320列ADCTによる ダイナミックボリュームCTの可能性 320列ADCT

TOSHIBA International Imaging Seminar in Chicago
320列ADCTによる
ダイナミックボリュームCTの可能性
University Clinic Charité, Humboldt University, Berlin, Germany
Patrik Rogalla
はじめに
ような形となる.このマスキング領
動を伴わない場合にもスライス数を
域を補正する方法についての研究・
2 倍に上げることができる.つまり,
1,2)
,理論
Aquilion ONEでは,架台を 1 回転さ
出器CT
(area-detector CT:ADCT)
が
上は補正が可能であろう.
せた場合に再構成されるスライス数
持つさまざまな可能性について,基
コーンビームCTの画質を低下させ
は640であり,ConeXact再構成法を
本的な特徴や撮影法,そして実際の
るアーチファクトは,正確なコーン
利用した三次元画像表示により末
臨床画像を織り交ぜながら解説す
ビーム再構成アルゴリズム
(ConeXact
梢まで画像を追うことが可能とな
今回は,Aquilion ONE 320列面検
開発は現在進められており
る.
320列ADCTの技術的背景
1.320列ADCTの基本的な特徴
320列ADCTは,0.5mm × 320列 の
再構成法)
を用いることにより,ほぼ
る.
完全に補正することができるように
2.ワイドボリュームスキャン
なった.多くの専門家がコーンビー
z軸方向に範囲の広い対象物を撮影
ムアーチファクト補正の実現に悲観
する際に,コーンビームを用いた多
的であったが,Aquilion ONEでは少
列ADCTとヘリカルCTでは,いくつ
検出器を搭載しており,z軸方向の撮
なくとも臨床診断に用いるうえで全
か特徴に違いがみられる.そのうち
影範囲は64列CTの 5 倍,160mmにも
く問題にならないレベルにまで消す
の 1 つが放射線被曝である.ヘリカ
及ぶ.テーブル移動なしでスキャン
ことができている.
ルCTではスキャンの開始部分と終了
した場合,スキャン範囲のジオメト
加えて,320列ADCTでは 180°
反対
部分に余剰被曝が生じてしまう.こ
リ形態はX線ビームの形状に依存す
側の投影像を画像の再構成時に使用
の過剰な被曝を減らすための 1 つの
るため,ボリュームデータの形態は
することによって,320列以上の互い
解決策は遮蔽である.もう 1 つは多
Fig. 1 に示された冠状断面上の長方
にオーバーラップしたスライスを再
列ADCTのstep & shoot技術を用いる
形から角の部分がマスキングされた
構成することができるため,架台移
ことであり,それぞれのボリューム
64-slice CT
Cone angle
3.05°
Fig. 1
320-slice CT
Cone angle
15.2°
64列CTと320列ADCTのコーン角の違いと再構成画像に与える影響
320列ADCTでは広いコーン角により,角がとれて台形の形をした画像ができあがる.
a:64列CTのコーン角
b:320列ADCTのコーン角
c:320列ADCTにおける再構成画像の説明図
2 ● VIEWS RADIOLOGY Supplement RSNA 2008 Vol.11, 2009
320-slice CT
Cone angle
15.2°
a b c
の重なり部分に多少の余剰被曝はあ
るものの,ヘリカルCTよりも少ない
被曝で頭の先から足のつま先まで撮
影することができる.
なおstep & shoot技術を用いて広範
囲を撮影するstitchingモードにも,い
くつか問題点がみられる.検査台が
移動している間の造影剤の分布の変
化や,腸管の蠕動などにより画像の
継ぎ目にズレが生じてしまうことが
ある点である
(Fig. 2)
.もちろんヘリ
カルCTでもこのようなズレは存在す
る.こ のように,ヘ リカルCTにも
stitchingモードにも一長一短があり,
それぞれの特長を考慮しつつ最適な
検査領域に適用する必要がある.
