Slide Master - 第 23回日本放射線腫瘍学会学術大会

本日のABC
A 増加する食道癌
食道癌へのApproach -疫学,解剖,診断まで
食道癌
B 照射野って広いんです
食道癌の放射線治療(external Beam irradiation
and Brachytherapy) -他の治療方針も含めて
旭川医科大学
放射線科
C どれくらい治るのでしょう
山品 将祥
食道癌のCure and Care -治療成績や有害事象
食道癌の疫学(罹患数と死亡数)
• 10万人あたり罹患率(2005年)
基礎から学ぶ放射線治療
~食道癌のABC~
A 増加する食道癌
食道癌へのApproach-基礎的知識を知っておこう
疫学
男性に
多い
女性の
• 10万人あたり死亡率(2005年)
 男性 15.2(約9500人)
女性 1.3(約1700人) 5倍以上
 男性 23.8(約15000人)
女性 4.1(約2700人)
• 日本の悪性腫瘍死の第8位(2007年)
 男性は第6位
女性は第13位
• 男性は年々増加傾向,女性は横ばい
国立がん研究センターがん対策情報センター http://ganjoho.ncc.go.jp
食道癌の疫学(罹患数と死亡数)
• 年々,罹患数は増加
• しかし,罹患数と死亡者数の差は開いてきている
食道癌の疫学(特徴)
• 危険因子
 喫煙,飲酒,熱い飲食物の嗜好など
• 年齢
 ピークは60歳台,70歳以上が30%程度(高齢者に多い)
20000
18000
16000
• 症状
14000
12000
10000
8000
6000
罹患者数
死亡者数
4000
 初期に症状は尐なく,進行すると嚥下困難感,体重減尐
などがあらわれる
• 同時重複癌
2000
0
 胃・頭頚部癌が多い(約10%※で重複癌が認められる)
国立がん研究センターがん対策情報センター http://ganjoho.ncc.go.jp
※Comprehensive Registry of Esophageal cancer in Japan 3rd
1
食道癌の疫学(特徴)
• 組織型
基礎から学ぶ放射線治療
~食道癌のABC~
 扁平上皮癌が多い(90%以上)
欧米は腺癌が50-70%,扁平上皮癌が30-50%
日本での喫煙率の高さ,欧米でのバレット食道 ※
• 解剖学的特徴
 漿膜をもたないため,隣接臓器(気管,大動脈,心臓,肺
など)に浸潤しやすい
 リンパ節転移の頻度が高い(離れたリンパ節にも転移し易い)
※バレット食道とは…
「Barrett粘膜が全周性で最短長が3cm以上のもの」
Barrett粘膜は,障害粘膜の再生過程で扁平上皮に円
柱上皮化生を生じたものと考えられ,胃食道逆流症
(GERD:gastroesophageal reflux disease)と関連する.
A 増加する食道癌
食道癌へのApproach-基礎的知識を知っておこう
解剖
食道癌の解剖
• 頚部食道(Ce)
 食道入口部-鎖骨上縁
頚部
• 胸部食道(Te) 約90%はここから発生
 胸部上部食道(Ut)
 鎖骨上縁-気管分岐下
13%
胸部
上部
52%
胸部
中部
24%
胸部
下部
A 増加する食道癌
 胸部中部食道(Mt)
 気管分岐下-胃・食道接合部を
2等分した上半分
 胸部下部食道(Lt)
 気管分岐下-胃・食道接合部を
2等分した下半分の胸腔内
• 腹部食道(Ae)
気管分岐下-胃・食道接合部を
2等分した下半分の胸腔内
食道癌の診断(治療前検査)
• 存在診断
→ GF,食道Ba
GFでは生検による病理診断が可能
• 進達度診断
基礎から学ぶ放射線治療
~食道癌のABC~
胸部
食道癌へのApproach-基礎的知識を知っておこう
診断
腹部
食道癌の診断(病期診断)
• T(進達度),N(リンパ節転移),M(遠隔転移)を評価,
Stage(病期)を診断 →治療方針決定に重要
• 国際的にはUICCのTNM分類を用いるが,
日本では癌取扱い規約を用いる事が多い
→ GF,食道Ba,造影CT,造影MRI,
EUS(超音波内視鏡)
• リンパ節,遠隔転移診断
→ 造影CT,FDG-PET
• その他
→ 全身状態,呼吸機能,腎機能など
2
食道癌の診断(病期ー取扱い規約)
• T因子 深くなるにつれて進行する(1から4段階)
• N因子 頚部,胸部,腹部の3領域にまたがる(0から4まで)
 リンパ節転移は,EP,LPMで0%,MMで10%,SM1で15%
SM2になると40%と高くなる
T1a:癌腫が粘膜内にとどまる病変
食道癌の診断(病期ー取扱い規約)
 原発巣の主座により所属リンパ節が異なる
※ 改訂前までの名称
T1a-EP:癌腫が粘膜上皮内にとどまる病変(Tis) ※m1
T1a-LPM:癌腫が粘膜固有層にとどまる病変
※m2
T1a-MM:癌腫が粘膜筋板に達する病変
※m3
T1b:癌腫が粘膜下層にとどまる病変(SM)
SM1:粘膜下層を3等分し,上1/3にとどまる病変
