犬の消化管内寄生虫検出を目的とした糞便検査 Seminar Event Calendar

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セミナー・イベント カレンダー
2/17(金)18(土)19(日)
December. 2011
A Semiannual Newsletter
J C V I M /J S VC P 2012 年大会
2/26(日)
第11回日本臨床獣医学フォーラム
九州地区大会
Topics
特集:犬の消化管内寄生虫検出を目的とした糞便検査 /
3/4(日)
第14 回日本臨床獣医学フォーラム
東北地区大会
症例:慢性顔面皮膚炎および脱毛症を発症した犬 / 獣医師の声:ACプラザ苅谷動物病院 市川橋病院 院長 内田恵子先生 / and more
3/18(日)
第 9 回日本臨床獣医学フォーラム
京都地区大会
4/1(日)
第13 回日本臨床獣医学フォーラム
北海道地区大会
w r i t t e n by Na o yu k i I TO / D V M , P hD
IDEXX ベットラボシステム ラインアップ(院内検査機器・検査キット)
「IDEXX ベットラボ ステーション」への接続機器は下記ラインアップより選択できます。
検査情報管理システム
ベットラボ ステーション
血液化学検査器
カタリスト D x
内分 泌 検査器
スナップショット D x
アイデックス ラボラトリーズ株式会社
自動血球計算器
レーザーサイト
電解質 / 血液ガス検査器
ベットスタット
スナップ
院内検査キット
0120 - 71- 4921 w w w.idex x.co.jp
〒 181 - 8608 東京都三鷹市北野 3 - 3 - 7 IDEXX Laboratories, IDEXX VetStat, IDEXX Vetlab Station, VetTest, SNAP Reader, LaserCyte, VetAutoread™, VetLyte, SNAP Heartworm, SNAP FeLV/FIV Combo は、
米国 およびその 他 の 国 における 米国 IDEXX Laboratories, Inc. の 商標 または 登録商標 です。
3
特 集
犬の消化管内
寄生虫検出を目的とした
糞便検査
Index
02
獣医師の声
Fecal examination for detection
of intestinal parasites in dogs
獣 医師 の 声:内田 恵子先生
Voice From An Animal Doctor
AC プ ラ ザ 苅 谷 動 物 病 院 / 市 川 橋 病 院 院 長
内 田 恵 子先生
03
特集
犬の消化 管内寄 生 虫
検出を目 的とし た
糞便検査
Dummy Text
携帯電話から s m a r t p h o n e へ P C ノートからタブレットへ、
日常の診療において犬の消化管内寄生虫検出を目的とした糞便検査の位置づけは、どのようなものであろうか。
一般化するのはもう少し時間がかかるかと思っていましたが、
検査の対象が消化器症状を示している症例に限定的な場合や子犬に限られているなど様々であろう。
とんでもない、その早さには驚くばかりです。それと同時に医
検査の方法にしても、直腸での体温測定時に体温計の先に付着したごく少量の糞便を用いて実施する直接塗抹法から
療環境も大きく変革を遂げています。診断機器の発展だけで
十分な糞便量を用いた浮遊法や沈澱法による検査、さらには、特定の虫体検出を目的とした蛍光抗体染色法や PCR 法まで、
症 例:
時代になりました。そこで心にとめておかなければならない
10
病理の 1枚
A P i c t u r e o f Pat h o l o g y
T S のつぶやき
Tw e e t o f Te c h n i ca l S u p p o r t
DVM, PhD
ここ数年、私たちを取り巻く環境は著しく高速化しています。
は無く、来院される50%の方が動物病院に来られる前にイン
Dummy Text
伊藤 直之
北里大学 獣医学部 小動物第 1 内科学研究室 准教授
07
慢性顔面 皮膚炎
および脱 毛症を
発症した 犬
Naoyuki ITOH
ターネットで愛犬や愛猫の症状を調べ、病気を予測してくる
点は、人間と異なり動物の場合は言葉で痛みや具合の悪さを
表現しないために、進行した病状でやってくるということで
す。すなわちいち早く病状を把握し、検査結果を評価し、そ
の日のうちに治療を開始しなければならないということです。
当院では L aserCy te 、Catal y st D x 、VetTest 、VetLy te 、
®
®
®
®
S N A P s h o t D x ® を Ve t L a b S t a t i o n ® に繋げてフル回転で院
内検査を行っています。S N A P s h o t D x が導入されたことで
®
T4 、コルチゾールの測定が簡便に出来るようになり、甲状腺
それぞれの施設や何を検出するかで結構な違いがあるように推測される。
いずれにしても、メインの検査とは考えられていないのは確かだろうと思われる。
もちろん、メインの検査でなくてもよいのだが、
もう一度、犬の消化管内寄生虫やそれを検出する糞便検査について考え直してみたいと思う。
1.
