リタイアメントサービスに関するグローバル調査 迫りくる年金危機 消費者が取りうる選択肢とは 年金危機をチャンスへと変える 生命保険会社の対策とは 迅速な対策をとる 保険会社に、 最大のビジネス機会到来 貯蓄 生活 キャリア 退職後 リタイアメントサービス需要が拡大 生命保険会社の対策とは? リタイアメント商品に対する認知度が低い理由は、一般的に 消費者自身が老後準備に消極的なためだと考えられてきまし た。しかしながら、最近アクセンチュアが実施したリタイア 1 メントサービスに関するグローバル調査 において、消費者 は貯蓄を使い果たすリスクを十分に認識しており、退職後に 備えた投資にも非常に意欲的であることが判明しました。こ の調査結果から推察されるのは、実は保険会社側の販売方法 に課題があったということであり、また商品力や評判の欠如 が問題だということです。 当レポートではグローバル調査結果を踏まえた上で、保険会 社と関連性の深い項目を考察していきます。顧客セグメンテー ションをより高度化する必要性を吟味し、個別セグメントに て必要となる魅力的な商品・アドバイスの提供、及び顧客と の関係構築に関する戦略の必要性について考察しています。 また、広範な地域における様々な専門調査を実施した結果、 リタイアメント市場全般において必要な競争力を網羅する保 険会社は数社しか存在しておらず、また、その獲得に意欲的 な目標を持つ企業も僅かであることが判明しました。 1 サブプライムローン問題、これに続く金 融危機による影響が、世界中に緩慢と浸 透していく中、多くの財務アナリストが より深刻な経済的脅威が迫っているとの 警鐘を鳴らしています。それは退職後の 準備が圧倒的に不足しているということ です。 米国では、年金生活者が従来の生活水準を 維持するためには、消費者と政府機関が併 せて 6.6 兆ドルを既存基金に追加投入する 必要があると言われています 。また、最 2 近の欧州中央銀行からの報告書 によると、 3 EU 加盟国の 19 カ国において国費援助年金 の債務合計額が約 30 兆ユーロ(約 37 兆 ドル)に達し、各国の債務合計額の 5 倍に もなることが明らかになっています。 経済評論家や業界関係者は、常々、消費 者は公的年金や企業年金を自分たちが補 完する必要性を理解していない、あるい は必要な貯蓄を行うのに十分な猶予時間 があると考えていると発言してきました。 しかし、最近では消費者も本当の現状を 見据えつつあるようです。退職後の準備 を他人任せにすると、退職後の生活資金 が不足する可能性があることを世界中の 消費者が認識し始め、現在では世界中の 消費者が自己責任での退職後準備に駆ら れています。 保険会社は今までもリタイアメント市場向 けに、商品提案やアドバイスを行ってきま した。しかし、今回の調査で消費者は保険 会社以外で商品の供給元を探していること が明らかになりました。それでは、保険会 社が最適なリタイアメントサービスの提供 会社になるには、どのような施策や課題に 取り組むべきなのでしょうか。 ళ࡙ࡠ =ళ࡙ࡠ ᄙߊߩ࿖ߢߪޔᔅⷐߣߥࠆ ⊛ᐕ㊄ၮ㊄ߩᝳߦ⧰ᘦߒߡ߹ߔ EU加盟19カ国の国費援助年金債務 19カ国の債務合計 2 消費者は「今すぐに行動を起こす準備」がある アクセンチュアは退職後の生活に関する一般的な問題意識、 図表1 その問題に対する準備意識を正確に把握するため、15 カ国 ࿁╵⠪ߩ߇ㅌ⡯ᓟߩ 8,000 人以上の消費者に対する調査 1 を実施しました。この調 ⚻ᷣ⁁ᴫߦਇࠍ 査では、全体の 82% が退職後の経済状況に不安を抱えており、 ᗵߓߡ߹ߔޕ 57% が退職後に生活水準を落とす必要があると考えているこ 。一方で、消費者の大多数がこの とが分かりました(図表 1) 問題を正確に認識しており、事前準備をしていることも明ら かになりました。 調査から判明したことは、回答者の 93% 地域や企業における年金基金不足が指摘 が退職後資金として「個人貯蓄や投資」 されているので、退職者ニーズを満たす に頼るとのことです(図表 2) 。この傾向 は、 回 答 者 の 52% が「 完 全 に 個 人 投 資 に頼る」と答えたインド、それに続いて ロシア(36%) 、メキシコ(34%) 、米国 (30%)にて顕著に見受けられます。その 対極にあるのが、同様の回答が 12% だっ たポーランド、ブラジル(14%) 、中国と 英国(18%)となり、退職後の資金調達 ことが不可能な現実があるからです。 調査対象者の 60% が、退職後の生活資金 として「貯蓄額を増やす必要がある」と 認識しています(図表 3) 。また、退職後 の生活水準を維持するために必要な貯蓄 額が「現時点では分からない」と、回答 した割合は 67% に達しています。 に関して独自の考えを持っていることが 判明しました。退職後資金の自己依存比 率が多種になる理由は国別で異なります * が、理由は類似しています。多くの場合、 ᄢᛶߩᶖ⾌⠪߇ޔ ㅌ⡯ᓟߪ⥄ಽߩ↢ᵴ᳓Ḱ߇ ਅ߇ࠆߣ⠨߃ߡ߹ߔޕ ᐭߦࠃࠆᐕ㊄ࠬࠠࡓߢ ߩ↢ᵴ᳓Ḱࠍ ⛽ᜬߢ߈ࠆߣ⠨߃ߡࠆੱߪޔ ోߩߦૐㅅߒߡ߹ߔޕ * アクセンチュアが実施したリタイアメントサービスに関するグローバル調査は、国別データを詳細に纏めていま す。