EPZ 内モニタリングデータを用いた 放出源情報推定法の開発のための

EPZ 内モニタリングデータを用いた
放出源情報推定法の開発のための基礎研究
Fundamental study of development of source ter m estimation method from monitor ing data
○栗原隆志、山澤弘実、平尾茂一、森泉純、飯田孝夫(名古屋大学院・工学研究科)
Takashi KURIHARA, Hiromi YAMAZAWA, Kazushige HIRAO, Jun MORIIZUMI, Takao IIDA
(Nagoya University)
1.緒言
行った。
原子力施設等において大気中への放射能
物質の放出があるような緊急時に周辺地域における
3.結果・考察 モデルの性能評価のために、大気
線量予測に必要な放出源情報が原子力事業者により
中濃度計算はガウスプルームモデルの式の解析解と
すべて正確に報告されることは難しく、また人為的
の比較を行い、空気吸収線量率計算は解析解拡散モ
もしくは社会的影響により放出源情報の通報がモニ
デルの計算コード GAMPUL のデータと比較し、そ
タリングポストの異常検出より遅れることも考えら
れぞれよく一致した。
シャットダウン後の経過時間を変化させたモデル
ケースにおいては、シャットダウン後 24 時間が経過
したあとでは線量率分布の特徴の変化は見られず、シ
ャットダウン後の経過時刻を推定することは難しい
ことがわかった。放出源高度の変化させたモデルケー
スにおいては、空間的線量率分布の特徴の違いとして、
最大線量率地点の違い、風下方向の線量率分布の違い
が確認された(Fig. 1)。横風方向では 100m 煙軸からず
れてしまうと煙軸上の線量率の 50%ほどの線量率に
なってしまうことがわかった。
4.結論・今後の課題 放出源情報である放出源高度
の変化により、最大線量率地点、風下方向の線量率分
布の変化があることからモニタリングデータとして
最大線量地点もしくは煙軸上の 2∼3 点を検出するこ
とができれば放出源高度は推定可能である。緊急時に
おけるモニタリングの実施は放出地点から横風方向
へのモニタリングでは 20∼30m 毎にモニタリングを
行うべきである。今後の課題として、今回求められた
放出源高度の変化による空間線量率分布の特徴がよ
り現実に近い環境条件下においても見られるかモデ
ル計算を用いて検証する。今回得られた空間線量率分
布を再現できるようなモニタリングポストの配置に
ついて検討する。
れる。そのような緊急時のために原子力施設周辺の
モニタリングデータから放出源情報を推定する手法
が必要である。緊急時以外でも、事後詳細解析での
より正確な周辺住民への被曝評価のためにも放出源
情報の推定は重要である。またこのように狭域での
モニタリングデータを用いた放出源情報推定法の開
発の研究はほとんどされておらず、空間線量率の変
化を評価することにより、緊急時モニタリング計画
の立案の指針としても有効である。このため、EPZ
内のモニタリングデータを用いた放出源情報推定法
を開発する必要がある。本研究では、この手法の開
発のために、推定すべき放出源情報の整理を行い、
濃度・線量率計算モデルを開発し、単純な条件下に
おいていくつかのモデルケースを設定し、モデル計
算を行い、空間的線量率分布の特徴から放出源情報
推定法の考察を行った。
2.モデル計算 モデルは、移流拡散計算、空気中
濃度計算、空気吸収線量率計算を行う。核種は希ガ
ス 15 核種を対象に計算しており、モデルには燃焼度
別の希ガスの組成比等のデータが格納してある。シ
3
ャットダウン時刻から放出時刻までの減衰計算、放
2.5
規格化線量率
出後の減衰計算を行う。移流拡散方程式の解法とし
てはランダムウォーク法を用いたラグランジュ型モ
デルを用いた。本モデルでは大気中濃度計算にカー
放 出 源 高 度200m
1.5
1
0.5
いた。空気吸収線量率計算では各線源(粒子)から評価
0
- 1 00 0
な地形上で風速、風向を一定として、大気安定度
放 出 源 高 度100m
2
ネル濃度計算(Kernel Density Estimator :KDE)法を用
点までの寄与の和から求められる。環境条件を平坦
放 出 源 高 度10m
10 0 0
30 0 0
5 00 0
Down win d[m ]
7 00 0
9 00 0
Fig. 1 Calculated horizontal distribution of normalized
dose rate.
B,D,F について放出高度、
シャットダウン後の経過時
間を変化させたモデルケース9つを設定し、計算を
1
全球ラドン散逸率分布推定法の開発
Development of estimation method of global r adon exhalation r ate distr ibution
○後藤真佳1、森泉純1、山澤弘実1、飯田孝夫1、卓維海 2 (1 名大院・工、2 中国・復旦大)
M. Goto1 , J. Moriizumi1, H. Yamazawa1, T. Iida1 , W. Zhuo2
1
( Grad. Sch. of Engineering, Nagoya Univ. , 2 Institute of Radiation Medicine, Fudan Univ.)
緒言
ラドンは半減期が 3.82dの天然放射性希
パラメータについては文献を参考に一定とした。
ガスである。化学的に不活性な性質から大気動態
以上の方法により緯経度 1°の分解能で各月の
を把握するためのトレーサとして適し、ラドンを
散逸率の全球分布を計算した。
使用した広域大気輸送モデルの研究が進んでい
更に作成した散逸率分布を大気輸送モデルの発
る。ラドンの発生源である地面からの散逸率は土
生源とし、東アジアにおけるラドンの大気輸送を
壌環境により幅広い値を取ることが知られてい
計算した。ラドン濃度の計算結果を東アジア域で
る。しかし、正確なラドンの散逸率分布はなく、
の測定値と比較を行った。
大気輸送モデルでは散逸率の世界平均値を土壌
計算した散逸率の季節変動を
から一律に発生するとし計算することが多い。そ
結果および考察
こで本研究では散逸率の全球分布と季節変動を
Fig.1 に示す。散逸率の年平均値は case1 の場合
定量的に評価することを目的に、散逸率計算モデ
で 18.0 mBq m-2 s-1、case2 の場合で 17.5 mBq m-2
ルの開発と散逸率の全球分布の作成を行った。
s-1 で、どちらも世界平均であるとされている 16
26 mBq m-2 s-1 の範囲の下限に近い。変動は case1
本研究ではまず土壌層を均質多
では8月に最大値をとるのに対して、case2 では
孔質媒体と仮定し、1 次元拡散方程式から地表面
910 月に最大値をとる。東アジアにおける測定
での散逸率を表す式を導出した。文献調査により、
点での実測値との比較では、実測値に比べ計算値
実効拡散係数については土壌間隙率 p および間
が過小評価する結果となった。大気輸送モデルの
隙 内 水 飽 和 度 S と し て 与 え ら れ る
計算結果については発表時に述べる。
散逸率モデル
RogersNielson の経験式を用い、間隙への放出
率については土壌含水率依存性に関する既往研
24
究の結果を取り入れた式を用いた。以下に散逸率
F
R
0
b
T
273
0.75
D0 p exp
1 k1 (1 exp( k 2 S ))
:226Ra
R
含有量
ρb :土壌密度
ε :間隙への放出率
T :土壌温度
6Sp 6 S 14 P
1 0.011(T
Tm )
λ
:ラドン壊変定数
D o :空気中ラドン拡散係数
εo :温度T m での放出率の最小値
k 1 k 2 :定数
さらに、積雪による散逸率の抑制影響を考慮した。
226
Ra 含有量は分布の実測値データのある中国に
Radon exhalation rate
[mBq m-2 s-1]
22
F の式を示す。
20
18
16
case 1
case 2
14
12
10
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
month
ついては実測値を代入し、その他の地域では一定
値(30 mBq kg-1)とした。散逸率に大きく影響する
Fig.1 Seasonal variation of global average
間隙内水分飽和度等については、降水量と気温か
radon exhalation rate
ら求める方法(case1)と再解析データセットを使
用する方法(case2)について検討した。その他の
2
ラドン長距離大気輸送モデルの検証と改良
Development and Improvement of Long-Range Atmospher ic Radon-222 Tr anspor t Model
○平尾茂一1、濃野友紀1、山澤弘実1、森泉純1、飯田孝夫1(1 名大院・工)
S. Hirao1, Y. Nono1, H. Yamazawa1, J. Moriizumi1, T. Iida1 (1 Nagoya University)
地点に共通して見られた。西から強い風が吹く冬
季では、計算領域外からのラドン流入の影響が無
視できないと考えられる。
モデルの数値計算手法を検討した結果、計算誤
差の要因には、質量保存則を満足していない鉛直
風速の内挿法、大気密度分布を無視したラドンフ
ラックス評価法が挙げられた。
1. はじめに
半減期 3.8 d のラドンは、化学的に不活性であ
り、大気中物質のトレーサに利用するため濃度の
観測が行われている。観測された濃度変動の解析
には、数値計算モデルが有効である。ラドンの大
気輸送モデルは、大気汚染物質を対象とした輸送
モデルよりも高精度が要求される。
現状のラドン長距離大気輸送モデルは、十分な
精度に達していない。本研究では、日本を含む東
アジア域を対象に、1) 計算結果の検証及び計算
誤差要因の推定、2) 高精度化に向けた改良及び
評価を行った。
2. モデル概要及び計算条件
本研究で開発した長距離大気輸送モデルは、気
象モデル MM5 (The Fifth-Generation NCAR / Penn
State Mesoscale Model) と移流拡散モデルで構築
されている。前者は気象庁の全球客観解析値から、
三次元の風速場と乱流場を計算する。後者は、ラ
ドンの地表面からの発生と放射壊変による消失
を考慮した三次元移流・拡散方程式を解き、1 h
毎に大気中ラドン濃度分布を計算する。
水平方向の計算領域は、日本を含めた東アジア
域とし、計算格子数 108 x 136、格子間隔 72 km
を与えた。鉛直方向は上空 10 km を 20 層に分割
した。ラドン散逸率は、陸面で Schery et al. (1998)
によるラドン散逸率分布を与え、
海面で 0.14 mBq
m-2 s-1 の一定値を与えた。計算領域外からのラ
ドン流入はゼロと仮定した。
計算期間は、2004 年 1 月 1 日 ~ 12 月 31 日を
設定した。
5. 結論
ラドン長距離大気輸送モデルの計算精度向上
を目的として、計算誤差要因の推定及びモデルの
改良を行った。モデル改良前の計算値は、地上で
観測されたラドン濃度よりも過小傾向が顕著で
あった。検証により計算誤差の原因を推定し、モ
デルの改良を行った。改良後の計算値は、各比較
地点で、過小計算の改善を示した。
Radon-222 concentration [Bq m-3]
3. ラドン長距離大気輸送モデルの検証
モデルの検証は、計算した大気中のラドン濃度
と観測値の比較により行った。Fig. 1 に八丈島で
の比較結果を示す。モデルは観測された数日周期
の濃度変動を再現した。八丈島と名古屋の検証結
果は、ともに観測値に対するモデル計算の系統的
な過小計算を示した。
近傍起源のラドンの影響が大きい名古屋でも
過小計算が見られた結果は、MM5 で計算される
鉛直拡散係数の過大評価が示唆される。温位鉛直
プロファイルの観測値と MM5 計算値の比較を行
った。その結果、大気境界層高度の過大評価が明
らかとなった。
冬季に過小計算の程度が大きくなる傾向が各
4. ラドン長距離大気輸送モデルの改良
モデルの検証結果をもとにモデルの改良を、
4 点について行った。
1) 鉛直拡散の精度向上のため、MM5 の鉛直拡
散係数の計算方法を、乱流場を診断的に計算する
MRF scheme か ら 予 報 的 に 計 算 す る
Gayno-Seaman (1.5-order closure) scheme へと変更
した。
2) 水平方向計算領域外からのラドン流入を考
慮するため、準周期境界条件を考案した。
3) ラドンの連続方程式から鉛直風速を導出す
る内挿法を導入した。
4) 空気密度鉛直プロファイルの差異を考慮す
るために、ラドン濃度の混合比を用いて濃度勾配
を決定する評価法を導入した。
改良前に 66%であった年間 FA2 は、改良後
72%を示した。
6.0
Measurement
Calculation
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
1
6
11
16
21
February 2004 (JST)
26
Fig. 1. Comparison of calculation with
measurement of radon-222 concentration for
February 2004 at surface level at Hachijo.