者らが最近、全国規模で実施した一般家
り、犬の消化管内寄生虫感染率は低下し、
はじめに
よくいわれるように過去の問題であるか
そもそも現在の日本国内において、犬や
迅速に出来るようになり、リスクの高い症例にも対応できるよ
猫の消化管内寄生虫を検出する意義はあ
だろうか?その答えは、最近の疫学調査
うになりました。今後もスナップの開発が進んでいて、待ち望
るのだろうか?室内飼育犬の増加や飼育
の結果に示されている。
まれている項目が迅速に出来るようになると聞いています。発
者の意識の高まり、地方においても周囲
売されるのを心待ちにしています。
環境の都市化、さらには、一部のフィラ
C a t a l y s t D x を導入したことで、もう一つ大きく変わったのは
リア予防薬において消化管内寄生線虫の
C h e m1 5 を定着させました。世界中の検査データーから選ば
を 対 象 と し て 行 っ た 調 査 で は、1 0 .6 %
( 2 5 0 / 2 3 6 5 )に何らかの消化管内寄生虫
感染が確認された。ただし、この数値だ
い こ と で あ る。 な ぜ な ら、 母 集 団 の 構
成が異なれば( 例えば年齢分布 )
、得ら
れる成績も違って当たり前だからであ
普段の診療で消化管内寄生虫を検出する
る。すなわち、単純に数値を比較するの
【表 1】日本国内の動物病院に来院した一般個人の家庭で飼育されている犬における消化管内寄生虫の感染状況
全体 (n = 2365)
する、この結果さらに必要な検査が示唆されたら、十分なイン
フォームをしてターゲットとなった臓器についてしっかりと
庭 で 飼 育 さ れ、 動 物 病 院 に 来 院 し た 犬
けで感染率の高低を論じても意味のな
疫学調査の成績が裏付ける
糞便検査の必要性
駆虫成分が配合されていることなどによ
れた、はじめに行うべきスクリーニングはこのクリップを使用
寄生虫
検出率
年齢
臨床症状
6 カ月齢以下 (n = 451)
7 カ月齢以上 (n = 1914)
検出率
( 検出頭数 )
検出率
( 検出頭数 )
P-value
下痢あり
(n = 128)
下痢なし
(n = 2237)
検出率
( 検出頭数 )
検出率
( 検出頭数 )
P-value
( 検出頭数 )
二次検査に進むという考え方です。
帰宅してから病名をさらに20%
以上の人が勉強する時代です。検
ジアルジア
8.3% (196)
31.5% (142)
2.3% (54)
<0.0001
14.8% (19)
7.9% (177)
<0.05
査の必要性とその結果を迅速に正
イソスポラ
1.8% (42)
9.1% (41)
0.05% (1)
<0.0001
4.7% (6)
1.6% (36)
<0.05
犬回虫
0.6% (15)
1.8% (8)
0.4% (7)
<0.01
1.6% (2)
0.6% (13)
>0.05
犬小回虫
0.2% (5)
1.1% (5)
0% (0)
<0.001
0% (0)
0.2% (5)
>0.05
しく説明出来ることが要求され、
検査機器のサポートは益々重要に
なってきました。
All rights reserved.
感染状況をみれば、一目瞭然だろう。著
機能亢進症や低下症、アジソン病やクッシング症候群の診断が
から C K、A S T、N H3 、T R I G を除き、犬は C h e m1 7 、猫は
IDEXX Laboratories, Inc.
物病院に来院する犬の消化管内寄生虫
のように感じられているが、本当にそう
スクリーニング検査の考え方です。これまで行っていた検査
©2011
た め の 糞 便 検 査 が 必 要 か ど う か は、 動
消化管内寄生虫検出のための
糞便検査の必要性
犬鉤虫
0.3% (6)
0.2% (1)
0.3% (5)
>0.05
0.8% (1)
0.2% (5)
>0.05
犬鞭虫
0.6% (15)
0.4% (2)
0.7% (13)
>0.05
1.6% (2)
0.6% (13)
>0.05
糞線虫
0.3% (6)
1.1% (5)
0.05% (1)
<0.01
0.8% (1)
0.2% (5)
>0.05
マンソン裂頭条虫
0.04% (1)
0.2% (1)
0% (0)
>0.05
0% (0)
0.04% (1)
>0.05
10.6% (250※)
37.9% (171※)
4.1% (79※)
<0.0001
19.5% (25※)
10.1% (225※)
<0.01
合計
9825-00
※ この合計数は、重複寄生があるためにそれぞれの寄生虫種を合計したものより小さい
( Itoh, N. et al. Parasitol. Res. 109 :253 -256. 2011. より )
02
特集:犬の消化管内寄生虫検出を目的とした糞便検査
Fe c a l e x a m i n at i o n fo r d e t e c t i o n of i n t e s t i n a l p a r a s i t e s i n d o g s
2.