Aquilion ONEの分解能について
1.高コントラスト分解能
高コントラスト分解能とは,濃度
差の大きい部分での空間分解能を指
し,たとえば小さなステントの細か
い網目構造の描出能,新生児の血管
Fig. 2
や骨構造の描出能などが挙げられ
る.Aquilion ONEでは現在存在する
CTのなかではトップクラスの,十分
な高コントラスト分解能が達成され
320列ADCTによるstitchingモードの例
それぞれの画像の継ぎ目に若干のズレがみられるが,後処理によって目
立たなくなる.
a:stitchingモードの説明図
b:stitchingモードを用いて撮影された腹部領域の 3D冠状断画像
c:stitchingモードで撮影されたCTコロノグラフィ
(処理前)
d:stitchingモードで撮影されたCTコロノグラフィ
(処理後)
a b
c d
ている.z軸方向の撮影範囲は160mm
であるが,撮影の際には必ずしもz軸
方向の撮像視野
(field of view:FOV)
を160mm全部使用しなくてはならな
いわけではない.たとえば新生児の
側頭骨撮影などでは40mmまでFOV
を絞り,被曝線量を減らして撮影す
ることができる.
2.低コントラスト分解能
Aquilion ONEの低コントラスト分
解能はAquilion64と同等であるが,高
コントラスト分解能の場合と同じく
現存するCTの中ではトップクラスの
性能である.Aquilion ONEの秀でた
低コントラスト分解能を示す 1 例と
してFig. 3 が挙げられる.腸管の壁
の層構造が確認できるような,優れ
Fig. 3
320列ADCTにて撮影された腹部造影CTの冠状断画像と病理標本
拡張した腸管の層構造がCT画像でも確認でき,低コントラスト分解能の高さがう
かがえる.
た分解能が達成されている.
3.時間分解能
CTにおける時間分解能を考える際
まったような画像」
が撮影できるかど
Aquilion ONEでは時間分解能が上が
のポイントは 2 つある.1 つは動いて
うかである.超短時間撮影の恩恵を
り,スキャン時間が短くなることに
いる物体を短時間でスキャンし,
「止
最も受ける分野が心臓CTであるが,
よって心臓の
「止まったような」質の
3
700
700
600
600
500
500
400
400
300
300
200
200
100
100
0
0
0
20
40
60
Time
Fig. 4
b
Deconvolution technique
・Area under the curve ・Scanning > 60 second
・Physiologic assumptions ・Dose, motion
・Calculation of BV and MTT
HU
HU
a
Compartmental analysis
・Maximum slope technique ・Early phases are important
・Peak arterial enhancement ・Sensitive to sampling rate
and image noise
80
100
0
20
second
40
60
Time
CTパーフュージョン画像における 2 種類の解析モデル
a:コンパートメント解析
b:デコンボリューション技法
高い形態画像が 得られるのみなら
80
100
second
a
b
臨床アプリケーションのなかで最も
大傾斜法ではパーフュージョン量が
測 定 で き る の み で, 血 管 床 面 積
ず,被曝線量 2mSv以下で心臓全体
重要なものはパーフュージョンかも
を撮影することが可能となった.こ
しれ ない.たとえば 頭 部において (blood volume:BV)
や平均通過時間
れは過去の被曝線量を考えると驚く
は,全 脳の複 数 断 面におけるパー (mean transit time:MTT)
は得られな
べき進化である.
フュージョン解析結果をカラー表示
い.一方,デコンボリューション技
時間分解能を考える際のもう 1 つ
できる
(64列CTでは約32mmの範囲で
法にはX線照射時間が長いという特
のポイントは,
「動き」を捉えられる
の パ ーフ ュージ ョン が 可 能 で あ っ
徴がある
(Fig. 4)
.
かどうかである.たとえば時計の動
た)
.MRI等の他モダリティとの比較
2.体動補正
きを再現するためには,腕時計を超
におけるCTパーフュージョンの特長
吸気位と呼気位の間での体の位置
短時間でスキャンして秒針の
「止まっ
は,造影剤の臓器への集中とCT値と
や臓器 血流の違いは,腹部のパー
た画像」を得るだけでは十分ではな
の関係に線形性がみられることであ
フュージョン撮影においては重要な
い.それを連続で撮影して秒針の 1
り,これによって解析アルゴリズムを
問題となる.呼吸に関してわれわれ
秒ごとの位置を再現して初めて,時
よりシンプルにできることである.
