美馬市美馬町の植物

阿波学会紀要
2009.7
第55号(pp.33-43)
美馬市美馬町の植物
*1
木下
覺
成田
愛治
茨木
*2
靖
*3
植北ちず子
片山
*4
泰雄
小松
*5
研一
*6
佐治まゆみ
*7
要旨:本町の植物相を調査した結果,標高の低い暖温帯域では,吉野川河畔の水害防備竹林の林内や林縁などで多く
の希少植物を確認した。また,冷温帯域の竜王山の山頂付近では,これまで未確認であった指標種のブナを確認する
とともに,その周辺部を含めて多くの希少種の生育を確認した。中間温帯域の特徴をもつ三頭山の周辺はアベマキ,
コナラなどの二次林が多く,部分的にアカマツ林も見られた。山地の大部分の面積を占めるスギ,ヒノキなどの人工
林の林床には,シダ植物も豊富であることが分かった。
キーワード:垂直分布,冷温帯域,シダ植物,希少植物,水害防備竹林,外来種
川,鍋倉谷川,入倉谷川,神場谷川などの大小の河
1.はじめに
川が,直接或いは一部は合流して吉野川に流入して
本地域は古い時代から現在まで,積極的に開発が
いる。平地は少なく,吉野川流域の河岸段丘や支川
進められてきたために自然林は少ない。しかし,冷
の扇状地,山麓や中腹の緩傾斜地などが,耕作地や
温帯林や中間温帯林の区域に属する北部山地の竜王
住宅地として利用されている。
山,三頭山等には特色ある植物が記録されている。
山地の森林の大部分はスギ,ヒノキの植林で,一
また,吉野川河畔には水害防備竹林が広範囲に残さ
部シイタケ栽培用や薪炭材のクヌギなどの人工林も
れていて,その林内にも多くの希少種が知られてい
見られる。自然林やそれに近い樹林は社寺林や植林
る。今回の調査では,これらの地域を中心に植物調
に適さない谷筋や崖地などにわずかに残るのみであ
査を行ったので,その結果を報告する。
る。
地質は和泉帯で,吉野川流域の平地や扇状地は沖
2.自然環境の概要
積層であるが,他地域の基盤岩は大部分が砂岩,泥
美馬市美馬町は吉野川北岸に位置し,東は脇町,
西は三好市三野町,北は香川県に隣接する面積
岩の互層より成っている(岩崎,1990)。
気候はメッシュ気候値でみると,年平均気温は
46.18km の地域である。
15.3℃,年降水量は1,472mm(徳島地方気象台,
2
本町の南端を西から東に向って吉野川が流れ,
1991)で,温暖で雨の少ない地域である。
中・北部は讃岐山脈の山間地となり,最北部の竜王
山(1,059.9m)を最高峰に海抜1,000m前後の山々が
香川県との分水嶺をなしている。
植物の生育は,土壌,地形,気候などによって影
讃岐山脈に源を発して西から,高瀬谷川,中野谷
*1
*6
鳴門市北灘町粟田
牟岐町灘
*7
*2 徳島県立博物館
海陽町大里
3.垂直分布からみた植物相
*3
響される。標高の違いは温度差となって表れるため,
那賀町西納
*4
神山町神領
*5
徳島市新浜町
33
美馬市美馬町の植物/植物相班
香川県
8
17 16
13
N
19
12
11
10
美馬市脇町
14
7
9
15
三
好
市
4
18
6
2
5
1
3
0
つるぎ町
2km
図1
調査場所
植物相にも違いが見られ,垂直分布として表される。
徳島県では標高約50〜500mまでは,シイ,カシな
4.調査結果
どが生育する暖温帯,約500〜1,000m付近までがク
調査した中から,その地域を特徴づける場所や希
リなどが生育する中間温帯,約1,000〜1,600m付近ま
少種が多く生育している場所などについて報告する
ではブナが生育する冷温帯,1,700m以上は亜寒帯
と以下のとおりである。
(寒温帯)として区分される(阿部,1990)。
(1)吉野川河畔林・水害防備竹林
本町の最も標高の低い低地は,美馬中央橋付近の
吉野川河畔の高水敷には,ヤナギ林や水害防備竹
吉野川河畔で標高約49m,最も高所は竜王山山頂の
林などの河畔林が残っていて,その林内や林縁には
標高1,059.9mである。今回は,植物の生育環境とし
希少植物が多く生育していた。
て特色のある所や代表的な場所を選んで調査した。
①美馬橋下の吉野川河畔「調査地①」
調査場所は図1のとおりである。
河畔林はアカメヤナギ,ヨシノヤナギ,オオタチ
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ヤナギなどのヤナギ類が川岸に近い部分に生育し,
マオ,ビナンカズラ,イヌマキ,チヂミザサ,リョ
やや離れて竹林に移行する。その林床や林縁に希少
ウメンシダ,ヤブツバキ,クサイチゴ,マルバスミ
種のオオカラスウリをはじめ次の植物の生育を確認
レ,ヒメヒオウギズイセン,イノコズチ,ウバユリ,
した。
イワガネソウ,ヤブラン,シコクアザミ,ヤマブキ,
ブタクサ,シマスズメノヒエ,ヤハズソウ,ブタ
ヤブマオ,ヤブミョウガ,キチジョウソウ,ヤマア
ナ,エノキグサ,イヌコウジュ,シナダレスズメガ
イ,ドクダミ,カテンソウ,コミヤマミズ,オオカ