3
コンクリート中における中性子束分布評価
Evaluation of neutron flux distr ibution in concrete
○小川達彦*1, 阿部琢也*1, 小池裕也*2, 飯本武志*3, 仲川勉*1, 間淵幸雄*1, 安見厚志*1,
助川敏男*1, 岡村和夫*1, 斉藤 勲*1, 小佐古敏荘*1
(東大院工*1 、東大 RI センター*2、東大環境安全本部*3)
1
1
3
1
1
1
○Tatsuhiko OGAWA , Takuya ABE , Takeshi IIMOTO , Yuya KOIKE , Tsutomu NAKAGAWA , Yukio MABUCHI ,
1
1
1
1
1
Atsushi YASUMI , Toshio SUKEGAWA , Kazuo OKAMURA , Isao SAITO , Toshiso KOSAKO
(Graduate School of Engineering University of Toyko1, Radioisotope Center University of Tokyo2、
Division of Environment, Health and Safety University of Tokyo3)
コンクリートの含水量による差違は実験的に
は見られず、製作時の水分が保存すると仮定した
計算の結果(掲載していない)と一致しない。
一方、実験値に入射 10cm 程度でビルドアップ
がみられ、MCNP でのみ再現できている。
全体的な減衰率は実験値と計算値で異なる。
1、背景
原子炉建材等に用いられるコンクリートの放
射化量は、実測と計算の両面からの評価がなされ
ているが、必ずしも良い一致は得られない。この
不一致の要因としてコンクリート中の水分が考
えられるが、現状ではその定量的な影響評価がな
されていない。本研究では、打設時の含水量が異
なる 3 種類のコンクリートに中性子を照射し、そ
の分布を実験とシミュレーションから調べた。
金放射化量比較
2、実験
初期含水量が異なる(打設時の水-セメント比
は 40w%,50w%,60w%)、コンクリート試料を用意し、
研究炉「弥生」から発生させた中性子をそれぞれ
の試料に照射して、放射化箔法により内部の中性
子束の分布を調べた。
実験体系の概略図を図 1 に示す。
Concrete Heavy concrete
60cm
80cm
Core
金放射化量(∝Bq/cc)
1
0.1
実験(60%)
実験(40%)
DORT
MCNP
0.01
0
10
20
30
40
50
深さ(cm)
図 2、実験・計算による金の放射化量。縦軸は規
0.001
格化した放射化量、横はコンクリート中の深さ。
DORT,MCNP とも実験の 40%と対応するようパラ
メタ設定を行った。
4、考察
実験値において初期含水量による差異が見ら
れないのは、打設後にコンクリート中から水分が
揮発し、同程度の水分が残ったことによると考え
られる 1。
また減衰率の不一致は、計算におけるコンクリ
ートの成分(JAERIMEMO2 の基準を採用)が現実に
そぐわないことによる可能性がある。特に水素の
量は中性子分布への影響が大きいと考えられる。
その影響を明らかにするために、正確な元素成
分組成を反映した計算体系を確立し、それによる
計算値と実験値を比較する必要があると考えら
れる。そのために、全水分量分析装置や蛍光 X
線分析装置、ICPAES,ICPMS の使用が有効と考
えている。
80cm
Beam Hole
Polyethylene(10cm)
Concrete(49cm)
Cadmium(1cm)
図1:実験体系の図。右がコア、左がスペクトル
調整材と試料、その間に穴の開いた重コンクリー
トが設置されている。
「弥生」炉の高速中性子柱に図1の試料を設置
し、コンクリート中 3,6,9,14,19,29,39,49cm地
点の中性子束分布を、金箔・銅箔・カドミウムで
覆った金箔を用い放射化箔法により計測した。そ
の結果を DORT、MCNP による解析結果と比較した。
参考文献
1, M.F.Kaplan, “Concrete Radiation Shielding”
Longman, (1989)
2, 小山謹二、奥村芳弘、古田公人、宮坂俊一
“JAERI-M-6928”, JAERI(1977)
3、結果
実験・計算における、コンクリート中に挟んだ
金箔の放射化量の値を図 2 に示す。
4
CR-39 の中性子に対する応答特性評価
Estimation of response char acter istics of CR-39 for neutron
○嶋田和真、Mikhail.Morev、阿部琢也、小池裕也、飯本武志、小佐古敏荘(東京大学)
○K.Shimada, M. Morev, T.Abe, Y.Koike, T.Iimoto, T.Kosako (The University of Tokyo)
1. はじめに
固体飛跡検出器である CR-39 は放射線に対
して感度が良く、環境中のラドン濃度測定、中
性子測定、宇宙線測定などに広く使われている。
ハンガリーの Radosys 社は、一度に大量のエッ
チング処理が可能な速・熱中性子分別検出器を
新しく販売した。その素子は、ポリプロピレン
製のケース中に、ポリエチレンおよびポリアミ
比は、パイル中央の線源から離れるごとに 0.8
から増加していくことがわかった。
4. 考察
7 日間照射の PE のトラック写真を図 2 に示
す。この図においてトラックの重なりが確認で
きる。自動計数装置は重なったトラックを 1
つとカウントしてしまうため、トラック密度の
上昇につれて実際のトラック数とカウント数
に差が出ると考えられる。
ドにそれぞれ挿まれた CR-39(PE および PA)
二つによって構成されている(図 1)
。しかし、
線量の検出範囲と熱中性子への感度が明らか
でないため、241Am-Be 中性子線源を用いて照
射実験を行った。
図 2:7 日間照射の PE のトラック写真
そこで、CR-39 上に発生するトラックの位置
分布がポアソン分布にしたがうと仮定して(1)
式を用いて PE の実験値と比較した。
C
M
1 e
T M
(1)
C:カウント数、M:検出面の全ピクセル数、T:トラック数
図 1:Radosys 社の熱・中性子分別検出器
2. 実験手順
先ず始めに、レムカウンタによって線量を測
定済みの 241Am-Be 線源を用いて、減速材を使
用せず空気中において 10 分∼7 日間の間で照
射時間を変え、CR-39 への中性子照射を行った。
次に、黒鉛パイル内に同様の線源ならびに
PE および PA を分けて設置し、24 時間の照射
を行った。照射後、CR-39 のエッチング処理を
行った。
プレエッチングとして 0.69 MPa の CO2
ガス中に1週間、
本エッチングとして 6.25 M、
90℃の NaOH 水溶液中に 4.5 時間、それぞれさ
らした。CR-39 を 1 日間乾燥させた後、高速自
動計数顕微鏡でトラック密度の計数を行った。
3. 実験結果
空気中で照射された CR-39 のトラック密度
は、1∼7 日間の時間に対して線形的に増加し
た。しかし、10 分∼3 時間の照射ではトラック
の数が少なく、ほとんどカウント出来なかった。
PA と PE のトラック密度の比(PA/PE 比)は平
均 0.8 であった。
黒鉛パイル内で照射された CR-39 の PA/PE
5
その結果、計算値と実験値はよりよい一致を示
した。しかし、黒鉛パイルの結果より、カウン
トの飽和値(検出上限)が高いと考えられる。
モデルの再検討を今後予定している。
次に、黒鉛パイル内の中性子分布を、MCNP5
を用いてシミュレーションを行った。今回は
速・熱中性子のエネルギー群を 0.5eV で区切り
2 群で評価を行った。PE は熱中性子には感度
が無いと仮定し、(2)式を用いて PE の速中性子
に対する感度 Kf を求めた。(3)式を用いて P
の熱中性子に対する感度 Kt を求めた。
N f TPE K f
(1)
Nt
TPA TPE
S Kt
(2)
Nf:速中性子の数、Nt:熱中性子の数、TPE:PE のトラッ
ク数、TPA:PA のトラック数、S:PE と PA の速中性子に対
する感度の比
今後は検出器を原発と加速器施設の放射化評
価に応用してゆく予定である。
6,参考文献
A.Fiechtner and C.Wernli, Individual neutron
monitoring with CR-39 detectors at an accelerator
center Radiat.Prot.Dosim 85, p35-38(1999)
電子式個人線量計の高エネルギー中性子に対する応答
Response of Electronic Personal Dose meter for High-Energy Neutrons
○岩野健介 1、小田啓二 1、山内知也 1、布宮智也 2、安部 繁 2、中村尚司 3
(1 神大・海事、2 富士電機、3 東北大・CYRIC)
1
1
1
2