は 2 通りの方法,息止め下での撮影3)
計の針の
「動き」を 捉 えたことにな
1.パーフュージョン量解析法
と自然呼吸下での撮影を検討中であ
る.1 枚 1 枚の画像を高い空間分解
パ ーフ ュージ ョン 画 像 に お け る
る.しかし息止め下での撮影では 2
能で撮影し,それを高い時間分解能
パーフュージョン量の解析法のおも
分以上息止めを続けられる人はおら
を維 持して連 続 撮 影することによ
なものとして 2 種類ある.コンパート
ず,断続的に呼吸と息止めを繰り返
り,CTでリアルな画像を捉えること
メント解析とデコンボリューション技
すため,いずれにしても腹部のパー
ができるようになる.これがまさにわ
法である.前者のコンパートメント
フュージョン画像では動きの補正が
れわれの追求する時間分解能なので
解析は最大傾斜法をとっており,造
必要となってくる.
ある.
「動き」を捉えることは実際の
影ピークを利用するのであるが,画
動き補正の方法のおもなものとし
臨床の場面でも有用である.たとえ
像のノイズに弱いという弱点があ
て 2 種類あり,ターゲットの部位に
ば関節の動きをCTで可視化すること
る.また造影剤の初期通過をきちん
着目して,その位置が一定に保たれ
によって単純X線写真では不可能な
と捉えるのもやや難しい.後者のデ
るように補正する方法と,全体を弾
情報が得られ,手術適応や術式の決
コンボリューション技法はノイズには
性位置合せによって補正する方法が
定におおいに役立つことがある.
それほど敏感ではなく,時間濃度曲
ある.後者に関してはまだ開発中で
パーフュージョン
320列ADCTで可能となった新しい
線の曲線下面積
(area under the
あるが,近い将来はこの方法でコン
curve:AUC)
を解析してパーフュー
ピュータが自動的に動きを補正する
ジョン量を測定する方法である.最
ようになるであろう.
4 ● VIEWS RADIOLOGY Supplement RSNA 2008 Vol.11, 2009
0
10
20
30
Time
Fig. 5
Temporal uniformity– more accurate perfusion
Position
Position
Temporal non-uniformity– bad for perfusion
cm
16
8
0
40
50
cm
16
8
0
0
10
20
second
30
40
Time
パーフュージョン撮影におけるヘリカルスキャンとボリュームスキャンの違い
上段は腎の造影CT冠状断画像.下段のグラフは横軸が時間,縦軸がz軸方向の位置であり,線はCTでスキャンされ
る時間と位置を表している.上段の点線の色と下段の線上にある同じ色の点が対応している.ヘリカルスキャンでは
「時間的不均一性」
がみられるが,ボリュームスキャンでは時相のズレは生じない.
