NP Pr og.Med. 2 0(s . 1):5 95∼60 9, 200 0 uppl 特別講演 アミオダロン誘発性甲状腺機能異常症の 病態,診断および治療法 佐 藤 幹 二 件下で処理してやると,甲状腺濾胞のまま取り出すこ はじめに とができる .この甲状腺濾胞を,agar os eを塗付し 甲状腺は,心臓とは異なり頸部の皮下にあるので, て細胞が接着できないようにした培養ディッシュにて 触診すれば大概のことがわかる .甲状腺は,輪状軟 培養すると,甲状腺細胞を濾胞のまま,浮遊状態で長 骨のすぐ下に位置して気管軟骨に張り付いているの 図1 期間培養することができる( ) .この培養液中に, で,輪状軟骨を触知できれば,甲状腺を確実に触診す TSH と ることができる.正常の甲状腺は,甲状腺が触れない 機ヨード( I )を取り込み,有機化して甲状腺ホルモ か,あるいはわずかに触れる程度である.本日,お話 ンを合成し,培養液中に denov oに合成された甲状 しするアミオダロン誘発性の甲状腺ホルモン中毒症で 腺ホルモン( I -T4および は,時に少し痛みを訴える者もいるが,大部 は痛み この際,甲状腺濾胞に取り込まれた も結節もない甲状腺である.本日お集まりの c ar di - し,培養液中に 泌された甲状腺ホルモンを ● 印で示 ol ogi s tの方々は,甲状腺にあまりなじみがないと思 したものが,図 2である . われるので,まず最初に,甲状腺は何をしているのか といった基本的なことから紹介したい. Iを添加して培養すると,甲状腺濾胞は無 -T3 ) を 泌してくる. I Iをカラムで示 ヒトの TSH は,0 . 1μU/ mLの低濃度でも,甲状 腺濾胞細胞を刺激し Iの取り込みを促進しているこ とが明瞭である.さらに,高濃度になると TSH は培 甲状腺ホルモン産生は 養液中に deno v oに合成された甲状腺ホルモン I - 正常範囲の TSHにより調節されている T4 + I T3 を 泌する.正常人の TSH の正常値は 甲状腺は,甲状腺濾胞細胞が集まって濾胞構造を形 0 .2 ∼4. 0μU/ mLの範囲であるが,この図より,こ 成している.濾胞細胞膜上には,TSH 受容体が発現 の範囲の TSH により甲状腺ホルモンの 泌が調節さ している.TSH によって TSH 受容体が刺激される れていることが理解できる.甲状腺ホルモンが不足し と,ヨードを取り込み,これを有機化して,サイログ た場合には,下垂体より TSH が大量に ロ ブ リ ン 上 で monoi odot yr os i ne(MI T),お よ び るので,甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの 泌が一 (DI di i odot yr os i ne T)を 合 成 し,さ ら に MI T と DI T 段と促進される. 泌されてく を coupl i ngさ せ て t r i i odot hyr oni ne(T3), DI Tと ところで,この 3 0年間に TSH の測定法は,1 0年 ( を合成する. DI T を coupl i ngさせて t hyr oni ne T4) 間隔で 1 0倍以上ずつ測定感度が増しており,第 2世 合成された T3 ,T4は甲状腺濾胞内に貯蔵されてお 代の TSH 測定法では 0. 1μU/ mL,さらに最近の第 り,TSH に刺激されるとサイログロブリンが 3世代の超 高 感 度 TSH 測 定 法 で は 実 に 0 . 00 5μU/ 解さ れて,血液中に T3 ,T4として 泌されてくる. .第 2世代のキ mLまで測定可能となっている(図 3) ところで,バセドウ病患者の甲状腺亜全摘術の際に 得られた甲状腺を di s pas eや c ol l age nas eで適当な条 K.Sat o:東京女子医科大学内 第二内科助教授 泌疾患 合医療センター ットで TSH を測定して 0 .1μU/mL以下,特に第 3 世代の測定キットで 0 .0 0 5μU/ mL以下であれば,甲 状腺ホルモン過剰症であると断言してよい.ところ で,このように甲状腺ホルモンが過剰になる病態には ―1 6 55 (9 5 )― . 20 .12 00 0 図1 I nv i t r oでの甲状腺ホルモンの合成 泌系 甲状腺は濾胞より構成されている.バセドウ病患者の手術時に得られた甲状腺切片より濾 胞を採取して,浮遊状態で培養することにより,TSH やバセドウ病 I gGに反応してヨード を取り込み,培養液中に denov -T4 + I -T3)を 泌す oに合成された甲状腺ホルモン( I るバイオアッセイ系を樹立することができる. 図 3 TSHの測定法の進歩 図 2 hTSHの甲状腺ホルモン 最近,開発された第 3世代の超高感度法により TSH(測定感 度 0. 01μU/mL以下)を測定すれば,患者が甲状腺機能亢進症 か否か,即座に診断できるようになっている. 泌刺激活性 ヒト甲状腺濾胞を浮遊状態でヒト TSH( hTSH)を含んだ培 養液中で培養しておき, Iを添加して 3日間培養後に,甲状 腺濾胞に取り込まれた Iおよび培養液中に 泌された甲状腺 ホルモン I T4+ I T3 を示す.ヒトの甲状腺機能は,0. 2 ∼4μU/mLの範囲でコントロールされていることがよく理解 できよう(文献 3より引用,一部改変) . バセドウ病と無痛性甲状腺炎 1つは,甲状腺ホルモンの合成および 泌がともに 亢進しているもの( s t i mul at i on-i nduc e d hyper t hyr 表1 2つあることを注意しておきたい( ) . oi di s m)であり,代表的なものがバセドウ病である. また頻度は少ないが,甲状腺細胞が結節性に増殖し て,自律性に( 独りがってに)甲状腺ホルモンを 泌し ―1 6 65 (9 6 )― 第 4回アミオダロン研究会講演集 図 4 バセドウ病と無痛性甲状腺炎の病態 正常人の甲状腺機能は,脳下垂体から 泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)でコントロールされている(左 図).バセドウ病患者では,異常な免疫担当細胞から 泌された TSH 受容体抗体(TRAb)が,甲状腺細胞膜上に ある TSH 受容体を刺激する結果,甲状腺ホルモンが過剰に産生 ・ 泌される(中図).無痛性甲状腺炎では,細 胞障害性のリンパ球などが甲状腺細胞を破壊する結果,濾胞内に備蓄されていた甲状腺ホルモンが血中に大量に 逸脱してくるために,甲状腺ホルモン過剰症を生じる( 右図)( 文献 1より引用,一部改変) . 