で は な く、 年 齢 等 の 疫 学 的 背 景 や 検 出
方法などの違いを考慮しなければならな
い。表 1 に示すように、6 カ月齢以下の
犬で感染率が高く、特に、ジアルジアの
糞便検査の方法には、どのようなものが
高い感染率が際だっている。この調査で
ルマリン・酢酸エチル沈澱法で検出して
類できる。一般的な糞便検査( 寄生虫種
いることによる感度の違いもあるが、子
を限定しない )として直接塗抹法、浮遊
犬ではジアルジアとイソスポラの感染率
法、沈澱法があり、特定の寄生虫を検出
が決して低いとは言えない状況であるこ
するための検査としては、免疫蛍光抗体
と、さらに、消化管内寄生虫感染とは無
染色( ジアルジアやクリプトスポリジウ
縁と思われる成犬においても 4 % 程度の
ム )、ELISA による糞便中の抗原検出( ジ
感 染 率 で あ り、 日 常 の 診 療 に お い て 無
アルジア、エキノコックスなど )
、消化
視できない数値であることが示された。
管内寄生虫の遺伝子を検出する P C R や
ペットショップの子犬( 3 カ月齢以下 )を
リジウムなど )がある。ルーチンに実施
で何らかの消化管内寄生虫が検出された
しない直接塗抹法、浮遊法および沈澱法
( 表 2 :検出方法は前述の調査と同じ )。
ということになる。例外的にジアルジア
以上のデータから明らかなように、犬に
やエキノコックスを検出する簡易キット
おける消化管内寄生虫感染は決して過去
が販売され、一般の動物病院でも使用は
のものではなく、現在も進行中の問題で
可能であり、また、外注検査として r e a l
対象とした調査では、33.0%( 592 / 1794 )
PCR( I DEXX RealPCR
あり、しかも人獣共通感染性の寄生虫も
含まれている。したがって、それを検出
するための糞便検査も当然のことなが
がら、特定の寄生虫検出をターゲットと
ら、ルーチンに実施すべき検査であるこ
した検査は、その寄生虫の検出には優れ
とを再認識すべきだと思われる。そして
ているものの、他の寄生虫まで検出する
糞便検査は、消化管内寄生虫を検出する
ものではないことから、基本的に一般的
ためだけではなく、消化器症状を示す疾
な糞便検査を実施した後に行うものであ
患においてそれらを否定する鑑別診断の
る。実例をあげれば、前述の疫学調査の
一助としても有用であることを忘れては
データから、子犬の消化管内にはジアル
ならない。
ジアとイソスポラの寄生率が高いことが
して陽性であることを確認し、それだけ
03
述の疫学データを考慮すれば、また、飼
方で、浮遊法では使用する浮遊液や試験
育者に納得してもらうためには必要なこ
管の材質、寄生虫種の違いによって虫卵
とだと思う。ただし、飼育者に伝える際
やオーシスト、あるいはシストの浮遊液
に注意すべきことは、虫卵等が検出され
表面への到達時間が異なる可能性がある。
ない場合、それは絶対的なものではない
したがって、浮遊法で検出する際には一
ということである。すなわち、それぞれ
回虫卵のように大きく、しかも判別が容
定間隔で頻繁にある程度の期間、浮遊液
の寄生虫には感染から虫卵等が排泄され
易な虫卵であればほぼ 1 0 0 % の確率で検
表面を回収して観察する必要がある。ま
るまでのプレパテントピリオドがあり、
出が可能であろう。しかし、大きさが 1 0
た、浮遊液の比重によっては浮遊しない
その間は糞便検査では検出が不可能であ
μm にも満たないジアルジアのシストは
虫卵等が存在する可能性があり、さらに、
ること、また、虫卵等の排出が持続的で
検出が可能であろうか?夾雑物も多く、
浮遊液は高張であることから、虫卵等の
ある保証はどこにもないからである。つ
おそらくは 1 0 0 % の検出は無理であろう。
変形を招くことがある。以上のように、
まり、昨日が陽性でも今日は陰性であっ
では、対処法はどうすればよいだろうか。
それぞれで一長一短があり、結論的には
ておかしくないし、今日が陰性でも明日
なかった際に、確認のために ELISA キッ
単純に観察枚数を増やすか、あるいは別
どちらの方法でも各施設でやりやすい方
の方法で検出感度を上げる必要がある。
法、または、やり馴れている方法で実施
は陽性かもしれない。それは、ELI S A
り確実な診断が可能となる。
観察枚数を増やすのには限度があると思
するのがよいと思う。著者は通常、ホル
検出されたものは陽性に間違いないが、
われることから別の方法、すなわち、浮
マリン・酢酸エチル沈澱法で消化管内寄
それは過去の成績を否定するものではな
さて、それでは実際にルーチンな糞便検
遊または沈澱による集虫法を実施するの
生虫を検出している。そして、ジアルジ
いし、逆に陰性であることは将来的にも
が現実的である。浮遊法および沈澱法は、
アの検出にはヨード染色を施している。
陰性であることを保証するものではない。
理論的には糞便内の虫卵やオーシスト、
なお、集虫法( 浮遊法や沈澱法 )で注意
ただその時点で陽性、あるいは陰性であ
シストがすべて回収されるため( 実際に
したいことは、使用する糞便の量である。
るというだけである。パーフェクトな検
はガーゼによるろ過や回収物すべてを観
せっかく検出感度を高めようと集虫法を
査はない。それではさまざまな方法を駆
察することは不可能なことから、1 0 0 %
実施しているにもかかわらず、微量の糞
使する意味がないのではないかというこ
とはいかないが )、検出感度はかなり高
便で行っている事例を見かける。これで
とになるが、そうではない。より正確性
くなる。では、浮遊法と沈澱法ではどち
は先ほどの糞便中に含まれる虫卵数で示
