新日本列島大改造の実践に向けて 新日本列島大改造の実践に向けて

新日本列島大改造の実践に向けて
小山 清二 出版物ファイル
「新日本列島大改造の実践に向けて」
これは小生の30歳前半における通商産業省在職時代に遭遇して、周囲を始め国家国民により無視されて排斥され、実
に役人人生を棒に振ったほどの身命を賭した国家的プロジェクトに関する提案であり、後年、自費出版をして世に問うた
ものである。(439頁)
改訂題名 「オイル文明からマグマ文明への大転換に向けて」
副題
地球文明を救う火山灰・マグマによる国家プロジェクトへの提言
地球文明を救う火山灰・マグマによる国家プロジェクトへの提言
世界最大の未利用資源・火山灰の活用とマグマへの挑戦!
常温常圧で固化する内外装不要の省エネ高性能多機能新素材!
この新素材を国家の総力を結集した広範な普及展開により、国土開発、内需拡大、資源・エネルギー消費の大幅削減、鉄
鋼・樹脂・石材等の大幅代替化、各種産業廃棄物処理、ヘドロ処理、砂漠の緑化等に多大な効果を招来し、併せてマグマ
への挑戦が、国内外を起死回生する歴史的材料革命・産業革命に向けて、文明史大転換への突破口になるだろう!
提言の趣旨
世界最大の未利用資源の火山灰を活用した画期的な多機能新素材が登場した。
新素材は極めて高い強度、断熱、耐火、耐久、防水・防湿、意匠性などの高性能を有し内外装不要である。適切な骨材
や補強材の組み合わせで、従来のコンクリート建設材料や鉄鋼や樹脂・石材・木材等にも代替可能で広範な用途に及ぶも
のだ。火山灰は厄介な天然の廃棄物だが、新素材は常温常圧の無焼成で、極めて安価に固化製造が可能だ。骨材には火山
礫や殆どの産業廃棄物が適合し、高レベル放射性産業廃棄物の処理にも効果的だ。
国家の総力を結集した新素材の広範な応用・展開は、現下のコンクリートや鉄鋼、樹脂、木材等を巡る諸難題の有効解
決から、内需拡大、国土開発、枯渇化する建設骨材への対応、高騰・枯渇化する資源・エネルギーの消費の大幅削減、高
レベル放射性廃棄物を始め各種産業廃棄物処理、各種材料の大幅代替化、干拓・ヘドロ処理への対応、砂漠の緑化等に多
大な効果を招来し、国内外の経済の窮状を打開する歴史的材料革命、産業革命、省エネ・省資源革命となって、正にオイ
ル文明からマグマ文明への大転換となるだろう。
これは、原油消費の大幅削減や炭酸ガス排出削減を目指した京都議定書の目的達成に向けて、併せて、火山内部の構造
や火山爆発の原理に対する考察から、マグマ溜まり内部からのウラン等の各種金属資源の抽出により、地球文明の救済に
向けて、日本から発信する資源・エネルギー立国を目指した国家プロジェクトの実践への提言である。
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目次
序として
前編
火山灰利用新素材に基づく国家プロジェクトの実践
はじめに
第1章 画期的新素材の登場と背景
1 画期的新素材の登場と背景
2 新素材の火山灰原料の利用状況
新素材の火山灰原料の利用状況
3 世界最大の未利用資源の活用へ
4 今日のポゾランセメント利用
5 火山灰利用新素材の特徴
6 新素材技術の内容
第2章 新素材技術の広範に亘る普及効果
7 現下のコンクリートの諸難題を解決へ
8 公共工事と経済対策
9 新素材の住宅面における種々の波及効果
10 新素材の建設用部材としての利用
11 資源エネルギー問題の解決と展望
12 自然との調和を目指した環境造りへ
13 砂漠を中心とした農林緑化の推進
14 河川や湖沼の浄化とヘドロ処理へ
15 鉄、セメント、樹脂、石材等の大幅代替化
鉄、セメント、樹脂、石材等の大幅代替化
16 産業構造改革
17 各種産業廃棄物処理と放射性廃棄物処理の可能性
18 放射線遮蔽体への利用
19 流体燃料備蓄基地の利用
20 内需拡大に向けて
21 過疎地対策へ
22 鉄道赤字ローカル線問題ヘの対応
23 地球環境問題の解決
第3章 新素材技術普及に向けた将来展望
24 新日本列島大改造論の確立と実践に向けて
25 行財政再建への切り札に
26 残された研究開発の課題
27 新素材の普及における様々な障害
第4章 国家の総力を結集した推進体制の確立
国家の総力を結集した推進体制の確立
28 国家的プロジェクトへ(火山灰利用総合推進対策本部の設置)
29 火山灰利用総合推進開発機構の設立へ
30 政府主導による関係省庁の役割と連携
31 内閣府による特許等の国有管理化へ
32 旧国土庁による火山灰等採取の推進
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33 旧国土庁、旧環境庁、林野庁の統合
第5章 新たな文明史大転換に向けて
34 旧科学技術庁によるマグマ等の解明
35 資源エネルギー立国への展望
36 マグマ探索への請願書
37 日本人の意識改革の起爆剤に
38 文明史の大転換へ(オイル文明からマグマ文明へ)
文明史の大転換へ(オイル文明からマグマ文明へ)
39 世界の救世主的技術革新に
終わりに
後編
火山灰及び火山に関する考察
はじめに
第1章 火山灰の特徴と作用効果
1 火山灰の特徴
2 火山灰は風化して天然の肥料となる
3 火山灰風化物の様々な利用
4 火山灰の意外な作用効果
第2章 国内外の火山地帯と火山灰分布地域
5 世界の火山地帯
6 世界の火山灰分布地域
7 日本の火山地帯
8 日本の火山灰分布地域
9 砂漠こそは火山灰の宝庫
砂漠こそは火山灰の宝庫
第3章 火山による災害と恩恵
10 火山による災害
11 火山による恩恵
12 異常気象の真因は核実験による放射性塵
第4章 失われた歴史上の記憶を訪ねて
13 古代ローマ帝国の火山灰利用
14 古代ピラミッドへの疑問
15 太古巨石建造物は人工火山灰コンクリート
16 巨石建造には魔術、魔法、魔力が関与した
第5章 現代地球物理学の大改訂へ
17 通説のプレートテクトニクス説の限界と破綻
18 地殻内部における「排水殻」の存在と活動
19 火山噴火活動の説明に見る通説の限界
火山噴火活動の説明に見る通説の限界
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第6章 火山に関する通説を越えた大胆な仮説を提示
20 火山内部から放射線・素粒子が地上に放射
21 マグマ溜まり内部は天然の原子炉である(火山爆発の原理は原子核分裂反応)
22 マグマ溜まりよりウラン等の各種金属資源抽出へ
23 火山爆発の瞬間に放射能は消滅
24 地震発生も火山爆発と同じ原理
25 東海沖地震は来ないだろう
第7章 地球文明の過去から未来を展望して
26 一九〇八年ツングースカ核爆発は、地核内部からの原子核融合反応
27 過去に地球に襲来した天変地変も人類の想念と呼応したもの
過去に地球に襲来した天変地変も人類の想念と呼応したもの
28 偉大な仏身顛化の聖心先生からの御示唆が大いに参考
終わりに
後書き
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序として
この本は、偶然に出会った画期的且つ歴史的な某技術を、広く国民各位に訴え紹介していくものである。これは、実に
昨今の原油や鉄鉱石などの価格高騰・枯渇化、そして地球温暖化対策の京都議定書における炭酸ガス排出削減の目標達成
の困難さを背景にして、我国経済の命運を決する資源・エネルギー消費の大幅削減を可能にするものであり、大々的な国
家プロジェクトとして実施する必要性や緊急性、重要性を痛感するからだ。
某画期的技術の発明者の長年に亘る多大なる努力にも関わらず、周囲の多大な誤解と偏見等による疑心暗鬼、そして非
協力的な利欲と打算、狡猾さに阻まれて、膠着状態に陥って、なかなか普及活動は進展を見ない状況であった。そんな中
で、発明者は、不運・無念にも世に普及する直前に急死されたようだ。今や、特許権利も相続され、また実施権も長年の
友人である協力者に継承され、辛うじて、消滅の危機を免れたものだ。それでも、下手すれば、画期的な技術も、永久に
歴史の闇に隠蔽・忘却・封印されて、我国のみならず、全世界にとって大いなる歴史的損失に至る危機を痛感するからこ
そ、当方が現在の立場や境遇を越えて身命を賭して提起するものだ。
それに、某画期的技術の普及展開を、一個人、一企業、一業界の個別努力に委ねないで、敢えて国家プロジェクトとし
て国家の総力を結集して取り組む必要性を強く訴えるのは、厳しい原油情勢や経済環境を反映して、経済の活性化に向け
て、今こそ、大幅な石油消費量の削減、内需拡大、地域振興などを推進し、更には、新たな材料革命、産業革命を、国家
的に強力に且つ早急に推進していくことが必須であるからだ。即ち、省エネ・省資源は今や個人や企業、業界などの個別
問題ではなく、国家社会全体の問題であるからだ。そして新素材技術の成果を大々的に普及・実践していくに際しては、
様々な法制度や流通網の整備が必須であり、どうしてもあらゆる分野の研究者、有識者の方々のご協力とご理解の下に、
総力を結集して成し遂げていくことが大切であると痛感するからだ。
ところで、この画期的技術は、地球上に無尽蔵に賦存し安価に入手可能な世界最大の未利用資源である「火山灰」を活
用し、極めて高い強度、断熱、耐火、耐久、防水・防湿・吸湿、殺菌・防カビ、耐酸・耐アルカリ性に加え、意匠性等を
も有し内外装不要の画期的な多機能新素材に関するものである。耐火性では、二〇〇〇℃のバーナー照射でも表面が黒く
ガラス化するだけで爆裂も強度劣化もヒビ割れもない、実に優秀な特性を有するものだ。新素材は、適切な骨材や補強材
との組み合わせで、従来のコンクリート、レンガ、タイル等の建設材料を始め、船舶、車輌、タンク、管等の鉄鋼・機械
や樹脂・石材・木材等にも代替可能で、実に広範な用途への応用効果を有するものだ。
火山灰は、微細で複雑な結晶で吸水性に富み、脆く取り扱い困難で厄介な天然の廃棄物だが、新素材は、従来の砂利や
礫等の骨材表面を、独自の安価な分散剤等を混和した微細な火山灰モルタルで被覆して堅固な被膜体を形成し、常温常圧
の無焼成で安価に固化製造が可能だ。その独自の混練方法や性状特性から言っても、骨材には火山礫や殆どの産業廃棄物
を封印・密閉して適合し、高レベル放射性産業廃棄物の処理にも効果的だと思われる。現下のコンクリートや鉄鋼、樹脂、
木材等を巡る諸難題の有効解決から、内需拡大、国土開発、枯渇化する砂利、砂当の建設骨材への対応、高騰・枯渇化す
る資源・エネルギーの大幅な消費削減、高レベル放射性廃棄物を始め各種産業廃棄物処理、各種材料の代替化、河川・湖
沼の浄化、砂漠の緑化等に多大で広範な波及効果を招来し、国内外経済を起死回生する歴史的材料革命・産業革命になっ
て、実に文明史の大転換となるだろう。
様々な法制度や流通網等の見直しや整備に向けて、その規模や影響、波及効果から言っても一個人や一企業の努力に委
せられるものではなく、国家が指導力を発揮して、特許権やノウハウなどを適切な対価で買収し一元管理して、国家社会
や世界経済に役立てることだ。これには強力な指導力や確固とした国益観を有した政治家の登場、または大企業や関連業
界の主導乃至協力と併せて、実に国家の総力を結集し、公明正大な国益優先の「新日本列島大改造の実践」の国家プロジ
ェクトとして推進することが必要だ。今や我国や世界経済の難局を打開するものは、この画期的火山灰技術の広範な普及
展開しかないであろうと確信するものだ。
なお、この提言は、国家社会のために、画期的新素材技術の広範な普及を図ることを目指して、国家プロジェクトとし
て強力に推進する必要性を指摘するのみならず、後編では、今回の火山灰利用新素材技術から、大きくヒントを得て、火
山灰や火山に対する広範な考察から、様々な分析や示唆を大胆に提示していくものである。即ち、世界の常識乃至通説を
大きく覆すものとして、世界最大の未利用資源である火山灰が、砂漠にこそ宝庫として存在し、砂漠の砂こそが火山灰で
あることを指摘し、古代エジプトにおけるピラミッド建造の謎にも迫って、何とピラミッド建造の材料こそ火山灰であり、
そして新素材技術と同様の混練方法になる人工の火山灰コンクリートの建設手段を指摘するものである。
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更には、火山灰という原料を生産した火山深部のマグマ溜まりの内部にもメスを当てて、大胆な仮説を提唱していくも
のである。即ち、マグマ溜まり内部は天然の原子炉であり、火山爆発は地震発生とともに、爆発瞬間に別の核種に転換す
るウラン等の放射性物質による原子核分裂反応であるという仮説の下に、当該マグマ溜まりからのウラン等の放射性物質
を始め、各種金属資源の抽出にまで言及して、オイル文明からマグマ文明への文明史大転換に向けて、資源・エネルギー
立国の可能性を示唆するものである。
実に、新素材に基づく国家プロジェクトの推進だけでも壮大なものであるが、それを更に大きく越えて、地球上に最後
に残された砂漠に焦点を当てた開発にも道を切り開き、何と砂漠の砂は岩石の風化した砂と異なり、微細な火山灰に他な
らず、そして、古代文明のピラミッドは、砂漠の砂である火山灰を人工で固めたものであり、古代の巨石建造物の建造手
段の核心に迫り、更に、数千年に一人と思われる聖心先生が撮影した未知の謎の写真、恐らく、地球ニュートリノの光線
群の写真の提示とともに、火山爆発の原理に至る地球物理学の世界にまで踏み込んでいくものである。正に、現在の数々
の常識や通説を大きく変革するべく、建築、土木から環境、考古学、そして地球物理学などの学問研究分野の常識を大き
く覆して、その根幹を揺るがすものであろうと確信するものだ。但し、正当で真摯な理解と評価、そして協力と実践があ
ってのものであるのは当然である。
従って、一見すれば専門家向きの堅い内容に見えるかも知れないが、難しいところは省略して、適当に拾い読みしても、
砂漠やピラミッドや火山・火山灰などにおいては、これまでの通説や常識を大きく転換する意味でも、多少の関心や好奇
心、興味を感じられるのではないかと期待するものだ。それにこの提言は、国家的な政策の提言という形式を取ってはい
るものの、最終的には国民全体の利益に関係してくるもの、それ故に、広く国民全体が大いに関心を抱いていく意義と価
値があるものと確信するもので、敢えて、広く国民各位に訴えていこうとする所以でもある。
最後にこの著作は、画期的な火山灰新素材技術の発明者の岩瀬嘉市氏のアイデアと、それから更に大きく発展させて、
仏身顛化を達成された当方の恩師の聖心先生の神聖で崇高なご指摘を元に、当方独自の好奇心と創造力と洞察性を加味し
て完成したものである。当方の人生において、偶然に巡り会ったお二人に不思議な機縁を痛感し心からの感謝の念を抱く
ものである。
二〇〇五年一一月
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著者
前編
火山灰利用新素材に基づく国家プロジェクトの実践
はじめに
日本はバブル経済崩壊後、随分と長い間、財政再建か景気対策かで議論が大きく分かれて迷走してきたが、既に財政破
綻が急迫化し、景気対策よりも財政再建施策が優先する空気が強い中では、大して関心を呼ぶこともなく、既に時宜を逸
した感もないではないが、財政再建と景気振興との両者を共に達成していく一つの解決策を提示するものである。特に昨
今の原油価格の高騰と原油資源の枯渇の傾向に翻弄されつつある厳しい経済環境の中では、ある意味では、今回、提言す
るには、誠に時宜を得たものではないかとも思われる。それどころか、最終的チャンスでもあろうかと思われ、これを逃
せば、国民にとっても、また世界全体にとっても多大なる損失と後悔に至るであろうと思われる。
さて今や、歴史的にも大きな曲がり角に来たようである。産業技術にしても、大きな行き詰まりを見せている状況かと
憂慮されるものだ。先に、経済の牽引力として大きく喧伝されたIT技術であるが、ITもそれなりの効果もあったもの
であろうが、既得権を破壊させたり、また、情報インフラの整備と言った面から見ればそれなりの経済的効果や改革への
プラスの面もあると言えるだろう。然るに、大規模な雇用を拡大したりしていくような効果には、既にかなりの疑念も一
部で出されている。政府のIT革命推進者である某学者の見解では、空間や時間や距離を大幅に短縮していく中抜き現象
により、失業者を大量に生み出すことは間違いないが、その分の雇用を僅かに上回るのではないかと思っていると述べて
いたが、極めて甘い希望的観測ではないかと思われる。
米国でも景気の向上にITが貢献した面は世間で指摘されているほど大きくはないという指摘もある。ITバブルが崩
壊した現在、今後とも、ITもそれだけで景気の拡大に大きく貢献できるかの疑念や錯覚があるが、経済界の首脳からは、
ITに代わる新たな技術革命が登場してくる必要があるだろうと期待されているようだ。やはり、経済界でもIT革命が
現在の低迷する経済を救済する牽引役としては極めて不十分であることを実感しているのだろう。
今や、日本経済も中国経済の急成長に助けられて、景気も回復軌道に乗りつつあるとは言え、高騰し枯渇化する資源・
エネルギー情勢を前に、石油ピーク説も登場し、必ずしも将来的に楽観視できる環境ではない。既に、米国某諜報機関の
報告では、原油価格の高騰は二〇三〇年まで継続し、最終的には一バーレル当たり、一〇〇ドルにまで達する可能性を指
摘しているようだ。それに、中国やブラジル、インドなどの経済大躍進の中で、資本主義経済の活性化といった側面に加
えて、資源・エネルギーの壮絶な争奪が展開されていく傾向も現れており、近未来の世界経済は、やはり、原油を中心と
して波乱含みで展開していくものであろうと予測できる。また二〇〇五年八月末及び九月下旬の米国南部の油田地帯・石
油精製地帯を襲った巨大ハリケーンによる被害も、原油情勢に暗い影を落としているようだ。
また、某有識者あたりからは、今や資本主義経済全体の危機に直面しており、何と二〇〇年に一度の危機到来であると
か、また別の有識者は五〇〇年に一度の危機だとか指摘されている。思うに、今時の危機は、二〇〇年に一度であろうが、
五〇〇年に一度の歴史的なものであろうが、何れの見解も正解であろうと思われる。即ち、二〇〇年前の英国で起こった
産業革命以来の、実に画期的な技術革新が早急に求められていると言うことであり、また五〇〇年前の西洋列強の重商主
義政策が始まって以来の新たなフロンティアが必要だと言うことであろう。それに現在、国際的な環境問題への取り組み
に関して、地球温暖化防止に向けた京都議定書の目的達成に向けても、某外国の研究者からは、最早、新たな技術革新、
産業革命によってしか、炭酸ガス排出削減は不可能だとも指摘されているようだ。
ここに紹介するものは、地球に残された無尽蔵の火山灰という未利用資源を用いるもので、一発明家による画期的な新
素材の技術に基づいた国家的プロジェクトへの政策提言である。この新素材技術は、実に安価で、耐久性や強度、断熱性、
耐熱性、耐酸性等の耐薬品性に富んだ多くの高性能をもたらす画期的なものであり、この登場によって、国家社会の膠着
した現状に大きな衝撃と打開、発展をもたらすものとなるだろう。この新素材技術に対しては、現状は、専門家が余りの
先入観や懐疑心により、無視しているものであり、そのうち、外国にごっそりと技術が持って行かれ、国民的後悔がやっ
てくるのではないかと懸念するものだ。発明者や関係者は、単なる建築部材のレベルでしか認識していないようだが、当
方は、これを大きく構想を膨らませて発展させ、実に国家的な規模で推進していく「新日本列島大改造の実践に向けて」
の一大国家的プロジェクトとして提示するものである。
当方が提唱するものは、新素材技術の広範なる普及展開を、国家的レベルで強力に推進していくことにより、日本のみ
ならず、全世界の原油価格の高騰や、温暖化対策等での窮状を省資源・省エネ施策を展開して救済するものとなろうと確
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信するものだ。即ち、景気拡大、雇用の増加、産業構造改革等の広範な面に亘って、更には、コンクリートの品質向上の
みならず、鉄や樹脂製品、石材や木材の代替化、また独自の混練技術や火山灰特性を広範に活用していけば、放射性廃棄
物を始めとする産業廃棄物の処理、湖沼の浄化など、実に国家社会に多大なる貢献をし得るものとなるであろうと言うも
のだ。
今や、膠着状態に陥った経済を立て直すべく、産業界や多くの有識者からも、新たな産業革命が必要だとの声も挙がっ
て来ている中で、日本の現状を救済していくものは、最早ITではなく、ここで紹介する画期的な技術こそが、技術革新、
材料革命にふさわしいものであり、充分に国家社会の要請や期待に応えることができるものと確信するものである。そし
て、この提言に基づいて、新素材の早急で広範な普及を実践するしか、混迷する経済環境を打開する方策がないと確信す
るものである。
ところで、この提言が単なる経済の活性化に留まるのではなく、社会全体に亘っての改革と連動させねば、逆に混乱と
無駄が蓄積されていくだろう。画期的な計画を提唱することによって、邪悪な連中に適当に摘み食いをされ、利権利得の
対象とされては、真の改革には極めて有害となることも確かである。正しい心での技術革新であり、旧来の意識の変革に
役立たせていかねばならない。それ故に、表面化することに関しても、何も焦る必要はないと考えている。むしろ、多大
なる後悔でもって大きな損失を招来することになった方が、国民意識の変革、つまりは邪悪で猜疑な想念の一掃・廃絶の
面からも好ましいものと考える。
それでも大きく後悔するときは、生死をかけて熾烈で壮絶な国際競争力を模索し、また、日々の生活を賭けて必死に生
きている経済界自身であろう。死活的生活感から大きく意識的に離れた官僚や政治家の方々、更にはマスコミや学者の
方々には、こうした後悔は何も生じないだろう。換言すれば、国家社会を真剣に志向しつつあるのは、むしろ経済界では
無かろうかと思われる。即ち、日本の改革の中核的勢力となるのは正に、国際競争力に晒されている経済界であろうと思
われる。
それでも、画期的な技術の採用に際しては、現在活用している技術が大きく破綻していかない限り、また新規技術を思
い切って採用するメリットに気が付かない限り、なかなか現在の製造設備を廃棄してまで採用していかないのが常識であ
る。然るに、バブル崩壊から既に一五年経過し、さほどの設備更新も成されていなく、技術革新も停滞しつつある産業分
野も多いのが現状だ。それに最近の原油や鉄鉱石などの素材の高騰が継続していけば、今回の画期的新素材普及に向けて
は、強力な神風・追い風・天運となるのは必至であり、大いに期待できるというものだ。
しかし、景気が今一度回復してくると、喉元過ぎて熱さを忘れる例えのように、今回提示する技術も世に出ることなく
歴史の中に埋没していくことになるであろう。恐らく、今後とも景気が大きく回復することなどは有り得ないと思われる
が、今回の提言を無視するのも、これもまた国民自身の運命であり、国民全体が自業自得で選択していくものであり、詮
方ないものであろう。
現在の日本の窮状を救う解決策は、正にここに提言するもの以外には存在しないものと断言できるが、往々にして猜疑
心が旺盛な日本人よりも、好奇心が旺盛な外国の方が、先に気が付き出すことになるだろうと思われる。これも日本の近
視眼的な有識者や、単なる利益追求に奔走している経済界自身に、真の愛国・憂国・民族的な自覚がなければ、むしろ、
外資に支配された経済界が、日本の再生に協力していくことになるだろう。だが、万一そう言う状態に陥っても、今とな
っては致し方ないだろう。要は、誰かが気が付いて関心を持ち、実行すれば、世界人類、地球人類にとってはそれでよい
のである。そして日本人自身が、総懺悔の意識変革に至ればそれで良いのであろう。何故なら、提言の真の狙いは、日本
の救済であるのみならず、旧弊や悪弊の破壊であり、邪悪で猜疑な想念と精神や心の一掃、廃絶でもあるからだ。
正に今、後悔と覚醒、崩壊と再生の国民意識の変革に向けた大転換点に直面しつつある時宜を得た状況に差し掛かって
きたと確信するものだ。そして、小さなところから実に大きく発展していくことになるものと思われ、今回の当方の提言
は、世間から無視され抹殺されるか、多大な評価を受けて後世の歴史的語り草にもなっていくのか、正に天下分け目の関
ヶ原であり、日本の将来の明暗を決する歴史的選択の岐路に来たと確信するものである。あたかも、世界的な火山の大噴
火が、大量の火山灰を噴出し、全世界、地球に降り注ぎ、気象などを通じて多大な影響を及ぼすことと酷似した現象とな
るであろう。
恐らく、現在の出る杭を打ての国民性では、この提言を前にしても、殆どの政治家、官僚、経済人、学者、そして専門
家諸氏は、無関心、無感動、無気力で傍観者的に対処することであろう。即ち「無知蒙昧」であると言うことであろう。
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今や、日本人の大多数がこうした「無知蒙昧」であり、無関心であることが多いと言えよう。その危機感の喪失現象が、
広く国民全体に蔓延していると言えるであろう。どうしようもなくなるまで腰を上げないのが日本の現実の姿である。し
かし、今時ばかりは、山積した複雑困難な諸問題を前にしては、活力を著しく喪失しつつある萎えた国民性の下には、余
程の神風が吹かない限り、簡単には立ち上がれないであろう。
そうした国民全体の意識が、景気の悪化等により、一網打尽に地獄の底に突き落とされて、根本的に大変革する好機で
あるとも言えるのであり、いたずらに焦ったりして性急に表面化したり、売名的且つ利欲的行動に走る必要性も考えては
いない。ゆっくりと徳川家康流に、「国民が鳴くまで何時までも待とう」という心境である。最大の目的はあくまでも国
民意識の変革だからである。これを突破口にして諸々の改革を一気に推進していく起爆剤になればと期待するものであ
る。以下、本提言の核心に入っていくことにしよう。
第1章 画期的新素材の登場と背景
1 画期的新素材の登場
我国の建材の歴史は、木材のような伝統的な建材と、明治以後に導入され開発された鉄筋コンクリートや鉄骨構造のよ
うな西欧起源の建築材料とに分けられる。しかし、住宅建築を構成している構造躯体には、鉄骨軸組、木造軸組、木質パ
ネル、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート、煉瓦組石造等がある。大別すると木、砂利、砂、セメント、鉄、レン
ガであるが、これらは、海外依存率の高いもの、供給が先行き不安なもの、製造コストがエネルギー面から圧迫を受けて
いるもの等が比較的多いと思われる。
戦後、高度経済成長の段階で、川砂利、川砂は枯渇し、山砕石、山砂などの骨材供給が急増する需要に追いつかず、骨
材についても需要地に近いところはほとんど掘り尽くされ、砕石、人工骨材、廃棄物の再利用を図り、細骨材においては、
川砂から山砂へと、海砂から人工細骨材へと、一部では輸入もされて来たが、出来上がったコンクリートは品質も悪く、
耐久性に乏しく、コンクリートへの神話が崩壊の危機に瀕している。しかし、川砂利、川砂の枯渇、海砂による塩害、人
工軽量骨材の高騰等による骨材供給の危機が叫ばれている一方、打設工法の多様化と混和剤が急速に発展している現在、
我国に豊富にある火山灰の活用を再検討することは大いに意義のあることと思われる。
これから表面化しつつある画期的新素材とは、天然火山灰を使ったコンクリートの一種である。現在のコンクリートは、
セメントに水や砂、砂利を混練させて、適宜、分散剤等の混和剤を混ぜて練るものであるが、新素材は、特殊な火山灰モ
ルタルで、火山礫などの骨材の表面を堅固緻密な被膜体で覆って、堅牢なコンクリート体を形成するものである。即ち、
火山噴出物である火山灰を主体とし、これにガラスの原料精選の過程で大量に発生する極めて微細なガラス質成分のキラ
等の混和材を混入させて火山灰モルタルを形成し、その後、火山礫等の様々な骨材を混練させて、スランプ値がほぼ〇で
凝固させて、コンクリートを形成するものである(なお、スランプ値とは、モルタルの軟粘性を示す指標である。スラン
プ値が〇とは、殆ど崩壊・流動化しない固練りのものである。)
その超微細なキラは、従来は取り扱いに困って廃棄物として捨てていたものである。それも環境問題から簡単には廃棄
できなくなりつつあるようだ。ところが、こうした混練技術によって、微細なキラの有用性が改めて見直された次第であ
る。超微粒子のキラを用いた新素材は、骨材等の外側に、骨材内部に多くの気泡を残存させて、非常に堅固な被膜体を形
成し、強度や断熱性や、防水性、耐火性、耐酸性、耐アルカリ性、殺菌性、滅菌性等に優れた性質を発揮し、実に高性能
で多機能性を有するものである。
現在、火山灰を用いた建材等も出回っているが、いずれも強度は構造材としては不十分で、精々仕上げ材止まりであり、
製造においても加熱や焼結等の多量の燃料を費消するものである。新素材は強度は凝固後にも次第に向上していくのであ
るが、研究当初に比べて、最近では、単位面積当たり、六〇〇、七〇〇キロは出るようだ。実に驚異的なものである。そ
れに火山灰の特性上、強酸や強アルカリに対しても抜群の抵抗性を有するものである。
耐火性にあっても二〇〇〇℃のバーナーを当てても表面が黒くガラス化するだけで裏面には何も影響が無く、全体の強
度低下もない。それに防水性能も極めて高い。火山灰という性質上、断熱性にも富み、湿気防止に効果的で殺菌作用、防
虫性能も良く、それに火山灰が極めて微細な形状乃至特異な性質を有しているので、様々な表面形状を形成することも可
能であり、レリーフ模様が自由に実現できるものである。更に適当な顔料を混入することによって、様々に着色されたカ
ラフルなレリーフ模様や彫刻模様も可能であろう。
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火山灰を用いた新素材は、その性能からすると、正に鉄と人造大理石であるテラゾーとの両者の性質を併用したものと
もいえ、新しい名称としては、実に、「銑テラ」が相応しいと言えるだろう。「銑テラ」とは、当方の恩師の聖心先生が
命名されたもので、銑鉄とテラゾーの合成語に他ならない。この火山灰コンクリートの各種性能が優れていると言うこと
は、現在の建造物に見られるような防水材や断熱材、表面仕上げ材等を全く不要にすることも可能である。セメントも場
合によっては使用することもなく、廃材同様な火山灰と安価な混練材等の混入で火山灰モルタルができ、その後に投入す
る骨材は、廃棄物でも何でも良いのであり、あらゆるものを堅固に固めてしまい無害化し得るのである。
