事業紹介 - テルモ

事業紹介
テルモは3つの事業領域で、医療の革新に挑戦しています。
テルモは
「医療を通じて社会に貢献する」
という企業理念のもと、3つのカンパニーを通して事業活動を展開し、
世界の医療現場に、最適な製品やサービスを提供しています。
安全性や使いやすさを向上させる改良改善、適正な使用のためのトレーニングの実施、
また、
医療現場全体の課題に応えられるようなシステムの提案などを通じて、医療の質の向上を追求しています。
事業別売上高/構成比
TIS※1事業
1,766億円 33%
血液システム
カンパニー
1,050億円
20%
DM※4・
ヘルスケア事業
253億円
5%
2015年度
ホスピタル
カンパニー
5,250 2,586億円
億円
1,614億円
31%
D&D事業※3
584億円 11%
心臓血管
カンパニー
49%
ニューロバスキュラー
事業
263億円
基盤医療器事業
CV※2事業
777億円 15%
418億円
血管事業
※1
※2
※3
※4
139億円
Terumo Interventional Systems:心臓・下肢などのカテーテル治療領域を扱っています。
Cardiovascular Systems:心臓外科領域を扱っています。
Drug and Device:医薬品と医療機器の技術を組み合わせた製品などを扱っています。
Diabetes Management:糖尿病治療領域を扱っています。
地域別売上高/構成比
アジア他
926億円
18%
海外
3,378億円
64%
欧州
2015年度
1,018億円 5,250
億円
19%
米州
1,435億円
27%
19
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016
日本
1,872億円
36%
5%
8%
3%
心臓血管カンパニー
全身の各所に展開するカテーテル治療と
心臓血管外科手術において
患者さんの負担軽減を追求しています
心臓血管カンパニーでは、
カテーテル(細い管)
を血管に通して診断や
治療を行う血管内治療(インターベンション)領域と、心臓血管外科手術
の領域に注力しています。全身の様々な病変部で血管内治療は行われて
おり、
テルモはその中でも心臓血管
(冠動脈)
疾患・下肢動脈疾患・脳血管疾
一方、心臓
患の治療と、
肝臓がんの化学塞栓術※の分野で貢献しています。
血管外科の領域では、心臓手術などで使用する体外循環システムや人
工血管などを展開しています。
それぞれの領域で、患者さんの負担軽減や
治療効果の向上をサポートしています。
※24ページに詳しい説明があります。
ホスピタルカンパニー
安全性と使いやすさを追求した
医療機器や医薬品をシステムで提案し
幅広い医療の質の向上に貢献しています
病院のベッドサイドから患者さんの自宅まで、
多様化する医療の現場に対
して、
医療機器や医薬品もそれぞれに合った機能や使い勝手が求められてい
ます。
ホスピタルカンパニーは、
医療機器や医薬品を適正かつ効率的に扱える
よう組み合わせたり、
ITを活用してデータを連携させるなど、
一連のシステム
として患者さんや医療現場に提供しています。
これにより、
医療現場の安全性
や医療従事者の業務効率の向上など、
新しい価値の提供を目指しています。
血液システムカンパニー(テルモBCT)
より安全で高品質な輸血の提供と
血液・細胞治療の発展に寄与し
医療インフラと先端医療を支えます
献血でドナーから提供された血液は、血液センターで製剤化されて、事
故や手術で大量の血液が失われた患者さんや、正常な血液が十分に作れ
ない病気を抱える患者さんなどに輸血されています。血液システムカンパ
ニー(テルモBCT)
は、血液センターで用いる全血や成分での採血装置、血
液自動製剤システム、
また、病院で行う血液治療に用いる遠心型血液成分
分離装置、細胞増殖システムなどを通じて、輸血医療を支えるとともに、世
界中の血液の病気を抱える患者さんの治療に貢献しています。
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016
20
事業紹介
心臓血管カンパニー
グローバルなブランド力の向上を図り、
利益ある持続的成長で全社を牽引
2015年度業績
売上高
2,586億円
事業利益※
634億円
事業利益率※
25%
事業別売上高(億円)/構成比
地域別売上高(億円)/構成比
血管
アジア他
日本
510
20%
516
20%
139 5%
CV
418 16%
2015年度
2,586億円
TIS
2015年度
1,766
69%
ニューロ
バスキュラー
263 10%
2,586億円
欧州
米州
667
26%
894
34%
※のれん等償却を除く
2015年度の業績
2015年度の主な取り組み
海外を中心にTIS(カテーテル)事業、
ニューロバスキュラー事業の売上が大きく伸長
グローバルな成長を牽引する製品の
開発・導入に注力
2015年度のカンパニーの売上高は、海外を中心にTIS事
TIS事業では、