を期すために必要なのである。
らがよいのだろうか?浮遊法では必ずし
した通り、自ら検出感度を低めているに
実際に著者が行っているホルマリン・酢
も遠心機は必要でないのに対し、沈澱法
過ぎない。直接塗抹法で観察枚数を増や
の糞便の量( 図 1 )は、実際には 0.006g
では遠心機が必須である。浮遊法では夾
し、丁寧に観察する方がましかもしれな
酸エチル沈澱法の概略は、図 2 の通りで
雑物が少ないのに対し、沈澱法では夾雑
い。集虫法を実施する際には、少なくと
虫卵があったとして、これを 0 .0 0 6 g 採
物がきわめて多く、ジアルジアなどを観
も 0 .5 g 以上の糞便を確保したい。浮遊
で満足してしまうとイソスポラの寄生を
見落とすことになる。これでは本末転倒
だろう。こんなミスを犯さないために、
一般的な糞便検査が必要である。疫学的
背景からジアルジアが強く疑われるにも
かかわらず、糞便検査で虫体が観察でき
トを使用すべきだろう。そうすれば、よ
査は、どのような方法で実施するのがよ
いのだろうか?直接塗抹法だけで十分と
いえるだろうか?もちろん、直接塗抹法
の有用性を否定するわけではない。運動
性のあるジアルジアのトロフォゾイトや
トリコモナスを検出するのには必要不可
欠である。しかしながら、十分な検査と
は言い難いように思われる。なぜなら、
直接塗抹法で使用される爪楊枝の先ほど
程度であり、仮に糞便 1 g 中に 1 万個の
【表 2】東日本のペットショップの子犬における消化管内寄生虫の感染状況
寄生虫
Pet shop #1
(n = 397)
Pet shop #2
(n = 169)
Pet shop #3
(n = 156)
Pet shop #4
(n = 104)
Pet shop #5
(n = 83)
Pet shop #6
(n = 56)
Pet shop #7
(n = 13)
Pet shop #8
(n = 25)
Pet shop #9
(n = 791)
Overall
(n = 1794)
ジアルジア
96 (24.2%)
42 (24.9%)
34 (21.8%)
20 (19.2%)
21 (25.3%)
20 (35.7%)
6 (46.2%)
12 (48.0%)
169 (21.4%)
420 (23.4%)
イソスポラ
59 (14.9%)
21 (12.4%)
5 (3.2%)
17 (16.3%)
13 (15.7%)
7 (12.5%)
1 (7.7%)
3 (12.0%)
77 (9.7%)
203 (11.3%)
犬回虫
10 (2.5%)
4 (2.4%)
2 (1.3%)
2 (1.9%)
0 (0%)
0 (0%)
0 (0%)
0 (0%)
14 (1.8%)
32 (1.8%)
糞線虫
11 (2.8%)
4 (2.4%)
3 (1.9%)
1 (1.0%)
0 (0%)
1 (1.8%)
0 (0%)
0 (0%)
0 (0%)
20 (1.1%)
犬鉤虫
0 (0%)
0 (0%)
0 (0%)
0 (0%)
0 (0%)
0 (0%)
0 (0%)
0 (0%)
2 (0.3%)
2 (0.1%)
合計※
147 (37.0%)
60 (35.5%)
40 (25.6%)
34 (32.7%)
31 (37.3%)
24 (42.9%)
6 (46.2%)
12 (48.0%)
238 (30.1%)
592 (33.0%)
※重複寄生を含む
には、抵抗もあろうかと思われるが、前
観察枚数を多くしなければならない。一
【図 1】
ト( スナップ・ジアルジア )だけを実施
)による一
部寄生虫の検出も可能である。しかしな
観察する必要があり、当然のこととして
ないことになる。
うなときに、ジアルジアの ELI S A キッ
可能な検査は、検出する寄生虫種を限定
TM
法や沈澱法をルーチンに取り入れること
複して寄生している場合もある。そのよ
r e a l P C R( ジアルジア、クリプトスポ
また、子犬の最大の供給源と考えられる
察する際には沈渣をかなり薄めた状態で
わかる。当然のことながら、これらが重
あるだろうか?大まかには次のように分
ジアルジアは ELI S A で検出し、他はホ
ると、そこには 6 0 個の虫卵しか含まれ
日常の診療で
実施可能な糞便検査は?
キットによる抗原検出でも同様である。
ある。ジアルジア検出のためにヨード染
色( ヨウ化カリウム 2 g + ヨウ素 1 g + 水
97 ml )を施している。
【図 2】
ホルマリン ・ 酢 酸エチル 沈 澱 法
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
ダイズ大(約 0.5g)の糞便に水 5ml を加え、よく撹拌。
二重ガーゼで 10ml ポリプロピレン試験管に濾過。
2000rpm、2 分間遠心。
上清を捨て、6ml の 5% ホルマリン液を加えて撹拌。
2ml の酢酸エチルを加えて撹拌。2000rpm。2 分間遠心。
ホルマリン液と酢酸エチルの境界面に粘稠性の残渣が試験管をリング上に囲む。上清を捨てる。
残余の液で沈渣を再撹拌し、スライドグラスに 1 滴取る。
ヨード染色液を滴下し、カバーグラスをかけて観察。
( Itoh, N. et al. Vet. Parasitol. 176 :74 -78. 2011. より )
04
特集:犬の消化管内寄生虫検出を目的とした糞便検査
Fe c a l e x a m i n at i o n fo r d e t e c t i o n of i n t e s t i n a l p a r a s i t e s i n d o g s
3.
