C4 四日市大学 リニア中央新幹線の開業によりストロー現象は起こるのか? リニア中央新幹線の開業によりストロー現象は起こるのか? 2014/11/28 堀江・伊藤・黒川・小林・張ケイウ・前田・三島 1 はじめに 2 リニア中央新幹線とは 3 ストロー現象 3-1 ストロー現象の定義 3-2 ストロー現象に対する発言 4 名古屋市の考え 4-1 リニア中央新幹線開業を見据えた名古屋市の構想 4-2 指定都市市長会シンポジウム in 名古屋 5 考察・提案 6 まとめ 1 はじめに 最近、交通面のニュースで取り上げられている話題に「リニア中央新幹線の建設」があ る。私たちの大学のある四日市市から利用しやすい名古屋市にリニア中央新幹線の駅がで きることは、名古屋に起こる影響が少なからず四日市市にも起こると考えた。リニア中央 新幹線が開業することで名古屋市にどういった影響があるか調べることにした。 リニア中央新幹線が開業することで起こる影響を調べた時「ストロー現象」が起こると 言われている。駅ができる名古屋市を中心にストロー現象が本当に起こるのかを考えてい きたい。また起こるのであれば名古屋市はストロー現象に対して、どのように考えている のだろうか。その考えについて調べ、私たちも自分たちなりの対策案を考えていきたい。 1 C4 四日市大学 リニア中央新幹線の開業によりストロー現象は起こるのか? 2 リニア中央新幹線とは 現在の新幹線の約2倍のスピードの時速505km を誇るリニア新幹線。リニア中央新幹 線とは、東京から名古屋までの約300kmと名古屋から大阪までの約150kmである 三大都市圏の東京・名古屋・大阪を超伝導リニアによって結ぶ新たな新幹線のことである。 リニア中央新幹線の概要 開業目標 東京都 ― 名古屋市間 2027年(平成39年) 名古屋市 ― 大阪市間 2045年(平成57年) 時速505km(平均速度392km) 最高設計速度 東京都 ― 名古屋市間を最速40分 東京都 ― 大阪市間を最速67分 東京都 ― 名古屋間で約5兆5千億円 名古屋 ― 大阪間で約4兆円 合計で約9兆5千億円 総事業費 (路盤、トンネル、高架橋、駅舎、車両を含む) ↓ JR東海が全額自己負担 中間駅建設費用(JR東海負担予定) 本数 料金 停車駅 一日に平均144本(最大で1時間あたり10本運転する計画) 東海道新幹線「のぞみ」の指定料金に700円足した 1万1480円を想定している。 品川(品川駅地下)・相模原市(JR橋本駅付近) ・甲府市 飯田市・中津川市・名古屋市(名古屋駅地下) 2 C4 四日市大学 リニア中央新幹線の開業によりストロー現象は起こるのか? 出典:朝日新聞2014年10月29日 3 ストロー現象 3-1 ストロー現象の定義 共立総合研究所で名古屋圏の経済・文化・地域構造等分析を行っている江口忍氏は、相 対的に規模の大きな都市と小さな都市の間が鉄道などで行き来が便利になった時、規模の 小さな都市が大きな都市に、観光客・ビジネス客・買い物・レジャー・さまざまな情報・ 文化的刺激といった「人・金・モノ・情報」などを奪われることを “ストロー現象”と定 義している。 3-2 ストロー現象に対する意見 リニア中央新幹線に対して多くの人がストロー現象について発言している。 ・愛知県 HPによると、愛知県はストロー現象が起こると懸念している。しかし最小限に食い止 めるために、圧倒的な強みであるモノづくり産業をベースに、技術力・開発力などを高め ることで、首都圏から中京圏に及ぶ範囲で人口5千万人規模のリニア大交流圏が誕生する 中で、愛知県を産業拠点としての役割を担っていくとしている。 3 C4 四日市大学 リニア中央新幹線の開業によりストロー現象は起こるのか? ・日本共産党 リニア中央新幹線の開業後、地方経済においてストロー現象の検討が必要であるとして いる。日本共産党のHPで志位和夫氏は「リニア建設はやめるべきで、東海道新幹線の防 災、東日本大震災の鉄道復旧に力を注ぐことが最優先されるべきです」と発言している。 ・名古屋駅地区街づくり協議会 JR 名古屋駅(広小路口)を中心に東西約 1.0km、南北 1.5km の楕円状の範囲に名古屋 駅地区を多くの方が訪れ・働き・学び・住みたい街にするために、魅力向上を共に考え、 提言し、活動する団体である。 名古屋駅地区街づくり協議会の会長である神尾隆氏(東和不動産相談役)は、 “ストロー 現象”防止策は「魅力ある地域と魅力ある都市をつくること」として、以下の3つの具体 策を上げている。 ① 乗り換えの利便性を高めた名古屋駅のスーパーターミナル化 ② 名古屋駅周辺の再開発 ③ 名古屋市の核となる地域活性化 ・名古屋商工会議所 名古屋商工会議所の岡谷篤一会頭は駅周辺以外の活性化が「遅れている」と指摘し、中 部財界では名古屋駅のスーパーターミナル化を通じ「名古屋を西日本の玄関口に」するこ とを提案している。 ・三菱UFJリサーチ&コンサルティング エコノミストの内田俊宏氏は「愛知は首都圏との“融合”という視点から再構築すべき」 と指摘する。また「地域の製造業の活性化は不可欠」とも指摘している。製造拠点である 名古屋に近い方が利便性の高い部門(研究開発部など)は名古屋へ、営業部門などは東京 に、といった新たな事業体制を築く必要があるとしている。 このようにリニア中央新幹線の開業後、ストロー現象に対する懸念は多い。名古屋市と してストロー現象に対する対策も必要であると指摘されている。 私たちは、ここまで多くの人が懸念しているストロー現象は、上記のように各分野の方々 が懸念していると発言しているために、リニア中央新幹線の開業後に起こる可能性が高い と考えた。愛知県・名古屋市として必要だと指摘されているストロー現象に対する政策に ついて、特に駅ができる名古屋市は、どのような政策を必要と考えているのだろうか。 4 C4 四日市大学 リニア中央新幹線の開業によりストロー現象は起こるのか? 4 名古屋市の考え 私たちは10月14日に、名古屋市役所の住宅都市局都心開発部リニア関連・名駅周辺 まちづくり推進室の浅田氏と大平氏にヒアリングを行い、また10月25日に名古屋で開 催された、指定都市市長会シンポジウム in 名古屋にも参加した。 4-1 リニア中央新幹線開業を見据えた名古屋市の構想 ヒアリングでいただいた資料を以下のようにまとめた。 『総合計画』 名古屋市が考える2013年から2028年までの15年間の総合計画の中にリニア中 央新幹線の開業がある。 その中の初めの5年間の計画で、名古屋市を取り巻く潮流の中でもリニア中央新幹線の 開業は名古屋市に特に大きな影響がある潮流と取り上げ、名古屋市の考える戦略として、 次の3点を高めていく方針がある。 ① リニア中央新幹線開業を見据えた都心部の魅力づくり ② 「また来たい」ナゴヤの創出と圏域の活性化 ③ ものづくり経済圏の中核都市ナゴヤの実現 『名古屋駅周辺まちづくり構想』 総合計画で示された3点の戦略は、名古屋市が2014年9月に策定した「名古屋駅周 辺まちづくり構想」の中の基本方針として、さらに具体的に明記されている。 ・新しい路面公共交通システムの導入の検討 ・自然空間や歩行者空間の確保 ・乗換先が一目で見渡せる広域広場の形成 ・防災性の向上 ・他の交通機関とのアクセス性の強化 など 多くの方針があり、2027年の開業に向け、国、県、公共団体と連携して検討・調整 を行い、東京オリンピックのある2020年までには必要な手続きを済ませ設計・整備に 入る予定である。 名古屋市役所の浅田氏と大平氏は、 「名古屋市としては、東京にストローされないように 『名古屋駅周辺まちづくり構想』をもとに名古屋駅周辺の利便性を高めるとともに、地域 と一丸となって地域活性に力を入れることで、逆に東京から多くの人を来てもらい“逆ス トロー”を起こしたい」と話した。 5 C4 四日市大学 リニア中央新幹線の開業によりストロー現象は起こるのか? 4-2 指定都市市長会シンポジウム in 名古屋 このシンポジウムでは、河村たかし市長と共立総合研究所の江口忍氏の2人が主にリニ アについて話していた。 河村市長のリニア中央新幹線の開業に対する考えとしては「リニアが来ることは、名古 屋市にとって大チャンスでもあり大ピンチでもある」と話した。名古屋市にとってリニア 中央新幹線の開業は、移動時間が短くなる分、名古屋市に滞在する時間も長くなり経済効 果につながるとも考えられるが、逆にストロー現象が起こる危険性も持ち合わせていると 考えているが、しかし名古屋市としては、ストローされないようにきちんと対策し、東京 から人を呼べるような街にしたいとのことだったとおっしゃっていた。 また、江口氏は「名古屋市は近隣の市町に助けられている部分が大きい、そことうまく 連携することで名古屋市は栄えていく」と話した。江口氏の考えとしては、リニア中央新 幹線が開業しても生産業の拠点は移動しにくい、そこに力を入れるのはもちろんのこと、 東京にストローされやすいもの(人、カネ)にもストローされないようにする工夫は必要 とのことだった。 5 考察・提案 ストロー現象はヒト・モノ・カネ・情報が集中する事である。その中でもヒトがスト ローされることは、他のモノ・カネ・情報がストローされることにつながると私たちは考 えました。