日本で発売したUltimasterが医療従事者か
業とニューロバスキュラー(脳血管)事業の売上が大幅に伸
ら評価を得て、競争の激しいDES市場で大きく売上を伸ばし
長し、前年度比13.9%増の2,586億円となりました。
ました。
TIS事業では、2015年10月に日本で薬剤溶出型冠動脈ス
海外では、患者さんのQOL(生活の質)
と医療経済性の向
テント
(以下、DES)
「Ultimaster」
を発売しました。前年度に
上に寄与するTRIの普及に注力しました。特に近年TRIの普
発売した欧州、中南米およびアジアを含め、各地域で売上が
及が進む米国で医療従事者へのトレーニングを強化し、関連
好調に推移しました。
製品の販売も好調に推移しました。
米国では、
TRI
(手首の血管から冠動脈にアプローチするカ
末梢血管向けの製品では、膝上の動脈疾患治療などに用い
テーテル手技)関連製品の売上が二桁伸長となり、
アジアも
られるステント
「Misago」
が、米国で心臓・血管治療分野にお
中国を中心に売上が伸長しました。
ける体内埋め込み型の医療機器として、
日本企業初となる米
ニューロバスキュラー事業も米国を中
国食品医薬品局(FDA)の販売承認を取得しました。
さらに、
心に販売が好調に推移し、売上は大き
株式会社カネカとの共同開発契約に基づく初の製品である、
く伸長しました。
末梢動脈疾患治療用バルーンカテーテル
「Metacross RX」
を
カンパニーの事業利益は前年
米国で発売しました。
これまでアクセスデバイスが中心であっ
度比33.7%増の634億円、事業
た米国のTIS事業に、末梢血管の治療用デバイスが新たに加
利益率も4ポイント改善し、25%
わり、
今後の事業拡大に向けた大きな一歩となりました。
となりました。
より収益性の高い
ニューロバスキュラー事業では、
コイル以外の製品開発と
製品・事業の売上が拡
導入地域の拡大に注力しました。入口の広い脳動脈瘤の治療
大したことに加え、継続
に使われるコイルアシストステント
「LVIS」は、米国で販売が
的な原価改善も寄与し
好調に推移し、
日本でも販売を開始しました。
ました。
CV事業では、
子会社のテルモカーディオバスキュラーシス
テムズ Corp.
(TCVS社)
の米国アナーバー工場で、
FDA基準
心臓血管カンパニー
プレジデント
佐藤 慎次郎
21
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016
の品質システム確立のために必要な人工心肺装置のデータ取
得・検証作業を予定通り年度内に完了し、
その後に実施された
FDAの査察でも指摘事項はありませんでした。
この結果、
2011
年以降続いていた新規顧客への販売制限がすべて解除され、
通常のオペレーションが可能な状態となりました。
クイレムメディカル B.V.と提携し、
同社が開発する肝臓がん治
血管事業では、
子会社のバスクテック Ltd.が、
英国ビジネス
療用の放射線放出ビーズのグローバル独占販売権を取得しま
分野で最高栄誉とされる
「英国女王賞」
のイノベーション部
した。
高いシェアを持つアクセスデバイスに加えて、
治療デバイ
門賞を受賞しました。
この受賞は、
人工血管とステントグラフ
スのフルライン化を進め、
グローバルで事業拡大を図ります。
トを組み合わせた、
ユニークかつイノベーティブな製品である
ニューロバスキュラー領域では、
脳動脈瘤治療用の新形状塞
「Thoraflex Hybrid」
(ソラフレックス ハイブリッド)
の技術が
栓デバイス
「WEB」
を世界で初めて製品化した米国のシークエ
評価されたものです。
本製品の使用により、
従来は2回に分けて
ントメディカル, Inc.を2016年7月に買収しました。
このデバイ
手術が必要であった症例が、
1回の手術で済むようになり、
治
スはすでに欧州などで販売しており、
破裂した瘤の緊急手術や、
療成績の向上と患者さんの負担軽減に貢献しています。
既存の塞栓術では治療が難しいとされる症例でも使用され、
治
療の新たな選択肢として期待されています。
現在米国で治験を
行っており、
最大市場の米国で他社に先駆けて導入を図ること
今後の戦略
で、
ニューロバスキュラー事業のさらなる成長を目指します。
グローバルなブランド力の向上を図り、
利益ある持続的成長で全社を牽引
3. 基盤デバイスでグローバルNo.1の地位を堅守
心臓血管カンパニーは、
世界の心臓血管分野で医療の進化
血管内カテーテル治療で病変部への道筋を作るガイドワイ
に貢献することで、
グローバルなブランド力向上を図り、全社
ヤーやイントロデューサーシースなどのアクセスデバイスは、
の成長を牽引します。
この目標を実現するため、
4つのテーマ
治療のプラットフォーム(基盤)を担うデバイスです。新たな
に取り組みます。
手技の普及などに伴い、今後も持続的な需要の拡大が見込ま
れます。当社はガイドワイヤー、
イントロデューサーシースで
1. グローバル化の加速
世界的に高いシェアを有しており、今後もTRIの普及を推進