a:ヘリカルスキャンの例
b:ボリュームスキャンの例
50
second
a
b
3.高範囲のパーフュージョン撮影と
であった症例もあり,また通常のダ
5.今後のパーフュージョン・スタ
時間的均一性
(temporal uniformity)
イナミックCTでは同定が難しかっ
ディ
1 臓 器 をカバ ーする広 範 囲 パ ー
た膵癌がパーフュージョン画像にて
脳,前述の腹部領域のほかにも,
フュージョン撮影はヘリカルCTを用
明瞭に検出できた症例もあった
(膵
ADCTによるパーフュージョン解析が
いて行うことができる.しかしヘリカ
癌では正常膵実質よりもパーフュー
期待される臓器,疾患は多く存在す
ルCTでパーフュージョン撮影を行う
ジョン量が少ない場合が多い)
.ま
る.たとえば,心筋パーフュージョ
と,撮影するボリュームごとに時間
た,造影CTにてやや不均一な濃度
ンである.また,他の臓器よりも血
のズレが生じてしまい,時相の違う
を呈する腎の嚢胞性病変におい
液流入経路が複雑であるため難しく
画像を合わせて再構成することにな
て,パーフュージョン解析で悪性病
はなるが,肝臓パーフュージョンも
る
(Fig. 5a)
.これはいわゆる
「時間的
変が除外できた症例もあり,逆に充
その 1 つである6).呼吸とパーフュー
不均一」
とよばれる状態であり,パー
実部分が明らかとなった症例もあ
ジョン解析を組み合わせた肺のダイ
フュージョンの解析結果が不正確に
る.腎血管筋脂肪腫と腎細胞癌は
ナミックスタディについては,造影
なる.しかし,Aquilion ONEを用い
通常の画像では鑑別が困難な例も
剤の制御の点で大きな検討が必要だ
た場合,z軸方向に160mmにわたって
多く,手術摘出標本の約10%が腎
が,技術的には可能である.このよ
同時撮影が可能となるため,1 臓器
血管筋脂肪腫であるともいわれてい
うに,ADCTを利用したパーフュー
にわたって時間的な均一性を得るこ
る.しかし腎血管筋脂肪腫と腎細
ジョン・スタディは将来に向けて大
とができ
(Fig. 5b)
,より正確なパー
胞癌ではパーフュージョン解析での
きく期待できるものであることが分
フュージョン解析を行うことが可能
パーフュージョン量に有意な違いが
かる.
となる.
みられることが分かってきており,
6.技術的なチャレンジ
4.腹部パーフュージョン撮影の臨床例
将来的にはパーフュージョン解析が
ADCTにおける技術的なチャレン
腫瘍の治療効果判定や予後予測
両者の鑑別の一助となるであろう.
ジの 1 つとして,画像枚数の多さ
など,躯幹部領域でパーフュージョ
さらに腎細胞癌に対してラジオ波焼
が挙げられる.1 患者を42秒間で撮
ン解析が有用であるとする報告はこ
灼術
(radiofrequency ablation:RFA)
影した場合,画像枚数が72,000枚に
れまでいくつか認められるが4,5),
後に,局所のパーフュージョンが消
も及ぶことがある(ただし,この画
われわれもパーフュージョン解析の
失しているかどうかをパーフュー
像枚数の多さは,放射線被曝線量
有用性を実感する症例を経験して
ジョン画像で確認することで治療
の多さを表しているわけではない
いる.膵炎における壊死範囲の同
効果判定に用いることができる
ことに注意を要する).このような
定 に パ ーフュージョン 解 析 が 有 用
(Fig. 6).
画像枚数の増加に対応し,データ
5
①
①
②
②
Fig. 6
CTガイド下でRFAを施行した腎細胞癌のCTパーフュージョン画像(①横断画像,②再構成された冠状断画像)
治療前の腎細胞癌はパーフュージョン画像で明瞭な血流を示しているが
(矢印)
,治療後には局所に明らかな血流は
なく,治療が完了したことが分かる.
a:治療前
b:治療 3 週後
保存容量を拡張する必要性や,大
容量のデータをワークステーショ
まとめ
a
b
から640スライスが生成されることも
付け加えておきたい.将来的には,
ンや病院ネットワークに効率的に
320列ADCTは64列CTで 達 成され
これらのすべての特長を組み合わせ
転送する仕組みも必要となるが,
たすべての技術を有している.今回
ることで,さまざまな臓器に対する
一方で,高速画像転送や効率的な
は,320列ADCT独自の超短時間撮影
形態診断と機能診断を包括したイ
画 像 保 存 を 目 指 し てEnhanced
や,血流,呼吸といった動きを捉え
メージングが可能となるであろう.
DICOM(digital imaging and commu-
るダイナミック・ボリューム撮影に
nications in medicine)のプロトコル
焦 点を当てたが,さらに 前 述した
がすでに開発されている.
