砂防管理情報の利活用について - 砂防フロンティア整備推進機構

砂防管理情報の利活用について
財団法人 砂防フロンティア整備推進機構
京都大学大学院農学研究科
国土交通省 国土技術政策総合研究所
高梨和行 ○都築範仁
水山高久
野呂智之
1.はじめに
平成 13 年度に施行された「土砂災害防止法」においては、基礎調査に基づいて警戒区域及び特別警戒区域の
設定が行われている。この際、多くの都道府県は数値地図を使用して区域設定を行うことから、大量の電子情報
が作成されることになり、その管理及び運用を適切かつ効率的に行うことが重要となる。同様に、従来から整備
が進められている土砂災害危険箇所や砂防指定地、砂防設備等に関する情報も併せて一元的な管理を行うことに
より、業務の高度化、効率化が図られると共に、迅速かつ的確な災害対応に資することが可能となる。
本報告では、これら砂防管理に関する情報について、GIS技術を活用して有効的に管理及び利活用する手法
について紹介するものである。
2.整備する情報の標準化
従来から5年に一度実施されている土砂災害危険箇所に関する調査については、「土砂災害危険箇所調査結果
データベース作成マニュアル(案)」が策定され、データ構造に関する全国規模での規格統一が図られており、
作成されたデータベースを用いて調査結果の効率的な利活用が行われている。
一方、砂防指定地や砂防設備に関する情報を電子データ化する場合は、全国規模の統一したデータ作成仕様が
整備されておらず、必要に迫られた都道府県や直轄事務所がその都度データ構造等の仕様を決めているのが実態
であり、関係機関との情報連携がスムーズに実施できない場合がある。
そこで、今後のデータ整備及び管理が効率的に行われることを目指して、当機構において砂防指定地管理情報
ならびに砂防設備管理情報についての「台帳記載情報データ作成ガイドライン(案)」を作成している。
3.ガイドラインの概要
本ガイドラインは、「砂防指定地台帳等整備規則」に基づいて、「砂防指定地台帳」「砂防設備台帳」の調製の
責務を負っている都道府県において適切に管理されることと、関係機関との情報が円滑に引き継がれ、共有化さ
れることを目的として、管理情報の電子データ化方法とその仕様を定めている。
砂防指定地台帳
3.1 砂防指定地台帳編
<項目>
① 本ガイドラインの目的、適用範囲
② 作成するデータ形式、データ作成基本規則
③ データ仕様
・ 砂防指定地台帳
・ 砂防指定地地名、地番新旧対照表
・ 砂防指定地台帳明細表
・ 砂防指定地区域図
・ 砂防指定地台帳附図
・ 砂防指定地地番図
砂防指定地区域図
砂防指定地地名・地番新旧対照表
砂防指定地地番図
砂防設備台帳
3.2 砂防設備台帳編
<項目>
① 本ガイドラインの目的、適用範囲
② 作成するデータ形式、データ作成基本規則
③ データ仕様
・ 砂防設備台帳調書
・ 砂防設備台帳
(工事諸元等、計画諸元、構造諸元、工事概要、
構造物履歴、主要材料、設備画像)
・ 砂防設備点検・巡視台帳
・ 砂防設備台帳図
4.利活用について
砂防担当部局においては、広範かつ膨大な空間情報(三次元数値地図、オルソフォト、砂防指定地、砂防設備、
危険箇所等)と各データベース情報を連携させ、効率的に砂防事業に関する情報を扱う手段として、GIS技術
の活用が有効である。
当機構は、GISを用いて砂防管理に関する情報を効率的に管理・運用するためのシステムとして、
① 土砂災害危険箇所情報管理システム
② 砂防指定地情報管理システム
③ 砂防設備情報管理システム
④ 土砂災害警戒区域等設定支援システム
⑤ 土砂災害警戒区域等情報管理システム
等
を開発・提供している。
①∼③については各道県や直轄砂防担当事務所に
おいて導入済みであるが、
「調査結果等が最新情報に