2015年度のTIS事業、ニューロバスキュラー事業の売上
高は、米国、中国を中心に海外が牽引し、二桁伸長となりまし
た。今後も両事業を中心に、米国や中国で治療用デバイスの
販売を伸ばし、
グローバルで高い成長を目指します。
収益貢献の大きいUltimasterは、2016年度より市場規模
の大きいフランスでも販売を開始し、国内外で売上を伸ばす
ことで、
カンパニーの収益成長を牽引します。
し、需要の拡大を着実に取り込むことで、
グローバルリーダー
の地位を堅守していきます。
4. 成長を支えるオペレーション能力への投資強化
新製品の開発から市場導入までを支える、
グローバルなオ
ペレーション能力の強化も重要なテーマです。
TISおよびニューロバスキュラー事業では、
米国、
欧州を中
心に治療用デバイスの販売拡大を目指し、
販売やマーケティン
2. 治療用デバイスのポートフォリオ拡充
グとともに、
医療従事者へのトレーニングや臨床試験の支援な
血管内カテーテル治療の中でも、末梢血管、
カテーテルを
どを担う人員を拡充します。
用いたがん治療(インターベンショナル・オンコロジー、以下
開発・生産では、
当カンパニーの中核を担う愛鷹工場のエン
IO)、
そしてニューロバスキュラーの領域は、今後も高い市場
ジニアを100名規模で増員し、
抜本的な強化を図ります。
2015
成長率が見込まれます。
これらの領域で医療現場のニーズを
年度にガイドワイヤーの生産を開始した山口工場では、
年間フ
充たす治療用デバイスの開発を加速し、
アクセスデバイスと
ル稼働を目指すとともに、
さらなる生産性改善に取り組みます。
合わせたトータルな製品ラインアップを実現することで高い
CV事業では、
TCVS社のアナーバー工場で生産・供給の安
成長を実現します。
定化に向けた準備に注力します。
血管事業では中長期的なコス
IOの領域では、2016年1月にオランダのベンチャー企業
ト競争力向上を目指し、
英国からベトナム工場への生産移管を
進めます。
開発、
生産に加えて、
サプライチェーンなどグローバルなオペ
売上高/事業利益率
(億円)
売上高
事業利益率(%)
30
3,000
レーションを担う機能の能力向上に注力し、
医療現場が必要と
する製品を、
より迅速かつ効率的に供給できる体制を強化して
います。
2,000
20
1,000
10
0
2012
2013
2014
2015(年度)
0
脳動脈瘤治療に用いる
新形状塞栓デバイス
「WEB」
「WEB」
を脳動脈瘤内に留置した
イメージ図
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016
22
事業紹介
心臓血管カンパニー
血管を内側から治療するカテーテル治療や
心臓や血管の外科手術で、
先端医療に貢献します。
TIS事業/ニューロバスキュラー事業
バスキュラーインターベンション領域(血管内治療領域)
アクセスデバイス
手首や足の付け根の血管を入口
に、
カテーテルを挿入し病変部ま
での道筋を作るためのデバイス。
画像診断(イメージング)
治療デバイス
心臓や下肢などの詰まった血管を拡げたり、
脳の動脈瘤の破裂
を防ぐなど、
病変部に対する治療を行うためのデバイス。
脳血管(ニューロバスキュラー)
治療前後の血管に、専用のカ
テーテルを通し、血管内壁の
表面や断面を、超音波または
光で観察する。
イントロデューサーシースセット
脳動脈瘤治療用コイル
血流改変ステント
心臓血管(カーディオロジー)
血管内光診断システム
(OFDI)
ガイドワイヤー
薬剤溶出型冠動脈
ステント
(DES)
血管造影用カテーテル
バルーンカテーテル
末梢血管領域(エンドバスキュラー)
橈骨動脈用止血器
末梢血管用ステント
血管内塞栓用コイル
血管内超音波診断システム
(IVUS)
ハートシート®事業
再生医療等製品
2015年に世界初の製造販売承認※を取得した、心筋の再生医療等製
品。重症心不全の患者さんの大腿部から筋肉組織を採取、組織内に含
まれる骨格筋芽細胞を培養してシート状にし、心臓に貼って使用しま
す。薬物や外科手術による回復が難しい症例への新たな治療の選択
肢として期待されています。
※条件及び期限付承認
23
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016
心臓表面に
移植して使用
ヒト
(自己)骨格筋由来細胞シート
CV事業/血管事業
インターベンショナル
オンコロジー領域(がん治療領域)
体外循環関連デバイス
心臓外科手術中に停止させた心臓や肺に代わって血液を全身に循環させ
たり、
血液中の酸素交換を行う装置。
IVR関連製品
肝臓がんの治療法「肝動脈化学塞栓術」
用デバイ
スや、
その他の薬剤投与デバイスなどを展開。
動脈フィルター
内蔵型人工肺
マイクロバルーンカテーテル
人工心肺装置
体外循環装置用
遠心ポンプ駆動装置
肺の代わりに血液中の 心臓の代わりに体内に 血液を循環させる遠心ポ
酸素交換を行います。 血液を循環させます。 ンプを制御します。
人工心肺システムとは?