勿論、セメントも混入できるが、単なる増量材程度の効果しかないだろう。製造も常温・常圧で固化し得るので化石燃
料の消費もなく安価に生産可能である。いわば無焼成セラミックとも言えるものである。焼かないのにセラミックという
のもおかしいが、堅固にセラミック同様に凝固し得て、表面もセラミックと同様の平滑なものをセラミックと言えば、正
にセラミックそのものである。
火山灰それ自身が効果的なのであって、それも生の火山灰(生シラス)が有効であって、更に付言すれば、天然に堆積
している火山灰が有効である。焼成加工したシラスバルーンでは、内部に気泡が残存して断熱性が確保されるとは言うも
のの、また吸湿性もなくなって取り扱いが簡単であるとは言うものの、効果は全く異なるというものである。また同じ火
山噴出物であっても、火山礫では有効な効果は期待できないようだ。つまり、火山礫を微細に粉砕して火山砂や火山灰に
酷似した材料にしても、当初からの火山灰と同様な性質が得られないようだ。当初の結晶構造が既に相異するからであろ
う。どうしてこれまで普及できないかと言えば、周囲の先入感による無理解や偏見、固定観念、そして様々な法制度が障
壁、阻害要因となっていると言えるであろうか。そのうち外国が注目して日本は大きく取り残され、大いなる後悔が待っ
ているのではないかとさえ思われる。
2 新素材の火山灰原料の利用状況
新素材に利用される火山灰や火山礫は、先進工業国では最大の火山国である日本には、種類も豊富で質も良く、賦存量
は無限にある。ところが、実際に採取使用されている量は、最盛期の一九六五年当時は年間約二〇〇万立方メートルで、
現在では約一五〇万立方メートルと下回っているようである。そして、その産出地域も、需要の集中する都市に近接する
ところや、港頭に近くて海上輸送の容易なところに限られている。
これらの火山灰・火山礫は、全生産量の過半数が軽量コンクリートブロック用として使用され、次いで土木工事用が約
四分の一で、その中のかなりの部分が、多孔質性を利用したグラウンドの排水敷砂利等であり、コンクリート用骨材とし
ては十数%に過ぎない。残りは、研摩材、混入材、路盤材、埋立工事用材として使用されている。
火山灰・火山礫が天然軽量骨材として多用されて来なかった最大の原因は、一般に火山礫は粗悪な代用であるという先
入観を持つていたこと、また火山礫採取業者や材料研究者が、国家の有望な天然資源であるという認識もなく、これを資
源化するだけの情熱的な政策もなかったこと、更に火山灰・火山礫は、その独特の性状から品質や強度にバラツキが多く
て扱いも困難で、その利用技術も極めて貧弱であり、また高度の品質に加工したものは極めて高価格についたこと等であ
った。なお、火山灰・火山礫の利用の用途は、諸外国でも殆ど同様である。
また生産量については、火山礫のような余り重要視されていない一次産品の生産統計は殆どないが、可成り古い一九六
三年の資料では、特に活火山もない旧西ドイツが六四〇万立方メートルと世界最大であり、その上、生産量の四〇%内外
が建築用骨材向けである。次いでイタリアは日本と並ぶ火山国であり、生産量は三七〇万立方メートルと日本の二倍近く
もあり、建築用骨材向けの比率は七〇%内外と圧倒的に高い。更にアメリカは二四〇万m3を生産し、建築用骨材向けは
三〇%内外である。日本は二〇〇万立方メートルの生産に対して、一〇%強を建築用骨材に利用しているに過ぎない。
このように、新素材に用いられる火山灰は、極めて吸水性が強くて、また性状も不安定で扱いに困り果てているのが現
在の利用実状と言える。現在のシラス有効利用は殆どゼロに等しいと言っても決して過言ではないようだ。使用しても、
多くの場合は、火山灰を焼成してバルーン化し、単に気泡状態を有するシラスバルーンとして、コンクリートの骨材とし
て断熱建材等に利用している。
しかし、それでは十分な強度が出ず、構造材として利用するには不可能であり、殆どは仕上げ材のような余り強度が要
求されない分野での使用である。目下、JIS規格において、シラスは実質的に細骨材として認められていない。しかし、
今後、国としてもシラスを用いた土木材料が規定の強度を示せば、シラスも骨材として認められるとのことで、シラス使
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用の基盤が整備されつつある。なお、火山灰に単にセメントを混ぜたものは住宅構造には使えず、せいぜい金庫か焼却炉
ぐらいだ。
それでも、火山灰が二〇、三〇年前に比較して、次第に価値が評価されて見直されつつあり、無焼成のものも出回りつ
つあるが、それでも強度が足らなくて構造材として利用するにはほど遠いものであり、精々、仕上げ材程度である。火山
地帯では焼き物や瓦等も生産し始めたようだ。そして、一部では火山灰を混和剤として利用すれば、コンクリート強度や
耐薬品性、そして耐久性の向上に効果的だとかで再度見直されつつある。
また、火山灰の吸着性により、下水や河川や湖沼の水質浄化にも効果的だと言うことも報告されているようだ。今や火
山灰が静かに見直されるような時代になってきたようである。それほど現在のコンクリートの性質が多くの欠陥を露呈し
て来ていたり、砂利、砂等の骨材の不足が深刻化してきたり、自然破壊の環境問題が表面化してきたからである。
ところで、過去において、火山灰の特性を知らずに、単なる砂として火山灰が多量に使用されていた実績乃至事例があ
る。明治時代の頃に建造された北海道の小樽運河や各地のダム等だ。幾多の年月を経ても未だに風化していないのは驚異
的だと報告されている。火山灰である証拠は、海水に何十年も浸っていても劣化しないことや、破片をバーナーで燃焼し
ても壊れないことでも明らかだ。他にも鹿児島空港の滑走路は火山灰地上に普通の舗装を施したものではあるが、火山灰
の特性を発揮して堅固な地盤を形成しているようである。ところが、表面の舗装自体においても、火山灰を活用していけ
ば、緻密な堅固性や断熱性によって、真夏の直射日光にも耐久性を発揮した滑走路が得られることであろう。
また、鹿児島の喜入原油基地にしても、基礎は単に火山灰を敷設しただけであり、堅固な地盤に到達し得るような杭を
打ってはいない。つまり火山灰だけで十分な地耐力を確保できると言うことである。それだけではない。古代ローマの遺
跡である様々な建造物を見ても、当時は火山灰が多量に用いられていた経緯があることも解っている。そうした建造物の
多くは二〇〇〇年を経過した今日でも何ら風化せずに至っているのも、建築専門家から実に驚きであることも報告されて
いる。
残念ながら、日本での火山灰利用も、セメントの普及で使われなくなり、長い年月の間にそうした建造に関するノウハ
ウも次第に忘れられていったようだ。そして、古代でも幾多の戦争や迫害などにより次第に伝承されずに喪失してきたよ
うである。古代エジプトのアレキサンドリアの図書館を始め、各地の図書館が戦争で焼失したことも歴史的事実であり、
多くの文献が消失していったことであろう。また、古代から石造建造物はフリーメーソンの名前でも知られるように、特
殊職能集団による独占技術者達によるものであり、多くはユダヤ人達が関与していたと伝えられているようだ。そうした
ユダヤ人達の歴史を見ても実に迫害の歴史であり、誠に残念なことであるが、何時しか建造技術も正確に伝承されずに忘
却されていったことと思われる。
ところで、当方の研究によれば、火山灰は、風雨や温度変化や年月等で次第に風化して性状も変化するようだ。火山噴
火直後は強酸性故に植物に多大なる害をもたらすが、次第に年月の経過と共に風雨により酸性が薄められていくに連れ、
場所によっては肥沃な土に変化し、密林や樹林地帯、農産物地帯に変質していくものである。即ち、火山灰は風化して天
然の肥料となるものだ。そして新しいうちは、今回のような新素材として工業的に利用でき、古くなってくると、肥料効
果が現れて農業に向いてくると言えよう。それも最初は果樹であり、かなり風化してきた時は粘土に変質し、稲等に効果
的となってくるものである。人々は知らずの内に火山灰の恩恵に浴しているのである。
なお、日本の能登半島やフイリピンに見られる棚田と言われる段々畑のような地形は、正に火山灰が風化した粘土の地
質であろう。水に対して脆弱だからこそ、そのような地形にする必要があるのであり、それを削って傾斜面にすれば、一
挙に大災害が発生するであろう。即ち、雨水が直接に当たらないように、傾斜面を無くして、階段状にしたり、断崖絶壁
にしていく方が、崩落を阻止できるというものだ。火山灰が堆積してできた全国の凝灰岩層は、正に断崖絶壁の景観を呈
しているものだ。
また、新素材のような工業的な用途には、新しいものが効果的と言えるであろう。目下、日本ではあちこちで火山活動
が活性化してきているが、泥流、土石流等の災害発生の危険性と共に、膨大な火山噴出物の処理に困り果てているのが現
状である。そうした中で、地元の某自治体でも火山灰のコンクリートへの混入で強度性や耐酸性等が試験され、その優れ
た性能が評価されて来ている。恐らく、発明者の説得や指導が効を奏し始めてきたものと推察される。なお、最近は火山
灰の有する耐火性、断熱性、遠赤外線効果、水質の浄化能力等が指摘され、一部では見直されつつあることも事実である。、
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3 世界最大の未利用資源の活用へ
よく火山灰なんて一体何処にあるのだと問われるが、最近の三宅島や有珠山、雲仙普賢岳や浅間山、桜島等を見ても解
るように、日本は世界的にも有数の火山列島なのである。豪雨の際に泥流や土石流が発生するが、そうした泥流等は実に
火山灰が混入しているからである。つまり、表面上は樹木や草地等で覆い隠されているが、その下は無尽蔵とも言えるほ
どの火山灰の層なのである。火山灰地帯では実に廃棄物以上の難物として処理されており、泥流等の災害も発生させてい
るほどである。とても大量に有効活用できて、宝の山であると言うことに思いも至らないようだ。世界的に見ても火山灰
地帯では同様の災害問題を抱え苦慮しているようである。しかも今では火山灰地帯も明確になっていないところもある。
即ち、火山灰地帯が樹木や草地で覆われたり、風化して形が崩壊したり、風で飛散したりするからである。
また火山地帯に火山灰が豊富にあることは確かに言えても、必ずしもそればかりではないようである。火山噴火と共に
大量の火山灰や火山礫、溶岩等が噴出されるが、比較的重量の重い火山礫や火山弾、溶岩等は火山の噴火口近くに堆積さ
れるが、極めて微細で軽量な火山灰は風に煽られて空中をかなり遠くまで飛散するからである。要するに火山地帯と火山
灰地帯とは必ずしも一致していないと言えるだろう。このところの認識は大変重要であり、世界的にも画期的な大発見に
繋がっていくのである。
火山灰は世界的に見て実に最後に残された未利用の無尽蔵な資源なのである。これは正に世界的な大発見であると言え
よう。即ち、火山灰地帯の荒涼とした原野や荒れ地とは、広大な砂漠も含まれるのであり、実に砂漠の荒涼とした砂こそ
が火山灰なのである。実に、これは極めて斬新な発想であり、歴史的にも一大発見であろうと思われる。つまり、火山灰
は世界的にも火山地帯をはじめ、多くの荒涼とした荒れ地や原野、砂漠地域に実に無尽蔵に存在しているのである。荒涼
とした原野や砂漠の砂は単に砂利や砂が風化して微細になったものではない。
岩石が風化し崩壊してできた一般の砂利や砂では、太陽の光熱によって表面が熱くなるほど断熱性もないが、火山地帯
や荒れ地や原野や砂漠の火山砂は決して熱くならないほど、極めて断熱性に富んでいる。これは日本の海岸の砂でも、断
熱性において相異があるようだ。即ち、海岸の場所により、岩石が風化した砂で熱いものと、火山灰による砂で熱くない
ものとの相違である。これは、実に、多くの人の常識を打破する画期的な思考と言えるだろう。
即ち、砂漠の気候が暑いのは、水分が無く太陽光熱が熱いからだ。砂漠の砂自体は、断熱性に富み、決して熱くはない
のである。ここに大きなヒントが隠されていると言えよう。砂漠では、ラクダや人間が裸足で歩けたり、様々な動物や昆
虫が棲息するという事実からも、砂漠が決して熱くはなく、そして不毛の地ではないと言うことが、容易に理解できるで
あろう。即ち、砂漠は、豊富な火山灰、火山砂という、実に豊かな世界最大の未利用資源が存在する宝庫なのである。
ところで、日本でも表面は樹木等に覆われていて明瞭ではないが、何々富士とか呼ばれている山は、殆どが形状から言
っても成層火山と言えるだろう。それらの周辺や風下には、実に膨大な火山灰、火山礫等が存在していると言えるであろ
う。そしてこれらの火山付近、火山地帯の火山灰や火山礫の採掘、採取の後は、植林等を施して緑化を遂行していったら
良いであろう。こうした開発にこそ、今世、世界を救済する画期的技術革命が達成されると言えるのである。火山灰こそ、
地球人類に最後に残された、実に豊富で有益な最大の未利用資源であり、且つ最大の自然廃棄物で災害発生源であると言
え、これの大幅な活用こそが世界経済の救世主となるであろうと確信するものである。
恐らく、この地球上の殆どが何らかの火山灰で被われており、有効に工業的に活用できるものは、荒野や原野の人家の
少ない地域の内、約二、三割ほどもあるのではないかと思われる。勿論、表面の樹木等を除去すれば、もっと多くの活用
区域が拡大することであろうと思われる。しかしながら、後述するように、日本では多くの火山地帯が国立公園区域、国
定公園区域等に指定されており、現行法では、容易には火山灰地の開発、採取が困難なようであり、所轄官庁の保守的で
頑迷な官僚的体質では、いっそのこと、豊富な海外から調達していった方が安価で効率的であろうと思われる。一般の建
設材料である砂利、砂でも、コストも高く規制の多い日本の河川から調達するよりも、遠く離れた海外のベトナムあたり
から日本に運搬しても、船賃などの運送代を入れても、何と三分の一で調達できるという指摘もあるようだ。
なお、大島火山砂利を扱っている業者の話では、普通コンクリートの骨材は、強度面で、火山礫は伊豆大島のものしか
使えないと言う。他の産地のものでは、それほど強度は出ないようだ。伊豆七島と言っても、新島、三宅島、式根島は流
紋岩(雲母、長石)系統のものであると言う。もっとも、今回の画期的新素材コンクリートでは、堅固な卵殻状の被膜体
を形成していく故に、内部に混入する骨材は、ある程度の骨材形状をなしているものなら、さほど物性に関係なく何でも
良いのである。むしろ日本の火山灰は採取地に様々な規制があったり、堆積土の混在などの問題がある。やはり、聖心先
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生が言っていたように、日本のものは案外利用できるものは少ないことと一致するものだ。外国には実に広大な砂漠や荒
野がある故に、火山礫も火山灰も、大々的に外国から調達していくことになる可能性が高いように思われる。
4 今日のポゾランセメント利用
現在、一般のコンクリート工事用として最も多量に使用されて、生産されるセメントの約九〇%を占める普通ボルトラ
ンドセメントは、実は一九世紀後半に欧米各国で企業的に製造を開始されたものである。このボルトランドセメントの原
料は、石灰石、粘土、珪石、鉄原料等であり、主要化学成分は、CaO、SiO2、Al2O3、Fe2O3などである。製
造方法は、原料を乾燥のうえ、適当な割合に調合して微粉砕し、そして均一に混合したものを焼成して成るものである。
この製造原理自体は、昔も今も何ら変ることなく、大型化、省力化、自動化、熱効率の向上、公害防止等の技術に関して
絶え間ない進歩を続けて来たものである。ただ、コンクリートにする際には、不純物の混入もあって、また減水剤や混和
剤などの様々な化学物質を混入していく余り、最近のものは強度などの個々の性能向上はあっても、全体としての耐久性
は、昔のものと比べて著しく後退している感がする。
ところで、天然の火山灰は、このボルトランドセメントを基にしてできるポゾランセメントの中に若干利用されている。
現在、ポゾランセメントは、混合セメントの一種として、天然産及び人工のシリカ質(珪素酸化物SiO2)混合材を総
称したポゾランという物質を混合して作られる。そして天然シリカ材(天然火山灰)を用いたものはシリカセメント、人
工シリカ材(高炉スラグ)を用いたものはフライアッシュセメントと言われている。一般に、ポゾランとは、「天然物と
人工物とを問わず、それ自体は水硬性を持たないが、常温で水の存在下においてCaOと化合し、セメントの性質を持ち、
溶解度の少ない化合物を作る珪酸質物を含むもの」と定義されている。なお、ポゾラン(Pozzolan)の名前の由
来は、イタリアのPuzzuoli付近より産出される火山灰の名称であって、現在は天然ポゾラン、人工ポゾランなど
のように広く用いられている。
ここで、ポゾラン反応とは、ポゾラン混和材中の可溶性のSiO2などが、水和の際に生ずるCa(OH)2と結合して
不溶性の珪酸カルシウム水和物(カルシウムシリケート)を生成する作用である。しかし、某研究者によれば、多くのポ
ゾランの効果は、反応性のSiO2だけによるものではなく、カルシウムアルミネート水和物を生成し得る反応力を持つ
Al2O3にも依存していることにも注目しなけれはならないと指摘されている。
また、ボゾランの中の反応性を持つ部分は、次第にCa(OH)2と反応してボルトランドセメントや高炉セメントの
水和反応に見られると同様のコロイド状の化合物を作るが、ボルトランドセメントの水和反応の際に生成されるCa(O
H)2は、セメント硬化体中の成分としては余り好ましいものとは言えないと認識されている。即ち、Ca(OH)2の生
成が強度発現に寄与することは恐らく少ないものと思われており、更に純粋な水及び酸性の水の侵食に対しては最初に溶
脱する成分であり、また時々コンクリート表面に醜い白華現象(エフロレッセンス)を形成させるのもこのCa(OH)
であると言う。
2
ところが、ボルトランドセメントにポゾランを加えることによって、これらの欠点が除去または緩和するのは事実であ
り、ポゾランの性質に起因しているものであると認識されているようだ。反応性のSiO2とCaOの反応は普通の温度
では遅いが、SiO2がより微細に分布されているほど促進されるようだとする。
しかし、分散度の高いSiO2を有する物質でも、ポルトランドセメントに多量に添加することは、コンクリートの必
要水量を非常に多くしなければならない為に許されないとされる。従って、よりよい緻密なコンクリートを作る為に、水
を多くすることが必要となるならば、それはポゾランと石灰との結合によって持たらされる強度と緻密さの利点を帳消し
にしてしまうか、あるいは全く逆転させてしまうことになりかねないとされる。
またポゾランは、人工及び天然を問わず、一部分のみが活性(発泡性)の物質から成っているに過ぎず、他の大部分は、
結合材中ではバラス(単なる骨材)として作用すると認識されている。そしてポゾランの成分は、一般に半分以上がSi
O2であり、次いでAl2O3、Fe2O3が多く、また少量のCaOとMgOを含んでいて、成分も産出地域によって非常
に異なっていて品質上の取り扱いの困難さが指摘されている。更に、単に反応能力を持つ部分の量のみならず、その他の
物理的・化学的性質もまた天然が作ったものであるから多種多様であるとされている。
今日、天然のポゾランとしては火山噴出物の風化した多孔質のものを用い、人工のポゾランでは、大工場の集塵装置で
大量の粉状灰として得られるフライアッシュが広く利用されている。そして現在のポゾランセメントは、ポルトランドセ
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メントから析出されたCa(OH)2をカルシウムシリケート水和物に変え硬化させるポゾラン反応により、セメントの
性質を改善し、水密性を増加し、長期強度を増進させるものである。即ち、粉砕し易い物質の粉末度が高い為に、ブリー
ジングやその他の分離現象を少なくし、コンクリートのワーカビリティー(施工軟度)を高め、またその緻密さを非常に
良くすることに貢献するので、水密性が高く、石灰の溶出を減じて耐久性を向上させることが解っている。
勿論、これは、ポゾランの使用により、ポルトランドセメントのみのコンクリートに比較してさほど水量を多くする必
要のないときにのみ言えることである。またポゾランは、物理的理由から比較的反応速度が遅く、長期強度はやや大きい
とされている。そしてCa(OH)2の部分が少ないことやポゾラン自体の性質より、海水や酸性水に対する化学的抵抗
力を高める等の特性があげられている。
そしてポゾランセメントは、こうした海水や酸性水等によって化学的に侵される危険のある建造物に主として利用され
る。またポゾランの部分が水和熟の低下を持たらす為に巨大コンクリート構造物にも利用される。なお、ポゾランによる
石灰との反応過程も熱の発生を伴うが、その発生熱量は長期間に亘って発生するばかりでなく、量的にも比較的少ないと
される。そしてポゾランセメントは、先程のエフロレッセンス(白華現象)を避けることを特に重点に置く場合に推奨さ
れている。
こうした一般的な見解を見ると、現在一部で利用されているポゾランセメントは、ポゾラン、即ち天然火山灰の有益な
諸性質を最大限に活用はしていず、天然の火山という特殊な超高温・超高圧下で得られた天然火山灰と、人工の高温・高
圧下で得られた人工ポゾランとしてのフライアッシュとを同一レベルで見ているものである。ポゾランに対して、水密性
や長期強度の増加、そして化学的抵抗性や耐久性に優れた面を評価しながらも、水量の多いのが欠点と指摘しているもの
だ。
確かに、現在の通説では、ポゾランセメントは、一般に短期強度は低下するが長期強度は増進するとされている。また
水和熱の減少、ワーカビリティー(施工軟度)、ブリーディング(不純物の混入した余剰水)の減少、耐久性の増進など
に効果があるとも認識されているようだ。そして、アルカリ骨材反応による膨張を抑制する作用があることも解っている
ようだ。なお、アルカリ骨材反応とは、アルカリとの反応性を持つ骨材が、セメント、その他のアルカリ分と長期にわた
って反応し、コンクリートの膨張ひび割れ、ポップアウト(石材に含まれる鉱物の膨張により、表面がはじき飛ばされあ
ばた状になる現象)を生じさせる現象である。
今回、登場した新素材火山灰モルタルは、超微細な火山灰と、ブラウン運動による水性コロイド液を形成するに足る超
微粒子の特殊混和剤キラを用い、またスランプ〇という水量の極めて少ない固練りの独自の調合方式により、ポゾラン反
応を極めて迅速に促進させながら、天然火山灰の特性を有効に引き出したものである。なお、ブラウン運動とは、発見者
ブラウンの名前を採ったもので、粒子が様々な方向から様々な速さで衝突することによって、規則性のない乱雑な動きを
することである。これにより、現在のポゾランセメントモルタルと成分的には似通っているとは言うものの、僅かな差異
が画期的な性能を生み出したものである。実に、工場で生産されるシリカ質微粉末のフライアッシュでは到底得られない
ほどの、優れた諸性能を持たらしているのである。それに、多くの研究者が未だ気付いていない火山灰中の某成分が、画
期的な新素材の特性に大きく影響を及ぼしていることを指摘したい。
5 火山灰利用新素材の特徴
ここで、新素材の火山灰利用による無焼成コンクリートの特徴を、様々な観点から紹介しておこう。なお、新素材技術
の優れた特性は、既に、某県工業試験場で実証済みのようだ。
(Ⅰ)試験結果
特許公報に記載された実施方法だけでは、直ぐに誰でも容易に実施できるものでないのは常識である。正確な実施に際
しては、各地の火山灰特性が実に多様性に富んでおり、そこには、火山灰自体の性状把握から取り扱いに絡んだ様々なノ
ウハウが関係しており、時には、ノウハウ書だけ見れば誰でも実施できるというものでもなく、現地指導が不可欠である
のも常識である。
さて、普通、火山灰は粒度未調整の状態では粒径二・五ミリ以下の砂分を多量に含み、このままでは組骨材として取り
扱えないのが通常である。細骨材は二・五ミリ以下の砂分に、〇・一五ミリ以下の微粒分を含んだ降灰を使用したもので
ある。雲仙普賢岳の火山灰の特徴は、SiO2が大部分を占め、コンクリートの長期強度を増大させることが明らかにさ
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れている。さらに粒径〇・一五ミリ以下の微粒分を多量に含んでいることがワーカビリティー(施工軟度)に大きく影響
するものと思われる。
なお、JISの細骨材の吸水率測定法に従って火山灰の吸水率を測定すると非常に小さい値を示し、真の表乾状態での
吸水率を示しているのか大いに疑問が残る。混和材にはガラス原料の珪砂を精選する際に生じる珪酸質微粉末のキラを用
いる。走査型電子顕微鏡で一〇〇倍オーダーでの形状をみると、キラは楕円形または、角のない立方体をなしている。
一方、火山灰を細骨材として使用することによるワーカビリティーの悪化はこの形状によるものと推察できる。キラの
高倍率の写真を観察すると、微粒子の集合の様を呈しており、これがセメント粒子と混合されてワーカビリティーの改善
(キラ効果)に役立っているものと思われる。
さて、発明者の実験計画によると、組骨材として普賢岳岩石の火山岩砕石を、細骨材として土石流及び火山灰を、混和
材としてキラを、混和剤として某減水剤を用い、水は水道水を使用し、なお、混和水は無視したが、四週強度試験の結果
は、単位セメント量として普通ポルトランドセメント三五〇キログラム/立方センチでは、四二五キログラム/平方セン
チの強度で、セメント四〇〇キログラム/立方センチでは、六二五キログラム/平方センチの強度であり、普通コンクリ
ートより、非常に優れているものと思われる。
(Ⅱ)製造面の特徴
(1)未利用資源・天然火山灰資源の活用(省資源)
従来の砂利、砂、セメントのコンクリートに比較して、世界最大の未利用資源であって無尽蔵と思われる火山礫、火山
灰を使用し、セメントの使用量も少なくできるし、将来はセメント使用を全く不要にすることすら可能である。また、同
時に使用する混和材はガラス原料の精選過程で得られる廃棄物であり、特殊混和剤も極めて安価に製造できるものであ
る。更に、従来は、天然火山灰を焼成した人工火山灰(シラスバルーン)を使用し、セメントも多く、強度が不十分で、
用途は構造躯体には不適であり、専ら仕上げ材か充填材に限定されていたのに対し、新素材は焼成していない天然火山灰
(生シラス)を、換言すれば、天然火山灰を焼成加工しないで、そのまま使用するものである。
即ち、微細骨材(火山灰)、粗骨材(火山礫)、セメント、特殊混和剤(液体)、特殊混和材(固体)を用いる。これ
らの火山灰・火山礫は、極めて空隙性に富み吸水性が高い為に、安定した品質や強度が得られないとして、従来は積極的
に利用されて来なかったものである。特に火山灰は、品質安定化の為に、焼成加工して高価なシラスバルーンとして使用
されている。今回の新素材は、天然火山灰を無焼成のまま生シラスとして利用する。
(2)独自の混練方法
まず、所定量のセメントと微細骨材(火山灰)と特殊混和材(キラ)を、独自の配合で均質になるまで十分に混練した
後、所要水量の約八〇%に特殊混和剤(減水剤)を注入してかき混ぜた添加水を往ぎ、十分に混練する。次に粗骨材(火
山礫)を所要全量投じて再び十分混練する。最後に残量の水を加え、最終的な混練を行なうものである。従来の砂利・砂・
セメント使用の一般的なコンクリートの混練は、機械練りでは、全部の材料を同時にミキサーに投入するのを原則とする。
また手練りでは、砂とセメントのから練りをし、さらに砂利と水を加えて水練りを行なう。
(3)常温・常圧で硬化
現在の生コンクリート製造(ALCも同様)においては、養生して硬化させるために多量の石油を使用するが、新素材
は製造において養生工程、養生装置が全く不要であり、常温常圧下で短時間で脱型が可能である。従って、石油消費量の
大幅な低減が可能になるばかりか、装置や工程の簡略化を可能にし各種性能も大幅に向上するものである。
(4)スランプ〇の打設
スランプとは、練り上げたモルタルを深さ三〇センチのコーンに詰めて、コーンを逆さにして上方に除去した際、落下
するモルタルの沈降距離を示し、大きい程、軟練りの状態を示す。新素材は、スランプ〇でも、特殊混和材を併用するこ
とにより、プラスチシチ(粘り)が増大し、軽い火山礫の浮き上がりや分離、重なりを防ぎ、ワーカビリティー(施工軟
度)を良保して可塑性が向上する。この作用で、盛り上げた生コンに振動を加えると、滑り落るようにして、複雑に入り
組んだ型枠や鉄筋の狭いスペースを縫うようにして深部に到達し、鉄筋に密着する。通常の砂利・砂使用のコンクリート
の所要スランプは、振動打ちの場合、打設場所によって異なるが五~一五くらいを標準としている。なお、軽量コンクリ
ートは、比重が小さいことと、骨材が角ばったり、凹凸のあること等の理由から、スランプしにくい傾向があり、やや低
い。
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(5)養生及び脱型
養生は常温常圧の空気養生であり、コンクリートの脱型時間は、特殊混和剤を用いた場合、夏期は約四時間、冬期は約
八時間である。なお、気温はおよそマイナス六・二~プラス三五・八℃である。これに対し、普通の砂利・砂使用のコン
クリートや軽量骨材コンクリートの場合、水分の蒸発による収縮亀裂を防ぐ為に、散水や養生マットによる湿潤養生をし
たり、大量の石油を用いて養生し、脱型も遅いものである。
(6)セメント量
砂利・砂使用のコンクリートに用いられるセメント量とは大差ないが、火山礫などの軽量骨材使用の軽量骨材使用の軽
量コンクリートに比較すれば、火山礫の空隙部が完全に確保されるので、セメント量は三~四割節約できる。なお、特殊
な高強度発現効果のある特殊物質を多用すればセメントも大きく軽減することも可能であるが、余りにも高価につき現実
的ではない。しかしながら、遠い将来の課題として、安価にセメント量を大きく節減することも可能に思われる。
(7)早期強度
通常のコンクリートの四週強度が、常温常圧下で、一週で達成でき、その後、時間の経過と共に強度が向上し、最終的
には平均五〇〇キログラム/平方センチとなる。なお、砂利・砂使用の通常のコンクリートは、三五〇キログラム/平方
センチ程である。そして天然軽量骨材を使用したコンクリート(五種)は、八〇~一五〇キログラム/平方センチで、ま