ヤ,ホソイ,ヤブマメ,ヒメモロコシ,セイタカア
ナワラビ,キヅタ,タラノキ,クリハラン,オニカ
ワダチソウ,メドハギ,ヨシ,ホソムギ,チガヤ,
ナワラビ,ヒヨドリバナ,ヒメジョオン,オオブタ
ツユクサ,アメリカネナシカズラ,センニンソウ,
クサ,スズメウリ,オオニシキソウ,ブタクサ,ヒ
カワラマツバ,カモジグサ,ススキ,ガガイモ,メ
メジソ,イヌコウジュ,シャガ,ガガイモ,ノブド
ヒシバ,ヨモギ,セイバンモロコシ,ニガカシュウ,
ウ,テリミノイヌホオズキ。
イノコズチ,オオユウガギク,コセンダングサ,ク
ワ,アキニレ,シロバナサクラタデ,ハリエンジュ,
クサマオ,ウシノシッペイ,カナムグラ,ヘクソカ
③青石橋上流の竹林及びその周辺「調査地③」
(2008.7.1)
前記場所に続く林分で,一見同じように見えるが,
ズラ,オニグルミ,クサネム,アメリカセンダング
林内に生育している植物から特殊な環境であること
サ,ママコノシリヌグイ,オヒシバ,カヤツリグサ,
が推測される。例えば県内では,標高の高い山地に
タマガヤツリ,コゴメガヤツリ,キンエノコロ,ア
しか見られないキツリフネが生育しているかと思う
シボソ,アレチウリ,センダン,ヌルデ,マメグン
と,沿海地に生育するウラシマソウが生育している。
バイナズナ,クズ,イタドリ,マダケ,オヤブジラ
ミ,シラスゲ,マメアサガオ,エノキ,ナンバンカ
ラムシ,ムクノキ,ケアリタソウ,ニワホコリ,ネ
ムノキ,キシュウスズメノヒエ,ツボクサ,タチヤ
ナギ,イボタノキ,イヌビエ,オオカラスウリ(♀),
ミチヤナギ,オオオナモミ,イヌタデ,オオバコ,
ヒメジョオン,ヤブガラシ,ナワシロイチゴ,アキ
ノエノコログサ,テリミノイヌホオズキ,マルバヤ
ナギ,メマツヨイグサ,オオタチヤナギ,ヨシノヤ
ナギ,ミゾソバ,ミツバ,クサヨシ,ヒヨドリジョ
ウゴ,メリケンガヤツリ,タチスズメノヒエ,ツル
ヨシ,ホシアサガオ,トキワハゼ,アカメガシワ,
オオニシキソウ,アキノノゲシ,ビロードモウズイ
カ,カラスノゴマ,オオイタチシダ,ヨウシュヤマ
ゴボウ,クリ,アマチャヅル,エビヅル,ベニバナ
ボロギク,ノブドウ,スズメウリ。
②青石橋付近の竹林「調査地②」
この付近から上流部にかけては,竹林の一部は工
事によって失われた所もあるが,まだ広い面積が残
っている。その林内や林縁には次のような植物が生
育していた。
ミョウガ,ホシダ,クズ,ヤマミズ,コバノカナ
ワラビ,アケビ,ホドイモ,ホウチャクソウ,クサ
図2
マイヅルテンナンショウ
35
美馬市美馬町の植物/植物相班
特に,県内では絶滅したとされていたマイヅルテン
アカメガシワ,ヒロハホウキギク,ツルウメモドキ,
ナンショウ(図2)が確認されたことは特記すべき
アラカシ。
ことである。その他,アキザキヤツシロラン,ツチ
(2)溜め池・水田・畑地などの耕作地の植物
アケビ,エビネなどの希少種が多く生育し,豊かな
滝ノ宮の潅漑用ため池には,クロモ,エビモ,ヒル
自然生態系が保たれた貴重な竹林であることが分か
ムシロなどの水生植物を確認した。また,吉野川沿い
った。希少種を含めて次の植物を確認した。
の水田や休耕地などには,コイヌガラシ,コギシギシ
ブタクサ,オオイヌタデ,シロザ,コマツヨイグ
などの希少種やウスジロノゲシなどの珍しい外来種
サ,ネズミムギ,ヤハズソウ,ヨモギ,オオアレチ
などの水田雑草や路傍の雑草が生育していた。その
ノギク,カナムグラ,イノコズチ,ムカゴイラクサ,
場所と確認植物の一例をあげると次のとおりである。
チヂミザサ,チャノキ,アマチャヅル,ヤマアイ,
①美馬中央橋西の畑地,空き地などの植物「調査
ホシダ,ミョウガ,イタドリ,クサイチゴ,ヤブラ
地④」(2008.6.22)
ン,ホウチャクソウ,キヅタ,ヤブガラシ,クサマ
コイヌガラシ,シロザ,アメリカタカサブロウ,コ
オ,ケヤマウコギ(オニウコギ),ウバユリ,シャ
センダングサ,コアカザ,イヌビエ,サナエタデ,ス
ガ,イヌビワ,キチジョウソウ,マイヅルテンナン
ベリヒユ,オヒシバ,ハルノノゲシ,スギナ,アオ
ショウ,ナンゴクアオキ,クサギ,ヤブミョウガ,
ゲイトウ,ウシハコベ,スカシタゴボウ,マメグン
ドクダミ,ヤブマオ,キツリフネ,ビナンカズラ,
バイナズナ,イヌムギ,ヒメジョオン,シロツメク
イワガネソウ,ヤツデ,ヒメヒオウギズイセン,ヤ
サ,アキノノゲシ,キツネノボタン,ヒルガオ,ア
ブニンジン,ミヤコアオイ,エビネ,オオサンショ
メリカフウロ,ネズミムギ,ホソムギ,キュウリグ
ウソウ,ヤブニッケイ,ムクノキ,ナツヅタ,オオ
サ,ハマスゲ,スカシタゴボウ,アメリカイヌホオ
カナワラビ,ミズヒキ,ホソバカナワラビ,タラノ
ズキ,コギシギシ,オオイヌホオズキ。「空き地」:
キ,ナンカイギボウシ,ナンテン,ミヤマフユイチ
セイタカアワダチソウ,ナギナタガヤ,ムラサキナ
ゴ,リョウメンシダ,オオハンゲ,クリハラン,ヌ
ギナタガヤ,タチカモジグサ,ヨモギ,ネズミムギ,
