気候力学に関するノート
稲津 將 北海道大学 大学院地球環境科学研究科 日本学術振興会特別研究員
平成 年 月 日
目次
地球流体力学の基礎方程式
連続方程式
応力テンソル
運動方程式
エネルギー方程式
エントロピー方程式
状態方程式
流体の特徴
回転体における見かけの力
球面座標
温位
重力
準地衡風理論 プリミティブ方程式から準地衡理論へ
準地衡風方程式とロスビー波の基礎
ロスビー波の伝播と フラックス
平均流と波動の相互作用
フラックスの 次元への拡張 定常波
フラックスの 次元への拡張 移動性擾乱
傾圧不安定
基本場と不安定
エネルギー論から見た傾圧不安定
問題と 問題
傾斜対流
傾圧不安定に関する種々の問題
方程式を用いた診断
赤道波動
鉛直伝播
水平伝播
混合ロスビー重力波
赤道ロスビーと赤道重力波
赤道ケルビン波
湿潤大気
湿潤大気の基礎用語
混合比 ! " #$%
比湿 &'( ) " #$%
水蒸気圧 *'!) '&&)" #%
*
仮温度 * )+ ' ) "
#,%
飽和水蒸気圧 & ) *'!) '&&)
相当温位 -)*+ '! + ' )" #,%
条件付不安定
対流有効ポテンシャルエネルギー .
熱帯の積雲対流の概説
海洋力学と境界層
温度躍層
エクマン層 +
風成循環 /0* )+ !
中緯度の風成循環
赤道の風成循環
湧昇 )'1++
倍増 下の気候
基本的な知識
2
参考文献
の役割
特殊函数
3 函数
球面調和函数
4 微分方程式
4 多項式の正規化と直交性
4 多項式に関する漸化式
*
4 陪微分方程式
*
4 陪函数に関する漸化式
*
球面ラプラス方程式の固有関数
*
球面調和関数展開の数値解法
近似
数値フィルター
時系列データのフーリエ展開
荷重移動平均のスペクトル
荷重平均を用いた数値フィルターの作成
再帰型数値フィルターの例 村上フィルター
! 検定に関するメモ
標本問題
標本問題
地球流体力学の基礎方程式
連続方程式
質量が生成消滅しない時、連続方程式
5
5
5
6
が成立する。
"証明#$ 任意の閉領域 があり、その境界 は滑らかとする。閉領域内の質量変化は、質量の
流入に等しいので、
である。ただし、 、 および は、閉領域およびその境界における体 面 積要素
である。7 の定理により、
であるから、任意の閉領域について成立するので、式 6 となる。
応力テンソル
応力テンソルを定義する。まず、歪み速度テンソルであるが、これは
5
6
である。完全流体とは、応力テンソルが主応力 のみで表現される流体のことである。粘性流体
とは、応力テンソルが歪み速度テンソルと線形の関係にある流体のことである。大気ではこの仮定
をおいて、運動方程式を立てる。
応力テンソルは、等方性と粘性流体を仮定すると、定数 および に対し、次の式で与えら
れる。
"証明#$ 粘性流体なので Æ
5 。係数の 階テンソル
5
Æ 5 Æ 6
とかける。静止流体における応力の等方性から
の等方性を考えると、 Æ Æ
5
Æ Æ 5
Æ Æ
5
となり、 5
Æ
5
とおくと、応力テンソルは、 となる。 5
5
Æ 5 5
および
Æ となる。
定数 および は、体積粘性率、第 粘性率という。単原子分子なら 、 原子分子な
ら であるし、水の場合は
と思って良い。
運動方程式
運動量が生成消滅しない時、運動方程式
5
55
5
5
5
6
が成立する。
"証明#$ 任意の閉領域 があり、その境界 は滑らかとする。閉領域内の運動量変化は、運動
量の流入と応力および体積力による力積に等しい。従って、
7
5
5
の定理より、
5
5
任意の閉領域について成立するので、
5
5 連続方程式 6 より、
5 となる。一方、式 6 より、
5
5
5 5
5
5
である。
エネルギー方程式
流体の運動エネルギーを
5 5
6
とする。その時、エネルギー方程式
5 と定義し、内部エネルギーを
が成り立つ。ただし、 は熱流を表す。
6
"証明#$ 任意の閉領域 があり、その境界 は滑らかとする。閉領域内の総エネルギー 5 の変化は、エネルギーおよび熱の流入と体積力による仕事に等しい。従って、
5 5 5
5
7)&& 発散定理および閉領域を任意にできることから、
5 5 5 5
5
5
連続方程式 6 より、
5 5 5 ここで、運動方程式 6 と
5
との内積をとると、
5
5
となるから、これを使うとエネルギー方程式を得る。
ここで粘性流体について特に、散逸函数
8
を定義すると、
5 5
Æ 8
とすることができることに注意したい。
エントロピー方程式
熱力学第 および第 法則が成立し、フーリエの法則が適応できる時、エントロピー につい
て、以下のエントロピー方程式が成り立つ。
ここで、 は熱伝導率、
5
は定積比熱、そして、
5
85
6
は加熱率である。
5
である。つまり、
"証明#$ 熱力学の法則から、断熱過程において 連続方程式 6 およびエネルギー方程式 6 を代入する。その際、後述する関係式
5
を用いる。
フーリエの法則 ただし、
5 8 5 より、得るべき関係式を得る。
を対流といい、
を熱伝導という。
5 8
状態方程式
理想気体の状態方程式は、気体定数 ! に対し、
6
!
で与えられる。海洋の状態方程式はユネスコによって定められた経験式を用いるより他ない。
流体の特徴
全微分 "
は流体粒子とともに動く 4 的微分である。これを座標を固定した系で見る
偏微分 )+ 微分 に直す方法は
5
6
によって与えられる。
"証明#$ 任意の函数 #
#
に対し、# #
#
#
5
#
5
#
5
#
5
#
であるから
#
5
5
である。
回転体における見かけの力
固定点から見た加速度を
対し、
とすると、解析力学の知識から、定常回転角速度ベクトル
が成り立つ。よって、
5%
5%
5%
に
$
$
5 %
5%
%
となる。第 項目がコリオリ力と呼ばれ、第 項目が遠心力と呼ばれる見かけの力である。
球面座標
球面座標
% により、ベクトルの微分は次のように変更される。また、地球中心からの距離
は定数 & で置き換える。これを気象学的近似と呼ぶ。
#
&
#
!& %
&
!& %
&
#
& %
5
& %
&
%
&
!& %
&
6
!& %
%
6
5
#
!& %
6
#
#
!&
&
5
%
&
%
5
&
%
&
%
#
&
5
% 5
&
&
5
#
5
%
#
5
#
6
& 6
&
温位
温位 は、大気圧 まで大気を断熱変化させた時の換算温度である。次の式のよって与えられる。
!
6
ただし、 は定圧比熱である。
"証明#$ 断熱過程では、 である。状態方程式 6 を用いると、
+
5
5
!
!
+
が一定であるから、よって式 6 のように定義される。
重力
ニュートン万有引力の法則は、位置 ½ および ¾ の質量 ' および ' 万有引力
½ ¾ ½
(' '
¾ が働くという法則である。地球半径を &、万有引力係数を (、地球の質量を ) とすると、重
力加速度 * ()
&
である。地上からの距離 は小さいとした。
準地衡風理論 対流圏中緯度の力学は周波数の比較的小さいロスビー波によって表現される。そこで、プリミ
ティブ方程式から重力波をのぞいた準地衡方程式系を導き、ロスビー波の特徴に付いて概説する。
プリミティブ方程式から準地衡理論へ
等圧面上のプリミティブ方程式系は次のように与えられる。
%
9 & % &
5
%
&
5 9 & % 8
&
8
!& %
8
& %
6
6
6
!
6
&
!& %
5
&
!& %
%
!& % 5
6
6
式 6、式 6 は運動方程式、式 6 は熱力学第一法則、式 6 は理想気体の状態方程
式、そして、式 6 は連続の式である。
回転球面の流体力学では、コリオリ力と気圧傾度力の釣り合いが代表的な平衡状態である。地球
においても、対地摩擦の影響を大きく受ける地表面付近やコリオリ力が になる熱帯をのぞき、大
気海洋の運動を次の式で与えられる地衡風 流 平衡で大雑把に近似できる。
8
+
8
+
6
ここで、コリオリパラメター + 9 & % である。しかし、中緯度の極めて緯度変化の小さい領域
を対象にする場合は、+ を一定と考える + 面近似が有効である。しかし、ある程度広い緯度帯に付
いて議論する際は、+ の緯度変化も重要になってくる。実は、この + の緯度変化こそが、対流圏か
ら成層圏までの大気力学で重要なロスビー波の復元力になっている。これを , 効果という。ある緯
度での + を + と置いて、その周りでテイラー展開すると、
+ 5 ,&% 5
+
となる。但し、, 9 !& %
&
6
である。式 6 を第一項までで近似する方法を , 面近似という。
この , 面近似は、中高緯度の力学を表現する有効な方法である。
式 6 から式 6 は、球面のプリミティブ方程式である。ここでは、簡単のため、局所座
標系に置き直したプリミティブ方程式で議論する。すべての結論は球面の場合にも有効である。,
面局所座標に置き直したプリミティブ方程式は以下の通りである。
5
5
5
5
5
5
5
5
5
8
5
5 , +
5 , 8
6
8
6
6
!
6
5
5
+
6
まず、準地衡近似を行う上で重要なことは、第 次近似では + 面近似で地衡風平衡が成立いるこ
とを仮定していることにある。近似の第 次の項を下付き添字 で表すことにする。これを式で表
現すると、
+ 8
+ 8
6
となり、風の場は非発散であることが用意にわかる。ここで注意しなければならないのは、一般
に地衡風は式 6 で与えられるので、発散が存在する。たとえば、簡単に地衡風の南風が極に
向かって吹いている事を想像すると容易に理解できる。式 6 で与えられる地衡風を「総観気
象学的地衡風」といい、式 6 で与えられる「気象力学的地衡風」とは区別しなければならな
い。さて、式 6 で与えられる
は非発散風であるため、連続の式より
をう
る。大気は宇宙に逃げたり、地表面に潜り込んだりしないので、 を上下端で仮定すると、全
域で となる。
次に、地衡風による時間変化項と非地衡風によるコリオリ力と地衡風によるコリオリ力のずれが
同じ大きさであると仮定する。この仮定は、ロスビー数が 程度であることを意味している。そ
して、非地衡成分を下付き添字 で表すことにする。風の変数
は、すべて地衡風成分と非
地衡風成分にわけて、
5
6
となる。式 6 および式 6 から、式 6 を引き算して、非地衡風による移流などを無
視すると、
5 5 5 5 6
5 + 5 , 6
+ ,
6
また、非地衡風成分の連続の式は、
5
5
6
となる。
次に、熱力学第一法則 6 で、断熱加熱と地衡風による温度移流が釣り合っているを仮定す
る。この仮定はリチャードソン数が 程度であるという事を示している。温位 を地衡風に見合
う形のもの、つまり温度風を満たす成分と、それより 桁大きい鉛直に成層している成分にわけ
る。前者を下付き添字 で、後者を下付き添字 で表すことにする。ここで、鉛直に成層してい
る成分は、鉛直座標にのみ依存するとする。つまり
% 5 % 6
である。すると、式 6 は、
5 5 5 6
となる。温位の定義より
!