表 1 甲状腺ホルモン過剰状態を呈する疾患 一気に血中に逸脱してきたために,甲状腺ホルモン過 A) 甲状腺ホルモンの合成 & 泌の亢進によるもの ( St i mul at i oni nduce dhype r t hyr oi di s m) バセドウ病( → Gr aves di s eas e TSAb) 妊娠時の甲状腺機能亢進症 ( ge s t at i onal t hyr ot oxi cos i s→ hCG) Aut onomousf unct i oni ng t hyr oi d nodul es (AFTN) TSH 受容体の ac t i vat i ngpoi ntmut at i on Toxi cmul t i nodul argoi t er 剰症が起こってくるものであり( de s t r uc t i oni nduc e d ) ,これの代表的なものが無痛性甲状 t hyr ot oxi c os i s 腺炎である. 本日のテーマであるアミオダロン誘発性の甲状腺ホ ルモン過剰症には,実は両型のものがあることが明ら かになっている .ここでまず初めに,両者の病態を 明確にするために,バセドウ病と無痛性甲状腺炎がど のように違っているのかを説明したい.バセドウ病 Pl ummersdi s eas e アミオダロン誘発性甲状腺中毒症( t ype ) TSH-pr oduci ngpi t ui t ar yadenoma B) 貯蔵された甲状腺ホルモンの過剰漏出によるもの ( ) De s t r uct i oni nduce dt hyr ot oxi cos i s 無痛性甲状腺炎 亜急性甲状腺炎 アミオダロン誘発性甲状腺中毒症( t ype ) C) 甲状腺ホルモンの過剰摂取によるもの Fac t i t i oust hyr ot oxi c os i s は,自己免疫疾患であり,TSH 受容体に対する抗体 ( が甲状腺の TSH 受容体を刺激して, TRAb,TSAb) 甲状腺ホルモンの合成および 泌が過剰となり,甲状 腺ホルモン過剰症を起こしてしまう s t i mul at i on-i nduc e dhyper t hyr oi di s m である.これに対して無痛性 甲状腺炎は,慢性甲状腺炎がベースにあることが多 く,細胞障害性の T リンパ球などが甲状腺内に侵潤 して甲状腺濾胞を破壊してしまうので,甲状腺濾胞内 に貯蔵されていた甲状腺ホルモンが大量に漏出して生 図 ず る de s t r uc t i oni nduce dt hyr ot oxi c os i sで あ る( て く る aut onomousf unct i oni ng t hyr oi d nodul es 4 ) .両者の大きな違いは,バセドウ病では甲状腺機能 ( がある. AFTN) 亢進状態が 2 ∼3カ月以上,時には 10年以上も持続す もう 1つは,甲状腺が何らかの機序により破壊され るのに対し,無痛性甲状腺炎では甲状腺ホルモン過剰 て,甲状腺濾胞内に貯蔵されていた甲状腺ホルモンが 状態がせいぜい 2カ月ぐらいしか続かないことである ―1 6 75 (9 7 )― . 20 .12 00 0 図 5 バセドウ病と無痛性甲状腺炎 バセドウ病では,治療しないと甲状腺機能亢進症は持続した ままであるが,無痛性甲状腺炎では,甲状腺ホルモン過剰状態 がおよそ 2カ月続いた後,甲状腺ホルモンが枯渇して一時期, 甲状腺機能低下症になり( 2∼4カ月持続),その後,回復期を経 て,全経過,半年ほどで自然にもとの状態に戻る. ヒト甲状腺濾胞をバセドウ病患者より得た I )ともに gG(TSI 培養した甲状腺濾胞の VEGF mRNA の発現を GAPDH と比 したもの(文献 9より引用). 図5 ( ) . 飼料で飼育していくと,TSH の というのは,われわれの甲状腺はおよそ 8mgのヨ ードを含んでいる .大部 図 6 バセドウ病 I gGの VEGFmRNA発現促進作用 泌が起こり,甲状 腺は刺激されて,最初に血管内皮細胞の増殖が起こる は既に有機化されたヨー ことが 1 9 70年代に NI H の Wol l manらにより明らか ドであり,およそ 3 5%ほどが T4として貯蔵されて にされていた .その当時は,angi ogenes i sf act orの いる.T4の 本態は不明であったが,Wol l manらは,詳細な電顕 子量は 7 7 7で,このうち 4個のヨード が占める割合は 6 5%なので,甲状腺内に T4として, 的観察により,甲状腺濾胞細胞は刺激されると,何ら およそ 4 . 2mgほど備蓄されていることになる.T4 かの angi oge ne s i sf ac t orを産生して血管内皮細胞の の 1日 増殖を促進すること,増殖した血管内皮細胞同士が 泌量は 7 0 ∼8 0μgなので,ヒトの甲状腺は 非常事態に備えて,およそ 2カ月 の T4をストック していることになる.したがって,甲状腺が破壊され 2 ∼3日後には融合して毛細血管腔が拡大し,そのた めに血流量が増加することを提唱していた . て生じる甲状腺ホルモン過剰状態は,せいぜい 2カ月 そこで,前述の ヒ ト 甲 状 腺 濾 胞 の 浮 遊 培 養 系 に が限度であると言える.しかし,アミオダロンのよう TSH あ る い は バ セ ド ウ 病 患 者 の I gGを 添 加 し て にヨードを大量に含む薬剤を内服している場合には, 2 ∼3日ほど培養し,最も強力な血管内皮細胞の増殖 甲状腺内に蓄積されているヨードが多いので,時には 刺激因子である vas c ul arendot hel i algr owt hf ac t or 数カ月にも及ぶ甲状腺ホルモン中毒症を呈する場合も ( VEGF)mRNA の発現レベルを Nor t he r nbl ot法で あり得る.もう 1つの大きな違いは,バセドウ病では 検討してみると,TSH もバセドウ病 I gGもヒト甲状 血流量が多いのに,無痛性甲状腺炎では血流量がほと 腺細胞の産生する VEGF mRNA レベルを増加させ んど増えていないことである . 図 6) .さらに,ラットを用いて ることが判明した( Wol l manらの実験を忠実に再現してみると,T3, バセドウ病甲状腺では T4が減少するにつれて TSH が増加する(図 7下). なぜ血流量が多いのか? TSH に刺激されて真っ赤に腫大した甲状腺よりトー バセドウ病患者の甲状腺に聴診器を当てると,血管 タル RNA を,飼育開始 3 ,7 ,1 4 ,2 1 ,2 8日後に抽 雑音( )が聴取される.この br br ui t s ui t sは,抗甲状腺 出 し て,VEGFお よ び そ の 受 容 体 で あ る flt 1と 剤を過剰に長期間投与されて甲状腺機能低下症になっ KDRの c DNA を pr obeとして,Nor t he r nbl otを行 てしまい TSH が著増しているバセドウ病患者でも聴 うと,TSH の上昇した 3日目に VEGF mRNA が著 取される.したがって,甲状腺の血流量は,甲状腺ホ 増 し,そ れ に 呼 応 す る か の よ う に,VEGF受 容 体 ルモンによってコントロールされているのではなく, 図 ( -1 ,KDR)の mRNA の発現レベルも増加した( flt 甲状腺細胞の刺激因子によりコントロールされている 7上) .