土壌汚染と不動産評価

Ⅰ.不動産評価の考え方
1.不動産鑑定士の仕事
不動産鑑定士 全国で約 5 千人、大阪 470 人
公的評価
地価公示
一般の土地取引価格に対する指標の提供
地価公示法、
鑑定評価の規準
全国約 2 万 5 千地点、毎年 7 月 1 日時点
地価調査
一般評価
全国約 3 万 1 千地点、毎年 1 月 1 日時点
国土利用計画法施行令第9条、
相続税路線価の標準宅地
全国約 41 万地点、公示価格の 8 割を目途
固定資産評価(土地)評価
全国約 40 万地点、公示価格の 7 割を目途
種別
報酬額(百万円)
(H17 実績)
価格評価
73,391
目的
17,125
担保
6,285
補償
課税
賃料評価
不動産取得税、登録免許税等の算定基準
依頼先別報酬額(百万円)
個人
3%
国
8%
3,913
28,766
4,649
賃貸借
1,056
その他
固定資産評価
12,653
その他
1,586 争訟
相続財産評価
報酬額(百万円)
売買
資産評価
土地取引規制における価格審査の基準等
341
民間法人
40%
地方公共団体
46%
公団・公社
3%
189
その他
競売不動産の評価、路線価敷設、土地有効利用等のコンサルタント、不動産調査、企業評価
1
国
地方公共団体
公団・公社
民間法人
個人
2.最近の地価動向
商業地の地価は
昭和 55 年(1980)の 8 割
ピーク時(H3)と比べると
3 大都市圏では 2 割
全国平均では 3 割
公示価格が上昇に転じた公示年
東京・住宅(港区)
H13
東京・商業(銀座)
H12
名古屋・商業(駅前)
H16
大阪・住宅(天王寺)
H17
大阪・商業(心斎橋)
H17
H18 年土地白書より
最近の地価調査では…(H18 年地価調査より)
記号
市
1 港5-14
2 中央5-13
3 足立5-17
東京都
4 渋谷5-16
5 北5-1
6 中京5-5
7 下京5-5
大阪市
京都市
所在
上昇率
記号
港区南青山五丁目
31.3
8
中村5-1
中央区銀座二丁目
26.7
9
中5-10
足立区千住仲町
24.7 10 中5-6
渋谷区神宮前一丁目
24.1 11 福岡中央5-3
大阪府大阪市北区角田町
33.0 12 福岡中央5-13
中京区河原町通三条下る
32.1 13 札幌中央5-2
下京区四条通柳馬場西入
29.9 14 札幌中央5-9
2
市
名古屋
市
福岡市
札幌市
所在
上昇率
中村区名駅3丁目
35.2
中区錦3丁目
32.5
中区栄5丁目
26.9
中央区天神2丁目
30.4
中央区大名2丁目
26.8
中央区大通西6丁目
26.4
中央区南2条西5丁目
24.0
3.J-REIT とファンドの動き
J-REIT のスタート:平成 13 年(2001)
現在 42 銘柄(2007.2.14)、資産規模約 5.4 兆円
日本ビルファンド
価格
2002 年初:約 50 万円⇒2007 年 2 月:195 万
利回り 5%⇒2%
私募ファンド:資産規模約 6.1 兆円
上場ファンド(日経 2006.6.20)
ファンド運営会社
2005 年度末
2006 年度末
実績(億円)
見通し(億円)
ダヴィンチ・アドバイザーズ
4,960
9,614
パシフィック・マネジメント
5,226
8,833
4,549
6,100
クリード
3,000
5,500
ケネディクス
3,857
5,200
アセット・マネジャーズ
3,338
5,178
セキュアード・キャピタル・ジャパン
2,137
3,000
レイコフ
780
1,300
日本レップ
210
700
28,057
45,425
シンプレクス・インベストメント
・アドバイザーズ
合計
3
4.価格評価の手法
原価法
取引事例比較法
「再調達原価」に「減価修正」を行って求める
費用からのアプローチ
再調達原価:(土地代+)建設費+設計管理費等
(積算価格)
「比較可能な取引事例と比較」して求める
市 場性 からの アプ ローチ
時点修正、事情補正、価格形成要因の分析等により極力分析的に
(比準価格)
比較は「格差率」で表示(経験値、統計分析、順序付けが最後の拠り所)
通常、地域要因と個別的要因の 2 段階比較順序付けが最後の拠り所