!
!
8
6
となって、式 6 および式 6 より
5 5 8
!
!
6
式 6、式 6、式 6、式 6 および式 6 を準地衡方程式系という。この
方程式系は、変数 8 に関して閉じた方程式系である。準地衡方程式は地衡風の仮定をし
た場合に生じる 8 の間の縮退を解くことに相当する。
ここで、更に変数をまとめて、わかりやすい形にしたい。まず、式 6 と式 6 から渦
度方程式を導く。式 6 を用いると、
となる。ここで、- 5 & 5 & より、
5 , +
-
6
。この式を準地衡渦度方程式という。更に、準地衡層厚方程式
6 とあわせて、
+
5 8
8
5
5 5
6
8
+
5 ,
. 6
となる。 を準地衡ポテンシャル渦度といい、式 6 を準地衡ポテンシャル渦度方程式という。
但し、. !
!
とする。
準地衡風方程式とロスビー波の基礎
前章では、等圧座標系で準地衡ポテンシャル渦度方程式を導いた。本節では、この方程式を応用
しやすい形に書き直す。そのため、対数圧力座標
/
/
+
6
を導入する。ここで、/ はスケールハイトである。すると、 微分は
/
/
6
という風に 微分に置き換わる。また、. は、
. !
となる。ここで、
!
/ !
+! /
*
はブラントバイサラ振動数といい 速度 の代わりに、 *
+! + /
6
で定義される。更に、鉛直
を用いると、
/
+
/
6
と書ける。すると、式 6 と式 6 は
5 5 5 -
5 5 ,
8
5
+
6
6
0
となる。表記を簡単化するために、流線関数 0
を導入する。式 6 と式 6
から準地衡ポテンシャル渦度方程式を導くと、
51
0
0
5
0
+
5
0
5 ,
6
となる。
この準地衡ポテンシャル渦度方程式系は、ロスビー波と呼ばれる惑星波動のみを波動として含
む方程式系である。次に、ロスビー波の波数周波数特性を調べる。まず、式 6 を線型化する。
流線関数 0
6
に基本場 :
:
50
とすると、:
は基本場となる。なぜなら、式
を代入すると自動的に成り立つからである。さて、0
の項を小さいとし
て無視すると、
52
' #3
4
5
ただし、2
0
0
5
:
+
5
5
%
を仮定する。すると、
るから、 / とできて、'
; '
,
+
2
2
,
+
式は
'
;
24
6
5
2
5 5
4
+
'
;
4
+
6
0
0
/
4
であ
6
6
'
;
6
4
5 5
0
4
5 5
6
6
である。これよりただちに位相速度は
である。したがって、ロスビー波の分散関係
4
0
0
2
6
5
+
5 5
4
のとき、
/
2 4
5
6
2
とする。この線形化渦度方程式に三角関数型の波型解
5 5 '
となる。但し、
0
+
'
;
'
4
4
5 5
+
'
;
6
であり、群速度は
6
2 5 4
4
+
5 5
+
'
;
'
;
4
6
5 5
4
+
'
;
4
6
5 5
4'
+
'
;
となる。
ロスビー波の性質は次の通りである。
非発散や順圧でも存在する。浅水モデルでは、表面の変化がなくとも存在する。
6
位相速度は西向きにしか存在しない。重力波や音波のように向きの逆な2つの波が存在した
りはしない。
分散性波動である。
+
面では存在しない。, 面、または球面上の回転流体に存在する波動である。
の大小によって決まる。
群速度は 4 と
+ '"
ロスビー波の伝播と フラックス
次に、より現実を意識して、ロスビー波の伝播を考える。まず、ロスビー波の伝播を表す波の活
0
動度フラックスを導く。式 6 に ロフィー方程式
となる。波の活動度密度
52
6
5
0
5
52
である。当然、
0
をかけて、エンスト
6
5 となる。但し、フラックス は
として定義すると波の活動度方程式は
6
+
5
!
/
6
+ !
/
6
となるようにフラックスを決めた。その際、
0
係式を用いた。式 6 を東西平均すると、 フラックス " # にたいする式
!
+ /
% 5 " # #
という関
6
をうる。
波の活動度フラックスは、ロスビー波の水平、鉛直伝播を表現している。何故なら、媒質の変化
が位相の変化に比べて緩やかであると仮定する /,< 近似 と、ロスビー波の群速度と平行であ
るからである。波の活動度フラックスを流線関数で書き直すと、
0
0
+
0
0
0
となる。媒質の変化が群速度に比べて緩やかに変化するので、
+
0
0
6
となる。
ロスビー波がある点で励起されるとすると、波線理論を使ってロスビー波のエネルギーの行き先
をある程度推測することが可能である。この波線理論で注意することは、波線理論ではロスビー波
の伝播経路は与えるが、振幅に関する情報は与えないし、ロスビー波が反射、吸収する臨界緯度
付近では /,< 近似が成り立たないので、この理論は適応できない。この理論を簡単に述べると
次のようになる。今、ロスビー波の作用中心を
速度にロスビー波のフラックスが平行なので、
で与える。/,< 近似を仮定すると、群
とできる。/,< 近似では波数
4 '
は場所によって変化する函数である。更に、励起源が定常的な場合、定常ロスビー波が励
6
起される。これは、式 6 で 5 となる場合である。5 のとき、4 5 5
となる。ここで、 6
2
+
'
2
を定常波数という。この定常波数が虚数になるか、あるいは定常波
数が波数に及ばない時は、ロスビー波は伝播不能である。波線理論によると、定常的に励起されて
いるロスビー波の作用中心は /,< 近似の適応限界に至るまで、
6
2
5
4 6
4
6
6
6
4'
6
で追うことが可能である。たとえば亜熱帯で励起された定常ロスビー波は、 の正負の任意性から
南東と北東方向へ伝播する。南東方向へ伝播したロスビー波は、ロスビー波の侵入を拒否している
東風の熱帯域に吸収される。波線で見ると突き刺さるように見える。一方、北東へ伝播したロス
ビー波は、北に向かうほど弱い西風になるため定常波数が徐々に小さくなり、ついに定常波数と波
数が一致する。この時、波線は真東に向き、そのまま南東方向へ折り返すとされている。但し、定
常波数と波数が一致する緯度 臨界緯度 付近では、もはや /,< 近似が成立しないので、波線理
論をそのまま適応するのは危険である。また、
2
の影響が大きい、つまりジェットがシャープ
になると、 の極大が 個所生じ、ある波数のロスビー波は極大が生じた緯度に挟まれて、捕捉
される。
現実大気で、定常ロスビー波の伝播は山岳および熱帯の加熱源によるものがあげられる。太平洋
中央部における熱帯大気のアノマラスな加熱によって励起されたロスビー波は、=. パターンと
して大円に沿って伝播するとされている 図 。山岳が励起したロスビー波は北東、南東方向に
ロスビー波を伝播するとされている。これらの水平伝播の問題は、振幅の分布を議論できないため
に、どこに高低気圧が形成されるかを議論することができない。
また、ロスビー波の鉛直伝播は成層圏での定常波の形成に重要である。山岳または海陸分布に
よって対流圏で励起された定常波は、波数の小さいものが伝播可能である。夏半球では東風で伝播
できない。一方、冬半球では強い西風が吹いており伝播可能である。但し、西風が強すぎでも伝播
できない。北半球の方が南半球に比べ波数の小さな定常波が励起されやすいため、成層圏では北半
球の冬に波数 または の定常波が観測される。
平均流と波動の相互作用
ところが、式 6 で定義された波の活動度フラックスは、各点で定義された量に対して意味を
なさず、東西平均した量にのみ意味を持つ。東西平均した量であれば、波の保存則 6 を満た
し、また、東西平均流に対する方程式において、波と流れの相互作用を表現する。東西平均流の方
図 " 3!+ /++ の図 より引用。
程式は、式 6 に戻って、これを東西平均する。
# %
+ # %
ただし、# % #
0
%
# %
6
に注意したい。更に、熱力学の式 6 を東西平均すると、
#8%
5
# % 8
6
となる。ちなみに、南北方向の東西平均流の式は、診断式
+ # %
5 , # % # %
6
であるが、あまり重要ではない。
流線函数 0 により、式 6 および式 6 を表現すると、
#0 %
#0 %
5
+ # %
+
# % 0
0
0
0
6
6
となる。温度場は東西平均流と温度風の関係式を介してつながっているので、平均流の作用を方程
式中で一つにまとめたい。この操作は、波動 擾乱場 に伴う見かけの循環 現実場では中緯度にお
けるフェレル循環 を取り除き、非地衡風成分としては対流起源のもの 低緯度のハドレー循環 の
みにすることに等しい。非地衡成分を次のように変換する。
# %
# %
# %
# % 5
+
0
0
0
0
6
6
すると、東西平均流の方程式は、変形オイラー平均方程式
# %
+ # %
#0 %
5
+
# %
6
# % 6
となり、波動と東西平均流が明瞭に結び付いた形になる。この方程式における非地衡成分は近似的
にラグランジュ的に振舞う。この式のより、 フラックスが東西平均流とどのように関係するか
が明らかになった。 フラックスが発散するところでは、東西平均の西風が加速される。それと
反対に、 フラックスが収束するところでは、東西平均の西風が減速される。
式 6 と式 6 で誤解してはならないのは、これらの式は波動と平均流の相互作用を表す
式であり、波動が与えられれば平均流の傾向のみならず、変形オイラー平均流 # % や #% も決定
されるということである。# % や #% は、質量保存の法則、
# %
5
# %
6
を満たすように変形しているので、式 6 と式 6 から # % や #% を消去することが可能
である。すると、以下の式を得る。
+
# %
5
!
/
# %
6
したがって、これより のとき、平均流が加速されないという非加速定理が導かれる。逆に時
間変化の項を消去すると、波動と変形オイラー平均流との診断式を次のように得ることができる。
+
# %
# %
!