リワラビ,イボタノキ,ヤマグワ,ノイバラ,アケ
アカザ,ブタクサ,オオオナモミ,ホソイ,アメリ
ビ,ノブドウ,シコクアザミ,ヌスビトハギ,フジ,
カセンダングサ,ガガイモ,オオバコ,クズ,アレ
セントウソウ,ヤマウルシ,アオゲイトウ,ヨウシ
チギシギシ,ガマ,クサヨシ,アゼナルコ,オオス
ュヤマゴボウ,ツユクサ,コアカザ,シロツメクサ,
ズメノカタビラ,イボクサ,ギシギシ,ヨウシュヤ
アキノエノコログサ,クズ,メマツヨイグサ,ツル
マゴボウ,ヤブガラシ,オオイヌタデ,シロツメク
マメ,オオブタクサ,キクイモ,ヤブマメ,ヒメジ
サ,アキノエノコログサ,クサネム,ツルマメ,ヒ
ョオン,カキドオシ,ヌルデ,クワ,ヤマハゼ,セ
メコウガイゼキショウ,ヒエガエリ,ヤブマメ,シ
リ,ギシギシ,オオクサキビ,コゴメガヤツリ,ヒ
ロザ,コメツブツメクサ,ネムノキ,アレチノギク。
メジソ,アメリカセンダングサ,イヌビエ,コミヤ
マミズ,シロダモ,ニワゼキショウ,タケトアゼナ,
シナダレスズメガヤ,アメリカアゼナ,アメリカネ
②美馬町大宮西,吉野川河畔の休耕田「調査地⑤」
(2008.7.1)
ホナガイヌビユ,カヤツリグサ,コゴメガヤツリ,
ナシカズラ,ホソバヒメミソハギ,アゼナ,ホソイ,
スベリヒユ,タカサブロウ,アキノエノコログサ,
クサイ,タマガヤツリ,クサヨシ,クサネム,ツル
イチビ,イヌビエ,セイタカアワダチソウ,オオア
ヨシ,アレチギシギシ,ナガバギシギシ,ヒメコバ
レチノギク,ウスジロノゲシ,アメリカセンダング
ンソウ,ナワシログミ,キキョウソウ,イヌガラシ,
サ,アオゲイトウ,トキンソウ,アメリカアゼナ,
アカザ,ケアリタソウ,イチビ,ミゾソバ,メハジ
イヌタデ,ヒメジョオン,クワ,イヌガラシ,トウ
キ,エゴマ,ムシトリナデシコ,チチコグサモドキ,
バナ,オオイヌノフグリ,ノチドメ,オオイヌホオ
タカサブロウ,ハキダメギク,アキノノゲシ,ミツ
ズキ,シロザ,コツブキンエノコロ,ヨウシュヤマ
バ,カキノキ,シキミ,アレチウリ,ヒメコウゾ,
ゴボウ,ベニバナボロギク,ハナイバナ,コセンダ
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阿波学会紀要
ングサ,ナズナ,オッタチカタバミ,ビロードエノ
キグサ,キツネノマゴ,アゼナ,アゼガヤ,マルバ
アメリカアサガオ,カゴノキ。
②竜王山
第55号(pp.33-43)
2009.7
野外センター下のヒノキ植林地「調査
地⑧」(2008.7.27)
タンナサワフタギ,アオハダ,ムラサキシキブ,
③美馬市露口水田雑草「調査地⑥」(2008.7.1)
イヌツゲ,コシアブラ,ノブドウ,ノリウツギ,チ
タケトアゼナ,アオウキクサ,ミズハコベ,タカ
ヂミザサ,ナガバモミジイチゴ,ツリバナ,サンカ
サブロウ,スズメノトウガラシ,タマガヤツリ,ミ
クヅル,ヤマウグイスカグラ,クマイチゴ,ケクロ
ゾカクシ,アゼナ,ホソバヒメミソハギ,ホタルイ,
モジ,マルバフユイチゴ,ヤブハギ,ヤマシグレ,
コナギ,カズノコグサ,イヌビエ,ウキクサ,コウ
タケニグサ,クサイチゴ,ツルニンジン,ミズキ,
キクサ,イボクサ,アゼムシロ,ヤナギモ(水路),
リョウブ,ヤマグワ,コツクバネウツギ,サルトリ
エビモ(水路),ミゾソバ,シロバナサクラタデ,
イバラ,ヒメホウチャクソウ,ヤマウルシ,ハリガ
ボントクタデ,クログワイ,オモダカ。
ネワラビ,フサザクラ,タラノキ,クサマオ,ヒロ
(3)植林地の植物
ハハナイカダ,ハナイカダ,クリ,イワガラミ,シ
人工林の大部分がヒノキ,スギの植林で,垂直分
ハイスミレ,シシガシラ,カクミノスノキ,スノキ,
布の区分では暖温帯,中間温帯の区域にあたる。谷
コハウチワカエデ,ベニシダ,サジガンクビソウ,
沿いの湿潤な土壌はスギの植林,やや乾く場所はヒ
ホドイモ,ヤマイヌワラビ,コナスビ,コバノガマ
ノキ植林地として利用されている。その林床には多
ズミ,ヤブウツギ,コナラ,ヤマムグラ,ヤマノイ
くのシダ植物が見られた。特徴的な場所の例をあげ
モ,ヒメシラスゲ,サルナシ,オンツツジ,ミゾシ
ると次のとおりである。
ダ,クマシデ,ゼンマイ,ウワミズザクラ,スイカ
①三頭里山の森下のスギ植林地「調査地⑦」
Alt.630m(2008.7.27)
ヤマイヌワラビ,カラクサイヌワラビ,ハナイカ
ズラ,キクバドコロ,カラクサイヌワラビ,クサア
ジサイ,アカソ,クサコアカソ,カマツカ,シュン
ジュギク,ノササゲ,ヌスビトハギ,エノキ,ツヤ
ダ,アカソ,メヤブマオ,セイタカシケシダ,ヌス
ナシイノデ,サカゲイノデ,イノデモドキ,ワラビ,
ビトハギ,チャノキ,ドクダミ,ヒカゲイノコズチ,
フタリシズカ,サンショウ,トウバナ,アキノタム
タンナサワフタギ,イタドリ,クサイチゴ,チヂミ
ラソウ,オカタツナミソウ,ゲジゲジシダ,オクマ
ザサ,アオテンナンショウ,カキノキ,ヤマウルシ,
ワラビ,ヤマトキホコリ,サワギク,コマユミ,オ
