「子どもたちは今」―10 代の全国調査からみるスポーツ少女たち― 笹川

「子どもたちは今」―10 代の全国調査からみるスポーツ少女たち―
笹川スポーツ財団では、平成 21 年 6 月か
笹川スポーツ財団)となっており、高校を
ら 7 月にかけて、「10 代のスポーツライフ
卒業した後の継続した活動には結びついて
に関する調査」を、全国 10 代の男女 3,000
いないようです。
人を対象に実施しました。本調査は 2001
また、色分けで示したように、
「バドミン
年、2005 年に引き続き今回で 3 回目。最新
トン」
「バレーボール」
「なわとび」
「ウォー
の結果の中から、
「スポーツ少女」に焦点を
キング」は、男子よりも女子に人気の種目
当てたものを紹介いたします。
であることがわかります。男子については、
「サッカー」(34.8%)、「野球」(30.7%)、
1.10 代女子に人気の種目は「バドミント
「キャッチボール」
(11.4%)といった種目
ン」「バレーボール」「バスケットボール」
が人気となっています。
本調査では、過去 1 年間に運動・スポー
ツ※を行った 10 代に対して、その中でも「よ
※本調査の「運動・スポーツ実施」は、学校の部活動や
休み時間の活動は含めるが、学校の授業(体育など)
や学校行事のキャンプなどは含めない
く行った」運動・スポーツ種目をたずねて
います。表 1 は、
「よく行った」運動・スポ
2.10 代女子の運動実施頻度に二極化の傾
ーツ種目を、女子の順位が高い種目上位 10
向
番目までまとめたものです。これをみると、
10 代女子に人気の種目は、
「バドミントン」
「バレーボール」
「バスケットボール」であ
ることがわかります。この 3 種目は過去の
調査でも常に上位であり、この傾向は今後
も続くと予想されます。この 3 種目が人気
の要因としては、中学・高校の部活動で行
っている女子が多い(スポーツ白書 2006、
笹川スポーツ財団)ことがあげられるでし
ょう。また、上位 3 種目に続く「筋力トレ
ーニング」「なわとび」「ジョギング・ラン
ニング」に関しても、上位 3 種目の練習の
一環で行っていることが予想され、10 代女
子の運動・スポーツは部活動がメインであ
ることが推察されます。しかし、これが成
人女子になると、上位 3 種目の年 1 回の実
10 代の女子が、週にどの程度運動・スポ
ーツをしているのかを示したのが、表 2 で
す。目立つのは、「非実施」(過去 1 年間に
まったく運動・スポーツを行っていない)
の割合が 2 割もいることです。男子と比べ
ても、女子の方が非実施の割合が高いこと
がわかります。一方で、週 3 回以上行った
女子は 5 割を超え、2 人に 1 人は定期的に
運動・スポーツを行っていると言えるでし
ょう。ただし、こちらも男子に比べるとそ
の割合は低く、活発に運動・スポーツを行
っている週 7 回以上となると、10 ポイント
以上の開きがあります。
運動・スポーツは実施頻度が高ければそ
れでいい、というものではありません。し
かし、10 代女子の 5 人に 1 人が過去 1 年間
施率は「バドミントン」が 11 位、「バレー
にまったく運動・スポーツを行っていない
ボール」が 16 位、「バスケットボール」が
現状は、注視すべきでしょう。半数以上が
30 位以下(スポーツライフ・データ 2008,
週 3 回以上行っていることからも、10 代女
子に運動実施頻度の二極化の傾向が見て取
子に人気の種目は「バドミントン」
「バレー
れます。今後はいかにして非実施の女子に
ボール」「バスケットボール」であること、
運動・スポーツを行ってもらうか、という
②女子は男子に比べ、運動・スポーツの「非
視点が必要になってくるでしょう。
実施」者が多く、女子の中では「まったく
やらない子」と「定期的に行う子」の二極
3.「多様化」の 10 代女子と「集中化」の
化の傾向が強いこと、③男子は特定の種目
10 代男子
に希望が集中しており、女子は多様な種目
10 代の女子が、「今後続けていきたい、
を希望していることが明らかとなりました。
または新たにはじめたいと思う」運動・ス
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ポーツ種目を示したのが表 3 です。上位に
藤原 直幸
きているのは、
「よく行った」種目と同じ「バ
笹川スポーツ財団 調査研究チーム
レーボール」「バスケットボール」「バドミ
ントン」となっており、ここでも人気がう
1982 年生まれ。岡山県出身。早稲田大学政
かがえます。しかし、人気 3 種目以外に、
治経済学部卒業後、番組制作会社を経て早
「テニス(硬式)」
「陸上競技」
「ソフトボー
稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了。
ル」「スノーボード」「ダンス」が「よく行
2008 年より現職。
った」種目の代わりに上位に入ってきてい
ることは大変興味深い結果と言えます。ま
た、10%以上の希望率がある種目が 5 種目
あることも特徴と言えるでしょう。男子で
10%以上の希望率がある種目は、「野球」
(29.0%)、
「サッカー」
(22.4%)、
「バスケ
ットボール」
(12.5%)と 3 種目しかなく、
いわゆる「プロ」が存在する種目に人気が
集中していることがうかがえます。一方女
子は、様々な種目に対して実施希望があり、
これからは 10 代女子の多様なニーズに応
えるための整備、たとえば学校と地域のス
ポーツクラブが連携し、部活動以外のスポ
表1 過去1年間に「よく行った」運動・スポーツ種目(複数回答)(%)
順位
種目名
女子(n=794)
男子(n=909)
1 バドミントン
21.5
7.4
2 バレーボール
19.8
5.8
3 バスケットボール
17.8
18.7
4 筋力トレーニング
12.8
12.2
5 なわとび
12.0
2.6
6 ジョギング・ランニング
11.8
12.0
7 ウォーキング
11.5
3.1
8 水泳(スイミング)
11.0
11.2
9 ドッジボール
9.6
8.5
10 ソフトテニス(軟式)
8.6
6.5
資料:SSF笹川スポーツ財団「10代のスポーツライフに関する調査」2
注:女子の割合が高いものから順に並べてある
表2 運動・スポーツの実施頻度(性別)
(%)
頻度分類
男子(n=1,000) 女子(n=989)
非実施
9.1
19.7
年1回以上週3回未満
17.8
24.2
週3回以上7回未満
31.9
29.1
週7回以上
41.2
27.0
ーツ活動機会の提供することなどが必要と
資料:SSF笹川スポーツ財団「10代のスポーツライフに関する調査」2009
なってくるでしょう。
表3 今後行いたい運動・スポーツ(複数回答)
(%)
順位
種目名
女子(n=576) 男子(n=682)
1
バレーボール
17.7
4.3
2
バスケットボール
16.3
12.5
3
バドミントン
15.8
4.3
4
水泳(スイミング)
12.7
6.7
5
テニス(硬式)
10.4
6.6
6
陸上競技
5.7
4.1
7
ソフトボール
5.4
2.1
8
ソフトテニス(軟式)
4.5
3.5
スノーボード
3.6
2.9
9
ダンス
3.6
0.4
4.まとめ-10 代の調査からみるスポーツ
少女たち
今までみてきたように、今回の「10 代の
スポーツライフに関する調査」から、①女
資料:SSF笹川スポーツ財団「10代のスポーツライフに関する調査」2009
注:女子の割合が高いものから順に並べてある