+ /
# %
6
に関する式は、演習問題としたい。このように、波動 の空間分布が与えられれば平均流の
時間変化のみならず、変形オイラー平均流 # % や #% も決定されることになる。
北半球の冬季、傾圧波の活動の影響等で振幅を異常に増したロスビー波が成層圏に伝播すると、
伝播先の成層圏ではフラックスが収束するので、西風が弱まる。西風を弱める働きは極渦の中心の
温度を上昇されることに対応するので、成層圏では温度の異常な上昇が見られる。これが突然昇温
の簡単なメカニズムである。近年、注目されていオゾンホールはオゾンを減少させる反応が低温で
起きやすいことに関係しているとされ、オゾンの破壊と突然昇温の関係は成層圏大気科学の一つの
現代的なテーマである。
フラックスの 次元への拡張 定常波
式 6 が東西平均した場でなければ、意味のない量であることは次のように示される。たと
えば、式 6 の 成分を考えると、
すると、上記は明らかに
7
4
0
0
5 5 ' に比例する。0 ; !& 4
0
5 5 ' を代入
に比例する。すなわち、定常波のような位相構造が
明瞭な波動に対して、式 6 は波動の位相の影響を受けていることになり、各点での値は意味
を持たない。そこで、+) は、位相に依存しない 次元の フラックスを開発した。
+) は天下り的にそのフラックスを与えたが、その導出の美しさと自然な演繹という点
で、> =) が秀逸である。
まず、位相不変な保存量を考える。一つは波の活動度
して
#
%
8
5
4
4
0
5
+ 0
6
5 5 ' を代入すると、
6
によって与えられる。従って、0 0; !&
0
である。もう一つの波動の擬運動量と
5 5'
&
/
5 5 ' 4
6
となる。一方、前者の波の活動度
6
に
4
; !& 4
0
0
5 5'
5 5 ' を代入すると、
!&
/
4
5 5 ' 6
5 とする。最
であるから、この両者を足し合わせた量は位相に依存しない。これを
終的に
に関する保存式を導けばよい。
線形化準地衡渦度方程式 6 にたいし、
# %
8
# %
# %
8
52
0
0
0
0
8
を乗じて、整理すると、
0
0
0
# %
6
# %
8 0
+
0
+
0
0
0
0
0
6
式 6 を更に変形し、 に対する保存形を考える。すると、 導出は演習問題
5
# %
8
8
6 となる。これより、位相不変量
5
8
0
5 5
0
0
0
5 8
0
5 0
に対する保存則、
5 0
0
0 0
+
0
0
0
0
0
0
0
0
+
0
5 8
0
6
6
となる。式 6 で余った項はすべて非保存項に追いやった。式 6 の第 項に得られたフラッ
クスが位相依存性のないことは明らかである。
フラックスの 次元への拡張 移動性擾乱
フラックスの 次元への拡張は移動性擾乱についても行なわれている。次節とのつながりは
悪いが、準地衡方程式の枠組みで得られるものとして、議論する。これまでは、東西平均流に対す
る線形化方程式を考えてきたが、今後は時間平均流に対する線形化方程式を考える。このような議
論は諸説紛々であるが、簡単でかつ平均流への作用という点で現実的な選択をした 3!&& +6
の ベクトルを紹介する。式 6、式 6、および式 6 を考える。簡単の為、
8
9 という標識を使うが、前述の に比例する量である。時間平均量 に対し、そこからのず
れ を考えて、線形化すると
5 5 5 5 5 ,
5 + 5 ,
+ 5 5
9
+
9 6
6
6
9 ここで、擾乱に伴う残差循環を差し引いた量として、
5
と定義すると、
5 5 5 5 5 + 5
+ +
5
+
+
5
,
5 + 5 ,
+ 5 9
5
+
6
6
6
6
+
6
6
とできる。式 6 の右辺は非常に小さいので、時間平均東西流に対する渦の作用を ベクトル
に集約することができる。ここで、
+
6
である。他の如何なるフラックスも時間平均東西風に対する量としての、つまり 次元のベクトル
としてのフラックスを定義していない。3!&& +6 の ベクトルは、簡便で現実的な
解析に対して、極めて合理的な量として考えることができる。
しかし、 ベクトルは保存量ではないので、/,< 近似のもとであっても、群速度と平行ではな
い。従って、波動の伝播を議論するには有効ではない。また、対流圏中高緯度を意識した近似で
あるから、一般の流体には使えない。保存量としてのフラックスは、> や +)
も考えたが、やはり > =) の導出がエレガントである。導出には南
北流も加わるので、そのことに関する幾つかのさらなる仮定が置かれているが、その詳細は >
=) を参照されたい。ここでは、結果のみを与える。
+ 0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5
0
5
+ 0
5
に対し、
0
0
0
0
0
0
0
0
0
6
5 6
が成り立つ。> =) には平均流との相互作用に関する洞察もなされている
が、+) 同様、流れに平行な成分と垂直な成分とで別のフラックスを用意しなければな
らない点で、大変面倒かつ解釈の難しい状況になる。時間平均流に対する渦の問題は、渦の平均流
に対する作用と、波動の伝播の問題を分けて考えなければならないことになる。東西平均流の場合
は フラックスにより、統一的に議論できた。
傾圧不安定
傾圧不安定問題は、古典的にして、今なお問題が散在している。ここでは、傾圧不安定理論の基
礎である線形理論 問題と 問題 を紹介する。
基本場と不安定
擾乱のない大気の仮想的力学状態を基本場という。もし基本が不安定だとすると、微小擾乱は時
空間的に発達し、擾乱を支配する方程式系および基本場の構造にもっとも適した空間構造を持つ波
が選択され、現実の流れの場において出現すると考える。逆に基本場が安定なら、微小擾乱は時間
的に減衰し、実際に基本場が出現するであろう。このためには、基本場と不安定問題の両方が解か
れなければならない。
ところが、気象力学で基本場を求めるのは容易なことではなく、一般に時間平均場で代用するこ
とも多い。しかし、実際の観測値を東西時間平均して得られた時間平均場は基本場とは限らない。
確かに得られた時間平均場には波動が存在しないが、時間平均場を形成する段階で擾乱の作用をう
けており、陰に波動の存在を仮定している。ベナール対流はその好例である。2次元平面で上端に
高温、下端に低温の壁を設けた場合、流れがなければ領域の温度は上端と下端の温度を線型補間し
た値となり、これが基本場である。ところが、波動 対流 の作用によって、場は、境界付近をの
ぞき温度一定で落ち着く。時間平均した場合、このような値が得られる筈である。
よって、ここでは時間平均場を基本場とは考えない。そのかわり、問題設定を簡単化し、東西一
様定常流を基本場として、その安定性を調べる事が多い。この場合、基本場は対地摩擦を含む外部
の強制力に対して方程式を満たすように設定しなければならない。このような簡単化で現実を意識
しながらも、任意の基本場を与えることが可能となり、基本場の性質による不安定性の違いを議論
できるようになる。それゆえ時間平均場を基本場とするよりも、こちらの方が遥かに有効な方法で
あると言える。
但し、現実に見られる総観規模擾乱などの不安定波動は、理論的に求められた不安定波動と必ず
しも一致しない。なぜなら、理論的に求められる不安定波動は線型近似のもとに、微小振幅で、か
つ時空間的に一定の周期、波長を持っていると仮定している。現実の現象との比較は、波長、位相
速度、周期、およびそれを取り巻く場を比較しなければ得られない。実際の総観規模擾乱は一般に
理論で求められる最大成長率を持つ不安定波動より波長が長いとされている。これは乱流理論で言
われる上方エネルギーカスケードであると説明されている。よって、殆んど線型不安定理論で得ら
れた不安定波動が現実に当てはまることはない。
エネルギー論から見た傾圧不安定
ここで、用意された準地衡ポテンシャル渦度方程式
51
0
0
0
0
51
5,
0
0
0
+
5
+
6
6
を解くために、領域および境界条件を設定する。領域は対流圏中緯度の力学を簡単に表現するた
め、東西方向には周期境界条件、南北方向および鉛直方向には剛体壁をおく。数式で表現すると、
# :;% #
# % である。境界条件は、
:;" :;"% 0
:;" :; 0
0
6
:;" 6
6
まず、式 6 および 6 から導出される準地衡ポテンシャル渦度方程式
51
0 0
5
+
0
6
をもちいて、方程式がエネルギー保存則を満たすことを示す。式 6
する。全領域積分は、 0 0 で、移流項は
01 0 となり、エネルギー
5 0
0
0 0
0 0 6
6
5 6
0
0
に対して、エネルギー保存則
5
をして、全領域で積分
で表す。
0
5
+
が成立する。但し、計算では部分積分と境界条件 6 から 6 を用いている。
次に擾乱の運動エネルギーおよびポテンシャルエネルギーの変換について考える。式 6 お
よび 6 を線形化すると、
52
52
0
5
0
2
,
0
2 0
5
+
+
6
6
となる。ここで、擾乱の運動エネルギー
およびポテンシャルエネルギー を
0 0
5
+
0
6
と定義する。これらの時間変化を考えるために、式 6
0
える。まず、
2 0
で、
である。そして、
2 0
0
0
,
となる。また、
0
0
0
および式 6
2
0
2
となる。一方、
0
+
0
0
2
0
+
2 0
を考
0
0
6
0
2
0
であるから、擾乱のポテンシャルエネルギーの時間変化は
5 + 0
0
である。したがって、擾乱の運動エネルギーの時間変化は
+
0
0
0
0
2
0
2
2
0
0
20
6
+ 0
6
となる。式 6 および式 6 の右辺は、それぞれエネルギー転換項を表している。基本場
2
を順圧的エネルギー転換といい 8 で表
+ 2 0 0 を傾圧的エネルギー
す。基本場と擾乱場のポテンシャルエネルギーのやり取り 0 転換といい 8 で表す。また、
+ は擾乱のポテンシャルエネルギーから運動エネルギー
と擾乱場との運動エネルギーのやり取り 0
0
へのエネルギー変換である。エネルギー保存則 6 より、基本場の運動エネルギーおよびポテ
ンシャルエネルギーを
で表すと、擾乱場の計算のアナロジーを適用して、
8
5 8
6
8
8
6
8
5 8
6
8
8
6
6
となる。ただし、8 は子午面循環による基本場のポテンシャルエネルギーから運動エネルギーか
らエネルギー転換を表している。このような基本場および擾乱の各エネルギーの時間変化を計算
し、チャートにすると、ローレンツのエネルギー図を書くことができる。
ここで、傾圧不安定とは、基本場のポテンシャルエネルギーから擾乱場のポテンシャルエネル
ギーへエネルギー変換が起こり、擾乱場のエネルギーが増大することを言う。ちなみに、基本場の
運動エネルギーが擾乱場の運動エネルギーにエネルギー変換が起ることによる不安定を、順圧不安
定という。現実大気では、擾乱の活動による というエネルギー変換、ま
たは子午面循環による が起って、大気を駆動しており、順圧不安定は基本的に起ってい
ない。但し、惑星大気波動や熱帯の偏東風波動は順圧不安定であると言われている。
式 6 および式 6 の 8 と 8 より順圧不安定と傾圧不安定の特徴をある程度把握す
ることが可能である。式 6 と式 6 を足し合わせると擾乱のエネルギーの時間変化を表
す式
+
をうる。 と、
2
<
5 2
0
0
+
5
なので、順圧不安定に対しては 0
が正 負 の時、不安定が起る条件は
に対して西 東 に傾かなければならない。
亜熱帯ジェット付近を考えると、
2
0
6
で、傾圧不安定に対しては と考える
0
2 0
が正 負 である。つまり、等位相線は座標
はジェット軸の北で負、南で正である。また、
2
はどこ
でも正である。傾圧不安定は等位相線が西に傾いてれば起こり、順圧不安定は中央部を東に引っ張
られたような形の時起ると言える。実際は、ジェットの入り口付近で傾圧渦が励起され、線型論の
範疇で発達する。十分発達した傾圧渦は、波数と定常波数の関係から位相を東に移流され、渦がく
の字型になって順圧的エネルギー変換によって、基本場にエネルギーを引き渡し傾圧渦は消滅す
る。ここで、8 の意味は運動量フラックスであり、8 の意味は熱フラックスである。傾圧不安
定の意味は
2
は温度風の関係から温度の南北勾配に対応するが、温度の南北勾配を解消するた
めに、特に下層の熱フラックスを北向きに運ぶ これが渦の位相が西に傾くことに対応する とい
うことである。
問題と 問題
線型不安定問題を扱う際、ある成長率と振動数をもったノーマルモード解 0 8
%
'#34
を仮定する。ただし、: は複素数値関数であり、 5 3 5 3 である。4 は成長率である。
問題の仮定は、2 ? 、, @
一定、 一定 である。すると、線形化ポテンシャル
渦度方程式は、
?