マイクロカテーテル マイクロガイドワイヤー
心臓手術中に血液を体外へ導き出し、
人工肺で酸素などのガス交換を行い
ます。
そしてポンプで血液を体に戻し、
患者さんの生命維持を行います。
人工肺
動脈
フィルター
人工心肺
装置
人工血管領域
薬剤溶出性ビーズ
大動脈瘤などの破裂を防ぐため、
傷んだ血管の代わりに移植したり、
血管内に
内挿して治療するデバイス。
肝動脈化学塞栓術とは?
大動脈瘤の人工血管置換術、
ステントグラフト内挿術とは?
肝臓のがん細胞へ栄養を送る肝動脈に、
マイク
ロカテーテルという細い管を挿入し、抗がん剤と
詰め物となる塞栓剤を流して閉じ込め、がん細
胞を兵糧攻めにして死滅させる治療法です。
がん細胞
弓部置換用人工血管付き
ステントグラフト
肝臓
注:日本では販売されておりません。
大動脈の一部がこぶのように大きくなる大動脈瘤
は、
進行すると破裂する恐れがあるため、
外科手術
などにより人工血管に置き換えたり、ばね状の金
属(ステント)
を取り付けた人工血管(ステントグラ
フト)
を血管内に内挿し、
破裂を防ぎます。
抗がん剤
人工血管
ステント
グラフト
肝動脈
下行・弓部
大動脈置換
マイクロカテーテル
腹部大動脈瘤
ステントグラフ
ト内挿術
腹部大動脈瘤治療用
ステントグラフト
注:日本では販売されておりません。
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016
24
事業紹介
ホスピタルカンパニー
医療現場の多様なニーズに応える
高付加価値製品の拡大により成長軌道へ
2015年度業績
売上高
事業別売上高(億円)/構成比
1,614億円
アジア他
DM・ヘルスケア
253
16%
196 12%
2015年度
226億円
事業利益※
1,614億円
D&D
※
事業利益率
14%
地域別売上高(億円)/構成比
584
36%
基盤医療器
777
48%
日本
欧州
93 6%
2015年度
1,614億円
1,242
77%
米州
83 5%
※のれん等償却を除く
2015年度の業績
2015年度の主な取り組み
着実に収益改善が進む
国内では高付加価値製品が拡大、
海外では収益改善を推進
2015年度の売上高は、
日本では増収となりましたが、海外
ホスピタルカンパニーでは、
医療現場の安全や効率的な医療、
は事業ポートフォリオの見直しなどにより減収となり、
カンパ
痛みの少ない治療、
早期退院・早期回復の促進など、
患者さんや医
ニー全体ではほぼ前年並みの1,614億円となりました。
療従事者のニーズに応える高付加価値な製品をシステムとして
日本では、閉鎖式輸液システムに加え、腹膜透析や疼痛緩
提案することで、
安定的な成長と収益性の改善を目指しています。
和製品の販売が好調に推移しました。
また、血糖測定システ
日本における主な取り組みとしては、基盤医療器事業にお
ムやインスリンの自己注射に使われるペン型注入器用注射針
いて、ITの活用により薬剤量の誤設定や過剰投与などを防ぐ
などの売上も伸長しました。海外では、
アジアで輸液ポンプ、
輸液ポンプ、
シリンジポンプや、院内感染の予防や接続誤りな
シリンジポンプなどの売上が堅調に推移する一方、欧州、中
どのリスク低減を追求した閉鎖式輸液システム「シュアプラ
南米やアジアの一部を中心に事業ポート
フォリオを見直し、低収益事業の縮小を
進めました。
事業利益は、
国内工場を中心とした継
グAD」
の提案を強化し、
着実に採用が拡大しました。
D&D(ドラッグ&デバイス)事業では、
これまで困難であっ
た、皮内への注射を簡便かつ確実にできることをコンセプト
とした皮内注射デバイス
「イムサイス」の開発を進めました。
続的な原価改善などに加え、
原油安に伴
2015年9月には、
イムサイス皮内注射針が日本での製造販売
う材料価格安も寄与し、
前年度比8.5%増
承認を取得しました。疼痛緩和の領域では、患者さんの痛み
の226億円となりました。
事業利益率も
の軽減への貢献を目指し、
「アセリオ静注液1000mg」
の導入
13%から14%へと1ポイント改善し、
着
実に収益改善が進みました。
を推進しました。
DM・ヘルスケア事業では、
院内で患者さんの血糖値、
体温、
血
圧などの測定データを、
NFC
(近距離無線通信技術)
を使って電
子カルテに取り込めるバイタル測定機器シリーズ
「HRジョイン
ト」
の普及に向けて注力しました。