ヒトがストローされることは、一極集中する事と同じではないかと考える。名 古屋市の政策のなかで、ヒトをストローさせない政策が少ない。なので、私たちの提案に 名古屋市の政策の一部を踏まえ以下の事が特に重要であると考える。 ・名古屋市の都心部の魅力づくりの向上 →根本的に名古屋に一度来てもらわないと名古屋に住んでもらうことはできないので、 ①名古屋メシを広める②観光名所やレジャースポットに来てもらい、東京にはない名 古屋の魅力を感じてもらい、今後また来たいと思ってもらえるようにする。行きたい まちから住みたい街に変える。 ・他の交通機関とのアクセス性の強化 →東京・大阪といった大都市への移動がしやすい。 ・首都機能を名古屋市に移転する →首都直下型の災害が起きた場合、東京に首都機能が集中していてバックアップがで きなければ、国家の機能が停止してしまうため、名古屋で首都機能(立法機関・行政機 関・司法機関)をバックアップできるよう、機能の一部を移転するべき。 6 C4 四日市大学 リニア中央新幹線の開業によりストロー現象は起こるのか? ・民間企業の本社の名古屋市への移転 →民間企業の本社を名古屋に移転することにより、 ①地理的に大都市である東京・大阪への交通が便利になる。 ②首都直下型地震による災害に備えたバックアップ。 ・アメリカのワシントン・ニューヨークのように日本を二分化 →都市ごと機能を二分化する 愛知県の工業用地は産業インフラが整っており、東京圏、大阪圏と比較すると、地価 が格段に安価である。そして環状道路が東京や大阪よりも整備されており、都心を通 過しなくてよいため物の流れが良くなる。地理的に見ても日本の中心にあるため地方 への発信が便利。 Ex) アメリカ 政治の中心ワシントン・経済の中心ニューヨーク ・高等教育機関をより充実させる →ストロー現象に対象になる人は若者と考えるため, より魅力のある教育機関を作り名古屋に人を集める、とどめる→卒業後そのまま名古 屋・愛知に就職してもらう。 Ex) 東京の約 1/3 の学校数なのでまず学校数を増やし、学生に選択の幅を広げさせ る。しかし、これから少子高齢化が進み学生の数が少なくなるので東京にあり 名古屋に存在しない学部(ex.グローバル教養学部『法政大学』など)を現存の 大学に新たな学部を入れるのも良いのではないだろうか。 6 まとめ 2027年にリニア中央新幹線が開業することは日本にとってはプラスであると考える。 しかし、今のままの政策しか行わられなければ、名古屋市のストロー現象(東京の一極集 中)につながり地方の衰退にもつながる。名古屋市には、市役所の浅田氏と大平氏がおっ しゃっていたように“逆ストロー”を起こしてほしい。そのためには、私たちが重要だと 考える5で提示した政策について考えていくべきだ。だんだんと近づくリニア中央新幹線 の開業に向けて、今後も名古屋市の動きに注目していきたい。 7 C4 四日市大学 リニア中央新幹線の開業によりストロー現象は起こるのか? 参考文献 ・『名古屋市大都市圏成長ビジョン』 2014年3月名古屋市作成 ・『名古屋駅周辺まちづくり構想』 2014年9月名古屋市作成 ・『名古屋市総合計画2018』 2014年10月名古屋市作成 ・ 「政令指定都市市長会シンポジウム in 名古屋」 2014年10月25日開催時配布資料 ・日本経済新聞 2014年10月17日 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF17H0B_X11C14A0MM0000/ ・リニア中央新幹線建設推進期成同盟会 HP http://www.linear-chuo-shinkansen-cpf.gr.jp/index.html ・東洋経済オンライン HP http://toyokeizai.net/ ・相模原市 HP http://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/index.html ・日本共産党 HP http://www.jcp.or.jp/ ・名古屋が怯える“ストロー現象” 、経済効果10兆円のリニア新幹線は「両刃の剣」 2013年12月10日 産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/131210/wec13121007010000-n1. htm ・愛知県HP http://www.pref.aichi.jp/ 8
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