フタリシズカ,ニワトコ,カタイノデ,サイゴクイ
オコマユミ,シコクアザミ,ミツバアケビ,ヤマア
ノデ,イノデモドキ,ミズタマソウ,イノデ,フキ,
ジサイ,ヒヨドリバナ,フキ,キヨタキシダ,ウツ
ベニシダ,リョウメンシダ,ツヤナシイノデ,ヤブ
ギ,セイタカシケシダ,ソヨゴ,ハリギリ,フモト
ソテツ,ミズヒキ,ハナイカダ,ホドイモ,ミゾソ
シダ,ヤマツツジ,トガリバイヌワラビ,キヨスミ
バ,クサギ,イワガラミ,ホクチャクソウ,タカネ
ヒメワラビ,ウリハダカエデ,コバノイシカグマ,
ハンショウヅル,アカショウマ,アキノタムラソウ,
アオダモ,アオツヅラフジ,クマヤナギ,シナサル
ウバユリ,ケクロモジ,ウマノミツバ,イタヤカエ
ナシ(キーウィ),オニノヤガラ(図3),オオカモ
デ,サワギク,モウソウチク,カナクギノキ,コア
メヅル,キバナアキギリ,ボタンヅル,オニドコロ。
カソ,ハチク,タラノキ,ヤダケ,ヒメシラスゲ,
(4)中間温帯域の植物
オニドコロ,クサイチゴ,ウワミズザクラ,イワガ
竜王山・三頭山にはアカマツ林,シデ林,アベマ
ネゼンマイ,ミツバアケビ,シコクアザミ,ヒイラ
キ林などが残っていて,かつての里山の景観ととも
ギ,イヌツゲ,トチバニンジン,ムラサキニガナ,
に,その林内や林縁には希少植物も多く見られた。
ヒサカキ,ヤマヤブソテツ(包膜が黒),ツルウメ
特徴的な場所は次のとおりである。
モドキ,オモト,カエデドコロ,ウリカエデ,ネム
①三頭里山の森「調査地⑨」Alt.620m(2008.7.20)
ノキ,コツクバネウツギ,ヤブコウジ,トウゲシバ,
高木層:コナラ(優占),ウワミズザクラ,ホウ
シロヨメナ,シオデ,ウツギ,ケヤキ,イヌワラビ。
ノキ,アベマキ,アカマツ,ヤマナラシ,ヤマザク
37
美馬市美馬町の植物/植物相班
ラ(268cm)。亜高木層:ヤマフジ,コナラ,アカ
キ。草本層:イタドリ,ヒヨドリバナ,ススキ,コ
シデ,ヒノキ,リョウブ,クリ,ホウノキ,ウラジ
ナラ,アカメガシワ,フキ,アマヅル,クリ,チヂ
ロノキ,カナクギノキ。低木層:ミヤマガマズミ,
ミザサ,シロヨメナ,ワラビ,シシガシラ,コウヤ
オンツツジ,オオコマユミ,ダンコウバイ,クリ,
ボウキ,ツルリンドウ,ナツハゼ,サルトリイバラ,
ヤマウルシ,ツクバネソウ,カマツカ,アカシデ,
ヤブイバラ,ウワミズザクラ。
コバノミツバツツジ,ナツハゼ,コシアブラ,ソヨ
③三頭越付近の樹林「調査地⑪」(2008.8.5)
ゴ,ヤマウルシ,ヤマウグイスカグラ,コバノガマ
スギ植林地とそれに隣接する二次林の林床には希
ズミ,ウラジロノキ,オンツツジ,ツリバナ,タン
少種のカシワバハグマやエビネなどの他,多くのシ
ナサワフタギ,イヌツゲ,アセビ,ネジキ,ケクロ
ダ植物が生育していて,次の様な植物が豊富に見ら
モジ,ヤマコウバシ,ウワミズザクラ,ガマズミ,
れた。
アオハダ,コツクバネウツギ,イヌシデ,スノキ,
スギ(植林),エゴノキ,アベマキ,イヌシデ,
ヤブムラサキ,クマイチゴ,ノブドウ,シロバナウ
クリ,ヒノキ,コシアブラ,ミズキ,コバンノキ,
ンゼンツツジ。草本層:タンナサワフタギ,コウヤ
ケクロモジ,カナクギノキ,タカノツメ,サンカク
ボウキ,コナラ,アオテンナンショウ,ヒノキ,カ
ヅル,ハナイカダ,ウワミズザクラ,イヌツゲ,オ
ヤ,コナラ,ウリカエデ,ゼンマイ,シシガシラ,
オモミジ,ヤマグワ,エンコウカエデ,ナガバモミ
ヘクソカズラ,ノガリヤス,アキノキリンソウ,ハ
ジイチゴ,ヤブムラサキ,ホドイモ,クマノミズキ,
ナイカダ,サジガンクビソウ,ツリバナ,ヤブコウ
ツルウメモドキ,キヨスミヒメワラビ,タラノキ,
ジ,ヒメキンミズヒキ,チヂミザサ,ミツバアケビ,
ツルリンドウ,ゼンマイ,アオテンナンショウ,ナ
ハネミイヌエンジュ,クモキリソウ,ノグルミ,ケ
ツヅタ,ヤマウルシ,ベニシダ,イワガラミ,ミツ
マルバスミレ,オオカモメヅル,シラヤマギク,シ
バアケビ,ヤマイヌワラビ,カラクサイヌワラビ,
ロヨメナ,ミゾシダ,アオスゲ,キヅタ,アキノキ
ハリギリ,ヒロハイヌワラビ,アキノタムラソウ,
リンソウ,エンコウカエデ,ヤブウツギ,ヒメホウ
サルトリイバラ,ホウチャクソウ,オカトラノオ,
チャクソウ,フタリシズカ,ヤマナラシ,アカショ
ヒサカキ,カマツカ,コハウチワカエデ,コバノガ
ウマ,イタドリ,フキ,ヤマノイモ,カラスザンシ
マズミ,ヒメシラスゲ,ヤブコウジ,ノササゲ,イ
ョウ,オカトラノオ,オトコエシ,ヤマツツジ,オ
イギリ,シハイスミレ,タンナサワフタギ,イタド
ニドコロ,サルトリイバラ。
リ,サルナシ,シシガシラ,ヤワラシダ,マツブサ,
②三頭山分岐〜モーターランド途中のアカマツ林
「調査地⑩」Alt.740m(2008.7.20)
ヤマジノホトトギス,キヨタキシダ,クサコアカソ,
トチバニンジン,ツルアジサイ,コバノガマズミ,
標高約500〜800mに位置するこの付近の道路の沿