SM2:粘膜下層を3等分し,中1/3にとどまる病変
SM3:粘膜下層を3等分し,下1/3 に達する病変
T2:癌腫が固有筋層にとどまる病変(MP)
T3:癌腫が食道外膜に浸潤している病変(AD)
T4:癌腫が食道周囲臓器に浸潤している病変(AI)
食道癌の診断(病期ー取扱い規約)
• M因子 遠隔転移があるかないか(0または1)
 M1の場合の殆どは,根治治療の適応外となる
• Stage TNM因子から病期を診断する
食道癌の診断(病期ーUICC2009)
• UICC 2002 から大幅に改定された
 T因子は,取扱い規約とほぼ同じ,T4がaとbに細分化
 N因子はN0or1から転移リンパ節数でN0-3に細分化
 Prognostic Groupingが加えられた
A 増加する食道癌 まとめ
•
•
•
•
高齢者に多い
罹患数が増加しているが,死亡数と差が開いている
日本では扁平上皮癌が大多数
発生部位は,胸部中部食道が最も多い
基礎から学ぶ放射線治療
~食道癌のABC~
B 照射野って広いんです
• 病期診断として「癌取扱い規約」と「UICC-TNM」
食道癌の放射線治療(external Beam irradiation
and Brachytherapy)-他の治療方針も含めて
治療
3
食道癌の治療
①
②
③
④
食道癌の治療(内視鏡的治療)
• 内視鏡的粘膜切除術
(EMR: Endoscopic Mucosal Resection)
• 内視鏡的粘膜下層剥離術
(ESD: Endoscopic Submucosal Dissection)
内視鏡的治療
外科的手術
放射線単独治療
化学放射線治療
 絶対的適応
- EP,LPMかつ2/3周性以下
 相対的適応
- N0症例でMM,SM1
- EP,LPMで2/3周性以上
大きく上記4つに分けられる
全身状態,年齢,合併症など
を加味して治療方針を選択
放射線治療計画ガイドライン2008より抜粋
食道癌の治療(外科的手術)
食道癌診断・治療ガイドライン2007 より
食道癌の治療(放射線治療)
• 放射線単独治療 v.s. 化学放射線治療
• 右開胸開腹食道亜全摘
+ 3領域(頚+胸+腹部)リンパ節郭清
 RTOG 8501
食道癌診断・治療ガイドライン2007 より
 手術範囲が広く、縫合不全や肺炎など術後合併症が多い
→ 実際には3領域郭清は1/3程度で,2領域郭清を行う事も多い
Comprehensive Registry of Esophageal cancer in Japan 3rdより
手術死亡率: 2-3%(日本),10%(欧米)
・ T1-3 N0, 1 M0(UICC-TNM) 85% SqCC
・ 放射線単独治療(64Gy)と化学放射線治療(50Gy+CDDP+5FU)
→ 5年生存率 放射線単独 0%,化学放射線治療 27%
→ 全身状態が良好であれば,化学放射線治療が標準
 RTOG 9405
・ T1-4 N0, 1 M0(UICC-TNM) 84% SqCC
・ 化学放射線治療(CDDP+5FU)64.8Gy と 50.4Gy
→ 生存期間中央値,局所制御率,2年生存率 いずれも有意差なし
 再建経路: 胸骨前,胸骨後,後縦隔
 再建臓器: 胃,小腸,大腸
→ 米国では50Gyが標準.しかし,日本では 60Gyが
標準の施設が多い
食道癌の治療(放射線治療)
食道癌の治療(放射線治療)
• 腫瘍部位別の照射野例シェーマ
 B-Dのように予防的リンパ節領域
を含めて照射する事が多い
A: T1aN0M0の粘膜癌
又は高齢者,全身状態
不良例
B: Ce,Ut
C: Lt,Ae,一部のMt
D: Ut,Mt,Lt,一部のAe
• 標的臓器と危険臓器
L字照射
T字照射
標的臓器:GTV<CTV<ITV<PTV
危険臓器:肺,脊髄,心臓,etc.
CTでは原発巣を十分評価できない
GFで上下にクリップを入れている
原発巣
照射野
4
食道癌の治療(放射線治療)
• GTV(肉眼的腫瘍体積): 原発巣+転移リンパ節
• CTV(臨床標的体積): GTVに対して顕微的浸潤を見込む領域
・ CTV1:GTV+頭尾2-4cm,所属リンパ節領域
・ CTV2:GTV+頭尾2-4cm,転移リンパ節
食道癌の治療(放射線治療)
• 危険臓器
・ 耐容線量を超えないように照射野を作成
・ 肺では放射線肺炎の危険を予測する指標として
V20Gy(20Gy以上照射される体積)も用いられる
 外科的手術標本の病理学的検討 (Pathological analysis of clinical target volume margin for
radiotherapy in patients with esophageal and gastroesophageal junction carcinoma, IJROBP 67,2007)
→ 肉眼的原発巣から94%の症例で顕微的浸潤は3.0cm以内であっ
た.
