金属材料・樹脂材料における不具合シミュレーションと データ解析に関する

平成22~24年度
(県単独研究)
研究成果事例
金属材料・樹脂材料における不具合シミュレーションと
データ解析に関する研究
[背景・目的]
企業から持ち込まれる依頼・相談の中でも最も件数が多い、異物・未知試料の分析を
中心とした不良・不具合解析について、フーリエ変換赤外分光分析装置(FT-IR)とその
分析技術の進歩、データベースの充実により、単体の樹脂異物であればかなりのケース
で同定が可能になりました。しかし実際には混合物や、熱的ダメージを受けて外観・分
子構造が通常の状態から変化した異物も多く、それらの同定・解析が望まれています。
本研究では、加熱によって変質した樹脂異物の特定について検討しました。
[これまでに得られた成果]
汎用・代表的な樹脂からポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン(POM)、
耐熱性の樹脂からポリアミド(ナイロン 6-6)、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフ
タレートの 6 種の樹脂について、それぞれの融点(ポリカは非晶質なのでガラス転移点)
から 400℃まで種々の温度で数時間加熱したサンプルについて IR 分析データを取得しま
した。以下に例として POM サンプルの外観と、赤外吸収スペクトルデータを示します。
POM の融点は一般に 165~180℃であり、200℃までは外観(色)も IR スペクトルも未加
熱試料と差は無いですが、250℃を超えると徐々に変化が見え始め、300℃では黒色化・
黒褐色化します。300℃-数時間の熱ダメージを受けて黒化した場合、POM の特徴である
1000cm-1 付近のピークと 3000cm-1 付近のピークが一気に消失してしまうため、元が POM
であったと断定することは一見困難に思えますが、スペクトル全体として「特徴」があり、
これらデータを収集・比較することによって特定は可能であることがわかりました。
POM 樹脂(左から 300℃、250、200、未加熱)
IR データ(上から 300℃、250、200、未加熱)
[期待される効果・技術移転の計画]
これまでわからなかった、熱影響により黒くなってしまった樹脂・有機物系の異物の
同定が可能になり、異物混入による不具合原因究明のスピードと精度が向上します。
お問い合わせ先 工業技術研究所 浜松工業技術支援センター
材料科
電話 053-428-4156