た軽量気泡コンクリートは、五〇~八〇キログラム/平方センチ程度の圧縮強度である。
(8)クリープ現象の改善
独特の混和剤により、水セメント比を低くし、粒度調整でセメント量を減少させ、特有の混練法でコンクリートの収縮
を可能な限り小さくし、長期の継続荷重による変形(クリープ現象)を滅ずることができる。
(9)特殊混和剤、特殊混和材を使用
火山灰利用建材は、これまでのところ随分と多く研究されてきたが、殆どは焼成した人工火山灰(シラスバルーン)を
利用し、混和剤も限定されていた。それ故に、強度にも大きく不足して構造材として用いるには極めて不的確であった。
精々が内外装材程度であったと言えよう。昨今の目まぐるしい技術、産業の発達によって、多種多様の混和剤が市販され
るようになって来ているが、今回のものは、天然火山灰を利用するのに加えて、産業廃棄物のキラや特殊混和剤を用いる
もので、キラ無しでは、固化して当初は強度も出ることもあるが、一年ほどで崩壊することも多いようだ。なお、特殊混
和材は、ガラス原料の珪砂を水洗い精選する際に大量に出る産業廃棄物の一種で、SiO2 が九〇~九三%のガラス質微粉末
で、通称キラと呼ばれるもので、愛知県では一日に三〇〇〇トンも出る。
(10)既存の生産設備がほぼ利用できる
)既存の生産設備がほぼ利用できる
新素材の火山灰コンクリートは、微粉末状の火山灰を用いるものの、現在の生コンクリートと類似の材料から形成され
ることにより、現在のPC(プレキャストコンクリート)製造工場の設備やコンクリートミキサー、打設ポンプなどの多
くの生産設備がそのまま利用できるものである。しかもALC建材のように、石油を多量に消費する養生設備が不要とな
る。即ち、新たな生産設備を不要とするものである。
(Ⅲ)性能面の特徴
(1)圧縮強度が大(高強度化)
独特の調合、独自の混和剤・混和材により、特に特殊混和剤の物理的・化学的な作用効果により、セメントや火山灰の
表面をくまなく濡らし、微細な分子を分散させ、セメントに対し、より効果的な水和反応を示す。そして常温常圧下で、
通常コンクリートの四週強度が一週で発現し、従来のシラスバルーン、砂利、砂、セメント使用のシラス建材が、八〇キ
ログラム/平方センチ程度であるのに対し、この新素材は、最終的な圧縮強度は、平均五〇〇キログラム/平方センチと
非常に高い。また次第に年月の経過と共に強度が著しく向上していくものである。従って、従来の単なる仕上げ材や充填
材の用途を越えて、建築や土木等のあらゆる建設分野の様々な構造躯体への適用は勿論、船舶やタンク等の各種構造物に
も応用を拡大し得るものである。
(2)普通コンクリートと比較して軽い(軽量化)
多孔質の火山礫内に、セメントや水と混練した火山灰モルタルが侵入されずに、火山礫表面を被覆するようにして凝固
するので、火山礫の空隙部がそのまま保持できて軽量化が図れる。普通のコンクリートの比重は二・三が標準となってお
り、どんな軽いものでも二以下の比重になることはない。新素材は、配合割合を変えて製作すれば、火山礫の空隙部分の
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容積量によって、現在の軽量コンクリート(一種~四種)に対応して水に浮くものまで、強度や防水性を維持しながら実
現可能である。そしてこの軽量化は高強度との相乗効果により、埋設鉄筋の量を三割程節約できるものである。
即ち、骨材の配合割合を変えて、多孔質の軽石を骨材に用いて試作すれば、現在のコンクリートのランクに対応して製
作でき、いずれも、現在のものに比較して強度が大であるのみならず、比較的軽い。従って、建設分野に応用すれば、補
強筋である鉄筋等の使用量も大幅に低減可能になるものと期待でき、更にはさほどに強度を低下させずに水に浮くものま
で製造が可能である。
(3)耐火性、断熱性が良好(超耐火性)
現在のコンクリートは、セメント自体の耐火性能が構造躯体として約七五〇℃で劣化するのに対し、今回の新素材は、
天然火山灰、火山礫、セメント、混和剤の配合割合、投入順序、投入タイミング等の相乗効果により、一二五〇℃の燃焼
試験でも殆ど半永久的に異常ないものと思われる。恐らく、特殊混和剤の物理化学的な作用効果により、微細分子が分散
し、また振動による遠心力作用により、表面に火山灰が浮き上がって被覆を形成すると考えられる。二〇〇〇℃(五分間)
で表面のみガラス化して黒く劣化する程で、抜群の耐火性能を有する。
即ち、素材表面に火山灰独自の耐火性ができ、二〇〇〇℃(溶接バーナー)でも、鉄は約一〇秒で切断されるが、新素
材は二〇分でも切断できず、また亀裂もない。但し、表面だけ二~三ミリの深さがガラス状になるだけで、それ以上溶解
しない。なお、普通のコンクリートは三〇〇~三五〇℃以上になると残存強度の低下は急激となり、五〇〇℃では大きな
亀裂を生じる。また火災温度はせいぜい一〇〇〇℃前後である。従って、建築物の火災に対しても、現在のコンクリート
構造物に比較しても半永久的な耐用性を有するものである。
(4)防水性が良好
軽量コンクリートの吸水量は、普通コンクリートの一・四~二・二倍とされているが、新素材は厚さ三ミリでも半永久
的に水は浸透しない。これは、微細な火山灰中の珪酸(SiO2)とセメント中の遊離石灰とが化合して不溶の珪酸塩をつく
り、完全に固化してコンクリート体内の毛細管を閉塞して不透水性ゲル形成を助長せしめて、緻密で防水性が高く、化学
的侵食抵抗性にも優れ、亀裂をも防止し得るものであり、いわゆるポゾラン反応によるポゾラン効果の為であろうと思わ
れる。なお、普通コンクリートは、樹脂やアスファルト等で防水加工をしなければ、長期の耐水性はなく、また軽量気泡
コンクリートでも、連通した空隙部をもつものは、当然のことながら著しく防水性は低い。
このように、従来の砂利、砂、セメント使用のコンクリートは、表面にモルタル防水、又はアスファルト防水、樹脂防
水等の処理をしなければ、屋根や外壁等の雨水を受ける部分は亀裂部分より浸水していた。又、火山灰、火山礫を使用し
たものも一部では供給されてはいるが、セメントの収縮亀裂による浸水を防止するために、高価なエポキシ樹脂を使用し
ている状況である。今回の新素材は、生シラスと硬化剤を用いて配合割合、投入順序、投入タイミング等の相乗効果によ
り、水密なコンクリートに形成でき、厚さ五~一〇ミリでも半永久的に浸水しない。
(5)表面に繊細なレリーフ模様が可能
表面に化粧層を施す際には、所望するタイル状や石板状のエラストマー(ゴム)などを内型として敷き、特殊陶化材を
五~六ミリ厚に塗着した後、その上に火山灰コンクリ-トを打設する。この結果、特殊混和剤と特殊混和材の相乗効果で、
かなり複雑な彫刻模様でも、ポアのない肌の美しい表面層を得ることができ、また木目や大理石模様等の任意の図柄を転
写できて意匠性の著しい向上に役立つ。従来のコンクリートでもある程度は可能であるが、粗く脆いのに対し、新素材の
火山灰コンクリートは火山灰が極めて微細な粒子であるために、繊細且つ高度な芸術的レリーフを始め、あらゆる彫刻像
の製造も可能になるものである。
(6)美観性保持
普通のコンクリートは年を経るにつれて亀裂が入り易く、これに透水すると、セメント中のアルカリが空中の炭酸ガス
と反応して炭酸カルシウムを生成し白くなる。これにカビが混生して、シロ、クロ、まだら等の模様ができて美観をそこ
ない、老化を早める。ところが新素材は、多くの他の特性と相俟ってこれを防止することができ、極めて長期に亘って美
観を保持し得る。酸性雨により劣化しつつある各種石像の代替化も可能であるし、製造技術的にも、また耐酸性等の性能
向上の面からも、建造物を風雨の被害から大幅に保護し得るものである。
(7)採取量、採取地の地方に明るい将来性
現在、川砂利、砂等の供給が不足し、砕石、海砂等を加工したり、塩分を洗浄して多くの手間をかけて使用している。
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しかし、今回用いる火山灰、火山礫は、日本全島が火山で覆われていることから、表面土や森林を除去すれば実に無尽蔵
にあるものと思われ、また、現状では田畑への利用は不可能であるが、採取地は人家も少なく、殆どは、離島、荒れ地、
僻地等の過疎地であり、開発に際しては、補償や公害等の点で、比較的影響が少ないと期待される。
(8)鉄筋の防錆効果が良好(中性化防止)
普通一般に、コンクリートは、表面から空中の二酸化炭素を吸収して漸次アルカリ性を失い、これが鉄筋面に達すると、
亀裂を伝って侵入する水の為に、中に埋設された鉄筋は腐蝕し始める。本来ならは、軽量コンクリートの透気性は、普通
コンクリートより大きいから、通気孔を伝って来る水の為に鉄筋は錆び易いはずであるが、新素材は、気泡を有した火山
礫骨材の表面を、水密な火山灰モルタルが被覆して強固な外殻層を形成し、一種の卵殻体の複合立体的ハニカム構造とな
り、駆体全体が緻密な防水体となる。この為、前記の耐水、耐酸、亀裂防止等の特性と相俟って、従来の軽量コンクリー
トの弱点を解消し、鉄筋の寿命は長くなるものと思われる。
現在の鉄筋コンクリートは、コンクリートがアルカリ性のために、鉄筋の防錆効果を有しているはずであるが、コンク
リートの中性化により、鉄筋の腐食が激しく、腐食防止処置をとる必要がある。もっとも、ALC系統の建材は、連通し
た空隙部を浸透する水のために、最初から、鉄筋の特別な腐食防止処置が必要となっている。しかし、火山灰コンクリー
トは、緻密で堅固な物性故に、火山灰コンクリート自身が鉄筋の防錆効果を有し、鉄筋の特別な腐食防止処置をとる必要
がない。即ち、防水塗料や防水シート等の防水構造や防水被膜が不要となるものである。
(9)耐酸性、耐アルカリ性が良好
強塩酸に供試験体の半分を二〇日間浸しても、普通コンクリートの減少率は二〇%であるのに対し、新素材は〇・〇一%
の減少率であった。なお、アルミニウムや鉄は完全に溶解して消滅することが確認されている。現在のコンクリートは、
塩害や耐酸にも弱く、耐薬品性についても、何らかの処理を必要としているが、火山灰コンクリートでは、粒径〇・一五
ミリ未満の火山灰と、硬化剤微粒分に多く含まれている可溶性の SiO2(石灰分)の化合により、ポゾラン効果が顕著に現
れるために、酸、アルカリや薬品に対しても変化しないものと考えられる。従って、薬品工場や化学工場、温泉地のよう
な場所に用いて効果的であろう。
(10)耐薬品性、滅菌性、殺菌性
)耐薬品性、滅菌性、殺菌性
火山灰に特殊混和剤を加えると、大腸菌や枯草菌等の滅菌作用が現れ、カビの発生を防止できる。今日、カビは文明の
破壊者といわれる程、色んな分野に発生し、人間の脳に影響を与えたり、アレルギーやぜんそくの原因にもなり、また農
作物にも害を与え、樹脂や金属をも侵し、更には無菌性を要求されるコンピューター室にまで入り込んでいる有様である。
また病院等にも用いれば、殺菌性や滅菌性が発揮されて院内感染の防止にも大幅な効果が期待できるであろう。
(11)防湿性、吸着性が高い
)防湿性、吸着性が高い
火山灰が、複雑で微細な多孔質の結晶構造を有しているために、建造物内での湿気の吸収や、ゴミ、汚泥等の各種の産
業廃棄物の処理に対する吸着性に関しても効果的となるだろう。また、湖沼や河川の浄化に対しても、汚泥の吸着や固化
等にも有効に活用できるだろう。
(12)耐爆裂性が高い
)耐爆裂性が高い
二〇〇〇度溶接バーナー三本で三〇分間真赤に焼き、これを急激に水中に突込んでも爆裂せず、また亀裂もない。そし
て同一試験体を三〇回繰り返しても新素材コンクリートの組織変化は全く見当らない。なお、薄い板状の普通のコンクリ
ートは急激に加熱されただけでも爆裂を起こす。このように、新素材を高熱に晒した後に、冷水に浸しても何ら変化がな
いほどに耐爆裂性が高い。普通のコンクリートでは爆裂現象が現れて破壊されるものである。これは耐熱性が高いと言う
ことにも大きく起因するものと言えよう。
(13)収縮亀裂の防止
)収縮亀裂の防止
厚さ三ミリの供試験体を、水中浸漬や戸外放置を繰り返しても、乾燥による収縮亀裂は見当らない。普通、水分を含ん
だコンクリートは、乾燥するにつれて収縮亀裂が入り易く、また寒暖の温度変化に対しても亀裂が発生し易い。
(14)施
)施工性及び加工性が良い
)施工性及び加工性が良い
火山灰コンクリートは、軽量コンクリートでありながら、超微細粒子である故に、普通コンクリートと同じように、打
設や吹き付けもでき、剪断、はつり、釘打ち等が簡単にできる。また、スランプ〇でありながら、微細な結晶である故に、
施工性も良好で、多量の水も不要で、強度を低下せずに、高所へのポンプ圧送による施工性の向上が期待できるであろう。
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従って、新たに建造するものばかりか、現在の建造物の耐候性や耐久性の向上のためにも、表面への吹き付け等による被
膜処理により、大幅に改善を施していくことが出来るであろう。そして、硬化した火山灰コンクリートは、打設後、二日
間ぐらいは木材用の釘が打て、その為、木レンガやコンクリート用特殊釘が不要となり、作業性が向上する。
(15)塗装の保ちが非常に良い
)塗装の保ちが非常に良い
コンクリート上の塗装の保ちが非常に良く、何故変化しないのか不思議である。既に、外壁の塗装で二〇年を経過して
も何ら変化していない。それに、従来の安い塗料で充分であり、逆に高級塗料は悪い結果をもたらすようだ。
(16)総合的な施工コストが安価である
)総合的な施工コストが安価である
天然に豊富に存在する火山灰、火山礫を使用するために、現在の砂利・砂の枯渇化に見る骨材状況からも安価であるが、
混和材、混和剤などの費用を考慮すれば、普通コンクリートと大して変わりはない。しかし、高い防水、断熱、耐火など
の向上により、その後の、防水、断熱、耐火などの仕上げが不要となることから、製造、施工の最終的な総合価格は極め
て安価になる。
(17)耐久性が高い
)耐久性が高い
真の耐久性は長い時間を経過しなければ解らないものであるが、普通のコンクリートに比べて、酸性雨や太陽紫外線、
寒暖の温度変化などにも大して劣化もなく、著しい耐候性・耐久性を有していると確信出来る。火山灰によるコンクリー
トでも、打設当初は高い強度が出ることもあるが、その後、ボロボロに崩壊していく場合もあるようだ。新素材の火山灰
コンクリートは、一〇年以上も経過しても何ら変化はなく、表面は恰も鋼鉄のような緻密堅固になっていくものである。
(18)省資源・省エネである
)省資源・省エネである
新素材は、火山礫の空隙が確保されるために、空隙が充填される火山礫に比べて、セメント量は三割ほど、また高強度・
軽量化により鉄の使用量も三割ほど節減出来るものである。それに防水、断熱、耐火などの表面仕上げ材が不要になり、
これらの製造における資源・エネルギーが大幅に節減されるものである。更に、断熱性の著しい向上に伴って、冷暖房費
などの節約にも大きく貢献出来、その上、耐久性にも優れており、補修や維持管理費用も軽減されるものである。
(19)多機能、高性能である
)多機能、高性能である
普通コンクリートや軽量コンクリートでも、最近は、セメントなどの結合材を増加させたり、特殊な補強繊維や混和剤
の発達により、可成りの高強度を達成しているが、防水性や耐火性に優れているものは少なく、コストも高いものが多い。
また、火山灰にセメントを混練させても、耐火性が大きく向上するが強度は小さい。そして、火山灰を利用したものでも、
当初は固化して強度が発揮できても、高コストであったり、また、耐久性にも乏しく、ボロボロになっていく場合も多い
ものである。
要するに、高強度性、耐久性、耐火性、防水性、断熱性などの多くの優れた機能を有し、しかも低廉な新素材は現在の
ところ世界的にも皆無と言えよう。正に、今回の火山灰利用の新素材は、多機能・高性能な新素材であり、この点で実に
歴史的な材料革命とも言えるものである。
6 新素材技術の特許内容
新素材関係の特許は、愛知県在住の一個人の岩瀬嘉市氏の相続人が有し、特許技術に係る実施権は、協力者であった清
水長太氏が専用実施権として継承しているものだが、長年の研究の末に改良された最新のものを紹介しよう。これは実に
歴史的にも画期的な内容の技術であるが、単なる特許公報の文言だけで、一体誰がその優秀性に気付くであろうか。建築
や土木のコンクリート技術の専門家ですら多大なる猜疑心、無関心、無感動にて思い過ごすであろう。また幾ら説明して
も、既成概念、固定観念、先入観に囚われて、関心を寄せることもないであろうし、仮に関心を寄せても、理解も評価も
できないであろうと危惧されるものだ。ましてや、一般の知識しかない政治家や官僚や学者や経済界の重臣の方々を始め、
多くの国民に至っては、全く猫に小判、豚に真珠、馬に念仏、馬耳東風であろうと思われる。
なお、当該発明の関係者は、新素材の活用においては、建築住宅や地盤改良への適用を中心に考えているものだが、こ
の発明を当方が、大きく構想を膨らませて、実に、「新日本列島大改造論の実践」の国家的なプロジェクトに仕立て上げ
ていこうとするものであり、そして火山灰や火山自体の分析から、砂漠の砂の実態、古代エジプトのピラミッド建造手段、
そしてマグマ溜まりの解明にまで至るものである。一段と、この計画自体のスケールの大きさや、影響・効果の大きさが
益々理解できないのではないかと懸念される。
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なお、特許明細書には、新素材技術が高レベル放射性廃棄物にも適用可能と記載しているが、これは当方が示唆したア
イデアを採用したものである。また発明者は、鳥取砂丘が火山灰であると誤解していたようで、ましてや、砂漠の砂が火
山灰であることは全く知らなかったようであり、当方の大きな地球レベルの歴史的なプロジェクト構想にも理解ができな
かったようである。
以下は、一般公開されている特許公告公報(特許登録番号第三三三一五一六号 登録日平成一四年七月二六日)である
(一部、漢数字やカタカナ表記に修正し、誤記を訂正)。なお、一般的な見解では、公開された特許公報の著作権は公報
発行者の政府特許庁にあり、ここに紹介しても何ら発明者や特許権者の著作権侵害でもない。例えば、他人の特許公報中
の文言を一部借用し真似て特許出願しても、何ら著作権侵害でもないということである。また、これに基づいて、国家プ
ロジェクトの政策提言を為すこと自体も、何も特許権を侵害しているものではなく、特許明細書に記載以上のノウハウな
ども公表してはいないし、他の権利侵害にも該当しないのは明らかだ。
むしろ発明者の発明を高く評価して宣伝しているとも言え、また広く公開するのも歴史的責務を痛感しているものだ。
これを発明者に無断で横取りしていると思うならば、それは誤解と偏見であり、邪推であり、牽強付会の論理というもの
だろう。願わくは、当該権利の関係者自ら、この壮大な国家プロジェクトの実践に理解と協力を示して貰いたいものだ。
これは決して国家社会に無料、無報酬で技術を供出せよと言っているものではない。利権、利得に敏感な多くの政治家や
官僚が実践すれば、恐らく当該発明の関係者が懸念するような事態に至るであろうが、当方は、後述するように、あくま
でも公明正大に適切な対価でもって関係者の権利を尊重し、国家が買収し国家管理にして、国家社会のために役立ててい
こうという思いで提言するものである。
【書類名】 明細書
【発明の名称】 泥土体の無機材料による固化ないし固定方法とその製品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムイオンを含む泥土体に、全体量の固形物換算において、粒径〇・〇六ミリ以下の火山灰を一~二〇重量%、
及びブラウン運動による水性コロイド液を形成するに足る珪砂から成る粒径〇・一μミリ以下の極微粒子の特殊キラを
〇・〇二~一重量%、混合することを特徴とする泥土体の固化方法。
【請求項2】
カルシウムイオンを含む泥土体に、全体量の固形物換算において、粒径〇・〇六ミリ以下の火山灰を一~二〇重量%、
及びブラウン運動による水性コロイド液を形成するに足る珪砂から成る粒径〇・一μミリ以下の極微粒子の特殊キラを
〇・〇二~一重量%、及びつなぎ材としてセメントを混合することを特徴とする泥土体の固化方法。
【請求項3】
カルシウムイオンを含む泥土体に、全体量の固形物換算において、粒径〇・〇六ミリ以下の火山灰を一~二〇重量%、
及びブラウン運動による水性コロイド液を形成するに足る珪砂から成る粒径〇・〇一μミリ以下の極微粒子の特殊キラを
〇・〇二~一重量%混合した泥土体と必要に応じて珪砂やセメント等を加えた混合物を未固化状態において堆積ヘドロ層
の上に積層させて展圧し、更にその上にカルシウムイオンを含む泥土体に、全体量の固形物換算において、粒径〇・〇六
ミリ以下の火山灰を一~二〇重量%、及びブラウン運動による水性コロイド液を形成するに足る珪砂より成る粒径〇・〇
一μミリ以下の極微粒子の特殊キラを〇・〇二~一重量%、及びつなぎ材としてセメントを混合した泥土体と必要に応じ
珪砂やセメント等を加えた混合物を主成分とする湿潤状の材料を未固化状態において散布し積層させてこれに水分を与
えることにより硬化させ、必要に応じ更にその上にコンクリート層を設けることを特徴とするヘドロ層の固定方法。
【請求項4】
カルシウムイオンを含む泥土体に、全体量の固形物換算において、粒径〇・〇六ミリ以下の火山灰を一~二〇重量%、
及びブラウン運動による水性コロイド液を形成するに足る珪砂より成る粒径〇・〇一μミリ以下の極微粒子の特殊キラを
〇・〇二~一重量%配合し、必要に応じ珪砂やセメントを加え混合したものをテトラポット、くい、縁石、魚礁等の成型
品に形成し又必要に応じこれを焼成して形成したことを特徴とする成型製品。
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は無機材料による泥土体の固化乃至固定方法とその製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
土木・建築関係において最も一般的に用いられている無機系の硬化素材は、いうまでもなくポルトラ
ンドセメントを主材とするコンクリートであり、これによって様々な構築物が広汎に施工されているのは周知の通りであ
る。
【0003】
またこのようなポルトランドセメントでは固まらなかったり対処できないようなものを固める場合、例えば水ガラス系
の凝固材や、マグネシア、アルミナ等を用いた非ポルトランド系セメントないし化学結合材を用いることもあり、一部の
軟弱地盤やヘドロ等の固化にある程度の成果を収めている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこのような従来技術では、未だ現実的に対処することがきわめて困難
であるような現場も数多く存在する。例えば、ヘドロが十数メートルも堆積した広大な海浜の軟弱地盤を固化ないし固定
するような場合、先ず第一にヘドロを低コストかつ永続的に硬化させる硬化素材がなく、まして現場のヘドロを浚渫して
硬化させ、再び充填することなど不可能に近く、仮にヘドロの上を普通の土砂やコンクリートで蓋をしても、強度が不充
分であると同時に、有機物や悪臭が滲出してくるなどの難点がある。
【0005】
またコンクリートに使われる細骨材で粒径〇・〇六ミリ以下のものは、硬化を阻害して強度が出ないとされるために一
般に使われることがなく、これが又、厄介物として廃棄にも困っているのが現状である。
【0006】
本発明はかかる問題点を解決して、従来よりきわめて困難であるとされている難固化材料や軟弱地盤を、無機材料によ
る泥土体の現実的な固化ないし固定により公害防止や環境保全、及び硬化物の物性向上などに広く貢献することを課題と
する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は既に火山灰を骨材に用いて、従来では考えられないような高物性のコンク
リートを作ることに成功している。また一般にシリカヒュームと呼ばれる微粒子のSiO2(シリカ、珪砂、または無水
珪酸)をポルトランドセメントと共に上手に使えば、セメント中のCa(OH)2が一部水溶性となった珪酸H2SiO3
と反応して、不溶性の珪酸塩であるCaSiO3を生じるといういわゆるポゾラン反応も、既によく知られた知識であっ
て、それの応用であるフライアッシュセメントやポゾランコンクリート等も既に公知となっている。
【0008】
しかしながらこれ等の公知の知識・技術のみではどうしても前記の難題を解決することができない。すなわち前記のよ
うな難固化性の対象物を大量、低コストかつ安定的に充分に固化させることができないのであって、かろうじて固まって
も容易に崩壊する程度の対象物が大部分なのである。
【0009】
そこで本発明者は断念することなく更に、火山灰の微砂やキラ(窯業工場で廃棄物として出る水洗と呼ばれる微粉状の
珪砂)などのような各種ポゾラン材料を固化させるべき材料中に色々と混合してテキストとしてみたところ、意外にも
様々なキラのうちで、ある特殊なもののみが難固化材料を実際に固化させる力があることを発見し、更にそれは粒径〇・
〇六ミリ以下の火山灰も混在するときのみ、その作用が発揮されることを見出して、本発明に至ったのである。
【0010】
すなわち、このような作用を発揮する特殊なキラの本体を悉く追求した結果、それはある種のキラにおいてはその粒子
の回りに更に極微粒子のキラが付着しており、それは粒径がおよそ〇・〇一μミリ以下のものであって、水に分散させる
と、ブラウン運動によってもはや沈澱することのない水性コロイド液となってしまうものであることが判明した。これは
従来、常識的に考えられていたシリカヒュームなどのポゾラン材料より更に二桁は細かい、もはや別物質とでもいうよう
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なものであった。
【0011】
この特殊キラをヘドロやゼオライトのような難固化性の固化させるべき材料中に、その全体量の固形物換算において
〇・〇二~一重量%、望ましくは〇・一~〇・二重量%混合し、同時に従来より厄介物として廃棄されていた粒径〇・〇
六ミリ以下の火山灰を一~二〇重量%、望ましくは三~五重量%混合する。
【0012】
上記のような数値限定をしたのは、その混合量に達しないと固化が不充分で実用性がないからであり、またその量を超
えてもかえって固化が阻害されることが判明したからである。
【0013】
なお本発明ではセメントはもはや主役とはいえないものとなり、むしろ固化のためのつなぎ材として役に立つことにな
る。但しセメントを用いた場合の固化物すなわちコンクリートは、通常のコンクリートに比べはるかに強度や耐熱性など
にすぐれたものとなった。
【0014】
次に、例えば深さ十数メートルにも達するような堆積ヘドロ層を固定させる方法について述べる。すなわち前記のよう
に配合した固化させるべき材料、例えば同じくヘドロに粒径〇・〇六ミリ以下の火山灰一~二〇重量%と水性コロイド液
となりうる極微粒子の特殊キラ類〇・〇二~一重量%を加え、必要に応じ珪砂やセメント等を加えて湿潤土状としたもの
を堆積ヘドロ層の上に投下し、展圧に適した約三〇センチ厚程度に積層して展圧し、更にその上に同様の材料、但しセメ
ントを加えた湿潤状の混合物を散布し、同じく三〇センチ厚程度に積層させる。その上より水を散布するか天然の雨に任
せるなどして水分を与えてこれを硬化させ、固化地盤を形成する。これによって膨大な堆積へドロの上に蓋をしたような
形となったが、これは実質的に全へドロを固定したのにも等しい強固な地盤となりうることが判明した。理由は後で述べ
るが、これにより更にその上にコンクリートを打つなどして、様々な構築物を形成することも可能となる。
【0015】
なお、本発明によって得られた固化物は、通常のコンクリートと異なり甚だ高熱に強く、比較的軽量で、断熱性、耐酸、
耐海水性等に富むことも明らかとなった。とりわけ耐熱性については、例えば固化物にバーナー炎などを噴射してセラミ
ック化するほどに加熱しても割れたり著しく変化することがなく、一層強固なセラミック様物となる。従って、例えば表
面に釉薬を塗布しておけば、見事な施釉薬焼結物が得られる。
【0016】
【作用】 本発明によってこれまで実質的に固化ないし固定が不可能であるとされていた難固化材料がいとも簡単に固化
できたのは、全く従来の常識や予想を超えたものであったが、これは次のような作用によるものと推定される。
【0017】
先ず珪砂がブラウン運動により安定コロイド状となるためには、その粒径が〇・一μミリ以下になる必要があり、この
ようなものは自然界に通常見当たらず、人工のシリカヒューム等もそれより桁違いに大きいため、そのような極微粒子を
用いて実験することは考えもしなかったわけであるが、実際にこれを用いて火山灰微砂と共に泥状物を混練してみると、
その中に混在する水分は様々な固形物粒子によって分断されているとはいえ、その中のキラ(シリカ)のコロイド粒子は
更に細かく、その各の水分中で活発にブラウン運動を続ける。極微粒子で表面積が大きいことに加え、このような運動が
加わると、その成分であるSiO2は速やかに水溶性の珪酸H2SiO3に変化し、続いてカルシウムイオンと反応して不
溶性の珪酸塩CaSiO3を生成するというポゾラン反応がきわめて迅速に進行することになる。
【0018】
一方、粒径〇・〇六ミリ以下の火山灰微砂は、その粒子の形状が非球形かつ針状的であり、それらの集合は一種の噛み
合い効果によって強靭な骨格構造を形成することになる。またこの骨格構造は湿潤物を展圧することでより完全に形成さ
れる。
【0019】
すなわちこのような微細骨格の間隙内に存在する極微粒子の特殊キラのブラウン運動によって急速にポゾラン化が進
行し、骨格構造と複合した堅牢な固化物が形成されるものと考えられる。
小山 清二 出版物ファイル
【0020】
なおセメントは、上記の固化反応が進行していく微細骨格構造を保持するための補助ないし補強をするつなぎ材として
の役割をはたすと同時に、ポゾラン反応に必要なカルシウムイオンを供給する。
【0021】
また巨大なヘドロ層、その他軟弱地盤の上に、このような極微粒子キラと火山灰微砂を含む層を設けた場合も、その固
化層は火山灰微砂の噛み合い効果による靱性によって、たとえその下が未硬化の軟弱物質であっても大荷重に耐えられる
ような、想像以上に強靱な地盤を形成するものである。
【0022】
