SuperBook:電子ブック革命のための計画(Chris Armstrong, Ray

Tentative translation as of October 31, 2006.
SuperBook:電子ブック革命のための計画(Chris Armstrong, Ray Lonsdale, Dave
Nicholas)
Armstrong, Chris; Lonsdale, Ray; Nicholas Dave. SuperBook: planning for the e-book revolution.
Update 2006.11.
http://www.cliip.org.uk/publications/updatemagazine/archive/archive2006/november/superbooknov06.htm
電子ブックは授業と研究を変貌させると考えられる。[電子ブックの]コレクションは
増加しているが,綿密な利用者研究は何も実施されていない。Chris Armstrong,Ray
Lonsdale および Dave Nicholas は,それを適切に行うことを目的とする,SuperBook
プロジェクトを導入する。
電子ブックは(E-books)は,他の電子情報資源(e-resources)-初期フォーマット
(電子ジャーナル)と最近[のフォーマット](ブログ)の両方-の周囲に鳴り物入りの
宣伝もほとんどなく,突然現場に静かに登場した。電子ブック出版は急速に成長してい
る。国際電子出版フォーラム(International Digital Publishing Forum)1)は,2004 年に
比べて 2005 年に電子ブックの収益が 23%,電子ブックの出版タイトル数が前年比で
20%増加したと報告している。そして,図書館の全セクターからのかなりの注目
(NetLibrary は現在 100,000 タイトル以上を誇り,多数の個別の図書館と並んで英国の
二つの主要なコンソーシアムとライセンス契約を結んでいる)と同様にアグリゲータ・
イニシアティブが,そのフォーマットの実行可能性を立証している。
少ない研究
Google や Amazon によるイニシアティブや無料の電子ブックは,マスコミを賑わし
たが,この 10 年間の明らかな成功にもかかわらず,電子ブックは専門雑誌で論評にほ
とんど上らなかったし,研究助成も比較的少なかった。
それなのに,電子ブックは教師が教授し,学生が勉強するやり方を絶えず変更する潜
在的な力がある。机にしばられた(desk-bound)電子ブックの成功は,iRex や Sony
の新しい電子ペーパー電子ブック・リーダーのような新たな開発によってのみ大きくな
り,それらは市場をユーザに直接近づけ,電子ブックの同化作用の進展を加速するだろ
う。
電子ブックがどこからでもあるいはキャンパス外から直接利用でき,携帯リーダーが
100 点以上の図書を収録できるようになると,大学図書館はそれを管理し,図書コレク
ションを提供する方法を検討する必要があろう。電子ブックのストーリーを推進するユ
ーザであり,初期のフォーマットとは違って,この新種の「超図書(super book)」の
ユーザを観察する人は誰もいないだろう。
例えば,1999 年から 2004 年にかけて,合同情報システム委員会(JISC: Joint
Information Systems Committee)は,英国の高等教育および継続教育(further education)
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における電子情報資源の提供と利用についての主要な調査に資金を助成した。この調査
によって,利用できる精緻な電子情報資源の多くは,ほとんどあるいは全く利用されて
おらず,それは特に学部学生や大学院生に顕著であることがわかった 2)。
主な原因は,宣伝の不足と情報スキル訓練の不足であった。最初と同様に連続する年
に,考えようによっては無理に行われなかった点は,多くの情報資源(例:ゲートウェ
イ,ポータル,主題コレクション,情報資源の集約)は利用者の評価をほとんどあるい
はまったく導入していなかったことであった。-明らかに大変に有益な情報源が利用可
能であれば,それは利用されると単純に前提としていた。
電子ジャーナルは好評
この一般化の例外は電子ジャーナルであり,このような他の資源よりもよく利用され
ることがわかっていた。JISC eLib SuperJournal プロジェクト(1996-98)は利用者の
要求を徹底的に評価し,その結果,継続・高等教育で電子ジャーナルを利用可能にし,
利用者コミュニティに普及する方法を指示した。
コンピュータの能力と記憶容量が増加したので,ある点では,電子ジャーナルの論理
的延長-電子ブック-は,そのような市場調査をしないで出現した。電子テキストアー
カイブ(Gutenberg,Virginia,Oxford 等)が,送付の際に図書のメタファーの試みを
ほとんどしない,著作権が消滅したリポジトリとして始まった一方で,同時に利用でき
るようになりつつあったデータベース(例:1993 年から利用可能となった CD-ROM の
OED)は,図書の代替物として販売されていなかった。1990 年代に,いくつかの会社
は増えつつある電子ブック・コレクションのアグリゲータとなるために電子ジャーナル