収益還元法
不動産が将来生み出すであろうと期待される「純収益」の現在価値の総和
収益性からのアプローチ
純収益÷利回り
(収益価格)
単年度還元と多年度還元(DCF)がある
種々の資産と評価手法
資
産
原価法
取引事例比較法
収益還元法
土
地
×
○
○(残余法)
○
×
○
(市街地)
賃貸マンション
(土地と建物一棟)
骨
董
×
○
×
企
業
○
○
○
4
5.価格評価の手法-例(1)
原価法
賃貸マンション(複合不動産)
建物
再調達原価
土地面積(㎡)
更地としての単価(円/㎡)
更地価格(円)
建物延べ面積(㎡)
建築費単価(円/㎡)
建築費(円)
設計管理費(円)
築後 10 年
1,000
200,000
2000 ㎡
取引事例比較法で求める
200,000,000 ①
2,000
150,000
300,000,000 ②
9,000,000 ③ 建築費の3%
再調達原価(建物)
309,000,000 ④ ①+②
再調達原価(土地・建物)
509,000,000 ⑤ ③+④
減価修正
経過年数
10
残存耐用年数
30
経年減価率
0.25
経年減価額(円)
77,250,000 ⑥
観察減価
23,175,000 ⑦
積算価格
408,575,000
維持管理の状態が不良
(④-⑤)×10%
⑤-⑥-⑦
土地
1000 ㎡
5
6.価格評価の手法-例(2)
簡単には
収益価格=収入計÷利回り
=33,576,000 円÷8.13%
原価法
賃貸マンション(複合不動産)
収入(年額)
家賃
31,200,000
6.5 万円×40 戸×12 ヶ月
貸室 40 戸
共益費
2,880,000
6 千円×40 戸×12 ヶ月
家賃 6.5 万円
駐車場
1,200,000
1 万円×10 台×12 ヶ月
共益費 6 千円
空室損
-1,704,000
収入計
33,576,000 ①
(①+②)の 5%
支出(年額)
管理費(管理委託)
671,520
水道光熱費
1,200,000
清掃費
1,200,000
設備点検
公租公課(固定資産税)
損害保険料
支出計
収入の 2%
600,000
3,016,600
300000
土地+建物
火災保険
6,988,120 ②
純収益(年額)
純収益(現金ベース)
長期修繕計画積立金
26,587,880 ③ ①-②
1,800,000 ④
純収益
24,787,880
経費率
0.262
還元利回り
6.0%
収益価格
413,000,000
③-④
=(②+④)÷①
駐車場
⑤-⑥-⑦
1 万円/台・月
6
Ⅱ.土壌汚染と不動産取引
1.良く知られた土壌汚染事例
1
豊中市上新田
野村不動産が計画したマンション計画用地で 1998 年(H10)、杭打ち工事中に地価から有害物質検出。
その後の調査で地下水からも汚染物質検出。
近隣住民のマンション建設反対運動。
2000 年(H12)8 階まで出来ていた建物を解体。
2
大阪市北区
三菱マテリアル工場跡地。事業主:三菱地所。オフィス、ホテル、マンションの複合施設。住戸数 518 戸
天満橋 1 丁目
セレン、砒素、鉛による汚染。
OAP
1989 年計画立案。1998 年販売開始。2001 年(H13)完成。
2002 年 9 月頃から疑惑提起。住民説明会等開催、撤去済み等と説明。2003 年 10 月実態開示。
対策工事実施。
補償の概要
引き続き居住を希望する住民には購入額の 25%を支払う
売却希望者には不動産鑑定業者の提示した金額で買い取り、さらに別途、鑑定価格の 10%を補償する
3
大阪市此花区
市営住宅 911 戸、公団 2,014 戸、供給公社 1,101 戸、合計 4,026 戸。開発区域 51.95ha。
高見 1 丁目
主として化学工場跡地。ラサ工業。ラサスケートリンク。
2000 年 5 月、8 番街(ゴルフ場跡地)工事中に有害物質検出。2000 年 12 月発表。鉛、砒素、セレン、総水銀、カドミウム。
高見フローラル
工事現場に付いては表層汚染度の搬出と遮水工・現位置封じ込め。
タウン
対策工事平成 13 年 7 月~平成 15 年 1 月。
既に入居済みの部分に付いてはほぼ放置?