外来診療時に、
患者さんが自宅
で測定した血糖値や血圧などを確認できる生活習慣データ管理
システム
「スマイルデータビジョン」
も合わせて導入を推進し、
血
ホスピタルカンパニー
プレジデント
羽田野 彰士
25
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016
糖測定システムなど関連機器の販売も着実に伸長しました。
インスリンの自己注射に使用される、
痛みの軽減を追求した
ペン型注入器用注射針
「ナノパス」
は、
2005年の発売から10年
目を迎え、
市場への更なる浸透を図り、
売上も伸長しました。
海外での主な取り組みとしては、
収益性改善を目指し、
欧州、
中南米やアジアの一部を中心に低収益事業の縮小を進めると
の製品を、
病院の基幹ITシステムや電子カルテなどと連携させる
ことで、
医療現場の業務効率と安全性向上を支援していきます。
同時に、
今後も成長が見込まれるプラスチック製のプレフィラブ
疼痛緩和の領域では、
「アセリオ静注液1000mg」
の手術後
ルシリンジなど、
製薬企業向けビジネスの拡大に注力しました。
の定時処方などを通じて、患者さんの痛みの軽減への貢献を
目指します。
今後の戦略
患者さんや医療従事者の多様なニーズに応え、
持続的な収益改善と成長を目指す
2. 海外:事業環境の変化に耐え得る
強い収益体質への転換と拡大
海外では、
欧州、
中南米やアジアの一部を中心に低収益事業の
医療を取り巻く環境は、
先進国では厳しい医療財政に対して
縮小を進めてきました。
為替変動など、
事業環境の変化にも耐え得
医療経済性へのニーズが高まっています。
一方、
新興国では医療
る強い収益体質を実現するため、
今後も収益改善の取り組みを継
インフラの整備とレベルアップに伴い、
引き続き医療需要の拡大
続するとともに、
高付加価値製品に注力し、
事業拡大を目指します。
が見込まれます。
日本では、
高齢者人口の増加により疾病数が増
ITを活用した高機能な輸液ポンプ、
シリンジポンプはアジ
加、
それにより医療・介護費が更に増加するという
「2025年問題」
アを中心に海外でも着実に採用が増えており、今後は他地域
が大きな課題として挙げられています。
この対策として地域医療
での活動も強化し、
着実に販売を伸ばしていきます。
連携の推進や、
病床数の減少など医療制度改革が進められてい
ます。
これにより、
病院のコスト意識も更に高まっており、
急性期
を中心に効率的な医療、
入院期間の短縮が求められています。
3. 製薬企業向けビジネスのグローバル展開の拡大
製薬企業向けのビジネスでは、製薬企業の多様なニーズに
一方、
製薬企業では、
バイオ医薬品の開発を強化しており、
薬剤
応える高付加価値なデバイスの開発・供給拡大を通じて、高
の特性に合わせたデバイスへのニーズが高まっています。
い成長を目指します。
このような事業環境の変化に対し、ホスピタルカンパニー
グローバルでの事業拡大に向けて、開発と生産の機能をグ
では、医療現場における患者さんや医療従事者の多様なニー
ローバルで統合し、
より迅速にニーズに応える体制の構築に
ズを的確に捉え、付加価値の高い製品を提供することで、持
も取り組んでいきます。
続的な収益改善を図りつつ、成長を目指します。具体的には、
以下4つのテーマを掲げて取り組んでいきます。
1. 日本:テルモの強みを活かして成長へとシフト
ホスピタルカンパニーの売上の約8割を占める日本では、
医
4. 成長を支える新製品開発と継続的なコスト改善
今後の成長を支える新製品の開発も重要な課題です。
2016年
度は、
皮内注射デバイス
「イムサイス」
が季節性インフルエンザワク
チンの皮内投与への使用目的で製薬企業向けに販売が実施され
療費増加の抑制が課題である一方、
高齢者人口の増加による医
ます。
今後は他のワクチンへの適用や、
海外への展開も目指します。
療需要の増加という医療ニーズが拡大していきます。
日本にお
外科領域では、
手術後の大きな課題である臓器や組織の癒
ける医療機器のリーディングカンパニーとして、
幅広い製品ライ
着の軽減を目指した、
日本初のスプレー式癒着防止材
「アドス
ンアップを提供できる強みを活かし、
安全・効率、
感染予防、
早期
プレー」
が、
2016年6月に日本での製造販売承認を取得しまし
回復と早期退院、
合併症抑制など、
医療の質と効率を高める製