のモデルに追随し,電子ブックが現場に到着した。
振り返ってみると,それは,利用可能性のある適切なハードウェアとソフトウェアや
テキストの製品であったように思われる-電子ブックに対する利用者のニーズや利用
者の反応はほとんど考えられていなかった。それは,利用できる可能性があるかもしれ
ないので利用できるようになった。1999 年頃に,北米における電子ブック出版の統合
と JISC のそのフォーマットへの認識の高まりを受けて,英国の大学図書館は電子ブッ
ク・コレクションを確立する価値を認識し始めたが,大半の機関は利用者調査の恩恵を
受けることなくコレクションを収集したように思われる。
初期の電子ブック利用者調査
電子ブックの出版と収集の主要な触媒は,JISC による全国的な電子ブックワーキン
ググループ(e-Books Working Group)の設置であり,それは出版社や大学図書館にそ
のフォーマットについて助言し,収集と研究の両面を促進している。英国では小規模な
研究のコーパスが開発され,コレクションへのニーズ,無料電子ブックの利用可能性,
メタデータ,電子ブックの促進および電子テキストブックの出版についてのプロジェク
トが着手されつつあった 3)。
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他の英国の研究と同様に,これらのプロジェクトは,継続教育及び高等教育の一連の
学問分野にわたって電子ブックの潜在的な力を示し,電子ブックの蔵書管理について図
書館情報サービス担当者にてがかりを与え,出版傾向やビジネスモデルについての理解
を高めた。特に,ネットワーキングと技術上の要求や促進戦略と並んで電子ブックの書
誌コントロールやライセンシング,アーカイビング,アクセスの容易化を巡る課題につ
いて調査が行われた 4),5)。
米国ではいくつかの利用者調査が実施され,すべては単一機関に限られていた。一部
の調査は,一学期にわたるプロジェクトのために作成された電子ブックと一体で付加価
値機能の利用と利用者満足度や電子ブックからの学習と学生による電子ブックの利用
可能性を検証した。だが唯一,コロンビア大学のものが広範で綿密な分析であった。
これは,オンライン図書の利用,さまざまなフォーマットへの利用の反応,出版費用
や図書館で印刷体図書とオンライン図書を維持する費用,学術コミュニケーションの問
題,オンライン図書に対する大学図書館員の反応を調査した。
電子ブックが成功するためには,「使いやすく,学者に価値のあるインターフェース
と機能性を持ち,選ばれた利用者グループに対してオンラインフォーマットに最大の実
用性のある図書書を提供する」必要がある,とまとめている 6)。
今までのところ,利用者調査 7)に取り組んだ英国の研究のみが,視覚面でのレトリッ
クについて電子「非フォーマット」版を超えた,ウェブ上で出版された教科書の利用可
能性を測定し,理解に役立つ表示と全体の外見の程度を究明した。
英国の実証調査の事例
電子ブックの大きな利用調査の必要性は,JISC が助成した多数の研究レポートで明
確に述べられ,提言されていた 8)。さらに,出版社はタイトルの選択や著者や新しい世
代の電子ブックの設計に影響を及ぼすデータの必要性を繰り返し認めていた。
Information Automation Ltd(IAL)の Chris Armstrong とウェールズ大学アベリストウ
ィス校情報研究学科(UWA)の Ray Lonsdale が重要な電子ブックについての全国調査
を最初に遂行した 1998 年以来,両機関はこの分野でかなりの調査を実施してきた。両
機関は蔵書管理の課題についての貧弱な理解と並んで電子ブックの長所と短所につい
て明確な理解がないことを発見した。
カリキュラムで要求される特定のタイトル-したがって教授法を促進し始めたコレ
クション-や反対に利用できる電子ブックのタイトルの e ラーニングへの影響につい
てほとんど考慮されていなかった。利用者のニーズ(あるいは既存の設備の利用),図
書館の要求あるいは出版社の意図を究明するための利用者評価は何も実施されていな
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かった。[電子ブックの]開発と提供は均等ではなく,ほとんどが出版社やアグリゲータ
による電子ブックの利用可能性に完全に依存している。機能性やソフトウェアの性能に
ついての合意がなく,電子ブックや電子ブック・コレクションがどのように利用される
かについての明確な理解もなかった。
SuperBook プロジェクト(SuperBook Project)
2000 年以来,ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)の図書館・文書館・
情報研究学科(Slais)の Dave Nicholas 教授と同僚は,電子ジャーナル分野の利用者研
究に新たな方法を適用し,雑誌利用者の行動と仮想学者の行為についての理解が深まっ
た。
評価は,電子ジャーナルの利用者が残した電子「指紋」の深層分析に基づいている。
2005 年末に,Dave Nicholas 教授,Anthony Watkinson(Slais),Chris Armstrong(IAL)
,
