発熱量(乾燥ベース)は、モルドバ農業大学に依頼して測定した。詳細は
「4.(6)デフォルト値の設定」において詳述するが、バイオマス残渣のうち麦藁など草本系について
は、真発熱量に気候帯による地域差はほとんど見られなかったが、干ばつなど天候や肥料、土壌
などの環境によって差異が生じる可能性があるとのことである。また、木質系については、木の年
齢や採取された部分によって真発熱量に違いがあり、例えばブドウの剪定枝の場合、若木と老木
で 10~15%の差になることがある。
モルドバにおいては、このような研究は着手されたばかりであり、今後さらなる知見が出てくる可
能性がある。しかしながら、他の項目に比べ、真発熱量についての不確かさは相対的に小さいと
考えられる。
④プロジェクトにおける暖房熱源用ボイラの燃焼効率
導入されるバイオマスボイラの燃焼効率は基本的にはカタログ値をもとにして設定する。しかし
ながら、通常、カタログ値は理想的な条件のもとで測定されていると考えられ、実際のボイラ運転
における燃焼効率は、これを下回ると想定される。モルドバのバイオマスエネルギーに詳しいモル
ドバ工科大学の Arion 教授へのヒアリングによると、ボイラ効率の算定に影響を与える主な要因と
して、以下のことが指摘された。
 運転と運転停止の回数
ボイラ効率はボイラの運転開始と運転停止に影響される。これらの回数(断続的な運転)が多
ければボイラ効率は低下する。
 ボイラ運転開始時と停止時の燃料の不完全燃焼
運転開始時と終了時は燃料が完全燃焼しないため、ボイラ効率は低下する。
 自動運転装置の不適切稼働
ガスボイラの場合であるが、自動運転装置(Automatic controller)が適切に稼働しないことで
ボイラ効率が 60~65%に低下した例がある。自動運転装置を調整すればボイラ効率は 88~
90%にもなりうる。藁ボイラにも Combustion control があり、検査する必要がある。
III-35
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
実際、現地においては天候により比較的温暖な日もあるため、ボイラが断続運転されることが
ある。また、ボイラの容量に対するバイオマス残渣の投入量が常に最大とは限らない。また、バ
イオマス残渣の含水率が高かったサイトにおいては、煙が黒かったことから不完全燃焼している
と考えられた。以上のことを勘案すると、ボイラの燃焼効率は一定ではなく、常に変動しているも
のと想定され、大きな誤差の要因となる。しかしながら、熱量計が設置されていない場合には、
燃焼効率を設定することは不可能であり、カタログ値そのものを使用すると、リファレンス排出量
を過大評価することになる。そのため、本方法論においては、バイオマスボイラの燃焼効率を保
守的に決める補正係数を導入することとした。詳細については、後述する。
以上のように、(2)式を用いる場合、大きな誤差を生じる要因がいくつも存在し、現地調査デ
ータを用いた試算においても、保守的デフォルトを設定しない場合においては、(1)式と(2)式の
算定値に大きな差異が生じた。このような推定値の不確かさの問題、及びモニタリングや事前
調査の負担及びヒューマンエラーの可能性を考慮すると、プロジェクト実施者が積算熱量計を
設置し、(1)式を用いるオプションを選択することが推奨される。
2)プロジェクト排出量
プロジェクト排出量の算定方法は、2 通り設定した。
1つは、デフォルト値として定められたプロジェクト排出係数をリファレンス排出量にかけてプロ
ジェクト排出量を求める方法であり、以下の(3)式により求める。
PEy = PEy ×α

.
.
.
.
.
(3)
プロジェクト排出係数:直接燃焼 0.02、ペレット 0.10
プロジェクト排出量においては輸送に関連する排出が大きな割合を占めると想定されるが、小
規模方法論において輸送距離が 200km を超える場合をバウンダリーとしていることからもうかがえ
るように、バイオマス残渣の燃料利用が地産地消であることを考えると、プロジェクト排出量はリファ
レンス排出量に比べて多くの場合、非常に小さいと考えられる。そこで、算定の負担を軽減するた
めに、現地調査に基づいてプロジェクト排出係数の保守的デフォルト値を決め、プロジェクト排出
量計算の簡便化を図り、また、プロジェクト排出量に係るモニタリングが困難な場合にも保守的排
出削減量が計算できるようにした。
現地調査の結果、麦藁などバイオマス残渣を直接燃焼する場合は、近隣でバイオマス残渣が
調達され、かつ馬車で運搬されるなど、化石燃料の使用は非常に少ない。調査期間中の現地デ
ータを用いた試算によると、通常はリファレンス排出量の 1%前後であることから、デフォルト化係
数は 0.02 とした。ペレット化する場合は、畑からペレット工場、ペレット工場からボイラサイトへと輸
送されるため輸送距離が長くなること、また、バイオマス残渣をペレット化するのに電力を使用する
ことから、プロジェクト排出量はやや多くなるものの、同様にデフォルト化の係数を現地データに基
づいて検討した結果、リファレンス排出量に 10%は上回らないと判断されたことから、0.10 と設定し
た。
III-36
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
バイオマス残渣を運ぶ馬車
もう1つは、プロジェクトの各プロセスにおける排出量を算定し、それらを合計する方法で、バイ
オマス残渣の収集、輸送、ボイラへの投入に用いるトラクタやトラックの燃料(ディーゼル燃料)、及
びペレット化する場合はペレット製造に使用する電力の消費に基づいて以下の(4)式により算定す
る。
PE y  PErol, y  PEtr ,r , y  PEe, y  PEtr , p, y  PEboi, y
.....(4)
PE y
プロジェクト CO2 排出量 [tCO2/y]
PE rol, y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣の収集に伴う CO2 排出量[tCO2/y]
PEtr ,r , y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣の輸送に伴う CO2 排出量 [tCO2/y]
PEe, y
プロジェクトにおけるバイオマスペレットの製造に伴う CO2 排出量 [tCO2/y]
PEtr , p , y
プロジェクトにおけるバイオマスペレットの輸送に伴う CO2 排出量 [tCO2/y]
PEboi, y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣のボイラ投入に伴う CO2 排出量 [tCO2/y]
(4)式による算定においては、モニタリングの負担を軽減するため、ある期間のモニタリングに基
づいてプロセスごと(収集、輸送、ペレット製造、燃料投入)に、バイオマス残渣 1 トンあたりの CO2
排出量をプロジェクト固有の原単位として算定しておき、それに年間のバイオマス残渣消費量
を乗じることにより CO2 排出量を求める手法を採用している。
①プロジェクトにおけるバイオマス残渣の収集に伴う CO2 排出量
プロジェクト開始前もしくはプロジェクト開始 1 年目に、少なくとも 1 か月以上の調査を行い、その
データに基づいて、収集プロセスにおけるバイオマス残渣 1 トン当たりの CO2 排出量をバイオマス
残渣の種類ごとに(5’)式により算定し、それに年間のバイオマス残渣消費量をかけたものを合
計し、プロジェクトにおけるバイオマス残渣の収集に伴う CO2 排出量を求める((5)式)。
III-37
H24 MRV DS

PErol, y   PC BM ,k , y  SEFCO2,rol,k
最終報告書(詳細版)

.....(5)
k
PErol, y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣の収集に伴う年間 CO2 排出量[tCO2/y]
PC BM ,k , y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣 k の年間消費量(湿潤重量)[t/y]
SEFCO2,rol,k
収集プロセスにおけるバイオマス残渣 k の1トン当りの CO2 排出量 [tCO2/t]
SEFCO2,rol,k 
PErol,k , pd
PC BM ,k , pd

PFC rol,k ,i , pd  NCVi  EFCO2, PFi
.....(5’)
PC BM ,k , pd
PErol,k , pd
調査期間 pd におけるバイオマス残渣 k の収集に伴う CO2 排出量[tCO2/period]
PC BM ,k , pd
調査期間 pd におけるバイオマス残渣 k の消費量(湿潤重量) [t/period]
調査期間 pd におけるバイオマス残渣 k の収集に伴う化石燃料 i の消費量 [t/period]
PFC rol,k ,i , pd
バイオマス残渣 k の収集に用いる化石燃料 i の真発熱量 [GJ/t]
NCVi
バイオマス残渣 k の収集に用いる化石燃料 i の CO2 排出係数 [tCO2/GJ]
EFCO2, PFi
②プロジェクトにおけるバイオマス残渣の輸送に伴う CO2 排出量
プロジェクト開始前もしくはプロジェクト開始 1 年目に、少なくとも 1 か月以上の調査を行い、その
データに基づいて、輸送プロセスにおけるバイオマス残渣 1 トン当たりの CO2 排出量をバイオマス
残渣の種類ごとに(6’)式により算定し、それに年間のバイオマス残渣消費量をかけたものを合
計し、プロジェクトにおけるバイオマス残渣の輸送に伴う CO2 排出量を求める((6)式)。
PEtr,r,y = åéëPCBM,k,y ´ SEFCO2,tr,r,k ùû
.....
(6)
k
PEtr,r,y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣の輸送に伴う年間 CO2 排出量[tCO2/y]
PC BM ,k , y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣 k の年間消費量(湿潤重量) [t/y]
SEFCO2,trm,r ,k
輸送プロセスにおけるバイオマス残渣 k の1トン当りの CO2 排出量[tCO2/t]
SEFCO2,tr ,r ,k 
PEtr ,r ,k , pd
PC BM ,k , pd

BQr ,k , pd / TLr ,k , pd  AVDr ,k , pd  EFkm,CO2
.....
(6’)
PC BM ,k , pd
PEtr,r,k, pd
調査期間 pd におけるバイオマス残渣 k の輸送に伴う CO2 排出量[tCO2/period]
PC BM ,k , pd
調査期間 pd におけるバイオマス残渣 k の消費量(湿潤重量)[t/period]
BQr ,k , pd
調査期間 pd におけるバイオマス残渣 k の輸送量(湿潤重量) [t/period]
TLr ,k , pd
調査期間 pd におけるバイオマス残渣 k のトラック平均積載量(湿潤重量) [t/truck]
AVDr ,k , pd
調査期間 pd におけるバイオマス残渣 k を輸送するトラックの平均輸送距離[km]
EFkm,CO2
バイオマス残渣 k を輸送するトラックの輸送距離当たり CO2 排出係数[tCO2/km]
III-38
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
③プロジェクトにおけるバイオマス残渣のペレット化に伴う CO2 排出量
プロジェクト開始前もしくはプロジェクト開始 1 年目に、少なくとも 1 か月以上の調査を行い、その
データに基づいて、ペレット製造プロセスにおけるバイオマスペレット 1 トン当たりの CO2 排出量
を(7’)式により算定し、それに年間のバイオマスペレット消費量をかけて、プロジェクトにおける
ペレット製造に伴う CO2 排出量を求める((7)式)。
PEe,y = PCBM,y ´ SEFCO2,e
.....(7)
PEe,y
プロジェクトにおけるバイオマスペレット製造に伴う年間 CO2 排出量[tCO2/y]
PCBM,y
プロジェクトにおけるバイオマスペレットの年間消費量(湿潤重量) [t/y]
SEFCO2,e
ペレット製造プロセスにおけるバイオマスペレット1トン当りの CO2 排出量[tCO2/t]
SEFCO2,e =
PEe, pd
PEC pd ´ EFCO2,e
=
PCBM, pd
PCBM , pd
.....(7’)
PEe, pd
調査期間 pd におけるバイオマスペレットの製造に伴う電力消費による CO2 排出量[tCO2/period]
PCBM, pd
調査期間 pd におけるバイオマスペレットの消費量(湿潤重量) [t/period]
PEC pd
調査期間 pd におけるバイオマスペレットの製造に伴う電力消費量 [MWh/period]
EFCO2,e
電力の二酸化炭素排出係数[tCO2/MWh]
④プロジェクトにおけるバイオマスペレットの輸送に伴う CO2 排出量
プロジェクト開始前もしくはプロジェクト開始 1 年目に、少なくとも 1 か月以上の調査を行い、その
データに基づいて、輸送プロセスにおけるバイオマス残渣 1 トン当たりの CO2 排出量をバイオマス
残渣の種類ごとに(8’)式により算定し、それに年間のバイオマス残渣消費量をかけたものを合
計し、プロジェクトにおけるバイオマス残渣の輸送に伴う CO2 排出量を求める((8)式)。
PEtr, p,y = PCBM,y ´ SEFCO2,tr, p
.....(8)
PEtr, p,y
プロジェクトにおけるバイオマスペレットの輸送に伴う年間 CO2 排出量[tCO2/y]
PC BM , y
プロジェクトにおけるバイオマスペレットの年間消費量(湿潤重量) [t/y]
SEFCO2,tr , p
輸送プロセスにおけるバイオマスペレット1トン当りの CO2 排出量[tCO2/t]
SEFCO2,tr, p =
PEtr, p, pd
PEtr, p, pd BQp, pd / TLp, pd ´ AVDp, pd ´ EFkm,CO2
=
PCBM,k, pd
PCBM,k, pd
.....(8’)
調査期間 pd におけるバイオマスペレットの輸送に伴う CO2 排出量[tCO2/period]
III-39
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
PC BM , pd
調査期間 pd におけるバイオマスペレットの消費量(湿潤重量)[t/period]
BQ p , pd
調査期間 pd におけるバイオマスペレットの輸送量(湿潤重量) [t/period]
TLp , pd
調査期間 pd におけるバイオマスペレットのトラック平均積載量(湿潤重量)[t/truck]
AVD p , pd
調査期間 pd におけるバイオマスペレットを輸送するトラックの平均輸送距離 [km]
EFkm,CO2
バイオマスペレット輸送トラックの輸送距離当たり二酸化炭素排出係数 [tCO2/km]
⑤プロジェクトにおけるバイオマス残渣のボイラ投入に伴う CO2 排出量
プロジェクト開始前もしくはプロジェクト開始 1 年目に、少なくとも 1 か月以上の調査を行い、その
データに基づいて、ボイラ投入プロセスにおけるバイオマス残渣 1 トン当たりの CO2 排出量をバイ
オマス残渣の種類ごとに(9’)式により算定し、それに年間のバイオマス残渣消費量をかけたも
のを合計し、プロジェクトにおけるバイオマス残渣のボイラ投入に伴う CO2 排出量を求める((9)
式)。

PEbol, y   PC BM ,k , y  SEFCO2,bol,k

.....(9)
k
PEbol, y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣のボイラ投入に伴う年間 CO2 排出量[tCO2/y]
PC BM ,k , y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣 k の年間消費量(湿潤重量)[t/y]
SEFCO2,bol,k
収集プロセスにおけるバイオマス残渣 k の1トン当りの CO2 排出量 [tCO2/t]
SEFCO2,bol,k 
PEbol,k , pd
PC BM ,k , pd