K. Iwano , K. Oda , T. Yamauchi , T. Nunomiya , S. Abe2, N. Nakamura3
(1Kobe Univ., 2Fuji Electric, 3Tohoku Univ. CYRIC)
【緒言】
従来の個人中性子線量計は熱中性子から約
20 MeV までのエネルギー範囲を測定対象として
いた。しかし近年、航空機航行高度や宇宙空間、
大強度陽子加速器周辺において、数 10∼100
MeV のエネルギーを持った中性子の線量寄与が
比較的大きいことが指摘されており、従来の測定
器を使用すると線量を過小評価してしまう恐れが
ある。個人被曝線量計は、一般に、積算型と直読
式の 2 種類に大別され、前者については CR-39 と
複合ラジエータにより増感が図られている。一方、
後者についてはまだ有効な個人被曝線量評価シ
ステムが確立されていないのが現状である。
そこで本研究では、第一段階として既存の電子
式線量計のレスポンスを調べた。
また、数 0.1 mm, 1.5 mm, 3.0 mm の厚さのポリ
エチレン製ラジエータを追加して実験を行った。
【高エネルギー中性子に対する応答】
実験は日本原子力研究開発機構 放射線標
準施設 FRS で行なった。図 1 に 14.8MeV の単色
中性子場において得られたパルス波高分布を示
す。(ラジエータの厚さを Wr としてある)
ラジエータを追加しないで得られた波高分布は、
空乏層中の Si の原子核と中性子との核反応(弾
性散乱など)に起因するものであると考えられる。
ラジエータを追加して得られた波高分布は、中
性子とポリエチレンを構成する水素との弾性散乱
により発生した反跳陽子に起因するものであると
考えられる。そこで、ラジエータと Si からなる簡単
な体系で、発生する反跳陽子が厚さ 50 µm の空
乏層に付与するエネルギーの分布を計算した。こ
の結果を図 2 に示す。このように図 1 のラジエータ
を追加して得られた波高分布とよく似た分布となり、
ピークの高さもほぼ一致することから、用いた解析
モデルと実験結果との再現性を確認することがで
きた。
今後は様々なエネルギーを持った中性子に対
する解析や絶対値の比較、他のラジエータを用い
た解析を行い、中性子エネルギーに対する線量
計の感度を求める研究を行う。
【電子式線量計の検出原理】
本研究で用いた線量計は、富士電機製の電子
式個人線量計NRY-21である。この線量計の高速
中性子用素子では、受感素子であるSi検出器手
前に厚さ0.1 mmのポリエチレンシートがあらかじ
め置かれており、この中で発生した反跳陽子が空
乏層に入射し、シグナルを得るというオーソドック
スな手法である。
このシグナルを外部に取り出せるように改造し、
バッファアンプを通して多重波高分析器でパルス
波高分布を測定した。
[×10-6] 3.0
Without Radiator
Wr=0.1[mm]
2.5
Events per Fluence [cm2/keV]
Counts per Fluence [cm2/ch]
[×10-6] 3.0
Wr=1.5[mm]
Wr=3.0[mm]
2.0
1.5
1.0
0.5
2.5
Wr=0.1[mm]
Wr=1.5[mm]
2.0
Wr=3.0[mm]
1.5
1.0
0.5
0.0
0.0
0
400
800
1200
0
1600
400
800
1200
Energy Deposited [keV]
Channel Number
図 2. 増感効果の解析結果
図 1. 実験で得られたパルス波高分布
6
1600
岩石、土壌中の天然放射性核種の濃度
Concentrations of natural radioactive nuclide in rocks and soils
○森直人1 山田純也2 下道國3
(藤 田 保 健 衛 生 大 衛 生 学 部
1
藤田保健衛生大大学院
2
藤 田 保 健 衛 生 大 3)
N Mori 1 J Yamad a 2 M shimo 3
(unde rgrad of FHU 1 Grad of FHU2 FHU3)
【はじめに】
その土地の γ 線レベルは、主にその
らの計数を減らすため、測定器の外側を鉛で
遮蔽した。40K からのγ線(1.461MeV)、208Tl
土 地 の 地 質 で 決 ま る 。基 盤 岩 石 が 風 化
からのγ線(2.615MeV )、214Bi からのγ線
してそのままその場所の土壌となれ
(609keV)の全吸収ピークのカウントを抜き
ば、その土地の γ 線レベルは、地質
出すことで、それぞれ、40K、232Th、238U 濃度
に よ っ て だ け 決 ま る は ず で あ る 。と こ
を求めた。
ろで岐阜県中津川市坂下地区は他の
玄武岩地域より比較的 γ 線レベルが
【結果と考察】
高いと報告されている。坂下地区
は ,γ 線 レ べ ル の 低 い 玄 武 岩 か ら な
測定の結果、流紋岩地域では 40K、232Th、238U
の比放射能が高く、玄武岩地域では低い値と
る 上 野 玄 武 岩 台 地 の 周 り を ,γ 線 レ
なった。また玄武岩地域でありながら、玄武
ベルの高い花崗岩や流紋岩が囲んで
岩地域より比放射能が有意に高い場所があ
い る 。こ の 地 区 の 地 形 に よ っ て は 、周
った。これは両者が風化し混ざりあった土で
辺 の 地 質 に よ る 土 壌 の 混 合 に よ り 、γ
あると推定される。γ線レベルは基盤岩石の
線レベルが基盤岩石とする地質と対
地質以外に、土壌の混合効果など、岩石から
応 し な い 可 能 性 が あ る 。こ の こ と を 踏
土壌への移行、その後の土壌の移動などが複
ま え て 、地 質 や 地 形 に よ る 放 射 線( 主
雑に関係し決定されると考えられる。
に 地 表 ガ ン マ 線 )環 境 の 違 い を 明 ら か
に す る こ と を 目 的 と し 、坂 下 地 区( 主
に 上 野 玄 武 岩 台 地 )を モ デ ル に 測 定 を
行った。
【方法】
坂 下 地 区 の 6 箇 所 で 、土 お よ び 岩 石
試料を採取した。土試料については、
105 度 24 時 間 乾 燥 後 、2mm 径 の ふ る い
で 粒 径 を 整 え た 。岩 石 は 粉 砕 し 、同 様
の 処 理 を 行 っ た 。測 定 用 容 器 に 処 理 後
の 試 料 を 入 れ 密 封 し 、放 射 平 衡 を 待 っ
て 測 定 し た 。 測 定 器 に は φ2インチ×L
2インチ NaI(Tl)スペクトロメータ(応用
光研株式会社製)を用いた。対象試料以外か
7
土壌からのアクチノンの逸出に関する研究
A Study on Exhalation of Actinon from Ground
○竹中正治、玉川洋一、吉田拓生、西川嗣雄 (福井大院工)
M.Takenaka , Y.Tamagawa , T.Yoshida , T.Nishikawa ( University of Fukui )
その判定結果が正しいかを確かめるために
1.緒言
211Bi
現在多くの放射性同位元素が存在する中で、
235U
のピーク面積の減衰を調べ、理論式フィ
ットさせ解析した結果、先のピークが 211Bi の
の逐次崩壊によって生じるアクチノン
(219Rn)は半減期が非常に短く、また親核種
ものであることがわかった。
の 235U は天然ウラン中の含有率が 0.7%と非常
70
に少ないため、環境放射能の分野ではあまり関
◆:実験値
Coun ts/10min
60
心を持たれてこなかった。
本研究室での研究の過程で、ウランの含有量
が高い土壌からは、アクチノンの逸出があるこ
50
■:理論値
40
−:近似曲線
30
20
10
とがわかった。本研究では、アクチノンの土壌
0
0
からの逸出に関してより詳しい知見を得るた
50
100
150
200
Mea suring time(min)
め、実験室レベルでの模擬実験を行った。ラド
ン、トロン、アクチノンの崩壊により発生した
図2
211Bi
の減衰曲線
娘核種をフィルターで捕集し、フィルター上の
また 211Bi のピーク面積の捕集時間に対する
娘核種から発生するα線のエネルギースペク
飽和を調べ理論式をフィットさせ解析した結
トルを表面障壁型半導体検出器を用いて測定
果、アクチノンが定常的に逸出していることが
し、核種を同定した。
わかった。
30 0
Co un ts/ 18 0min
2.研究内容
土壌から逸出するラドンの娘核種をフィル
ター法で 180 分間の捕集、180 分間の測定を
行い、その測定結果からα線スペクトルの中に
25 0
20 0
◆:実験値
15 0
■:理論値
10 0
大気中のラドンの娘核種を測定した際には見
−:近似曲線
50
0
られなかったピークが存在した。α線エネルギ
0
50
ーとチャンネル数の関係からそのピークがア
クチニウム系列の 211Bi ではないかと推定した。
80
Count s/180min
70
214
60
212
211
Bi(6.6MeV)
0
2
4
1.
土壌からのアクチノンの逸出
2.
