自然エネルギー世界白書2013 日本語版

自然エネルギー世界白書 2013
日本語版
翻訳:認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
21 世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク(REN21)
REN21は、知識の交換、政策の発展、自然エネルギーへの迅速な世界的移行に向けた共同行動を促進することを目的として、政府、国際機関、
企業団体、科学・学術機関、市民社会を含む主要な関係者を広く結ぶ、世界の自然エネルギー政策に関する多様な主体のネットワークである。
REN21は、エネルギー安全保障、経済、社会開発、貧困緩和を進めながら、気候変動を緩和する必要性により行動している先進国と発展途上
国の両方で自然エネルギーの推進を行っている。
REN21の主な著作および活動
自 然 エネ ル ギ ー 世 界 白 書(Renewables
Global Status Report)www.ren21.net/gsr
自然エネルギー・インタラクティブ・マップ
(Renewables Interactive Map)
www.map.ren21.net
世界自然エネルギー未来白書(Renewables
Global Futures Report)www.ren21.net/gfr
自然エネルギー地域白書(Regional Status
Reports)
地方自治体の自然エネルギー政策に関する世
界白書 (Global Status Report on Local
Renewables Energy Policies)
自然エネルギー国際会議(IRECs)運営
REN21+:国 際 ウ ェ ブ プ ラ ット フ ォ ー ム
(REN21+: REN21,s Global Web Platform)
www.ren21plus.ren21.net
Reegle クリーンエネルギー情報ポータルサイ
ト(reegle Clean Energy info Portal)
www.reegle.info
www.ren21.net
REN 21 運営委員会
産業団体
国際機関
NGO
Dennis McGinn
米国再生可能エネルギー評議会(ACORE)
Bindu Lohani
アジア開発銀行(ADB)
Ernesto Macías Galán
農村電化同盟(ARE)
Piotr Tulej
欧州委員会
Ibrahim Togola
マリ・フォルケセンター/再生可能エネルギー
と持続可能性のための市民連合(CURES)
David Green
クリーンエネルギー評議会(CEC)
Robert K. Dixon
地球環境ファシリティ(GEF)
Li Junfeng
中国再生可能エネルギー産業協会(CREIA)
Paolo Frankl
国際エネルギー機関(IEA)
Rainer Hinrichs-Rahlwes
欧州再生可能エネルギー評議会(EREC)
Adnan Z. Amin
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)
Steve Sawyer
世界風力エネルギー会議(GWEC)
Veerle Vandeweerd
国連開発計画(UNDP)
Marietta Sander
国際地熱協会(IGA)
Mark Radka
国連環境計画(UNEP)
Richard Taylor
国際水力発電協会(IHA)
Pradeep Monga
国連工業開発機関(UNIDO)
Heinz Kopetz
世界バイオエネルギー協会(WBA)
Vijay Iyer
世界銀行
Stefan Gsänger
世界風力エネルギー協会(WWEA)
Irene Giner-Reichl
持続可能なエネルギーに関するグローバル
フォーラム(GFSE)
Sven Teske
グリーンピース·インターナショナル
Emani Kumar
イクレイー持続可能性を目指す自治体協議会
南アジア事務所
飯田哲也
環境エネルギー政策研究所(ISEP)
Tomas Kaberger
自然エネルギー財団(JREF)
Harry Lehmann
再生可能エネルギー世界会議(WCRE)
Athena Ronquillo Ballesteros
世界資源研究所(WRI)
Rafael Senga
世界自然保護基金(WWF)
無任所会員
各国政府
科学者および研究者
Michael Eckhart
シティグループ株式会社
Mariangela Rebuá de Andrade Simões
ブラジル
Nebojsa Nakicenovic
国際応用システム分析研究所(IIASA)
Mohamed El-Ashry
国連基金
Hans Jørgen Koch デンマーク
David Renné
国際太陽エネルギー学会(ISES)
David Hales
セカンド・ネイチャー
Kirsty Hamilton
チャタムハウス
Peter Rae
RENアライアンス
Arthouros Zervos
パブリック・パワー・コーポレーション
Manfred Konukiewitz/Karsten Sach
ドイツ
Shri Tarun Kapoor インド
Øivind Johansen ノルウェー
David Pérez スペイン
Paul Mubiru ウガンダ
Thani Ahmed Al Zeyoudi
アラブ首長国連邦
Tom Wintle 英国
Kevin Nassiep
南アフリカ共 和 国エネルギー開 発 研 究 所
(SANEDI)
Rajendra Pachauri
エネルギー資源研究所(TERI)
事務局長
Christine Lins
REN21
免責事項
REN21の発行誌や報告書は、自然エネルギーの重要性を強調し、自然エネルギー促進のための主要な論点について議論を喚起すべく、REN21
が発表するものである。REN21のコミュニティによる考察や情報の賜であるが、当ネットワークの参加者がすべての点においてかならずしも
見解が一致しているわけではない。本報告書の情報は作成時に著者らが有する最善のものであるが、REN21とネットワーク参加者たちが情報
の精度と正確性の責任を負うものではない。
序文
近代的エネルギーへのアクセスによって、基本的な流通加工
や通信と同様に、調理用のクリーンな熱、街灯や家庭用の照
明、冷却、冷凍、揚水が提供されるため、人々がよりよい生活
を送ることができるようになった。しかし、
まだ10億以上の人々
が近代的なエネルギーサービスにアクセスできないでいる。
国連事務総長の提示した「すべての人のための持続可能な
エネルギー」イニシアティブと今後10年の「すべての人のため
の持続可能なエネルギー」の結果として、普遍的なエネル
ギーアクセスの達成は、国際的議題の上位に挙がっている。
しかし、近年世界の大気中CO2濃度が400ppmを超え、それ
が産業革命前の水準に比べて摂氏2度の温暖化を誘発す
る可能性が十分あることを考えると、気候制約のある世界で
増大するエネルギー需要を満たすためには、エネルギーサー
ビスがどのように供給されるかについての根本的な変化が必
要となる。エネルギー効率化対策とあいまって、自然エネル
ギーはこの目的達成の中心となっている。
すでに自然エネルギーは、世界中の多くの国のエネルギー構
成において大きな役割を果たしている。2012年には自然エネ
ルギーが従来型のエネルギー源への競争力をますます増加
させながら、主に風力や太陽光といった自然エネルギー技術
の価格が下落し続けた。しかし、公平な競争の場が存在し
ない場合、自然エネルギーが広く普及するかどうかは依然と
して堅固な政策環境があるかどうかに依存している。
全体的に、政策の採択率は2000年代初期から中期に比べ
て鈍化している。既存の政策の改訂が高い割合で起こって
いるが、一方で変化する状況に対処するための新しい政策
類型が出現し始めている。たとえば、自然エネルギー技術の
導入とエネルギー効率化対策を組合せる統合型政策アプ
ローチが、
より一般的になりつつある。
世界全体での自然エネルギー投資は2012年に減少したが、
発展途上国における投資は大幅に拡大した。世界の投資
は、いくつかの伝統的な市場における経済と政策に関する不
確実性、ならびに設備増加に良い影響をもたらした技術コス
トの低下に対応して減少した。自然エネルギーは新たな地
域や国に広がり、途上国と先進国で同様にますます身近なも
のとなってきている。
同時に、確立された市場での政策支援の減少、国際的な金
融危機、国際貿易の継続的な緊張状態と組み合わさった価
格下落は、いくつかの自然エネルギー産業に影響を与えた。
自然エネルギーの補助金よりもはるかに多額の化石燃料の
補助金は依然として存在しており、可及的速やかな段階的
廃止が求められる。また、シェールガスの登場はエネルギー
市場に新しい動きをもたらしており、それが世界的な自然エネ
ルギーの展開にどのように影響するかを見守らなければなら
ない。
いる。自然エネルギー技術の普及は、いくつかの発展途上
国においてエネルギーアクセスを大規模に変化させており、
農村を商業的繁栄の中心地に変えている。世界的には、わ
ずか5年で、太陽光発電が2007年の10GW以下から2012年
に100GWをわずかに上回るまで急増した。またEUにおいて
自然エネルギーは2012年の新規発電容量の約70%を占めて
いる。
我々は、世界のエネルギー構成の中心的役割をにないつつ
ある自然エネルギーの最先端にいる。技術的な制約が克服
されたときには、自然エネルギーの高いシェアを達成する上で
主張されている制限のほとんどは、必要な政策と措置を制定
するための政治的意思の欠如に起因しているものである。
今こそ、
この残りの障害に対処する時である。
自然エネルギー
世界白書2013は、自然エネルギーの支持者や意思決定者に
今後の課題に取り組むための情報と動機を紹介する。
REN21運営委員会を代表し、自然エネルギー世界白書2013
を無事に出版できるよう貢献してきたすべての人に感謝の辞
を述べたい。これらの人々の中にはChristine Linsがリー
ダーシップをとったREN21事務局、GSRプロジェクトマネー
ジャーのRana AdibとJonathan Skeen、他の章の著者なら
びに研究ディレクターであり主筆のJanet L. Sawinが含まれ
ている。今年の制作過程に参加し、
GSR 2013を作るにあたっ
て真に国際的かつ共同的な努力をしてくれた著者、研究者、
校閲者を含む500人以上の貢献者の増え続けるネットワーク
に深く感謝する。
REN21自然エネルギー世界白書2013は、世界の自然エネル
ギー市場と政策の分野に有用な洞察を提供している。私は
本書が自然エネルギーの未来への迅速な世界的移行に向
けたあなたの取り組みへの刺激になると信じている。
Arthouros Zervos、REN21会長
財政や政策の不確実性にもかかわらず、自然エネルギーは、
何百万人もの人々に近代的なエネルギーサービスをもたらし、
ますます多くの国において高まるエネルギー需要を満たして
─1─
目次
序文………………………………………………………………1
謝辞………………………………………………………………3
要旨………………………………………………………………6
主要指標…………………………………………………………7
上位5か国………………………………………………………11
1章 世界市場および産業の概要……………………………12
電 力 部 門 ……………………………………………………14
熱利用と冷房部門…………………………………………17
輸送部門 ……………………………………………………18
2章 技 術 別 の 市 場 と 産 業 の 傾 向 …………………………20
バイオマスエネルギー ……………………………………20
地熱エネルギー……………………………………………27
水 力 発 電 ……………………………………………………29
海洋エネルギー……………………………………………33
太 陽 光 発 電 …………………………………………………34
集光型太陽熱発電(CSP)………………………………38
太陽熱利用と冷房…………………………………………40
風力発電 ……………………………………………………43
3章 投 資 の 流 れ ………………………………………………51
経済地域別の投資…………………………………………51
技術別の投資………………………………………………55
種類別の投資………………………………………………56
自然エネルギー投資の見通し……………………………57
政府系金融機関の状況……………………………………57
2013年初頭の投資動向……………………………………57
4章 政策の展望………………………………………………58
政策目標 ……………………………………………………58
発 電 政 策 ……………………………………………………61
熱利用と冷房に関する政策………………………………64
交 通 政 策 ……………………………………………………66
グリーンエネルギー購入とラベリング…………………67
都市や自治体による政策…………………………………67
5章 農村地域の自然エネルギー……………………………75
農村地域の自然エネルギー技術…………………………75
政策と規制の枠組み………………………………………77
業界動向とビジネスモデル………………………………78
アフリカ:地域別状況……………………………………79
アジア:地域別状況………………………………………81
ラテンアメリカ:地域別状況……………………………81
未来への方針………………………………………………82
6章 特別記事:エネルギーシステムの変革………………83
パラダイム・シフト:自然エネルギーの統合から
システム変革へ……………………………………83
技 術 的 課 題 …………………………………………………84
経 済 的 課 題 …………………………………………………84
エネルギーシステムの変革は始まっている……………85
今 後 の 展 望 …………………………………………………86
表
表1. 世界の自然エネルギーにおける産業別の
直接および間接雇用の推計………………………………48
表2. 自然エネルギー技術の現況:特性とコスト…………………………49
表3. 自然エネルギー促進政策……………………………………………71
補足欄
補足1.REN21 世界自然エネルギー未来白書…………………………16
補足2.注目地域:アフリカ…………………………………………………18
補足3.持続可能性についての特集:水力発電……………………………31
補足4.自然エネルギーの雇用……………………………………………48
補足5.投資の種類と用語…………………………………………………54
補足6.世界におけるエネルギー補助金の現状……………………………60
補足7.自然エネルギーとエネルギー効率化を結び付ける…………………65
補足8.2012:革新的なエネルギーシステム:
ミニグリッド・ポリシー・ツールキット………………………76
図
図1.世界の最終エネルギー消費における
自然エネルギーの割合(2011年、推計値)……………12
図2.自然エネルギー設備容量とバイオマス燃料生産の
年間平均成長率(2007年末〜2012年末)……………13
図3.世界の電力供給における自然エネルギーの割合(2012年末、推計値)…13
図4.自然エネルギー発電設備容量 世界合計、EU27か国、BRICS、上位6か国(2012年)………14
図5.バイオマスをエネルギー源へ…………………………………………20
図6.木質ペレットの国別、地域別世界生産量(2000年〜2012年)…21
図7.バイオマス発電量の上位20か国の
年平均成長率(2010年〜2012年)……………………………23
図8.エタノールおよびバイオディーゼルの生 産量(2000年〜2012年)…23
図9.世界の水力発電設備容量上位5か国の割合(2012年)…………30
図10.世界の水力発電設備容量増加分上位5か国の割合(2012年)…30
図11.世界の太陽光発電総容量(1995年〜2012年)………………35
図12.太陽光発電容量 上位10か国(2012年)……………………35
図13.モジュール製造業者上位15社の市場シェア(2012年)…………35
図14.世界の集光型太陽熱発電設備容量(1984年〜2012年)……40
図15.世界の新規太陽熱温水/暖房設備容量
上位12か国の割合(2011年)………………………………42
図16.世界の太陽熱温水/暖房設備容量
上位12か国の割合(2011年)………………………………42
図17.世界の太陽熱温水器容量(2000年〜2012年)………………42
図18.世 界の風力発 電 設 備 容 量(1996年 〜2012年 )……………45
図19.風力発電設備容量および新規容量
上位10か国(2012年)………………………………………45
図20.風力タービン製造上位10社による市場占有率(2012年)………45
図21.世界の自然エネルギーへの新規投資(2004年〜2012年)……51
図22.地域別の新規自然エネルギー投資(2004年〜2012年)………52
図23.技術別の自然エネルギー世界新規投資額
先進国/発展途上国別(2012年)…………………………55
図24.EUの最終エネルギーにおける自然エネルギーの割合:2005年、
2011年、2020年目標値……………………………………59
図25.自然エネルギー政策を持つ国々(2013年はじめ時点)…………74
図26.自然エネルギー政策を持つ国々(2005年時点)…………………74
表 参 照 …………………………………………………………87
方法論に関する注釈…………………………………………120
用語集…………………………………………………………122
エネルギー単位と換算………………………………………127
略語一覧………………………………………………………128
日本語版作成にあたって……………………………………129
表参照
表R1.世界の自然エネルギー設備容量とバイオ燃料生産(2012年)…87
表R2.自然エネルギーの発電容量
世界総計と上位地域/国(2012年)……………………88
表R3.木質ペレットの世界貿易(2012年)……………………………89
表R4.世界のバイオ燃料生産 上位15か国とEU-27(2012年)……90
表R5.世界の太陽光発電容量と新規導入量
上位10か国(2012年)…………………………………91
表R6.世界の集光型太陽熱発電
(CSP)
の容量および
新規容量(2012年)……………………………………92
表R7.世界の太陽熱温水器設備容量と新規導入量
上位12か国(2011年)…………………………………93
表R8.世界の風力発電設備容量と新規導入量上位10か国(2012年)…94
表R9.自然エネルギーへの投資の世界的傾向(2004年〜2012年)…95
表R10.自然エネルギーの一次および最終エネルギーにおける割合
(2010年/ 2011年の実績および目標値)……………………96
表R11.発電量における自然エネルギーの割合
(2011年の実績および目標)…………………………………100
表R12.その他の自然エネルギー目標……………………………………102
表R13.固定価格買取制度(FIT)を採用している
国/州/地域の累計数…………………………………………110
表R14.RPS /クォータ政策を採用している
国/州/地域の累計数…………………………………………111
表R15.国および州/地域のバイオ燃料混合規制……………………112
表R16.都市および地域の自然エネルギー政策:主な事例……………113
表R17.地域および国別電力アクセス…………………………………116
表R18.調理用エネルギー源を伝統的なバイオマスに
依存している人口……………………………………………119
本報告書の引用
REN21. 2013. Renewables 2013 Global Status Report(Paris: REN21 Secretariat)ISBN 978 – 3 – 9815934 – 0 – 2
─2─
謝辞
本報告書は、REN21 が主体となり、研究パートナー達との
世界規模に広がるネットワークと共同で制作されたものであ
る。ドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)
、ドイツ連邦環境・
自然保護・原子力安全省(BMU)
、そしてアラブ首長国連
邦外務省によって資金的サポートが提供された。また、本
報告書の研究の大部分は、ボランティアを基本に成り立って
いる。
研究支援および執筆支援 Sandra Chavez(REN21事務局)
Jonathan Skeen(REN21事務局)
名誉主筆 Eric Martinot(環境エネルギー政策研究所)
編集・デザイン・レイアウト 編集 Lisa Mastny(ワールドウォッチ研究所) デザイン weeks.de Werbeagentur GmbH 社
制作 REN21事務局
(フランス・パリ)
「すべての人のための持続可能なエネルギー」
国連事務総長の「すべての人のための持続可能なエネル
ギー」イニシアティブは、2030年までに、「すべての人の近
代的なエネルギー・サービスへのアクセス確保」、
「エネルギー
効率の改善」、「自然エネルギーの利用拡大」の3つを実現
するために国際的な運動を起こそうとしている。REN21の自
然エネルギー世界白書2013は、世界中で働く地域の専門家
からの情報提供に基づいて、農村地域の自然エネルギーを
取り上げている。本報告書は、自然エネルギーがいかに数
百万の人々にエネルギーへのアクセスを提供し、近代的な調
理、冷暖房、電気技術を使うことで生活の質が向上するかを
紹介している。
研究ディレクターおよび主筆 Janet L. Sawin(スンナ研究所、
ワールドウォッチ研究所)
分野ごとの著者 Kanika Chawla(REN21事務局)
Rainer Hinrichs-Rahlwes, Feature
(ドイツ自然エネルギー連盟(BEE)
、
欧州再生可能エネル
ギー評議会 - EREC)
Ernesto Macías Galán(農村電化同盟)
Angus McCrone(ブルームバーグ·ニュー ·エナジー ·ファイ
ナンス)
Evan Musolino(ワールドウォッチ研究所)
Lily Riahi(REN21事務局)
Janet L. Sawin(スンナ研究所、
ワールドウォッチ研究所)
Ralph Sims(マッセー大学)
Virginia Sonntag-O’Brien
(フランクフルトスクール、
国連環境計画(UNEP)気候・再生
可能エネルギー ·ファイナンスセンター)
Freyr Sverrisson(スンナ研究所)
スペシャル・アドバイザー Ralph Sims(マッセー大学)
REN21プロジェクト運営 Rana Adib(REN21事務局)
Jonathan Skeen(REN21事務局)
各国、各地域の研究者 アフリカ:Jonathan Skeen(Energent Energy)
中央および東ヨーロッパ:Ulrike Radosch(オーストリアエネ
ルギー機関、enerCEE)
ラテンアメリカとカリブ海諸国:Gonzalo Bravo(バリロッチェ
財団)
中東および北アフリカ:Amel Bida, Maged Mahmoud
(RCREEE)
東南アジアおよび太平洋:Benjamin Sovacool(バーモント
法科大学院)
サハラ以南のアフリカ:Mark Hankins(African Solar
Designs)
西アフリカ:Eder Semedo, David Villar(ECREEE)
西ヨーロッパ:Jan Burck, Lukas Hermwille(ジャーマン
ウォッチ)
アルゼンチン:Alejandro Garcia(GIZ)
ブラジル:Renata Grisoli(CENBIO、IEE、USP);
Henrique Magalhaes(Ministério de Minas e Energia)
カナダ:Tom Du(CanREA);Evan Musolino(ワールドウォッ
チ研究所)
チリ:Roberto Román L.(チリ大学)
中国:Frank Haugwitz(Asia Europe Clean
Energy(Solar) Advisory)
コロンビア:Edgar Cruz(Energy Climate and
Sustainability Solutions)
フィジー:Atul Raturi(南太平洋大学)
ドイツ:Peter Bickel;Thomas Nieder(ZSW)
インド:Mohit Anand(Bridge to India);Debajit Palit
(TERI)
イタリア:Noemi Magnanini(GSE)
日本:松原弘直(環境エネルギー政策研究所)
カザフスタン:Jan Burck, Lukas Hermwille(ジャーマン
ウォッチ)
リトアニア:Inga Valuntiene(COWIリトアニア);
Edgar Cruz(エネルギー気候変動と持続可能性のソリュー
ション)
メキシコ:Odón de Buen(ENTE SC)
ミクロネシア:Emanuele Taibi(太平洋共同体事務局)
ミャンマー:Amalie Conchelle Obusan(グリーンピース東
南アジア)
ナイジェリア:Godfrey Ogbemudia(CREDC)
─3─
オマーン:Ali Al-Resheidi(電力・水公社)
パナマ:Rebeca Ramirez(国家エネルギー事務所)
フィリピン:Fernán Izquierdo (Gamesa);Hendrik Meller
(GIZ)
ポルトガル:Lara Ferreira (APREN); Luisa Silverio
(DGEG)
ロシア連邦:Sanghoon Lee(韓国新·自然エネルギー学会)
シンガポール:Hiang Kwee Ho(シンガポール国立大学)
韓国:Sanghoon Lee(韓国新·自然エネルギー学会)
、
Kwanghee Yoem(ベルリン自由大学/FoE韓国)
スペイン:Diana Lopez (IDAE); Pablo Del Río, Cristina
Peñasco (IPP-CSIC)
スウェーデン:Max Ahman(ルンド大学)
タイ:Sopitsuda Tongsopit(エネルギー研究所、
チュラロン
コン大学)
トリニダード·トバゴ:Katie Auth(ワールドウォッチ研究所)
アラブ首長国連邦:Dane McQuee(外務省)
米国:Evan Musolino(ワールドウォッチ研究所)
ウルグアイ:Pablo Caldeiro, Ramón Mendez(産業省)
テーマ別研究者 バイオエネルギー:
Anselm Eisentraut (IEA); Helena Chum (NREL);
Sribas Bhattacharya (IISWBA);
Zuzana Dobrotkova (IRENA); Alessandro Flammini,
Florian Steierer (FAO);
Patrick Lamers (Ecofys); Andrew Lang (World
Bioenergy Association);
Agata Prządka (European Biogas Association);
Daniela Thrän (UFZ);
Michael Wild (Wild&Partner LLC)
集光型太陽熱発電:
Elena Dufour (ESTELA); Eduardo Garcia Iglesias
(Protermosolar);
Fredrick Morse, Elisa Prieto Casaña, Miguel Yañez
Barnuevo (Abengoa Solar)
エネルギー効率および自然エネルギー:
Amit Bando, Sung Moon Jung, Thibaud Voïta
(IPEEC)
地熱エネルギー:
Karl Gawell, Benjamin Matek (GEA); Marietta Sander
(IGA)
グリーン購入およびラベリング:
Joß Bracker (Öko-Institut); Jenny Heeter (NREL)
水力/海洋エネルギー:
Simon Smith, Richard Taylor, Tracy Lane (IHA);
Pilar Ocón, Christine van Oldeneel (HEA);Sean
George, Gema San Bruno (EU-OEA);
Magdalena Muir (Johns Hopkins University)
水力の持続可能性:
Cameron Ironside, Tracy Lane, Simon Smith, Richard
Taylor (IHA); Peter Bossard, Zachary Hurwitz
(International Rivers); Tormod Andre Schei
(Statkraft)
雇用:
Rabia Ferroukhi, Hugo Lucas (IRENA); Michael
Renner(ワールドウォッチ研究所)
ミニグリッド:
Mark Hankins (African Solar Designs)
自然エネルギーのコスト:
Michael Taylor(IRENA)
太陽エネルギー全般:
Jennifer McIntosh, Paulette Middleton, David Renné
(ISES)
太陽光発電:
Gaëtan Masson (EPIA, IEA-PVPS); Solar Analyst
Team(GTM Research);
Travis Bradford (Prometheus Institute);Denis Lenardic
(pvresources.com)
太陽熱冷暖房:
Franz Mauthner, Werner Weiss (AEE-INTEC);Pedro
Dias (ESTIF);
Bärbel Epp (Solrico)
補助金:
Shruti Shukla(GWEC)
風力発電:
Steve Sawyer, Shruti Shukla, Liming Qiao (GWEC);
Aris Karcanias, Birger Madsen, Feng Zhao
,
(Navigant s BTM Consult);
Stefan Gsänger (WWEA); Shi Pengfei (CWEA)
農村地域エネルギー研究者 Jiwan Acharya (ADB); Gabriela Azuela (World Bank);
Gonzalo Bravo (Fundación Bariloche); Akanksha
Chaurey (IT Power); Ana Coll (ILUMÉXICO); José
Jaime De Domingo Angulo (ISOFOTON); Rodd Eddy
(World Bank); Koffi Ekouevi (World Bank); Tobias
Engelmeier (Bridge to India); Yasemin Erboy (UN
Foundation); Gunjan Gautam (World Bank); Mariana
Gonzalez (SSIC); James Kakeeto (Creation Energy);
Johan de Leeuw (Wind Energy Solutions); Miquelina
Menezes(FUNAE); Carlos Miro (ARE); Usman
Muhammad (CREACC – Nigeria); Debajit Palit
(TERI); Mary Roach (GSMA);Gerardo Ruiz (EERES);
Morisset Saint-Preux (L’Institut Technique de la
Côte-Sud); Tripta Singh (UN Foundation); Xavier
Vallve (Trama Tecno Ambiental); Arnaldo Vieira de
Carvalho (IDB); David Vilar (ECREEE); Manuel
Wiechers (ILUMÉXICO).
その他校閲者および寄稿者 Yasmina Abdelilah (IEA); Emmanuel Ackom (UNEP
Risø Centre/GNESD); Ali Adil (ICLEI); Luana Alves
de Melo (Ministry of External Relations, Brazil); Lars
Andersen (GIZ); Kathleen Araujo (MIT); Morgan
Bazilian (NREL); Emmanuel Branche (EDF); Adam
Brown (IEA); Suani Coelho (CENBIO);Abhijeet
Deshpande (UN ESCAP); Jens Drillisch (KfW); Hatem
Elrefaei (Ministry of Communications and IT Egypt);
Javier Escobar (USP); Rodrigo Escobar (Pontificia
Universidad Católica de Chile); Diego Faria (Ministry
of Mines and Energy, Brazil); Matthias Fawer (Bank
─4─
Sarasin); Uwe Fritsche (IINAS); Shota Furuya (ISEP);
Jacopo Giuntoli (JRC Institute for Energy); Chris
Greacen (Palang Thai); Kate Greer (Clean Energy
Council); Alexander Haack (GIZ); Andreas Häberle
(PSE); Diala Hawila (IRENA); Martin Hullin (REN21
Secretariat); Uli Jakob (Green Chiller Verband für
Sorptionskälte); Wim Jonker Klunne (CSIR); Anthony
J. Jude (ADB); Izumi Kaizuka (RTS Corporation, IEAPVPS); James Kakeeto (Creation Energy Limited);
Nicole Klas (Imperial College London); Andrew Kruse
(Endurance Wind Power); Arun Kumar (Indian
Institute of Technology Roorkee); Marie Latour
(EPIA);Philippe Lempp (GIZ); Martin Lugmayr
(ECREEE); Henrique Magalhaes (Government of
Brazil); Chris Malins (ICCT); Lucius Mayer-Tasch
(GIZ); Emanuela Menichetti (OME); Alan Miller (IFC);
Catherine Mitchell (Exeter University); Daniel
Mugnier (TECSOL); Michael Mulcahy (Green Cape);
Julia Münch (Fachverband Biogas); Alex Njuguna
(GEF); Binu Parthan (Sustainable Energy Associates);
Jean-Daniel Pitteloud (WWEA); Magdolna Prantner
(Wuppertal Institut); Caspar Priesemann (GIZ); Robert
Rapier (Merica International); Atul Raturi (University
of the South Pacific); Kilian Reiche (iiDevelopment);
Wilson Rickerson (Meister Consultants Group); Daniel
Rowe (CSIRO); Munof van Rudloff (CHA); Stefan
Salow (GIZ); E.V.R. Sastry (MNRE, India); Abdulaziz
Al-Shalabi (OME); Rafael Senga (WWF International);
Scott Sklar (Stella Group); Mauricio Solano Peralta
(Trama TecnoAmbiental); Paul Suding (GIZ, IADB);
K.A. Suman (CPPCIF); Sven Teske (Greenpeace
International); Yoshinori Ueda (International
Committee of the JWPA and JWEA); Frank van der
Vleuten (Ministry of Foreign Affairs, Netherlands);
Salvatore Vinci (IRENA); Alex Waithera (World Bank
Group, GEF); Michael Waldron (IEA); Angelika
Wasielke (GIZ); Mina Weydahl (UNDP); Laura E.
Williamson (REN21 Secretariat); William Wills
(Federal University of Rio de Janeiro)
世界自然エネルギー投資動向白書(GTR)(以前の名称は
世界持続可能エネルギー投資動向白書:Global Trends
in Sustainable Energy Investment)
は、2011年に、
フラン
クフルト・スクールのUNEP環境・自然エネルギーファイナン
ス協力センターから初めて出版された。この年報は、
以前は
2007年からUNEP自然エネルギーファイナンス・イニシアティブ
(SEFI)
で作成されていた。これは経済、
技術、
投資の種類
による自然エネルギーへの世界中の投資を把握し、
出版する
取組みの成果であった。
GTRは、
ブルームバーグ・ニュー・エナジーファイナンスと合
同で作成され、REN21の自然エネルギー世界白書(GSR)
の姉妹出版物である。最新版は2013年6月に公開され、
www.fs-unep-centre.orgでダウンロードすることができる。
─5─
要旨
自然エネルギーの市場、
産業、
そして政策枠組みは近年急速
に発展している。本報告書は自然エネルギーの市場、産業、
投資、政策の世界的動向について最新かつ包括的な概観
を紹介する。世界中の500人以上の協力者や研究者のネッ
トワークが提供した入手可能な最新のデータを用い、多様な
分野の専門家による著者チームがこれらをまとめた。本報告
書は最近の発展状況や現状とともに主要なトレンドを含める
が、
構成上、
現状の分析や将来の予測は行わない*。
自然エネルギーを結び付ける取り組みが増加している。
ほとんどの種類の自然エネルギー技術は製造面でも世界的
な需要においても2012年に拡大し続けた。しかし、
政策環境
の不確実さと政策支援の減少によって多くの既存の投資市
場の動向が影響を受けており、欧州、中国、
インドで勢いに水
を差している。
■継続する自然エネルギーの成長
自然エネルギーの世界的需要は、2011年から2012年の間
に増加し続け、2011年(データが利用可能な最新年)には、
世界の最終エネルギー消費の推計19%を供給し、
そのうち半
※
分弱は伝統的なバイオマスであった 。近代的自然エネル
ギー源からの有用な熱エネルギーは総最終エネルギー消費
量の推計4.1%を占めた。さらに、水力発電が約3.7%を占め、
風力発電、太陽光発電、地熱発電、バイオマス発電、そして
バイオ燃料から推計1.9%が供給された。
太陽光発電と陸上風力発電は規模の経済と技術の進展によ
り引き続き価格が低下したが、
それには風力タービンと太陽光
モジュールの生産過剰の影響もあった。国際的な経済危機
と国際貿易の継続的な緊張状態が組みあわさったため、こう
した変化はいくつかの自然エネルギー産業にとって新たな課
題を生み出し、機器メーカーの業界再編につながった。しか
しながら、
同時にそれらは新たな機会として、企業が新たな市
場を開拓することを後押しした。自然エネルギーは先進国と
途上国で同様により多くの消費者にとって、より手頃な価格に
なってきている。
2012年末における世界の自然エネルギー発電総容量は
1470GWを超え2011年末から約8.5%上昇した。水力は3%
増加して推計990GW、一方、他の自然エネルギーは21.5%増
加して480GWを超えた。世界全体では、
風力発電が2012年
に追加された自然エネルギー発電容量の約39%を占め、
水力
と太陽光発電が続き、
それぞれ約26%を占めた。
自然エネルギーはアジア、ラテンアメリカ、中東、そしてアフリカ
で急速に普及しており、すべての技術に対して新規投資が
行われた。とくに、
中東および北アフリカ
(MENA)地域と南ア
フリカでは、2012年に意欲的な新しい目標値が発表され、政
策枠組みの構築や自然エネルギーの発展を示した。2012年
中に市場、
製造、
そして投資がますます途上国に移行した。
自然エネルギーは、2012年にはすべての発電種別による正
味の追加発電容量の半分強を占めた。2012年末までに、自
然エネルギーは世界全体で稼動している発電容量の26%以
上を占め、世界の電力量の推計21.7%を供給し、そのうち
16.5%は水力発電によって供給された。ますます多くの国で
産業、業務および家庭部門の消費者が自然エネルギーの生
産者になっている。
2012年末における自然エネルギー発電容量の上位国は中
国、
米国、
ブラジル、
カナダ、
ドイツであったが、
水力発電を除い
た発電容量の上位国は中国、米国、
ドイツであり、
スペイン、
イ
タリア、そしてインドが続いている。地域別では、BRICS諸
国は世界全体の自然エネルギー発電容量の36%を占め、水
力を除く自然エネルギー発 電 容 量のほぼ27%を占めた。
2012年末時点で水力を除く自然エネルギー発電容量の多く
をEU(欧州連合)
が持ち、世界全体の自然エネルギー発電
容量の約44%であった。より多くの国と地域において自然エ
ネルギーは急速な供給割合の上昇を示している。
熱利用と冷房部門におけるエネルギー需要は増え続けてお
り、膨大でありながらも、ほとんど手つかずのままとなっている
自然エネルギー普及の可能性を示している。すでに、近代
的バイオマス、太陽、そして地熱資源による熱は自然エネル
ギー由来のエネルギー利用のかなり多くの部分を占めてい
て、国が支援政策を制定し始めていることに伴い熱部門は
徐々に発展している。熱部門の動向としては大規模システム
の利用があり、
熱電併給
(コージェネレーション)
の使用が増え
ており、地域計画における自然エネルギー熱利用と冷熱の供
給、そして産業用途のための近代的自然エネルギー熱利用
が増加している。
数年間の急成長をへて、
バイオディーゼル生産は2012年に引
き続き拡大したものの、
はるかに遅い速度であった。一方、エ
タノール燃料の生産は2010年にピークに達して以来減少して
いる。バイオガス燃料が少しずつ車両燃料として使用される
ようになってきており、わずかではあるが電動輸送システムと
• 中国では、史上初めて風力による発電量の増加分が石炭
火力発電による増加量を上回り、さらに原子力の発電量を
超えた。
• EUでは、
自然エネルギーが2012年の追加発電容量のほぼ
70%を占め、その多くは太陽光発電と風力発電であった。
2011年(データが利用可能な最新年)
において、自然エネ
ルギーはEU地域の電力消費量の20.6%をまかない、総最
終エネルギー消費量の13.4%をまかなった。
• ドイツでは、自然エネルギーが電力消費の22.9%(2011年
の20.5%から増加)
、ドイツ国内の熱利用の10.4%、総最終
エネルギー需要の12.6%を占めた。
* REN21 が最近発表した「世界自然エネルギー未来白書」Renewables Global Futures Report では世界各国の 170 を超える主要な専門家へのインタビューと近年発表された 50
のシナリオの予測に基づいて、自然エネルギーの未来に関する信頼できる可能性の範囲を示している。
「世界自然エネルギー未来白書」
(英語版)は www.ren21.net/gfr からダウン
ロードすることができる。(訳注:日本語版は環境エネルギー政策研究所ウェブサイト www.isep.or.jp/gfr からダウンロード可能)
※ 伝統的バイオマスの持続可能性についての議論があることは特筆すべきであり、それが再生可能であるのか、または持続可能な資源に由来する場合のみ再生可能であると見なす
べきであるかに留意しなければならない。
─6─
主要指標
2010
2011
2012
自然エネルギー新規設備への投資額(年間)1
10億米ドル
227
279
244
自然エネルギー発電容量(合計、水力を含まない)
ギガワット
315
395
480
自然エネルギー発電容量(合計、水力を含む)
ギガワット
1,250
1,355
1,470
水力発電容量(合計)2
ギガワット
935
960
990
ギガワット時
313
335
350
太陽光発電(PV)容量(合計)
ギガワット
40
71
100
集光型太陽熱発電(CSP)容量(合計)
ギガワット
1.1
1.6
2.5
風力発電容量(合計)
ギガワット
198
238
283
太陽熱温水システム容量(合計)3
ギガワット熱
195
223
255
エタノール生産量(年間)
10億リットル
85.0
84.2
83.1
バイオディーゼル生産量(年間)
10億リットル
18.5
22.4
22.5
政策目標を有する国
#
109
118
138
固定価格買取制度を採用している州/地域/国
#
88
94
99
RPS制度を採用している州/地域/国4
#
72
74
76
バイオ燃料規制を採用している州/地域/国
#
71
72
76
バイオマス発電量
投資データは Bloomberg New Energy Finance から引用した。ここでは発電容量が 1MW 以上のすべてのバイオマス、地熱、風力発電事
業、1 ∼ 50MW 規模の水力発電事業、すべての太陽光発電事業、すべての海洋発電事業、年間生産規模 100 万リットル以上のバイオ燃料
事業を含む。
2
水力発電データは揚水発電の設備容量を含んでいない。詳細については、120 ページの方法論に関する注釈を参照のこと。
3
太陽熱温水システムの設備容量のデータはガラス管式集熱器の容量のみである。
4
バイオ燃料政策は表 3(自然エネルギー促進政策)に示されるバイオ燃料規制に関する項目と表 R15(国および州 / 地域のバイオ燃料混
合規制)に示される政策を含む。
注:表中には概算値を示している。自然エネルギー発電容量(水力を含む場合も含まない場合も)および水力発電容量のデータは 5GW 単
位で表している。その他の統計は四捨五入して整数で表しており、非常に小さい数値とバイオ燃料については四捨五入して小数点第 1 位
まで表している。
1
• 米国では他のどの発電技術よりも風力発電がより多くの発
電容量を追加し、すべての自然エネルギーでは年間追加
総発電容量の約半分を占めた。
• 風力や太陽光発電が高い普及割合を達成している国もあ
り、
デンマークは2012年に風力発電で電力の30%を供給し、
イタリアは太陽光発電で電力の5.6%を供給している。
変動しやすい風力発電や太陽光発電の割合が高まるにつ
れて、多くの国(デンマーク、
ドイツ、スペインを含む)
では、より
高い割合にも対応するようエネルギーシステムを転換するた
めの政策と措置を制定し始めている。自然エネルギー分野
の雇用に対するこれらの発展の影響は国や技術により異なっ
ているが、世界全体では自然エネルギー産業で働く人の数は
増加し続けている。世界中で推計570万人が自然エネルギー
分野において直接または間接的に働いている。
─7─
■進化する政策の展望
少なくとも138の国が2012年末までに自然エネルギーの目標を
持っていた。2013年初めの時点で、自然エネルギー支援政
策は127か国で確認されており、その3分の2以上が発展途
上国か新興経済国であった。2000年代の始めから半ばまで
と比べて、新たな政策や目標の採用率は低くとどまっている。
自然エネルギー部門が成熟するにつれて、既存の政策の見
直しがますます広く行われるようになっている。
急速に変化している自然エネルギー市場環境、厳しい国家
予算、世界的な経済危機の広範な影響に対応して、一部の
国では既存の法律を大幅に改正し、そのうちのいくつかは遡
及して適用された。その他の国では自然エネルギー支援策
を強化し、
いくつかの国は意欲的な新たな目標を採択した。
自然エネルギーを支援するほとんどの政策は、電力部門を目
標に定めており、固定価格買取制度(FITs)と自然エネル
ギー割当基準(RPS)
が最も多く採用されている。2012年に、
FIT政策は新たに5か国で制定され、そのすべてがアフリカと
中東の国であった。また大半のFITに関連した変更は支援
削減に関するものであった。新しいRPS制度は2か国で制定
された。自然エネルギーを普及させるための公共競争入札
ないし入札を始める国が増えている。
熱利用と冷房の部門では、促進政策や目標の採用が着実に
増加しているものの、引き続き電力部門よりも遅い速度であっ
た。2013年初めの時点で、20か国が特定の自然エネルギー
熱利用の目標値を持っており、
少なくとも19の国や州が自然エ
ネルギー熱利用技術の使用を義務付けていた。また自然エ
ネルギー熱利用と冷房は建築基準やその他の措置を通して
支援されている。
バイオ燃料混合義務化が27か国と27の州/地方で定められ
ている。第一世代バイオ燃料の総合的な持続可能性につ
いての議論が広がっているために、欧州や米国などの主要
市場において懸念が増えているにもかかわらず、バイオ燃料
の利用を促進する規制政策は、2013年初めの時点で少なく
とも49か国に存在していた。
世界中の数千もの都市や町では、自然エネルギーを進めるた
めの独自の計画や政策を進めており、この機運は2012年に
加速した。意欲的な目標を達成するために、地方政府は固
定価格買取制度または技術ごとの発電容量導入目標、自然
エネルギーの導入を支援するための財政的補助、そして太
陽熱義務化を含む新しい建築基準や規格といった幅広い
措置を採用した。その他自然エネルギーの地域冷暖房シス
テムを導入し、自然エネルギー電力による輸送の利用を促進
し、事業に資金提供をするコンソーシアムを形成し、また支援
運動と情報共有を前進させた。
自然エネルギーを促進するために、いくつかの都市ではその
国の政府と協力しているが、一方で他の都市はボトムアップ
型で組織化を始めている。欧州では、1116の都市や町が
市長誓約(Covenant of Mayors)に2012年に新たに参加
し、20%のCO2削減目標と、気候変動緩和策、エネルギー効
率化、
自然エネルギーのための計画を宣言した。
■投資動向
世界的な自然エネルギー発電や燃料への新規投資は2012
年に2440億米ドルであり、前年の記録から12%減となった。
総額は過去2番目に高く、2010年の規模を8%上回った。総
額に含まれていない50MWを超える水力発電プロジェクトと
太陽熱集水器への投資を含めた場合は、自然エネルギーの
合計新規投資額は2850億米ドルを超えた。
数年間の増加の後に訪れた投資額の減少は、とくに欧州
(36%減少)や米国(35%減少)
といった主要先進国における
支援政策についての不確実性からもたらされた。それにも
かかわらず、2012年の発電能力の純増分のみ(建替えは除
く)
を考慮すると、世界での自然エネルギーへの投資額は3年
連続で化石燃料を超えた。
2012年には、
先進国と発展途上国への投資活動の比率がこ
れまでで最も大きく変化した。発展途上国での投資は1120
億米ドルに達し、世界全体の46%となった。これは2011年か
ら34%の上昇であり、8年連続の成長傾向が継続したことを
意味する。対照的に、先進国への投資は29%減少して1320
億米ドルとなり、
2009年以来の低水準であった。この移行は、
欧州と米国における太陽光発電や風力発電プロジェクト開
発のための補助金の減少によるものであり、急増する電力需
要と魅力的な自然エネルギー資源を持つ新興市場への投資
家の関心の高まりによるものであり、風力発電や太陽光発電
の技術コストの低減によるものであった。欧州と中国が2012
年における世界の投資の60%を占めた。
太陽エネルギーは2012年に投入された資金額の点で他の
部門を圧倒的に引き離しており、自然エネルギーへの新規投
資の合計の57%を占めた(そのうち96%は太陽光発電)。そ
れにもかかわらず、太陽エネルギーへの投資額1404億米ドル
は2011年の水準から11%減少しており、その理由としてスペ
インと米国における集光型太陽熱発電(CSP)プロジェクトへ
の投融資が低迷したことと、太陽光発電システムの価格が急
激に低下したことが挙げられる。太陽エネルギーの後には
風力発電(推計803億米ドル)と50MWを超える水力発電プ
ロジェクト
(推計330億米ドル)
が続いた。
■農村地域の自然エネルギー
2012年には自然エネルギーの使用を通じて近代的なエネル
ギーサービスへのアクセスが改善された。より手頃な価格に
なったこと、地域の自然エネルギー資源に関する知識が向上
したこと、技術の利用形態がより洗練されたこともあって農村
地域における自然エネルギー電力の使用は増加した。太陽
光、風力、
インバータ、
ガス化技術、および計量技術の価格低
下と並行して、
ミニグリッドへの注目が高まっている。
技術の進歩により、農村地域の暖房や調理部門における自
然エネルギーの利用も進んだ。農村地域の自然エネルギー
市場は、電化の進展度合いと、クリーン調理用コンロの活用、
ファイナンスモデル、主体、および国や地域によって大きく異な
る支援政策に従って大きな多様性を見せている。
政府主導の電化とグリッド拡張プログラムは依然として発展
途上国全体で採用されている。しかしここ20年は、遠隔地
─8─
や農村地域の自然エネルギー導入において民間部門の関
与が増加しており、新しいビジネスモデルと低所得顧客層が
急成長市場をもたらしうるという認識が広まっているため勢い
を増している。
自然エネルギーによってエネルギーアクセスを提供するため
の政策が、より広範な農村開発計画にますます統合されてい
る。ブラジル、中国、インド、南アフリカはエネルギーアクセスと
持続可能性の二重の課題に対処する大規模なプログラムの
開発を先導している。しかし、
エネルギーアクセス目標が達成
されるためには、制度的、金融的、法律的メカニズムが構築さ
れ、大規模な自然エネルギー導入を支援するよう強化されな
ければならない。2030年までに近代的なエネルギーへの普
遍的なアクセスを目指す国連総会の 「すべての人のための
エネルギーアクセス(Energy Access for All)」目標は推計
360億から410億米ドルの年間投資を必要としている。
■ 市場・産業のハイライトと継続的動向
○バイオマス発電/熱/交通利用
熱、電力、交通部門におけるバイオマスの利用は2〜3%増加
して約55EJとなった。熱利用は伝統的バイオマスも含めてバ
イオマス利用の大半を占め、近代的バイオマス熱利用の設
備容量は約3GWth増加して推計293GWthとなった。バイオ
マス発電容量は、一部のBRICS諸国で顕著に増加し、12%
上昇してほぼ83GWに達し、さらに約350TWhの発電を1年
間に行った。近代的バイオマスの需要が増加し、とくにバイ
オ燃料と木質ペレットの国際貿易を推進している。世界の木
質ペレットの生産量および輸送量は22万トンを超え、約8.2億ト
ンのペレットが国際的に取引された。液体バイオ燃料は、世
界の道路輸送用燃料の約3.4%を提供し、少量ながらも航空
や海洋分野での使用が増加している。エタノール燃料の世
界生産量は、2011年から体積ベースで約1.3%減少して831
億リットルとなり、バイオディーゼル生産は微増で225億リットル
に達した。新たにエタノールやバイオディーゼル生産施設が
稼動を始めているが、多くのエタノール工場は設備能力を下
回る運転を行っている。
○地熱エネルギー
地熱資源は2012年に推計805PJ(223TWh)の自然エネル
ギーを供給し、3分の2が直接熱利用、残りが電力であった。
地中熱ヒートポンプの使用は急速に増えており、2012年には
推計50GWthの容量に達している。少なくとも78か国が直接
熱利用のために地熱資源を活用しており、世界の設備容量
の3分の2は米国、中国、スウェーデン、
ドイツ、
日本に位置して
いる。地熱発電容量は2012年の間に推計300MW増加し、
世界全体で11.7GWとなり、少なくとも72TWhの発電を行っ
た。
○水力発電
推計30GWの発電量の水力発電が2012年に電力供給を開
始し、
世界の既存発電容量は3%増加して推計990GWとなっ
た*。水力発電は、
2012年に推計3700TWhの発電を行った。
さらに、 中 国 は 追 加 発 電 容 量 の 点 で 先 導して おり
(15.5GW)
、その他の新規導入の大部分はトルコ、ブラジル、
ベトナム、ロシアであった。プロジェクトの規模が大きくなり、水
力発電技術の能力が向上するにつれて、地域的および国際
的なパートナーシップを含む合弁ビジネスモデルがますます目
立つようになってきている。
○海洋エネルギー
商業用の海洋エネルギー設備容量(主に潮力発電設備)は
2012年末に約527MWに留まり、2012年にはほとんど追加さ
れなかった。小規模プロジェクトは、米国およびポルトガルで
展開された。政府と地方当局は海洋エネルギーの研究開発
を支援し続けており、一方で大手電力企業はこの分野で存
在感を増しており、海洋エネルギーの研究開発は一歩ずつ
だが着実な進展を見せている。
○太陽光発電
欧州の牽引と2012年後半のアジアにおける相当量の追加に
よって、太陽光発電の世界全体の稼働中容量は100GWとい
う画期的な規模に達した。価格下落によって、太陽光発電
は、アフリカやMENA地域からアジアやラテンアメリカにまで
新たな市場を拡大している。地域社会が所有する自家発電
システムへの関心は2012年に増加し、大規模な太陽光発電
プロジェクトの数と規模も増加した。過剰な競争と価格およ
びマージンの低下が業界再編に一層拍車をかけ、セルやモ
ジュールのメーカーは苦戦し、中国、欧州、米国の数社のメー
カーが廃業した。世界の太陽光発電生産における薄膜型
のシェアは減少し、
生産量は15%が減少し、4.1GWの生産量
となった。
○集光型太陽熱発電
(CSP)
世界のCSP容量は60%以上増加して約2550MWとなった。
この追加容量のほとんどは、世界のCSP容量の4分の3以上
が設置されているスペインで導入された。米国では新規導
入は無かったが、2012年末時点で約1300MWが建設中で
あった。他には、100MW以上の発電容量を持つ設備は主
に北アフリカで稼働していた。CSP業界は、
オーストラリア、チ
リ、中国、インド、MENA地域、南アフリカに拡大している。
* とくに明記されている場合を除き、水力発電データには純粋な揚水発電の発電容量は含まれていない。データの影響の詳細については、120 ページの方法論に関する注釈を参照
のこと。
─9─
太陽光発電と天然ガス価格の下落、世界景気の後退、そし
てスペインにおける政策変更といったすべての要素によって
CSPメーカーや事業開発者にとっては不安定な市場となっ
た。
○太陽熱利用/冷房
2012年末までに、世界の太陽熱利用設備容量はすべての
集熱方式を合わせて推定282GWthに達し、ガラス式の温水
集熱器は推定255GWthに達した。中国と欧州が(すべての
方式の)世界市場の約90%と総設備容量の大半を占めてい
る。太陽熱暖房と冷房が広く使われるようになっており、太陽
熱による地域熱供給、
太陽熱による冷却、
およびプロセス熱シ
ステムも同様である。産業は、とくに欧州で課題に直面し続
けており、中国で続いている急速な合併にともない、主要な企
業の間で買収や合併が目立った。製造プロセスの自動化は
2012年に増加し、技術革新は接着剤から材料やその他の分
野にまで及んだ。
○風力発電
2012年は風力発電にとって新たな記録的な年となり、少なくと
も44か国が45GWの設備容量(他のどの自然エネルギーより
も多い)を追加し、世界全体の容量を19%増やし283GWと
なった。米国は市場を牽引していたが、中国が総導入量で
は首位を保った。風力発電は価格下落に助けられ、新たな
市場を拡大している。ほぼ1.3GWの容量が洋上で(主に北
欧で)追加され、13か国で総計5.4GWに達した。風力発電
産業は、加熱するタービンメーカー間の競争、
いくつかの市場
における低コストのガスとの競争、そして緊縮財政による政策
支援の削減と連動した価格の押し下げ圧力にさらされてい
る。
─ 10 ─
上位5か国
○ 2012年の年間投資/新規導入量/生産量
新規設備
への投資
水力発電の
新設
太陽光発電
(PV)
の新設
風力発電の
新設
太陽熱温水/
暖房の新設
バイオディー
ゼル生産量
エタノール
生産量
1位
中国
中国
ドイツ
米国
中国
米国
米国
2位
米国
トルコ
イタリア
中国
トルコ
アルゼンチン
ブラジル
3位
ドイツ
ブラジル/ベトナム
中国
ドイツ
ドイツ
ドイツ/ブラジル
中国
4位
日本
ロシア
米国
インド
インド
フランス
カナダ
5位
イタリア
カナダ
日本
英国
ブラジル
インドネシア
フランス
○ 2012年末の総容量
一人あたりの
自然エネルギー 自然エネルギー 自然エネルギー
発電設備容量 発電設備容量 発電設備容量
(水力を含む) (水力を含まない)(水力を含まない)2
バイオマス
発電容量
地熱発電
容量
水力発電
容量
集光型太陽熱
発電(CSP)容量
1位
中国
中国
ドイツ
米国
米国
中国
スペイン
2位
米国
米国
スウェーデン
ブラジル
フィリピン
ブラジル
米国
3位
ブラジル
ドイツ
スペイン
中国
インドネシア
米国
アルジェリア
4位
カナダ
スペイン
イタリア
ドイツ
メキシコ
カナダ
エジプト/モロッコ
5位
ドイツ
イタリア
カナダ
スウェーデン
イタリア
ロシア
オーストラリア
太陽光発電
(PV)容量
国民一人
あたりの
太陽光発電
(PV)容量
風力発電
容量
太陽熱温水
/暖房容量1
国民一人
あたりの
太陽熱温水
/暖房容量1
地熱暖房
容量
地熱暖房
直接利用3
1位
ドイツ
ドイツ
中国
中国
キプロス
米国
中国
2位
イタリア
イタリア
米国
ドイツ
イスラエル
中国
米国
3位
米国
ベルギー
ドイツ
トルコ
オーストリア
スウェーデン
スウェーデン
4位
中国
チェコ
スペイン
ブラジル
バルバドス
ドイツ
トルコ
5位
日本
ギリシャ
インド
インド
ギリシャ
日本
日本/アイスランド
太陽熱温水 / 暖房は 2011 年の順位であり、
(温水プール用の非ガラス管式システムと空気式集熱器の容量を除いた)ガラス管式温水器の
容量に基づいている。すべての水式集熱器と空気式集熱器を含めると、2011 年の順位は、中国、米国、ドイツ、トルコ、ブラジルとなる。
2
国民一人あたりの自然エネルギー発電容量の国別順位は水力発電を含まない総導入量上位 12 か国間で順位付けられている。
3
いくつかの国では、地中熱ヒートポンプが地熱の直接利用容量の大部分を占めている。熱利用の割合がヒートポンプ容量の割合よりも低
くなるのは、それらの国で比較的稼働率が低くなる要因があるためである。国別順位は、2010 年のデータと、いくつかの国に関してはそれ
より最近の統計に基づいている。
注:ほとんどの順位は投資額、発電容量、バイオ燃料生産量の絶対量に基づいている。国民一人あたりでは、多くのカテゴリーで順位が異
なると考えられる(国民一人あたりの自然エネルギー発電設備容量、太陽光発電、太陽熱温水の容量参照)。水力発電の国別順位は、設備容
量(GW)でなく発電量(TWh)を考慮した場合には変化する。これは、いくつかの国ではベースロードの供給を水力発電に依存しているの
に対し、その他の国では電力負荷に追従したり、ピーク需要に対応するために水力発電を用いているためである。
1
─ 11 ─
第 1 章 世界市場および産業の概要
第 1 章 世界市場および産業の概要
多くの自然エネルギー技術の設備容量は急速に拡大して
おり、
自然エネルギーは急速に世界のエネルギー構成の重
要な部分を占めつつある。価格下落と技術の進歩によっ
て、自然エネルギーは、先進国と同じく開発途上国の消費
者にとっても、
より手頃なものになっている。
自然エネルギーの世界的な需要は、国際的な経済危機、継
続的な貿易紛争、およびいくつかの主要市場における政策
の不確実性と支援の減少にもかかわらず、2011年と2012年
の間、上昇を続けた。自然エネルギーは、データが利用可能
な最新年度である2011年において、世界の総最終エネル
ギー消費量の推計19%を供給した1*。このうち、約9.3%は伝
統的バイオマス※由来であり、発展途上国の農村部で調理や
暖房のために主に使用されている。近代的自然エネルギー
資源由来の有用な熱エネルギーは、全最終エネルギー使用
量の推計4.1%を占め、
水力発電は約3.7%を占め、1.9%が風
力発電、太陽、地熱、
バイオマスからの電力およびバイオ燃料
(図1を参照)によって供給された2。自然エネルギーはいまや
世界のエネルギー構成の重要な部分を占めている3。
近代的な自然エネルギーは、発電、熱利用、輸送燃料、農村
地域/系統独立型のエネルギーサービスという4つの特徴的
な異なる市場において化石燃料、核燃料の代替エネルギー
となりうる。本章では、発電、熱利用、輸送燃料の3部門にお
ける最近の市場ならびに産業発展の概要を説明する。また、
農村地域の自然エネルギーの章で、発展途上国の農村地域
/系統独立型のエネルギーについてとりあげる。次章では、
技術毎の市場、
産業の発展および潮流を報告する。
2008年から2012の5年間に、多くの自然エネルギー技術の設
備容量†は非常に急速に成長し、とくに電力部門において最
も成長した。太陽光発電(PV)の総容量が年平均60%の速
度で成長した4。集光型太陽熱発電(CSP)容量は以前は小
さな規模であったが成長し、年平均40%以上増加し、風力発
電はこの期間にわたって毎年25%増加した5。
水力発電と地熱発電は、より成熟した技術であり、その成長
率はよりゆるやかで年平均3〜4%の範囲であった6。バイオマ
ス発電も成熟しているが、固体バイオマスとバイオガス発電
容量の着実な成長によって、年平均8%増加している
(図2を
7
参照)
。
とくに太陽熱システム、地中熱ヒートポンプ、およびいくつかの
バイオ燃料やバイオマスシステムによって、熱利用分野の需
要も急速に増加している。ガラス管式太陽熱温水器の容量
は、過去5年間で平均15%を超える増加を示しており、同時
に、地中熱ヒートポンプは年間平均20%の成長を続け、バイオ
マス熱生産設備容量は安定的に年間約20%上昇している8。
木質ペレット消費(熱と電力の両方)は毎年約20%拡大して
いる9。
輸送部門では、液体バイオ燃料の成長は、近年様々な様相
図1.世界の最終エネルギー消費における自然エネルギーの割合(2011年、推計値)
エネルギー
自然
世界のエネルギー
近代的
自然エネルギー
9.7%
伝統的
バイオマス
9.3%
原子力
19%
バイオマス/太陽熱/
地熱による給湯と暖房
4.1%
水力発電
3.7%
風力/太陽光/
バイオマス/
地熱発電
1.1%
バイオ燃料
0.8%
2.8%
化石燃料 78.2%
出典:本章の巻末注2を参照
*
巻末注はこちらを参照:www.ren21.net/gsr
伝統的バイオマスは非効率的かつ通常は汚染をともなうたき火やストーブ、かまどで燃やされる固体バイオマスを指し、典型的には発展途上国の農村部において調理や快適さ、
小規模な農業や工業のプロセス用に熱エネルギーを供給するために使われている。伝統的バイオマスは、現在発展途上地域の多くの農村エネルギー需要を満たす上で重要な役割を
果たしている。本報告書において近代的バイオエネルギーとは、現代的な機器用に、
固体、
液体、
および気体のバイオマス燃料から効率的にとりだされたエネルギーと定義される。
(本
報告書で使用されている用語の定義については、用語集を参照。)伝統的バイオマスに関しては、
その持続可能性についてや、
それを自然エネルギーとすべきか、
持続可能なエネルギー
源由来の場合のみ自然エネルギーと考えるべきではないかなどの議論がある。伝統的バイオマスが与える環境および健康への影響に関する情報は、H.Chum らによる 気候変動に関
する政府間パネル(IPCC)発行の再生可能エネルギー源と気候変動緩和に関する特別報告書 (Cambridge, U.K.: Cambridge University Press, 2011) の「バイオマスエネルギー」の章、
および John P.Holdren らによる World Energy Assessment: Energy and the Challenge of Sustainability (New York: United Nations Development Programme, 2000) の「Energy,
the Environment, and Health」の章を参照。
† 次章では可能なかぎりエネルギーのデータを記載するが、主に設備容量に着目する。p.120の方法論に関する注釈を参照。
※
─ 12 ─
図2.自然エネルギー設備容量とバイオマス燃料生産の年間平均成長率(2007年末∼2012年末)
集光型太陽熱発電
61%
43%
42%
太陽光発電
60%
19%
風力発電
25%
3.1%
水力発電
3.3%
2.6%
地熱発電
4.0%
14%
太陽熱温水
(ガラス管式)
15%
0.4%
バイオディーゼル生産
2012年
2007年末∼2012年末の
5年間平均
17%
-1.3%
エタノール生産
11%
0
10
20
30
40
50
60
70
成長率(%)
出典:本章の巻末注7を参照
図3. 世界の電力供給における
自然エネルギーの割合(2012年末、推計値)
78.3%
太陽光発電と陸上風力発電は規模の経済と技術の進展によ
り引き続き価格が低下したが、これにはタービンとモジュール
の生産過剰の影響もあった。国際的な経済危機(政策変更
の要因となった)
と国際貿易の継続的な緊張が組み合わさっ
たため、
こうした変化はいくつかの自然エネルギー産業と、
とり
わけ機器メーカーにとって新たな課題を創出した11。
水力
16.5%
水力を除いた
自然エネルギー
5.2%
出典:本章の巻末注19を参照
注:2012年末時点で稼働中の自然エネルギー発電容量に基づく
を呈している。2007年末から2012年までの期間の平均年間
成長率は、エタノールはほぼ11%、バイオディーゼルは17%で
あった。バイオディーゼルの生産は2012年においても拡大し
続けているが、成長率はゆるやかになっている。一方、エタ
ノール生産は2010年にピークに達し、それ以降減少してい
る10。
製造と世界的需要の双方において、ほとんどの技術が拡大
し続けた。しかし、
ほとんどの技術の世界的市場の成長は以
これに応答して、大小両方のプレイヤー間で業界再編が継
続し、とくに太陽光、風力、バイオ燃料産業において、年間を
通じて注目を集める企業の倒産がいくつか起こった12。製品
価値を向上させコストを削減するため、製造業者は、サプライ
チェーンを垂直型に統合し、
製品を多様化させた。プロジェク
ト開発と所有に関する動きも続いた。
価格下落は、多くの製造業者に痛手を与えたが、彼らは新し
い機会を得た。伝統的市場における供給過剰と成長鈍化
は、企業が新たな市場を開拓することを後押しした。価格下
落と資金調達における革新によって、自然エネルギーは先進
国と途上国のより広範な消費者にとって同様に、より手頃なも
のとなってきている13。価格下落のため2012年は設置業者と
─ 13 ─
第1章
化石燃料および
原子力
前の数年間に比して2012年に減速した。政策の転換と遡
及的変更といった不確かな政策環境と減少した政策支援に
より、多くの既存の市場において投資環境が影響を受け、欧
州、中国、
インドにおける多くの既存の市場の勢いを鈍化させ
た。
第 1 章 世界市場および産業の概要
(表R1を参照)17。世界全体の太陽光発電の稼働中容量は
バイオマス発電を超えて100GWという画期的な規模に達し、
容量(発電量ではなく)の点においては風力発電と水力発電
に次ぐ三番目に大きい自然エネルギー技術となった。
消費者にとっては良い年であった。
その結果、
アジア、
ラテンアメリカ、中東、
アフリカの新たな市場
は、すべての自然エネルギー技術と最終消費部門での新規
投資によって、勢いを増している14(補足2と投資フローの章を
参照)。市場、製造、そして投資が、2012年の間に発展途
上国にますます移行した。
自然エネルギーはまた、業務がエネルギー集約的でしばしば
遠隔地において行われる淡水化
(とくに乾燥地域で太陽エネ
ルギーによる発電を使用)
や鉱業を含む、新しい機器や産業
で利用されている15。これらすべての自然エネルギー部門に
おける雇用上の発展の影響は、国や技術によって様々だが、
世界的に自然エネルギー産業で働く人の数は上昇し続けて
いる
(補足4および表1、48ページを参照)。
■電力部門 世界の総自然エネルギー容量は、2011年から2012年にかけ
て約8.5%上昇し、1470ギガワット(GW)を超えた。水力発
電*は、推計990 GWに増加し、他の自然エネルギーは21.5%
増加して480 GWを超えた16。世界全体では、風力発電が
2012年度の新規自然エネルギー発電容量の約39%を占め、
つづいて水力発電や太陽光発電がそれぞれ約26%を占めた
毎年世界中で発電容量が増え続けるなかで、自然エネル
ギーが占める割合が高まっており、2012年には自然エネル
ギーは正味の追加発電容量の半分強を占めた18。年末まで
に、自然エネルギーは世界全体の発電容量の26%以上を占
め、世界の電力の推計21.7%を供給し、水力発電は総電力
の16.5%を供給した19(図3を参照)。自然エネルギー容量は
年々急速に上昇しているが、発電量全体に対する自然エネ
ルギーの割合の伸びはゆるやかである。これは多くの国々が
大規模な化石燃料容量を追加し続けており、
自然エネルギー
容量の多く(風力や太陽エネルギー)は比較的低い稼働率
で運転されることによる。
そうであっても、風力発電や太陽光発電は、2012年の間に
それぞれ風力発電で電力の30%、
太陽光発電で5.6%を発電
したデンマークやイタリアなどの国々で高い普及率を達成し
ドイツ、インド、米国のように、
ている20。オーストラリアの一部、
変動型の資源からの発電割合が、
目覚ましいピーク記録を達
成し、
一時的に電力需要の高い割合を満たし、
しばしばスポッ
図4. 自然エネルギー発電設備容量※ 世界合計、EU27か国、BRICS、上位6か国(2012年)
480
世界合計
210
EU27か国
128
BRICS
ギガワット 0
50
100
風力 太陽光 バイオマス 地熱 CSPと
発電 発電
発電
