五 雲 史 竜 の 旅 NO.2 五島観光歴史資料館 今回は,キリスト教が日本に伝わってきた理由を調べてみました。 西洋史を紐解いてみると,いろいろな事情があったことか分かっ てきました。 まず,当時のスペイン・ポルトガル・ローマの置かれた状況を紹 介することにします。 スペイン・ポルトガルが海外進出へと舵を切った理由 理由①… イスラム勢力の脅威 [十字軍遠征の時代]…聖地エルサレムの奪回(イスラム教の脅威に対抗) ◎ エルサレム(1km四方の面積)は,ユダヤ教の歎きの壁,キリスト教 の聖墳墓教会,イスラム教の岩のドームが共存する聖地。 〇 11世紀~13世紀…ローマ教皇の呼びかけにより,十字軍がイスラム 領域に侵攻。 〇 セルジューク朝はエルサレムを領土とし,ビザンツ帝国を脅かすように なってきた。 〇 ローマ教皇は,聖地エルサレムを奪回するためキリスト教の軍隊を派遣。 (ヨーロッパ全体にキリスト教としての一体感が生まれた。) (イスラム世界の人々には反感が生じ,聖なる戦い(ジハード)へと進む。 第1回十字軍…聖地回復のための聖戦 第2回十字軍…勢力を盛り返してきたイスラム勢力に対抗するための戦。 第3回十字軍…神聖ローマ皇帝,フランス国王,イギリス国王が参戦。 第4回十字軍…ベネチア商人の要求により,聖戦ではない商業上の戦い。 第5回十字軍…フリードリッヒ2世は,ローマ教皇からエルサレム奪回 のため十字軍の遠征を求められた。 結果=エルサレムの共同統治で合意 第6,7次の遠征へと続く 〇 十字軍の遠征で,エルサレムを占領できたのは第1回遠征のみであった。 ローマ教皇の権力の衰退につながった。 〇 1453年(享徳元年)ビザンツ帝国が,オスマントルコの支配下に置 かれるようになった。その結果,紅海からインド洋へ至る交易ルートは, イスラムの支配となった。 当時,十字軍が遠征しなくてはならない程,イスラム勢力は拡大 していました。しかし,十字軍の遠征は,ことごとく失敗。 スペイン・ポルトガルは,陸路による交易をあきらめざるをえま せんでした。つまり,海に活路を見い出す以外に生きる道はなかっ たのです。 -1- 理由②…宗教改革への対抗 ・1517年,ルターが宗教改革を始める。「信仰の拠り所は聖書によるべき。」 ・1541年,カルヴァンが宗教改革をはじめる。 〈ルターの宗教改革の背景〉 〇 免罪符に対する批判と聖書に基づくキリスト教の復活を願った。 ・サン・ピエトロ大聖堂建設にかかわり,ローマ教皇は免罪符を発行した。 (免罪符…罪の許しを表す証明書を発行し,教会建設の資金とした。) ・免罪符の発行より,教会が分裂するようになった。 (ローマ教皇批判…ルター,カルヴァンの宗教改革) ・プロテスタント(抗議する者)の増加 (スイス,フランス,オランダ,イギリスへ波及) ◇ポルトガル・スペイン・ローマ教皇は,プロテスタントに対抗するために, キリスト教を世界に広める必要があった。 理由③…ルネサンス…人間本来の姿,生き方を再生しようとする動き ・人間性の自由と開放,個性の尊重に支えられた科学技術のめざましい進歩があ った。(美術・科学・文学・建築・思想…) ・天文学,航海術の向上,快速帆船の普及,測量術(海図制作),羅針盤の 改良等の飛躍的な発展→長距離・遠洋航海が可能 理由④…マルコ・ポーロの「東方見聞録」の影響 ・ポルトガルは,イタリアの商人マルコ=ポーロが著した東方見聞録に記載され た「黄金の国(ジパング)」に関心が強かった。 ジパングはマンジ海岸(中国の江南海岸)から東へ1500マイルほど 離れたところにある,はなはだ大きな島である。 住民は色が白く,文化も進んでいて,顔立ちもよい。宗教は偶像崇拝で, まだだれにも従属していない。かれらがもつ黄金は無限であるといえるが, それは自分の島で産し,国王がその輸出を許可しないからである。 ……国王の壮大な宮殿の屋根はすべて純金であって,……宮殿の舗装や各 室の床もすべて金で,それも指2本の厚さがある。窓もまた金でできてい る。……この島の富はこれほど有名であったので,元のフビライ・ハンの 胸中に,この島を征服し領土としようとする欲望をかきたてた。 「大航海時代」と聞けば,何かしら心踊るものを感じます。 しかし,実際は命がけの航海でした。 どうして,命までを賭ける必要があったのかというと,「キリスト 教の拡大」と「貿易よる富の獲得」にあったと思われます。この二 つは,緊急性が要求されていました。つまり,切羽詰まった状況が, 大航海の扉をこじ開けたのだと思います。 次号は,フランシスコ・ザビエルについて紹介します。 ◇ 史竜くんからのお知らせ ・11月19日~12月25日まで,ウエダ清人絵画展「五島列島の教会」 を開催しています。 -2-
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