糞便検査による
診断の症例
治療ができた犬の消化管内寄生虫感染の 2 例について、
簡単に紹介したい。
症例 1
3 カ月齢の雌のパピヨンが、約 1 カ月前の飼育開始時より軟便が続
おわりに
日常の診療において消化管内寄生虫を検
出するための糞便検査について、その必
【図 3】
症例 2
要性と注意すべき事項について症例を交
えて述べてきた。繰り返しになるが、疫
5 カ月齢の雄のセッターが、約 2 週間前より排泄した糞便に白色の短い
学調査の成績をみれば、まだまだ犬の消
化管内寄生虫は過小評価されているよう
いているために来院。症例はペットショップより購入したもので、
虫体と思われるものが混入しているとの主訴で来院。飼育者が持参した
ワクチンは接種済み。一般身体検査で異常は認めず、飼育者が持参
糞便の観察では、その性状に変化はみられず( 固形便 )
、虫体も観察さ
歩で外出することはあるだろうし、ドッ
した糞便の性状は、確かに有形ではあるが軟便であり、糞便検査( 直
れなかった。糞便検査を実施したところ、一見、回虫卵に類似した円形
グランへ行く機会もあるかもしれない。
接塗抹法およびホルマリン・酢酸エチル沈澱法:スナップ・ジアル
の虫卵が観察されたが、直径が約 35μ m であることや内部に六鉤幼虫
ジアは発売前 )を実施した。しかしながら、消化管内寄生虫は検出
が確認されたことから、テニア属条虫( おそらく猫条虫 )であると考え
されず、無処置で様子をみてもらうこととした。数日後、変化がな
られた( 図 5 )
。飼育者に詳細を尋ねると、飼育舎内でネズミを見かけ
いとのことで再度来院。糞便検査を実施したが、何も検出されなかっ
ることがあり、本症例がそれを補食したところを目撃したことがあると
た。糞便そのものを再度確認すると、表面に少量の粘液の付着が認
いうことだった。プラジカンテルの 5 mg/kg、1 回経口投与で虫体およ
められ、この粘液部分を直接塗抹法で観察したところ、ジアルジア
05
4.
糞便検査により診断・
【図 4】
び虫卵の排泄が認められなくなった。
に思われる。いくら室内犬とはいえ、散
さらには、ペットホテル等にも注意を払
う必要があるように思われる。感染の機
会はどこにでもある。そして何より注意
しなければならず、また、あってはなら
ないことは、動物病院の入院施設におけ
る感染である。特に、環境も含めコント
ロールがやっかいな原虫感染には注意を
払いたい。その対策のためにも、徹底し
のトロフォゾイト( 図3 )とイソスポラのオーシスト( 図4 )が検
犬に寄生して糞便中に片節が排泄されるのは、一般的には犬条虫が多
出された。チニダゾールを 50 mg/kg で 1 日 1 回、3 日間経口投与し、
いと考えられる。しかしながら、猫条虫も犬に寄生することが可能であ
だろう。様々なことが発展し、デジタル
同時にスルファモノメトキシン 5 0 m g / k g を 1 日 1 回、 1 0 日間経
る。どちらの条虫も犬に重大な病害をもたらすことはほとんどないと思
化された現在、自分の目で確かめること
口投与した。投薬終了後は、1 週間隔で何度か実施した糞便検査で
われるが、糞便中に排泄される片節を飼育者が見つけ、驚いて来院する
ジアルジアとイソスポラはいずれも検出されず、糞便性状も固形便
ことが多い。治療に違いはないことから、どちらであってもよさそうな
であった。
ものであるが、感染経路が異なることから再感染を防ぐ上で鑑別が重要
で診断可能であることの魅力は大きい。
この症例では沈澱法の結果を過信するあまり、糞便検査の第一歩で
となってくる。犬条虫の中間宿主はネコノミやイヌハジラミであるのに
今後、浮遊法や沈澱法による糞便検査が、
ある糞便性状の観察がおろそかになり、粘液の混入を見落とした結
対し、猫条虫の中間宿主はネズミであり、再感染を防止するためには、
果、診断が遅れてしまった。粘液は沈澱法を実施する際に糞汁にな
それぞれの寄生虫に適した対応が必要となる。なお、猫条虫では離脱し
じまず、ガーゼでのろ過時にガーゼ上に残ってしまうため、粘液部
た片節の一部が消化管内で崩壊し、虫卵が糞便内に逸脱することがある
分は観察されないことになる。粘液の観察には直接塗抹法が威力を
ことから、糞便検査で虫卵
発揮し、この症例のように診断にこぎ着けることが可能となる事例
を確認することが可能な場
がある。直接塗抹法は、糞便検査としては決して十分とはいえない
合がある。一方、犬条虫卵
が、ケースによっては高い診断価値があり、特に、ジアルジアやイ
は消化管内で糞便中に逸脱
ソスポラの感染では、糞便表面に粘液の付着をしばしば経験するこ
することがないため、糞便
とから、粘液部分の直接塗抹による観察は、必要不可欠であること
検査で虫卵を観察すること
を痛感した。
はできない。
た糞便検査がルーチンに実施されるべき
しかないアナログ的糞便検査( 直接塗抹
法と浮遊法や沈澱法 )は、時代遅れの感
がある。しかしその一方で、自らの眼力
もっと手軽に実施できような工夫の必要
性が痛感される。
【図 5】
06
症 例
慢性顔面皮膚炎
【図 3】
【図 4】
および 脱 毛 症 を 発 症した 犬