したがって,TSH やバセドウ病患者 I gGによ と推測される.ところで,ラットを抗甲状腺剤入りの り TSH 受 容 体 を 刺 激 さ れ た 甲 状 腺 濾 胞 細 胞 は, ―1 6 85 (9 8 )― 第 4回アミオダロン研究会講演集 図 7 TSHによる VEGFmRNA発現刺激作用 ラットを抗甲状腺剤(t ) 入りの飼料で飼育していくと,甲状腺機能低 hi our ac i l 下症が誘発され,TSH が上昇してくる.各時点で腫大した甲状腺より t ot al RNA を取り出し,Nor t her nbl ot法で VEGFおよびその受容体( flt ,KDR)の発 現レベルを検討したもの(文献 9より引用). 図 8 バセドウ病甲状腺での血流量増加機序 バセドウ病 I gGや TSH が甲状腺細胞膜上に発現している TSH 受容体を刺激すると,甲状腺細胞 は VEGFを産生する.細胞外に 泌された VEGFは,血管内皮細胞膜上に発現している VEGF受 容体を刺激する.刺激された血管内皮細胞は増殖して互いに癒合するので,血管内腔が 4倍にも増 大する.したがって,バセドウ病甲状腺では血流量が増加しており,血管雑音が聴取される( 文献 9 より引用) . ―1 6 95 (9 9 )― . 20 .12 00 0 図 9 カラードップラー法による甲状腺血流量の測定 無痛性甲状腺炎では血流量は少なく(pat ,バセドウ病 t er n0) の活動性が激しいほど血流量は増加しており( ∼3 ), pat t er n1 はなはだしい場合には t hyr oi d i nf e r noの状態を呈する( pat 文献 1 0より引用) . t e r n3)( VEGFmRNA を産生し,VEGFを産生する.細胞外 に 泌された VEGFは par acr i ne的に作用して,血 管内皮細胞膜上に発現している VEGF受容体を刺激 図1 0 アミオダロン誘発性甲状腺中毒症( ami odar one-i nとアミオダロン誘発性 ducedt hy r ot ox i cox s:AI T) 甲 状 腺 機 能 低 下 症(ami odar one-associ ated hy pot hy r oi di s m:AAH)の甲状腺機能 点線部は正常域:T4;5. 1∼11. 2μg/dL,T3;90 ∼1 70ng/ dL, TSH;0.2∼4.0μU/mL, Thyr ogl obul i n;<20ng/ ;AI mL,データは平 ±SD( N=13 T,N=11;AAH). 図 8) する( .刺激された血管内皮細胞は次第に癒合し て毛細血管腔が拡大するので,Poi s e ui l l eの法則に従 ほど大量に排泄されていた.アミオダロンの常用量 って血流量が飛躍的に増加するという機序が判明した. ( 10 0 ∼2 0 0mg) を内服しているものでは,3 7∼7 4mg したがって,バセドウ病と無痛性甲状腺炎の血流量 のヨードを常に摂取していることになり,そのうち をカラードップラー法でみると,TSH 受容体が刺激 1 0%ほどが脱ハロゲン酵素により遊離してくるので, されているバセドウ病では血流量が増加しており,甲 予想された排泄量であると思われる.また,アミオダ 状腺が破壊されて TSH の 泌が抑制されている無痛 ロン誘発性の甲状腺ホルモン過剰症は,アミオダロン 性甲状腺炎では血流量は全く増加していない.という 内服開始後,2 ∼5年後に突発してくることが多いの わけで,典型的な場合は即座に両者を鑑別できるほど に対し,アミオダロン誘発性の甲状腺機能低下症は, 図 9) である( . 内服開始後,1 ∼3年以内に徐々に発症してくる傾向 がある. アミオダロン誘発性甲状腺ホルモン過剰症 アミオダロンは 3 7 %ものヨードを含有しているた アミオダロンは,ヨーロッパで開発された薬剤なの で,その副作用についても,ヨーロッパの t hyr oi d- め,開発当初から甲状腺機能に様々な影響を与えるこ ol ogi s tによって詳細に検討されている とが予測されていた.筆者は,東京女子医科大学内 よると,アミオダロン誘発性の甲状腺ホルモン過剰症 泌センター内科で甲状腺を専門に診ている臨床内 泌 には,甲状腺ホルモンの合成と 泌が亢進して甲状腺 医であるが,当大学の日本心臓血圧研究所の笠貫教授 機能亢進症を生ずるタイプ( Ⅰ型) と,アミオダロンが らより多数の患者を紹介していただいたお陰で,これ 何 ら か の 機 序 で 甲 状 腺 破 壊 的 に 作 用 す る 結 果, までアミオダロン誘発性の甲状腺ホルモン過剰症を de s t r uc t i vet hyr oi di t i sのような病態を呈するもの(Ⅱ 1 0数例,甲状腺機能低下症をほぼ同数ほど診る機会 型) とに大別されている(表 2) . に恵まれている . .それに 筆者が最初に診る機会のあったアミオダロン誘発性 アミオダロン誘発性の甲状腺ホルモン過剰症では, の甲状腺中毒症は,最も重篤であり,甲状腺も大き 当然のことであるが血中の T3 ,T4は高値であり, く,動悸や息切れを訴えて来院した.しかも,初診時 図 . 1μU/ TSH は全例 0 mL以下に抑制されて い る( に TRAbが弱陽性であったために,バセドウ病かも 1 0) .また,de s t r uc t i veな機序を反映してか,サイロ しれないと え,抗甲状腺剤( チアマゾール) を投与し グロブリンが高値である傾向が認められた.尿中のヨ 図1 1 た( ) .しかし,甲状腺の血流量は増加しておら ードを測定してみると,c ∼7mg r eat i ni ne1 g当たり 6 ず,今にして思えば t ypeⅡの des t r uct i vet hyr oi di t i s ―1 7 06 (0 0 )― 第 4回アミオダロン研究会講演集 表 2 Ami odar onei nducedt hy r otox i cos i s 甲状腺の基礎疾患 病態 T3,T4の合成 甲状腺腫 甲状腺 I取り込み 血中 I L-6濃度 甲状腺エコー 甲状腺血流量 類似の病態 治 療 Type Type あり なし ↑ ,T4の 泌↑ T3 ( −) 貯蔵 T3 ,T4の漏出 多結節性または びまん性 甲状腺はほぼ正常大 びまん性( 時に痛み+) →∼ →∼ 結節+,甲状腺腫+∼++ ∼↑ ↓ ↑∼↑↑ 正常 → l odi ne i nduc e d hype r t hyr oi di s m 無痛性甲状腺炎 De s t r uc t i vet hyr oi di t i s 抗甲状腺剤 副腎皮質ステロイド? 図 11 甲状腺ホルモン過剰状態が 8カ月も持続した ami odar onei nducedt hy r o(t toxi cosi s ype ) 37歳,男性.ARVDのためアミオダロンを 3年以上も内服していたところ,著しい t hyr ot oxi cos i sが生じてきた.