調査結果は、 年金基金成熟度を示すインデックス(Pensions Maturity Index)で補完されています。同インデッ クスは、各国のリタイアメント市場への保険会社参入有無に加え、国別の年金基金成熟度を評価した上で、保険会 社の市場参入機会を診断したものです。 3 図表2 退職後の生活は、どの程度を自己資金に依存すると考えていますか? 98% 97% 23% 97% 96% 24% 34% 96% 27% 95% 95% 94% 93% 93% 12% 18% 21% 94% 93% 91% 90% 89% 85% 14% 25% 18% 25% 18% 30% 36% 26% 52% 40% 38% 52% 54% 41% 61% 58% 44% 27% 45% 46% 45% 48% 41% 42% 35% 42% 36% 28% 23% 10% 日本 インド 12% 19% 14% 大韓民国 メキシコ 25% イタリア フランス 中国 30% スペイン ポーランド ロシア 23% 25% 平均 ブラジル 28% 18% ドイツ 米国 25% 英国 18% オースト ラリア 自己資金に完全依存 自己資金が必要額の半分以上 自己資金が必要額の半分以下 図表3 ࿁╵⠪ߩߪޔ ߩᛩ⾗Ყ₸ߢߪ ㅌ⡯ᓟߩ⾗㊄ᒻᚑ߇ ਇචಽߦߥࠆߣ⠨߃ߡ߹ߔޕ 退職後に向けて、どの程度投資を行おうと考えていますか? 比率は、回答者の税引き前月収に対する割合 大韓民国 中国 27.5% 24.2% インド 22.9% ブラジル 19.8% イタリア 18.3% 米国 17.5% メキシコ 17.3% ᐔဋ オーストラリア 日本 16.2% 14.4% ドイツ 14.0% スペイン 13.6% ロシア 13.5% ポーランド 13.2% 英国 12.2% フランス 11.2% 4 退職後の生活資金として「個人投資が必 公的年金や企業年金からの支給に加えて、 要」と回答した割合は 95% に上ります 全回答者の 29% は退職に向けた個別の自 が、その必要額においては大きな差が特 己投資を行っています。そして 32% が、 定されました。毎月の貯蓄額を、税引き 「現在は投資していないが、今後 3 年以内 前月収の「1 ~ 10%」と回答した割合は に開始する予定」と回答しています。現 半数であり、 「20% 以下」と回答した割合 在まで投資を実施していなかった主な理 は全体の 23%、また「20% 以上」と回答 由としては、 「投資負担に耐えられない」 した割合は全体の 23%になりました。投 (57%) 、 「投資優先順位の問題」 (49%) 資先(図表 4)としては、 「銀行または預 の 2 つに続き、27% が「どのように投資 金口座が最も好ましい」と回答しており すべきか分からない」と回答しています。 (三択式調査で 64% が選択) 、 「個人投資」 (同 45%) 、 「自宅以外の不動産投資」 (同 30%)がそれに続きます。 図表4 退職後の生活資金を確保するため、個人的に実施しようと考えている投資は何ですか? 比率は、3つの選択肢に含まれた割合 銀行または預金口座へ貯金 64% リタイアメント商品に個人投資 45% 自宅以外の不動産に投資 30% 自宅を購入 29% 生命保険商品に投資 29% 勤務先企業が設ける別途の年金制度に投資 27% 株式や債券に投資 27% ᤨὐߢߪ⸘↹ߥߒ 5 世界的に見ても消費者は今まで退職後に ついて、 「十分な情報を得ている」と答え 向けた貯蓄に対してあまり積極的ではあ たのは、米国、インド、及び中国の消費 りませんでしたが、各国で起こりつつあ 者だけでした。 る年金危機に関する世論を背景として、 様々な貯蓄方法を検討し始めていること が分かっています。一方で、最適な貯蓄 方法を明確に理解している消費者は、依 退職後資金に対して保険会社が果たす役 割やリタイアメント商品について、 「よ く知っている」と回答した消費者は僅か 然として一部に留まっています。 14% に留まっています。驚くことに、退 考えられる理由としては、消費者の選択 ら提案を受けた」と回答した割合は全体 肢や必要貯蓄額に関する情報量の少なさ の 39%、 「個人アドバイザーや代理店から があります。調査対象の 53% は「情報が 提案を受けた」と返答した消費者は 32% 不足しており、退職後の計画を立てるた に過ぎませんでした。 職後の貯蓄プランについて、 「保険会社か めの選択肢を正しく理解していない」と、 回答しています。同様の意見は、数カ国 を除き、全世界で概して共通しています。 個人が選択すべき方向性や必要な商品に 図表5 保険会社が提供するリタイアメント商品について、限定された知識、 㒾ળ␠߇ឭଏߔࠆ または全く知識がないのはなぜですか? ࠲ࠗࠕࡔࡦ࠻ຠߦߟߡޔ ߇ࠅ߹ޟ⍮ࠄߥߣޠ ㅌ⡯ᓟะߌߩຠᖱႎࠍ㒾ળ␠߆ࠄឭଏߐࠇߚߎߣ߇ߥ ࿁╵ߒߊోޟ߇ޔ⍮ࠄߥޠ ߣ࿁╵ߒߡ߹ߔޕ 退職後向けの商品選択について保険会社から提供されたことがない 20% 保険会社のリタイアメント商品広告を思い出すことができない 18% 上記に該当なし/分からない 17% 6 情報を得るために相談する対象を、独立 消費者側からは明確に認知されていませ 系ファイナンシャルアドバイザーや代理 んが、保険会社はリタイアメント商品の 店と答えた消費者は過半数(51%) 、友人 提供者として他の競合プレイヤーより有 や家族(44%) 、保険会社(41%) 、銀行 利な立場を維持しています。