発電 海洋発電
200
300
400
500
90
中国
86
米国
71
ドイツ
31
29
スペイン
イタリア
24
インド
ギガワット 0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
出典:本章の巻末注25を参照
※水力発電は除く
* 世界の水力発電に関するデータであり、よって本報告書の自然エネルギーの統計では総計から純揚水式の容量を除くよう計らった。詳細については方法論に関する注釈、p.120
ページを参照。
─ 14 ─
さらに、石炭、天然ガス由来の世界の平均発電コスト
(炭素
費用を除く)は、資本コストが上昇しているために増加した
が、陸上風力発電や太陽光からの発電の平準化コストは下
落し続けている22。多くの自然エネルギー技術の価格が下落
し続けているため、
より多くの自然エネルギーが世界各地域に
おいてグリッドパリティに達している23。
2012年末までにおいて、
中国、
米国、
ブラジル、
カナダ、
ドイツは
総自然エネルギー電力容量の上位国にとどまっている24。水
力発電を含まない自然エネルギー発電容量の上位国は中
国、米国、ドイツ、つづいてスペイン、イタリア、そしてインドで
あった
(図4および表R2を参照)25。間があいてフランスと日本
はともに第7位、僅差でイギリス、
ブラジル、
カナダ、
スウェーデン
が後に続いた26。これら12か国のうち、
水力をのぞく稼動中の
自然エネルギー容量の一人当たりランキングでは、ドイツが1
位で、
スウェーデン、
スペイン、
イタリア、
カナダ、
米国、
英国、
フラ
ンス、
日本、中国、ブラジル、
インドが続いた27*。(他のランキン
グは、12ページの上位5か国の表を参照。)合計では、これら
12か国は、水力をのぞく自然エネルギー世界容量の約84%を
占めており、
上位5か国だけで64%を占めた28。
中国は推計229GWの水力発電容量に加え、約90GWのそ
の他の自然エネルギー発電容量(主に風力発電)を持ち、
2012年末までの世界の自然エネルギー発電容量の約5分の
1を占めた29。2012年に増加した88GWの発電容量のうち、
水力発電は17%以上、他の自然エネルギーは約19%を占め
た30。自然エネルギーは2012年に中国の電力需要の約20%
を満たし、水力発電が17.4%を占めた31。2011年に比べて、
2012年の発電出力は風力発電では35.5%、太陽光発電では
400%上昇し、風力発電の発電量は石炭による発電よりも増
加し、
初めて原子力発電による発電量を上回った32。
米国では、
自然エネルギーは2012年の正味の発電の12.2%を
占めており、年末の時点で総容量の15%以上を占めた33。水
力発電出力は13.4%低下したが、一方で他の自然エネル
ギー発電量は2011年の4.7%から2012年の5.4%に上昇し
た34。風力発電は、初めて新規の発電容量の最も大きな部
分を占め、
その割合はじつに45%であった。また、
すべての自
然エネルギーによって、その年の間の米国の新規発電容量
の約半分を占めた35。
自然エネルギーは、
ドイツの電力消費の22.9%を占め
(2011年
の20.5%から増加)
、国内の原子力、ガス火力、無煙炭火力
発電所(ただし、亜炭発電所を除く)
による発電を上回った36。
すべての自然エネルギー発電量(136TWh)は2011年の出
力を10%以上超え、風力発電は33.8%の割合を占め、続いて
バイオマス発電が30%(バイオガスから半分以上)
、太陽光
発電が20.6%、
そして水力発電が15.6%を占めた37。自然エネ
ルギーは、
ドイツの総最終エネルギー需要の12.6%を満たした
(2011年の12.1%から増加)38。
スペインは、景気後退と最近の政策変更によって、
自然エネル
ギー容量の追加を減速させた。(「政策の展望」の章を参
照)。しかし、依然としてスペインは水力発電を含まない自然
エネルギー発電容量に関して世界第4位にあり、運転中の推
計30.8GWに加えて17GWの水力発電容量を持っている39。
自然エネルギーはスペインの2012年の電力需要の32%を提
供した(2011年の33%から減少)。このうち風力発電の割合
が最大であり、
次に太陽光発電が続いた40。
イタリアでは2012年度末までの水力発電をのぞく自然エネル
ギーが29GWであり引き続き5位であり、水力発電は18GWで
あった41。自然エネルギーは同国の電力需要の27%を満たし
(2011年の24%から増加)
、水力発電をのぞく自然エネルギー
42
が15%を占めた 。
インドでは2012年に、約4.2GWの自然エネルギー発電容量が
追加された。これには0.7GWの水力発電と、3.5GWのその
他の自然エネルギー(主に風力発電)が含まれ、年末時点
の合計は66GWを超えた43。自然エネルギーは年末時点で
の総設備容量の31%以上を占め、水力発電をのぞく自然エ
ネルギーは11%以上(24 GW)
であった44。
BRICS※の国々が2012年末までに全世界の自然エネルギー
発電容量の36%、水力発電をのぞく自然エネルギー容量の
約27%を占めた。ロシアが大規模な水力発電容量をもって
いる一方、BRICSの水力発電をのぞく自然エネルギー容量
は事実上すべてがブラジル、インド、
とくに中国にある45。年末
までに南アフリカも大規模な風力発電とCSPの設備を建設中
であり、
勢いが出始めている46。
BRICS諸国がすべての自然エネルギーの容量拡大をけん引
†
した一方、欧州連合(EU)
は、2012年末時点で最も多くの
水力発電をのぞく自然エネルギー容量をもっており、
その割合
は世界全体の約44%であった。2000年から2012年の期間
中において EU内で追加されたすべての発電容量の半分
以上を自然エネルギーが占めており、2012年には追加容量
のほぼ70%を占め、それは主に太陽光発電(2012年総追加
量の37%)と風力発電(26.5%)であった47。年末時点で、自
然エネルギーは域内の総発電容量の3分の1以上を占め、
水力発電をのぞく自然エネルギーは5分の1以上を占めた48。
2011年(利用可能な最新データ)
に、
自然エネルギーは、域内
の電力消費量の20.6%(2010年の20%から増加)と総最終
エネルギー消費の13.4%(2010年の12.5%と比較)を満たし
た49。
EUと他地域では、ますます多くの家庭や企業が自然エネル
ギーの自主的な購入を進めている。熱や輸送のためのバイ
オ燃料の自発的な購入は、いくつかの国では選択肢となって
いるが、
“グリーンエネルギー”購入は、自然エネルギー電力
が最も一般的である。最大の企業ユーザーは、日本、
ドイツ、
フィンランド にあると報じられている50。
* 他にも、一人当たりの自然エネルギー容量の多い国や、自然エネルギー電力の割合の高い国があるが、本報告書は水力発電をのぞく自然エネルギー容量が最も大きい国々に焦点
をあてる(各国の自然エネルギー電力割合に関しては参照表 R11 を参照。)
※ ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカを含む新興国。
†「欧州連合」
、
または「EU」はとくにEU-27か国を指す。
─ 15 ─
第1章
ト市場価格を押し下げている地域が増加している21。
第 1 章 世界市場および産業の概要
補足1.REN21 世界自然エネルギー未来白書
2013年1月にREN21は、毎年発行している自然エネル
ギー世界白書の姉妹報告書として、自然エネルギー
の未来に関する現在の考え方の状況を描いた、世界
自 然 エ ネ ル ギ ー 未 来 白 書(REN21 Renewables
Global Futures Report)を発表した。
新しい報告書は、1つのシナリオや視点ではなく、さ
まざまな組織が発行する50の最近のエネルギー ·シナ
リ オ と 世 界 中 の 一 流 の 専 門 家 へ の170の イ ン タ
ビューをもとに、現時点での自然エネルギーの未来
に関する考えを統合的にまとめた報告書である。こ
の報告書は、シナリオ予測と専門家の意見の両方に
基づいて、将来の自然エネルギーのための信頼でき
る可能性の範囲を示している。また、この報告書は
将来の自然エネルギー転換への道筋において、現在
の発展状況や政策課題、選択についての一連の“重要
な論争”を特集している。
この報告書は、今日の多くの自然エネルギーの将来
に関する考え方が過去に根ざしていることを示して
いる。たとえば、多くの保守的なシナリオは、将来の
自然エネルギーシェアの水準に関して世界全体では
現在と同程度の15〜20%の範囲内にとどまると示し
ている。しかし、このような見解は、過去10年間のダ
イナミックな市場の成長、そして近年の劇的な技術
の進化とコスト削減を鑑みると、ますます支持を得
られなくなってきている。多くの“中位”シナリオは
長期的には30〜45%の範囲内の割合を占めることを
示し、この範囲が多くの国でますます信頼性を高め
ている。それらのシナリオを越えて、高位自然エネ
ルギー予測は長期的に50〜95%の範囲の割合を占め
ることを示し、そのような予測はますます信頼性を
増し、主流となりつつある。
さまざまなシナリオによって示される2030年までの
世界自然エネルギー容量の予測では、風力発電容量
の増加が4倍〜12倍、太陽光発電が7倍〜25倍、CSPが
20倍〜350倍、バイオ燃料が3倍〜5倍、地熱発電が4倍
〜15倍、水力発電が30%〜80%の増加となっている
(すべて2011年の実際の発電容量(GW)に基づく)。
専門家とシナリオ予測は2020年から2025年までに年
間最大5000億ドルの自然エネルギーへの投資を示し
ている。金融の専門家は、コミュニティ・ファンド
から年金基金まで、多くの新たな資金源がこのよう
な規模の投資を進めるために必要とされるだろうと
いう意見を述べている。金融の専門家はまた、自然
エネルギープロジェクトが最もリスクの低い投資の
一つとみなされてきていると判断しており、ある専
門家は「平均的な産業におけるリスクとなんら変わ
りがない」と述べ、いくつかの化石燃料関連の投資よ
りもリスクが低いとみなされることもある。
本報告書は、電力網、建築物、産業、および輸送におけ
る自然エネルギーの統合が喫緊かつ即刻対処するべ
き課題となっていることを示す。本報告書は、電力
網で高い割合の変動型自然エネルギーに対応するた
めの数々の選択肢を提示し、高価なエネルギー貯蔵
が必要とされるという神話を払拭している。また、
いくつかの電力界者が統合の発展に抵抗している一
方、他の多くの企業体が、統合の課題を解決するため
に積極的な取り組みの最前線にいることを指摘して
いる。
既存の建材や施工を考えると、建築物への統合はお
そらく最も困難ではあるが、多くの費用対効果の高
い機会が存在しており、低エネルギーまたはゼロエ
ネルギー建物が重要である。輸送に関しては、多く
の専門家によると、まだ多少の不確実性が指摘され
るが、先進バイオ燃料や自然エネルギー由来の充電
式電気自動車の形で統合することが鍵となる。これ
らの統合の機会と課題はこれまでに存在した価格や
費用に関する政策と並行して、産業部門ごとの統合
を支援する新たな手法の政策が必要とされているこ
とを指摘している。
統合を超えて、多くの専門家は自然エネルギーの長
期的な未来をエネルギーシステムにとっての“変革”
であると捉えている。たとえば、変動する供給と需
要が、集中型、分散型、マイクログリッドのレベルで
相互に作用することによって、電力はより柔軟で複
層的なものとなる。また輸送サービスははより多様
な乗り物や燃料によって提供され、今以上に細分化
された需要に対応するようになるだろう。自然エネ
ルギー統合型建物や建築資材が低エネルギー建物デ
ザインとあいまってどこででも見られるようになる
だろう。
今後自然エネルギーが直面する課題は基本的に技術
に関するものではないと多くの専門家が述べている。
経済性が障壁となるわけでもない、というのも数多
くの地域で“グリッドパリティ”や競争力を持たせる
他の手法が成立しているか、もうすぐ成立するから
である。このような見解は、自然エネルギーの将来
は技術や経済の動向によって与えられる当然の結論
ではなく、根本的には十分に成立しうる選択肢の一
つであることを示唆している。
─ 16 ─
米国においては、電力顧客の半数以上が電力小売供給者
から直接グリーン電力を購入する選択肢をもっている。2011
年に米国のグリーン電力市場は推計20%成長し、
代表的なグ
リーン電力の自主的購入の認証者であるGreen-e Energy
は27.8TWhを認証した53。2013年はじめまでに、環境保護
庁のグリーン・パワー・パートナーシップにおける最も規模の
大きい50の購入者(自治体や企業を含む)
は、多様な自然エ
ネルギー源から毎年17TWh以上を購入しており、17の参
加者はすべての電力需要を自然エネルギーでまかなってい
日本、南アフ
た54。グリーン電力市場はオーストラリア、カナダ、
リカにも存在する55。
50以上の主要な国際的企業が、2012末までにWindMade
ラベルを採用した56。このラベルは、
消費者が風力エネルギー
を利用した会社名および製品を識別しやすくするために
2011年に世界的にはじめられた。また、すべての自然エネル
ギーのための新たなラベルを開発する計画が2012年に発表
された57。2013年初頭、
欧州の環境NGOのネットワークが、
欧
州 全 体にグリーンラベル基 準を提 供 することを目指し
“EKOenergy”
を導入した58。
欧州、
インド、
米国、
他国における主要な産業および商業顧客
は、独自の自然エネルギーシステムの設置・稼働を続け、同
時にコミュニティが所有するプロジェクトや協同組合形式のプ
ロジェクトも2012年を通じて増加した59。この年は、遠隔地用
の小規模分散型の自然エネルギーシステムの設置だけでな
く、オンサイトで自分たちが使用する電力の一部を発電しよう
とする消費者のための系統連系型のシステムの拡大が見ら
れた。とくに欧州のいくつかの国において、ますます多くの消
費者が電力生産者になるにしたがい、一部の主要な電力会
社は市場シェアを失い、
現在のビジネスモデルにとっての試練
となっている60。
■ 熱 利用と冷 房 部 門 近代的バイオマス、太陽熱、地熱のエネルギーは、現在世界
中の数千万の家庭および商業施設に温水と暖房(ヒートポン
プ、吸収式冷凍機を利用した冷却も)を提供している。これ
らの資源は、産業プロセスおよび農業用途のための熱を供
給するためにも使用される。パッシブソーラー建築設計は相
当量の熱(と光)を供給しており、その数は増加しているが、
データ不足のためこの報告書で取り上げない。
近代的バイオマスは世界全体で、自然エネルギー熱利用の
大半を占める61。欧州は主要なバイオマス熱消費地域であ
るが、需要は他の場所でも上昇しており、より多くの発展途上
国においてバイオガスが調理用燃料のますます重要な供給
源になってきている62。
太陽熱集熱器は、
世界中の56以上の国で家庭、
学校、
病院、
ホテル、
政府および商業建築物の温水
(暖房も増加傾向にあ
る)に使用されている63。太陽熱温水器のコストがその製品
寿命において天然ガスや電気ヒーターよりも安価なため、中
国で使用が増加している64
地熱エネルギーは少なくとも78か国で、地域熱システム、浴用
や水泳プール、産業用途、農業用の乾燥、
その他使用を含む
直接熱利用のために使用されている65。地中熱ヒートポンプ
は冷暖房両方が可能であり、地熱直接利用の分野では最大
であり、
かつてないほどの急成長を見せている66。
熱利用と冷房のための自然エネルギー技術の使用は、
いまだ
そのポテンシャルに対して、世界的な需要を満たすためには
限定的である。しかし、その関心は高まっており、各国(とくに
EU)
では、自然エネルギー由来の熱の市場シェアの向上を目
指し、支援政策を制定し始めている。たとえば、自然エネル
ギーは、2012年にドイツの熱需要の10.4%(主にバイオマス
で)
を満たし、
デンマークは2013年以降、新築建物における化
石燃料ボイラーの使用を禁止している67。デンマーク、日本、
および英国を含むいくつかの国の消費者は今日、選択肢は
グリーン電力と比べると相対的に限られているものの、自主
的な購入プログラムを通じて
“グリーン熱”
を選択することがで
きる68。
熱利用(および冷房)部門の動向には、より大きなシステムの
使用、増加する熱電併給システム
(CHP)
の使用、地域熱供
給スキームへの自然エネルギー熱(冷房)の供給、成長する
自然エネルギー熱の産業用途の利用が含まれる。加えて、
い
くつかのEU加盟国は、太陽熱とバイオマスなどの他の熱源
を組合せるハイブリッドシステムの検討を始めている。いくつ
かの国では、変動型電源からの発電を調整するために地域
熱供給システム(しばしば、自然エネルギー源に基づく)を利
用している。たとえば、非常に風の強い日にはヒートポンプを
用いて、あるいは直接的に水を加温するために余剰電力を
使用している69。
─ 17 ─
第1章
ドイツは、世界のグリーン電力を先導する国の一つとなってい
る。その市場は2006年に80万の住宅用顧客から2011年に
は430万の住宅用顧客へと拡大し、ドイツのすべての一般家
庭のうち10%が13.1TWhの自然エネルギー電力を購入して
おり、商業用顧客も21TWhを超える購入をしている51。国内
市場での割合は、ドイツの水準を下回っているが、その他の
主要な欧州のグリーン電力市場としては、オーストリア、ベル
ギー(フランダース地方)
、フィンランド、イタリア、オランダ、ス
ウェーデン、
スイス、
イギリスが挙げられる52。
第 1 章 世界市場および産業の概要
■ 輸 送 部 門 自然エネルギーは、現在、液体およびガス体のバイオ燃料、電
車や電気自動車などための電力の形態で輸送分野におい
て利用されている。さらに自然エネルギーにより製造される水
素を用いて、燃料電池自動車の動力源となる潜在的な可能
性を持っている。
液体バイオ燃料は、現在、世界の輸送燃料の2.5%以上を供
給しており
(道路輸送燃料において3.4%、航空燃料において
は非常に小さいながらも増加している割合)
、自然エネルギー
源由来の輸送用燃料の最大の割合を占めている70。
限定的ではあるが、増加している気体バイオ燃料(主にバイ
オガスから精製されるバイオメタン)
は、いくつかのEU諸国(と
くにドイツ、スウェーデンで最も顕著)と北アメリカやその他の
地域のいくつかのコミュニティで自動車、ローカル電車、バス、
他の車両に使用されている71。中東、アジアを含め多くの国
で、バイオメタン生産と車両への燃料供給設備の開発のため
の計画が進められている72。
電気は電車、
都市交通、
増加している電気乗用車や、
電動サ
イクル、スクーター、モータバイクに使用される。限定されては
いるが自然エネルギー電気を電気輸送システムと結び付ける
取り組みが増えている。2013年初頭において、たとえば、
ドイ
ツ鉄道は、ドイツの長距離旅行の少なくとも75%に自然エネル
ギー電力を使用する計画を発表した73。とくに地方レベルに
おけるいくつかの地域において電気輸送が特定のプロジェク
トや政策を通じて自然エネルギー電力に直接的に結び付け
ている
(政策の展望の章を参照)。
補足2.注目地域:アフリカ
石油およびガス産業を長らく支持してきたアフリカ
は、今や、電気、熱、および輸送燃料を提供する自然エ
ネルギー資源のポテンシャルを持つ地域として広く
認識されている。南部と北部アフリカ* の広大な地
域は、現在、世界有数の太陽光資源を持っていること
が知られており、多くのアフリカ諸国は、発展途上国
の中でも最も高い風力や地熱エネルギーのポテン
シャルを持っている。いくつかの推計は、アフリカ
大陸の水力発電容量のわずか7%のみが実現されて
いることを示唆している。アフリカではすでに多く
の伝統的バイオマスが使われているが、同時にアフ
リカ諸国の多くで、より持続可能なバイオマスエネ
ルギーの実践と技術を採用する準備が整っている。
それにもかかわらず、アフリカの自然エネルギー市
場は、世界的には最も開発が進んでいないままと
なっている。近代的なエネルギーの利用規模は総エ
ネルギーの需要に対して小さいままであり、近代的
な自然エネルギー(大規模水力を除く)は通常独立
型で規模も小さい。
しかし、市場は急速に動いている。アフリカの自然
エネルギーポテンシャルへの意識の高まりとともに、
高い経済回復力、急速な成長、そしてより安定した政
府により、多様な組合せの大規模な自然エネルギー
の導入が加速されている。多くのアフリカ諸国は現
在、持続可能なマクロ経済の発展についてのより広
範なビジョンの一環として、自然エネルギーを小規
模の独立型システム(資金供与を受けた農村電化プ
ログラムの名残)から、商業規模のシステムやインフ
ラへと焦点を移している。
自然エネルギー市場は、追加発電容量(次の10年に年
平均約7GWを予想)の巨大な需要にけん引され、積極
的に対応してきた。北アフリカの風力発電市場は
2020年までに10 GWをゆうに超える目標をもち、ア
フリカ大陸をリードし続けている。ケニアがけん引
している東アフリカにおいては、地熱発電容量の大
幅な拡大が計画・開発のさまざまな段階にあり、一方、
あらゆる規模の水力発電容量が大陸全体で増加して
いる。南アフリカにおいては数年間の計画や規制改
革を経て、2013年に地域最初の系統接続型の5MW
かそれ以上の風力発電と太陽光発電プロジェクトの
建設が実現する。
自然エネルギーの熱市場は世界的には小さいままだ
が、サハラ以南のアフリカでは、アジア(中国を除く)、
米国、カナダなどの地域よりも、太陽熱による一人当
たりの家庭用給湯向けの熱生産量が多く、成長して
いる ※。いくつかのアフリカ諸国は積極的に地元の
バイオ燃料の生産を開始するか、または拡大し、多く
の場合外国投資に支えられている。
─ 18 ─
アフリカは外国の技術に大きく依存したままだが、
市場の発展は地元の産業の成長に拍車をかけている。
“周辺機器(BoS機器)”の現地製造体制が、いくつかの
発展したアフリカ諸国で着実に確立されている。有
望なことに、風力タービン、タワー、およびブレード、
ソーラーパネルやインバータなどのより複雑な品目
も、商業的にまたは将来の商業的製造のためのプロ
トタイプとして製造されている。技術革新は、アフ
リカ技術政策研究ネットワークのような域内の組織
に支援され、国家の経済戦略の中で強力に推進され
ている。
ルギーの成長が持つ潜在的な負の影響も強調されて
きた。政府と外国投資家による、自然エネルギー(と
くにバイオ燃料)のための土地の獲得の危険性を監
視機関が指摘し、地域社会の社会経済的繁栄への脅
威となるとしている。
それにもかかわらず、これまでにないレベルでの経
済成長とエネルギーインフラへの投資とともに、ア
フリカは現在、広く世界で最も有望な自然エネル
ギー市場の一つとして受け入れられている。
補足“注目地域”はGSR 2013から初めて登場した。今
国家の自然エネルギー戦略の導入が増えていること 後毎年、世界各地の開発や動向に焦点を当てる。
が、この初期の盛り上がりのための強力な触媒と
なっている。約20のアフリカ諸国は今、過去5年間の 出典:この章の巻末脚注14を参照
著しい増加を経て、正式な自然エネルギー政策を実
施しており、これらの国の多くは、意欲的な自然エネ
ルギー目標を持っている。(表参照R10-R12を参照)
EAC、ECOWAS、MENA、およびSADCなどの政府
内組織またはグループは、地域自然エネルギーセン
タ ー( 西 ア フ リ カ のECREEEや 北 ア フ リ カ の
RCREEEなど)を設立したり、加盟国で団結した自然
エネルギー開発の共有ビジョンを推進するための地
域戦略を開発してきた†。
アフリカ大陸は前例のない成長と頑強性を示してい
るが、ほとんどのアフリカ諸国は依然として国家予
算と計画戦略の大半を占めるような緊急で短期的な
社会経済的な課題に直面している。容量拡張のため
の資本投資はエネルギー需要からはるかに遅れてお
り、アフリカでの自然エネルギー投資は他の地域と
比較して低いままである。国際社会の否定的な認識
はいまだに残っている。アフリカにおいて活発な投
資を行う外国企業は、投資対象としてこの大陸の可
能性に肯定的であるが、地域においてプレゼンスの
ない企業は圧倒的に否定的なままである。自然エネ
* REN21 が最近発行した MENA 地域自然エネルギー白書は、中東 · 北アフリカ地域での自然エネルギーに焦点をあてている。この報告書は REN21 ウェブサイト www.
ren21.net からアクセスすることができる。
※ 2010 年の運転中のガラス管式集熱器(平板型集熱器および真空管型集熱器)の年間生産量に基づく。この補足の巻末注を参照
† EAC は、
the East African Community(東アフリカ共同体)である。ECOWAS は、
the Economic Community of West African States(西アフリカ諸国経済共同体)である。
MENA は中東 · 北アフリカである。正式な組織ではなく、地理的な国々のグループである、SADC は、the Southern African Development Community(南部アフリカ開発
共同体)である。ECREEE は、the ECOWAS Centre for Renewable Energy and Energy Efficiency(西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)自然エネルギーとエネルギー
効率化のための地域センター)である。RCREEE は、the Regional Center for Renewable Energy and Energy Efficiency(自然エネルギーとエネルギー効率化のための地
域センター)である。
─ 19 ─
第1章
急増するエネルギー需要に対応するためには、今後
10年間にわたってエネルギーインフラに大陸のGDP
の6%以上(または年に約 410億ドル)に等しい膨大な
投資が必要になる。外国直接投資は、この投資ギャッ
プを埋めるために重要であり、中国がエチオピア、ナ
イジェリア、スーダン、ザンビアにおける大型水力発
電プロジェクト、ケニアでの地熱開発に資金を提供
し、支配的な役割を果たしてきた。中国の企業や投
資家は、アフリカでの風力や太陽光開発でも活躍し
ている。
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
2012年における世界のバイオ燃料はいくつかの国で
は生産量が増加したが、世界全体の生産量はわずか
に減少した。他の自然エネルギー市場は拡大しつづ
けている。2012年は多くの製造者と従来の市場に
とって厳しい年になったが、設備設置者と消費者に
は低コストの恩恵をもたらした年となった。
バイオマスエネルギー 近代的なエネルギーサービスを提供するためのバイオ
マス利用は、建築、製造業や運輸の最終用途部門にお
いて近年増加しつづけている。バイオマスは、食糧や
繊維、家畜の飼料などの原料および材料や化学製品の
供給原料となっている。加えて、バイオマスは世界に
おける一次エネルギー供給の10%以上を占め、世界で
4番目に主要なエネルギー供給源である(石油、石炭、
天然ガスに次ぐ)1。
エネルギー目的で使用されるバイオマスはいくつかの原
材料から得られる。森林、木材加工、食用作物からの残
渣が主要なものである。現在、農地で生産されたエネル
ギー目的の短期輪作型エネルギー作物は、毎年消費され
るバイオマス資源全体の約3〜4%分を供給している2。バ
イオマスエネルギー作物に使われている農地の合計は、
データ間の大きなずれにより、正確に数値化をするのが
難しい。さらに、いくつかのエネルギー作物は非エネル
ギー利用の作物と競合して栽培されている3。たとえば、
サトウキビのエタノール生産量は砂糖の市場価格により
変動し、パーム油の場合は総生産量のうち15%しかバイ
オディーゼルに使用されていない4。
バイオマスの供給原料の生産やその有用なエネルギー
への転換は、他の自然エネルギー源と同じように、様々
な要因により異なる環境影響や社会経済的影響を及ぼ
す。土地利用の変化、原料競争、貿易の規制やトウモ
ロコシのような食用作物からのバイオ燃料生産の影響
などと結びついたバイオマス生産の持続可能性につい
ては、依然として調査が続いており、将来のエネルギー
需要に影響する可能性を持つ5。たとえば米国における
エタノール生産では、毎年世界で生産されているトウ
モロコシの約10%を消費し、その食糧供給への影響に
関する問題が取り上げられている6。
多様な資源が存在し、固体や液体、気体などの様々な
バイオエネルギー担体があり、有用なエネルギーサー
ビスへと転換する複数の利用可能な方法が存在するた
め、バイオエネルギー分野は比較的複雑である。バイ
オマス市場は、多くの場合非公式の組織に頼っている
ため、公式のデータおよび傾向の追跡が困難である。
さらに、国のデータ収集は多様な機関により行われる
が、かならずしもよく調整されているわけではなく、
しばしば矛盾の多い報告がなされる。そのため、国内
および世界的なバイオマス利用とバイオエネルギーの
需要に関するデータ測定は比較的困難であり、その結
果相対的に不確実と言える。
バイオエネルギー市場
バイオマスから供給される総一次エネルギー量は2012
年に2 ~ 3%増加し、約55EJに達した(図5を参照)7。
熱利用は、バイオマス利用の大半(46EJ)を占め、発
近代的バイオマス
業
産
オ
物
築
建
イ
販売またはオンサイト
で利用される熱
ロス
世界の年間
バイオマス
一次需要
55EJ
バ
電
気
燃
料
図5.
バイオマスをエネルギー源へ
伝統的バイオマス
エンドユーザーにおけるロス
調理・熱利用
出典:本章の巻末注7を参照
─ 20 ─
図6.
木質ペレットの国別、地域別世界生産量(2000年∼2012年)
100万トン
合計
2240 万トン
世界のその他地域
20
アジアのその他地域
中国
ロシア
米国とカナダ
15
EU27か国
10
5
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
出典:本章の巻末注16を参照
展途上国における調理や家庭内暖房、温水利用のため
の、近代的バイオマス利用や動物の排泄物、薪、木炭
の伝統的かつ非効率的な利用を含む8。約4.5EJの一次
エネルギーに相当するバイオマスが発電で消費され、
バイオ燃料の総量と同程度であった9。
伝統的なバイオマス暖房は、2012年における世界全体
の一次エネルギー需要の6 ~ 7%と推計されている(農
村地域の自然エネルギーの章を参照)10。この節では、
暖房、電気、運輸部門において有用なエネルギーサー
ビスを提供するための、幅広いエネルギー担体(固体、
液体および気体燃料)などの近代的バイオマスエネル
ギー利用方法に焦点を当てる。2012年の近代的バイオ
マス消費量は世界全体の一次エネルギーの3 ~ 4%、
およそ18.5EJのエネルギー量であると推定される。
2011年と比較すると、建築や産業分野におけるバイオ
マス熱生産量は1 ~ 2%増加しており、熱電併給プラ
ント(CHP)(コージェネレーション)での発電量を
含むバイオマス発電量は推計4%増で、バイオ燃料の
生産量は約1%減少した11。
需要量以上のバイオマスを供給している地域もあるが、
バイオマスエネルギーの需要増加に対し、いくつかの
地域では利用可能なバイオマス原料の供給が不足して
いる12。こうした状況のもとで、固体および液体のバイ
オマス燃料の国際貿易が加速し、国内と国際取引の両
方を促進するいくつかのバイオマス取引体制の確立に
向かっている13。主に局所的に取引されているのはバイ
オメタン、薪、木炭、バイオブリケット、農業残渣であ
2007
2008
2009
2010
2011
2012
(予測値)
り、国内および国際の双方で取引されているのは木質ペ
レット、木質チップ、バイオディーゼルやエタノールで
ある14。固体のバイオマス燃料(木炭を除く)のエネル
ギー容量は、バイオ燃料の純貿易量の約2倍であった15。
より小さく、エネルギー密度の高い木質ペレットは世
界全体の固体バイオマス需要の1〜2%にすぎないが、
近年急速な成長を遂げ、固体バイオマスの貿易に占め
る割合が拡大した。2012年には世界全体での木質ペ
レットの生産量と輸送量(道路、鉄道、船による)が
16
2200万トンを超えた(図6を参照)
。木質ペレットはよ
り高いエネルギー密度と低い水分含有量を備えている
ため、需要は増加しつづけるはずである。さらに取扱
いの容易さや使い勝手の良さ、石炭火力発電での混焼
への適合性、また小型熱生産装置の自動制御オプショ
ンを選択できることにも起因する17。生産されたペレッ
トの約3分の2は小型熱生産装置で利用され、3分の1は
巨大発電施設で利用されている18。
2012年には、約820万トンのペレットが国際的に取引
された19。そのうち320万トン(40%)以上は北米から
欧州に輸送され、2011年比で50%以上近く増加した20。
この増加は、ティルバリー社の750MWのバイオマス
発電所と4GWの石灰火力発電所(その半数は毎年750
万トンの木質ペレットを燃焼させるために改造されて
いるところである。)への供給により、英国でペレッ
ト消費量が増加したことに起因する21。木質ペレット
の需要が促進されることを予期して、すでに欧州で最
大のペレット取扱い市場である英国のタイン港は、貿
易規模と貯蔵施設の拡大をしており、さらに鉄道路線
─ 21 ─
第2章
2000
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
拡張のために300万米ドルをつぎ込んでいる22。
ペレットの消費量は、他の地域でも増加している。た
とえば韓国では、2013年初めの時点で新たに8つのペ
レット製造工場が新たに建設中であった。さらに、
2012年に定められた電力需要の2%を自然エネルギー
で発電するという義務を達成するために、2020年まで
毎年ペレットをさらに500万トン輸入する計画もされ
ている23。
木質ペレットに加えて、バイオディーゼルとエタノー
ルは国際的に取引されている主要な燃料である。バイ
オ燃料は、熱利用や発電にも使用されるが、主に輸送
用燃料として用いられている。2012年における2つの
出来事は、液体バイオ燃料の貿易に大きな影響を与え
ている。米国中西部では間伐によりトウモロコシの収
穫量が減少した。また砂糖の商品価格が低下したこと
で、ブラジルではエタノールの生産量が増加した24。
したがって、2012年の8月、米国は2010年から現在ま
でにおいて初めてエタノールの純輸入国となった(主
な輸入先はブラジル)25。
バイオマスエネルギーにおける主要な市場は多様であ
り、それらは燃料の種類に応じて異なる。これまで、
ペレット市場は主に北米、ロシア、欧州(主要消費者)
に 限 ら れ て い た26。欧州もまたバイオガスやバイオ
ディーゼルの巨大市場である27。2012年におけるエタ
ノール消費量の最も多い国は北米に続いて南米であっ
た 28。しかしながら、バイオエネルギーのあらゆる形
態の生産と消費は、アジアの急激な需要増加に伴い、
新たな地域に拡大してきている。
バイオマス熱利用および冷房市場
固体、液体、および気体のバイオマス燃料の燃焼は、
産業または農業プロセス、乾燥、地域熱供給システム、
給湯、および個々の建物の暖房利用など、幅広い温度
範囲にわたって、さまざまな規模で熱を供給すること
ができる。2012年には、約3GWの新たな近代的バイオ
マス熱利用設備が稼動し、世界全体で約293GWとなっ
た29。国内の暖炉、ガス化炉(<100kW)、ペレットストー
ブ(<500kW)、小規模ボイラー(<1MW)や工業用・
地域熱供給用(1MW以上、通常は50MWまたはそれ
以上)に使用する大規模ボイラーを含むバイオマス機
器の販売は、2012年に熱需要が増加したため成長しつ
づけた。しかし、正確な数値は得られていない。
欧州はバイオマス熱の主要消費者であり、スウェーデ
ン、フィンランド、オーストリア、デンマークやドイ
ツは欧州の五大消費者である。2011年の暖冬には、固
形バイオマスの需要が8%減少して、約2.9EJとなった、
欧州での需要は2012年に再び増加した30。スウェーデ
ンのバイオマスエネルギーの全体の需要は10%増加し
て、約140TWh(熱、電力およびコージェネレーション)
となり、2013年のはじめにはスウェーデンの地域熱供
給施設における燃料需要の70%をバイオマスでまかな
い、さらに国内の10万以上のペレットバーナーに燃料
を供給した31。主に森林残渣を燃料として利用してい
るドイツでは、熱プラントの設備容量を50MW増やし
て650MWとなり、コージェネレーションによりおよ
そ300GJの熱と4.5TWhの電力を生産した32。
バイオマス熱需要は他の地域でも着実に増加してい
る。フィリピンのバターンでは、新しい12 MWの蒸気
ボイラーが、地域の熱需要を供給するために建設され
た。欧州の多くの地域や、米国内でも増えつつあるよ
うに、バターンでもバイオディーゼルを使用し、暖房
用の灯油の転換を行っている33。加えて、いくつかの
地域では伝統的な固形バイオマスや木炭に代えて調理
用の燃料としてエタノールを使用している。
また、熱生産の際にバイオガスを利用することが増え
ている。先進国では、主にコージェネレーション設備
でバイオガスが使用されており、熱生産専用施設と比
べて少量で済む。中国やインド、ネパールをはじめと
した発展途上国では、調理で使うバイオマス熱を供給
するために家庭用の小型発酵槽から直接燃焼させてい
る(農村地域の自然エネルギーの項を参照)。中国には、
およそ430万基の家庭用バイオガス発酵槽があり、中
型から大型のバイオガス発酵槽(>50㎥)の数は2006
年には1万基から、2011年には8万基に増加した34。
他の発展途上国では、熱利用目的のためにバイオガス
を使用し始めている。ルワンダでは、運転中の90万㎥
のバイオガス発酵槽が6つの刑務所内にあり(それぞ
れ約5,000人収容)、人間やその他の廃棄物を1日あたり
薪10トン分の調理用バイオガスに変換している35。
バイオマス熱を利用し、(太陽熱と組合せた吸収式冷
凍機と同様の方法で)冷凍サイクルを駆動する冷却シ
ステムは初期段階にとどまっており、いくつかの実証
試験施設が存在するのみである36。
バイオマス発電の市場
2012年末までに世界のバイオマス発電容量は、BRICS
のいくつかの地域で著しい需要増加が起こったため、
2011年から12%増加して83GWに達した37。前年比5%
以上の約350TWhの電力が、全世界で発電された38。
2010年から2012年にかけてのバイオマス発電の発電量
の平均値では、米国が大きく先行しており、続いてド
イツが2位、急速に市場を広げているブラジルと中国
がそのすぐ後を追っている(図7を参照)39。
商業用バイオマス発電システムの主な種類は、中規模
から大規模の直接燃焼(ほとんどの石炭とガス火力発
電所に類似している)、混焼、ガス化装置、および小
規模なモジュラーシステムがある。合計すると、それ
らは世界の総発電量の約1.4%を生産している(41%の
石炭と比較)40。
バイオマス発電のほぼ90%が固形バイオマス燃料を使
用して発電される41。埋立地ガス、バイオガス、合成
ガス(また、シンガスとしても知られる)、および液
─ 22 ─
バイオマスエネルギー
図7.
バイオマス発電量の上位20か国の年平均成長率
(2010年∼2012年)
62
米国
ドイツ
ブラジル
中国
22
日本
13
12
11
10
7.7
7.1
5.3
5.2
4.9
4.6
4.5
4.3
3.4
3.2
3.0
スウェーデン
英国
フィンランド
イタリア
カナダ
オランダ
ポーランド
デンマーク
オーストリア
ベルギー
フランス
スペイン
インド
タイ
ポルトガル
10
0
20
27
37
36
30
40
50
60
70
TWh/年
出典:本章の巻末注39を参照
図8.
エタノールおよびバイオディーゼルの生産量(2000年∼2012年)
10億リットル
120
100
85
エタノール
66
バイオディーゼル
合計
60
22.4
22.5
2011
2012
73.2
49.5
39.2
40
20
83.1
21.0 24.2
17.0 19.0
0.8
1.0
1.4
1.9
28.5 31.1
2.4
3.8
6.5
10.5
15.6 17.8 18.5
0
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
出典:本章の巻末注58を参照
─ 23 ─
2009
2010
第2章
80
84.2
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
体バイオ燃料などもバイオマス発電に一般に使われて
おり、残りの10%を占める。
米国では、2012年に100のバイオマス発電プロジェク
ト(543MW)が開始され、合計15GWとなった。これ
は世界全体のおよそ18%にあたる42。純バイオマス発
電量は2011年の60.5TWhから、2012年に65.0TWhまで
増加した43。南米では、ブラジルでバイオマス発電容
量が2012年に8%増加して、9.6GWに達し、約40TWh
の発電量に上昇した44。
欧州では、バイオマス発電容量は2012年にほぼ2%増
加して31.4GWとなり、約136TWhを発電した45。この
合計のうち、35.9TWhがコージェネレーションのバイ
オガスにより生産され、18.2TWhは再生可能な都市固
形廃棄物により生産された46。
欧州のバイオマス発電の中心地であるドイツは、発電
量を11%増加させ合計41TWhとし、その半分はバイ
オガス発電所によるものである。バイオマス発電の合
計は、0.3GW(ほとんどがコージェネレーションのバ
イオガス)増加して7.6GW以上となったが、2012年に
おける新設はこれまでより鈍化している47。ドイツの
コージェネレーションプラントは、2012年に31〜36PJ
の熱と20.5TWhの電力を生産し(2011年の17.5TWhか
ら増加)、合計では欧州のバイオガスによる総発電量
のおよそ半分に相当する48。
アジアでは、中国が2012年末までに約14%発電設備容
量を増加させ合計8GW、発電量が21%増え36TWhま
で到達した49。日本の発電容量は3.3GWのままだが、
発電量は8%減で17.2TWhまで低下した50。インドは発
電用の小型ガス化装置の設備容量で世界をけん引し、
155MW超の設備容量を保持している。2012年末、イ
ンドでは約1.3GWの固形バイオマス発電と一般廃棄物
発電と、2.7GWのコージェネレーション設備容量を保
有している51。
固体バイオマス燃料やバイオガス/埋立地ガスとの混
焼を可能にするために、既存の商業用石炭火力発電所
と天然ガス火力発電所の改造が続けられた。バイオマ
スの使用量はすべてのプラントで日ごとに変化し、
データを得ることは難しい。およそ230の混焼プラン
トは、年度末に稼働中または建設計画がなされ、主に
北欧、米国、アジアやオーストラリアに設置される52。
ブラジルなどのサトウキビの主要生産国は、バガス(サ
トウキビの搾りかす)を使い熱と電力を合わせて生産
している53。また系統接続型のバガスコージェネレー
ション設備は、モーリシャス、タンザニア、ウガンダ
やジンバブエに存在し、有機性廃棄物を熱や電力に変
換するコミュニティ規模のバイオガスプラントはハラ
レに建設されている54。アフリカのケニアを含むいく
つかの地域では、同様の設備建設を予定している55。
運輸部門におけるバイオ燃料の市場
液体バイオ燃料による世界の交通燃料需要への寄与は
小規模ながらも増加しており、今や世界の道路輸送用
燃料需要の約3%を供給している。それらは、航空・
海洋分野においても使用量が微増している56。いくつ
かの地域では、バイオ燃料に関する市場の成長、投資、
新しい設備建設が鈍化していて、その原因は多くある。
比較的低い利益、一次産品価格の急騰、政策の不確実
性、原料競争の激化、干ばつによる農作物生産への影
響、土地や水資源に関する食糧生産との競争の懸念や、
生産に対する持続可能性への懸念の拡大も含まれる57。
たとえそうであっても、バイオ燃料混合義務付けが需
要を牽引しつづけている(政策の展望を参照)。
2012年における燃料用エタノールの世界生産は、2011
年から体積換算で1.3%減少して推定831億リットルで
あった。これは、バイオディーゼル生産の微増により
一部相殺された(図8を参照)58。米国を除くと、世界の
エタノール生産は4%以上上昇した。米国では、年半
ばの干ばつにより一部のトウモロコシの価格が高く
なったためエタノール生産は前年比4%減少して504億
リットルまで下落した。これとは対照的に、ブラジル
の生産は3%増で216億リットルまで増加したが、新し
いサトウキビエタノール工場への投資は近年に比べて
非常に低かった59。総合的には、米国は世界のエタノー
ル生産の61%(2011年は63%)を占め、ブラジルは
26%(2011年は24%)を占めている60。
2011年と同様、中国、カナダ、フランスはバイオエタ
ノール主要生産国と見なされているが、米国とブラジ
ルに比べると非常に少ない生産量であった。スウェー
デンでは、約20万台のフレックス燃料車(訳注:ガソ
リンとエタノール燃料をどの比率でも混合して使用で
きる自動車)が地元で生産されたエタノールと輸入さ
れたエタノールを高い配合率(最大E85)で燃料とし
て利用しており、需要が増え続けている61。
2012年のエタノールの世界の平均価格は、約0.85米ドル
/リットル(ガソリン換算1.20米ドル/リットル)であり、
2006年の約0.41米ドル/リットルから着実に上昇した。
米国国内の価格は2011年の約0.60米ドル/リットルから
2012年の0.55米ドル/リットルにまで下落したが、年半
ばの干ばつにより2011年の価格まで戻った62。バイオ
ディーゼルの世界の平均価格はガソリン換算でリット
ル当たり約1.55米ドルであり、過去5年間の1リットル当
たり0.90米ドルから1.50米ドルよりも高くなった63。
世界のバイオディーゼル生産量は増加しつづけている
が、その伸び具合はここ数年に比べてはるかに小さく、
2011年が224億リットルに対して2012年は225億リット
ルであった64。前述の通り米国が世界の主要生産国で
あり、アルゼンチン、ドイツ、ブラジル、フランスと
続く(ドイツとブラジルの生産量はほぼ等しい) 65。
米国のバイオディーゼル工場は、2011年から微増では
あったが2012年に36億リットルの生産を行い、米国環
─ 24 ─
境保護庁により策定された連邦の再生可能燃料基準
(RFS)の目標に近づいた。この基準は、2013年のディー
ゼル燃料市場に対し48億リットル(12.8億ガロン)の
バイオディーゼルを供給するよう要求している66。
欧州は、ドイツを筆頭に世界のバイオディーゼル生産
の41%を占め、2012年に推定27億リットルを生産した
67
(2011年と比較して14%減少)
。生産量に関しては、欧
州地域全体としては7%減少し、とくにスペイン(−
32%)、ポルトガル(−14%)、イタリア(−44%)の国々
では生産能力が減少した。しかしながら、その中でも
フ ラ ン ス(18%)、 ポ ー ラ ン ド(63%)、 英 国(53%)
の生産は増加した68。
去した後のバイオガス)は、欧州において車両用燃料
として広く用いられている。たとえば、ドイツでは
2012年に天然ガスに対するバイオメタンの割合は6%
から15%以上に増加し、さらに100%バイオメタンの販
売を行う給油所が35か所から119か所まで3倍に増加し
た 82。さらにまた、ドイツの天然ガス自動車の総利用
数の10%が、圧縮天然ガスメタンの代わりに圧縮バイ
オメタン燃料を利用している83。スウェーデンでは、
2012年の10月よりストックホルム市議会の800台ある
車両のうち50%がバイオメタンで動いている84。
バイオエネルギー産業
固形バイオマス産業では、木質ペレットの生産がこの
バイオエネルギー産業は多岐にわたる。すなわちバイ
大豆油(77〜82%)、牛脂(13〜17%)や綿実油(2%) オマス供給者、処理業者、バイオマスを最終消費者ま
からの年間総バイオディーゼル生産量は27億リットル
で届ける配送業、メーカーやバイオマスの収穫、出荷
で堅調に推移している69。アルゼンチンは、米国、ド
や保管用の機器の専門的供給業者、電化製品のメー
イツ、ブラジルに続く4番手を維持している70。ラテン
カーやバイオマス燃料を利用可能な形あるいはエネル
アメリカの他の地域では、3か所のジャトロファ農園
ギーサービスに変換するプラントなどを含む。サプラ
がメキシコで開催された持続可能なバイオ燃料の円卓
イチェーンの一部ではバイオマス専用ではない技術
会議で認定され、ジャトロファ油を利用した小規模の (たとえば飼料作物と木の収穫機、トラック、蒸気ボ
バイオディーゼル設備がキューバに建設された71。
イラーなど)を使用する。
バイオマス原料から複数の製品を生産し、温室効果ガ
スを削減しながら価値を最大化し、収益性を高めるこ
とができるため、バイオリファイナリー産業は成長を
つづけている。米国では、2012年時点で210か所のバ
イオリファイナリー施設(2011年から4つ減少)が稼
働しており、家畜の飼料、高果糖シロップ、クエン酸、
乳酸、およびリジンを含む副産物を生産していた85。
固形バイオマス産業
2012年には多くの企業が、バイオマスから熱と電気を
供給するバイオマスエネルギープラントに積極的に乗
り出していた。欧州では、たとえばフィンランドの
2012年には、米国のリグノセルロース系原料からの先
進的バイオ燃料の生産が200万リットルに達したため、
2013年には軍からの需要の増加に伴い3600万リットル
が生産されると予想された78。しかしながら、これら
の容量はRFSのもとで米国が定めた目標のごく一部に
過ぎない(RFSは結果的に事実上放棄された)79。中国
もまたトウモロコシの穂軸から約300万リットルのエタ
ノールを生産し、ガソリンと混合利用するなど、2012
年には先進的バイオ燃料技術を導入し、発展した80。欧
州は、稼働中の実証プラントが複数あるが、これまで
それぞれ少量しか生産していない81。
現在、バイオメタン(二酸化炭素および硫化水素を除
─ 25 ─
第2章
中国のバイオ燃料生産は、エタノールが約21億リット
ル、バイオディーゼルが2億リットルのまま変わらな
かった72。タイではエタノールとバイオディーゼルの
生 産 量 が 全 体 で2011年 よ り も40%以 上 増 加 し、16億
リットルとなった73。インドでは2012年の総バイオ燃
料生産においてイタリアを抜き、エタノールの生産量
は25%の5億リットルまで増加した74。
地域別では、北米がエタノールの生産、欧州ではバイ
オディーゼルの生産でリードしつづけた。しかし、エ
タノールとバイオディーゼルの両方の生産はアフリカ
で急速に増加している75。アフリカのバイオ燃料生産
はまだ非常に限定的ではあるが、市場は徐々に拡大し
ており、エタノール生産量は2011年に2.7億リットル
だったが、2012年には推定3億リットルにまで増加し
た 76。たとえば、ザンビアでは大幅に燃料が入手しや
すくなったことにより、2011年に生産されたジャトロ
ファ・バイオディーゼル20万リットルが、2012年には
3倍以上になるだろうと見込まれていた77。
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
Metso社が石油の代わりに地域熱供給を行う8MWのバ
イ オ マ ス 熱 プ ラ ン ト を い く つ か 設 置 し、 さ ら に ス
ウェーデンのバーナモにも13.4MWの熱プラントを開
発した86。英国では、2013年始めにEtsover Energy社
が総計52MWのバイオマスコージェネレーションプラ
ントを3つ開発した87。そして、スウェーデンでは27万
トンの乾燥森林残渣を利用して約2.59PJのエネルギー
容量に相当する年間約16万トンの分解熱油を生産する
Pyrogrot実証プラントプロジェクトが完了した88。
日本のJFEエンジニアリング株式会社では、2011年に
新たに導入された固定価格買取制度(FIT)の影響も
あり、2012年に木材や乾燥させた下水汚泥、一般廃棄
物の原料を利用したバイオマス発電所の設計、構成、
および運営などの注文が倍増した89。
米国では、Amite BioEnergy社(ミシシッピ州)と
Morehouse BioEergy社(ルイジアナ州)が持続的に
管理された森林からのバイオマスを利用した木材ペ
レットを合計で年間90万トン生産した90。テキサス州
のSouthern Company社は100MWのナコドチェスプラ
ントの商業運転を開始し、米国最大のバイオマス専用
施設になりつつある。Austin Energy社との20年契約
があるにもかかわらず、現在そのプラントは安い天然
ガス火力発電所と競合するため一時的に運転を停止し
ており、つねに稼働しているわけではない91。
低温炭化技術は実証段階から商業規模に進展してい
る。 多 く の 小 さ な バ ッ チ 規 模 の 開 発 者 の 他 に、
Andritz社(オーストラリア)、Thermya/Areva社(フ
ランス)Rotawave社(英国)、SunCoal社(ドイツ)、
AVA-CO2社(スイス)、New Biomass Energy(米国)
などを含む大企業は、効率的な連続製造プロセスの使
用を目指している。現在、業界はまだ初期段階であり、
低温炭化バイオマスにおける世界の総生産能力は、多
く見ても年間20万トン以下である。この材料は従来の
木質ペレットに比べて利点があるとされているが、さ
らなる大幅な進歩のためには、欧州の一部の発電所で
見られる成果不足を克服する必要がある92。国際バイ
オマス低温炭化協議会は技術を促進するため2012年12
月に設立された93。
バイオガス産業
農場用とコミュニティ規模用のバイオガス設備は製造
され続けており、湿潤バイオマス系廃棄物の処理のた
めに導入されている。約1万2000件のプラント(主に
コージェネレーション)が2011年段階で欧州12か国で
稼働している94。加えて、欧州で運営されている2250
か所の下水汚泥施設の約2%は、自動車燃料用か天然ガ
ス網供給用の高性能なバイオメタンへとバイオガスを
改質している95。2012年12月、アムステルダムの港が
燃料補充のための新たな設備を稼動させ、そこでは
BioGast社製の技術を使い下水汚泥から得られるバイ
オガスの性質を向上させた96。
欧州やその他の地域の企業では、各自の廃棄物から
エネルギーを生成するための革新的な方法を模索し
ている。たとえば、2012年にフランスの多国籍小売
業者は、店舗から発生する有機性廃棄物からバイオ
メタンを生産し、トラックに燃料を供給する計画を
発表した。スウェーデンの工場では、大型車の代替燃
料として、液化ガス(地元の食品廃棄物から)を世
界で初めて生産した97。
液体バイオ燃料産業
世界で稼動しているおよそ650か所のプラントの年間
総生産能力は約100億リットルであるが、多くの設備
では実際の生産量が想定された生産能力を下回り、他
の設備は需要の変動や製品の環境の持続可能性への懸
念のために閉鎖している。米国の工場の総生産能力は、
いくつかの一時的な閉鎖があったにもかかわらず、
2012年は年間52億リットルで推移している98。世界で
は、続々と新しいエタノールプラントが開設し、2013
年の1月にGreen Future Innovation社のプラントが
フィリピンで、年間5400万リットルの生産を始めた99。
もっぱら地域や個人の車両用に使用するために、廃食
用油などからバイオディーゼルを生成するような小規
模プラントが数多くあることから、稼働中のバイオ
ディーゼル施設の正確な総数を算定することは非常に
難しい。バイオディーゼルの需要が増加するにつれて、
新 し い 施 設 が 世 界 中 で 開 設 し て い る。 た と え ば、
Cargill社(米国)はブラジルで初めて大豆油を使用し
た バ イ オ デ ィ ー ゼ ル プ ラ ン ト を 依 頼 さ れ、Lignol
Energy社(カナダ)はオーストラリアのダーウィンに
ある年間1.5億リットル生産するバイオディーゼルプラ
ントを再稼働させるために、120万米ドルを投資した100。
米国における80社の先進的なバイオ燃料企業(うち30
社がカリフォルニアにあった)の2012年の総生産量は
比較的小さかった101。いくつかの企業は商業生産が近
いと主張している102。2012年12月、KiOR社(米国)は、
1日当たり500トン生産するミシシッピ州の新しい施設
においてセルロース系原料の熱分解から生成した約
3800リットルのバイオ燃料を販売した103。
欧州では、「持続可能なバイオ燃料の先導者(Leaders
of Sustainable Biofuels)」という団体が、先進的バイ
オ燃料の商業開発を支援するために設立された104。オー
ストラリアでは、リグノセルロースや藻類を用いた2
つの先進バイオ燃料の実証プラントが2013年初めの時
点でほぼ商業規模に拡大されていた105。
低迷している側では、酵素による加水分解プロセスを
使用した初期の先進バイオ燃料企業の一つである
IOGEN Energy社(カナダ)が、近年の所有者であ
るShell Oil社と、マニトバ州の商業規模のセルロース
系エタノール工場開発計画を白紙にした106。さらに、
2013年初めに米国の控訴裁判所がEPAに対して2012年
のセルロース系エタノールの予測量を改めて修正する
必要があると定め、2013年の基準値に疑問を残したこ
とで、米国の先進バイオ燃料生産者も後退を余儀なく
─ 26 ─
航空業界は藻類から製造されたものなど、先進バイオ
燃料の採用の増加を詳細に評価しつづけている。彼ら
の関心は従来の石油燃料への依存度の高さに由来して
おり、長期的な供給の不確かさおよび他の適切な燃料
の選択肢がないことなどが懸念材料として含まれる。
Boeing社、Airbus社、Embraer社は2012年にバイオ燃
料の団体と恊働し、SkyNRG社は食用油から前処理さ
れたバイオ燃料を買い始め、それらを航空機用の品質
を備えた燃料に精製している108。
地熱エネルギー 地熱発電
地熱エネルギー資源は、直接熱利用と電力供給という
か た ち で 利 用 さ れ、2012年 の 総 供 給 量 は805PJ
(223TWh)と推計された。そのうち3分の2は熱として、
残りの3分の1は電気として供給された。
地熱の直接熱利用は2012年を通じて世界的に増加し
た。直接熱利用とは温熱と冷熱用途に直接的に熱を取
り出すことを意味する。直接熱利用の具体的な利用方
法の一つは、地中熱ヒートポンプであり、消費する電
力エネルギーの数倍に相当する熱エネルギーを地面か
ら取り出すために電力を使用する。
地熱エネルギーの直接利用についての近年の成長に関
する入手可能なデータは限定的であるが、出力は2005
年から2010年にかけて年平均10%の成長をしたことが
知られており、その成長の多くが年平均20%の成長を
遂げた地中熱ヒートポンプに起因するものである。こ
れ ら の 成 長 率 が 過 去2年 も 継 続 し た と 仮 定 す る と、
2012年には世界の地熱熱利用設備容量が66GWthに到
達したと推計され、熱にして548PJを供給した1。
地中熱ヒートポンプは、地熱エネルギーの直接熱利用
において最大かつ歴史的に最も急速に成長した分野で
あり、2012年には設備容量が推計50GWthに達した。
これは地熱エネルギーの推計設備容量全体の約4分の3
に当たり、熱生産量の半分以上(>300PJ)となる*。
直接熱利用の残り(半分近く)は、入浴とプール関係
への利用が最も多く、他には暖房(主として地域熱供
給)、産業目的、養殖池の加熱、農業での乾燥、融雪、
その他の利用がある2。
2013年には少なくとも78か国が地熱直接利用を使用し
た3。米国、中国、ドイツ、そして日本が地中熱の暖房
利用設備の設備容量の大部分を持っており、合わせて
世界の総設備容量の約3分の2を占めている4。中国が直
接熱利用の暫定的な首位(2010年に21TWh)にとど
まり、米国(2012年に18.8TWh)、スウェーデン(2010
年に13.8TWh)、トルコ(2010年に10.2TWh)、アイス
ランド(2012年に7.2TWh)、日本(2010年に7.1TWh)
が後に続く5。アイスランド、スウェーデン、ノルウェー、
ニュージーランド、デンマークは一人当たりの年間地
熱エネルギー利用で先行している6。アイスランドの熱
需要の約90%は地熱資源により供給されている7。
地中熱ヒートポンプは温熱と冷熱を生み出すことがで
き、熱電併給(コージェネレーション)プラントと組
み合わせて使用される8。世界全体で導入済みの地中熱
ヒートポンプの設備容量は2005年から2010年にかけて
2倍となり、こうした成長は以降の年も続くと見られ
て い る9。EUでは地中熱ヒートポンプの設備容量が
2010年と2011年の間に10%上昇して総計14GWthとな
り、スウェーデン(4.3GWth)、ドイツ(3GWth)、フ
ランス(1.8GWth)、フィンランド(1.4GWth)が中
心であった10。カナダは2013年前半までに10万基の稼
動中の設備を保有しており、米国は年約5万基を追加
している11。2012年にインディアナ州のBall State大学
が米国で47のビルに冷温熱を送る最大の循環型地中熱
地域熱供給システムを導入した12。
高温ないし中程度の温度の蒸気を運動エネルギーに変
換 し て 発 電 す る 地 熱 発 電 は、2012年 に 少 な く と も
72TWhに達したと推計されている13。世界全体の地熱
発電容量は、米国(147MW)、インドネシア(110MW)、
ニカラグア(36MW)、ケニア(7.5MW)の新規稼動
容 量 を 含 み2012年 を 通 じ て300MW増 加 し、 推 計
11.7GWとなった14。
大規模な地熱発電設備容量を持つ国家は以下の通りで
あり、米国(3.4 GW)、フィリピン(1.9 GW)、イン
ドネシア(1.3 GW)、メキシコ(1.0 GW)、イタリア(0.9
GW)、ニュージーランド(0.8 GW)、アイスランド(0.7
GW)、日本(0.5GW)となる15。
米国は2012年に147MWの地熱発電設備容量を増やし、
総容量を5%増の3.4%に増加させた。これは、生産税
額控除(PTC)の適用を地熱発電プロジェクトに拡大
することを決めた2005年以降で2番目に高い地熱発電
設備容量の増加が起こったことを示している16。とく
に注目すべきは、太陽光発電と地熱発電を初めて連携
させた、ネバダ州のStillwater地熱発電所にある設備
である17。このハイブリッドプラントは、熱効率を高
めること、発電量の安定性を向上させること、そして
投資リスクを削減するものとして認識されている18。
2013年前半までに、米国は5.5GW以上の潜在量を持つ
175の開発中の地熱発電計画を持ち、その2分の1が10
年以内に実現するだろう19。
インドネシアは近年あまり設備容量を増やさなかった
が、2012年にUlubelu発電所に55MWの設備を2つ追加
した20。さらに、インドネシアは多大な国際支援を受け、
1000MWの地熱発電向け投資計画への大規模な後押し
を行うことを発表した21。インドネシアは、産業の急
*
熱利用の割合はヒートポンプの設備容量の割合より低く、その理由はヒートポンプが比較的稼働率が低いためである。これは、ヒートポンプは一般的に他の利用法よりも稼働
時間が少ないためである。ヒートポンプのシェアが上昇すると、地熱設備の一基当たり出力が低下する。熱利用は成績係数 3.5 と推計される。
─ 27 ─
第2章
された。しかし、先進バイオ燃料のより大きな分野に
ついては、そのまま残された107。
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
拡大に向けて取組む事業開発者への貸付を行うとい
う、地熱発電向けリスク軽減基金計画を2011年に始め
た22。国は2025年までに地熱発電の設備容量を12.6GW
とすることを目指しており、現行の1.3GWからの大き
な進展となる23。一方で、バリでの165MWの計画は、
環境と宗教の両方の問題に基づく地元の継続的な反対
に直面し、中止された24。
2012年後半には、ニカラグアが前年に第一段階を完了
していた、San Jacinto-Tizate計画における第2基目の
36MWを導入した。その72MWの計画は、ニカラグア
の電力需要の17%相当を供給するのに十分な大きさで
ある25。
ケニアでは、2012年前半に2.5MWのEburru 坑口装置
が発注され、5MWのモジュラー型坑口設備がKenGen
施設で稼動した26。ケニアはアフリカ最大の地熱発電
所有国であり、総計で200MW以上の設備容量が年末
までに導入される27。Ormat Technologies社が2013年
5月までにOlkaria III complexで36MWの設備を商業
運転させることを発表した28。ケニアはOlkariaにおい
て140MWずつ増加させて合計560MWとする開発計画
のために、官民パートナーシップに注目している29。
イタリアのEnel Green Energy社は2012年半ばにトス
カーナで改修された17MWのRancia 2発電所の運転を
始めた30。さらに、40MW規模のBagnore 4発電所の建設
もトスカーナで開始され、計画の費用は約1億6000万米
ドル(1億2000万ユーロ)で、おおよそ設備容量1MW当た
り400万米ドル(300万ユーロ)になるとされている31。
地熱の可能性を探索するため、アフリカでの関心はケ
ニア以外にも向かっている。たとえば、ルワンダは推
計700MWの地熱の潜在量を利用する方向に進んでお
り、採掘開始への資金供給を最近約束した32。しかし
ながら、地熱発電導入に伴う高い探索費用がアフリカ
諸国にとって重要な障壁となっている。この問題に対
処するため、世界銀行は発展途上国における試掘のリ
スクを管理する国際地熱開発計画を策定した。アイス
ランドとの協力で、世界銀行はまた、アフリカ地溝帯
の国への表面探査研究支援や技術補助のための
“Geothermal Compact”を創設した33。
アフリカ連合委員会とドイツ連邦経済協力開発省
(BMZ)、欧州アフリカインフラストラクチャー信託基
金は東アフリカ(エチオピア、ケニア、ルワンダ、タ
ンザニア、ウガンダ)への表面探査研究と試掘を支援
するための地熱リスク軽減ファシリティを6600万米ド
ル(5000万ユーロ)で創立した。2012年後半の申請段
階を終え、これまでに8つのプロジェクト計画が支援
候補に挙がっている34。
日本は、現在開発中の地熱発電計画が30以上ある35。
しかしながら最近、地元の温泉への影響についての商
業的懸念のために、政府は福島と北海道の国立公園で
の地熱発電計画において地元の反対に直面している36。
日本での固定価格買い取り制度の採用は地熱発電に必
要な支援を提供するものとして期待される37。
ニカラグアでの設備容量追加とは別に、ラテンアメリ
カ で は、 エ ル サ ル バ ド ル で 地 熱 発 電 の 設 備 容 量 を
90MW増やすという長期計画と、チリで入札企業が2
億5000万米ドルを拠出するといった様々な地域での探
査のための入札完了の知らせがある38。カリブ海のい
くつかの島(ネビス、ドミニカ、英領モントセラトを
含む)は地熱発電の利用を拡大ないし開始する計画を
持ち、英領モントセラトでの採掘は2013年に始まるよ
う設定された39。ドミニカは2014年までに10〜15MW
の発電所を完成させるという見込みに向け、2012年に
試掘の拡大契約を締結した40。
地熱エネルギー市場
多くの地中熱ヒートポンプメーカーは米国や欧州で活
動し、大半の欧州の企業が主要市場に拠点を置いてい
る 41。欧州と米国では、一般な暖房企業群および電気
暖房の専門企業群とヒートポンプシステムの製造者と
いう二つの異なる企業群がある42。
電力分野では、運転中の総設備容量という点で5つの
主要なタービンメーカーがあり、三菱(日本)、東芝(日
本)、富士(日本)、Ansaldo/Tosi社(イタリア)、そ
してORMAT社(イスラエル)が合計で、現在世界中
で運用中の設備容量の80%以上を占めている43。加え
て、いくつかの企業は目下、工場で組み立てられ、電
力生産設備の構造に統合できる小規模地熱発電装置を
製造している44。
電力分野においては、2012年を通して技術の発展が続
いた。米国では、液体の噴射と岩石への刺激を通じて人
口貯水池から熱を抽出する 高温岩体地熱発電(EGS)の
技術において、政府が支援する調査事業が進展した。こ
の調査事業は カリフォルニア州のThe Geysers発電所
で5MW相当の蒸気が出ることを明らかにした45。2013
─ 28 ─
2012年には、ネバダ州の Florida Canyon金鉱山で地
熱発電の副産物という、もうひとつの新たな試みが
あった48。米国の他の調査計画では、電気自動車で広
く使われるリチウムイオン電池の重要な構成要素であ
るリチウムを、大量の地熱熱水から取り出すことに成
功したことを発表した49。
アイスランドではCarbon Recycling Internationalが電
解水素と二酸化炭素を組み合わせることで地熱発電所
からメタノールを製造する画期的な施設の操業を開始
した。これはガソリンとの混合に適した、完全に再生
可能な燃料である50。
地熱発電の計画は資源の発見から商業的開発まで5〜7
年を要し、そして石油や鉱山と同じように、採掘をし
ないと資源の量が確認できない。長い開発期間と先行
リスク、探査のため、しばしば地熱発電企業は、資源
が存在することを証明するために必要な事業に資金を
投入しなければならない。米国などのいくつかの国で
の厳しい資金調達や不確実な政策のため、開発者に
とってはプロジェクトへの融資が困難であった51。そ
の上、同じ計画場所はひとつとしてなく、またそれぞ
れの発電所はプロジェクト特有の状況に即して設計さ
れる必要がある52。それでもなお、資源のある可能性
がひとたび立証されれば、プロジェクトの成功の公算
は80%を上回る53。
水 力 発 電 水力発電市場
2012年に新たに送電網に追加された水力発電容量は推
計30GWで、世界全体の既存発電容量を約3%増加させ、
推計発電容量は990GWとなった*1。水力発電容量の上
位国は中国、ブラジル、米国、カナダ、ロシアであり、
これらの国だけで総設備容量の52%を占めている(図
9を参照)2。発電量の順位もカナダを除いて同様だが、
カナダの発電量は米国を上回る。米国の水力発電は負
荷追従運転がカナダより多いためである3。世界全体で
は、水力発電所は3700TWhの電力を生み出し、このう
ち864TWhは中国、続いてブラジル(441TWh)、カナダ
(376TWh)、米国(277TWh)、ロシア(155TWh)、ノル
ウェー(143TWh)、インド(116TWh以上)である4。
中国は再び新規の発電設備容量で世界をけん引し、ト
ルコ、ブラジル、ベトナム、ロシアがその後を追った(図
*
5
10を参照)
。中国は年末までに新たに15.5GWを導入し、
水力発電の総設備容量は229GWとなり、揚水発電容量
も20.3GWとなった6。国内の年間水力発電量は864TWh
であったが、これは2011年からほぼ3割増加している。
これは設備の増加と治水条件の向上によるものである7。
中国では、Xianjiba発電所に世界最大の812MW容量の
フランシスタービン発電機が新たに設けられ、完成す
れば総容量は6.4GWとなる8。これはThree Gorges発
電所(22.5GW)、Xiluodu発電所(完成後13.9GW)に
続いて国内では第3位の水力発電設備となる9。Three
Gorges発電所では、最後の32台の発電機が7月から運転
を開始し、2012年に98.1TWhのh発電量を記録した10。
現在の五か年計画で、中国は2015年までに290GWの水
力発電設備容量の設置を進める一方、影響を受ける地
元の住民のために移住方針の改善と生態系保護の強化
に努めている(補足3を参照)11。
トルコでは、電気の慢性的な不足と頻繁に起こる停電
に対処するため、急速に水力発電容量を増加させてい
る12。2012年には2GWの新規設備が加わり、年末までに
21GWが設置された13。チグリス川にある容量1.2MWの
アイリスダムでは工事が進められている一方、科学者
達は浸水してしまう地域の文化遺産の移転に備えた14。
ブラジルは2012年、報告されている394MW分の小規
模発電所(30MW未満)を含む1.86GWの水力発電所
を新たに稼働させ、総量84GWが年末までに稼動して
い る15。 約400MWがEstraito発 電 所 に、350MWが
Mauae発電所に追加された16。さらにマディラ川にあ
るサン・アントニオの流れ込み式プロジェクトに(全
44機中)9機の70MWバルブ方式河川内タービンが追加
され、2013年初頭にはさらに2機が追加された。また、
マディラ川では75MWのバルブタービンを50機備えた
3.75GWのJirau発電所の建設が着実に進められている17。
ブラジルで14GWのItaipu発電所に続き、第2の規模に
なると予想される11.2GWのBelo Moneプロジェクトも
工 事 が 続 け ら れ て い る18。 Itaipu発 電 所 は2012年、
Three Gorges発電所と並んで98TWh以上の発電量を
記録した19。
ベトナムは2012年に少なくとも1.8GWを追加し、総容
量は12.9GWに達した。この追加分のうちの大部分は
ベトナムのSon La発電所からのものである。2.4GWの
プロジェクトを完成させるべく最後の400MWのター
ビン2機の設置が完了した。報告によると、これは東
南アジアで最大の水力発電プロジェクトである20。
ロシアでは、Bogucchanskaya水力発電所に333MWの
発電ユニットを2012年末に3基、2013年初頭に1基稼動
し、国内の総稼働容量を46GWに保っている21。2009年
の深刻な事故を受け、国内最大の水力発電所である
Sayano-Shubhenskayaの発電所は、引き続き修復工事
を行っており、2014年までに新たに10基のタービンを
導入する予定である22。正味の追加容量は少なかった
とくに注記のある場合をのぞき、水力発電容量から純揚水式発電容量を差し引いて示している。詳細は P120 の方法論に関する注釈を参照。
─ 29 ─
第2章
年前半にAltaRock Energy社がNewberry EGSの実証
サイトにおいて、単一の試掘坑に複数の刺激帯を設けた
ことを発表した。これによる潜在的な利益は高温岩体地
熱発電からの発電コストの大幅な削減である46。最後に、
Ormat Technologies社と米国のエネルギー省、そして
GeothermEx社が2013年の春にネバダ州にある既存の
発電施設で高温岩体地熱発電技術を使用した新規設備
を導入し1.7GWの電力生産に成功した。これは系統に繋
がれた最初の高温岩体地熱発電システムである47。
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
水力発電
図9. 世界の水力発電設備容量上位5か国の割合(2012年)
その他
48%
23%
中国
ブラジル
米国
カナダ
ロシア
8.5%
7.9%
7.8%
4.6%
出典:本章の巻末注2を参照
図10.