H a e m a r u R e f e r r a l A n i m a l H o s p i t a l ( 韓 国 ) H y u n - W o o k
Kim
DV M, MS
ない。また好酸球減少症もグルココルチコイドの影響を裏付ける
患者 : Chorong / 13 歳/雌/
避妊手術未のヨークシャーテリア
来院理由 : 慢性顔面皮膚炎および脱毛症の詳細な評価のため( 当
院は二次診療病院 )。
病歴 : C h o r o n g は、8 ヶ月前より鼻周囲の痂皮形成からなる
再発性・限局性顔面皮膚炎の病歴を有しており、最近
では皮膚炎が顔面の大半を占めるまでに至っていた。
掛かり付け医で行われた真菌培養検査は陰性であった。
獣医師の経験に基づく試験的治療として抗生物質と抗
真菌薬が処方されたが、改善は認められなかった。ス
テロイド療法では臨床徴候が悪化した。更に Chorong
はこの6ヶ月間に多食症と多飲多尿症( 以下 PU/PD )
を徐々に悪化させていた。Chorong は3年前に、良性
乳腺混合腫瘍および気管虚脱と診断されていた。
一般身体検査 : 全身の身体検査では、Chorong は活発、機敏、かつ反
血 液学 検 査
ものである。本例ではグルココルチコイドの影響よる特徴的な所
検査項目
数値
単位
評価
赤血球
5.88
41.0
14.8
69.7
36.1
15.1
6.75
5.10
1.1
0.47
0.08
0.00
236
10.4
M/μL
高値
HCT
HGB
MCV
MCHC
RDW
白血球
好中球
リンパ球
単球
好酸球
好塩基性細胞
血小板
MPV
%
g/dL
fL
g/dL
%
K/μL
K/μL
K/μL
K/μL
K/μL
K/μL
K/μL
fL
低値
見である好中球増加症は認められないが、細胞診で観察された著
基準範囲
( 5.50 - 8.50
( 37.0 - 55.0
( 12.0 - 18.0
( 60.0 - 74.0
( 31.0 - 36.0
( 12.0 - 18.0
( 6.00 - 17.00
( 3.00 - 11.80
( 1.00 - 4.80
( 0.20 - 2.00
( 0.10 - 1.49
( 0.00 - 0.50
( 200 - 500
( 5.0 - 15.0
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
応が良く、身体状態も良好であった。Chorong は鼻お
よび眼周囲に重度の痂皮、色素沈着、および脱毛症を
有していた( 図 1 )。痂皮を除去すると、漿液性滲出液
および内在性の紅斑が明らかとなり、また同様の皮膚
病変は両前肢にも認められた( 図 2 )。
鑑別診断 : 皮膚炎:過去のグルコルチコイド療法に対する反応は
乏しかったものの、本例の病歴、シグナルメント、お
よび身体検査所見より、天疱瘡、または円板状エリテ
マトーデス等の免疫介在性皮膚疾患が考えられた。前
回の真菌培養検査は陰性であったが、偽陰性の可能性
もあり、また飼い主が最近、真菌性皮膚炎と診断され
ているため、皮膚糸状菌症も考慮した。本例では、そ
の他の真菌性・酵母性・細菌性感染症、毛包虫症、お
よび甲状腺機能低下症、糖尿病、副腎機能亢進症等の
潜在的な代謝性疾患による二次的な皮膚炎も鑑別診断
の対象となった。
【図 1】
【図 2】
多食症、および PU/PD :自然発生性と医原性双方の副腎皮質機能亢進症、
糖尿病、子宮内膜炎、子宮留膿症も全て考慮した。
診断計画 : 掛かり付けの獣医師より最近の全血球計算( C B C )お
よび電解質検査を含めた血液学検査結果が提出された。
追加検査として、皮膚掻爬検査、スタンプ細胞診、ウッ
ド灯検査、真菌培養、ACTH 刺激試験、低用量デキサ
メタゾン抑制試験( LDDST )
、高用量デキサメタゾン
抑制試験( HDDST )
、そして腹部超音波検査を行った。
血 液化 学 検査
検査項目
数値
単位
評価
グルコース
89
19.5
0.9
3.8
9.6
146
4.5
107
5.7
3.2
30
22
68
183
0.0
250
630
116
84
mg/dL
mg/dL
md/dL
mg/dL
mg/dL
mmol/L
mmol/L
mmol/L
g/dL
g/dL
U/L
U/L
U/L
U/L
mg/dL
mg/dL
U/L
U/L
U/L
BUN
CREA
PHOS
Ca
Na
K
Cl
TP
ALB
ALT
AST
ALKP
LDH
TBIL
CHOL
AMYL
LIPA
CK
赤血球系
高値
基準範囲
(
(
5.0 - 8.0
2.6 - 4.0
)
)
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
10 - 100
47 - 254
75 - 128
110 - 300
30 - 140
8 - 28
0.4 - 2.0
500 - 2000
245 - 1585
140 - 160
3.5 - 5.8
105 - 122
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
平均赤血球ヘモグロビ
炎症巣への好中球の誘導、および C B C のおける好中球数の変動
に影響する可能性がある。