ConeXact撮影法により,320列検出器
(TOSHIBA International Imaging Seminar in
Chicago:“Whole Body Dynamic Volume
CT”
より収載)
文 献
1)Leng S, Zhuang T, Nett BE, et al: Exact fan-beam image reconstruction algorithm for truncated projection data acquired from an asymmetric half-size detector. Phys Med Biol 50 (8): 1805–1820, 2005
2)Anoop KP, Rajgopal K: Estimation of missing data using windowed linear prediction in laterally truncated projections in cone-beam CT.
Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc 2007: 2903–2906, 2007
3)Meijerink MR, van Waesberghe JH, van der Weide L, et al: Total-liver-volume perfusion CT using 3-D image fusion to improve detection and characterization of liver metastases. Eur Radiol 18 (10): 2345–2354, 2008
4)Goh V, Halligan S, Wellsted DM, et al: Can perfusion CT assessment of primary colorectal adenocarcinoma blood flow at staging predict
for subsequent metastatic disease? A pilot study. Eur Radiol 19 (1): 79–89, 2009
5)Meijerink MR, van Cruijsen H, Hoekman K, et al: The use of perfusion CT for the evaluation of therapy combining AZD2171 with gefitinib in cancer patients. Eur Radiol 17 (7): 1700–1713, 2007
6)Miles KA: Functional computed tomography in oncology. Eur J Cancer 38 (16): 2079–2084, 2002
6 ● VIEWS RADIOLOGY Supplement RSNA 2008 Vol.11, 2009
TOSHIBA International Imaging Seminar in Chicago
新しい心臓CTの可能性
University of Toronto, Toronto, Canada
Narinder Paul
冠動脈疾患と心臓CTの役割
ジが残されているからである.おもに
灰化プラークを伴っている.しかし
低コントラスト分解能,空間分解能,
よく見ると内腔の大部分にソフトプ
心疾患は依然として多くの先進国
時間分解能,放射線被曝線量の 4 つ
ラークが存在するのが分かる.この
で死因の第 1 位を占める重篤な疾患
の領域に関することであり,これらに
ソフトプラークをきちんと検出し,か
である.心疾患を専門とするチーム
ついてこれから述べることとする.
つ性質を評価しなくてはならない.
の高度な医療や血栓溶解療法の発
1.低コントラスト分解能
ここで,ソフトプラーク評価の重要
達,搬送システムの整備などといっ
ここで議論されるべき低コントラス
性を痛感した症例があるのでそれを
た近年の尽力にもかかわらず,米国
ト分解能とは,ソフトプラークと血管
紹介したい.異型胸痛が主訴の閉塞
疾病予防管理センター
(Centers for
壁を見分けるのみならず,質の違う 2
型肥大心筋症の60歳代男性である.
Disease Control and Prevention:CDC)
種類のソフトプラークを見分けるため
心臓CTにて冠動脈内腔はよく確認で
のデータによると,米国では2005年
に必要な分解能を指すものである.
き,50% 以 上 の 狭 窄 は 指 摘 できな
の死亡者数は65万人を超えており,
低コントラスト分解能を評価する手段
かった.しかし描出された血管内腔
男性の 3 分の 1 弱,女性の 3 分の 1
として医療機器技術者が用いている
の辺縁にはソフトプラークによると思
以上が心疾患によって命を落としてい
方法の 1 つに,CT評価用ファントムで
われる不整がみられ,それは左前下
る.心疾患の診断手段には12誘導心
あるCatphan
(The Phantom Laboratory
行枝近位部を含む広範囲にわたって
電図,心エコー,負荷心エコー,心
社)
を用いた評価方法がある.4 つに
いた.カテーテル血管造影を施行し
筋シンチグラム,カテーテル血管造
グループ分けされたビーズが埋め込
たが,やはり25%以下の狭窄しか認
影などさまざまなものがあり,早期
まれた,水等価のCatphanを使用する
められなかった.しかしこの患者は 1
に適切な診断を下せるかどうかに予 (Fig. 1a)
.ビーズの直径は 2mmから
カ月後,心電図でST上昇を伴う左前
後が大きく左右される.診断手段の
15mmまであり,ビーズの濃度は背景
下行枝領域の心筋梗塞を起こしたの
改良もあって最近50年では心疾患に
よりわずかに高い.Aquilion ONEで
である.おそらくソフトプラークのな
よる総死亡率はやや減少をみている
は,背景とのコントラスト差が0.3%で
かで潰瘍化した部分が剥がれ,血管
が,15∼44歳の若年層の死亡率に着
ある 2mm大のビーズが22.3mGyの線
の閉塞を来したのだと思われる.幸
目してみると実はほとんど変化してお
量で識別可能であった.つまり背景と
いこの患者は適切な初期治療を受け
らず,これは危惧すべき問題であろ
わずか 3HUしか濃度が異ならない直
一命を取り留めたが,CTでは冠動脈
う.若年層の死亡率に改善がみられ
径 2mm大の同心円を22.3mGyの線量
の
「内腔」
を観察するだけでは十分で
ない原因の 1 つに,何の前触れもな
で検出できるということである.