PFC bol,k ,i , pd  NCVi  EFCO2, PFi
PC BM ,k , pd
.....(9’)
PEbol,k , pd
調査期間 pd におけるバイオマス残渣 k のボイラ投入に伴う CO2 排出量[tCO2/period]
PC BM ,k , pd
調査期間 pd におけるバイオマス残渣 k の消費量(湿潤重量) [t/period]
PFCbol,k ,i , pd 調査期間 pd におけるバイオマス残渣 k のボイラ投入に伴う化石燃料 i の消費量 [t/period]
NCVi
バイオマス残渣 k のボイラ投入に用いる化石燃料 i の真発熱量 [GJ/t]
EFCO2, PFi
バイオマス残渣 k のボイラ投入に用いる化石燃料 i の CO2 排出係数 [tCO2/GJ]
III-40
H24 MRV DS
◆
最終報告書(詳細版)
CDM 方法論との相違点
提案する BOCM 方法論は、CDM 方法論 AM0036(Fuel switch from fossil fuels to biomass
residues in boilers for heat generation ) 及 び 、 小 規 模 方 法 論 ( AMS I.C. Thermal energy
production with or without electricity)を参考にしている。CDM 方法論と提案する BOCM 方法論
の相違点を表 III- 4-1 に示す。
これらにおける主な相違点は以下のとおりである。
■大規模 CDM 方法論に比べて小規模 CDM 方法論が簡易化されている点
▪ 野焼き、嫌気発酵、ボイラ燃焼等のメタン排出量の除外
▪ ベースラインの特定方法の簡素化
▪ バイオマス残渣等の輸送プロセスの除外(輸送距離 200km 以下の場合)
▪ 輸送プロセス関連のモニタリングの免除
▪ 燃焼装置でのメタン排出量の計測の免除、等
■BOCM 方法論がさらに簡易化されている点
▪ プロジェクト排出量係数(0.02、0.10 など)の設定によるプロジェクト排出量計算の簡易化
▪ モニタリングパラメータの最小化(最も簡易なオプションでは積算熱量のみでよい)
プロジェクト排出量は、基本的には各プロセスで消費される化石燃料と電力の消費量等の
活動量をモニタリングして、排出係数を掛けることで算定する。モニタリングに特に手間がかか
るのは輸送プロセスで、トラックの輸送回数、積載量、平均往復輸送距離、燃料消費量等をモ
ニタリングする必要がある。ただし、小規模方法論では輸送距離が 200km 以下であれば、輸
送プロセスを無視できるとされている。
BOCM 方法論では、各プロセスの燃料消費量等のすべての活動量をモニタリングせずに、
以下の方法により簡素化している。
方法 1:デフォルト係数の設定(プロジェクト排出量はリファレンス排出量の X%など)
方法 2:プロジェクト固有の排出原単位の設定
【例】ペレット製造排出原単位(ペレット製造量1トンあたりの CO2 排出量)など
これらにより、モニタリングや削減量計算を簡素化した。
小規模方法論(AMS I.C.)はモルドバのケースにおいても適用することは可能だが、以下に記
載するように、適用時よりも運用時に多くの問題が発生する可能性がある。
 適用時の問題:ベースラインの設定
既存ボイラの代替の場合は、最低 1 年間分の過去データでベースラインを設定しなければ
ならないため、これが得られない場合、この方法論が適用できない可能性がある。過去データ
が無い場合には、ベースラインキャンペーン(一定期間の測定)を行っても良いとの救済措置
があるが、この測定期間がどの程度あれば承認されるかは非常に曖昧で、場合によっては登
録できない可能性がある。
 運用時の問題:CDM の形成、バリデーション、登録、検証等
III-41
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
運用時においては、多くの問題が生じる可能性がある。運用段階では CDM 特有の様々な
確認が必要になり、そのための人的・資金的投入が多大となることが最大の懸念事項である。
本件は 1 件あたりの排出削減量が非常に小さいため、一つ一つにそのような人的・資金的
投入をすれば、CDM 事業として実施する意義が無くなってしまう。例えば以下のような点がバ
リデーションや登録申請、検証において問題となるかあるいは時間を要する可能性が大きい。
a) 適用条件関連
▪ 固形バイオマス残渣には再生可能バイオマスのみを原料としていることを証明しなけれ
ばならない
▪ 固形バイオマス残渣の生産者と消費者は契約関係になければならない
b) ベースライン関連
▪ 既存ボイラの代替の場合、最低 1 年間分の過去データでベースラインを設定しなければ
ならない
▪ 過去データが無い場合には、ベースラインキャンペーン(一定期間の測定)を行う必要が
あるが、この期間がどの程度あれば承認されるかは非常に曖昧である。
▪ 既存ボイラのリプレース時期の特定においては、リプレース時期がクレジット期間の後で
あるとの証明が難しい場合がある。
表 III- 4-2 は、ボイラの燃料転換の CDM 方法論を適用したプロジェクト(登録済)の例である。
AM0036 を適用したものは全て挙げてあり、AMS I.C.については登録プロジェクトが非常に多いた
め、一例のみ特徴的なものとしてバイオマスの重量ベースでモニタリングしているプロジェクトを挙
げた。AM0036 を適用したプロジェクトはすべて熱量を測定する手法をとっている。
III-42
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
表 III- 4-1 CDM 方法論と本方法論の比較
Applicability
適格性要件
Project
Boundary
バウンダリ―
Baseline
Scenario
大規模CDM 方法論
AM0036: Fuel switch from fossil fuels to
biomass residues in boilers for heat
generation
 熱生成装置の改修、代替、新設、これら
の組み合わせ
 アグロインダストリープラント内のプラ
ントまたは独立した熱生成プラント
 熱生成装置は、電力には用いられない。
用いる場合は、既存設備に比べて年間発
電量ベースで多くても10%以下
 大きな初期投資なしにバイオマス残渣の
活用が不可能
 プロジェクトが原料生産の増加につなが
らないこと
 用いるバイオマス残渣は 1 年以内の貯蔵
期間
 その他
 熱生成装置と関連装置
 バイオマス残渣の輸送手段
 バイオマス残渣が嫌気的発酵をしている
場合のサイト
 ※野焼き、嫌気発酵、ボイラ燃焼CH4 は
場合により算入
 熱生成およびバイオマス残渣のベースラ
インを方法論で指定されたステップによ
り特定(バリア分析、投資分析)
リファレンス
シナリオ
Additionality
追加性
Baseline
Emission
リファレンス
排出量
Project
Emission
プロジェクト
排出量
Leakage
リーケージ
Monitoring
モニタリング
 方法論で指定された方法により追加性を
証明
 熱生成装置での既存化石燃料の燃焼によ
るCO2排出量(ただし、過去3 年間にバ
イオマスを少しでも使っていた場合に
は、その最大値分を差し引くなど、保守
的補正の必要有)
 野焼きによるCH4 排出量(ベースライン
で特定された場合)
 嫌気発酵CH4 排出量(ベースラインで特
定された場合)
 熱生成装置と関連装置における化石燃
料・電力消費に伴う排出量
 バイオマス残渣輸送および処理に係る排
出量
 熱生成装置におけるバイオマス残渣の燃
焼に伴うCH4 排出量
 プロジェクトの実施により、間接的に化
石燃料消費や GHG 排出量が周辺で増加
していないことを証明すること等が必要
→モニタリングにおいて各バイオマス残
渣の調査が必要
主に以下のパラメータを毎年モニタリング
 バイオマス残渣で代替される化石燃料の
CO2 排出係数(計測値)
 熱生成装置での熱生成量(計測値)
 熱生成装置での電力消費量・化石燃料燃
焼量(計測値)
 バイオマス残渣の乾燥重量(計測値)
 バイオマス残渣の含水率(計測値)
 トラックの輸送回数、積載量、平均往復
輸送距離、燃料消費量
 バイオマス残渣の正味発熱量(ドライベ
ース)
(計測値)
 化石燃料の正味発熱量(ドライベース)
(計測値)
 熱生成装置でのCH4排出係数(計測値)
 その他、多くのパラメータ
小規模CDM 方法論
AMS I.C. Thermal energy production with or
without electricity
提案MRV 方法論
 化石燃料利用に代えて再生可能エネルギー
技術(太陽熱、再生可能バイオマス等)を
用いて利用者に熱エネルギーを供給する
 バイオマスベースのコジェネシステム含む
 設備容量は45MWth 以下
 既存の設備の改善や改修も対象
 固形バイオマス燃料を用いる場合、再生可
能バイオマスのみを用いたことを証明する
 プロジェクト参加者が固形バイオマス燃料
の生産者でない場合、プロジェクト参加者
と生産者は、固形バイオマス燃料が再生可
能バイオマスを起源とすることをモニター
できるよう、契約関係に無ければならない
 その他
 プロジェクトサイトの熱や電力を生成する
すべてのプラント
 プロジェクトプラントが接続されているグ
リッドにつながれているすべての発電所
 プロジェクトによるエネルギーの供給を受
ける工業、商業、住居施設
 固形バイオマス燃料プロジェクトの場合、
バイオマス残渣を加工するプラント
 バイオマスを輸送する距離が 200km を超
える場合、その行程
 その他
 簡単化したベースラインは、
「プロジェクト
が無かった場合の技術による化石燃料消費
量」×「化石燃料の排出係数」
 既存施設とは、プロジェクトの開始日から
少なくとも3 年間は稼働していた施設
 既存施設の場合、ベースラインは少なくと
も 3 年以内の過去データにより設定する
 最低1 年間のデータが必要である
 データが全く無い場合には、プロジェクト
実施前に実測定をしなければならない
 その他
 指定された方法により追加性を証明
 暖房熱源用ボイラの燃料として農業
残渣(非収穫部)燃料によって化石
燃料が代替されること
 新規にバイオマスボイラ(ボイラ容
量45kW 以上)を導入すること
 使用される農業残渣は未利用のもの
であること
 ボイラで産生した熱は発電に使わな
い
 プロジェクトでの供給熱量、ベースライン
施設の熱効率、CO2 排出係数により算定
 既存施設のリプレース時期を特定し、ベー
スライン排出量の推定に反映しなければな
らない
 CH4 以外はCDM 方法論と同じ
 ただし、様々な保守的補正は必要無
し
 サイトでの化石燃料/電力消費に伴う CO2
排出量
 その他、プロジェクトに伴う相当の排出量
 CH4 以外はCDM 方法論と同じ
 小規模方法論では、輸送距離が
200km 以下の場合はこの排出を無
視できるが、この方法論では、リフ
ァレンス排出量に保守的なデフォル
ト係数をかけて算定する手法を用意
 対象外
 バイオマス残渣の収集・加工・輸送がプロ
ジェクトバウンダリー外の場合、これらか
らの排出はリーケージとして扱う
 バイオマス残渣の輸送距離が 200km 以下
の場合はこのプロセスは無視できる
主に以下のパラメータを毎年モニタリング
 施設の継続的な稼働状況
 熱生成装置での熱生成量(計測値)
 熱生成装置での電力消費量・化石燃料燃焼
量(計測値)
 バイオマスの消費量(計測値)
 バイオマスの含水率、発熱量(計測値)
III-43
 CH4 以外はCDM 方法論と同じ
 適格性要件をクリアするなど簡単な
アセスメントで、
「リファレンスシナ
リオが化石燃料であることを特定」
できるようにする
 適格性要件をクリアすることで証明
最も簡素化したオプション
 熱生成装置での熱生成量(計測値)
のみ
H24 MRV DS
表 III- 4-2
最終報告書(詳細版)
ボイラの燃料転換の CDM 方法論を適用したプロジェクト(登録済)
AM0036 を適用した CDM プロジェクト(登録済の案件全て)
登録日
タイトル
ホスト
国
排出
削減量
概要
クレジット発行状況
(見込)
tCO2eq
ボイラーの燃料転換
中
1
発行申請無し
(化石燃料→竹、製材端材、
国
4
籾殻、稻わら等)
5
熱量をモニタリング
,
1
7
7
ボイラーの燃料転換
55,288 発行申請無し
(化石燃料→製材端材)
熱量をモニタリング
2011.10.14
Liuyang Project of Fossil Fuel
Switch to Biomass Residues in
Boilers for Heat Generation
2011.9.29
Fuxin Fuel Switch from Coal to 中国
Biomass Residues Project in
Jilin City, Jilin Province,
P.R.China
MNI Renewable Energy Plant マ レ ー ボイラーの燃料転換
73,567 以下の期間のクレジッ
シア (化石燃料→パームオイル工
トが発行申請済
場搾油残渣(EFB, PKS 等))
2011.10.1-2012.4.30
熱量をモニタリング
2012.5.1-2012.12.31
Fuel switch from fossil fuel to インド ボイラーの燃料転換
74,650 発行申請無し
biomass residues for
(化石燃料→林業・農業バイ
cogeneration in integrated pulp
オマス残渣)
and paper unit of ITC PSPD at
熱量をモニタリング
Bhadrachalam
Incauca S. A. Fuel Switch from コ ロ ン ボイラーの燃料転換
35,140 以下の期間のクレジッ
Coal to Green Harvest Residues ビア (化石燃料→サトウキビの葉
トが発行申請済
CDM Project
等)
2009.10.15-2012.12.3
熱量をモニタリング
1
2011.9.22
2011.6.7
2008.10.16
2007.12.21
2007.5.20
Biomass thermal energy plant – マ レ ー ボイラーの燃料転換
128,587
Hartalega Sdn.Bhd, Malaysia シア (化石燃料→パームオイル工
場搾油残渣(EFB, PKS 等))
熱量をモニタリング
Mondi Richards Bay Biomass 南 ア フ ボイラーの燃料転換
184,633
Project
リカ (化石燃料→木材チップ、プ
ランテーション残渣等)
熱量をモニタリング
181,300 CER 発行済
2007.12.21-2010.12.3
1分
CER 発行却下
2005.10.1-2007.3.31
分
以下の期間のクレジッ
トが発行申請済
2005.10.1-2007.3.31
AMS I.C.を適用した CDM プロジェクト(登録済 PJ の一例)
登録日
2007.4.8
タイトル
Boiler Fuel Conversion at
Perstorp
Chemicals
India
Private Limited (PCIPL), Vapi,
India
project design document
(1010 KB)
ホスト
国
排出
削減量
概要
クレジット発行状況
(見込)
tCO2eq
ボイラーの燃料転換
イ
1
21,767 CER 発行済
(化石燃料→おが屑等を使っ
ン
2005.1.1-2007.8.31
7
分
たブリケット)
ド
以下の期間のクレジッ
,
ブリケットの重量ベースによ
トが発行申請済
1
る排出削減量計算
2007.9.1-2008.8.31
7
蒸気量等もモニタリング
8
III-44
H24 MRV DS
(3)
最終報告書(詳細版)
MRV 方法論適用の適格性要件
本方法論は、以下の要件をすべて満たすプロジェクトに適用することができる。
【適格性要件】
要件 1:暖房熱源用ボイラの燃料としてバイオマス残渣(非収穫部)燃料によって化石燃料が代替
されること
要件 2:新規にバイオマスボイラ(加工しないバイオマス残渣もしくはペレットを燃焼させるもので、
ボイラ容量 45kW 以上、ボイラ効率 0.8 以上)を導入すること
要件 3:使用されるバイオマス残渣は未利用のものであること
要件 4:ボイラで産生した熱は発電に使わない
【追加的排出削減効果がもたらされる理由】
要件 1:暖房熱源用ボイラで使用されていた化石燃料をバイオマス残渣で代替することにより、化
石燃料の燃焼により排出されていた二酸化炭素を削減することを保障する。
要件 2:既存ボイラをバイオマス燃焼用に用いることはできない。したがって、プロジェクトが実施さ
れない場合に既存ボイラで使用される燃料は化石燃料である。これによって、バイオマス
残渣によって代替される前の燃料が化石燃料であったことを保障する。
化石燃料をバイオマス残渣で代替するためには新規にボイラ設備に投資をする必要
がある。現地でのヒアリングによれば、モルドバの現状においては、導入されているバイオ
マスボイラは、外国からの無償援助など国際支援によるもので、ローカルの資金のみで賄
われている事例はない。したがって、プロジェクトがない場合、モルドバ独自の資金でバイ
オマスボイラを普及させることは難しい。
新規に導入するボイラに要求する条件として、バイオマス用のボイラであること、
すなわち麦藁などのバイオマス残渣もしくはバイオマス残渣から製造されたペレ
ットを燃料とするボイラと規定し、ボイラ効率は既存ボイラである石炭ボイラの
0.67 を上回る 0.8 以上とした。ボイラ効率 0.8 は、現状においてモルドバ国内で稼
働しているバイオマスボイラにおける下限値である。なお、現地調査によれば、バ
イオマスボイラにおいて化石燃料との混焼は行われていない。
また、ボイラ容量を 45kW 以上とし、小規模なものを除外した。その理由は、
この方法論が基本的に積算熱量計の設置を前提としていることから、家庭用ボイラ
など小規模なものについては相対的にコスト負担が大きくなることを考慮したこ
とによる。なお、小規模であるとして排除する閾値であるボイラ容量 45kW につ
いては、小規模 CDM 方法論 AMS I.C. Thermal energy production with or
without electricity に準じた。
要件 3:プロジェクトが実施されない場合でもエネルギー利用されていたバイオマス残渣は対象と
しないこと、及びエネルギー用途以外の他の用途への有効活用を妨げるものではないこ
とを保障する。
III-45
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
モルドバにおいては、家庭用の暖房燃料に薪やトウモロコシの茎などバイオマス
残渣が使われていることがあるが、そのようにすでにエネルギー利用されているバ
イオマスについては追加的な二酸化炭素削減にならないので、本プロジェクトの対
象としない。
また、麦藁を畑に鋤き込んで土質を良くするために利用したり、干ばつ対策とし
て麦藁やトウモロコシの茎の刈敷を行って水分の蒸発を防ぐ対策にするなど、他の
用途への利用もみられるが、すでに利用されているバイオマス残渣は本プロジェク
トの対象をせず、これらの有効利用を妨げないこととする。
したがって、本プロジェクトの対象となるバイオマス残渣はプロジェクトがなけ
れば、畑に放置、野焼き、廃棄されていた未利用のものに限定される。
また、近年モルドバにおいては、湿地帯に自生する葦(Reed)のエネルギー利
用が注目されるようになってきている。モルドバ環境省によれば、葦(Reed)は
刈らなければ野焼きにされる可能性が高いことから、環境省としては野焼きを避け
たいとのことである。また、葦(Reed)の収穫は保護区でなければ法的に問題は
なく、保護区だとしても許認可を得れば収穫は可能である。このように、モルドバ
政府の意向が高いことから、将来的には、葦(Reed)がバイオマスボイラの燃料
として利用される可能性があるが、本方法論においては、葦(Reed)はバイオマ