リタイアメ (39%)がそれに続きます。また、少なく ント商品の豊富な品揃え、商品の質と斬 とも 84% が、ソーシャルメディアサイト 新さ、リタイアメント市場で確立されて 上の口コミ評価を参考にすると回答して いるブランド知名度が、保険会社をより います。 優位な地位に押し上げているのです。そ しかしながら、実際に投資商品を購入す る段階では頼るべき金融機関やアドバイ ザーに確信が持てないという現状があり ます(図表 6) 。頼りとする対象相手とし ては、保険会社(三択式調査で 61% が選 択) 、ファイナンシャルアドバイザー、保 の中でもブランド力が非常に重要であり、 リタイアメント商品を購入したことがあ ると答えた回答者の 82% が「金融機関の ブランドに影響を受けた」と答えていま す。また、このうちの 51% が、最も重要 な評価基準にブランド力を挙げています。 険代理店または証券会社(61%) 、銀行 (58%) 、比較検討用ウェブサイト(58%) の 4 つが挙がっています。 図表6 リタイアメント商品を購入する場合、誰にコンタクトしますか? 生命保険会社 61% 17% 独立系ファイナンシャルアドバイザー、保険代理店、証券会社 61% 23% 銀行 58% 18% 価格比較検討用ウェブサイト/アグリゲーター 57% 21% 雇用主 26% 8% 分からない 13% 3つの選択肢に含まれた割合 7 第1候補に選択された割合 保険会社としてのビジネス機会最大化 リタイアメント分野におけるビジネス機会が飛躍的に拡大し つつあることは、疑いの余地がありません。ニーズは非常に 現実的であり、顧客側もその事実を認識しています。顧客側 に制約があるとすれば、その多くは投資意欲ではなく商品の 価格感です。もう 1 つの障壁であるリタイアメント商品の認 知不足や理解不足、または自己資金に対する不安は保険会社 が解決すべき課題なので、大きな成長を実現化できるかは、 保険会社側の対策次第となります。 今日まで生命保険商品は購入してもらう 保険会社は現在の市場変化によるビジネ 商品ではなく、売り込むものと考えられ ス機会を的確に捉える一方で、それは必 てきました。しかしながら、この販売ア ず保険会社が得るものではないというの プローチは生命保険商品に多額を費やす 認識を持つ必要があります。過去数年間 顧客、すなわち生命保険会社の上客であ においても顧客欲求や嗜好、または行動 る富裕層にとって意味のないことでした。 様式が大きく変化しつつあり、実績ある 実際、こうした富裕層はむしろ自ら購買 従来の戦略やビジネスモデルが時代遅れ 行動を起こし、保険やリタイアメント商 となりつつあります。顧客の財産状況の 品と付随するアドバイスを同時に購入し みをベースとした大雑把なセグメンテー ていると考えています。 ションや、数々の類似戦略セグメントを 一方で、顧客の大半はアドバイスを購入 する意思がないか、購入する余裕があり ません。この顧客層は一連のリタイアメ ント商品を前にして、その複雑さに困惑 しています。アクセンチュアの調査結果 が示すことは、保険会社も顧客に対する 適切な商品情報やアドバイスを概して提 供できていないということです。こうし た状況では、商品が「購入」されないの も当然です。 保険会社が効果的な対策を打てずにいる 間に、新たな競合相手は顧客を取り込も うと挑戦しています。銀行や投資アドバ イザーが、保険会社のマーケットシェア を徐々に削り取っているのです。過去に は、思いもよらない参入者が型破りな商 品を打ち出し、退職後に備える消費者の ハートをつかんだ事例もあります。英国 における非課税 ISA(個人貯蓄勘定)など は、その一例です。また異業種リーダー 企業が保険会社と提携して強い競争力を 発揮する事例や、価格比較サービスのよ 攻略する手法は、老朽化した過去のアプ ローチと言わざるを得ません。異なる顧 客セグメントに対して商品・窓口だけを 変えて取り繕い、単一化されたバックエ ンド業務でマーケット全体に対応しよう とする考えは誤りです。リタイアメント 市場を構成するセグメント毎に効果的な 販売チャネル、商品の取扱方法やアドバ イスのタイプなどは確実に異なっていま す。商品自体、基本業務、コストベース すらも、異なるものが求められているの です。 保険会社が自社のケイパビリティを見極 め、ビジネス機会を追求する経営意思を 改めて確認する時が来ています。ビジネ ス機会を追求するならば、顧客を微妙に 異なるセグメントに分類することから始 め、成長戦略を明確に打ち出す必要があ ります。今後取るべきアプローチや考え 方、必要となる運用モデルやインフラ基 盤は、対象セグメントの影響を大きく受 けることになるからです。 うな新技術を活用する企業もマーケット シェアを劇的に拡大させていく可能性が あります。 8 セグメンテーション: 効果的な 顧客リレーション構築の鍵 多くの保険会社が、顧客セグメンテーションの最重要変数と して財産状況を用いますが、顧客がより高いレベルでの個別 接点やサービスを要求しつつある現状では、その有効性が失 われつつあります。