本例では TRAb弱陽性であり,バセドウ病との鑑別が問題 となったが,この TRAbには甲状腺刺激活性はなく,de s t r uct i vet hyr oi di t i sに続発して 生じてきたものと推測された. 上段: ■ ;T4 (μg/ , dL), ▲ ;T3( ng/dL),中段: ● ;サイログロブリン( ng/ mL) 下段: ● ;TSH( μU/mL)( 文献 1 4より引用). であり,最初から副腎ステロイド剤を ったと現在では 用すればよか えている( 補:TRAbは無痛性甲状 は,甲状腺がやや大きく,大量の T4が貯蔵されてい たためと えている. 腺 炎 で も 稀 に は 弱 陽 性 に な る こ と が あ る.こ の このような重篤な症例は,例外的であると現在では TRAbは,バセドウ病で検出されるような甲状腺刺 えている.次の症例は,自覚症もほとんどないので 激作用はないタイプのものである) .この症例はチ アミオダロンを中止せずに,しばらく無投薬で経過観 アマゾールできっちり治療したにもかかわらず,甲状 察していたところ,T4が次第に正常化してしまった 腺ホルモン過剰状態は実に半年以上も持続した.これ 図1 2 ( ) .私見ではあるが,呼吸機能障害さえなけれ ―1 7 16 (0 1 )― . 20 .12 00 0 図 12 自然に軽快したアミオダロン誘発性甲状腺ホルモン中毒症 69歳.ARVDによる VT 発作のため,アミオダロンを 4年ほど内服してい たところ,甲状腺ホルモン中毒症が生じてきた.しかし,何の自覚症もないの で,無投薬でしばらく経過を観察していたところ,甲状腺機能はひとりでに正 常化してしまった(文献 10より引用) . 図 13 アミオダロンの血中半減期 アミオダロンの血中半減期は 40日以上もあるので,投薬を中止したからといっても,ただちに甲 状腺機能が改善するわけではない( 文献 1 6より引用,一部改変). ば,甲状腺ホルモン過剰症を呈しても,アミオダロン い甲状腺機能検査を検討しているが,ときどき TSH は中止せずにそのまま経過観察してよいと思われる が0 . 1μU/mL以下に抑制される.そしてその時期に 図1 1,1 2 ,15 ( ) .なぜならば,アミオダロンの血中半 一致して,サイログロブリンが測定感度以上( >5ng/ 図1 3 減期は非常に長く 4 0日以上もあるため( ) ,ア mL)となるので,マイルドな des t r uct i vet hyr oi di t i s ミオダロンを中止したからといって,甲状腺機能が急 が生じているものと推測している.例えが適切でない によくなるわけではないからである. かもしれないが,小噴火を繰り返している火山は大噴 次の症例は,TSH が 0 . 1μU/ mL以下になったと 火をしないのと同様に,絶えずガス抜きをしている本 いうので,紹介されてきた症例である(図 14).この 症例では,著しい甲状腺ホルモン過剰症は起こらない 患者も自覚症は何もないので,月に 1回来院してもら のかもしれない. ―1 7 26 (0 2 )― 第 4回アミオダロン研究会講演集 図 14 TSHが 0 . 1μU/mL以下に繰り返し抑制された症例 70歳,男性.OMI +VT あり,アミオダロンを 3年以上,中断することなく内服してい るが,この間に 3回ほど,TSH が 0. 2μU/mL以下にまで抑制された.自覚症は特になく, 以上となる TSH が抑制された時期に一致して,サイログロブリンが測定感度(<5ng/ mL) ので,軽い des 文献 1 0より t r uct i vet hyr oi di t i sが繰り返し起こっているものと推測される( 引用). 図1 5 アミオダロン誘発性甲状腺機能低下症を起こした後,甲状腺ホルモン中毒症を呈し た症例 甲状腺ホルモン( T4)を投与して甲状腺機能は正常に維持されていたが,甲状腺ホルモン過剰症が 生じてきた.やや疲れやすいなどの自覚症があったので,プレドニゾロンを投与したところ速やか に甲状腺機能が正常化した(文献 10より引用). 次の症例は,アミオダロン投与中に次第に TSH が これまで,心研より紹介されてきたアミオダロン誘 上昇して,ついに 10μU/ mLを超えるようになった 発性の甲状腺中毒症患者では,甲状腺エコー上は何も ので,T4の補充療法を開始した.しかし,4年後に 異常がなく,カラードップラーでは血流量が乏しいの 甲状腺ホルモン過剰状態となったため,プレドニゾロ で,全 例 de (t s t r uc t i on-i nduced t hyr ot oxi cos i s ype ンを投与したところ甲状腺機能が比 的速やかに正常 Ⅱ) と 図 15 化した( ) . 少ないヨーロッパでは,AFTN が多く,潜在性の甲 ―1 7 36 (0 3 )― えている .これに対して,ヨード摂取量の . 20 .12 00 0 状腺機能亢進症の予備群が多いために,t ypeⅠ型の 細胞に直接作用して,炎症性サイトカインである I L- アミオダロン誘発性甲状腺機能亢進症が生じるものと 6の産生を促進することが見出された.アミオダロン 推測される. 誘発性の甲状腺ホルモン過剰症には TypeⅠとⅡがあ 治療であるが,i odi nei nduc e dhyper t hr yoi di s mと ることを提唱している Bar t al e naらは,t ypeⅡでは も言うべき t ypeⅠでは,理論的にも抗甲状腺剤が奏 血中の I L-6濃度が高値であることを見出している 効 す る は ず で あ る.こ れ に 対 し て,薬 剤 誘 発 性 の が ,これはアミオダロンの直接作用であることが明 de s t r uc t i vet hyr oi di t i sである t ypeⅡでは,甲状腺ホ らかになった. ルモンの合成が亢進しているわけではないので,抗甲 また,ラットにアミオダロンを投与し,甲状腺を電 状腺剤は無効である.副腎皮質ステロイド剤をプレド 顕的に詳細に検討した Pi t s i avasらは,甲状腺細胞内 ニゾロン換算で 3 0mg程度から投与していくとよい にi nc l us i onbodyという玉葱状の構造物が増加して とされている.しかし,自覚症も乏しく,T4の値も くること,一部は ne c r os i sや apopt os i sに陥って い それほど高値でなければ(<16μg/dL),特に投薬の ることを報告している 必要はなく,ただ単に経過観察のみでも十 である. r e t i c ul um の内腔の開大像も認められており,死滅し 前述したように,甲状腺ホルモン過剰になったからと た細胞の処理のために単核球が侵潤してきて,pai n- いって,アミオダロンを急いで中止する必要はない. l e s st hyr oi di t i sのような病理学組織像を呈する.そ .ま た, endopl as mi c こで,上記の培養系にアミオダロンを 1 ∼20μM 添加 アミオダロン誘発性 して,甲状腺濾胞に及ぼす影響を電顕的に観察した. 