Ray Lonsdale(UWA)およびレスター大学の Barrie Gunter 教授の間で,電子ブック利
用調査 SuperBook プロジェクトで研究方法論を組み合わせる実現可能性について議論
が交わされた。
SuperBook プロジェクトは,英国の継続・高等教育機関の教員と学生による電子ブ
ック利用についての最初の重要な利用調査となろう。
・それは,情報図書館サービス(ILS)と教員に学生の電子ブックの受給や利用に
ついての情報を提供し,適切な選書・収集方針の立案や妥当なコレクションの構
築を可能にする。また,ILS 担当者,電子ブック・コレクションを活用する効果
的な促進活動を確立する上で援助を必要とする
・学生のスキルベースの改善の観点から,ILS 専門家による既存の情報リテラシー・
プログラムを再評価に役立つ
・電子ブックを e ラーニングに統合する際の課題を解明する。既に一部の機関では,
仮想学習環境への電子ブックの統合を開始しつつあり,その結果の有効性と並ん
でこれをどのようにして達成できるかが,教員や ILS 担当者両者の関心事である。
・教員に対して,学術出版に於ける選択と学生利用のための電子ブックの選書の際
に情報を提供する。
・出版産業に対して,電子ブックに対する姿勢について情報を与え,著者と設計に
ついての知識をもたらす。
本調査の中心仮説は,電子ブックが大量に利用できるようになった結果としてまさに
起こりつつあるということである。SuperBook は重要な助成プロジェクトであり,そ
の結果,現実的な提案のためにデータを提供する予備調査をすべきであると感じた。
予備調査は UCL 図書館の利用についての事例研究となるだろう。主目的は,UCL に
電子ブックを配備した本物の調査実験室を設置することである。この実験室から,学者
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や出版社や利用者や図書館員は,検証すべきアイデアに貢献する一方で情報を学習し,
交換することができる。
調査人口は,ある主題グループから選択された UCL の学生,研究者,教員から構成
され,彼らは 3 つの出版社-Oxford Scholarship Online,Wiley Interscience および Taylor
& Francis-が寄付した 3,000 点以上の電子ブックの重要で妥当なコレクションに触れ
るだろう。本調査は,電子ブックの認識やそれに対する態度,学習への電子ブックの介
入の効果,図書の利用,電子ブック・コンテンツへの満足度,これらの介入の結果,利
用者は非利用者と異なった学習パターンを示すかどうかを評価するだろう。起こりうる
介入は,電子ブックの目録作業,図書館員による教員への電子ブックの推薦や学科主任
による学生への推薦,賛同者を務める主題担当図書館員(subject librarian),オンライ
ン読書リストへのリンクの付加,図書館ウェブサイトのオンライン資源領域からのリン
クである。
基本的に,本調査は,学者が提供された電子ブックを好きになるかどうが,また,ど
のように好きになるか,あるいはどのようなインパクト(例えば,他の情報資源の利用
にかんするインパクト)を与えるかを検証するであろう。
第二の目的は,電子ブック・コレクションの維持管理について調査することである。
本調査は,書誌コントロール,選書と収集,ライセンシング,アクセス手段および促進
のような課題を調査することである。
方法論
予備調査は,量的方法と質的方法を組み合わせるだろう。利用者のトランザクション
の深層ログ分析(生のログの分析)は,資源利用のてがかりを提供することができ,質
的調査との組み合わせを用いることによって利用傾向や利用者のニーズの上質の描写
を得ることができる。それは,Ciber の仮想学者研究プログラム(Virtual Scholar
Research Programme)で上手に利用され,現在,米国政府助成の研究プロジェクト
MaxData において OhioLINK で利用できる電子ジャーナルの利用の調査に利用されて
いる。
カリフォルニア州立大学の電子ブックプロジェクト 11)は単純なログ分析(例えば,タ
イトルごとの活動および通常の電子ブックレポート)と単一の電子ブック供給者に対す
る利用者満足度調査を利用した。本研究の目的で,私たちは,SuperJournal プロジェ
クト 12)のログ分析を改良したアプローチを利用するのが適切であろうと考える。
出版社,UCL 図書館,UCL に新たに設置された出版センター,UWA,IAL およびレ
スター大学の代表者から構成される運営委員会が設置され,本プロジェクトを 2006 年
9 月から開始し,1 年続けることが予定された。資金助成は出版社である Emerald や
Wiley からもたらされ,他の機関が今後 6 ヶ月以内に参加することが期待される。追加
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助成は,ウェールズ大学アベリストウィス校からも見込まれている。
SuperJournal プロジェクトの電子ブック版は長年の懸案であった。Justeis は資源を
場当たり的に提供するのは準備不足で,無意味であることを実証した。限られた図書館
資源が,今後数年間に適切で利用可能な(したがって「利用された」)電子ブックに投