血小板
な増加である可能性は低い。しかし invitro または in vitro におけ
る溶血に伴う血液中遊離ヘモグロビンの存在も考える必要がある。
リンパ球減少症は認め
られないものの、リン
パ球数は正常範囲の最下限であり、臨床症状からは、グルココル
られたが、副腎の形状
血管または他臓器への浸潤は確認されなかった。子宮蓄膿症およ
び子宮内膜炎は特定されなかったため、これらの疾患を本例にお
ける P U / P D の鑑別診断から除外した。その他の異常も認められ
なかった。
正常
皮膚掻爬検査
血液化学検査
両側副腎過形成が認め
は両側共に正常な ピーナッツ型 であった( 図 3 、4 を参照 )。
著明な所見なし。
顕著な異常所見は認め
られない。LD H は僅
かに上昇しているが、有意性はなく、M C H C と同様に、極軽度
の溶血に関連していると考えられる。高血糖は認められず、
また、
スタンプ細胞診
多数の白血球が認め
ら れ た。 細 胞 構 成 は
約 70 ∼ 80 %が好中球、20 ∼ 30 %がマクロファージで、リンパ球
グルココルチコイドの影響を考慮すると、多食症および P U / P D
および形質細胞はごくわずかであり、少数の多核巨細胞も観察さ
や身体検査で観察された膿皮症の原因となる糖尿病は除外した。
れた。皮膚糸状菌の存在を評価するために重要な毛幹は入手でき
C B C と血液化学検査では大きな異常は認められないが、患者の
なかったものの、標本中には明らかな感染性病原体は認められな
臨床徴候と病歴を考慮し、副腎皮質機能亢進症に対するスクリー
かった。稀に線維芽細胞と思われる間葉系細胞も認められた。腫
ニング検査を推奨した。
瘍細胞は特定されなかった。
ACTH 刺激試験、および低用量/高用量デキサメタゾン抑制試験
細胞学的診断
ACTH 刺激 試験
コートロシン
Ⓡ a コルチゾール濃度
ACTH 後(1 時間後)のコルチゾール濃度
球性マクロファージ性
因は不明。
5 μ g/kg IV
検査項目
重度の混合炎症( 好中
/肉芽腫性炎症 )
、原
数値
単位
5.6
23
μ g/dL
μ g/dL
◀皮膚痂皮下滲出液のスタン
プ塗抹標本、ディフ・クイック
染色、対象視野 40 0 倍
LDDST
デキサメタゾンリン酸ナトリウム 0.01 mg/kg IV
基礎コルチゾール濃度
4 時間後のコルチゾール濃度
8 時間後のコルチゾール濃度 5.2 μg/dL
数値
単位
6.1
3.5
5.2
μg/dL
μg/dL
μg/dL
ウッド灯検査
顔面の毛根周囲に淡黄
緑色の蛍光陽性反応が
認められ、前足にもわ
ずかな陽性反応がみら
れた。
解釈:皮膚糸状菌陽性
ン濃度( M C H C )の
チコイドの影響( ストレス性白血球像 )を考慮しなければなら
07
しい好中球性炎症過程の存在( スタンプ細胞診所見を参照 )は、
検査項目
軽度の上昇は、正常範囲上限値を僅かに超える程度であり、有意
白血球系
腹部超音波検査
HDDST
デキサメタゾンリン酸ナトリウム 0.1 mg/kg IV
検査項目
基礎コルチゾール濃度
4 時間後のコルチゾール濃度
8 時間後のコルチゾール濃度
数値
単位
4.9
1.5
1.7
μg/dL
μg/dL
μg/dL
真菌培養
皮膚糸状菌検査用培地
( DT M )とサブローデ
キストロース寒天培地( SDA )の双方で真菌培養を行った。3 週間
の培養期間では、真菌増殖または培地の色変化は認められなかった。
08
A
診断のまとめ
本例ではスタンプ細胞診で細菌が特定されなかったため、深在性膿
皮症は除外した。また皮膚掻爬試験は連続して陰性であったため、
成人発症性毛包虫症も除外した。ウッド灯検査では、塗り薬、軟膏、
石けん、シャンプー、および皮膚剥離により結果が偽陽性となる場
合があるため、陽性の検査結果は慎重に解釈した。イヌ小胞子菌の
約 50 %は、真菌の代謝産物のために陽性の蛍光反応を示す。真の
陽性反応は、紫外線光下で毛根から毛幹までが淡黄緑色になる。真
菌の死滅後にも、真菌の代謝産物が残存すると蛍光反応が生じるた
め、陽性反応が検出される場合がある。したがって、確定診断とし
て蛍光反応陽性の毛の真菌培養を行うべきである。
症し易いが、成犬や老犬において生じた場合には、内分泌障害、代
謝障害、または腫瘍性障害に伴う免疫抑制状態を考慮すべきである。
皮膚炎の治療として、全身性抗真菌薬( イトラコナゾール 5 m g /
k g、1 日 2 回経口投与 )およびミコナゾールシャンプーを処方した。
副腎皮質機能亢進症の治療としては、トリロスタンを処方した。血
栓形成の可能性を予防するため、低用量のアスピリンを処方した。
症例転帰
本例では D T M と S DA による 3 週間の真菌培養は、双方ともに
後、皮膚病変の漸進的な改善が認められた。トリロスタン治療の 7
性真菌感染症が疑われた。本例では確定診断として皮膚生検が望ま
正常値は、2.8μg/dL であり、1 時間後の濃度は 4.1μ g/dL( 前回
しかったが、飼い主により拒絶された。そのため、治療に対する反
応をみることで診断を裏付けることとした。
o f
P a t h o l o g y
症 例