8
5
+
8
4
8
6
であり、境界条件は、
8
8
?
8
:
; ?8 ?8 6
6
6
である。境界条件 6 より、8
?
とできて、すると、方程式は、
5 4
であるから、一般解は
となる。?
!& +
5 =
6
となる。但し、> &
である。境界条件は、
5 ? ?
5 ? 5 4
+
6
6
6
であり、これに一般解を代入して、固有値問題を解く。
?
?
?
>
?5>
? 5 >
>
&
=
6
したがって、固有値は方程式 6 が非自明解を持つと仮定して、行列の行列式をゼロとして求め
ることができる。すると、
?
?
>
となり、更に、
>
?
?
?
>
! >
5
! > >
>
6
これより、固有値 が複素数になるためには、> ? >
>
6
となることが必要であり、これ
が 問題における不安定の条件である。よって、 問題では、不安定条件は仮定する波数
にのみ依存し、基本流のシアーには依存しない。
この不安定波動の位相速度は、実は における基本流の速度に等しい。基本流の速度に等
しくなる高度を舵取り高度 A +*+ という。 問題の問題点は上端が固定され、波動の
上方伝播を許さないなど非現実的な仮定をしていることも然る事ながら、中立曲線が波数によって
決定しており、その波数の長波長側には不安定領域は存在できない。これを
+!1* ) !B とい
?5> う。しかし、固有ベクトル
を流線に置き換えて図示すると、現実に見られる温帯
?5> 低気圧の構造をほぼ再現していることがわかる。したがって、傾圧不安定波動の理解にはこの方法
で十分であるとも言える。
問題は、 問題でおいた非現実的な仮定を取り除き、領域も # としたもの
である。, 面で、波動は鉛直にも伝播する。すると方程式は、
?
/ 5
>
,
5
+ ?
/
6
である。境界条件は、式 6 と同じである。鉛直には有界な関数を求める。この方程式は、合流
型超幾何常微分方程式に帰着することができて、数学的に解くことが可能であるが、むしろ数値的
に解いて解を表示した方がわかりやすい。その方法は、大気を何層かにくぎり、0 と を交互に挟
むような層を考える。それぞれ、@ @
式 6 は、線型演算子
+
,
2
?
@
@
および、 @ @
を用いて、
0
@
@
という層とする。すると、
と書ける。ここで、有限の層に区切っ
たとき、 は行列となる。これにノーマルモード解を仮定すると、
値問題
0
と出来て、固有
6
0
となる。ある条件を満たせば、= 個の固有値、固有ベクトルが求まり、波数、鉛直シアーと成長率
の関係を求めることができる。このようにして、 問題を解くと、驚くことに中立曲線を除
く、殆んど至るところ不安定になる。短波長側には、 問題の時表れた不安定 モー
ド が見られ、長波長側には 7 モードが見られる。 モードは短波長側の最大成長率
をもつところで見られ、下層の熱フラックスが大きいという特徴がある。また運動エネルギーへの
変換も多く見られる。7 モードは、大気中央で大きく位相を変えるため、運動エネルギーへの
変換が顕著にみられない。
傾斜対流
成層シアー流体中の運動を考える。 と 5 Æ に挟まれた間で不安定を起こすような運動は図
のような運動に限られる。上記のような運動を考えた場合、パーセルに働く力は、
Æ *
Æ
& ,
6
正弦定理より
Æ
&
6
,
Æ
&
6
,
A
および 6 より
Æ A
A
:
B
* Æ
Æ
& ,Æ * Æ
&
A
,
& ,
& A
Æ
Æ
6
とすると、A 5 , B より、
&
,
A
& ,
& A
Æ
& , & B
&
,
5 B
, B
)
6
に対し、極大をとるような A を求めると、
)
,
したがって、A
従って、 ,
<
,
となり、, および <
&
A
,
&
A
,
6
のとき最大浮力を得る。
が傾斜対流では起こっていることが分かる。これがパーセル法
を用いた傾圧不安定の理解である。4!C のエネルギーサイクルにおいて、傾圧不安定のエネル
ギー変換を、平均場のポテンシャルエネルギーから擾乱のポテンシャルエネルギーに変換する部分
と、擾乱のポテンシャルエネルギーから擾乱の運動エネルギーに変換する部分に分けて考えた。し
かし、傾圧不安定は、このような分離はできない不可分な現象である。これは、前節で見た 7
モードではなく、 モードこそが、実際の移動性擾乱を説明するモードということとも関連
する。
方程式を用いた診断
式 6 および式 6 より時間変化項を消去することで、鉛直流 に対する診断式である 方程式を得る。
= 5 +
1 0
= をすると、
+
0
1 0
0
5,
0
0
+
0
5
5
+
+ ,
0
6
右辺は の楕円型演算子を受けているので、これは !&&! 方程式とみなすことが出来る。複雑
であるが、この方程式を説明すると、
絶対渦度の移流
温位の移流
6
ということになり、多くの場合、 と が同符号になることを意味する。実際、 モードに
おいて、暖気移流しているところでは、上昇流が発生し、寒気移流しているところでは下降流とな
る。この考え方は、前節で <
と <
が不可分であると言うことに関連する。
また 方程式は、 準 定常波動の場合にも適応できて、テレコネクションパターンに置ける等
価順圧な低気圧と高気圧の間では上層で発散が生じ、あるいは高気圧と低気圧の列の間では上層
で収束が生じる。これは等価順圧な低気圧と高気圧は、上層のほうが渦の強さが大きいため、中
層で寒気、暖気の偏差をそれぞれ生じる。それに伴い、渦度の移流または温位の移流を考えれば、
式 6 より、低気圧と高気圧の間の中層で <
となる。従って、発散パターンが生じること
となる。
傾圧不安定に関する種々の問題
ここまで述べてきた大規模場の不安定理論は、 と の先駆的な研究
以来、多くの研究者によって拡張発展してきた。たとえば、球面の効果、基本流の3次元化、非断
熱加熱の効果、あるいは対地摩擦の効果を陽に取り入れた研究が精力的になされた。しかし、数値
予報モデルという形でこれらの研究の成果が社会に還元されるようになった現代、すでに傾圧不安
定理論は気象学の中でも古典に属する。とはいえ、不安定理論は気象力学を研究する上で重要な手
法の一つであり、大気の運動を理解する上で有効な考え方である。ここでは、今なお残されている
を思われる不安定理論に関する研究課題をあげておく。
不安定擾乱発達の非線形効果 擾乱の振幅が小さいときは、線型理論により、その発達は十分良く
記述されているが、成長し振幅が有限の大きさを持ったとき、無視していた擾乱の 次の非
線形項が重要になる。また、基本場ももはや一定ではなく、擾乱の初期より、安定な方向へ
変形されると考えられる。このことは逆に擾乱の更なる発達を押される効果となる。この様
な非線形効果で、帯状流と擾乱の間であるバランスした状態があるのか否か、完成された研
究はない。
不安定の物理的な意味 数学的に固有値問題を解き、その固有値が複素数であれば、流れは不安定
であると言える。しかし、このことをより物理学的なイメージで再解釈しようとする研究が
最近行われている。たとえば、波の過剰反射による増幅、 つの波動の間の共鳴的相互作用
による増幅を考える研究がある。また。等温位面上のポテンシャル渦度の保存するより、波
動現象を統一的に記述しようとする試みがあるが、いずれも長所、短所を持っている。
不安定波の最適励起問題 現実に生ずる低気圧の発達は、数日という時間スケールで生じており、
不安定理論が予期する での最大成長するモードが、この時間スケールでもっとも発
達する保証はない。この様な場合、ノーマルモード解の仮定で排除した成長が指数関数的で
ないモードである連続モードを考慮する必要がある。
気候に対する傾圧波の役割 地球規模のスケールを持つ現象を考える場合、よりスケールの小さな
総観規模擾乱は、その個々の波動自身が重要なのではなく、その集団としての作用である運
動量フラックスや熱フラックスが重要となる。この作用を地球規模のスケールの場より果た
して一方的にパラメタライズ出来るか、もしくは両者の間に相互作用が強くてそれは不可能
なのか、重要な問題である。
赤道波動
D &)! は、赤道波動の波動特性を浅水系の中で明らかにした。ここでは、あわせて鉛
直伝播も考える。
鉛直伝播
赤道 , 面上の ' * 方程式系 静力学平衡を仮定した運動方程式 は、式 60 6
5
5
5
5
5
5
5
6
6
6
6
"/ 6
5 , 5
8
5
5
!
8
/
8
,
5
5
5
'
ここでは、大気で一般的に用いられる対数圧力座標系を用いたが、後に変数分離により水平構造
と鉛直構造に分離すれば、前者は直ちに海洋に適応することが可能である。また、赤道上なので、
+
,
にとることが伝統とされるのでそれに従う。
となる。領域は南北方向に
基本流 東西平均流 を仮定し、線形化すると、
5
5
,
5
5
5
5
5
5
8
5
5 , 5
5
!