ス残渣ではないことから、プロジェクトの対象とはならない。
要件 4:既存ボイラの代替としての熱エネルギー利用に限定する。
本プロジェクトで対象とするボイラはすべて暖房専用であり、コジェネレーショ
ンを行っている事例はない。方法論を簡素にすることを優先し、本プロジェクトで
は、産生した熱を発電に利用しないものを対象とする。
【利用されているバイオマス残渣】
家庭で暖房燃料や餌に利用されるバイオマス残渣
III-46
トウモロコシ残渣の刈敷
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
【未利用のバイオマス残渣及びバイオマス】
野焼きにされるバイオマス残渣
湿地帯の葦(Reed)
(4) 算定方法オプション
リファレンス排出量及びプロジェクト排出量の計算方法は「4.(2)MRV 方法論の概要」に概説し
たとおりである。
算定方法は、【算定方法のオプション】に示すように、リファレンス排出量をボイラに設置した積
算熱量計の測定値に基づいて求めるか、あるいはボイラに投入した燃料の量に基づいて求める
かによって大別され、さらにプロジェクト排出量を求めるにあたってデフォルト値を使用するかどう
かによって 2 つに分けられる(図 III- 4-2 算定方法オプション)。
1) リファレンス排出量
このプロジェクトにおいては、プロジェクト排出量が小さいことから、リファレンス排出量の精
度が排出削減量の精度に大きな影響を及ぼすことになる。
ボイラに積算熱量計を設置する方法(算定方法 1-1、1-2)は産生する熱量を直接測定するこ
とから精度を確保でき、かつモニタリングも簡便であることから、前述したように、この方法論で
は、基本的にこれらの方法を用いることを前提としている。
リファレンス排出量を投入したバイオマス残渣の量に基づいて計算する場合(算定方法 2-1、
2-2)、モニタリングにはいくつかの問題点が生じる。例えば麦藁のベールが大きい場合、トラッ
クスケールがないと重量測定は不可能であること、ベールが小さい場合は簡易なはかりがあれ
ば重量を測定することはできるが手間がかかること、また、ベール 1 個あたりの重量にもばらつ
きがあることなどがあげられる。また、麦藁以外にブドウの剪定枝やアカシアや松などの薪が混
焼される場合があり、それらの投入量についても誤差が伴う。含水率についても水分量を測定
する機器が必要であり、やはりモニタリングの労力を要し、誤差も大きいと考えられる。
「4.(12)モニタリングの実施」に第 1 モニタリング期間及び第 2 モニタリング期間における、積
算熱量計に基づいた計算値と投入燃料の量に基づいた計算値を相互に比較した結果を示す
が、両者の間には大きな乖離があり、後者が前者を大きく上回っている。この要因としては、前
述した重量測定の誤差及び含水率の誤差の他、バイオマスボイラの稼働の仕方によるボイラ
効率の変動が考えられる。ボイラ効率はメーカーのカタログ値に基づいて設定していたが、ボイ
ラは暖房期間中を通してフル稼働を続けるわけではなく、運転が断続的であったり、燃料の投
III-47
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
入が少量であったりすることからボイラ効率も一様ではなくカタログ値を下回っていると考えられ
る。
ボイラに積算熱量計を設置する方法(算定方法 1-1、1-2)は実際に産生する熱量を直接測
定していることからより誤差が小さく正しいとみなすことができることから、算定方法 1-1、1-2 の
結果がより正しいとすると、算定方法 2-1、2-2 は排出削減量をかなり過大評価することになり、
適切ではない。そのため、算定方法 1-1、1-2 の結果に基づき、バイオマスボイラの効率に補正
係数をかけることとした。
データの精度面、測定機器の費用面、モニタリングの労力面から総合的に勘案すると、将来
的には積算熱量計を用いてモニタリングするプログラム型方法論に発展させることも考えられ
る。
2) プロジェクト排出量
プロジェクト排出量はリファレンス排出量に比べかなり小さいことから、デフォルト値を使う選
択肢を設定し、プロジェクト固有値(事業固有値)を用いて計算する方法とどちらかを選択でき
るようにした。リファレンス排出量に対するデフォルト係数は、バイオマス残渣の直接燃焼の場
合とペレット化する場合の 2 通りについて設定している。
【算定方法のオプション】
算定方法 1-1:リファレンス排出量はボイラの積算熱量実測値に基づいて算定し、プロジェクト実施
時のバイオマス残渣の収集・輸送・投入に伴う化石燃料消費による CO2 排出量は
デフォルト値を用いる。
算定方法 1-2:リファレンス排出量はボイラの積算熱量実測値に基づいて算定し、プロジェクト実施
時のバイオマス残渣の収集・輸送・投入に伴う化石燃料消費による CO2 排出量は
プロジェクト固有値を用いて算定する。
算定方法 2-1:リファレンス排出量はバイオマス残渣の年間消費量に基づいて算定し、プロジェクト
実施時のバイオマス残渣の収集・輸送・投入に伴う化石燃料消費による CO2 排出
量はデフォルト値を用いる。
算定方法 2-2:リファレンス排出量はバイオマス残渣の年間消費量に基づいて算定し、プロジェクト
実施時のバイオマス残渣の収集・輸送・投入に伴う化石燃料消費による CO2 排出
量はプロジェクト固有値を用いて算定する。
はい
プロジェクト実施時の化石燃料消費
はい
による排出量にデフォルト値
を使用
ボイラの
積算熱量を測定
できる
いいえ
いいえ
プロジェクト実施時の化石燃料消費
はい
による排出量にデフォルト値
を使用
いいえ
図 III- 4-2
算定方法オプション
III-48
算定方法1-1
算定方法1-2
算定方法2-1
算定方法2-2
H24 MRV DS
(5)
最終報告書(詳細版)
算定のための情報・データ
表 III- 4-3
情報・データ
ボイラの積算熱量【GJ/y】
バイオマス残渣の年間消費
量【t/y】
情報・データ一覧
モニタリング(M)/
事業固有値設定(S)/
デフォルト値設定(D)
M(Op.1-1,1-2)
M(Op.1-2,2-1,2-2)
当該事業・活動における
整備状況
備考
積算熱量計で測定
バイオマス残渣/ペレッ
トの単位湿潤重量(ベー
ル 1 個/バケツ 1 杯)を
調査し、消費個数で把握
モ ル ドバ 農業 大 学 での
測定値
水分量計で多くのサンプ
ルを実測し、貯蔵状態別
に保守的な値を設定
カタログ値に補正係数を
かける
保守的な値として1とす
る
モルドバ環境省へのヒア
リングに基づく
モニタリング頻度は毎月
モニタリング頻度は毎月
0.42L/t
バイオマス残渣の真発熱量
【GJ/t】
バ イ オマス残 渣 の 含 水 率
【%】
D(Op.2-1,2-2)
ボイラ燃焼効率(プロジェク
ト)
ボイラ燃焼効率(リファレン
ス)
ボイラ化石燃料の CO2 排出
係 数 (リ ファ レ ン ス)
【tCO2/GJ】
バイオマス残渣1t当りのバ
イオマス残渣の収集に使う
化石燃料使用量【L/t】
S(Op.2-1,2-2)
バイオマス残渣を輸送する
トラックの平均積載量
【t/truck】
バイオマス残渣を輸送する
トラックの平均輸送距離
【km/period】
ペレット燃料を輸送するトラ
ックの平均積載量【t/truck】
ペレット燃料を輸送するトラ
ックの平均輸送距離
【km/period】
バイオマス残渣1tあたりの
ボイラ投入に使う化石燃料
使用量【t/y】
ペレット燃料の年間消費量
【t/y】
ペレット燃料の真発熱量
【GJ/t】
ペレット燃料の含水率【%】
S(Op.1-2,2-2)
モルドバの大農家へのヒ
アリングにより、バイオマ
ス残渣1tを収集するの
に使われる化石燃料の
量を算定。
ヒアリングにより調査
S(Op.1-2,2-2)
ヒアリングにより調査
年 1 回ヒアリングで確認・
更新
S(Op.1-2,2-2)
ヒアリングにより調査
S(Op.1-2,2-2)
ヒアリングにより調査
年 1 回ヒアリングで確認・
更新
年 1 回ヒアリングで確認・
更新
S(Op.1-2,2-2)
購入伝票等により調査。
年 1 回ヒアリングで確認・
更新
M(Op.1-2,2-1,2-2)
モニタリング頻度は毎月
ペレット燃料製造に使う電
力量
【MWh/y】
輸送用化石燃料の CO2 排
出係数【tCO2/t】
輸送用化石燃料の真発熱
量【GJ/t】
電 力 の CO2 排 出 係 数
M(Op.1-2,2-1,2-2)
運転日誌に投入量を記
載
モ ル ドバ 農業 大 学 での
測定値
水分量計で実測し、保守
的な値を設定
毎月の購入伝票が整理
されている
【tCO2/MWh】
D(Op.2-1,2-2)
D(Op.1-1,1-2,2-1,2-2)
D(Op.1-1,1-2,2-1,2-2)
S(Op.1-2,2-2)
D(Op.2-1,2-2)
D(Op.2-1,2-2)
D(Op.1-2,2-2)
D(Op.1-2,2-2)
S(Op.1-2,2-2)
真発熱量は絶乾の値
貯蔵状態は、建屋内、屋
根のみ、野外に野積の 3
パターン
無煙炭 anthracite
年 1 回ヒアリングで確認・
更新
11%、根拠は 16 頁参照
モニタリング頻度は毎月
モルドバ環境省へのヒア
リングに基づく
モルドバ環境省へのヒア
リングに基づく
モルドバ環境省へのヒア
0.4434(2010 年)。年 1 回ヒ
リングに基づく
アリングで確認・更新
III-49
H24 MRV DS
(6)
最終報告書(詳細版)
デフォルト値の設定
算定の簡略化のため、表 III- 4-4 に示す以下の項目についてデフォルト値を設定した。
表 III- 4-4
項目(単位)
本方法論で使用するデフォルト値
種類
値
CO2 排出係数
(tCO2/GJ)
石炭(無煙炭)
0.0983
CO2 排出係数
(tCO2/GJ)
軽油
0.0741
CO2 排出係数
(tCO2/km)
ディーゼル
トラック
輸送
距離当たり
0.0011
化石燃料の真発熱
量(GJ/kl)
軽油
35.7
既存ボイラのボイ
ラ効率
石炭ボイラ
1
・バイオマスペレット
・バイオマス残渣
バイオマス残渣の
建屋内、屋根のみ
含水率(%)
野ざらし
・薪
wheat straw
バイオマス残渣の
真発熱量(GJ/t)
プロジェクト排出
係数
soya straw
corn
Sunflower shell
reed
wood (elm)
wood (acasia)
vine
wood (pine)
wood (poplar)
wood (wicker)
weeping willow
furniture fabrication
residues
加工しないバイオ
マス残渣
ペレット
出典
Implied CO2 emission factors has been
deduced from the National Inventory Report
of the Republic of Moldova
(information from Climate Change office,
Ministry of Environment of Moldova)
Diesel HGV Road Freight Conversion
Factors, 2011 Guidelines to Defra / DECC's
GHG Conversion Factors for Company
Reporting, Department of Energy and
Climate change,UK
Instruction for compiling Statistical Report
No.1-BE “Energy Balance”, approved
through Order No. 88 from 3 October 2012 に
基づく 42.54TJ/kt から換算。軽油の密度は
0.84t/kl
11%
20%
30%
40%
18.04
18.04
17.95
20.02
17.60
19.10
20.11
18.92
19.99
19.18
19.18
18.94
18.92
0.02
現地調査結果に基づく
本調査においてモルドバ農業大学に測定を
依頼して下記の報告書を得て、設定。
Faculty of agricultural Engineering and Auto
transportation
Department of Machinery maintenance and
Material engineering
Laboratory of Solid Biofuels
State Agrarian University of Moldova
Report regarding the scientific and
innovational activity, based on the contract
“Assessment of calorific value of
lignocelluloses biomass collected from
different climatic zones of the Republic of
Moldova”
本調査に基づく
0.10
以下に、バイオマス残渣の含水率、バイオマス残渣の真発熱量、プロジェクト排出係数
のデフォルト値設定のための調査、検討結果について記載する。
III-50
H24 MRV DS
1)
最終報告書(詳細版)
バイオマス残渣の含水率
バイオマス残渣の含水率は水分計により測定し、平均値と変動の範囲、95%信頼区間を求め、
保守的なデフォルト値を検討した。現地調査における含水率の測定は、各サイトの保管施設及び
ボイラ脇の保管場所において、ペレット及び麦藁のベールについては牧草水分計(M70X-7000)、
薪については薪含水率計(モルソー・モイスチャーゲージ)を用いて行った(図 III- 4-1)。
ペレットの含水率は比較的安定していると考えられたが、麦藁については保管状況はサイトに
より異なっており含水率も保管の仕方によって異なることが想定された。各サイトの保管状況の概
要は以下の通りである。
① 各サイトのバイオマス残渣の保管状況
バイオマス残渣は畑から収集した後、ボイラサイトからはある程度離れた 1 次保管庫に集積さ
れ、その後、ボイラサイトに近い 2 次保管庫もしくはボイラ脇に野積みで保管される。混焼される
薪も同様である。
ペレットについては、サイトにより異なるが、ボイラ室内もしくはボイラに近いところに保管庫を
有している。
表 III- 4-5 に各サイトの保管の概要を、また、写真には各サイトの保管庫や保管状況を示す。
表 III- 4-5 各サイトのバイオマス残渣の保管の概要
サイト
①Hirtopul Mare 村幼稚園
燃料の種類
1次保管
2次保管
ボイラ脇に野ざらし
(せいぜい1日間)
麦藁 bale (大)
倉庫
②Hirtopul Mare 村 Gymnasium
麦藁 bale (小)
畑に野積/
倉庫(すきま多く雨雪
が入り込む)
ボイラ脇の倉庫
③Chiscareni 村 Lyceum & Gymnasium
麦藁 bale (小)
薪
屋根のみの野外倉庫
ボイラに近い倉庫
④Viisoara 村 Gymnasium
麦藁 bale (小)
薪
倉庫
ボイラ脇に野ざらし
ビニールで覆われる
(せいぜい1日間)
⑤“Moldagrotehnica” SA
⑥Fundurii Vechi 村コミュニティセンター
⑦Balatina 村コミュニティセンター
ペレット
(ヒマワリ種皮)
ペレット
(ヒマワリ種皮)
ペレット
(ヒマワリ種皮)
III-51
ボイラに近い保存庫
ボイラ室内に保管
300m 先に保管施
設あり
ボイラ室内に保管
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
◆Hirtopul Mare 村 幼稚園
使用されている麦藁ベールは、直径 140cm、高さ 120cm のロール状(円筒形)で、重量は 120
~150kg である。1 次保管用倉庫は十分な規模があり、雨風も入らず良好な状態でバイオマス残
渣が保管できる。この保管庫からトラクタによって使用する分のベールが幼稚園敷地内まで運ば
れる。園内では、露地に保管されるため、雨や雪により表面が濡れることはあるが、長時間には
及ばない。
1 次保管倉庫
(National Training Center オーナー所有)
2 次保管場所(ボイラ脇)
◆Hirtopul Mare 村 Gymnasium(小・中学一貫校)
麦藁は、キューブ状(直方体形)で重量は 1 個あたり約 16kg である。2012 年 10 月以降、約 3km
離れた Hirtopul Mic 村の藁供給業者が提供するようになった。1 次保管庫は傷みが顕著で、屋根
や壁のすきまからは雨や雪がかなり侵入する状態である。小学校のボイラへの藁の供給は、この 1
次保管庫からと直接畑からの 2 通りある。1 次保管庫においても雨や雪が侵入するが、畑にあるも
のは野ざらしで保管されている。畑までの道路は整備がよくないため、天気が良く道路が通行可
能な時は畑から直接小学校に藁を運搬し、雨天時に道路状態が悪く、トラックが収穫地まで行け
ない場合に、1 次保管施設の藁を供給することになっているとのことであった。このような事情から、
畑のストックがなくなるまでは畑にあるものが優先的に供給される。後述するように、これらの藁は
他のサイトに比較して含水量が多く、現地調査で訪問した際にもボイラから黒っぽい煙が出てい
たことから、水分過多による不完全燃焼が起こっている可能性がある。
一次保管倉庫(Hirtopul Mic 農家所有)
穴や隙間から雨や雪が入る
III-52
二次保管庫(ボイラ脇)
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
◆Chiscareni 村 Lyceum & Gymnasium(小・中・高一貫校)
1 次保管庫は屋根のみであるが、ある程度の雨雪は防げる。積み重ねられている藁の含水率
は、上部より下部、南側より北側が多い傾向がみられる。2 次保管庫は学校敷地内のボイラに近い
場所にあって、建屋はしっかりしており、雨や雪が入り込むことはないと思われる。
このサイトでは薪を麦藁とともに混焼している。薪は Chisicareni 村長の所有林から調達するため
無料で調達できる。
1 次保管庫(野外倉庫)
2 次保管庫(小学校横)
◆Viisoara 村 Gymnasium(小・中一貫校)
1 次保管庫は、隙間があり、雨や雪がいく分侵入する。1 次保管庫からボイラまでは馬で藁を
運び、ボイラ前に積み重ねる。この場所での保管は 1 日程度と考えられるが、ある程度の雨や雪を
防ぐため、上からビニールシートがかけられている。
このサイトでも薪との混焼が行われており、主な薪は松の一種である。薪も藁と同様に、1 次保管
庫及び 2 次保管場所で保管されている。
1 次保管庫
2 次保管場所
III-53
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
◆“Moldagrotehnica” SA (Balti 市)
Moldagrotehnica はボイラメーカーで、バイオマスボイラも製造している。ペレットはボイラから
10m 程度離れた貯蔵庫で保管されており、管理は良好である。ペレットはボイラまで以下に示すコ
ンテナによって運ばれる。
ペレット貯蔵庫
ペレットをボイラまで運ぶコンテナ
◆Fundurii Vechi 村コミュニティセンター
ペレットはペレット業者から運びこまれ、2012 年 10 月当時は、ボイラ室内に袋詰めされたペレ
ットが積み上げられ保管されていたが、2013 年 2 月時点では、コミュニティセンター内の一室を
ペレット 2 次保管庫として使用している。1 次保管施設はない。
ボイラ室内に保管されているペレット袋(奥)
現在の保管状況
◆Balatina 村コミュニティセンター
コミュニティセンターから約 100m のところにある公共施設の一室を保管施設として利用しており、
そこから馬又は車でボイラ室に搬入される。ボイラ室内にはペレットの袋が一時的にストックされて
いる。
III-54
H24 MRV DS
保管施設
最終報告書(詳細版)
ボイラ室内に保管されているペレット
② 含水率の測定結果