世界の水力発電設備容量増加分 上位5か国の割合(2012年)
その他
トルコ
ベトナム
ブラジル
ロシア
26%
7%
6%
6%
3%
中国
52%
出典:本章の巻末注5を参照
が、2012年の間に全体では少なくとも3.4GW容量分が
導入された23。
他 の 地 域 に お い て は、メキシコで750MW規 模 のLa
Yesca水力発電所が2012年末に本格稼動し、国内発電
量は11.5GWとなった24。この発電所の高さ220mの土堰堤
形式のコンクリートダムは世界一の高さと言われている25。
北 米 で は、 カナダ で2012年 に マ ニトバ 州 の200MW
Wuskwatim発 電 所 が 稼 働、またHydro-Quebecは
768MW Eastmainの1-A発電所の工事を終え、隣接する
150MWのSarcelle発電所も2013年には完成予定にある26。
インドは約750MW分の容量を追加し、そのうち157MW分
は小規模水力発電(25MW未満)に分類される。年末
時点での総容量は43GWであった27。
アフリカでは、エチオピアのGrand Renaissanceダム
の工事が予定通り進行しており、2013年末までには第
一段階の試運転を開始する。完成後には、6000MWの
発電が予想されており、アフリカ大陸最大の水力発電
所となる28。このエチオピアで増加している水力発電出
力の近隣の「アフリカの角」の国々への輸出を確実に
するための送電プロジェクトがいくつか進行中である。
2012年には、エチオピアとスーダンの間に送電線が整
備され、スーダンの火力発電に取って代わる100MWの
最初の電力輸出が行われた29。これに加えて、エチオピ
ア、ケニア間の電力ハイウェイの建設の承認がなされ
─ 30 ─
水力はおよそ2000年以上前、ギリシャ人が穀物をひ
くために水を使ったことから使われ始めた。世紀を
超え、水力は機械エネルギー、そして近年では電力
供給のため重要な役割を担い、人類と経済の発展を
支えてきた。
膨大な量の水を貯めることができる水力発電用ダム
は水文の変化(洪水、干ばつ)に対応し、農耕地の
灌がいを増やすともに運送や娯楽の場として使うこ
とができる。水力発電の特定の利用法により、炭素
の排出を短長期的に減少させる可能性がある水力発
電は、送電網運用者によってベースロード電源を提
供し、需要と供給のバランスをとるために使われて
おり、さらに既存電力システムの中で割合が増えて
いる変動型の自然エネルギーを調整するにあたっ
て、その役割はますます重要になってきている。(本
報告書2012年版 補足3を参照)。
これらの有益な特徴にもかかわらず、水力発電の持
続可能性については議論がある。水力発電の環境と
社会への影響に関しては、水文形態、土砂の移動、
水質、生態系、土地利用の変化への潜在的な影響、
さらに住民の再定住や下流域での水の使用者への影
響、公共衛生、文化財についてなど多岐にわたる。
プロジェクトによってどこに重きを置くか、また何
を回避したり緩和するのかが異なってくる。また、
良い影響を最大化する機会(自然エネルギーによる
発電を超えて)も場所によって異なってくる。
らが持つ悪影響の緩和と更なる利益を同時に得よう
としている。
社会への影響については、モデルプロジェクトで水
力発電をおくことによって起こりうるリスクと打開
策への認識を深めることができる。通常、プロジェ
クトによって何らかの悪影響を受ける地域の人々と
は、緩和と妥協策を模索することに重点が置かれる
が、予想される好影響を地域の住民と一緒に最適化
し、その地域の暮らしを良くする為の共同作業のイ
ニシアティブをとるなど、利益を共有することに成
功した例も報告されている。たとえば、人口の移動
を伴う場合、開発者はその地域の人々に移住先の計
画の話しから切り出す場合がある。ラオスで実地さ
れたTheun Hinboun Expansionプロジェクトでは移
住先のコミュニティに与えた全体的な影響について
は様々な議論があるのは事実だが、費用5億ドルの
約10%が地域住民たちの移動先と長期にわたる利害
関係者たちとのやりとりの後に発生する社会問題へ
の対応に当てられた。
2000年には世界ダム委員会のレポートが発表され、
企業と国際機関の両方が持続可能性を最適化するた
めの幾多の基準、原則、そしてガイドラインを開発
している。いくつかの例を挙げると、世界銀行のセー
フガード、赤道原則、そして水力発電持続可能性評
価プロトコルがある。国際金融公社(IFC) の成果
基準および赤道原則は、開発者に対して、関わるプ
ロジェクトが、伝統的所有権と慣習によってその土
地と自然資源に深く結びついた先住民たちの生活の
場に影響を与える場合、「自由で(Free)、事前の
多くの技術開発が、水力発電の持続可能性を向上さ (Prior)、 十 分 な 情 報 に 基 づ く 合 意(Informed
せる可能性を持っている。そのうちのひとつが、局所
Consent)
(FPIC)」を得るよう義務付けている。また、
的な魚道の効率化であり、大小の、
“魚にやさしい”ター
任意の水力発電持続可能性評価プロトコルは水力発
ビン技術が 下流での魚の死亡率を緩和させている。 電所の寿命、環境への影響、社会問題などを他の考
また、環境フローモデルの最適化や機器からの潤滑
慮事項と同等のものとしてプロジェクトの成果をは
油の流出を減らす、あるいはなくすタービンのデザイン
かることで、水力発電の持続可能性を導くことを目
設計(または生物分解可能なオイルの使用)などであ
指している。
る。プロジェクトの計画は、伝統的な利益や洪水制御
などの通常の事柄のほか、ダイナミックに変化する気
より良いコンプライアンス、更なる開発、そしてこ
候や環境への影響も考慮され始めている。
れらの方法を幅広く駆使していくことで、国内の制
限に関わらず、国際基準が地域コミュニティで使わ
上流の土砂を考慮した土地利用管理はいくつかの貯
れるとともに、プロジェクトの利害関係者が特定の
水池の管理にも適用されている。他にも実行されて
プロジェクトについての話し合いに参加して影響に
いる事柄として、プロジェクトの「不認可」地域を
ついて語れるような同一の枠組みを作ることが必要
特定したり、他の地域の保全(「リバー・オフセット」 である。
を通して)をするなど、生態系への被害など、プロ
ジェクトが与えかねない影響を考慮している。たと
補足「持続可能性についての特集」は自然エネルギー
えばノルウェーでは、水力発電の国家総合計画が新
世界白書の定期的な記事であり、特定の自然エネル
規プロジェクトの可・不可を決め、膨大な数の国内
ギー技術や関係する問題の持続可能性の側面に焦点
の河川を守っている。既存の貯水池施設や、新規の
をあてる。
多目的施設(新規開発や気候変動の緩和、水の供給
と潅漑への考慮)を水力発電に利用することでこれ
出典:本章の巻末注11を参照。
─ 31 ─
第2章
補足3:持続可能性についての特集:水力発電
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
年ウガンダに250MWのBujagaliプロジェクトが完成し
た 39。国際金融公社(IFC – 世界銀行グループ)は
Korea Western Power Co.と協力し、ラオスで少なく
とも1つのプロジェクトを開発した40。ベトナムでは、
地元と海外の企業(韓国のサムスンを含む)が参加し、
Electricity of Vietnamの子会社のためにTrung Son発
電所を建設する契約を交わした41。
た。この2000MWの送電網によって、エチオピアの大
きな水力資源の一部を、電力供給が制約された広大な
東アフリカ地域に輸出することが期待されている30
相互接続の改善を進めているもう一つの地域は、中央
アメリカである。中央アメリカ電力相互接続システム
(2013年前半に完成予定)は、1800キロメートルほどで、
グアテマラからパナマに続いている。この送電線の接
続により、地域が水力発電資源をさらに利用できるよ
うになると期待されている31。
発展途上国の水力発電プロジェクトはクリーン開発メ
カニズム(CDM)から歴史的に利益を得てきたが、
2012年および2013年はじめの炭素クレジットの価格下
落により新たな課題に直面する可能性がある32。一方、
国連はCDMプロジェクトの発展を援助するために、
アフリカに2つの地域センター(トーゴとウガンダ)
を建設する準備を進めた33。現在では、水力発電部門
のCDMパイプライン上のプロジェクトの1%未満がア
フリカにあり、その大部分が中国にある34。
多様な自然エネルギー発電の割合が増えるにつれて、
アンシラリーサービスを提供することのできる揚水発
電は、目覚ましい成長を続けている。およそ3GWの揚
水発電装置が2012年に追加され、世界合計は138GWと
なった35。欧州は675MWを新規に加え、域内の合計は
45GWを上回り、中国は2012年の追加容量分の半分以
上にあたる1.5GWの揚水発電容量を送電網に加えた36。
中国河北省のFengning発電所は、2012年に建設が開
始され、この3.6GWのプロジェクトは、完成すれば世
界最大の揚水発電所となる37。
水力発電産業
水力発電産業では、地域と国際的な企業が、リスクと
利益を共有する合弁事業モデルの増加が目立ってきて
いる38。たとえば、官民パートナーシップにより、2012
大規模なプロジェクトが増加するにつれて、製造業者
はこれまでよりさらに大きなタービン発電機の開発や
試験運転を行っている。これにはTianjin Alstom(中国)
とPower Machines(ロシア)による1000MWのフラン
シス水車も含まれる42。4台の記録的な812MWのフラン
シス水車発電機をXiangjiaba発電所に納品したAlstom
は、中国の水力開発ニーズに対し1億3000万ドル(1億
ユ ー ロ ) の 投 資 を 行 っ た。 こ れ に は 天 津 のGlobal
Technology Centerも含まれている。中国で製造と研
究の基盤に出資している主要な国際的水力発電企業の
関心は、この国の水力発電の重要性と水力発電の開発
状況の安定した成長を反映していると考えられる43。
同様に、企業は他国でも投資を行っている。2013年前
半には、Alstomが、水力発電技術センターの新しい本
部をグレノーブル(フランス)に設立した。同社は長
年に渡り同センターの更新を行い、水力発電試験所の
規模を2倍にしていた44。ロシアでは、Alstom(フラン
ス)は共同の水力発電装置製造工場の建設を始めるた
めに、RusHydro(ロシア)と提携した45。近年新しい
製造施設への膨大な投資を行ってきたVoiceHydro(ド
イツ)は、とくに揚水発電技術について研究開発を強
化した46。
アルゼンチンのIMPSA(ラテンアメリカの水力発電
部門で30%の市場占有率を持つ)は、地域の持続的な
需要に応じるために、これまでの2倍の生産規模をも
つ新規の工場を設立した47。日本では、東芝が新興経
済国での火力および水力発電の需要の増加を予想し、
新しい火力、水力、そして自然エネルギー発電のエン
ジニアリング・センターの建設を発表した48。
製造業者もまた可変速装置と他の革新的技術の発達を
通して、必要とされる柔軟性と効率を追求しつつ、揚
水 発 電 装 置 技 術 を 進 展 さ せ る よ う 努 め て い る49 。
Electricitéde Franceは、485MWのLa Cheylas設備を速
度調節ができるシステムに更新する予定である。プロ
ジェクトを支援する組合は、速度調節型のシステムに
変わった際には、欧州の揚水発電装置施設が10GW分の
調節能力を提供することができると見積もっている50。
世 界 の 主 要 な 水 力 発 電 技 術 と 製 造 業 者 はAlstom、
Andritz(オーストリア)、IMPSAとVoithで、これら
の企業だけで世界市場の50%以上を占めている51。他の
主要なメーカーには、BHEL(インド)、Dongfang(中
国)、Harbin(中国)、Power Machinesと東芝などが
ある。
─ 32 ─
海洋エネルギー 海洋エネルギー市場
2011年に韓国での254MWの潮力プロジェクトと、さ
らに小規模なスペインでの300kWの波力発電が導入さ
れた後、2012年の新規発電容量は非常に少なかった。
商業的な海洋エネルギー発電容量は年末までに約
527MWで、そのほとんどが潮力発電設備であり、い
くつかの進行中の新規プロジェクトもある1。
メイン海岸にあるCobscook Bay 潮力エネルギープロ
ジェクトは、9月に電力を送電網に送り始めた2。Ocean
Renewable Power Company(米国)のTidGen装置は
ピーク時に180kWを供給できる3。ポルトガル沖の大西
洋の全域で、AW Energy(フィンランド)は3つの
100kWの波力発電コンバータを配備し、WaveRollerと
名づけた。これらのコンバータは海岸に近い位置の機
器にあわせて設計され、深さ8〜20メートルの海底に位
置している4。
韓国は、始華湖潮力発電所(2011年中頃に送電網へ接
続)に加えて、国内のグリーン成長目標を達成するた
めにいくつかの潮力発電所の建設を計画している。し
かし、2013年前半時、これらのプロジェクトの状況は
先行きが不透明であった。国の第六次電力需給基本計
画(2013年初頭に出される)はGangwha(813MW)
とGarorim(520MW)潮力発電所の開発を含んでいた
が、環境保護の見地からの一般市民の反対が障害に
なっていることが伺える6。
米国では2012年、Ocean Power Technologies(米国)
がオレゴン沖の1.5MWの波力発電所のための許可を受
け、初期展開として2013年に150kWのPowerBuoy(波
力 エ ネ ル ギ ー・ コ ン バ ー タ ) の 配 備 を 行 っ た7 。
Verdant Power(米国)は、2012年に必要な許可を取
得しており、現在はニューヨークのルーズベルト島で
の潮力エネルギープロジェクトの建設段階にはいって
いる。このプロジェクトは将来的にイースト川に最大
30基の潮力タービンを配置し、1MWの規模にするこ
とを想定している8。
英国では、セバーン川は潮汐用の堰としての可能性が
長い間見込まれていたが、高い経済コストと野生生物
に対する潜在的な影響の懸念という二重の障害に直面
している。2012年に500万ドル( 300万ポンド)を投資
して、カーディフ南のセバーン川河口幅18キロメート
ルを横断するダム(6.5GW)を民間の資金のみで造ると
いう新しい提案がなされた。完成すれば、この発電所の
みで英国の電力需要の5%をまかなうことができる9。
大きな新しい商業プロジェクトの展開がないことは、
まだこの産業が相対的に初期段階にあるという文脈の
下で考慮されなければならない。とくに英国では、多
数の試験的プロジェクトが実施、またはまもなく展開
されている。海洋エネルギーは、一歩ずつだが着実に
商業的なプロジェクトに向けて進展しており、とくに
潮力発電技術は早期の発展が期待されている10。
海洋発電産業
英国の大陸棚は、新しい海洋発電の技術のための試験
場 所 と し て 注 目 さ れ て い る。 オ ー ク ニ ー 沖 で は、
European Marine Energy Centre(EMEC)が、いく
つかの波力と潮力発電装置を試験的に稼動させてい
る。2012年に、英国のNational Renewable Energy
Centre(Narec)は、シミュレーションされた状況下
での潮力発電装置の試験を行い、有益な情報を技術開
発者に提供した11。
これらの施設や研究開発を行っている海洋エネルギー
企業は英国政府と地域当局から支援を受けており、そ
れには海洋エネルギーを支持するスコットランド政府
による1億6700万ドル(1億300万ポンド)の投資資金
も含まれる12。アイルランドでは、近年の経済状況に
よる資金削減にもかかわらず、海洋の研究施設におけ
る研究活動(沖合装置のための新しい送電網の開発を
含む)は2013年に拡大することが予想されている13。
スコットランド沖の豊かな海域で得られる専門的な知
見は、他の地域での試験設備で大いに役立っている。
EMECは台湾、日本、中国、韓国、米国とカナダの連
携相手に、海洋発電の試験場の技術協力を提供するこ
とで合意した14。
政府援助は、民間企業からの資金のてこいれなしには効
果がでにくい。波力と潮力発電を利用するための異なる
─ 33 ─
第2章
2012年末に運転中の世界の主要な海洋エネルギー設備
は、1966年から稼働しているフランスのランス潮力発
電所(240MW)、カナダのノバスコティア州の潮力発
電所(20MW)、中国の浙江省の潮力発電所(3.9MW)、
そして英国で実地されている潮流と波力発電(およそ
9MW)などである5。
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
技術を開発して試験を行うという長い産業プロセスのため
には、各々が継続された資金を確保する必要がある。こ
れは通常、企業との提携や合弁事業、または主要な会
社による買収を通じた資本注入で成り立っている。
主要発電技術会社では、海洋エネルギー部門が存在感
を増している。2012年に、Alstom(フランス)はロー
ルスロイスの旧子会社で潮力のタービン技術を専門に
扱っていたTidal Generation Limited(英国)を買収
した。そして、その年内に、Alstomは河川内用潮力ター
ビンを開発していたClean Current(カナダ)とのラ
イセンス契約を終了させた15。2011年に、Alstomはス
コットランドのAWS Ocean Energy Ltd. の株を40%
を取得した16。
Andritz(オーストリア)はノルウェーの海洋エネル
ギー会社Hammerfest Strøm ASの株の大部分を取得
し、現在ではAndritz Hydro Hammerfestとして知
られている17。Iberdrola(スペイン)もスコットラン
ドのEMECで稼働している潮力発電タービンの会社の
株を持っている18。Marine Current Turbin(英国)は
現在シーメンス(ドイツ)によって所有されている19。
同社は最近、北アイルランド沖でSeaGenタービン(世
界最大の送電網に接続した潮流タービン)の稼働開始
5周年記念を祝った20。
バッテンフォール(スウェーデン)とPelamis Wave
Power(スコットランド)によるシェトランドの西海
岸沖に10MWの波力発電ファームを展開する合弁事業
は、この島にある370MWの認可済みの風力発電ファー
ムのそばに設置されることとなっている。そして、そ
れは必要とされている、スコットランド本土への送電
網の相互接続につながると期待されている21。これは、
海洋エネルギーと沿岸自然エネルギー・プロジェクト
の間で潜在的な相乗効果を示す可能性がある。バッテ
ンフォールは以前からプロジェクトがそのような相互
接続に基づく点に着目していた22。
比較してかなり安定しており、新規導入容量は若干下
がったもののより高い出荷量を記録した。29.4GW以
上が新規導入され、これは2012年末時点で稼働してい
た世界容量の3分の1とほぼ同等である(図11と表R5を
参照)2。 薄 膜 型 の 市 場 占 有 率 は、2011年 の15%か ら
2012年は13%に下落した3。
8か国が2012年に1GW以上の太陽光発電を国内の送電
網に加え、新しい設備の分布状況は更なる広がりを見
せた4。市場の上位国―ドイツ、イタリア、中国、米国
と日本―は、総容量の上位国でもある5。年末までに、
欧州で8か国、アジアで3か国、米国とオーストラリアが、
少なくとも1GWの総容量をもっていた6。一人当たりの
太陽光発電容量上位国は、ドイツ、イタリア、ベルギー、
チェコ共和国、ギリシャとオーストラリアであった7。
欧州は市場で再び優位に立ち、16.9GWの新規容量を
加えて、新しく設置された容量のおよそ57%を占め、
稼働しているのは70GWであった8。しかし、2011年の
追加容量22GWや世界史上の70%強を占めたことから
考えれば若干下落している。欧州で太陽光発電市場の
下落が見られたのは少なくとも2000年以降では初めて
で、主に奨励金の縮小(FIT支払いを含む)と全体的
な政策の不確実性に起因するものであり、とくにイタ
リアではかなりの幅で減少した9。しかしながら欧州は
2年連続ですべての発電方法と比べても太陽光発電を
最も多く新規に導入し、2012年には太陽光発電が新規
総容量の37%を占めた10。太陽光発電量の割合いが増加
するにつれて、欧州の電力システムの構造と管理に影
響を及ぼしはじめ、ますます、従来の電力生産者との
直接的な競争や地域の送電網の飽和などの弊害に直面
するようになっている11。
イタリアとドイツは風力発電より太陽光発電の稼働容量
が大きく、両国で2012年は世界合計のほぼ半分を占めた
もう 一 つ の 合 弁 事 業 として、Atlantis Resources
Corporation(英国)、投資銀行モルガン・スタンレーと
発電事業者International Power(英国)が、2013年に
北スコットランドのPentland Firthで400MWのMeygen
潮力発電プロジェクトを始めようとしている23。プロジェク
ト は、 昨 年Narecで 試 験 稼 動 を 完 了 し たAtlantis
ResourcesのAR 1000(1MW)の潮力タービンならびに
Andritz Hydro Hammerfestのタービンを用いる24。カ
ナダ政府からの資金500万ドルを用いて、17メートルとい
う世界で最も高い潮位差を持つことで有名なカナダの大
西洋岸のBay of Fundyにタービンの1基を配備するため
に、Atlantisはパートナーに加わった25。
太陽光発電 太陽光発電市場
2012年、太陽光発電市場は100GWという節目を達成し、
またしても画期的な一年を経験した1。市場は2011年と
─ 34 ─
太陽光発電
図11.
世界の太陽光発電総容量
(1995年∼2012年)
ギガワット
100
100
90
80
71
70
60
50
40
40
30
20
4.0 5.4 7
0.6 0.7 0.8 0.9 1.2 1.4 1.8 2.2 2.8
10
10
16
24
0
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
出典:本章の巻末注2を参照
図12.
太陽光発電容量 上位10か国
(2012年)
その他
6.7%
その他のEU諸国
7.4%
チェコ共和国
2.1%
オーストリア
2.4%
ベルギー
2.6%
フランス
4.0%
スペイン
5.1%
日本
6.6%
中国
7.0%
ドイツ
32%
イタリア
16%
世界合計 =
7.2%
米国
~100 GW
出典:本章の巻末注12を参照
5.3%
Yingli Green Energy(中国) 6.7%
Canadian Solar(カナダ)
4.6%
Trina Solar
(中国) 4.7%
シャープ
(日本)
3.0%
Suntech Power
(中国) 4.7%
SunPower
(米国)
2.6%
JA Solar
(中国) 2.8%
京セラ
(日本)
2.1%
Jinko Solar
(中国) 2.6%
REC
(ノルウェー)2.0%
Hareon Solar
(中国) 2.5%
First Solar
その他
(米国)
Hanwha-SolarOne (中国) 2.5%
ReneSola
50%
(中国)
2.1%
Tianwei New Energy(中国) 2.0%
2012年に生産された35.5GWを基にしている。
出典:本章の巻末注75を参照
─ 35 ─
第2章
図13.
モジュール製造業者上位15社の市場シェア
(2012年)
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
(図12を参照)12。ドイツは過去2年よりもわずかに多い、
7.6GWを新 規 導入し、 合 計を32.4GWに増 加させた13。
2012年にドイツでは太陽光発電が28TWhを発電し2011
年と比べ て45%上 昇させ た14。 イタリアは、 総 容量 が
16.4GWに達した。 しかしながら送電 網に追 加された
3.6GWという数字は2011年と比べてかなり減少した15。
オーストラリアはほぼ2.4GWの発電容量で年を終え、
2011年と比較して70%増であった33。2012年前半まで
には、南部オーストラリアの5世帯に1世帯は、屋根に
太陽光発電パネルを設置していたと推計される34。イ
ンドも顕著な成長をみせ、容量が5倍以上の1.2GWま
で増加した35。
他 の 欧 州 市 場 に は、 フ ラ ン ス(1.1GW)、 イ ギ リ ス
(0.9GW)、ギリシャ(0.9GW)、ブルガリア(0.8MW)
とベルギー(0.6MW)が含まれる16。すべての国で総
稼働容量が30%、またはそれ以上に増加した。ブルガ
リアでは6倍に上がったが、フランスの市場は2011年
度と比較して下回った17。
伝統的な欧州市場が減速しはじめている現在では、太
陽光パネルの価格の下落により世界中の新しい市場で
の競争がより起こりやすくなっている。2012年に、ナ
ミビアと南アフリカは巨大な太陽光発電パークを建設
して送電網に接続し、中国企業はますます増大してい
る中国の輸出のために、少なくとも20のアフリカ諸国
にプロジェクトの構築を始めた36。
欧州以外の地域では、2011年の8GW増からさらにおよ
そ12.5GWの新規容量が追加された18。最大の市場は、
中国(3.5GW)、米国(3.3GW)、日本(1.7GW)、オー
ストラリア(1GW)とインド(ほぼ1GW)であった19。
アジア(7GW)と北アメリカ(3.6GW)は、欧州に続
いて新規導入容量が多かった。年末までには、アジア
は目覚しい増加量をみせ、総稼働容量は欧州に続いて2
番目に多かった20。
米国の発電容量は2012年に7.2GWを記録し、ほぼ85%
増加した21。カリフォルニア州にとっては記録的な年
(1GW以上の増加)となり、米国全土の総容量の35%が
州内に設置されている22。しかし、太陽光発電は価格の
下落と革新的な金融モデルおよび所有モデル(たとえ
ば太陽光パネルのリース、地域での太陽光発電への投
資や第三者融資)によって、より多くの州で広まって
いる23。否定的な側面として、電力事業者が既存の発電
資産の潜在的な標準的コストについて懸念を持ってい
るため、ネットメータリングの今後について駆け引き
が起こっている24。電力会社による設置は新規容量の
54%を占めており、年末までに米国の容量の2.7GWを
占め、3GW以上が工事中であった25。電力会社による
調達は減速しているが、多くの電力会社が彼らの自然
エネルギー割当基準(RPS)の目標に近づいている26。
イスラエルは、中東で唯一大きな市場がある国である37。
しかし、サウジアラビアと中東-北アフリカ(MENA)全
域で、エネルギー需要が高まっていること、原油輸出の
自由化への期待、そして高い日射率を考慮して、太陽光
発電への関心は高まっている38。
東南アジア地域の市場はタイが優勢であるが、他の地
域でも市場は盛り上がりを見せている39。そして積極
的な政策により、ラテンアメリカの需要は、とくにブ
ラジル、チリとメキシコで小規模なオフグリッド事業
やニッチな機器から、商業や産業部門での大規模な展
開へと移行し始めている40。
とくに発展途上国で、オフグリッドシステムに対する
関心が高まっている(「農村地域の自然エネルギー」
41
の章参照)
。2012年に電力需要の100%を満たすために、
世界最大のオフグリッドシステムの1つが南太平洋の
トケラウで完成した42。オフグリッドプロジェクトは、
オーストラリア、イスラエル、ノルウェー、スウェー
デンと米国を含むいくつかの先進諸国でも、太陽光発
中国は、およそ7GWで2012年を終え、総容量を2倍にし
たが年間予測には届かなかった27。第4四半期までには、
中国は国内で過剰に生産されている太陽光パネルの供給
市場をつくる政府の努力に応え、ドイツを追い越し世界
のパネル出荷量の3分の1以上を扱っている28。市場は大
規模な地上設置型システム(その多くは中国西部にある)
が大半を占めており、出荷センターから遠く離れている29。
しかし、国家政策は建築物設置型のパネルのプロジェク
トに関しても拡大を目指している30。
日本の総容量は新しい自然エネルギー固定価格買取制
度(FIT) に よ っ て35%上 昇 し、6.6GWを 超 え た。
2012年末までに、太陽光発電はFITシステムで設備認
定された容量の90%を占めた31。日本の急速な需要増加
は、太陽光発電への投資と、地価が上がりつつあるプ
ロジェクトへの投資を急増させた32。
─ 36 ─
太陽光パネルを屋根や壁、その他建物の素材と兼ねて
使用する建物一体型太陽光発電(BIPV)の市場は、
世界の太陽光発電容量の1%未満を占めており、2012
年に推計100MWが追加された45。景気の失速で建設が
遅れ、BIPVの成長を阻んだ46。最も大きな市場は欧州
であり、同部門で50社以上が活動している47。
それと同時に、地域での太陽光発電プロジェクトへの
関心を高める国々も増えてきている。米国の8州では、
地域での太陽光発電プロジェクトを推進する政策があ
り、2012年末には地域でのプロジェクトだけで米国の
容量のうち60MW余りを占めた48。オーストラリアの
Melborne LIVE Community Power Programmeでは、
地域のメンバーで自分の家の屋根にパネルを設置でき
ない人がプロジェクトに投資することができる49。
それと同時に、数や規模の大きな太陽光発電プロジェク
トも着々と増加してきている。2013年前半までには、運
転中のおよそ90か所の発電所は30MW以上の規模を誇
り、約400か所には少なくとも10MWの容量があった50。
世界最大級の50か所の発電所は2012年内に累計発電容
量が4GWに達し、少なくとも12か国(欧州、北米、アジア)
に30MWを超える太陽光発電所があった*51。そのうち世
界最大規模の2か所(250MW米国アリゾナ州の薄膜型発
電所とインドグジャラート州の214MWの発電所)を含む
20か所以上は2012年に送電網に繋がれた52。ドイツは合
計で30MWを超える設備容量で世界をけん引し、年末ま
での累計稼働容量は1.55GWに達した。ドイツの後には
米国、フランス、インド、ウクライナ、中国、そしてイタ
リアと続いた53。また、50〜1000MW規模のいくつかの
プロジェクトが世界中で計画された54。
集光型太陽光発電(CPV)市場は他と比較すると小さ
いが、高日射低湿度の地域ではより高い効率に達する
ため、高い関心が寄せられている55。世界初の数MW
以上の規模のプロジェクトは2011年に始動し、2012年
中頃までには、世界20か国での100か所の発電所が累
計100MWとなった56。米国は2012年に稼動を開始した
コロラド州の30MWの発電所のお陰で世界一の発電容
量を誇っており、スペイン、中国、台湾の台北、イタ
リア、そしてオーストラリアがその後に続いている57。
またCPVは、北アフリカ、中東と南米でも新しい市場
が広がってきている58。
太陽光発電は、いくつかの国の発電において大きな役
割を果たし始めている。2012年、イタリアで国内電力
需要の推計5.6%、ドイツでは約5%を太陽光発電がま
かなっており、天気のよい月には、両国ともにさらに
はるかに多くの割合を占めた59。年末までには、欧州
の太陽光発電容量は全体の消費量の約2.6%を担い、世
*
界的な稼働容量で見ても、年間少なくとも110TWhの
発電量が十分にあった60。
太陽光発電産業
2011年と同様、2012年は太陽光発電販売業者、設置業
者、消費者にとっては実り多い年であったが、セルとモ
ジュールの製造会社は存続するのに苦労し、なかなか利
益を上げることができなかった。2010年と2011年の積極
的な製造能力増強は、とくに中国で、過剰な生産能力と
供給をもたらし、市場競争を激化させた。2012年には価
格がさらに暴落し、メーカーのマージンはより小さくなり、
継続した業界再編の動きに拍車をかけた61。そしてこの
安値は、過酷な競争の中にある、多くの薄膜型企業や集
光型太陽光発電産業にも課題を突き付けた62。
薄膜型の価格がおよそ20%下落するとともに、結晶型
シリコン太陽光モジュールの平均価格は2012年に30%
かそれ以上に下がった63。それほど迅速ではないが、シ
ステム導入コストも下落しており、また地域での価格
の違いも目立ってきている。2008年度第2四半期から
2012年の同期間までの住居用システム経費は、ドイツ
で 7.00ドル/Wから2.20ドル/Wまで下降したのに対し、
米国での平均価格の下落は5.50ドル/Wに留まった64。
2012年は約31.9GWの結晶型シリコンセルと35.5GWの
モジュールが生産され、2011年をわずかに下回った65。
いくつかの工場閉鎖にもかかわらず、年末までのモ
ジ ュ ー ル 生 産 能 力 は2012年 に 増 加 し、 生 産 能 力 は
60GW以下から70GWを優に越えるという推計まで幅
広く存在する66。また中国の生産能力だけで、世界市
場を上回った67。2012年の薄膜型の生産高はほぼ15%
減少し4.1GWとなり、世界的な太陽光発電市場での割
合は引き続き下がった68。
過去10年の間、モジュール製造の中心地は、米国から
日本、日本から欧州、欧州からアジアへと移行を続け
た 69。2012年までに、アジアは世界生産の86%を占め
(2011年の82%から上昇)、そのうち中国が世界全体の
ほぼ3分の2を製造した70。欧州の市場占有率は下落を続
け(2011年には14%だったのに対し、2012年には11%)、
同様に日本でも占有率は6%から5%に下降した71。米国
は3%の市場占有率のままであり、薄膜型の製造は29%
を占めるに留まり、2011年の41%から減少した72。欧州
のポリシリコン生産はいまだ競争力を持っているが、
米国が主要な製造者であった73。
世界の総発電量35.5GWのうち、トップ15の太陽光発
電モジュール・メーカーが半分を占め、このうち11社
はアジア出身だった74。Yingli(中国)は、Suntech(中
国)とFirst Solar(米国)を押さえ首位に立った。続
いて第2位はFirst Solarで、SuntechはTrina Solar(中
国)に押され、第4位となった。他の上位企業の間でも、
順位の入れ替えが頻繁に見られた(本報告書の図13と
GSR2012の図13を参照。)75。
これは太陽光発電市場の急速な変化を示している。本報告書の 2011 年版では商業規模のプロジェクトを 200kW 以上としており、2012 年版では 20MW 以上としている。
─ 37 ─
第2章
電設備のかなりの割合を占める43。しかし、90%以上の
太陽光発電容量は送電網に接続されており、オフグ
リッドは市場の1%に満たず、20年前から比べると90%
以上も下落している44。
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
市場再編は、2012年も続いた。プロジェクト開発側で
は、企業の買収・合併活動がプロジェクト計画を買い
取ろうとする大手企業によって行われ、安定した財源
をもつグローバル企業でさえ苦戦を強いられた76。モ
ジュール製造の過剰生産のために、2011年から始まっ
た一連の倒産や破産が2013年も続いた77。
ため、ますます多くの時間と資金を投資した90。産業
は現在商業化段階だが、プロジェクト拡大のための資
金繰りや、研究所の外で高収益を持続的に実証するこ
となど、いくつかの課題は残る91。
24以上の米国の太陽光発電製造業者が近年この産業を
去り、また一説では、およそ欧州で10社、中国で50社
の製造業者が2012年の間に倒産した78。“一次請け”中
国企業(YinglinやTrina)でさえ工場が暇になること
が多く、競争の水面上にいることにさえ苦戦を強いら
れた79。年末までに、中国の最大手製造業者10社は国営
銀行から200億ドルの借り入れており、SuntechPower
の重要子会社も2013年初頭に破産宣言をした80。インド
で は、 国 内 の 製 造 の90%は 閉 鎖 に 追 い 込 ま れ る か、
2013年前半までに債務再編を申請した81。
CSPの市場
集光型太陽熱発電(CSP)市場は世界の総設備容量を
60%以上増加させ、約2550MWに達するなど2012年も
継続的な成長をみせた(図14と表R6参照)1。スペイン
での970MWの新規参入も合算され、市場は2011年と
比較して倍増した2。2007年末から2012年にかけて、世
界の総設備容量は年平均47%に及ぶ増加をみせた3。
また、他のアジアの会社は、米国の次世代テクノロジー
の 買 収 を 急 い だ。 ま たHanwha Group( 韓 国 ) は、
2008年のトップモジュールメーカーで、経営破たんし
たQ-cells(ドイツ)を買収した82。Forst Solar(米国)
とパナソニック(日本)はいくつかの製造所を閉鎖、
新規の工場設立計画も先送りを決めた。GE(米国)も、
コロラドに新設予定だった薄膜型の工場建設を中止
し、R&Dへ 復 帰 を 予 定 し て い る こ と を 発 表 し た。
Bosch Solar(ドイツ)も、セルとパネルの製造を2014
年に打ち切りと発表、またSiemens(ドイツ)も太陽
光発電事業からの撤退を表明した83。市場に生き残っ
たほとんどの企業で、R&Dよりもコストのかからない
製造プロセスの改善への投資をしていた84。
いくつかの製造業者が生産能力を全く生かせなかったり
店舗の閉鎖を余儀なくされたりする一方、とくに他の製造
業者は新たな設備を開いて、とくに発展途上国で積極的
に新しい市場を捜した85。2012年には欧 州からトルコ、
カザフスタンから日本、そしてマレーシアから米国にいた
るまで世界中で工場が新設された86。エチオピアの最初
のモジュール製造工場(20MW)は、国内市場を提供す
るために2013年前半に稼働を開始した87。
革新と製品差別化はますます重要になり、成功した製
造業者は上流でも下流でも多角化し、プロジェクト開
発または戦略的パートナーシップの構築を拡大してい
る 88。First Solarは、商業規模の太陽光発電所の開発
に集中するために、住宅向けの市場から立ち去った。
First SolarとSunPower(米国)は、ともに中国の市
場への参入するための取引を発表した。Trina Solarは、
総合的な太陽光発電の解決策を提供している。そして、
Canadian Solarは、プロジェクト開発と所有に動いて
いる89。
2012年は、CPVにとっても複雑な年であった。Skyline
Solar とGreenVolts(米国)を含む数社は閉鎖を決め、
SolFocus(米国)は売却することを発表した。しかし、
それらの会社は、新興成長市場に製造施設を建設する
集光型太陽熱発電(CSP) パラボリック・トラフ型発電は最も成熟した技術であ
り、2011年末に運転していた全ての施設の95%、また、
2012年中頃までに建設された設備の75%を占める4。さ
らに、タワー式/セントラル式発電がますます一般的
になってきており、今年の中頃に建設中の発電所の
18%を占め、次いでフレネル式(6%)と開発中のパラ
ボリック技術が続く5。
スペインは引き続き導入量および設備容量ともに世界
をけん引し、950MWの追加により稼働中の発電容量
を95%増加させ合計1950MWを記録した6。世界市場と
同様、スペインでもパラボリック・トラフ式発電が独
占しているが、2012年には世界初の商業用フレネル式
発電所の完成も実現した7。また世界初のCSP・バイオ
マスのハイブリッド発電所も完成した8。一方新規建設
に対する猶予期間、遡及的なFIT、全発電者への課税
などを含む2012年から2013年初期にかけた政策変更は
スペインの産業に新たな難題をつきつけた9。
米国は年間稼働容量を507MWとし、総設備容量にお
いては世界第2位の市場を保有した10。2011年の新規設
備容量は無かったものの、2012年末には2年後の稼働
を目途に1300MWを超える増設が行われた11。同年末
にカリフォルニア州のモハーベ砂漠で建設中であった
Ivanpah発電所の建設は75%完了しており、稼働開始
の 際 に は 一 般 家 庭 の14万 世 帯 に 電 力 を 供 給 で き る
392MWの発電所として世界最大のCSP施設となる12。
また、年末までに80%が建設完了していたSolana発電
所(280MW)は、稼働開始とともに世界最大のパラ
ボリック・トラフ式発電所になる13。
その他には主に北アフリカで100MWを超える発電容量
が年末には稼働し、いくつかの比較的小規模なプロジェ
クトが、2012年には登場した。オーストラリアでは、
太陽熱発電を利用した石炭火力発電所であるLiddel発
電所に9MWを追加し、チリは鉱業会社にプロセス熱を
供給する南米で最初の10MW規模のCSP発電所を建設
した14。その他すでにCSPを導入済みの国では2012年の
増加は見られず、具体的にはアルジェリア(25MW)、
エジプト(20MW)、モロッコ(20MW)(これら3か国
は太陽熱発電とガスのハイブリッド発電所に含まれる
─ 38 ─
CSP産業
産業活動はスペインと米国に集中していたが、さらに
オーストラリア、チリ、中国、インド、MENA地域、
南アフリカでも拡大を見せた28。2012年は主にスペイ
ンおよび米国において雇用の多様化の傾向が見られ、
また国際的にも生産能力がわずかに増加した29。近年
の太陽光発電および天然ガスの低価格化や、国際的な
不況、スペインでの政策転換などの理由から、CSP生
産者や開発者にとって不確実性が生じている30。
アフリカ、中東、アジア、ラテンアメリカ全土に広が
る投資事業からも見て取れるようにCSPへの関心はと
くに新興国で増加している。2012年の最も活発な市場
の一つは、50MWの太陽熱発電タワーと100MWトラ
フプラントの建設が始まった南アフリカであった18。
ナミビアは2015年までに完成予定のCSPプラントの計
画を発表した19。MENA地域ではいくつかの開発銀行
が資金提供をしている。同地域は国内向けと輸出向け
を合わせて今後数年間で北アフリカ地域に1GWを超え
る新規設備容量をもたらすであろう野心的な目標値を
持っている20。サウジアラビアとアラブ首長国連邦は
急速に増加するエネルギー需要と輸出用原油の貯蓄に
備えCSP導入を計画し、ヨルダンも同様の事業を検討
中である。2013年初めにはサウジアラビアが相当量の
CSP設備容量を含んだ競争的な入札制度を導入した21。
インドは2013年末までに500MWの導入を予定していた
が、一部の事業は撤回され、National Solar Missionの
第2段階も延期されるなど全体の3分の1のみが予定通り
に完成を迎えるであろう22。オーストラリアでは、既存
の石炭施設に蒸気を供給するために44MWのプラント
が建設中である23。ラテンアメリカではアルゼンチン、
チリ、メキシコ、欧州の数か国、イスラエル、および
中国を含む多くの国が、建設中のプロジェクトを持っ
ているか、CSP発電所を導入する意向を示している24。
一部の専門家は太陽光発電における低価格化と太陽光
パネル(PV)の普及が顕著なことからCSP参入の機会
が閉ざされてきていることに懸念を示している25。しか
し蓄熱機能による他の自然エネルギーの共同利用の促
進可能性や、低価格で蒸気を既存の発電所へ供給でき
るなどの利点は残る26。さらに、CSPは産業や脱塩の過
程での熱利用と冷却に利用することも可能である27。
スペイン企業は、世界全体の4分の3のCSP設備容量を
所有し業界をけん引しつづけ、60%を超える設備容量
が2013年初旬の完成を目指している34。しかしスペイ
ン企業は 、国内の政策変更に悩まされ、他国の企業
も 同 様 で あ っ た。SolarHybrid社 同 様、 破 産 し た
SolarMillenium社(ドイツ)の米国の子会社も支払い
不能手続きを提出した他、BrightSource社はIvanpah
計画を含むいくつかの事業を継続していたが予定通り
の公表は行わず、Siemens社(ドイツ)は太陽光発電
市場の価格競争の激しさを理由に2012年末に事業撤退
を決定した35。Schott Solarは11月には1万基目の太陽
熱集熱器を生産したが、2013年の初めにはCSP部署の
大部分の出資を募っていた36。
CSPは大きな設備投資を必要とするため、個々の企業
は技術の研究開発からのプロジェクト運営と所有権ま
で、バリューチェーンのいたるところに関与している。
スペインと米国には大規模なサプライチェーンが現れ
ていて、より多くの企業がCSP事業に参加している37。
より製品の価値を高める、もしくは費用を縮小するため
企業は様々なCSP技術を取り入れる開発努力を行ってい
る。ドイツのProtargetは1〜20MW規模への新規参入計
画を作成し、標準的な生産過程やモジュール構造がより
短時間で費用効率の高い導入をもたらすと表明した38。
3M社とGrossamer社は設備コストを削減するため、より
軽 量でガラスより高反 射のフィルムを利用したアパー
チャー・パラボリック・トラフ型設備の世界最大規模の
米 国 の 実 証 設 備 の 運 用を開 始した39。S ola r Power
Group(ドイツ)、Sopogy(米国)、Abengoaなどいくつ
かの生産者は商業用熱利用・冷房利用および脱塩のため
の太陽熱集中装置の市場取引を開始した40。
曇りや夜の間にCSPによる電力をグリッドへ送り、安
定した容量とアンシラリーサービスを提供し、統合の
─ 39 ─
第2章
太陽熱発電所を所有)、タイ(5MW)がそうした国に
含まれる15。中国、フランス、ドイツ、インド、イスラ
エル、イタリア、韓国などいくつかの国では小規模な
実証試験発電所の稼働があった16。また、アラブ首長国
連邦(UAE)はShams1(100MW)と名付けられた中東・
北アフリカ(MENA)地域初のCSP発電所の完成によ
り2013年3月にCSP保有国に加わった17。
2012年 に お け る 上 位 企 業 は、 製 造 お よ び 開 発 の
Abengoa(スペイン)、製造のSchott Solar(ドイツ)、
および開発者Acconia、ACS Cobra、そしてTorresol(す
べてスペイン)に加え、ABB(スイス)、BrightSource
(米国)とACWAである31。サウジアラビアに拠点を置
くACWAは2012年の中心的存在であり、南アフリカと
モロッコでの2つの大規模プロジェクトをAccionaおよ
びTSK(パキスタン)と提携した32。中国企業のCSP関
連部品製造事業への注力も目立ち、近い将来主要な供
給元になるであろう33。
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
図14.
世界の集光型太陽熱発電設備容量(1984年∼2012年)
メガワット
2,600
2,550
2,400
2,200
2,000
1,800
1,600
1,580
1,400
1,200
1,080
1,000
800
485
354 354 354 354 354 354 354 354 354 366
600
400
200
14 74
0
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2011
2012
出典:本章の巻末注1を参照
課題を減らすために、蓄熱技術は新規発電所の重要な
特徴となっている41。蓄熱に最も広く使用されている
のは溶融塩であるが、蒸気、化学物質、温度躍層、コ
ンクリートなど他にも試験運用や開発が進んでいる42。
れ、年末には合計247GWthに達した*1。市場における
約49GWth(>96%)がガラス管式集熱器であり、その
他は温水プール用の非ガラス管式システムやガラス管
と非ガラス管の空気式集熱器であった2。
規模の経済によってコストを低下させるために、CSPの
規模が大きくなってきている。スペインの発電所は規制
制限により50MWに制限される一方、米国やその他の地
域での新規事業は150〜500MWかそれ以上の規模であ
る。規模の経済から設備の巨大化はコスト削減になるが、
適正規模は技術にも影響される43。いくつかの事業は乾
燥冷却機能を導入し、水需要を抑制し、乾燥した日照の
いい地域などに重要な技術を導入している44。
太陽熱利用設備容量(全タイプ)の過半数は中国およ
び欧州にあり、世界市場の90%、2011年の設備容量の
81%を占めていた3。稼働中の総設備容量上位国は中国、
米国、ドイツ、トルコ、ブラジルであった4。中国は真
空ガラス管式集熱器に特化していた一方で、米国で導
入されたのはほぼ温水プール用の非ガラス管式システ
ムであった。非ガラス管式システムで特筆すべきは
オーストラリアと、より少量ではあるがブラジルであ
る。その他の市場は主として平板ガラス式集熱器技術
に集中している5。
ここ数年でCSP価格は蓄熱設備の有無に関わりなく大
幅に下落した(表2、p.49参照)45。備品価格は変更され
る可能性がある一方、アルミニウム、コンクリート、
ガラス、鉄を含めたCSPの主な部品は供給不足には
陥っていない46。
太陽熱利用と冷房 太陽熱利用と冷房市場
太陽熱利用技術は、多くの国で温水の生産に大いに貢
献しており、空間暖房と冷房利用、産業工程での利用
で も 増 加 し て い る。2011年 に は 全 世 界 で 約51GWth
(7200万㎡を超える)の太陽熱利用設備容量が導入さ
ガラス管式集熱器システムのみを対象にすると、市場
は15%成長し、2011年末の世界総設備容量(223GW)
に よ り 毎 年 約193TWh(696PJ) の 熱 を 生 産 し た ※6。
2011年の新規導入ガラス管式集熱器市場をけん引した
のは中国、トルコ、ドイツ、インドおよびブラジルで
あった。ブラジルとインドの順位は逆転するが、同国
は総設備容量においても上位であった(図15、16およ
び表17参照)7。
2012年末までに、稼働中の太陽熱利用設備容量は推定
282GWthに達した8。ガラス管式集熱器の世界設備容
*
2011 年は、確実な世界的データと多数の国の統計が入手可能な最新の年である。
ほとんどの国では水式ガラス管集熱器の統計データのみ収拾しているが、主要な水式非ガラス管集熱器の市場でも統計はとられている。空気式集熱器の統計は多少不正確だが市
場にも多少影響している。全機種の統計データがある国とそうでない国との混合を回避するため GSR では水式ガラス管集熱器を主として焦点を当てている。
※
─ 40 ─
中国内のほとんどの需要は住宅利用目的であり、地方自
治体による法令の影響から大規模アパートでのシステム
導入が増加している13。建物の壁やバルコニーへの太陽
熱システムの導入は中国市場でも成長分野であり、屋上
設置型設備の導入だけで市場の60%を占めていた14。
経済危機の影響による建築改修の停滞や太陽熱利用を
支援する政策の削減などの抑制要因はあったものの、
追加設備容量の大半を欧州が占めた15。総導入量に関
して長期的にEUを先導してきたドイツ、オーストリ
アの両国はそれぞれ市場が縮小した16。
ドイツは805MWthの追加により11.4GWthを導入し、
引き続き欧州で最も大きな市場である。しかしこれは
2011年の889MWthよりは低く、2012年1月の奨励金削
減も影響しているとみられる17。オーストリアの市場
は、主に投資家に対する太陽光発電の大きなアピール
が影響し、2011年に17.8%減少し、続いて2012年には
10.3%縮小した18。ギリシャの市場は経済の混乱にもか
かわらず、電気代および灯油価格の上昇により上向き
傾向で2011年には7.5%、2012年には5.7%の増加があっ
た 19。欧州市場が多様化する中、デンマークやポーラ
ンドなどの発展途中の市場をもってしても2012年にお
ける同地域の大規模市場の停滞は補えなかった20。
トルコでは2011年末にはガラス管式集熱器がほぼ10.2
GWth稼働していた21。市場は政府の優遇措置がなく、
天然ガスネットワークに対する世間の感心の高さにも
関わらず、堅調に推移した22。ホテルや病院に加えて、
低所得の住宅部門はトルコの重要な市場であり、多世
帯構造は最も急成長している市場部門であると考えら
れている23。
日本とインドは中国を除くとアジア最大市場である。
インドの導入量は2011〜2012年度において0.6GWthを
超え、合計4.8GWthを2013年初めに記録した24。日本
の市場は2008年ほどではないが、2011年と2012年に限
定された成長を経験し、韓国は近年においては少ない
導入量であった25。しかしタイ市場は新ハイブリッド
システム(太陽廃熱)に対する報奨金や、2012年の助
成金システムの13%増加も影響し成長をみせた26。
ブラジルは非ガラス管式集熱器を含め0.6GWth近くを
導入し2012年を5.7GWthで終了した27。ブラジル市場
は、Minha Casa Minha Vida(「私の家、私の生活」)
計画のように低所得者向け住宅への太陽熱利用の義務
付けも影響し急成長した28。メキシコも存在感を示し
始め、アルゼンチン、チリ、ウルグアイにも小規模で
はあるが、成長している市場がある29。
さらに北米では、国内の市場は比較的小さいにも関わ
らず米国が世界の稼働中非ガラス管式集熱器の市場の
約3分の2を占めていた30。しかし2010年と比較して2011
年の新規導入量は減少した31。少なくともカリフォルニ
アでは低価格な天然ガスや、太陽熱集熱器技術への関
心度の低さから住宅部門での販売が困難を極めた32。一
方で太陽光発電はサードパーティオーナーシップモデ
ルが成長傾向にあり、いくつかの州では自然エネルギー
割当基準に太陽熱利用を組み込んでいる33。
アフリカのいくつかの国では太陽熱利用が行われてお
り、エジプト、モザンビーク、チュニジア、ジンバブエ、
サハラ以南で最も成熟した市場である南アフリカなど
が該当する34。チュニジアのPROSOLプログラムは5年
で13倍以上の年間導入量を記録し、合計で64MWthと
なった35。中東ではイスラエルが設備導入量をけん引
し、次いでヨルダンやレバノンなどの住宅部門での浸
透率が13%あり、国家の補助金、ゼロ金利ローン、自
治体委託などによって市場が動かされている地域と
なっている36。
2011年の水式ガラス管式集熱器導入量は、世界ランク
は22位であるがキプロスが一人当たりの導入量では首
位であり、1000人あたり541.2kWthであった。次いで
イスラエルが396.6kWth、オーストリアが355.7kWth、
バルバドスが321.5kWth、ギリシャが268.2kWthであっ
た37。意外にも、一人当たりの新規導入量では中国がイ
スラエルに次いで2位であり、オーストリア、キプロス、
トルコの順であった38。
太陽熱暖房および冷房の市場も成長している。最も成
熟した市場はドイツとオーストリアであり、あらゆる
規模の建物での温水供給や暖房の導入、地域熱供給の
ための大規模熱生産設備、冷房設備などの先進的な取
り組みが各市場の大きな割合を占めている39。太陽熱
技術とヒートポンプ技術のハイブリッドシステムも欧
州市場で注目を集め始めている40。世界的には温水供
給と暖房の両方を備えたシステムの市場占有率は4%
と成長途中であり、南米(ブラジル、メキシコ)とア
ジア(中国、インド、日本)で導入されている41。
太陽熱技術を利用した地域熱供給システム(しばしバ
イオマスなど他の熱源とも接続される)はオーストリ
ア、デンマーク、ドイツ、スウェーデンなどで激しい
価格競争に直面している42。2012年には欧州で同シス
テムが追加、拡大、計画された。年末には175の大規
模 太 陽 熱 シ ス テ ム が 供 給 網 に 接 続 さ れ319MWthと
なった43。さらに200MWthが計画され、そのうち75%
が欧州における上位10の大規模太陽熱システムがある
デンマークによるものである44。大規模熱システムは
南アフリカ、中国、カナダでも導入され、カナダでは
北米初の季節間太陽熱蓄熱システムが地域需要の97%
─ 41 ─
第2章
量は255GWthに達した(図17参照)9。中国は太陽熱需
要においても主要国であり44.7GWthを追加し2011年
には市場が11%成長した。総設備容量は18.6%(純増
分28.3GWth)増加し、180.4GWthに到達し世界総設備
容量の3分の2となった10。中国では電気もしくはガス
温水器より太陽熱温水器の方がはるかに安価であるこ
とが市場活性化の鍵である11。しかし、建築部門での
停滞傾向や地方での飽和状態により2009年から成長は
停滞している12。
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
太陽熱利用
図15.