アクチノンの逸出が定常的であること
以上の事が確認できた。
10
0
の飽和曲線
本実験では、ウラン含有量の高い土壌からは、
Po
(8.8MeV)
20
211Bi
20 0
3.結果
Po(7.7MeV)
50
40
30
図3
10 0
15 0
Samplin g time ( min)
6
8
10
Energy (MeV )
図1 土壌試料から逸出するラドンの娘核種
8
ラドン散逸係数及ぼす含水比の影響
Effect of moisture content on r adon emanation coefficient
○谷田部慶憲1、反町篤行 2、床次眞司 2、石川徹夫 2、内田滋夫 2(1 千大院、2 放医研)
Y. Yatabe1., A. Sorimachi2., S. Tokonami2., T. Ishikawa2., S. Uchida2. (1 Chiba university, 2National
Institute of Radiological Sciences)
1.緒言
ラドン及びその子孫核種が人体に及ぼす影
響についてはよく知られている。屋内環境にお
けるラドンの発生源として土壌、建材、また地
下水などが挙げられる。それら発生源のうち土
壌から発生したラドンが最も屋内ラドンに寄
与すると言われている。それゆえ地表面からの
ラドン散逸率を推定することは、屋内ラドンレ
ベルを評価する上で重要である。本研究ではラ
ドン散逸率を推定する上で必要となる散逸係
数に着目し、散逸係数の含水比依存性について
評価した。
2.計算・実験手法
実験試料として沖縄県宮古島の島尻マージ
(琉球石灰岩風化土壌)を用いた。試料を風乾
させた後、標準篩を用いて粒径を 3 分類した
(<1.0 mm, 1.0-2.0 mm, 2.0-4.8 mm)
。また、含
水率依存性を評価するため 110℃で 24 時間乾
燥させた土壌試料に霧吹きを用いてある一定
3.結果・考察
図 2 に実験結果を示す。実験結果から、含水
比が 0 wt%付近において散逸係数の急激な立
ち上がりが見られ、高水分域においてはその上
昇が頭打ちとなる傾向が見られた。これらの傾
向は Strong(1982)等の研究結果に付随するも
のとなった 1)。土壌水分量が散逸係数に及ぼす
影響については、Tanner(1980)によって説明
されており 2)、水分によってラドンの反跳距離
が減少することにより、ラドンが近接粒子にト
ラップされる確率が減少するためと言われて
いる。また、含水比が飽和に向かうに従い散逸
係数が減少するといった報告もなされている
が、これは液相中の拡散が非常に小さいことに
起因するものと考えられる。Tanner(1980)で
はミクロ現象としのラドン発生メカニズムを
説明しており、ある体積体を持つ試料からのラ
ドン発生現象(マクロ現象)と必ずしも一致す
るとは限らない。空隙中の液相の割合いが上昇
すると、試料中でのラドンの挙動は液相中の拡
散がメインとなり、検出されるまでにラドンが
壊変する恐れがある。本研究でそのような傾向
が見られなかったのは土壌試料の体積が十分
に小さかったためと考えられる。
1
量の水分を与え、アクリル製の蓄積容器(6.8l)
宮古島
0.8
をグラブサンプリングし、Pylon 社製 AB-5 を
0.6
用いて容器内ラドン濃度を測定した。図 1 にそ
の実験系を示す。また、ラジウム含有量の測定
にはゲルマニウム半導体検出器を用いた。
散逸係数
に密封した。密封から 24 時間後、容器内空気
粒径 1.0mm以下
粒径 1.0-2.0mm
粒径 2.0-4.8mm
0.4
0.2
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
含水比
図 2 散逸係数の含水比依存性
図 1 散逸係数実験系
参考文献
1) K. P. Strong, D. M. Levins, Effect of moisture
content on radon emanation from uranium ore
and tailings, Health Pyhs., 42 (1), 27-32
(1982).
2) A. B. Tanner, Radon migration in the ground:
a supplementary review, Natural Radiation
Environment III., 1, 5-56 (1980).
南極昭和基地のラドン鉛直濃度分布の解析
Analysis of ver tical concentr ation distr ibution of r adon at Syowa Station
、田阪茂樹(2 岐阜大学)
○仲道真也ⅰ、飯田孝夫、山澤弘実(1 名古屋大学)
Shinya Nakamichi1 , Takao Iida, Hiromi Yamazawa (1 Nagoya University) ,
Shigeki Tasaka (2Gifu University)
壌面積が大きくなるので、フラックスも増加す
ると考えられたが、冬季(4~9 月)のフラックス
よりも小さくなった。これは土壌表面の増加よ
りも雪融による地表面の湿潤化による 222Rn フ
ラックスの減少の影響が大きかったためと考
えられる。
岩石試料の Ra 含有量と 222Rn 散逸率の関係
を Fig.2 に示す。岩石の採取箇所毎に Ra 含有
量に差は見られた。Ra 含有量と 222Rn ラドン散
逸率は全体的にほぼ直線関係を示した。以上よ
り南極の岩石試料の Ra 含有量と 222Rn 散逸率
は比例関係があると考えられる。一部近似線か
ら大きくずれた試料があったが、他の試料と岩
石状態に大きな違いが見られないことから採
取場所特異のものと考えられる。
1.緒言 他大陸から南極への大気中汚染物
質の流入にトレーサーとしてラドン(222Rn, 半
減期 3.82day)を用いることが可能か検討され
ている。222Rn は土壌や岩石を起源とするので、
土壌が雪や氷で覆われている南極では他大陸
起源の 222Rn を測定できると期待されている。
本研究は南極自体からの 222Rn 散逸率を定量評
価するために、昭和基地で測定された 222Rn 及
びその同位体トロン(220Rn, 半減期 56s)濃度の
鉛直分布から鉛直輸送量(フラックス)の評価
と南極で採取された岩石試料のラジウム含有
量の測定を行った。
2.測定及び解析方法 高感度ラドン検出器
(検出下限濃度 6 mBq m-3)を用いて 2005 年 2 月
20 日から 2006 年 1 月 31 日までの期間、三高
度(地上高 1, 4, 14m)での空気中のラドン及びト
ロン濃度を一時間毎に連続測定した。フラック
スは地上 1, 14m の 222Rn 濃度差と風速(地上
10.1m)を用いて、大気安定度を中立、風速に対
する粗度 z0 を 2mm、無限の吹走距離を仮定し
(1)式を用いて評価した。ここで k(=0.4)はカル
マン定数、zw(=10.1m)は風速 u の測定高度、z1,
z2 は濃度の測定高度、c1, c2 は高度 z1, z2 の 222Rn
濃度(Bq m-3)である。
FRn
k 2 ln
zw
z0
ln
z1
z2
Annual
Nov(summer)
May(winter)
2
mBq/m s N
NNW
4
NNE
NW
NE
2
WNW
ENE
W
0
E
WSW
ESE
SW
SE
SSW
SSE
S
u c1 c2
Fig.1
Directional distribution of radon
exhalation rate in mBqm-2s-1 at Syowa
Station.
2.0
-2 -1
Radon Exhalation Rate J [mBqm s ]
また南極(東オングル島)で採取された岩石
試料の 222Rn 放出率, 222Rn 散逸率及びラジウ
ム含有量を実験室内で測定した。222Rn 放出率
は密閉容器内に岩石を封入し一定期間放置後、
シンチレーションカウンター(AB-5, Pylon)を
用いラドン濃度から決定した。222Rn 散逸率は
ラドンサンプラー(TRACERLAB-ERS-2)を直
接岩石に被せ娘各種の濃度変化から決定した。
Ra 含有量は一定量を容器に封入し一定期間放
置後、ゲルマニウム検出器(Gamma-X Hp Ge
Detector, EG&GORTEC)を用いピーク面積から
決定した。
3.結果及び考察
(1)式で求めた見かけの
222
Rn フラックスと風速の関係を Fig.1 に示す。
年間の見かけのフラックスの平均値 1.0 mBq
m-2s-1 は全球平均値約 20 mBq m-2s-1 と比べると
かなり小さかった。夏季(12~2 月)は露出する土
1.5
J = 0.0116A
1.0
0.5
0.0
0
25
50
75
100
-1
Radioactivity Concentration A [Bqkg ]
Fig.2 Relation between radon exhalation rate
and 226Ra content of rock samples.
参考文献
10
土壌水素同位体ガス酸化速度の測定とモデル化
Measurement and modeling of oxidation r ate of hydrogen isotopic gases by soil
○太田雅和 1, 山澤弘実 1, 森泉純 1, 飯田孝夫 1 (1 名大院工)
M. Ota, H. Yamazawa, J. Moriizumi, T. Iida (Grad. School of Engineering, Nagoya University)
1.緒言 トリチウム(β 線放出核種、半減期 12.3 y)
law)で示される飽和曲線を示した。酸化速度は土壌
は環境中をトリチウムガス(HT)やトリチウム水
水分量が低含水率(<8 wt%)及び高含水率(>15 wt%)に
(HTO)の形で移行する。HTO からの放射線による被
おいて顕著に変動した(Fig. 1)。低含水率下では土壌
曝の線量係数は HT のそれより 4 桁大きいので、環
の湿潤によって酸化菌の活性が上昇、高含水率下で
境中への HT 放出時の安全評価では環境中での HTO
は嫌気性状況下で菌の活性が低下したため或いは土
の生成過程の解明が重要となる。大気中 HT は土壌
壌液体水の増加により H2 及び D2 の拡散が阻害され
に沈着し、土壌中の水素酸化酵素(Hydrogenase)を有
たためと考えられる。基質濃度 480 ppm では酸化速
する酸化菌(Streptomyces 等)によって速やかに酸化さ
度は土壌温度の上昇と共に指数関数的に上昇した
れ HTO となるので、HT 沈着過程の定量評価が重要
(Fig. 2)。土壌温度の上昇と共に酸化菌及び酵素反応
である。しかし土壌による HT 酸化過程には未だモ
が活性化したためと考えられる。
デル化されていない。そこで本研究は HT を模擬し
基質濃度 480ppm では概ね H2 の酸化速度は D2 の
た H2 及び D2 を用いた室内実験により、制御された
酸化速度より大きな値を示し、酸化速度の比の平均
条件下で酸化速度を測定し、モデル化を行なった。
(vH2/vD2)は 1.4 であった。一方、基質濃度 1 ppm では
2.測定方法 名古屋大学構内畑地から採取した表
酸化速度に同位体効果は殆ど存在しなかった。1 ppm
層土壌約 10 g(土壌種類は黒ぼく土)を入れた容積
では酸化速度における同位体効果が表れないような
522.5 ml の密閉容器に封入し、容器内水素同位体ガ
現象が起きていた可能性がある。基質濃度 1, 60, 480
ス濃度を調整した。容器内水素同位体ガス濃度の時
ppm における酸化速度の温度依存性から、酵素反応
間変化をガスクロマトグラフ(GC-14B, 島津製作所)
で重要なパラメータとなるMichaelis定数の温度依存
或いは還元性ガス検出器(TRA-1, J-science)を用い
性を決定した。
黒ぼく土で得られた測定結果を基に酸化速度を基
への加水により制御した。土壌温度は恒温槽を用い
質濃度、土壌水分量、土壌温度、土壌深さの関数と
て土壌を所定の温度で 24 h 以上保存することで制御
してモデル化した。モデル化した酸化速度は異なっ
した。
た土壌(畑地から採取した沖積土及び水田から採取
3.結果・考察 酸化速度は基質濃度(H2 或いは D2
した沖積土)の酸化速度を概ねファクター2 の範囲内
濃度)に対しては酵素反応速度論(Michaelis-Menten’s
で決定した。
D2
D2, fitted
H2
D2
H2, fitted
D2, fitted
10
8
-8
3
-1 -1
H2
H2, fitted
-8
-1 -1
Oxidation rate (10 mol g h )
4
Oxidation rate (10 mol g h )
て測定し、酸化速度を決定した。土壌含水率は土壌
2
1
6
4
2
0
0
0
5
10
15
Soil water content θ (wt %)
-10
20
Fig. 1 Soil water content dependency of the oxidation rate.
10
30
50
Soil temperature T (℃)
70
Fig. 2 Soil temperature dependency of the oxidation rate.