各サイトのバイオマス残渣保管施設/保管場所におけるペレットと麦藁の含水率の測定結果
(2012 年 11 月 27 日~2013 年 2 月 15 日)を、表 III- 4-6、表 III- 4-7 に示す。表 III- 4-6 の値は、
それぞれ 10 回測定した値を平均したもので、表 III- 4-7 の値は、その標準偏差である。
ペレット(Moldagritehnica、Balatina コミュニティセンター、Fundurii Vechi コミュニティセンター)は、
麦藁に比較して含水率が低く、期間中の平均で 4.6~8.4%である。また、標準偏差の平均も 1.3~
1.6 と、ばらつきも小さく安定している。
一方、麦藁については保管施設/保管場所により差異がある。特に顕著なのは、Hirtopul
Mare Gymnasium で、他のサイトに比較して、含水率が高く、標準偏差も大きい。
表 III- 4-6 各バイオマス残渣保管施設/保管場所におけるペレットと麦藁の含水率平均値
Hirtopul Mare Gimnasium Hirtopul Mare Kindergarten
Date
27/11/12
29/11/12
06/12/12
07/12/12
12/12/12
26/12/12
27/12/12
04/01/13
11/01/13
17/01/13
18/01/13
24/01/13
25/01/13
31/01/13
01/02/13
07/02/13
08/02/13
14/02/13
15/02/13
AVERAGE
MOISTURE
CONTENT,
%
Primary
storage
Secondary
storage
Primary
Storage
7.7
11.9
9.4
Near
kindergarten
(outside)
Chiscareni Lyceum
Moldagro
tehnica
Primary
storage
Secondary
storage
Storage
9.7
9.2
11.8
9.7
4.7
3.1
Viisoara
Primary
storage
Balatina Fundurii
MCC
Vechi
Secondary
Storage Storage
(outside)
9.6
9.3
14.6
10.2
11.7
8.2
9.7
9.4
2.0
10.2
8.7
9.9
13.0
7.1
9.5
13.3
8.4
11.6
9.4
3.9
15.7
8.3
9.7
4.3
9.9
6.7
8.7
6.1
8.4
8.6
8.9
8.8
9.4
9.7
4.7
6.3
5.0
8.8
8.6
11.5
10.9
7.5
11.4
11.3
12.0
8.7
11.5
8.4
9.1
9.5
III-55
9.6
4.6
10.5
5.3
8.4
11.6
5.2
7.7
9.7
10.2
5.8
8.2
9.2
10.0
5.3
8.4
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
表 III- 4-7 各バイオマス残渣保管施設/保管場所におけるペレットと麦藁の含水率標準偏差
Hirtopul Mare Gimnasium Hirtopul Mare Kindergarten
Date
27/11/12
29/11/12
06/12/12
07/12/12
12/12/12
26/12/12
27/12/12
04/01/13
11/01/13
17/01/13
18/01/13
24/01/13
25/01/13
31/01/13
01/02/13
07/02/13
08/02/13
14/02/13
Primary
storage
Secondary
storage
Primary
Storage
2.0
5.5
2.3
Near
kindergarten
(outside)
Chiscareni Lyceum
Moldagro
tehnica
Primary
storage
Secondary
storage
Storage
3.0
0.4
3.6
0.6
2.1
2.3
Primary
storage
Balatina Fundurii
MCC
Vechi
Secondary
Storage Storage
(outside)
1.3
0.9
6.4
5.9
6.6
0.7
3.6
1.6
0.3
0.8
0.8
0.4
4.5
1.4
0.2
7.5
0.6
2.4
0.8
1.1
5.3
0.7
0.7
1.2
0.7
0.5
5.4
0.9
2.6
1.6
1.0
1.2
1.5
0.5
2.4
1.0
1.9
0.8
0.8
1.1
1.5
0.9
3.4
0.8
3.9
15/02/13
AVERAGE
STANDARD
DEVIATION
Viisoara
3.2
4.4
1.3
1.7
1.5
1.5
1.3
0.8
1.8
0.6
2.6
1.7
2.6
0.4
0.7
1.1
1.7
1.4
1.2
1.6
1.3
図 III- 4-3 及び図 III- 4-4 は Chiscareni 村及び Hirtopul Mare 村において 2012 年 9 月末~10
月初めに測定した麦藁ベールの含水率で、積み上げられているベールの場所別の平均値を見た
ものである。棒グラフは各 10 回の測定値から求めた平均値で、エラーバーは標準偏差である。
Chiscareni 村の 2 次保管施設は屋根のみであることから、ある程度風雨や日射にさらされ
る。
図 III- 4-3 によれば、麦藁ベールの含水率は、北側は南側に比べて高く、日射が当たるか
当らないかで含水率に大きな差が出ることがわかる。その中間である西側のベールは高さ
による違いが出ており、低い場所にあるものは含水率が高い。また、これと同様の傾向は
建屋である二次保管施設のベールにもみられ、低い場所にあるベールの含水率が高い場所
にあるそれよりも高くなっている。
Hirtopul Mare(倉庫(農家))については、この時期は冬季に見られた高い含水率と大き
な標準偏差は見られない。前述したように、2012 年 10 月以降、麦藁供給業者が変わった
ことにより、保管状態が悪化していることにより、表 III- 4-6 の結果となっている。
以上を勘案すると、当初想定していたように含水率のデフォルト値を設定するにあたっ
て、バイオマス残渣がその時点で保管されている「建屋」、「屋根のみ」、「野ざらし」とい
ったカテゴリーに単純に分類するだけでは、実際の状況を反映しない可能性がある。
III-56
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
屋外倉庫:1 次保管施設、倉庫(小学校横)
:2 次保管施設
図 III- 4-3 含水率測定結果(Chiscareni)
倉庫(NTC)
:Hirtopul Mare Kndergarten 一次保管施設
倉庫(農家)
:Hirtopul Mare Gymunasium 一次保管施設
図 III- 4-4
含水率測定結果(Hirtopul Mare)
これまでに、測定で得られたすべての含水率データを用いて、麦藁ベールの含水率のデフォ
ルト値を何等かのカテゴリー別に設定するための解析を行った。
表 III- 4-8 は各サイトの保管施設/場所における麦藁ベールの保管カテゴリーと含水率統計値
を示したものである。単純にその時点の保管施設のカテゴリーで統計値をみると、各カテゴリーの
含水率の特徴が明らかにならない。実際には、麦藁ベールが長く保存されていた環境に応じた含
水率になるものと思われる。たとえば、Hirtopul Mare Gymunasium は、保管施設は 1 次、2 次とも
に建屋であるが、畑の野積み状態からボイラに直送されるものがあったり、1 次保管施設は雨風が
III-57
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
吹き込む状況であったりするために、他のサイトの建屋で保管されているものとは、含水率、標準
偏差ともに値に大きな隔たりがある。一方、Hirtopul Mare 幼稚園や Viisoara Gymnasium では、1
次保管施設からその日の利用分を運搬してボイラ脇に積まれるが長期間にわたって野ざらしにな
るわけではない。したがって、保管カテゴリーはボイラに運ばれるまで長期に保存されていた保管
環境をもとに設定することにした。そのカテゴリーに基づいて、それぞれの含水率を統計した結果
が表 III- 4-9 である。その結果、「建屋内」と「屋根のみ」には大きな差異は見られず、野ざらしは大
きく異なっていた。95%信頼区間上限値は、それぞれ 9.9%、9.9%、13%となっているが、最大値が
それぞれ 19.5%、22%、28.4%となっていることを考慮し、保守的デフォルト値として、長期保存環
境に基づいたカテゴリーで、建屋内 20%、屋根のみ 20%、野ざらし 30%を設定した(表 III- 4-10)。
ペレットについては、表 III- 4-11 に示す統計より、95%信頼区間上限値は、それぞれ 5.4%、
5.8%、8.8%となっているが、最大値が 10%を超えるものがあったこと、また English handbook for
wood pellet combustions によれば、多くの場合ペレットの水分量は 5~10%であるとのことから保守
性を考慮して、11%をデフォルト値とした。
薪についても同様に、麦藁と薪の混焼が行われているサイトにおいてサンプル(マツ、アカシア、
ニレ)の含水率を測定し、表 III- 4-12 の統計値を得た。同様に最大値を考慮し、薪の含水率デフ
ォルト値は 40%とした。
表 III- 4-8 各サイトにおける麦藁ベールの保管カテゴリーと含水率統計値
サイト
保管施設カテゴリー
保管状態
長期保存状態を優先し
たカテゴリー
ベールの種類
平均
標準偏差
95%信頼区間
95%信頼区間上限値
最大値
最小値
データ数
Hirtople Mare Viisoara G.
K. Primary
Primary
建屋内
建屋内
雨雪侵入せず
雨雪侵入せず
建屋内
建屋内
Chiscareni L.
Secondary
Hirtople Mare
G. Primary
野ざらし
建屋内
建屋内
畑に野積み
雨雪侵入せず
雨雪侵入
屋根のみ
大 ロール型 小 キューブ型 小 キューブ型
8.5
8.5
9.5
2.0
2.1
2.1
0.5
0.4
0.4
9.0
9.0
9.9
17.7
13.1
22.0
5.0
2.0
2.0
90
60
90
Hirtople Mare
G. Secondary
建屋内
野ざらし
小 キューブ型
11.3
4.8
1.7
13.0
25.6
3.0
100
Hirtople Mare K. Viisoara G.
Secondary
Secondary
屋根のみ
雨雪侵入せず
野ざらし
Chiscazreni
L. Primary
側面は雨雪の
影響
野ざらし
野ざらし
短期(1日)
短期(1日)
ビニール覆い
屋根のみ
小 キューブ型 小 キューブ型
12.0
9.6
5.0
2.2
1.0
0.5
13.0
10.1
28.4
20.5
2.0
7.0
30
100
建屋内
建屋内
大 ロール型
小 キューブ型
10.0
1.6
0.4
10.4
18.0
6.5
60
9.1
2.6
0.7
9.7
19.5
3.5
60
表 III- 4-9 長期保存状態を優先した保管カテゴリー別二次保管施設/場所における含水率統計値
長期保存状態を優先し
たカテゴリー
サイト
平均
標準偏差
95%信頼区間
95%信頼区間上限値
最大値
最小値
データ数
建屋内
屋根のみ
野ざらし
Hirtople Mare K.
Viisoara G.
Chiscazreni L. Hirtople Mare G.
9.5
9.5
12.0
2.2
2.1
5.0
0.4
0.4
1.0
9.9
9.9
13.0
19.5
22.0
28.4
3.5
2.0
2.0
120
100
100
表 III- 4-10 保管カテゴリー別の含水率デフォルト値
長期保存状態を優先し
たカテゴリー
保守的デフォルト
建屋内
屋根のみ
20
III-58
野ざらし
20
30
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
表 III- 4-11 各サイトにおけるペレットの含水率統計値
【ペレット】
平均
標準偏差
95%信頼区間
Moldagritechnica Balatina Fundurii ペレット全体
5.0
5.3
8.4
5.9
2.3
1.6
1.5
2.5
0.4
0.5
0.4
0.4
95%信頼区間上限値
最大値
最小値
データ数
5.4
10.5
1.0
100
5.8
8.0
2.0
40
8.8
9.8
1.5
48
6.2
10.5
1.0
188
表 III- 4-12 各サイトにおける薪の含水率統計値
【薪】
平均
標準偏差
95%信頼区間
95%信頼区間上限値
最大値
最小値
データ数
Chiscareni L
26.7
4.6
1.6
28.3
40.0
21.6
30
Viisoara G
21.9
4.2
2.6
24.5
33.4
19.1
10
薪全体
25.5
4.9
1.5
27.0
40.0
19.1
40
バイオマス残渣の真発熱量
直接燃焼のバイオマス残渣及びペレットの真発熱量は、農作物の種類によって異なることから、
State Agrarian University of Moldova (モルドバ農業大学)固形バイオマス燃料研究室の Marian
Grigore 教授に測定を依頼し、結果が報告された。依頼内容は表 III- 4-13 のとおりである。
2)
表 III- 4-13
測定条件
モルドバ農業大学への依頼内容
絶乾状態(dry)の Law Heat Value (LHV)の測定
麦藁、大豆藁、葦(Reed)、トウモロコシ藁、ヒマワリ種殻、薪(ニレ)、薪(アカシ
バイオマス種類
ア)、薪(マツ)、薪(ポプラ)、籐、シダレヤナギ、ブドウの剪定枝、家具製造から排
出された木くず
サンプル
モルドバ国内の北部、中部、南部からそれぞれサンプルを採取
【モルドバ農業大学実験室】
ペレットボイラ(左)と乾燥装置(右)
粉砕機(左)と熱量測定器(中央)
III-59
H24 MRV DS
粉砕済みサンプル
最終報告書(詳細版)
Marian 教授(右)
表 III- 4-14 に各バイオマスの真発熱量の測定結果を示す。農業残渣バイオマスについて
は地域による差は大きくはないものの、肥料、土壌、天候、土地所有者等の違いによって
環境が異なるため、発熱量に違いが生じることもあるとのことである。特に、ヒマワリ、
トウモロコシ、麦は環境の影響を受けやすく、2012 年は干ばつであった。
木質バイオマスについては、木の年齢及び採取された部分(幹、枝)によって発熱量の
違いがあり、ブドウの剪定枝の年齢による真発熱量の違いは若木と老木では 10~15%の差
異となる。
各バイオマスの真発熱量はプロジェクト固有値としているが、今回の調査結果に示され
るように安定した値を得るにはさらに調査が必要であることが指摘されている。
表 III- 4-14
各バイオマスの真発熱量(GJ/t)
北部
中央部
18.115
平均
麦藁
18.043
大豆藁
18.035
トウモロコシ茎
18.156
17.971
17.712
17.946
ヒマワリの種殻
20.340
20.123
19.610
20.024
葦(Reed)
17.551
17.583
17.678
17.604
薪(ニレ)
19.433
18.965
18.897
19.098
薪(アカシア)
19.785
20.578
19.977
20.113
ブドウの剪定枝
19.086
19.274
18.406
18.922
薪(マツ)
20.356
19.619
19.988
19.176
19.176
薪(ポプラ)
17.973
南部
18.044
18.035
籐
19.176
シダレヤナギ
18.589
19.445
18.784
18.939
18.652
19.172
18.926
18.916
家具製造で排出され
た木くず
III-60
19.176
H24 MRV DS
3)
最終報告書(詳細版)
プロジェクト排出係数
プロジェクト排出量、つまりバイオマス残渣の収集、輸送、ペレット製造、投入に伴う CO2 排出量
は、リファレンス排出量に比較すると小さく、上限があると考えられる。
バイオマス残渣をそのまま燃料として投入する場合については、畑~保管庫~ボイラ間の距離
は小さく、運搬に馬車が用いられることもあるため、これらのプロセスにおける化石燃料利用は僅
少である。一方、ペレットの場合は、原料輸送が通常 2 ルート(畑~ペレット工場、ペレット工場~
ボイラ)想定され、輸送距離が大きい場合もありうること、及びペレット製造に電力を使用することか
ら、直接燃焼に比べるとプロジェクト排出量はやや大きいものの上限はある。
そこで本方法論では、排出削減量算定を簡易にするために、リファレンス排出量にファクターを
かけてプロジェクト排出量を求める手法を算定オプションとして加えた。このファクターを設定する
にあたり、ボイラの運転が第 1 モニタリング期間に比べ安定していたと考えられる第 2 モニタリング
期間について、各ボイラサイトにおけるリファレンス排出量とプロジェクト排出量を算定し、それらの
比を求めてみた(表 III- 4-15)。更新した方法論では、リファレンスシナリオがより保守的になったた
め、リファレンス排出量が小さくなったものの、麦わらボイラサイトにおいては、プロジェクト排出量
がリファレンス排出量の1~2%であることがわかる。また、ペレットボイラサイトにおいては、2つの
コミュニティセンターでやや値が大きい。これらのモニタリング期間は 1 か月に満たない短いもので
あったこと、ボイラの稼働開始後、ペレットの調達先が変更になったりしていることから、これらのサ
イトについては信頼性が低いかもしれない。
表 III- 4-15
第 1 モニタリング期間のリファレンス排出量とプロジェクト排出量
RE
ボイラサイト
PE
PE/RE
Hirtopul Mare 幼稚園
25.29
0.35
0.0138
Hirtopul Mare Gymnasium
14.15
0.23
0.0163
Chiscareni Lyceum & Gymnasium
44.00
0.92
0.0209
Viisoara Gymnasium
15.10
0.28
0.0185
“Moldagrotehnica” SA
11.87
0.12
0.0101
Funduri Vechi Community Center
1.99
0.13
0.0653
Balatina Community Center
1.24
0.16
0.1290
以上を考慮して、本方法論では、プロジェクト排出量のデフォルト係数として、麦藁ボイラについ
ては 0.02、ペレットボイラについては 0.10 を設定した。デフォルト係数については、この後より多く
のケース、また暖房期間全期間を通して試算し、必要に応じて見直したほうがよい。
III-61
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
事業固有値の設定方法
事業固有値は表 III- 4-16 のとおり設定した。
(7)
表 III- 4-16
項目
電気の CO2 排出係数
(tCO2/MWh)
バイオマス残渣 1 トンあたり
の収集に使う化石燃料使用
量(L/t)
バイオマス残渣を輸送するト
ラックの平均積載量【t/truck】
バイオマス残渣を輸送するト
ラックの平均輸送距離
【km/period】
ペレット燃料を輸送するトラ
ックの平均積載量【t/truck】
ペレット燃料を輸送するトラ
ックの平均輸送距離
【km/period】
バイオマス残渣1tあたりの
ボイラ投入に使う化石燃料
使用量【t/y】
Hirtople Mare G.
バ
Hirtople Mare K.
イ
Viisoara G.
オ
マ
Chiscareni L.
ス
Moldagrotechnica
ボ
イ
Fundurii Vechi
ラ
Comminity Center
効
率
Balatina Community
Center