ハイレベルのセグメンテーションにおい ては、必要とされる商品やサービスタイプを予測する上で、 財産状況は依然として重要な判断材料です。また、財産状況 を分析することで、退職後の生活に十分な投資が可能な顧客 と、価格制約のある顧客を識別することができます。保険会 社は、前者には最適な投資方法に関するアドバイスを提供し、 後者には資金貯蓄の手助けを行えば良いのです。 9 しかしながら、多くの保険会社は同概念 メントに対応する能力を養い、その効果 を進化させ、金融富裕層を 5 つ以上のタ を計測した上で変化を受け入れ順応し続 イプに分類した上で、自社商品や戦略を けていくことにより、過去の成功を基盤 投入してきました。一方で、このアプロー に前進することができるのです。 チには限界があります。なぜなら、同額 の収入を得ている 2 人の顧客が保険会社 に全く違う商品を要望する一方で、年収 30 万米ドルの顧客が、年収 100 万米ドル の顧客と同じ商品やサービスを要望する これら一連の作業をマニュアルで実施す ることは困難ですので、強力な分析・予 測モデリング能力を持つ、産業化された 経験集積エンジンが必要となります。こ ことがあるからです。 のエンジンは、保険会社が収集した一般 顧客の要望や対応に関するニーズ予測を た外部顧客データや、より個別化された 的顧客データに加え、業者から提供され 行う場合、個人財源やライフスタイル、 接客担当者個人の印象等と言ったデータ 行動様式、世代や人口動態、心理学的特 までを取り込み、保険会社の顧客プロファ 性などの要素が、より信頼できる財産構 イルの詳細を具体化します。エンジンは 成の判断材料となることが明らかになっ プロファイルに基づいた仮説を立て続け、 ています。自立型かアドバイス検証型か、 顧客セグメント全般への商品オファリン あるいは単に丸投げするだけで満足だっ グやアクションを提案します。代理店は、 た顧客の投資スタイルから、顧客関係を 顧客に応じて個別にアプローチを定義し、 どのように構築・管理するかに大きく影 セグメント別に規定された取扱方法と個 響します。関連属性とその値をすべて織 人の販売テクニックを組み合わせて推進 り込むと、生成されるセグメント数は 50 していきます。こうしたアプローチの試 以上になります。問題は細分化されたセ 行錯誤の段階では、毎回結果を測定し、 グメンテーションを誰がどう用いて、何 経験集積エンジンにフィードバックする を行うかです。 ことが重要です。エンジンはそれらを分 析し、セグメンテーションの持ち方、過 ネット販売の小売業者から 学ぶ ネット販売を行っている小売業者は、保 険会社の良い参考となり得ます。事業に 成功している業者は、日々ウェブサイト を更新し、提供する商品内容や宣伝文句、 ページレイアウトを微妙に変えて、その 変化が顧客に与える影響を計測していま す。保険業はオンライン事業よりも物理 的に対面業務を主とする業種ですが、顧 客に特定商品を押し付けるインサイド・ アウト・アプローチを取り続けることは 避けねばなりません。アウトサイド・イ ン・アプローチで、まず顧客嗜好を理解し、 カスタマイズされた方法で複数顧客セグ 去に推奨した取扱方法を評価しつつ、継 続的に精緻化を行っていきます。 顧客の財産状況を分析することで、退職 後の備えに多くの選択肢がありアドバイ スに対価を支払うことができる層と、価 格制約がある層へと、二大顧客層を定義 できます。また他要素も考慮すると 3 つ の基本的市場セグメントに分類可能とな ります―複雑なニーズを持ちカスタマイ ズ化されたアドバイスを必要とするセグ メント、一般的なニーズを持ち汎用アド バイスを必要とするセグメント、そして シンプルなニーズを持ち貯蓄方法に関す るアドバイスのみを必要とするセグメン ト、となります。 図表7 顧客ニーズの複雑性は、リタイアメント市場を把握するのに有効な手段です。 価格許容度 商品とサービス アドバイス 1 複雑なニーズ 高 カスタマイズされた財産蓄積型商品 有料の投資アドバイス 2 多様なニーズ 中 3 シンプルなニーズ 低 個別設定が可能なバランス型保険/ 投資商品 標準的保険商品 商品選択のアドバイス 商品にアドバイスを組み込み、投資の 実現方法をアドバイス 10 1 複雑なニーズ/カスタマイズ・アドバイスを求めるセグメント 財産状況に特化したセグメンテーションに、洗練された豊富 なセグメンテーション情報を付加することで、保険会社のリ タイアメント商品とそれに伴うアドバイスを分類することが できます。分類化は複雑かつ高度に個別化されたものからシ ンプルで共通化されたものまで、バラエティに富んでいます。 先進国では複雑な市場要求は十分に満た このような個別化市場の最先端で事業を され、顧客層の開拓もほぼ終わったと考 継続していくため、保険会社はアドバイ えられます。新興市場では、急成長して スのカスタマイズ化を高度化し、顧客に いる中流階級と新たに生まれた富裕層 とって好ましいポジションを獲得しなけ が、専門的な投資アドバイスや適切な商 ればなりません。そのための次ステップ 品を求める需要が高まっています。