なく,壁の性状とソフトプラークの有
く冠動脈が閉塞してしまい突然死を
低コントラスト分解能が心臓CTに
無を観察することが非常に重要であ
来す例が 多いという点が 挙げられ
おいて重要な理由は,血管内のソフ
るということを痛感した症例である.
る.若年層の心 疾 患 死亡原因の約
トプラークが,おもに脂肪濃度から
2.空間分解能
70%を冠動脈疾患が占めていること
線維濃度までの範囲の濃度を呈する
空間分解能とは 2 点間識別能力を
を考えると,私は心臓CTが非常に重
からである.これはCT値にすると約
−100∼ +100HUの 範 囲 で あ り
(Fig.
指していると言い換えられる.空間
要な鍵を握っている
「可能性」がある
のではないか,と考えるのである.
1b)
,十分な低コントラスト分解能が
が,ここでは櫛型ファントムを用い
なければ検出し評価することができ
た方法を紹介する.Fig. 3 は64列の
ない.Fig. 2 は血管のリモデリングを
ヘリカルCTを用いて撮影したファン
心臓CTの特徴とチャレンジ
分 解能の測定方法はいくつかある
前項で
「可能性」
という言葉を用い
伴う脂肪と線維組織の混合プラーク
トム画像であるが,350애mの空間分
たのは,CTにおける一般的なチャレ
の症例である.左前下行枝内腔には
解能が示されている.Aquilion ONE
ンジ,そして心臓CT特有のチャレン
造影剤が認められ,壁には著明な石
も少なくともこれと同程度の空間分
7
0.1%:
1 HU
Aquilion ONE:
2 mm at 0.3% with 22.3 mGy
15 mm
0.3%:
3 HU
9 mm
5 mm
3 mm
1.0%:
10 HU
12 mm
7 mm 4 mm
2 mm
0.5%:
5 HU
a
CT number table
+1,000
+900
+800
+700
+600
+500
+400
+300
+200
+100
0
–100
–200
–300
–400
–500
–600
–700
–800
–900
–1,000
b
Bone
Soft plaque has CT
numbers in this area
Soft
tissue
Low-contrast
resolution—very
important for soft
plaque imaging
Lung
tissue
Fig. 1
Catphanファントムを用いた低
コントラスト分解能評価
Aquilion ONEは背景よりもわず
か 3HUだけ高濃度の 2mm大の
ビーズを,22.3mGyの線量で見
分けることができる.ソフトプ
ラークのCT値は–100∼+100HU
の範囲を呈するため,低コント
ラスト分解能が良好であると 2
種類のソフトプラークを見分け
ることができる
(黄矢印)
.
