ふくおか6次産業化・農商工連携 No. 2 サポートセンター支援企業訪問 ファゼンダかじわら 合同会社 うきはの魅力を発信する地場産ジェラート 筑後平野を見下ろす耳納連山。その丘陵地域は福岡県を代表する果樹地帯であり、柿やブドウ、ナシ、桃 などを全国へ送り出す産地となっている。気軽に果物狩りが楽しめる観光農園や新鮮な果物が並ぶ直売所も 多く、ドライブの目的地として福岡県内外から多くの行楽客が訪れる。その果樹地帯で、栽培した果物を使っ てジェラートを作り、販売しているのがファゼンダかじわら合同会社(福岡県うきは市)だ。地元で食べても らいたいと店舗を中心に事業を展開。店では遠隔地からの観光客だけでなく地元の高齢者もジェラートを手 に憩いの時間を過ごしている。 ブラジルでの体験 ファゼンダかじわらは 2001 年 12 月に果樹栽培 でスタートした。12 年に法人化、現在は合同会社 の形態をとっている。創業したのは代表社員の梶原 嘉将氏。縁もゆかりもない土地で、「妻の大きな支 えがあって今日に至った」(梶原代表)。創業前、梶 原代表は借り入れなど資金調達を含む事業計画立案 に際し(公財)福岡県中小企業振興センターの助言 を受け、現在も雨の日や冬場など売り上げが落ち込 む際の対策などについて相談している。 梶原代表は福岡市の出身。大学では農学を学ん だ。3年生を終え休学してブラジルへ渡り1年間留 学、都会から遠く離れた農園に住み込む。当時「苦 労した中で唯一の楽しみだった」というのが月1回 の町に出ての食事。それは日本食レストランでの懐 かしい味と地元の果物をふんだんに使ったジェラー トだった。特にそのおいしさに感動した体験は、現 「ソルベッチ do うきは」のカウンター 14 BUSINESS SUPPORT FUKUOKA 2015.9 アイスクリーム店「ソルベッチ do うきは」のショーケース 在のジェラート事業の原点になった。 帰国後は卒業して輸入青果物の商社に2年勤務、 山梨県の農園で5年間働き、将来は農園技術者とい う進路もあった。商社時代の梶原代表は、パパイア やマンゴーなど熱帯の果物を輸入し、スーパーなど に卸す業務に携わる。 商社時代に梶原代表は、売る側のニーズと食べる 側のニーズとの違いを強く意識するようになる。食 べる側はおいしさを追求する。一方で売る側は、形 や日持ち、供給量や品質の安定を求める。そして梶 原代表は「おいしい果物を食べてほしい」との思い を実現するため脱サラして果樹農園で創業すること を決めた。父親が自営業者だったこともあり、独立 に抵抗はなかった。 ジェラートも自作 現在、遊休農地対策や農業の活性化につなげよう トは個人への宅配のほか地元の直売所。台湾、韓国、 と自治体や農協には就農相談窓口が設置され、さま 香港、シンガポールなどからの観光客が店に訪れる ざまな支援制度もある。しかし梶原代表が創業を決 こともある。 めた 15 年以上前は相談する場所がなく、資金調達 にも苦労した。結局、借り受けることができたのが、 うきは市の農園1ヘクタール。開設した果樹園 「ファ ゼンダかじわら」の「ファゼンダ」は、農業を学ん だブラジルで使われるポルトガル語で「農場」を意 味する。 ブドウを手始めに、かんきつ類、桃、スモモ、クリ、 ブルーベリーなど品種を増やしていった。販売ルー 栽培している桃 新商品開発へ 果樹販売が拡大し、農地も約2. 5ヘクタールに 広がった。次に梶原代表が取り組んだのが、栽培し た果物を使ったジェラートの製品化。最初は委託製 造を視野に複数のジェラート製造業者に試作しても らった。しかし「酸味など果物の特徴を生かしたも のにしたい」という思いを満足させる試作品ができ ず、自作を決断。必要な設備を買いそろえ、開発に 乗り出す。原料を栽培していることを生かし、酸味 を強く出すために完熟させずに早摘みするなどして 試行錯誤した。農林水産省が推進している6次産業 化総合化事業計画を認定されることにより補助金交 付を受け、14 年に店舗「ソルベッチdo(ド)うきは」 をオープン。ソルベッチは ポルトガル語でジェラート 類の総称。 ジェラートは宅配も行っ ているが店舗販売がメイ ン。そこには「多くの人に うきはに来てほしい」との 願 い が あ る。 季節や時期で 商品ライン アップが変わ るのも自作な ら で は。 甘 酒 や茶葉など地 元産品を使っ たジェラート 「ソルベッチ do うきは」の外観 も製品化した。 積極的な宣伝はしていないがソーシャル・ネット ワーキング・サービス(SNS)による口コミなど で顧客をふやしている。 今後の課題は冬場の需要拡大と年間を通じた製造 の平準化。アイスケーキの開発やワッフルやパン ケーキなどサイドメニューの拡充、梅雨時期の作り だめの検討も行っている。梶原代表は「自分は果樹 の手伝いをしているだけ」と笑い、あくまで果物を 主役としていく考えだ。 梶原 嘉将 代表社員 企業概要 企 代 所 T F 業 表 在 E A 名 者 地 L X ファゼンダかじわら 合同会社 梶原嘉将 福岡県うきは市浮羽町山北1485 0943- 77- 2502 0943- 77- 2502 E メール U R L 社 員 数 [email protected] http://k-fazenda.com 12 人 事業内容 果実(スモモ、桃、ブドウ、柿) 、クリ の生産・販売、ジェラート加工・販売 お問い合わせ ふくおか6次産業化・農商工連携サポートセンター TEL:092-622-7575 BUSINESS SUPPORT FUKUOKA 2015.9 15
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