11
90
安定炭素同位体を用いた土壌有機物分解過程の評価
Estimation of soil organic matter decomposition process by using stable carbon isotope
○守屋耕一 1, 河合伸太郎 1, 森泉純 1, 山澤弘実 1, 飯田孝夫 1 (1 名大・工)
Koichi MORIYA1, Shintaro KAWAI1, Jun MORIIZUMI1, Hiromi YAMAZAWA,1 Takao IIDA1 (1University of Nagoya)
1. 緒言 土壌から大気中への CO2 フラックス
れなかったが、深部の土壌では分解に伴い有
を供給源毎に分けて評価することは、森林内
機物分解により生成された CO2 の同位体比が
の炭素循環を理解する上で重要である。従来
大きくなった。表層付近の土壌を用いた実験
の解析では、供給源の一つである土壌有機物
の結果から、土壌有機物分解過程における同
分解に由来した CO2 (SOMD-CO2)の炭素同位
位体効果は認められなかった。深部の土壌の
体比には土壌有機物(SOM)と等しい同位体比
有機物分解において同位体比に差異が生じた
が仮定されてきた。そのため本研究では、仮
理由として、同位体比の異なる土壌有機物が
定の妥当性を検証するために、土壌有機物分
混在している場合が考えられる。主として存
解における同位体比の変化の有無を調べた。
在する土壌有機物と、有機物分解に利用され
さらに、異なる深さの土壌でその変化に差異
る土壌有機物それぞれの同位体比が異なる時、
が生じるかを調べた。
土壌有機物と分解により生成される CO2 の同
2. 実験方法 愛知県豊田市(35°12'N, 137°24'E,
位体比には差異が生じる。
標高 1010 m)のカラマツ林(Larix leptolepis)で
4. 結言 土壌有機物分解過程における安定炭
採取した土壌数百 g を実験室内で容積 7 L の
素同位体比の変化を調べた。今後、実験に用
密閉容器に封入し、容器内空気を CO2 を含ま
いる容器の漏れを抑え実験の精度を上げるこ
ない空気で置換した後、密閉した。密閉後恒
と、また有機物分解における安定炭素同位体
温槽にて 30°C で保存し、24 h 経過後に容器
比変動の、より詳細な土壌深さ分布を評価す
内の空気を採取し、有機物分解で新たに生成
ることを検討している。
13
した CO2 の安定炭素同位体比(δ C)を測定し
た。土壌有機物の炭素同位体比は土壌を
850°C で燃焼して得られた CO2 中の同位体比
-35.0
-30.0
δ13C (‰)
-25.0
-20.0
-15.0
-10.0
を測定することで決定した。安定炭素同位体
0-15
MAT-252, Thermo Quest Inc., Germany)を用い
た。また密閉容器内の空気には、容器の漏れ
により実験室内の空気が混入するので、式(1)
SOM
を用いて正味の SOMD-CO2 の同位体比を算
SOMD-CO2
30-45
Soil depth (cm)
比の測定には同位体比質量分析計(Finnigan
出した。
3. 結果及び考察 同位体比の測定結果を Fig.1
に示す。表層付近の土壌では有機物と有機物
Fig.1 Mean stable carbon isotopic ratios of SOM and
CO2 derived from SOM decomposition.
分解による CO2 の間に同位体比の差は認めら
13
C 容器内
13
C SOMD
CO 2
CO 2
C 容器内
13
CO 2
C SOMD
C 実験室内空気
C 実験室内空気
(1)
CO 2
12
炭素同位体比を用いた森林土壌有機物分解の解析
Analysis of soil or ganic matter decomposition in forest by car bon isotopic r atio
○河合伸太郎 1、森泉純 1、山澤弘実 1、飯田孝夫 1(1 名大院工・エネ理)
S.Kawai 1, J.Moriizumi 1, H.Yamazawa 1, T.Iida 1 (1 Nagoya University)
1.緒言
森林は地球上最大の炭素リザーバーであり、
CO2 放出源かつ吸収源である。北半球中高緯度
の森林は地球炭素循環の中で CO2 の重要な吸
収源かつ放出源であり、森林の吸収能、放出能
を定量的に見積もる必要がある。原子力施設で
発生する 14C による公衆の被曝評価でも、生態
系での炭素循環及び 14C 動態の定量評価が必
要である。
本研究では、森林土壌面から放出される CO2
のフラックス及び炭素同位体比を測定した。地
温及び土壌有機物の深さ分布も測定した。室内
実験にて求めた土壌有機物分解による CO2 生
成率を用いて、土壌層内での CO2 輸送を計算
し、森林土壌面から放出された CO2 の炭素同
位体比の季節、日変動の解析を行った。
150
14:30
δ 1 4 C re s [‰]
120
90
14:30
10:00
10:30
15:00
14:00
10:30
15:00
16:00
10:30
60
12:00
30
Mean-Measur ement
Measurement
5:30
13:30
6:30
6:30
0
Apr.27 Jun.20 Aug.5
Sep.1
Oct.7 Nov.28
Date(2005)
Fig.1
δ14C
in CO2 from forest floor.
CO 2 production ra te [10 - 1 0 gC g - 1 s - 1 ]
0
3
6
9
12
15
0.00
13
0.05
Soil depth [m]
2.観測・実験
観測地は愛知県豊田市(旧稲武町)
(35°12’ N、
137°24’ E)に位置する、名古屋大学演習林内
のカラマツ林(樹齢:約 40 年、樹高:約 23
m)である。観測地の標高は 1010mである。
観測期間は 2004 年 5 月から 2006 年 11 月であ
る。
土壌呼吸(土壌表面から CO2 が放出される現
象)CO2 のフラックスは、10 地点で、クロー
ズドチャンバー法により測定された。CO2 濃度
測定には、非分散型赤外線吸収ガス分析計
(LI-820 CO2 GAS ANALYZER、
Li-Cor 社製、
USA)を用いた。土壌呼吸 CO2 を 144L 大型
チャンバーにより捕集し、その炭素同位体比を、
タンデトロン加速器質量分析計及び同位体比
質量分析計(Finnigan MAT 252、Thermo
Electron 社製)を用いて分析した。
深さごと(0~30cm)に土壌コアを採取し、室内
実験にて CO2 生成率を測定した。CO2 生成率
の温度依存性及び CO2 濃度依存性も測定し、
土壌温度及び CO2 濃度の関数として与えた。
CO2 生成率の測定結果を用いて、各炭素同位体
CO2 の 1 次元輸送モデルを作成した。土壌面
からの CO2 フラックスとその炭素同位体比の
計算を行い、解析を行った。
0.10
0.15
0.20
0.25
20 07/ 5/ 18
20 06/ 5/ 25
0.30
Fig.2 Depth profiles of CO2 production rate
of SOM.
3.結果・考察
土壌呼吸 CO2 フラックス測定の結果、地温の
上昇に伴い、フラックスが急激に増加する事が
確認された。土壌呼吸 CO2 の放射性炭素同位
体比(δ14C)も季節変動、日変動を示し(Fig.1)、
高温期に高い値を示す傾向が見られた。1950
年代に行われた大規模な大気圏内核実験によ
って、土壌有機物の δ14C は土壌表面で最大に
なる分布を持つことが知られている。つまり、
土壌温度変化に伴って CO2 生成率の深さ分布
(Fig.2)が変動した事が、土壌呼吸 CO2 の δ14C
変動の原因として考えられる。
モデル計算の結果、測定結果と同じく、高温
期に土壌呼吸 CO2 中の δ14C が増加する傾向が
得られた。
イメージングプレートの低エネルギー光子に対する応答特性評価
Response proper ty evaluation of Image Plate for low ener gy photons
○鈴木ちひろ1、阿部琢也1、小池裕也 2、飯本武志 3、小佐古敏荘1
(1 東大院工、2 東大 RI センター、3 東大環境安全本部)
1
1
Chihiro Suzuki , Takuya Abe , Yuya Koike1, Takeshi Iimoto1, Toshiso Kosako1
(1 The University of Tokyo)
3.結果と考察
1.背景
照射の結果を図2に示す。
イメージングプレートは、光子線場の強度を
二次元的に計測できるシート状の放射線検出
光 子エネルギーに対する IPの応 答
器である。イメージングプレートは、光子のエ
0.00 6
光子に対する応答 ( PSL/ pho ton )
ネルギーにより感度が異なることが知られて
いるが、その依存性を定量的に扱った報告はな
い。本研究では、特に同位体線源では照射する
ことのできない低エネルギーの光子を、シンク
ロトロン放射光を利用して照射することで、イ
0.00 5
20 07 年5月
20 07 年11 月
0.00 4
0.00 3
0.00 2
0.00 1
0