/
6
6
6
6
"/ 6
8
'
8
ここで、 および とすると、次のようになる。
,
5
但し、
! / '
"/ するとする。つまり、 5
6
6
6
5
6
8
8
5 , 5
8
5
/
一定 と仮定する。また、圧力と密度のスケールハイトは一致
。
6E 6 について、この微分方程式は、水平方向と鉛直方向に変数分離して解くのが定
石である。
;
2
;
6
;
C
;
6
; 6
; %
6
;
D
8
;
8
;
として、 6E 6 に代入すると、 6 および 6 より 2
;
同一であることが直ちにわかる。よって、2
;
る また、 6 より直ちに D
;
8
;
5
/
/
;
これより
;
8
;
8
/ 5
微分方程式 6 の特性方程式
の解は
/
/
5
'
;
8
;
;
鉛直構造は
定数は水平構造部分に押しつけ
*/
*/
*/
; 8
/
である。但し、' は負値もありうる。
6
6
6
*/
6
/
とおく。よって、
;
8
;
8
;
;
8
5
;
8
である。これらから、 6 は、
;
5
; 8
;
C
; @8
; @C
/
3'
6
5 3'
6
水平伝播
次に水平構造を考える。 6 と 6 は同型である。 6 は、
;
6 は、
;
但し、' */
/
5
5
'
6
;
5
;
8
;
/
6
を用いた。これら水平構造を示す方程式は浅水系方程式と同型である。
さらに、ノーマルモードを仮定する。
; ; ; ; %
F '#3
F F F %
%
4
6
すると、方程式系は、
3 F
, F
3 F
5
F
5
F
%
5 , F5
3
34 F
F
5 34 %
5
'
F
%
6
6
5
F 6
F
/
6
6
F
および F を消去すると、
+
F
53
F
53
4
*/
F
%
6
F
%
6
5 +4
さらに %F を消去すると、
F
5
,4
4
*/
を特徴的な水平スケールで無次元化する。 "@
半径という。すると、
F
5
*/
,4
4
, F
*/
F
", @
F
6
*/
で@
は赤道波の変形
F
6
微分方程式 6 の解が連続且つ無限遠方で有界であるためには、
*/
4
,4
5 6
が要求される。但し、
にたいして、
F F
/ となる。これには、無限遠方の境界条件である F
また、
Fと
F は、
%
<
'
3F
3 F
/ 4
"
/ / 4
"
'
54
"
'
54
"
6
が効いている。
/ 5
多項式を用いて
にたいし、
F F
%
6 の解は 3 6
6
6
が と同じ南北構造であることは、 6 より明らかである。
混合ロスビー重力波
まず、
*/
54 である。 6 に を代入すると上記条件から
となる。
*/
を ' で表現すると、
'
;
/
群速度は、
'
;
'
;
6
5 4 なら
6
'
;
;
'
なら
? 6
, 5 4 ? ?
4
,
の符号で、上方伝播するモードが決まる。
,
5
'
,
4
*/
上の等位相線は、4 5 ' 一定 である。4 は正としているから、'
なら東に傾く。 なので、F は /
赤道ロスビーと赤道重力波
、
F、
F
および
Fは
%
/ ,
, 5 4
<
5 4
F
%
の 平面
なら西に傾き、'
?
である。
式 6 に を代入すると、
,4
4
*/
,
*/
6
式 6 は 次方程式なので代数的に厳密に求めることが出来るが、ここでは近似的に低周波 長
波長 の解と、長周波 短波長 の解をアプリオリに求める。
とすると、
;
5
まず、低周波の解は、赤道ロスビー波であるが、
4
,
4
*/
, '
6
近似は長波近似と呼ばれ、4 が十分小さいことによって近似される。つまり、東西波長のスケール
が南北のスケール 赤道波の変形半径 より十分大きいと言う近似である。海洋や大気の現象では
ほぼ正しい。この近似の下では、ロスビー波の位相速度は、後述のケルビン波の位相速度の " と
いうことになる。一般の について、長波近似の下での赤道ロスビー波の位相速度は、
である。
次に、長周波の解は、赤道重力波であるが、
F
赤道ケルビン波
*/
5 とすると、
4
5
4
5
6
*/
"
6
の特解として、赤道ケルビン波が得られる。これは式 6 において、 する。
F %
F '
%
,4
に相当
6
となる。分散関係式は上式が有界であるための条件として、東進成分が選択され、
6
*/ 4
となる。
湿潤大気
湿潤大気の基礎用語
混合比 &'(
$ ")
*)
#
乾燥大気 添字 と水蒸気 添字 が混ざった湿潤大気に対し、混合比を
6
と定義する。混合比は、空気塊中の水蒸気が凝結しない限り保存する。 は密度である。
比湿 + &, $ ")
*)
#
湿潤大気において、比湿を
6
5 と定義する。混合比と比湿の関係は、
G
5 である。
6
水蒸気圧 - $ ".#
空気中の水蒸気圧を #% とすると、水蒸気圧に対する状態方程式
6
! が成り立つ。また乾燥大気の状態方程式は、
6
! であるから、式 6 と式 6 より、水蒸気圧と混合比の関係式、
E
を得る。但し、E -
!
!
仮温度 -/
6
である。
& $
" #
式 6 と式 6 より
!
5
!
! 5
ここで仮温度として
5
!
!
E
! 5
E
6
6
を定義する。これは、湿潤大気と同じ圧力、密度を持つ乾燥大気の温度である。式 を用いると、
状態方程式は、
6
! と書ける。
飽和水蒸気圧 飽和水蒸気圧とは、見ずと空気のある容器内で、蒸発量と凝結量が等しくなり平衡に達したとき
の空気の水蒸気圧である。飽和水蒸気圧と温度の関係式は、熱力学の第 法則と第 法則から演繹
される。水が水蒸気になるとき、蒸発熱 ; が生じたとき、ここに熱力学法則を適用すると、
;
5
;
但し、
は内部エネルギー、
となる。ギブス函数
5
5
A
6
A
6
はエントロピーである。ここで、式 6 と式 6 より
A
2
A
5 6
は相変化の前後で保存するので、状態 から状態 に相変化し
たとすると
5 A
A
A
;
! ;
!
6
を得る。但し、近似部分が水の比容が水蒸気の比容に対して小さいことを仮定した。 比容は密度
の逆数である。
式 6 はクラウジウスクラペイロン +)&)& +'! の関係式と呼ばれる。式 6 の
微分方程式を解くと、
+
となる。但し、 @ は ある。
;
!
6
であり、たとえば、 #,% の時、 #% で
ここまでの議論の蒸発と凝結を昇華 &)+ ! に置き換えると氷が水蒸気に昇華したときの
熱 ; に対する飽和水蒸気圧を得る。尚、; #H$% であり、
;
#H$% で
ある。
*, 012 &&*&( 012 *&33 の変換に関するコラム
相当温位 !"
相当温位には、 種類あり、混同を避けなければならない。まず、 つの断熱過程を示す。
6
湿潤断熱過程 !& 0 '!&& は、飽和、未飽和にかかわらず、空気塊の水蒸気が
凝結せず保存するような断熱過程である。
6
偽断熱過程 '&)! '!&& は、飽和した空気塊が水蒸気を凝結し全ての水蒸気
を取り去るような断熱過程である。
たとえば、湿潤空気塊の山越えを考えよう。日本付近の季節風をイメージしても構わない。
まず、未飽和の空気塊が山の斜面にそって上昇する。このとき、湿潤断熱過程により空気塊が水
蒸気を保ったまま上昇する。上昇すると、温度は下がるので、飽和水蒸気圧も下がる。従って、空
気塊はある高度で飽和する。この高度を持ち上げ凝結高度 4
!& ! 4*+G 44 と
呼ぶ。次に、飽和後は、偽断熱過程により、水蒸気を凝結させながら、水蒸気を完全に失うまで
あるいはある程度の水蒸気を残すまで になる。いずれの過程においても、湿潤大気における温位
を定義できるが、異なるものであることに注意しなければならない。導出部分は共通であるので、
まず導出よりはじめる。、 が水蒸気が凝結したとき、放出する潜熱は
; である。従って、
熱力学第 法則によると、
A
; 6
で除して、
+
;
;
6
6
6
温度変化は微小であるという 疑わしい 近似の下で、
+ 5
; を得る。
最初の湿潤断熱過程では、空気塊を
でのという意味である。式 6 を #
%
#
%
より #
%
まで積分すると、
6
% まで積分すると
; を得る。
次に、偽断熱過程を考える。空気塊を
より #
'
に持ち上げた。但し、添字 ; は 44
に持ち上げたとする。式 6 を
'
; 6
を得る。 を特に飽和相当温位 & ) -)*+ '! + ' ) と呼ぶこともある。
相当温位 、飽和相当温位 および温位 の各過程のおける保存性は以下の通りである。
温位 相当温位 飽和相当温位 乾燥 断熱過程
保存
保存
I
湿潤断熱過程
非保存
保存
保存
偽断熱過程
非保存
非保存
保存
44 の計算法のコラム
条件付不安定
ます、湿潤逓減率 !& +'& を用意する。乾燥逓減率は熱力学第 法則 A を で除することで、
J A *
6
を得る。但し、静力学平衡を仮定した。ここに * と について数値を代入すると J #,$%
となる。
湿潤逓減率は偽断熱過程に対して与えられる。式 6 より、熱力学第 法則の形に直すと
6 より
6
と 6 より、
で除すると、
!
!
5
従って、
J Æ 5
*
;
E
6
; ; ; 5
; !
においては、J #,$% である。
6
; 6
"
5
6
E
!
6
上記で示したように、J
?
J
と言うことが一般的である。逓減率は温度の鉛直分布が静的に安
定か不安定かを判断するのに用いられる。
図の黒丸のところに空気塊があったと仮定する。J
?
のとき、絶対安定で、
?
J
のと
き、絶対不安定である。絶対安定とは強い成層構造のため対流が全く起こらない事を意味し、絶対
不安定は仮に空気塊が未飽和であっても不安定による対流が起こることを意味する。
斜線内に
があるとき、つまり J
?
?
J
の時は、条件付不安定と呼ぶ。未飽和の空気
塊は、飽和に至るまで乾燥逓減率が適用されるので安定である。しかし、飽和空気塊に対しては、
湿潤逓減率が適応されるので不安定である。
条件付不安定の下で未飽和空気塊の強制上昇を考える。空気塊が、不安定により浮力を得る高度
を自由対流高度 4*+ !