た。
現在はフィルム貼付式の癒着防止材が多く使われています
品をシステムとして提案し、
成長軌道へのシフトを目指します。
が、
本製品はスプレー式のため、
開腹手術や腹腔鏡手術といっ
重点活動として、閉鎖式輸液システムなど高機能な輸液ラ
た術式を問わず処置部位に簡便にアクセスでき、
目的部位に適
インの導入拡大を推進します。操作手順の統一化によるミス
切な噴霧を行うことができます。
アドスプレーの提供を通じて、
の防止や、
ライン交換作業の効率化、感染リスクの低減など、
手術を受けた患者さんの癒着を起因とした腸閉塞、
不妊症、
慢
様々な付加価値を訴求し、
院内全体への採用拡大を図ります。
性骨盤痛などの合併症リスク低減にも貢献していきます。
また、
輸液ポンプ、
シリンジポンプや血糖計、
血圧計、
体温計など
今後もこのような医療現場に価値あるイノベーションをも
たらす新製品の開発を進めると同時に、
競争力のあるコストの実現にも取り組み
事業利益率
(%)
ます。市場の変化に柔軟に対応できる効
16
率的な生産体制を整備し、持続的な収
15
益改善と成長を目指します。
着実に収益性が改善
14
13
12
~
~
0
2012
2013
2014
2015(年度)
輸液ポンプ・シリンジポンプ
閉鎖式(クローズド)輸液システム
「シュアプラグAD」
(イメージ)
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016
26
事業紹介
ホスピタルカンパニー
病院や自宅での治療に使われる製品で、
安全性と使いやすさを追求しています。
基盤医療器事業
D&D事業
輸液投与システム
ドラッグ&デバイス領域
病棟や集中治療室など、
至るところで行われる点滴。
正しい薬剤を適切な量で投与します。
また、感染や針刺しなどのリスクを低減した、
より安全性の高い投与をシステムで実現
します。
薬と医療機器の技術を組み合わせ、
緊急性の高い医療現場での安全な
薬剤取り扱いを追求しています。
薬剤投与の安全をシステムで実現
輸液ポンプ・シリンジポンプ
クローズド輸液システム
部門ITシステムと接続した投与
データ管理を実現。
使いやすさと安全性を追求し、感染対
策に寄与する輸液システム。
プレフィルドシリンジ製剤
薬剤充填用シリンジ
静脈留置針
針刺し防止機構を搭載。
栄養・医薬品領域
食事の摂取が難しい場合や、
脱水症
状の改善が必要な場合などに栄養
素や準備手順等に工夫を施した輸
液剤や栄養食品を提供しています。
閉鎖式抗がん剤投与システム
がん化学療法に携わる
薬剤師や看護師が安心
して作業やケアに専念で
きるよう、調剤・投与時の
抗がん剤の飛散や漏れ
のリスクを低減します。
高カロリー輸液
閉鎖式抗がん剤投与システム
27
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016
濃厚流動食
(バッグタイプ)
濃厚流動食
(経口タイプ)
DM
(糖尿病)
・ヘルスケア事業
腹膜透析領域
在宅で行う透析療法「腹膜透析
(PD)」を行うためのデバイスや
透析液などを展開しています。
糖尿病治療領域
糖尿病患者さんに、
使い勝手と痛みの軽減を追求したデバイスを提供しています。
血糖測定システム
ペン型注入器用注射針
腹膜透析液
通信機能付き測定機器シリーズ
血糖測定器、血圧計、体温計などに通信機能を搭載。
患者さんの日々のバイタルサインをタイムリーかつ効率的に管理します。
自動腹膜透析装置
疼痛緩和領域
がん治療を支える薬剤を提供し
ています。先発品のほかジェネ
リック医薬品もあり、薬剤費低
減に寄与します。
・血糖測定器
・歩行強度計
・電子血圧計
・体組成計
・電子体温計
・パルスオキシメータ
鎮痛薬
HRジョイントとは、通信機能を持ったテルモの
測定機器と管理ソフトのシリーズ名です。
その他ヘルスケア製品
・女性体温計
・転倒予防商品
・口腔ケア商品
・尿試験紙
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016
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事業紹介
血液システムカンパニー(テルモBCT)
変化する市場環境の中で将来を見据え、
事業の成長と多角化を推進
2015年度業績
売上高
分野別売上高(億円)/構成比
1,050億円
事業利益※