さらに空隙を埋めるポゾラン生成物は、ヘドロ等の有害物や悪臭等が上方に出るのを強力に遮断する働きをする。
【0023】
なお本発明によってセメントは通常のコンクリートと異なり脇役的な存在となるから、これをバーナー、或いは溶融炉
等で強力に加熱しても、セメントの爆裂作用による割れが無くなり、変形の度合いも減少する。従ってセメントや火山灰
微砂のつなぎ材もしくは骨格材としての働きにより、従来の窯業製品では考えられないほどのセラミックの大型化も可能
となる。
【0024】
【実施例1】
長崎県大村湾のヘドロ(粘土質土砂、河川からの廃棄物や魚の餌粕等の有機腐敗物、海砂等の混合物)
に鹿児島県産生シラス(粒径〇・〇六ミリ以下の微粉を約二〇重量%含む)とポルトランドセメントをそれぞれ略等量と、
該セメントの約八重量%に相当する特殊キラ(ガラス製造における珪砂精製の副産物で約一〇重量%の当該極微粒子を含
む)八重量%を混練して放置したところ、通常のコンクリートとほぼ同様の時間で遜色のない硬化物が得られた。ちなみ
に通常の火山灰、キラ、或いはポゾランセメント、シリカヒューム等を用いても、コンクリートのように強度と耐久性を
有する硬化物は得られなかった。
【0025】
【実施例2】
シラスを原料とする人工ゼオライト一〇重量部、ポルトランドセメント一〇〇重量部、上例の生シラス
一〇〇重量部、上例の特殊キラ八重量部、火山礫一三〇重量部、及び適量の水を所定の混合順序により生コン状に混練し、
成形する。翌日、半硬化状態においてこれを砕石状に分割し、放置して完全硬化させる。得られた砕石状物は他の無機系
硬化材では得ることができなかった完全硬化物であって、水に溶解・分散することが全くなく、また樹脂等で固めた場合
とも異なり、ゼオライトが水中の重金属イオンを吸着する能力を妨げることがなかった。
【0026】
【実施例3】
実施例1の鹿児島産シラスに替えて長崎県普賢岳の火山灰及び火山礫を用い、若干のリグリンスルフォ
ン酸系混和剤と共に、波消しブロック(テトラポット)を成形する。更に魚礁や藻場等のための耐海水性コンクリートと
する。
【0027】
【実施例4】
上例のコンクリートにおいて難固化性の放射性廃棄物を混合して塊状に成形すると共に更に外殻を同火
山灰コンクリートで固め、海底に沈めて、放射性廃棄物の最終処分対策とする。
【0028】
【実施例5】
実施例2の人工ゼオライトに替えて磁鉄鉱山で産出する黒色の磁鉄鉱粉末をオムニミキサーで混練した
ところ、コンクリートでは固まらないはずが、同様に強固な硬化物が得られた。既に粉末では磁気効果やマイナスイオン
効果などにより健康または環境改善のための用途が考えられていたが、固形化により製品化しやすいものにすることがで
きた。
【0029】
【実施例6】
前記同様のヘドロが十数メートル堆積した軟弱地盤の上に、前記のシラスと特殊キラの三:一混合物を
当該ヘドロで湿潤状に混練したものをブルドーザ等で投下し、展圧して三〇センチ厚の層に形成してゆき、その上に、上
記混合物にその一/五重量部のポルトランドセメントと適量のリグリンスフォン酸系混和剤入り水を加えた湿潤状混合
物を散布・展圧して三〇cm厚の層を更に形成し、天然の雨水を得るまで自然放置する。硬化後、更に通常の生コンクリ
小山 清二 出版物ファイル
ートもしくは火山灰コンクリートを打設するなどして表面層を形成し、空港用などの強化地盤とする。
【0030】
【実施例7】
実施例1および実施例3による配合で大型のコンクリート様成形物を形成し、必要に応じ釉薬を塗布し、
その表面にバーナー火炎を噴射して焼結ないし溶融温度に加熱する。その結果、従来の窯業原料ではなし得ない無変形大
型セラミック状物が得られ、鉄やコンクリートに欠く耐腐食性等を付与することができた。
【0031】
【発明の効果】
このように本発明によれば、比較的低コストで資源的に豊富かつ耐久的な無機系素材のみを用いて、
従来のコンクリートや凝結材等では固まらない難固化材料や軟弱地盤を大規模に固化ないし固定することが可能となり、
しかもその固化物は甚だ高物性で耐久性に富むため、新しい成形ないし構築材料となりうるのみでなく、廃棄物公害防止
や環境保全等に大きく貢献できるなどの効果がある。
ところで、二〇〇二年八月二二日付けの日刊工業新聞紙上で、当該特許権が成立したことが掲載されたようだ。以下に
紹介しよう。
《火山灰 コンクリ骨材に ケイ砂使い固化材開発 マグマコンクリート省資源協会
マグマコンクリート省資源協会(岩瀬嘉市会長 住所及び電話等は省略)は、火山灰を骨材にしたコンクリート技術を
確立、特許を取得した。火山灰は固化が難しいとされるが、これをセメントとともに混ぜる混和材を開発。一般的なコン
クリートに比べ、軽量で耐熱性や耐久性にも優れ、低コストでできるのが特徴で、今後、この技術の普及を図る。
コンクリートは骨材となる砂利や砂にセメントと水を加えて混練するのが一般的。同協会が確立したのは、砂利などの
代わりに火山灰を使うもので、火山灰同士の結合を促すため、窯業工場で廃棄物として排出される微粉状のケイ砂を使っ
た混和材を開発した。独自製法で粒径〇・一マイクロメートル程度に細かくしたケイ砂を、使用するセメント量の八%程
度投入すると、骨材の火山灰が固まり、強固なコンクリートに仕上がるという。
同協会によると一平方センチメートル当たり一〇〇〇キログラムの力が加わっても変形しないなど一般的なコンクリ
ートに比べて五倍以上の強度を持つほか、重さも二割程度軽く、またバーナー炎でセラミックス化するほど加熱しても割
れないとしている。
同協会はでは今後、この混和材を製品化して一〇月から販売する計画。処理に困っている火山灰を有効活用することで、
砂利や砂を使う場合に比べコストが低く抑えられるため注目を集めそうだ。》
第2章 新素材技術の広範に亘る普及効果
7 現下のコンクリートの諸難題を解決へ
新素材の各種の画期的な性状は、現在、問題になっているコンクリートにおける骨材アルカリ反応や、中性化問題、酸
性雨問題、結露やカビの発生、海砂による塩害問題、コールドジョイント問題、鉄筋の腐食等によるひび割れ、劣化等の
諸難題も一気に解決できるものである。即ち、堅固で強度性や耐久性や耐候性に富む新素材コンクリートは、現在のコン
クリートの諸難題である酸性雨や温度差、炭酸ガス、塩分、大量の水使用での施工不良等によるひび割れ劣化を確実に防
止できるのは勿論、その耐久性の大幅向上によって建設費用は極めて安価になり、保守点検や維持管理に関する費用も非
常に低減化が可能になり、建設から維持管理に亘って経済的効果も抜群となるものである。
例えば、道路や滑走路に使用しても耐久性や耐候性の大幅な向上と相まって、何回も掘り起こすようなこともなく、補
修も維持管理も不要乃至低減化にもなるであろうと期待されるものである。また、材料面でも、新素材コンクリートは、
廃棄物同等の火山灰と、廃棄物同様の混和剤を用い、骨材も廃棄物同様の火山礫や溶岩で十分だから、その面からも費用
の大幅な軽減化が期待できるものである。なお、現在の海砂は、膨大な水を使って洗浄の手間をかけて塩分を除去してい
るとは言え、かなりの塩分の含有により大きな塩害問題を引き起こしているのが現状だ。新素材に利用される火山灰は、
例え、海底に大量に沈殿しているものから採取してきて塩分が含有していようとも、耐塩性や堅固緻密性により何ら問題
も生じないことも確認されているようだ。
ところで目下、建設材料の砂利、砂等の枯渇化が指摘され、海外から調達する動きも一部で始まっている状況である。
川砂が枯渇しているのは、多くのダム建設で砂がせき止められてしまったことに原因がある。砂利や砂の価格面では内外
小山 清二 出版物ファイル
価格差が大きく、日本の河川から採取するよりも、遠く海外から運んできても運賃を含んでも、実に安価に調達できるら
しい。そうした面からも現在の砂利、砂の代替としても早急に何らかの対策が求められているようだ。
そして、画期的な新素材は、強度や防水性、断熱性、耐火性、耐酸性、耐アルカリ性、耐塩害性、耐久性、防湿性、殺
菌性等に優れた諸性状を有し、防水材や断熱材、各種仕上げ材等を不要にし得る故に、施工コストを大幅に圧縮できる。
それ故に、現在におけるコンクリートの性状の向上と共に、建設コストの大幅な低減化が図られて、経済全体の活性化を
大きく推進できるだろう。現在、多くのコンクリート等が、酸性雨により劣化しつつあるが、これに対しても耐酸性の効
果により、適切に防止し得るであろう。
なお、目下、川砂に代わって砕石を用いた場合、コンクリートのひび割れが促進するするという事例が報告されており、
砕石も完全な骨材ではないようだ。また、海砂の場合は、コンクリート劣化を促進する塩分を完全に除去することは、大
量の水による洗浄をもってしても実際的に不可能に近く、塩害による強度の低下の問題もさることながら、環境問題もあ
り、今後は採取しない方向にあるようだ。こうしてみると、現在の川砂、川砂利、海砂にとって代わり新たな骨材革命が
期待されているのが現状と言えよう。
更に、海岸付近のコンクリート建造物では、海水からの塩害、また積雪地では凍結融解剤等によるコンクリートの劣化
現象が深刻になっており、そして、コンクリート住宅でも結露問題でカビの発生等での問題が生じているが、これらの諸
問題に対しても新素材の耐塩害性、耐酸性、耐薬品性、防湿性、そして殺菌性や滅菌性等により、耐久性の向上から、湿
気防止、カビ抑制等の極めて耐久性に富んだ構造物や、快適な住環境が得られるだろう。
更に、現在、欧米の常識である建造物における外断熱構造に反して、長年、日本では単なるコスト安の面から、安易に
内断熱施工を推進して、結露発生や耐久性の観点から大きな社会問題が指摘されている。そのような事例に対しても、新
素材利用に際しては、断熱材そのものが不要になるため、一切問題外となるであろう。また、化学や薬品等の耐酸性や耐
アルカリ性を要求される各種工場等の床材にも、新素材は極めて効果的であるだろう。そして、各地の温泉地帯でも硫化
ガスによるコンクリートの大幅劣化が問題化しているが、これに対しても、新素材の火山灰コンクリートは一気に解決可
能となるであろう。
そして、火山灰の殺菌性や吸湿性の高性能により、床下のシロアリ対策、浴室のカビ防止等の湿気防止にも効果的であ
ろう。そして、断熱性能の大幅な向上は、コンクリートの畜舎の床に適用すれば、家畜も風邪を引かずに健康や成長にも
大きく貢献できるだろう。そして無焼成で形成できるコンクリート故に、ALCのような熱エネルギーを多量に費消する
軽量コンクリート系の建材にも取って代わり得るもので、石油消費の大幅な節減にも効果的となるであろう。また、断熱
性の大幅な向上は冷暖房に消費する石油やガスのエネルギーの消費に関しても大きく低下させていくことが可能だろう。
目下、東京などの大都会では、コンクリート・アスファルト漬けによる建造物の大量建設、また建物の空調における大
量の廃熱の放出、即ち、都市域の人工排熱(排出熱)の増大、緑地面積の減少による蒸発潜熱の減少、コンクリートやア
スファルトによる日中の蓄熱、夜間の放熱などから、更には、自動車などの大量の排気ガス・廃熱の放出などによって、
大気温度が著しく上昇し、ヒートアイランド化を発生させている。アスファルトやコンクリートでは日中に蓄熱、夜間に
放熱される上、都市インフラの整備で緑地が減ったため、植物の水分蒸散作用による冷却効果も小さくなったと考えられ
ている。目下、このヒートアイランド対策として、屋上緑化などでコンクリート構造物の表面を覆うことが一部で推進さ
れているが、火山灰利用の新素材がそれ自体で優れた断熱性を有しており、敢えて、表面仕上げの対策を講じなくとも、
適切な空隙を保有させて用いれば、更に、軽量、断熱、保水、蒸散作用が著しく向上でき、道路や建造物に大々的に適用
していくことによって、このヒートアイランド化現象を大幅に緩和していけるものだ。
8 公共工事と経済対策
平成二年のバブル崩壊後、景気対策として既に膨大な税金を投入させたり、ゼロ金利から金融機関の抱える多額の不良
債権処理に対しても便宜が図られてきたが、景気浮揚にも資金需要にも至らず、思ったほど効果を上げていないのが現状
であり、これまでの手法である公共工事への投資効果に大きく疑問が提出されている。公共工事の費用対効果における問
題点も指摘されている。それ故に、これからの公共工事が真に必要か否かで論議が分かれてもいるが、不必要な箇所に多
額の工事費が投入されているのも事実であるし、毎年のように掘り起こして再工事をするような無駄な道路工事も多いの
も事実である。
小山 清二 出版物ファイル
公共工事は既に不要になっているのではなく、真に必要な箇所への投資が充分に調査して実施されることなく、将来へ
の展望が明確でないまま、単なる景気対策の一環として、それこそ、ばらまき的発想で行なわれている傾向も強いといえ
よう。環境を破壊し、建設費用の回収に膨大な期間を要し、中には累積赤字が回収不可能なほどに達しているものもあり、
国家財政に大きなマイナス要因になりつつある。景気を誘発して税収を図るといった公共工事による景気の牽引政策が思
ったように効果を上げていないと言えよう。真に重要なことは、公共工事に関しては、国民が納得し、活用や需要が大き
く期待できたり、多大な経済効果が図れるといった側面が強く求められているものと言えよう。
地方自治体の公的施設にしても実に無駄が多いようだ。地方交付金によって安価に建設してきたのは良いが、維持管理
のことまでは考慮してこなかったようだ。目下、日本には世界的なコンサートが出きるようなホールが一八〇〇カ所ほど
存在するが、利用効率も悪く、地元のカラオケ大会をやっているところも多いようだ。英国でも数十ほどである。これな
どは実に恥ずべき文化国家と言えるであろう。また、某地方都市などは一〇〇億円投資して港湾を建設し、その後、産業
誘致の整備もしたが、工場も建設されず、船舶も停泊したこともなく、地元の魚釣りに利用されている有様だ。実に一〇
〇億円掛けて巨大な釣り堀を建設したようなものだ。また、公共工事を増加しても、それ程、雇用の増加や波及的効果が
期待できなくなってきているとも言えよう。
建設工事も従来に比べて、極めて合理的施工になってきており、公共工事の額だけ増加しても、単にセメントや鉄鋼の
出荷額だけ増加させて材料供給や施工会社側に大きな利益をもたらしはするが、国民全体に雇用や税収の増加等で経済的
効果が以前ほどの期待ができなくなっているのも事実であろう。経済での他分野への波及効果もそれほど効果的とはなっ
てきていない。多くの工事が無駄と判断されて、中止や中断に追い込まれていくのは致し方ないことであろう。
目下、環境問題から、多くのダムや擁壁、護岸等の巨大コンクリート建造物が問題になっており、米国ではダムも前政
権時代には解体化しつつあったが、日本でも現在、一部で同様の動きがあるようだ。政府当局の中には、ダムを解体する
ことに大して抵抗はしていないようだとも聞く。むしろ前向きに賛成しているくらいだとも言う。これというのも、奇妙
なことに、単に公共工事という仕事が潤沢に確保できれば、建設でも解体でもどちらでも構わないと言った程度で、極め
て安易な発想でしかないのだろうか。真に国民にとり何が必要かといった必要性、緊急性、重要性、そして経済性の観点
からの検討が大変疎かにされていると思われる。
ところで、経済効果と言えば、東京湾などは半分ぐらいを埋め立てていくべきだろう。東京湾は一日当たり一八〇〇隻
もの船舶が東京湾に出入りする超過密地帯である。それに、東京は、周辺地域を含めれば、実に日本の人口の三分の一の
四〇〇〇万人を占めており、その巨大都市の大東京を支える海洋からの船舶による物流にしては、外洋から湾央までの距
離が遠すぎると言えるであろう。そうした物流の経済的マイナスを是正し、有効土地の拡大を図って、首都圏の過密化緩
和にも大きく寄与することになり、経済効果は計り知れないだろう。その際には、複雑な結晶構造を有する火山灰の噛み
合い効果といった性状が、地盤沈下を防止して干拓にも効果的であり、また、耐火性や断熱性の向上で、有効に新素材を
活用していけば、ヒートアイランド化の問題もクリアできるだろう。東京湾は、一部で指摘されるほどには、当然のこと
ながら外洋に比較的近いことから、内陸部に比べてそれほどのヒートアイランド化現象が発生することはないものと思わ
れる。
こうした東京湾の大規模な干拓といった経済効果が大きいものは大々的に推進していくべきだろう。経済効果の余り期
待できないものの大規模開発は、極力、環境アセスメントを実施して見直していくことであろう。公共工事が全て悪とい
うのではなく、効率性を最大限に考慮して、国家社会にとって真に効果的なものを厳正に選別して開発を推進していくこ
とも必要だろう。一方で、自然景観を大幅に改変する公共工事は、全て破壊に繋がって悪と言った思考を根底から払拭す
ることも大切であろう。
今般の新素材は、火山灰特有の効果もさることながら、高度の性状と相まって、住宅や建設などの面から大幅な建設需
要を強く喚起し、設備投資や個人消費の拡大が期待できるであろう。また、火山灰や火山礫等の原料の採取、運輸、保管
等での流通産業面でも経済的波及効果が一体となって、総合的に景気を大きく快復していく起爆剤となるであろう。目下、
不況で倒産の危機に直面しつつある流通や不動産、建設業界にとっても、また国家社会にとっても、正に救世主的な技術
革命、材料革命、産業革命となるであろう。
9 新素材の住宅面における種々の波及効果
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火山灰利用の新素材は、身近な住宅問題をも大きく解決させる効果を有している。即ち、良質安価な住宅の普及に大き
く貢献できるのは言うまでもない。現在、日本の住宅事情を見ると、先進工業諸国に比較して、価格も極めて高いにもか
かわらず、狭小であり老朽化も顕著である。特に狭い国土と稠密な人口構成により、現在はデフレ経済下で地価も低下し
てきているとは言え、先進諸国に比べても、宅地供給量が少なく、未だに所得収入に比べても高値安定に留まっており、
加えて木造中心の住宅は、我国の高温多湿の気候風土の影響から極めて早く老朽化し易い傾向にある。
目下、我国の住宅に使用されている構造は、純木造、鉄骨併用木造、鉄筋コンクリート造等があるが、圧倒的に木造系
が多い。それは、木造系は、価格がコンクリート系に比べて約半分程で済み、昔から慣れ親しんで来た伝統があるからで
ある。それ故に、例え木造系の住宅がコンクリート系の住宅に比較して、耐用年限が約半分しかなく、防火性や防音性で
劣っていても、容易にコンクリート系への転換が促進されないのが現状である。もっとも、木造住宅の耐久性が著しく欠
如しているのは、木材の長所である吸湿性や通気性を著しく喪失させるような、不燃性重視の過剰な法制度や設計手法に
よるところも大きい。
ところで、現在の日本における木造系住宅の中核的材料である木材は、殆どが東南アジア、アメリカ、カナダ、沿海州
等の諸外国に依存し、国内の供給量は極めて少ない。木造住宅も、その地方独自の気候風土の下で生育した木材をその地
方で利用すれは、木材の性質上、大自然界の空気、水、風等の諸要因に対する調節・調湿の機能が最大限に発揮され、樹
齢の年限ぐらいは使用に耐えることが可能である。これは、日本古来の様々な木造の建築物が、今なお、それ程に老朽化
することもなく、現存している事実が立派に証明していると言えよう。
然るに、現在の木造住宅に大量に使用される海外産の木材は、海外の生育地において利用されてこそ、初めてその地の
気候風土と調和して長期の使用に耐えるのであり、日本独特の気候風土の下では、その木材の本来の優れた性質を著しく
狂わせ、病虫の発生も多く、耐久年限も短いものとなりやすい。実際、ラワン材等も産地の東南アジアで使用すれは、余
計な防虫処理も要らずに耐用も長期に亘ることが可能なのである。
今日、木材の乱伐により、森林が疲弊し、その為に洪水や土砂崩壊等の自然破壊が世界的に発生しており、一方では土
地の極度の乾燥化も招来し、これ以上過度の木材伐採は、地球全体の環境保全の点からも、各国とも厳しく制限していく
必要があり、全世界が協力して考えていく時期に来ているものと思われる。我国としても、地球の森林資源保護という面
から、木材の過度の消費を回避すべく、耐用年限の短い木造系住宅に代替できる安価で耐久性ある材料を用いた住宅を普
及させていかねばならない。これは一業界の立場を越えた国家的な課題と言えよう。
さて、今回登場した火山灰利用の新素材は、耐候性、耐久性、耐火性、断熱性、防湿性、高強度、意匠性、防水性など
の種々の優れた性能により、住宅に適用した場合には、従来の木造系及びコンクリート系の住宅の概念を大きく変革し得
るものとなるだろう。つまり、木造並みの価格でコンクリート系以上の耐用年限や諸性能が得られるものである。また現
在、木造住宅施工における最大の悩みは、大工や左官等の熟練労働者の不足であるが、新素材は、断熱、防湿、防水、仕
上げなどの内外装仕上げは不要であり、施工全般においても特別の技能も必要としない。そして、最近問題になっている
アスベストの断熱材の使用もなくなり、その被害からも解放されるだろう。因みに、アスベストは、火山から噴き出た溶
岩が水で冷やされるとき、特殊な条件のもとで結晶化して出来るものである。
ところで、現在のコンクリート住宅は強度があって耐震的であるが、木造と異なって通気性がなく湿気や結露の発生が
最大の欠点である。然るに、火山灰コンクリートの場合は、従来のコンクリート以上の堅固性は当然だが、また木造のよ
うな通気性がないのも当然であるが、火山灰特有の吸湿性や滅菌性、殺菌性の特性からも、湿気防止にも威力を発揮し、
カビ対策、結露対策にも効果的となり、神経の安らいだ健康住宅に大きく貢献できるだろう。また温泉地帯の観光地にお
けるホテルなどの浴場のタイルや排水溝のブロックなどは酸にやられて崩壊しやすいが、火山灰コンクリートを利用すれ
ば、強度の耐酸性により、耐久性も抜群となるであろうと期待されるものだ。
何よりも、豊富な国内資源の火山灰や火山礫を活用して、常温常圧下で硬化脱型が可能で、しかも強度、防水、耐火、
断熱、耐久等の諸性状に優れていることから、資材費や施工費を始め、暖冷房等の維持管理費も極めて減少させることが
可能で、良質安価な住宅が実現できる。そして、現在の宅地供給量の漸少化に対応して、居住空間の最大限の有効活用を
図るべく、目下、地下室や高層化、そして連棟建て化が普及しかけつつあるが、この新素材はこれらの多様化に要求され
る諸性質が抜群であり、住宅の今日的な課題にも充分応え得るものである。即ち、住宅における地下室や床下の湿気や防
水対策にも効果的であり、特に強大な防湿性や殺菌性や防蟻性により、床下や天井裏、壁内部のシロアリ対策には絶大な
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効果を発揮し、また浴室の湿気防止やカビ対策にも効果的であろう。
これ迄、日本の住宅は地下室に対しては、我国の地下水位が極めて高くて充分な防水ができず、完全な防水を期すには
極めて高価につくことから普及も消極的であった。ところが地下空間は、暗くて陰気で湿気も強いといった先入観が固定
されているものの、夏涼しく冬暖かいという恒温恒湿の省エネ空間であり、物の貯蔵にも最適である。また周囲が土とい
う最良の遮蔽効果による優れた防音断熱空間でもある。新素材は、優れた防水、防湿、断熱性を有するので、従来の過剰
な湿気防止対策をも軽減させて、寝室以外の全ての用途に、即ちピアノ室、書斎、娯楽室、オーディオルーム、台所、食
事室、浴室、倉庫等に利用可能となるものである。新素材は、これら地下室に要求される様々な性能的要求を満足させる
ものであり、更にその格別に優れた耐火性や防水性や強度性は、万一に備えての核爆弾に対する遮蔽体としても、充分に
威力を発揮して、地下防空壕として充分機能し、且つ極めて安価に建造され得るものである。
このように、火山灰利用の新素材は、我国の住宅問題を、良質安価、耐久性の向上、居住空間の拡大、省エネ設計等と
各種要因を満足させてくれることによって一挙に解決していくことだろう。住宅は、衣食(最近は医職)と並んで人間の
生活の根本要素であり、日々の活動を支える源泉である。従って、どんなに自動車や各種電気製品等の産業技術が高度に
成長発達して便利になり、合理化努力によって良質低廉化が実現されていっても、毎日の安眠や思考、食事、一家団欒等
の諸行動を包み込む器としての住宅自体が、住宅ローンの返済期限を下まわって耐久性が欠如したり、高価格に留まって
いたり、品質的に種々の問題があって旧態依然とした耐久性では重大な社会的問題を招来させていくだろう。
即ち、それは国民生活に多大なる不平不満を生み、健全な精神の育成をも大きく阻害し、国民全体の活力の低下となっ
て重大なる社会問題を持たらしていくことだろう。現に、その危機的症状すら呈して来ていると言っても決して過言では
ないであろう。正に、火山灰利用新素材による良質安価な住宅の強力な普及展開は、国民の住宅に対する願望や期待に充
分応えられるばかりか、新築や建て替えを含めた住宅建設を促進させ、その結果、内需拡大となって景気回復にも多大な
波及効果を持たらすことになるだろう。
10 新素材の建設用部材としての利用
火山灰利用新素材は、強度、耐久、断熱、耐火、防水、軽量等の各種性能に優れ、世界に通用する画期的な多機能素材
であり、建築や土木の全分野において活用でき、現在のコンクリート材料に充分代替でき、そして性能を越えるものであ
る。
即ち、建築の分野では、防水性や耐候性を要求される屋根材を始め、壁材、そして十分な強度が必要な床材、更に防水
性や強度の要求される地下壁材等である。また、現在の砂利・砂使用のコンクリート材料に比較して、軽量で強度が優れ
ていることから、より少ない資材で高層化も図られ、積載荷重も上回る等の数々の利点が得られるものである。そして、
何よりも耐火性の大幅な効用より、建物の不燃化から都市の不燃化が達成されるというものだ。一方、土木の分野では、
トンネル覆工のセグメントや、橋梁、防音壁、電柱、線路敷、浮き桟橋、海上空港等であり、更に新素材を、施工現場で
組み立てた型枠内に流し込んで大量に打設する等の工夫をすれば、ダムや岸壁等の大規模な建設事業分野に広範に利用し
得ることであろう。
なお、天然の火山灰・火山礫を建築の構造体に用いることは、現状では皆無であり、焼成加工等をして仕上げ材等の一
部に利用している程度である。しかし、土木の分野では、火山灰地を中心に、昔から道路や岸壁等に身近な材料として、
知らず知らずのうちに大いに利用されており、耐久性も比較的長いことが実証されている。例えば、既に指摘したように、
明治時代の小樽運河やその他多くのダムや岸壁、護岸、道路工事等において用いられてきた経緯があった。然るに、セメ
ントの普及によって、次第にその効果が忘却され排除されていったようだ。
ここで、新素材は道路にそのまま敷設して利用することもできるが、火山灰自体を、道路舗装の主材料として活用する
方法も可能である。目下、道路舗装には、コンクリート舗装とアスファルト舗装の二種類があるが、どちらも一長一短が
ある。即ち、コンクリート舗装の方は、コンクリートの収縮亀裂を防止する為に接合目地を設けなければならず、またコ
ンクリートでは堅すぎる為に、頻繁に移動する重量物を支えたり、傾斜地等で摩擦力を求められる場合は有効ではあるが、
高速で走行する車にとっては、タイヤの摩耗や、接合目地部からの振動の点で余り好ましいものとはいえない。
一方、アスファルト舗装は、コンクリート舗装に比較して粘弾性を有し、接合目地も殆どなくて済み、車の高速走行に
おいても、タイヤの摩滅や振動も少なく、快適さが得られるものである。しかし、アスファルトの性質上、夏期の高温時
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にはアスファルトが溶融したり、また冬期の低温時には、アスファルトに亀裂が入ったりして温度変化に対して弱く、傾
斜地にも不向きで、補修も頻繁に必要として出費も多い。
ところで、天然の火山灰は、透水性が良好で、耐火性、耐摩耗性、断熱性(低熱伝導性)にも優れ、適当な粘性を有し、
道路舗装の材料としては、極めて優れた性質を発揮し、極めて多大な資源、エネルギーや経費の節減が図れるものと期待
できる。即ち、天然火山灰を道路舗装材の主原料として、混和材・混和剤や火山礫・溶岩などの粗骨材とともに、アスフ
ァルトやセメントと混錬して密着させれば、天然火山灰、アスファルト、セメントの各物質の特性が生かされて、粘着性
に富んだアスファルト舗装やコンクリート舗装の安定強固な路盤を構成し得ることだろう。
そして、コンクリート舗装のように堅すぎることもなく、またアスファルト舗装のように、夏の暑さや冬の寒さに起因
する軟化流動や脆弱亀裂を生じるようなこともなく、現在のコンクリート舗装やアスファルト舗装における様々な欠点を
解消し、耐摩耗性に優れ、防水性を具備し、長期使用にも充分耐え、経済性の高い道路舗装体を得ることであろう。天然
火山灰、アスファルト、セメントの配合のみならす、層構成にも工夫し、敷き均し方法や転圧方法、そして養生方法にお
いても、経済的で合理的な工夫が講じられて、火山灰利用道路が大々的に普及されることが期待される。
実に、火山灰利用新素材は、身近な住宅への適用ばかりでなく、低廉で耐久性に富む建設材料全般に普及し得るもので
ある。即ち、従来の建築分野に加えて、ダム、橋脚、護岸、擁壁、トンネル、道路、基礎、セグメント、空港、港湾等の
土木分野全般の対象分野においても適用されるものであり、実に、建築土木の建設分野全般の広範多岐に亘るものであろ
う。それに、高度の耐酸性や耐アルカリ性、対薬品性、殺菌性や滅菌性などのために、温泉地帯の排水溝や入浴施設、病
院や医療施設、また化学・薬品工場などの特殊な用途にも需要が大幅に見込めるものだ。、
現在の建設工事において多用されている建設材料は、鉄とコンクリートの組み合わせで、、鉄筋や鉄骨を補強材として
コンクリートで硬化せしめるものである。このコンクリートは、砂利、砂、セメントに、各種混和剤を加えて混練させた
ものである。即ち、主要材料は、鉄、セメントの他には、砂利、砂などの骨材である。目下、鉄はサビの問題があり、ま
たセメントも粘土などの不純物の混入などで問題を抱えている中で、砂利や砂にも暗雲が垂れ込めてきている。
即ち、年々、建設需要の増大化と共に、河川からの砂利、砂の供給が減少し、今では砂利においては岩石を破砕加工し
た砕石を大幅に使用し、砂においては海砂を多量の水で洗浄して塩分を落して利用し、更には製鉄所等で大量に産出され