甲状腺中毒症 型の病因 低濃度のアミオダロンでも i nc l us i onbodyが認めら アミオダロン内服中の患者血中のアミオダロン濃度 れ,アミオダロンが高濃度になるにつれて,その数は は,1μM 程度である.これまで,FRTL-5というラ 増加する傾向にあった( 図省略) .また,高濃度のアミ ットの甲状腺細胞株を用いて,高濃度(1 0 0μM)のア オダロン(1 0 ∼2 0μM)では,ne c r os i sや apopt os i sを ミオダロンは細胞毒性を発揮するというデータがよく 示唆する所見が散見された.したがって,アミオダロ 引用されている .しかし,このような phar macol - ンは臨床的濃度では,甲状腺細胞に細胞毒性を発揮す ogi c alな濃度での検討は,臨床医の参 にはならな るわけではないと思われる.しかし,年余にわたり内 い.そこで,アミオダロンの原末を大正製薬から提供 服してきたアミオダロンが,なぜ,ある時期より急激 していただき,患者の血中濃度のアミオダロンが,正 に甲状腺を破壊するようになってしまうのか,その成 常ヒト甲状腺にどのような影響を及ぼすかを検討し 因は全く不明である. た. アミオダロン誘発性甲状腺機能低下症 バセドウ病患者の手術時に得られた甲状腺より,前 述のごとく濾胞を採取し,濾胞のまま通常の培養ディ アミオダロン誘発性の甲状腺機能低下症では,T3 , ッシュに蒔くと,濾胞は接着して徐々に濾胞が扁平化 T4は減少し,TSH は上昇する.TSH には,サイロ していき,単層培養状態になっていく.TSH を添加 グロブリン 泌促進作用もあるので,サイログロブリ して培養し続けると,培養開始後 7 ∼1 4日の間には甲 図1 0 ンも上昇している( ) . 状腺機能が維持される.甲状腺細胞は,TSH に反応 して T3 ,サイログロブリンを濃度依存性に る.I 6( ) も nt er l e uki nI L-6 泌す 泌されるが,TSH の影 響は受けない. 正常人の甲状腺は,主に T4を T4は肝臓や腎臓などの末 泌している.この 組織中に存在する 5-脱 ヨード酵素活性により,外側のヨードが 1個外れて, 活性型の 3,3 ,5 ( に変換され t r i i odot hyr oni ne T3) この培養系にアミオダロンを添加して培養していく る.しかし,栄養状態の不良なときや重篤な病態のと と,1 ∼5μM の臨床的濃度では T3 ,サイログロブリ きには,内側のヨードが 1個外れて,非活性型の 3, ン,I L-6は何の影響も認められなかった.しかし, 5,3 -t (r ,r ) に変換され r i i odot hyr oni ne eve r s eT3 T3 1 0 ∼2 0μM の高濃度になると甲状腺機能は障害され, る.アミオダロンは前者のⅠ型脱ヨード酵素活性を抑 T3とサイログロブリンの産生は減少した(図省略). 制する性質があるため,アミオダロンを大量に内服し しかし,I 6の産生は有意に増加することが見出さ L- た初期には,T4や r T3はやや高値,T3はやや低値 れた.したがって,アミオダロンは高濃度では甲状腺 図1 6 となる( ) .さらに,アミオダロンは下垂体細胞 ―1 7 46 (0 4 )― 第 4回アミオダロン研究会講演集 図1 7 WolChai ko 効果 ヒト甲状腺濾胞を種々の濃度のヨードを含有した培養液中で 培養し,培養液中に 泌されてきた T3および T4を測定した もの.超高濃度のヨードと培養された甲状腺細胞は,甲状腺ホ ルモンの合成および 泌を停止してしまう. ▲:t μg/dL) ot alT3( ng/ dL),■:t ot alT4( 泌している.また,正常人や甲状腺全摘患者に T4を 内服させると,およそ 80 %が消化管より吸収される 図1 6 アミオダロン投与初期の甲状腺機能への影響 大量のアミオダロン(2 0mg/kg/day 1 )を静注し,その後ア ミオダロン( 600mg) を連日内服すると,T3は有意に減少し, ,T4はやや増加し,TSH は次第に上昇す r T3は増加し(上段) る(下段).しかし,本邦での投与量は少量投与法なので,これ ほどの明らかな変化は認めにくいようである( 文献 20より引 用,一部改変). ことがわかっている .したがって,何らかの原因で 甲状腺機能低下症になった患者には,T4を体重 1kg 当たり 1 .2 ∼2 . 0μg(平 1. 6μg/ kg/ day)ほど投与し ていけば,甲状腺機能を正常に維持できる .この 際,TSH を正常範囲内(0 . 2∼4μU/ に入るよう mL) に厳重にコントロールする必要はなく,正常範囲∼や 内の T3核受容体にも拮抗的に作用するためか , や高値( 2 ∼5μU/mL) になるように,通常,チラージ TSH がやや上昇する傾向もある.したがって,アミ ン S( 0μg含有) を1 ∼2錠補充 し て い け ば よ T4を 5 オダロンを投与すると,TSH がやや高値となるのは い. 当然のことでもあり,TSH がどれくらい上昇したら アミオダロン誘発性 甲状腺機能低下症とするか,一定の基準は見当たらな 甲状腺機能低下症の成因 い. とりあえず,TSH がコンスタントに 1 0μU/ mL以 甲状腺は,ヨードを原料として T4 ,T3を産生す 上に増加しているものをアミオダロン誘発性の甲状腺 る甲状腺ホルモン産生工場である.ヒト甲状腺濾胞を 機能低下症と定義すると,これまで 1 3例ほど心研内 培養しておき,培養液中の無機ヨードの濃度を 10 科 よ り 紹 介 さ れ て い る.こ の よ う に TSH が 軽 度 注:これは欧米人の血中ヨード濃度に相当) から M( ( 1 0∼20μU/ に上昇した症例にいろいろと問診し mL) 1 0 M まで変えていくと,培養液中に ても,自覚症は皆無である.しかし,TSH が 1 0 0μU/ る T3濃度は,10 M( 注:昆布を食べている日本人 mL以上にまで上昇した症例では,寒がりや発汗減少 の血中ヨード濃度に相当)で最高となる.しかし,よ などの甲状腺機能低下症の症状を自覚しているもので り高濃度では T3の 泌は抑制されてしまい,超高濃 ある.したがって,TSH が毎回 1 0μU/mLを超える 度( 1 0 M)では T3の ようになってきたら,予防的に T4を投与して,甲状 図1 7 ( ) .このように,甲状腺ホルモン産生工場には, 腺を休ませてあげたほうがよいと筆者は えている. 原料を大量に供給された場合には操業( 甲状腺ホルモ この際,T4をどのくらい投与したらよいかである ン合成 ・ 泌) を一時的に自粛するという,一種の安 が,正常人の甲状腺は T4をおよそ 7 0∼80μgほど 泌されてく 泌は完全に停止してしまう 全装置が備わっている.この甲状腺特有の安全装置を ―1 7 56 (0 5 )― . 