K !* !G 4K という。黒丸を起点とする。未飽和空気塊は飽
和に至るまで、 J に沿って温度を減ずる。白丸に至り、飽和すると次に J に沿って温度を減ず
る。このとき、空気塊は周囲の空気の温度に比して低く浮力を得ない。やがて、三角印まで来ると
周囲の気温を上回り不安定となる。この高度を自由対流高度と言う。
対流有効ポテンシャルエネルギー #
熱帯の積雲対流の概説
内部重力波の不安定モードを考えると成長率は
4
4
5 5*
"
6
で与えられる。波長無限小の擾乱がもっとも成長することを意味する。実際は粘性が波数の自乗に
比例して働くので、この不安定成長率は修正され、ある波長の擾乱のところで、成長率が最大とな
る。その波長が数 と見積もられる。
ある大規模スケールの格子内にいくつもの積雲が立ったとする。図のように積雲内では数 $&
の上昇流 があり、それ以外の領域では補償流が数 $& であったとする ; 。雲量を E とすると、
平均的な は、
E
5 E
;
6
となる。これをパラメタライズする必要がある。中緯度では、静的に安定なので基本的にこの種の
対流は起こらない。この種の対流は次の形の不安定と比して「第 種」条件付不安定と考えられる。
第 種条件付不安定 ! !+ L& + !
A! ,G LA, は、前段落で示した大
規模なスケールの運動と相互作用し、大規模な運動が不安定成長することを言う。台風を例にとっ
て、LA, を説明する。まず、軸対称な円形渦を考える。接線方向の風は遠心力を含む傾度風平衡
である。台風のエクマン層内では摩擦力が働くので、低気圧の中心向きの流れが生じる。すると中
心ではエクマン収束がおき、上昇流を生じる。大気は条件付不安定であるから、下層からの強制上
昇より積雲が発生する。積雲内で雲の発生に伴う水蒸気の凝結が起こり、非断熱加熱を生じる。大
気下層の気圧は低くなる。気圧が低くなると、傾度風平衡を保つため、より強い接線方向の流れが
生じる。この過程は正のフィードバックであるため、台風は発達する。
海洋力学と境界層
温度躍層
海洋中の温度の鉛直分布を特徴づける温度躍層には次の つがある。
6
海洋のごく表面が日射によって、数 程度高温になる層。夜には消滅するので、日変化が
大きい。
6
季節温度躍層 夏に暖かい水が表層に形成され、下の冷たい水との間に出来る前線。 深
程度で季節変化する。
6
主温度躍層 極域で沈みこんだ 海水が氷と塩分濃度の高く冷たい水になる ものが深層に貯る
ことで表層との間に出来る前線。中緯度は から 程度、赤道域は から 程度。
高緯度以外では、全層一様にしようとする拡散と冷たい水を主温度躍層まで運ぶ移流が釣り合う式
で理解できる。ここに温度に関する移流拡散方程式がある。
5
5
5
5 6
そこから 項の釣り合いを考えると
6
この解は、
ただし、
5
'
6
および とする。おおむねこの理論によって、表層と深層の間に出
来る主温度躍層は説明されたと考えられて来た。
赤道域では、季節変化が小さく、また主温度躍層が浅いところに位置するため、主温度躍層と季
節温度躍層の別がない。躍層の存在により、混合が抑制される。これは大気における対流圏界面や
極渦の障壁に類する。
エクマン層 基礎方程式として、以下の運動連続方程式を与える。
5
5
5
5
5
5
+
5 + 5
5
6
6
6
平均流部分とそこからのずれに分けて、更に平均を取ると、 6 と 6 は
+
5 + 5
5
5
5
6
6
6
ここで、計算の際、
6
流体内で密度は一定であるというブシネツク近似 <!)&&- ''! ! を用いた。こ
れは大気下層と海洋中で有効な近似であり、音波を除去できる。
6
6 を使って、レイノルズ応力 M!+N& & &&
の項を導出した。
また記号として、
5
5
5
6
を意味する。
プラントールの混合距離理論 +N& + ! を用いて、乱流フラックスの項を
平均流で表現する。これを ,0 ! という。また、このようにして方程式を閉じたものにする問
題をクロージャー問題 +!&) '!+ という。モデル研究においては、乱渦を平均流でパラメ
タライズ ' C する問題という。
まず、仮定として、乱渦による混合は鉛直方向にのみ起こるとする。平均流の鉛直構造は乱流フ
ラックスに依存すると考え、
6
と書けるとする。すなわち、風の流れの鉛直シアーがあれば、この大きさに比例してシアーを解消
しようとする乱流フラックスが存在することになる。
+ はこれを導く考え方として、分子の平均自由行程を模した混合距離理論を提案した。こ
の考え方はしかし必ずしも現実的とは限らない。
ともかく、 6@ 6 は 6 およびそのほかの仮定から
+
5 + 5
5
6
6
今、移流は小さいとし、右辺第 項はエクマン層外の地衡風 流 を表現しているものとすると、
6
と 6 は
+ + 6
6
6
但し、 @ は に依存しない。大気のエクマン層は境界条件として、
6
F
F
6
また、海洋のエクマン層は境界条件として、
6
6
を課して 6 および 6 を解くことから得られる。
さて、 6 と 6 は、複 階の常微分方程式に帰着される。
但し、
;
;
+
;
;
6
とする。よって、 @
は
'
!&
6
'
&
6
'
!&
6
'
&
6
6
の線形結合で書き表される。但し、 +
とする。
まず、大気の場合、座標は右のように取り、境界条件 6 が課されるので、 6 は解とし
て不適切。 6 を満たすようにすると、解は
!&
&
6
!&
5 &
6
6
となる。この解をエクマン螺旋 &'+ という。また、" はエクマン層の厚さ ' と呼ばれ、自由大気との境界を表す。
次に海洋は境界条件 6 のように海洋上を吹く風応力によって駆動される。バルク式 <)+N&
! !)+
によると、風応力は、
F
F
A3 4 8!
8
6
;8
5
5
5
6
6
但し、8! はバルク係数 <)+ !Æ と呼ばれ、粗度 !)&& と境界層リチャードソン数
!) M&! ) により決定される無次元数である。風応力はベクトル風速とスカ
ラー風速の積に比例する。風速の自乗に比例するのは、乱流理論にある仮定をおいて導出される。
さて、中緯度海洋上の風応力ベクトルは海洋の駆動源として海表面に置き換わる。これが 6
で表現されている。海洋の境界条件 6 により、解として 6@ 6 は不適切である。
よって、解は境界条件により、
F
5 F !&
F
5 F &
5
F
F
!&
6
&
6
F
F
6
ここで、 とした。実に面白いことに、風応力として 層でさえ海流が F 5 F F 5 F となる。
F F
で与えても、表
更にエクマン輸送 &'! を考える。これは Æ 右に曲がる事がわかる。これは 6
と 6 を
% 区間で
を乗じて積分する。
エクマン輸送を )
)
) )
+ +
+
で表すと、
+ +
+
6
6
F
+
F
+
6
6
6
よって、Æ 右に曲がることが分かる。
風成循環 $
%
中緯度の風成循環
6@ 6 に戻って、
2
C
で表現すると、
+ C
F
6
+ 2
6
F
となる。 6 と 6 の )+ を取って、渦度方程式にすると、
,C
6
5+
D
F
F
6
を導く際に、連続の式 6 を使っている。今、
D
D
"
D
6
を考える。これはエクマン層内で風応力に伴うエクマン輸送で生じた湧き出し、沈み込みを表す。
これをエクマンパンピング ')' という。今、)+
を次のように与える。このよう
に与えると右のような流れになるはずである。まず、西風中ではエクマン輸送は南向き、東風中で
は北向きになる。よって、領域の中心 1 C! + でエクマン収束が起こり、水が内部領域に
押し込まれる。内部領域では第 次近似としてスベルドラップ平衡 A*)' + が成り立
つので、
,C
+ D
6
渦管は縮むので、渦は赤道方向に向かって、流れる。尚、西岸境界流 黒潮、メキシコ湾流 は上
記とは異なる力学によって決定している。
赤道の風成循環
赤道はコリオリ力が働かないので、混合層の構造は第 次近似的に非回転系の力学として考える
ことが出来る。すなわち、定常を仮定すると、
2
2
G
5 F
6
と形を変え、風応力が仮に東風なら、西向きの流れと海面高度の傾きが東が下、西が上、となるよ
うに応答する。すると、暖かい水は西に向かって移流するので、西岸に暖かい水が貯る。よって躍
層は西岸が下、東岸が上となる。
湧昇 5//(
エクマン輸送の応用として、湧昇を紹介する。
6
沿岸湧昇 陸に沿って風が吹くとエクマン輸送で岸から離れる方向になり、結果沿岸湧昇に
なる。
6
赤道湧昇 赤道を挟んで東風が吹くとエクマン輸送に伴う発散が生じ湧昇する。
倍増 下の気候
基本的な知識
ステファンボルツマン 67(/8&( の法則$ 温度 の黒体は,5 の放射束密度を射
出する.但し,ステファンボルツマン定数は,5 大気のない場合の放射平衡温度 ,-
/ は, . A:! で射出する地球放射
であるから,これらが釣り合ったところが,放射平衡温度
.
である.
9/:& は である.吸収する太陽入射
&!+! !
,
A
5
& + !
,
は,
5
:!
6
である.但し,太陽定数は,. / ,地球の反射率 アルベードG +! は,A として計算した.
は波長約 >& の地球放射を吸収する.地球放射や太陽入射の吸収は様々な過程でおこる.
地球放射の波長帯は / の法則から > から > の範囲である.同様に,太陽入射の波長
帯は 6> から > である.分子は基底状態から励起状態に遷移するとき,ある波長の光を吸
収する.> 付近の波長帯は,2 の振動回転モードで吸収する.また,3 2 の回転モードは,
> 以上の赤外線を吸収する.因みに,6> 以下の紫外線は 2
の光解離に関係している.
大気は,基本的に太陽入射に対し透明 (( で,地球放射に対して不透明 9
である.
キルヒホッフ ; の法則$ 局所 熱平衡下の物質において,吸収率と射出率は等しい.
成層圏は 2 が紫外線を吸収し,2 が赤外線が吸収射出する.これらが釣り合って放射平衡に
なっている.対流圏は 3 2 が赤外線を吸収射出し,対流によって放射平衡からのずれを埋め合わ
せる.
&¾ の役割
が増加すると,温室効果 ( ; により対流圏の温度は上昇する.地球放射
を大気の 2 や 3 2 が吸収すると,その分射出して地球に向かって照り返すので,地表面温度は
上昇する.
が増加すると,放射平衡からのずれを埋め合わせるため成層圏の温度は下降する.2 の
振動回転モードの吸収帯があるので,地表や対流圏からの赤外線を吸収する.キルヒホッフの法則
から,赤外線の吸収が増えた分,射出する.ステファンボルツマンの法則より,温度を下げれば射
出する赤外線に伴う放射束密度は減るので,放射平衡を保とうとする.
が増加すると,アイスアルベドフィードバック /:, 7,:) 高緯度域で顕著
に温暖化する.温度が上昇すると雪氷が融解する.するとアルベドが減少し,正味の太陽入射量が
増加する.放射平衡を考えると,これに伴い温度は更に上昇する.このフィードバックは,特に雪
氷域と非雪氷域の境界がある高緯度で顕著に働くものと考えられる.