る高炉スラグ等の産業廃棄物までもが代替材料として活用されているのが現状である。
砂利や砂の河川からの供給が先行き不安な状況下にあるのは、建設需要の増大化もさることながら、河川が以前よりも
多量に砂利や砂を供給しなくなったことも原因している。即ち、上流に水を貯留する為に建設されたダム等によって、砂
利や砂を下流域に押し流す水の量や流速が調節されて、河川が砂利や砂の河口への運搬能力を次第に喪失して来ており、
河口から海に運搬堆積される土砂も減少して海水による海岸浸食も進んでいる有様だ。
そしてダム自体が、年々、多量に堰き止められて沈殿しつつある砂利や砂を蓄積して来ており、本来の水の貯留施設に
代わって、不本意ながら、砂利や砂の貯蔵施設に変遷して来ているのが実状である。なお、砂利や砂の深刻な不足化につ
いては、可成り以前に政府の某資源調査会が、川砂利も次第に枯渇し、砕石もやがて限界になるとして、産業廃棄物の積
極的活用を推進すべきである旨の答申を提出している。そして現在では、中国や韓国、そして沿海州各地の外国から購入
しつつある有様だ。
こうした砂利、砂の憂慮すべき欠乏化、枯渇化に加えて、コンクリート硬化に際し急激な乾燥による収縮亀裂を防止す
る為に、場合によっては、多量の石油等を使用して養生しなければならず、そして施工の際には、太陽の光熱や降雨や雪
や風等の温熱変化によるコンクリート自体の亀裂の発生を防止する為に、目地を設けたり、念入りな仕上げ加工を施した
りすることが要求され、更に施工後には、コンクリートの亀裂部への雨水の浸入、凍結、膨張による亀裂の拡大化といっ
た現象に対処して、充分な補修をしていくことが必要となっている。
このように、現在の鉄筋コンクリート等は、資材の供給に不安定要因があり、施工・製造や維持管理でも多大なるエネ
ルギーや手間を要するものであり、現下のエネルギー情勢や人件費上昇化の下では、年々の様々な技術開発や合理化努力
にも拘らず、建設費の上昇を余儀なくされているのが実情である。
さて、火山灰利用の新素材銑テラは、既に説明したように、我国に極めて豊富に賦存する火山灰、火山礫を枯渇してい
く河川や岩石からの砂利・砕石や砂に代えて使用でき、またガラス鉱石の精選過程で廃棄される多量の産業廃棄物のキラ
(ガラス質微粉末)をも積極的に活用して、従来のコンクリートの諸性質を、資材面やエネルギー面や供給面、そして施
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工や製造・維持管理等の各面全般に亘って、著しく改善し向上させて、その概念を大きく変革するものである。
例えば、断熱、防湿、防水、仕上げなどの内外装不要の、且つ繊細なレリーフ模様や様々な色や図柄を転写することも
可能な新素材銑テラの活用により、目下、広範に用いられている木材、レンガ、タイル、樹脂、金属等の各資材も著しく
量的に節約が図られることであろう。これらの資材は、海外依存率が極めて高いか、エネルギー的に圧迫を受けているか、
アスベストなどの環境や公害等の問題を抱えているかの何れかである。
即ち、木材は先述したように、海外に多くを仰ぎ、今後は極めて限定された内装仕上げ材や家具材としての用途に制限
されさるを得なくなるだろう。また、親しみやすい素朴な材料と言うこともあって、建築の分野に我国で明治以来、西洋
建築の普及に併せて多く用いられていたレンガも、一時、他の建設材料に押されて下火になっていたが、再度、最近にな
って、その美観性などにより大々的に登場して来た。しかしその原料である土は三〇年程も経過した堆積土しか使えず、
年々の宅地化と共にその供給量も減少しつつある。その上、土の加工成型は容易であるとはいえ、乾燥や焼成に念入りな
温度管理と多大な日数及びエネルギーを費消しているのが現状である。タイルもレンガと同様な状況下にあり、今後の厳
しいエネルギー事情を考慮すると、その用途や生産は次第に制限されていかざるを得なくなるだろう。他の多くの防水、
断熱、仕上げなどの樹脂建材も同様に、エネルギー多消費の建材である。
一方、新素材の強度性と軽量性(内部空隙化)の向上は、主要資材の鉄やセメントを節約でき、建設費の経済性をも著
しく改善し向上させるものである。この軽量化とは、骨材の火山礫の内部空隙が確保されることにより達成できるもので
ある。恐らく、鉄やセメントは、個別コンクリート製品では従来の三~四割程の節減が可能であるが、鉄は新たに型枠材
や補強材として重要な位置を占め、またセメントも広般な新素材の用途拡大によって需要も大きく伸びるものと期待でき
る。
目下、内需低迷と国内財政事情の悪化の下で、景気回復策と財政再建策の選択に迫られつつあるが、火山灰の大々的な
活用によってより良質で耐久性に富んで低廉な建設工事の大幅な需要拡大が図られ、これの強力な推進を通じて景気の大
幅な振興と財政の節減の両立を達成していけることであろう。
そして何よりも、耐久性や価格の面で著しく向上改善された火山灰利用新素材は、目下、石油高騰による景気の後退局
面に苦渋し、国民総生産の約二割を占める建設産業全体にも大きく貢献し、利用者、発注者である国民全体にも多大なる
利益を持たらしていくことであろう。他方で、不当に高い建設費を積算して、談合問題で揺れる一部の建設業界にも、体
質改善を迫りつつも新鮮な息吹を注入し、根本的な意識の変革をもたらしていくことであろう。
11 資源エネルギー問題の解決と展望
(1)資源エネルギー問題の背景
我国は、国家経済の基盤となり国民生活の安定と向上に大きく関わる資源、エネルギーの大部分を海外に仰ぎ、食糧の
自給率も低い。中でも、特に石油は国内消費の殆どを海外に依存し、我国への供給地の三分の二以上が中近東地域で占め
られて極めて偏在している。昨今の中近東情勢の険悪化に伴い、石油供給地域の多角分散化や代替エネルギーの多様化を
強力に推進してはいるが、思ったほどには効果が上がらず、逆に益々中近東に対する依存率も上昇しているようだ。一方
で、割高な原油の提供を余儀なくされたり、多額な経済援助資金の供与を迫られるといった面も多い。
石油は目下、世界的景気後退による消費節減にもかかわらず、中国やインドなどの著しい経済成長と共に価格の高騰に
拍車がかかり、他方で原油資源の枯渇化も指摘されており、今後益々、波乱含みで推移して供給量や価格等の面で需給の
逼迫化は不可避と考えられている。それに石炭の液化やガス化、原子力等の石油代替エネルギーの開発も、種々の技術的
困難性に加えて、安全性や採算性の面で容易に進まず、石油代替の確実な主役となり得るものは未だ登場していない。水
素エネルギーも、価格や安全の面で商業的利用に至っては可成り先の話であろう。それ故、ここ当分は石油が中心となっ
て国民経済の原動力となっていく感が強い。
この世界的エネルギーの中核をなしている石油の生産は、今日では中近東に集中している。そして、日本を始め先進工
業諸国、そして中国やインド、東南アジア諸国などの石油調達の過半は、実にこの中近東諸国に依存しているのが現実だ。
また、最近はロシアの原油生産が好調とは言え、近い将来、新規の有望油田が大々的に発見されて、大規模に商業生産化
されなければ、このままでは、世界的にも油田の老朽化により、石油供給に不安定感が漂い始めることであろうと指摘さ
れている。
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今日、徐々にカスピ海地方で新規油田が開発されているが、厳しい原油争奪戦が引き起こされる傾向があり、新たな火
種になりつつあるようだ。中国やインド、東南アジア諸国を始め発展途上国の原油消費量も大きく伸びてきているのも、
原油価格の高騰化や消費量の増大化を招来し、世界経済に不安材料を与えているようだ。今や、世界各国とも、新たな油
田開発や中近東諸国からの石油の安定確保に向けて自己の生存権を保障するべく、何らかの手段を講じさるを得ないこと
が極めて現実的課題として登場している。
従って、かなり前までは、世界的景気低迷に伴う石油消費量の減少により、石油需給も緩和気味だったが、イラク戦争
後の昨今の不安定な中近東情勢を展望すれば、実に中近東全体が一触即発の軍事的動乱に巻き込まれるや否や、石油情勢
は再び暗転し、単に経済問題だけに止まらず、正に世界全体が運命共同体として軍事的衝突にまで巻き込まれていかざる
を得ない状況となってきたようだ。
その為にも、我国も石油を始めとした各種資源エネルギーや食糧の備蓄増を真剣に検討し始めていく必要が出てきたよ
うだ。日本では政府や国民全体に全く危機感がないのが懸念される。今や原油を中心として、資源、エネルギーの消費節
減の強化と、食料等の自給率の高度達成に向けて、早急に具体的且つ強力な対策を推進すべきであろうと思われる。
目下、エネルギー供給の約三割を占める原子力が反対運動の高揚と共に停滞化し、石炭、石油等の化石燃料も地球温暖
化対策の下に計画の大幅見直しが要求されており、さりとて、水力も自然環境破壊等でダム建設にも支障を来しつつある
のが現状であろう。事実、米国でも、ダムの効果が疑問視されて、新規の建設工事の中止や見直し、従来のダムの解体も
実施されつつあるようだ。日本でも多くのダムが建設中止に追い込まれつつあると言えよう。また、風力や潮流を活用し
た発電も、日本では欧米諸国のようには大きく普及していないのが実状でもある。
日本の原子力発電所は軽水炉であり、構造的にも、国民が想像しているほどには、ロシアのチェルノブイリで使用され
た黒鉛炉ほどの欠陥や危険性が無いものであるが、原爆の後遺症的感覚での先入観が災いしているのが危惧される。経済
コストからいうと、再処理技術の向上をも含めると、原子力がもっとも経済的であると言えよう。最大の障壁は解体処分
の費用や高レベル廃棄物の処理が解決されていないことでの反対であろう。しかしながら、これは後述するように、火山
灰利用の新素材技術により解決が可能である。現代では、原子力の危険性よりも、むしろ合成着色剤等の食品への添加物
の化学物質の方がより危険であると言えよう。
風力発電も日本では、地形の複雑さや季節変動の面から、欧州のドイツなどで活発に建設されている程には、さほどの
効果も期待できないだろう。目下はそれほど問題化されていないが、何よりも電磁波の発生により、民家の近い場所では
環境問題で難点があると言えようか。また、経済性の観点からも現在では欧米でも海岸に近い海上での建設が検討され推
進されつつあるようだ。
何よりも、エネルギー供給の五割ほどの占有率がある石油や石炭等の火力発電所が大きなウエートを占めつつあるが、
ここに来て、石炭や石油等の化石燃料が地球温暖化対策で大幅削減の対象になってきている。ただし、産業競争力の観点
から、これ以上の省エネの進展が期待できないジレンマに陥っているのが現状である。世界の炭酸ガス排出量の約四分の
一を占める米国が、京都議定書からの離脱を二〇〇一年七月段階で産業の競争力確保の観点から決定したことからも、議
定書の目標達成が懸念される有様だ。
(2)石油消費の大幅節減に向けて
そうした現状下において、今後、火山灰利用新素材が大きく普及し、強力に推進していくことは、石油エネルギーの大々
的な節減が期待できるだろう。即ち、新素材コンクリートの常温・常圧での硬化による製造方法、そして優れた数々の断
熱性能、耐久性、防水性、耐火性等の高度な多機能性により、建設構造物では維持管理や保守点検作業の大幅削減が可能
になって、建設事業分野のみばかりでなく、全産業分野の代替材料へと展開し、我国の各種資源の大幅な節約になるのは
もちろん、石油を中心としたエネルギー消費の大々的な節減になるものである。
実に、断熱性や耐火性、防水性などの大幅な向上により、現在、建材として使われているエネルギー多消費の各種材料・
製品の多くが淘汰されていくだろう。例えば、タイル、煉瓦、屋根瓦、セラミック製品、ALC建材、樹脂成型製品、防
水シートや断熱材の各種内外装建材である。こうした建築材料の製造面において石油の大量使用からの解放が図られ、ま
た、断熱効果の大幅な向上による建造物の冷房や暖房に要する維持管理面でのエネルギー負荷も大きく低減できて、国家
社会にとって計り知れないほどの多大なる効果が得られるであろう。更に、アスファルト道路やコンクリート道路を、極
めて耐久性に富んで経済性の高い火山灰利用の道路に転換していけば、耐久性の向上により維持管理上の経費も節減でき
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るほか、アスファルトやコンクリート、セメントの使用も大きく節減できて、石油消費の削減に多大なる貢献をもたらす
ことができるだろう。
目下、鉄鋼やガラスの製造における溶鉱炉でも多大なる石油やガスのエネルギーを消費しているのが現状であり、そこ
で使用される溶鉱炉の耐火煉瓦は、耐火性欠如の故に、精々二、三年ほどで劣化して交換しているのが実状である。そこ
で、鉄鋼やガラスの製造分野でも、耐火性のある新素材による耐火煉瓦を用いれば、僅かな期間で交換することもなく、
また、耐熱性と併せて耐久性、耐火性や強度性の向上により、補修や交換にも大幅な改善効果をもたらすものであり、ま
た耐火煉瓦自体の製造面でも、石油やガスのエネルギーの大幅な節減が期待できるであろう。
それに、高レベル放射性廃棄物、建設廃材、各種産業廃棄物の処理をはじめ、産業面や生活面の両面からの石油消費の
大幅削減を可能にしていく展望が開けてきたと言えよう。それに、石油消費の大幅減少化は、目下、問題になっている地
球温暖化対策による炭酸ガス排出量の削減に対しても大きく貢献できるだろう。
資源エネルギー多消費の我国の現状や産業構造をも大きく変革し得るためにも、火山灰利用新素材を広範多岐に応用し
ていくことが必須だ。即ち、火山灰抽出の耐アルカリ性ガラス繊維の補強材との組み合わせによる様々な代替材料の広範
な普及の展開が必須だ。現在、金属にとって致命的欠陥は錆びるということであるが、火山灰利用新素材は防錆効果が優
れている上に、粘弾性もあって加工し易く、大部分の金属の防錆効果を図って耐久性向上にも大きく貢献し得るものであ
る。そして金属や樹脂成型品や木材等の代替化を、この新素材に係る火山灰モルタルと適当な補強材との組み合わせによ
り、積極的に推進することによっても得られる資源エネルギーの節減量は実に膨大なものとなるだろう。
建設事業分野では、既述したように、火山灰、火山礫という無焼成天然資源を常温常圧下の太陽光熱により、早期に硬
化脱型させて種々の優れた性能を具現させることから、焼成や養生の為の石油エネルギーを不必要にし、また断熱性の向
上から暖冷房用の石油等エネルギーの大幅な節約にも成り得て、更に耐火性を要求される各種工場や施設に利用すれば、
熱の損失を最小限に抑えることができ、エネルギーの節減効果は実に多大である。
それにこの火山灰・火山礫は、火山国の我国には極めて豊富に賦存している、いわば無尽蔵の天然資源である。我国全
体、また、産業分野別による具体的な石油消費量の節減量は経済やエネルギー等の専門家による協力を仰がなければ何と
も言えないが、恐らく、産業部門、民政部門の両方を併せた現在の我国経済における石油消費量の半分ぐらいが節減でき
るのではないだろうかと期待できるのである。某研究者の試算によれば、全国で使用している骨材の二分の一を火山灰、
火山礫に代替すると、その強度性と軽量性の為に、年間で、鉄材の節約量が約二〇万トン、セメント量は約一五〇〇万ト
ン、そしてこれらの製造に要する石油量が約一〇〇万キロリットルも節約できるという。
更に長大な海上輸送航路帯(シーレーン)によって我国に搬入される各種資源エネルギーは、我国の経済的規模の巨大
さから言って膨大な量であり、運搬面で消費されるエネルギー量だけでも実に多大であり、国家の安全保障上も誠に危惧
されるものである。海外に多く依存する資源、エネルギーの輸入量を大幅に減少し得ることは、今後の激動化し緊迫化し
ていく国際情勢を展望すると、我国経済基盤の健全化をもたらし、国家の総合安全保障の強化にも資するものであろう。
現在の我国の資源・エネルギーに係る海外依存の高さを大幅に是正し、国際的危機に早急に対処するべきだろう。
最早、現状では省エネ対策の限界に達している以上、こうした画期的な新技術開発によるエネルギー革命、資源革命以
外にないであろうと確信するものである。石油消費の大幅削減は、ある意味では、現在の石油産業や建材産業等に多大な
る影響を及ぼすものであるが、技術革新による社会や産業の進展の波に適切に対処していかねば、新時代に大きく取り残
されていかざるを得ないだろう。国家的見地に立ってエネルギー情勢を展望すれば、石油資源の海外依存の体質を大幅に
改善することは、最早、業界レベルを超えた国家的要請でもあり、実に国策とも言えるものであろう。政府としても産業
構造転換に向けて政策的に誘導していく各種の施策展開の必要性も出てきたようだ。実に、我国に無尽蔵に賦存する火山
灰・火山礫を利用した新素材の強力な普及の推進は、我国経済の命運を決するものとなるだろう。
そして後述するように、火山の原理解明により、エネルギー自立化への大幅な第一歩を歩み出すことができるようにな
るであろう。勿論、国民総意で厳しい産業構造の大変革を併行して実行していくことが前提である。正に新たな国家的エ
ネルギー戦略の再構築が求められるであろう。ある面では、二〇世紀文明の象徴であるオイル文明からの文明史の大転換
となっていくことであろう。
12 自然との調和を目指した環境造りへ
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現在のコンクリート建造物が環境破壊であると各界から指摘されている。確かに動物の生態系を破壊したような建設工
事が多いのは大問題である。ドイツ等は道路の建設に併設して、動物の通過する陸橋やトンネル、地下道などを確保する
ような配慮をしている。我国も例え建設コストが上昇しようとも、自然環境対策上大いに参考にしていくことであろう。
目下、建設省は環境破壊となっている全国のコンクリート建造物に関して、鳥や虫、魚や動植物が棲息する河川や擁壁、
ダム、護岸等の復活を目指して、自然と調和した環境造りのために大幅な見直しを実施しようとしている。
それでも自然景観を確保するだけの岩石や木材が不足し、大幅な実現は不可能であると思われるのである。現在、某企
業でも、溶岩等の多孔質材料を表面に用いて、気孔部分に植物が繁茂し昆虫が棲息するように、環境的配慮や工夫も為さ
れてきているようだ。しかしながら、従来のコンクリートとの接合面に、エポキシ樹脂等の化学物質を使用することで、
新たな環境問題を生じさせることが懸念される。
新素材コンクリート技術は、最初から溶岩や火山礫等の多孔質部分を表面に露出させて、型枠の代わりとして利用する
ことにより、その内側で火山灰モルタルを混練させることが可能である。エポキシ樹脂等の接着剤を使用することもなく、
環境破壊の問題もないと言えよう。こうした火山灰や火山礫、溶岩等の火山噴出物の大幅な活用により、表面に露出した
多孔質部分に土が溜まり、植物の繁茂を生み、それが昆虫や鳥を棲息させ、河川や海洋では魚や虫の棲息を招き、至って
は動物の繁殖をも発生させて、自然と調和した豊かな環境を現出させることができるであろう。
現在のコンクリートでは、虫も植物、魚や鳥も繁殖しないものであり、蛇やトカゲすら、切り立ったコンクリート壁体
を登れないといった、実に平滑な表面を形成し、また、太陽光熱に対しても気温上昇を招いて、動植物を全く寄せ付けな
いほどで、確実に生態系を破壊し、人間の心の荒廃をも招いていると言えよう。新素材を活用して多孔質な表面を露出さ
せて、ダムや護岸、防波堤、人工島、擁壁等に適用していけば、表面に草やコケが繁茂して、周囲の自然にも巧く調和し
て環境の保全に大きく貢献できるだろう。
また、産業廃棄物でも、新素材で固化させたものは、塩害にも強く、恐らく海洋投棄しても何ら悪影響はなく、また、
海藻や貝が繁茂する環境を醸し出し、魚礁としても多大なる効果をもたらし、波及効果は抜群となるであろう。正に、豊
富な火山灰や火山礫、溶岩等は、大自然がもたらした最大の自然廃棄物であるが、これらを有効に活用していける方向が
見出せたことは、火山国としての日本に対する神仏の恵みを痛感するものである。今こそ、火山国の特質を生かした、大
自然との調和ある国土環境造りを大々的に推進していく展望が切り開けてきたと言えるであろう。
13 砂漠を中心とした農林緑化の推進
火山灰利用の新素材の登場を始め、火山灰の様々な有効利用の方向が見出されつつある現在、我国の国土を再評価し、
新たな活用を検討していく必要も出て来た。既述したように、我国は多数の火山を有し、その噴出物である火山灰、火山
礫は全土に及び、その賦存量は無尽蔵である。即ち、比重の関係上、やや重い火山礫や一部の火山砂や火山灰は火山地帯
周辺に落下堆積し、微粉末の多くの火山灰は偏西風に乗って噴火地帯より東側一帯に運ばれて降下堆積し、我国全域に及
んでいるものである。
火山灰・火山礫の賦存地帯は、その噴出時期が比較的新しいところや、風化がそれ程には進展していないところでは、
その性質上、田畑にも利用できない荒地となっていて人家も極めて少ない。そして我国特有の気候風土の下で、火山灰堆
積層の風化変質が進んだところでは、火山灰は天然の肥料となって肥沃な田畑や草地、そして森林地帯となっている。火
山灰・火山礫の賦存地帯は、また大部分が国立・国定公園等に指定された風光明媚な地域でもあるが、そうした開発規制
以外の区域でも、新素材に係る不純物のない火山灰・火山礫は充分に確保されるものと期待される。しかし、狭い国土の
有効利用を最大限に図ることは、大自然の生態系の破壊や疲弊を極度に生じさせない範囲において、経済的効果を充分に
考慮して推進していく必要があろうと思われる。
こうした観点に立つと、火山灰・火山礫を積極的に採取して活用を推進することは、火山灰利用新素材や火山灰利用道
路として、当該天然資源の有効利用が促進されるばかりでなく、跡地の活用の点からも、我国の国土に多大なる波及効果
を持たらすものである。即ち、火山灰・火山礫を採取し除去することによって、古い地層を露出させて平担化した地域は、
宅地を始め田畑や森林地帯に生まれ変わることであろう。また表層が森林や畑地・草地で覆われている地域も、その下部
に存在する火山灰・火山礫の採取により、再び地表面の形を変えて森林や田畑・草地に転換していくことも可能であろう。
我国は国土も狭く可耕面積も少ないものであり、多大な人口はまた食糧の過半を海外に依存してもいる。そして急峻な
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山林地域は、森林の伐採や植林等の事業を始め土砂の崩壊防止の諸管理をも困難にしている。従って、火山灰・火山礫の
大規模な採取による田畑の拡大や森林地域の安定的管理は、農作物の自給自足化の推進や治山治水対策上、極めて多大な
国家的利益をもたらすであろう。
ただでさえ、火山灰・火山礫地域は、大雨による異常出水の際には、水に弱い物性上、土砂流、土石流となって崩壊し、
人家や田畑や道路等を埋めたり押し流して、多大な損害を与えているのである。そうした災害を防止する為に、膨大な経
費を注ぎ込んで砂防ダムの建設や植林事業を行なっているのが実状である。火山灰、火山礫の採取に伴い、こうした災害
発生を解決できるばかりでなく、跡地は立派な経済的利益を持たらす地域に変貌を遂げることもできるものだ。大自然の
景観も一時的には変更することになるが、長期的展望に立てば、通常の鉱山のように有害物質の放出による自然破壊には
ならず、むしろ、自然の大改造であり、大蘇生化であり、日本列島の大改造なのである。
また既に指摘したように、世界の砂漠地帯の多くは、実に周囲から、また遠方からの火山噴出物によって覆われている。
そして、火山灰・火山砂が、少雨乾燥の砂漠の気候風土により溶脱変質して、様々な成分や性質を有した砂漠特有の大砂
質地帯を形成しているのである。たとえ以前に、大森林や田畑地帯であって、その後の人為的破壊や気候の変化等により
砂漠化したところでも、本来の肥沃な土壌が火山灰によるところが多いものである。
それ故に極度の乾燥によって有機質や粘土質が分解され喪失されれば、後に残存するものは不純物のない火山噴出物と
いうことになろう。即ち、元からの砂漠地帯でも、肥沃な地帯だったところが砂漠化した地域でも、有機質や粘土質やそ
の他の不純物が存在しなくて多孔質な火山灰質であれば、新素材銑テラとして充分利用司能と思われる。
今日、木材需要が、住宅、パルプ、燃料等の用途へと増大していく中で、世界各地の森林地域が破壊され、また化学肥
料による多年の土壌酷使から田畑も疲弊しているのが現状である。単に気候上の問題からではなく、地球的規模で、人為
的原因により砂漠化の傾向が強まりつつある。今や、地球の砂漠化に対し、世界各国が協力して解決していく必要に迫ら
れている。この火山灰の有効利用の推進は、単に我国火山灰地の荒地の大改造のみならず、世界的規模での大砂漠地の農
林緑化の大改造にも役立ち、我国が主導して、その具体策を強力に提起していくこともできるであろう。
14 河川や湖沼の浄化とヘドロ処理へ
火山灰はその優れた吸着性能や微細な結晶構造から実に多様な用途に応用されるものである。多孔質な結晶からバクテ
リアの繁殖を促進させたり、草や虫の繁茂を形成させて、自然と調和した景観をも醸し出していくことも可能であると言
えよう。原油流失の処理、河川や湖沼の浄化、そして海洋の干拓や埋め立て、更には地盤沈下防止等においても、極めて
大きな効果を発揮していくものである。
以前に福井の海岸にロシアのタンカーから流失した原油が漂着して海岸を汚染し、多くのボランティアの方々により、
杓子で掬い取るという原始的な方法で対応したことがあったことは記憶に新しいことである。しかしながら、杓子で掬う
よりも、原油を分解するバクテリアの繁茂により、短期間に原油を分解できたことは明白である。事実、翌年には、気温
の高い地域という特性もあって、また日本の海岸には火山灰が豊富に流れてきており、そこに生息する豊富なバクテリア
によって原油が奇麗に分解されていたのである。
何処の海岸でも、自然に放置すれば原油が分解されていくと言うものではない。気温の低い地域では、バクテリアの活
性化を促進するべく、多孔質な火山灰を海岸に散布すれば、原油分解に有効に機能するだろうと思われる。後日、福井県
庁の方に聴いたら、「原油汚染はその内に消えて無くなるだろうとある程度は思っていたが、行政側としては、立場上何
もしないわけにはいかなかったので、無駄だと知りながらやったものだ。何もしなかった海岸でも、翌年には原油が消え
ていた」と感想を漏らしていたものだ。これは気温の高く、バクテリアの繁殖が活発であったからこそ、雲散霧消したの
であり、世界中何処でも起きるものではない。もっとも、火山灰は世界中に存在しているから、かなりの範囲で実現でき
るものであろうと思われる。
この火山灰の有する極めて高い浄化性や吸着性は、下水処理や、汚泥や汚水の浄化で、河川や湖沼に適用して優れた効
果を上げることであろう。目下、木炭が河川の浄化に効果的だと言うことが解りかけてきて、実行に移されているところ
もあるが、木炭もある意味では、火山灰と同様に多孔質の表面を形成し、その性質も吸着性が大きいものである。しかし
ながら、人工の炭焼き小屋の釜で製造した木炭よりも、天然の溶鉱炉の巨大な釜である火山により焼成して出来上がった
火山灰の方が、大変安価であり、量的にも豊富である故に、その多大なる効果は他の追随を許さないばかりか、比類無き
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効果を生みだしていくことだろう。
また、海洋の埋め立てや干拓においても、その軟弱地盤故に、液状化現象を回避したり、地盤沈下を極力防止するため
にも、普通は、その埋め立て後、二〇年から三〇年は自然に放置して圧密沈下させて締め固めて置くのが一般的であるが、
現実は、サンドドレーン工法などで一気に脱水して建設していく手法が採られているようだ。しかし、そうした極めて粗
っぽくて危険で拙速な方法では、一部では、地盤沈下の防止には余り効果無しと言うことが解ってきている。
ところが、海洋の埋め立てや軟弱地盤の埋め立て、ヘドロ地帯の干拓に火山灰を投入すれば、その火山灰の緻密堅固な
結晶構造による噛み合い効果で、地盤沈下防止に有効なことが解る。発明者のアイデア提供により、某国の国際空港での
沈下対策で既に実証済みである。関西国際空港でも完全に沈下が防止できるのは、実に建設完成後、五〇年後だと言われ
るが、目下、予定されていた以上の速度で空港全体が地盤沈下しており、有効な対策が打てないようである。既に、二期
目の工事で、更に沈下が予想される水深の深い難工事が進捗しているようだ。
火山灰が埋め立て工事にも有効であることを進言しても、残念ながら日本では、懐疑心旺盛により誰も聞こうとはせず
に、税金の無駄使いを継続している有様である。恐らく、好奇心旺盛な外国あたりから、本格的な火山灰利用の新素材技
術の広範な普及、振興に向けた火の手が上がってくることであろう。それと併行して、火山灰の噛み合い効果による埋め
立て、干拓への適用に効果的だと知ると、一気に関心を有するものと期待される。
なお、火山灰投入により、干拓や埋め立てにおいて、軟弱地盤を改良して、ヘドロの上をトラックが入れる程度のこと
ができても、跡地に堅固な建造物を建設していくような強度性を確保するためには、例え、火山灰の埋め立て地であるか
らと言って、摩擦杭により、圧密沈下が防止できるからと言っても、高層ビルなどを建設することは不可能であろうと思
われる。低層の軽量の建物ならいざ知らず、やはり、高層ビルの重量となると、海底の岩盤に達するほどの深く長い杭を
必要とするものと思われる。そこで、高強度の火山灰利用の新素材技術を、人工地盤として活用していけば、長大な杭を
必要とすることなく、高層ビルの建設も可能であることと期待される。さりとて、具体的で完全な実用化においては、極
めて高度なノウハウが必要なのは当然である。
ところで、既に、米国では、火山灰が湖沼や河川の浄化に有効であることが実証されている。即ち、冬季において、積
雪して凍結した湖沼の水面に、トラックで乗り込んで火山灰を散布しておくと、春になって積雪や氷が溶解する際、火山
灰が湖底に沈下していく。このときに、火山灰が湖沼に浮遊している汚濁物を吸着して、結果的には湖沼を浄化するとい
うものだ。しかしながら、これは一回限り有効であり、毎年繰り返していかねばならないようだ。そこで、発明者が関与
した火山灰利用の別の関連浄化技術を用いていけば、半永久的に、河川や湖沼の浄化に有効であることも実証されている