世界 と し て は 例 え ば、 “others like them” の 的に見ても、この幅広い顧客セグメント ようなリタイアメントプラン領域を越え が、保険会社や代理店の売り上げの大き た、美術品収集等の共通の趣味を共有す なシェアを占めています。この結果、新 るソーシャルネットワークの構築が考え 興市場における顧客を取り合う競争が激 られます。専門サイトが運営する“エコ 化し、卓越した高度技術を必要とする革 システム”によるネットワークを活用し、 新的なカスタマイズ商品の需要が続いて 顧客の趣味に関する情報を提供した上で、 いるのです。 参加者ニーズを満たす活動を行うのです。 この状況は個人を対象とする保険会社だ けではなく、企業の退職金給付制度を請 け負う法人向け保険会社についても同様 となります。法人分野の場合、事業成否 は寿命リスク管理ツールの精度と経験に 大きく依存します。また、専門のアカウ ントチームを組織し、法人顧客と複雑な 交渉を行いつつ、年金アドバイザリチー ムが年金基金加入者へのコンサルティン グサービスを継続的に提供する必要があ ります。 11 こうした仲介ハブ的な機能はプライベー トバンキングやファミリーオフィス分野 では既に結果を生んでおり、保険会社も 同様の取り組みを行うべきです。サイト 運営会社と協力し、顧客満足度やニーズ を満たすことは、いわば“ライフコーチ” の集合体となることです。専門知識や貴 重な情報を持つ保険会社にとって優先さ れるべき事項は、社内の能力をキャッシュ 化しながらも提携先や顧客関係を強力に 推進することなのです。 アドバイザー能力の向上に重要なのは イノベーションです。イノベーションが、 同顧客セグメントにおけるアドバイス先導型 営業を効率化し、有効性を高めます。 • アドバイザーが顧客にアクセスする方法は、これまでの対面型 の販売モデルから、専門知識とクラウド技術をバランスよく用 いた最新技術-オンラインやモバイル、ソーシャルメディア、 チャット、タブレットやコールセンタービデオ等-に取って替 わり、 補完されつつあります。 “Find the expert” という検索ツー ルを使えば、アドバイザーは適切な専門家を探し連絡すること ができます。同時に他の様々な技術を活用すれば、営業現場へ 迅速に専門的知識を提供できるので、顧客の懸念事項に即答し、 疑問を解消し、顧客による迅速な意思決定、機会損失の回避を 実現できます。 • 経験集積エンジンの出現は、保険会社のマーケティング部門に 大きな影響を与えます。但し、従来通りのクリエイティブなブ ランド推進チーム内に加え、セグメンテーションや取り扱い データ、推奨される改善策を分析し、その影響をトラッキング するといった実作業を担当する社員が必要となります。今後は、 このような本質的に異なるグループを管理していくことも課題 となります。 ̌(KPFVJGGZRGTV̍ߣ߁ᬌ⚝࠷࡞ߦࠃࠅޔ ࠕ࠼ࡃࠗࠩߪㆡಾߥኾ㐷ኅࠍតߒ ㅪ⛊ߔࠆߎߣ߇ߢ߈߹ߔޕ 12 2 多様ニーズ/汎用アドバイスを求めるセグメント 多くの保険会社は、商品の差別化が十分ではないと認識してい ます。この事実は消費者の 75% が、 「全ての保険会社は基本 的に同じ商品とサービスを提供している」と回答したアクセン 4 チュアの調査 で裏付けられています。同傾向はシンプルで共 通化された商品を望むセグメントで顕著に見られます。この数 値が示唆しているのは、保険会社が顧客の好みを理解してアド バイスを提供し、卓越した顧客経験と強いブランド力を活用し て、自社を差別化することが重要だということです。 中間市場や準富裕層(mass-affluent)に 銀行は、顧客アカウント情報を活用して 属する顧客は、退職後に備えて自由に投 顧客の財産状況を把握することで、この 資できるだけの収入があるにもかかわら 課題を解決してきました。保険会社は、 ず、保険会社からきめ細かいサービスを 強力なデータ収集能力と分析力を持つ経 受けた経験が概してありません。調査結 験集積エンジンを活用し、個別顧客イン 果が示すように、大部分が保険代理店と サイトを獲得することで、意味ある提案 接点を持っていないため、保険会社が提 の実現が可能なのです。 供するリタイアメント商品に関する知識 がありません。彼らは、常々商品情報を 理解しようとはしていますが、結果的に は、自信を持って商品を理解・選択でき ずにいます。専属アドバイザーのいる富 裕層や貯蓄を捻出することに苦労してい る層と比較しても、この顧客層は、アド バイスを受けたくても受けられない大き なギャップを抱えているため、保険商品 の購入に至りません。 このギャップを埋めるコスト効率の良い 方法を見つけることが、保険会社の課題 なのです。 13 保険会社は法人企業と契約し、職場にお けるアドバイス欠如のギャップに対応す ることも可能です。従業員と対面し、彼 らが抱える年金危機問題への対応策を提 案する方法は、幅広い顧客にアピールす ると同時に、潜在的な顧客に頻繁に働き かけることができる、コスト効率の良い チャネルともなります。 商品開発に対する新たなアプローチも 重要となり、商品開発の過程で顧客にとって 価値がある機能を考案し、顧客が持つ制約を 克服するという可能性を高める必要があります。 • 保険会社は、あまり一般的でない住宅ローンの支払済み金額な ども含めたリタイアメント資産を算出するなど、顧客が運用で きる年金投資額を増やす方法を常に模索しています。また、リ スクへの理解度を拡げ、持病や障害を持つ顧客に対しても、健 康を害した場合の終身年金などの商品提供を行うようになって います。 • ソーシャルメディアは、保険会社のブランド評価や顧客選定に 大きく影響を与える、急拡大する社会現象の 1 つと言えます。 顧客はウェブなどで目にする大量の不可解な情報を理解するた め、 ソーシャルメディアを活用しています。ニールセン レポー 5 トによると、90% が知人の意見を信用する一方で、70% はオ ンラインに投稿される見ず知らずの人の評価も信用していま す。ソーシャルメディアは当面、こうした影響力を持ち続ける と予想されます。そのため、保険会社は自社ブランドに影響を 与えるようなウェブ上のやり取りをトラッキングし、管理する 手段を早急に開発し、消費者個人が年金危機問題の議論に参加 することを促すという、新しい方法を探求する必要があります。 専門知識とクラウド技術を活用した商品アドバイスを提示する 能力こそが、顧客を魅了して信頼関係を継続させ、最終的には 保険代理店の成功につながるのです。 • オンラインゲームを通じた活動は、ソーシャルネットワーキン グに次ぐ、人気チャネルとなります。多くの保険会社が、ゲー ムの持つ学習ツールとしての可能性を認め、顧客の理性と感情 を通じて、強いつながりを確立する影響力があると理解してい ます。ゲームやライフシミュレーションでは、実際の個別状況 に基づき進められるため、顧客の想像力をかき立て、長時間楽 しみながら個人のロールを演じることができます。同時に、保 険会社はリタイアメントニーズを予測し、顧客に提案する選択 肢を調査するための必要データを収集することができます。 ߩᶖ⾌⠪߇ޔ ߩᶖ⾌⠪߇ޔ ࠝࡦࠗࡦߦᛩⓂߐࠇࠆ ⍮ੱߩᗧࠍା↪ߔࠆߣ ߕ⍮ࠄߕߩੱߩ⹏ଔ߽ ࿁╵ߒߡ߹ߔޕ ା↪ߔࠆߣ࿁╵ߒߡ߹ߔޕ 14 3 シンプルなニーズ/貯蓄アドバイスを求めるセグメント 公的年金制度や企業年金制度を信頼していた消費者の多くが、 保険業界の将来的な成長軸になると予測されています。同層 の消費者には、退職後の蓄えが不足していることを深刻に捉 え、新たに投資を始めるか、現状の投資額を増やそうと検討 している潜在層が多数います。しかしながら、実際は可処分 所得が不足しているため、 行動に移せないのが現状です。また、 もし保険会社の商品を購入する余裕があり、商品評価力を持 ち合わせていても、既存の商品群はニーズに適していないた め、購入を見送ると推測されます。 保険会社は同セグメント層を獲得するた 必要最小限で低価格な商品展開は、ひと め、シンプルでコスト効率が良く、説明 えにプロセス効率化と標準化、そして規 も販売も容易な商品を開発する必要があ 模次第です。多くの保険会社事業や運用 ります。理想をいえば、市場変動の影響 モデルは、大衆市場商品の開発や販売に を受けにくい商品であると、さらに効果 は適していません。この解決策の 1 つと 的です。具体的には、資産評価額が実投 して複数の保険会社が連携し、シンプル 資額の合計を常に上回ることを保証する なニーズに単純な方法で応える機能を請 機能や、市況が変化したり、顧客が購入 け負う企業連合体を構築する方法があり した商品が間違いだと気付いた場合にも、 ます。自力でコスト効率化を図ろうとし 違約金を課すことなく商品変更できる機 ている多くの保険会社にとって、企業連 能、つまり顧客を後悔させない機能を持っ 合体に取り組んだ欧州の保険会社の実例 た商品構成となります。こうした条件を は、大いに役立つ教訓です。最も成果を 踏まえた商品開発が、商品比較の難しさ 上げた英国の保険会社では、1 契約当たり や不適当な商品を選択するリスクを嫌う の年間サービスフィーを 0.05% まで削減 顧客層の需要を引き出すのです。 することに成功しました。同比率まで削 また、商品の選択肢において必要最小限 の商品選定アドバイスやカスタマイズ設 定を組み込んで簡略化し、2、3 の主要変 減させた効果は絶大で、長期的な投資累 積価値は将来にわたり倍増する見込みと なっています。 数を操作するだけで多彩なカスタマイズ 中間市場顧客の過半数が、貯蓄よりも、 を可能にする機能も必要です。この手法 退職後に備えた保険加入を選択する傾向 で成功している具体例が、フランスの銀 にあります。そのため、高いリスク調整 行です。使用されている保険申請フォー 後収益を実現するために、精緻な投資能 ムは至ってシンプルで、定型フォームに 力が重要となります。一方で、リスク追 記載された質問に回答するだけで、顧客 加によるバランスシート悪化を防ぐため ニーズに最適な商品が、3、4 通りの商品 には、本質的に優れたリスク評価能力や 群から自動的に提案されます。 プライシング活用能力が必要となります。 販売側の挑戦としては、顧客が真に必要 としているアドバイス、つまり商品を購 入するための収支管理をいかに行うかと いう解決策を提供する方法です。また便 利かつ低コストな商品購入方法を提案す る必要もあります。従来のような個別化 された複雑なアドバイスを提供するチャ ネルやプロセスは、商品購入を喚起しな い可能性が高いため、適していません。 