が増加すると,夏季の高緯度の陸域が乾燥化する. 現状では冬に雪が降り,春の雪解けと
共に水が陸域から流出する.夏には降水より蒸発の方が盛んにおこり,陸域が乾燥化する.これが,
冬になるとまた雪が降る.これが温暖化により,雪解けが早まると,土壌を乾燥化させる夏が長く
なるので,乾燥化が進むものと考えられる.
が増加すると,熱帯の対流活動は強くなる.地表付近の気温上昇があることで,鉛直方向
の温度差を解消するため,対流活動が強化される.
が増加すると,水循環が盛んになる.全球的に温度が上昇すれば,クラウジウスクラペイ
ロンの法則から空気中に多くの水蒸気を含みうる.よって,蒸発降水過程か盛んになる.
が増加すると,ストーム活動は弱くなる.高緯度の顕著な気温上昇に伴い,中緯度の南北
の温度勾配は小さくなる.ストームは赤道側から極側に熱を輸送することで自身の運動エネルギー
を増しているので,これは弱くなることが予想される.
が増加すると,台風の個数は減るが強度は増す と言われているが,不明.
参考文献
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II@ M6 H6 A !)B@ " A& * !
+!+ + !+ ! & !
2
! ! !&'@
謝辞
@ @ E6
このノートは向川助教授が北海道大学に在任中、指導を受けていた著者が向川研究室の勉
強会をもとにまとめたものです。本ノートの内容は、向川研究室のホームページにて公開されてい
るので、学術目的で使ってもらう分にはどのようにお使いいただいても結構です。北海道大学で御
指導いただいた向川助教授、向川研究室でお世話になった荒井美紀博士には、多大なる感謝の意
を表します。また、本ノート作成にあたり協力いただいた共に学んだ同期、後輩諸氏にも感謝致し
ます。
特殊函数
'
函数
赤道波動の伝統的な導出に際し、3 函数に対する知識が必要である。微分方程式 6
の解が、式 6 で与えられるとする。すると、
5 / 5 / .6
/
という方程式になる。/ が 次の多項式であるような解
/ &
5 & 5 &
5
5
& .6
を仮定し、式 .6 に代入して、各項の釣り合いを考えると、
5
& 5 & &
& 5
&
& & したがって、
&"
"
" 'Q
'
偶数G
& '
&"
'
奇数
.6
これより、3 多項式が次のようなものであることがわかる。
/ たとえば、/
@
" "
/ @
/
" 'Q
@
'
/ "
.6
である。式 .6
より、関係式
/ / .6
これを式 .6 に代入すると、
/
/ 5 / という漸化式をうる。
.6
球面調和函数
球面調和函数展開は、大規模気象力学のモデリングにとって重要である。その方法論の基礎とな
る部分を概説する。
4
(, 微分方程式
4 微分方程式
5 5 .6
に対して解を考える。ここで境界条件として、
の解を求める。今、 .6
?
とする。解を多項式展開の形に仮定すると、
.6
& である。式 .6 を .6 に代入すると、
& 4 4
4& 5
5 & .6
式 .6 を整理すると、
#
5 4
%& 5
4 4
4
5 4
5 &
!
の釣り合いから、
#
5 4
%& 4 4
4
5 4
5 &
.6
式 .6 は、4 となれば、それより高次の項に関し、 つおきに に事を意味する。また、式
.6
において、& および & とおくと、
5 Q
5
5 5 Q
5
QQ 4 Q
5 4
QQ
QQ
4 QQ
5
.6
同様に、& および & とおくと、
Q
5 5
5 Q
5 5
QQ
4 5 QQQ
5 4 QQ
5
4 5 QQ
.6
が偶数の時、式 .6、奇数の時、式 .6 とすると、4 函数を 次の多項式として定
義する事が出来る。
実は、 が奇数の時、式 .6、偶数の時、式 .6 としても、方程式 .6 の解にはなるの
であるが、境界条件 .6 を満たさない。
係数を求める為には、式 .6 および式 .6 を 4 として、下方に向かって解くと良い。
式 .6 の 4 とすると、
一般に、4 &
#
G QQ
Q
5 %& &
に対して、
&
従って、& 5 QQ
5 5 & とおいて、
Q
5
5
.6
各 にたいして、具体的に式 .6 を表記すると、
G .6
G .6
G G G
G
.6
.6
5 .6
5 .6
図示するとこのようになる。
4
(, 多項式の正規化と直交性
まず、4 多項式 G
が、# % で定義されているとして、この函数の ; ノルムを評
価する。その前段として、M!)& の公式
G Q
.6
を証明しよう。
5
4
#
& #
#
#
% 5
5
4
5
5
4
4
" #
&
#
#
#
$ 4 4
4 4
4
4 5 4 5 '
は偶数
'
は奇数
G 次に、
を求める。
G
G
ここで、 G Q
Q
G G は偶函数ということに注意すると、これを
G
回微分したものは、 が偶数
なら奇函数、 が奇数なら偶函数である。従って、G を乗ずれば、必ず奇函数になるので、よっ
て、#% である。この積分は、さらに部分積分すると、
G
Q
Q
G
G
となるが、先程と同様に、 なら偶函数である。従って、G を
G
回微分したものは、 が奇数なら奇函数、 が偶数
は G と偶奇が逆なので、これを乗ずれば、必ず奇函数になる。
よって、#% である。これらの性質を利用して、部分積分を繰り返すと、
G
Q
QQ
G
QQ
Q
Q
!&
QQ QQ
Q
5 QQ
5 ' ただし、積分 H !& に対して、
H
!&
(
!&
& という漸化式を用いると、H H
QQ
5 QQ
!&
)
H
!&
!&
ということがわかる。
最後に直交性を証する。' < とする。
G" G G" G "
"
'Q
"
" 'Q
G "
G
"
"
"
"
&
ここで、G の次数が であることを用いた。
4
(, 多項式に関する漸化式
ここで、幾つかの漸化式を証明する。
5 G
5 G
5 G
ここで表記の簡便性の為、 が偶数の時 " となり、奇数の時 "
.6
となるような数を #"% と
する。すると、
G G G 式 .6 の
4 5 4 5 を
4
""
4
4
4Q 4 Q
4 Q 4
Q
4
Q
4
.6
.6
4Q 4 5 Q
4 Q
4 5 Q
5 Q
4
.6
Q
.6
に置き換えて、 の項の係数を比較すると、左辺 項の比は
4 5 4 Q
4Q 4 Q
4 Q 4Q G である。よって、
5 4 5 4 4 5 G
4 5 5 5 G 5 G G .6
式 .6、式 .6 および式 .6 を微分すると、
G
G
G
4Q 4Q 4 5 Q
5 Q
4
4 Q
4Q 4 4 4 Q
5
4 5 Q
4 Q 4
Q
Q
4
4
.6
.6
4 Q
.6
となる。式 .6、式 .6、式 .6、および式 .6 に対して、 の各項を比較
すると、その比は " 4 5 "
G
4 "
4
G
となるので、よって、式 .6 は成り立つ。
5 G
.6
式 .6 を微分すると、
5 G 5 G 5 G 5 G
.6
式 .6 を 倍して、
G
G 5 G G .6
式 .6 から式 .6 を引くと、式 .6 を得る。
G
式 .6 を
5 G
G .6
倍すると
5 G 5 G 5
5 G 5 G
.6
式 .6 から式 .6 を引くと、式 .6 を得る。
G G G .6
式 .6 に を乗ずると、
G
式 .6 の を -
G
に置き換えて、式 .6
G .6
から引くと、式 .6 を得る。
4
(, 陪微分方程式
4 陪微分方程式
5
'
5 .6
の解は、4 関数の導関数で表現できる。
"
.6
と置くと、
"
"
'
' ' '
'
" " " .6
5
.6
となるので、これらを式 .6 に代入すると、
' '
5
' '
'
5
'
5 5
となるから、
'
5 5
' 5 ' 5 .6
一方、式 .6 を 回微分すると、
" '
"
' '
"
"
'
"
5
5 "
従って、
" 5 '
"
5
' 5 ' 5 "
.6
式 .6 と式 .6 を比較すると、
"
G
"
"
"
G .6
として式 .6 の解を求める事が出来る。これを 4 陪関数という。
式 .6 より M!)& の公式は、
"
G
Q
"
"
"
.6
ここで、' が一定に対して、G" のノルムの大きさと、G" の直交性を示す。まず、
" 5 'Q
QQ
G
Q
QQ QQ
'Q
'Q
5 'Q
5 QQ
Q
"
5 'Q
5 'Q
となる。直交性は、4 多項式の時と同様に部分積分し、次数より微分の回数の方が上回る
事を使って示される。従って、
"
"
G G
-
Æ
5 'Q
5 'Q
.6
4
(, 陪函数に関する漸化式
ここで、幾つかの漸化式を証明する。
"
5 G
'
式 .6 に対して、 "
"
"
5 G
式 .6 の ' を '
"
G
"
"
5 G
"
"
"
G
"
G
5 G
5 ' .6
5 G
"
G
"
5 G
.6
を施すと、
"
5 'G
"
"
5 G
"
G
として、式 .6
' 5
を施すと、
" G "
" G
"
"
"
5 G
また、式 .6 に対して、 "
"
"
"
5 'G
"
G
"
'
"
G
"
G
5 "
5 ' 5 G
" G
.6
に代入すると、式 .6 を得る。
5
5 '
'
"
5 G
.6
式 .6 に、 -
"
"
"
"
"
を施すと、
"
"
" # G G 5 "
"
5
"
"
'
5 5
G
5 G %
"
"
'
' G
"
"
5 '
"
"
'
"
"
G
"
'
'
"
5 G
球面ラプラス方程式の固有関数
ラプラス方程式
8
を考える。球面座標で表現すると、
8
5
8
% A
! R %? 8
5
8
5
8
%
8
%
8
5
%
.6
8
.6
!&
% 5 !
.6
R
.6
?
.6
と変数分離すると、
!
R
5
%
%
R
%
5
5
!
'
5 !&
?
%
5
'
式 .6 は、式 .6 と同型であり、式 .6 は振動方程式と同型である。従って、直交基
底として、
5 "
を、' :
および 5 'Q
5 'Q
"
G
& %
!& '
.6
& '
として取る事が出来る。また、この基底を用いて球面上で
定義された任意の関数を展開する事が出来る。
+ % &
%
& % 5
G
5
"
"
"
"
G
& %#&" !& ' 5 =" & '%
& % !& ' 5 " & % & '
.6
.6
ただし、
"
& %
"
& %
&"
="
:
:
+ % !& '
.6
+ % & '
.6
5 'Q
5 'Q
5 'Q
5 'Q
"
" %G
"
" %G
& % !& %%
.6
& % !& %%
.6
- 球面調和関数展開の数値解法
M!)& の公式等により低次の球面調和関数を具体的に書き下すとこのようになる。
& % G & % & %
& % & %
G
G & % & %
G
& % !& %
G
G
& % & % !& %
& % & %
G
&
!& %
%
G
& % !&
G
& % & % !&
%
%
G & % !& %
.6
さて、数値解法では、必ず有限の切断が必要となる。ここでは、三角切断 >)+ >) !