169億円
事業利益率※
地域別売上高(億円)/構成比
細胞処理
アジア他
83 8%
アフェレシス
治療他
203
19%
日本
115
11%
220
21%
2015年度
1,050億円
16%
血液センター
765
73%
2015年度
欧州
1,050億円
258
25%
米州
457
43%
※のれん等償却を除く
ましたが、
アフェレシス治療分野および細胞処理分野の売上
2015年度の業績
新興国、
アフェレシス治療および
細胞処理分野の売上が伸長
に血液センター向け製品の販売も堅調に推移しました。
その
結果、
カンパニー全体の売上高は、前年度比3.9%増の1,050
血液システムカンパニーは、血液センター、
アフェレシス治療・
億円となりました。米国における血液センター向け製品の契
細胞採取、細胞処理という3つの事業分野を持ち、各分野におけ
約価格改定に加えて、米国生産、欧州販売における収益が対
るグローバルリーダーとして、特長ある製品、
サービス、
ソリュー
米ドル・ユーロ安によりマイナスの影響を受けたこともあり、
ションを幅広く提供しています。血液センター分野では、成分採
血、全血採血(手動)、血液の自動製剤化、病原体低減化などの
技術や、
ソフトウェアの提供を通じて、顧客に戦略的なサプライ
チェーンのソリューションを提供し、経済的、臨床的な価値をも
たらしています。
アフェレシス治療・細胞採取分野では、患者さん
に先進的な治療の選択肢を提供していま
す。細胞処理分野では、細胞治療技術や、
手術室およびベッドサイドで行うポイン
ト・オブ・ケア細胞治療向け製品の提供
を通じて、高い効果が期待できる治療方
法への貢献を目指しています。
2015年度の売上高は、
日本では、献血
数の減少傾向が続き、採血時に使用され
る関連製品の需要にも影響があり、減収
となりました。海外では、米国で血液セン
ター 向け製 品 の 契 約 価
格の改定が実施された結
果、売上の伸びが鈍化し
血液システムカンパニー
プレジデント
デビッド・ペレス
29
が伸長するとともに、中国およびアジアなどの新興国を中心
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016
事業利益は前年度比8.6%減の169億円、事業利益率は2ポイ
ント減の16%となりました。
市場環境の変化とその影響
●PBM※により血液の使用量が減少しています。
血小板より
も赤血球に対する影響が大きく、今後も先進国でこの影響
が続くと考えられています。
●競争の激化に加え、
成分採血関連製品や血液バッグなどの
コモディティ化が原因となり、先進国における価格下落が
想定よりも早く起きています。
●成分採血から、
全血採血由来の血液製剤へと移行が進みつ
つあります。
●カンパニーの収益基盤がグローバル化する中で米国にコス
トが集中しており、
継続的な米ドル高が課題となっています。
※PBM (Patient Blood Management: 血液の使用適正化)
医療費の高騰を課題とする多くの先進国において、PBMは重要な取り組
みです。輸血の需要と供給を適切に管理することで、使用する血液の量を
削減します。
2015年度の主な取り組み
収益性を伴う成長の実現
血液センター分野の売上高は、
PBM、
価格下落および全血
成長戦略の基礎となるのが研究開発です。
世界中の顧客の
採血由来の血液製剤へ移行が進む中で、前年並みの水準を
声に耳を傾け、
医療機関と力を合わせて、
新しいイノベーショ
維持しました。
主に北米、
英国、
オーストラリア、
フランスで価
ンの実現や次世代の製品開発を進めていきます。今後は、治
格下落の影響がありましたが、
販売数量増を伴う長期かつ収
療効果と医療経済性の高い治療法の確立を目指します。
また、
益性のある契約の締結を実現しました。
アフェレシス治療・細
研究開発のプロセスを改善することで、
製品化までのリードタ
胞採取分野では、
遠心型血液成分分離装置でCOBE Spectra
イムを短縮し、
市場トレンドと顧客のニーズに沿った次世代の
(コーブ スペクトラ)
からSpectra Optia
(スペクトラ オプティ
ア)
への移行を進め、
売上高は二桁伸長となりました。
細胞処
理分野では、
Quantum
(カンタム)
細胞増殖システムの販売
技術をタイムリーに提供していきます。
将来の成長機会:多角化の推進
が寄与し、