15 急速に発展する市場スピードに対応しながら、 明確な差別化を打ち出すのに大きな役割を 果たすのは、 イノベーションです。 • シンプルな商品を、素早く簡単に、低コストで販売し、基本 的な情報やアドバイスを提供できるデジタルチャネル戦略が、 競争優位性を決定づけます。 • 保険会社や資産管理会社以外にも、多くの企業がリタイアメ ント市場の規模感に魅力を感じています。こうした企業は、 自社の持つ顧客基盤や大規模な代理店ネットワーク、評判の 良いソーシャルネットワークや検索エンジンが、この市場で 成功するための武器であることを認識した上で、保険の専門 知識やケイパビリティを持つパートナーと提携することを望 んでいます。このような異業種と提携し、その効果を最大限 活用していくためには業界内の慣習や考え方に固執せず、提 携先の世界観を広く受け入れる覚悟が必要です。 • 可能性がある 1 つの解決策としては、販売量や顧客シェアに応 じて顧客にディスカウントを提供している非競合の小売業者や サイト運営社と、ワクワクするようなエコシステムを構築する ことです。このシステムでは、複数サイトにおける合計購入額 に対するディスカウントを実施する代わりに、同額がリタイア メント口座に振り込まれる仕組みとなっています。顧客ロイヤ リティに報い、顧客もグループ投資によって増えた利益の恩恵 を受けることができます。 (図を参照) • インターネット技術を活用して、多くのオンライン企業が大規 模な顧客基盤と強力なブランドを構築し、顧客の高頻度集客を 実現しています。Amazon が好例ですが、顧客数が多ければ加 盟店の利益を損なうことなく、提供商品も拡大できるというこ とを証明しています。このような信頼のおける企業と革新的な パートナーシップを結ぶことが、保険会社の成功につながって いくのです。 小売業のロイヤリティスキームにおけるディスカウント額は、団体リタイアメント投資へと集約可能です。 $10.00 $1.50 $8.50 16 新たな市場に向けた新しいアプローチ 各種の調査レポートによると、地方自治体の公的年金や企業 年金基金が危機に陥り、積立額不足による給付額不足の危険 性を警告しています。同時に個人としても、退職後に備える 必要な措置を怠ってきました。一般消費者にとって苦難の時 代が訪れているのです。 17 保険会社もまた、悪循環を形成した一要 行わないと結論付けるでしょう。保険会 なパイロットプロジェクトを速やかに実 因と言えるでしょう。保険会社は総合的 社は市場にコミットし、市場変化に適用 施し、その評価を繰り返し、成功と失敗 なリタイアメント商品や同サービス分野 する哲学的かつ戦略的な判断を行う必要 から学び、目指すべきビジョンに向かい における信頼性の高い権威あるアドバイ があるとアクセンチュアでは考えていま 機敏な行動を取るのです。 ザーでありながら、適切な商品提供者と す。各社における能力、企業文化・伝統、 して位置付けされていないからです。洗 創造性、実行能力を鑑みつつ、現状とは 練されたセグメンテーション能力を獲得 全く異なる最適な方向性やセグメントを すれば顧客を理解し、必要なタイミング 選択すべき可能性も残しておくべきです。 て市場変化の大きな方向性が明らかにな ことも可能ですが、このケイパビリティ ディストリビューションへの特化 て、大きなビジネス機会からの収益化に に投資している企業は概して多くありま 既存の商品群が余り差別化されてない事 で顧客にリタイアメント商品を提案する せん。顧客はアドバイスを受けることが あっても、提供される情報は、あまりに 複雑で理解困難です。端的にいえば、こ れまでの手法では顧客を保険会社の商品 購入というアクションに駆り立てること はできないのです。 成功モデルを構築するには、新たなアプ ローチが必要です。このアプローチとは、 市場の現状や顧客を取り巻く多種多様な 環境、ニーズ、好みを適切に捉える必要 があります。また、 保険会社運営上の変数、 とりわけ企業のバランスシート上の強み や、将来的に自社ケイパビリティとする 前提で投資している領域について、十分 考慮しなければなりません。つまり、保 険会社はどの市場に注力するのか、そし て同領域において自社を差別化し成功す るために、どのケイパビリティが必要な のかを予め判断する必要があるのです。 高い潜在性と未知の選択肢 多くの保険会社が、現状の商品開発能力 の改善や、既存代理店ネットワークの拡 大を通じて顧客セントリックで、マルチ チャネルな販売網を構築しようと試みて います。当初は、年金投資のような保険 商品だけでなく、貯蓄商品や投資サービ スも積極的に提供し、大量消費と小売り の両面からリタイアメント分野を拡充す るでしょうが、将来的にはより大きく成 長するセグメントに全力で注力するよう になります。 しかしながら、多くの保険会社は全ての 顧客セグメントに対応できるようなアド バイザリ経験を蓄積できる事業モデルを 持っていません。また、いつくかの保険 会社は自社のブランド力や財務力、意欲 的な目標の欠如を理由に、全ての事業分 野で競争力を持つ信頼性の高い総合保険 会社へと変革することを目指した投資は 実を踏まえると、販売業務を専門に行う ディストリビューターの役割に特化する 方法が選択肢の 1 つにあります。