事業固有値
種類
値
電気
0.4434
軽油
0.42
出典
Moldova 2010 Grid Emission Factor calculation,
tCO2/MWh (for the second and third crediting
period). Author – Dr. Ion Comendant (information
from Climate Change office, Ministry of Environment
of Moldova)
モルドバの大農家へのヒアリングにより、バイオ
マス残渣1tを収集するのに使われる化石燃料
の量を算定。
重量
サイト毎のヒアリングにより設定する
距離
サイト毎のヒアリングにより設定する
重量
サイト毎のヒアリングにより設定する
距離
サイト毎のヒアリングにより設定する
軽油
サイト毎の購入伝票により設定
麦藁
麦藁
麦藁
麦藁
ペレット
0.81
0.80
0.815
0.815
0.86
ペレット
0.86
ペレット
0.86
メーカーカタログによる
電気の CO2 排出係数
電気の排出係数は年によって変動することから、事業固有値とした。
本調査においては、モルドバ環境省 Climate Change Office へのヒアリングに基づき、以
下の値を使用した。
電力:0.4434 tCO2/MWh
(出典 Moldova 2010 Grid Emission Factor calculation, tCO2/MWh (for the second and third
crediting period). Author – Dr. Ion Comendant)
III-62
H24 MRV DS

最終報告書(詳細版)
バイオマス残渣 1 トンあたりの収集に使う化石燃料使用量
畑においてバイオマス残渣を収集するトラクタが使用する軽油の量をモニタリングすること
は、現実的に難しい。そこで、モルドバにおける大農家をサンプルとしてバイオマス残渣単
位重量(1 トン)あたりの収集に使う化石燃料使用量をヒアリングしたデータに基づいて算定
し、これを採用することとした。方法論のデフォル値とするにはやや根拠が弱いため、ここで
は事業固有値としている。
表 III- 4-17
バイオマス残渣 1 トンあたりの収集に使う化石燃料使用量の算定
(a) 年間麦藁消費量
12,931 t/yr
(b) 1ヘクタールあたりの麦藁収穫量
( c)
1.8 t/ha
麦畑の刈取り面積
7,184 ha/y
( c)= (a) / (b)
(d) トラクタの1ヘクタールあたりの走行距離
(e) トラクタのローラー数
1 log
トラクタの年間走行距離
17,959 km/y
= (c ) x (d) x (e)
トラクタの燃費
2.5 km/ha
25 - 30L/100km
0.3 L/km
麦藁1トンあたりの化石燃料(軽油)消費量
0.42 L/t

バイオマス残渣、ペレットの輸送プロセスにおける各ファクター
プロジェクト排出量を求めるにあたって、デフォルト値を用いない算定オプションを選択し
た場合は、これらのファクターについて輸送業者やペレット業者にヒアリングをして値を設定
する必要がある。