イノコズチ,コウヤボウキ,シロヨメナ,ミゾシダ,
線にはアカマツ林が残っている。その樹林の一部を
モミジカラスウリ,ミズタマソウ,ムラサキニガナ,
調べると,組成は次のようであった。
イノデ,フタリシズカ,ヤマホロシ,ツリバナ,サ
高木層:アカマツ(優占),アベマキ,クリ,コ
ルナシ,カシワバハグマ,コチヂミザサ,オトコエ
ナラ。亜高木層:クマノミズキ,ミツバアケビ,コ
シ,ヤマニガナ,ドクダミ,ウラジロノキ,ヤブハ
ナラ,サルナシ。低木層:リョウブ,クマノミズキ,
ギ,ヤブツバキ,クマワラビ,ヤマウグイスカグラ,
スギ,ヤマウルシ,ヒサカキ,ダンコウバイ,エビ
ヤマアジサイ,ヤブレガサ,ヤマノイモ,アサダ,
ガライチゴ,エゴノキ,サルナシ,ネムノキ,クマ
ミヤマクマワラビ,ノリウツギ,トリガタハンショ
イチゴ,カナクギノキ,ヤマヤナギ,ウツギ,フサ
ウヅル,ナツノハナワラビ,イボタノキ,タンナト
ザクラ,ノリウツギ,ヒノキ,ソヨゴ,ヤマウグイ
リカブト,アカマツ,ハリギリ。
スカグラ,ヌルデ,アカシデ,ミツバアケビ,ケク
ロモジ,コバノガマズミ,ヤブムラサキ,ウラジロ
ノキ,ケヤキ,コツクバネウツギ,ネジキ,タラノ
38
④美馬市美馬町三頭越〜寒風越「調査地⑫」
(2008.8.24)
三頭越の石仏のあるところから車道までの区間は
阿波学会紀要
2009.7
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比較的なだらかな傾斜地が続き,スギ,ヒノキの植
ヌワラビ,ホソバイヌワラビ,トゲヤマイヌワラビ,
林地の林床にヤマイヌワラビ,ヒロハイヌワラビ,
サイコクイノデ,キヨスミヒメワラビ,シシガシラ,
カラクサイヌワラビ,ホソバイヌワラビなどのシダ
トウゲシバ,ヤワラシダ,キヨタキシダ,ゼンマイ,
植物が多く生育していた。また,寒風山に向かう尾
ミゾシダ,イノデ,クマワラビ,ミヤマクマワラビ,
根道も,ほとんどが,アベマキ,イヌシデ,アカシ
ハリガネワラビ,ナンゴクナライシダ,ミツイシイ
デ,コナラなどの二次林とスギ,ヒノキの植林地で,
ノデ,キジノオシダ,ハクモウイノデ,オオカラク
林床には所々にオオダイトウヒレン,エビネ,ツチ
サイヌワラビ,ヤマヒロハイヌワラビ,シイバサト
アケビなどの希少種が見られた。しかし,大部分は
メシダ,サキモリイヌワラビ(徳島県植物誌未記
よく似た植生であった。寒風越の稜線では次のよう
録:県内2例目),ニセシイバサトメシダ(県内初
な植物を確認した。
記録),ケヤマヒロハイヌワラビ(県内初記録)。
ヒノキ(植栽),スギ(植栽),イヌツゲ,オカト
ラノオ,コツクバネウツギ,チヂミザサ,ハリギリ,
コシアブラ,アキノタムラソウ,イタドリ,ナツハ
ゼ,イチヤクソウ,ケクロモジ,ナガバハエドクソ
ウ,シコクスミレ,コバノガマズミ,シラキ,ナワ
⑤竜王山の途中のコナラ二次林「調査地⑬」
Alt.790m(2008.7.30)
二次林はアベマキの優占する場所が多いが,次の
ようなコナラが優占する所も見られた。
高木層:コナラ(優占),ヤマハンノキ,アベマ
シログミ,アベマキ,ノグルミ,ケヤキ,アカシデ,
キ,ヤマザクラ,スギ,コシアブラ。亜高木層:リ
ウリカエデ,オンツツジ,ヤマボウシ,シラヤマギ
ョウブ,アカシデ,カナクギノキ,イヌシデ。低木
ク,ゼンマイ,ツクバネウツギ,ソヨゴ,ウラジロ
層:アカシデ,イヌシデ,ウラジロノキ,ツリバナ,
ノキ,ヤマウグイスカグラ,コハウチワカエデ,ヤ
ヤマウグイスカグラ,ヤマウルシ,コハウチワカエ
マツツジ,ヒメヤブラン,ウリハダカエデ,ケスゲ,
デ,ヤマボウシ,ヒサカキ,コバノミツバツツジ,
エビネ(約30株),トチバニンジン,ミツバアケビ,
シロバナウンゼンツツジ,エンコウカエデ,ダンコ
ヤマグワ,サルトリイバラ,ツリバナ,ヒロハイヌ
ウバイ,コシアブラ,ヒノキ,マユミ,スギ,ソヨ
ワラビ,オオダイトウヒレン,シコクアザミ,モミ
ゴ,コバノガマズミ,コツクバネウツギ,オンツツ
ジガサ,フタリシズカ,タンナトリカブト,ナルコ
ジ,ケカマツカ,カマツカ,アセビ,リョウブ,ヤ
ユリ,ホウチャクソウ,ミヤマナルコユリ,イヌザ
マウルシ,ヤマグワ,ヤブニッケイ,イヌツゲ,ケ
ンショウ,イヌガヤ,カヤ,ヤブレガサ,オオコマ
クロモジ,ウワミズザクラ。草本層:コウヤボウキ,
ユミ,シシガシラ,ヤマナラシ,サジガンクビソウ,
タンナサワフタギ,ナワシログミ,サルトリイバラ,
キバナガンクビソウ,コハウチワカエデ,エンコウ
ケクロモジ,イヌガヤ,ミツバアケビ,コツクバネ
カエデ,マルバアオダモ,ミヤマガマズミ,イヌシ
ウツギ,ダンコウバイ,アカショウマ,コバノガマ
デ,アカシデ,クロフネサイシン,クリ,オトコエ
ズミ,シシガシラ,ヤブムラサキ,シラヤマギク,
シ,ヒナスミレ,ノブドウ,ウワミズザクラ,ヒメ
ジャノヒゲ,クサイチゴ,アキチョウジ,ゼンマイ,
ドコロ,ミズキ,ツルリンドウ,シロヨメナ,ハナ