メージングプレートの低エネルギー光子に対
0
10
20
30
40
エネル ギー ( keV )
50
60
70
する応答特性を得ることを目的とする。この研
究は、イメージングプレートを用いて定量的な
図 2
解析をする際に大きく役立つと考えられる。
ジングプレートの応答。応答は、照射光子密度
各種エネルギーの光子に対するイメー
に対する PSL 値(イメージングプレートの応答
2.実験
を表す単位)で算出。
KEK(高エネルギー加速器研究機構)の PF
(放射光科学研究施設)にて、放射光を利用し
結果より、イメージングプレートの感度が、
10 keV、20 keV、40 keV、50 keV、60 keV の単
照射する光子のエネルギーが低くなるほど高
色 X 線ビームをイメージングプレートに照射
くなる傾向にあることが確認された。しかし、
した。照射体系を図1に示す。照射は 3∼4 エ
二回の実験で再現性が見られないことや、
ネルギーずつ、二回に分けて行った。
50keV 以上のエネルギーで一度感度が大きく
放射光
なる等の問題点も見られる。
2 mm コリメータ
今後の課題として、照射 X 線が完全な単色
でないことが結果に与える影響の解析、及び
基準空気電離箱
MCNP を用いたシミュレーションにより連続
5 mm コリメータ
的なエネルギーに対する応答特性を得ること
等が挙げられる。
ターゲット
(炭素)
参考文献
イメージングプレート
1) 東悟史『イメージングプレートを用いた外
部被ばく時の人体内線量分布の評価』
図 1
イメージングプレート照射の様子。放射
(2007 年度修士論文、東大院工)
光の強度が強いため、炭素ターゲットにて 90
2) 太田朗生『イメージングプレートを用いた
度散乱させたのちに照射する。また、コリメー
光子線量の評価』
(2007 年度修士論文、東
タを用いて照射光子密度を均一化した。
大院工)
14
γ線源の位置と核種が特定可能なコンプトンカメラの開発
Development of Compton camer a for identification the gamma source
○武藤啓太郎1、前川祐希1、玉川洋一1、小林正明 2 杉本章二郎 2(1 福井大学、2KEK )
K.Muto1 , Y.Maekawa1, Y.Tamagawa1, M.Kobayashi2, S.Sugimoto2 (1 University of Fukui, 2KEK)
3.研究内容
コンプトンカメラは多結晶の Scintillator を
用いることで高効率に散乱角を導出すること
が可能になる。反面吸収体から散乱体に逆の経
路でガンマ線が入ってしまうことに起因し間
違った散乱角を導出してしまい虚像が発生す
る原因となっていた。これを解決するために
Scintillator の素材を検討し(Plastic Scintillator
と NaI(Tl)を用い)合計エネルギースペクトル
に条件を付与することで、虚像の発生を大幅に
抑えることが可能になった。
また最小構成のコンプトンカメラの基礎実
験を行い、核種の特定、飛来方向の特定が可能
であることを実証した。結果散乱角の角度分解
能はσ±6.3 度であった。
CERN の開発したシミュレータ Geant4 を用
いて効率のよいコンプトンカメラのデザイン
を行い現在、散乱体1個 吸収体8個のコンプ
トンカメラをデザインしている。
またシミュレータ内に構築したコンプトン
カメラにガンマ線を照射し、異なる核種のガン
マ線源でも同時に計測が可能であることを示
し、射能測定の検討を行った。
そしてガンマ線源の空間方向を可視化する
アプリケーションの作成をした。
(図1)これ
を用いて棒状の(連続した)線源でも飛来方向
の特定を確認している。
1.まえがき
ガンマ線は荷電粒子と異なり飛来方向が特
定しにくい特徴を持つが、ガンマ線の特徴であ
るコンプトン散乱と光電効果を利用す
る”compton camer a”( コンプトンカメラ)と
呼ばれる検出器を利用することで飛来方向を
特定することができる。
本研究においてはガンマ線源の位置、核種、
放射能を特定することを目的とし研究開発を
行ってきたのでこれを報告する。
本研究により、研究機関等で放射性物質の管
理、漏洩、紛失等に対して作業員の被曝を抑え
安全に対応できると考えている。
2.原理
ガンマ線の飛来方向を求めるために、
本研究では Plastic Scintillator、NaI(Tl)の二種類
の Scintillator を用いており、光電子増倍管によ
りガンマ線の損失エネルギーを検出している。
Plastic Scintillator は散乱体、NaI(Tl)は吸収体
と呼んでいる。それらの呼称のとおり、
ガンマ線の飛来方向を特定するために、Plastic
Scintillator において入射ガンマ線がコンプトン
散乱で損失するエネルギー(hν−hν’)…①
を、NaI(Tl)においては光電効果による散乱ガン
マ線のエネルギー(hν’)…②を測定する。
散乱体と吸収体は同時計測し、合計エネルギ
ーをエネルギースペクトルに書き出すことで、
ガンマ線の全エネルギー(hν)…①+②を求め
ることができる。ガンマ線のエネルギースペク
トルから核種が特定でき(式 1)にあてはめる
ことで、ガンマ線の散乱角θを求めることがで
きる。
1
1
cos
1 me c 2
h
h '
2
( me C
0.511MeV )
図1
…(式1)
15
ガンマ線源(棒状)の描画
含鉛ガラスの放射線遮へい評価
Evaluation of radiation shielding ability of lead glass
○津田啓介 1,福士政広 1,明上山温 1,北村秀秋 1,井上一雅 1,中谷儀一郎 1,2,木村純一 3,
澤口政人 3(1 首都大院・放科系,2 日本医療大・放射線,4 医建エンジ)
K. Tsuda1, M. Fukushi1, A. Myojoyama1, H. Kitamura1, K. Inoue1, G. Nakaya1, 2, J. Kimura3,
M. Sawaguchi3 (1 TMU, 2 NIMS, 3 Iken-Eng)
,
ラスの組成は,Med-X(比重 4.8,SiO2(26.3 %)
はじめに
近 年 , 核 医 学 診 断 で は , positron emission
,PbO(52.2 %)
,CaO(1.0 %)
,
Al2O3(3.1 %)
tomography(PET)検査が広く利用され,クリニ
,Sb2O3(0.2 %)
)
,
BaO(17.1 %)
,As2O3(0.2 %)
カル PET として普及している。このため,PET
,Al2O3
未名称鉛ガラス(比重 5.19,SiO2(27.0 %)
施設における放射線防護,安全確保が課題であり,
(0.5 %)
,PbO(71.0 %)
,K2O(1.5 %)
)とした
PET 施設の放射線遮へい材として含鉛ガラスに
3)
注目が集まっている。我々は,英国ピルキントン
デル化し,線源は 18F の点線源とし,陽電子が停
社製の 2 種類の含鉛ガラス(Med-X,未名称鉛ガ
止した地点で 2 本の消滅放射線が放出されるも
ラス)の放射線遮へい能評価の機会を得た。そこ
のとした。計算ヒストリー数は,計算結果の相対
18
。計算条件は,可能な限り実測体系を正確にモ
で,本研究では,含鉛ガラスの F(511 keV)に
標準偏差が 5 %未満になるように決定した。断面
対する放射線遮へい能評価を,実測およびモンテ
積データとして,電子には ICRU Report 374)を,
カルロシミュレーション計算評価にて行った。
光子には PHOTX5)のデータを用いた。
方法
結果および考察
各含鉛ガラスの 18F に対する鉛当量を算出した
実測評価
散乱線の影響を防ぐため,測定台を木材で作成
結果,未名称鉛ガラスの方が高い値を示した。
し,床面から 1 m 離した。検出器は電離箱式サー
Med-X は,PET 用に開発された含鉛ガラスであ
ベイメータ(Aloka ICS-311)を使用し,鉛ブロッ
り,かなり大きく製造加工できるが,未名称鉛ガ
クを組み合わせた遮蔽体の中に設置し,線源‐検
ラスは主に原子力分野での覗き窓用に製造され
出器間距離を 1 m とした。
たものであり,
遮へい能力は高いが 30 cm×30 cm
18
線源は F とし,含鉛ガラスとして Med-X(板
が限度である。今回評価した各含鉛ガラスには十
厚 8 mm,10 mm,12 mm,15 mm,18mm の 5 枚)
,
分な防護効果があることを確認し,同じ実効線量
未名称鉛ガラス(板厚 5 mm,6 mm,7 mm,8 mm
透過率でも鉛当量の高い鉛ガラスの普及が今後
の 4 枚)の 2 種類を使用した。両者の板厚を組み
望まれる。
合わせて,実効線量率と経過時間を記録した。ま
参考文献
た,測定データには電離箱式サーベイメータのレ
1)
18
ンジ補正を行うため校正定数を乗じ, F の半減
原子力安全センター:放射線施設の遮蔽計算実務
マニュアル 2007,双文社,(2007)
期(109.8 min)に対する減衰補正を行い,実効線
1)
量透過率を算出した 。
2)
W.R.Nelson, et al., SLAC-265, (1985)
3)
放射線医療技術学叢書(11)光子減弱係数データ
シミュレーション評価
ブック,ISSN 1340-7716,日本放射線技術学会.