犬 / ラブラドール・レトリーバー / 避妊済み雌 / 12 歳
現病歴:2 日前より元気・食欲低下、やや痩せ気味、
可視粘膜蒼白、腹部中央に腫瘤認める。
治療計画
全身性・局所性抗真菌薬およびトリロスタンによる併用治療の開始
陰性であった。陰性結果の原因としては、診断前の投薬および深在
P i c t u r e
日後に、AC T H 刺激試験を再施行した。血中コルチゾール濃度の
針生検標本の細胞診所見
核の大小不同や高い N / C 比を呈する マクロファージ様
の円形細胞が認められ、赤血球のみならず、好中球や
血小板( 矢印 )をも貪食していることが観察されます。
… 続きは アイデックスラボラトリーズ H P
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の結果: 23μg/dL ;正常範囲: 6 ∼ 18μg/dL )であった。PU/
P D および多食症が劇的に改善したと飼い主から報告があったた
め、トリロスタンの用量は変更しなかった。
AC T H 刺激試験では、1 時間後のコルチゾール値が 2 3μg / d L を
超えおり、副腎皮質機能亢進症と一致していた。しかしストレスに
よっても同様の結果が生じることがあるため、確認のための追加検
査が必要であった。C h o r o n g の白血球像の変化は、副腎皮質機能
亢進症、もしくはストレスに伴うグルココルチコイドの影響を裏付
前記の治療の 25 日後、新たな皮膚病変は認められなかったものの、
常範囲、1 9 ∼ 7 0 U / L )が認められた。イトラコナゾール治療に伴
う肝毒性の可能性が懸念されたため、イトラコナゾールをフルコナ
けるものであった。低用量デキサメタゾン抑制試験( LDDST )で
ゾール( 5 mg/kg、1 日 1 回経口投与 )に変更した。
値が、いずれも基礎コルチゾール値より 5 0 % 以上高い結果が得ら
イトラコナゾール治療を中止し、さらに 2 週間の治療後、皮膚炎は
機能亢進症( P D H )と機能性副腎皮質腫瘍( FA N )のいずれかを
存在したが、皮膚病変の大部分は回復し、新たな発毛が認められた。
は、デキサメタゾン投与 4 時間後および 8 時間後のコルチゾール
れた。これは副腎皮質機能亢進症に一致するが、下垂体性副腎皮質
更に改善し、ALT は正常範囲内に戻った。色素過剰症は依然として
鑑別することはできないため、さらに高用量デキサメタゾン抑制試
験( H D D S T )を行った。H D D S T では、デキサメタゾン投与 4
現在、Chorong は臨床徴候を厳密にモニタリングし、ACTH 刺激
超えていたものの、基礎コルチゾール値の 50%未満であったため、
な経過を辿っている。皮膚病変の再発や副腎皮質機能亢進症の徴候
時間後および 8 時間後のコルチゾール値がいずれも、1.5μg/dL を
FA N ではなく P D H が考えられた。追加の腹部超音波検査では両
側副腎肥大が確認され、その他には明らかな病変は認められないこ
とから、PDH と確定診断した。
本例は、P U / P D および多食症等の副腎皮質機能亢進症に適合する
スナップ・ジアルジア
血液化学検査の再検査では、中程度の ALT の上昇( 342 U/L ;正
検査を定期的に施行しながら、トリロスタンによる維持療法で順調
は認められない。
【治療前】
【フルコナゾール治療の 6 週間後】
今年、弊社から日本初となるジアルジア検査キット
「スナップ・ジアルジア」を発売しました。ジアルジ
スナップ ジアルジアでは1)栄養体から分泌される
アに感染していると、糞便中に栄養体とシストがい
抗原、2)栄養体がシストに変わるときに分泌される
ずれも排出されます。シストは外部環境に強く、感
抗原、3)シストから分泌される抗原をとらえます。
染力を維持したまま生存するため、糞便中のシスト
が主な感染源となります。糞便を顕微鏡でみた場合、
このように人間の目では
栄養体は仮面にひげがついたような特徴のある形で
みつけにくく、症状も出な
すが、トリコモナスと間違えられることがあります。
いことが多い為、これまで
シストは特徴のない球状なので酵母菌などとの区別
見 つ け に く か っ たジアル
がとても難しいといわれています。
ジアですが、鏡検とスナッ
プ でダブルチ ェ ッ ク す る
また、ジアルジア症の主な症状は下痢ですが、明確
ことにより、ジアルジアの
な症状を伴う個体は約20%と低いため、ジアルジア
発見率が高くなります!
臨床徴候や白血球像の変化が認められ、副腎皮質機能亢進症を裏付
けるコルチゾール検査の結果もあったにもかかわらず、A LK P の
上昇は認められない稀な症例である。中程度から重度の A LK P の
を見逃してしまうことが多くあります。
テクニカルサポートお問い合わせ先
平日フリーダイヤル[9 : 00 ∼ 20 : 00]
ル
ニカ
テク ート
サポ
土曜日[9 : 00 ∼ 17 : 30]
0120 - 71 - 4921 0422 - 71- 5351
上昇は、副腎皮質機能亢進症患者の大多数において一般的に観察さ
れる所見である。さらに、皮膚糸状菌症は若齢の犬・猫において発
09
10