4
此花区桜島 2 丁目
住友金属工業製鋼所ない産業廃棄物処分場。1965 年から 1988 年まで、面積 7.2ha、埋立量 68 万トン。
USJ
1997 年(H9)下請け業者の元従業員から大阪市に対し告発。
産業廃棄物処理法施行(1971)以前からの処分場でずさんな管理。
PCB の投棄、鉛を含んだ廃塗料の投棄等が確認されたほか、6 価クロム、鉛、砒素、セレン、水銀などを検出。
1999 年 9 月住民より汚染土壌の処分を求める提訴。2000 年 11 月原告の請求棄却の判決。2001 年 3 月 USJ 開業。
7
2.不良債権処理とデューデリジェンス
1994(H6)年 5 月:第 17 回汎太平洋不動産鑑定士・カウンセラー会議
分科会テーマ「環境と不動産価値」:おそらく初めて日本の鑑定士に土壌汚染問題が知らされた
米国鑑定士が 1980 年のスーパーファンド法やアスベスト、農地の農薬汚染、土壌汚染、地下水汚染の不動産価格への影響を紹介
デューデリジェンス
1998 年(H10)不良債権処理の本格化
総合経済対策(4 月)共同債権買取機構の機能強化、土地有効利用事業、競売手続きの迅速化、「適正評価手続きの確立」
ハゲタカファンドの活躍
米国流の不動産調査手法の普及 (瑕疵担保責任の追及に過度に依存しない取引スタイル)
売買の基本合意
エスクロー開設
デューデリジェンス
条件再交渉
クロージング
売買契約
権利関係
※エスクロー
第三者寄託
弁護士等に手付金を寄
託して手続きを委ねる
テナント入居状況
建物調査・耐震性
土壌汚染
キャッシュフローの把握
再開発案件の増加や市
民の健康被害への関心
の高まりと相まって、不
動産調査の必須項目と
なっていった。
宅地建物取引業への影響
〔重要事項説明〕
指定区域内における土地の形質の変更を行う場合の都道府県知事に対する届出(土壌汚染対策法 9 条 1 項~3 項)が、宅建業法第 35 条第 1 項
2 号に基づく法令上の制限として、重要事項に追加されました(平成 15 年 2 月 15 日施行)。
〔告知義務〕
指定区域外の土地の土壌汚染については宅建業法第 35 条第 1 項 2 号に基づく重要事項説明の対象とはなりませんが、同条の「重要事項」に該
当する場合がありうるとともに、宅建業法第 47 条 1 号に基づく告知義務の対象となる場合があります。
8
3.法規制の概要
(1)土壌汚染の状況の調査
次の土地の所有者等は、当該土地の土壌汚染の状況について、「指定調査機関」(環境大臣の指定を受けた機関)に調査させて、その結果 を都
道府県知事(※指定市等の長)に報告しなければなりません。
[1] 使用が廃止された「有害物質使用特定施設」に係る工場・事業場の敷地であった土地(第 3 条)
※有害物質使用特定施設:特定有害物質の製造、使用又は処理をする水質汚濁防止法の特定施設
[2]都道府県知事が土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれがあると認める土地 (第 4 条)
(2)指定区域の指定等
都道府県知事は、土壌汚染状況調査の結果、当該土地の特定有害物資による土壌汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないと認める場
合には、当該土地の区域を指定区域として指定し、これを公示します(第 5 条)。また、都道府県知事は、指定区域の台帳を調製し、閲覧に供する
こととしています(第 6 条)。
(3)汚染の除去等の措置命令
都道府県知事は、土地所有者(汚染原因者が明らかであって、汚染除去措置につき土地所有者に異議がないときは汚染原因者)に対し、汚染の
除去等の措置を命ずることができます(第 7 条)。
(5)土地の形質の変更の制限
指定区域において、土壌の採取その他土地の形質の変更をしようとする者は、着手の日の 14 日前までに都道府県知事に届け出なければならな