20 .12 00 0 図1 8 アミオダロン誘発性甲状腺異常症の診断と治療指針 Wol-Chai ko 効果という . ように な っ た ) ,2 ∼3カ 月 か け て 維 持 量( 5 0∼10 0 ところで,アミオダロン内服中の患者では,連日, μg/ とすればよい. day) 大 量 の ヨ ー ド を 摂 取 し て い る に も か か わ ら ず, ところで,アミオダロン内服中の患者の TSH が Wol-Chai ko 効果が持続しておらず,甲状腺ホル 0 .0 5 ∼0 . 2μU/ mL付近にまで抑制された場合には 2 モンは適当な量だけ 泌されており,甲状腺機能は正 図1 8 つの可能性が えられる( ) .1つは潜在性の甲状 常である.しかし,もともと甲状腺に橋本病などの病 腺中毒症であり,このような症例は自覚症も乏しいの 気が潜在していた症例では,大量のヨードを摂取し続 で,慎重に経過観察をしていけばよい.もう 1つは, けると,この WolChai ko 効果が持続しており, 心筋梗塞などを併発した non( t hyr oi dali l l ne s s e ut h- 甲状腺ホルモンの合成 ・ 泌が抑制されたままなの であるが,病歴より明らかなの yr oi ds i c ks yndr ome) で,甲状腺機能低下症になってしまう.アミオダロン で原疾患に対する治療を積極的に行えばよい. 内服後に原発性甲状腺機能低下症を呈してくる症例 しかし,TSH が 0 . 05μU/ mL以下にまで抑制され は,もともと甲状腺に何らかの病変があり,ヨード効 た場合には,ami -i odar one nduc e dt hyr ot oxi c os i sで 果から e s c apeできない病態であると推測されてい ある.無症状の場合は経過観察のみでも十 の場合も る. あるが,何らかの症状を訴える場合には治療の対象と なる.これまでわれわれの経験したアミオダロン誘発 アミオダロン投与中の患者に対する 性 の 甲 状 腺 ホ ル モ ン 過 剰 症 は,す べ て t ypeⅡ の 甲状腺機能検査 de s t r uc t i vet hyr oi di t i s型である.したがって,亜急 アミオダロン投与中の患者には,最初の 1年間は月 性甲状腺炎の治療に準じて,副腎皮質ホルモンを 3 0 に 1回程度,1年後でも 3カ月に 1度は甲状腺機能を mgほど甲状腺機能が落ち着くまで投与するのが,現 測定すべきである.この際,TSH は第 3世代の超高 在のところ最も妥当な治療法と思われる. 感度法で測定したほうがよい. 前述のごとく,TSH の正常値は 0 . 2∼4 .0μU/mL であるが,アミオダロン内服中の患者では,投与初期 には TSH が 6 ∼7μU/mL程度まで上昇しても,甲 状腺機能は正常範囲であると鷹揚に えてよい.しか し,TSH が次第に 1 0μU/ mL以上となってくる症例 では,チラージン Sを 2 5μg/ 日より投与し(注:チラ ージン Sはこれまで T4を 5 0μg含有するものしかな かったが,2年前より 25μg含有のものが市販される 献 1)佐藤幹二:甲状腺の病気.保 同人社,1 9 9 8年 7月発 行 2)Sat o,K. ,Sat oh,T. ,Shi z ume ,K.e tal . :I nhi bi t i onof Ior gani fic at i onandt hyr oi dhor moner el eas eby 1 -α, i nt e r l euki n, t umorne c r os i sf ac t or i nt er f e r onγ i nhumant hyr oc yt e si ns us pe ns i onc ul t ur e .J .Cl i n. 0:1 73 5 17 4 3 90 Endoc r i nol .Me t ab.7 ,19 3)Yamaz aki ,K. ,Sat o,K. ,Shi z ume ,K.e tal . :Pot e nt t hyr ot r opi c ac t i vi t y ofhuman c hor i oni c gonado- ―1 7 66 (0 6 )― 第 4回アミオダロン研究会講演集 t r opi nvar i ant si nt er msof Ii nc or por at i onandde no vos ynt hes i ze dt hyr oi dhor moner e l eas ei nhuman 8 0: 4 7 3t hyr oi df ol l i cl es .J .Cl i n.Endocr i nol . Me t ab. 4 79 9 95 ,1 4)Bar t al e na,L. ,Br ogi oni ,S. ,Gr as s o,L.etal . :Tr e at ment of ami odar onei nduc ed t hyr ot oxi c os i s ,a di c ul tchal l enge:r es ul t sofapr os pe ct i ves t udy.J . 1:2 93 0293 3,1 9 9 6 Cl i n.Endoc r i nol .Me t ab.8 5)I ngbar ,S.H. ,Woeber ,K.A. :Thet hyr oi d gl and. I n:Te xt bookofEndoc r i nol ogy,ed.byWi l l i am,R. 11 724 7,Saunder H. ,6t he d. ,pp. sCo. ,Ne w Yor k, 1 98 1 6)Vi t t i ,P. ,Rago,T. ,Mazze o,S.e tal .:Thyr oi dbl ood -flowdoppl flowbyc ol or e rs onogr aphydi s t i ngui s he s Gr ave s di s eas ef r om Has hi mot os t hyr oi di t i s .J . 8:857 -8 61,199 5 Endoc r i nol .I nve s t .1 7)Wol l man,S.H. ,He r ve g,J. P. ,Zel i g,J . D.e tal . : Bl ood c api l l ar ye nl ar ge mentdur i ng t he de vel opment of t hyr oi d hype r pl as i ai nt he r at .Endo02:23 06 -23 14,1 97 8 c r i nol ogy 1 8)Er i cks on, L.E. , Wol l man, S. H. :Ul t r as t r uc t ual as pec t sofcapi l l ar yf us i ondur i ngt hede ve l opme nt 2:3 0 0oft hyr oi dhype r pl as i a.J.Ul t r as t ur ct .Res .7 3 15 9 80 ,1 9)Sat o,K. ,Yamaz aki ,K. , Shi zume, K.e tal . :St i mul at i on oft hyr oi ds t i mul at i ng hor moneand Gr ave s i mmunogl obul i nG ofvas cul are ndot he l i algr owt h f ac t ormRNA e xpr es s i on i nv i t r o and fltmRNA e xpr e s s i oni nt her att hyr oi di nv i vo.J.Cl i n.I nve s t . 