ようだ。
さてここで、現在、ダムに堆積している膨大な土砂の処理が問題になっていることを取り上げよう。本来、水を貯める
はずのダムが大量の土砂の流入により、土砂を堆積しているのが実態となって、著しくダムの機能・効率を低下させてい
るようだ。一部には、土砂の圧力により、崩落の危険性もあるようだ。それに、水の制御作用も大きく低下してきて、大
雨の際の洪水調整機能も殆ど機能しないものもあるようだ。
そこで、このダム湖底に蓄積された土砂を注意深く見ると、実にヘドロ状であるが火山灰そのものであることが解る。
微細で泥のような堆積土が実は火山灰なのである。日本の山野は実に火山灰に覆われており、それが雨により山腹から洗
い流されてダムにより堰き止められて沈殿しているものである。このことは、、降雨があると決まって山林が剥がれて土
石が露出した山肌から土石が崩落して泥流・土石流となって河川に流入してくることからも解る。実に、細かい結晶の泥
流や土石流の実態が火山灰そのものに他ならないと言うことだ。山腹から洗い出された土砂は、本来は河川から海岸、海
洋に流出するものであるが、何とダムによって堰き止められているものだ。これに気付いている者は殆どいないと言えよ
う。
目下、ダムの再生、活性化と称して、ダム内の堆積土の除去が真剣に検討されているが、膨大な量の土石を除去した後
の保管地の確保や運搬先の目途が付かないままに、放置されている有様だ。一応、土石の除去方法は確立されているよう
だが、最大の問題は、除去後に一時的に保管する場所の確保と併せて、最終的に土石の有効活用が思い当たらないようだ。
海洋にそのまま廃棄するわけにも行かないようだ。正に火山灰地での火山灰の除去と同じような問題である。
以前に、ダム堆積土の排出を試みるべく、富山の黒部川上流の黒四ダムで一斉に放流し、大量の堆積土を水流に乗せて
黒部湾に放出したことがあった。ところが、大量の水と共にダム内の土石を一斉に且つ急激に放出したところ、黒部湾の
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海底に大量の土砂を沈殿させて汚濁を発生させてしまい、折角の漁場を破綻させるほどの環境破壊を招来させた。なお、
一斉に且つ急激に放出しなければ、排出効果が無いものとも言われているようだ。それ以来、ダムの堆積土の排泄のため
に放水することは、環境への配慮から極めて慎重にならざるを得なくなりつつあるようだ。
ところで、ダムに堆積しているのは、山腹から洗い出されて流入してきた火山灰の他に腐葉土もあるが、その腐葉土は
水洗すれば砂利・砂との分離除去は可能であり、海洋に流していくことでプランクトンの発生にも役立ち、また、微細な
火山灰とは軽く熱してやると、腐葉土は燃焼して消滅し火山灰のみが残留して簡単に選別できるものと思われる。
しかしながら、今回の火山灰利用の新素材への適用においては、腐葉土や粘土や、塩分が混入した土砂や砂利や砂が混
じっていても、骨材に使用するにおいては、何でも固化しうるものである。もっとも、強度などを期待するならば、腐葉
土は除去することが望ましいと言えるし、また鉄筋などの錆防止を考えると、海砂なども回避することが望ましいと思わ
れる。また、ダムのみならず、河口や湾口、そして海岸や海洋底にも多量に堆積している海砂やヘドロも火山灰であるこ
とが多く、それらも同様に、単に除去するばかりで無く、それ自体を混練材料として有効活用して、種々の建材や資材に
転換していけるものである。
なお、日本経済新聞の二〇〇二年一二月二九日付けによると、「ダムの排砂に環境の難問」と題して、「日本の多くの
ダムが上流からの土砂の堆積(堆砂)に悩まされている。堆砂が進むと貯水量の減少、水質汚濁、治水機能の低下など生
活・産業にかかわる問題が生じてくる。ダムの延命を目指している国などが講じている対策には課題が多い。」と指摘し、
ダム湖底の堆砂問題が以下のように紹介されていた(一部省略)。
《排砂作業は黒部川の上流にある関西電力の出し平ダムで一九九一年に始まったが、ダム湖の底にたまったヘドロ状の
砂を押し流し、海を汚染してしまった。某国立大学理学部教授(名称略)は「酸欠水が流入し、魚類が被害を受けた」と
国内外で報告している。
国交省と関電は去年六月と今年七月に両ダム(黒部川の宇奈月ダムと出し平ダム・著者注)を同時に放流する連携排砂
を実施。「できるだけ自然に近い形でバランスよく流した」(同省)としているが、濁流の程度はそれほど変わらなかっ
た。地元の環境保護団体などは排砂ゲートの常時開放を要望しているが、国などは水位の維持などを理由に譲らず、交渉
は平行線をたどっている。
ダム計画はもともと堆砂を前提にしており、一〇〇年間たまっても大丈夫なように建設されている。しかし、数十年前
の予測の誤差や上流の土地開発のために、堆砂の進行は可成り速い。「約半数のダムで堆砂量が計画を上回り、古いダム
ほどこの傾向は顕著」と指摘する。
堆砂が目立つダムは中部・北陸地方に集中している。「地質が比較的弱い糸魚川-静岡構造線(フォッサマグナ)が走
っているうえ、険しい山岳が多くて山崩れが起きやすい」のが主な理由だ。一九三五年から運用している中部電力の千頭
ダム(静岡県)は堆砂率は九八%に達し、ごくわずかな水量でかろうじて発電を続けている。
堆砂防止の最も新しい試みは、国交省の美和ダム(長野県)のバイパストンネルだ。全長四・三キロで、川の増水時に
直径が約〇・一ミリ以下の細かい砂をう回させて流す。総事業費は二八〇億円。去年二月に着工し、二〇〇五年度末の完
成を予定している。
ただここでも環境問題が立ちはだかる。粗い砂はトンネルの内壁を傷めるため、ダム湖の上流に築く貯砂ダムでせき止
めるが、某国立大学工学部教授は「細かい砂だけを流すと下流の川底の石の間に詰まり、水生昆虫の生息環境が悪化する」
と懸念する。
排砂の一般的な手法はしゅんせつで、全国で毎年約四〇〇万立方メートルを取り除いている。作業船をダム湖に浮かべ
てスコップやポンプで底にたまった土砂をすくい取る。吉川建設(長野県飯田市)と信州大学は、パイプの中の圧力差を
利用して土砂をはき出す効率的な工法を開発した。美和ダムで実証試験を始めており、最終的にはバイパストンネルに放
出する予定だ。
しゅんせつの問題点は除去した土砂の処理。コンクリート骨材や盛り土に有効利用されているのは全体の六割ほどにす
ぎない。ダムから消費地まで遠く、交通の便が悪いからだ。土砂を河川敷や斜面に置き、洪水時に下流に流す手法もある
が、排砂と同様の水質汚濁を招く恐れが指摘されている。
現状の堆砂対策はこうした難問を抱えており、手詰まり模様にある。国交省は堆砂量が一億一三〇〇万立方メートルと
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全国一の佐久間ダム(長野・愛知県)で、二〇年間に七三〇億円を要する排砂事業を計画しているが、来年度の政府予算
には盛り込まれなかった。金をできるだけ掛けずに環境への負担も少ない対策が求められている。》
15 鉄、セメント、樹脂、石材等の大幅代替化
鉄と大理石の中間にあって、両方の性質を適当に具備する新素材銑テラの諸特性の主因は、実は特殊な火山灰モルタル
にある。新素材コンクリートは火山灰モルタルを形成して骨材の周囲に堅固な表面被膜を形成するもので、中に埋設乃至
埋蔵されるものは何でも良い。従って、空隙率の高い骨材を有効活用していけば、比重が小さく水に浮くような浮体コン
クリートの建造も可能となるであろうと期待される。また、コンクリート強度の大幅な向上と併行して、空隙の確保によ
る軽量化も図られ、現在の鉄筋コンクリートにおける鉄材はかなり節減化が可能となって、全体的に鉄鋼使用量が大幅に
軽減化できるだろう。
この特殊火山灰モルタルを利用した新素材は、単に従来コンクリートの代替材料として、建設分野においての利用にの
み限定されるものでもなく、その応用的利用は、多様な性質・性能によって、建設以外の広範な分野でも可能である。即
ち、半永久的に錆びず、腐らず、燃えずという性質は、まず金属の被覆体として金属自体の防錆効果を大ならしめ、その
緻密堅牢な表面は金属の耐久性をも向上させることができる。
適当な補強材を埋設させて火山灰コンクリートで被膜し、板状部材、棒状部材、曲面状部材等に形成して、現在の鉄、
石材、木材、樹脂等の様々な製品を製造していくことによって、各種の多様な部材、部品、材料が可能になってくるだろ
う。目下、鉄は錆びやすいといった欠点を有し、また、木材も燃えやすいといった欠点を有し、セメントも耐久性、耐候
性に弱く、六価クロムなどの有害物質を有し、また、樹脂に至っては紫外線にも弱いという欠陥を有しているのが現状だ。
現在、耐久性、耐候性に富む電導性樹脂の開発も検討されているが、大変高価な物になり、とても一般化して広範囲に利
用されていくことは無理であろう。実に、火山灰利用における様々な部材、部品においては、鉄板や鉄棒、鉄筋等もガラ
ス繊維等の適当な補強材、埋設材で置換することにより、様々な製品の製造が可能であり、一般的な鉄部材にも大幅に代
替できるものである。
また、同質の材料同士ならば極めて密着性や接合性が良いことは既に周知の事項である。例えば、樹脂系部材の接着に
は、同じ樹脂系の同じ種類の樹脂接着剤を用いる方が接着効果が大きいことは明らかだ。これから推考すると、天然火山
灰から抽出したガラス質繊維が、共にガラス質で馴染みがよいことが明らかであり、効果的な補強材として期待できるも
のだ。即ち、火山灰抽出の耐アルカリ性ガラス繊維は、天然火山灰に各種副原料を配合して、電気炉で溶融してガラス化
した後、紡糸するものであるが、既に技術的に完成し企業化されており、火山灰モルタルの新素材銑テラと最適な密着効
果を生み出していくことだろう。
そして当該ガラス繊維を、敷布状、ロープ状、より線状、ラス状等の様々な形態に変化させて補強材として利用すれば、
現在の鉄と同等の使用方法も可能であるだろう。また火山灰モルタルが、極めて微粒子の火山灰の為に流動性に富み、プ
ラスチック並みの押し出し成型も可能であることから、鉄や火山灰抽出繊維、そしてその他の金属や繊維を補強材として
用いれば、非常に広範に亘る利用形態が考えられる。
また、火山灰が極めて微細な結晶になっており、適宜の形状の型枠の組み合わせた注入などにより、実に様々な形状に
も対応していけるであろう。即ち、各種車体やタンク、パイプ、機械部品、容器、エンジン、ガードレール、鉄鋼製品等
も大きく代替可能となるであろう。殆どの鉄製品の代替化が可能であろうと確信するものである。その結果の資源の節減
や有効利用は計り知れないほどであろう。例えば、自動車や車両の屋根などの車体にも適用すれば、暖冷房の負荷を低減
することができて、また廃車の際にも廃棄物の処理にも大きく効果的となるであろう。
そして用途によっては、金属そのものに代替し得ることも可能と思われる。即ち、金属は、熱伝導体であるが、その特
性が要求されず、単に加工が容易で平滑で、軽くて強度があることが必要な分野なら、適当な補強材を埋入すれば充分代
替して利用することができよう。補強材としては様々な形態と材質が選択され、非常に多種多様な製品が生れてくること
だろう。例えば、鉄の場合では、鉄板、鉄骨、鉄棒、鉄筋、鉄網、メタルラス、鉄索等によって様々な形態をした銑テラ
の利用製品が可能であろう。
目下、錆の点で最大の難題である鉄鋼が火山灰モルタルで堅固に表面を被膜化されることで、鉄の防錆材料としても効
果的となっていくことであろう。鉄材の表面の火山灰モルタルによる被膜化においては、吹き付け塗装や打設等の様々な
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手段を講じることが可能であろう。もっとも、ほうろうのようなセラミックであるのは確かであり、それ故に、何らかの
付着手段を講じる必要も出てくるだろう。現在、塗料の生産や、鉄鋼材料の補修等で錆による損失は年間八兆円にも昇る
ほどであるが、そうした錆による国家社会的損失が大きく軽減化されるだろう。もっとも、新素材銑テラの表面を色彩塗
料で塗布することは可能であり、意匠的な観点からの塗料の重要性は何ら変わることなく、むしろ需要の拡大が期待出来
るであろう。
なお船舶等においても、耐塩害性、耐酸性、高殺菌性に富む新素材の火山灰モルタルを鉄鋼や鉄板に被膜して適用して
いけば、海草や貝殻等の付着もなく船底塗料が不要となって、二年から四年の周期でドックに揚げて、海草や貝殻を除去
するような作業からも解放されるようになるだろう。また、毒性の強い船底塗料の海水への溶出による海洋汚染の問題も
解消されるだろう。なお、単に現在の鉄鋼製品の表面に新素材を被膜するのではなく、PC鋼線等を活用して、船舶部材
全体をPC(プレキャストコンクリート)化していけば、実に新素材によるコンクリート性の堅固な船舶体の建造も可能
になるものであろう。
鉄鋼業界も、最近は中国特需で再生しつつあるとは言え、長年、鉄鋼は粗鋼生産が年間一万トンを割り、業界でも過剰
設備に喘いできており、実に新日鐵一社ほどの設備が業界では過剰であるとも言われ、思い切って火山灰コンクリートの
新素材の「銑テラ」を鉄鋼に大きく代替化していく環境も次第に整いつつあると言えるだろう。
更に、新素材銑テラは、その製法、材質、性能等の優れた特徴からみて、無焼成ニューセラミックでもある。新素材が
極めて微細な結晶で堅固且つ平滑な表面が形成されることから加工性に優れていて、表面の光沢も非常に平滑に富み、ま
た転写技術を適用して、木目や大理石模様を始めとした様々な模様を表面に設けることも可能であり、金属のみならず、
樹脂成型品や木製品にも充分代替できるものである。そして、人造大理石ともなり得るもので、多くの貴重な石材にも代
替化できるであろう。これは言ってみれば、画期的な材料革命にも発展していくものとなるであろう。
実に、火山灰利用新素材の銑テラは、最適な補強部材との組み合せによって、棒状部材から曲面板、極薄仮に至る様々
な形態に変形されて、現在の全ての形状の金属、樹脂成型品、木材等に充分代替し得るばかりでなく、耐熱・耐摩滅性等
の一段と高い性能が要求される特殊用途の分野にも応用していけるものである。即ち、全ての家具(机・箱・容器・タン
ス・テーブル等)や建具(サッシ・シャッター・ブラインド・水槽・パネル等)から、家電製品の本体や、自動車、電車、
飛行機、船舶等の車体や胴体、そして多くの付属部材にも利用可能なものであり、その波及効果は絶大なものとなるであ
ろう。最近、脚光を浴びつつあるニューセラミックの応用分野にも充分進出することが可能であり、例えば、耐熱・耐磨
耗、強度、耐酸、耐菌、平滑、耐水等の諸性能が要求されるエンジン、歯車、軸棒、タービン、プロペラ、特殊容器等の
各種製品にも代替し得るものと期待される。目下のニューセラミックは、殆どが複雑な製造工程と多大な焼成加工エネル
ギーを費消する為に、高い性能を得る反面、非常にコスト高になる等の問題点も多い。
ところで、宇宙船の船体には、大気圏離脱や大気圏再突入時に受ける耐熱対策として、複雑な製造工程の下で、加圧や
乾燥や焼成に多大なエネルギーを費消して製作した多数のシリカ質タイル材が用いられている。これ等も、組成的には火
山灰利用の新素材と類似しており、もし、新素材の銑テラを宇宙船の船体に利用すれば、極めて簡単な製造工程で、多大
な加工エネルギーをも費消せずに、より高い性能(特に耐火性)のタイルが極めて安価に得られ、飛行中のタイル脱落事
故も極めて可能性は少ないことと思われる。
なお、合成樹脂製品が使用されている分野でも、紫外線劣化や火災被害、薬品被害を防止するべく耐候性や耐火性、耐
薬品性等の特性を発揮するべく、適当な各種繊維等の補強材の埋設乃至混入で表面を火山灰モルタルで被覆すれば、大幅
に代替化していけるものである。更に、防水性、断熱性、耐火性、レリーフ性等の効果により仕上げ材が全く不要と化す
ので、各種合成樹脂の塗料やシート等が全く不必要にもなってくるだろう。
更に、改良を重ねれば、セメントも全く不要と化していく可能性もあるだろう。勿論、従来通りにセメントを混入させ
ることも可能だが、接着効果よりも単なる増量剤としての効果しか期待できず、次第に淘汰されて使用されなくなってい
くだろう。現在のコンクリートは、六価クロム等の有害物質の放出や、湿気問題から来るカビの発生等で環境面や健康面
からも大きな問題を抱えているのが現状である。何よりも現在のコンクリートは、中性化や塩害化、骨材アルカリ反応化
等で、正に時代が逆戻りしたかのような劣悪化の極みに達しつつあり、いっそのこと思い切って全コンクリート建造物を
解体し新たに建造し直すぐらいの切実な状態であり、新素材普及の前夜に相応しくもあり、その時機がいよいよ到来した
と言えるだろう。
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我国は、金属や樹脂原料や木材の大部分を海外に仰いでおり、またそれらの運搬や加工における石油等のエネルギー資
源も圧倒的に多く対外的依存を深めているのが現状である。今や、かなりの産業・企業の海外移転による国内空洞化を招
いているとは言え、極めて先行き不安定な資源・エネルギー基盤の上に産業を維持しているのが現実である。今後、益々
資源・エネルギーの高騰化や枯渇化、資源ナショナリズムの高騰や争奪が進展していくに連れて、石油資源需給の逼迫化
や供給不安が増大していかざるを得ない。いくら高度の加工技術を有していても、国民生活上に不可欠な各種材料資源が
諸外国に掌握されているような現状では、万一の国際的危機にも充分に対応できないのは明らかである。緊迫化しつつあ
る今後の国際情勢の下では、資源・エネルギーの確保は、次第に我国の命運を決する死活問題として浮上してくるものと
思われる。
そして我国が、資源・エネルギー国や発展途上国に提供し、移転した種々の産業技術も、いつかはブーメランの如く、
我国の競争相手となって来ざるを得ないだろう。かつて我国が、先進工業諸国の先端技術を熱心に且つ容易に導入し得て、
我国独自の改良や工夫を加えて、より一層発展成長させて、かつての技術供与国を次第に苦況に追い込んで来た経緯と同
様なことが、今後は我国と発展途上国や資源・エネルギー国との間で生じかねない状況とも言える。即ち、技術的優位性
も永遠のものではないということだ。また先進工業諸国との間でも、資源・エネルギーの確保や製品輸出を通じて、激し
い資源争奪や国際競争、貿易摩擦が展開されていかざるを得ない状況ともなって来よう。今やグローバル化の急激な進展
と共に、益々、この傾向が加速化されていくであろう。
それ故に、我国独自の資源・エネルギー問題の原点に立って、今回、登場した火山灰技術の源泉である火山という天然
の恵みを再評価し、その有効利用を図るべく、種々の観点から検討を加えて、自給自足に向けた新たな資源有効活用の技
術システムを開拓していくことが緊急課題となってきたようだ。自国に豊富に産出する資源、エネルギーを活用して、独
自の技術により、自国の経済発展を推進することは、健全な産業体質への改善であり、国家基盤の強化に資するものと確
信する。
このような状況下で、火山灰利用新素材の銑テラは、常温常圧下で様々な形態に成形でき、そして多様な高性能を極め
て安価に得ることができ、その利用分野は実に多面的で、経済的波及効果は図り知れないものである。そして、この新素
材の製造において、更に様々な添加物を、各種実験や試作を通じて混入していけば、実に多様で特殊な新たな性能を得る
ことも決して不可能ではないものと思われる。建設分野において現在用いられているコンクリート製品のみならず、あら
ゆる産業分野における鉄等の金属や樹脂成型品や木材等の様々な材料と充分に代替できるものであり、我国経済に多大な
る貢献をなすは必定であろう。これの強力な推進は、業界の立場をも越えて国家的利益として充分価値があり、緊迫化し
つつある国際情勢の下では、是非とも必要であろう。
16 産業構造改革
目下、喧伝されている産業構造改革は、IT革命による事業の効率化であったり、組織の簡素化だったりして、国際競
争力を付けていこうとするものである。内外価格差の増大への対応の観点からも推進されているが、こうした傾向を否定
するものではない。我々の提唱する産業構造改革は、資源エネルギーの自立化と言った国家戦略的見地からのものである。
即ち、石油エネルギーの大幅な節減であり、石油や鉄鉱石等の重要基幹資源の海外依存度からの大幅な低減化である。そ
れによって、国際競争力を新たな視点により達成していこうとするものである。
既に、火山灰利用の新素材が鉄、セメント、樹脂、石材を大幅に節減乃至不要化できることを紹介した。即ち、鉄やセ
メントの外にも、煉瓦、タイルやALC建材、外にも防水、断熱、耐火、耐薬品性に富んだ多くの内外装建材やシート、
石材等の大幅な淘汰、代替化である。これにより関係業界には多大なる意識変革、構造改革を迫るものであるが、現在で
も過剰な設備に苦慮している日本の産業界においては、新技術に対応した産業構造改革を思い切って実践していくことが
求められていると言えよう。
日本が実践しなければ外国が先に実行するだけである。産業構造改革とは経済界が自ら率先して自らの意志で実行して
いくべきものであろうと思われる。そうした状況を前にして、優柔不断の態度を取り続けていけば、今後の国際競争力に
おいても大きく後れをとっていくことになるだろう。
そして何よりも地球温暖化防止対策の面でも、石油や石炭等の化石燃料の、二〇〇八年から二〇一二年の間に一九九〇
年度比で六%削減を義務づけられている現在、有効な手段もなく、森林吸収枠を認めるかどうかとか、排出権の売買とか
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で乗り切ることに既に無理乃至限界が来ているようでは尚更である。既に外国の某研究者からは、画期的な技術革新によ
ってしか打開できない状況に来たとの見方が有力であるが、新素材技術により、石油消費の大幅な削減をも可能にし、過
剰設備を思い切って廃棄し、産業の国際競争力を回復し、新たな再出発を図っていく時期に当たって、誠に時機を得た国
家的一大プロジェクトになるであろう。当該産業界のみでも個別企業努力や業界努力では解決できないほどの問題であ
り、国家が有効且つ適切に関与し、各種政策を実施に移して指導性を発揮していくことが望まれよう。
新素材の利用者となる建設や造船、車体等の業界においては、調達コストの低廉化で大きな恩恵を受けるであろうし、
また、材料供給側の鉄鋼、セメント、樹脂、塗料等の産業も新しい二一世紀に向けての国際競争力で大きく先手を打って、
自己変革を成し遂げていくことによって、世界に向けて指導性を発揮できるようになるだろう。勿論、業界も大いに意識
改革や企業構造の変革、業種転換等を迫られていくことになるだろう。
今後は、業界の利益追求にのみ拘泥することなく、国家社会にとり、また、需要者にとり、満足されるような製品、サ
ービスを積極的に提供していかなければ生き残れないほどの過酷な競争を、国際的に要求されていることを心底から自覚
していくことが大切であろう。それほど、消費者や需要者のニーズに応えていくことが肝要と言えよう。国内だけの、ま
た、従来の狭い業界だけでの競争では生き残れないことを思い知るべきであろう。世界が勝負であり、他業種が競争相手
であることについて、再度認識を新たにすることであろう。
何よりも、我国の現在の産業構造における弱点的な特徴は、第一に原材料を海外に多く依存していることであり、第二
に原材料の運搬から製品加工化に亘ってエネルギー多消費型の産業が多いということであろう。過去の相次ぐ石油ショッ
クは、こうした産業構造の弱体部分を直撃して我国産業構造の体質改善を迫ったものだった。こうして、絶えず、原材料
やエネルギー資源の我国への供給地域の多角分散化、代替エネルギーの転換普及、石油エネルギーの消費節減等を推進し
てコスト増等の様々な海外不安定要因を吸収し得るように努力し続けているのが過去の歴史でもあり、今後に向けた宿命
でもある。
然るに、中には既に、原材料や石油の価格上昇に対処する為の合理化努力の限界に達して、著しく国際競争力を低下さ
せて、産業の海外立地か業界ぐるみの倒産を迫られ、最悪の危機に直面している業種も登場して来ている。一部の好調な
業種でも、内需の低迷から外需に依存して大幅な貿易黒字を計上してはいるものの、中長期的に見れは、資源、エネルギ
ー面からの圧迫や、熾烈な国際競争を背景に、幾多の貿易摩擦面からの輸出抑制圧力から逃れられない宿命的要因を多々
抱えているものと思われる。そこで、これまでに指摘したように、火山灰利用の新素材の全産業分野への大々的な導入を
展開し、様々な応用を推進していくことは、我国の産業構造体質にも大きな影響を与え、その合理化を促進させて、体質
を強化させていくものと思われる。
まず建設産業では、海外依存が高くて我国の気候風土の下では耐久性が欠如する木材を住宅から制限して、より耐久性
や各種性能が向上して安価な火山灰利用新素材の住宅に転換させていくことが必要であり、その為には住宅産業の体質改
善を迫るものである。また北欧から技術導入され、石油を多量に消費して加工され、その上、高温多湿の我国の気候風土
には適合せずに防水性や耐久性や強度性で著しく劣る軽量気泡コンクリート等も、住宅を始めとする建設材料から使用が
規制されていくべきであろう。
更に、現在の建造物には不可欠の防水、断熱、耐火などの多種多様な内外装仕上げ材等も、著しく石油を多消費するも
のが多く、内外装不要の新素材の普及促進と併せて、次第に建設材料から排除されていくことが必然となろう。一方、火
山灰利用の新素材は、その製造特質から、目下、稼働率が極めて低い水準にまで落ち込んでいるプレキャストコンクリー
ト生産工場の再生化を実現させていくことだろう。
そして何よりも、安価で耐久性に富み種々の性能を著しく向上させた新素材利用建造物の建設促進を通じて、建設産業
やその関連産業の体質や意識を大きく変革させていくことであろう。また現在、国の基幹産業は何と言っても、その利用
範囲や量からして鉄鋼産業であるが、その用途の最大は建設産業である。既に、新素材は強度性と軽量性の向上から鉄材
が三割程節減できると指摘した。そして建設産業以外の産業分野における鉄材も、新しい火山灰モルタルと適当な補強材
との組み合わせにより、代替化が大幅に可能であり、それに安価で錆びない新素材銑テラによる新しい鉄が実現していく
のである。
これは、例えば、種々の家具や建具から、タンク、ガードレール、車体、船体、エンジン、スクリュー等へと代替して、
最後には火山灰利用新素材が鉄に代わって国の基幹物資となっていくことであろう。また火山灰抽出のガラス繊維を適当
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な太さや形状にして補強材として活用して行けば、鉄の使用は著しく減少して、海外依存度の高い鉄鉱石やその加工燃料
資源の大幅な節減にも発展していくことであろう。
その他、鉄と並んで国の基幹物資となっているものにセメントがあるが、火山灰利用新素材では、セメントの使用も従
来の人工軽量骨材使用のものに比べて約三~四割の節約が図れるものである。セメントも鉄と同様にエネルギー多消費の
代表格であり、製品コストの半分をエネルギー費で占めているのが現状である。現在のセメントは天然の石灰石を焼成・
加工・製造しているが、その製造は全くムダな工程を多々有しているのではないかと思われる。
後編において、天然火山灰を豊富に活用したと思われるピラミッドに関する項でも指摘するように、天然石灰石をその
まま微粉砕して、それにアルカリ質の高い天然火山灰を混入し、そして表面の平滑性や急結性を出す為に塩分(ニガリ)
をも多少加え、更にアルカリ質が足りない場合には、天然の石鹸水のようなものを一種の分散剤として加えて調合してい
けば、ピラミッドを始め様々な太古史の巨石建造物に使用されている巨石ができるものと思われる。その場合には、火山
灰利用新素材よりももっと経済性に富んだもの、例えば、現在のセメントを全く使用しないものが生じて来る可能性もあ
ることだろう。とにかく現在のセメントは、その製造原理からしても、無駄な製造過程に基づいているものと思われ、今
後の改善が図られていくべきものと考えられる。
そして、既に指摘したように、火山灰利用新素材に係る火山灰モルタルの諸特性を活用して、棒状部材、薄状部材、曲
面部材等へと適当な補強材と組み合わせて種々の代替材料や新たな無焼成ニューセラミック材料へと展開普及させてい
けば、資源、エネルギーの大幅な節減化が図られて、我国の国際的な産業構造基盤が強化されるものである。しかも、こ
の推進に伴い、現在の種々の産業構造や体質を大きく変革させていくことであろう。
このような基幹物資の鉄やセメントを始め、木材、石油、その他様々な材料の代替化や節減化を通して、我国産業構造
の根本的な大変革を推進していくことは、一時的には、業界自身の意識の変革を迫って多大なる抵抗があろうと思われる
が、長期的に見た場合、業界自体が激動の国際情勢の下で生存し続けていく唯一の方向であることが、次第に理解されて
来よう。しかし、国際情勢の激動化の進展と共に、我国の産業全体が、海外から種々の資源、エネルギーの供給を止めら
れて危機的事態に発展した時になって気付いても、既に多大なる混乱と焦りの中で手遅れの状態となっていくことだろ
う。この来たるべき危機に対処して、今から充分な準備をしておくことが何よりも必要大切なことと思われる。
17 各種産業廃棄物処理と放射性廃棄物処理の可能性
(1)各種産業廃棄物処理の可能性
二〇〇二年五月から、日本では産業廃棄物の有効利用などを目指してリサイクル法が施行された。現在、都市ゴミなど
の焼却灰主原料にセメントを作る「エコセメント」等の製造技術も普及し始めたようだ。正に、環境、資源、エネルギー
をキャッチフレーズにした新たな産業需要が芽生えつつあるようだ。ここで、当該火山灰混練技術をベースにして、火山
灰の特性である吸着性、耐酸性、対アルカリ性、耐熱性等を生かした研究も一部で芽生えだしてきているようだ。
当方の紹介する火山灰利用の新素材は、表面に堅固な火山灰モルタルを形成し、極めて防水性や耐久性、耐候性、耐薬
品性に富んだコンクリート体を生み出すものである。中に埋設乃至埋蔵されるものは火山礫や溶岩に留まらず実に何でも
良いのである。如何なるものでも堅固に被膜化し硬化させてしまい、長期間の年月を経過しても決して表面に露出させな
いものである。
従って、汚泥、建設廃材、有機材、ダスト、医療廃棄物、PCB等の種々の産業廃棄物や毒物でも、固体物なら、火山