い(第 9 条 1 項)。
条例による追加規制の例(大阪府:「大阪府生活環境の保全等に関する条例」H16.1.1 施行)
土地の形質変更に際しての調査
調査機会の追加
調査対象物質
3,000 ㎡以上の土地
有害物質使用特定施設等を設置する事業所内で土地の形質変更をするとき
ダイオキシン類
(工場として継続利用の場合は除く)
ダイオキシン類特定施設を設置する事業所内で土地の形質変更をするとき
履歴等調査を行って報告 ⇒ 詳細調査
有害物質使用届け施設の廃止、ダイオキシン類特定施設の廃止
9
4.外国との比較
各国の土壌汚染に対する法規制
アメリカ
1980 年
スーパーファンド法
オランダ
1986 年
土壌保全法
イギリス
1995 年
土壌汚染地法
ドイツ
1999 年
連邦土壌保全法
日本
2003 年
土壌汚染対策法
※ラブキャナル事件
ニューヨーク州バファロー近郊(ナイヤガラ滝の近く)
特定有害物質
揮
発
性
有
第 機
一 化
種 合
物
V
O
C
産廃(21,000 トン)埋立地跡の住宅地
物質名
1 四塩化炭素
2 1,2-ジクロロエタン
1,1ジクロロエチレン
3
(塩化ビニリデン)
4 シス-1,2-ジクロロエチレン
5 1,3-ジクロロプロペン
ジクロロメタン
6
(塩化メチレン)
7 テトラクロロエチレン
8 1,1,1-トリクロロエタン
9 1,1,2-トリクロロエタン
10 トリクロロエチレン
11 ベンゼン
フッカー電気化学社 1 ドルで売却
12 カドミウム及びその化合物
将来一切の責任を負わない契約…
13 六価クロム化合物
14 シアン化合物
奇形、脳障害、染色体異常等の多発
1978 年 国家非常事態宣言(カーター大統領)
強制疎開 240 戸(最終的に 700 戸)
1,000 件の訴訟と 300 億円の汚染対策費
15 水銀及びその化合物
重
第
金 16 セレン及びその化合物
二
属
種
等
17 鉛及びその化合物
18 砒素及びその化合物
19 フッ素及びその化合物
◎日本の「土壌汚染対策法」の問題点
20 ほう素及びその化合物
1.汚染の実態(全体像)を明確にしようとしないこと
フェイズ 1 の調査なら公費で全国を調査できるはず
2.どの程度の時間と費用をかけてどの程度浄化するか 第 農
ビジョンがないこと
21 シマジン
22 チウラム
23 チオベンカルブ
主 な 用 途
フロンガス原料、消火剤、溶剤、脱脂洗浄剤、ドライクリーニング
塗料溶剤、洗浄、抽出、殺虫剤、塩化ビニル中間体
溶剤(油脂、樹脂、ゴム等)、医薬(麻酔)
溶剤(油脂、樹脂、ゴム等)、医薬(麻酔)
農薬(土壌くん蒸剤)
溶剤、冷媒、脱脂剤、抽出剤、消火剤、局所麻酔剤等
ドライクリーニング溶剤、原毛洗浄、石けん溶剤、その他溶剤
溶剤、金属の常温洗浄、塩化ビニリデン原料
溶剤、金属の常温洗浄、塩化ビニリデン原料
金属表面の脱脂洗浄、羊毛の脱脂洗浄、香料
各種有機合成原料、抽出、溶剤、燃料(混入)
合金、電子工業、電池、めっき
写真乳剤、塩化ビニル樹脂安定剤
酸化剤、めっき、触媒、写真、漁網染色、皮なめし、石版印刷
めっき、試薬、触媒、有機合成、蛍光染料、冶金、鉱業
金属焼入れ、写真薬、医薬
電解電極、金銀の抽出、水銀灯、計器、医薬、顔料
農薬、整流器、触媒、農薬、有機合成
半導体、光電池、鋼材の防食被覆、特殊ガラス、乾式複写機感光体
芳香族化合物の脱水素材、浮遊選鉱の気泡剤、頭髪化粧水
合金、はんだ、活字、水道管、鉛ガラス、ゴム加硫、電池
防錆ペイント、顔料、殺虫剤、染料、塩化ビニル樹脂安定剤
半導体製造、殺虫剤、農薬
防腐剤、メッキ、光学ガラス、歯科用セメント、半導体
ガラス原料、ほうろう、陶磁器のうわ薬、医薬品
めっき、防腐剤、殺虫剤
除草剤、
殺菌剤、医薬、加硫促進剤
除草剤
コンデンサーの絶縁油、熱媒体、塗料、合成樹脂
三 薬 24 PCB
種 等
有機りん化合物(パラチオ