9 6:1 29 513 02 99 5 ,1 1 0)Sat o,K. ,Mi yakawa,M. ,Et o,M. ,I naba,T. ,Mat s uda,N. ,Shi ga,T. ,Ohni s hi ,S. , Kas anuki ,H. :Cl i ni c al -i c har ac t er i s t i c s of ami odar one nduce dt hyr ot oxi cos i sandhypot hyr oi di s mi nJ apan.Endoc r i neJ . 4 6:4 43 -4 51 99 9 ,1 1 1)Gi l l ,J. ,Heel ,R. C. ,Fi l t on,A. :Ami odar one .An over vi ew ofi t s phar macol ogi c alpr ope r t i e s ,and r e vi e w ofi t st he r ape ut i cus ei nc ar di acar r hyt hmi a. -1 10,1 992 Dr ugs 43:69 1 2)Newman,C. M. ,Pr i c e ,A. ,Davi es ,D. W.e tal . : Ami odar oneandt het hyr oi d:apr ac t i calgui det o t hemanage mentoft hyr oi ddys f unc t i oni nduc e dby 112 7 9 9 8 ami odar onet he r apy.Hear t 79:12 ,1 1 3)Har j ai ,K. J. ,Li c at a,A.A.:E e ct sofami odar one 26:6 3 7 3 ont hyr oi df unc t i on.Ann.I nt e r n.Me d.1 , 1 99 7 1 4 )Sat o,K. ,Yamaz aki ,K. ,Kanaj i ,Y. ,Ohni s hi ,S. , Kas anuki ,H. :Ami odar one i nduce dt hyr ot oxi c os i s as s oc i at e dwi t hTSH r ec ept orant i body. Thyr oi d.8: 1 12 3 11 26 9 9 8 ,1 1 5 )Sat o,K. ,Yamaz aki ,K. ,Yamada,E. ,Kanaj i ,Y. , Mi ur a,M. ,Obar a,T. :I mmunogl obul i nG ofunt r eat e dGr avespat i e nt swi t horwi t houtTSH r e ce pt or ) uni ant i body ( de t er mi ne dbypor c i net hyr oc yt es ver s al l ye l i c i t pot e nt t hyr oi d hor mone r e l eas i ng act i vi t yi nc ul t ur e dhuman t hyr oi df ol l i c l es .Thy7 9 9 88 9 9 9 r oi d.9:9 ,1 1 6 )Hol t ,D. V. ,Tuc ke r ,G. T. ,J ac ks on,P. R. ,St or e y,G. C. :Ami odar onephar mac oki ne t i c s .Am.He ar tJ. 1 06:84 08 4 7 9 8 3 ,1 1 7 )Bogaz z i ,F. ,Bar t al e na,L. ,Br ogi oni ,S.e tal .:Col or flow doppl ers onogr aphyr api dl ydier e nt i at est ype Ⅰ andt ypeⅡ ami odar one i nduce dt hyr ot oxi cos i s . 4 1 5 45 9 9 7 Thyr oi d.7:5 ,1 1 8 )Chi ovat o,L. ,Mar t i no,E. ,Tonac c he r a,M.etal .: St udi e sont hei nv i t r oc yt ot oxi ce e c tofami odar 3 4:2 2 7 7 2 2 8 2 9 94 one .Endoc r i nol ogy 1 ,1 1 9 )Pi t s i avas ,V. ,Sme r de l y,P. ,Li ,M. ,Boyage s ,S.: Ami odar onei nduce sadie r e ntpat t e r noful t r as t r uc t ur alc hangei nt he t hyr oi dt oi odi ne e xc es s al onei nbot ht heBB/ W r atand t heWi s t arr at . 3 7:8 9 9 8 99 7 Eur op.J .Endoc r i nol .1 ,1 2 0 )I e r vas i ,G. ,Cl e r i c o,A. ,Boni ni ,R.e tal . :Acut e ee ct sofami odar one admi ni s t r at i on on t hyr oi d f unc t i oni npat i e nt swi t hcar di acar r hyt hmi a. J. Cl i n. 2:2 75 2 80 97 Endoc r i nol .Me t ab.8 ,19 2 1 )vanBe e r e n,H. C. ,Bakker ,O. ,Chat t e r j e e ,V.K.K. , Wi e r s i nga,W. M. :E e c tofmut at i onsi nt heβt hyr oi dhor moner e c e pt oront hei nhi bi t i onofT 3 50: bi ndi ng by de s e t hyl ami odar one .FEBS Let t .4 3 53 8 1 9 9 9 , 2 2 )Br e nt ,G. A. ,Lar s e n,P.R.:Tr e at me ntofhypot hyr oi di s m.I n:We r ne randI ngbe rsTheThyr oi d.A 8 83 -8 87 Fundame nt alandCl i ni c alTe xt .pp. ,e d.by 7 99 5 Br ave r man,L. E. & Ut i ger ,R. D. ,t he di t i on,1 2 3 )Tof t ,A.D. :Thyr oxi net he r apy.N.Engl .J.Me d. 3 31:17 41 8 0 9 9 4 ,1 2 4 )Fr adki n,J . E. ,Wol,J . :I odi ne i nduc e dt hyr ot ox2:1 2 0 9 83 i cos i s .Me di c i ne 6 ,1 2 5 )佐藤幹二ほか:TZ( レボチロキシンナトリウム) T4 の甲状腺機能低下症に対する臨床試験.