世界の新規太陽熱温水/暖房設備容量 上位12か国の割合
(2011年)
オーストリア
2.6%
1.8%
1.5%
0.7%
0.6%
0.5%
0.4%
0.4%
0.4%
0.3%
0.3%
その他
7.9%
トルコ
ドイツ
インド
ブラジル
イタリア
イスラエル
オーストラリア
スペイン
ポーランド
フランス
(本国)
中国
83%
合計新規設備容量
~ 49 GWth
出典:本章の巻末注7を参照
図16.
世界の太陽熱温水/暖房設備容量
上位12か国の割合
(2011年)
スペイン
4.6%
4.6%
1.7%
1.5%
1.5%
1.3%
1.3%
1.3%
0.9%
0.8%
0.8%
その他
11.3%
ドイツ
トルコ
ブラジル
インド
日本
中国
イスラエル
68%
オーストリア
ギリシャ
イタリア
合計容量
オーストラリア
~ 223 GWth
出典:本章の巻末注7を参照
図17.世界の太陽熱温水器容量
(2000年∼2012年)
ギガワット熱
250
200
150
100
50
44
51
59
68
79
91
105
124
148
171
195
223
255
0
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
出典:本章の巻末注9を参照
2007
2008
2009
2010
2011
2012
注:データはガラス管式システムのみ
─ 42 ─
世界の太陽熱冷房市場は2004年から2012年の間に年平
均40%以上成長し、この期間に主に欧州での1000件の
設備導入があった46。大規模太陽熱冷房システムは経
済性が高いことから注目を集めている。一方住宅用の
小規模(<20kW)冷房設備も住宅部門では注目されて
おり、中欧やオーストラリア、地中海諸島、中東など
の日照状況がよく乾燥した気候の地域で増加した47。
さらに、とりわけ冷房設備が重要な地域ではピーク需
要対応目的などでの太陽熱冷房の導入可能性がある48。
太陽熱および 蒸気は、商業向けのプロセス熱と冷房も
供給可能である。2010年には約200のプロセス熱システ
ムが世界中で稼働し、合計で42MWthであった。インド
が首位で10%、次いでブラジル7%、イスラエル6%であっ
た 49。2012年の新規事業には中国の皮革工場や、米国
の七面鳥加工会社、欧州の3つのハイネケンのビール生
産施設が含まれた50。プロセス熱はオーストリアの大規
模太陽熱利用システム容量の大部分を占め、タイの商業
用太陽熱向け補助事業の大半を占めた51。しかし商業用
の地域熱供給ネットワーク、太陽熱空調、太陽熱プロセ
ス熱はいずれも世界容量では1%未満となっている 52
太陽熱利用・冷房産業
太陽熱利用・冷房産業はとくに欧州で2012年も課題に直
面した53。欧州の大規模な企業は順調に成長している一
方、太陽熱の専門家の間で拡大が遅れている54。東欧で
は徐々にではあるが安定的な発展が継続している55。し
かしいくつかの中欧、南欧諸国での市場の減速は企業に
既存のシステムの修繕や交換、生産容量の削減や、欧州
地域以外での需要に対応するため新規施設の建設などを
余儀なくされた56。また太陽熱利用・冷房産業は強力な
企業による買収や統合などの特徴も顕著である57。
国内上位100社の市場シェアが近年40%から70%に上昇
している中国でも産業の急速な統廃合は継続していて、
推定1000の太陽熱会社が2010年以降に廃業している58。
中国からの安価なガラス管に関連する高い故障率に応
じて、2012年は品質規格や保証性に注目が集まった59。
中国は世界の太陽熱業界を数年にわたってけん引し
た。Sunrain Group社、Linuo Group社、Himin Solar社、
そしてSangle Solar社など最大手の企業の数々は製造
のすべての段階をまかなうため垂直統合を継続した60。
2012年5月にSunrain社は、太陽熱温水器の会社として
初めて上海証券取引所に上場した61。中国の水式集熱
器生産は大多数が国内で導入された真空管システムで
あるが、多くの企業が平板型と真空管型の集熱器両方
を提供し始めていて、近年では様々な型の集熱器輸出
が急増している62。
平板型集熱器の最大のメーカーにはGreenOneTec社
(オーストリア)、Bosch Thermotechnik社(ドイツ)、
Ezinc社(トルコ)、Soletrol社(ブラジル)、および
Viessmann Werke社(ドイツ)が含まれている63。ド
イツに拠点を置く企業は、2007年の平板型集熱器メー
カー上位19のほぼ半分を占めたが、2011年には3分の1
となった64。
ブラジルの成長市場は主要な業界関係者の間で関心を
集めている65。南アフリカは近年、導入者の急増は見
受けられるが国内生産者は中国からの輸入におされ減
少している66。レバノンもまた、急速な成長を経験し
ていて2008年の25社から2011年には130社以上に登録
企業の数が伸びた67。
価格動向は、導入システムの価格が人件費、設置場所(た
とえば建物が古いか新しいかなど)に影響されること
から国によって異なる68。接着剤や素材の改変と同様、
製造プロセスの自動化は2012年も増加しつづけた69。こ
うした進歩は、生産コスト低下をもたらしているが、
それらはほとんど材料費(銅、アルミニウム合金)の
上昇により相殺されている70。
空気式集熱器市場が拡大するにつれて生産者や品物も
増加している71。最大の市場は、大多数が空気式シス
テムに特化している欧州や北米にあり、水式システム
も供給している中国やインドのメーカーが空気式シス
テムも供給するようになった72。
太陽熱冷房への関心の高まりは、日立や三菱などの日
本企業を市場に呼び込んでいる73。太陽熱分野の技術
は歴史的に高い投資コストのために競合があったが、
2007年から2012年の間でコストが50%低下しさらなる
削減の余地も残る74。オーストラリアの太陽熱冷房規
格の導入などシステムの品質を向上させるための努力
もある75。
風 力 発 電 風力発電市場
2012年に約45GWの風力発電設備容量が稼働を開始し、
世界の総設備容量を19%増加させ約283GWとなった(図
18および表R8参照)1。主要市場における政策の不確実
性にもかかわらず、他の自然エネルギー技術より多く
の容量を追加し、再び風力発電にとって記録的な年と
なった2。上位10か国は、年末時点で世界の総設備容量
の85%以上を占めていたが、市場の拡大は続いた3。約
44か国が2012年に容量を追加し、少なくとも64か国は
年末までに10MW以上の総設備容量が報告され、24か
国では1GW以上が稼働していた4。2007年末から2012年
の間の風力累積年間成長率は平均25%であった5。
米国の導入量の影響から、2009年以来初めて新規容量
の大部分がOECD(経済協力開発機構)域内に設置さ
れた結果となった6。しかし発展途上国および新興経済
国の市場も、着実に主流となりつつある。米国と中国
が合計で2012年の世界市場の60%近くを占め、ドイツ、
インド、英国が後に続く7。その他設備容量導入の上位
10か国にはイタリア、スペイン、ブラジル、カナダ、ルー
マニアが入る8。EUは世界風力市場の約27%を占め、
─ 43 ─
第2章
を満たすという世界的な記録を作った45。
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
世界の総設備容量の37%をわずかに上回った(2011年
の40%から減少)9。
米国は2012年の世界最大の市場となりこれまでで最も
好調な年だった(図19参照)10。米国の導入量は2011年
と比較しほぼ倍増していて、導入された13.1GWの64%
が第四半期に追加された11。好調な市場は、タービン
部品の国内生産や技術向上による発電効率の発達や低
価格化、さらに大きくは連邦生産税控除の期限切れが
予期されていたことなどにも後押しされた12。
米国内のすべての新規発電容量の45%を風力発電が占
め、初めて天然ガスを超えた。年末時点で稼働してい
た60GWは、米国の1520万戸分の電力をまかなうのに
相当した13。導入容量の多い州は順に合計12GWを稼働
したテキサス(1.8GW)、カリフォルニア(1.7GW)、
カ ン ザ ス(1.4GW)、 さ ら に15の 州 で は 年 末 ま で に
1GWを稼働していた14。
合計8.4GWと2年連続で欧州第2位となった。総設備容
量ではドイツ、スペインに次いで欧州3位、世界では6
位となっている26。イタリア(1.3GW)
、
スペイン(1.1GW)
、
ルーマニア(0.9GW)
、そしてポーランド、
(ほぼ0.9GW)
がその他の主要市場であった27。またルーマニアの総設
備容量がほぼ倍増し、ポーランドでも55%近く増加した
ことから両国にとって記録的な年となった28。
インドは約2.3GWを追加し年末には18.4GWの総設備容
量となり世界第5位を維持した29。インドで最も重要な
連邦政府の風力発電報奨金が2012年初旬に中断または
減少したため、多くの州における強力な政策にもかか
わらず、国家レベルでの不確実性の影響を受け投資判
断や市場の鈍化がみられた30。中国とインド両国の減
速があったものの、アジアは4年連続で最大の市場で
あり続け、2012年に15.5GWの合計を追加し、一方で
北米は14.1GW、欧州は12.2GWの増加であった31。
その他の最も重要な成長はラテンアメリカで見られた。ブ
中国は世界市場の27%を占め、13GW近くを導入したが、 ラジルは1.1GWを追加し新規設備導入量世界第8位とな
2009〜2011年と比較すると導入量は減少した15。新規事
り、2012年は400万戸の住宅用電力を賄えるほど発電した
業の品質、安全性、グリッド接続への懸念に対するより (2.5GW)32。しかしブラジルの電力網の拡張は風力発電設
厳しい承認方法に影響され市場が停滞したのである16。 備容量と比較して成長が遅く、風力発電の系統連系に影
もう一つの主要な制約は2011年の平均16%という高率な
響をきたしている34。メキシコも好調な年を過ごし、0.8GW
出力抑制で、風力発電の電力を需要地へ送る際送電網
を追加して合計1.4GWに近づき、地域最大の風力発電プ
の容量を出力が一時的に超えた場合に生じた 17。
ロジェクト(306MW)を稼働させた33。同地域ではアル
ゼンチン、コスタリカ、ニカラグア、ウルグアイ、国
しかし、その事実がありながらも年末には中国の風力
内初の商業用風力発電所(30MW)を稼働させたベネ
発電容量は2010年や2011年同様に約75.3GWあり、そ
ズエラなどが設備容量を追加した35。
のうち約15GWは商業的に認証されていなかったもの
の、ほとんどが供給網に電力を供給していた18。2012
さらに北米では、カナダが0.9GW以上を追加し合計
年には1004億kWhを発電し、2011年比37%増で初めて
6.2GWと史上2番目に好調な年を迎えた。オンタリオ
原子力発電を超えた19。年末には25%近くの設備容量が
州は2GWを超え、アルバータ州およびケベック州では
モンゴル自治区にあり、次いで河北省(10.6%)、甘粛
それぞれ1GWに達し、3州は目標値を達成した36。
省(8.6%)と、遼寧省(8.1%)、9州はそれぞれ3GW以
上の設備容量があり14州はそれぞれ1GW以上あるなど
アフリカと中東の発展は乏しかったが、チュニジアは
風力発電は中国全土に拡大している20。
50MWを加え設備容量をほぼ倍増させ、エチオピアは
52MWを導入し商業規模の風力発電所を持つ国のリス
欧州連合(EU)は11.9GWを追加し、総風力発電設備
トに加わった。さらに南アフリカでは合計0.5GWとな
容量は106GWを超え、2012年に100GWの節目を通過
るいくつかのプロジェクトの建設が開始された37。そ
21
した 。 風力発電(26.5%)は、太陽光発電(37%)に
の他トルコは0.5GWを追加し合計2.3GWに達し、太平
洋で唯一の設備容量追加国のオーストラリアは0.4GW
次いで新規発電容量が第2位になり(3位は23%で天然
を追加し合計2.6GW近くになった38。
ガス)、年末までに風力発電はEUの合計発電容量の
22
11.4%を占めた 。記録的な成長とは裏腹に、EUの再
生 可 能 エ ネ ル ギ ー 行 動 計 画(NREAP) の 遅 れ や、 世界的には2012年末までに13か国が洋上風力発電の稼
2012年の追加量が経済や政策の不確実性が増している
働を開始しており、1.3GWの追加を合計すると5.4GW
ことを反映していないことなどが懸念される(ほとん
に到達した39。そのうち90%以上は北欧に設置されたも
23
どの導入容量は以前に許可され、融資されていた) 。 の で、10か 国 で1.2GWを 追 加(2011年 か ら35%増 加 )
いくつかの新興市場は大幅な成長のための態勢を整え
したことで合計5GWとなり洋上風力をけん引した40。
たが、陸上風力のあまりの設備容量の多さから土地問
英国は欧州における増加量の73%を占めていて、世界
題が生じたように、グリッド接続と経済問題は欧州諸
最大の洋上風力発電所London Array計画(630MW)
国の発展に対する多くの課題を提起している24。
の初期段階の完成が大きく影響している。2012年の洋
上風力設備容量は英国が2.9GW、次いで欧州ではデン
ドイツは2.4GWを導入し過去10年中最高の導入量を記
マーク(0.9GW)、ベルギー(0.4GW)、ドイツ(0.3GW)
録し、合計31.3GWで引き続き欧州最大の市場であっ
の設備容量となった41。その他の新規導入された洋上
25
た 。英国は1.9GW(45%が洋上)を追加し、年末には
風力は中国127MW(0.4GW)、日本0.1MW(25.3MW)、
─ 44 ─
風力発電
図18.
世界の風力発電設備容量
(1996年∼2012年)
ギガワット
283
300
238
250
198
200
159
150
100
50
59 74
48
39
24 31
17
14
10
6.1 7.6
94
121
0
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
出典:本章の巻末注1を参照
図19.
風力発電設備容量および新規容量 上位10か国
(2012年)
ギガワット
80
+13
70
+13.1
60
2012年導入
2011年既存
50
40
+2.4
30
20
+1.1 +2.3
10
+1.9 +1.3 +0.8 +0.9 +0.1
0
中国
米国
ドイツ
スペイン
インド
英国
イタリア
フランス
カナダ
ポルトガル
出典:本章の巻末注10を参照
図20.
風力タービン製造上位10社による市場占有率
(2012年)
22.6%
Mingyang(中国)
2.7%
Sinovel(中国)
3.2%
United Power(中国)4.7%
Goldwind(中国)
6.0%
Gamesa(スペイン)
6.1%
GE Wind(米国)
15.5%
Vestas(デンマーク)
14.0%
第2章
その他
Siemens Wind Power
(ドイツ)
Enercon(ドイツ)
Suzlon Group(インド)7.4%
9.5%
8.2%
出典:本章の巻末注71を参照
─ 45 ─
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
韓国3MW(5MW)であった42。
費用対効果が良いため個々のプロジェクトの大型化傾
向は継続した43。ルーマニアでは欧州最大の陸上風力
発電所(600MW)がグリッドに接続されており、オ
レゴン州で営業を開始した米国最大の風力発電所
(845MW)は23万5000戸分の家庭に電力を供給できる
と想定されている44。
独立系発電事業者と電力事業者は導入設備容量の観点
からは現在市場で最も重要な顧客だが、コミュニティが
所有する風力発電プロジェクトへの関心は、オーストラリ
ア、カナダ、日本、米国、欧州の一部などで上昇してい
る 45。米国のアイオワ州だけで少なくとも6つのコミュニ
ティ ·プロジェクトが2012年に登場し、年末までにオース
トラリアでもいくつかのプロジェクトが進行した46。日本
では2011年3月の福島の災害以来、関心が大幅に増加し
ている47。コミュニティパワーは、デンマークとドイツの
所有型事業を代表するものである 48。
の風力発電設備容量があり、7月を通じて南オースト
ラリア州では、電力需要の26%を風力発電でまかなっ
た61。米国では、アイオワ州が電力需要の25%近く(昨
年は19%)、南ダコタ州が24%(昨年より22%)を風力
で賄ったように、風力発電が国内の総発電量の3.5%
(2011年から2.9%増)、9つの州の電力需要の10%以上
を満たした(2011年では5%)62。
風力発電産業
2005〜2009年にかけて、世界の電力需要の増加に伴い
風力タービンの価格は上昇し、材料費などにも影響し
た。しかしそれ以降、規模の拡大と効率化によって稼
働率を向上させ、タービン価格、稼働、維持費用を軽
減させている63。世界のタービン市場での供給過剰か
ら価格はさらに低下しており、化石燃料に比べて風力
発電のコスト競争力は改善されディベロッパーに利益
をもたらした。しかしタービンメーカー間での価格競
争の熾烈化や、一部の市場での低コストのガスとの競
争、経済緊縮による政策支援減少などの要因が組み合
わさり困難が続いている64。
小規模タービンはオングリッドとオフグリッドの両方
2008年のピーク時に比べて、タービンの価格は2012年
の電力需要に対応するため利用数が増加しており、ま
に安定を迎えるまで欧州市場で20〜25%程度、中国市
た低コストの系統接続インバーターの開発や化石燃料
場では35%以上下落した65。また、風力発電所の運営維
の価格上昇、政府の産業奨励策などによって後押しさ
*49
れている 。オフグリッドとミニグリッドの活用は、 持費用も業者間の競争激化、改良されたタービン性能
とくに中国や他の発展途上国で普及している50。技術の
により大幅に減少した66。その結果、陸上風力発電は
適用方法は拡大していて、農村電化、揚水、通信、防衛、 いくつかの市場では従来の電源とのコスト競争力を発
および他の遠隔用途などにおよぶ51。定格容量が10kW
揮し、キロワット時あたりではより安価な市場もある
未満のものと、10〜500kW規模のものと2つの異なる (オーストラリア、インド、米国のいくつかの場所を
市場がある52。一般的に資金調達の容易さから市場は
含む)。しかしいくつかの国では新たなシェールガス
50kW以上のタービンに向かって進化している53。
の開発利用により、風力発電(さらにはその他自然エ
ネルギーも)の天然ガスとの競争を困難にしている67。
世界的には少なくとも73万の小規模タービンが2011年
洋上風力発電においてはいずれも陸上風力発電と比較
末までに運営していて、合計576MW(2010年より27%
し最低でも2倍の価格となっている68。
54
増 ) に 達 し た 。 中 国 は 世 界 シ ェ ア が40%、 米 国 が
35%、英国が11%、以下ドイツ2.6%、ウクライナ、カ
世界のタービンメーカー上位10社は世界市場の77%を
ナ ダ、 イ タ リ ア、 ポ ー ラ ン ド、 ス ペ イ ン と 続 く55 。
獲得し、2011年同様中国(4)、欧州(4)、インド(1)、
2012年の米国での小規模タービン売上高の合計容量は
米国(1)出身であった。2000年以降のトップメーカー
18.4MWだった56。中国を除いて、関心のほとんどは北
であったVestas社(デンマーク)は、厳しい米国市場
米および欧州にあり徐々に市場も成長している57。
を主因としてGE Wind社(2011年は3位)にリードを
譲った69。2011年と比較しSiemens社は第9位から第3位
2012年末の総風力発電容量は世界の電力消費量の少なく
へ浮上、次いでEnercon社(ドイツ)とSuzlon Group
とも2.6〜3%を満たすのに十分だった58。EUでは年末の風
社(インド)がそれぞれ順位を1つずつ上げた70。他の
力発電容量は平均的な風量の年における電力消費の7%
トップ企業は、Gamesa社(スペイン)とGoldwind社、
をまかなうのに十分な量であった(2011年の6.3%から増
United Power社、Sinovel社、およびMingyang社(す
59
加) 。デンマーク(2012年に30%、2011年のほぼ26%か
べて中国)であり、GoldwindとGamesaの両方はトッ
ら増加)、ポルトガル(20%、18%から増加)、スペイン
プ5から脱落した(図20参照)71。
(16.3%、15.9%から増加)、アイルランド(12.7%、12%か
ら増加)、ドイツ(7.7%、8.1%から減少)など、いくつか
2012年には、米国全土で550以上の製造施設で風力ター
の国では風力発電によって電力需要の大きな割合をまか
ビン部品を製造していた。現在も政策の不確実性が続
なった60。
いているにもかかわらず、過去10年間にわたって機器
のシェアは大幅に増加し輸送関連のコストを削減し、
ドイツの4つの州では年末時点で電力需要の49%以上
雇用を創出した(補足4参照)72。欧州では、東欧などの
* 小規模風力発電システムは、一般的に住宅用電源、農場、あるいは中小企業の電力消費をまかなう規模のタービンを利用しており、バッテリーの充電、灌漑、小型商用、また
は産業用の用途が多い。The International Electrotechnical Commission(IEC: 国際電気標準会議)は上限を 50kW と設定し、
世界風力エネルギー協会と米国風力エネルギー協会は、
100kW 未満 を“小規模”と定義していて本報告書でもこれを利用している。しかし規模はニーズ、または国、州 / 地方の法律に応じて変化し、世界的に認められた定義やサイズ
の制限はない。
─ 46 ─
新興市場での洋上技術やプロジェクト開発に焦点が集
まった73。2012年後半には、ブラジルは11の製造工場
の本拠地となり、GEは建設中の施設を持ち、インド
は19の生産者によって9.5GWを超える生産能力を築い
た74。
しかし一般的に、タービン製造業は価格上昇、政府支
援の削減、過剰生産設備、いくつかのメーカーによる
拡大計画の破綻もしくは延期、稼働規模縮小、雇用削
減、破綻処理など多難が続いた75。政策の不確実性の
ために、米国では風力発電事業の全過程において雇用
削減が行われた76。Vestas社(デンマーク)はリスト
ラクチャリングを選択し、数千人の社員を解雇すると
ともにkW規模の機器製造を終了した77。 Sinovel社(中
国)は労働者に休暇を与え、さらにとりわけ中国では
多くの供給者の過剰生産が小規模企業を市場から追い
出 し、 多 く の 部 品 製 造 者 を 倒 産 に 追 い や っ た78 。
Suzlon社(インド)は3年連続で赤字を出しており膨
大な借金で苦労している79。
タービン設計はコストを削減および/または性能を向上
させるために進化しつづけ、より長いブレード、低い
風速への対応、および塔やブレードのための炭素繊維
の採用傾向などがある83。少なくとも2社は、低風速用
タービンを2012年に立ち上げ、GEは25〜40%のコスト
削減を可能にする柔軟性のある素材の開発を始めた84。
ブレードの自動製造に向けてのシフトと、従来の二重
誘導発電機に戻るシフト、中速ハイブリッド運転への
シフトも見受けられる85。
かつてない大規模なタービンへの傾向は2012年も継続
し、市場に供給される平均サイズは1.8MW(2011年は
1.7GW)に上昇した86。タービンの平均的なサイズは
デンマークで3.1MW、ドイツで2.4MW、米国で1.9MW、
中国で1.6MW、インドで1.2MWであった87。2012年に、
欧州で導入された洋上風力発電の平均規模は2011年比
14%増で4MWであり、31の企業が38の新しい洋上風力
発電事業を公表し、そのうち4分の3は5MW以上のも
のである88。7.5MWが市販されている最大サイズであ
り、ほとんどのメーカーは4.5〜7.5MWの範囲でター
ビンを開発しているが、いくつかの企業は2012年にさ
らに大規模な設備を開発する計画を発表した89。ター
ビンにも注目は集まり始め、より多くのエネルギーを
捉えるために長いブレードを装備し、REpower社は現
在配電盤の差し込み穴の高さが最も高いもので143
メートルのタービンを建て、Siemens社は「世界で最
も長いブレード」である75メートル級の完成を発表し
た90。
タービンの巨大化に加えて、洋上風力発電業界はより
水深の深い、より沖合いに進出し、各プロジェクトの
総設備容量も大規模になり浮体式洋上風力発電への関
心が高まっている91。いくつかの国では、浮体式風力
発電の実証事業が行われており、日本も2012年に初の
100kW機器を建設し、2013年に本格的な導入を計画し
ている92。欧州では、平均的な洋上風力発電所の規模
が2011年(〜271MW)に対して36%の増加となった93。
洋上風力発電事業が大きくなるにつれて、生産能力や
導入資源の競争は激化し、垂直統合や導入用大型船を
含めた供給チェーン内の合併、生産者による容器の確
保・投資などの傾向が浮上している94。
小規模風力産業(<100kW)はまた、販売ネットワー
クの拡大、世界中の生産者の増加、タービン認定の重
要性の高まりなど2012年には成熟しつづけた95。ほと
んどの生産者やサービス提供者は、中国、北米および
欧州に集中していた96。
生き残るための多様化に向けた取り組みの一例とし
て、インドのRRB Energy Ltd.は、アフリカや他の新
興市場への輸出目的で、2005年に廃止された225kWの
やや大規模なタービンの生産を再開した97。Gamesa社
は分散型コミュニティ風力発電プロジェクトの開発に
移行する予定である98。
主な自然エネルギー技術、その特性とコストの概要は
49〜50ページの表2参照99。
─ 47 ─
第2章
同時に、2012年は拡大と技術革新も続いた。ローカル
コンテンツ(政策の展望部分参照)の要件は、通商摩
擦を量産しただけでなく競争上の優位性のためにター
ビン生産工場を成長市場付近に建設させた80。中国企業
は新興国市場へ一括取引(政府担保ローンを含む)を
提供し、国内の過剰生産能力を分散するため地元企業
と子会社契約およびパートナーシップ契約を確立して
いる81。メーカーも比較的安定した利潤の提供が期待さ
れているタービンの維持管理の成長市場でシェアを高
めるには、多くのリスクを想定している82。
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
補足4:自然エネルギーの雇用
主に2009年から2012年の期間における幅広い調査か
*
ら、世界全体で推計570万人が直接または間接的に 、
自然エネルギー分野の仕事に従事している(表1参照)。
この世界的な数値は、自然エネルギー世界白書2012で
公表された500万人という雇用推計との前年比としてその
まま捉えるのではなく、データを精査する継続的な取り
組みとして理解されるべきものである。世界全体の数値
はいまだ不完全で、方法論は調整されておらず、使用さ
れる様々な調査の質は不揃いである。世界の自然エネ
ルギーの労働力は、技量が低度なものからきわめて高
度なものまで、幅広い種類の雇用と職業を含んでいる。
自然エネルギーへ投資している国の数は増えているが、
雇用の大半は、ブラジル、中国、インド、EU加盟国、
米国を含む、比較的少数の国々に集中したままである。
これらの国々は、主要な設備製造国やバイオエネルギー
原料の生産国であり、また主要な設備導入国でもある。
雇用は他国でも同様に伸びており、途上国のオフグリッ
ド部門では(技術者や営業スタッフといった)雇用数が
増えている。たとえば、バングラデシュの農村における
小型太陽光パネルの販売、設置、維持管理により、7
万人もの人々が直接的に生計を立てている。さらに、約
15万人が直接的または間接的に雇用されている。
技術ごとに見ると、現在、約138万人におよぶ雇用数を
バイオ燃料のバリューチェーンが占め、大半は季節的に
雇用数が変動する原料の栽培、収穫にあたる。ブラジ
ルのサトウキビベースのエタノール産業は、バイオ燃料に
おける最大雇用主である。しかし、原料収穫の機械化
が進み、サトウキビとエタノール生産過程に関わる直接
的な雇用は、2011年に57万9000人にまで数を減らした。
EUのデータを除いて、バイオマス発電と熱利用の推計
値は、きわめてあいまいであり古いものである。表1に
ある地熱と水力発電のデータは、概算に基づいている。
太陽熱利用では、利用可能な資料にかなりの相違があ
り、中国だけでも雇用全体の推計値に37万5000人から
80万人まで開きがある。
風力産業における雇用の伸びは世界的にやや衰えた
が、近年、太陽光発電における雇用が急増している。
太陽光発電は、過剰生産と価格下落により製造側に一
時解雇や経営破綻を引き起こしたように混乱を経験し
ながらも、同時に施工関連業者の雇用は急増している。
経済危機や不利な政策転換の影響を強く受け、スペイ
ンの自然エネルギーの雇用は、2008年の13万3000人か
ら2011年は12万人へ減少した。太陽熱発電産業は、当
初、雇用減少の一部を相殺していたが、現在は政策転
換のため困難な状況にあり、2012年における雇用数は1
万8000人以下に減少した。フランスでは、2010年から
2012年の間に、主に太陽光と地中熱ヒートポンプにお
いて自然エネルギーの雇用の17%が失われた。ドイツ
は、2012年に2万3000人の太陽光発電の雇用を失った
が、1万7000人の風力発電の雇用を追加した。
アメリカでは、太陽光発電の設置に関わる雇用が増え
ている一方、風力とバイオ燃料の雇用数は、政策転換
や他の要因によって変動している。たとえば、アメリカ
のバイオ燃料の雇用は、原料価格の高騰や干ばつによ
る収穫の減少、需要低減などの影響により、2012年に
18万1300人から17万3600人まで減少した。
概して、世界各地で増加と減少を伴いながら躍動する
段階において(多少、混乱があるとはいえ)、世界全
体の自然エネルギーの雇用集計は増加し続けている。
表1.
世界の自然エネルギーにおける産業別の直接および間接雇用の推計
技術
世界
中国
EU
バイオマスa
バイオ燃料
バイオガス
地熱発電a
b
水力発電(小規模)
太陽光発電
集光型太陽熱発電(CSP)
太陽熱利用
風力発電
753
1,379
266
180
109
1,360
53
892
753
266
24
90
800
267
274
109
71
51
24
312
36
32
270
合計c
5,745
1,747
1,179
300d
ブラジル
米国
雇用(1000人)
152f
804e
217g
29
35
8
90
17
12
81
833
611
インド
ドイツ
スペイン
58
35
85
41
48
57
23
50
14
7
88
2
11
118
39
4
1
0.3
2
12
34j
1
28
391
378h
120
12
112
a 発電および熱利用。 b 大型水力発電の雇用情報は不十分なため小水力発電に焦点を絞った。小水力の定義は10MWを目安としている場合が多いが、
そ
の定義は国によって様々である。 c 各自然エネルギー源の合計の数値を概算した。 d 50万人と高めの推計もある。 e 2011年において、
約36万5000人
の雇用はサトウキビであり、21万3400人はエタノール処理である。
また、
サトウキビをバイオ燃料へ精製したり、収穫のために必要な設備製造を行う間接的な雇
用20万人も含む。2万6000人の雇用はバイオディーゼルである。 f バイオマス発電の直接的な雇用は1万5500人程度である。 g 2012年における、
エタノ
ールの17万3600人の雇用とバイオディーゼルの4万2930人を含む。 h技術別に分けられていない、公共的に資金を提供された研究開発と行政機関におけ
る、9400人の雇用を含む。 j スペイン再生可能エネルギー協会
(APPA)
による2011年の推計。Protermosolarは同年
(2万8850人という)
低い数値を提示
し、
さらに2012年には1万7816人まで減少したと発表した。
注:データは主に2009年から2012年のもので、国や技術により相違がある。合計が四捨五入した数値と合わない場合がある。
出典:IRENA、Renewable Energy and Jobs(Abu Dhabi:2013)
*
直接的な雇用とは、製造、設備の流通、敷地造成や設置など、自然エネルギー分野の中心的な活動に関連したものである。一方、間接的な雇用とは、その産業に関与する
ものである。
─ 48 ─
表2.自然エネルギー技術の現況:特性とコスト
技術
主な特徴
資本費用
(米ドル/kW)
標準的なエネルギーのコスト (均等化発電原価-米セント/kWh)
発電
バイオマスの燃焼:ボイラー 発電容量:25-200MW
または蒸気タービン混焼:
変換効率:25-35%
有機都市固形廃棄物(MSW) 設備利用率:50-90%
バイオマスガス化発電
嫌気性消化バイオガス
地熱発電
発電規模:1-10MW
変換効率:30-40%
設備利用率:40-80%
発電規模:1-20MW
変換効率:25-40%
設備利用率:50-90%
発電規模:1-100MW
設備利用率:60-90%
発電規模:1-18000+MW
発電方式:貯水池式、流れ込み式
設備利用率:30-60%
発電容量:0.1-1000kW
水力発電:オフグリッド/ 発電方式:流れ込み式、水流、
農村地域
調整池式
発電規模:<1->250MW
海洋発電:潮力
設備利用率:23-29%
最大発電能力:3-5kW(住居):
100kW(商業用):
太陽光発電:屋上設置
500kW(産業用)
設備利用率:10-25%(固定傾斜角)
水力発電:系統接続
800-4500
5.5-20
混焼:200-800
混焼: 4-12
2050-5500
6-24
バイオガス:500-6500
埋立地ガス:1900-2200
バイオガス:6-19
埋立地ガス:4-6.5
復水フラッシュ:2100-4200
バイナリー:2470-6100
復水フラッシュ: 6-13
バイナリー:7-14
プロジェクト>300MW:<2000
プロジェクト<300MW:2000-4000
2-12
1175-3500
5-40
5290-5870
21-28
2275(ドイツ; 平均的な住居)
4300-5000(アメリカ)
3700-4300(日本)
1500-2600(産業)
20-46 (OECD)
28-55 (非OECD)
16-38 (欧州)
最大発電能力:2.5-250MW
1300-1950
(世界標準)
太陽光発電:地上設置型、
設備利用率:10-25%(固定傾斜角) 平均的:2270
(アメリカ)
;2760
(日本)
;
商業規模
変換効率:10-30%(高率のものはCPV) 2200
(中国)
;1700
(インド)
発電方式:パラボリックトラフ、
フレネル、
トラフ式、蓄熱設備なし:4000-7300
タワー、ディッシュ
(OECD);3100-4050(非OECD)
発電規模:50-250MW(トラフ):
集光型太陽熱発電(CSP)
20-250MW(タワー):10-100MW(フレネル) トラフ式6時間蓄熱設備:7100-9800
タワー(6-15時間蓄熱設備):6300-10500
設備利用率:20-40%(蓄熱設備なし):
35-75%(蓄熱設備あり)
12-38 (OECD)
9-40 (非OECD)
14-34 (欧州)
蓄電トラフ
(蓄熱設備なし):
4000-7300
(OECD)
;31004050
(非OECD)
蓄電トラフ6時間蓄熱設備:
7100-9800
タワー
(6-15時間蓄熱設備):
6300-10500
風力発電:陸上
タービンの規模:1.5-3.5 MW
設備利用率:25-40%
1750-1770
925-1470 (中国とインド)
5-16 (OECD)
4-16 (非OECD)
風力発電:洋上
タービンの規模:1.5-7.5 MW
設備利用率:35-45%
3000-4500
15-23
風力発電:小規模
タービンの規模:100kW以下
3000-6000(アメリカ)
; 1580(中国)
15-20
バイオマス熱施設
家庭用ペレット熱利用
バイオマス (CHP)
地中熱暖房(建物)
地中熱暖房(地域)
地中熱ヒートポンプ
発電規模:0.1-15MWth
設備利用率:∼50-90%
変換効率:80-90%
発電規模:5-100MWth
設備利用率:15-30%
変換効率:80-95%
発電規模:0.5-100kWth
設備利用率:∼60-80%
変換効率:熱と電力で70-80%
発電規模:0.1-1MWth
設備利用率:25-30%
発電規模:3.8-35MWth
設備利用率:25-30%
発電規模:10-350kWth
設備利用率:25-30%
400-1200
4.7-29
360-1400
6.5-36
600-6000
4.3-12.6
1865-4595
10-27
665-1830
5.8-13
500-4000
7-23
─ 49 ─
第2章
温水/熱/冷房
第 2 章 技術別の市場と産業の傾向
表2.自然エネルギー技術の現況:特性とコスト
(続き)
技術
主な特徴
資本費用
(米ドル/kW)
標準的なエネルギーのコスト (均等化発電原価-米セント/kWh)
温水/熱/冷房(続き)
太陽熱:
家庭用温水システム
太陽熱:
家庭用暖房・
温水システム
(コンビシステム)
太陽熱:
産業用プロセス熱
太陽熱:冷房
集熱器タイプ:平板型、
真空管型
(自然循環型および強制循環型)
プラント規模:2.1-4.2kWth
(単一世帯):
35kWth(複数世帯) 効率:100%
集熱器タイプ:温水用設備と同様
プラント規模:7-10kWth(単一世帯):
70-130kWth(複数世帯)
:
70-3500kWth(地域熱供給)
:
3500kWth(季節間蓄熱設備を
備えた地域熱供給)
効率(>):100%
集熱器タイプ:平板真空管、
パラボ
リックトラフ、
線形フレネル
設備規模:100kWth-20MWth
温度範囲:50-400°
C
単一世帯:
1100-2140(OECD(新築)):1300-2200
(OECD(改修))150-635(中国)
複数世帯:950-1850(OECD(新築)):
1140-2050(OECD(改修))
単一世帯:温水用設備と同様
複数世帯:温水用設備と同様
地域熱供給
(欧州)
:460-780;
蓄熱設備付き:470-1060
5-50
(家庭用温水)
地域熱供給:
4以上 (デンマーク)
470-1000(蓄熱装置なし)
4-16
容量:10.5-500kWth(吸収式冷凍機):
1600-5850
8-370kWth(吸収式冷凍機)
効率:50-70%
供給原料
1.5-28
(中国)
供給原料の特徴
n/a
1
製造コスト
(米セント/ℓ)
輸送燃料
バイオディ―ゼル
大豆油:45-90
1ヘクタール当たりの収穫量が
大 豆 、菜 種 、からし種 子 、
(アルゼンチン/米国)
異なるさまざまな供給原料。
パームヤシ、ナンヨウアブラギリ、 従って生産コストは、国により
パーム油:30-100(インドネシア/
廃 植 物 油 、動 物 性 油 脂
大きく異なる。副産物は高たんぱ マレーシア/タイ/ペルー)
菜種油:120-140(EU)
く質食品を含む。
エタノール
サトウキビ、サトウダイコン、
トウモロコシ、キャッサバ、
サトウモロコシ、小麦(将来的
にはセルロース)
収穫量やコストに幅があるさまざまな
供給原料。
副産物は、
バガスからの
飼料、
熱および電力を含んでいる。
先進バイオ燃料はまだ、
完全に商用
のものではなく、
高いコストである。
主な特徴
導入コスト(米ドル/kW)あるいは均等化発電原価(米セント/kWh)
サトウキビ:45-80(ブラジル)
トウモロコシ
(乾式粉砕):
60-120(米国)
農村地域の技術
バイオガス発酵槽
発酵槽サイズ:6-8㎥
n/a
バイオマスガス化装置
規模: 20-5000kW
均等化発電原価:8-12
ソーラーホームシステム システムの規模:20-100W
均等化発電原価:40-60
家庭用風力タービン
タービンの規模:0.1-3kW
資本コスト:
10000/kW
(1kWのタービン)
:
5000/kW
(5kW)
:2500/kW
(250kW)
均等化発電原価:15-35+
地域規模小規模系統
システムの規模:10-1000kW
均等化発電原価:25-100
注:コストとは標準化し、補助金や政策的な奨励金を除いた、代表的な経済的コストである。均等化発電原価
(LCOE)
は複数の構成要素により決まり、資源の質、機器の
コストおよび性能、
システムとプロジェクトのコスト
(人件費を含む)
のバランス、保守管理コスト、燃料コスト
(バイオマス)
、
プロジェクトの資本コストとエネルギー生産期間に
おけるコストを含む。自然エネルギーのコストは立地に依存し、
これらの構成要素の多くはその所在地によって変動し得る。太陽光発電のコストは利用可能な太陽光資源
の量により大きく変動する。
いくつかの自然エネルギー技術において導入容量が急速に増えており、
それらに関連してコスト削減が起こっているため、
データがすぐに時代遅れとなるに注意することが
重要である。
とりわけ太陽光発電のコストは急激に変化している。自然エネルギーを用いたオフグリッド用ハイブリッド発電システムのコストはシステムの規模、
所在地、
そして
ディーゼルによるバックアップや蓄電の様な関連機器によって大きく影響される。農村地域のエネルギーのデータは風力発電を例外としてGSR2011から変更していない。
1. ディーゼル燃料またはガソリン換算でのリットル
出典:出所と仮定については、風力発電セクションの巻末注 99を参照
─ 50 ─
第 3 章 投資の流れ
世界の自然エネルギーおよび燃料への新規投資は
2012年に2440億ドルに達しており、政策の不透明さ
と価格の低下により2011年と比較すると12%減少し
た。投資の傾向は大幅に変化しており、発展途上国
が世界全体の約半分となっている。
世界全体での自然エネルギーおよび燃料への新規投資
は前年の2790億ドルから12%減少し、2440億ドルと
なった1*(補足5、p.54および図21を参照)。投資は後
退したものの、2012年の合計額は2010年より8%増加
し、過去2番目に高い水準であった。50MWを超える
水力発電のプロジェクトと太陽熱集熱器の報告されて
いない投資を含めると、2012年の自然エネルギー全体
の新規投資は2850億ドルを超えた※。しかし、これは
2011年の推計値よりも低い。
数年間の継続的な成長を経験した後での投資の減少
は、欧州と米国での支援政策の見通しが不透明であっ
たことと、支援策の遡及的な削減が実行されたことに
よるものである。より肯定的な観点からは、技術コス
トの急激な削減によるものであったとも言える。
2012年の主要な話題は、先進国から発展途上国へと開
発活動が移行したことだったが、先進国は依然として
世界全体の投資の半分を占めていた。2007年には、先
進国経済は発展途上国よりも(大型水力を除く) 自然
エネルギーに2.5倍以上投資していた。2012年には、そ
の差はわずか15%であった。中国は再び自然エネル
ギーへの投資を独占した。
2012年の他の大きな話題は、 太陽光発電技術のコスト
のさらなる大幅な削減であった。実際に、太陽光発電
や風力発電のコスト競争力が継続的に向上したため、
多くの市場での需要が後押しされた。
■経済地域別の投資
2012年には、先進国の独占的地位が失われ、 途上国の
重要性が高まったことで、世界全体の自然エネルギー
への投資の勢力図は最も劇的な変化を遂げた 。発展
途上国での自然エネルギーへの支出は、2011年の940
億ドルから増加して1120億ドルに達し、世界全体の割
合では2010年の37%、2011年の34%から増加し、2012
年は世界全体の46%を占めた。対照的に、先進国での
支出は2011年の1860億ドルから2012年の1320億ドルへ
と大幅に減少し、2009年以来の低水準となった 。
こうした変化は、3つの重要な動向を示している。欧
図21.
世界の自然エネルギーへの新規投資 (2004年∼2012年)
10億米ドル
279
300
250
244
227
200
172
168
2008
2009
146
150
100
100
第3章
50
65
40
0
2004
2005
2006
2007
2010
2011
2012
出典:本章の巻末注1を参照
*この章は GSR の姉妹版である Frankfurt School–UNEP Collaborating Centre for Climate & Sustainable Energy Finance (FS-UNEP) と Bloomberg New Energy Finance(BNEF)
による Global Trends in Renewable Energy Investment 2013(Frankfurt:2013) に依拠している。数値データはとくに注記が無い限り BNEF のデスクトップデータベースから取得
している。以下のような自然エネルギープロジェクトが含まれる : すべてのバイオマス、
地熱、
1MW 以上の風力発電プロジェクト、
1MW から 50MW までのすべての水力発電プロジェ
クト、太陽光発電(ただし 1MW 未満は除く。これは小規模プロジェクトあるいは小規模分散型として別に取り上げている)、すべての海洋エネルギー、年間 100 万リットル以上
のバイオ燃料プロジェクト。詳細は FS-UNEP/BNEF Global Trend Report を参照。
※ 大規模水力(>50MW)と太陽熱集熱器への投資は自然エネルギーへの投資全体の合計には含まれていない。BNEF は 1MW から 50MW の規模の水力発電プロジェクトのみを追
跡しており、太陽熱集熱器は発電をしないため小規模プロジェクトには含まれないためである。
─ 51 ─
第 3 章 投資の流れ
州や米国で風力や太陽光発電プロジェクトへの補助金
が削減されたこと、増加する電力需要と魅力的な自然
エネルギー資源の両方を提供する新興市場への投資家
の関心が増していること、そして風力と太陽光発電の
技術コストが減少していることである。
世界のいくつかの地域では、2012年には2011年と比べ
て投資が減少した。例外はアジア、中東、米国とブラ
ジルを除くアメリカ大陸諸国であった2(図22を参照)。
欧州と中国は最も重要な投資国であり続け、2012年に
は2か国で世界全体の投資の60%を占めた。一方、欧
州は2009年以降最低の水準であった。
国別に見ると、投資の上位国には、発展途上国が4か
国(BRICS諸国のほとんど)と先進国が6か国含まれ
ていた。投資額では中国が647億ドル、続いて米国が
342億ドル、ドイツが198億ドル、日本が160億ドル、イタ
リアが141億ドルという順番になっている。次に投資額
の多かった5か国は、イギリスで88億ドル、インドが64
億ドル、南アフリカが57億ドル、ブラジルが53億ドル、
フランスが46億ドルであった*
中国は666億ドル(研究開発を含む)を自然エネルギー
に投資し、2011年の水準から22%増加した。これは、
大規模※および小規模プロジェクト(1MW未満)の両
方を含めた太陽光発電分野の力強い成長によって勢い
づけられた。
米国では、全体のアセット·ファイナンスは234億ドルま
で減少し、2011年の合計を49%下回った。この主な原
因は大規模な太陽光発電プロジェクトにおいて資金調
達 が267億ドルか ら69億ドルへ 減 少 し た こ と で あ り、
2011年の後半に2つの自然エネルギー促進策が終了し
たことによる。2011年の風力発電向けのアセット·ファ
図22.
地域別の新規自然エネルギー投資(2004年∼2012年)
単位:10億米ドルの投資
データは政府と企業の研究開発を含む。
色の付いた円は規模を示すものではない。
米国
米国
54.8
28.2
5.7
34.5 36.2
34.6
アメリカ大陸
36.0
ブラジル
23.3
11.9
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
アメリカ大陸
(米国/ブラジルを除く)
5.6 5.9
1.4 3.4 3.4 5.0
11.5 8.3 9.5
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
ブラジル
0.5 2.2 4.2
10.3 12.5 .9 7.9 8.6
5.4
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
*
中東およびアフリカ
0.6 0.6 1.2 1.7 2.7 1.7 5.0 3.5
11.5
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
これらのすべての国々からデータを入手できなかったため、国の投資合計は政府や企業による研究開発を含んでいない。
大規模プロジェクトとは、ウィンド・ファーム、ソーラーパーク、そして 1MW かそれ以上の規模の自然エネルギー設備と 100 万リットル以上の生産力能力のバイオ燃料工場
を指す。
※
─ 52 ─
イナンスは、2012年末に米国の生産税控除の期間が終
了する前にプロジェクトを導入するための駆け込み需
要があったため、高い水準となった。資金調達と建設
の間にタイムラグがあるため、2012年の発電容量は記
録的な追加量となったが、風力発電の資金調達は2011
年の141億ドルから148億ドルへとわずか5%の増加に留
まった。
ドイツの自然エネルギーへの投資額全体は35%減少し
たが、他のどの国よりもはるかに多くの太陽光発電、
とくに小規模太陽光発電を設置した第3位の投資国で
あった。小規模太陽光発電プロジェクトへのドイツの
投資額は年間を通したモジュール価格の急激な低減が
反映され、15%減少して150億ドルとなった。
ドイツは他のどの国よりも小規模自然エネルギーへ多
くの投資をしたが、日本、イタリアとドイツの投資の
間にはほとんど差はなかった。米国と中国は、小規模
プロジェクトへの第4位、第5位の投資国となった。
日本の発電所規模のプロジェクトへの融資は229%増
の30億ドルへと急増し、小規模プロジェクトへの投資
が56%増の131億ドルへと大幅に増えた。両分野におけ
るこれらの大幅な増加は、2011年3月の福島原発事故
後に自然エネルギーの導入をより積極的に促進すると
した日本の決定を反映している。とくに日本の太陽光
発電の設置のための固定価格買取り制度(FIT)は、
投資家にとって魅力的だった。
イタリアでは、2012年には自然エネルギーへの投資は
53%減の141億ドルだった。これはイタリアの固定価格
買取り制度(FIT)に基づく支払額が下がったことと、
FITの対象となる新規の風力と太陽光発電の容量が厳
しく制限されたことによる。小規模の投資はこのうち
欧州
中国
インド
アジアとオセアニア
(中国とインドを除く)
中東および
アフリカ
アジアとオセアニア
11.0 11.5 13.2
6.7 8.3 8.9
18.1
23.8 29.0
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
101.3
61.7
19.6
29.4
72.9 74.7
インド
112.3
中国
79.9
54.7
37.2 40.0
38.4
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
66.6
8.7 13.0 6.5
2.4 3.2 5.5 6.3 5.2 4.4
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
10.2
2.6 5.8
15.8
25.0
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
出典:本章の巻末注2を参照
─ 53 ─
第3章
欧州
第 3 章 投資の流れ
の大半を占めており、130億ドルであった。
況だったが2012年には11億ドルに増加した。
多くの主要な先進国市場で投資が減少したのに対し、
世界中の多くの新たな市場では投資が相当に増加した。
自然エネルギーへの年間投資額がここ十年で10億ドル
未満から2012年には 115億ドルに上昇しているように、
中東やアフリカでは目を見張るほどの勢いがある。南
アフリカは2012年には自然エネルギーへの投資を数億
ドルから57億ドルに増やし、見事な飛躍を成し遂げた。
アフリカのモロッコでは2.97億ドルから18億ドルへと支
出が増加し、一方ケニアでは2011年にはほぼゼロの状
ラテンアメリカでは2012年に38%の減少を経験したも
のの、ブラジルが投資を先導し続けている。減少して
いる国もある一方で、自然エネルギーへの投資は他の
地域では急速に成長している。メキシコの投資は2011
年の3.52億ドルから2012年に20億ドルへと5倍以上増加
し、チリとペルーは魅力的な新市場であることが判明
した。
補足5.投資の種類と用語
自然エネルギーへの投資は、公共および民間の幅広
い事業体の範囲で、アイディアや技術の誕生から、
自然エネルギー施設の建設、自然エネルギー設備を
製造する会社の売却など、連続した資金調達を通し
て行われている。投資の種類と規模は、一連のプロ
セスのどの段階にあるかによって異なる。
1.技術研究:新しい知識や潜在的な製品やアイデア
の開発に焦点を当てている。資金は比較的リター
ンの不確実性が高く、長期的な投資期間を見据え
た民間および(主に)公的な研究開発ファンドか
ら来ている。2012年の世界全体の自然エネルギー
関連の新規投資における技術の研究が占める割合
は 約4%であった。
2.技術開発/商業化:研究開発活動から 出てくる有
望なアイデアや知識は、商業的に実現可能な製品、
プロセス、またはサービスへと発展していく。大
企業ではこのような社内での開発活動に資金を投
入するのに対し、より小さい事業者では通常外部
資金を調達しなくてはならない。これは典型的に
はベンチャーキャピタリスト(VC)のような高リ
スクで高いリターンを求める投資家や、限定的に
は未公開株への投資家などからである。2012年の
世界全体の自然エネルギー関連の新規投資におけ
る技術開発と商業化の占める割合はほぼ1%であっ
た。
3.製造:商業化された技術は資産を集め、製造施設
を設立するような規模で生産されている。この段
階を対象とした資金は、未公開株を増大させた資
本 と 公 共 資 本 市 場( 株 式 市 場 ) か ら 来 て い る。
2012年の世界全体の自然エネルギー関連の新規投
資における自然エネルギーの製造が占める割合は
2%を超えていた。
4.プロジェクト(公開):技術が導入され、商業的
稼働が行われている最も資本集約的な段階。
(土地、
許可、ライセンスだけでなく、エンジニアリング、
調達、建設の費用を必要とする )。プロジェクトは、
小規模分散型の設備容量(<1MW)または商業規
模のプロジェクトのいずれかである。大規模のプ
ロジェクトの場合、資金はコーポレートファイナ
ンス(たとえば、発電所のバランスシート)やパ
ブリック・エクイティ、債券、限られた範囲での
炭素市場から調達される。世界全体の自然エネル
ギー関連の新規投資における大規模のプロジェク
トのための資金調達の占める割合は61%であり、
小規模プロジェクトの割合は33%であった。
5.合併·買収(M&A): 借り換えや、企業やプロジェ
クトの売却。合併は、新しい企業を形成するために、
2つの会社が1つになることであり、買収はある会
社が有する個別のビジネスや会社自体の買収また
は購入を、もう一方の会社が行うことである。
新規投資は 、1〜4の段階(VC、未公開、株式市場、
債券市場など)の間に自然エネルギープロジェクト
に投資されているすべてのお金を指す。総投資額は
新規投資に加え、M&A活動を含むより大きな数値
である。
その他の有用な用語: アセット·ファイナンス:発電事業に投資されたすべ
てのお金について、社内のバランスシート、負債に
よる資金調達、株式による資金調達のいずれかの方
法を指す。
総量と正味の投資:正味投資額は、追加的に導入さ
れた設備容量への投資である。総投資額には、既存
の設備容量を置き換える新たな設備容量への投資が
含まれている。
未公開株式(増資):自己資本は、証券取引所での
公開した取引がなされず、技術を発展させたり、バ
ランスシートを強化したり、企業内の他のニーズを
満たすといった目的には使用されない。未公開株式
による増資は会社の成長や拡大のために生産能力や
市場や製品開発を高めるか、または付加的な運転資
金のための資金である。
株式市場:上場企業の株式を取引するために組織さ
れた市場。
ベンチャーキャピタル(VC):高い潜在能力および
高リスクの新興企業株式を所有することと引き換え
に、早期に投資される金融資本。
出典:この章の巻末脚注1を参照。
─ 54 ─
■技術別の投資
2012年には、太陽光発電は資金の面ではとびぬけた部
門だった。1404億ドルという数値が示すように、太陽
光発電は自然エネルギーの新規投資の総額の57%以上
を占めていた。風力発電は2番目に多い投入額である
803億ドルでほぼ33%であった。総新規投資の残りの
10%はバイオエネルギーと廃棄物エネルギー(86億ド
*
ル ) 、小水力(<50MW、78億ドル )、バイオ燃料(50
億ドル)、地熱発電(20億ドル)、および海洋エネルギー(3
億ドル)であった。小水力および海洋エネルギーを除
い て、2012年 に 行 わ れ た 投 資 は ブ ル ー ム バ ー グ・
ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)によって
確認されたすべての自然エネルギーの分野で2011年に
比べて減少した3(図23と表R9を参照)。
した313億ドルは、2011年の178億ドルから大幅に増加し
ている。全体としては、太陽光発電における発展途上
国での投資は72%増加して517億ドルまで急増したが、
先進国市場での投資は31%下落して887億ドルであっ
た。
太陽エネルギー部門への投資のうち約96%が太陽光発
電(1351億ドル)へ、そして残り(53億ドル)が集光型
太陽熱発電(CSP)に投資された。主にスペインと米
国のCSPプロジェクトの資金調達の低迷(2011年から
140億ドル減)と太陽光発電システム価格の急激な下落
の影響で、2012年に太陽光への投資は減少した。
詳細な統計情報は太陽熱温水(SWH)技術や50MW以
上の大規模な水力発電プロジェクトでは入手できな
い。2012年に約55GWthの太陽熱集熱器が追加され、
このうち80%が中国で設置されたと推計されている6。
この投資の価値は、価格帯が大きく異なる様々な太陽
熱集熱器があるため推計するのは難しいが、10億ドル
を超えている可能性が高い。
太陽光発電への投資は、全体の63%を占める先進国が
引き続き独占している(2011年の80%からは減少して
いる)4。ドイツ、米国、日本、イタリアは、2012年に
太陽光発電に投資した上位5か国のうちの4か国だっ
た。そうであっても、中国は世界全体の投資の22%を
占めており、最大の割合である。中国が2012年に投資
太陽エネルギー以外では、先進国が優位性を維持した
のはバイオ燃料と海洋エネルギーにおける開発中の部
門だけだった。風力発電、小水力、バイオマス、廃棄
物エネルギー、地熱発電をふくむ他のすべての技術で
は途上国経済が優位に立っていた。これは過去数年と
比べて劇的な変化を表している。2011年には、発展途
上国が主要な投資元であったのは小水力発電のみで
あった5。
50MW以上の大規模な水力発電プロジェクトへの投資
は、2012年も風力と太陽光発電を除く他のすべての自
然エネルギーを超えて、引き続き大きいものだった。
平均的なプロジェクトは完了するまで4年かかるため、
設備容量の増加をそのまま年あたりのアセットファイ
図23.
