A-3 黒毛和種牛枝肉の画像解析による評価

黒毛和種牛枝肉の画像解析による評価
○中武好美・築城努・原好宏 1)
(宮崎県畜産試験場・
1)
西諸県農林振興局)
【目的】
牛枝肉の評価は(社)日本食肉格付協会の格付員の眼によって格付評価が行われており,その評価は枝
肉価格の決定に大きな影響を与えている。なかでも,脂肪交雑は価格決定に最も影響を与える形質の一つ
であるが,より客観的に数値化して評価する方法として,画像解析が研究されている。そこで,本場にお
いても県内における牛枝肉について画像解析による評価を試みた。
【材料および方法】
2007 年 1 月から 2012 年 3 月までに宮崎県内の食肉処理場において屠畜された黒毛和種肥育牛 761 頭(去
勢牛 514 頭,雌牛 247 頭)についてミラー型牛枝肉横断面撮影装置を利用し,牛枝肉左半丸の第 6~7 肋骨
間における胸最長筋断面の撮影を行った。得られた画像を画像解析ソフトウェア BeefAnalyzerⅡを用いて
解析した。
【結果および考察】
画像解析によって得られた胸最長筋面積は 64.45±8.37 cm2 であり,格付による数値と正の相関(r=
0.89)が認められた。また,胸最長筋面積を性別で見ると画像解析値,格付値ともに雌の方が大きかった
(<0.01)。
表 1 および図 1 に画像解析結果および格付結果を示した。画像解析によって得られた胸最長筋における
脂肪交雑面積割合は最小 26.84%,最大 66.43%,平均 48.88±7.10%であった。格付による BMS ナンバー
は 2 から 12 で、平均 6.10±1.86 であった。脂肪交雑面積割合と BMS ナンバーには正の相関(r=0.84)
が認められたものの,同じBMSナンバーにおいても最小値と最大値には約 20%程度のばらつきがあっ
た。画像解析によって脂肪交雑のあらさや細かさを表現する数値が開発されており(口田ら 2002),
BeefAnalyzerⅡの解析によって得られる脂肪交雑粒子のあらさ指数(細線化 10)は去勢 17.73±4.32%,
雌 16.91±4.68%であり,去勢の方が全体的に脂肪交雑があらいと判定された(<0.05)。また,細かい
脂肪交雑粒子がどの程度存在するかを表す細かさ指数は去勢 2.91±0.45 個/cm2,雌 3.09±0.48 個/cm2 であ
り,雌の方が細かい脂肪交雑粒子が多くあった(<0.01)。
また,同一 BMS ナンバーにおいても脂肪交雑面積割合にはばらつきが見られたことから,その要因の一
つとして考えられるあらさについて検討を行った。表 2 に各BMSナンバーにおける脂肪交雑面積割合の
平均値を示した。各BMSナンバーの脂肪交雑面積割合平均値より脂肪交雑面積割合が大きい枝肉につい
て,脂肪交雑面積割合平均値からの差とあらさ指数(細線化 10)との相関関係を調査したところ,有意な
正の相関係数が示された(0.30:P<0.01)。これは,口田ら(2004)と同様の結果であり,これにより,胸
最長筋の全体のあらさが BMS ナンバーの評価を下げる一因となっている可能性が示唆された。その具体的
な例を図 3,4 に示した。図 3,4 は枝肉の胸最長筋画像であり、2つの枝肉のBMSナンバーは同じ 9 で
あるが,画像解析結果は,図 3 の胸最長筋における脂肪交雑面積割合は 49.94%,あらさ指数(細線化 10)
は 14.36%,図 4 の胸最長筋における脂肪交雑面積割合は 66.43%,あらさ指数(細線化 10)は 26.96%で
ある。この例においては脂肪交雑面積割合は図 4 の枝肉の方が明らかに高いものの,全体のあらさがあら
いことによって図 3 の枝肉と同じBMSナンバーに格付された可能性が考えられた。また今後,さらに詳
細な調査を行っていきたいと考える。
表1
画像解析値と格付値
図1
表2
BMSナンバーと脂肪交雑面積割合
BMSナンバーごとの脂肪交雑面積割合
図3
あらさ指数の小さい胸最長筋画像
図4
あらさ指数の大きい胸最長筋画像