更新されていない」
、
「ネットワーク運用を行いたい」
など、メンテナンスやシステムの更新が必要とされ
る時期に来ている。
④は三次元数値地図を用いて土砂災害警戒区域等
の設定を行うと共に、設定結果の根拠を所定の調書
様式に作成するシステムであり、現在、多くの県で
実施中の基礎調査に利用されている。また、区域設
定結果に関する各種情報は⑤のシステムで効率的に
スカイビューマップ
管理できるように構築している。
これら主に都道府県の担当者が使用することを想定している管理システムとは別に、住民や市町村担当者向け
に土砂災害警戒区域等や土砂災害危険箇所情報をDVDやCDでわかりやすく周知するための『スカイビューマ
ップ』も開発済みであり、土砂災害の防止や今後の情報公開に寄与するものと推察される。
<表示例>
土砂災害特別警戒区域
土砂災害警戒区域
この「スカイビューマップ」は長野県の土砂災害警戒
区域等を表示するシステム(サンプル版)です。
土石流、地すべり、がけ崩れ、それぞれの警戒区域、
特別警戒区域が最新の航空写真(オルソフォト)や
地図を背景画面として表示されます。
地図と写真画面はワンタッチで切り替えや重ね合わせ
表示が出来、縮尺も1/200,000から1/10,000まで自由に
変えられます。
表示箇所は正確に1/10,000でプリントアウトすること
が可能ですので、種々の資料作成、解析に便利です。
また、住所や郵便番号等からの検索も可能ですので場
所を容易に探し出す事が出来ます。
さらに、距離が計算出来ますので、避難場所から自宅
までの距離、移動時間等を調べることが出来ます。
土砂災害防 止法に基 づ く「 土砂災害警 戒区域」、
「土砂災害特別警戒区域」が、まだ指定されていない
地域については、現在地域防災計画に掲載されている
土砂災害危険箇所が表示されていますが、今後の調査
により、その都度、順次書き換えていく事が出来ます。
土石流氾濫想定区域
本ソフトは、 (財)砂防フロンティア整備推進機構とデジタル・アース・テクノロジー㈱との共同研究により開発しております。
お問い合わせ先
(財)砂防フロンティア整備推進機構 TEL 03-5216-5872 FAX 03-3262-2202
砂防管理情報センター 「スカイビューマップ」は登録商標です。また、共同特許申請中(特願2004-31225)です。
土石流危険渓流
がけ崩れ危険箇所
これらの箇所は、現在地域防災計画に掲載されて
いる土砂災害危険箇所です。
地すべり危険箇所
5.おわりに
現在、都道府県で作業が進められている土砂災害防止法に基づく基礎調査では、土砂災害警戒区域・土砂災害
特別警戒区域の設定結果のみならず、設定に使用した各種の計算条件等の設定根拠もあわせて管理すると共に、
開発規制や建築確認の実施に伴う連携(都市計画部局や建築住宅部局等)や警戒避難体制構築に伴う連携(消防
防災部局)を効率的に行うためにも、情報の標準化とGISの利活用が大いに進められるべきである。
また、当機構が実施している「土砂災害防止法に使用する数値地図」に関する照査に引き続き、「台帳記載情
報データ作成ガイドライン(案)」の仕様で作成される各種データを関係機関において円滑に利用するために、
作成されたデータの品質評価を行う第三者機関として、ご支援したいと考えている。
参考文献
1) 社団法人 全国治水砂防協会:平成 15 年度版 砂防関係法令例規集,2003
2) 建設省河川局砂防部:土砂災害危険箇所調査結果データベース作成マニュアル(案),2000
3) 建設省河川局砂防部:砂防基盤地図データ作成ガイドライン(案) ,2000
4) 財団法人 砂防フロンティア整備推進機構:土砂災害防止法に使用する数値地図作成ガイドライン(案)
[数
値地図作成のための技術講習会受講資料],2002