バイオマスボイラの燃焼効率
新規バイオマスボイラの燃焼効率は、カタログ値を参考とするが、積算熱量計データと照
合しながら検討することとした。
第 1 モニタリング期間のデータに基づき、各算定方法でリファレンス排出量を計算すると、
積算熱量計に基づいた値と投入した燃料の重量に基づいた値の間にかなり大きな乖離が
あることが明らかになった。積算熱量計に基づく値がより正しいとすると、ボイラ効率がカタロ
グ値よりもかなり低かったことになる。
モルドバ工科大学(Technical University of Moldova)のエネルギー工学の専門家であり、
バイオマスエネルギーに精通する V. Arion 教授にヒアリングしたところ、ボイラ効率に影響を
与える要因として以下のことが考えられるとのことである。
III-63
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
1) 運転と運転停止の回数
ボイラ効率はボイラの運転と運転停止に影響され、運転停止の回数が多ければボイラ
効率は低下する。
2) ボイラ運転開始時と停止時の燃料の不完全燃焼
運転開始時と終了時は燃料は完全燃焼しないため、ボイラ効率は低下する。
3) 自動運転装置の不適切稼働
ガスボイラの場合、自動運転装置(Automatic controller)が適切に稼働しないことでボイ
ラ効率が 60~65%に低下した例がある。自動運転装置を調整すればボイラ効率は 88~
90%になりうる。藁ボイラは燃焼制御(Combustion control)があり、バイオマスボイラも自動
運転装置を検査する必要がある。
また、第 1 モニタリング期間のデータを用いて算定されるボイラ効率がカタログ値よりかな
り低いことについては、以下の指摘を受けた。
① ボイラ燃焼効率がカタログ値より大幅に低い主な原因は投入燃料の少なさである。投
入燃料が最大投入量の 30%であればボイラ燃焼効率は 50%低下し、大きな誤差を生
む。燃料投入比率は以下の式で算出できる。
積算熱量(MWh)/(ボイラ容量(kW)×運転時間(h))= 燃料投入比率 (%)
第 1 モニタリング期間について計算した結果、燃料投入比率は 20~60%と非常に低く、
燃料投入量が少ないかもしくはボイラ運転の停止があったことが考えられる。
これについては、各サイトの運転日誌を再度チェックした。
② モニタリング期間に夜間などのボイラ運転停止があったことが考えられる。運転を停止
した時間についても把握しなければ正確なボイラ燃焼効率を算出できない。
③ 第 1 モニタリング期間の結果では適切なボイラ効率を算出することはできない。1 シー
ズン(暖房期間)のデータを収集した後にボイラ効率を算出するべきであり、現状では
データ不足である。
第 2 モニタリング期間について、熱量計ベースのリファレンス排出量とバイオマス残渣の
重量ベースのリファレンス排出量の比較及びそれらの比を算定した(表 III- 4-18)。熱量計
ベースの算定値がより正しいとすると、重量ベースの算定値が過大評価されていることにな
る。含水率を保守的に設定していることから、ボイラの燃焼効率がカタログ値よりも低いこと
が考えられる。表 III- 4-18 によると、両者の比は約 0.5 前後であり、実際のボイラの稼働効
率はカタログ値の半分程度と考えるのが妥当のようである。本方法論では、バイオマスボイ
ラ効率の補正係数として 0.5 を設定し、これをカタログ値にかけて使うことを提案する。
III-64
H24 MRV DS
表 III- 4-18
(8)
最終報告書(詳細版)
第 2 モニタリング期間における熱量計ベースのリファレンス排出量とバイオ
マス残渣の重量ベースのリファレンス排出量の比較及びそれらの比
ボイラサイト
RE-1
RE-2
RE-1/RE-2
Hirtopul Mare 幼稚園
25.29
55.39
0.4566
Hirtopul Mare Gymnasium
14.15
24.26
0.5833
Chiscareni Lyceum & Gymnasium
44.00
87.76
0.5014
Viisoara Gymnasium
15.10
28.3
0.5336
“Moldagrotehnica” SA
11.87
22.03
0.5388
Funduri Vechi Community Center
1.99
2.96
0.6723
Balatina Community Center
1.24
2.66
0.4662
リファレンスシナリオの設定
最も妥当なリファレンスシナリオを設定するにあたり、熱産生とバイオマス残渣の取り扱いについ
て、代替シナリオを特定し、各シナリオに関してバリア分析を行った。
1) プロジェクトがない場合の熱産生

既存ボイラが異なる燃料で稼働を続ける
既存ボイラは、石炭や天然ガスを燃料としたボイラである。ボイラは燃料種ごとに空気取り
入れ量等を調節し、最適な燃焼効率を得られるように設定されている。また、石炭を燃料とす
るボイラでは火格子が構造に組み込まれるなど、既存ボイラのまま異なる燃料へ転換すること
は技術的に困難である。それゆえ、既存ボイラが異なる燃料で稼働を続けることは想定されな
い。

バイオマスボイラが BaU で導入される
モルドバのエネルギー政策1では、2020 年までにバイオマスエネルギーを総エネルギー比
20%まで増加させることが目標として掲げられている。一方で、バイオマス残渣の調達・取扱
は既存化石燃料と比べ手間がかかることから相応の経済的メリットの有無が投資判断に影響
する。ユーザーの初期投資の負担が無い無償援助においては当然自費での購入と比べ経
済的な優位性を見ることができるが、無償援助が BaU とは言い難い。

既存ボイラが天然ガスボイラで置換される
モルドバでは近年天然ガス部門への投資は増加しており、地方へのパイプラインの敷設も
進みつつある。しかし、キシナウのような大都市においては天然ガスの利用が進んでいるもの
の、地方においてはパイプラインの敷設が進む一方で、天然ガスボイラの導入が進んでいる
とは言い難い。モルドバで消費される天然ガスは 100%ウクライナを経由してロシアから輸入さ
れている。そのため、北アメリカでのシェールガスによるガス価格低下の影響は受けない。天
然ガスの将来の価格動向を評価することは難しいが、モルドバガスの資料によると 2009 年以
The National Programme for Energy Efficiency 2011-2020, Approved by Government Decision
no.833 of 10 November 2011
1
III-65
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
降上昇傾向にある。また、モルドバのエネルギー事情に詳しいモルドバ工科大学の V. Arion
教授によると、ガスボイラの運転費用はバイオマスボイラの約 2.5 倍であり、ガスボイラが普及
していくとは考えられないとのことであった。
出典 モルドバガス http://www.moldovagaz.md/menu/ro/about-company/transportation
図 III- 4-5 2008~2011 年の天然ガスの価格動向(USD/1000m3)

既存ボイラが従来と同じ化石燃料で引き続き稼働する
上述のように、既存ボイラが他の燃料により稼働を続けることは想定されない。一方で、モ
ルドバのエネルギー政策において、化石燃料をバイオマス残渣により置換する施策が重要視
されている。この政策では、2020 年にバイオマスによるエネルギーを総エネルギー比で 20%
まで増加させることを掲げている。
現状で、農村部では既存ボイラは各村長が所有、管理している。燃料は各村で購入するこ
ととなっており、安価なバイオマス残渣への転換は国の政策とも一致するため、既存ボイラを
バイオマスボイラへ転換する動機付けとなっている。また、バイオマス残渣は自動装填が困難
であるため、ボイラ運転のための人員を雇用する必要がある。農村では、冬季に雇用が少な
いため、多くの住民が都市部や隣国へ出稼ぎに出ている。ボイラ管理は冬季の雇用としても
重要な役割を担う可能性がある。
しかし、本事業の対象とする村でのヒアリングでは、新規ボイラの購入、既存ボイラからの置
換には、国際的な支援が多く入っており、ローカルの資金のみで賄われている事例はなかっ
た。
現状のモルドバの国力から独自の資金でバイオマスボイラを普及させ、エネルギー目標を
達成することには多くの困難が伴うことは明らかで、国際的な支援が不可欠な状況にある。そ
れゆえ、多くの村落で将来的に既存ボイラがバイオマスを燃料とするボイラに置換されること
は現実的ではないと考えられる。
以上より、当面近い将来において、地方の経済状態が大きく変わらない限り、「既存ボイラ
が従来と同じ化石燃料で引き続き稼働する」というシナリオが、最も現実的で妥当であると考
III-66
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
えられるが、リファレンスシナリオとしては、JCM/BOCM の性格上、保守的でなければならない
ことから、石炭ボイラのボイラ効率を 1 とした。
2) プロジェクトがない場合のバイオマス残渣の取り扱い

バイオマス残渣がエネルギー利用されず、管理されない状態で焼却される(野焼き)
現地調査では、バイオマス残渣の野焼きは行われるということである。

バイオマス残渣が市場で売却され、そこで普及している方法でエネルギー利用される
現地調査での農業食品産業省、ペレット工場等のヒアリングにより、バイオマス残渣を取り
扱う市場はモルドバには存在しないことが明らかとなっている。バイオマス残渣の取引は、相
対取引が主流であるため、価格が明確となっていない。ヒアリングを実施したペレット工場では、
近隣の農家が価格を釣り上げたため、バイオマス残渣の購入先を遠方に変更することとなっ
たとの情報を得ている。このように、モルドバでは公的な市場は存在せず、売却されたとしても、
バイオマス残渣燃料以外の用途でエネルギー利用されることは想定されない。

バイオマス残渣が肥料として利用される
現地調査でバイオマス残渣を肥料化することへの需要は明らかとならず、将来的にもバイ
オマス残渣が肥料として利用されることはないと考えられる。

バイオマス残渣が耕作地に鋤き込み、刈敷あるいは放置され、主に好気的条件下で分解す
る
現地調査では、バイオマス残渣は耕作地に鋤き込み、野積み、あるいは放置されていた。
写真に見られるように、鋤き込みは耕作地の表層の浅い部分で行われており、土の表層は通
気性がよく、また好気性菌が多い(コンポスト技術用語事典 2)ことから、分解は好気的条件下
で起こっていると判断される。”To-Tillage Technology”は、肥料と水分補給のためにバイオマ
ス残渣を畑に残す技術で、土中に藁が混じっている。
野積みにおいても、ビニールで覆うなど空気をシャットアウトするような扱いはされておらず、
嫌気的発酵が起こる条件とはなっていない。
(提供:モルドバ Agrofermotech 社)
種を蒔く前の耕うん作業
"To-Tillage Technology"
コンポスト技術用語解説:J-POWER グループ(株)ジェイペック若松環境研究所。
http://www.jica.go.jp/kyushu/topics/2011/docs/111012_10.pdf
2
III-67
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
バイオマス残渣の野積
以上の検討に基づき、モルドバにおける保守的なリファレンスシナリオを下記のように設定す
る。
 このプロジェクトがない場合、既存ボイラが従来と同じ化石燃料(石炭)で引き続き稼働するが、
保守的なシナリオとするために、そのボイラ効率を 1 とする。
 このプロジェクトがない場合、バイオマス残渣は鋤き込みあるいは耕作地に放置され、主に好
気的条件下で分解するか、もしくはエネルギー利用されず管理されない状態で焼却される。
(9)
バウンダリーの設定
プロジェクトバウンダリには、以下のような GHG 排出源並びに GHG 排出を含める。





プロジェクトで使用するバイオマス残渣の収集、輸送のためのトラクタなど農業機械の稼働に
伴う GHG 排出量
ボイラで燃焼するバイオマス残渣の輸送に伴う GHG 排出量
ペレット化のシステム(乾燥、粉砕、ペレタイザー)の稼働に伴う GHG 排出量
プロジェクトサイトで消費される化石燃料や電力の使用に伴う GHG 排出量。たとえば、バイオ
マス残渣をボイラに投入するトラクタ、バイオマス残渣のシュレッダー等。ただし、混焼する化
石燃料は含まない。
プロジェクト実施者は、ボイラでの燃焼によるメタンの排出を含めるかどうか決定し、PDD に記
載する必要がある。農業廃棄物が主に野焼きされているような場合は排出に含めなくてよい。
■リーケージ
当該プロジェクトでは、想定される主要な排出プロセス(原料収集・輸送・ペレット製
造等の上流側排出)をプロジェクト排出量の算定に含めている(簡素化でゼロの算定方法
有り)。このため、リーケージとして扱わなければならない主要な排出源は無いと考えてい
る。また、農業残渣が肥料等の他の用途で利用されていないため、農業残渣をバイオマス
燃料として利用することで、他の用途でのリーケージとなる活動、排出が発生することは
想定されない。
III-68
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
(10) モニタリング手法
このプロジェクトにおけるモニタリングは、積算熱量計の測定値及びボイラに投入したバイオマ
ス残渣の重量について行われる。これらの値は、交代で 24 時間ボイラを運転している担当者が指
定された運転日誌に毎日記録することになっており、CFU の担当者が定期的にモニタリングサイト
を巡回し、測定状況を確認するとともに運転日誌を回収している。運転日誌に記載されたデータ
は電子データ化され、集計される。
また、プロジェクト固有値設定に必要なデータはヒアリングやアンケートによって収集した。

モニタリング実施者
Carbon Fincance Unit (CFU)

モニタリング対象
麦 藁 ボ イ ラ:Hirtopul Mare Gymnasium、Hirtopul Mare 幼稚園、Viisoara
Chiscareni Lyceum& Gymnasium
Gymnasium、
ペレットボイラ:Moldagrotehnica
(Balatina Community Center、Fundurii Vechi Community Center)
※( )は第 2 モニタリング期間の途中から開始の新規モニタリングサイト

モニタリング項目
モニタリング項目の内容を表 III- 4-19 に示す。
なお、運転日誌には下記の項目の他、気温なども参考として記録することになっている。ま
た、サイトによっては、麦藁の他に薪を投入することもあるため、その種類と投入比率も記録さ
れる。
ここで、代替されたバイオマスボイラの設備規模が既存の化石燃料ボイラの設備規模よりも
大きくなることが想定される。この場合に、バイオマスボイラで産生した積算熱量のうち、既存
の化石燃料ボイラが産生可能な積算熱量を超過した熱量は、プロジェクト実施後に熱利用の
増加があったとみなし、その超過分を排出削減量から除外することが保守性の観点から必要
である。
表 III- 4-19
パラメータ
ボイラの積算熱量
(QBM,y) [GJ/y]
バイオマス残渣の年間
消費量(PCBM,y) [t/y]
算定オプ
ション
1-1、1-2
1-2、2-1、
2-2
モニタリング項目の内容
モニタリング手法
積算熱量計による連続測定
麦藁やペレットの単位平均重
量(ベール、バケツ当たり)を把
握した上で投入個数をカウント
III-69
実施体制と実施状況
24 時間体制(交代制)でボイラを運
転している担当者が運転日誌に積
算熱量計の値を読んで記録
24 時間体制(交代制)でボイラを運
転している担当者が運転日誌に投
入個数を記録
H24 MRV DS
運転日誌(Viisoara Gymnasium)
Name of building: Chiscareni
village Liceul & Gimnaziul
Code No. 003
Daily Record
for "CO 2 Emissson Reduction Monitoring Demonstration Study
for New Bilateral Offset Credit Mechanism between Moldova and Japan" project
*Please descrive your working information;
Date (DD/MM/YY):
11/14/12
Working hours (hh:mm to hh:mm):
9:00
Operator Name:
Mr Nara
to
18:00
Boiler information
Boiler capacity:
Operational condition of Boiler:
300 kW
Intermittent Select condition from dropdown list
Type of biomass fuel:
Baled straw (Cubic type)
*Please descrive the operating condition :
Content
Unit
Start
Finish
Operational time of boiler
hh:mm
9:00
18:00
Ambient Temparature
(℃)
-20
-22
Boiler setting temparature
(℃)
80
40
Accumurated calorific value
(GJ)
10000
15000
*Please descrive the input time and quantity of biomass fuel :
(1) Time;
6:00
/ Quantity;
1
(2) Time;
12:00
/ Quantity;
1
(3) Time;
18:00
/ Quantity;
1
(4) Time;
/ Quantity;
(5) Time;
/ Quantity;
(6) Time;
/ Quantity;
*Please descrive the input time and quantity of other fuel :
Type of fuel
(Coal, Wood, etc)
Input time
Wood
13:00
Quantity
approx. (%/kg/m3)
image
○
○
○
50
Accident information
Nothing
Chiscareni
Carbon Finance Unit
[Responsible person]
[Contact Information]
Date:
11/14/12
Date:
11/14/12
Name:
Kudo
Name:
Ikeda
Signature:
Signature:
運転日誌の電子データ化
III-70
最終報告書(詳細版)
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
(11) モニタリングの実施