25 ン、メチルパラチオン、メチル 殺虫剤、除草剤、洗剤
ジメトン、EPNに限る。)
10
5.土壌汚染状況調査の実施状況
指定区域、管理区域の指定状況(大阪府の例)
法第3条調査関係
1
2
2,631
有害物質使用特定施設の使用が廃止された件数
511
土壌汚染状況調査の結果報告件数
110
2,027
平成18年3月31日
東淀川区東淡路2丁目
200
5
上記確認の手続中の件数
70
6
その他(調査を実施するか、確認の手続を行うか検討中のもの等)
85
159
全部解除済
78
一部解除済
大阪市
平成18年10月27日
天王寺区堂ヶ芝1丁目
平成18年12月1日
東成区玉津3丁目
795.25
平成17年7月15日
此花区高見1丁目
2,191.9 管理区域
平成18年9月8日
此花区高見1丁目
2,673 管理区域
楠根北町
7,180
平成16年1月30日
解除を目的とせずに汚染の除去等の措置を講じた(措置済の指定区域)
平成18年5月2日
寝屋川市
平成16年8月27日
高砂市
9
平成17年7月6日
吹田市
6
平成17年8月8日
汚染の除去等の措置を実施中又は検討中
69
汚染の除去等の措置を講ずる必要が生じていない
19
萱島東3丁目
高砂3丁目
高城町
10 法第4条調査の結果に基づき指定区域として指定した件数
2
11 4条調査による指定区域の解除等の状況
全部解除済
0
一部解除済
0
解除を目的とせずに汚染の除去等の措置を講じた(措置済の指定区域)
1
汚染の除去等の措置を実施中又は検討中
1
汚染の除去等の措置を講ずる必要が生じていない
0
1、2、4、7、9、10 は H15.2.15~H18.8.32 の累計値、 3、5、6、8、11 は H18.8.31 時点の数値
財団法人日本不動産研究所 HP より
11
41 管理区域
780
908
15,950
竹の内町
129.92
平成18年2月9日
白梅町
36,287
平成17年2月10日
堺区築港八幡町
72,870 管理区域
平成18年2月9日
高槻市
堺市
堺区出島西町
4
調査命令を発出した件数
794
古曽部町2丁目
平成17年11月17日
法第4条調査関係
9
228.43
東成区大今里南6丁目
淀川区野中北1丁目
都道府県知事の確認により調査猶予がされた件数
3条調査による指定区域の解除等の状況
1,221.3
平成18年2月10日
4
8
6,943.9
中央区法円坂1丁目
平成17年12月2日
土壌汚染状況調査を実施中の件数
法第3条調査の結果に基づき指定区域として指定した件数
都島区友淵1丁目
平成16年10月22日
59
3
7
平成16年3月5日
大阪市内で
指定区域 7 区域
管理区域 2 区域
大阪府下では
指定区域 6 区域
管理区域 3 区域
5,781 管理区域
6.措置対策
12
7.用途転換の時期が古い工場跡地は?
施行日(平成15年2月15日)時点で「水質汚濁防止法」に基づく特定施設の届出がなされていた工場、事業場
および施行日以降に特定施設の届出がなされた工場、事業場
の廃止を調査対象としている。
⇒施行日以前に廃止されていれば調査対象とされない
大手企業は「自主的」に調査を行い、ホームページ等で公表しているが、マスコミ等で取り上げられる事は少ない。
社会的責任を果たすために自主的にやっているというスタンス…
松下電器、武田薬品、大阪ガス、住友電工 etc.
関西では既に多くの工場が閉鎖、移転し跡地が戸建住宅、マンションやショッピングセンターに転用されている
現在の法の仕組みは、これらの中に潜む汚染可能性の有る地点を明らかにしようとしていない。
⇒「水質汚濁防止法」に基づく届出がなされない危険物倉庫、研究所などは調査されない可能性がある。
古い産廃処理場や病院跡地なども見過ごされる可能性がある
土壌汚染サイトの数
取引(媒介)時の調査
指定区域か、特定施設の届出があるか否かだけの調査で良いのか?