アカショウマ,フタリシズカ,アキノタムラソウ,
イカダ,キーウイ(シナサルナシ),クモキリソウ,
アオテンナンショウ,ハナイカダ,ナツフジ,ノブ
アカマツ,タカノツメ,ハリギリ,カラスザンショ
ドウ,ミゾシダ,ナルコユリ,チヂミザサ,ナガバ
ウ,ハンカイソウ,ウリノキ,モミジドコロ(キク
タチツボスミレ,サジガンクビソウ,ヘクソカズラ,
バドコロ),ヤブコウジ,ヤマボウシ,アサダ,ミヤ
イヌワラビ,ヤマグワ,マツブサ,ケスゲ,ウワミ
マウズラ,クロフネサイシン,ヤマウルシ,ツルニ
ズザクラ,シロヨメナ,ヤマツツジ,ツチアケビ,
ガクサ,マツグミ,シハイスミレ,ケマルバスミレ。
ギンリョウソウ,クサギ,キバナアキギリ,シュン
谷筋の植林地にシダ植物が多く生育していて,主
ラン,サルトリイバラ,ミヤマナルコユリ,テイシ
なものをあげると次のようなものが見られた。
ョウソウ,ホウチャクソウ。
ヤマイヌワラビ,ヒロハイヌワラビ,カラクサイ
39
美馬市美馬町の植物/植物相班
(5)草原の植物
人家付近の茅場として利用されている草地やハン
グライダー基地などの人為的に造られた草原があ
り,それぞれ,次のような植物が生育していた。
①美馬市北の浦(重清北小学校の近くの道路沿い)
「調査地⑭」(2008.8.19)
リバナ,ノリウツギ,ナワシロイチゴ,ニセシラゲ
ガヤ,オオバナニガナ,ナギナタガヤ,シマスズメ
ノヒエ,アキカラマツ,ダイコンソウ。
(6)冷温帯域の植物
竜王山の山頂周辺は冷温帯域であるが,これまで
に指標種であるブナの生育は確認されていなかっ
ススキ,エノキグサ,コマツナギ,シバ,センニ
た。今回の調査では池の周辺に若木が数本と神社付
ンソウ,クズ,カラムシ,クルマバナ,ネムノキ,
近の樹林内に成木が生育しているのを確認した。周
アキノタムラソウ,アキカラマツ,ヒメヤブラン,
辺には伐採後に成立した二次林が多いが,ここには
アケビ,オオアレチノギク,ヒメジョオン,カエデ
自然林に近い次のような樹林が残されていて貴重で
ドコロ,オオアブラススキ,ゲンノショウコ,ワラ
ある。
ビ,コオニユリ,ヒメドコロ,カワラナデシコ,ゼ
ンマイ,フキ,ナツズイセン,カナビキソウ,ネコ
①竜王山鉄塔付近の樹林「調査地⑯」Alt.1,000m
(2008.7.30)
ハギ,ニラ,ヘクソカズラ,オオニシキソウ,スギ
竜王神社のある付近の樹林は,ブナがわずかに生
ナ,ノブドウ,キツネノマゴ,ウツギ,キンミズヒ
育し,冷温帯域の特徴を残している。周辺部は伐採
キ,トダシバ,キツネガヤ,メマツヨイグサ,コア
後に生えたコナラが多く見られた。樹林の構成種は
カソ,アブラススキ。
次のようであった。
②三頭山ふれあいの森駐車場〜美馬スカイスポー
ツサイト〜植栽林「調査地⑮」Alt.690m
(2008.6.26)
高木層:ブナ(幹周132cm),コナラ,イタヤカ
エデ,コハウチワカエデ,イヌシデ,クリ,アカマ
ツ,エゴノキ,アオハダ,アカシデ。亜高木層:ア
ススキ,ソメイヨシノ,ヒメシャラ,キンミズヒ
ズサ,アカシデ,リョウブ,ハリギリ,ナツツバキ,
キ,ヒロハウシノケグサ,ムラサキナギナタガヤ,
イヌシデ。低木層:ネジキ,カクミノスノキ,ソヨ
シバ,ヤハズソウ,コヌカグサ,ヒロハコウガイゼ
ゴ,シラキ,コミネカエデ,アカシデ,ヤマウルシ,
キショウ,クサイ,ヒメジョオン,セイヨウタンポ
ツルアジサイ,クマヤナギ,オンツツジ,コシアブ
ポ,ノイバラ,ネコハギ,ノアザミ,ヤブジラミ,
ラ,ツリバナ,ケクロモジ,クマシデ,アオハダ,
オオバコ,チチコグサ,ニワゼキショウ,ジシバリ,
ミヤマガマズミ,ヒノキ,カマツカ,ウラジロノキ,
アカシデ,クリ,コナラ,ミズキ,セイタカアワダ
ヤマボウシ,アブラチャン,シロドウダン。草本
チソウ,ボタンヅル,スギナ,ヤマザクラ,ヒメシ
層:ウラジロノキ,ハイイヌガヤ,ケクロモジ,イ
ャラ(植栽),カワチハギ,ハガワリトボシガラ,
ヌツゲ,シシガシラ,ヤマシグレ,ミヤマクロモジ,
スイカズラ,ケアオダモ,マルバハギ,ワラビ,シ
テイショウソウ,シロヨメナ,シュンジュギク,ツ
ラゲガヤ,シロツメクサ,カラスザンショウ,ヨモ
リバナ,シラキ,ニシノヤマタイミンガサ,コウヤ
ギ,ヤブジラミ,シナダレスズメガヤ,コウゾリナ,
ザサ,アサマリンドウ,ツルリンドウ,ウバママコ
コメツブツメクサ,クマツヅラ,アラカシ,クマノ
ナ,ヤマムグラ,ケスゲ,クロフネサイシン,シュ
ミズキ,ヒノキ,ソヨゴ,ナツハゼ,ニガナ,ワラ
ンラン,サルトリイバラ,ナツハゼ,ヤマボウシ,
ビ,オカトラノオ,サルトリイバラ,ヒカゲノカズ
シロバナウンゼンツツジ,ニガイチゴ,ケスハマソ
ラ,テリハノイバラ,ヒカゲスゲ,ヒメハギ,セイ
ウ,アオテンナンショウ。
ヨウノコギリソウ,アリノトウグサ,タンナサワフ
②竜王山遊歩道〜展望台「調査地⑰」
(2008.6.22)
タギ,サジガンクビソウ,ウラジロノキ,イタドリ,
県立竜王山野外活動センターは現在は利用されて