CTV1
40Gy/20fr
 所属リンパ節領域の設定に一定のコンセンサスは無い
• ITV: CTVに対して,照射中の呼吸など臓器移動を見込む領域
• PTV(計画標的体積): ITVに対してset-up errorを見込む領域
CTV2
20Gy/10fr
放射線治療計画ガイドライン2008より抜粋
食道癌の治療(放射線治療)
• 腔内照射
B 照射野って広いんです まとめ
• 化学療法併用放射線治療が推奨される
・ 外部照射全終了後に原発巣の局所制御向上目的に施行
・ 国内の報告では,外部照射単独に比較し局所制御率が向上
するという報告と,差が無いという報告があり,エビデンスは
低い
• 外部照射は頚部-腹部のリンパ節領域を含めて
広範囲に照射を行う
• 原発巣に対しても上下に広いマージンが必要
• 腔内照射は局所制御向上の可能性があるが,エビデ
ンスは低い
食道粘膜下5mm,
12Gy/4frを施行
食道癌の治療成績
• 食道癌の治療成績
基礎から学ぶ放射線治療
~食道癌のABC~
Stage(UICC)
化学放射線治療
手術
T1a
62%(5year)
64.5%(5year)
C どれくらい治るのでしょう
StageⅡ・Ⅲ
全生存率(概数)
T1b
食道癌のCure and Care -治療成績や有害事象
治療成績
StageⅣ
42%(5year)
※ 40-50%(3year)
20%(3year)
20-50%(5year)
5.5-13.7%(5year)
※ 切除可能食道癌の治療成績
化学放射線
治療前
化学放射線
治療後
放射線治療計画ガイドライン2008 および
Comprehensive Registry of Esophageal cancer in Japan 3rdより
5
食道癌の治療成績
• 新しい治療成績
基礎から学ぶ放射線治療
~食道癌のABC~
 JCOG9906
・ 術前化学療法と術後化学療法を比較する第III相試験
・ Stage II-III(non-T4)
→ 術前化学療法が有意に良好な結果
C どれくらい治るのでしょう
5年生存率 60.1%
食道癌のCure and Care -治療成績や有害事象
有害事象
ほぼ同時期に行われた化学放射線治療の成績は,
5年生存率37%で,この成績に及ばない・・・
食道癌放射線治療の有害事象
ケア
有害事象
治療開始 • 倦怠感
• 悪心,嘔吐
2-3週
急
性
期
有害事象
• 生活の指導
• 制吐剤
• 皮膚炎
• 食道粘膜炎
治療終了 • 放射線肺炎
• 食道潰瘍
• 対処不要な事が多い
• 粘膜保護剤,食事形態の
変更,鎮痛薬
• 感染予防,白血球減尐に
対する薬剤投与
• 骨髄抑制
治療終了 • 放射線肺炎
• 症状の観察,ステロイド
急性期障害は通常可逆性である
• 有害事象の観察方法
 CTCAE ver. 3.0 (Common Terminology Criteria for Adverse Events)
・ grade 1-5で評価
・ gradeに応じて,対症療法を行う
・ 一定の評価が可能
例 食道炎
G1
G2
G3
G4
症状があり, ≧24 時間の静脈 生命を脅かす
摂食/嚥下 内輸液/経管栄養
に影響
/TPN を要する
数ヶ月
晩
期
数年
ケア
• 治療後,数週で急性期
有害事象は軽快するため,
適宜対症療法内容を調整
• 放射線肺炎
• バルーン拡張
• 食道狭窄
• 手術
• 食道穿孔
• 肺線維症,心外膜炎
• 放射線脊髄炎
• 2次発癌
晩期障害は非可逆性=起こらないような治療が必要
食道癌放射線治療の有害事象
症状なし
GF所見
のみ
食道癌放射線治療の有害事象
G5
C どれくらい治るのでしょう まとめ
• 切除可能 II-III期の食道癌の生存率は約40%
• 時代は,術前化学療法の流れ・・・
• 時期によって起こりうる有害事象が異なる
• 急性期障害は可逆性,晩期障害は非可逆性
• 有害事象はGradeで評価する
死亡
CTCAE ver. 3.0を一部要約して記載
6
最後に
分からない事があったら,放射線腫瘍医に聞いて
みよう!コミュニケーションが大切♪
ご清聴ありがとうございました
資料を提供してくださったNExT食道Gの先生方,
この会の準備にあたり御協力頂いたJASTROの
先生方に厚く御礼申し上げます
7