モニタリング実施期間
モニタリングは検証及び取りまとめのスケジュールを勘案し、2 つの期間に分けて実施した。
第 1 モニタリング期間は、通常の年より気温が高かったことから、どのサイトもボイラの運転開
始が遅く、またサイトによっては開始後も気温が高い日は運転しないなど、断続的な運転とな
ったところもあった。
第 2 モニタリング期間は、2012 年 12 月 1 日~2013 年 1 月 15 日の予定であったが、新規
に Fundurii Vechi Community Center 及び Balatina Community Center が追加され、これらの
地点のモニタリングがそれぞれ 2013 年 1 月 7 日と 1 月 14 日にスタートしており、モニタリング
期間として短かすぎることから、期間を 2013 年 1 月 23 日まで延長した。
表 III- 4-20
モニタリング実施期間
計画
第 1 モニタリング期間
2012 年 10 月 15 日~
11 月 30 日
実績
・Hirtopul Mare Gymnasium: 2012 年 11 月 27 日~11 月 30 日
・Hirtopul Mare 幼稚園: 2012 年 11 月 7 日~11 月 30 日
・Viisoara Gymnasium: 2012 年 11 月 14 日~11 月 30 日
・Chiscareni Lyceum & Gymnasium: 2012 年 11 月 14 日~11 月 29 日
・Moldagrotehnica: 2012 年 11 月 8 日~11 月 30 日
第 2 モニタリング期間
・Hirtopul Mare Gymnasium: 2012 年 12 月 1 日~2013 年 1 月 23 日
2012 年 12 月 1 日~
・Hirtopul Mare 幼稚園: 2012 年 12 月 1 日~2013 年 1 月 23 日
2013 年 1 月 23 日
・Viisoara Gymnasium: 2012 年 12 月 1 日~2013 年 1 月 23 日
・Chiscareni Lyceum & Gymnasium: 2012 年 12 月 1 日~2013 年 1 月 23 日
・Moldagrotehnica: 2012 年 12 月 1 日~2013 年 1 月 23 日
・Fundurii Vechii Community Center : 2013 年 1 月 7 日~2013 年 1 月 23 日
・Balatina Community Center: 2013 年 1 月 14 日~2013 年 1 月 23 日
CFU から報告された各モニタリング期間についての報告のサマリーは、表 III- 4-21、表 III- 4-22
の通りである。
III-71
H24 MRV DS
表 III- 4-21
最終報告書(詳細版)
第 1 モニタリング期間のモニタリングによる CO2 削減量算定結果
Localization
Institution heated
by boiler
Fuel
consumption, t
Energy
produced
GJ
Hîrtopul Mare
village, Criuleni
District
Gymnasium
1,081
4,5
Hîrtopul Mare
village, Criuleni
District
幼稚園
10,800
70,67
SA“Moldagrotehnic
a” Bălţi, Balţi
District
“Moldagrotehnica”
SA office building
3,100
26,43
Chişcăreni village,
Sîngerei District
Lyceum
20,301
107,34
Viişoara village,
Glodeni District
Gymnasium
4,940
31,34
III-72
Calculated emission
reductions (ERs), tCO2
According to calculation
methodologies
(1-1) – 0,66
(1-2) – 0,65
(2-1) – 8,23
(2-2) – 8,04
According to calculation
methodologies
(1-1) – 10,37
(1-2) – 10,25
(2-1) – 16,91
(2-2) – 16,80
According to calculation
methodologies
(1-1) – 3,49
(1-2) – 3,85
(2-1) – 5,64
(2-2) – 6,10
According to calculation
methodologies
(1-1) – 15,75
(1-2) – 14,88
(2-1) – 26,06
(2-2) – 25,18
According to calculation
methodologies
(1-1) – 4,59
(1-2) – 4,53
(2-1) – 6,34
(2-2) – 6,27
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
表 III- 4-22 第 2 モニタリング期間のモニタリングによる CO2 削減量算定結果
Data on monitored parameters and ERs calculation for 01.12.2012-23.01.2013 period
Energy
Institution heated
Fuel ty pe and
Calculated emission
Localization
produced,
by boiler
consumption, t
reductions (ERs), tCO2
GJ
According to calculation
methodology:
Hîrtopul Mare
(1-1) – 21,12
village, Criuleni
Gymnasium
Straw – 24,179
143,93
(1-2) – 20,89
District
(2-1) – 46,03
(2-2) – 45,81
According to calculation
methodology:
Hîrtopul Mare
(1-1) – 37,74
village, Criuleni
Straw – 48,312
257,53
幼稚園
(1-2) – 37,39
District
(2-1) – 91,98
(2-2) – 91,63
According to calculation
methodology:
Straw – 51,467
Chişcăreni village,
(1-1) – 65,67
Lyceum
Wood (apx.) –
447,63
Sîngerei District
(1-2) – 64,76
29,925
(2-1) – 97,98
(2-2) – 97,06
According to calculation
methodology:
Straw – 15,799
Viişoara village,
(1-1) – 22,53
Gymnasium
Wood (apx.) –
153,57
Glodeni District
(1-2) – 22,26
10,665
(2-1) – 30,08
(2-2) – 29,08
According to calculation
methodology:
SA“Moldagrotehnic
“Moldagrotehnica”
(1-1) – 15,94
a” Bălţi, Balţi
Pellets – 14,640
120,72
SA office building
(1-2) – 17,59
District
(2-1) – 26,63
(2-2) – 29,47
According to calculation
methodology:
Fundurii Vechi
4,77
(1-1) – 0,7
Community Center, Community Center
Pellets – 1,965
(1-2) – 0,67
Glodeni District
(2-1) – 3,57
(2-2) – 3,82
According to calculation
Balatina
methodology:
Community Center,
(1-1) – 1,66
Community Center
Pellets – 1,770
12,59
Glodeni District
(1-2) – 1,69
(2-1) – 3,22
(2-2) – 3,42
Total emission reductions for 01.12.2012-23.01.2013 monitoring period
Calculation methodology
1-1
1-2
2-1
2-2
t, CO2
165,36
165,25
299,49
300,29
III-73
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
(12) 温室効果ガス排出量及び削減量

リファレンス排出量の計算式
リファレンス排出量は、プロジェクトにより代替されるバイオマス残渣燃料により得られる熱量
に等しい熱量が、プロジェクトが実施されなかった場合に化石燃料の使用によって得られてい
たとして、(1)式もしくは(2)式により算定する。算定方法 1-1 及び 1-2 では(1)式を用い、算定方
法 2-1 及び 2-2 では、(2)式を用いる。
RE y  QBM , y 
1
 RE
 EFCO2, PFi
..
...
(1)
M

 
RE y    PC BM ,k , y  (1  BM ,k )  NCVBM ,k   PJ  EFCO2, PFi
100
k 
  RE
...
..
(2)
RE y
リファレンス CO2 排出量 [tCO2/y]
QBM , y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣による年間積算発熱量 [GJ/y]
PC BM ,k , y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣 k の年間消費量(湿潤重量) [t/y]
M BM ,k
プロジェクトにおけるバイオマス残渣 k の含水率 [%]
NCVBM ,k
プロジェクトにおけるバイオマス残渣 k の真発熱量(乾燥ベース)[GJ/t]
 PJ
プロジェクトにおける暖房熱源用ボイラの燃焼効率
 RE
リファレンスにおける暖房熱源用ボイラの燃焼効率
EFCO2, PFi リファレンスにおける化石燃料 i の CO2 排出係数 [tCO2/GJ]

事業・活動実施時排出量の計算式
PE y  PErol, y  PEtr ,r , y  PEe, y  PEtr , p, y  PEboi, y

.....(3)
PE y
プロジェクト CO2 排出量 [tCO2/y]
PE rol, y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣の収集に伴う CO2 排出量[tCO2/y]
PEtr ,r , y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣の輸送に伴う CO2 排出量 [tCO2/y]
PEe, y
プロジェクトにおけるバイオマスペレットの製造に伴う CO2 排出量 [tCO2/y]
PEtr , p , y
プロジェクトにおけるバイオマスペレットの輸送に伴う CO2 排出量 [tCO2/y]
PEboi, y
プロジェクトにおけるバイオマス残渣のボイラ投入に伴う CO2 排出量 [tCO2/y]
温室効果ガス排出削減量の計算式
.....(4)
年間 CO2 排出削減量 [tCO2/y]
リファレンス年間 CO2 排出量[tCO2/y]
プロジェクト年間 CO2 排出量 [tCO2/y]
ERy = REy - PEy
ERy
REy
PEy
III-74
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
1) 第 1 モニタリング期間のモニタリングデータに基づいた排出削減量
各モニタリングサイトについて第 1 モニタリング期間及び年間換算のリファレンス排出量、プロ
ジェクト排出量、及び排出削減量算定結果を以下の表にそれぞれ示す。実際のモニタリング期
間は、各サイトによって暖房開始時期が違うことなどの理由によって異なっている。Hirtopul Mare
Gymnasium は、積算熱量計の不具合があったこともあり、モニタリングが行われたのはこの期間
についてみるとわずか 4 日となっている。
リファレンス排出量の算定結果は、いずれのサイトにおいても、積算熱量計に基づいた結果
(1-1、1-2)とバイオマス残渣の投入量に基づいた結果(2-1、2-2)の間に大きなかい離があること
を示している。これは、すでに述べているように、モニタリングの期間が十分ではなかったこと、及
びこの期間はまだ気温が高い日があったことによるボイラ運転の断続もしくは不均一が影響し、
ボイラ効率が一定ではなかったことによると推測される。したがって、算定手法 2-1、2-2 によるリフ
ァレンス排出量及び排出削減量の推計値はかなり過大評価になっている可能性がある。
表 III- 4-23 Hirtopul Mare 幼稚園における第 1 モニタリング期間(2012 年 11 月 7 日~30 日)及
び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削減量
[tCO2]
算定手法
RE (1)
PE (1)
ER (1)
REy
PEy
ERy
1-1
10.37
0
10.37
72.14
0
72.14
1-2
10.37
0.12
10.25
72.14
0.84
71.30
2-1
16.91
0
16.91
117.64
0
117.64
2-2
16.91
0.12
16.79
117.64
0.84
116.80
※(1)は第 1 モニタリング期間(23 日)、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
表 III- 4-24 Hirtopul Mare Gymnasium における第 1 モニタリング期間(2012 年 11 月 27 日~30
日)及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削減量
[tCO2]
算定手法
RE (1)
PE (1)
ER (1)
REy
PEy
ERy
1-1
0.66
0
0.66
26.4
0
26.4
1-2
0.66
0.01
0.65
26.4
0.4
26
2-1
8.23
0
8.23
329.2
0
329.2
2-2
8.23
0.01
8.23
329.2
0.4
328.8
※(1)は第 1 モニタリング期間(4 日)
、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
III-75
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
表 III- 4-25 Chiscareni Lyceum における第 1 モニタリング期間(2012 年 11 月 14 日~30 日)及
び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削減量
[tCO2]
算定手法
RE (1)
PE (1)
ER (1)
REy
PEy
ERy
1-1
15.75
0
15.75
148.2
0
148.2
1-2
15.75
0.19
15.56
148.2
1.8
146.4
2-1
26.06
0
26.06
245.3
0
245.3
2-2
26.06
0.19
25.87
245.3
1.8
243.5
※(1)は第 1 モニタリング期間(17 日)、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
表 III- 4-26 Viisoara Gymnasium における第 1 モニタリング期間(2012 年 11 月 14 日~29 日)
及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削減量
[tCO2]
算定手法
RE (1)
PE (1)
ER (1)
REy
PEy
ERy
1-1
4.59
0
4.59
45.9
0
45.9
1-2
4.59
0.05
4.55
45.9
0.5
45.5
2-1
6.34
0
6.34
63.4
0
63.4
2-2
6.34
0.05
6.29
63.4
0.5
62.9
※(1)は第 1 モニタリング期間(22 日)、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
表 III- 4-27 Moldagrogtehnica における第 1 モニタリング期間(2012 年 11 月 8 日~30 日)及び
年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削減量
[tCO2]
算定手法
RE (1)
PE (1)
ER (1)
REy
PEy
ERy
1-1
3.88
0.39
3.49
28.2
2.8
25.4
1-2
3.88
0.03
3.85
28.2
0.2
28.0
2-1
6.27
0.63
5.64
45.6
4.6
41.0
2-2
6.13
0.03
6.10
44.6
0.2
44.4
※(1)は第 1 モニタリング期間(22 日)、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
2) 第 2 モニタリング期間のモニタリングデータに基づいた排出削減量
各モニタリングサイトについて第 2 モニタリング期間及び年間換算のリファレンス排出量、プロ
ジェクト排出量、及び排出削減量算定結果を以下の表にそれぞれ示す。第 1 モニタリング期間
に比較すると、期間が長いこと、安定した暖房期にはいっていることから、よりデータの質としては
よくなっていると思われる。各モニタリング期間のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び
排出削減量を期間の比を用いて年間値に換算した値をみると、第 1 モニタリング期間に比べて、
III-76
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
第 2 モニタリング期間の値はかなり大きく、冬が本格化するとともに熱需要が増えたことがうかが
える。
リファレンス排出量の算定結果は、いずれのサイトにおいても、積算熱量計に基づいた結果
(1-1、1-2)とバイオマス残渣の投入量に基づいた結果(2-1、2-2)の間には、第 1 モニタリング期
間と同様に依然として大きなかい離がある。これは、やはりボイラ効率の変動などによる算定手
法 2-1、2-2 によるリファレンス排出量の過大評価が起因していると考えられる。この算定は、調査
結果に基づいた方法論の変更がまだ行わる前のものであることから、次に第 2 モニタリング期間
について方法論の変更を反映した算定結果を示す。
表 III- 4-28 Hirtopul Mare 幼稚園における第 2 モニタリング期間(2012 年 12 月 1 日~2013 年 1 月
23 日)及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削減量
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
37.74
0
37.74
111.82
0
111.82
1-2
37.74
0.35
37.39
111.82
1.04
110.79
2-1
91.98
0
91.98
272.53
0
272.53
2-2
91.98
0.35
91.63
272.53
1.04
271.50
※(2)は第 2 モニタリング期間(54 日)、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
表 III- 4-29 Hirtopul Mare Gymnasium における第 2 モニタリング期間(2012 年 12 月 1 日~2013
年 1 月 23 日)及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削減量
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
21.12
0
21.12
62.58
0
62.58
1-2
21.12
0.23
20.89
62.58
0.68
61.90
2-1
46.03
0
46.03
136.39
0
136.39
2-2
46.03
0.26
45.81
136.39
0.68
135.73
※(2)は第 2 モニタリング期間(54 日)、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
表 III- 4-30 Chiscareni Lyceum における第 2 モニタリング期間(2012 年 12 月 1 日~2013 年 1 月
23 日)及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削減量
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
65.67
0
65.67
194.58
0
194.58
1-2
65.67
0.92
64.76
194.58
2.73
191.88
2-1
97.98
0
97.98
290.31
0
290.31
2-2
97.98
0.92
97.06
290.31
2.73
287.59
※(2)は第 2 モニタリング期間(54 日)、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
III-77
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
表 III- 4-31 Viisoara Gymnasium における第 2 モニタリング期間(2012 年 12 月 1 日~2013 年 1 月
23 日)及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削減量
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
25.53
0
22.53
66.76
0
66.76
1-2
25.53
0.28
22.26
66.76
0.83
65.96
2-1
30.08
0
30.08
89.13
0
89.13
2-2
30.08
0.28
29.08
89.13
0.83
86.16
※(2)は第 2 モニタリング期間(54 日)、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
表 III- 4-32 Moldagrogtehnica における第 2 モニタリング期間(2012 年 12 月 1 日~2013 年 1 月 23
日)及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削減量
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
17.71
1.77
15.94
52.47
5.24
47.23
1-2
17.71
0.12
17.59
52.47
0.36
52.12
2-1
29.59
2.96
26.63
87.67
8.77
78.90
2-2
29.59
0.12
29.47
87.67
0.50
87.32
※(2)は第 2 モニタリング期間(54 日)、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
表 III- 4-33 Fundurii Vechi Community Center における第 2 モニタリング期間(2013 年 1 月 7 日~
1 月 23 日)及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削減量
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
0.70
0
0.70
6.59
0
6.59
1-2
0.70
0
0.67
6.59
0
6.59
2-1
3.97
0.40
3.57
37.36
3.76
33.60
2-2
3.97
0.15
3.82
37.36
1.41
35.95
※(2)は第 2 モニタリング期間(17 日)、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
表 III- 4-34 Balatina Community Center における第 2 モニタリング期間(2013 年 1 月 14 日~1 月
23 日)及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削減量
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
1.85
0.18
1.66
29.60
2.88
26.56
1-2
1.85
0.16
1.69
29.60
2.56
27.04
2-1
3.58
0.36
3.22
57.28
5.76
51.52
2-2
3.58
0.16
3.42
57.28
2.56
54.72
※(2)は第 2 モニタリング期間(10 日)、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
III-78
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
3) 方法論改定後(Ver.3)の第 2 モニタリング期間の排出削減量
調査結果と検討結果を反映した方法論により第 2 モニタリング期間のリファレンス排出量、プロ
ジェクト排出量、及び排出削減量を算定しなおした。例として、Hirtopul Mare 幼稚園及び
Moldagrogtehnica の結果を示す。
方法論の主な修正点は、以下のとおりである。
【第 1 段階の修正】
・ リファレンスシナリオを BAU より保守的にするために、既存ボイラ(石炭ボイラ)
のボイラ効率を 1 とした。
・ 含水量のデフォルト値とカテゴリーを見直した。
・ バイオマス残渣の真発熱量を仮値にしていたがモルドバ農業大学による測定結果に
置き換えた。
・ バイオマス残渣直接燃焼におけるプロジェクト排出係数を 0 としていたが、デフォル
ト値を使う手法が使わない手法より排出削減量が大きいのは適切ではないことから
計算結果を参考にして経験的に 0.02 に改めた。
【第 2 段階の修正】
・ バイオマスボイラの運転の変動によるボイラ効率の変動を考慮して、ボイラ効率の補
正係数 0.5 を導入し、カタログ値に補正係数をかけたボイラ効率とした。
・ 方法論の修正の結果、麦藁の直接燃焼、ペレットともに、積算熱量計に基づいた結果
(1-1、1-2)とバイオマス残渣の投入量に基づいた結果(2-1、2-2)の間に見られた
大きな乖離が改善された。
・ 年間に換算すると、Hirtopul Mare 幼稚園では約 73 トン、Moldagrogtehnica において
は約 30 トンの二酸化炭素の排出が削減されることになる。
表 III- 4-35 Hirtopul Mare 幼稚園における第 2 モニタリング期間(2012 年 12 月 1 日~2013 年 1
月 23 日)のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、排出削減量の方法論の変更
による比較
【旧バージョン】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
37.74
0
37.74
1-2
37.74
0.35
37.39
2-1
91.98
0
91.98
2-2
91.98
0.35
91.63
【第 1 段階の修正】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
25.29
0.51
24.78
1-2
25.29
0.35
24.93
2-1
55.39
1.11
54.29
2-2
55.39
0.35
55.04
III-79
H24 MRV DS
【第 2 段階の修正】
最終報告書(詳細版)
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
25.29
0.51
24.78
74.93
1.51
73.42
1-2
25.29
0.35
24.93
74.93
1.04
73.87
2-1
27.70
0.55
27.14
82.07
1.63
80.41
2-2
27.70
0.35
27.35
82.07
1.04
81.04
表 III- 4-36 Moldagrogtehnica における第 2 モニタリング期間(2012 年 12 月 1 日~2013 年 1 月 23
日)リファレンス排出量、プロジェクト排出量、排出削減量の方法論の変更による比較
【旧バージョン】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
21.12
0
21.12
1-2
21.12
0.23
20.89
2-1
46.03
0
46.03
2-2
46.03
0.26
45.81
【第 1 段階の修正】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
14.15
0.28
13.87
1-2
14.15
0.23
13.92
2-1
24.26
0.49
23.77
2-2
24.26
0.23
24.03
【第 2 段階の修正】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
14.15
0.28
13.87
41.92
0.84
41.08
1-2
14.15
0.23
13.92
41.92
0.67
41.25
2-1
12.13
0.24
11.89
35.94
0.72
35.22
2-2
12.13
0.23
11.90
35.94
0.67
35.27
※(2)は第 2 モニタリング期間(54 日)
、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
Chiscareni Lyceum においては、この期間、薪(アカシア)が麦藁とともに混焼されていた。モニ
タリング報告では、2-1 および 2-2 については麦藁のみの算定になっていたが、薪による発熱量を
加えて、1-1 および 1-2 と比較を行った。
III-80
H24 MRV DS
表 III- 4-37
最終報告書(詳細版)
Chiscareni Lyceum における第 2 モニタリング期間(2012 年 12 月 1 日~2013 年 1
月 23 日)及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削減
量の方法論の変更による比較
【旧バージョン】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
65.67
0.00
65.67
1-2
65.67
0.92
64.76
2-1
172.88
0.00
172.88
2-2
172.88
1.84
171.05
【第 1 段階の修正】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
44.00
0.88
43.12
1-2
44.00
0.92
43.08
2-1
87.76
1.76
86.01
2-2
87.76
1.46
86.30
【第 2 段階の修正】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
44.00
0.88
43.12
130.38
2.61
127.77
1-2
44.00
0.92
43.08
130.38
2.73
127.65
2-1
43.88
0.88
43.00
130.02
2.60
127.42
2-2
43.88
1.46
42.42
130.02
4.31
125.70
※(2)は第 2 モニタリング期間(54 日)
、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
Viisoara Gymnasium においては、この期間、薪(マツ)が麦藁とともに混焼されていた。モニタリ
ング報告では、2-1 および 2-2 については麦藁のみの算定になっていたが、薪による発熱量を加
えて、1-1 および 1-2 と比較を行った。
表 III- 4-38
Viisoara Gymnasium における第 2 モニタリング期間(2012 年 12 月 1 日~2013 年
1 月 23 日)及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、及び排出削
減量の方法論の変更による比較
【旧バージョン】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
25.53
0
22.53
1-2
25.53
0.28
22.26
2-1
45.62
0.00
45.62
2-2
45.28
0.46
44.82
III-81
H24 MRV DS
【第 1 段階の修正】
最終報告書(詳細版)
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
15.10
0.30
14.79
1-2
15.10
0.28
14.82
2-1
28.30
0.57
27.73
2-2
28.30
0.46
27.84
【第 2 段階の修正】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
15.10
0.30
14.79
44.73
0.89
43.83
1-2
15.10
0.28
14.82
44.73
0.82
43.91
2-1
14.15
0.28
13.87
41.93
0.84
41.09
2-2
14.15
0.46
13.69
41.93
1.37
40.55
※(2)は第 2 モニタリング期間(54 日)
、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
表 III- 4-39
Moldagrogtehnica における第 2 モニタリング期間(2012 年 12 月 1 日~2013 年 1
月 23 日)及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、排出削減量の
方法論の変更による比較
【旧バージョン】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
17.71
1.77
15.94
1-2
17.71
0.12
17.59
2-1
29.59
2.96
26.63
2-2
29.59
0.12
29.47
【第 1 段階の修正】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
11.87
1.19
10.68
1-2
11.87
0.12
11.75
2-1
22.03
2.20
19.83
2-2
22.03
0.12
21.91
【第 2 段階の修正】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
11.87
1.19
10.68
35.17
3.53
31.64
1-2
11.87
0.12
11.75
35.17
0.36
34.81
2-1
11.01
1.10
9.91
32.62
3.26
29.36
2-2
11.01
0.12
10.89
32.62
0.36
32.27
※(2)は第 2 モニタリング期間(54 日)
、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
III-82
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
熱量計による測定が 2013 年 1 月 20~23 日であったため、算定手法 1-1 および 1-2 について
は、4 日分のモニタリング、算定手法 2-1 および 2-2 については、17 日分のモニタリングとなってい
る。比較のために、以下の表では、算定手法 1-1 および 1-2 による算定値について 4 日分の値を
17 日分に換算している。
表 III- 4-40
Fundurii Vechi Community Center における第 2 モニタリング期間(2013 年 1 月 7
日~2013 年 1 月 23 日)及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、
排出削減量の方法論の変更による比較
【旧バージョン】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
2.98
0.00
2.98
1-2
2.98
0.00
2.85
2-1
3.97
0.4
3.57
2-2
3.97
0.15
3.82
【第 1 段階の修正】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
1.99
0.20
1.79
1-2
1.99
0.13
1.86
2-1
2.96
0.30
2.66
2-2
2.96
0.15
2.80
【第 2 段階の修正】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
1.99
0.20
1.79
18.76
1.88
16.88
1-2
1.99
0.13
1.86
18.76
1.23
17.52
2-1
1.48
0.15
1.33
13.91
1.39
12.52
2-2
1.48
0.15
1.33
13.91
1.43
12.48
※(2)は第 2 モニタリング期間(17 日)
、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
表 III- 4-41
Balatina Community Center における第 2 モニタリング期間(2013 年 1 月 14 日~
2013 年 1 月 23 日)及び年間換算のリファレンス排出量、プロジェクト排出量、排
出削減量の方法論の変更による比較
【旧バージョン】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
1.85
0.18
1.66
1-2
1.85
0.16
1.69
2-1
3.58
0.36
3.22
2-2
3.58
0.16
3.42
III-83
H24 MRV DS
【第 1 段階の修正】
最終報告書(詳細版)
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
1-1
1.24
0.12
1.11
1-2
1.24
0.16
1.08
2-1
2.66
0.27
2.40
2-2
2.66
0.16
2.50
【第 2 段階の修正】
[tCO2]
算定手法
RE (2)
PE (2)
ER (2)
REy
PEy
ERy
1-1
1.24
0.12
1.11
19.80
1.98
17.82
1-2
1.24
0.16
1.08
19.80
2.58
17.22
2-1
1.33
0.13
1.20
21.31
2.13
19.18
2-2
1.33
0.16
1.17
21.31
2.58
18.73
※(2)は第 2 モニタリング期間(10 日)
、年間値はボイラ年間稼働日数を 160 日として算定。
4) モルドバにおける排出削減ポテンシャル
本方法論による CO2 排出削減量の算定結果に基づけば、Hirtopul Mare 幼稚園規模(ボイラ容
量 150kW)の麦藁ボイラでは、年間約 70tCO2、Moldagrotechnica 規模のペレットボイラ(ボイラ容
量 75kW)×2 機では年間約 30 tCO2 の削減が見込まれる。
モルドバの農村部には、幼稚園や Gymnasium、Lyceum を含めた教育施設が 2,857 施設存在し
ており、今後、これらの施設の石炭ボイラが上記と同規模のバイオマスボイラに置換されていくと仮
定すると、それによる CO2 削減ポテンシャルは、すべて麦藁ボイラに置換された場合は年間
199,990tCO2、すべてペレットボイラに置換された場合は年間 85,710tCO2 と推計される。
III-84
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
(13) 排出削減量の第三者検証
1) 第三者検証の対象期間
本調査の対象は冬季の暖房用ボイラである。暖房期間の開始時期や気候によってはボイラ
が間欠運転されることになるため、ボイラの ON/OFF がボイラ効率に大きく影響することが知られ
ている。そのため、モニタリング期間をできるだけ長期間となるように設定した。実際の事業実施
時には、暖房期間を通したボイラ効率を基に、MRV 方法論の実証を行うことでより現実に即した
GHG 排出削減効果を把握することができる。
今冬は当初暖冬傾向で気温が高い日が続いたため、ボイラ使用が本格的に開始されたのは
11 月末となった。そのため、MRV 方法論に基づくモニタリング実施の課題を明らかにするため、
モニタリング期間を 2 期間(10 月から 11 月、12 月から 1 月)に分けて、それぞれの期間を対象と
して第三者検証を実施することとした。
2) 検証機関の選定
本調査では以下の評価基準により第三者検証機関を選定した。
・
・
・
・
・
・
検証作業に従事する技術者の人数とその経験
これまでに経験した業務数
CDM あるいは他の GHG 排出削減量の有効化審査又は検証業務の経験
見積金額
積算の妥当性
検証作業に関する理解の程度
また、モルドバ国で今後多くの新メカニズム案件を実施するためには、より多くの検証機関を
育成することが必要である。そのため、上記の評価基準で一定の水準を満たした検証機関を選
定するようにした。選定した検証機関を以下に示す。モルドバに拠点を置く East-Europe
Consulting Associates (EECA)は経験的に十分ではないが、検証機関の育成の観点から選定し
た。
・ RINA SIMTEX SRL:ルーマニアに拠点を構える ISO 等を実施する認証機関
・ East-Europe Consulting Associates (EECA):モルドバに拠点を構える ISO 等の認証機関
3) 検証方法
本調査で開発する MRV 方法論による第三者検証では、「4.5 算定のための情報・データ」に
記載するもののうち、事業固有値とモニタリング値、及びそれによる排出削減量が検証の対象と
なる。
MRV 方法論に基づき、検証の対象となるモニタリング項目を表 III- 4-42 に示す。なお、選択
する算定方法により、対象となるモニタリング項目は異なり、積算熱量計を用いた簡易な方法で
は項目は少なくなる。
III-85
H24 MRV DS
表 III- 4-42
モニタリング対象となる項目
パラメータ
ボイラの稼働期間(時間)
燃料種類
ボイラの積算熱量【GJ/y】
バイオマス残渣の年間消費量【t/y】
最終報告書(詳細版)
説明
暖房期間中のボイラの総稼
検証方法
運転日誌により検証する。
働時間
燃料の種類(原料等)
運転日誌により検証する。
積算熱量計により測定した暖 運転日誌により検証する。
房期間中の総発熱量
暖房期間中のベール、ペレッ 運転日誌により検証する。
ト等の総消費量
バイオマス残渣 1t 当りのバイオマス
トラクタの燃料消費量をヒアリ 事業者が実施したボイラサイトの
残渣の収集に使う化石燃料使用量
ングにより把握
【t/y】
バイオマス残渣 1t あたりの輸送に使
う化石燃料使用量【t/y】
管理者へのヒアリング結果により
検証する。
輸送トラックの燃料消費量を 事業者が実施したボイラサイトの
ヒアリングにより把握
管理者へのヒアリング結果により
検証する。
ペレット燃料 1t あたりのバイオマス残 輸送トラックの燃料消費量を 事業者が実施したペレット製造業
渣の輸送に使う化石燃料使用量
ヒアリングにより把握
【t/y】
ペレット燃料 1t あたりの輸送に使う
化石燃料使用量【t/y】
バイオマス残渣 1t あたりのボイラ投
入に使う化石燃料使用量【t/y】
ペレット燃料の年間消費量【t/y】
者へのヒアリング結果により検証
する。
輸送トラックの燃料消費量を 事業者が実施したペレット製造業
ヒアリングにより把握
者へのヒアリング結果により検証
する。
ボイラ投入に用いるトラクタの 事業者が実施したボイラサイトの
燃料消費量をヒアリングによ 管理者へのヒアリング結果により
り把握
検証する。
暖房期間中のペレットの総消 運転日誌により検証する。
費量
必要に応じて、農業大学の測定
ペレット燃料の真発熱量【GJ/t】
農業大学で測定
担当者へ精度管理等をヒアリン
グする。
EU の品質規格から保守的な
ペレット燃料の含水率【%】
デフォルト値としているため、
検証の対象外とする。
ペレット燃料製造に使う電力量
【MWh/y】
電力の CO2 排出係数【tCO2/MWh】
デフォルト値として与えるため、
検証の対象外とした。
事業者が実施したペレット製造業
ペレタイザー等の電気使用量
者へのヒアリング結果により検証
する。
モルドバ国公表値
ベール、ペレットの水分量をモ CFU が管理するベールの水分量
バイオマス残渣の含水率【%】
ニタリング時に水分量計で測
測定結果により検証する。
定
必要に応じて、農業大学の測定
バイオマス残渣の真発熱量【GJ/t】
農業大学で測定
担当者へ精度管理等をヒアリン
グする。
III-86
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
また、検証に際して必要となるエビデンス等として下記の情報を検証機関へ提供した。