技術別の自然エネルギー世界新規投資額 先進国/発展途上国別(2012年)
88.7
太陽光
2011年から
の変化
発展途上国
51.7
45.3
-11%
風力
35.0
バイオマスおよび
廃棄物エネルギー
3.9 / 4.7
-34%
0.3 /7.5
+20%
50メガワット以下の水力
バイオ燃料
地熱発電
海洋エネルギー
-10%
-40%
3.8/ 1.2
-44%
0.6 / 1.4
0.3 / 0.01
投資単位:10億米ドル
+13%
出典:本章の巻末注3を参照
*
廃棄物ガス発電をのぞくすべての廃棄物発電技術を含む。
─ 55 ─
第3章
先進国
第 3 章 投資の流れ
ナンスの資金量に置き換えて解釈することはできな
い。しかし、2012年に稼働した大型水力発電プロジェ
クトのためのアセットファイナンスの合計は少なくと
も330億ドルであり、大規模水力を除く1485億ドルのア
セットファイナンスの5分の1以上と推計される7 。
■種類別の投資
2012年の世界の研究開発(R&D)の自然エネルギーへ
の支出は1%増加して96億ドルとなり、8年連続して増
加した。(表R9を参照)世界のR&D投資は、2004年か
ら 絶 対 値 で ほ ぼ 倍 増(93 % の 増 加 ) し て い る が、
OECD諸国政府によるR&D支出をGDPの割合で換算す
ると、30年前の4分の1ほどでしかなかった8。欧州は合
計でR&Dでは最大の中心地のままであった。しかし、
中国が政府支出でより多くの投資を行った。米国は、
2012年の企業と政府の両方の支出に関して、控えめで
はあるが積極的な傾向が現れた唯一の地域だった。
全体としては、政府のR&D支出は3%増加して48億ド
ルまで増加し、企業のR&Dは1%下落して48億ドルを
下回ったため、公共と民間の支出は3年連続で全体的
に同じ水準だった。太陽光発電は、2011年に比べて1%
下落したのにもかかわらず、すべての研究費の半分
(51%)の49億ドルを占め、引き続き優勢であった。
これに風力発電(4%増加して17億ドル)、およびバイ
オ燃料(2%増加して17億ドル)が続いた 。
自然エネルギーにおけるベンチャーキャピタルと未公
開株投資(VC/PE)は欧州、中国、米国で暗い経済見
通しに直面し、30%減少して2005年以降最低の水準で
ある36億ドルとなった。投資額の減少の他の要因とし
ては過剰生産や製品の価格の下落、補助金の削減、そ
して政策の不確実性が挙げられる。衰退の4分の3は、
未公開株の増資に原因があり、残りのほとんどの減少
は、初期段階のベンチャーキャピタルであった。これ
とは対照的に、着手金のようなVCの最も初期の段階
は、2011年比146%の増加となった。太陽光がVC/PE
の最大の部門となっている一方で、太陽光は40%の減
少で15億ドルまで下がるという最も急激な減少を経験
した。これに続いてバイオマスと廃棄物エネルギーも
5億ドルまで下落した。
経済の落ち込みの中、自然エネルギーは新たな公開市
場投資(株式市場内の)では60%以上減少し、2007年
のピーク時のわずか5分の1である40億ドル強にまで下
落した。自然エネルギー株式が期待に添えなかった原
因は 、風力や太陽光のサプライチェーンでの過剰生
産能力と、欧州と米国の政策発展についての不安だっ
た。風力は最も打撃を受け、72%下落して13億ドルま
で減少した。この事実により太陽光発電は2011年に比
べて50%下落していたにもかかわらず、23億ドルで新
株式の最大の発行者となった。バイオ燃料は43%縮小
したものの、4億ドルで3番目につけた。
大規模プロジェクトにおけるアセットファイナンスは
合計1485億ドルで自然エネルギーの新規投資合計にお
ける大半(61%)を確保した。これは、2011年の1801
億ドルから18%の下落だったが、2010年の1437億ドル
は上回っていた。すべての自然エネルギー投資におけ
る大規模プロジェクトの割合は、投資全体が小規模の
(<1MW)住宅や商業太陽光発電プロジェクトに向け
られるのを反映して、2011年から4%減少した。
小規模分散型自然エネルギーの設備容量は年間を通し
て強い支持を受けた。自然エネルギーの合計新規投資
が12%減少したにも関わらず、小規模な設備への投資
は、3%増加して800億ドルになった。これは、2004年
の27%と2011年の28%の水準を上回り、1MW未満の
プロジェクトが新規投資の3分の1を集中的に引きつけ
たということを意味している。3%の増加は、2011年
の24%の成長率をはるかに下回ってはいたが、太陽光
発電モジュールの価格がさらなる大幅な下落をしたに
もかかわらず達成された。
世界中で行われているこの分野への投資が増加したに
も関わらず、小規模プロジェクトへの投資は、経済緊
縮の影響を受けた各国政府が電力消費者への圧力を限
定するために自然エネルギーへの補助金を削る方向へ
と動いたため、ギリシャを除いた欧州諸国の上位10か
*
国で投資が減少している 。2012年に小規模なプロジェ
クトへの投資では8位だったギリシャは195%の増加を
達成した。中国も同様である。小規模プロジェクトへ
の投資は米国と日本でも増加している。
近年、多数の小規模の投資家からプロジェクトのため
の資金を調達する新しい手法が展開してきた。この「ク
ラウドファンディング」は米国で実用化され、今は自
然エネルギーに導入されたことで西欧などへと広く広
がっている。そしてこの方法はとくに小規模プロジェ
*
小規模分散型設備への投資の上位10か国は、ドイツ、日本、イタリア、米国、
中国、
オーストラリア、
英国、
ギリシャ、
ベルギーそしてフランスである。
─ 56 ─
クトに適している。
合併および買収活動は新規投資の2440億ドルには含ま
れておらず、2011年の734億ドルの史上最高値から、
2012年の523億ドルへと急激に減少した(29%)。この
減少は、ほぼすべて全体的な景気後退に起因する企業
の合併や買収の失敗によるものだ 。
■自然エネルギー投資の見通し
2012年の自然エネルギーの発電容量(50MW以上の水
力発電を含まない)への総投資額は2270億ドルであっ
た。これを化石燃料ベースの設備容量での総投資額で
ある2620億ドルと比較する。この比較によって、自然
エネルギーと化石燃料の差が2012年は小さくなってい
ることがわかる。これは自然エネルギーの発電容量へ
の投資が2011年に比べて10%減少したのに対して、化
石燃料は13%減少しているためである。
さらに、追加分の化石燃料発電容量への正味の投資額
は、 新たな設備への置き換えへの支出を含む総投資額
を下回っている。これとは対照的に、自然エネルギー
容量へのほぼすべての投資は正味分であり、つまり投
資により全体の発電容量が追加されることを意味して
いる。2012年の化石燃料への正味の投資のみを考える
と、自然エネルギー電力への投資額2270億ドルは化石
燃料の1477億ドルを3年連続で大きく上回っている。
もし50MW以上の水力発電プロジェクトへの投資が含
まれる場合、2012年の自然エネルギー発電容量への世
界全体の投資は化石燃料への正味の投資額の1.5倍から
2倍だった 。
最大手は再びドイツのKfWで、2011年の水準からは
10%減少したが、260億ドル(200億ユーロ)の融資を
行った。これには、中国開発銀行が150億円(1%の増
加)、ブラジルのBNDES(119億ドル)、欧州投資銀行(60
億ドル)、世界銀行グループ(50億ドル)が続いた。
自然エネルギーに特化した融資を見てみると、欧州投
資銀行は2012年に約56億ドル(43億ユーロ)を準備し
ていた。
2012年の重要な新しい傾向の1つは、より小規模の新
しい開発銀行の役割が自然エネルギーの資金調達にお
いて増してきていることである。これらの中には自然
エネルギー事業の貸し付け機関に総額10億ドルの割当
を決定した南アフリカ開発銀行などが含まれている。
また、この銀行は、自然エネルギーのプログラムを支
援するためにモロッコに8億ドルをローンで助成して
いる。
■2013年初頭の投資動向
2013年の第1四半期(Q1)における自然エネルギーへ
の世界全体の新たな投資は2012年の最終四半期に比べ
て36%減少して400億ドルであり、2009年第1四半期以
降で最も低い水準であった。
第1四半期は、補助金が12月末に期限切れになる傾向
があるという事実を反映して、近年はしばしば4つの
期でも最も低くなるとはいえ、2013年のQ1の低さは、
時期の問題ではなかった。大規模プロジェクトにおけ
るアセットファイナンス、ベンチャーキャピタルおよ
び未公開株投資、株式市場への投資の第1四半期の合
計は210億ドルであり2012年の最初の3か月の3分の1以
下の水準まで減少した。
第3章
小規模プロジェクトへの投資は、2013年第1四半期に
185億ドルであり、2012年の四半期平均値の200億ドル
か ら わ ず か に 減 少 し た。 こ れ は2012年 第1四 半 期 と
2013年第1四半期の間で、PVモジュールのコストがさ
らに下がったことを反映したためである。
■政府系金融機関の状況
開発銀行は、水力とその他の自然エネルギー事業、製
造業者、研究、エネルギー効率、送電、および配電を
含む幅広いクリーンエネルギーに2012年に791億ドル
を融資し、これは2011年の水準から1%以上減少した。
この金額のうち、前年と比べてわずかに減少したもの
の、508億ドルが自然エネルギー事業、製造業者、研
究努力に向けられた。
─ 57 ─
第 4 章 政策の展望
第 4 章 政策の展望
太陽光発電の新しい野心的な目標が中東、北アフリ
カ、そしてアジアで設定され、世界全体の太陽光発電
容量は100GWという重要な節目を超えた。
2013年初めの時点で、127か国が自然エネルギー支
援政策を実施しており、このうちの3分の2以上が発
展途上国である。
自然エネルギー技術の開発と展開を支援するための政
策や目標の数は、世界中で2012年および2013年前半に
再び増加し、自然エネルギーを支援する国の数も増加
し続けた。2013年初めの時点で、自然エネルギー支援
政策は本報告書2012年版に報告された109か国から18
か国増加し、127か国で確認された。これらの国の3分
の2以上は途上国ないし新興経済国である*1(表3、p.71
および本報告書2012年版図25、26、23を参照)。
新しい政策の導入速度は、2000年代前半に追加された
政策の割合に比べ、遅くなっている。ここ数年と同じく、
政策策定の大半は、既存政策の変更に集中し続けてお
り、多くの場合、政策立案者は、太陽光発電を主として急
速に変化するエネルギー技術の市場状況や、ますます厳
しくなる国家予算、そして世界的な経済危機の広範な影
響に対する早急な順応を強いられている。
政策策定者は自然エネルギーによる国の発展への潜在
的な影響力をますます意識するようになっている。
自然エネルギーは、エネルギー部門からの温室効果ガ
ス排出量の削減だけではなく、以下のような相乗便益
を提供することによって、社会的、政治的、経済的な発
展の重要な推進要因となる。
相乗便益には、エネルギーへのアクセス拡大、エネル
ギー安全保障の強化、保健、教育、男女平等の改善促進、
雇用創造の支援、そして高価な燃料の輸入と化石燃料
補助金への依存を減らすことによる化石燃料資源をほ
とんどまたは全く持たない国におけるエネルギー安全
2
。これらの要
保障の推進が含まれる(p.60、補足6参照)
因と多くの自然エネルギー技術のコスト低下により、
自然エネルギーは2012年に政策立案者からの注目を集
め続けた。
自然エネルギーの目標は多くの形式があり、最も一般
的なものは発電に占める自然エネルギーの割合の増加
である。その他の目標には、一次エネルギーおよび最終
エネルギー、熱供給、輸送燃料に占める自然エネルギー
技術の割合に加え、特定の自然エネルギー技術の導入
量や稼働中の設備容量が含まれる。目標はほとんどの
場合、将来の特定の年に焦点を合わせるが、複数年の範
囲を設定することや特定の年度を定めないものもあ
る。(参照表R10〜R12.参照)
多くの国は2012年を目標年として過去に定めた目標を
持っていた。これらの国のうち、インドは2007年から
2012年の間に新たな風力発電容量9GWを追加するとい
う目標を達成すると思われるが、トンガは自然エネル
ギー電力50%という目標を2015年に延長する3。モロッ
コは、自然エネルギーの割合を最終エネルギー消費量
の10%(実際には1.8%)、一次エネルギー消費の8%(実
際には4%)、電力消費の20%(実際には9.65%)とする
目標や、0.28GWth(40万㎡)分の太陽熱集熱器面積を
導入する(実際の容量は0.24GWth、34万㎡)という目
標を達成していない4。インド、ケニア、パキスタン、パレ
スチナ自治区、ルワンダの現状の目標を評価するため
のデータは、2013年初頭までに入手できなかった。目
標は異なった推進度合いや意欲にもとづいて設定され
るので、これらの政策の「成功」の判断は慎重に行わな
くてはならない。
2012年に期限切れとなる目標を持つ2つの国は、新たな
将来目標を発表した。インドの第12次5か年計画では、
2017年までに現在の自然エネルギー容量を倍増させ、
53GWと す る よ う 求 め て い る5。パレスチナ自治区は
2020年までに発電量の10%を自然エネルギーにすると
いう新たな目標を設定し、また多くの自然エネルギー
技術の設備容量の目標も設定した6。
また、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)※ と8つの新
しい国が2012年に政策目標を導入した。15のECOWAS諸
国は、2020年までに電力構成全体の10%を自然エネルギー
とし、2030年までに19%とするという目標を含む、地域的な自
然エネルギー政策を承認した7。
中東では、
カタールが2020年
までに2%の太陽光での自然エネルギー発電量と640MWの
本章では、特定の政策ないし政策メカニズムの有効性
太陽光発電容量とする目標を設定した。
イラクは2016年まで
を評価、分析することを目的とせず、世界中の国、州、地
に風力および太陽光発電の容量を400MWとする目標を宣
方、地域レベルでの新たな政策動向の実像を示すこと
言した。
さらにサウジアラビアは自然エネルギー発電容量を
を目的とする。
2020年までに24GW、2032年までに54.1GWとする目標を設
定 し た8。東 欧 で は、 エ ネ ル ギ ー 共 同 体(Energy
■政策目標
Community)がEU指令2009/28/EC(図24参照)への批
自然エネルギー技術を普及させるための政策目標は、 准を承認し、ボスニア・ヘルツェコビナ(40%)
、クロアチア
2013年初頭で少なくとも138か国において確認され、本 (20%)
、旧ユーゴスラヴィア共和国マケドニア
(28%)
、モンテ
報告書2012年版で報告された118か国から増加してお
ネグロ(33%)そしてコソボ(25%)の2020年の自然エネル
り、さらに新たに8つの国が目標を追加した。
ギー目標を設定した9。
*
確認された政策の増加は、さらなる研究を通じたこれまでに定められた多くの政策の特定と、2012 年と 2013 年前半の新しい政策の追加に基づいている。
15 の ECOWAS 加盟国は以下のとおり。ベナン、ブルキナファソ、カーボヴェルデ、コートジボワール、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、マリ、ニジェー
ル、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、トーゴ
※
─ 58 ─
図24.
EUの最終エネルギーにおける自然エネルギーの割合:2005年、2011年、2020年目標値
5
合計(EU27か国)
10
15
20
25
30
35
40
45
50
50%
45%
オーストリア
40%
ラトビア
38%
フィンランド
35%
デンマーク
31%
ポルトガル
エストニア
25%
スロヴェニア
25%
24%
ルーマニア
フランス
23%
リトアニア
23%
スペイン
20.8%
ギリシャ
20%
18%
ドイツ
17%
イタリア
ブルガリア
16%
アイルランド
16%
ポーランド
15%
英国
15%
ハンガリー
14.7%
オランダ
14%
スロバキア共和国
14%
13%
キプロス
13%
マルタ
2005年基準年時の割合(参照値)
13.5%
ベルギー
ルクセンブルク
%
20%
13%
スウェーデン
チェコ共和国
55
2011年までの実績 i
2020年の目標値
11%
10%
出典:本章の巻末注9を参照
i 2011年の実績割合は表R10を参照
─ 59 ─
第4章
0
第 4 章 政策の展望
世界全体では、既存の目標を持つ多くの国が、2012年か
ら2013年初めに新たな補完的な目標を追加した。欧州で
は、アルバニア(38%)、モルドバ(17%)、セルビア
(27%)、ウクライナ(11%)はすべて最終エネルギーにお
ける自然エネルギー割合の目標を定めた10。オーストリ
アは2020年までに自然エネルギーで電力消費の85%を
満たす目標を設定した。デンマークは2020年までに最
終エネルギーの35%を自然エネルギーでまかない、
2020年までに風力発電が電力消費の50%をまかない、
そして2050年までにすべてのエネルギー需要を自然エ
ネルギーでまかなう、という野心的な目標を設定した。
補足6. 世界におけるエネルギー補助金の現状
国際エネルギー機関(IEA)によると、化石燃料消費の
ための補助金 * は、2011年に世界で推定5230億米ド
ルとなり、エネルギー価格の上昇と補助金を受けた
燃料消費量の増加により、2010年から27%の増加と
なった。国際通貨基金(IMF)は、エネルギー消費の負
の外部性を考慮に入れた“税引き後ベース”で計算し
たところ、石油製品、電気、天然ガス、石炭への全補助
金※ はより高額となり、1.9兆米ドル(全世界GDPの
2.5%であり、全政府収入の総計の8%)となった。IEA
のチーフエコノミストであるDr. Fatih Birolは化石
燃料補助金を“持続可能なエネルギー開発への社会
の敵ナンバーワン”と呼んだ。
自然エネルギー(大規模水力を除く)への補助金や
金 融 支 援 は、2011年 に 総 計880億 米 ド ル と な り、
2010年から24%の増加となったが、それでも化石燃料
補助金の6分の1程度にすぎない。約73%が(主に太陽
光発電を支援するために)電力部門に向かい、残りの
大部分はバイオ燃料に、そしてごく少量が再生可能
エネルギーによる熱利用や冷房に向かった。欧州連
合(EU)がこれらの補助金の57%近くを占め、米国が
24%を占めた。
自然エネルギーのための上手く設計された補助金
は、健康改善、雇用創出、エネルギーアクセスとエネ
ルギー安全保障の確保を含む長期的な経済的、環境
的利益をもたらす。逆に、化石燃料を対象とした補助
金のコストは、一般的に利益を上回る。エネルギー輸
入国における化石燃料補助金は通常、国家予算に重
い負担を課し、化石燃料輸出国では無駄な消費に
よって資源の枯渇を加速させ、長期的に将来の輸出
収入を減らす。
2009年には、G20諸国の指導者が化石燃料補助金を
終了することを約束し、
「無駄な消費を促進する非効
率な化石燃料補助金を合理化、段階的に廃止する」と
フランスは2013年に1000MWを追加する新たな目標と
ともに、太陽光発電プロジェクトの目標値を倍増させ
た。 ドイツは以前から採用されていた2020年、2030年、
2040年 の 目 標 を 成 文 化 し た。オ ラ ン ダ は 最 終 エ ネ ル
ギーの目標をEU指令よりも2%高く、2020年までに
16%とした。ポーランドは2020年までに洋上風力発電
容量1GWを開発することを宣言した。ロシア連邦は、
2020年に4.5%の自然エネルギー発電目標を達成するた
め、技術ごとの目標値の公表を義務づけた。スコットラ
ンドは自然エネルギーの短期目標を2015年までに31%
から50%に上げた11。
いうことに合意した。彼らは、化石燃料補助金が市場
を歪め、クリーンエネルギー源への投資を阻害し、気
候変動の危機を緩和するための努力を損なうという
ことを認めた。この一歩が、アジア太平洋経済協力
(APEC)諸国と、高いエネルギー価格のために補助金
が財政的に持続不可能となる多くの国々を加えた、
より広範な国際的な連合の設立につながった。
2013年2月のG20財務相会談で、指導者は化石燃料補
助金の合理化と段階的廃止の進捗状況を報告するこ
とと 、最も貧しい人々を対象とした支援の提供につ
いて、再び合意した。IEA、OPEC、OECD、世界銀
行が共同で公表した、エネルギー補助金とその段階
的廃止実施のための提案という視点の2つのレポー
トを除いて、他の国際的な動きは限られている。ま
た、IMFが2013年初頭に公表した報告書は、政策立
案者に化石燃料製品への補助金の改革を勧め、これ
が経済成長と環境保護の大きな利益になるとした。
世界的規模での実際的な効果は、スケジュールが定
められておらず、その合意を実施したい国を監視、支
援するための組織もないために、これまではきわめ
て限られたものとなっている。
少数の国は、エネルギー補助金の改革に向けた措置
を講じており、イラン、インドネシア、ナイジェリア、
スーダンなどの化石燃料を輸出している非OECD諸
国も補助金を削減し始めた。さらに、2009年のG20以
降、増加する市民社会の監視者が化石燃料補助金の
問題を追跡し始めている。
しかし同時に、いくつかのOECD加盟国は、主には国
内の政治的、経済的事情により、もしくは技術価格の
低下や自然エネルギーのための長期的な政策指針の
欠如のために、自然エネルギーへの補助金を削減し
始めている。
出典:文末脚注2を参照
* IEA は補助金を生産コストないし消費者がエネルギーに払う価格を人為的に削減する政府の施策として定義している。IEA による“How Big Are Energy Subsidies and
Which Fuels Benefit?”WEO 2011 Factsheet (Paris: 2011).
※ IMF は消費者補助金を、
基準価格と、エネルギー消費者(最終消費としての家庭と中間消費としての企業を含む)により払われた金額の差と定義しており、
生産者補助金を、
基準価格と供給者から受けとった価格の差と定義している。国際取引されたエネルギー製品の基準価格は流通および輸送コストを調整した国際価格である。IMF の推定値は、
データが不足しているため、すべての生産補助金は含まれていない。
─ 60 ─
中東および北アフリカ(MENA)地域では2012年に重要
で新たな展開を見せた。2012年7月に承認された2027
年 ま で に2800MWの 集 光 型 太 陽 熱 発 電(CSP) と
700MWの太陽光発電を達成するというエジプトの太
陽エネルギー計画、ヨルダンが2018年までの自然エネ
ルギー容量を1000MWに目標設定した、リビアが国の
発電構成において、2015年までに3%、2020年までに
7%、2025年までに10%を自然エネルギーで占めると
いう目標を設定したことなどがあった15。アフリカのそ
の他の地域では、2009年時点では再生可能エネルギー
発電容量を持っていなかったジブチでは、2020年まで
に自然エネルギーの割合を100%にするという目標を
宣言し、レソト王国は2030年までに260MWの自然エネ
ルギー発電容量目標を設定した16。
いくつかの国とカナダの1つの州が2012年に既存の目
標を強化した。(本書の表R10〜R12および本報告書
2012年版の表R9〜R11を参照)新たな目標を設定する
ことに加えて、中国は既存の目標を増加させ、2013年
に49GWの自然エネルギー発電容量の新規導入、2015
年の太陽光発電容量目標を4倍にして21GWとし、そし
て2020年での太陽光発電目標を20GWから50GWへと
増加させると宣誓した17。インドネシアは2025年までの
自 然 エ ネ ル ギ ー 目 標 を26 % に 引 き 上 げ た18。日 本 は、
2020年への既存の目標上に、2030年までに洋上風力
(8.03GW)、地熱(3.88GW)、バイオマス(6GW)、潮力
(1.5GW)の開発を継続し、より高い技術ごとの容量目
標を導入し、 タイは2022年までに最終エネルギー消費
に占める自然エネルギーの割合を25%とするという目
標を増加した19。
他の地域では、 メキシコが2026年までに自然エネル
ギー電力の目標を35%へと増加させ、 ウルグアイは
2015年までに自らの800MWの系統連系型風力発電目
標を1GWに増加させた20。カナダのオンタリオ州は、水
力を除く自然エネルギー容量を合計1万700MWとする
目標を2018年から2015年に前倒しした21。
二つの国が2012年中に目標値を削減した。ナイジェリ
アはバイオマスの目標を増加したものの、太陽光発電、
小水力発電、風力発電のための技術ごとの目標を下げ、
ポルトガルは2020年の自然エネルギー導入容量を18%
とするとする目標を19.2GWから15.8GWに削減した22。
■発電政策
世界的に、数多くの政策が再生可能エネルギー発電を
促進するために制定されている。すべての国のうち3分
の2を占める発展途上国と新興経済国は、2013年初頭
までに自然エネルギー発電設備を導入している。いく
つかの政策は2012年から2013年初頭に制定されたが、
発電政策を追加する新しい国の数は、2010年以降大幅
に鈍化した。しかしながら、既存政策はますます改訂や
更新がなされている。
固定価格買取制度(FIT)は国や州/地方レベルで採用
され、最も広く採用されている自然エネルギーの発電
政策の地位を保っている。2013年初頭の時点で、71か
国と28の州/地方はFITのいくつかの形態を採用して
いた。(参照表13.参照)発展途上国はFITを実施してい
る国の多数を占め、2012年には新たに5つのFITが制
定された23。ナイジェリア、パレスチナ自治区、ルワン
ダ、ウガンダのすべてが2012年初頭に新規のFITを制
定した24。ヨルダンは前年に通過した自然エネルギーお
よびエネルギー効率化法を補完するため、2012年後期
に新しいFITを制定した25。
2つの国が、以前の年に制定したFIT法の初期買取価格
を定めた。2008年の自然エネルギー法で国のFITを要
求する法案に続き、フィリピンは2012年に初めて買取
価格を設定した26。2011年の福島原発事故をきっかけ
に求められていたFITの下で、日本は太陽光発電と風
力発電に世界最高額の買取価格定めた27。
2011年および2010年のように、2012年のFIT関連の動
向の大半は既存の政策の改訂に関わるものだった。いく
つかの国は、FITの特定の要素を強化した。フランスは
屋上での太陽光発電システムへの補助を増加し、買取価
格を5%高め、欧州で製造されたシステムには10%の
ボーナスを制定した。インドネシアは、バイオマスへの
新しいFITを導入し、地熱の買取価格を大幅に増額し、
風力や太陽光の買取価格も間もなく設定されると示唆
した。アイルランドは陸上風力、小規模水力、埋立地ガ
ス、バイオマス技術を含め、新しいFITの設定期間に対
象とする技術の範囲を拡張した28。
しかし、FITに関連した変化の大部分は2011年の買取
価格引下げの傾向を保ち、2012年と2013年初頭を通じ、
いくつかの国で経済や市場条件の動向に対応して支払
いを下げた。オーストリアはほとんどの技術における
小額の買取価格引下げと、2013年に500kW以上の太陽
光発電向けのFITの撤廃を宣言した。ブルガリアは風
力発電で10%、太陽光発電で5〜39%の買取価格を削減
した。ギリシャは2013年初期に太陽光発電のFIT買取
価格を遡及的に削減する計画を宣言した。そしてドイ
ツはFIT買取価格の削減、望ましい年間追加発電容量
の範囲の設定、金融支援の制限の確立、生産者がFITと
プレミアム制度を切り替えることができるようにする
ことで太陽光発電への支援を削減した29。
イタリアは設置上限を施行し、買取価格を39〜43%減
─ 61 ─
第4章
アジアでは、中国が自然エネルギーのための第12次5か
年計画で、2015年に一次エネルギー消費量の9.5%を自
然エネルギー由来とし、太陽熱温水器容量を280GWth
(4億㎡)とする目標を設定した12。太陽エネルギー利用
国家計画フェーズⅡの下、インドは期限を迎える太陽
熱温水器の目標(4.9GWthあるいは700万㎡)を、2012
年から2017年の間で新たに追加される容量を加えて
5.6GWth(800万㎡)に拡大し、日本は2030年までに波
力および潮力発電の容量を1500MWまで拡大させるこ
とを宣言した13。カザフスタンは、2020年までに1.04GW
の自然エネルギー容量の開発を目指している14。
第 4 章 政策の展望
少させ、そして多くの新しい条件を追加した。しかし、
同時に風力発電プロジェクトの契約期間を15年から20
年に延長した30。ルクセンブルクは太陽光発電のための
買取価格を大幅に下げ、30kW以上の太陽光発電シス
テムへの支援を終了した31。セルビアは風力や太陽光発
電プロジェクトのための買取価格を減少させたが、最
大30MWの設備までを含めるよう再定義された小規模
水力発電の買取価格は上昇させた32。スペインは国王令
により、2012年前半にFITを一時的に中断し、2013年
前半にはすべての太陽光発電に対する2009年にまでさ
かのぼった遡及的なFIT買取価格削減を施行し、また
集光型太陽熱発電へのインセンティブを大幅に削減し
た33。イギリスは2012年に太陽光発電導入への買取価格
を大幅に減少させ、大規模風力発電プロジェクトや小
規模自然エネルギーのための買取価格を下げた、また
ウクライナも太陽光発電のための買取価格を下げた34。
欧州の他には、モーリシャスが拡大した3MWの枠に到
達 し た と き に、50kW以 下 の 新 規 申 請 に 適 用 さ れ る
FITプログラムを閉鎖した。ウガンダは2013年前半に
500kWから20MWの水力発電所への買取価格を増額し
たものの、施行後1年未満で太陽光発電のためのFITを
撤廃した35。
北米では、州/地域レベルで新しいFIT政策が追加され
たところはなかったが(前年度から)、既存の政策にい
くつかの改訂がなされた。米国では、同国に5つある
FIT導入州の一つであるバーモント州が、太陽光発電
と小規模風力発電の買取価格を10%以上上昇させるこ
とと、向こう10年にわたってプログラムの上限を10%
ずつ増加させることで、同州のFIT政策下でのインセ
ン テ ィ ブ を 強 化 し た36。他 の 州/地 域 レ ベ ル のFITは
2012年に減少した。カナダでは、オンタリオ州で予定さ
れていたFITの見直しをへて、容量目標期日を2015年
に3年分早める結果となり、またFIT 2.0の下で太陽電
池(20%)、風力(15%)の買取価格を減少させた37。まだ新
しいFIT法に含まれているが、オンタリオ州の州産品
優遇要件は2012年に世界貿易機関(WTO)により否定
された38。インドでは、グジャラート州が、2012年1月以
降に発注された新しい太陽光発電プロジェクトのため
の買取価格を減少させた39。
2012年に議論されていた新たなFIT政策は2013年ない
し2014年 に 制 定 さ れ る ポ ー ラ ン ド の 太 陽 光 発 電 と、
2013年に承認されることが期待される、サウジアラビ
アの新しい目標(政策目標の節を参照)の到達を支援す
るためのFITの提案を含んでいる40。
自 然 エ ネ ル ギ ー 割 当 基 準 制 度( 以 下RPS) ま た は
“クォータ制度”は22か国と米国、カナダ、インドの54の
州/地域で行われている。中国は、既存容量を系統に繋ぐ
ために、電気事業者に15%の割当を制定し、ノルウェー
は2012年前半に割当基準政策を制定した41。
欧州では、2つの既存のRPS政策が2012年に変更され
た。ポーランドは電力事業者の再生可能エネルギー電
力へのRPS義務を年率1%ずつ増加させ、イタリアでは
既存のRPSを順次撤廃し、FITに置き換えていく42。ア
ジアでは、韓国が初期の法令で定められており、2010
年に制定したRPSを実施した43。
米国では新たなRPS政策は採用されなかったが、いく
つかの既存の政策が州レベルで修正された。デラウェ
ア州は、2026年までの3.5%の太陽光発電の目標を制定
した。メリーランド州では、2020年までに2%の太陽
光発電割合を達成するために、RPSにおける太陽光発
電の目標年を2年前倒しした。ニューハンプシャー州
では2025年までに自然エネルギー割合を24.5%へと増
加させた。ニュージャージー州では、2028年までに太
陽光発電を4.1%とするよう増加させた44。多くの州で
RPS法を廃止または削減しようとする動きがあった
が、唯一オハイオ州だけが、自然エネルギーへの割当
義務を12.5%に削減した45。加えて、ニューハンプシャー
州など多くの州は、発電以外の技術をRPSの対象とす
るよう適格要件を修正した。(暖房および冷房政策の
節を参照)
自然エネルギー証書はしばしば、RPSとクォータ制度
の 双 方 に 使 用 さ れ る。2012年 前 半、 ノ ル ウ ェ ー・ス
ウェーデン共通のグリーン証書市場は2020年までに
26.4TWhの自然エネルギー取扱量へ発展させることを
目的として創立された46。国家レベルでは、オーストリ
アが小規模太陽光発電導入に割り当てられる取引可能
な証書の量を半分に制限し、ルーマニアは、投資家への
グリーン証書制度をより魅力的にするための方策とし
て、新たな設備開発と新しいプレーヤーの成長を制限
するなど、多くの規制を採用している47。
州/地域レベルでは、2012年の新太陽光発電法におい
て証書制度を制定したインドのアンドラプラデシュ州
では証書に関連する変更を行った。米国のアリゾナ州
では、州の消費税から自然エネルギー証書の売り上げ
を控除した。そして、ベルギーのブリュッセル地域、フ
ランドル地域、ワロン地域では、それぞれの独立したグ
リーン証書スキームにおけるインセンティブを減少さ
せた48。
いくつかの国では近年、公共競争入札(入札またはオー
クション)を取り入れ、その数は2009年の9か国から
2011年末の36か国まで増加した49。2013年前半までに
計43か国が確認され、これらのうち30か国が上位中所
得国ないし下位中所得国に分類される50。
入札制度は、技術毎に分ける場合も分けない場合もあり、
様々な規模の容量(一部は量の上限を設定する)を含み、
ときには価格の上限を設定し、しばしば価格が唯一ない
しは最も重要な要素ではないために、プロジェクトの選
定のための様々な基準を含むことがある51。
2012年および2013年初頭を通して、多くの国が風力や
太陽光発電のプロジェクト開発のための新たな入札を
開催した。チリはCSPプラント建設のための入札受付
─ 62 ─
を実施した52。フランスは同国初の洋上風力発電のた
めの入札を開始し、また政府入札を通じた541MWの
新たな太陽光発電とCSPプロジェクトを許可した53。
モロッコは2020年までに導入する2GWの風力発電のた
めの入札を始めた54。サウジアラビアは同国の新しい
目標に向けた事業規模の太陽光・CSP計画の第一段階
への公共入札を開始した55。州レベルでは、インドで
新規の自然エネルギー容量を設置するための入札をま
すます行っている。たとえば、タミル・ナードゥ州は
2012年後半に1GWの太陽光発電のための入札を発表
し、アンドラプラデシュ州では、2013年前半に公開入
札を通じて1GWの新しい太陽光発電を割り当てる計画
を発表した56。
ブ削減を行った。GBIは2013年に再採用されたばかり
だった65。同様に2013年にも、国家太陽エネルギー目標
において太陽光発電の普及を支援するために設計され
た仕組みである、Indian National Clean Energy Fund
への支払いが遅れた66。
現在、自然エネルギー部門を妨害するコストと財政の
障壁に対処するために使用されている多くの財政的イ
ンセンティブは2012年と2013年前半に改訂や追加が行
われた。カメルーンではすべての自然エネルギー製品
から付加価値税(VAT)を免除した。インドはCSP設備
の輸入関税を免除した。アイルランドは自然エネル
ギーに対する企業の投資を控除する制度を延長した。
リビアはすべての自然エネルギー設備と部品を関税か
ら免除した。そしてマダガスカルは自然エネルギー設
備への輸入関税を半減させた60。米国では、とくに風力
発電の発展に主要な役割を果たしていた生産税額控除
(PTC)が2013年中、延長される61。さらに合衆国のPTC
適合申請は2013年の制度満了前までに建設中(運転中
ではなく)にあるプロジェクトまで許可するように改
訂された62。同様に米国では、新規計画には適用されな
いものの、既存の計画に対して50%の加速償却割戻金
制度が延長され、1603の現金支援プログラムが継続し
ている63。
FIT買取価格と同様に、いくつかの国は、2012年に自
然エネルギーへの補助金を削減した。ベルギーは地熱
発電、太陽熱発電、バイオマスおよびバイオガス発電に
対する投資の税額控除を撤廃した64。インドは発電量基
準のインセンティブ(GBI)の減額と加速償却控除税優
遇の停止を含む風力と太陽光への大幅なインセンティ
─ 63 ─
第4章
このような削減の域を超えて、多くの国々は以前は補
助金を出していた技術に課税を始めた。自然エネル
ギー導入への課税は2012年に3つの国で採用された。
ブルガリアは太陽光、風力、水力そしてバイオマスのプ
ロジェクトからの収入に遡及的な税を設定した。ギリ
シャは2012年に自然エネルギー電力の消費者に課税
し、続いて2013年の前半にそれを上昇させた。スペイン
は自然エネルギーを含むすべての形態の発電所に7%
ネットメーターリング制度はカナダ(8つの州)と米国
の一律課税を課した67。また米国は、進行中の貿易摩擦
(43の州、ワシントンDC、および4つの自治区)を含む、 の結果として中国とベトナムからの風力発電設備の輸
少 な く と も37か 国 で 存 在 す る。3つ の 新 し い 制 度 が
入に関税を課したのと同じく、中国からの太陽光発電
2012年に制定された。ブラジルは1MW以下の小規模発
モジュールとパネルに二段階の輸入関税を課した68。
電への制度を実施し、チリは最大100kWまでの自然エ (本報告書2012年版の補足8参照)
ネルギーへのネットビリング法案を承認し、エジプト
は2012年後半にネットメータリング制度を制定した57。 世界の他の地域では、自然エネルギー技術への新しい支
また、米国の2州を含む3つの既存の政策が2012年に改
援を発表した国がある。オーストラリアは新しいオース
訂された。カリフォルニア州はネットメータリング制
ト ラ リ ア 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 庁 と Clean Energy
度に認可されたシステムの数を2倍にした。マサチュー
Finance Corporationを通じて177億米ドル(170億豪ド
セッツ州は太陽光発電のネットメータリング制度にお
ル)以上を保証した69。アゼルバイジャンは89億米ドルを
いて、割り当て上限を2倍にし、認可のピーク需要の最
投資する計画を発表した。キプロスは新しいシステムの
大6%までとした58。さらに、デンマークは、保証された
購入・導入を支援する投資補助金を導入した。中国は同
販売価格の削減と支援の限度を10年とすることを含
国の太陽光発電産業に11億米ドルを追加的に保証し、年
め、同国のネットメータリング制度の複数の改訂を通
末には合計で約20億米ドルとなった。イランは自然エネ
59
じて、新規太陽光発電導入への支援を削減した 。
第 4 章 政策の展望
ルギープロジェクト用としてNational Development
Fundに6億7500万米ドル(5億ユーロ)を設置した。イラ
クは同国の太陽光、風力の2016年目標達成のため、16億
米ドルを保証した。スコットランドは潮力発電と波力発
電を含む自然エネルギープロジェクト支援のために、1
億6200万米ドル(1億300万英ポンド)の新しい基金を公
表した。韓国は2019年までに2.5GWの洋上風力発電を開
発するために90億米ドルを保証した。そして英国はU.K.
Green Investment Bankを通して割り当てられる480万
米ドルを保証した70*。
新しい公約に加えて、自然エネルギーへの多くの補助
金が2012年に減額した。中国はGolden Sun計画より前
の年に設定された太陽光発電補助金の21%を遡及的に
減額した71。欧州では、チェコが2014年から、すべての自
然エネルギー補助金を撤廃すると宣言した。エストニ
アは補助金を15〜20%削減し、また以前に撤廃すると
公約していた風力発電補助金の導入上限を維持した。
ス ペ イ ン は2012年1月 に 新 し い 自 然 エ ネ ル ギ ー プ ロ
ジェクトへのすべての金融支援を撤廃した。そして英
国は太陽光発電への補助を20%削減したが、同時にバ
イオマス発電への既存の補助の上限を緩めた72。
いくつかの国では新しく、より効率的な自然エネル
ギー技術の研究開発への金融支援を提供し続けた。た
とえば、オーストラリアは11の太陽光発電調査研究事
業を支援するため340万米ドル(330万豪ドル)を供給し
た。日本は地熱発電の研究開発を促進する計画の創設
に1900万米ドルを供給した。Qatar National Research
FundはNational Priorities Research Programの一部
として太陽光発電イニシアティブに投資を始めた。英
国は波力発電の開発に3150万米ドル(2000万英ポンド)
を 保 証 し た。そ し て 米 国 エ ネ ル ギ ー 省 のAdvanced
Research Projects Agency-Energyは8つの研究プロ
ジェクトに1400万米ドルを提供した73。
■熱利用と冷房に関する政策
2012年に、各国は引き続き熱利用と冷房における自然
エネルギー技術の推進のための新たな政策や目標を定
めた。しかし、近代的なバイオマスや地熱直接利用、太
陽エネルギーによる熱(と冷房)を供給するきわめて
大きなポテンシャルがあるにもかかわらず、この分野
はまだ自然エネルギーによる発電分野に比べて政策立
案者からあまり注目を集めていない。
約20か国で、太陽熱温水システムを含めて熱利用ある
いは冷房に関する個別の目標を定めている(表R12を参
照)。またそれに加え、少なくとも19の国または州が、自
然エネルギーの熱利用の技術を推進するための義務を
設けている(表3を参照)。
2012年に新しい義務はほとんど追加されなかった。デ
ンマークは熱利用に関する新たな規制を設け、2013年
時点で新築建物での石油や天然ガスの燃焼ボイラーの
導入を禁止し、2016年までに地域熱供給か天然ガスが
*
利用可能な地域において石油ボイラーを禁止し、その
規制により、効果的にすべての熱利用を自然エネル
ギー源から調達することが求めらている74。ケニアの
エネルギー(太陽熱)規制2012では、一日あたり100リッ
トル以上の温水を使用する建物の年間使用量の60%を
太陽熱温水システムにより賄うことを求めている75。
米国では複数の州で、自然エネルギー熱利用をRPS制
度の対象とするためにRPSの改正を行う動きが見られ
た。ニューハンプシャー州は自然エネルギー由来の「有
用な熱エネルギー」の割合義務量を含むようRPS政策
を拡張した初めての州である。メリーランド州は、動物
の排泄物を原料としたバイオガスシステムによる熱エ
ネルギーと同様に、特定の新しい地熱熱利用と冷房の
設置をRPS制度の対象と認める改訂を採択した。オハ
イオ州は、新設と改修両方のCHPと排熱回収システム
を盛り込むために、適格技術のリストを改定した76。同
様の変更は2012年の末までにマサチューセッツ州とコ
ロラド州で議論された77。積極的な推進の一方で、自然
エネルギー由来の熱を電力のRPS義務に含めること
は、その差分を補うために全体的な目標を増加しない
限り、自然エネルギー電力の策定済みの目標を事実上
削減することになる。
自然エネルギー由来の熱に対する財政的インセンティ
ブの多くは2012年に採用、あるいは改正され、その中に
は建築物の効率化を推進するための措置と連携してい
るものもある78(補足7を参照)。欧州では、オーストリア
が建築物の効率化を支援する目的で自然エネルギー由
来の熱利用への助成金を含め1億3500万米ドル(1億ユー
ロ)のファンドを設立し、チェコ共和国ではすべての自
然エネルギー、熱利用、電力供給への支援をひとつの法
律にまとめ、自然エネルギー由来の熱の地域熱供給シス
テムや工業用利用に2.60米ドル/GJ(2.00ユーロ/GJ)の
補助金を設けた79。デンマークでは、自然エネルギー由来
の熱利用を促すために多くの財務規程が制定された。そ
の中には石油やガスによる熱を自然エネルギー由来の
熱への転換を促すための760万米ドル(4200万デンマー
ククローネ)の新しいファンドや、大規模なヒートポン
プを含む自然エネルギー技術を革新させるための630万
米ドル(3500万デンマーククローネ)のファンドも含ま
れている80。
ドイツは自然エネルギー由来の熱利用プロジェクトに
関する補助金を増加させた。イタリアでは数年後の
FIT制定を見据えて、自然エネルギー由来の熱利用シ
ステムへの助成金スキームを承認した。ルクセンブル
クは、世帯ごとの地熱ヒートポンプの支援のための26
億米ドル(20億ユーロ)を含め、建築部門における自然
エネルギーの支援メカニズムを強化した81。また、ポル
トガルは既存の建物への太陽熱利用システム設置を支
援するために135万米ドル(100万ユーロ)の助成金ス
キームを制定した。また、英国は自然エネルギー熱利用
プレミアム支払プログラムを再開し、2013年の夏には
制定されると期待されている自然エネルギー熱利用イ
すべての通貨は2013年2月4日時点の為替レートで米ドルに換算されている。
─ 64 ─
自然エネルギーの導入とエネルギー効率の改善は、実質
的に化石燃料の消費の増大を遅らせ、将来的に温室効
果ガスの排出削減において重要な役割を果たす可能性
がある。
自然エネルギーが時間の経過とともに重要になる
につれ、効率化は短期的にさらに重要な要素となる。
自然
エネルギーとエネルギー効率化の政策を協調させること
で、最大限の可能性が発揮されうる。
しかし、今日まで両
者の間では実用的な連携がほとんどなかった。
自然エネルギーとエネルギー効率化の間には重要な相乗
効果がある。エネルギー利用の効率化が進むにつれ、自
然エネルギーはエネルギーのなかでもより急速に有効か
つ重要な役割を果たすことができる。
自然エネルギーの割
合が増加するにつれ、
システム損失の削減により一次エネ
ルギーの需要は減少する(本報告書2012年版の特集を
参照)。
過去数十年にわたってエネルギー効率が向上したことに
より、世界のエネルギー強度(GDPあたりの総最終エネル
ギー消費量)は1970年の1000米ドルあたり0.21石油換算
トン(toe)から、2010年には1000米ドルあたり0.13toeに
減少した。同じ時期に、平均エネルギー強度はOECD諸
国においては1000米ドルあたり0.16toeから0.08toeに、非
OECD諸国では1000米ドルあたり0.40 toeから0.21 toe
に減少した。
しかし、発展途上国への経済活動の移行が
世界中で続いているため、エネルギー強度の世界的な減
少率は明らかに停滞している(1980年から2000年まで年
平均1.2%、2000年から2010年まで年平均0.5%)。
すべての国におけるさらなるエネルギー効率向上の可能
性は、 依 然として非 常に大きい。国 連 工 業 開 発 機 関
(UNIDO)
は、製造業部門でのエネルギー節約の可能性
は世界全体で23〜26%、発展途上国では30〜35%、先
進国では15〜20%と推計している。他の研究では、新規
および既存の建物における熱利用と冷房での世界の最
終エネルギー消費は現在の優良事例とエネルギー効率
化技術を最大限に用いることにより、快適さを高めつつ
2050年までに2005年比で46%程度削減できると示してい
る。
自然エネルギー利用とエネルギー効率化技術を進歩させ
る政策は多くの場合、個別に策定され、異なるステークホ
ルダーにより実施され、それぞれ別の政府機関によって監
督されている。過去には、自然エネルギー政策とエネル
ギー効率化政策の策定と実施を結びつける散発的な取
り組みしかなかった。
しかし、とくに地方レベルでは変化しつつある。一部の国
では国レベルでの政策決定者やステークホルダー間での
政策調整の改善やより良いコミュニケーションが拡大して
いる徴候が見られる。
たとえばドイツでは、すべての経済
部門における自然エネルギーとエネルギー効率化双方の
進展を組み合わせるという重要な長期的投資に重点的
に取り組む“Energiewende”
(エネルギー転換)プログラ
ムを通してエネルギー部門が転換する過程にある。
イタリアの新しい国家エネルギー戦略では、経済成長に
拍車をかけEUの2020 目標を上回ることを目指し、自然エ
ネルギーとエネルギー効率化対策の策定と実施を最も優
先している。その戦略においては2012年のGDP(現在
値)の1%を占めるエネルギー輸入費を削減すると同時に
2020年までに2億3200万米ドル(1億8000万ユーロ)の新
規の投資を促すことが期待されている。米国では環境保
護庁が、州や部族、地方の機関が自然エネルギーとエネ
ルギー効率化に関する政策やプログラムを州・部族実践
計画に組み込むよう支援している。
消費者行動が自然エネルギーの選択とエネルギー効率
化製品の普及率に与える影響への認識も高まっている。
この数十年の間、消費者行動のための戦略は技術に特
化したプログラムに付け加えられるものだと考えられてき
た。
しかしながら現在では消費者行動のための戦略に
は、成功した政策立案と実施が不可欠であると認められ、
賢い習慣やライフスタイルにさらなる重点が置かれてい
る。
もうひとつの傾向として、自然エネルギーとエネルギー効率
化を結び付けた持続可能な発展に焦点を当てている組
織による、より戦略的かつ協調的な手法が挙げられる。国
際機関は発展途上国における持続可能な未来のための
アジェンダを発展させることを目的として積極的に協力し
ている。
たとえば世界銀行と地球環境ファシリティ(GEF)
が2011年に承認した低炭素都市のためのグリーンエネル
ギースキームにおいては、上海の長寧地区での温室効果
ガス削減のためにエネルギー効率化とクリーンエネルギー
技術が統合されている。米州開発銀行と日本スタッフコン
サルタント信託基金はメキシコで、送電網に接続されてい
る低所得の住民のために自然エネルギー(とくに太陽光
発電)とエネルギー効率化を連携させる実証事業を開発
している。
さらに国連食糧農業機関(FAO)
は、農村地域
でのエネルギーアクセスを向上させると同時に農業フード
チェーンにおけるエネルギー効率化と自然エネルギー増
加のマルチパートナーのプログラムを開始した。
国連の「すべての人のための持続可能なエネルギー」
(SE4ALL)イニシアティブは最も重要なものであり、近代
的なエネルギーサービスへの普遍的なアクセスを提供し、
2030年までにエネルギー効率化の割合を改善し、世界中
で自然エネルギーの利用を拡大することを目標としてい
る。2012年の12月までにアフリカ、アジア、ラテンアメリカ、
小島嶼開発途上国(SIDS)の50か国以上の国がこのイ
ニシアティブに参画し、企業や投資家がSE4ALLの目標
を達成するために500億米ドル以上を委ねると同時にエネ
ルギー計画やプログラムを開発した。
出典:このセクションの文末脚注78を参照
─ 65 ─
第4章
補足7. 自然エネルギーとエネルギー効率化を結び付ける
第 4 章 政策の展望
ンセンティブFITの国内割合の案を発表した82。
他にも、ウルグアイは太陽熱設備の免税を含めた多く
の太陽熱利用技術に関する新しいインセンティブを実
行している。インドは熱利用のためのCSP(集光型太
陽熱発電)の発展のため、新しい財政的援助の国家プロ
グラムを制定した。また、インドのウッタラーカンド州
は太陽熱温水器のための既存の販売奨励金を増加させ
た83。
すべての変化が、自然エネルギー由来の熱利用を支援
するものではなかった。カナダの、戸建所有者への太陽
熱温水器設置の補助金を含むecoENERGY RetrofitHomes programme(省エネ住宅改良プログラム)は打
ち切られ、エネルギー省は家庭用灯油の2%を自然エネ
ルギーで賄うよう義務付ける法律を廃止するよう提案
した84。ニュージーランドでは太陽熱温水器を支援する
ための助成金スキームが2012年半ばに失効した85。
■交通政策
輸送部門における自然エネルギー燃料の使用を国家レ
ベルでサポートする政策は、GSR 2012年時点の46か国
から、2013年初頭には49か国へと増加したことが確認
された。バイオ燃料生産の助成金を含め、バイオ燃料混
合義務付け、免税が一般的な政策としてあげられる。混
合義務付けは、国レベルでは、27か国および27の州ま
たは省で導入済みである。(表R15を参照)
新しい混合義務付けとしては南アフリカが2012年に
E10義務を導入し、トルコが2013年初頭にE2義務を実
施し、ジンバブエがE5義務を導入した86。カナダのサス
カチュワン州が既存のE8.5混合義務を補完するB2混合
義務を制定した87。
2012年に、3か国がバイオ混燃料混合政策を制定した
か、既存の政策を改正した。インドは、2006年に適用さ
れるはずだった国のE5義務を実施した。タイはバイオ
ディーゼルの混合義務をB4からB5に引き上げた。また
米国は環境保護庁(EPA)がバイオディーゼルの要求量
を、2012年の41.6億リットル(11億ガロン)から48.5億
リットル(12.8億ガロン)に引き上げた88。
実行されないだろうが、一時的に欧州のバイオ燃料規
制でE10を保留しつづけるという提案は、オーストリア
を含むセクターに影響を及ぼした90。米国では、自然エ
ネルギー燃料基準は 干ばつに直面して、制度を撤回
させようとする大きな圧力があったにもかかわらず依
然 と し て 有 効 で あ る91。しかし2年連続で目 標 のセル
ロースの燃料成分が減少し、19億リットル(5億ガロン)
から3970万リットル(1050ガロン)に削減された92。
バイオ燃料のための財政支援の変化は2012年と2013年
初頭を通して続いた。米国のバイオ燃料産業は1.01米ド
ル/ガロン(0.27米ドル/リットル)のセルロースエタ
ノール製造のための税額控除と、1米ドル/ガロン(0.26
米ドル/リットル)のバイオディーゼルの税額控除の恩
恵を受けた93。オーストラリアは先進的バイオ燃料の開
発のために1570万米ドル(1500万豪ドル)の補助金を約
束した94。ブラジルではサトウキビの搾りかすから燃料
を作るための新たな技術の開発支援を約束し、2014年
までにほぼ10億米ドル(20億レアル)の貸付金や助成金
を約束した95。しかし、2012年6月にバイオ燃料の助成
スキームが終了したニュージーランドでは既存の支援
が終了し、英国は2012年初頭に廃食用油とバイオ燃料
の義務の差を撤廃した96。
電気自動車(EVs)は自然エネルギー開発の重要な補完
的存在になりうる。それらは自然エネルギー電力に
よって車両にエネルギー源を供給する可能性をもたら
し、自然エネルギーによる電力貯蔵というかたちで役
に立つ。多くの国は、引き続き電気自動車市場の発展と
自然エネルギーとの接続を支援している。これにはEU
諸国が含まれており、2009年以来電気自動車に使用さ
れる自然エネルギー由来の電力は10%の自然エネル
ギー輸送義務へむけた優先的な位置づけを与えられて
おり、投入する電気が持つエネルギー量の2.5倍とみな
される97。2013年初頭の時点での政府の目標は、2012
年末時点で約4万台であった電気自動車が、2020年ま
でに推定2000万台の電気自動車が稼動していることを
求めている。2020年までには年間380万台のEVs販売
を予測している推計もある98。2012年に、インドは2020
年までに700万台の電気自動車やハイブリッド車導入
の目標を発表した99。
欧州と米国におけるバイオ燃料支援政策は引き続き、
バイオ燃料のライフサイクルプロセスからの温室効果
ガス排出同様、食糧生産における燃料作物、土地、生物
多様性、水への影響を懸念する団体からの圧力を受け
ている。その結果、いくつかの主要な市場は第一世代バ
イオ燃料と先進的バイオマス原料由来のバイオ燃料の
双方から転換するように求める圧力の増加に直面して
いる。
欧州委員会は、第一世代バイオ燃料の割合の上限を全
体の輸送燃料5%に設定し、2020年までに食糧作物ベー
スのバイオ燃料生産の補助金をなくすことを提案して
おり、同時に先進的バイオ燃料の割合は4倍で計上する
ことを認めている89。これらの変化は2013年にほとんど
─ 66 ─
個人あるいはビジネスでのエネルギー消費者による自
主的なグリーン購入に加えて、多くの政府は、施設や電
力事業者にグリーン電力の製品を提供するよう求めて
いる。また、政府自身がエネルギー需要を満たすために
グリーンエネルギーを購入することを宣言してきた。
自然エネルギーが世界中で急速に選択されているにも
関わらず、新しい国レベルでのグリーン電力の購入を
支援する政策の進展は依然として遅れている。
■都市や自治体による政策
世界中で数千もの都市や街が、自然エネルギーを普及
させる積極的な計画や政策を掲げている。2012年の国
レベルでの後退にもかかわらず、地域レベルでの政策
推進の機運は続いており、都市政府が雇用創出に対応
し、増大するエネルギー需要への計画を進め、炭素排出
量を削減し、都市の住環境を向上させている。都市政府
は先進的なイニシアティブや政策を進め、国レベルの
政策やプログラムを補完し、多くの場合において超え
ている(表参照R16を参照)。同様に、中央政府は多くの
場合、テストケースとして地方レベルでの取り組みを
観察し、それらが成功した場合に国レベルの将来的な
構想として活用する傾向がある101。
ど、市長誓約(the Covenant of Mayors)への調印が大
幅に増加し、CO2の20%削減目標や気候変動緩和やエ
ネルギー効率化、自然エネルギーの計画を誓約してい
る104。ドイツでは、都市は“Energiewende(エネルギー
転換)”の影響を評価し、太陽光発電や風力発電の変動
に対処するため、消費パターンを変更するための対策
を適合させている105。
世界中の地方政府は自然エネルギーとエネルギー効率
化にもとづいて2012年に新しい気候とエネルギー計画
を制定し続け、既存の計画を補強している。デンマー
クでは、コペンハーゲンが2009年に定めた気候計画で
2025年に世界初のカーボンニュートラル首都になると
いう目標を設定し、長い間、同様に自然エネルギーの
先駆者であったフレデリクスハウンは2030年までに、
化石燃料ゼロとする新しい目標を発表した106。 フィン
ランドのヘルシンキと米国のワシントン州でも同様に
それぞれ2050年までにカーボンニュートラルを目指し
ている107。日本では、福島県が2040年までに自然エネ
ルギーによるエネルギー自給を100%とすることを目
標としている108。韓国の首都ソウルは2020年に自然エ
ネルギー電力が20%を達成することを発表し、中国最
大の都市、上海は2015年までに12%の自然エネルギー
を達成する目標を公表し、150MWの太陽光発電を含
めた技術ごとの設置目標を定めた109。
それらの高い目標を達成するために、多くの自治体は、
自治体による地域の配電網や発電施設の所有や管理を
進めている。自治体によって所有、あるいは管理されて
いる施設では自治体や市民が自然エネルギーの開発や
計画へより多くの参加することが可能になり、地方自
自然エネルギー推進のために国と協働している都市も
ある。インドでは、国の“ソーラー・シティーズ”プログ
ラムに対応する形で50以上の都市が新しい自治体政策
やイニシアティブを開始し、日本では15都市が2012年
末までに「モデル地域」として発展し、自然エネルギー
の地域プロジェクトのための国の新しい支援プログラ
ムによって推進された102*。ブラジルやインドネシア、イ
ンド、南アフリカでは2012年に、地方政府のために開発
された共通の方法論を用いて、自然エネルギーの普及
を含めた低排出型の開発戦略を描くために8都市を選
択するプロセスを開始した103。
他の地域、とくにEUや米国の都市ではボトムアップ式
で計画し、国や州の法律を補完するか、その先に進んで
いる。
欧州では2012年に1116の新しい都市や街が参加するな
* プログラムでは、都市がエネルギー生産設備を拡張し、地域での自然エネルギープロジェクトを促進することを目的としている。 これには地域自然エネルギー協議会による現地
のコーディネーターの任命、具体的な事業計画の作成、資金調達オプションの模索、社会的合意の形成と事業開始(3 年以内)の援助が含まれている。
─ 67 ─
第4章
■グリーンエネルギー購入とラベリング
「グリーン」エネルギーラベルは、エネルギー効率にお
いて用いられているのと同様に、消費者の購入時に情
報を提供している。消費者は、グリーンエネルギーラベ
ルによってエネルギー供給の選択肢における発生源を
評価することにより、
「グリーン」電力や「グリーン」バ
イオガス、熱、輸送燃料を買うことができる。政府によ
る採用の速度はゆっくりではあるが、グリーン電力ラ
ベルは多くの国々で採用されている。2013年初頭まで
にNGOによって促進されたなかに、イタリアの「100%
Energia Verde」や欧州横断で16か国を対象とした
「EKOenergy」ラベル、アメリカの「Green-e Energy」ラ
ベル、ドイツの「ok-power」ラベルがある100。
第 4 章 政策の展望
治体が直接、施設への投資や目標、促進政策を進めるこ
とが可能になり、自然エネルギーへの民間投資が奨励
される。
米国内の電気事業体を所有しているいくつかの都市で
は、2012年に既存の自然エネルギー目標を達成し、州
レベルでの固定枠制度(RPS)を補完するために固定価
格買取制度(FIT)を導入した。フロリダ州のゲーンズ
ビルで2009年に成功した太陽光の固定価格買取制度に
続き、カリフォルニア州のロサンゼルスやパロアルト、
ニューヨーク州のロングアイランドも2012年に固定価
格買取制度を採用した。カリフォルニア州のマリン郡
の固定価格買取制度では2012年に、20年間の固定価格
での契約を強化した。コロラド州のフォートコリンズ
では2013年にFITを実施する計画を承認した110。
自治体もまた、地域のエネルギー事業体との利益配分
スキームへの参加が可能である。日本の小田原市や静
岡市は2012年に地域主導型再生可能エネルギー事業を
進めるために官民協働(PPP)により地域のエネルギー
企業を設立し、サウジアラビアのメッカの自治体は
100MWの自然エネルギー発電所の建設と運営を行う
契約の入札を開始し、その施設は投資回収後には都市
に譲渡される111。
いくつかの事例では市の電気事業体はプロジェクトに
出資するコンソーシアムを組織している。たとえばド
イツの33の自治体の電気事業体は2013年に北海で商業
運転を開始する予定である400MWの洋上風力発電に
投資した112。地域社会との共同出資モデルも広まってい
る。ベルリンの市民協同組合は、2014年までバッテン
フォールヨーロッパが免許を持っている都市の電力網
を買うことへの公式な関心を発表した113。日本の飯田市
は2012年に、地域主体の自然エネルギー事業の開発を
促進するための条例を発表した114。
自治体はまた、自然エネルギーの導入を促進するため
にリベートや税額控除などの財政的インセンティブを
制定している。スペインのバレンシアは、中小企業や個
人のための追加的な支援として、事業費の45%まで助
成する支援プログラムを制定した115。サンフランシス
コ、ロサンゼルス郡、およびワシントンD.C.に加え、米
国の142都市が、都市が投資家から資金を借りて地域の
所有者にエネルギー効率化と自然エネルギー拡大に融
資するカリフォルニア州の優遇ローンプログラム
(PACEプログラム)に署名した。所有者は固定資産税
の自主的な増加を通して融資を返済し、資産が販売さ
れている場合には、これらの融資は新しい所有者に引
き継がれる116。
他の都市は模範によって先導し、自治体による管理目
標を設定し、かつ/あるいは自然エネルギー設置のため
に都市の土地を使用している。2012年には、ラージコッ
ト、ジンド、アガルタラを含むいくつかのインドの都市
は公共施設に、化石燃料の消費削減目標を上回る自然
エネルギーシステムを設置した117。ソウルでは2014年ま
でに1000校に太陽光発電のパネルを設置することを発
表し、バングラデシュのダッカは国民の自然エネル
ギーへの意識を高めるために、太陽光による街灯や信
号機の設置を展開している118。
少なくとも2つの都市は、2012年に公共施設のエネル
ギー供給目標を達成した。カナダのカルガリーでは、自
治体の業務のための電力をすべて自然エネルギーで
賄 っ て い て、 米 国 の ヒ ュ ー ス ト ン や テ キ サ ス は
438GWh、あるいは公共施設の年間消費電力の35%を自
然エネルギー(主に風力発電)から購入することを目
指している119。
建築部門では、自治体は従来型の“何%の削減”から脱
却し、オンサイト型の自然エネルギーを含めた「ほぼゼ
ロ」か「実質ゼロ」を目指している*。これらの目標を達
成するために、いつくかの都市では新しい建築基準、実
証事業を進めている。2012年、ボパールは、エネルギー
貯蔵や管理システムと統合されている太陽光発電に
よって電力と冷房需要の100%を生産するインドで最
初の実質ゼロエネルギー建物の中心地になった120。香港
は、廃食用油由来のバイオディーゼルと太陽光発電に
よって運営するよう設計された香港初の実質ゼロの建
物を発表した121。米国では、シアトルは今後3年間で12の
“living buildings※”の普及を促し、将来の都市開発のた
めの基準としてのliving建築水準の適用を評価するため
* 実質ゼロの建物は、少なくとも消費する分のエネルギーを自然エネルギーから生産している。これは、自然エネルギーによる施設内での発電や自然エネルギー電力を購入するこ
とを含んでいる。ほぼゼロの建物では消費よりわずかに少ない量を生産 / 購入している。
※ The International Living Building Challenge (ILBC) は建物やコミュニティ、インフラを評価する認証制度である。とくにオーストラリアやカナダ、アイルランド、メキシコ、米
国など世界で 90 以上の Living Building プロジェクトが運転中、あるいは開発中である。認証されるために、
“Living Buildings”は施設内での自然エネルギーシステムがエネルギー
需要の 100% を満たし(実質ゼロエネルギー)、少なくとも 12 か月間連続稼働で建物内の水の需要を確保、
処理し、
持続可能な原料や室内環境品質に関する基準を満たす必要がある。
詳細は International Living Building Institute のウェブサイトを参照 http://living-future.org/lbc.