⇒①古地図の調査、②周辺住民への聞き取り、
③閉鎖登記簿の調査 等が最低限必要。
アメリカ
約 500,000
ドイツ
約 260,000
オランダ
約 110,000
日本
13
2,600?
Ⅲ.土壌汚染と不動産評価
1.土壌汚染に対する基本姿勢
社団法人日本不動産鑑定協会(運用指針Ⅰ)
■「土壌汚染が存在しないものとして」「汚染が除去されたものとして」等の、「想定上の条件」を付した評価は、原則として行なわない。
■土壌汚染は価格形成要因の一つ。
■価格形成要因であるから、調査分析を行い評価主体が価格への影響を自ら判断する。
■土壌汚染対策法および関連条例の調査対象となるか否かだけを判断基準としない。
■価格への影響が大きい価格形成要因であるから、原則として価格への影響を検討するが、汚染の可能性が低く、価格形成への影響が小さい場合
には価格形成要因から除外して評価する事となる。
■評価主体の調査能力を超える場合は他の専門家が行った調査結果を活用する。
運用指針Ⅱ
土壌汚染に関する調査が行われている場合
土壌汚染が無いことが判明している場合
価格形成要因から除外して評価
ただし、かつて汚染が存していた場合には心理的嫌悪感等による価格への影響を考慮
土壌汚染が有ることが判明している場合
専門家による対策費等の見積りを活用して評価
土壌汚染に関する調査が行われていない場合
土壌汚染の存否の端緒(※)が無い場合
価格形成要因から除外して評価
土壌汚染の存否の端緒が有る場合
依頼者に専門機関による土壌汚染状況調査を依頼
※土壌汚染の存否の端緒の確認を行うため、鑑定士は「独自調査」を行う。
14
2.土壌汚染地の評価方法
国税庁 資産評価企画間情報3号 資産課税化情報13号 平成16 年7月5日
土壌汚染地の評価方法(基本的な考え方)
浄化・改善費用の取扱い
平成 14 年7月3日付の「不動産鑑定評価基準」の改正(平成 15 年1月1日施行)により、不動産鑑
イ
定士が鑑定評価を行う場合は、土壌汚染の状況を考慮すべきこととされているが、現在のところ、
採るかによって負担する浄化・改善費用が大きく異なり、また、選択した措置に伴い生ずる
標準となる鑑定評価の方法は公表されていない。
そこで、米国における土壌汚染地の鑑定評価を参考にすると、
収益還元方式の3つの評価方式がある。これらのうち、
原価方式、
使用収益制限の内容も変わることから、選択した措置により評価額に大きな影響を及ぼす
比較方式及び
ことになる。
比較方式は、多数の売買実例が収集で
ロ
きるときには、評価上の基本的な方法であると考えられるが、土壌汚染地の売買実例の収集は困
元利回りを決定することは困難であるので、
及び
については、
のいずれの方式についても現段階において
基準を超える汚染が確認された場合に、直ちにその土地所有者等に除去命令が
標準的な評価方法とすることは難しいと考えられる。
一方、
出されるものではなく、都道府県知事が汚染状況や措置の技術的な実施可能性等
原価方式は「使用収益制限による減価」及び「心理的要因による減価」をどのようにみる
を踏まえ、有害物質が他へ流出することがないよう適切に管理することが可能な措
かという問題はあるものの、「汚染がないものとした場合の評価額」及び「浄化・改善費用に相当す
置を命じることになっていること(参考1)
る金額」が把握できることからすると、土壌汚染地の基本的な評価方法とすることが可能な方法で
除去措置を行わないと土壌汚染地が全く利用できないともいえないことから、合理
あると考えられる。
的な経済人であれば、封じ込め等の措置費用とその措置後の使用収益制限等に伴
なお、相続税等の財産評価において、土壌汚染地として評価する土地は、「課税時期において、
う土地の減価の合計額が除去措置費用よりも安価である場合、封じ込め等の措置
評価対象地の土壌汚染の状況が判明している土地」であり、土壌汚染の可能性があるなどの潜在
を選択するのが一般的であると考えられる。例えば、汚染の封じ込め措置を行う土
的な段階では土壌汚染地として評価することはできない。
地については、一定の使用収益制限があり、掘削工事を伴うマンション等の堅固な
原価方式
土壌汚
汚染がないも
建物の建築はできないものの、駐車場や資材置き場等として使用することができる
浄化・改善