増収となりました。
新興国での売上高は総じて堅調
コアとなる技術や強み、既存市場における事業基盤を最大
に推移し、
中国を含むアジアでは、
3つの事業分野すべてにお
限に活かして多角化戦略を推進し、収益性のある成長の実現
いて二桁伸長となりました。
また、
市場・収益環境が厳しい中
を目指します。新規市場および既存事業に隣接する市場への
で、
革新的な技術・製品開発のための投資も行いました。
参入を進めるとともに、臨床・経済・市場および技術面におけ
る厳密な情勢分析に基づき、提携や流通の形態についても検
討していきます。
今後の戦略
厳しい事業環境が続くことが見込まれますが、
顧客毎に特
化した戦略を推進し、
市場シェアの維持、
収益性のある成長、
グローバル生産戦略
グローバルな戦略に基づき、
世界にある6つの生産工場を
運営しています。
ベトナムに新工場を開設し、
米国、
インド、
北
事業の多角化と生産量の維持を目指します。
アイルランドでは生産設備の拡張を行い、
当社の生産性およ
既存事業の維持・拡大
び効率性は今までになく高まっています。
これらの生産インフ
業界におけるリーダーとしてのポジション、
ブランド、
グロー
バルな事業のインフラストラクチャーは、
市場へのアクセス拡
ラストラクチャーを活用することで、
品質を最大限に高め、
事
業継続性を強化していきます。
大と収益性のある成長を実現する基盤となり、
市場シェアの
維持・拡大を実現するために必要です。
顧客のアンメットニー
すべてのステークホルダーに価値を提供するという確固た
ズを充たす製品ポートフォリオの提供により、
経済的・臨床的
る熱意を持ち、
厳しい事業環境の中でも、
引き続き収益性のあ
価値を生み出し、
顧客との関係を強化していきます。
る安定的な成長を目指します。
長期にわたる持続的成長を遂
げてきた実績と、
イノベーションと多角化による成果をもとに、
今後も着実に戦略的な歩みを続けていきます。
分野別売上高の推移
(億円)
1,000
血液センター
+0.4%
800
600
アフェレシス治療他
400
+14%
細胞処理
2014 2015
2014 2015
200
0
2014 2015
+17%
(年度)
2014年7月に開設したベトナム工場
TERUMO CORPORATION Annual Report 2016
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事業紹介
血液システムカンパニー(テルモBCT)
献血者から提供される血液を、
高品質に効率よく採血・製剤化して輸血治療を支えるとともに、
血液の病気を抱える患者さんの治療に貢献します。
血液センター分野
全血採血領域
献血者から提供される血液を、
安全に採血・保存します。
成分採血領域
成分献血において、効
率よく安全に必要な血
液成分を採取します。
採血
献血ルーム
など
白血球除去フィルター付き血液バッグ
成分採血システム
全血の分離・製剤化
病原体低減化技術
効率的に、均一で高品質な全血の遠心分離を実現し
ます。
血液製剤中にある、検査では発見できない病原体を低
減し、残存白血球を不活化することで、輸血の安全性
向上に貢献する技術です。
血液自動製剤システム
病原体低減化システム
分離
・
製剤化
血液センター
輸血・血液治療を必要とするケース
大量に血液が
失われた場合
事故や手術での
大量出血など
輸血
医療機関
(患者さんへ)
十分に血液が
作れない病気
がん治療の際や
再生不良性貧血など
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TERUMO CORPORATION Annual Report 2016
正常な血液が
作れない病気
白血病や骨髄腫など
アフェレシス治療と細胞採取分野
血液治療
病気の原因となる、血中の不要な成分を血液から除去
したり、治療に用いる成分を取り出すために使用しま
す。血液の病気をかかえる患者さんに新しい治療の選
択肢を提供します。
細胞処理分野
細胞増殖
治療・研究などのために必要な細胞を効率的に培養し
ます。現在は研究機関を中心に使用されています。医
療を根本的に向上させる可能性を持つ細胞療法の開
発を支援します。
細胞増殖システム
遠心型血液成分分離装置
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