モンテカルロシミュレーションには,電磁カス
4)
ICRU: ICRU Report 37, Bethesda, Md. (1984)
ケードコードである EGS42)を用いた。各含鉛ガ
5)
RSIC: DLC-136/PHOTX, NIST, (1989)
16
密封シート線源を用いたホールボディカウンタ校正用ファントムの開発
Development of a phantom for a whole-body counter using sealed sheet sources
○宮本真衣 1、石榑信人 1、緒方良至 1、成田憲彦 1、仲野高志 2(1 名大・医保健、2 放医研)
M. Miyamoto1 , N. Ishigure1 , Y. Ogata1 , N. Narita1, T. Nakano2 ( 1Nagoya Univ., 2NIRS )
1. 緒言
密封シート線源を用いたホールボディカウン
タの校正用ファントムは汚染の心配がなく、体内
分布を再現できる等の利点を持ち、現在用いられ
ているファントムの様々な欠点の克服が期待さ
れる。今回、インクジェットプリンタを使って密
封シート線源を作成し、作成に伴う安全性と、放
射能面密度 [ Bq/cm2 ] の調整について検討した。
係を示す。放射能面密度と Photoshop のカラー
濃度設定値の相関関係は指数関数と一次式で表
されることが分かった。
Fig.2 と 3 はオートラジオグラフィの画像であ
る。Fig.2 ではカラー濃度に対応した放射能の濃
度差が描出されている。Fig.3 は肺よりも軟組織
に放射能が高濃度に集積した場合を模擬したも
のである。
2. 実験方法
方法論を確立するための基礎的検討として、γ
線放出核種ではないが取り扱いの容易な 32P を
放射性核種として用いた。インクジェットプリン
タのインクタンクにインクと 32P 水溶液を混合
したものを充填し、画像編集ソフト Photoshop
(アドビシステムズ)のカラー調整によって放射
能面密度を設定し用紙に印刷する方法を試みた。
まず安全性に関する検証を行った。A 4 用紙一
面に塗布した線源をラミネートフィルムで密封
後、蒸留水を満たしたバットに数日間浸し、その
浸漬水を液体シンチレーションカウンタで計測
することにより、ラミネートフィルムの密封性に
ついて検討した。次に、用紙一面に塗布する設定
で、プリンタの用紙出力部分に固定ろ紙式ダストモ
ニタを設置し、捕集したダストの放射能を GM サー
ベイメータで測定した。その結果から印刷中の空気
中放射能濃度を評価した。
最後に、種々のカラー濃度で印刷した用紙から
一定面積を切り取り、その用紙を液体シンチレー
ションカウンタで測定することにより放射能面
密度 [ Bq/cm2 ] を測定した。インクタンクに充填
した放射能溶液(以下、原液と記載する)の放射
能濃度は、原液 10 L を用紙に滴下し、乾燥後
線源部を切り取り、液体シンチレーションカウン
タで計測することにより決定した。
4. 結論
インクジェットプリンタを用いたカラー濃度
調整により、任意の放射能面密度のシート線源が
安全に作成できることが示された。
今後、137Cs のような γ線放出核種についても
本方法で密封シート線源を作成し、ホールボディ
カウンタによる実測を予定している。その結果と
他の校正用ファントムの測定結果とを比較する
ことにより、本方法の特徴を明らかにしてゆく。
原液の放射能濃度: 8.6×105 Bq/mL
放射能面密度 (Bq/cm2)
Table 1
濃度設定と放射能面密度
200
濃度設定値 放射能面密度
150
100
50
0
0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
濃度設定値 (%)
Fig. 1 相関関係
3. 結果・考察
密封性について、浸漬水はバックグラウンドと
同程度のカウントしかなく、放射能漏れは確認で
きなかった。よって、ラミネートによる密封が十
分になされたと考えられる。次に、シート線源作
成時の空気汚染については確認されたものの、法
令の空気中濃度限度 [ 7×10-3 Bq/cm3 ]より 2 桁
以上低いことがわかった。
Fig. 1 と Table 1 にカラー濃度設定値とプリン
タで印刷された放射能面密度 [ Bq/cm2 ] との関
Fig. 2 テストパターン
17
2
(%)
( Bq/cm )
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
12
21
32
48
67
101
157
164
167
172
(外部標準チャンネル法)
Fig. 3 胸部断面のシート線源
のオートラジオグラフィ
核融合炉における
核融合炉における電子式線量計使用
における電子式線量計使用に
電子式線量計使用に関する研究
する研究
Study of using electronic dosimeter in Fusion Reactor
○山田純也1 岡 光昭1 河野孝央2
宇田達彦2
桑山喜文3 山本明人3 増元光3 杉田保3
福場崇3 森俊章3 木ノ村豊3 片田和廣4 下道國5
(藤田衛生大院1 核融合研2 藤田衛生大病院3 藤田衛生大・医4 藤田衛生大・衛5)
○J.Yamada1 M.Oka1T.Kawano2 T.Uda2 Y.Kuwayama3 A.Yamamoto3 H.Masumoto3
T.Sugita3T.Fukuba3 T.Mori3 Y.Kinomura3 K.Katada4 M.Shimo5
(Grad of FHU1 NIFS2 FHU3 FHU4 FHU5)
【はじめに】
~600mTの場所に線量計を1週間設置した。いずれ
核融合試験装置では、高温プラズマの生成、
も線源は用いず、自然放射線での評価である。
維持などにより、環境中に60 Hzの極低周波から
【結果及び考察】
168GHzの高周波まで幅広い周波数帯域環境が作
られる。主要な装置のひとつにICRFプラズマ
高周波による電子式線量計への影響について
加熱装置があるが、運転にともなって50MHz前後
は、すべての種類の線量計で、照射時間が増加し
の電磁波が放射される。また磁場閉じ込め型核融
ても線量値に変化は見られなかった。また磁場強
合装置では、定常磁場を用いるため、作業環境に
度と線量率の間には、負の相関関係が見られた。
は静磁場も存在する。さらに、高温プラズマから
すなわち、電子式線量計は磁場により影響を受け、
は、X線などの放射線が発生するため、作業従事
正常な値を表示しないことが確認された。高周波
者の被ばく線量測定が必要となる。それに伴い高
に対して、測定場場所の電場強度は140V/m程度で
周波、静磁場環境で個人被ばく線量計が正常に動
あった。使用した線量計は耐電波シールドを内部
作するかどうかを確認しておく必要がある。
に組み込む事により、電波を遮断し電界の変化を
一方、医療分野では、高磁場磁気共鳴画像診
押さえている。従ってこの程度の電場強度では影
断装置 (Magnetic Resonance Imaging、以下MRI)
響を受けなかったと考えた。また磁場により線量
が使われている。MRI装置は1.5 Tの高磁場に人体
計が影響を受けた原因として、ホール効果の影響
を入れ、さらに約64 MHz前後の高周波をパルス状
が示唆された。
核融合炉の被ばく管理を考える場合、電場およ
に人体に照射している。今回、核融合試験装置の
設置場所と類似した環境にあるMRI検査室を利用
び磁場の存在する環境を想定する必要がある。
して、電子式線量計の64 MHz前後の高周波と磁場
このような環境下でも、十分な精度を保ち、被ば
に対する動作特性ついて検討した。
く管理を行う事が重要である。
【方法】
【参考文献】
電子式線量計(以下、単に線量計と呼ぶ)には、
宇田達彦
棚橋秀伍
仕様の異なる3種類の線量計(Aloka製)PDM111、
藤麻里子
大型プラズマ実験施設における静磁
PDM112、PDM117を用いた。まず高周波による電子
場およびごく低周波磁場環境の測定
線量計の影響を調べるため、線量計を約1週間、
保健物理 35(1)
MRI操作室の磁場強度40mT、103mTの場所に設
置し線量計の値を記録した。この際、高周波の照
射時間も変化させその影響を評価した。次に、磁
場による線量計の影響を調べるため、磁場強度0
18
大林治夫
中司
53~63(2000)
等
伊
アミンに対するラドンの溶解量評価
Evaluation of 222Rn solubility to amine solvent
○村田正雄1、森泉 純1、飯田孝夫1(1 名古屋大)
M. Murata1 , J. Moriizumi , T. Iida (1 Nagoya University)
1.背景及び目的
二酸化炭素、硫化水素などの酸性ガスの除去
には有機溶媒であるアミンが用いられる。この
技術は近年、温暖化対策として燃焼排ガス中か
らの二酸化炭素の除去、固定化のために開発が
進められ、広く普及することが予想される。放
射性核種のラドン(222Rn)は一般にアセトンな
どの有機溶媒に溶けやすい性質を有する。しか
し
222
Rn を含む大量の空気・排ガスをアミンに
通した場合に 222Rn が如何に振舞うのかは明ら
かではない。そこで本研究はアミンに対する
222
Rn の溶解量の定量評価を行った。
2.実験方法
Fig. 1 に示す測定装置を用いて、Ar バランス
の
222
Rn 気体をアミン溶媒でバブリングした。
バブリング前後で試料気体を一定時間ごとに
採取し、その
222
222
Rn 濃度を測定した。
Rn 濃
度の測定にはシンチレーション検出器(AB-5,
Pylon, Canada)を用いた。
222
Rn のアミンへの濃度比は以下のように算
出した。
A
B
PUMP
Sampling
bag
Ar
balanced
222Rn gas
Amine
Solvent
Fig. 1
4.今後の課題
同条件で繰り返し実験を行い再現性を確認
する。溶解度に大きく影響すると予想される温
度を制御し、溶解の温度依存性を測定する。ま
た濃度比から溶解度を算出し、溶解量評価を行
う。
1
0.8
Flow
Filter
3.実験結果及び考察
バブリング時間とバブリング前後の Rn 濃度
比 F の関係を Fig. 2 に示す。バブリング時間の
増加と共に濃度比は上昇し、30 min 程度で 1
に近づいた。これは 222Rn がアミン溶媒に対し
溶解が飽和状態になったためだと考えられる。
40 min 以降では、濃度比が減少した。これは
222
Rn がさらに溶けたことを意味するが、飽和
状態に達してから 222Rn が更に溶解した理由に
ついては精査中である。
Fraction F
F =
ここで、F は濃度比、A はバブリング後の計数
(count)、B はバブリング前の計数である。
採取した気体をシンチレーションセルに封
入し一定時間後に測定を開始することで、
222
Rn 壊変生成物の影響を一定にした。バブリ
ング前後の気体の 222Rn 濃度比から溶解の仕方
を評価した。
A schematic of experimental setup.
0.6
0.4
0.2
0
0
10
20
30
40
50
60
Bubbling time(min)
Fig. 2 Temporal changes in the fraction F
obtained by the measurements under the condition
of flow rate of 100 mL min-1.
ラドン壊変生成物の粒径分布と被曝評価
Measurement of the Size Distr ibution of Radioactive Aerosols of Radon Decay Products and
Dose Assessment
〇玉木健介1 、飯田孝夫1、山澤弘実1、森泉純1 (1 名古屋大学)
K.Tamaki1 , T. Iida1、H.Yamazawa1 、J.Moriizumi1
(1Nagoya University)
測定値+誤差
60
誤差なし
3.4
σg
40
Fig.2
2.6
1.8
1
0.25
Effective Dose(μSv)
測定値−誤差
80
0.45
Cumulative Percentage
100
80
70
60
50
40
30
20
10
0
4.2
0.05
2.2 実効線量の評価方法
実 効 線 量 は LUDEP ( Lung Dose Evaluation
Program)を用いて計算した。LUDEP とは呼吸気
動モデルとして ICRP Publication 66 のモデルを採
用し、入力したパラメータから内部被曝線量を計
算するプログラムである。LUDEP に入力するパ
ラメータは①AMAD 、②σg、 ③放射性核種の濃
度(Bq m-3)、④居住時間、呼吸率のような測定対
象のパラメータである。
3.1 誤差に対する評価
カウントの計数誤差によって粒径の AMAD、
σg
が変化するか評価した(Fig.1)。AMAD の誤差は
5 %以下、σg の誤差は 4 %以下であることが分
かった。
3.2 実効線量の計算
LUDEP に入力するパラメータの AMAD、
σg を
変化させたときの肺線量の変化を計算した(Fig.
2)。
AMAD が大きくなるほど実効線量は減少し、
σg が大きくなるほど実効線量が増加する傾向が
みられた。特に AMAD の小さな場合における実
効線量の変化は顕著であった。
1. はじめに
ラドン壊変生成物による放射性エアロゾルの
粒径分布は肺線量評価において重要なパラメー
タであり、その分布を正しく評価することが求め
られている。
本研究は、放射性エアロゾルの捕集の際に使用
する低圧カスケードインパクターの段数を減ら
すことで、より簡便な測定をすることを目的とし
ている。そこでインパクターを低化において、十
分な精度を保つことができる最適な条件を検討
するために、粒径分布の誤差及び AMAD(放射能
中央径)、σ g (幾何標準偏差)の変化に伴う実効線
量の変化を評価した。
2.1 粒径分布の評価方法
低圧カスケードインパクター(東京ダイレッ
ク)を用いて室内空気中のエアロゾルを粒径別に
捕集板に捕集した。捕集板をイメージングプレー
ト(IP, Fuji Film.Co.Ltd.)に露光した。IP 読み取り
装置(BAS-5000, Fuji Film.Co.Ltd.)で α 線スポット
を検出した。スポットから得られたカウントのデ
ータから粒径分布の AMAD 及び σ g を計算した。
AMAD は粒径と累積割合の関係を表すグラフ
の 50%になる粒径を読み取り、σ g は 15.87%、
84.13%の粒径から計算した(Fig. 1)。AMAD、σg
の誤差はカウントの計数誤差から計算した。
AMAD(μm)
Calculated effective dose under the conditions of
various AMAD and σg.