使用収益制限
染地の = のとした場合 - 費用に相当 - による減価に
評価額
(注)1
の評価額
する金額
相当する金額
場合が多いと考えられる。
心理的要因に
ハ
- よる減価に相
考えられる。
「浄化・改善費用」とは、土壌汚染対策として、参考 1 に掲げる土壌汚染の除去、遮水工
以上のことからすると、土壌汚染地について行われる措置は、法令に基づく措置命令、浄
化・改善費用とその措置により生ずる使用収益制限に伴う土地の減価とのバランスを考慮
地価公示価格レベルの 80%相当額(相続税評価額)となることから、控除すべき浄化・改
し、その上でその土地について最有効使用ができる最も合理的な措置を専門家の意見をも
善費用についても見積額の 80%相当額を浄化・改善費用とするのが相当である。
踏まえて決めることになると考えられる。
「使用収益制限による減価」とは、上記1の措置のうち土壌汚染の除去以外の措置を実
ニ
施した場合に、その措置の機能を維持するための利用制限に伴い生ずる減価をいう。
3
なお、浄化・改善方法については、現段階では、様々な手法、技術等が研究されている状態
であり、標準的な手法、技術等が確立されていない。したがって、標準的な浄化・改善方法に
「心理的要因による減価(「スティグマ」ともいう。)」とは、土壌汚染の存在(あるいは過
基づき、これに要する費用相当額を定めることができないので、当面は、土壌汚染対策法第
去に存在した)に起因する心理的な嫌悪感から生ずる減価要因をいう。
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しかし、封じ込め等の措置費用とその措置後の使用収益制限等に伴う土地の減価の合計
額が除去措置費用を上回るような場合には、その選択する措置は、除去措置となるものと
当する金額
封じ込め等の措置を実施するための費用をいう。汚染がないものとした場合の評価額が
2
汚染の除去等の措置は、本来ならば、指定区域から解除される有害物質の除去措置を選
択することが望ましいと考えられる。しかし、土壌汚染対策法に基づく汚染の除去等の措置
収益還元方式についても、汚染等による影響を総合的に検討した上で純収益及び還
難であり、
土壌汚染地を評価する場合、どのような措置(除去、遮断封じ込め、遮水工封じ込めなど)を
13 条に規定している指定調査機関の見積もった費用により計算せざるを得ない(複数の調査
汚染の浄化の措置等については、評価時期において最も合理的と認められる措置によ
機関の見積もりをとることが望ましい。)と考えられる。
ることとする。なお、各控除額の合計額が汚染がないものとした場合の評価額を超えると
きには、その価額(汚染がないものとした場合の評価額)を限度とするのが相当である。
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3.スティグマ
stigma:
ギリシャ文字の一つでΣ(シグマ)とΤ(タウ)との合字
奴隷や犯罪者の徴、刻印、烙印(Wikipedia より)
土壌汚染が存在すること又は過去に存在したことに起因する心理的な嫌悪感から生じる減価
心理的なものであるため定量化が難しい
またマスコミ報道の影響が大きいとされる
定量化の方法として仮想市場評価法(CVM)などが提案されている
仮想市場評価法:仮想の開発計画・販売計画等を提示し購入希望価格、補償希望額等をアンケートする
自殺、殺人等があった物件、暴力団事務所隣接地等の例から類推する方法
国税局 (平成 16 年7月5日) 情報
心理的要因による減価(スティグマ)については、これまで、その減価の割合等が
公表されたことはなく、一般に数値化することも困難であり、取引の実例もほとんど
ないことから、それを基に標準化することも困難である。
また、措置の内容(除去措置済み、又は封じ込め等の措置済み)に加えて措置前
か措置後かによっても減価の程度が異なり、さらに、措置後の期間の経過によって
も減価の程度が逓減していくとも考えられていることから、一律に減価率を定めるこ
とも相当ではない。したがって、当面は、個別に検討せざるを得ないと考えられる。
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