礫や溶岩等の骨材の代替物として混練させたり、液状物なら、新素材で製造した容器に封入すれば、耐久性の確実性と相
まって、極めて長期間にわたって外部に露出させることなく永久に保存処理することが期待できるであろう。そればかり
か、中には優れた建材等に変身して大々的に利用することも可能であろう。また、外洋に投棄しても耐塩害性からも環境
汚染になることもなく、優れた魚礁や防波堤、人工島等を構成していくことであろう。
現在、各地で山積している産業廃棄物は膨大に上り、最早、埋め立てや焼却処分においても費用や環境問題で大きく暗
礁に乗り上げているのが現状であろう。それほど、産業廃棄物の処理は、人類の生活環境に多大な影響を及ぼしていくな
ど大きな社会問題になってきたものだ。首都圏近郊でも、周囲を高い塀で隔離して廃棄物を埋め立てて、跡地を墓地にし
ている場合もあるようだ。現在、世界中にあるゴミ焼却場の実に四分の三はこの日本にあると言われている。それでもま
だ足りなくて、山野や海洋に不法投棄する不正行為が後を絶たない状況だ。
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また、日本がかつて中国大陸に残してきた毒ガスや毒薬の処理も、現在の技術では遠大な時間と資金が必要になり、中
国大陸での処理に着手し始めたとはいうが、大きな難問がのし掛かっていることは間違いはないようだ。中国残留の毒ガ
ス等を日本に持ち込んで、こうした新素材に関する混練・封入などの密閉技術を大規模に活用展開していけば、処理費用
も安価になろうというものだ。それに、単なる処理に留まらず、場合によっては、新たな材料特性や用途を見出して有効
利用できる可能性もあると思われる。
なお、水俣病の原因となった有機水銀は、企業が流出した無害な無機水銀が自然界で何らかの原因で有害物質に転換し
たものであるが、この有機水銀の処理に鹿児島県あたりから大量の土砂を運搬して流し込んで上から覆土・隠蔽していっ
たことからも解るように、その土砂は担当者や関係者は知らずに実施したことだが、実は火山灰なのである。そうした堅
固で緻密な火山灰層が有機水銀を封印してしまって、現在に至るまで有機水銀が漏洩した話を聞かない。膨大な有機水銀
を浚渫して除去していったわけではない。そのような面倒なことをして解決したものではない。
これからすると、現在、問題化している各地の産業廃棄物の処理においても、工場で火山灰コンクリートで混練して被
膜して封印していくのも、またコンテナ式にして内部に封印することも、毒物などの極悪な産業廃棄物においては費用の
点でも有効であるが、一般的な廃棄物に至っては、最早膨大な量に達しており、そのような悠長なやり方では間に合わな
いであろう。そこで、水俣水銀を封印したように、そのまま上から天然火山灰を被せて封印していけば、火山灰の堅固緻
密性により、半永久に密閉されて封じ込めることが可能であろうと思われる。
(2)高レベル放射性廃棄物の処理
何よりも最大の産業廃棄物は原子力発電所から排出される高レベルの放射性廃棄物である。現在、原子力発電所の建設
が発展途上国では、産業の発展からエネルギー需要が拡大し大々的に推進されているが、先進国では住民運動の抵抗や環
境問題も絡んで大きく行き詰まりを起こしてきている。特に、各国とも放射性廃棄物の処理に有効な対策を講じることが
できずに、頭を悩ましているのが現状である。この放射性廃棄物には、気体、液体、固体のものがあるが、その中で、特
に処理が面倒なのが固体のものであり、低レベルのものから高レベルの放射能を含むものまである。その処理方法は現在
までのところ、次のようである。
まず、低レベル固体廃棄物は、濃縮廃液などをコンクリートやアスファルトと一緒に混ぜ込んで、ドラム缶中に固化さ
せてしまう方法であるが、この処分には海洋投棄と地中埋設がある。海洋投棄においては、魚や海草類に影響を与えず、
将来の海底資源、開発にも支障を来さないように、人口の過密地域から遠く離れて、海流や地震等の影響が比較的少ない
とされる地点を選んで、数千メートルの安定した大洋下の海底が有望視されている。しかし、現在のコンクリートやアス
ファルトの材質では極めて長期に亘って亀裂が入らないという保証は全くない。
処分当局の以前の見解では、何十年か経過して、ドラム缶が腐蝕したり、コンクリートやアスファルトに亀裂が生じて、
中の放射能が漏出して来ても、海洋中へゆっくり拡散して大量の水で希釈されるので、魚や海草等への影響は少ないとの
ことである。しかし、投棄に際して、ドラム缶の着底と同時に、水流や海底岩の為にコンクリートやアスファルトに亀裂
が入らないとも限らないし、また、海洋の中央は、大陸縁辺部のように地表や水面上に出ている活火山は少ないものの、
水面下の海洋底には無数の火山があり、それに海洋底は地殻内部からの熱の湧出が活発であり、地殻変動や各種気体や溶
液の噴出がみられるところである。それに必ずしも周囲に一様に拡散するという保障もない。
一方の地中埋設は、元来、粘土や砂や岩石が吸着能力やイオン交換能力を持っており、特にその特性を利用しようとい
うものである。たとえ、何十年か経過して、ドラム缶内より放射能が漏出して来ても、周囲の厚い土に吸着されてしまい、
井戸水や湧き水も厚い土の層を濾過されて来るので、人間の生活環境には、直接、放射能は浸出して来ないというもので
ある。しかし、地中では地震等の地殻変動もあり、それに放射能の全てが土に吸着されて、一切地下水等に浸透しないと
いう保証もない。
また、以前の某国の調査では、地殻内部の深部断裂に近いほど、水中のヘリウムの多いことが判明した。これらの断裂
上の水から、三〇~五〇億年いや三〇〇~五〇〇億年かかっても放射性元素の崩壊では溶け込めないほど大量のヘリウム
が発見された。ヘリウムは断裂沿いに深部から上昇して来るが、その原因と源がどのようなものであるのかということは
未だ解っていない。この事実は、地下深部から様々な物質を含むガスや溶液が絶え間なく流出している証拠と考えられて
おり、工場や原子力発電の有害な廃棄物を地中深く埋めることの危険性を示す根拠ともなっているといわれる。
次に、高レベル廃棄物処理であるが、これは量的には少ないものの放射能の濃度は極めて高くて危険である。これを封
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じ込めるのに、目下、多くの国で研究・採用されているのがガラス固化という技術である。これは、高レベルの廃液を加
熱濃縮し、これをガラスの微粉末と混ぜて、高温(一〇〇〇~一三〇〇℃)で溶融させる。それをキャニスターというス
テンレス製の容器に流し込んで固化させるというものである。そして安定した地層に深い穴を掘って地中埋設処分をすれ
ば、高レベル放射性廃棄物は、ガラス固化体、キャニスター、地層という三層の障壁によって封じ込められるというもの
である。
しかし、これは高温で溶けるガラスを入れる溶融炉の方も、その高温での長期使用に耐えるものでなければならない。
そうした耐熱性を有するガラス溶融炉の開発と同時に、電極も悪条件で酷使するだけに材質の選択にも慎重さを要する。
更にガラスの成分組成も、高レベル廃棄物の化学成分に合わせて、溶けやすさや、固化した後の長期的安定性を考慮して、
慎重に選択していかねばならない。こうした点から、各国の開発状況は必ずしも順調ではないようだ。
投棄に当っては、現在、この地球上で適当なところは海洋底や地中への埋設しかないとしても、現在のコンクリートや
アスファルトやドラム缶等のような物性では、将来に大きく禍根を残さざるを得ず、また現在のガラス固化技術では、種々
の難点があり、極めてコスト高にもなりかねない。
目下、日本は、エネルギーの柱の一角をなす原子力政策として核燃料サイクル路線を取っている。これは原子力発電所
(原発)ではウラン燃料を使うが、一定期間燃やすと使用済み核燃料となる。この使用済み核燃料には燃え残りのウラン
と、新しく発生したプルトニウムが含まれている。核燃料サイクルでは、使用済み核燃料を再処理工場で再処理して、ウ
ランとプルトニウムを取り出し、再び燃料に加工して利用する。エネルギー資源の乏しい日本でウラン資源を有効に使お
うという発想から生まれたものである。
因みに核燃料サイクル路線とは、貴重なウラン資源を有効に利用しようとするものである。まず、ウラン鉱山から採取
したウラン鉱石をウラン濃縮工場に搬入して濃縮ウランを製造し、それを燃料加工工場に移送し、そこから燃料として原
子力発電所に持ち込む。そして、使用済み燃料を再処理工場に搬入する。その後は、(一)再度、ウランをウラン濃縮工
場へ移送する場合、(二)プルトニウムなどを燃料加工工場へ移送し、循環させて有効利用を図る場合があり、そして有
効利用が終了した最後は、(三)ガラス固化体(廃液+ガラス燃料)として、即ち、高レベル放射性廃棄物として地下へ
埋設することになる。
某新聞報道によると、
《再処理工程では、ウランとプルトニウムのほかに、核分裂によって生じた、高い放射能レベルの廃液が発生する。これ
をガラス原料と混ぜて固めた「ガラス固化体」が高レベル放射性廃棄物と呼ばれている。約一五〇リットル容量の固化体
容器一本が、一〇万世帯の家庭で一年間全て原子力発電でエネルギーを得たときに生じてくる廃棄物の量となる。量とし
ては少ないが、問題はその質で、強い放射線を出すため、人が近づかない場所に処分する必要がある。現在、ガラス固化
体は、青森県六ヶ所村と茨城県東海村に七四二本が貯蔵され、処分を待っている。
これまでの使用済み核燃料を全て再処理したとすると、高レベル放射性廃棄物はガラス固化体換算で、一万五五〇〇本
分。今後も増え続け、二〇二〇年には累計で四万本に上る。ガラス固化体は三〇〇メートルより深い地層に処分すること
が決まり、処分を実施するために認可法人の原子力発電環境整備機構(原環機構)が二〇〇〇年に設立された。
処分地の選定過程は、三段階で進められる。平成一〇年代後半頃に概要調査地区を選び、そのなかから精密調査地区を
選定。その後、最終処分地を決め、平成四〇年代後半頃には最終処分地が始められるようにする。四万本の固化体を処分
する施設を建設して操業する総経費は、約三兆円と見積もられ、電力会社など原発を持つ組織が拠出している。》
これに関して、産業廃棄物全般の処理と同様に、火山灰利用新素材技術により、当該高レベルの放射性廃棄物の処理が
可能となることが期待できる。先に指摘したように、現在、高レベル放射性廃棄物の処理はキャニスターと呼ばれる容器
に収容してガラス固化するものであるが、容器の耐久性の問題もさることながら、その保管問題でも、地中処分か、地上
処分かで意見がなかなか統一されず、一定の合意を見たとは言え、技術的には袋小路に陥っているのが現状であるだろう。
これは日本のみならず、原子力を利用する先進諸国の共通の難題でもあると言える。
そこで、今回、登場した火山灰利用新素材の構成成分や、製造技術上の特徴や、数々の優れた性能に注目すると、実に
放射性廃棄物の処理にも極めて有望であり効果的であることが解る。即ち、新素材に用いられる天然火山灰の構成成分を
みると、五〇~七〇%程がガラス質成分の酸化珪素(SiO2)であり、また混入する混和材キラも九〇%余りがガラス
の微粉末である。つまりガラス質が多いのである。
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そして製造技術上の特徴をみると、まず天然火山灰、セメント、混和材キラ、混和剤、水を適切な方法で調合して火山
灰モルタルを作るのである。そしてこの火山灰モルタルを、空隙部を多数有して吸水性が高くて強度も弱い火山礫の表面
に、くまなく濡らして強固な殻状体をつくり、振動を与えて混和剤の分散効果により、表面を微細な結晶状の密な物質に
してしまうのである。即ち、セメント中の遊離石灰と天然火山灰の珪酸とが反応して堅固な珪酸塩(カルシウムシリケー
ト)を形成するのである。これは、一種のガラス固化とでも言えるだろうし、また岩石固化とも言えるものであろう。結
局、現在のガラス固化とほぼ同様のガラス質成分により、非常に堅固な被膜形成処分が実現できるものと言えよう。
新素材の表面が、二〇〇〇℃の溶接バーナーの燃焼に対しても何ら変化がなく、また三〇〇〇℃でも表面のみが劣化し
て内部にそれ以上進行しないのも、そして防水性や耐爆裂性や強度が優れているのも、実に結合凝固剤としてのセメント
自体の諸性質が化学反応により変化し、表面にそのまま現出しない為である。何よりも何の特殊装置や高価希少な材料も
使用せずに、常温常圧下で極めて簡単に早期固化できる点が魅力的である。
この製造技術をみると、火山礫に代って放射性廃棄物を用いれば、同様に火山灰モルタルは、当該廃棄物の表面をくま
なく濡して被覆し、堅固な殻膜体を形成して、放射能を外部に放出させないものと思われる。そして現在のガラス固化技
術と比較しても、処理方法こそ大きく相違して極めて簡単で安価であるが、用いる材料は、SiO2(ガラス質)が主要成分
であり、一種のガラス固化技術の変形とも言えるものである。もっとも、耐熱性が抜群であるとはいえ、長期に亘る封印
の場合にはガラス質化が進行して、最後には全体が劣化することも有り得るから、何らかの放熱手段の対策や配慮が必要
となるだろう。
何よりも新素材の優れた諸性能は、様々な外的要因に対しても、極めて最小限の亀裂や腐蝕や劣化しか発生させないも
のと思われ、人工管理のできない海洋底や地中深部よりも、むしろ身近な地上における管理も可能となるかも知れない。
また単に放射性廃棄物を極めて安全に封じ込める可能性があるばかりか、吸着性能に富む火山灰が、放射能への対応如何
によっては、別の優れた性質を発揮し得るような可能性も秘められていると思われる。
別に指摘するように、原子核反応によって生産された放射性廃棄物と、火山の爆発によって生産された火山灰とは、様々
な面で類似しており、由来を同じにする同質の面が多いと思われ、放射性廃棄物の猛毒を制する何かが、天然火山灰の中
に秘められていると思われる。この大自然界には、毒が変じて薬となり、薬が変じて毒となることが多く、どんな毒物で
も、有効な存在価値を見出していけば、必ずどこかに優れた有益性を有しているものである。それ故に、現在の最大の嫌
われ者の産業廃棄物の放射性廃棄物も、火山灰と同様に、今後、新たな活用も見出されていくこともあるだろう。
こうして、放射性廃棄物の処理も火山灰モルタルの独特の調合によって可能と思われるが、単に新素材で予め容器を製
作して、その中に当該廃棄物を流し込んで、新素材のフタや目地で密封することも効果的だと思われる。そして放射性廃
棄物の処理が、特殊火山灰モルタルによって可能となれば、他の全ての産業廃棄物の処理も可能と思われ、様々な特性を
発揮する新たな素材に生れ変ることも決して夢ではないと思われる。
ふとした火山灰利用の新規混練技術から、高レベル放射性廃棄物処理というとんでもない可能性が見出されてくるよう
だ。当方の指摘したようなこの高レベル放射性廃棄物処理への可能性は、後述するように、当方の恩師であった聖心先生
からのご指摘だった。これは、既に政府の研究機関にも伝えており、中にはアイデアを知って研究論文にも紹介されたが、
その後、何にも進展していないようだ。また発明者にもアイデアが伝わって、特許明細書の中で指摘されたが、何ら具体
的検証もしていなくて、単なる思い付きの域を脱していないように思われる。これは国家の総力を結集して実践するべき
課題であり、一個人が売名や打算、功名争いで実現できるものではない。それでは天が邪魔して行き詰まるというものだ。
これは恐らく外国によって挑戦的に研究開発されて、新たな未知の世界を切り開いていくことであろう。猜疑心旺盛な日
本人では、特別な権力と権威が働かない限り、個人的レベルでの関心と理解、協力と実行を期待するのは無理であろう。
そして更なる研究結果によっては、硬化処理した後の廃棄物は、新たな材料として新規な用途が発見できるかも知れな
いものである。これは火山灰の特殊な性状から予見できるとも言えよう。火山噴火の原理と合わせて、火山灰の物性を、
原子力や物理、化学、材料組成等に係る各分野の専門家の協力により、国家的見地から解明していく必要もあるだろう。
何よりも、現在、循環型経済社会の構築を目指している状況下で、多大なる産業廃棄物や放射性廃棄物の処理対策におい
ては、厳しく制限したり取り締まりこそすれ、有効な技術的解決までは手が回らず、野放しになっている由々しき現状を、
根本的に解決していけるものと思われる。
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18 放射線遮蔽体への利用
火山灰利用新素材は、二〇〇〇℃の溶接用バーナー燃焼試験にも耐え、また三〇〇〇℃(二〇分間)に対しても、表層
のみがガラス化して内部には何の影響もない程、極めて耐熱性に優れた素材である。また急激に水に浸けて冷却を何回繰
り返しても何の破壊も生じない程、耐爆裂性にも富んでいる。
更に腐蝕せず、緻密な内部は防水性や強度性にも優れ、極めて耐久的な素材であり、従来のあらゆるコンクリートの比
ではないし、如何なる金属もその性能やコストの点では及ばないものである。こうした耐火性、強度性の優れた特性は、
数千℃の高熱を発し、衝撃力の強い核爆発に対しても、極めて有効な防御体として役立つものと思われる。今日の如何な
る耐核シェルターに比較しても、その特性は格段に優れ、製法も簡単で、製造コストの面でもはるかに安価であり極めて
実用的である。
現在、放射線に対する遮蔽効果を高める為には、磁鉄鉱、バライト、鉄片等の比重の大きな重量骨材がコンクリート用
骨材として用いられるが、天然の火山灰の中には約三%程の鉄分が含有されている。新素材の優れた数々の特性の真の原
因は、中核を為す火山灰モルタルの詳細な物理化学的諸性質を中心に、今後、放射線、原子力、地球物理化学等の専門家
による総合的な解明をまたねばならないが、恐らく、火山の噴出物である火山灰は、微細で吸着性に富む複雑な結晶構造
からして、これを活用した新素材は、強烈な爆風や熱線に対してばかりでなく、某種の放射線の遮蔽にも極めて有効では
ないかと期待される。
もし、これが、各種の実験や測定によって実証されれば、現在の原子力発電所や原子力船等の原子力を取り扱う分野の
様々な用途に新素材が導入できる。即ち、現在、放射性廃液に接触されて腐蝕や漏洩が問題となっている各種容器やパイ
プ、バルブ等を始め、放射線(中性子)照射による腐食や損傷がみられる原子炉の容器や遮蔽壁等にも威力を発揮するも
のと思われる。
19 流体燃料備蓄基地の利用
周知のように、我国は使用燃料(エネルギー)資源の大半を外国からの輸入に頼っているが、特に液体燃料(原油)は
殆ど輸入している状態である。その為、需給状態は、国際情勢や産油国の国情等の敏感な影響を受け、場合によっては我
国経済に大混乱を引き起こす恐れが非常に強い。今後の中近東情勢の険悪化に伴って、その懸念が極めて現実的課題とし
て登場しつつある。こうした危慎を防除して万全を期するには、当該燃料の大幅な消費節減の推進と共に、充分量の備蓄
が肝要であることは言うまでもない。今日、液体燃料の備蓄手段として、廃タンカーを利用した海上貯蔵、鋼製またはコ
ンクリート製タンクを利用した海底貯蔵、強固な岩盤を掘削した地下貯蔵等が考えられているが、通常は、タンクを利用
した地上または地下の貯蔵が多く、海岸埋立地区も大々的に利用されようとしている。
しかし、このようなタンカーやタンクによる海上や地上等の各貯蔵は、万一、火災や爆発、そして漏洩事故が発生した
場合は、消火の困難性や、海水汚染その他の環境破壊が著しいという欠点を有している。この欠点を防除する為に、従来、
地下埋設貯蔵タンクが用いられている。しかし、地下の埋設貯蔵タンクは、地下水による浮力を受けて、タンクが浮上す
ることが最大の欠点である。また液化石油ガスや他の液化ガスは、流体の発する高蒸気圧に抵抗する為に、構築されるタ
ンクや容器が蓄しく巨大となり、ひいては巨費を要することが難点である。
一方、液化石油ガスや液化天然ガス、それにアンモニアのような揮発性液体を貯蔵する問題に対する一つの解決法とし
て、天然または人工の地下貯蔵洞窟を利用することが検討されている。この種の洞窟には、貢岩や石灰岩の様な不透過性
岩層中に構成されるものがある。しかしながら、天然に存在する岩層で、すっかりこのような洞窟の構造に出来上がって
いるものは滅多に存在するものではないし、所望される場所において、これらの液体を常に貯蔵蓄積し得るものとは限ら
ない。更にまた、このような天然または人工の洞窟を、その中に貯蔵される液体に対し、そしてその洞窟内に浸透してそ
の内容物である液体燃料を汚染する地下水に対して、絶対に不透過性にする為にはしばしば内張りの防水仕上げの費用が
高価につくことになる。
最近は、透過性の含水層中に地下貯蔵洞窟を構成することが堤案されている。この場合には、洞窟壁中の水が外部から
人工的に凍結させられ、それによって、貯蔵される流体にも、またその洞窟を包囲する吸蔵水にも、凍結壁が不透過性に
なるようにするものである。そして洞窟の底部には硬い不透水性の岩盤を有し、その上に砂質等の含水層を有する地域が
有望視されている。
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ところで、こうした条件に最も合致した地質を示すのは、実は火山灰地であろうと思われる。火山灰は、降雨の際には、
雨水を吸収して崩壊や土石流も頻繁に発生するほど、極めて吸水性に富んでいる。従って、火山灰地は透過性の含水層地
帯に相当し、火山灰地の地下深部は、火山灰地を透過した地下水の水脈流を形成する不透水層となっていることが多い。
また耐火性に富む火山灰である故に、火山灰地も極めて熱に強いといえる。それに火山灰の微粒子が降下堆積して圧密さ
れた火山灰地は、強度性に優れていて、垂直に掘開しても周壁は崩壊しない。
この事実は、火山灰地の断崖絶壁の真下に住宅や道路があったり、逆に断崖の端縁頂部に道路や畑地があったり、ブル
ドーザー等が掘削現場で作業をしていることが雄弁に語っている。なお、これは、火山灰が極めて吸水性に富む故に、雨
水が当ったり伝ったりする傾斜壁面を、むしろ設けないで、垂直に掘開してある方が効果的とさえ言える。そして掘削に
際しても、ダイナマイトが殆ど効かないほど、極めて耐火的で強固な地質構造を示している。この火山灰地は、流体の大
量備蓄基地として充分活用できるものと思われる。
その具体的利用においては、透過性流体を浸透しながら外部から電気等を通じて硬化させて不透水界壁を形成したり、
また縦溝孔を掘削してそこに不透水性材料の挿入、埋設や、不透水性流体の注入固化等によって界壁を設けて、その囲ま
れた地域の地下内部を貯蔵庫として利用することが可能であろう。この不透水性物質には火山灰利用の新素材を活用して
いくことも充分可能であろう。
広大で相当な深さまで堆積して荒地を形成している火山灰地一帯、また草地や畑地の下に眠る広大な火山灰地層は、こ
のように、流体エネルギーの安全な地下備蓄基地として、自然の景観を変えることなく、極めて有望なことと思われる。
もちろん、火山灰利用新素材を従来の貯蔵タンクの材料に適用していっても、その優れた耐火性、耐爆裂性、耐酸性、耐
腐蝕性、耐水性、軽量性、強度性等は、現在のタンクの安全性や耐久性や経済性を著しく向上させ得るのは間違いないで
あろう。
20 内需拡大に向けて
新素材コンクリートは既に述べたように、既存のコンクリート構造物や道路、干拓等の建設分野における補修や新たな
建造物の建設に関して、その高性能な性状により大いに貢献できるものである。そうした高性能で多機能なコンクリート
は目下、問題になっている公共工事の効率的運用にも大きく寄与できるだろう。即ち、強度性、軽量性、耐候性、耐久性、
耐火性、レリーフ性、湿気防止、省エネ性、吸着性、断熱性、耐爆裂性、防湿性、防水性、殺菌効果、滅菌効果、耐酸性、
耐アルカリ性、耐薬品性等の向上が、建設需要を大きく喚起させ、内需拡大に役立つと言えよう。
単に、一般の建設分野のみならず、耐塩害性の大幅な向上により、海洋構造物に適用しても大きな効果を期待できるで
あろう。そして、鉄、樹脂、石材等の代替化も可能になり、適当な補強材と組み合わせて、適当な薄板状化、棒状部材化、
曲面板化等に形成して様々な用途への応用展開を図っていけば、ガードレール、車体、船体、タンク、ロケット、宇宙船、
浮きドック、エンジン等の各種鉄鋼製品、各種機械部品等のあらゆる製品にも活用できるだろう。
なお、表面は堅固な火山灰モルタルで被膜するものだが、その内部の骨材の様々な選択により、比重の小さい物から大
きな物まで実に様々な物が出きるものと期待される。即ち、水に浮く浮体構造物から、原子力発電所のような重量遮蔽構
造体などに至るまで、多様な応用が可能になるであろう。更に、多孔質な火山礫や溶岩を活用していけば、透水性ある道
路の建設も安価に且つ大量に提供していくことが可能になるであろうと思われる。特に、船舶に大々的に適用していくこ
とによって、船底に対して海草や貝殻の付着防止にも、新素材の有する耐塩害性、耐酸性、殺菌性、滅菌性等により大き
く貢献できるものである。
かつて、輸出主導による貿易の黒字基調に対して世界中から非難を受けつつあって問題化していたが、いずれは通商立
国、貿易立国の基盤にも破綻が来るであろう。歴史的にも通商立国で栄えた国家は、オランダやカルタゴを見ても解るよ
うに、それほど長続きした試しはないようだ。それは国内外の環境の変化により脆くも崩れ去ってしまうからだ。目下、
グローバル経済の進展に従って、次第に貿易収支が悪化し、外需依存の体制が破綻しつつある現在、早急に内外需バラン
スの採れた国家的な政策が求められる所以である。
従って、新素材の大々的な国家的普及展開は、こうした現下の貿易構造に対しても実に効果的に対処でき、我国経済を
内需中心に大きく転換でき、輸出と輸入のアンバランスを是正し、適切な輸出入の貿易均衡を可能にして、調和のとれた
経済社会を達成することができるだろう。そして、単に建設や製造に関わるもののみならず、火山灰や火山礫の材料の採
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取、採掘、運搬、保管に関する多くの流通分野においても、経済を活性化していくことだろう。内航海運や外航海運、鉄
道、道路運送の活性化をもたらし、旧国鉄の遊休土地も火山灰や火山礫の保管集積ヤードとして大きく役立てることもで
きるだろう。
都市の建造物や道路の不燃化、耐火性、耐久性等の向上と相まって、都市のヒートアイランド化の現象にも効果的に対
処することができるだろう。日本の目指す将来像においては、以前のように、輸出主導により集中豪雨的に外貨を稼ぎ、
相手国の経済に壊滅的打撃を与えて破壊していくようなことは、友好関係を築いていくためにも好ましいことではないで
あろう。こうした世界の潮流に迎合して健全な調和のとれた均衡ある貿易構造にするためにも、内需拡大を図っていくこ
とこそ、世界の貿易上においても有効に貢献できるものと言えるであろう。
21 過疎地対策へ
従来は、過疎地対策として、都市部の密集地域における人口集積の拡散化や公害防止の観点等から、地価や労働力も比
較的安くて各種規制も比較的少ない過疎地方に各種産業を移転分散して、都市の密集や混雑を緩和すると共に、過疎地に
おいても税収の伸びや雇用の安定化を確保するというものであった。
こうした従来の図式では、工場や産業の誘致にしても、原材料の搬入や製品の搬出上、良港や幹線道路及び鉄道等に恵
まれた地方都市周辺区域が優先して、更にそれから離れた奥地や遠隔地にまでは充分な考慮がされて来なかったように思
われる。即ち、地方都市の振興対策ないしは大都市機能の肥大化に伴う種々の歪の回避対策と言えるものであり、僻地・
荒地・離島等の振興を図る真の過疎地対策ではなかったと思われる。それに最近のグローバル化の進展と共に、国際競争
上、企業の海外移転が頻発化して、地方都市自体が過疎化して、深刻な国内空洞化現象が起きつつある。
しかし、今や、火山灰や火山礫、溶岩等の有効利用が解った以上、地方や過疎地の活性化対策として、新素材の普及に
基づいた経済政策が大きく浮上して来ざるを得ないだろう。新素材の原料である火山灰や火山礫、溶岩等は荒れ地や原野、
そして砂漠等の過疎地など、実に我国土全域に分布し、その賦存量は無尽蔵である。逆に言えば、そうした不毛の原料が
豊富にあるからこそ、開発が遅れ、過疎地になったとも言えよう。
我国の豊富な火山灰・火山礫の有効利用の大々的な推進は、従来の過疎・過密の対策を先の種々の改革事業と併せて、
本格的に且つ強力に前進させるものである。これまで田畑、森林、草地化もできず、産業と言えるものも存立し得なかっ
た過疎地を、一躍、国民経済上に大きな位置を占める建設事業を始め各種産業に用いる豊富な天然資源の産地に大変貌さ
せるものである。
直接、広般な各種事業、工場、研究所等を誘致でき、過疎地の開発を促進させて多大なる経済的効果を持たらし得るも
のである。しかも、さほどの公害上の問題もなく、原材料入手の為の特別な配慮も不要となるのである。何よりも産業誘
致先に原材料が豊富に存在し、そしてその原材料や加工製品が広般な用途分野で全国的に利用されることは、極めて力強
く有望なものである。実に、火山灰・火山礫の産出調査から土地売買、そして採取、保管、搬出、更に火山灰利用の各種
製品の生産、出荷に向けて、地元に多大な利益を持たらす諸産業が成立し得ることになった。即ち、産出調査業、不動産
業、採取業、保管業、運搬業、各種加工業・各種研究所であり、地場業者の大々的な参加も充分可能で、地場産業の育成
発展にもなるであろう。
何よりも、建設資材やその他の工業的な利用に供される新素材向きのものは、風化もせずに不純物が少ないものに限ら
れる為に、その産地は特に荒地、僻地、離島(火山島)等の過疎地である。またその消費地は、土木や建築のあらゆる用
途やその他の産業分野にまで利用できることから、都市から地方、田舎に至る全国に及び、その利用者や消費者も国民全
体である。
また常温常圧下での硬化による無焼成ニューセラミックであることから、特別に多大なエネルギーの確保も不要であろ
う。更に採取後の跡地の有効利用を考慮すれば、農作物の収穫や宅地の拡大も期待できるであろう。そして大都市の周辺
地域に集中して、海外からの原材料受け入れを最大限に考慮した各種の産業も、我国の天然資源の火山噴出物を求めて、
過密地域からの脱出や体質転換をも比較的容易に進展していくものと期待できよう。