高度に 専門化したディストリビューターは、詳 細レベルに及ぶセグメンテーション能力 を持ち、顧客・企業間における双関性か ら価値を創出することを得意としていま す。アグリゲーターと同様、商品開発に 直接関与することを抑えつつ、商品特性 による利益相反もありません。ビジネス モデルは異なりますが、このようなディ ストリビューターは包括的サービスを提 リタイアメント市場は変化を続けてきま した。市場を注視してきた関係者にとっ り、対応の早い保険会社では対策を講じ 成功しています。消費者が退職後の準備 をこれ以上遅らせることができないのと 同様に、保険会社側にも潜在顧客に対す る機会損失を防ぐためにも迅速な行動が 今求められていると言えるでしょう。 アクセンチュアが実施したリタイアメン トサービスに関するグローバル調査の内 容、およびクライアントのハイパフォー マンス実現に向けたアクセンチュアの支 援の詳細は、弊社ウェブサイト www.accenture.com/insurance をご参照 ください(英語のみ) 。 供するオンライン保険会社と類似の立場 にあると言えます。 商品開発のエキスパートに特化 正反対のアプローチとしては、商品開発 への特化を目指すという考え方もありま す。商品開発を専門特化して行う保険会 社は販売活動を行わず、独立系アドバイ ザーやアグリゲーターなどの販売業者を 対象に商品展開戦略を立案し、商品のみ を提供します。販売業者の依頼に基づく 新商品、特に高度なカスタマイズを望む 層を対象とした複雑な商品を素早く考案 する敏捷さが、事業の成功には極めて重 要です。また、事業を推進するための良 きパートナー企業となることも大切です。 保険商品のブランドが顧客の目に触れる ことはありませんが、その代わりに彼ら が考え出す個別プライシング戦略や展開 戦略を高いレベルで満たすプロバイダー となるのです。 いうまでもなく、多くの保険会社にとっ て、全ての変化に同時に対応することは 現実的ではありません。事業の方向性を 戦略的に定めてこそ、確実な一歩を踏み 出すことができるのです。また、企業内 にトライアル・アンド・エラーを認める 文化を醸成することも重要となります。 この企業文化に後押しされる形で、小さ 18 著者紹介 アクセンチュアについて 1 Accenture社、2012年発行、 “Global Retirement Services Survey” アクセンチュアは、経営コンサルティング、 テクノロジー・サービス、アウトソーシング・ サービスを提 供するグローバ ル企業です。 25万7千人の社員を擁し、世界120カ国以上の お客様にサービスを提供しています。豊富な 経 験、あらゆる業 界や 業 務に対応 で きる 能力、世界で最も成功を収めている企業に 関する広範囲に及ぶリサーチなどの強みを 活かし、民間企業や官公庁のお客様がより 高いビジネス・パフォーマンスを達成できる よう、その実現に向けてお客様とともに取り 組んでいます。2012 年 8月31日を期末とする 2012 年会計年度の売上高は、279 億 USドル でした( 2001年 7月19 日 NYSE 上場、略 号: ACN)。 2 Wall Street Journal社、 2010 年9月15日発行、MarketWatch “US Retirement Income Deficit $6.6 Trillion” アクセンチュアの詳細は www.accenture.comを、 アクセンチュア株式会社の詳細は www.accenture.com/jpをご覧ください。 3 Bloomberg社、2012年1月11日発行、 “Europe’s $39 Trillion Pension Risk Grows as Economy Falters” アクセンチュアリサーチについて マーク・ハルバーソン(Mark Halverson)、 アクセンチュア生命保険サービスグループ、 グローバル・セールス・リード ゴードン・マクファーランド(Gordon McFarland)、アクセンチュア保険グループ、 グローバル・セールス・リード グラハム・ジャクソン(Graham Jackson)、 アクセンチュア生命保険グループ、UKリード 参考文献 4 Accenture社、2011年発行、 “Consumer- Driven Innovation Survey” 5 Global Advertising社、Nielsen Wire著、 2009年7月7日発行、 “Consumers Trust Real Friends and Virtual Strangers the Most” アクセンチュアリサーチは、アクセンチュアの グローバル組織として、経済や戦略調査を専 門に行う目的で設立されました。現在、150人 のスタッフが、北米、欧州、アジア太平洋地域 の主要オフィスで、経済や社会学、調査研究 を専門に行っています。 Copyright © 2012 Accenture All rights reserved. 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