─ 68 ─
のLiving Building 実証プログラムを開始した。カリ
フォルニア州のランカスターは2014年1月1日以降に建
設される単独世帯住宅に1〜1.5kWの太陽光発電システ
ムの設置を義務付けている122。
CHPバイオマスプラント建設の計画を承認した;デン
マークのオルフスは2030年までにカーボンニュートラ
ルになるという目標を達成するための110MWの麦わ
ら燃焼CHPプラントの建設を承認した130。
低エネルギー建築を達成するために、電気による給湯
をやめ、太陽熱温水システム(SWH)を義務付ける自治
体がますます増えている。国の目標に拍車をかけられ、
インドのいくつかの都市や南アフリカのケープタウン
やヨハネスブルグでは太陽熱温水システムの使用を奨
励している。インドでは2012年に、スラトはすべての建
物 に 太 陽 熱 温 水 シ ス テ ム 設 置 を 義 務 付 け、 チ ャ ン
ディーガルやコルカタ、ハウラ、ドゥルガープル、シリ
グリは病院や5つ星ホテルを含むすべての高層商業施
設に設置を義務付けた123。ヨハネスブルグは今後3年間
で11万世帯の低所得世帯への太陽熱温水システム供給
を目的とした“太陽熱温水システムプログラム”を開始
した124。ケープタウンは2012年に2つのプログラムを開
始した。ひとつめは貧困世帯に無償で太陽熱温水シス
テムを設置するものであり、もうひとつは設置によっ
て節約された電気料金の毎月の返済を通じて中間所得
層から高所得層へ太陽熱温水システムの利用を可能に
させるものである125。アジアでは、中国の北京で新設の
建物とスイミングプールにおいて太陽熱温水システム
の設置が求められ、日本の京都はすべての大規模な建
物で3kW相当の太陽光発電や太陽熱温水器の設置を義
務付けた126。
太陽光による冷却は、主に近隣に地域熱供給システム
と冷却のための水源がある地域で調査中の新しい領域
である。2012年にシンガポールは3900㎡(2.7MWth)の
太陽熱集熱器面積を利用し、世界最大の太陽熱冷却シ
ステムの中心地になった131。
さらに他の都市では様々な自然エネルギー燃料を使用
するオンサイト型のCHPプラントを建設している。た
とえば、2012年にスコットランドのアバディーンは 製紙工場の使用電力の90%を供給するために発電する
グリーン輸送システムへの取り組みでは、コロンビア
のボゴタ、中国の広州市、メキシコシティを含むいくつ
かの都市は、プラグインハイブリッド車や電気自動車
の利用を促しており、一方で他の都市は自然エネル
ギーによるこれらの車両の普及をよりいっそう結び付
けている135。ブラジルの都市であるクリチバはバス車両
として60台の新しいハイブリッド車とバイオディーゼ
ル車を購入した136。オランダでは、アムステルダムが新
しい電気自動車タクシーのために1万3640米ドル(1万
ユーロ)の補助金を再開し、2040年までに自然エネル
ギー電源によって電気輸送の100%を賄う目標を前進
させるために、引き続きEV購入の追加的費用の50%を
払い戻した137。また2012年に、スペインのバルセロナで
は世界初の風力発電によるEV充電ステーションを設
置し、オーストラリアのメルボルンでは初のソーラー
充電ステーションを立ち上げた138。
スマートシティイニシアティブ*は引き続き低炭素で持
続可能なインフラに向けた転換を世界各都市で進めて
いる。2012年、日本の藤沢市は住宅エリアや公共建物へ
の太陽光発電システムの設置を含むFujisawaサスティ
ナブル・スマートタウンプロジェクトを承認し、自然エ
ネルギー電力による電気自動車やバイクの利用を推進
していく予定である139。ドイツのクレーフェルトの公共
事業局は200世帯に、
(消費者に消費をシフトさせるイン
センティブをあたえるために)スマートフォンを通じて
消費者にリアルタイムのエネルギー消費量のデータと
料金の情報を提供するスマートメーターを設置し、ミュ
ンヘンではシーメンスと協働して1つの発電所に換算す
ると20MWに相当する小規模分散型のエネルギー源を
貯蓄、管理する仮想発電所を立ち上げた140。2012年はま
た、ブラジルのブジオスがラテンアメリカで最初のス
* スマートシティプロジェクトは、
エネルギー効率を高めるスマートエネルギーシステムを開発するために情報通信技術(ICT)を使用し、
建物内や地域の電力網での自然エネルギー
使用の統合の最大化や、EVs の効率的な方法による統合を行なっている。
─ 69 ─
第4章
他の都市では、暖房や工業用の熱利用、ときには冷熱
利用のために自然エネルギーを利用している。都市に
おいて、とくに人口密集地域では、地域熱供給網によ
る熱利用や冷熱利用は自然エネルギーの統合を示す優
良事例になっている。熱利用のみ、あるいは熱電併給
(CHP)の構成によって、多くの地域は自然エネルギー
の 熱 利 用 と 冷 房 利 用 に お い て 発 展 を 遂 げ て い る。
ニューヨーク州は米国で初めて石油暖房の少なくとも
2%がバイオディーゼル燃料でなければならないとい
う“バイオマス熱”の使用を命じた127。バンクーバー
は2012年に“Neighbourhood Energy Strategy”を採
択し、それは既存の蒸気タービンシステムから地域の
地熱、太陽光、地下水資源を活用するよう開発、展開、
転換していくことを狙いにしており、2020年までに世
界で最もグリーンな都市になることを目指したもので
ある128。デンマークのBraedstrupは地域供給網に熱を
供給するために、2012年に太陽熱温水器面積を8000㎡
から18600㎡(5.6MWth から13MWth)に拡大した。
ニュージーランドのダニディンはオタゴ大学の7つの
キャンパスビルに供給するために1100kWの木質チッ
プボイラーを設置した129。
都市はまた、自然エネルギーの熱利用や発電を進める
ために地熱の可能性に手を伸ばしている。フィリピン
のKidapawanは2012年に、市で3つ目の地熱プラントの
建設を承認した132。米国ペンシルベニア州のフィラデル
フィアでは生活排水を利用した商業規模の地熱利用シ
ステムを導入した133。ドイツのミュンヘンは2040年まで
に完全に自然エネルギーによる地域熱供給システムを
設置する目標の一部として、2013年に稼動し始めるよ
う定められている15か所において地熱エネルギーを開
発することができることを確認している134。
第 4 章 政策の展望
マートシティになった。そしてチリのサンディエゴで
のデモンストレーション事業もすぐに追随する予定で
ある141。
優良事例を共有し、拡大させるために、2012年に自発
的に気候やエネルギー行動を報告する都市の数は増え
続けている。たとえばカーボン都市気候レジストリ
(cCCR)は、2011年の51都市から増加し、25か国以上
の300都市で561の地球温暖化関連の誓約と2092の地球
温暖化防止活動があったと報告した142。世界中で都市の
ネットワークのメンバーが増加していることにもある
ように、自治体は2012年も引き続き協力した。たとえば
77都市が2012年にメキシコシティ協定に署名し、総数
が285都市になった。C40都市イニシアティブは2012年
12月時点で63都市が加盟し、EUの市長誓約には2013
年初頭までに約5000都市が署名した143。これらのプラッ
トフォームやネットワーク、組織もまた引き続き強調
した行動を進めるためにお互いに手を結んでいる。
─ 70 ─
表3.自然エネルギー促進政策
規制政策
公的融資
公的競争入札
公 的 投 資・融 資・
助成金
CO2
エネルギ ー 生 産
支給金
消費税・エネルギー税・ 税・
付加価値税・その他税控除
投 資・生 産 税 額
控除
補 助 金・助 成 金・
リベート
取引可能な自然
エネルギー証書
自 然エネルギ ー
熱利用義務付け
バイオ燃料
義務付け
ネット
メータリング法
RPS
固定価格買取制度
︵プレミアム制度を含む︶
高所得国
自 然エネルギ ー
目標
国レベルの政策
州/省レベルの政策
財政優遇措置
$$$$
第4章
オーストラリア
オーストリア
バルバドス
ベルギー
カナダ
クロアチア
キプロス
チェコ共和国
デンマーク
エストニア
フィンランド
フランス
ドイツ
ギリシャ
ハンガリー
アイルランド
イスラエル
イタリア
日本
ルクセンブルク
マルタ
オランダ
ニュージーランド
ノルウェー
オマーン
ポーランド
ポルトガル
シンガポール
スロバキア
スロベニア
韓国
スペイン1
スウェーデン
スイス
トリニダード・
トバゴ
アラブ首長国連邦
英国
米国
1
スペインでは固定価格買取制度
(FIT)
およびネットメータリングプログラムが、新たな自然エネルギープロジェクトのための国王令により一時的に停止している。
しかし、
これはすでにFITの資金調達を確保したプログラムには影響しない。自然エネルギー促進政策の一部である付加価値税
(VAT)
減免の期間は2010年∼
2012年である。
注;表中の各国は以下の一人当たり国民総所得
(GNI)
によってグループ化されている。
「高所得」
:1万2476米ドル以上、
「高位中所得」
:4036∼1万2475米
ドル以上、
「低位中所得」
:1026∼4035米ドル、
「低所得」
:1025米ドル以下。一人当たりの所得水準とグループ分けは世界銀行による2012年データを使用
した。本表には法制化されている政策だけが含まれている。
しかしながら、
いくつかの政策で見られるように、法制化のみでは政策が有効に実施されたとは言えず、
政策の実効性を欠き影響力を持たずに政策が終わることもある。
また中断されるとしている政策は記載されていない。多くの買取制度では対象となる技術の範
囲を制限している。
出典:本章巻末注1を参照
─ 71 ─
第 4 章 政策の展望
表3.自然エネルギー促進政策(続き)
規制政策
公的競争入札
公 的 投 資・融 資・
助成金
CO2
エネルギ ー 生 産
支給金
─ 72 ─
消費税・エネルギー税・ 税・
アルメニア
カメルーン
カーボヴェルデ
コートジボワール
エジプト
エルサルバドル
公的融資
付加価値税・その他税控除
$$
投 資・生 産 税 額
控除
低位中所得国
補 助 金・助 成 金・
リベート
アルジェリア
アルゼンチン
ベラルーシ
ボスニア・ヘルツェコビナ
ボツワナ
ブラジル
ブルガリア
チリ
中国
コロンビア
コスタリカ
ドミニカ共和国
エクアドル
グレナダ
イラン
ジャマイカ
ヨルダン
カザフスタン
ラトビア
レバノン
リビア
リトアニア
マケドニア
マレーシア
モーリシャス
メキシコ
モンテネグロ
パラオ
パナマ
ペルー
ルーマニア
ロシア
セルビア
南アフリカ
セントルシア
タイ
チュニジア
トルコ
ウルグアイ
取引可能な自然
エネルギー証書
$$$
自 然エネルギ ー
熱利用義務付け
バイオ燃料
義務付け
ネット
メータリング法
RPS
固定価格買取制度
︵プレミアム制度を含む︶
高位中所得国
自 然エネルギ ー
目標
国レベルの政策
州/省レベルの政策
財政優遇措置
表3.自然エネルギー促進政策(続き)
規制政策
公的融資
公的競争入札
公 的 投 資・融 資・
助成金
CO2
エネルギ ー 生 産
支給金
消費税・エネルギー税・ 税・
付加価値税・その他税控除
投 資・生 産 税 額
控除
補 助 金・助 成 金・
リベート
取引可能な自然
エネルギー証書
自 然エネルギ ー
熱利用義務付け
バイオ燃料
義務付け
ネット
メータリング法
RPS
固定価格買取制度
︵プレミアム制度を含む︶
自 然エネルギ ー
目標
国レベルの政策
州/省レベルの政策
財政優遇措置
フィジー
ガーナ
グアテマラ
ガイアナ
ホンジュラス
インド
インドネシア
レソト
マーシャル諸島
ミクロネシア連邦
モルドバ
モンゴル
モロッコ
ニカラグア
ナイジェリア
パキスタン
パレスチナ地区2
パラグアイ
フィリピン
セネガル
スリランカ
スーダン
シリア
ウクライナ
ベトナム
低所得国
$
第4章
バングラデシュ
ブルキナファソ
エチオピア
ガンビア
ギニア
ハイチ
ケニア
キルギスタン
マダガスカル
マラウィ
マリ
モザンビーク
ネパール
ルワンダ
タジキスタン
タンザニア
トーゴ
ウガンダ
ザンビア
2
パレスチナ地区は、
世界銀行の国の分類では
「ヨルダン川西岸・ガザ地区」
に含まれている。
それらは国連による2009年「パレスチナ暫定自治区」の一人当
たりGNI
(1483米ドル)
を用いた。
─ 73 ─
第 4 章 政策の展望
政策マップ
図25.
自然エネルギー政策を持つ国々
(2013年はじめ時点)
実施された政策の数
9−13
6−8
3−5
1−2
政策なし、
またはデータがない国
138
図26.自然エネルギー政策を持つ国々
(2005年時点)
か国
自然エネルギー目
標を定めた国の数
127か国
自然エネルギー促進政策は127か国で実施
されている。
そして、その3分の2が途上国および新興国である。
─ 74 ─
GSR
2013
第 5 章 農村地域の自然エネルギー
近代的なエネルギーサービスへのアクセスは経済成長
のために不可欠であり、持続可能な人間開発に不可欠
である。世界全体では、およそ13億人が電力へのアクセ
スがないままであり、26億人は調理や熱利用を伝統的
なバイオマスストーブやたき火に依存している1。未電
化地域の人々の99%は開発途上地域に住んでおり、そ
のうちの5分の4は南アフリカやサハラ以南の農村地域
で生活をしている2。
自然エネルギーは従来のエネルギー源に依存している
何十億もの人々に近代的なエネルギーサービスを提供
し重要な役割を果たすことができる。そうした人々は
しばしば照明のためには灯油ランプやろうそくに、調
理や熱利用のためには伝統的バイオマスに、情報通信
用のラジオに電力を供給するためには高価な乾電池に
頼っている。開発途上国の多くの農村地帯では、系統へ
の接続は経済的に難しいか、あるいは実現するために
数十年も要する可能性がある。今日では、伝統的なバイ
オマスエネルギーや炭素系燃料に代わる実行可能でコ
スト競争力のある多くの代替案が存在し、信頼性があ
り持続可能なエネルギーサービスを提供することがで
きる。自然エネルギーシステムにより、遠隔地および農
村地帯において近代的なエネルギーサービスへの移行
を加速させるかつてない機会が出現している。
開発途上国の農村地域の自然エネルギー市場はきわめ
て多様であり、電化の進展度合い、低公害型調理用ス
トーブの利用可能性、資金調達モデル、支援政策は国や
地域によって大きく異なっている。自然エネルギーの
技術、類型、適用範囲が幅広いことと状況が多様である
ため、この分野のアクターもまた多様であり、地域に
よって異なる。アクターは、ソーラーランタンやピコ水
力システム、近代的な調理用ストーブを販売する小規
模 な 民 間 事 業 者 か ら、 各 国 政 府 や 国 際 非 営 利 組 織
(NGOs)、開発銀行にまで及んでいる3。
農村の自然エネルギーに関する主要な関係者は次のも
のを含む。消費者(個人とコミュニティー)、国政府、地方
政府および自治体政府、電力事業者、農村電化機関、開発
銀行および多国間組織、国際機関および国家発展機関、
NGO、個人資金提供者、また製造者および設置会社。さ
らに将来有望な民間投資会社、整備・保守(O&M)事業
体、システム・インテグレーター、全国規模の輸入業者、
規制機関、農業相談員、地域の技術者および産業、零細企
業およびマイクロファイナンス金融機関(MFI)を含む。
この分野は多様性が大きく、協調が不十分であるため、
データ収集と影響評価が困難であり、統合された信頼
性のあるデータが不足している。さらに、小規模な自然
エネルギー市場の大半は現金で支払われ、そうした売
上は追跡されない。そのため、すべての国の遠隔地とオ
フグリッドエリアにおける自然エネルギーの進展状況
を詳しく述べることは難しい。しかしながら、多くの個
別プログラムと国に関するデータは利用できる。本章
では、大規模な専門家ネットワークから得られた情報
に基づき、農村地域の自然エネルギー市場の状況に関
する情報を更新していく。
■農村地域の自然エネルギー技術
2012年には、自然エネルギーの利用によって近代的な
エネルギーサービスへのアクセスが改善された。自然
エネルギー電力の農村地域での利用は、非常に手頃な
価格となったことや地域の自然エネルギー源について
の知識が改善されたこと、より洗練された技術の適用
がなされたことから、増加している。風力、太陽光イン
バーター、ガス化設備、計量技術の価格低下と同時にミ
ニグリッドへの注目が増している。
技術の発展もまた農村地域の暖房や調理部門を進展さ
せており、一方で農村地域の人々に低公害型の調理方
法やその他の近代的なエネルギーサービスがもたらす
便益について教育するプログラムが人気を集め続けて
いる4。加えて、小規模な自然エネルギーシステムの修理
やメンテナンスについての地域での研修に焦点を当て
たプログラムが継続的に行われている。遠隔地や離島
におけるサービスコストはしばしば障害となるため、
そうしたプログラムは重要である5。
太陽光発電の価格は低下傾向を継続し、比較的小規模な
システムの導入についても手頃な価格となった。価格の
下落、効率の高いLEDランプ、バッテリーの改良が組み
合わさって、多くの人々の基本的ニーズを満たすことが
できる、入手しやすく軽量で信頼性が高い長寿命のソー
ラーランタンが利用できるようになっており、通常は従
来型の灯油中心の方法よりも低コストとなっている6。
ソーラーピコPVシステム(SPS)は10ワットまでの規模
で、簡単に自分で組み立てて使用することができるもの
であり、現在では多方面で途上国の人々でも利用でき
る。これらピコソーラーは、様々な用途に使うために設
置することができ、サハラ以南のアフリカのいくつかの
遠隔地で行われているように、自家消費型の病院に電力
を供給するためにも使われる7。
ミニグリッドが導入できない農村部では、通常10ワッ
トから200ワットまでの太陽光システムを備えたやや
大きめのソーラーホームシステム(SHS)が、ますます
設置されるようになっている。たとえばバングラデ
シュでは、210万件以上のシステムが2013年3月までに
設置された。この発展はバングラデシュにおけるエネ
ルギーアクセスの動向を変化させ、農村地域を盛況な
商業の中心地域に変えている8。
典型的な50kWまでの小規模風力タービンは、高度な無
─ 75 ─
第5章
南太平洋のトケラウには1400人が住み、太陽光発電
とココナッツ由来のバイオ燃料の組み合わせによっ
て最近自然エネルギー 100%を達成した。
多くの国では、自然エネルギーの利用を通じて、エネ
ルギーへのアクセスと持続可能性の二重の課題に対
処する大規模なプログラムを展開している。
第 5 章 農村地域の自然エネルギー
補足8. 2012:革新的なエネルギーシステム:ミニグ
リッド・ポリシー・ツールキット
ミニグリッドは、島しょ部や遠方の山岳地域や森林
地帯の町といった孤絶した地域での電源についての
解決策であり、そうした地域では系統に容易に接続
できず、“系統独立型”電源は技術的にも経済的にも
有望ではない。ミニグリッドは設備容量がより大き
く(最大1MW)、供給網を通して(個別の場所にでは
なく)コミュニティ全体にエネルギーを提供し、しば
しば多数の技術を結合させる(例:風力・太陽光のハ
イブリッド発電システム)ため、独立型の太陽光発電
や風力発電システムと異なっている。ミニグリッド
は今後も拡張可能であり、コミュニティグループや
中小企業で管理することができる。全国的な電力系
統がその地域に届いた場合には、それと接続するこ
とができる。
小規模の系統にはいくつかの例がある
■インバーターと接続したミニグリッドは、様々な
技術(太陽光発電、風力、ディーゼル機関、蓄電池)を
組み込み、2kWから300kW以上までの規模がある。
これは急速に拡大している市場である。
■水力発電/小水力発電のミニグリッドは、遠隔地で
の作業、製茶工場および小規模地域のために使用さ
れる成熟した技術である。
■農業廃棄物やバイオガスを燃焼させるガス火力発
電を備えたミニグリッドは、成熟しつつある技術で
あり、多くの場合、製糖や木材産業の工場で商業的に
使用されている。
■最近まで、ディーゼルを動力源とするミニグリッ
ドは最も一般的な選択肢であった。しかしながら、コ
ストや環境への懸念のため、プロジェクト開発者は
「第一の」解決策としてのディーゼル発電を再考する
ことを余儀なくされている。
ミニグリッドを意味あるものとするためには、通常、
対象地域において経済活動が活発となるかや、投資
コストを回収できるいくつかの基礎的な負荷(これ
らは通信基地局、農産加工、蓄電池充電を含む)があ
りうるかが求められる。また最低限の人口密度や消
費者からの電力需要が必要であり、それらがなけれ
ば、系統独立型の太陽光発電や一般的な発電設備の
方がより良い選択となる傾向がある。
水力やディーゼル発電技術が利用されて以来ずっと、
ミニグリッドも使用されてきた。水力発電ベースのミ
ニグリッドはアジアでよく利用されおり、アフリカで
は大規模な電力系統プロジェクトに焦点が移りだす
1960年代より前には広く採用されていた。ディーゼル
発電による小規模系統はアフリカ全域の孤絶地域の
電化のための“第一の”選択であった。最近では、ルワ
ンダとウガンダといった国では、積極的な小規模水力
プログラムを取り入れている。島しょ部や遠隔地のサ
トウや木材の大農園ではしばしば、業務や従業員用住
居にバイオマス廃棄物を利用したミニグリッドシス
テムを活用している。2005年以降、遠隔地域における
太陽光発電と蓄電池やインバーター技術の使用が急
速に増加している。たとえば、多数の太陽光発電によ
るミニグリッドが農村地域エネルギー機関により西
アフリカで導入されている。
それでもなお、普及への重大な障壁が存在する。第1
に、ミニグリッド技術の理解不足やビジネスモデル
の経験不足により、多くの場合、政策決定者は“リス
クの高い”実証されていない解決策よりも“伝統的
な”解決策を選択してしまう。第2に、非現実的な系統
拡張計画およびオフグリッドへの投資を嫌う一般的
な考え方により、ミニグリッドへの適切な投資が抑
制される。第3に、ミニグリッドの解決策に関する巨
額の初期投資費用は、ディーゼル燃料への平常通り
の支援と相まって、新たな解決策への投資を減少さ
せる。
「ミニグリッド・ポリシー・ツールキット」プロジェク
ト*は、ミニグリッドによってどのような効果がもた
らされるかについての普及啓発を行い、共通の誤解
を解き、これまでに学んだ教訓を提供し、重要な政策
決定者やその助言者に対してエネルギー計画やエネ
ルギー政策に自然エネルギーおよびハイブリッド型
によるミニグリッドをより多く組み込むよう提言を
行っている。
ミニグリッドは様々な理由のため注目が高まってい
る。遠隔地域に国の電力系統を拡張するためには高額
の費用が発生し、農村部での電力需要は小さすぎてそ
うした費用を賄うことができないだろう。石油を使っ
た発電の費用が増加している一方で、太陽光、風力、イ
ンバーター、ガス化技術および計測技術の価格低下に
よりミニグリッドのコストは劇的に下がった。今日、
「インテリジェント」地域のミニグリッドは自動で電 “革新的なエネルギーシステム”の補足記事は、自然
力使用を計測し、顧客に請求書を送り、管理データを
エネルギーの統合とシステム変革に関わるエネル
系統運用者にオンラインで提供することができる。さ
ギーシステムの進歩に焦点を当てる、本報告書の定
らに、効率的で低炭素型の技術に対する需要は高まる
期的な特集記事である。
ばかりであり、また地方の電化プログラムはますます
環境に良い解決策を求めている。
出典:この章の巻末注9を参照
* このプロジェクトは農村電化同盟(ARE)
、EU エネルギーイニシアティブの対話・パートナーシップ基金(EUEI PDF)
、および REN21 によって監督されており、
African Solar Designs と MARGE によって運営されている。より詳しい情報については www.minigridpolicytoolkit.euei-pdf.org
─ 76 ─
1kW程度の小規模水力発電構想が、遠隔地や農村部で
広く利用されている。また、地熱発電は資源が利用可能
な地域でますます普及している。地熱発電は、すぐに利
用可能な高温の蒸気資源を持った国では高い競争力を
持っている。低温の蒸気資源からは熱が生産され、高温
の場合は熱のカスケード利用 * が行われる11。小規模の
発電装置はまだ競争率が高くないが、エクアドルとケ
ニアを含むいくつかの国が、発電コストを下げるため
に研究開発資金を増額した12。
太陽熱の技術は成熟しており、信頼性が高く、手軽に入
手でき、経済的に競争力が高い。さらに、家庭や業務部
門での冷暖房需要と同様に、産業プロセスにおいても
大きな可能性をもっている。太陽熱はとくに中国の都
市部と農村部において水を加温するために広く使用さ
れ、他の発展途上国においても大きな可能性をもって
いる13。
政策は、普及を加速させ、この分野への投資を促進する
ための重要な役割を果たしており、多くの国がエネル
ギーアクセスへの課題に対する自然エネルギーによる
解決策を促進するための様々な公的戦略を採用してい
る17。こうした取り組みはより広い農村地域開発計画に
ますます組み込まれるようになっており、広範囲にわ
たり、エネルギーアクセスへの新たな投資を呼び込み、
エネルギーシステムの開発と管理における地域住民の
参加を支援するような、貧困者にとって有益な政策や
政策枠組みに焦点を当てている。
多くの国々では、より強力な政治的コミットメントに
より、より統合的な政策の基礎が形成され、決定的な活
動が促進され、中期と長期双方での相当量の公的資金
が供給されはじめる。政策決定者はまた、良くも悪くも
過去数十年の経験から利益を得ており、各地の社会的
および経済的実態により影響を受けたプログラムを構
築する。1990年代後半にサハラ以南のアフリカ地域で
農村電化機関によって採用されたようなトップダウン
型アプローチは、ボトムアップ(内部成長的)プロセス
を通じて発達するような政策枠組みに取って代わられ
ている。
中国、ブラジル、インド、南アフリカでは、エネルギーア
クセスと持続可能性の二重の重要な課題に対処するた
めの大規模なプログラムを制定し、他国を先導してい
る。進展はコスタリカ、フィリピンでも明らかであり、
これらの地域ではオフグリッドの電化プログラムの全
体的な計画と実施を監督するために農村電化組合が取
り入れられた。アルゼンチン、バングラデシュ、ケニア、
乾燥と食品の保存加工のための固形バイオマス利用は
マリ、メキシコ、スリランカでは、公共および民間部門
増加し続けており、バイオガスプラントもそうであるよ
の資金を組合せてオフグリッド自然エネルギープログ
うに、農村地域の電化や調理のために広く使われてい
ラムを進めている一方で、多くの国が国際的な支援の
る。バイオガスプラントは簡素な技術に基づくものであ
恩恵を受け続けている。たとえば、EnDevプログラム
り、家庭や営利農場で燃料用に十分な家畜排泄物を利用 (オーストラリア、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スイ
できる場所で増え続けている14。しかしながら、先行投資
ス、英国が支援している)によって、ベナン、ボリビア、
としての高額の資本コストや保守整備の必要性、バイオ
ブルキナファソ、ブルンジ、インドネシア、ネパール、ニ
ガスシステムについての知識不足のため、より大きな規
カラグア、ペルーにおいて900万人に近代的なエネル
模のプラントは貧しい農村地域での普及が遅れている。 ギーサービスへのアクセスを提供してきた18。
たとえそのような状況であっても、農村地域の電化のた
めに2011年末以降に約4800万台もの家庭用バイオガス
正式な目標は、これらの取り組みの基本的な構成要素
プラントが導入された。その大部分は中国(4280万台)と
である。電化目標を持つ国は、バングラデシュ、ボツワ
インド(440万台)で導入されており、カンボジア、ミャン
ナ、エチオピア、マラウイ、マーシャル諸島、ネパール、
マーがそれに続いている15。
ルワンダ、南アフリカ、タンザニア、ザンビアなどがあ
る19(表参照R17を参照)。ブラジルと中国を含むいくつ
エタノールも従来の固形バイオマスおよび炭に代わる
かの国々では2012年に新たなエネルギー ·アクセス目
調 理 用 燃 料 と し て 使 用 で き る。モ ザ ン ビ ー ク で は、 標を制定し、それを達成するために特定の資源の割り
2012年初頭にほぼ200万リットルの年間生産能力を持
当てや監視システムを設定した。
つエタノール工場が開設した。同社では約3000件の地
元農家から余剰キャッサバ原料を購入し、木炭の現地
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)では2030年まで
小売価格に対して競争力のある価格でエタノール燃料
に最大7800万世帯に電気を供給する計画であり、その大
と低公害型調理用ストーブを販売している16。
部分はミニグリッドによって行われる20。ECOWASは
2012年10月に、地域分散型の自然エネルギー・システム
■政策と規制の枠組み
によって農村人口の25%にエネルギーを供給すること
自然エネルギーを促進し、その利用の障壁に対処する
を目指した地域自然エネルギー政策も採用した21。これ
*
熱のカスケード利用は、より高温の工程からの余剰の熱が、より低い熱を用いる作業へと連続的に用いられるプロセスである。
─ 77 ─
第5章
線技術と新たに開発された材料により、性能が向上し
てきている。中小規模の風力タービンはますます競争
力のある発電方式となってきており、容易に既存の系
統に統合できるようになっている。エジプト、エチオピ
ア、ケニア、レソト、マダガスカル、モロッコでは、既存
の小規模系統に風力を追加する計画が進行中である
(補足8を参照)9。インフラストラクチャーが限られて
いる地域であっても、中規模風力発電システムはます
ます持ち込まれ、設置され、維持管理がなされており、
発電コストは2012年に0.10ドル/kWh程度となってい
る10。
第 5 章 農村地域の自然エネルギー
らの計画は、1億7000万人以上が電気を利用できずにい
る西アフリカのエネルギーアクセスという課題に直接
的に取り組むことを目標にしている22。
多くのプログラムでは、住宅用の太陽光発電システム
などの特定の技術の展開に焦点を当てている。インド
の地方電力政策は、系統接続が適していないか費用効
果的でないかもしれない村や住居への独立型システム
と、独立型システムも系統接続も実現できないところ
での太陽光発電と組合せた独立型照明システムの採用
に基づいたオフグリッドの解決策を提供することを目
指している。バングラデシュでは、農村電化および自然
エネルギー開発のプロジェクトにより、現在一日あた
り約1000件ものソーラーホームシステムが導入されて
いる。このプロジェクトは、バングラデシュのインフラ
開発会社(IDCOL)と、約40のNGOによる組織間パート
ナーシップによって運営されている23。
これらのプログラムを維持し、意欲的な電化目標を達
成するためには多額の投資が将来にわたって必要であ
る。2030年までの近代的なエネルギーへの普遍的アク
セスの目標を定めた国連総会での“すべての人のため
のエネルギーアクセス”目標では推計360億〜410億米
ドルの年間投資が必要となるとした24。
生産活動の発展への自然エネルギー技術の貢献によ
り、金融の実行可能性および持続性が大いに改善する
可能性がある。また、大規模なオフグリッドの自然エネ
ルギー・プログラムは、様々なファイナンス手法を通じ
て初期投資コストの障壁を解決することに成功した25。
しばしば補助金は、遠隔地域の電化スキームを開発す
る際に、担当者が自然エネルギー技術を採用すること
を奨励するために適用される。この初期投資コストへ
の助成は、過去10年に渡って自然エネルギーシステム
の普及速度を早めた。
手法は、地域によって異なる。バングラデシュでは、資
金調達のインセンティブとして、長期借入金、資本コス
トの3分の1まで適用される助成金、低利融資があり、約
5年の猶予期間を与えている26。マリ、セネガル、ウガン
ダのケースでは、農村電化ファンドは初期投資コスト
の80%まで助成しており、エネルギーサービス会社は
自然エネルギー技術を利用した農村電化政策に従事す
ることができる27。
多くの地域では、地元での資金調達の適用を、長期的な
ファイナンスの持続可能性を達成するための手段とし
て利用している。ウガンダ、マラウイを含むいくつかの
国々では、資金調達の不足を補うよう地域資金の利用
促進を進める支援政策を2012年に制定した。これらの
政策では、地域の潜在的な可能性を高めるための資金
や資源を適切に配分し、地域のエネルギー計画と意思
決定プロセスにおいて地元の人々の効果的な関与を確
保するために、エネルギーリテラシーを高めることを
目指している。
地域金融の促進は過去のプログラムでの経験に基づい
ており、実質的かつ内発的な地域による関与がないた
めに、対象地域の要求と特徴からかけ離れた多くのプ
ログラムが存在している。こうした状況がエネルギー
アクセスの改善のために補助金を受けた小規模なプロ
ジェクトの成果についての期待はずれの証拠の背景に
ある。
■業界動向とビジネスモデル
農村地域の市場へのエネルギー ·サービスの供給は過去
20年にわたって発達しつづけており、中央集中型で公共
部門主導型の手法から、いまや自然エネルギーが重要な
位置を占めている官民パートナーシップやベンチャー
企業の多様な形態へと変化している。携帯電話産業と同
様に、低収入顧客が急激に成長する物品やサービスの市
場をもたらしうるという認識がより高まり、彼らに役立
つ新たなモデルが出現しているため、農村地域のエネル
ギー市場はますます潜在的なビジネスチャンスとして
見なされるようになっている28。
もっぱら政府と資金提供者の資金によって援助された
農村地域電化プログラムは、今も多くの発展途上国で
採用されており、垂直的に統合された市場や自由化さ
れた市場の系統拡張にとくに用いられている。しかし、
商用または準商用のビジネスモデルは、オフグリッド
市場へのより広い範囲のエネルギー・サービスを提供
する主要な選択肢となり始めている29。有望なことに、
革新的なマルチステイクホルダーのビジネスモデルが
次々と登場しており、農村地域の幅広いエネルギー需
要に応じた、自然エネルギーを基盤として顧客に合わ
せるとともに金融的にも持続性があるサービスを提供
している。
ラオス、レソト、およびネパールでは貧困者対応官民
パートナーシップ(5P)と呼ばれる新たなモデルの下で
プロジェクトを実施している。5Pモデルは下記のこと
を目指している。農村地域の人々にとってのエネル
ギーサービスへのアクセスを改善すること、政策立案
者の意識を高めること、エネルギーと農村開発政策を
統合するための政策オプションを開発するために国や
─ 78 ─
地方レベルでの能力を高めること、今後も持続し、増加
しうるような価値創造のために、民間企業および起業
家の投資を導く環境を築いていくこと30。
もかかわらず、自然エネルギーを使った成功を収めた
革新的な小規模電力事業を実行している民間企業の多
くの例がある37。
こうした多様なビジネスモデルは、いくつかの傾向が
収束したことで促進されている。それらは下記を含ん
でいる。技術革新が増加し、価格が低下していること
(小規模な発電設備および装置の両方)、化石燃料や調
理用燃料の価格が上昇し、変動が大きくなっているこ
と、エネルギーアクセスへの課題の意識が高まってい
ること、より低公害型で近代的な技術へと資金提供者
の選択が変化していること31。 同時に、社会起業家精
神と“インパクト・インベストメント”の台頭により、過
去の経験からの教訓を統合して、農村市場における革
新的なベンチャー企業群を形成することを支援でき
る。過去の経験からの教訓とは、販売後の活動の重要
性、マイクロファイナンスの可能性、およびそれらを可
能にするビジネス環境の創出を含む32。
以下の節では、本報告書2012年版から更新され、地域別
での農村地域のエネルギーの動向やトレンドの概要を
示す。アフリカ、とくにサハラ以南のアフリカでは、近
代的なエネルギーサービスへのアクセスの割合がかけ
離れて低い。その一方でアジアでは、各国間で大きな差
があり、またラテンアメリカのエネルギー・アクセスの
割合は比較的高い。(表参照R17を参照)
その他のモデルでは、リース契約を含むものがある。
Soluzはホンジュラスとドミニカ共和国では直接のリー
スか、またはリース後所有契約のSHSサービスを提供し
ている34。SHSと太陽光キットの容量の点から、最も注
目すべき官民パートナーシッププロジェクトはアルゼ
ンチン、バングラデシュ、中国、インド、インドネシア、モ
ンゴルおよびベトナムにおいて活発である35。それらは、
世界銀行のような主要な資金提供者と連携した国家政
府によって共同で実施され、ランタンとディーゼル発電
機を移動可能で持続可能かつ手頃な代替品に取り換え
ることに着目している36。
一般に、小規模電力事業※ビジネスは複雑な計画立案お
よび管理技術を必要とし、負荷の大きさ、信頼できる低
コストの一次エネルギー源の利用可能性、顧客の値ご
ろ感、しっかりとした規制枠組みに大きく依存する。に
■アフリカ:地域別状況
サハラ以南のアフリカでは電化を促進するための努力
を行っているにもかかわらず、この地域は電化率が世
界でも最低となっている。地域人口の約70%が電気へ
のアクセスができないままである39。
ECOWASの加盟国は共同で自然エネルギーとエネル
ギー効率化のためのセンター(ECREEE)を通じた農
村地域エネルギー発展プログラムを計画している†。こ
れらは、自然エネルギーとエネルギー効率化の促進に
おいて、アフリカで最も積極的な地域の一つであると
いえる。ECREEEは、後にECOWASの加盟国で適用さ
れる地域政策ガイドラインを開発し、地域のエネル
ギー・アクセスおよびエネルギー効率を改善するため
に様々な国際機関(たとえばIRENA、UNIDO、FAO)
などとの複数の戦略協定を結んでいる。2012年10月、
ECOWAS諸国は2020年までに地域の電力構成の10%、
*
成果に基づいた援助は、基本的なエネルギー・サービスの供給を支援するための成果に基づいた助成を指す。公的資金の支払いはこれらのサービスの実際の受渡しと結びつけられている。
小規模電力事業は電力会社として運営するが、より小規模であり、小さな地域に供給するための独立型のミニグリッドシステムを運営し、それらは全国規模の電力網に接続され
るかもしれないし、されないかもしれない。小規模電力事業者は、多くの開発途上国における農村電化にとって一般的なビジネスモデルである。それらは照明に特化しているか電
化全般を担うかであり、ディーゼル発電や水力発電と同様に、バイオマス、太陽光発電、および他の自然エネルギーを含めた多様な技術を当てにしている。小規模電力事業者は、
燃料調達から配電インフラの開発およびメンテナンス、請求や売上の回収までのバリューチェーン全体を扱う。それらは、しばしば大規模電力事業者と同様に、規制される。
† ベナン、ブルキナファソ、カーボヴェルデ、コートジボワール、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、マリ、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、
トーゴ
※
─ 79 ─
第5章
過去20年間、いわゆる販売モデルとサービス別料金モ
デルは、家庭や小規模事業者の電気需要に対応する太
陽光発電の商業的な普及における主要な手法であっ
た。両方のモデルは、特定の分野や領域での営業権や独
占権に依存しており、それらはしばしば目標を定めた
補助金(たとえばすべてまたは部分的な初期投資費用
補助金)に依存している。時間が経つにつれて、これら
のスキームは、特定のビジネス環境の要件を満たすた
めに発展してきた様々な形式の官民パートナーシップ
を含めるよう発展してきた。たとえば、ボリビアのプロ
グラムは、成果に基づく援助*を用いた中期的サービス
契約に基づいている。また販売モデルと伝統的なエネ
ルギー供給会社の営業権スキームを組みあわせてい
る。それは2〜5年のみの独占的な期間があり、幅広い所
有権オプションを提供している33。
ますます多くの開発途上国では、低公害型で持続可能な
調理技術や燃料に移行しており、煙が出やすい直火によ
る従来の調理習慣を避けている。これらは低公害型の調
理用ストーブや燃料を使用することによる健康と気候
変動問題の大きな相乗便益があることにより加速して
いる。しかしながら、サハラ以南のアフリカでは、その地
域の住民の約76%以上にあたる6億5000万人以上が、暖
房と調理において従来のバイオマスに依存している38。
アジアとラテンアメリカでは熱利用や調理のために伝
統的バイオマスに依存する人口の割合は、他の地域と比
較すると著しく低い。(表参照R18を参照)
第 5 章 農村地域の自然エネルギー
2030年までに19%をまかなうための自然エネルギー目
標を採択した。この目標の一環として、この地域は2020
年までにオフグリッドの電力システムによって農村人
口の25%に電力を供給することを目指している40。
ECOWAS地域全体で、自然エネルギーによるマイクロ
グリッドは、規模ではミニグリッドよりも小さいもの
の、多様な家庭や中小企業に電力を提供することがで
き、隔絶した地域の人々に電力を提供するための選択
肢 と し て 見 な さ れ る よ う に な っ て い る。2012年 に、
ECREEE、Ligthting Africa、IRENA(国際自然エネ
ルギー機関)を含むいくつかの地域機関や国際機関は、
普及のためのワークショップを通じて、マイクログ
リッドの普及を促すためのプロジェクトを実行してき
た41。
人の人々に、主としてオフグリッドシステム(98%)で
電気を供給し、それにより農村部の電力へのアクセス
を持つ人々の割合を1%からほぼ17%へ増やすことに
成功した。現在、電力のわずか3%の割合が自然エネル
ギーに由来しているが、電力構成における自然エネル
ギーの割合を2015年までに10%に向上するように設定
している47。
モザンビークでもオフグリッド太陽光発電によるアク
セスが増加しており、2010年から2012年末の間に容量
が0.5MW追加され、全国合計は1.3MWとなった。2012
年だけでエネルギーファンドFUNAEによって推計
1300万ドルが太陽エネルギー発電に投資され、発電容
量の増加に大きく貢献した。FUNAEは、2013年に8つ
のマイクロ水力発電プロジェクトを実施する予定であ
り、自然エネルギーのミニグリッドの開発を促進する
ために800万米ドルを計上している48。
ECOWAS地域での発展をもとに、アフリカ大陸の他の
国々と地域でも同様のプログラムを進めようとしてい
る。2012年に、南部アフリカ開発共同体(SADC)と東ア
ルワンダ共和国政府およびEUによって共同出資された
フリカ共同体(EAC)のエネルギー大臣が同様の地域の 「官民パートナーシップによるルワンダの地域のエネル
自然エネルギーおよびエネルギー効率化を促進するプ
ギーアクセスの増加」というプログラムでは、主に水力
42
ログラムを確立することで正式に合意した 。
発電と地熱発電による農村地域の電化を含んでいる49。
目標は、電気にアクセスできるルワンダ人の割合を2009
北アフリカの農村地域における電化率はアフリカ大陸
年の6%から、2017年までに50%に増加させることとし
の中では最も高い値を維持している。スーダンを除い
て い る50。このプログラムでは、スペイン企業である
て、マグレブ地域の国々はすべて「ラスト・マイル」電化
Isofotonが、全国300の学校に太陽光発電システムを供
プログラムを実施している43。持続可能なエネルギーお
給し、維持していくプロジェクトを落札した51。
よびエネルギー効率に関する地域センター(RCREEE)
からの支援を受け、スーダンは2012年に太陽光発電や7
タンザニアでは、新しく設立された“小規模発電事業者
か所の大規模な風力発電およびバイオ発電所の建設を (SPP)”の枠組みの成果として、2012年に系統接続型
含むエネルギー効率化国家行動計画を発表した。利害
の小規模自然エネルギー発電所の建設がいくつかの見
関係者との協議において、スーダンは現在国内の自然
込まれている。年末までに、国は合計60か所の130MW
エネルギー普及を進めるために統合的な自然エネル
以上のプロジェクトの計画を持っており、12以上の村
ギー・プログラムを設計し、実行しているところであ
に電力を供給するのに十分である52。また2012年にジン
り、公共投資および民間投資を促進するための必要規
バブエでは、全国の農村部の学校にソーラーランタン
定と管理体制を定めている44。
を配布するために150万米ドルを割り当て、国の農村地
域電化機関(REA)は地域産業と協力しながら太陽光ラ
「Global Rural Electrification Program」の枠組みの下
ンプを開発し、太陽光発電に関する雇用を生み出すた
で、モロッコではオフグリッドおよびミニグリッドで
めに活動した53。
3663の村(5万1559の世帯)の電化を実施している。自然
エネルギーの中でもとくに太陽光発電は、非常に孤絶
ウガンダでは世界銀行が、ウガンダ農村地域電化加速
した地域の家庭におけるエネルギーアクセスを増加さ
計画(UAREP)を策定し、年末まで政府承認を待ってい
せる重要な役割を果たした45。
さらに2012年には、ガーナは、全国の灯油への補助金を
削減するため、遠隔地のオフグリッド・コミュニティー
において灯油ランタンからソーラーランタンに置き換
えるための実証事業を発表した。灯油補助金のための
年間予算は、貧しい農村家庭に40万個以上のソーラー
ランタンを供給するコストと等価であった。現在、補助
金は部分的に縮小されつつある。グレーター・アクラ、
ボルタおよびブロング=アハフォ州などにある島や農
村地域での電化についての調査研究は2012年に終了
し、ミニグリッド電化プログラムが始められた46。
マリの農村地域電化プログラムでは過去6年間で74万
─ 80 ─
■アジア:地域別状況
中国とインドの両国は、近年自然エネルギーに対する
大規模な投資を行った。また、両国は分散型の解決策を
通じて、エネルギーアクセスを拡大する重要な進歩を
見せた55。他の地域では進捗状況はさまざまである。一
方で、モンゴル、ネパール、ベトナムを含むいくつかの
国ではかなり重要な進展があり、アフガニスタン、バン
グラデシュ、ミャンマー、パキスタンは、農村地域の電
化率が非常に低いままであり、調理や熱利用のために
伝統的バイオマスに大きく依存している56。
中国とインドは隣国であり、世界最大の新興経済国だ
が、それらのエネルギーアクセスの状況は著しく異な
る。13億人以上の人々がいる中国では、増大するエネ
ルギー需要を満たすために特別な投資を行ってきた。
中国の農村部においては推計400万人の人々はまだ近
代的なエネルギー源へのアクセスを欠いているもの
の、結果として、系統接続型の電力へのアクセスが大幅
に増加した57。インドは対照的に遅れている。2億9000
万を超える人々(人口の25%)は電力へのアクセスがな
く、またインド人の66%は、近年の進展にもかかわら
ず、一次エネルギー源として伝統的バイオマスに依存
し続けている58。
ギー供給不足に対処するとともに、伝統的な木質燃料
を燃やすことを段階的に廃止していくために、古い水
力発電所は改修され、小規模な水力発電と太陽熱温水
器の導入が推進されている61。
スリランカは、
“Kantale”、
“Padhaviya-Sripura”および
“Seruwila”での6つのオフグリッドプロジェクトと9つ
の系統拡張プロジェクトの試運転後に、東部州内のすべ
ての人々に電気を供給するという目標を達成したと
2012年 に 発 表 し た。そ の 狙 い は、 国 営 電 力 株 式 会 社
(Napocor)の小規模電力事業グループが対象としてい
る、国内の非電化地域や電化途中の遠隔地へと信頼でき
る電気サービスを供給していくことである62。
アジアでの主な焦点は電気へのアクセスを増加させる
ことにあるが、低公害型の調理用ストーブや代替燃料
(とくにバイオガス)へのアクセスを提供することによ
り、アジア全体で調理の際に伝統的バイオマスに大き
く依存していることに対処するための多くのプログラ
ムやプロジェクトがある。2012年にインドは、対策を
打たなければ2020年までに発生するであろう伝統的バ
イオマス利用による排気ガスに関連した早死にや障害
のうち17%を回避することを目指して、
「調理用ストー
ブ国家プログラム」を立ち上げた63。バングラデシュで
は、世界銀行が資金提供したプログラムによって、100
万台の調理用ストーブと2万個ものバイオガス装置の
普及を通じて低公害型の調理への解決策を農村世帯に
提供するNGOの活動を支援している64。
インドは、2017年までに電気を誰もが利用できる状況
を達成するという目標を2012年半ばに発表した。「遠
隔地の農村地域電化計画」の下で、自然エネルギーシス
テムの導入を2012年2月までの10か月間で、目標として
いた500の市町村や集落よりもはるかに多い、905の市
町村や集落に行った59。州レベルではチャッティースガ
ル州において、灯油ランプの使用を太陽光発電システ
ムに置き換える2つの計画を始めた60。
■ラテンアメリカ:地域別状況
世界の他の発展途上地域と比較して、ラテンアメリカ
は完全なエネルギー・アクセスの達成に大きく近づい
ており、とくに電気がそうである。ラテンアメリカ全体
では、人口の推計6%(2900万人)は電気へのアクセス
がないままであり、約14%(6500万人)程度の人々が暖
房と調理を伝統的バイオマスに依存している65。アクセ
スの不足は主に地方の問題であり、農村人口の28%は
電気が不足しており、都市では約1%しか不足していな
い66。
2012年10月に中国国務院は、1991年以来の2番目のエ
ネルギー政策に関する白書を公表し、農村開発との関
係から自然エネルギーの重要性が増していることを示
し て い る。中 国 は2015年 ま で に 電 気 へ の ア ク セ ス を
100%とするために農村部における既存の系統インフ
ラの技術的向上に投資している。農村地域のエネル
地理的な制約のため、孤絶した地域に住む多くの人々
への現実的な唯一の解決策は、オフグリッド自然エネ
ルギー技術を設置することである。システムは一般的
にそうした孤立地域に拠点を置いていない企業によっ
て導入されることから、これらのシステムを運用し、維
持するために地域で専門知識を磨き、技術者を育てる
─ 81 ─
第5章
た。2012年末までに、資金提供者とともに政府は水力、
バイオマス、地熱、太陽光、風力によって発電するシス
テムを含むいくつかの小規模系統や数千もの独立型シ
ステムを導入した。加えて、ウガンダでは系統の拡張を
加速させるために、異なる方式の調達資金を組み合わ
せる集合的な投資ファンドを2012年に創設した54。
第 5 章 農村地域の自然エネルギー
ために教育·研修プログラムが不可欠であった。ハイチ
,
南 部 に お け るL Institut Technique dela Côte-Sud
(ITCS)は、このようなプログラムの一例である67。
メキシコは、自然エネルギーによって農村のエネル
ギーアクセスを改善するためのいくつかのプログラム
を定め、約98%の全面的な電化割合を達成して、大幅な
進展を見せた。それでも、2012年末までに約13万の電
化されていない小規模地域があった68。メキシコ南部の
農村地域では、電力系統から非常に遠く、コミュニティ
が非常に小さく、経済的資源が限られているため、350
万の人々がいまだアクセスを欠いている69。
エネルギー・アクセスを高めることを支援するために、
メキシコの国家電力会社は2012年に初めてのオフグ
リッド太陽光発電施設(Guaycoraのソノラン町での65.5
kWp施設)の運転を開始した。これは国内で最初の施設
であり、50以上の家庭に電気を供給すると見込まれて
いる70。さらに、世界銀行と地球環境ファシリティによっ
て資金提供を受けたメキシコにおける農業用自然エネ
ルギープロジェクトは、農業生産目的の自然エネルギー
技術の普及に着目している。2012年の時点で、同プロ
ジェクトは600の事業を支援していた71。
ペルーの農村地域の電化率は、2007年の30%から2010
年後半までに55%に増加した。2012年のはじめ、政府
はさらに合計9万2000件の家庭に到達するよう系統を
拡張し、中小の農村地域の企業にも電気を供給するた
めに自然エネルギーの技術を大いに活用している72。ニ
カラグアでは、2007年から2011年にかけて、5万7000
件を超える家庭に電気サービスを提供するために、5
か所の新しい小規模水力発電所と20か所のマイクロ
タービンが設置され、6900以上の個々の家庭用太陽電
池パネルが孤立した地域に設置された73。
炭素市場にますます頼るようになっている77。
■未来への方針
発展途上国の農村地域におけるエネルギーの必要性
は、とりわけ世界の数十億人の人々の社会と経済の開
発に関する問題である。特定の国や地域に適合したビ
ジネスモデルと組み合わせた自然エネルギー技術は、
近代的なエネルギーサービスへのアクセスを達成する
信頼できる手頃な手段であることが判明している。技
術の進歩と急速な価格下落(とくに太陽光発電や風力
発電)によって自然エネルギーは新たな市場を開拓す
ることが可能となっており、自然エネルギーはますま
す成長の一途をたどっている78。
技術とシステムへの焦点に加えて、ほとんどの発展途
上国では農村地域のエネルギー市場を規定する現状の
運営構造を改良するためにプログラムや政策を定め、
実施しはじめている。このような開発は、潜在的な投資
家にとって農村地域のエネルギー市場の魅力を高め、
貧困削減や経済発展につながっている。
また、数百万の地域の雇用を生み出しているなか、自然
エネルギーは、2030年までにすべての人々へのエネル
ギーアクセスを満たすという目標を達成するための重
要な役割を果たす可能性を持っている79。自然エネル
ギーの導入を支援し、資金調達へのアクセスを向上さ
せ、必要なインフラを整備し、自然エネルギーの技術と
その可能性についての意識を高め、労働者を訓練する
ための組織、金融、法律、規制のメカニズムが確立され、
強化されれば、それらの目標は達成できる。
ラテンアフリカでは、自然エネルギーによる農村地域
の電化において大きな進展を遂げているが、暖房や調
理部門の発展は比較的限られている。メキシコでは、た
とえば、総人口の約4分の1はいまだたき火や古く非効
率的な調理用ストーブで調理をしている74。メキシコと
ラテンアメリカの他の国では、このような状況に対処
するために、国家や地域レベルの双方において多くの
プログラムが実行されている。
メキシコとペルーはそれぞれに改良型調理用ストーブ
を100万台ずつ普及させることを目的とした継続的かつ
大規模なプログラムを実施しており、ボリビアもその利
用を促進している75。共通の政策を採用している中米諸
国のグループ*は、2020年までに各国の改良型調理用ス
トーブを100万台ずつ普及させることを宣言している。
戦略には、ソーシャルマーケティング、マイクロファイ
ナンス、啓発キャンペーン、およびストーブ使用のリア
ルタイム監視などが含まれている76。グアテマラ、ホン
ジュラスとニカラグアを含む中米とカリブ海諸国では
調理用ストーブプロジェクトの資金を調達するために
*
これらの国はコスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、パナマを含む。
─ 82 ─
第 6 章 特別記事:エネルギーシステムの変革
執筆:Rainer Hinrichs-Rahlwes(ドイツ再生可能エネル
ギー連 盟(BEE)、 欧 州 再 生 可 能エネルギー評 議 会
(EREC)
自然エネルギーは急成長していて、より多くの先進国および
途上国において、確実で持続可能なエネルギー供給の中心
になりつつある。風力や太陽光などの出力変動型の自然エ
ネルギーはとくに電力分野で急増している。一方で、水力、地
熱やバイオマスはより多くの国で既存のエネルギーシステムと
ともに市場に組み込まれている。
それにつれて化石燃料と原
子力は自然エネルギーによって置き換えられ、サプライチェー
ンも整備されている。
これに対して、大容量の風力や太陽光
のような出力変動型電源を統合するためには、エネルギー構
成とインフラがさらに柔軟性を備え、適地では相互接続され
る必要がある1。多くの国がますます増大する変動型自然エ
ネルギーに対応できるように、エネルギーシステムを変革する
政策や施策を策定することで、
自然エネルギーの単なる統合
にとどまらない段階を目指している。
風力や太陽光エネルギーの非常に高いシェア i を達成しよう
としている国々や地域にとっては、エネルギーシステムの変革
は最も効率的でコストの安いやり方である。「エネルギーシ
ステムの変革」とは石炭火力や原子力発電所のような従来
型ベースロード発電を、出力変動型自然エネルギーの割合
を飛躍的に増大させることができる柔軟性の高いシステムに
置き換えるプロセスである、と定義される。
それは必然的に、
比較的硬直的で中央集中的なシステムからより機敏で分散
型のシステムに移行することになる。発電事業者、消費者、
系統運用者、他の関係者は需要と供給を最適化する重要
な役割を果たすことになるであろうし、それは部分的には情
報技術(「スマートグリッド」
と言われることもある)の利用を通
じてであり、
またすべてのエネルギー分野(電力、冷暖房、輸
送)
の相互接続の拡大を通じてである。
最初で最大の課題は電力分野にあり、比較的柔軟性の低
い従来型の発電所と系統網を、インテリジェントで柔軟性の
あるシステムに時間をかけて統合し、そのシステムによって出
力変動型と出力調整対応型の自然エネルギーの組合せを
拡大していく。余剰電力はますます輸送や冷暖房に使われ
る。
そのため、変革にはエネルギーシステム全体の変化が必
要になるが、電力システムの変革は実現可能であり、また最
も急を要するのである。
■パラダイム・シフト:自然エネルギーの統合からシステム変革へ
長年にわたり、自然エネルギー(大型水力を除く)は既存の
エネルギーシステムの補完的役割にすぎず、
出力変動型の自
然エネルギーが対応できる割合には固有の限界がある、と信
じられてきたii 。
しかしデンマーク、ドイツ、スペインなどでの経
験から、適切な政策があれば、わずか数年前に可能と考えら
れていたよりもさらに高い割合の自然エネルギーを統合できる
ことが実証されており、また予見されていなかった便益をもた
らしている2。
より高いシェアの自然エネルギーの達成に対し
て、
かって言われていた根拠のない制約は、必要な立法措置
や活動を実施するための政治的意思の欠如であるか、ある
いは様々な課題を克服する技術的解決策が出現したため誤
りであったことが証明されたのである。
そうして出力変動型の
自然エネルギーはますます多くの国で電力供給の主要な役割
(約15〜20%あるいはそれ以上)
を果たしている3。
出力変動型と出力調整が柔軟にできる自然エネルギーとを
組合せることで、信頼性の高い安定した電力供給を実現で
自然エネルギーの導入容量
きることが今や明らかとなった4。
が増加するにつれて、異なった種類の自然エネルギー技術
を組み合わせることでしばしば電力需要の主要な部分を賄
うことができ、他国の系統網と相互接続されている地域では
余剰分を輸出することができる。系統網と規制の枠組みが
柔軟で賢明なやり方で運用されれば、自然エネルギーは妥
当なコストで、昼夜とも、また年間を通じても電力を供給でき
る。
さらに自然エネルギーは大幅に電力価格を低下させ消
費者のエネルギーコストを軽減する5 iii 。
出力変動型自然エネルギーのシェアの増加は、システムの安
定性に対する潜在的なリスク、バックアップ容量の必要性、さ
らには既存の電力市場の設計の限界に関する議論を巻き
起こしている6。既存の電力市場は発電所や電力インフラに
必要となる将来の投資に適切なシグナルを送ることがもはや
できなくなっている。
このような議論は電力全体に対する風力
発電のシェアが15%を超えた国や地域(たとえば、デンマー
ク、ドイツ北部、スペイン北部、オーストラリア南部)
で始まっ
た。
そして他の地域や他の技術分野に拡大している。
たとえ
ば太陽光発電のシェアが高いスペインやイタリア、ドイツ全土
である。現在の議論はOECD諸国に集中しているが、風力
や太陽光の電力供給割合が拡大するにつれ、
他の国々(主
要な新興国を含めて)
でも重要な課題となるだろう。
エネルギー分野間の相互作用が増えることで全体的なシス
テムの効率は向上し、供給の安定性や安全性も向上し、より
コスト効率的になる。
このようにして自然エネルギーの非常に
高いシェアを基礎としたエネルギー供給がなされるように、シ
ステムの移行が促進されるかもしれない。従来型のエネル
ギーシステムでは、多くの市場で電力需要は建物の冷暖房
需要と緊密に結びついているが、電力、冷暖房、輸送分野
間の相互作用は最小限である。液体燃料、固体燃料、およ
i
特定の割合を指すわけではない。非常に柔軟性に欠けるシステムでは変革の必要性は 10%のレベルからあるといえる。一方より柔軟なシステム(大型水力のシェアが高い地域を
含む)では 20 ~ 30%から当てはまる。
このような懸念と疑問は水力発電のシェアが高い国ではそれほど明らかでなくまた広く受け入れられているわけでもない。水力発電は迅速な出力調整ができ、調整用の電源とし
て使われる。
iii これはメリットオーダー効果(自然エネルギーの導入による卸電力価格の低減効果 - 訳注)の結果である。風力発電や太陽光発電の非常に低い限界費用のために、他のすべての
発電所は、フルロードでの稼働時間とその結果としての稼働率がたえず減少するように、メリットオーダーから押し出される。また、風力や太陽光の比率が高い時には kWh 当た
りの価格は非常に低くなる傾向がある。
ii
─ 83 ─
第6章
アゼルバイジャン北西部のMingachevir近くの水力発電
所用の貯水池。
このような水力発電やバイオマス発電な
どの出力調整が柔軟にできる発電所は、エネルギーシス
テムの変動に迅速に対応することができ、太陽光発電や
風力発電といった出力変動型の発電所の大幅な増加を
支えている。
第 6 章 特別記事:エネルギーシステムの変革
び電力は様々な経路を経て生産され取引され消費される。
イ
ンフラと市場は厳密に言えば異なっており、異なった技術的、
経済的規制の下で異なる事業者によって運転や保守が行
われている。
この状況に対応するために、以下で述べるよう
な多様な戦略に基づいてエネルギー分野の統合を始めてい
る国もある。
工業国の中には(デンマークやドイツのように)電力供給およ
び/または最終エネルギー供給を出力変動型自然エネル
ギーを優先して行うように決定した国もある7。それらの国々
では、限界コストを前提にして発電量の調整を行うことで相
互に補完しあう伝統的なベースロード(相対的に柔軟でな
い)に基づくシステムから、出力変動型自然エネルギーに対
応して設計されたより柔軟なシステムによる電力供給へと移
行しつつある。
■技術的課題
発電はつねに需要に対して緊密に調整する必要がある。
た
いていの従来型電力システムでは、1年中24時間稼働する
ベースロード発電所で発電する。
ベースロードを超える分は1
日の需要変動の増加分を予測して対応し、
出力調整ができる
(ピーク対応発電所とベースロード発電所の中間の)
ミドル電
源で発電する。
ピークロードに対しては数分あるいは数秒で
出力を変化させられる柔軟性の高い発電所が対応し、そう
した発電所は天然ガスやバイオガスを燃料とするガスタービ
ンと水力発電、とくにダム式や揚水式の発電所である。電源
構成で出力変動型自然エネルギーの割合が増えるにつれ、
エネルギーシステムは変動に迅速に対応できるよう最適化さ
れた発電所をより多く備える必要があるだろう。
系統網の安定、とくに周波数制御のために、電力供給では
一定限度内の変動(需要に対応した変動ではなく)しか許
容されない。余剰電力の発生は発電量の削減、発電所の系
統網からの切り離し、
需要負荷のシフト、
によって一定限度内
に制限される。
ほとんどの系統は大型の従来型ベースロード電源と、中間的
に変動させるミ
ドル電源、
それに必要時にピークに対応する電
源の組合せで設計、建設され電力を供給している。
高圧送電
線と低圧の配電網の組合せによって、大型の集中型発電所
から分散した需要家に電気を供給している。現状の電力網
は、規模やグリッドレベルが異なる膨大な数の分散型発電所
から電力を供給するようには設計されていない。
したがって小
規模の自然エネルギーシステムから電力を供給する分散型
発電が増えるにつれ、送電負荷のシフトに対応するため、
また
いかなる場所や時間帯にも安定的で信頼性の高い送電を保
証するために、
既存の電力網を改良する必要がある。
様々な解決策がとくに欧州ではすでに実施され、あるいは評
価を受けている。
そうして従来型のベースロード電源の割合
を削減しつつ、自然エネルギー発電のシェアを目覚ましく増や
している。
このような解決策は以下の通りである。
• 地理的に分散している出力変動型と出力調整型(たと
えば揚水発電やバイオガス発電)の多様な組み合わせ
を用いる。多くの個別の自然エネルギー発電所がまと
まって仮想的な発電所として構成されており、その仮想
発電所は異なった規模、異なった電源の分散型発電
所から構成され、中央制御施設によって集合的に運用
され、
つねに変化する需要に対応して電力を供給する。
• 発電量が過剰となる場合には柔軟性の高い対応がで
きる発電所が出力を下げる。
• 地域をまたがって、あるいは国家間で、すべての電圧レ
ベルで相互連系の容量を拡大する。電力網はしばしば
国境を越えて接続され、
調整区域は拡大している。
• 発電量の予測精度を向上させるために風力と太陽光
の予報の質を上げる。
• 需要を需要管理システム
(DSM)
によって移行させる。
• 余剰電力を他の分野―電気自動車の充電、温水の生
産、
水素生成など―に振り向けて需要を調整する。
• 風力や太陽光の発電可能性が高い時間帯には価格シ
グナルを出して需要を調整する。
• 分散電源を需要地に近いところに配置し、送電ロスと
送電容量の需要を下げる。
• システム運用者と柔軟なシステムサービスを提供できる
設備を備えた発電所との間のリアルタイム情報の流れ
を向上させるために、
送電網の安定性を向上させるイン
テリジェント
・グリッドやスマートグリッド・ソフトを使う。
• 遠隔操作可能な充電および放電能力を備えた分散型
で柔軟性の高い蓄電池として電気自動車を使う。
• システムあるいは特定の発電所にエネルギー貯蔵能力
を備える。
たとえば集光型太陽熱発電(CSP)に溶融塩
蓄熱設備をつける。バッテリーから揚水発電にいたるま
でエネルギー貯蔵技術は進歩しており、数分から数か
月の期間のエネルギーをためる性能がある。
これは幅
広い需要に対応でき、電気自動車を短期間使用するこ
とから数週間にわたり風力や日照が弱い場合に調整力
として利用できる。(2012年版世界自然エネルギー白
書の補足3を参照)
これらの技術はすべて実現されているが、明確な政治的意
思決定とそれを実施する枠組みによって技術の改良と具体
的な設置を推進する必要がある。
いくつかの国々-デンマー
ク、
ドイツ、スペインや日本-ではすでにこのような選択肢を推
進し始めている。
スマートエネルギーシステムを使い、スマート
グリッドシステムと集中型と分散型のエネルギー貯蔵ソリュー
ションを適切に組み合わせることで需要と供給の柔軟性を向
上させている。
■経済的課題
従来の電力市場は、主にエネルギーの単位当たりの発電コ
ストによって動いている。エネルギーの平準化コストとその結
果としてのメリットオーダーは、異なった市場レベル
(先物、翌
日物、
当日物など)
での価格形成の主要な要素である。
火力発電所の場合、資本コストが発電コストに占める割合は
比較的小さい。一方で燃料コストが全体のコストの大半を占
める(原子力の場合はその割合はより少ないが)。
そのため
燃料価格の変動は発電所の採算性に対して重要な影響を
与える。
これと対照的に、
バイオマス発電を除いて自然エネル
ギー発電は燃料コストはゼロであり、主要なコストは技術、プ
ロジェクト建設、系統網への接続に要する初期投資コストで
─ 84 ─
そのため、ほとんどの自然エネルギー発電と化石燃料および
原子力発電との基本的な違いは、資本コストと運用コストの
比率の違いである。
ほとんどの自然エネルギー発電(水力、
地熱、太陽光、風力)
の限界コストは低く、
しばしばスポット市
場での従来型電力価格に勝っている。
それゆえ限界コストを
基本とする発電の採算性を低下させる。
この結果は両義的である。風力と太陽光の発電容量が大き
い場合は、電力価格を飛躍的に削減し住民や産業需要家
にメリットとなる。他方でコストを回収し投資に対する妥当な
利益(もしあれば)
を得ることは難しくなる9。
自然エネルギー電
力の系統網への接続保証ないし優先接続と組合わさると、
既存の従来型発電所(とくにピーク電力に対応する)はメリッ
トオーダーからはじき出されることが多くなり、稼働率は下がり
従って利益率も下がる10。
技術的な課題に対するのと同様に、系統網や戦略的な予備
容量さらには新規の柔軟性の高い発電所に対する投資を
引き出す十分なシグナルを生み出すために、様々な解決策
が開発されている。容量市場*は発電量ではなく発電能力
に対して報酬を支払うことで、他の柔軟なメカニズムに加え、
いかなる時の需要にも対応する
(新しい)発電容量を確保す
る手段となってきた。
しかし従来型火力発電に固定的に組み
込まれたそのような支払いリスクは、
自然エネルギー発電がさ
らに拡大するまでの移行期のわずか数年間しか必要とされ
ないだろう。不十分に設計されたメカニズムは、環境に有害
な発電所に補助金を出す結果となり、そういう発電所は補助
金なしでは不良資産となり稼働出来ないからである。
柔軟性のある容量市場メカニズム―容量市場も含めて―を
設計する最善の方法について議論がなされている。エネル
ギーシステムの変革を推進し可能にするいくつかの他の選
択肢が開発されている。以下に示す。
• エネルギーシステムの技術的、経済的観点からして、出
力変動型自然エネルギーに対する支援が中心的に行
われなければならない11。
• インセンティブや規制は単に発電容量を支援するというよ
りは、より進んだ柔軟性のある選択肢
(たとえば、系統網
のインフラ、蓄電容量、需要管理システム
(DSM)
、非常
に柔軟な発電所)
を支援するものでなくてはならない12。
• 規制の枠組みは、システムのコストをさらに削減するた
め、調整市場には出力調整型と出力変動型の両方の
自然エネルギーが含まれなければならない。
• 価格提示締切り時間※の縮小は(当日物取引を含め)
調整市場において出力変動型自然エネルギーを含める
ように作用する。「スマート」で多様、かつ広い調整区
域を持つ系統網は、適正に機能する調整市場と組み
合わせて利用できる。 ■エネルギーシステムの変革は始まっている
電力システムが急速に発展しまた形成されつつある途上国
では、出力変動型自然エネルギーに対応するために高度に
柔軟なシステムが設計されうる。
しかしほとんどのOECD諸国
にとっては、出力変動型自然エネルギーの比率を高めたエネ
ルギーシステムを作り上げる最適な方法は既存のシステムを
高度に柔軟なシステムに変革することである。
変革の様々な要素は、既存の供給システムとエネルギー構成
にすでに組込まれている。
これらの要素の中には統合に役立
つ成熟した解決策があり、大規模な場合には変革の要素に
もなる。
また新しい選択肢もあり、
その例は以下の通りである。
• 太陽熱温水システムは電気のバックアップがある場合に
も無い場合にも、従来型の個別あるいは地域熱供給と
組み合わせられる。
• バイオメタン/バイオガスは天然ガス供給網に投入さ
れ、
電力、
冷暖房と交通用の燃料として使われる。
• 自然エネルギー電気で余剰となった分は熱供給や水
素生成に用いられるか、あるいは後に使うために貯蔵
することのできる他の利用に回される。
• 天然ガス、バイオガス、固形バイオマスは熱電併給シス
テム
(CHP)
に相互に使われる。
• 公共交通や自家用車は蓄電用や電力システムのバラン
スを取るために使えるバッテリーを備えており、そこで使
われる電気は現在開発中の選択肢として検討されてい
る。
デンマークは風力発電とバイオマス熱電併給(CHP)のパイ
オニアであるが、2012年には最終エネルギー消費の24%以
上を自然エネルギーでまかなった13。2011年にはデンマーク
の電力の40%以上が自然エネルギーによるものであり、2012
年末には風力発電だけで電力消費の30%以上をまかなって
いる14。バイオマス熱電併給は電力調整とシステムの安定性
のための国内の重要な要素であり、出力変動型電源はデン
マークの系統網と他のスカンジナビア諸国の系統網を相互
接続することでさらに調整されている。
スカンジナビア諸国の
主力電源は水力(ノルウェー)あるいは水力とバイオマス熱
電併給(スウェーデン)
である。
Energienet.dk(ENDK)
はガス供給網と電力システムを有
する国営の系統網運用会社であり、2020年までに50%を風
力で、
また2050年までには完全な自然エネルギーベースのエ
ネルギーシステムを目標にしている15。ENDKは拡大する風
力のシェアとその結果として生ずるコスト効果に対応するた
めに、需要管理優遇策を含めた新しい市場規制を開発、導
入しようとしている。
それによって電力(およびガス)網を強化
し、新しい送電線(とくに低電圧の送電線は地下に埋設され
るものもある。)
を建設し、デンマークの他の地域と接続し、新
たな洋上風力発電と接続し、ドイツ、オランダやとくに水力発
電の多いノルウェーとの相互接続を行おうとしている16。
イベリア半島では、出力変動型自然エネルギーのバランスを
*
電力容量市場と言う言葉は米国や世界のその他の国々でも長年自然エネルギーの普及とは関係なく使われてきた。
価格提示締切り時間は、エネルギーの実際の供給に先立って価格提示が行われる時間を示す。この時間が短くまたリアルタイムに近いほど、自然エネルギーにとってはこのよう
な市場(とくにより大きな調整区域を持つところでは)に参入することが容易である。なぜなら気候予測がより正確になるからである。
※
─ 85 ─
第6章
ある。
第 6 章 特別記事:エネルギーシステムの変革
取るために、欧州の隣接する国々(たとえばフランス)の系
統網と接続するための(相互接続網の)十分な容量が不足
している。つい最近になってスペインとフランスの間で相互接
続容量を倍にする合意が結ばれた。
このような不備にもかか
わらず、スペイン*とポルトガル※は欧州でも風力発電のシェア
が最も高い国である17。両国ともその結果から生じる課題に
成功裡に対応している。
ポルトガルでは、水力とバイオマス
(廃棄物発電を含めて)が同国の柔軟性の高い発電容量の
大半を担っている。
スペインでは風力と太陽光の高いシェア
に成功裡に対応するための手段は2006年に設立された特
別な管理センター(CECRE)である。CECREの唯一の目
的は、自然エネルギー電力を監視し安定的に最大限の電力
量を統合することである18。
ドイツは“Energiewende”
(エネルギーの移行あるいは転
換)
を進めているが、
それは2022年までに原子力を廃止する
という2011年の決定より前に始まった改革である。最初の固
定価格買取制度が1991年に法制化され、再生可能エネル
ギー電力法(EEG)が2000年から施行され自然エネルギー
の導入が飛躍的に高まった。系統網への優先接続と自然エ
ネルギーの優先供給が保証され、EEGは自然エネルギーの
シェア拡大に対応した電力系統網の改革プロセスを後押し
した。風力発電(さらに最近太陽光に対しても)にシステム
サービス(運用管理者による遠隔制御と発電出力の調整)
を提供するという義務は、2004年と2009年の改正によって
法制化され施行された19。電力分野の総消費量に占める自
然 エネルギーのシェアは2000年の6.8%から2012年には
22.9%に拡大し、この半分以上を風力と太陽光で占めてい
る20。
2020年に向けてのドイツの目標は、自然エネルギーの比率を、
電力では少なくとも35%(2050年までに80%)
、最終エネル
ギー全体の18%以上(2050年までに60%以上)とし、そして
2020年までに温室効果ガスの排出を40%以上(2050年まで
に80-90%)
削減することである。
このプロセスはエネルギーシ
ステム改革と名付け計画されている。高い水準の安定供給
を保ちながら、コスト効率的な方法で実施されている21。
スマー
トグリッド、系統網の拡大、需要管理、戦略的な蓄電、または
/およびバランスを取るための発電容量メカニズム、が検討
されている。2012年末に発効した法令は戦略的に重要な発
電所の管理者に対し電力システムの予備供給力として発電
所を常時稼動できるように確保するように義務付けている。柔
軟性のある発電容量および/または設備容量当たりの固定
価格に対する報奨制度について議論がされている22。
太陽光に並行して進むようインフラと市場を設計する機会が
ある。
そうして電力網に出力調整型電源と熱電併給システム
を統合し、また電力を太陽熱、電気自動車や他の技術革新
のある製品などの他のエネルギー分野とを統合しようとして
いる。
■今後の展望
自然エネルギー、とくに出力変動型の割合が非常に高い電
力システムを開発、制度化、導入するプロセスが進んでいる。
いくつかのシナリオは、
自然エネルギーが過半を占めるエネル
ギー供給の可能性と実現性を強調している23。そのような報
告書は国際エネルギー機関(IEA)や欧州委員会といった
ハイレベルの国際機関から発行されており、それらの報告書
にはしばしば政策決定のニュースが掲載されている。2011
年12月に欧州委員会は“Energy Roadmap 2050”を発行
し、すべての「炭素排出削減シナリオ」(温室効果ガスを
2050年までに1990年レベルから80〜95%削減するというEU
の目標に合致した)は、自然エネルギーの非常に高いシェア
―最終消費の54〜75%、電力供給の59〜83%で出力変動
型自然エネルギーを主役とした―を前提にしている。
IPCCの「再生可能エネルギーと地球温暖化の緩和に関す
る特別報告書」に記載された164のシナリオのうち、自然エネ
ルギーの拡大、省エネルギーの進展、その結果としての温室
効果ガスの削減の観点から最も野心的なシナリオは、実践に
おいては透明であいまいさの無い政策決定に基づいて強力
に推進されてなければならないと強調している。
そのような政
策は化石燃料と原子力への補助金(電力、冷暖房、輸送を
含むすべての分野で)の削減を含むもので、それによって自
然エネルギーに対する公平な条件を整備し、さらにコストの
かかる化石燃料と原子力によるエネルギーの生産を削減す
るためである24。
エネルギーシステムの変革は、出力変動型を含む自然エネル
ギーの高いシェアを達成するための最も効率的で最もコスト
の安い手段である。電力システムの変革を達成するために
必要な技術は、化石燃料によるベースロード火力発電を前
提としたものから、出力変動型自然エネルギーの割合を高く
したものにすべきであることは十分認識されている。出力変
動型自然エネルギーの割合を高くした電力供給システムの
設計と運用についての要件の理解も進み、潜在的な経済的
コストと便益も示されている。今必要なのは、それを導入する
という政治的意思なのである。
中国とインドはあらゆる途上国の中でも出力変動型自然エネ
ルギーが最も導入されている国であり、両国とも自然エネル
ギーの容量と消費の割合をさらに拡大しようという野心的な
目標を掲げている(政策の章を参照)。
中国、インドおよび他
の国々では、急速に発電容量が拡大し、発電量の割合も増
加したため、その結果脆弱で柔軟性の低い既存のエネル
ギーシステムに自然エネルギーを統合するという課題にすで
に直面している。
しかしそれらの国々では、拡大する風力と
* スペインでは 2012 年には電力の 32%が自然エネルギーによって賄われている(2011 年の 33%より減少したが)
。そのうちの 57%が風力、13%が太陽光、その他が水力とバ
イオマスを含む出力調整型自然エネルギーである。Red Electrica Corporation 社の 2012 年版企業の社会的責任報告書(Corporate Responsibility Report)ページ 60 から。
※ ポルトガルでは 2012 年では電力の 42.7%が自然エネルギーである。うち約半分(50.5%)が風力、
残りは主に水力、
バイオマスである。Direccao Geral de e Geologia(DGEG)
社の Renovavels, Estatisticas rapidas 2012(Lisbon:2013 年 1 月)による。
─ 86 ─
表参照
表R1. 世界の自然エネルギー設備容量とバイオ燃料生産(2012年)
2012年新規
2012年末累積
(GW)
発電
バイオマス発電
+
9
83
地熱発電
+ 0.3
11.7
水力発電
+ 30
990
海洋発電
∼
0
0.5
太陽光発電
+ 29
100
集光型太陽熱発電(CSP)
+
1
2.5
風力発電
+ 45
283
温水/暖房
(GWth)
近代的バイオマス熱利用
+
3
293
地中熱利用
+
8
66
温水用太陽熱集熱器1
+ 32
255
(10億リットル/年)
輸送燃料
バイオディーゼル生産
+ 0.1
22.5
エタノール生産
‒ 1.1
83.1
1.