と平行四辺形切断 M!! >) ! の 通りの流儀を紹介する。まず、三角切断では、
全波数が同じくなるように
+ % #
&
& % 5
G
# "
"
& %#&" !& ' 5 =" & '%
G
.6
とする。一方、平行四辺形切断では、東西波数を尊重して、
+ % #
&
G
& % 5
# "#
" "
"
G
& %#&" !& ' 5 =" & '%
.6
となる。波数が大きくなれば、式 .6 が良いのは言うまでもない。
以下、実装の際の注意点である。
6
" & %
G
は規格化したものを使う。高次の G" & % は、端点付近で非常に大きな値をと
る為である。規格化した G" & % を以下では、G;" & % と書く。
6
& %
G;
;
および G
& % は、M!)& の公式を用いて計算する。
& %
G;
;
G
& %
6
"
G;
& %
5 Q !& %
Q
5 5 .6
5 Q !& %
& %
5 Q
.6
;
;"
および G"
& % から G & % を求める。
"
G;
'
5'
& %
5 ' 5 5 '
5'
'
'
5'
式 .6 と式 .6 は台形公式により近似的に求める。
6
式 .6 と式 .6 は台形公式により厳密に求める。
& %
"
G;
6
"
G;
& %
.6
近似
量子力学で半古典近似の際に必要な /,< 近似は、時間依存する振動数をもつような波動方程
式全般に適応可能である。しかし、その運用には、数学的な厳密さを維持するために、相当大きな
制約があることも忘れてはならない。 次元 A! 方程式と同型の方程式を用意する。
5
<6
ここで、 !& . とおく。すると、
.
5
.
.
<6
<6
となり、これに対し、/,< 近似として振幅の時間変化がと位相の時間変化に比べ十分緩やかであ
ると仮定すると、
.
となり、この解は初期条件 @
&
&
<6
の下で
!&
$
<6
となる。
式 6 に、定常順圧を仮定して、0 0; '#3
;
0
となる。南北波長に相当するのは、
,
5
4
2
4%
を代入すると、
,
4
2
;
0
<6
の逆数の平方である。しかし、折り返し緯度付近では、
これは無限大になる。したがって、位相変化は急激になり /,< 近似は成り立たない。おおむね大
きな波長の波動伝播には問題ないとされているが、注意が必要なことは言うまでもない。
数値フィルター
<+! で数値フィルターとして採用されるのは、荷重移動平均である。荷重移動平均
を用いた数値フィルターについて、概説する。
時系列データのフーリエ展開
# :
で定義された函数 + が、+ +
: および、+ + : を満たすと仮定す
る。+ は 級函数または 4 級函数に属するとする。この時、
+ &
5
&
!& 5 = & 6
とフーリエ級数展開することができる。ただし、フーリエ係数は、
&
=
:
+ !& 6
+ & 6
:
6
# を等
である。この連続関数の知識を応用して、離散データに対するフーリエ展開を考える。
4:
間隔に区分する点上で関数の値 + が定義されているとする。ただし、+ +
@
で4
:
@
の上にデータが存在するので、データは @ 5 個存在することとなる。また、連続での条件と同
様、周期関数であることを仮定するので、+ + # である。この時、フーリエ展開は、@ 項目で
打ち切りになり、
+
&
5
# !&
&
4:
4:
5 = &
@
6
@
となる。また、フーリエ係数は、それぞれ数値積分を台形公式により実行することで厳密に得られ
る。それらは、
&
# @
+
!&
4:
@
# =
@
+
&
4:
6
@
で計算できる。
"証明#$
は非負整数とする。このとき、
# #
"
!&
4:
@
!&
4':
@
ここで、 にたいして、
!&
4:
@
# # # !&
7
@
4:
5 :
4 '
5 4 :
!&
@
!&
@
5
@"
7
'
5 4 :
@
であることに注意すれば、' 5
5 !&
:
4 '
@
6
を考える。 が奇数の時は
@
4:
5
@
7
であり、 が偶数時は
4:
@
"
&
5
!&
!&
より式
4:
@
6
4:
@
5
7
4:
@
5 :
5
:
の第 項目は で、第 項目についても
の時のみ、 でないことがわかる。式 6 は、
# #
!&
"
4:
@
!&
4':
@
# #
"
Æ"%
@
6
である。同様に、
# #
&
"
# #
"
4:
&
@
4:
@
&
4':
!&
@
4':
@
@
6
6
である。式 6 から式 6 を使って、式 6 を式 6 に代入すると、
@
# &
5
# "
&
!&
4':
5 = &
@
4':
!&
@
4:
@
@
# #
"
&" Æ"%
&
となる。
荷重移動平均のスペクトル
前節における離散データ
%%% # に対して、荷重移動平均データを
+
*
6
+
として定義する。ただし、; は @ に比べて十分小さいとする。また、4
のときと @
;
のときは、* が定義できないが、これは周期境界条件を適用して、
;5
4
の 4 について *
は定義でき、* * # が成り立つものとする。すると、この * %%% # に対して、フーリエ
展開を適用することができる。
# * &
5
!&
&
4:
5 = &
@
4:
4
@
6
@
で、ただしフーリエ係数は
&
=
@
@
# # *
!&
*
&
4:
6
@
4:
6
@
である。+ と * のスペクトルを比較する為に、 & = と
6 と式 6 に式 6 を代入すると、
&
=
@
@
# + !&
# + &
& = を比較することとする。式
4:
6
@
4:
6
@
式 6 および式 6 に、式 6 を代入する。まず、準備として、
# #
"
!&
4:
@
!&
4
#
"
5 ':
@
!&
':
@
# #
!&
"
#
!&
4:
@
4:
@
!&
!&
4':
@
4':
@
#
!&
&
"
"
&
@
':
#
':
@
!&
# ':
@
4':
!&
@
&
4:
@
@ Æ"%
':
&
@
@
4':
@
!&
:
@
と同様にして得られる
# #
!&
4:
"
@
4
&
5 ':
@
:
&
@
@
を用意する。これらの関係式を使うと、
# &
@
&
!&
&
=
=
!&
:
@
:
!&
@
また、同様に、
@
4:
+ !&
:
5 = &
@
:
&
&
:
&
=
&
!&
&
:
&
@
:
&
:
&
@
:
&
!&
@
6
@
を得る。これらを行列表示すると、
6
@
&
@
5 =
:
&
=
6
@
となる。式 6 において、行列は回転拡大の行列であるから、拡大率は固有値の絶対値であり、
位相の遅れは固有値の偏角が表現する。固有値は
!&
:
@
3
&
:
6
@
であるから、スペクトルの大小比較はこの固有値の絶対値
!&
:
@
&
:
@
6
が示していることになる。
多くの場合、非対称な荷重平均はとらないので、 である。この場合、
&
&
=
=
!&
!&
!&
である。
:
@
:
@
:
@
6
6
6
荷重平均を用いた数値フィルターの作成
対称 荷重平均フィルターの場合、求めたいスペクトル分布から、 を決定することができる。
今、スペクトル波形である式 6 はまさに、フーリエ展開の形をしている。ただし、; は @
より十分小さいと仮定しているので、 をフーリエ展開する場合、誤差を生じる。そこで、その誤
差分のエネルギーを補填する必要がある。よって、
ただし、A は、 &
!&
:
@
#
A
!&
:
6
@
の平均と、 の平均との比である。また、; が大きいとき
確かに鋭いフィルターを作成することができるが、その分ギップスの現象により、不要なスペク
トルレンジのエネルギーを拾ってしまう。そこで与える を仮に矩形のスペクトルとしたとして
も、不連続な部分はなるべく滑らかにすることが望ましい。数学的には軟化子 ' により、8 級まで滑らかにできるが、簡単に !& で 8 級程度の滑らかさを確保すれば十分で
あろう。
再帰型数値フィルターの例 村上フィルター
周波数 および での応答を としたいとき、
;
& = = 6
& = ;
= ;
6
を行なうと、目的のフィルターとなる。ただし、式 6 は時系列の前方より 4 演算を実行するのに対し、式 6 は時系列の後方より 4 @
@
@
と
と演算を逐次
実行する。また、パラメターは
&
=
=
& S
S9 5 !& S
9 S9
5 S9 5 9
9
5 S9 5 9
S9 5 9
5 S9 5 9
& S
5 !& S & S & S
5 !& S 5 !& S 6
6
6
6
6
である。S はデータの時間間隔である。これに関する詳しい解説は、D) を参照の
こと。
検定に関するメモ
以下、統計上の検定を行なう時に有効な方法をメモしておく。
標本問題
分散 5 が既知の時の平均値の検定で、標本平均 # はある値 > に等しいという帰無仮説を立
てる。 変換
@
の両側
A
> @ #
は、標準正規分布 @ をしている。有意水準 A に対して、
5
点 & に対し、 &
の時、仮説を棄却する。
分散が未知の時の平均値の検定で、標本平均 # はある値 > に等しいという帰無仮説を立てる。
標本不偏分散
に対し、
変換
5#
@
> #
5#
#
@
# は、自由度 @
に対して、
# の両側 A 点 # %& に対し、 # %&
の 分布 # をしている。有意水準 A
の時、仮説を棄却する。
分散の検定で、標本不偏分散がある値 5 に等しいという帰無仮説を立てる。I 変換
@
5#
5
A
は、自由度 @
点 I# %& に対し、I
I
の I 分布 I# をしている。有意水準 A に対して、I# の上側
I# %&
の時、仮説を棄却する。
標本問題
標本間の平均差の検定は /+ 検定という。 標本間の平均差がないという帰無仮説を立てる。
'
5(%'
)
は、自由度 % の 分布に従う。ただし、% は、
5(%'
)
5
#
5
5)%#
5)%#
@
5(%'
@
)
%
)
5)%#
@
5
@
を満たす。有意水準 A に対して、
* の両側 A 点 *%& に対し、 標本間の分散比の検定には、J
J
ぞれ
5(%'
5
は、自由度
)%#
' J
# %& @
)
' # %&
J
@
*%&
の時、仮説を棄却する。
分布を用いる。 標本間の分散が等しいという帰無仮説を立てる。
の J
とすると、J
' 分布に従う。J#
の上側 A" 点、
' ' # %& "J# %&
J
A"
の時および J
点をそれ
' # %&
J
の時、仮説を棄却する。
参考文献
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