モニタリングレポート
モニタリングマニュアルに提示される PDD への添付資料であるモニタリングレポートを作成
する。このレポートには、モニタリングパラメータ、モニタリング頻度、QA/QC 情報等が記載さ
れる。

モニタリング期間の設定
本調査では、各サイトの暖房期間全体をモニタリング期間として設定する。暖房期間は 10
月から 4 月の約半年間で、期間中の総バイオマス消費量と総発熱量をモニタリングすることで、
正確な GHG 排出削減量を算定することができる。調査期間中に可能な限り多くのデータを取
得するため、モニタリング期間を下記の 2 つの期間に分けて、それぞれの期間で検証作業を
実施することとした。
第 1 期間:2012 年 10 月 15 日から 2012 年 11 月 30 日
第 2 期間:2012 年 12 月 1 日から 2013 年 1 月 23 日

モニタリング結果のスクリーニングに関する情報
MRV 方法論に規定するパラメータを収集し、検証機関へ提示する。その際に、モニタリン
グデータの欠測、異常値等を適切にスクリーニングした情報を提示することとする。
モニタリングは、各サイトのボイラ管理者が担当し、CFU がデータ内容のスクリーニングを実
施する体制となっている。

測定機器のキャリブレーションに関する情報
本調査ではモニタリングに積算熱量計を設置して、投入したバイオマスから得られる熱量を
把握する。本調査で使用する積算熱量計(SHARKY 775:SAPPEL 製)は EU 計量器指令整
合規格である EN1434 規格に対応している。
各サイトへは本調査中に購入、設置したものであるため、各積算熱量計による計測値はモ
ニタリングマニュアルが要求する補正の必要はないと考えられる。
4) 検証結果と課題
検証機関による検証は、検証マニュアル(Verification Manual for the Bilateral Offset Credit
Mechanism Demonstration/Feasibility Study Programme(Draft)2012/9/6 Ver1.0)にしたがっ
て実施している。
① 検証結果
検証機関から提示された指摘に対する事業者の見解と指摘事項がホスト国特有のもので
あるかを表 III- 4-43 と表 III- 4-44 に整理した。いずれの指摘に対しても、ホスト国で十分なエ
ビデンスを提示した。検証結果は資料編に示す。
III-87
H24 MRV DS
表 III- 4-43
最終報告書(詳細版)
検証機関(RINA)の指摘事項と事業者の回答
指摘事項
事業者の回答
指摘事項と事業者の回答に対す
る補足説明
現地のボイラがモルドバの国内メ 2 つのサイトのボイラは日本の支 モルドバ国では、バイオマスボイラ
ーカーである Moldagrotehnica 製で 援により設置されたものである。こ 製造メーカーが、ポーランド製の
あるため、方法論の適格性要件 3 れはボイラの所有者である現地の 技術を導入してバイオマスボイラ
の外国技術又は日本による支援 村長から説明もなされた。他の 2 の 製 造 販 売 を し て い る 。 そ の た
であることを明確に示す必要があ つのサイトのボイラ本体は、モルド め、現地サイトの情報のみではバ
る。
バ国内 で製造 されたものである イオマスボイラはすべてモルドバ
が、基本となるデバイスなどはポ 製のローカル技術であると判断さ
ーランドから輸入されたものであ れたものである。
る。
結果として、MRV 方法論の適格性
要件は適切に満たすと判断でき
る。
積算熱量計と他の測定機器の精 積算熱量計は“SHARKY 775”であ 測定機器の精度に関するエビデン
度に関するエビデンスを示す必要 る。これは EN 1434 規格と MID(欧 スは、モルドバ国のみでなく、他の
がある。
州計量器規制)を満たすもので、そ 国の事業においても、明らかとす
の測定範囲は 1:250 (qi:qp)である。
べき事項である。
水分計は“KETT HX-700”である。メ
ーカー仕様書によれば、この測定
精度は 1%であり、この機器には日
本の型式承認がなされている。
温 室 時 計 は ” SMART SENSOR
AR867”である。温度は 1℃、湿度
は 5%の精度で測定が可能であ
る。
積算熱量計と他の測定機器の初
“SHARKY 775”は工場出荷時に初 測定機器の校正に関するエビデン
期校正に関する記録を提出する 期校正がなされていることになっ スは、モルドバ国のみでなく、他の
必要がある。
ている。そのため、モルドバの国 国の事業においても、明らかとす
家施設に導入される際の校正は べき事項である。
不要である。
MRV 方法論はリファレンス排出量 最も望ましいのは簡易な方法であ 方法論を対象に検証を実施するこ
の算定方法を複数提示している。 る算定方法 1-1 である。この方法で とと、MRV の実証調査の関係から
プロジェクト実施者は、方法論に は事業実施者は積算熱量計を対 生じた CAR である。
示されたフローチャートから最適な 象サイトに設置することになる。算
ものを選択することになっている。
定方法 2-1 と 2-2 には不可避のエラ
ーが発生する可能性がある。つま
り、バイオマス残渣の重量や水分
の測定ミス、ボイラ運転管理によ
るボイラ効率などである。モニタリ
III-88
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
ングでのこれらの測定結果と信頼
性と運転員の確保の必要性を考
慮すると、精度面と効率面で算定
方法 1-1 あるいは 1-2 が望ましいと
判断する。
モニタリング報告書には 8 地点の 検証は 2 地点を対象とした。なぜ MRV の実証調査の中で効率よく検
排出削減行動が含まれている。し ならこの BOCM 調査の対象地点に 証を実施するために、対象サイト
かし、TOR では 2 地点のみとなって は、麦藁又は薪とペレット又は石 を限定したために生じた CAR であ
いる。
炭を燃料とする 2 種類のボイラを る。
含んでいるからである。本来であ
れば、すべてのボイラを確認する
ことが適切ではあるが、同種類の
ボイラ、燃料、用途の 2 か所を対
象とすることで十分と判断した。
モルドバ国内法規、規制による測 モルドバ国内では積算熱量計の 測定機器の校正に関するエビデン
定機器の校正頻度はどのように “SHARKY 775”を 24 か月又は 60 日 スは、モルドバ国のみでなく、他の
決定されているか。
で校正することとなっている。他の 国の事業においても、明らかとす
測定機器についてモルドバ国内で べき事項である。
使用期間中の校正は求められて
いない。ただし、水分計は 2013 年
12 月 31 日に次回校正を受ける必
要があることがメーカー仕様書に
記載されている。
置換される石炭ボイラの効率と石 参照した CDM 事業はいずれもモ デフォルト値に関することは制度
炭の CO2 排出係数が、登録済み ルドバで実施されているものであ 側 で 担 保 され る べ き も の で あ る
の CDM 事業に基づくと説明してい る。PDD には石炭ボイラの効率が が、検証においてそのエビデンス
る。その CDM 事業の登録番号を 0.6 、 石 炭 の CO2 排 出 係 数 が を確認されることとなる。
提示する必要がある。
0.34tCO2/MWh と記載されている。
軽油の NCV は 34.9Gl/kl、天然ガス 軽油の NCV は、モルドバ環境省の デフォルト値に関することは制度
の NCV は 33.86GJ/kl としている。こ インベントリオフィスの Mr. Marius に 側 で 担 保 され る べ き も の で あ る
れらの数値のエビデンスを提示す よ る 数 値 であ る 。軽 油 の 比 重 を が、検証においてそのエビデンス
る必要がある。
0.82t/kL とすることで再現計算が可 を確認されることとなる。
能である。
III-89
H24 MRV DS
表 III- 4-44
最終報告書(詳細版)
検証機関(EECA)の指摘事項と事業者の回答
指摘事項
事業者の回答
指摘事項と事業者の回答に対す
る補足説明
BALTI で置換されたボイラの種類 置換されたボイラは石炭ボイラで
はなにか?
ある。
Hirtopul Mare と Criuleni と Balti City 技術文書はメールにて検証機関 ボイラに係る技術文書は基本的な
のボイラに関する技術文書を提示 へ提供する。
情報である。
する必要がある。
測定機器の精度に関する情報を 測定機器の精度に関して、積算熱 測 定 機 器 の 精 度 に 関 す る 情 報
提示してください。
量計“SMARTSENSOR AR867”と水分 は、基本的な情報である。重量計
量計“KETT HX700”の技術文書、デ については、ホスト国の状況に依
ータを検証機関へ提供する。
存する部分であり、精度を必ずし
しかし、ベールの重量を測定する も証明することはできないことがあ
機器はユーザマニュアルには規 る。
定されていない。そのため、これに
関する情報を検証機関へ提供す
ることはできない。
測定機器(積算熱量計、重量計、 積算熱量計 “Sharky 775” はモルド 水分量計は直接に排出削減量の
水分量計)のキャリブレーションに バ国で使用するための国家登録 算定に影響するものではないが、
関する文書を提示してください。
がなされている。設置後 24 か月以 その情報があることが望ましい。
内に 1 回確認が行われるべきもの 重量計については、排出削減量に
とされている。また、初期キャリブ 影響するため、将来的にキャリブ
レ ー シ ョ ン は 製 造 工 場 で実 施 さ レーション情報を整備する必要が
れ、その情報は検証機関へ提供し ある。
た。
水分量計“KETT HX700”のキャリブ
レーションに関する情報は検証機
関へ提供した。水分量計と重量計
は、モルドバ国で科学計器として
分類されず、測定機器として登録
対象外であるため、キャリブレーシ
ョン情報(初期、頻度)はない。し
かし、毎日使用される機器であ
る。
III-90
H24 MRV DS
制度面でのキャリブレーション頻 積算熱量計 “Sharky 775” はモルド
度に関する情報を提示してくださ バ国で使用するための国家登録
い。
がなされている。設置後 24 か月以
内に 1 回確認が行われるべきもの
とされている。他の機器はモルド
バ国の登録対象とされていない。
Sharky 775 は設置されたばかりで
あり、次回のキャリブレーションは
2014 年 10 月となる。水分量計は
2012 年に日本でキャリブレーショ
ンされている。次回のキャリブレー
ションは 2013 年 12 月 31 日である。
これらの法令に関する情報を検証
機関へ提供した。水分量計と重量
計に関しては既に回答した。
バイオマスボイラの効率はもっとも 算定方法 2-1 と 2-2 による事前計算
高い数値が採用されている。しか では平均値を採用している。これ
し、精度の高いとされる算定方法 は、既存ボイラのボイラ効率は把
2-1 と 2-2 では平均値が採用されて 握ができないためである。この平
いる。
均値を採用した意味は、排出削減
量の算定における誤差を小さくす
るためである。
NCV の出典を明らかとする必要が NCV = 35.7
ある。
GJ/kl
は “National
Inventory Report”を出典として算定
したものである。算定過程を検証
機関に提示する。
リファレンスシナリオでの既存ボイ リファレンスシナリオにおけるボイ
ラの平均的な熱生成効率の出典 ラの効率は CDM 事業としてモルド
を示す必要がある。
バで実施されているものを出典と
している。
NCV の出典を明らかとする必要が 排出削減量の算定に使う NCV は
ある。
モルドバ国内のゾーン、地域ごと
に調査された結果に基づいてい
る。この調査は農業大学により実
施されたもので、関連の報告書を
提供する。
石炭ボイラの効率を 60%としたこと 今回の置換されたボイラはソビエ
の説明をしてください。出典資料で ト時代に設置された古いもので、
はボイラの製造年により、ボイラ 装置寿命を越えて使用されてい
効率が違うようである。
た。そのため、出典資料にある製
III-91
最終報告書(詳細版)
H24 MRV DS
最終報告書(詳細版)
造後 15 年から 20 年のボイラ効率
を選択することが妥当であると判
断した。
② 課題
本調査では、ホスト国での検証機関を育成する目的からモルドバの検証機関を含む 2 つの
検証機関へ第三者検証作業を依頼した。しかし、モルドバ国に拠点を置く検証機関は CDM
の検証作業の経験がなく、第三者検証作業を行うために十分な能力を有するとは言えない状
況であった。一方で、もう 1 つの検証機関は隣国のルーマニアに拠点を置く検証機関であり、
CDM の経験もあり適切な第三者検証作業を行うことができた。しかしながら、その検証方
法や検証内容については CDM の手法に則るきらいがあり、JCM/BOCM という新しい
制度としてのあるべき姿を踏まえた内容とは必ずしも言えず、今後、日本側からより
具体的な検証マニュアル等を提示する必要がある。
JCM/BOCM の検証は、ホスト国の検証機関に依頼することができれば、事業の実施から検
証まで二国間で閉じることとなり、制度運用の面で効率的なものとなる。しかし、モルドバ国の
ような小国では、十分な能力を有する検証機関が存在しないため、その育成が今後の課題と
なる。
一方、本調査では隣国のルーマニアの検証機関が適切な第三者検証を実施することがで
きた。モルドバとルーマニアは歴史的、地理的にも関係が深く、言語の面でも共通性が高い。
そのため、検証機関による現地調査も円滑に進行し、検証機関の経験があったことも大きい
が、短期間で適切な検証作業なされた。このように、国の括りではなく、歴史的、地理的な背
景を考慮した検証機関の選定は、検証機関の能力とともに、JCM/BOCM 事業を実施するうえ
で重要な要素となりうる。
また、本調査ではカウンターパートの CFU が実際の CDM を経験していたことも検証作業が
順調に進められた要因の一つといえる。つまり、検証機関との調整は経験がないと困難な部
分も大きいため、その経験を有したカウンターパートがホスト国に存在することは大きなアドバ
ンテージとなる。したがって、JCM/BOCM 事業を実施するうえで、ホスト国のカウンターパート
に検証作業の経験を積ませる観点から、実現可能性調査に第三者検証作業を含めることは
有効である。
③ 検証機関へのアンケート
本調査では、検証作業の問題点を明らかとするために検証機関へ簡単なアンケート
を行った。
III-92
H24 MRV DS
表 III- 4-45
最終報告書(詳細版)
検証機関へのアンケート結果
回答(RINA Simtex)
設問
検証作業中に何らかの問題点に直面しまし 通常、検証は、登録されたモニタリング計画及
たか?直面した場合には、その問題点は何 び方法論に基づいて実施される。そして、登録
された PDD に示されている方法論とモニタリン
だと考えますか?
グ計画によるモニタリングとを比較することによ
って行われる。しかし、本調査では PDD と方法
論がまだ登録されていないので、検証が適切
に行われなかった。
JCM/BOCM の制度で提案された検証プロセ この制度の検証プロセスは既に簡略化されて
スを、信頼性を保ちながら、より一層の検証 いる。
プロセスを簡素化するためのアイデアがあ
りますか?
検証作業で、最も時間を要したものは何で 検証報告書の様式および作成規則を見つける
すか?
ことに時間を要した。通常、検証報告書の様式
は、規則、方法論等を含むウェブサイトが整備
されている。
検証作業に係る契約額は適切でしたか?
契約は入札により決定され、入札額は通常より
も低いものであった。我々は、その技術的価値
のためにこの契約を獲得したいと思い、モルド
バ国およびその他の国における JCM/BOCM 事
業の検証作業を実施したいと考えている。
その他のコメントはありますか?
一般的に、JCM/BOCM の検証過程は合理的な
レベルで、より簡単である。しかし、検証作業
は、方法論が承認され、PDD 登録された後に実
施されるべきものである。
(14) 排出削減効果の分配
公式見解ではないが、JCM/BOCM が実施された場合に削減された GHG 排出量のモルドバ側
と日本側とで分配については、日本の資金による投資の結果削減された GHG 排出量の大部分を
日本側に供与する用意がある、といった好意的な印象を受けている。
(15) 環境十全性の確保
1) 環境関連法令
モルドバ国内法(環境保護法 no.1515-XII)により、管理されていない農業残渣の焼却行為
は禁止されている。したがって、バイオマスボイラでの管理燃焼は好ましい状態である。大気
汚染に関する基準の適用や違反に対する罰則規定は、大型の工業施設のみを対象としてい
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る。したがって、当該事業・活動はモルドバの大気関連法に抵触することはない。
また、モルドバの環境影響評価制度は、EIA 法(no. 851-XIII of 29.06.1996)で規定されて
いるが、当該事業・活動は小規模であることから、EIA は要求されない。
2) 大気汚染
麦藁ボイラによる環境面での悪影響としては、風向きにより煙突からのダストによる地域住
民への健康影響が懸念される。モルドバでは粉塵に関して排出基準値がないため、国際的
グッドプラクティスとして表 III- 4-46 に示す EU 基準を参照する。Moldagrotehnica から入手し
た資料によれば、麦藁ボイラの煤塵排出濃度は、236~263mg/Nm3 となり、EU 基準を超過す
る。そのため、煙突の高さや設置場所の周辺環境に留意する必要がある。現地踏査で確認し
たところ、麦藁の充填時には水分の蒸発により、白煙が観測されたが、定常運転時にはほと
んど排煙は確認されなかった。
Moldova
N/A
表 III- 4-46
IFC*1
50 or up to 150 if justified by
environmental assessment
排出基準
EU Standards *2
150
(at 10% O2)
Japan *3
300
*1) IFC EHS guidelines / Air Emissions and Ambient air quality
*2) European Standards EN 303-5
*3) 大気汚染防止法
Hirtopul Mare Gymnasium 煙突からの煙
一方、ペレットボイラに関しては、集塵機が標準装備されており、粉塵発生は大幅に軽減さ
れるため、環境への悪影響は軽微と考えられる。また、ペレットボイラは自動運転により温度管
理され、ペレット供給も自動装填となっており、麦藁ボイラに比べて、燃焼条件は安定している
ことからも、粉塵の排出は大幅に低く抑えられると予測される。
またペレット化する際に水分量を一定範囲に収めることから、不完全燃焼やタールの発生
を抑え、黒煙発生を抑えられる。現地踏査で確認した際には、煙突からの排煙は確認されな
かった。
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3) 焼却灰の処理
焼却灰は、一端ボイラ脇の敷地内に野積みにされるが、カリウム分を含む栄養分が含まれ
ており、全モニタリングサイトで農地還元されていることが確認された。
麦藁(ペレット含む)の焼却灰は、一般に 5%程度、木質バイオマス(チップ、ペレット)は
0.5%程度と言われている(pellets@las 報告書)。
Hirtopul Mare Gymnasium
Hirtopul Mare Kindargarten 焼却灰
Chiscareni Lyceum & Gymnasium 焼却灰
Viisoara Gymnasium 焼却灰
(16) その他の間接影響
本事業・活動の実施に伴う環境面以外の間接的な悪影響は、予見されない。
(17) 日本製技術の導入促進方策
暖房燃料をバイオマスに変更することで、化石燃料コスト上昇の影響軽減と暖房の安定稼働確
保を行うため、現在 JICA ではモルドバの農村地域教育関連施設に対して本邦企業が有するペレ
ット製造並びにペレット暖房技術の採用可能性をしている。
ペレットボイラは、欧州や東欧諸国のほか、本邦においても数社のメーカーが存在することが確
認されている。但し、日本製ペレットボイラは為替・輸送コスト・仕様変更コスト等で割高になってい
るが、安全性、利便性(省力、燃料供給~排気/排出までの一環システム売り)、及び省エネ性に
おいて技術的優位性が認められる。また、維持管理や部品サービス体制の構築ができていないと
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いう欠点がある。対策としては本邦事業者と現地メンテナンスサービス事業者との代理店契約を行
い、上記のサービス並びに部品調達面における懸念を回避する必要がある。JICA 無償資金協力
により本邦技術がモデル的に導入され、当該プロジェクトの評価の過程で性能の証明が行われる
と同時に、本邦事業者による製品供給・アフターサービス体制の構築が行われる必要がある。
なお、現在日本製バイオマスボイラ製品のモルドバでの使用実績はない。農業残渣の直接燃
焼型ボイラに関しては、日本国内の需要がなく、かつ旧式技術のため、製造している本邦メーカ
ーは確認できていない。そのため、これまでモルドバ国内に設置されたバイオマスボイラは、ポー
ランドやオランダ等、EU 諸国からの輸入、又はライセンスを取得している地元メーカー製である。
仮 に 、 ボ イ ラ 熱 量 50kW サ イ ズ の ペ レ ッ ト ボ イ ラ を モ ル ド バ の 製 造 メ ー カ ー
(”Moldagrotehnica”SA)から購入・設置する場合、本体価格、搬入・据付工事等を含めて、90 万
円程度と見積もられる。一方、本邦製の同サイズペレットボイラを導入する場合には、本体のみで
500~1,000 万円かかり、これに加えて輸送コストや保険料金が必要となり、かなり割高になると予
想される。
(18) 今後の見込み及び課題
バイオマスは様々な種類があり、また同種によっても特に含水率によって発熱量が変わることか
ら、単純にバイオマス残渣燃料消費量だけでは化石燃料代替量の推定はできない。この対策に
は、バイオマス残渣燃料の調達先と原料・保管状態に関する透明性を確保し、今回の試みのよう
に積算熱量計を用いた熱量把握と、ボイラ効率のカタログ値に対する担保の方法が重要となると
考える。
本調査で行ってきた様なバイオマス発熱量並びに含水率分析はモルドバでもこれまで行われ
てきたことが無かったため、今回協力を得た国立農業大学では、CFU と協力をしながら、今後これ
ら分析項目の継続的な分析を行う意向を持っており、精度が高い一方で作業を簡便化することに
繋がる基礎データの充実が期待される。
(19) その他
1)ペレットボイラに対する投資判断について
日本製・外国製を問わず、ペレットボイラは現在モルドバで使用されている石炭ボイラや天
然ガスボイラと比べ機器点数が多く割高である。従って投資金額だけではペレットボイラが採
用されることは無く、導入ボイラの判断は使用する燃料価格との関係が大きい。
本調査において、民間企業が自己投資したペレットボイラは粉砕石炭並びにバイオマスペ
レットの両方を使用できる構造のものとなっている。シェールガス/オイルの開発によって今
後ロシア産天然ガス価格の相場変動も予測されるが、民間事業者はこれまでの天然ガスの高
騰に伴い、暖房熱源用ボイラの新規導入あるいは置き換えのタイミングを機に、使用可能燃
料の多様化を図る為にペレットボイラを導入しているのが実情である。
Moldagrotehnica のペレットボイラに関する運転コスト分析においても、2011 年市場価格で
ある石炭 2,900MDL/トン、麦藁ペレット 1,800MDL/トンを採用し、兼務人員によって 180 日
/年の暖房期間中に平均 30%(JICA 調査実績値)稼働すると仮定した場合、バイオマスボイラ
の償却期間である 15 年における IRR は 7%程度となり、物価上昇率が平均 7%程度であるこ
とからもメリットは無いと言える。
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今後の燃料価格動向次第ではバイオマスボイラが BaU となることも考えられる(化石燃料価
格上昇率の方がバイオマスペレット価格を上回る)一方で、上述の通りロシア産天然ガス価格
の見直しが行われる可能性もある(天然ガスと比べペレット価格はコスト構造上弾力性が無く、
価格が下がる余地は少ない)ことから、連動して石炭価格のも下がる可能性がある。その場合、
ペレットボイラ導入事業者は粉砕石炭に転換することが予想される。従って無償援助による導
入を除き、民間事業者のマインドとしては、ペレットボイラの利用はコスト低減のための選択肢
を一つ増やすための投資として考えているだけで、と言える。
2)簡易財務分析
年間 180 日を平均 20%の負荷率で運転したと想定し、【既存の化石燃料ボイラの運転コス
ト】-【バイオマスボイラの運転コスト】=収入とみなし、バイオマスボイラの初期投資額に対す
る内部利益率(ボイラ償却期間として 10 年)を算出して簡易財務分析を行った。
<A:既存ボイラ寿命前の買い替え>
ケース 1A.石炭ボイラから麦藁ボイラ(150kW:Hirtopul Mare 幼稚園ケース):9%
ケース 2A.ガスボイラから麦藁ボイラ(150kW:Hirtopul Mare 幼稚園ケース):-5%
ケース 3A.石炭ボイラからペレットボイラ(75kW:Moldagrotechnica ケース):13%
ケース 4A.ガスボイラからペレットボイラ(75kW:Moldagrotechnica ケース):値無し
<B 既存ボイラ寿命の場合の買い替え>
ケース 1B.石炭ボイラから麦藁ボイラ(150kW:Hirtopul Mare 幼稚園ケース):18%
ケース 2B.ガスボイラから麦藁ボイラ(150kW:Hirtopul Mare 幼稚園ケース):7%
ケース 3B.石炭ボイラからペレットボイラ(75kW:Moldagrotechnica ケース):21%
ケース 4B.ガスボイラからペレットボイラ(75kW:Moldagrotechnica ケース):-19%
現在のインフレ率(2013 年:4.6%)、国債利回り(5.29%)を比較して、全ての価格条件に変
化がないという条件であれば、経済的な面におけるガスボイラからバイオマスボイラへの買い
替え動機は小さいと言える。一方、石炭ボイラからバイオマスボイラへの買い替え動機は比較
的大きいことが想定される。
5.
持続可能な開発への貢献に関する調査結果
1)資源の有効活用、新規産業/雇用創出
農業国にもかかわらず未利用だったバイオマスを有効活用することで、国内資源の有効活
用と、バイオマス残渣燃料製造やボイラ関連事業等の新規産業・事業者並びに雇用の創出
に寄与する。
2)経済効果
国内のバイオマス残渣燃料を購入することで、化石燃料の購入で外国に流出していた内
貨が国内で回転・再投資され、GDP 向上等の経済効果に資する。
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【参考文献】
-
State Hydrometeorological Service, 2011: Activity report 2010
-
Kjellberg,A.,2010: Implementation of renewable energy in the Republic of Moldova.
Swedish University of Agricultural Sciences.
-
USAID-HELLENIC AID COOPETATION
National Inventory Report of the Republic of Moldva
2011 Guidelines to Defra / DECC’s GEG Conversion Factors for Company
Reporting (Department of Energy and Climate Change, UK)
-
Statistical Report No.1- BE “Energy Balanace”, approved through Oder No.88 from
3 October 2012 他
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