A B O O K R E V I E W 教 育 を 読 む ▼ 『星の王子さま』 河合文化教育研究所 主任研究員 サン=テグジュペリ作 内藤濯訳 岩波少年文庫 定価 本体 640 円+税 丹羽健夫 ぼくは飛行士である。あるとき飛 行機が故障して砂漠の真ん中に不時 は酒瓶をいっぱい前にしてだまって なんか書かんよ」 「なぜ? とても美 着した。夜明けに不思議な声を聞い 坐っていました。王子が「なんでの しいんですよ」 「花っていうものは、 た。 「ヒツジの絵をかいて」それが星 むの」と聞くと「忘れたいからさ」 はかないものだからね」 「はかないっ の王子さまだったのだ。 と答えました。 「なにを忘れるの」と て?」 「そのうち消えてなくなるって 星の王子様は惑星 B - 612 から 聞くと「恥ずかしいのを」と答えま いう意味だよ」 やってきたのでした。B - 612 は小 した。 「何が恥かしいの」と聞くと「酒 最後の星は地球でした。キツネに さな惑星で、小さな活火山が二つと、 を呑むのがさ」といいました。 出会いました。キツネが言いました 休火山がひとつと、バラが一輪あり 次は実業屋の星でした。 「五億一百 ました。バラはこまっしゃくれて生 万」 と実業屋がいいました。 「何が」 「星 でもないことだよ。心で見なくちゃ、 意気でしたけれども、本当は王子の の数だよ」 「数えてどうするの」 「星 ものごとはよく見えないってことさ。 ことが好きなのでした。渡り鳥たち を持つんだよ」 「持つとどうするの」 かんじんなことは、目には見えない 「・・秘密をいおうかね。なに、なん がほかの星に移り住むのを見た王子 「管理するんだよ。むずかしい仕事だ んだよ」 「あんたが、あんたのバラの は、バラに複雑な心を残して、ふる がおれはちゃんとした男だからな」 花をとてもたいせつに思っているの さとの星をあとに旅に出ました。 次は点燈夫の星でした。小さな星 はね、そのバラの花のために、時間 最初に行った星は、王様が一人で に街灯が一本あり、点燈夫がいまし を無駄にしたからだよ」 「めんどうみ 住んでいる星でした。家来はいませ た。日暮れに街灯に点燈し、夜明け たあいてには、いつまでも責任があ ん。王様は星の王子がきたので、家 に灯を消すのです。点燈夫がこぼし るんだ。まもらなけりゃならないん 来ができたとたいそう喜びました。 ました「昔はこの星がゆっくり回っ だよ、バラの花との約束をね・・」 そして威厳をみせて威張りました。 ていて、ゆっくり眠れたのにいまじゃ すこし哀しいけれど美しい物語で 次の星はうぬぼれ男の星でした。 スピードが速くなったんで寝る暇も ある。一読をおすすめする。 うぬぼれ男が王子に手をたたけとい ない」といって点けたかと思うとす なお、著者サン=テグジュペリは うので、王子が手をたたくとうぬぼ ぐに消し、また点けたかと思うとす 飛行機乗りであり、第2次世界大戦 れ男は喜び、帽子をとって満足そう ぐに消しをくりかえしていました。 中に 44 歳の年齢で、無理やり頼み にお辞儀をしました。何度もおなじ 次は地理学者の星です。地理学者 込んで空軍に入り、偵察飛行に出て くりかえしで、王子はあきて次の星 「あんたの星のことを話してもらいた 行方不明となる。最近、彼のものら に移りました。 いね」 「火山が3つあります。花もひ しい機体の一部が魚網に掛かったと 今度は呑み助の星でした。呑み助 とつあるんです」 「わたしは花のこと 報道されている。 Kawaijuku Guideline 2013.7・8 85
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