a:Catphanファントムと埋め込
まれたビーズ
b:冠動脈造影CT画像とさまざま
な組織のCT値
解能を保持している.コントラスト
ながらわれわれは意識的に心臓の拍
好な再 構成画像を得るための撮 影
分解能と空間分解能の向上により冠
動を止めることができない.また腸管
ウィンドウ
(R-R間隔内でのスキャンの
動脈ステントの描出も以前より改善
などと違 って,検 査 の た めに 薬を
タイミングと時間幅)
は心拍数によって
されてきた.カナダ人のような大柄
使って心臓を麻痺させることも困難
異なっており,最適なスキャンタイミ
な患者の場合には,末梢血管ステン
である.したがって個々の冠動脈,
ングに関する研究も進めている.心拍
トの描出が困難になる場合があり,
冠動脈の個々のセグメントがいずれ
数によって最適なスキャンタイミング
また粗大な石灰化プラークがある場
も異なる速度で動いている状態で,
を選ぶことができれば,画質を保った
合,特に全周性に石灰化プラークが
CT撮 影を行わなければならない.
まま被曝線量を抑えることができる.
ある場合には冠動脈内腔の描出が難
よって鮮明な画像を得るためには,
64列ヘリカルCTで 1 つの心臓全体
しくなることはあるが,たしかに,
少なくとも心拍をきちんとコントロー
をカバーするためには複数心拍から得
Aquilion ONEでは64列CTからの改善
ルすることが必要である.私自身は,
られた多スライス画像を再構成するこ
がみられる.
どのようなCT装置を用いる場合でも
ととなり,心臓の大きさによって異な
3.時間分解能
必要であれはメトプロロールを積極
るが 6∼9 秒程度のスキャンを要す
CTにおける時間分解能とは,動い
的に投与して心拍をコントロールして
る.ところがAquilion ONEはz軸方向
ている物体の動きが止まったかのよう
おり,このことが高質な冠動脈画像を
の撮影範囲が160mmであるため,1
な画像を提供するために必要な速さ
得るための鍵だと考えている.ちなみ
心拍,ガントリ 1 回転のスキャンで
の要素,と考えることができる.残念
に被曝線量を最小限に抑え,かつ良
心臓全体を撮影することができる.
8 ● VIEWS RADIOLOGY Supplement RSNA 2008 Vol.11, 2009
さらにわずか0.35秒で心臓全体のス
Fig. 5 はその 1 例であるが,最初の心
4.放射線被曝線量
キャンが終わる驚異的な速さである
拍で時間分解能0.175秒のハーフ再構
64列CTで心臓撮影する場合にはさ
(Fig. 4)
.大部分の患者は64列ヘリカ
成を行い,2 回目の撮影では心拍の
まざまな方法があり,一定のX線照
ルCTでもよい画像が得られるが,6∼
周期とガントリ回転の周期を 1 回目と
射 量を保ったままで 1 心 拍フルス
9 秒の息止め間に呼吸をしてしまうと
は少しずらした状態で,時間分解能
キャンすることも可能である.ただ
心拍の呼吸変動により画像の再構成
0.175秒のハーフ再構成を行う.両者
し,この場合には被曝線量が多くな
に問題が出ることがある.このような
とも質の高い画像が得られるが,こ
るので,心機能解析を行う場合には
問題はAquilion ONEでは生じない.
の 2 つのデータを統合し再構成する
通常 1 心拍の間に管電流のモジュ
心拍のコントロールが思うように
ことにより実効的時間分解能は88ミ
レーションを行う方法をとっている.
できなかった場合には,画質を上げ
リ秒となり,後下行枝や後側壁枝な
Aquilion ONEの場合には,大多数の
るためにAquilion ONEでも 2 心拍以
どの末梢の冠動脈でも良好な画像が
場合に 1 心拍のなかで短時間に限定
上の画像を再構成するが,その場合
得られる.被曝線量が増加するため
してX線照射を行う方法をとってい
は最適心位相の自動選択を用いた適
本来は 2 心拍以上スキャンすること
る.この方法と64列CTでのヘリカル
応マルチセグメント再構成
(adaptive
は避けたいが,その代わり質の高い
スキャンについて被曝線量を比較し
multisegment reconstruction)
を行う.
画像が得られるという利点がある.
たところ,Aquilion ONEの方が60%
以上の被曝線量低減になっているこ
とが分かった.