太陽熱集熱器の容量はガラス管式温水用システムのみである。追加分は新規分である。総追加分は53GWthと見積もら
れている。
注:値はGW/GWth未満を四捨五入している。ただし相対的に小さい値とバイオ燃料は小数第二位で四捨五入している。
合計は表中の値を足し合わせたものではない。
そのため、四捨五入によって、
これらの数値を加算した合計と異なってくる。四
捨五入は入手可能なデータの不明点や不整合を考慮したためである。
より正確なデータについては、表R4∼R8、
「技術別の
市場と産業の傾向」
および関連する巻末注を参照のこと。
出典:本節の巻末注1を参照
─ 87 ─
表R2. 自然エネルギーの発電容量 世界総計と上位地域/国(2012年)
技術
世界
統計
EU27
BRICS
中国
米国
ドイツ スペイン イタリア
インド
(GW)
83
31
24
8
15
7.6
1
3.8
4
地熱発電
11.7
0.9
0.1
∼0
3.4
∼0
0
0.9
0
海洋(潮汐)発電
0.5
0.2
∼0
∼0
∼0
0
∼0
0
0
太陽光発電
100
69
8.2
7.0
7.2
32
5.1
16.4
1.2
2.5
2
∼0
∼0
0.5
∼0
2
∼0
283
106
96
75
60
31
23
8.1
18.4
480
210
128
90
86
71
31
29
24
70
420
40
70
280
870
670
480
20
990
119
402
229
78
4.4
17
18
43
1,470
330
530
319
164
76
48
47
67
バイオマス発電
集光型太陽熱発電
(CSP)
風力発電
自然エネルギー
発電容量
(水力発電を除く)
一人当たりの容量
(W/人、水力発電を
除く)
水力発電
自然エネルギー
発電容量
(水力発電を含む)
∼0
注:世界総計は、表に掲載されていない国のデータも反映している。表は水力発電を含まない自然エネルギー発電容量合計での上位6か国を示している。
もし水
力発電が含まれていれば、国々と順位は多少異なることとなる。
入手可能なデータの不明点や不整合を考慮して、以下を例外として数値は1GW未満を四捨五入している。20GWを下回るものについては少数第二位で四捨
五入し、一人当たりの数値は10W未満を四捨五入している。合計値は表中の値を加算したものではないため、
この四捨五入された数値を加算しても合計とは異
なる。数MW程度の小さな数値は
「∼0」
と表示。
より正確な数値については、
「技術別の市場と産業の傾向」の章および関連する巻末注を参照。
各数値は実際の容量の変更ではなく、数値の改善により修正されているため、毎年の増加を把握するために前報告書の表と比較することは適当でない。水力発
電容量と、
ひいては世界全体の自然エネルギー設備容量総計
(そしていくつかの国での合計)
は、純揚水式発電所を含んでいない。水力発電と揚水発電の詳細
は、p.120の「方法論に関する注釈」
を参照。
─ 88 ─
表R3. 木質ペレットの世界貿易
(2012年)
輸出国
輸入国
売買高
(キロトン)
米国
→
EU-27
1,956
カナダ
→
EU-27
1,221
ロシア
→
EU-27
676
ウクライナ
→
EU-27
227
クロアチア
→
EU-27
132
ベラルーシ
→
EU-27
111
ボスニア・ヘルツェゴビナ
→
EU-27
61
南アフリカ
→
EU-27
88
セルビア
→
EU-27
22
オーストラリア
→
EU-27
19
ノルウェー
→
EU-27
45
ニュージーランド
→
EU-27
14
他国
→
EU-27
49
カナダ
→
日本
50
カナダ
→
韓国
50
カナダ
→
米国
30
注:この分析の中で使用される貿易データは複雑で、各国間でかならずしも標準化されているわけ
ではない。
出典:本節の巻末注3を参照
─ 89 ─
表R4. 世界のバイオ燃料生産 上位15か国とEU-27( 2012年)
国
燃料用
エタノール
バイオ燃料
合計
2011年の生産量との比較
10億リットル
米国
50.4
3.6
54.0
‒
2.4
ブラジル
21.6
2.7
24.3
+
0.6
ドイツ
0.8
2.7
3.5
‒
0.5
アルゼンチン
0.2
2.8
3.0
+
0.1
フランス
1.0
1.9
2.9
+
0.2
中国
2.1
0.2
2.3
カナダ
1.8
0.1
1.9
+
0.2
タイ
0.7
0.9
1.6
+
0.5
インドネシア
0.1
1.5
1.6
+
0.2
スペイン
0.4
0.5
0.9
‒
0.3
ベルギー
0.4
0.4
0.8
オランダ
0.2
0.5
0.7
コロンビア
0.4
0.3
0.7
変化なし
オーストリア
0.2
0.4
0.6
変化なし
インド
0.5
>0.0
0.5
+
0.1
世界総計
83.1
22.5
105.6
‒
1.0
EU-27
4.2
9.1
13.3
‒
0.7
変化なし
変化なし
‒
0.1
注:表内のすべての数値は1億リットル未満を四捨五入している。差が5000万リットル未満である場合、比較の縦列では、
「変化な
し」
としている。エタノールの数値は燃料用エタノールのみである。表の順位は、
エネルギー含有量ではなく2012年に生産されたバ
イオ燃料の全体積
(予備データから)
による。合計値は表中の値を加算したものではないため、
この四捨五入された数値を加算し
ても合計とは異なる。
出典:本節の巻末注6を参照
─ 90 ─
表R5. 世界の太陽光発電容量と新規導入量 上位10か国(2012年)
国
2011年末
2012年新規
2012年末
(GW)
ドイツ
24.8
7.6
32.4
イタリア
12.8
3.6
16.4
米国
3.9
3.3
7.2
中国
3.5
3.5
7.0
日本
4.9
1.7
6.6
4.9
0.2
5.1
1
フランス
2.9
1.1
4.0
ベルギー
2.1
0.6
2.7
オーストラリア
1.4
1.0
2.4
チェコ共和国
2.0
0.1
2.1
他の欧州
3.3
4.1
7.4
他の世界各国
4.1
2.6
6.7
世界総計
71
29
100
スペイン
1.
欧州太陽光発電産業協会、市場レポート2012
(ブリュッセル:2013年2月)
によると、
フランスにおいては、以前に設置済み
であったプロジェクトが2012年に系統に接続されたものであり、新規設置分は一部であった。
注:各国の順位は稼働中容量の合計による。発電容量は0.1GW未満を四捨五入している。世界合計は0.1GW未満を四捨
五入している。四捨五入は入手可能なデータの不明点や不整合を考慮したためである。四捨五入によって、
これらの数値を
加算した合計と異なってくる。数値は多様な情報源を反映しており、
いくつかは大きく異なっており、算出法および方法論の違
いを反映している。
より詳細な情報および統計は
「技術別の市場と産業の傾向」の中の太陽光発電セクションと関連する巻
末注を参照。
─ 91 ─
表R6. 世界の集光型太陽熱発電(CSP)
の容量および新規容量(2012年)
国
2011年末
2012年新規
2012年末
(MW)
スペイン
999
951
1,950
米国
507
0
507
アルジェリア
25
0
25
エジプト
20
0
20
モロッコ
20
0
20
オーストラリア
3
9
12
チリ
0
10
10
タイ
5
0
5
1,580
970
2,550
世界総計
注:表は、2012年末の時点で稼働中の商業用CSPの設備容量を持った国々を含む。
さらにいくつかの国々は、年末までに
稼動する小規模な実験的プラントを持っており、中国
(約2.5MW)
、
フランス
(少なくとも0.75MW)
、
ドイツ
(1.5MW)
、
インド
(5.5MWも)
、
イスラエル
(6MW)
、
イタリア
(5MW)
、韓国
(0.2MW)
およびタイ
(5MW)
が含まれる。
GSR2012はイランに
17MWを含めたが、
この設備容量は稼働中ではないと報告されているため、削除された。データはMW未満を四捨五入して
いる。四捨五入は入手可能なデータの不明点や不整合を考慮したためである。四捨五入によって、
これらの数値を加算した
合計と異なってくる。
出典:本節の巻末注6を参照
─ 92 ─
表R7. 世界の太陽熱温水器設備容量と新規導入量 上位12か国(2011年)
国
2011年新規
2011年末
(GWth)
中国
40
152
ドイツ
0.9
10.3
トルコ
1.3
10.2
ブラジル
0.4
3.7
インド
0.7
3.3
日本
0.1
3.3
イスラエル
0.3
3.0
オーストリア
0.2
2.9
ギリシャ
0.2
2.9
イタリア
0.3
2.1
オーストラリア
0.3
1.9
スペイン
0.2
1.8
その他の国
4
25
世界総計
49
223
注:国は設備容量の順に並べられている。データは水式集熱器のみである
(温水プール用非ガラス管式集熱器は含ま
ない)
。世界全体での追加分は総追加容量であり、世界合計には廃止分の設備を置き換えた設備容量を含んでいる。
中国とその他の国および世界合計は1GWth未満で四捨五入し、
それ以外のデータは0.1GWth未満で四捨五入して
いる。四捨五入は入手可能なデータの不明点や不整合を考慮したためである。四捨五入によって、
これらの数値を加
算した合計と異なってくる。
国際的に認められている、100万㎡=0.7GWthとする。
2011年は、確実性の高い世界のデータおよびほとんどの国の統計が利用可能な直近の年である。
しかしながら、
2012年末までにはすべての種類の稼働中の太陽熱温水器設備容量は282GWthであり、稼働中のガラス管式温水
器は255GWthと推計されている。詳細および情報源については、
「技術別の市場と産業の傾向」の太陽熱冷暖房セ
クションを参照のこと。
出典:本節の巻末注7を参照
─ 93 ─
表R8. 世界の風力発電設備容量と新規導入量 上位10か国(2012年)
国
2011年末
2012年新規
2012年末
(GW)
中国1
45.1/62.4
15.8/13
60.8/75.3
米国
46.9
13.1
60.0
ドイツ
29.1
2.4
31.3
スペイン
21.7
1.1
22.8
インド
16.1
2.3
18.4
英国
6.6
1.9
8.4
イタリア
6.9
1.3
8.1
フランス
6.8
0.8
7.6
カナダ
5.3
0.9
6.2
ポルトガル
4.4
0.1
4.5
世界総計
238
45
283
1.
中国については、左側のデータが年末までに系統に接続されたか稼働中として公式に追加された量であり、右側のデータは
総導入量である。世界合計は、中国の高い方の数値を含んでいる。
これらの分類の詳細については、
「 技術別の市場と産業
の傾向」
および巻末注の風力発電部分を参照。
注:各国は設備容量の合計順に並べられている。2012年の追加分の上位10か国の順位は、
アメリカ、中国、
ドイツ、
インド、
英国、
イタリア、
スペイン、
ブラジル、
カナダおよびルーマニアである。各国のデータは0.1GW未満で四捨五入している。世界の
データはGW未満で四捨五入している。四捨五入は入手可能なデータの不明点や不整合を考慮したためである。四捨五入ま
たは既存タービンのリパワリングや廃棄により、
これらの数値を加算した合計と異なってくる。数字は、計算方法や方法論が
様々で、
ときには大きく異なっている多数の出典の数値を使用している。
さらに詳細なデータと統計については
「技術別の市場
と産業の傾向」内の「風力発電」の節および巻末注を参照のこと。
出典:本節の巻末注8を参照
─ 94 ─
表R9. 自然エネルギーへの投資の世界的傾向(2004年∼2012年)
カテゴリー
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
10億米ドル
段階別新規投資
1 技術調査
政府の研究開発
2.0
2.1
2.3
2.7
2.8
5.2
4.7
4.7
4.8
企業の研究開発
3.0
2.9
3.3
3.6
4.0
4.0
4.6
4.8
4.8
0.4
0.6
1.2
2.2
3.2
1.6
2.5
2.6
2.3
未公開株式(増資)
0.3
1.0
3.0
3.7
6.8
2.9
3.1
2.6
1.4
公開株式市場
0.3
3.8
9.1
22.2
11.6
12.5
11.8
10.6
4.1
24.8
44.0
72.1
100.6
124.2
110.3
143.7
180.1
148.5
(0.0)
(0.1)
(0.7)
(3.1)
(3.4)
(1.8)
(5.5)
(3.7)
(1.5)
8.9
10.5
9.8
14.3
22.5
33.5
62.4
77.4
80.0
新規投資合計
39.6
64.7
100.0
146.2
171.7
168.2
227.2
279.0
244.4
5 M&A トランザクション
8.6
25.9
35.6
58.6
59.4
64.3
57.8
73.5
52.2
48.4
90.7
135.6
204.7
231.0
232.5
285.8
352.5
296.7
太陽光発電
12.3
16.4
22.1
39.1
59.3
62.3
99.9
158.1
140.4
風力発電
14.4
25.5
32.4
57.4
69.9
73.7
96.2
89.3
80.3
バイオマス/廃棄物エネルギー発電
6.3
8.3
11.8
13.1
14.1
13.2
13.7
12.9
8.6
水力<50MW
1.5
4.6
5.4
5.9
7.1
5.3
4.5
6.5
7.8
バイオ燃料
3.7
8.9
26.1
28.2
19.3
10.6
9.2
8.3
5.0
地熱発電
1.4
0.9
1.4
1.8
1.8
2.7
3.5
3.7
2.1
海洋エネルギー
0.0
0.1
0.9
0.7
0.2
0,3
0.2
0.3
0.3
新規投資合計
39.6
64.7
100.0
146.2
171.7
168.2
227.2
279.0
244.4
2 開発/商業化
ベンチャーキャピタル
3 製造業
4 プロジェクト
アセットファイナンス
(再投資資本)
小規模分散型
合計投資額
新技術投資
注:四捨五入によって、
これらの数値を加算した合計と異なってくる。本表における分類についてのより詳細な情報は投資フローの章の捕足5を参照。
出典:本節の巻末注9を参照
─ 95 ─
表R10. 自然エネルギーの一次および最終エネルギーにおける割合(2010年/2011年の実績および目標値)
国
一次エネルギー
割合
(2010/2011)1
最終エネルギー
目標値
EU-27
割合
(2011)
目標値
13%
→ 2020年までに20%
→ 2020年までに18%
アルバニア
→ 2020年までに38%
→ 2030年までに40%
アルジェリア
アルゼンチン
9.8%
オーストラリア
3.7%
オーストリア2
27%
5.5%
→ 2020年までに13%
6.5%
ベルギー
ボスニア・ヘルツェコビナ
→ 2020年までに45%
→ 2012年までに10%
→ 2016年までに20%
バルバドス
ベラルーシ
31%
→ 2020年までに40%
7.7%
→ 2016年までに1%
ボツワナ
ブラジル
46%
ブルガリア
7.0%
13%
→ 2020年までに2.1%
ブルンジ
カメルーン
69%
(2009)
カナダ
17%
チリ
27%
中国
8%
コロンビア
32%
コスタリカ
83%
→ 2015年までに9.5%
→ 2013年までに3%
→ 2015年までに5%
コートジボワール
クロアチア
→ 2020年までに20%
12%
キプロス
チェコ共和国2
→ 2020年までに16%
6%
8%
コンゴ共和国
97%
デンマーク
19%
→ 2020年までに13%
10%
→ 2020年までに13.5%
26%
→ 2020年までに35%
→ 2050年までに100%
ジブチ
→ 2020年までに100%
ドミニカ共和国
→ 2025年までに25%
エクアドル
17%
エジプト
4.1%
エルサルバドル 76%
─ 96 ─
表R10. 自然エネルギーの一次および最終エネルギーにおける割合(2010年/2011年の実績および目標値)
国
一次エネルギー
割合
(2010/2011)1
エリトリア
65%
エストニア
18%
最終エネルギー
目標値
割合
(2011)
目標値
26%
→ 2020年までに25%
→ 2013年までに100%
フィジー
フィンランド
フランス
20%
33%
→ 2015年までに25%
→ 2020年までに28%
→ 2025年までに40%
6%
13%
→ 2020年までに23%
→ 2020年までに80%
ガボン
ドイツ2
ギリシャ
9%
12%
→ 2020年までに18%
→ 2030年までに30%
→ 2040年までに45%
→ 2050年までに60%
6.1%
11%
→ 2020年までに20%
→ 2020年までに20%
グレナダ
→ 2026年までに80%
グアテマラ
94%
ホンジュラス
97%
ハンガリー2
8.3%
8.2%
7%
4.9%
インド
インドネシア
3.8%
イラン
1.2%
アイルランド
9.1%
→ 2025年までに25%
6.2%
11%
6.9%
→ 2020年までに17%
→ 2020年までに10%
→ 2015年までに7%
→ 2020年までに10%
ヨルダン
ケニア
12%
→ 2020年までに15%
→ 2030年までに20%
ジャマイカ
日本
→ 2020年までに16%
→ 2020年までに50%
イスラエル
イタリア
→ 2020年までに14.6%
69%
コソボ
→ 2020年までに25%
ラオス
→ 2025年までに30%
ラトビア
50%
33%
→ 2020年までに12%
レバノン
→ 2020年までに10%
リビア
リトアニア
14%
→ 2025年までに20%
ルクセンブルク
マケドニア
→ 2020年までに40%
18%
→ 2020年までに23%
2.8%
→ 2020年までに11%
→ 2020年までに28%
10%
→ 2020年までに54%
マダガスカル
─ 97 ─
表R10. 自然エネルギーの一次および最終エネルギーにおける割合(2010年/2011年の実績および目標値)
国
マラウイ
一次エネルギー
最終エネルギー
割合
(2010/2011)1
目標値
88%
(2012)
→ 2020年までに7%
目標値
0.4%
→ 2020年までに10%
→ 2020年までに15%
マリ
マルタ
モーリタニア
→ 2015年までに15%
→ 2020年までに20%
モーリシャス
→ 2020年までに35%
メキシコ
割合
(2011)
6.9%
モルドバ
→ 2020年までに20%
モンゴル
→ 2020年までに20∼25%
→ 2020年までに17%
→ 2020年までに17%
モンテネグロ
→ 2012年までに8%
モロッコ
モザンビーク
→ 2012年までに10%
97%
(2009)
オランダ2
4.4%
ニュージーランド
39%
ニカラグア
65%
→ 2020年までに16%
→ 2020年までに10%
ニジェール
ノルウェー
65%
ペルー
24%
→ 2020年までに67.5%
→ 2020年までに20%
パラオ
→ 2020年までに25%
パレスチナ
フィリピン
41%
ポーランド
8.9%
ポルトガル
→ 2020年までに20%
11%
→ 2020年までに15%
23%
25%
→ 2020年までに31%
ルーマニア
16%
24%
→ 2020年までに24%
ロシア
5.6%
ルワンダ
87%
→ 2030年までに20%
サモア
→ 2020年までに27%
セルビア
12%
スロバキア
7.5%
9.5%
→ 2020年までに14%
スロベニア
14%
19%
→ 2020年までに25%
ソマリア
96%
(2008)
韓国
2.75%
南スーダン
66%
→ 2015年までに4.3%
→ 2020年までに6.1%
→ 2030年までに11%
─ 98 ─
表R10. 自然エネルギーの一次および最終エネルギーにおける割合(2010年/2011年の実績および目標値)
国
一次エネルギー
割合
(2010/2011)1
スペイン2
スイス
14%
15%
→ 2020年までに20.8%
48%
→ 2020年までに50%
→ 2020年までに49%
→ 2020年までに24%
→ 2011年4.3%
シリア
>90%
21%
→ 2022年までに25%
→ 2013年までに100%
トンガ
トルコ
11%
ウガンダ
90%
ウクライナ
1.8%
英国
目標値
70
(2009)
38%
タイ
割合
(2011)
→ 2020年までに20%
スウェーデン2
タンザニア
目標値
13%
セントルシア
スーダン
最終エネルギー
→ 2023年までに30%
→ 2030年までに19%
4%
→ 2020年までに11%
3.8%
ウルグアイ
44%
→ 2015年までに50%
ベトナム
3.2%
→ 2020年までに5%
→ 2025年までに8%
→ 2050年までに11%
→ 2020年までに15%
とくに記載のない場合、国の割合は2010/2011年のデータである。
EU27か国に含まれるすべての国における最終エネルギーの目標は、EU指令2009/28/ECに基づき設定されている。オーストラ
リア、
チェコ共和国、
ギリシャ、
ハンガリー、
スペイン、
スウェーデンの政府はEUの目標よりも高い目標を追加的に設定している。オラン
ダ政府はより意欲的に設定していた目標をEU指令の設定値まで引き下げた。
1.
2.
出典:本節の巻末注10を参照
─ 99 ─
表R11. 発電量における自然エネルギーの割合(2011年の実績および目標)
国
EU-27
アルジェリア
アンティグア·バーブーダ
割合
(2011)1
2.2%
(2012)
31%
11%
バングラデシュ
4.6%
10.8%
7.5%
5.9%
クック諸島
コスタリカ
クロアチア
デンマーク3
ドミニカ共和
東ティモール
エジプト
エリトリア
エストニア
フィジー
フランス
ガボン
ドイツ
ガーナ
ギリシャ
グアテマラ
ガイアナ
インド
インドネシア
イラク
アイルランド
イスラエル
イタリア2
ジャマイカ
キリバス
クウェート
ラトビア
レバノン
リビア
リトアニア
国
20.6%
アルゼンチン
オーストラリア
バハマ
バルバドス
ベルギー
カーボヴェルデ
チリ2
目標
46%
40%
11%
(2012)
9.1%
12%
42%
21%
15%
64%
11%
16%
11%
20%
0.5%
14%
水力を除く
→ 2017年までに5%
→ 2030年までに40%
→ 2015年までに5%
→ 2020年までに10%
→ 2030年までに15%
→ 2016年までに8%
→ 2020年までに20%
→ 2020年までに15%
→ 2030年までに30%
→ 2015年までに5%
→ 2020年までに10%
→ 2029年までに29%
→ 2020年までに20.9%
→ 2020年までに50%
→ 2014年までに5%
→ 2024年までに10%
→ 2015年までに50%
→ 2020年までに100%
→ 2021年までに100%
→ 2020年までに35%
→ 2020年までに50%
→ 2050年までに100%
→ 100%(データなし)
→ 2020年までに50%
→ エジプト
→ 50%(データなし)
→ 2015年までに18%
→ 2015年までに90%
→ 2020年までに27%
→ 2020年までに70%
→ 2020年までに35%
→ 2030年までに50%
→ 2040年までに65%
→ 2050年までに80%
→ 2020年までに10%
→ 2020年までに10%
→ 2022年までに60%
→ 90%(データなし)
→ 2012年までに10%
→ 2025年までに26%
→ 2030年までに2%
→ 2020年までに40%
→ 2014年までに5%
→ 2020年までに10%
→ 2020年までに26%
→ 2020年までに15%
→ 10%(データなし)
→ 2030年までに15%
→ 2020年までに60%
51%
→ 2020年までに12%
→ 2020年までに7%
0%
(2012) → 2025年までに10%
8.4%
→ 2020年までに20%
割合
(2011)1
ルクセンブルク2
マダガスカル
マレーシア
11.6%
52%
マリ
マーシャル諸島
モーリシャス
メキシコ
モンゴル
モロッコ
58%
ニュージーランド
ナイジェリア
ニウエ
パキスタン2
パレスチナ領
16%
33%
(2012)
76%
20.1%
∼0%
0.72%
(2012)
2%
47%
目標
→ 2020年までに11.8%
→ 2020年までに75%
→ 2015年までに5%
→ 2020年までに9%
→ 2030年までに11%
→ 2050年までに15%
→ 2020年までに25%
→ 2020年までに20%
→ 2025年までに35%
→ 2025年までに35%
→ 2020年までに10∼20%
→ 2020年までに42%
→ 2025年までに90%
→ 2015年までに5%
→ 2025年までに10%
→ 2020年までに100%
→ 2012年までに10%
→ 2020年までに10%
→ 2020年までに40%
→ 2020年までに59%
→ 2030年までに20%
→ 2020年までに43%
28.1%
→ 2015年までに2.5%
0.3%
→ 2020年までに4.5%
55%
→ 2012年までに90%
ルワンダ
→ 2020年までに15%
セネガル
→ 2020年までに5%
セーシェル
→ 2030年までに15%
→ 2015年までに50%
ソロモン諸島
2.2%
→ 2015年までに9%
南アフリカ
スペイン
→ 2020年までに38.1%
30.5%
スリランカ
0.1%
→ 2016年までに10%
→ 2020年までに20%
→ 2015年までに20%
セントクリストファー・ネイビス
→ 2013年までに5%
セントルシア
→ 2015年までに15%
→ 2020年までに30%
→ 2015年までに30%
セントビンセント
・グレナディーン
→ 2020年までに60%
スーダン
→ 2016年までに10%
タイ
→ 2011年までに11%
→ 2022年までに14%
→ 2015年までに50%
トンガ
チュニジア
→ 2011年までに4%
5.5%
(2012) → 2016年までに16%
→ 2030年までに40%
25.3%
→ 2023年までに30%
トルコ
→ 2020年までに100%
ツバル
54%
→ 2017年までに61%
ウガンダ
英国
→ 2015年までに50%
10.3%
スコットランド
→ 2020年までに100%
フィリピン
ポルトガル
カタール
ルーマニア
ロシア2
ウルグアイ
バヌアツ
ベトナム
イエメン
─ 100 ─
74.6%
→ 2014年までに23%
→ 2020年までに5%
→ 2025年までに15%
表R11. 目標値を持たない国の発電量における自然エネルギーの割合(2011年の実績)
国
割合(2011)1
オーストリア
69%
バーレーン
0.006%(2012)
ベラルーシ
0.8%
ボスニア・ヘルツェコビナ
29%
ブラジル
89%
ブルガリア
国
マラウイ
割合(2011)1
96.8%;水力の2.8%
は含めない
マルタ
0.8%
モルドバ
2.1%
モンテネグロ
43%
8.4%
モザンビーク
99.9%
カナダ
63%
オランダ
10.9%
カメルーン
88%
ニカラグア
32.7%
中国
18%
ノルウェー
96.6%
コロンビア
80%
パプアニューギニア
35.5%
コスタリカ
91%
ペルー
56.9%
コートジボワール
30%
ポーランド
11.9%
キューバ
3.2%(2010)
セネガル
10.3%
キプロス
4.7%
セルビア
23.9%
チェコ共和国
9.2%
スロバキア
17.2%
99.6%(2009)
スロベニア
25.1%
コンゴ民主共和国
エルサルバドル
63%
ソマリア
エチオピア
84%
韓国
3%
フィンランド
32%
スーダン
63%
ホンジュラス
65%(2010)
スウェーデン
55%
69%(2012)
ハンガリー
7.6%
スイス
57%
アイスランド
100%
タンザニア
46%
イラン
5.1%
タイ
7%
日本
10.5%,(水力の3.8%
は含めない)>10MW
ヨルダン
0.5%
カザフスタン
14%
ケニア
67.5%,水力の17.6%
は含めない
レバノン
12%(2012)
マケドニア
21%
トーゴ
0.6%
チュニジア
5.5%(2012)
ウクライナ
5.8%
米国
13%
ウズベキスタン
18%
ベネズエラ
73%
ザンビア
99.6%(2010)
とくに記載のない場合、国の割合は2010/2011年のデータである。
既存の割合から大型水力発電を除いている国が数か国ある。対応する目標は大型水力発電を除いているためである。
これにはチリ、
イタリア、
ルクセンブルク、
パ
キスタン、
ロシア、
スリランカを含む。
3.
デンマークは2012年3月に2020年までに電力消費量の50%を風力発電によって供給する目標を設定している。
1.
2.
注:関連する目標が別に示されている場合を除いて、割合については10%を超えるものについては少数第2位で四捨五入している。
ここに挙げられていない多くの州や県、地方自治体が追加的な目標値を持っている。
米国およびカナダでは現行のRPS制度に沿った事実上の州・地方レベルの目標値があるが、国家レベルの目標はない
(表R12-R16を参照)
表中のいくつかの国々は別の形式の目標を掲げている
(表R10およびR12を参照)
。準国家目標に関しては、
より多くの情報を含むため、政策の展望の章の本文
を参照。
既存のシェアは最も確からしい数値であるが、完全に信頼性の高い参照用データとして用いることは想定されていない。
電力に占める割合は異なる方法を使用して計算することができる。
計算手法を明記していない報告もあるので、当表における電力の占める割合は異なった手法が混在している可能性がある。
そのため、各国間のデータの比較や
整合性についてはかならずしも適当ではない。
とりわけ、Observ’
ER による情報にある割合は、寄稿者からREN21に提出された数値とは違っている。数値が矛盾する場合は、寄稿者からREN21に提供され
た数値が優先されている。
出典:本節の巻末注11を参照
─ 101 ─
表R12. その他の自然エネルギー目標
国
分野/技術
目標値
EU-27
輸送
EU-27各国は、2020年までに自然エネルギーを利用して輸送部門の
最終エネルギー消費の10%を満たすことを要求されている
アルジェリア
風力
2013年までに10MW;2015年までに50MW;2020年までに270MW;2030年までに2000MW
太陽光発電
2013年までに25MW;2015年までに241MW;2020年までに946MW;2030年までに2800MW
アルゼンチン
オーストラリア
(南オーストラリア)
オーストリア
集光型太陽熱発電(CSP)
2013年までに25MW;2015年までに325MW;2020年までに946MW;2030年までに7200MW
自然エネルギー電力
2016年までに3GW
地熱発電
2016年までに30MWを発電する
自然エネルギー電力
2020年までに電力の33%発電する
風力発電
2020年までに2000MW追加
太陽光発電
2020年までに1200MW追加
水力発電
2020年までに1000MW追加
バイオマス発電・バイオガス 2020年までに200MW追加
バングラデシュ
太陽光
2015年までに500MW
農村のオフグリッド太陽光発電 2015年までに250万件
バイオマス発電
2014年までに2MW発電設備
バイオガス
2016年までに15万件の発電設備;2014年までに4MWの発電設備
冷暖房
2020年までに冷暖房の最終消費エネルギー全体での自然エネルギー
の割合を11.9%へ
輸送
2020年までに輸送の最終消費エネルギー全体で自然エネルギーの割合を10.4%へ
(ワロン地域)
最終エネルギー
2020年までに自然エネルギーの割合を20%
(ワロン地域)
自然エネルギー電力
2020年までに自然エネルギーを8TWh/年
ベナン共和国
農村地域のエネルギー
2025年までに農村の電力の50%を自然エネルギーへ
ブラジル
風力発電
2021年までに15.6GW
小水力発電
2012年までに7.8GW
バイオマス発電
2021年までに19.3GW
太陽光発電
2014年までに80MWの太陽光発電パークの運用
水力発電
2011年までに80MWの水力発電設備設置;2017~18年までに水力発電を
3か所、174MW
ベルギー
ブルガリア
カナダ
(ニューブランズウィック州) 自然エネルギー全般
2020年までに自然エネルギーのうち40%;2016年までに10%割合を増やす
(ノバスコシア州)
自然エネルギー全般
2012年までに20%;2015年までに25%
(サスカチュワン州)
自然エネルギー全般
2030年までに33.3%
(プリンスエドワードアイランド州) 風力発電
2030年までに2011年より30MW増加する
(オンタリオ州)
自然エネルギー全般
2022年までに1万700MW
(オンタリオ州)
風力発電
2025年までに5000MW
(オンタリオ州)
太陽光発電
2025年までに40MW
(オンタリオ州)
水力発電
2025年までに1500MW
自然エネルギー電力
2013年までに49GWの新しい自然エネルギー設備
風力発電
2015年までに100GWのオングリッド、2020年までに20GW
太陽光発電
2015年までに100GWのオングリッド、2020年までに20GW
太陽光集熱発電(CSP)
2015年までに1GW
水力発電
2015年までに290GW
バイオマス発電
2015年までに13GW
太陽熱
2015年までに280GWth(4億㎡)
中国
─ 102 ─
表R12. その他の自然エネルギー目標(続き)
国
分野/技術
目標値
コロンビア
系統に接続している自然エネルギー 2015年までに3.5%:2020年までに6.5%
オフグリッドの自然エネルギー
2015年までに20%オフグリッドで発電:2020年までに30%
チェコ共和国
輸送
2020年までに輸送部門全体の最終消費における自然エネルギーのシェアを10.8%
デンマーク
風力
2020年までに電力消費の50%のシェアにする
冷暖房
2020年までに39.8%
輸送
2020年までに10%
ジブチ
太陽光発電
2017年までに農村電化の30%
エジプト
水力を除く自然エネルギー
2020年までに電力の14%
風力発電
2020年までに電力の12%と7200MW
太陽光発電
2020年までに220MW:2027年までに700MW
CSP
2020年までに1100MW:2027年までに2800MW
エリトリア
風力発電
発電量の50%(データなし)
エチオピア
風力発電
2014年までに770MW
水力発電
2015年までに1万641.6 MW(>90%以上の割合)
:2030年までに2万2000MW
地熱発電
2015年までに75MW:2018年までに450MW:2030年までに1000MW
バイオマスエネルギー
103.5MW(データなし)
風力発電
2020年までに884MW
水力発電
2020年までに1万4598MW
バイオマスエネルギー
2020年までに1万3152MW
太陽光発電とCSP
2013年に1GWの容量を新規導入
風力発電
2020年までに25GW
洋上風力発電
2020年までに6GW
冷暖房
2020年までに33%
輸送
2020年までに10.5%
ドイツ
熱
2020年までに全熱供給のうち14%を持続可能なものにする
ギリシャ
太陽光発電
2030年までに2200MW
冷暖房
2020年までに冷暖房の20%を持続可能なものへ
ギニアビサウ
太陽光発電
2015年までに一次エネルギーの2%
インド
自然エネルギー
2017年までに53GWの容量
風力発電
2017年までに5GW
太陽光
2017年までに10GW;2022年までに20GWを系統に接続;2020年までに2,000MW
のオフグリッド;2022年までに2000万台の太陽光照明装置
フィンランド
フランス
インドネシア
小水力発電
2017年までに2.1GW
バイオマスエネルギー
2017年までに2.7GW
太陽熱温水
2012年と2017年の間に加えられる新規容量は5.6GWth(800万㎡)
風力、
太陽光、
水力
2025年までに一次エネルギー
(組み合わせて)
中の1.4%のシェア
風力
2025年までに0.1GW
太陽光発電
2025年までに156.76MW
水力発電
2025年までに0.43GWの小規模水力電気を含む2GW
揚水発電
2025年までに3GW
1
イラク
地熱発電
2025年までに、
一次エネルギーおよび12.6GWの電力量の6.3%のシェア
バイオ燃料
2025年までに一次エネルギー中の10.2%のシェア
風力発電
2016年までに80MW
太陽光発電
2016年までに240MW
CSP
2016年までに80MW
─ 103 ─
表R12. その他の自然エネルギー目標(続き)
国
分野/技術
目標値
アイルランド
熱
2020年までに15%の割合に
イタリア
風力発電(陸上)
2020年までに1万8000GWhの発電量、
1万2000MWの容量
風力発電(洋上)
2020年までに2000GWhの発電量、
680MWの容量
太陽光発電
2017年までに2万3000MW
水力発電
2020年までに4万2000GWhの発電量、
1万7800MWの容量
地熱発電
2020年までに6750GWhの発電量、
920MWの容量、
2020年までに冷暖房を300ktoe
バイオマスエネルギー
2020年までに1万9780GWhの発電量、
3820MWの容量、
2020年までに冷暖房の5670ktoe
冷暖房
2020年までに17.1%
太陽熱温水および熱
2020年までに1586ktoe
輸送
2020年までに17.4%
バイオ燃料
2020年までに輸送部門で2899ktoe
風力発電
2020年までに5GW:2030年までに洋上で8.03GW
太陽光発電
2020年までに8GW
水力発電
2020年までに49GW
地熱発電
2020年までに0.53GW:2030年までに3.88GW
バイオマスエネルギー
2020年までに3.3GW:2030年までに6GW
潮力発電
2030年までに新規容量として1500MW
自然エネルギー全般
2018年までに1000MW
風力発電
2020年までに1200MW
太陽光発電
2020年までに300MW
集光型太陽熱発電
2020年までに300MW
太陽熱温水
2020年までに世帯の30%(2010年は13%)
カザフスタン
自然エネルギー全般
2020年までに1.04GW
ケニア
自然エネルギー全般
2012年までにダブルの設備容量
地熱発電
2030年までに5000MW
太陽熱温水
1日当たり100リットル以上の湯を使用する建物の毎年の需要の60%を補う
風力発電
2030年までに3.1GW,7.5TWh
太陽光発電
2030年までに3.5GW,4.2TWh
集光型太陽熱発電
2030年までに1.1GW、
3.2TWh
風力発電
2015年までに60∼100MW
水力発電
2015年までに40MW
バイオガス
2015年までに15∼25MW
太陽熱温水
2009∼2014年に新規容量として、
133MWth(19万㎡)
を導入
自然エネルギー全般
2030年までに260MW
農村の電力
2020年までに農村電化において、
自然エネルギーを35%へ
風力発電
2015年までに260MW;2020年までに600MW;2025年までに1,000MW
太陽光発電
2015年までに129MW
集光型太陽熱発電(CSP)
2020年までに125MW;2025年までに375MW
太陽熱温水
2015年までに80MWth;2020年までに250MWth
日本
ヨルダン
クウェート
レバノン
レソト
リビア
─ 104 ─
表R12. その他の自然エネルギー目標(続き)
国
分野/技術
目標値
ルクセンブルク
冷暖房
2020年に冷暖房の最終消費総量の8.5%を自然エネルギーにする
マラウイ
水力発電
2014年までに346.5MWの容量を導入する
マレーシア
自然エネルギー全般
2065MW(大規模水力発電を除いて),11,2TWh,もしくは10%を自然エネルギー
で供給する
;2015年までに6%の容量;2020年までに11%の容量;2030年までに
14%の容量;2050年までに36%の容量
ミクロネシア
自然エネルギー全般
都市に10%の自然エネルギー、
および2020年までに農村地域に50%
モロッコ
風力発電
2020年までに2000MW
太陽光発電
2020年までに2000MW
水力発電
2020年までに2000MW
太陽熱温水
2012年までに280MWth(40万㎡),2020年までに1.2GW(170万㎡)
風力、
太陽光、
水力
2000MW程度(データなし)
太陽光発電
82000のシステムを導入する
太陽熱温水、
熱利用
農村地域に10万のシステムを導入する
(データなし)
揚水用風力
3000か所導入(データなし)
バイオ醗酵槽
1000か所導入(データなし)
自然エネルギーに基づいた
生産システム
5000導入(データなし)
風力発電
2013年までに1MW
太陽光発電
2013年までに3MW
小規模水力発電
2013年までに15MW
オランダ
バイオ燃料
2013年までに輸送混合燃料中の5%;2020年までに10%
ナイジェリア
風力発電
2015年までに1MW;2025年までに20MW;2035年までに40MW
モザンビーク
ネパール
事業規模の太陽光発電(>1MW) 2015年までに1MW;2025年までに50MW
ノルウェー
パレスチナ
フィリピン
ポーランド
小規模水力発電
2015年までに100MW;2025年までに734MW;2035年までに19000MW
バイオマスエネルギー
2025年までに100MW;2035年までに800MW
自然エネルギー全般
2016年までに30TWhの電力生産量
スウェーデンとの
共通電力証書市場
2020年までに26.4TWh
風力発電
2020年までに44MW
太陽光発電
2020年までに45MW
集光型太陽熱発電(CSP)
2020年までに20MW
バイオマスエネルギー
2020年までに21MW
自然エネルギー全般
2030年までに2010年の3倍の再生可能エネルギー電力容量
風力発電
2030年までに1975MW追加導入
太陽光発電
2030年までに284MW追加導入
水力発電
2030年までに5394.1MW追加導入
地熱発電
2030年までに1165MW追加導入
バイオマスエネルギー
2030年までに81MW
潮力発電
2030年までに71MW
風力発電(洋上)
2020年までに1GW
─ 105 ─
表R12. その他の自然エネルギー目標(続き)
国
分野/技術
目標値
ポルトガル
自然エネルギー全般
2020年までに15.8GW
カタール
太陽光発電
2014年までに1.8GW
ルーマニア
冷暖房
2020年までに22%
輸送
2020年までに10%
水力発電
2017年までに340MW
小水力発電
2015年までに42MW
地熱発電
2017年までに310MW
バイオガス
2017年までに300MW
オフグリッド・自然エネルギー
2017年までに5MW
自然エネルギー全般
エネルギーサービスと供給を2030年までに20%ととし、
自然エネルギー向上に貢献
自然エネルギー全般
2020年までに24GW;2032年までに54GW
太陽光
2032年までに41GW(25GWをCSP,16GWを太陽光発電)
風力発電、
地熱発電、
廃棄物発電2
2032年までに合わせて13GW
風力発電
1390MW(データなし)
太陽光
2017年までに150MW
南アフリカ
自然エネルギー全般
2030年までに17.8GW
韓国
容量
ルワンダ
サモア
サウジアラビア
セルビア
風力発電
2020年までに415万5000toe
太陽光発電
2030年までに136万4000toe
太陽熱発電
2030年までに188万2000toe
水力発電
2030年までに144万7000toe
地熱発電
2030年までに126万1000toe
バイオマスエネルギー
2030年までに1035万7000toe
有機的都市固形廃棄物2
2030年までに1102万1000toe
潮力発電
2030年までに154万4000toe
発電量
自然エネルギー全般
2015年までに1万3016GWh(2.9%),2020年までに2万1977GWh(4.7%),
2030年まで3万9517GWh(7.7%)
風力発電
2013年までに100MW,2016年までに900MW,2019年までに1.5GW,2030年
までに1万6619GWh
太陽光発電
2030年までに2046GWh
太陽熱発電
2030年までに1971GWh
大規模水力発電
2030年までに3860GWh
小水力発電
2030年までに1926GWh
地熱発電
2030年までに2803GWh
森林バイオマスエネルギー
2030年までに2628GWh
バイオガス
2030年までに161GWh
埋立地ガス
2030年までに1340GWh
潮力発電
2030年までに6159GWh
─ 106 ─
表R12. その他の自然エネルギー目標(続き)
国
分野/技術
スペイン
電力
目標値
陸上風力発電
2020年までに35000MW
洋上風力発電
2020年までに750MW
太陽光発電
2020年までに7250MW
集光型太陽熱発電(CSP)
2020年までに4800MW
水力発電
2020年までに13861MW
揚水1
2020年までに8811MW
地熱発電
2020年までに50MW
バイオマスエネルギー
(固形)
2020年までに1350MW
都市固形廃棄物(MSW)
2020年までに200MW
バイオガス
2020年までに400MW
海洋エネルギー発電
2020年までに100MW
2
冷暖房
自然エネルギー全般
2020年までに18.9%
太陽熱温水
2020年までに644ktoe
地熱発電
2020年までに9.5ktoe
バイオマス熱利用
2020年までに4653ktoe
ヒートポンプ
2020年までに50.8ktoe
輸送
自然エネルギー全般
2020年までに輸送でのエネルギーの最終消費を11.3%、
自然エネルギーへ
バイオディーゼル
2012年と2013年までに輸送燃料使用量中の全エネルギーの7%;2020年まで
に2,313 ktoe
エタノール/バイオ‐ETBE
2020年までに400ktoe
輸送用途電力
2020年までに501ktoeを自然エネルギー由来
最終エネルギー
スリランカ
スーダン
風力発電
2020年までに6.3%
太陽光発電
2020年までに3%
水力発電
2020年までに2.9%
地熱、
海洋エネルギー、
ヒートポンプ
2020年までに5.8%
バイオマスエネルギー、
バイオ
ガス、
都市固形廃棄物2
2020年までに0.1%
バイオ燃料
2020年までに2.7%
風力発電、
小規模水力発電、
2015年までに10%の電力生産
バイオマス発電
バイオ燃料
2020年までにすべての液体燃料の20%の供給
風力発電
2031年までに320MW
太陽光発電
2031年までに350MW
集光型太陽熱発電(CSP)
2031年までに50MW
水力発電
2031年までに54MW
バイオマスエネルギー
(固形)
2031年までに80MW
バイオガス
2031年までに150MW
─ 107 ─
表R12. その他の自然エネルギー目標(続き)
国
分野/技術
目標値
スワジランド
太陽熱温水
2014年までに全公共施設の20%に導入
スウェーデン
自然エネルギー全般
2020年までに2002年より自然エネルギーを25TWh増やす
ノルウェーとの共同電力市場
2020年までに26.4TWh
輸送
2030年までに化石燃料から独立した輸送
自然エネルギー全般
2035年までに11.94TWh;2050年までに24.22TWh
水力発電
2035年までに43TWh
風力発電
2015年までに150MW:2020年まで1000MW;2025年までに1500MW:2030年
までに2000MW
太陽光発電
2015年までに45MW:2020年までに380MW:2025年までに1100MW:2030年までに1750MW
集光型太陽熱発電(CSP)
2025年までに50MW
バイオマスエネルギー
2020年までに140MW:2025年までに260MW:2030年までに400MW
タジキスタン
小規模水力発電
2020年までに100MW
タイ
電力
スイス
シリア
風力発電
2022年までに1200MW
太陽光発電
2022年までに2000MW
水力発電
2022年までに1608MW
地熱発電
1MW
バイオマスエネルギー
2022年までに3630MW
バイオガス
2022年までに600MW
都市固形廃棄物(MSW)
2022年までに160MW
潮力発電
2022年までに2MW
熱
太陽光発電
2022年までに100ktoe
固形バイオマス
2022年までに8200ktoe
バイオガス
2022年までに1000ktoe
2
都市固形廃棄物(MSW)
2022年までに35ktoe
輸送
エタノール
2022年までに900万リットル/日
バイオディーゼル
2022年までに597万リットル/日
先進的バイオ燃料
2022年までに2500万リットル/日
トリニダード・
トバゴ
自然エネルギー全般
2020年までにピーク需要(あるいは60MW)
の5%
チュニジア
自然エネルギー全般
2016年までに1,000MW(16%);2030年までに4,600MW(40%)
風力発電
2030年までに1,500MW
太陽光発電
2030年までに1,900MW
集光型太陽熱発電(CSP)
2030年までに300MW
バイオマスエネルギー
(固形)
2030年までに300MW
─ 108 ─
表R12. その他の自然エネルギー目標(続き)
国
分野/技術
目標値
ウガンダ
家庭用太陽光発電(PV)
2020年までに400kWp;2017年までに700kWp
大規模水力発電
2017年までに830MW;2017年までに1200MW
小規模小水力発電
2012年までに50MW;2017年までに85MW
地熱発電
2012年までに25MW;2017年までに45MW
2
都市固形廃棄物(MSW)
2012年までに15MW;2017年までに30MW
太陽熱温水
2012年までに4.2MWth(6,000㎡);2017年までに21MWth(3万㎡)
バイオ燃料
2012年までに生産量を72万の㎥/年;2017年までに生産量を216万㎥/年
太陽光発電
2030年までにエネルギー・バランスの10%;2015まで90%の年次増加
(アブダビ)
自然エネルギー全般
2020年までに発電容量の7%を自然エネルギー
(ドバイ)
自然エネルギー全般
2030年までに発電容量の5%、
1GW導入
熱
2020年までに12%
バイオ燃料
2014年までに5%
風力発電
2015年までに1GW
バイオマスエネルギー
2015年までに200MW
ベトナム
バイオ燃料
2015年までに国内石油需要の1%相当にし、
2015年までに5%相当に
イエメン
風力発電
2025年までに400MW
太陽光発電
2025年までに4MW
集光型太陽熱発電
2025年までに100MW
地熱発電
2025年までに200MW
バイオマスエネルギー
2025年までに6MW
バイオ燃料
2015年までに液体燃料中の10%のシェア
ウクライナ
アラブ首長国連邦
英国
ウルグアイ
ジンバブエ
1.
純粋な揚水発電設備はエネルギー源ではなく、
エネルギー貯蔵のための手段である。
そのため、揚水発電装置は転換損失を伴う。
さらに、揚水発電設備は自然
エネルギー源と非自然エネルギー源からのエネルギーを貯蔵することができる。揚水発電装置は調整電源として、
とくに変動型の自然エネルギーの調整で重要な
役割を担うため、
ここに含めた。
2.