コツクバネウツギ,ウツギ,ヤマツツジ,ソバ(逸
いないが,周辺は遊歩道や展望台が残っている。ま
出),ヤマムグラ,ヌルデ,ヤマフジ,アオツヅラ
た,樹林内には窪地に水が溜ってできたような浅い
フジ,タチツボスミレ,モミジカラスウリ,ヒヨド
池もあり,その周辺部を含めて次の植物を確認した。
40
阿波学会紀要
第55号(pp.33-43)
2009.7
ウツギ,ニシノヤマタイミンガサ,ヒメミゾソバ
(仮称),ミヤマナルコユリ,ヤブツバキ,シシガシ
ラ,マルバフユイチゴ,ヤマボウシ,リョウブ,ヤ
マグワ,オオバショウマ,シラキ,ヒメシラスゲ,
ヤマルリソウ,ミズキ,クロフネサイシン,ナガバ
モミジイチゴ,オカタツナミ,イロハカエデ,ヨモ
ギ,ネコハギ,ミツバツチグリ,ヤマウルシ,ワラ
ビ,ヤマザクラ,カイナンサラサドウダン,ゼンマ
イ,ヤマハンノキ,コツクバネウツギ,ヤエノクサ
アジサイ(仮称),ネジキ。「遊歩道沿い」:エゴノ
キ,ゼンマイ,ホウチャクソウ,コゴメウツギ,ア
ブラチャン,アオハダ,ウスヒメワラビ,ヤワラシ
ダ,アキグミ,ミツバアケビ,ボタンヅル,ミズキ,
ヤマヤナギ,スイカズラ,ベニドウダン,ヤマハゼ,
ナガバモミジイチゴ,ヤマツツジ,ノブドウ,シラ
カンバ(植栽),スズタケ,シコクママコナ,イロ
ハカエデ,コナラ,コウゾリナ,コバノガマズミ,
ウツギ,コウヤボウキ,ソヨゴ,ウリハダカエデ,
タンナサワフタギ,ツリバナ,フタリシズカ,サル
トリイバラ,サンショウ。
図3
オニノヤガラ
(7)社寺林
平地や山麓の集落のある地域には,社寺林が残さ
れていて,その境内や社叢には植栽樹や自然木の巨
高木層:アズサ,クリ,コナラ,アカマツ,シラ
カバ(植栽)。亜高木層:ナツツバキ,リョウブ,
ヤマハンノキ。低木層:リョウブ,ベニドウダン,
シロドウダン,ヤマウルシ,ヤマハゼ,オンツツジ,
樹・巨木が生育している所も多い。次の神社には豊
かな社叢が残っていた。
①八幡神社・倭大国魂神社「調査地⑱」
(2008.8.5)
イヌツゲ,カイナンサラサドウダン,エンコウカエ
低地の暖温帯常緑広葉樹林の特徴をもつアラカシ
デ,コハウチワカエデ,ウリハダカエデ,ウラジロ
が優占する社叢であり,次のような植物で構成され
ノキ,ミズキ,ソヨゴ,アオハダ,アセビ,タムシ
ていた。
バ,エゴノキ,カナクギノキ,コゴメウツギ。草本
アラカシ(優占:幹周280cm(地上25cmの位置)
),
層:サルトリイバラ,トリガタハンショウヅル,シ
ヤマザクラ,クヌギ,サカキ,ネズミモチ,クスノ
シガシラ,シュンジュギク,スズタケ,オカトラノ
キ,シャシャンボ,センダン,モウソウチク,ネザ
オ,ケスゲ,シラヤマギク,シロヨメナ,トダシバ,
サ,ヤマハゼ,ヤマノイモ,アマチャヅル,テイカ
リンドウ,イシヅチウスバアザミ,シコクママコナ。
カズラ,タラノキ,クサイチゴ,ヒイラギ,ソメイ
「池の周囲」:イタドリ,ウワバミソウ,シユンジ
ヨシノ,ナンテン,ヨウシュヤマゴボウ,フユイチ
ュギク,アカショウマ,ツチアケビ,クサアジサイ,
ゴ,ツルマサキ,ケネザサ,サルトリイバラ,ケヤ
ハナイカダ,ヤマアジサイ,アオテンナンショウ,
キ,ササクサ,イヌビワ,ヌルデ,クチナシ,カマ
ヤマイヌワラビ,スギ,フキ,ケスゲ,エゴノキ,
ツカ,ヤブコウジ,ナナミノキ,ヤブニッケイ,ナ
イヌガヤ,キバナアキギリ,シコクアザミ,スノキ,
ガバモミジイチゴ,ヒサカキ,ベニシダ,コナラ,エ
コシアブラ,ベニドウダン,テイショウソウ,ノリ
ゴノキ,ツタ,イヌマキ,アリドオシ,カラスウリ。
41
美馬市美馬町の植物/植物相班
②大山祇神社「調査地⑲」(2008.8.5)
らも報告がなかった。しかし,2005年度の国土交通
落葉樹と常緑樹が混生している中間温帯域に属す
省が実施した「河川水辺の国勢調査」により本町の
る社叢で,構成種は次のとおりであった。
吉野川河畔で確認された。)
高木層:アベマキ(優占),クヌギ,スギ,モミ。
②徳島県版RDB:絶滅危惧Ⅰ類(絶滅の危機に瀕
亜高木層:アラカシ,ソヨゴ,オオモミジ,カヤ。
している種);ヨコグラヒメワラビ,シイバサトメ
低木層:ヤブニッケイ,ナツハゼ,サカキ,アラカ
シダ(国RDB:絶滅危惧Ⅱ類),ケスハマソウ(国
シ,ヒサカキ,スギ,マルバウツギ,ヤブツバキ,
RDB:準絶滅危惧),イヌナズナ,ミヤコイバラ,
ウラジロノキ,ウワミズザクラ,ヤブムラサキ,コ
オオカラスウリ,シャクジョウソウ,ウスバヒョウ
マユミ,ノグルミ,シュロ,ヤマザクラ,ネジキ,
タンボク(国RDB:Ⅱ類),オミナエシ,ナンカイ
キハギ,ダンコウバイ,エゴノキ,ノイバラ,カマ
ギボウシ,カノコユリ(国RDB:ⅠB類),トキワ
ツカ,ウリカエデ。草本層:ヤマカモジグサ,ベニ
ススキ,オニノヤガラ,ヒトツボクロ,アキザキヤ
シダ,ヤマフジ,アセビ,コウヤボウキ,ケヤキ,
ツシロラン,ナツエビネ(国RDBⅡ類)
。