心臓CTの今後
これまで述べたように,心臓CTに
は低コントラスト分解能,空間分解
能,時間分解能,放射線被曝線量の
4 つの点で解決すべき事項がいくつ
か存在したが,Aquilion ONEの導入
によってこれらの問題点はある程度
解決されてきている.
先に述べた石灰化プラークがある
冠動脈内腔の描出,そして大柄な患
者における末梢血管ステントの描出
に関しては開発が進みつつあるデュ
アルエネルギーCT
(dual energy CT)
に
期待している.また技術的には難し
い部分も多いが,CTによる心筋パー
フュージョン解析も今後は重要な検
査となることが 予 想される.多施
冠動脈左前下行枝の3D CT画像とセグメント画像
造影剤が満たされた内腔,石灰化プラーク,そしてソフトプラークが同定できる.
設共同試験CORE 64(The Coronary
a
z-axis
Fig. 3
350 애m
Fig. 2
b
c
櫛型ファントムを用いた空
間分解能の評価
64列のヘリカルCTはz軸方
向に350애mの分解能を有す
る.
a:CTの空間分解能評価用の
櫛型ファントム
b:櫛型ファントムの拡大写
真
c:64列ヘリカルCTで撮影
された櫛型ファントムの
MPR
(multiplanar reconstruction)
画像
9
a
b
Contrast
injection
SURE
Start
6 – 9 second acquisition
Breathe in
Fig. 4
Aquilion ONEと64列ヘリカ
ルCTの撮影方法の比較
Aquilion ONEは 1 心拍,ガ
ントリ 1 回転
(1 スライス)
で心臓全体を撮影できるの
に対し,64列ヘリカルCTで
は複数枚のスライスを要す
る.また64列ヘリカルCTで
は心臓全体を撮影するのに
6∼9 秒程度必要であるが,
Aquilion ONEでは0.35秒で
撮影が終了する.
a:Aquilion ONEによる心臓
撮影の説明図
b:64列ヘリカルCT
(左)と
Aquilion ONE
(右)
の撮影
方法の違い
Fig. 5
Aquilion ONEの最適心位相
の自動選択を用いた適応マ
ルチセグメント再構成技術
0.175秒の時間分解能でガ
ントリを半回転させ 1 回目
の画像を撮影し
(黄色の領
域)
,続いて心拍周期とガ
ントリ回転の周期を少しず
らして 2 回目の画像を撮影
する
(ピンク色の領域)
.両
者のデータを合わせて 1 枚
の再構成画像を作成する.
0.35 second acquisition
PhaseXact
reconstruction
Artery Evaluation Using 64-Row
Multidetector Computed Tomography
おわりに
Angiography)
のデータ1)によると,冠
冠動脈の画像診断は,血管の内腔
さらなるチャレンジがあり,私の考
えでは心筋パーフュージョン解析も
その一助になると思われる.冠動脈
動脈CTを用いた石灰化スコアを利用
を描出するだけでは十分ではない.
疾患の画像解析においてわれわれが
すると,約75%の心筋梗塞患者にお
狭窄の有無を検出するだけではな
目指すべきゴールは,病変の検出と
いて,冠動脈の再開通の可否を予想
く,破綻すると重篤な虚血を生じう
評価を行うにあたって必要なすべて
することができるとされている.しか
るようなソフトプラークを検出するこ
のデータを,一度に不足なく提供で
し約25%の患者は追加評価が必要で
とが非常に重要なのである.Aquilion
きるような検査技術であろう.
あるということであり,この部分でCT
ONEの開発によりこれまでのCTの問
による心筋パーフュージョン解析が寄
題 点が 多く解 決されてきたが,プ
与するのではないかと考えている.
ラークやステントの描出に関しては
(TOSHIBA International Imaging Seminar in
Chicago:“Volumetric Cardiac CT: New Frontiers”より収載)
文 献
1)Miller JM, Rochitte CE, Dewey M, et al: Diagnostic performance of coronary angiography by 64-row CT. N Engl J Med 359 (22): 2324–2336, 2008
10 ● VIEWS RADIOLOGY Supplement RSNA 2008 Vol.11, 2009