ホルモンと臨 床 4 6 :5 9 9 6 1 2 9 9 8 ,1 ―1 7 76 (0 7 )― . 20 .12 00 0 質疑応答 座長/笠貫 演者/佐藤 宏(東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所循環器内科教授) 幹二(東京女子医科大学内 笠貫( 座長) 佐藤先生,どうもありがとうごさいま した.アミオダロン誘発性甲状腺機能異常症の病態, 泌疾患 合医療センター第二内科助教授) しましたが,その程度でも非常に強力な甲状腺刺激作 用をもっています. 診断,治療について非常にわかりやすくお話しいただ 伊藤 どうもありがとうございました. きました.少し時間が押していますが,せっかくの機 山田( 筑波大) アミオダロン誘発性甲状腺機能障害 会ですのでご質問がありましたら,いくつかお受けし では,甲状腺機能亢進症と低下症のいずれが発症しや たいと思います. すいかという,発症頻度のことでお聞きします.亢進 伊藤( 滋賀医科大) 昨年度の本研究会で甲状腺腫が 出てきた症例が教室でありましたが,あまり文献的に 症と低下症の発症頻度はヨード摂取量の影響を受け, 人種差,地域差があると報告されています. もないようです.そのときアミオダロン 2 00mgを 私たちの施設では 70例のうち hype r t hyr odi s mは 1 0 0mgに減量しまして,軽快したら少し縮小したの わずか 1例で,TSH が 10μU/ 0 mL以上の症例が 1 ですが,また VT が出てきましたので現在 1 50mgで 数例あり,日本人の特性として hypot hyr oi di s m のほ 経過をみています.薬剤で経過をみていると,甲状腺 うが発症しやすいという印象をもっていました.しか 腫が大きくなったり,小さくなったりするようです し,先生の先ほどの発表では,亢進症と低下症の発症 が,そういった機序はどのように えたらよろしいの 数にはあまり差がありませんでした.発症率はどのよ でしょうか. うになっているのでしょうか. 佐 藤( 演 者) そ れ は,い わ ゆ る ami -i odar one n- 佐藤 笠貫先生のほうから送られたきた症例だけを duce dhypot hyr odi s m という病態です.有名なもの みていますので,発症率に関しましては私はコメント に昆布をたくさん食べる北海道の漁師の方に c oas t する立場にありません. goi t erがあるのですが,ヨードをたくさん摂取すると 笠貫先生,頻度についてはいかがでしょうか. 甲状腺が大きくなることが多いのです. 笠貫 私の印象では,治療を要する t hyr ot oxi c os i s それは,Wol-Chai ko e ec tが少し絡んでいる と hypot hyr oi di s m の頻度はそんなに違わないと思い のではないかと私は推測していますが,ヨードがたく ます.今後,日本の特徴については,このような研究 さんあると甲状腺ホルモンを産生しなくなるのです 会で共同で調べてみる必要があると思います. ね.甲状腺には原料をたくさん供給されると,甲状腺 山田 ありがとうございました. ホルモンを逆に産生しなくなる性質があるのです. 笠貫 日本人には t ypeⅡ が 多 く,ヨ ー ロ ッ パ で ,T4が低下しますと,TSH が出てきます.TSH T3 t ypeⅠが多いということでしたが,そのメカニズム は甲状腺の血流量も増加させますし,甲状腺細胞の増 については何かお えですか. 殖も促進する作用があります.ですから,長い間には 佐藤 要するにt ypeⅠ は,AFTN( aut onomous 甲状腺が大きくなって,goi t e rが出てくるのではない ) をベースにして起こっ f unc t i oni ngt hyr oi dnodul es かと思います. たi odi nei nduc edhype r t hyr oi di s m で す.ヨ ー ド 不 伊藤 TSH は 1 0μU/ mL程度ですので,それほど 高くはないのですが. 佐藤 足のヨーロッパでは,甲状腺が大きく結節がゴロゴロ あって,それらがある程度自律性をもって甲状腺ホル 1 0μU/ mLというのは先ほどスライドで示 モンを産生していることが多いのです.そういった方 ―1 7 86 (0 8 )― 第 4回アミオダロン研究会講演集 がアミオダロンを服用してヨードが大量に入ってきま まで甲状腺疾患をずいぶん診ていますが,1 0例もあ すと,もともと aut onomousに甲状腺ホルモンが りません.日本では t ypeⅠはほとんどないでしょ 泌されておりますので,甲状腺機能亢進症を起こしま う.し か し,日 本 人 で aut onomous l yf unct i oni ng す.それが t ypeⅠだと思います. t hyr ot oxi cnodul e sがあって VT などを発症し,どう なかにはバセドウ病になりかかっているのですが, してもアミオダロンを服用しなければならないという ヨードの摂取量が足りないために,サブクリニカルな 方がいた場合には,t ypeⅠのアミオダロン誘発性の バセドウ病であったのが,アミオダロンを服用して明 甲状腺機能亢進症が発症する可能性はあると思いま らかなバセドウ病になったという例もあると思われま す. す.しかし,こういう例は少なくて,イタリア人たち 笠貫 どうもありがとうございました.まだ先生に は,AFTN の患者さんがたまたまアミオダロンを服 教えていただきたいことがありますが,時間が参りま 用して,甲状腺ホルモン産生過剰症を起こしたものを したので,これで特別講演を終わらせていただきま t ypeⅠと言っているのだと思います. す. 日本では AFTN は非常に少ないのです.私はこれ ―1 7 96 (0 9 )―
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