資されると仮定すれば,SuperBook プロジェクトの必要性は否定できない。同様に,
継続教育コミュニティ内の電子ブックの著しい受給が e ラーニング,研究および学術出
版の本質に影響を及ぼすパラダイムシフトを導くことを理解するのは重要である。
引用文献
1) Industry eBook Sales Statistics 2005. International Digital Publishing Forum, 2006
(www.idpf.org/doc_library/statistics/2005.htm).
2) Christine Urquhart et al . ‘Uptake and use of electronic information services: trends in
UK higher education from the Justeis project.’ Program 37 (3), 2003, pp. 168-180.
3) Jisc e-Books Working Group: research commissioned by the e-Books Working Group
(www.jisc.ac.uk/index.cfm?name=coll_wg_ebooks_research).[未確認]
4) Chris Armstrong and Ray Lonsdale. ‘Challenges in managing e-books collections in
UK academic libraries.’ Library Collections, Acquisitions, and Technical Services, 29
(1), 2005, pp. 33-50.
5) Goldleaf. Promoting the Uptake of E-Books in Higher and Further Education. Jisc
E-Books Working Group, 2003
(www.jisc.ac.uk/index.cfm?name=coll_ebookstudy2_hefe).[未確認]
6) Mary Summerfield. Online Books: what roles will they fill for users of the academic l
ibrary? Columbia University Libraries, July/August 2001.
7) M. Landoni, R. Wilson and F. Gibb. ‘Looking for guidelines for the production of
electronic textbooks.’ Online Information Review 25 (3), 2001, pp. 181-195.
8) Chris Armstrong and Ray Lonsdale. The e-Book Mapping Exercise. Jisc e-Books
Working Group, 2003
(www.jisc.ac.uk/index.cfm?name=coll_ebookstudy1_emapping).[未確認]
9) D. Nicholas et al. ‘The big deal: ten years on.’ Learned Information 18(4) October
2005, pp. 251-257.
10) D. Nicholas, P. Huntington and A. Watkinson. ‘Scholarly journal usage: the results of
deep log analysis.’ Journal of Documentation 61(2), 2005, pp. 248-280.
11) CSU e-Book Pilot Project Final Report. The California State University, 2002
(http://seir.calstate.edu/ebook/index.shtml).
12) Ken Eason, Sue Richardson and Liangzhi Yu. ‘Patterns of use of electronic
journals.’ Journal of Documentation 56 (5), 2000, pp. 477-504.
著者
Chris Armstrong は,図書館情報管理分野のコンサルタント,調査及び研修会社
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Information Automation Ltd の代表取締役である。
Ray Lonsdale は,ウェールズ大学アベリストウィス校情報研究学科の講師であり,JISC
の電子ブックワーキンググループの委員である。
David Nicholas 教授は,ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジの出版センター長な
らびに図書館・文書館・情報研究学科長および図書館情報研究の教授である。
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