シロヨメナ,シラヤマギク,カヤ,ヒゴクサ,イチ
③徳島県版RDB:絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増
ヤクソウ,ノガリヤス,ジャノヒゲ,シシガシラ,
大している種);クロフネサイシン(国RDB:絶滅
オクマワラビ,ケスゲ,ヤブコウジ,フキ,オオア
危惧Ⅱ類),ミヤコアオイ,キキョウ(国RDB:絶
ブラススキ。
滅危惧Ⅱ類),オオダイトウヒレン,エビネ(国
(8)巨樹・巨木
RDB:絶滅危惧Ⅱ類),クロモ。
本町の神社や寺院などには巨樹・巨木・名木など
④徳島県版RDB:準絶滅危惧(現時点では絶滅の
が多く残されている。調査した中で,幹周が3m以
危険度は小さいが,生息条件の変化によっては「絶
上のものをあげると次のようである。(数字は地上
滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有する
から130cmの位置での幹周,単位はcm)
種);コギシギシ(国RDB:絶滅危惧Ⅱ類),ヤマ
①クスノキ:622,556,480,422(重清西八幡神社),
シャクヤク(国RDB:準絶滅危惧),コイヌガラシ
475,347(芝坂天神社),314,301(天都賀佐比古神社),
(国RDB:準絶滅危惧),カワヂシャ(国RDB:準
300(大宮神社)。②ムクノキ:448,328(八幡神社)
,
絶滅危惧)。
375(大宮神社),352(中野の鶏舎の付近),339
④徳島県版RDB:情報不足(評価するだけの情報
(天都賀佐比古神社),327(ノツゴ)。③ケヤキ:
が不足している種);テリハキンバイ。
407(鵜飼36番地原氏宅),396(安楽寺),338(東
*過去に記録されているタマカラマツ,ササユリ,
宗重三好英信宅)。アベマキ:389(相栗峠)。ヒノ
ジンバイソウ,ウグイスカグラ,ジガバチソウは,
キ:386(願勝寺)。エノキ:380(中野の西岡彰文
今回は確認できなかった。
氏宅),310(重清南県道沿い),センダン482(重清
南の県道沿いのお堂),ヒマラヤスギ(駅10番地石
(10)検討を要する種
今回の調査で確認した植物の内,次のものについ
川敬人氏所有),カゴノキ:426+370(猿坂大師堂
ては今後の検討が必要である。
横の長江重敏氏所有地)。
①ヒメミゾソバ Persicaria thunbergii(Sieb.et
(9)確認した希少植物
今回の調査によって次の希少植物(徳島県版
Zucc.)H. Gross. var. minor S. Kinoshita(仮称)
ミゾソバよりも全体が小形の分類群が竜王山の周
RDBおよび環境省版RDB掲載種(以後国RDBと略
辺に生育している。とりあえず上記の名前で報告し,
記))を確認した。
さらに検討したい。
①徳島県版RDB:「絶滅」(絶滅とされたが今回の
(11)外来植物
調査で生育が確認されたもの);マイヅルテンナン
休耕地や河川の氾濫原,路傍などには,外来種が
ショウ(徳島県植物誌(阿部,1990)には記録され
多く見られた。それらの内,県内では珍しいものを
ていたが記録地では確認できなくなり,他の場所か
あげると次のものがある。
42
阿波学会紀要
ウスジロノゲシ(県内初記録),キバナコウリン
タンポポ(県内2例目),オオブタクサ,ニセシラ
ゲガヤ,オオハルタデなど。
5.おわりに
今回の調査では,三頭山,竜王山などの山地や吉
第55号(pp.33-43)
2009.7
文献
阿部近一(1990):徳島県植物誌.教育出版センター.
岩崎正夫(1990):徳島県地学図鑑.徳島新聞社.
岩槻邦男(1992):日本の野生植物シダ編.平凡社.
長田武正(1994):日本イネ科植物図譜.平凡社.
環境庁(2000):改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物―
レッドデータブック―植物Ⅰ(維管束植物).
野川河畔林などを中心に調査した。その結果,本地
木下 覺ほか(2006):三好市「旧東祖谷山村」の植物(25−37
頁)阿波学会紀要第53号三好市総合学術調査報告.阿波学会.
域は,ハンググライダー基地,野外活動の施設,植
清水建美(2003):日本の帰化植物.平凡社.
栽林など,人為的な働きかけが頻繁に及んでいる所
徳島県(2001):徳島県の絶滅のおそれのある野生生物.
が多い。しかし,自然林に近い樹林や二次林では,
徳島地方気象台・日本気象協会(1991):徳島の気象100年.徳
島出版株式会社.
予想以上に多くの希少植物を確認できた。
中池敏之(1982):新日本植物誌シダ篇.至文堂.
この度,村田源氏(元京都大学),中池敏之氏
牧野富太郎(1989):増補改訂.新日本植物図鑑.北隆館.
(元千葉県立中央博物館),藤井伸二氏(人間環境大
学)には,植物の同定をはじめ貴重なご指導・ご助
言をいただきましたことを記し,厚くお礼を申し上
げます。
43