都市固形廃棄物
(MSW)
が、
すべて有機物
(プラスチックを含む)
なのか、
あるいは一部が有機物なのかどうか判断することはかならずしも可能とはいえない。
タ
イはすべて有機物と確認できる。
また、
ウガンダは主に有機物である。
注:表中のいくつかの国は様々なタイプの目標を持っている
(表R10およびR11を参照)
。
出典:本節の巻末注12を参照
─ 109 ─
表R13. 固定価格買取制度(F
I
T)
を採用している国/州/地域の累計数
年
累計数
該当年に新規導入した国/州/地域
1978
1
米国
1990
2
ドイツ
1991
3
スイス
1992
4
イタリア
1993
6
デンマーク、
インド
1994
9
ルクセンブルク、
スペイン、
ギリシャ
1997
10
スリランカ
1998
11
スウェーデン
1999
14
ポルトガル、
ノルウェー、
スロベニア
2000
14
2001
17
アルメニア、
フランス、
ラトビア
2002
23
アルジェリア、
オーストリア、
ブラジル、
チェコ共和国、
インドネシア、
リトアニア
2003
29
キプロス、
エストニア、
ハンガリー、
韓国、
スロバキア共和国、
マハラシュトラ州
(インド)
2004
34
イスラエル、
ニカラグア、
プリンスエドワード島
(カナダ)
、
アンドラ・プラデシュ州とマドヤ・プラデシュ州
(インド)
2005
41
カルナタカ州、
ウッタランチャル州、
ウッタル・プラデシュ州
(インド)
、
中国、
トルコ、
エクアドル、
アイルランド
2006
46
オンタリオ州
(カナダ)
、
ケララ州
(インド)
、
アルゼンチン、
パキスタン、
タイ
2007
56
南オーストラリア州
(オーストラリア)
、
アルバニア、
ブルガリア、
クロアチア、
ドミニカ共和国、
フィンランド、
マケドニア、
モルドバ、
モンゴル、
ウガンダ
2008
70
クイーンズランド州(オーストラリア)、
カリフォルニア州(米国)、
チャスティスガル州、
グジャラート州、
ハリアナ州、
パンジャブ州、
ラジャスターン州、
タミル・ナドゥ州、西ベンガル州(インド)、
イラン、
ケニア、
フィリピン、
タンザニア、
ウクライナ
2009
81
オーストラリア首都特別地域、
ニューサウスウェーゼル州、
ビクトリア州
(オーストラリア)
、
ハワイ州、
オレゴン州、
バーモント州
(米国)
、
日本、
カザフスタン、
セルビア、
南アフリカ、
台湾
2010
86
ボスニア・ヘルツェコビナ、
マレーシア、
モーリシャス、
マルタ、
英国
2011
92
ロードアイランド州
(米国)
、
ノバスコシア州
(カナダ)
、
ガーナ、
モンテネグロ、
オランダ、
シリア
2012
97
ヨルダン、
ナイジェリア、
パレスチナ、
ルワンダ、
ウガンダ
2013
(初期)
97
99
合計数
注:累計数はその年の時点で固定価格買取制度
(FIT)
が法的に導入された数を示している。
「合計」には後日政策が減退した5か国
(ブラジル、
モーリシャス、南アフリカ、韓国および米国)
が差し引かれ、固定価格買取制度が導入されていることは明らか
だが制度の施行年が不明な7か国
(ホンジュラス、
レソト、
パナマ、
ペルー、
セネガル、
タジキスタンおよびウルグアイ)
がある。米国のPURPA政策
(1978年)
とは
後に発展するFITの原型である。
出典:本節の巻末注13を参照
─ 110 ─
表R14. RPS/クォータ政策を採用している国/州/地域の累計数
年
累計数
該当年に新規導入した国/州/地域
1983
1
アイオア州(米国)
1994
2
ミネソタ州(米国)
1996
3
アリゾナ州(米国)
1997
6
メーン州、
マサチューセッ州、
ネバダ州(米国)
1998
9
コネティカット州、
ペンシルベニア州、
ウィスコンシン州(米国)
1999
12
ニュージャージ州、
テキサス州(米国)
、
イタリア
2000
13
ニューメキシコ州(米国)
2001
15
フランドル
(ベルギー)
、
オーストラリア
2002
18
カリフォルニア
(米国)
、
ワロン地域(ベルギー)
、
英国
2003
21
日本、
スウェーデン、
マハラシュトラ州(インド)
2004
34
コロラド州、
ハワイ州、
メリーランド州、
ニューヨーク州、
ロードランド州(米国)、
ノバスコシア州、
オンタリオ州、
プリンスエドワード島(カナダ)、
アンドラ・プラデシュ州、
カルナタカ州、
マドヤ・プラデシュ州、
オリッサ州(インド)、
ポーランド
2005
38
コロンビア特別区、
デラウェア州、
モンタナ州(米国)
、
グジャラート州(インド)
2006
39
ワシントン州(米国)
2007
44
イリノイ州、
ニューハンプシャー州、
ノースカロライナ州、
北マリアナ諸島、
オレゴン州(米国)
2008
51
ミシガン州、
ミズリー州、
オハイオ州(米国)
、
チリ、
インド、
フィリピン、
ルーマニア
2009
52
カンザス州(米国)
2010
55
ブリティッシュ・コロンビア州(カナダ)
、
韓国、
プエルトリコ
(米国)
2011
56
イスラエル
2012
58
ノルウェー、
中国
2013
(初期)
58
76
合計数
注:「累計数」
は、
その年の時点でRPS/クォータ政策を導入した数を示している。
政策が施行された年順で示されている。表中の多くの政策が、後の年に改訂されたか更新された。
また、
いくつかの政策は撤廃されたか、廃止した可能性がある。
「合計数」
ではRPS/クォータ政策を持つと考えられる18の区域を加えるが、
どの年に制定されたか不明である
(インドネシア、
キルギスタン、
リトアニア、
マレーシア、
パラオ、
ポルトガル、
ルーマニア、
スリランカ、
アラブ首長国連邦、
およびチャッティースガル州、
ハリヤナ、
ケララ、
パンジャブ、
ラジャスタン、
タミールナド、
ウッタラーカ
ンド州、
ウタルプラデシュおよび西ベンガル)
。
アメリカでは、法律上拘束力のないRPS政策
(グアム、
インディアナ、
ノースダコタ、
オクラホマ、
サウスダコタ、米国バージン群島、
ユタ、
バーモント、
ヴァージニアお
よびウェストバージニア)
目標を持った10の州/領域がある。
同様に、
カナダでも3つの州
(アルバータ、
マニトバおよびケベック)
が法的拘束力はないが、政策目標を設定している。
出典:本節の巻末注14を参照
─ 111 ─
表R15. 国および州/地域のバイオ燃料混合規制
国
規制内容
アンゴラ
E10
アルゼンチン
E5およびB7
オーストラリア
州レベル:ニューサウスウェールズのE4およびB2、
クィーンズランドのE5
ベルギー
E4およびB4
ブラジル
E18‐25およびB5
カナダ
国レベル:
E5およびB2 州レベル:ブリティッシュコロンビアでE5およびB2、
アルバータでE5およびB2、
サスカ
チュワンでE7.5およびB2、
マニトバでE8.5およびB2、
オンタリオでE5
中国
9つの省でE10
コロンビア
E8
コスタリカ
E7およびB20
エチオピア
E5
グアテマラ
E5
インド
E5
インドネシア
B2.5およびE3
ジャマイカ
E10
マラウイ
E10
マレーシア
B5
モザンビーク
2012年から2015年にE10、2016年から2020年にE15、2021年からE20
パラグアイ
E24およびB1
ペルー
B2およびE7.8
フィリピン
E10およびB2
南アフリカ
E10
韓国
B2.5
スーダン
B5
タイ
E5およびB5
トルコ
E2
米国
国レベル:再生可能燃料基準(RFS2)
では2020年までに年間360億ガロンの再生可能燃料と輸送燃料を混合
する必要がある。州レベル:
ミズリー州とモンタナ州でE10、
フロリダ州でE9-10、
ルイジアナ州でE2およびB2、
マサ
チューセッツ州では2010年までにB2、2011年までにB3、2012年までにB4、2013年までにB5(すべて各年の7月
1日までに)、
ミネソタ州ではE10およびB5、2012年までにB10、2015年までにB20、
ニューメキシコ州では2012年
7月1日以降B5、
オレゴン州ではE10およびB5、
ペンシルべニア州では州内バイオディーゼル生産量が4000万
ンを到達した1年後にB2、1億ガロンの1年後にB5、2億ガロンの1年後にB10、4億ガロンの1年後にB20、
ワシントン州ではE2、B2州内の原料と菜種油の処理容量が必要量の3%を満たした180日後にB5へ拡大
ウルグアイ
B5、2015年までにE5
ベトナム
E5
ザンビア
E10およびB5
ジンバブエ
E5、上昇してE10およびB15
注:メキシコはグァダラハラの都市で先行的なE2義務化を行っている。
ドミニカ共和国は、2015年のB2およびE15の目標を持っているが、現在は混合義務化は
行っていない。チリは、E5とB5の目標を持っているが、現在は混合義務化は行っていない。パナマは、2014年にE4、2015年にE7、2016年にE10とするエタノ
ール使用義務化を2013年に導入することを計画している。
フィジーは将来的な義務化の期待を伴った自主的なB5とE10混合を2011年に承認した。ケニアの都市キスムではE10義務化があるナイジェリアは、E10の目
標を持っているが、現在は混合義務化は行っていない。エクアドルは2014年までのB2および2024年までのB17の目標を設定した;さらに、
それはいくつかの州に
おいてE5パイロット・プログラムを持っている。表R15はバイオ燃料混合義務のみを並べており、追加的な輸送およびバイオ燃料目標は表R12に含まれている。
─ 112 ─
表R16. 都市および地域のエネルギー政策:主な事例
エネルギーにおける自然エネルギー導入割合目標、すべての消費者
ボルダー・コロラド州・米国
2020年までに総エネルギーの30%
カンガリー・アルバータ州・カナダ 2036年までに総エネルギーの30%
ケープタウン・南アフリカ
2020年までに総エネルギーの10%
福島県・日本
2040年までに総エネルギーの100%
ハンブルク・
ドイツ
2020年までに総エネルギーの20%、2050年までに100%
ロンドン・英国
2030年までに総エネルギーの25%
長野県・日本
2050年までに総エネルギーの70%
パリ
・フランス
2020年までに総エネルギーの25%
シェレフテオ・スウェーデン
2020年までに、
バイオマス、水力発電あるいは風力発電の純輸出国
電力における自然エネルギー導入割合目標、すべての消費者
アデレード・オーストラリア
2014年までに15%
アムステルダム・オランダ
2025年までに25%、2040年までに50%
オースティン・テキサス州・米国
2020年までに35%
ケープタウン・南アフリカ
2020年までに15%
ミュンヘン・
ドイツ
2025年までに100%
長野県・日本
2050年までに30%、2030年までに20%、2020年までに10%
サンフランシスコ・カリフォルニア州・米国 2020年までに100%
シェレフテオ・スウェーデン
2020年までに100%
台北・台湾
2020年までに12%
ウルム・
ドイツ
2025年までに100%
ウェリントン・ニュージーランド
2020年までに78-90%
自然エネルギー導入設備容量目標
アデレード・オーストラリア
住宅および商業施設に2MWの太陽光発電
ロサンゼルス・カリフォルニア州・米国 2020年までに1.3GWの太陽光発電
サンディエゴ・カリフォルニア州・米国 2013年までに自然エネルギー目標の50MW
の100%
サンフランシスコ・カリフォルニア州・米国 2020年までにピーク需要(950MW)
自治体によるエネルギー購入目標
ブバネスワー・インド
自然エネルギーとエネルギー効率の使用を通じて2012年までに従来のエネルギー
消費を15%縮小する
ヘップバンシャー・オーストラリア 公共建築物において市が使う電力の100%、公共照明の8%
マルメ・スウェーデン
2030年までに市が使用するエネルギーの100%
ポートランド・オレゴン州・米国
2030年までに市が使用するエネルギーの100%
スーラト
・インド
2014年までに市で使用するエネルギーの82%を非従来型
シドニー・オーストラリア
市内で使用する建物の使用電気の100%;街灯用の20%
ワシントン D.C・米国
2012年に市内で使用するエネルギーの100%
─ 113 ─
表R16. 都市および地域のエネルギー政策:主な事例(続き) 熱関連の規制
アムステルダム・オランダ
チャンディーガル・インド
2040年までに少なくとも20万軒の家のための地域暖房導入
(バイオガス、
バイオマス、廃棄物熱の利用)
産業、
ホテル、病院、刑務所、食堂、住宅団地および政府での太陽熱温水暖房、
および2013年時点での居住用建物での義務的な使用
ロサンゼルス・カリフォルニア州・ すべての新しい建物(2010時点での)
に太陽光発電の屋根および
米国
電気自動車の充電設備の設置
ルルド・ポルトガル
2058年までに
(2009年基準)
パッシブの太陽光デザインで熱需要を80%減らす
(場所、
プロセス、
また温水)
ミュンヘン・
ドイツ
2013年時点で良好な日照条件にあるすべての学校およびスポーツ施設に
太陽熱システムの設置を義務付け
ナント・フランス
2017年までに都市住民の半数のため、
バイオマス・ボイラーからの熱を供給
するために地域暖房システムを拡張する
化石燃料の削減、すべての消費者
ヨーテボリ
・スウェーデン
2050年までに全エネルギーの100%を非化石燃料にする
マドリッド・スペイン
2020年までに化石燃料の使用量を20%削減
ラージコート・インド
2013年までに化石燃料の使用量を10%削減
ソウル・韓国
2030年までに化石燃料と原子力の使用量を30%削減
ベクショー・スウェーデン
2030年までに全エネルギーの100%を非化石燃料にする
ヴィジャヤワーダ・インド
2018年までに化石燃料の使用量を10%削減する
CO2排出削減目標、すべての消費者
オーフス・デンマーク
2030年までにカーボンニュートラル
ボトロップ・
ドイツ
2020年までに50%削減(2010年基準)
シカゴ・イリノイ・米国
2050年までに80%削減(1990年基準)
コペンハーゲン・デンマーク
2015年までに20%削減、2025年までにカーボンニュートラル
ダラス・テキサス州・米国
2030年までにカーボンニュートラル
ゲッティンゲン・
ドイツ
2020年までに50削減、2050年までに100%
ハンブルク・
ドイツ
2020年までに40%削減、2050年までに80%削減(1990年基準)
マルメ・スウェーデン
2020年までに排出量0
オスロ・ノルウェー
2030年までに50%削減(1991年削減)、2050年までにカーボンニュートラル
ソウル・韓国
2020年までに30%削減(1990年基準)
ストックホルム・スウェーデン
2015年までに一人当たりのCO2排出量を3トンに削減(1990年の5.5トン基準)
東京・日本
2020年までに25%削減(2000年基準)
トロント・オンタリオ州・カナダ
2050年までに80%削減、2020年までに30%削減1990年基準)
─ 114 ─
表R16. 都市および地域のエネルギー政策:主な事例(続き) 都市計画
グラスゴー・
スコットランド・英国
を目指して
「Sustainable Glasglow」は、
2020年までにCO2の30%の縮小(2006年基準)
おり、以下のように排出削減目標を分類する。熱電供給/地域暖房9%、
バイオマス2%、
バイオガスと廃棄物6%、
他の自然エネルギー3%、
輸送3%、
燃料転換3%、
エネルギー制
御システム6%。
その計画は次のものを含む。新しい建物はすべて地域熱供給システム
からそれらの暖房にアクセスするか、
あるいはより低炭素な選択肢を利用する。
風力発電により年間76GWh発電する。
また低炭素輸送(バイオガス/EV)
のための財
政的なインセンティブとなりうる。
香港・中国
中国における
「最もグリーンな地域」になることを目標としている。戦略は次の内容を含
む。2020年までに発電構成のうち、石炭火力発電を10%未満に制限し、
そして2020年
から2030年にかけて、既存の石炭火力発電を段階的になくしていく。海水を使用する
地域冷房インフラの構築/事業に投資する。2020年までにバイオガス
(埋め立て地と
廃水からの)
によって10万世帯の電力需要を満たす。すべての政府施設およびスイミ
ング・プールに太陽熱温水器を導入する。2020年までに全電力需要の1∼2%を達成
するよう、風力発電を導入する。2020年までに、E10およびB10を達成する。
さらに、政府施設上の太陽光発電の導入、香港で用いられるのに適した自然エネル
ギー技術の情報を提供するウェブサイト、
ニュース/イベント、教育資源、香港における
自然エネルギー設備の供給者に関する情報といったものによって周知をする。
マルメ・スウェーデン
ソウル・韓国
シドニー・オーストラリア
「2020年までのクライメイト・ニュートラル」は、主に、
エネルギー構成を太陽光発電、風力
発電、水力発電またバイオガスを中心とするものに変更するというものである。当都市
は、
さらに2020年までに一人当たりエネルギー消費の20%減(2001∼2005年における
年間使用量の平均を基準とする)
を目標とする。主要な戦略は、地域熱供給の拡張、
100%の再生可能エネルギー地区の開発、古い乗り物を100%「環境に配慮した乗り
物」へ置換、EVのインフラ整備である。
2030年までに、
ソウルは次のものを目標とする。全エネルギーのうち、20%を自然エネル
ギーから供給。
エネルギー消費の20%の減少。温室効果ガス排出の40%(1990年基
準)
の縮小。太陽電池、廃棄物回収および環境配慮施設を含む10のグリーンテクノロ
ジーの促進により100万人の新しいグリーン雇用の創出。国内市場を促進するために、
ソウルは、初期資金調達、資本借り入れ、
中小企業への信用担保、2030年までに研究
開発への1億米ドルの投資(技術/年ごとに2万米ドル)、海外マーケティングの支援を
提供している。
「Susutainable Sydney 2030」は、都市がいかにして温室効果ガス排出を大きく削
減できるかを骨子とし計画立案での全体的なアプローチを行っている。
2030年までに2006年基準で排出量を70%削減、
また電力における自然エネルギーの
割合を25%にすることを目標とする。都市のマスタープランは、バイオガス・
トリジェネ
レーション・プラントによって動力が供給されるべき15の「低炭素ゾーン」、分散型電源・
送電設備・
(バイオ)
ガスによって電気/熱/冷気を送る配給網の開発、
バイオガスを使
用したトリジェネレーションによる360MWの発電容量を2030年までに達成するという目
標、11のプラスエネルギー建築をセントラルパークに置くことを設定する。
バンクーバー・バンクーバー州・ 「Greenest City 2020」は、2020年までに炭素0、廃棄物0、
および健全な生態系の達
カナダ
成をゴールとする行動計画である。
これはそれぞれに長期の達成目標および2020年
目標を含む10の小目標からなる。2020年以降に建設されたすべての建物にカーボン・
ニュートラルの目標を設定。太陽熱温水器の設置のための支援金。建物におけるEV
の充電ステーション設置。2020年までにグリーン・ジョブの数を2倍(2010年基準以上)
にする。
横浜市・日本
「横浜エネルギー・ビジョン」は温室効果ガス排出量を2020年までに1人当たりで30%、
2050年までに80%(1990年基準)以上を削減するために、建物、EV、太陽光発電、風
力発電、
バイオマス、
バイオガスおよび太陽熱温水器を対象としたものである。
これは、2013年までに1300台のEV、4000個のスマートメーター、
および4400の太陽熱
システムの導入、太陽熱温水器装置導入およびEV購入のための補助金、
自然エネ
ルギーとエネルギー効率化の低金利ローンという中期目標および、
「横浜スマートシ
ティプロジェクト」の試案を含んでいる。
出典:本節の巻末16を参照
─ 115 ─
表R17. 地域および国別電力アクセス
国/地域
電化率
非電化人口
電気を利用できる人口
の割合
百万人
すべての発展途上国
76.0%
1265
アフリカ
43.0%
590
北アフリカ
99.0%
1
サハラ以南のアフリカ
30.0%
585
ECOWAS1
27.2%
173
新興アジア2
82.0%
628
中国および東アジア
91.0%
182
南アジア
68.0%
493
ラテンアメリカ
94.0%
29
中東
91.0%
18
アフガニスタン
16.0%
23.8
アルジェリア
99.3%
0.2
アンゴラ
26.2%
13.7
アルゼンチン
95.0%
1.1
バーレーン
99.4%
0.0
バングラデシュ3
46.0%
88.0
バルバドス
98.0%
0.005
ベリーズ
96.2%
0.01
ベナン
24.8%
6.7
ボリビア
71.2%
2.2
ボツワナ
55.0%
1.1
ブラジル
99.7%
3.3
ブルネイ
99.7%
0.0
ブルキナファソ
14.6%
12.6
カンボジア
24.0%
11.3
カメルーン
48.7%
10.0
カーボヴェルデ
87.0%
64.0
チリ
99.5%
0.0
中国4
∼100%
4.0
コロンビア
94.9%
2.9
コスタリカ
99.2%
0.0
コートジボワール
47.3%
10
キューバ
97.0%
0.3
北朝鮮
26.0%
コンゴ民主共和国
15.0%
58
ドミニカ共和国
96.2%
0.4
エクアドル
93.4%
1.1
22.0%
0.9
> 99.0%
0.3
エルサルバドル
96.8%
0.8
エリトリア
32.0%
3.4
エチオピア
23.0%
65
ガボン
36.7%
0.9
ガーナ
70.0%
9.4
東ティモール
エジプト
─ 116 ─
目標
割合(%)
→ 2030年までに100%
→ 2021年までに100%
→ 2016年までに80%
→ 2015年までに100%
→ 2015年までに75%
表R17. 地域および国別電力アクセス
(続き)
国/地域
電化率
非電化人口
電気を利用できる人口
の割合
百万人
グレナダ
82.0%
グアテマラ
84.4%
2.7
ギニア
15.0%
8
1
ギニアビサウ
15.0%
ガイアナ
82.0%
ハイチ
34.0%
6.2
ホンジュラス
79.3%
2.2
インド
75.0%
293
インドネシア5
73.0%
63
イラン
98.4%
1.2
イラク
86.0%
4.1
イスラエル
99.7%
0.0
ジャマイカ
96.8%
0.2
ヨルダン
99.0%
0.0
ケニア
18.0%
33
クウェート
100%
0.0
ラオス
55.0%
レバノン
100%
0.0
レソト
16.0%
1.7
リベリア
15.0%
3
リビア
99.0%
0.0
マダガスカル
19.0%
15.9
マラウイ
1%(農村部)
< 9%(国)
12.7
マレーシア
99.4%
0.2
マリ
18.0%
13
マーシャル諸島
99.4%
メキシコ
割合(%)
→ 2017年までに100%
→ 2020年までに30%
→ 2015年までに95%(農村部)
100%(都市部)
モーリシャス
目標
0.0
97.6%
ミクロネシア連邦
5
4.0%(農村部)
モンゴル
67.0%
0.9
モロッコ
97.0%
1.0
モザンビーク
12.0%
20.2
ミャンマー
13.0%
43.5
ナミビア
34.0%
1.4
ネパール
10.0%
16.5
ニカラグア
64.8%
1.6
ニジェール
8.0%
14
ナイジェリア
50.0%
79
98%
0.1
67.0%
56
オマーン
パキスタン
パレスチナ
99.4%
パナマ
83.3%
6
─ 117 ─
0.4
→ 2030年までに30%
表R17. 地域および国別電力アクセス
(続き)
国/地域
電化率
非電化人口
電気を利用できる人口
の割合
百万人
パラグアイ
98.4%
0.2
ペルー
78.6%
4.2
フィリピン5
83.0%
16.0
カタール
98.7%
0.0
サウジアラビア
99.0%
0.3
セネガル
42.0%
7.3
シエラレオネ
15.0%
5
シンガポール
100%
0.0
南アフリカ
75.0%
12.3
南スーダン
1.0%
スリランカ
76.6%
4.8
スーダン
36.0%
27.1
スリナム
タンザニア
1.5
2%(農村部)
、
15.0%(全国)
38.0
> 99%
0.5
トーゴ
22.0%
5.3
トリニダード・
ドバゴ
92.0%
0.0
チュニジア
99.5%
0.1
ウガンダ
8.0%
29.0
UAE
100%
0.0
ウルグアイ
99.8%
0.1
ベネズエラ
97.3%
0.3
ベトナム
98.0%
2.0
42.0%
14.2
イエメン
ザンビア
ジンバブエ
→ 2014年までに100%
90.0%
99.8%(農村部)
タイ
5
割合(%)
→ 2012年までに16%
ルワンダ
シリア
目標
3.1%(農村部)
、
47.6%(都市部)
、
20.3%(全国)
41.5%
10.5
→ 2015年までに30%
(農村部)
→ 2030年までに51%
(農村部)
、
→ 90%(都市部)、
→ 66%(全国)
7.3
1.
ECOWAS は、15 の西アフリカの国々にベナン、
ブルキナファソ、
カーボヴェルデ、
コートジボワール、
ガンビア、
ガーナ、
ギニア、
ギニアビサウ、
リベリア、
マリ、
ニジェール、
ナイジェリア、
セネガル、
シエラレオネおよびトーゴを含む西アフリカ諸国経済共同体のことである。
2.
新興アジアは以下のように分割される。
「中国および東アジア」
はブルネイ、カンボジア、中国、東ティモール、インドネシア、ラオス、マレーシ
ア、
モンゴル、
ミャンマー、
フィリピン、
シンガポール、韓国、台湾、
タイ、
ベトナム、
および南アジアを除く他のアジアの国々および地域を含める。
なお、南アジアにはアフガニスタン、
バングラデシュ、
インド、
ネパール、
パキスタンおよびスリランカが含まれる。
3.
バングラデシュにおける電化率は、通電された総計 78,896 村のうちの 50,000 村として、政府により定義される。
4.
中国のデータは 13 億人中 400 万人が電力へのアクセスを持たないという2011 年の公式報告を利用して計算されている。
5.
ミクロネシア連邦に関しては、農村電力化率とは首都をもつ4島
(都市と見なされている)
以外の島々を示す。
6.
インドネシア、
フィリピン、
イエメンに関しては、電化率は受電している世帯数を示す。
7.
パレスチナ占領地の電化率は国の電力系統に接続されている村の数を示す。
注:割合および目標は別段の定めがない限り国におけるものである。
出典:本末の巻末注17を参照
─ 118 ─
表R18. 調理用エネルギー源を伝統的なバイオマスに依存している人口
地域および主な国
人口
割合
百万人
アフリカ
68%
698
ナイジェリア
74%
117
エチオピア
96%
82
コンゴ共和国
93%
63
タンザニア
94%
42
ケニア
80%
33
その他サハラ以南のアフリカ
75%
328
北アフリカ
1%
2
新興アジア1
51%
1,814
インド
66%
772
バングラデシュ
91%
149
インドネシア
55%
128
パキスタン
64%
111
フィリピン
50%
47
ベトナム
56%
49
その他の新興アジア
54%
171
ラテンアメリカ
14%
65
中東
5%
10
全発展途上国
49%
2,558
世界全体2
38%
2,588
注: 1 新興アジアとは以下の区分である;中国および東アジアとはブルネイ、
カンボジア、中国、東ティモール、
イ
ンドネシア、
ラオス、
マレーシア、
モンゴル、
ミャンマー、
フィリピン、
シンガポール、韓国、台湾、
ベトナム、
およびその
他アジア諸国を含む。
なお、南アジアにはアフガニスタン、
バングラデシュ、
インド、
ネパール、
パキスタン、
および
スリランカが含まれる。
2
OECD および東ヨーロッパ / ユーラシアの国々を含める。
出典:本節の巻末注18を参照
─ 119 ─
方法論に関する注釈
この2013年度版報告書はかつての7つの自然エネルギー世
界白書(2008年を例外として、2005年より作成)を踏襲し
ている。これらの報告書を作成した際に用いた情報の基礎
となる知識は、自然エネルギー産業およびその市場自体に
比例して、毎年拡大を続けているが、読者は現在の報告
書の基礎を形作った歴史的な詳細と詳述を過去の版から
知ることができる。
この報告書において示される、2012年の国および世界全体
の設備容量、成長、投資のデータのほとんどは、予備的
なものであり、必要に応じて端数を調整したものである。情
報やデータが矛盾していたり、部分的であったり、古かった
りといった状態で是正が必要な場合には、論理的判断と歴
史的な成長傾向を用いることで、調整している。巻末には
追加的な詳細、参照、補足情報そして関連する仮定を提
示する。各版は数百の公開文献、様々な電子ニュースレ
ター、世界中の寄稿者による多くの未公開寄稿、専門家と
の個人的な情報交換、そしてウェブサイトに基づき、記述さ
れている。
一般的には、地球規模の自然エネルギー統計のための単
一の包括的な情報源はない。いくつかの世界的な集計は
個々の国の情報を集計、追加し、ボトムアップ式に構築し
なければならない。たとえば、発展途上国をグループとして
取り上げている資料は相対的にわずかしか存在しない。発
展途上国のために利用可能な最新のデータは多くの場合、
先進国のものよりも数年古く、そして対象年への推計はより
古いデータからなされ、それは過去の成長率と推測に基づ
いている。より正確な年次増加量は一般的に、風力、太
陽光発電、太陽熱集熱器の設備容量とバイオ燃料生産に
おいてのみ入手可能である。
自然エネルギー世界白書は世界規模でのすべての自然エ
ネルギー源を網羅し、利用可能な最良のデータを提供する
よう、努めている。いくつかの修正は実際の設備容量の変
化によってではなく、統計の改善、調整によって行われたた
め、年次の増加量のデータを得るために本報告書の以前
のバージョンと比較することは適切ではない。
集計および報告に関する注釈
多くの論点は、自然エネルギーの設備容量と発電量を
説明ないし報告する際に生じる。これらのいくつかの
論点について、この報告書で用いたアプローチの説明
と根拠を交えながら、以下で論じる。
1.設備容量 vs エネルギーデータ
この報告書は、発電量と同様に、設備容量の追加分と
総量にも正確な推計を行うことを企図している。双方
とも不確実性の影響を受け、不確実性の度合いは技術
ごとに異なる。技術別の市場と産業の傾向の章では可
能な範囲のエネルギー生産量の推計を含んでいるが、
主に電力か熱の設備容量のデータに焦点を当ててい
る。これは設備容量のデータがきわめて高い確実性を
持って推計しうるためである。実際の熱生産と発電量
の値は、通常12か月ないしそれ以上後に入手可能とな
り、ときには全く公表されない(特定の技術ないし資
源からの平均的なエネルギー製造についてより一層理
解するには表2の設備利用率を参照のこと)。
2.建設済容量 vs 連系済および稼働中容量
過去数年にわたって、太陽光発電と風力の市場では、
系統に接続されてはいるが正式な稼動とはまだ判断さ
れていない設備容量、あるいは建設済みであるが年末
までに系統に接続されていない設備容量(そして順次、
設備容量はある年に導入され、次年中に系統に接続さ
れる)の総量が増加している。この現象は、とりわけ
2009年から2012年の中国における風力発電の導入にお
いて顕著である。この傾向は太陽光発電の事例、とり
わけベルギー、フランス、ドイツ、そしてイタリアに
おいても近年増加している。様々な資料が計測におい
て異なる時間軸と技法を用いている。
さらに、建設済み、連系済み、稼働中の設備容量の数
値の差異は一時的なものであり、また展開速度が速い
ために生じている。いくつかのケースでは、導入量は
能力、意欲、あるいは系統連系の法的義務を上回って
いる、あるいは公的な設備容量の制限を越えている。
系統接続のための支援の枠組みと技術、法の枠組みの
頻繁な変更についての議論が続く限り、この状況は、
最も急激な成長をする市場での詳細な年次統計情報収
集へ悪影響をもたらし続ける可能性が高い。
かつての版では、自然エネルギー世界白書は建設済設
備容量に優先的に着目しており、それは年間の資本投
資のフローと最も相関するからであった。2012年版
以降、とくに太陽光発電や風力発電の項では、たとえ
この設備容量が前年に導入されたものであったとして
も、暦年(1月から12月)を通して稼動中(系統に接
続し電気を伝送しているか、あるいは系統に接続して
いなければ発電をしているものと定義する)である設
備容量へと焦点を移し始めた。
この理由は、自然エネルギー世界白書の情報源がしば
しば導入量の計測方法を変え、またほとんどの公的機
関が系統連系の統計(少なくとも太陽光発電に関して)
を報告しているからである。結果として、多くの国で
の実際の導入量データを得ることがますます困難と
な っ て い る。 欧 州 太 陽 光 発 電 産 業 協 会(European
Photovoltaic Industry Association)と世界風力エネ
─ 120 ─
*
ルギー会議(Global Wind Energy Council) を含む、
いくつかの自然エネルギー産業団体は導入済みの設備
容量から稼働中ないし系統連系済みの設備容量へと集
計、報告を転換し始めている。
結果として、2011年に導入された太陽光発電設備容量
は2012年に新たに接続された設備容量として計測され
た。また、年末までに稼動していない、または系統に
接続されてない2012年に導入された一部の設備容量
は、2013年までは計上されない。これは前年比の国の
データと同様に、報告された全体の年次成長率に影響
を与えうる。
中国における風力発電の状況は太陽光発電とやや異
なっており、新規設備容量全体が年末までに商業的に
認証されていないにも関わらず、導入された設備容量
のほとんどが系統に接続、電力の供給をしている。中
国の状況は、近年の認可規制の見直しにより、変化す
るだろう。
3.バイオマス発電の設備容量
この報告書は複雑さや制約が存在するバイオエネル
ギーの開発に関して、最良かつ最新の利用可能なデー
タを提供するよう努めている(自然エネルギー世界白
書2012、補足2を参照)。バイオマスを燃料とするコー
ジェネレーション(CHP)システムの報告は各国で
異なっており、発電設備容量と熱生産設備容量、およ
びバイオマスエネルギーの総生産量を評価する際に問
題が生じる。提示されたバイオマス発電の総計データ
は、石炭や天然ガスとバイオマス燃料の混焼による発
電の他に、固形バイオマス、埋立地ガス、バイオガス、
液体バイオ燃料を用いるバイオマス専焼発電所および
コージェネレーションシステムの設備容量とエネル
ギー生産量を可能な限り含む。
4.水力発電のデータと揚水発電の取り扱い
本報告書の2012年版以降、純粋な揚水発電(貯水池間
で水を移動させて蓄電する)を含まない水力発電の発
電容量の報告を行っている。この区別は、揚水発電は
エネルギー源というより、むしろエネルギー貯蔵であ
るためになされる。したがって、揚水発電はエネルギー
ロスに加え、潜在的に、再生可能か不可能を問わずす
べてのエネルギー源により使われているためである
(補足3でも触れたように、揚水発電は発電量調整に重
要な役割を果たしており、とくに変動型の自然エネル
ギー発電の調整を行うことができる)。
この計測手法は業界関係者の間では慣例となっ
て い る。 報 道 に よ る と、International Journal of
Hydropower and Damsおよびドイツ環境省(BMU)
は、 揚 水 発 電 を 含 ま な い 水 力 発 電 ま た は 自 然 エ ネ
ル ギ ー の 設 備 容 量 を 報 告 し て お り、 国 際 水 力 協 会
(International Hydropower Association)も、揚水発
電の設備容量を区別して報告している。
本報告書および2012年版では、水力発電の統計データ
から揚水発電の設備容量のデータを除いたことで、そ
れ以前の報告書に示してきた世界全体の水力発電、ひ
いては自然エネルギーの発電設備容量にかなりの影響
をもたらしている。そのため、本報告書の統計データ
を過去の水力や自然エネルギー発電の総容量データと
比較することはできない(ただし、本報告書p.7の「主
要指標」における2010年の設備容量の値は、方法論の
変化を示している)。この容量計測方法の変更による
水力以外の自然エネルギーの発電容量に変化はない。
将来の自然エネルギー世界白書のために、現在さらに
改良されたデータの集計が行われている。
本報告書の過去の版では、一般廃棄物における生物由
※
来 あるいは有機廃棄物の燃焼によるエネルギーの割
合が本文およびグラフに含まれていない(公式のデー
タが指定されてはいるが、それらは関連する文末脚注
に含まれている)。自然エネルギー世界白書2012年版
以降では、設備容量と総生産量は本文および表参照の
表R1とR2の世界のバイオマス発電データに含まれて
いる。この変更は、国際的なデータベース(例として
IEA、U.S. EIA、EU)が他の一般廃棄物とは異なる、
生物由来の一般廃棄物のデータを追跡および報告をし
ているという事実による。なお、注意点としては、定
義は情報源により若干異なり、報告されたすべての生
物由来または有機物の一般廃棄物が同じ定義のもとに
整理されているかは定かではない。
* 例としては、
欧州太陽光発電産業協会
(European Photovoltaic Industry Association)
による、
Global Market Outlook for Photovoltaics 2013-2017
(Brussels: May 2013)を参照。
また、世界風力エネルギー会議
(Global Wind Energy Council: GWEC)の報告によると、
メキシコは、年末までに304MWの設備追加が完了したにも関わらず、2011年末までの累積導入設備容
量は569MWで年間50MWのみの市場に留まっているが、
その理由はこの新規設備容量が2012年初めまでにすべてが系統連系されたわけではないからである。世界風力エネルギー協会のGlobal
Wind Report, Annual Market Update 2011(Brussels: 2012)
を参照。
※ 米国エネルギー情報局
(EIA)による生物由来の廃棄物の定義は、紙、
ダンボール、木材、食品の残さ、革、布、庭塵芥など
(http://205.254.135.7/cneaf/solar.renewables/page/mswaste/
msw.htmlを参照)
」。当局は、一般廃棄物のうち生物由来分だけを自然エネルギー源に含むとしている
( www.eia.gov/totalenergy/data/monthly/pdf/historical/msw.pdfを参照)
。国際エネルギー
機関
(IEA)
生物エネルギー協定課題36の定義による生物由来の廃棄物は、食べ物の残さ、庭塵芥、木材、紙、布やオムツなどを指す
(www.ieabioenergytask36.org/Publica- tions/2007-2009/
Introduction_Final.pdfを参照)
」。
─ 121 ─
用語集
吸収式冷凍機
空調あるいは冷凍システムの駆動のために、任意の
エネルギー源(太陽光、バイオマス、廃熱等)から熱
エネルギーを用いる冷却装置のことである。熱源は機
械式圧縮器の電力消費を置き換えることができる。吸
収式冷凍機は、従来の(蒸気圧縮機)冷房システムと
二つの点で異なる。まず冷却装置の熱吸収過程は、機
械的なものというより本来熱化学的なものである。次
に、 フ ロ ン と も 呼 ば れ る ク ロ ロ フ ル オ ロ カ ー ボ ン
(CFCs)やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFCs)
よりも水が冷却材として循環する。冷却装置は、一般
的には地域熱供給や廃棄物由来、熱電併給からの熱で
エネルギーを供給されており、地熱、太陽エネルギー、
あるいはバイオマス資源からの熱で運用することもで
きる。
バイオディーゼル
大豆、アブラナ(キャノーラ)、アブラヤシなどの油
料種子作物のほか、廃食用油や動物性油脂などその他
の 油 源 か ら 精 製 さ れ る 燃 料 の こ と で あ る。 バ イ オ
ディーゼルは、定置型の熱と電力用途のほか、車、ト
ラック、バス、およびその他車両において搭載される
ディーゼルエンジンに使用される。
バイオマスエネルギー
バイオマスエネルギーとは、バイオマスから生み出
されるエネルギーのことで、バイオマス熱、バイオマ
ス電力およびバイオ燃料などを含む。バイオマス熱は
固形バイオマス(例として乾燥薪)あるいはその他の
液体または気体のエネルギー体の燃焼から生じるもの
である。その熱は直接利用、もしくはバイオマス電力
を生成するタービンあるいはエンジンを駆動させる蒸
気を生み出すために利用される。あるいは、バイオメ
タン、埋立地ガス、または合成ガス(バイオマスの熱
ガス化から生成)のような気体エネルギーの担体は、ガ
スエンジンにエネルギーを供給するために使用でき
る。輸送用途のバイオ燃料は、時折バイオマスエネル
ギーという言葉の下に含まれることがある(バイオ燃
料の項を参照)。
バイオ燃料
バイオマスを原料とした液体そして気体燃料を幅広
く指す。バイオディーゼル、エタノール、バイオガス
を含むバイオ燃料は、車両エンジンの燃料や、熱電供
給のための定置型エンジン、そして家庭の暖房や調理
にも利用されている(たとえば、エタノールゲルなど)。
いまだ試験段階、あるいはデモンストレーション用、初
期の商用段階の技術ではあるが、持続的な生産が可能
な非食用のバイオマス原料から先進的なバイオ燃料が
作られている。例外として、水素処理された植物油
(HVO、油から酸素を取り除き、よりディーゼルに近い
ハイドロカーボン燃料を作り出すために水素が用いら
れている)はいくつかのプラントで商用的に生産され
ている。
バイオガス/バイオメタン
バイオガスは、メタンガスと二酸化炭素から成り立つ
混合ガスで、有機物の嫌気性発酵(酸素のない環境での
微生物群による分解)によって生成される。有機物およ
び/または廃棄物は発酵槽でバイオガスに変換される。
適切な原料として、農業残渣、動物排せつ物、食品産業
廃棄物、下水汚泥、バイオマスエネルギー転換目的作
物、そして一般廃棄物の有機成分が含まれている。未加
工のバイオガスは熱や電力を生み出すために燃焼させ
ることができる。また、バイオメタンは、バイオガスか
ら二酸化炭素、シロキサン、硫化水素などの不純物を取
り除いたものであり、内燃機関における腐食の恐れがな
く、天然ガスの代替品として使用できる。
バイオマス
バイオマスは、化石燃料と泥炭を除いた生物由来の
原料であり、エネルギーの化学的貯蔵(もとは太陽か
ら受け取ったもの)と広い範囲のエネルギー担体への
変換に利用できる。これらは液体バイオ燃料、バイオ
ガス、バイオメタン、熱分解油、固形バイオマスペレッ
トを含む多くの形態をとり得る。
バイオマスペレット
乾燥し細かく砕かれた廃材や農業残さなどのバイオ
マスを圧縮させたバイオマス固形燃料。バイオマスペ
レットを加熱することで生成された焙焼ペレットは、キ
ログラム当たりの高いエネルギー含量、ならびに優れた
研削性、耐水性、および保存性を有する。ペレットは一
般的に、直径約1cm、長さ3〜5cmの筒形の形状である。
ペレットは取り扱い、貯蔵、運送が容易であり、熱利用
や調理等に活用されるほか、発電やコージェネレーショ
ンシステム(熱電供給設備)でも利用される。
ブリケット
穀物のわらを含む固形バイオマス燃料から作られる
可燃性物質のブロックであり、木製ペレットの製造と
似た工程で圧縮される。直径は5〜10cm、長さは6〜
15cmであるため、ペレットよりも遥かに大きい。ブリ
ケットは自動的な処理が容易ではないが、燃料用丸太
の代替として使用することができる。
設備容量
熱生産設備あるいは発電所の定格容量とは、潜在的
に発生させることができる瞬間的な熱や電力の出力、
あるいはそのような一連のユニット(例として風力発
電ファームや太陽電池パネル一式など)における潜在
的な総出力を指す。導入済設備容量とは、(たとえば、
系統に電気を供給する、使用可能な熱を提供する、あ
るいはバイオ燃料を製造するなど)稼働中か停止中か
に関係なく建設された設備を指す。
設備稼働率
ある期間内(通常は1年間)の発電設備あるいは熱生
産設備の実際の出力と、その設備が同じ期間内に中断
すること無く運用された際に生成される理論上の出力
─ 122 ─
との比率のことである。 資本補助金
資産(例として太陽熱温水器)の初期投資コストの
一部をまかなう補助金のことである。これらには、例
として、購入者補助金、払い戻し、または公共団体、政
府機関、政策金融機関による一回限りの支払いが含ま
れる。
熱電供給設備(CHP)/ コージェネレーション設備
コージェネレーション施設は、化石燃料やバイオマ
ス燃料の燃焼、もしくは地熱、太陽熱を利用して熱供
給と発電を同時に行う設備。火力発電プロセスから排
出される「廃熱」を回収する施設を指すこともある。
集光型太陽熱発電(CSP)
太陽熱発電(STE)とも言われる。 鏡やレンズで太
陽熱エネルギー(放射エネルギー)を小さな面積に集
中させ、熱変換された入射光のエネルギーで熱機関(通
常蒸気タービンまたはスターリングエンジン)を駆動
して発電する仕組み。鏡面は様々な組み合わせで配置
されるが、すべて太陽光線をレシーバーへ送る。商用
のCSPシステムには、パラボリック・トラフ式、リニ
アフレネル式、タワー式、ディッシュ式の4種類がある。
前者の2つの技術は、線集システムで太陽エネルギーを
集束して400℃の熱を生み出すことができ、後者の2つ
は点集システムで800℃以上の熱を生成できる。これら
の高い熱量は、熱エネルギー貯蔵をシンプルで効率的、
かつ安価にさせる。貯蔵量の追加(熱を保存するため
に、最も一般的には溶解塩を使用)は、通常、送電網
への信頼性ある統合に必要な柔軟性をCSP発電施設に
もたらす。
変換効率
エネルギー変換装置からの有用なエネルギー出力と
入力の比率。たとえば、太陽電池モジュールの変換効
率は、発電量と太陽電池モジュールが受けた太陽エネ
ルギーの比率であり、仮に、100kWhの日射量を受け10
kWhの電力を生成すると、変換効率は10%である。
分散型発電
消費地に近く、分散し、一般的に小規模なシステム
からの発電。
エネルギー
物体が「仕事」をなし得る能力で、熱、光、運動、化
学、位置、電気など様々な形態となる。一次エネルギー
とは、石炭、天然ガス、再生可能資源などのような天
然資源に含まれるエネルギー(エネルギーの潜在量)を
指し、最終エネルギーとは、最終的に使用される施設
へ供給されるもの(コンセントへの電気など)を指す。
そこではエネルギーが使用できる形となり、照明や冷
蔵その他のサービスを提供できる一次エネルギーが使
用可能なエネルギーに変換される際、つねにエネル
ギー損失を伴う。
エネルギーサービス企業(ESCO)
システムの所有権を保持しつつ、長期的に自然エネ
ルギーシステムからエネルギーサービスを販売し、消
費者から定期的に集金、必要な管理サービスを提供す
るなど、様々なエネルギーソリューションを提供する
企業。ESCOは、電気事業者、協同組合、NGO、また
は民間企業であり、かつ一般的に消費者の周辺地、も
しくは現地にエネルギーシステムを設置している。ま
た、
(建築や工業など)システムのエネルギー効率改善
および、省エネルギーやエネルギー管理の手法につい
てアドバイスすることができる。
ENERGIEWENDE
ドイツ語であり、意味は“エネルギーシステムの転
換”。原子力や化石燃料から脱却し、エネルギー効率改
善と自然エネルギーによる持続可能な経済へ向けた移
行を指す。
エタノール(燃料)
バイオマス(主に、トウモロコシ、サトウキビ、ま
たは小穀物、穀草類)を原料として製造される液体燃
料で、通常のガソリンエンジン(定置型または車両用)
では、少量の割合でガソリンに代替できる。また、"フ
レックス燃料車"に用いられているような、若干改良さ
れたエンジンでは純度の高い状態で使用できる(大抵
は85%以上、ブラジルでは100%)。いくつかのエタノー
ル生産は、燃料向けというより、工業、化学、飲料向
けに利用されていることを記述しておく。
サービス料金モデル
電気サービスを消費者に提供するための取り決め。
民間企業が設備の所有権を保有し、メンテナンスや
サービス契約期間を通じて部品交換を提供する責任が
ある。サービス料金モデルは、リースやESCOモデルと
なる。
固定価格買取制度(Feed-in policy / FIT)
自然エネルギーを系統に接続して販売する際に、一
定期間における固定された保証価格を設定する制度。
通常、自然エネルギー発電事業者の送電線への接続が
保証される。全額の買取価格を定めるか、もしくは市
場や費用に基づいた価格に上乗せ額を定めるかは政策
によって異なる。他の方式も存在し、熱利用の固定価
格買取制度も開発されている。
財政的インセンティブ
所得税などを介して、または税の還付や補助金の形
で公共財政からの直接支払いにより関係者(個人、世
帯、企業)が財政への支払いを軽減できる経済的イン
センティブ。
発電
風力エネルギー、太陽エネルギー、天然ガス、バイ
オマスなど、一次エネルギー源からエネルギーを電気
や有用な熱へ変換するプロセス。
─ 123 ─
地熱
地殻から、通常、熱水や蒸気の形で放出される熱エ
ネルギー。火力発電所における発電のほか、建物、産
業や農業における様々な温度での暖房のために直接利
用される。
グリーンエネルギー購入
一般家庭、企業、政府、産業の顧客による、自然エ
ネルギー(通常は電気)の自主的な購入。方法として
は、エネルギー取引業者や電力会社から直接、また自
然エネルギー証書(RECs、または、グリーンタグ、発
電源証明とも呼ばれる)の取引を介した間接購入があ
る。多くの場合、政府の支援政策や規制がもたらす成
果を越えて、自然エネルギーの設備容量や発電の追加
需要を生み出すことができる。
グリッドパリティ
電力源(たとえば、太陽光発電)のエネルギー平準
化コストが、既存の電力小売価格と同等もしくは安価
になることを指す。
ヒートポンプ
電気を使用して、熱源から放熱器へ熱を移動させる
機器。冷凍サイクルを用いる。加熱モードでは、地面、
水、外気を熱源として、冷却モードでは放熱器として
利用する。ヒートポンプは、固有の効率や運転条件に
よっては、投入される電気エネルギーの数倍のエネル
ギーを取り出すことができる。
水力発電
高い位置から低い位置に流れる水を捉え、その位置
エネルギーを利用した発電方法。発電方式には、 河川
の流れ込み式のもの、大規模な貯水池を利用するもの、
そして低落差での流水式発電技術(最も開発が遅れて
いる)がある。 水力発電は、大規模なものから小規模
のものまである。通常、10MWを超えるものを大型水
力と呼ぶが、国によって定義は異なる。小規模設備は、
それぞれ「小」、「ミニ」、「マイクロ」、「ピコ」といっ
た接頭語が、規模に応じてつけられる。
投資
将来の有利な収益性を期待した価値のある商品の購
入。 この報告書において、自然エネルギーへの新たな
投資とは、技術研究開発、実用化、生産施設の建設や
事業開発(風力発電所の建設、太陽光発電システムの
購入と設置を含む)への投資を指す。投資総額は、新
規投資に加え、合併·買収(M&A)活動(企業や事業
の再建および売却)のことをいう。
投資税額控除
自然エネルギーへの投資に対する、全額もしくは部
分的な税額控除であり、プロジェクト開発者、企業、ビ
ル所有者などの収入や納税義務から控除される。
ジュール、キロジュール、メガジュール、ギガジュー
ル、テラジュール、ペタジュール、エクサジュール
ジュール(J)はエネルギーや仕事を表す単位で、1
ワットの電力を1秒間つくりだすのに必要なエネル
ギー量である。たとえば、リンゴひとつを1メートル持
ち上げるために必要なエネルギーは1ジュールであり、
安静にしている人から熱として放出されるエネルギー
は、毎秒約60Jである 。キロジュール(kJ)は、1000
(10の3乗)ジュールに等しいエネルギー単位。メガ
ジュール(MJ)は、100万(10の6乗)ジュールに等し
いエネルギー単位。石油1バレルの潜在的化学エネル
ギーおよび燃焼させたときに発生するエネルギー量
は、約6GJである。 1トン分の乾燥木材は、約20GJのエ
ネルギーを含む。
リースまたはリース後所有契約
リース会社(一般的には、仲介会社、協同組合、また
はNGO)が、独立型自然エネルギーシステムを購入し、
それらを顧客の用地内に設置する。顧客がリース期間に
わたってすべての支払いを終えるまで、リース会社が所
有権を保持し続けるサービス規約。リース期間は、大
抵、消費者金融の支払い期日よりも長いので、月額料金
を低く抑えることができ、より多くの階層の人々がシス
テムを手頃な価格で利用することができる。
均等化発電原価(LCOE)
事業の存続期間にわたって、現在の収益価値と費用
価値が等しいとしたプロジェクトのエネルギー出力原
価(たとえば、USD/kWhやUSD/GJ)。
義務化
対象となる集団(消費者、供給者、エネルギー生産
者)に最低限の、またしばしば後に増加するような自
然エネルギーに関する目標を要求する手法。目標値に
は、全体の供給量の一定割合を満たすことや、定めら
れた生産容量を持つことなどがある。コストは一般に
消費者が負担する。自然エネルギー割当基準(RPS)、
建築基準や自然エネルギーの熱生産、発電技術の導入
を求める義務化制度がある(しばしば、エネルギー効
率化のための投資と組み合わされる)。自然エネルギー
熱購入義務やバイオ燃料の混合規定などもある。
競争的営業許可モデル
民間企業またはNGOが競争過程を経て選択され、顧
客の要望に応じて、サービス地域におけるエネルギー
サービス提供について独占的な義務が与えられる方
式。この方式により、与えられた状況下で、最も適し
たコスト効率の良い技術を営業許可取得者に選択させ
ることとなる。
近代的バイオマスエネルギー
固形、液体、ガスなどの形態をもつバイオマス燃料
から成るエネルギーで、伝統的なバイオマスエネル
ギーとは異なり、暖房、発電、コジェネレーション
(CHP)、輸送燃料などの近代的利用に活用される。
─ 124 ─
ネットメータリング
発電設備を所持する消費者が、電力会社から供給さ
れる正味の電力量(総消費量-自家発電量)のみ料金
を支払う規制制度。売買単価のそれぞれ異なる買電
メーターと余剰電力の売電メーターの二つを設置する
場合は、「ネットビリング」とも言われる。
海洋エネルギー
波(表面を吹く風によって生成された)、潮汐、塩分
濃度、海水の温度差を利用した発電方式で、このレポー
トでは、波力と潮力のポテンシャルをふまえた発電技
術について記述している。前者は海面上の波浪を利用
し、波力エネルギー変換器を通して発電する。後者は、
風力でタービンが回る風力発電と同様に、潮汐によっ
て海水が移動する際の運動エネルギーがタービンをま
わして発電する仕組みになっている。潮せき止めダム
は感潮河口に設置されたダムで、潮の満ち引きを利用
して発電する。
仕事率
単位時間当たりに転換されるエネルギーの比率で、
ワット(ジュール/秒)と表される。
生産税額控除
特定施設の出資者や所有者に対する、その施設から
の自然エネルギー生産量(電力、熱、バイオ燃料生産)
に応じた、年次の税額控除。
競争入札制度
オークションまたは入札とも言う。公的機関が一定
の自然エネルギー供給や設備に対して、通常は価格に
基づいた入札をかける調達制度。売り手は、許容しう
る最低価格の提示を提示するが、通常、一般的な市場
価格を超える価格で応札される。
揚水発電
余剰電力を使用して、低位の貯水池から高位の貯水
池に水を汲みあげ、必要な時に流れを反転させて発電
する。揚水発電は発電というより蓄電手段であり、シ
ステム全体の効率は80 ~ 90%程度となる。
規制政策
対象の行為を誘導し制御するためのルール。自然エ
ネルギーにおいては、たとえば自然エネルギー利用割
当基準(RPS)、固定価格買取制度(FIT)、バイオ燃料
混合の義務化、および自然エネルギー熱利用の義務化
などの義務や割り当て。
自然エネルギー証書(REC)
自然エネルギーによる一単位(一般的には1MWhの
電力だが、熱でもありうる)分のエネルギー生産を証
明する証明書。RECに基づく制度では 、証書は蓄積す
ることにより、自然エネルギーの利用割合義務の目標
達成につながるほか、消費者と発電社間の取引を可能
にする。また、自主的なグリーン電力購入の手段とし
ても用いられる。
自然エネルギー目標
政府(地域、州、国または地域レベル)による、将
来のある時点までに達成を目指す自然エネルギーの公
約、計画、目標値。法制化によるか、規制機関や省庁
によって制定されるかは国によって異なる。
自然エネルギー割当基準(RPS)
自然エネルギー義務付け、クォータ制、固定枠制と
も呼ばれる。売電量や熱販売量、設備容量のうち、自
然エネルギーによる供給の最低限の割合を義務付け
る。これを義務付けられた電力事業者などは、その割
合を満たさなければならない。もし義務を達成できな
ければ、通常罰金が科される。
スマートエネルギーシステム
電気と電気以外(熱、ガス、燃料も含む)の双方に
ついて、相互に接続されたエネルギー技術とプロセス
の全体的な効率とバランスを最適化するためのシステ
ム。 刻々と変化する需要と供給の管理や、電気、熱、
燃料ベースの設備システムの監視を通じて実現され
る。 さらに、消費者用機器、家電製品、およびサービ
スの制御と最適化、分散型エネルギー(マクロとミク
ロの両規模)のよりよい統合、ならびに供給者と消費
者のコスト最小化により高められる。
スマートグリッド
情報通信技術を利用して、発電事業者、電力網管理
者、消費者や電力市場関係者の需要と供給能力を調節
する電力網。最大限効率的にシステム全体を運営する
こと、コストや環境負荷を最小限に抑え、信頼性、弾
力性、安定性を最大限にすることを目的としている。
太陽熱集熱器
太陽エネルギーを熱エネルギー(熱)へ変換する機
器。一般的に家庭用給湯に使用されるが、暖房、産業用
熱供給、熱冷却器の駆動の際にも使用される。世界中で
使用され、最も一般的な太陽熱集熱器は真空管型と平板
型で、水のみ、もしくは水とグリコールの混合液を熱媒
体として作動する。エネルギーが熱に変換され、熱媒体
を通じて運ばれる前に、太陽からの照射が(断熱用)ガ
ラスに当たることから、ガラス管式集熱器と言われる。
非ガラス管式集熱器は、プラスチック製の単純な集熱器
で低温利用に活用され、水泳プール用集熱器と呼ばれ
る。非ガラス管式またはガラス管式空気集熱器は、熱媒
体として水よりも空気を使用し、農業や工業目的で乾燥
した空気を予熱、もしくは燃焼させる。
ソーラーホームシステム(SHS)
小型太陽光発電モジュール、バッテリー、充電制御
器などから構成される独立型システム。小型電子機器
を動かし、照明やラジオなど、少量の電気を家庭に供
給できる。大抵の場合、農村地域や送電網に接続され
ていない遠隔地域に用いられる。
太陽光発電(PV)
太陽放射(光)を電気に変換する技術。太陽光発電
─ 125 ─
セルは半導体から構成され、太陽光を利用し原子から
電子を分離させて、電流を生み出す。モジュールは、単
体の太陽光発電セルを相互接続することで形成され
る。単結晶モジュールは、多結晶シリコンモジュール
よりも効率性に優れるが、比較的高価である。 薄膜太
陽光発電の素材は、既存の外壁にフィルムのように貼
付けたり、屋根瓦のような建築部材に結合させたりし
て使用できる。建物一体型太陽光発電(BIPV)として、従
来の建物の屋根や外壁の一部を取り替えることにより
設置できるものもある。
ルギーの消費または生産率であり、たとえば、電力100
ワット(100W)の電球を1時間使用すると100ワット時
(Wh)のエネルギーを消費することになる。これは、
0.1キロワット時(kWh)であり360キロジュール(kJ)
とも言える 。同じエネルギー量で25Wの電球を4時間
点灯させることができる。キロワット時(kWh)は1kW
の固定した電力を1時間使用するためのエネルギー消
費量を表す単位。
ソーラーピコシステム(SPS)
非常に小型の家庭用太陽光発電であり、ソーラーラ
ンプや情報通信技術(ICT)装置などを、1W ~ 10W
ほどの出力で稼働させる。大抵の場合その際の電圧は
12ボルトまでである。
太陽熱温水システム(SWH)
太陽熱集熱器、貯蔵タンク、水道管とその他の部材
から構成される装置。 太陽エネルギーを有用な熱エネ
ルギーに変換し、家庭用給湯、暖房、プロセス加熱な
どに使用する。有用なエネルギー需要の特性(飲料水、
給湯、空気乾燥など)と、必要とされる温度帯に応じ
て、適切な太陽熱集熱器が設置される。太陽熱温水シ
ステムには2種類あり、ポンプ式は、機械式ポンプによ
り集熱ループを通じて熱媒体液を循環させる(アク
ティブシステム)。一方、自然循環式は、自然対流に
よって起こる浮力を利用する(パッシブシステム)。
補助金
人為的に消費者がエネルギーに支払う価格を下げ
る、または生産コストを下げる政策。
伝統的バイオマス
農作物残さ、動物の排泄物、林産物、薪束などの固
形バイオマスで、これらは非効率的で通常は汚染の危
険がある暖炉やストーブ、炉などで燃焼される。とく
に、発展途上国の農村地域において、料理のための燃
料や暖房、そして小規模の農業や工業加工に用いられ
る(近代的バイオマスエネルギーとは対照的に)。
焙焼ペレット
固形燃料でペレットの形をしていることが多い。材
料となる木を低酸素環境の中200 ~ 300℃で焙焼して生
成される。高いエネルギー密度と粉砕性 、そして防水
性 など固体燃料として有用な性質を持つ燃料。
ワット、キロワット、メガワット、ギガワット、テラ
ワット毎時
ワットは電力の単位で、エネルギー変換や転送率を
あらわす。キロワットは1000(10の3乗)ワットに等し
い。メガワットは100万(10の6乗)ワットに等しい。ギ
ガワットは10億(10の9乗)ワットに等しい。テラワッ
トは1兆(10の12乗)ワットに等しい。メガワット電力
(MWe)は電力を表す単位で、メガワット熱(MWth)
は熱エネルギーを表す単位である。電力量とは、エネ
─ 126 ─
エネルギー単位と換算
単位
キロ
(k)
体積/容積
=
103
1立方メートル = 1000リットル
メガ
(M) =
6
10
1米ガロン
= 3.78リットル
ギガ
(G) =
109
1英ガロン
= 4.55リットル
テラ
(T)
=
10
ペタ
(P)
=
1015
エクサ
(E) =
1018
例:
12
1 TJ = 1,000 GJ = 1,000,000 MJ = 1,000,000,000 kJ = 1,000,000,000,000 J = 1012 J
1 J = 0.001 MJ = 0.000001 GJ = 0.000000001 TJ
エネルギー単位換算表
Toe
=
1 Mtoe =
1
0.024
0.948
0.278
41.868
1
39.683
11.630
1.055
0.025
1
0.293
3.600
0.086
3.412
1
例:
石油換算トン
41.9 PJ
1 MWh x 3.600 = 3.6 GJ
燃焼熱
(高位発熱量)
太陽熱利用システム
ガソリン1L
= 47.0 MJ/kg = 35.2 MJ/l (density 0.75 kg/l)
1百万m² = 0.7 GWth
エタノール1L
= 29.7 MJ/kg = 23.4 MJ/l (density 0.79 kg/l)
ディーゼル1L
= 45.0 MJ/kg = 37.3 MJ/l (density 0.83 kg/l)
バイオディーゼル1L = 40.0 MJ/kg = 35.2 MJ/l (density 0.88 kg/l)
太陽熱のデータは一般的に認められている計算方法に基づいて、
平方メートル
(㎡)
からギガワットサーマル
(GWth)
に換算されている。
注: 1)
これらの値は燃料と温度によって変化しうる。
2)
約1.5 リットルのエタノールは、
ガソリン1リットルと
同等と見なされる。
─ 127 ─
略語一覧
(英語参考用)
BIPV
BNEF
BOS
BRICS
CDM
CHP
CO2
CPV
CSP
DSM
ECOWAS
ECREEE
EEG
EMEC
EPA
ESCO
EU
EV
FIT
FUNAE
GACC
GEF
GFR
GHG
GHP
GSR
GW/GWh
GWth
Building-integrated solar photovoltaics
Bloomberg New Energy Finance
Balance of system
Brazil, Russia, India, China, and South Africa
Clean Development Mechanism
Combined heat and power
Carbon dioxide
Concentrating solar photovoltaic
Concentrating solar (thermal) power
Demand-side management
Economic Community of West African States
Centre for Renewable Energy and Energy Ef�iciency
German Renewable Energy Sources Act –
“Erneuerbare-Energien-Gesetz“
European Marine Energy Centre
U.S. Environmental Protection Agency
Energy service company
European Union (speci�ically the EU-27)
Electric vehicle
Feed-in tariff
Mozambican Energy Fund – “Fundo de Energia“
Global Alliance for Clean Cookstoves
Global Environment Facility
Global Futures Report
Greenhouse gas
Ground-source heat pump
Renewables Global Status Report
Gigawatt/gigawatt-hour
Gigawatt-thermal
IEA
IFC
IPCC
IRENA
kW/kWh
LED
LCOE
m2
MENA
MFI
MSW
mtoe
MW/MWh
MWth
NGO
NREAP
OECD
PPP
PTC
PV
RPS
SHS
SPS
SWH
TW/TWh
UNIDO
Wp
WTO
International Energy Agency
International Finance Corporation
Intergovernmental Panel on Climate Change
International Renewable Energy Agency
Kilowatt/kilowatt-hour
Light-emitting diode
Levelised Cost of Energy
Square metre
Middle East and North Africa
Micro�inance institution
Municipal solid waste
Million tonnes of oil equivalent
Megawatt/megawatt-hour
Megawatt-thermal
Non-governmental organisation
National Renewable Energy Action Plan
Organisation for Economic Co-operation
and Development
Public-private partnership
Production Tax Credit
Photovoltaics
Renewable portfolio standard
Solar home system (PV)
Solar pico system (PV)
Solar water heater/heating
Terawatt/terawatt-hour
United Nations Industrial Development Organization
Watt-peak (nominal power)
World Trade Organization
フォトクレジット
Page 9 CSP plant. Courtesy of BrightSource Energy
Page 25 Advanced gasi�ier heat and power plant.
Courtesy of Ralph Sims
Page 28 Palinpinon Geothermal Production Field.
© Energy Development Corporation
Page 32 Hydropower dam. Shutterstock
Page 33 Alstom’s 1MW tidal stream device at EMEC site,
Orkney, Scotland. © Alstom
Page 34 Rooftop solar PV. Courtesy of Emergent Energy
Page 36 Solar PV system, Shutterstock
Page 39 CSP Plant. Courtesy of Dii
Page 47 Offshore wind turbines. Courtesy of Vestas
Wind Systems A/S
Page 56 Rootop solar PV. Shutterstock
Page 57 Wind turbines. Courtesy of Vestas
Wind Systems A/S
Page 57 Rapeseed �ields with electrical pylons.
fotoalia
Page 63 Pylon and power lines. Shutterstock
Page 66 Electric vehicle at charging point.
Courtesy of Fraunhofer IFF
Page 67 Copenhagen, Denmark. fotoVoyager,
istockphoto
Page 68 Rooftop solar water heaters.
istockphoto
Page 70 Solar district heating system.
Courtesy of Ramboll
Page 78 Off-grid solar PV. Courtesy of Sandra Chavez
Page 80 Improved cookstove. Courtesy of Sandra Chavez
版権・コピーライト
Renewable Energy Policy Network
for the 21st Century
REN21
c/o UNEP
15 rue de Milan
75441 Paris, France
─ 128 ─
日本語版作成にあたって(Global Status Report 2013)
本報告書は21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク(REN21)により、世界の研究者の協力を得て作成
された「Renewables 2013 Global Status Report 」(主筆:ジャネット・L・サウィン、名誉主筆:エリック・マー
ティノー)を環境エネルギー政策研究所の責任で、日本語翻訳したものです。
REN21は2004年にボンで開催された自然エネルギー国際会議(以下RE)2004を契機として発足したネットワー
クです。初版のGlobal Status Report 2005は、RE2004のフォローアップ会議として2005年11月に開催された北京
自然エネルギー国際会議で発表され高い評価を受けました。自然エネルギーに関する草の根の視点からの包括的
な国際レポートが存在しなかったことから、その続編が待ち望まれ、2006年改訂版、2007年版、2009年改訂版、
2010年版、2011年版、2012年版、そして2013年版へと発展しています。
環境エネルギー政策研究所は、自然エネルギーが初めて国際交渉のメインテーマとして取り上げられたRE2004の
フォローアップに積極的に取り組んでおり、この報告書にも執筆者として貢献しています。また、当研究所所長
飯田哲也がREN21の運営委員を務め、2007年からは事務局運営にも携わっています。当研究所研究部長であるエ
リック・マーティノーも名誉主筆として本報告書作成に貢献しています。
REN21(英語):http://www.ren21.net/
Global Status Report2013(英語):http://www.ren21.net/REN21Activities/GlobalStatusReport.aspx
【特集】自然エネルギー世界白書 – Renewables Global Status Report:http://www.isep.or.jp/library/1959
本報告書の日本語版作成は、環境エネルギー政策研究所の会員、サポーターの皆様からのご支援によって可能に
なりました。また、翻訳にあたっては下記のインターン、ボランティアの皆様にご協力を頂きました。
この場を借りて、皆さまに厚くお礼申し上げます。
(五十音順)
石川陽香さん、猪又弘毅さん、長田裕太さん、勝倉良介さん、白畑春来さん、早出彩さん、寺田葉月さん、
野村浩貴さん、春増知さん、深石梨歩さん、辺見怜さん、松濵昭平さん
発行日:日本語訳2013年12月
発行所:認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
日本語版翻訳 :山下紀明、渡邊素子
日本語版編集 :山下紀明、渡邊素子
認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
〒164-0001 東京都中野区中野4-7-3
Tel: +81 (0) 3 5942-8937 Fax: +81 (0) 3 5942-8938
URL: http://www.isep.or.jp/
印刷:株式会社アールムーン
〒105-0004 東京都港区新橋3-3-13
Tel: +81 (0) 3 5532-8856 Fax: +81 (0) 3 5532-8857
URL: http://www.rmoon.jp
本報告書は独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の活動助成により作成されています。
ISBN 978-3-9815934-0-2
REN21
c /o UNEP
15, Rue de Milan
F-75441 Paris CEDEX 09
France
www.ren21.net