20
4. まとめ及び今後の課題
本研究では低段数カスケードインパクター
を設計する上で必要なインパクターの誤差評
価と AMAD、σgの変化に伴う実効線量の変化
を評価した。
今後は仮想的な低数段インパクターを評価し、
低数段インパクターのパラメータを検討する。
0
1
10
100
1000
10000
Particle Diameter (nm)
Fig.1 Cumulative percentages of the particle size
distribution and its errors.
20
放射性エアロゾル粒径分布における Pu 粒子弁別法の開発
Development of discrimination method of Pu particles
in particle size distribution of radioactive aerosols
○森藤洋輔1、山澤弘実 1、森泉純 1、飯田孝夫 1(1 名大)
Y. Moritoh1, H.Yamazawa1, J.Moriizumi1, T.Iida1 (1Nagoya University)
Fig. 1 は IP によって測定した粒径分布であり、
200
nm 付近の粒径はラドン壊変生成物、2000 nm 付
近の粒径はトリウムによるものである。
同様に捕集されたエアロゾルを 10 分冷却後、
捕集段毎に α 線分析装置で 30 分測定した。Fig. 2
はインパクター9 段目の Stage L1 と 4 段目の Stage
4 における α 線スペクトルの測定結果である。
Stage L1 は 280 nm から 480 nm の粒径をもつ粒子
を捕集しており天然のラドン壊変生成物である
214
Po(7.687 MeV)のエネルギーピークが確認で
きた。また Stage 4 では Stage L1 より低エネルギ
ー側にトリウム粒子によるスペクトルを測定で
きた。
4.まとめと課題
トリウム粒子とラドン壊変生成物による放射
性エアロゾルを α 線スペクトルによって解析し
た。今後は α 線分析装置を用いたより迅速な粒径
分布作成と Pu 粒子弁別法を検討する。
1.はじめに
被曝線量評価のための放射性エアロゾル粒径
分布の測定法として、イメージングプレート(IP)
を検出器として用いた方法が検討されてきた。本
研究では、新たな検出器として α 線分析装置を用
いて、放射性エアロゾル粒径分布測定の検討を行
った。
また、原子力施設の安全管理においてプルトニ
ウム粒子エアロゾルの測定は重要である。その模
擬実験として、トリウム含有タングステン溶接電
極棒の研削によって捕集されたトリウム粒子エ
アロゾルの測定と解析を IP と α 線分析装置を用
いて行った。
2.粒径分布測定法と α 線分析装置の導入
本研究では粒径分布作成のために 13 段低圧カ
スケードインパクターによって放射性エアロゾ
ルを分級捕集し、従来通り IP を α 線検出器とし
て用いた。また、α 線分析装置を導入した。これ
は4つの検出器を用いて同時に波高分布を得る
ことができ、粒径分布測定法の簡便化、Pu 粒子
弁別に利用できる。
3.トリウム粒子とラドン壊変生成物の弁別
トリウム粒子をカスケードインパクターで 10
分捕集し、捕集後すぐ IP によって粒径分布を測
定した。
12
StageL1
(280nm∼480nm)
10
Counts
8
6
214
Po
(7.69MeV)
4
2
0.4
0
0
2
0.2
0.1
0
10
100
1000
10000
10
8
10
2
0
Particle diameter(nm)
Fig. 1
8
Stage4
(1900nm∼3500nm)
4
Counts
df/dln(dp)
0.3
4
6
Energy(MeV)
0
トリウムを含む
放射性エアロゾル粒径分布
2
4
6
Energy(MeV)
Fig. 2 インパクター段毎の α 線スペクトル
21
部屋のサイズとラドン壊変物質の屋内空気中濃度との関係
Radon Decay Products Concentr ation in Room Air and its Relation with Room Size
○岡 光昭 1、山田 純也 1、下 道國 1、江尻 和隆 2、南 一幸 2(1 藤田保衛大院、2 藤田保衛大)
○M. OKA1, J. YAMADA1, M. SHIMO1, K. EJIRI2, K.MNAMI2
(1Graduate School of Health Science, Fujita Health University, 2Fujita Health University)
目的
すべての人々の生活は、自然放射線源にさらさ
部屋の表面積とラドン壊変物質の空気中濃度
れている。ラドンとラドン壊変物質の吸入が最
に相関関係があると考えられる。しかし、今回
も多く、自然放射線被ばくのおよそ 1/2を占
の数少ない実測で、ラドン壊変物質の空気中濃
めると見積もられている。実効線量当量を計算
度は部屋のサイズに依存性が明瞭でなかった
するために、ラドン壊変物質(Po-218(RaA)
、
のは、他にいくつかの変動因子があることや、
Pb-214(RaB)、Bi-214(RaC))の空気濃度
データ数の少なさが原因と思われる。現在、実
を知ることは重要である。また、ラドン壊変物
測を重ねている段階である。また、ラドンの最
質の空気濃度は土と建材の中のラジウム濃度
大の発生源は、主に建材の中のコンクリートで
と物理的な環境パラメータによって変化をす
あることから、ラドン壊変物質の空気濃度は部
るが、通常、普通の環境では低温度のために
屋のコンクリートの表面積が増加すると増大
Po‐218、Pb-214、Bi-214 の空気中濃度を得
することが考えられ、この点についても実測デ
ることは難しい。この研究においては、この点
ータを検討中である。
に十分配慮しながらラドン壊変物質の屋内の
空気中濃度を測定し、ラドン壊変物質の空気中
7.000
0.300
濃度比
Rn娘濃度
濃度と部屋のサイズに着目し、屋内ラドン・ラ
6.000
0.250
ドン壊変物質の濃度レベル、性状等の状況を調
5.000
検討した。
0.200
4.000
0.150
3.000
0.100
方法
2.000
0.050
それぞれの部屋においてラドン壊変物質を床
上1mの高さで 18ℓ/分の流量で 15 分間、ダス
1.000
0.000
0.000
20
トサンプラーを用いて捕集した。その後、フィ
ルタ上のα放射能を ZnS(Ag)シンチレーシ
25
30
35
40
45
容積:m^2
50
55
60
65
Fig.1 容積とラドン壊変物質との関係
ョンカウンターで 42 分間計測した。
結果
Fig.1に容積とラドン物質壊変濃度の関係を
示した。今回のこの結果では、ラドン壊変物質
の空気中濃度と部屋のサイズに明白な関係は
見られなかった。
考察
ラドン壊変物質は壁等に沈着することから、
22
70
Rn娘 濃 度 (Bq/m^3)
濃 度 比 (R n濃度 /Rn娘 濃 度 )
べ室内の濃度、部屋の大きさを支配因子として
パッシブ型トロン子孫核種濃度測定法の検討
Examination for measurement of thoron progeny with passive technique
○北條智美 1,2、床次眞司 1、小林羊佐 1、反町篤行1 (1 放医研、2 首都大学東京)
T.Hojyo1,2,S.Tokonami1,Y.Kobayashi1,A.Sorimachi1 (1NIRS,2Tokyo Metropolitan University)
1.はじめに
自然放射線源から一般公衆が受ける被ばく線
量の全世界平均は 2.42 mSv/y と見積もられて
いるが、そのうち 1.26 mSv/y がラドンおよび
その壊変生成物によるものとされている 1)。そ
のため、ラドンおよびその壊変生成物の吸引に
よる内部被ばくが公衆衛生上の問題となり、欧
米を中心に屋内ラドン濃度の規制が導入され
ている。
近年、トロンおよびその壊変生成物による健康
Fig.1 トロン沈着モニタの構造
影響評価の必要性が指摘されている。しかし、
のエネルギーをもつα線を放出して
従来、それらの測定が困難であったことから測
至る。212Po のα崩壊により放出されるエネル
定データは世界的にも非常に少ない。また、ト
ギーは 8.8 MeV であり、ラドン壊変生成物で
ロンの半減期が非常に短いために引き起こさ
ある 214Po の 7.7 MeV との間に 1 MeV 程度の
れるトロン濃度分布の空間における不均質性
エネルギー差がある。8.8 MeV のα線を透過
が妨げとなり、トロン濃度の測定結果を直接被
し、7.7 MeV のα線を透過しない遮蔽物で
ばく線量の評価に結びつけられないという問
CR-39 を覆うことにより、トロン壊変生成物
題がある。
から放出されたα線のみを測定するが可能で
そのため、卓、飯田らはトロン壊変生成物の表
ある。そこで、本研究では市販のアルミ蒸着膜
面への沈着を利用したパッシブ型測定器を開
を用い、ラドン壊変生成物とトロン壊変生成物
発した 2)。しかし、この測定法はいくつかの仮
の弁別に最適な膜重量を決定し、そのトロン壊
定に基づいており、実験的にその性能を検証し
変生成物の検出効率について検証した。
なければならない。そこで本研究では、卓、飯
3.今後の課題
トロン壊変生成物濃度を評価するにあたり、そ
の沈着特性が非常に重要な因子となる。その一
つに沈着速度という概念があり、これはエアロ
ゾル粒径や屋内環境により大きく変化すると
考えられる。
そのため、今後は沈着速度を左右するパラメー
ターに着目し、その相関を調べるとともに沈着
モニタを用いた実環境試験を行っていきたい。
田らが開発したパッシブ型のトロン壊変生成
物濃度評価法で用いる遮蔽材の最適化を行う
とともに、その性能についての検討を行った。
2.方法
基本的な測定器の構造を Fig.1 に示す。ステン
レス製の検出器ホルダー内に CR-39(固体飛跡
検出器)が挿入されており、検出器表面はアル
ミ蒸着したマイラ膜で覆われている。このマイ
208Pb
に
参考文献
1)UNSCEAR, Report of the United Nations
ラ膜表面にトロン壊変生成物が沈着しα崩壊
する際に、膜を透過できるエネルギーをもった
α粒子のみが検出器内の CR-39 に飛跡を残す。
マイラ膜表面に沈着したトロン壊変生成物
Scientific Committee on the Effects of Atomic
Radiation to the General Assembly (2000).
2)W.ZHUO and T.IIDA ; J.Health Phys. , 35(3),
212Po へと壊変した後 8.8 MeV
(212Pb, 212Bi)は、
365-370 (2000).
23