試 験 研 究 だ よ り 磯根魚類の食性調査―マゾイの好物は?― ソイ類やアイナメ類といった磯根魚類は 岩宇地区の沿岸漁業にとって重要な資源です。 この大切な資源を効率的に増やすにはどう すればいいのでしょうか?種苗放流の動き もありますが、その前に生態をよく知るこ とが必要です。当センターでは、まず何を 食べているのかを調べることにしました。 マゾイ 刺し網調査 魚の食性を知るためには、魚を獲って きて胃袋の中身を調べなければなりませ ん。そこで今回は、泊村照岸前浜の岩礁 域に刺し網を仕掛け、標本を採集するこ とにしました。調査には泊村漁協の高橋 さんに協力していただきました(右の写 真)。泊の海を知り尽くした大ベテラン の漁師さんです。調査は2005年5、7、 早朝の海で網を揚げる高橋さん 9月の計3回行われ、マゾイ(キツネメバル)56個体、ガヤ(エゾメバル)75個体、 アブラコ(アイナメ)18個体など合計19種258個体を採集することができました。 胃内容物調査 センターに持ち帰った魚は全長、体重などを測った後、胃を取り出し、その内容物 を種別に分け、それぞれの個体数と重量を測定しました。このデータをもとに餌生物 の占める割合を調べると次ページの円グラフのような結果になりました。 マゾイの一番重要な餌はエビ類で、そのほとんどは藻場に棲むモエビの仲間でした。 ガヤは、マゾイと違って、カイアシ類やアミ類、ヨコエビ類といった小型甲殻類が大 部分を占めました。マゾイとガヤは近縁種で、姿・形は似ていて、同じような場所に 11 [水産研究科] その他 ヤドカリ類 その他 その他 エビ類 アミ類 アミ類 ヨコエビ類 イカ類 ヨコエビ類 カイアシ類 エビ類 カニ類 ワレカラ類 ワレカラ類 アミ類 ヨコエビ類 イカ類 ゴカイ類 マゾイ ガヤ アブラコ 胃内容物に占める餌生物の割合 生息していますが、餌に関しては食べ分けているようです。なお、アブラコについて はとても様々な餌を食べており、胃の中からは小型甲殻類からゴカイ類、イカ類、エビ・ カニ類と多様な生物が出てきました。 マゾイの放流適地は? 現在、北海道ではマゾイの種苗放流技術の開発を行っています。今回実施した胃内 容物調査から、岩宇地区での放流適地について餌の面からみると、モエビ類の豊富な 岩礁域の藻場付近が最適ではないかと考えられます。なお、マゾイは全長27㎝程度(約 5歳)にならないと繁殖に参加しない、非常に成長の遅い魚だということもわかって います。ですから、小型魚や抱卵魚(ソイ類はメスのお腹の中で子供が孵ります)を 獲らないなどの保護政策も、資源を増やすためには必要かもしれません。 刺身に塩焼き、煮付けにしても美味しい、岩宇の海で育ったマゾイをぜひご家庭の 食卓にいかがですか。 12
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