また、火山灰や火山礫の採取や運搬で、火山灰地の赤字ローカル線問題を解消させていくことも可能であろう。鉄道の
全盛期には、鉄道自身が自ら利用する石炭を運搬して活性化させて、集積ヤードにも石炭を山積させて来たが、トラック
運送や自動車の増加や、電化による石炭離れに伴い、鉄道も次第に衰退していったことは承知の通りである。そうした面
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を大きく改善して、再度、鉄道を復権化していくためにも、特に過疎地の赤字鉄道を活性化していくためにも、火山灰や
火山礫を運搬し、更に集積ヤードとしての旧国鉄が所有する過疎地の遊休土地の有効活用も可能であろう。
更に、火山灰利用による新建材や各種代替品の製造工場の建設により、過疎地にも新たな産業の誕生が期待できるだろ
う。これまでの過疎地対策とは、真の過疎地に対するものではなく、精々が、過疎地に近い地方の中小都市の活性化に他
ならなかったとも言えよう。今回の新素材による新日本列島大改造計画の推進によって、火山地帯の豊富な材料の有効活
用によって、真の過疎地の活性化が実現できるものと確信する。
即ち、火山灰地からの材料の採取、調達に伴って、原野や荒れ地、砂漠の国土開発、内航海運や赤字ローカル線の活性
化にも有効に寄与して、過疎地の経済に対して大きく貢献していくことができるであろう。産業の空洞化を阻止して、雇
用の増大や、各種工場の立地、集積ヤードの確保、搬出、運搬等における港湾整備、鉄道網の整備等の流通面で、過疎地
の地域経済社会において多大なる経済浮揚効果、開発効果が期待できるであろう。
そして、これは日本のみならず、実に全世界的にも適用できると言えよう。即ち、世界的に見ても、過疎地の多くは火
山灰や火山礫に被われた荒涼とした原野や荒れ地、砂漠となっている場合が多いといえる。火山地帯だからこそ、発展が
遅れ過疎化していったものであり、実に世界的規模での過疎化対策が、新素材の活用で実現可能となってくるものである。
火山灰や火山礫を除去した後の跡地利用においても、植林や農耕等への土地の有効利用を促進していけば、過疎地の再生
に更に大きく貢献できるだろう。
荒れ地や原野や砂漠の開発や植林にしても、現在のやり方では無理があるようである。即ち、もっとも効果的なことは、
いっそのこと、瓦礫や砂漠砂を除去して開発していくことであり、そうした方向での実行が求められているのである。瓦
礫や砂漠の上からの直接的な開発では限界があるようである。新素材用の原料を採取した後に、土地の有効活用を図って
いけばより効果的な開発が実現できるだろう。
さりとて、人家が少なからず近辺に存在し、何かと立ち退き料の交渉や土地の強制収用が難航しやすく、また、国立公
園区域や国定公園地域等の様々な法規制が厳しく存在している日本のような状況下では、いっそのこと、日本みたいなが
んじ絡めの法規制もなく、比較的地元住民の開発や環境改変に対する抵抗や、官僚的な硬直した思考による邪魔が入らな
いところでこそ、大々的な開発が可能になるものと思われる。即ち、海外の大規模な原野や荒れ地、砂漠から原料の火山
灰を大量に且つ大々的に調達し開発していった方が経済的には効果的であろうと思われる。
そうなれば、世界中の砂漠から大量の火山灰を除去していった暁には、砂漠を肥沃な原野に転換していくことも可能で
あろうと期待される。目下、実施されているような砂漠の緑化の方法では、一部では有効かも知れないが、砂漠全体の緑
化には限界がありそうに思われる。何故なら、風に飛散しやすい微細な砂漠の砂では移動しやすく、砂漠の砂を除去しな
い限り、管理が殆ど不可能であるからだ。まずは砂漠の砂を除去して有効活用していった後にこそ、真に効果的な砂漠や
荒れ地等の緑化が実現し得るものと確信できよう。
なお、参考までに指摘すれば、目下、中国の北京などは乾燥化して、毎年地下水が二,三メートルも低下し、北京郊外
七十数キロにまで砂漠化が押し寄せてきているが、その源流の黄土高原に大量に横たわっている黄砂と呼ばれる微細な砂
は、実に火山灰と言えるであろう。日本にも毎年、春先になると飛来してきて、車のフロントガラスにもビッシリと付着
している現象が見られるが、あたかも火山灰と同じ現象であることが容易に理解できるであろう。こうした点からも、世
界有数の砂漠の緑化に向けて、日本が協力をして、砂漠の火山灰を大量に除去して新たな活用を図って、大々的な展開を
推進していく展望が見えてくることであろう。
22 鉄道赤字ローカル線問題ヘの対応
目下、我国の財政上、最大の赤字を計上して、財政再建の中核的な問題となっているものに、鉄道のローカル線におけ
る赤字経営がある。かつて我国の鉄道も、石炭全盛の頃は、石炭産出地域から消費地を結ぶ運搬、流通の動脈として、ま
た自動車の普及がまだ低水準だった頃の道路網の未整備を補うものとして、積極的に建設されて充分な利益効果をも発揮
して来た。
然るに今日、石炭は石油にとって代わられて衰退し、また自動車文明の発達による道路網の拡張によって、鉄道も貨客
両面より著しく経営的に行き詰まって来たようである。たとえ、石油の先行き不安定な情況下において石炭が再評価され
て来たとは言え、一度閉山したものを復活しても、我国炭坑の鉱脈の性質上、量や価格からして、以前ほど、鉄道の再利
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用を活発化ならしめる原動力にはなり得ない。既に我国の基幹物資であるセメントですら鉄道輸送を離れてトラック輸送
に依存しているのが現状である。
鉄道の経営悪化を招来させた原因は、その他にも鉄道経営自体の経営合理化による努力の至らなかったことや、採算性
の極めて悪い地方における鉄道利用を骨子とした経済政策や地域振興策が、国及び地方公共団体やその関係者共々、極め
て甘い見通しであったこと等も同時に指摘されよう。既に、鉄道各社の赤字ローカル線の撤廃は、地域関係者達の抵抗に
遭いながらも、閣議決定の方向に沿って、漸次、拡大実施されて来ているのである。
ここで各種運搬手段について、貨物の輸送効率を見ると、飛行機以外では船舶が圧倒的に大量の物資を運搬でき、次い
で、貨車、トラックとなっている。そして船舶が海上輸送であるのに対し、貨車、トラックは内陸部まで含めた陸上輸送
が可能である点が大きく異なっている。またトラックは、荷積みから荷降ろしまでを各一回で済み、戸口から戸口までを
直送できる便利さの点で、積み換えの手間を要する貨車よりも、業者にとって歓迎されて来ており、その為に次第に鉄道
鉄離れを推進させて来た。もっとも、最近では、鉄道の信頼性も増して、少しずつ復権しかけてもいるのも事実である。
しかしながら、既に大都市近郊や幹線道路では、車の大洪水により渋滞や混雑が発生して道路事情が悪化して来ており、
輸送効率も極めて悪くなる一方である。逆に、鉄道の方は比較的に閑散としているのが現状であろう。これ以上のトラッ
ク輸送の増大化は、騒音や排気ガスの発生に伴う環境汚染や、道路整備の為の多額の出費、そして石油消費の増加をもた
らしていき、国策上、何らかの規制処置を講じていく必要があるものと思う。それに鉄道は、陸上における大量輸送の利
点からも、また有事の際の国家的な動脈手段としても、是非とも必要大切なものであり、国が強力な施策を用いて鉄道経
営の基盤を確保していくべきであろう。とにかく有事の際には、現在の混雑した道路事情では混乱が激化するだけである。
ところで、様々な有益なる用途を見出し得た火山灰、火山礫の賦存地帯は、北は北海道から東北全域や北陸、中部山岳
地域、また栃木や群馬の関東北部、そして房総半島や伊豆七島から伊豆半島、また山陰地方から九州へと、実に全国にま
たがり、その量も膨大であることは既に指摘した。一見、森林に覆われていて外部からは解らないように見えても、その
表層土を除去すれば、殆ど下部の地層は火山灰と言えるであろう。黙っていても大雨の時には泥流、土石流が発生して災
害をもたらしていくものだ。
この大量の火山灰、火山礫の採取地から加工地や消費地への運搬に際して、かつての石炭に代わって鉄道の運搬手段を
最大限に活用すれば、トラック輸送による石油の大量消費や粉塵まき散らしの公害発生を回避できるばかりでなく、現在
の鉄道経営の採算問題を一挙に解決し得ることになるだろう。もちろん、離島の火山島や海岸線に面した僻地や、それに
良港に恵まれた産地からの搬出は、大量輸送を可能とする船舶を利用するに限るが、内陸部や良港に恵まれない海岸部か
らの搬出は鉄道手段が最大限に活用できるだろう。それに火山灰、火山礫の産地は、かつての石炭ほど偏在するものでは
なく、全国土に分布し、鉄道のローカル線も充分に利用可能である。更に旧国鉄のJR鉄道各社の遊休土地は、火山灰、
火山礫の搬出入の為の集積ヤードとして、また施設の一部は合理的な保管や搬出入の設備としても活用し得るだろう。
JR鉄道各社(旧国鉄)の大々的な利用拡大を有利にならしめる点は、実に、
1
火山灰・火山礫の採取・産出地域が、火山国土を反映して、荒地、僻地、そして一部の森林、畑地、草原地帯の地方
全域に及んで無尽蔵であること、
2
火山灰・火山礫の利用分野が建設事業の全分野(住宅、建物、道路、橋梁、電柱、トンネル等)から他の全産業分野
の代替材料(家具、建具、車体、船体、航空機胴体、付帯部品・部材等)にも及んで広範多岐に亘ること、
3
火山灰・火山礫の消費地が、住宅地域、商業地域、工業地域を含めて、大都市から田舎に至るまでの全国的であるこ
と、
4
火山灰・火山礫の大々的な運搬に際して、日本全国に敷設されたJR各社(旧国鉄)の鉄道路線が、その付帯施設や
遊休土地をも含めて極めて有効に利用できること、
5
かつて石炭を蒸気機関車の燃料に旧国鉄自身が利用したように、火山灰・火山礫を運搬するJR各社当局自身が、ト
ンネル、橋梁、枕木、線路の路盤、駅舎、付帯施設、電柱、レール、車体等への火山灰利用技術の導入に当って、最大の
研究者であり消費者になれること、
6
国民生活に多大な影響を与えて大きく貢献する一方、現在でも国民負担を仰いで多額の債務を負担していて、本来は
国民全体の為に運営されるべき公共機関としてのJR各社(旧国鉄)が、火山灰・火山礫の運搬や活用によって著しく復
活再生することは、同様に産出や消費の両面で国民の大多数が火山灰・火山礫利用の多大なる恩恵を受ける以上、国民の
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誰もが正面切って反対し抵抗できないことであろう。
そしてJR各社の赤字ローカル線が、火山灰・火山礫の産出地域とは無関係に次々と撤廃が決定され実施されていく現
在、早急に先の提言書の内容における関係省庁間の連絡協議会を設けて種々の検討をしなければならない理由が、ここに
こそ存在するのである。
23 地球環境問題の解決へ
世界最大の未利用資源である火山灰を利用した新素材により、現在抱える多くの困難な諸問題が上手く解決されていく
ものだが、特に、省エネに伴う炭酸ガス排出への対応、高レベル放射性廃棄物処理を始め各種産業廃棄物処理への対策、
河川や湖沼の浄化、ヘドロ・汚泥処理への対応、自然と調和したコンクリート構造物による自然回復、有機塗料の排除に
よる環境汚染防止、そして最大の課題は地球の砂漠化防止に向けて、砂漠の砂の有効活用と除去後の砂漠の緑化の推進な
ど、実に多くの環境問題への貢献が期待できるのである。
最大の貢献は、目下、一九九七年京都議定書の批准より、国際公約となった炭酸ガスの削減であろう。即ち、二〇〇八
年から二〇一二年までに一九九〇年比で六%の削減を義務付けられたものだ。これから省エネを実施する欧州と異なり、
既に省エネを実施し終わった日本にとって与えられた目標値はある意味では厳しいものがあるようだ。それに、既に六%
削減を前に九%もの炭酸ガスが増加しており、全体で見ると、何と一五%もの削減を余儀なくされているようだ。
当初は我国の技術力をもってすれば目標達成は容易だと言うことであったが、ここに来て、技術的にも不可能であるこ
とが次第に解ってきたようだ。産業面では可成りの合理化努力を実施してきており、これ以上の削減は産業構造全体を変
革しない限り不可能でもあるようだ。むしろ民生部門でのライフスタイルの大幅な改善に頼るしかないようだが、原発反
対を言いながら、自らの生活スタイルを根本から改善して、省エネ努力をしようとしない国民エゴの前では、全くの空念
仏となりつつあるようだ。既に外国の研究者からは、画期的な技術の登場でしか、炭酸ガス排出削減は解決できないと指
摘しているようだ。
そんな中で、政府も炭酸ガス削減に際して、条約で決められた炭酸ガスの排出権取引に希望を託して、その権利の購入
に向けて、アフリカやロシアなどの発展途上国や対象外国との交渉に入りだしたようだ。排出権の売買などは、緊急避難
的に事後的に創設した産物に他ならず、炭酸ガス排出の削減と言った全地球的課題に向けては、正に邪道とも言えるもの
だ。しっかりと炭酸ガス削減に向けて真摯な対応をするべきであろうし、金で辻褄を合わせるような姑息なことは排除し
てべきであろう。
そして、膨大な資金で炭酸ガス排出権を購入するようなことは、何れは国家財政にも大きく響いてくることであろう。
国民のエネルギーコストにも影響を与えていかざるを得ないであろう。目下、炭素税の導入も検討されているようだが、
産業界からの国際競争力への懸念から反対されている有様だ。しかしながら、これは世界的潮流にもなりつつあるもので、
その内実現に向けて大きく動き出すことであろう。
既に、火山灰利用の新素材は、従来の性能を大きく凌駕したその高性能な断熱性、耐火性、耐久性、強度性、耐酸・耐
アルカリ性、耐候性、防水性、防湿性、耐爆裂性などにより、鉄、樹脂、石材、木材等の各種資源・資材の大幅代替化が
可能である。従って、その大幅な普及推進を通して、多大な省エネ・省資源の効果により大幅な炭酸ガス排出の低減化を
達成できるものと確信できる。
即ち、火山灰利用の新素材を、道路、トンネル、滑走路、ダム、建築物、護岸、擁壁などを中心とした建設分野を始め、
船体、航空機、車体、ガードレール、タンク、コンテナ、エンジン、タービン、そして防水・断熱・不燃・耐火等の各種
仕上げ材などの、実にあらゆる産業分野に、大々的に導入を図っていけば、その鉄鋼やセメント、各種金属類、各種合成
樹脂材料の代替化により、製造部門からも、また冷暖房の負荷低減による建物の維持管理面からも、多くの石油エネルギ
ーの削減の達成が可能になることにより、炭酸ガス排出削減に効果的となるものである。
特に、船舶体の船底に火山灰利用の新素材を適用していけば、火山灰の殺菌性、滅菌性、耐酸性、耐アルカリ性などの
特性により、現在、船速の確保や貝殻や海草の付着防止の為に多用されている有機スズなどの船底塗料も不要になるだろ
う。実に、こうした船底塗料の塗り替え・交換のドック作業による船舶の運航休止期間の損失もなくなり、産業面でも大
きな貢献をもたらすものと言えるであろう。
そして火山灰利用の新素材の各種性能は、船底塗料に関する環境汚染防止ばかりではなく、防水、耐火、断熱、防錆な
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どの各種塗料・シートの大幅な削減ないし廃棄をもたらしていき、合成樹脂の利用を環境の汚染面ばかりではなく、産業
面、エネルギー面、資源面から実に多大な効果を招来させていくことであろう。特に、鉄の錆に関して、防錆塗料の生産、
各種建造物の修理・解体などから来る全体の損失は、実に年間八兆円にも上っているとの試算もあるようだ。こうした鉄
の錆による国家的な損失にも実に多大な貢献ができるであろう。
なお、火山灰利用の新素材は極めて優れた断熱特性を有し、現在のコンクリートの比ではない。目下、都市でのヒート
アイランド現象などは、冷暖房による熱気の発散によるものであるが、それと同等に影響を及ぼしているのが、実に、コ
ンクリート建造物や道路、そしてアスファルト道路からの太陽の光熱の照り返しによるものであろう。火山灰新素材を
大々的に適用していけば、こうしたヒートアイランド現象にも効果的に対処できるであろうと期待される。
また、新素材の混練方法や材料特性は、既に、あらゆる産業廃棄物処理にも効果的であることを示唆した。新素材は、
投入される骨材の表面を堅固な火山灰モルタルにより被膜するものであり、その緻密で堅固な表面は、内部からの漏洩を
防止するばかりか、外部からの刺激や衝撃に対しても、その強度性や耐衝撃性により可成りの抵抗力を有するものと確信
できる。
コンクリート内の火山礫に代わって、各種の産業廃棄物を置換し適用していけば、火山礫同様に混練し、封印し、密閉
していくことができるものだ。実に、あらゆる産業廃棄物に至るまで、例えば、現在世界中で大きく社会問題化している
原子力発電所から排出される高レベル放射性廃棄物の処理にも、その封印作用、密閉効果に極めて効果的であるものと確
信できる。
即ち、火山灰利用の新素材により、その緻密堅固な殻体により外表面を被覆して、内部に封印し密閉していくことがで
きれば、あらゆる産業廃棄物処理に関して大きく貢献できるであろうし、その用途も、単に更なる廃棄物として処理する
のではなく、例えば、魚礁などに応用していけば、経済的にも充分に採算性も出てきて、産業経済面での波及効果は図り
知れないであろうと期待されるものだ。
また、火山灰利用の新素材は骨材として、内部に空隙の多い多孔質の火山礫を利用するものである。それ故に、混練し
てコンクリートを製造する際に、その多孔質の表面が露出するようにすれば、現在のような表面が平滑で微生物や昆虫、
小動物や鳥、魚も生息できないような死んだ建造物に代わって、新たな自然と調和した建造物体を提供できるものである。
即ち、その多孔質の表面に、土や泥が堆積・沈殿・混入し易くなり、それに従って、各種微生物や昆虫が生息し、更に
は相互連鎖により、鳥や小動物や魚が招き寄せられていくことになり、結果的には、生物が全く生息できない現在のコン
クリート建造物に代わって、実に、様々な生物が生息できる自然環境を提供していけるものであり、自然と調和した環境
作りに大きく貢献できるものと確信する。
そして、火山灰利用の新素材は、その火山灰特有の吸着性により、河川や湖沼の浄化にも多大な効果を発揮することも
既に示唆した。即ち、大きな社会問題と化している湾や入り江、沿岸、湖沼、河川などに堆積しているヘドロなどの処理
に対しても、微細な結晶構造の噛み合い効果から招来される緻密堅固性の火山灰独自の特性により、新素材と関係なく、
火山灰自体を独自に使用していっても、ヘドロの封印・密閉、地盤沈下防止、そして水質汚濁防止・除去等にも実に多大
な効果を期待することができるであろう。
更に、この火山灰は世界最大の未利用資源でもあり、その活用は実に全世界的な規模での環境問題に貢献できるものだ。
即ち、現在、世界的規模で問題化されている砂漠の緑化である。後編で詳述するように、この砂漠の砂こそが実に火山灰
そのものである。世界中の殆どの研究者や学者が知らないことであり、気付かないことであるが、この砂漠の砂は火山灰
と同様に多孔質の微細な結晶により形成されているものである。
この砂漠の緑化は世界中で実践されているが、余りにも、その微細で軽量な結晶により、飛散し崩壊し易い故に、なか
なか固定することができずに難儀しているものだ。今回、火山灰、即ち、砂漠の砂の実に広範多岐にわたる有益な特性や
応用・用途が発見できたことに伴い、砂漠の砂自体の有効活用を図って、火山灰や火山礫の除去を経済的にも採算ならし
めていくことを可能にしていくものだ。そして、その火山灰や火山礫の除去後に改めて、植林などを通じて砂漠の緑化を
推進していくことにより、荒廃した砂漠の開発をより効果的なものにしていけることであろう。
第3章 新素材技術普及に向けた将来展望
24 新日本列島大改造論の確立と実践に向けて
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(1)新日本列島大改造論の実践へ
新素材コンクリートである「銑テラ」の画期的特性に基づいて、新しい日本列島大改造計画を策定し推進していくこと
が可能になってきたと言えよう。即ち、火山灰の採取、運搬、保管等に至る一連の流れの中での、鉄道、海運、道路運送、
集積ヤードの活用等による流通網を整備して、経済を活性化させることができるだろう。また住宅、ビル、病院、化学品
や薬品を扱う各種工場、温泉地の建造物、道路、ダム、護岸、擁壁、トンネル、海洋構造物、更には干拓等の建設分野で
大きく貢献できるだろう。
目下、ヘドロが堆積した海洋の干拓や埋め立てにおいては、大変な苦労をし難儀しているのが実状であり、関西空港で
も大きく地盤沈下し、対応策に苦慮している有様である。火山灰を用いれば、その微細な結晶構造が、火山灰相互の噛み
合い効果により、堅固な地盤を形成し、ヘドロ対策やその処理に極めて効果的になり、干拓や埋め立てに伴う諸難題も有
効に解決できるだろう。これは韓国の国際空港の軟弱地盤対策でも、発明者のアイデアによって、フィリピンからの大量
の火山灰搬入により既に実証済みであると聞く。
更に河川や湖沼の浄化にも火山灰の吸着性能により多大なる効果をもたらすだろう。そして、新素材と各種の補強材と
を組み合わせて、適当な形状の製品、部品、材料等に応用していけば、実に様々な現在の鉄製品、木材、樹脂製品、石材
等に代替化できるであろう。セメントも場合によっては全く不要化できるものであり、現在、問題化している酸性雨によ
りコンクリートや石造建造物の劣化現象にも効果的に対処できるであろう。
こうしてみると、新素材の特性や火山灰自体の性質を生かして、実に、流通面から製造面、建設面等のあらゆる分野で
の経済の活性化、産業の構造改革化、雇用の拡大、石油消費の大幅な減少、過疎地の活性化、河川や湖沼の浄化、ヘドロ
処理、産業廃棄物処理、高レベル放射性廃棄物の処理、自然環境との適切な調和の促進等の大幅な内需拡大が可能になり、
更には、諸外国に対する技術指導や技術貿易を展開していくことも可能であろう。即ち、日本列島全体を建設事業や産業
構造改革を中心としたハード面の整備により、それから波及した様々な分野に対して大きく影響を及ぼしていくことであ
ろう。
正に、日本列島における国家的規模での一大改造を図っていくことができるものであり、更に、世界に向けての経済や
環境面での指導的役割を果たしていくこともできるであろう。正に、現在のコンクリートに関する諸問題の解決にも適切
に対処して大きく貢献できるばかりではなく、新しく建設することや、現在のコンクリート建造物の大改修においても大
いに効果的であり、誠にもって時宜に適った革新的技術の登場となるであろう。そればかりか、国家的事業としても、歴
史的な快挙としていけるだろう。
(2)総合的国家安全保障の確立
火山灰利用新素材や火山灰道路、そしてマグマよりのウラン等の抽出化を国家的な規模で普及促進、開発研究を図って
いくことは、様々な角度から日本列島の大改造を持たらすものである。我国の無尽蔵の天然資源である火山灰、火山礫を
有効に利用する新素材銑テラは、単に住宅を始めとする建設産業全般に用いられるのみならず、適切な補強埋設部材と組
み合わせれば、実にその応用範囲が拡大するものである。
例えば、様々な家具や建具、自動車や列車の車体、航空機の胴体や船舶の船体、更には無焼成ニューセラミック体とし
て、耐熱、耐酸、耐摩耗、防水、表面平滑性等の諸特性が要求される全産業分野の製品に応用展開が可能なものである。
それに伴い、石油や石炭を始め、鉄等の主要金属資源や木材等の各種資源、エネルギーの大幅な消費節減が図られ、海外
依存度の高い我国経済の体質から脱皮でき、我国の国家的な基盤の強化が確保されるものである。
そして火山灰・火山礫の各種製品化への展開ばかりでなく、これら資源の運搬や過疎地対策、そして採取後の跡地利用
等の各方面でも実に多大な波及効果を持たらしていくものである。採取跡地の田畑化の拡大によっては、我国の食糧自給
率の向上も期待できよう。目下、我国の米は、諸外国に比較して生産価格が高くつき、消費価格との差額を埋める為に、
毎年、多額の経費を計上して国家財政を圧迫しているとして、一部方面から非難の声が寄せられているが、米の質は誠に
上等で美味であり、とても諸外国の比ではない。単なる価格のみならず、質も併せて考慮していくことが大切であろう。
それに先の木材と同様に、米を始めとした種々の食糧も、その地域特有の産物を、その地域独特の気候風土の下で生活
している身体が受け入れてこそ、健康にも効果的であると言える。それ故に、食糧自給率の向上を目指して我国農業の振
興を図っていくことは、我国国民の健康増進にもつながるばかりでなく、国家の食糧安全保障対策上にも、極めて効果的
であり、推進すべきものであると言えよう。
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現在、国際情勢が急速に悪化の一途を辿りつつあり、海外より我国に持たらされる全種類の膨大な産業物資の輸送の安
全を図ることが、我国の経済防衛対策上、極めて重要にして緊急の議題であると再認識されてきている。しかしながら、
世界有数の経済大国として経済規模が肥大化し、世界中から大量の物資を搬入し、その輸送路も数千キロから一万キロに
及ぶとあっては、我国商船隊の航路の安全を完全に保障していくことは、莫大な軍事力を投入しても不可能であることは
言うまでもない。万一の場合を考慮して、商船隊の集団航海や、海上自衛隊による側面護衛を図っても、長大な海上航路
帯(シーレーン)を、潜水艦や艦船、航空機による攻撃から完全に防衛していくことは不可能であろう。
従って我国の経済の安全保障体制を確保する為には、ある程度の軍事力整備を図ることは必要だとしても、その顕著な
増強にのみ頼ることは、財政的にも著しく限界があり、また膨大な領域の防衛に関しては、その効果も疑わしく、国民生
活を著しく圧迫し破壊していくことであろう。やはり、最良の方策は、資源エネルギーの海外依存を極力減少していくべ
きであり、且つ全産業分野における体質を改善して基盤を強固にしていくといった面に向けられるべきであろう。こうし
て我国の存立基盤を強化し、総合安全保障体制を強力に確立する為にも、先の新日本列島大改造の具体的な実践に向けて、
諸政策を国家的大事業として推進していく必要があるだろう。
目下、我国には、総合安全保障の確立といった概念は、理念的には国民の間に広く浸透してその必要性が痛感されて来
てはいるものの、統一的で具体的な方策となると、中核的な推進母体もなく、効果的な政策も強力には実施されていない。
精々が国内的には食糧や石油等の備蓄を真剣に検討し出したり、石油エネルギーの転換を推進したりであり、また対外的
には種々の資源の海外供給地域の多角分散化を図ったり、長大な海上航路帯の安全確保の為の安易な軍事力増強を推進す
るというばかりで、いずれも小手先を弄したその場限りのものであり、極めて長期に亘って展開される激動の世界情勢の
中を生き抜くことはとてもできないであろうと思われる。
火山灰利用新素材の登場を契機として、火山国日本の在り方を根本から見直し、新日本列島大改造を強力に推し進める
中で、我国の安全保障体制の確立と推進を図っていくことが最善の方策ではないかと確信される。そしてこれこそが、激
動の国際情勢の荒波の中で、我国が生存し続けるカギとなるものである。恐らく、最終的に我国の存亡を賭けた決断に迫
られる数年後が、国家破産の危機であり、この提起の真剣なる実践か否かが日本の明暗を決定していくものと思われる。
(3)今後の国際情勢
現在の世界情勢は、中国やインドなどの経済発展が顕著であるとは言え、世界的には経済的にも政治的にも軍事的にも
大きな曲がり角に来ているようだ。目下の、米国による対テロ戦争の拡大は、巨額の双子の赤字に拍車をかけ、米国経済
の崩壊をもたらし、それは過去のベトナム戦争の比ではなく、即ち、単なる経済の面の破綻を大きく越えて、米国連邦政
府の崩壊と米国分裂の状況を招来していくものと懸念される。また、米国の戦争拡大が無くても、日本の財政破綻から国
家破産を招き、それが欧米や東南アジアや中南米の経済をも破綻、崩壊せしめていくものと思っている。
ところで、この中近東における米国の対テロ戦争は、イラク戦争だけで終了することもなく、イランやシリアなどの周
辺地域への波及も有り得るようだ。アフガン戦争からイラク戦争を越えて、実に中近東全体に及ぶ大軍事的動乱に発展し
ていく危険性も出てきた。既に一部の有識者からは、第三次世界大戦の可能性すら指摘されているものだ。この戦争拡大
は、単なるテロ撲滅のスローガンを越えて、原油決済におけるユーロとドルとの通貨覇権上の、実にドル防衛の戦いであ
り、それに加えて、石油争奪を巡る利権獲得の戦いが背景にあるようだ。そして、各種民族の抗争が錯綜し、根底には深
刻な宗教的対立を内包させていくことは充分に予想できることだ。この宗教的対立が、次第に表面に浮かび上がって来て、
一種の宗教戦争の観さえ呈した極めて異様な戦争となり、二〇〇〇年来の歴史的総決算の戦いとなるであろうと思われ
る。
一部の有識者からは、地政学的には海洋国家群と大陸国家群との対立、そして通貨的にはユーロとドルの覇権争い、宗
教的にはユダヤ教とイスラム教の対立、それにプロテスタントとカソリックが参加していくなどとの指摘もあるようだ
が、背景には、原油の争奪が関係しているのは明らかだ。既に、中近東の原油を巡る政治外交的な動きも活発化している。
万一、経済的対立から政治軍事的対立に発展していけば、実に中近東が世界の三分の二を占め、残りの三分の一は、朝鮮
半島や台湾海峡などの、北東アジアが衝突の激戦地となるであろうと懸念するものだ。
これらの様々な危機、衝突を回避していくためには、これ迄の第一次、第二次の世界大戦の戦後処理を行なうために提
起された幾つかの指導理念に代って、実に二一世紀を展望し切り開いていくために、特に宗教的問題を根本的に解決して
いく新しくて画期的で且つ歴史的理念が登場して世界的に受け入れられることが必須であろう。これがない限り、世界秩
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序の再構築は不可能となり、最後は、悪魔の選択を行なって地球的規模での大破局を迎えないとも限らない。そして残念
ながら、この世界動乱の勃発は、最早、如何なる方法や手段によっても回避し得ないほど、事態は緊迫化して来ており、
歴史的流れを変える可能性は次第に喪失していくと思われる。残された道は、如何にして、この世界的大混乱を大破局に
至らせないでいくかであるが、今のままでは、衝突を回避して新たな未来を構築する、明確な解決策も崇高な理念も出て
来ないものと思われる。
25 行財政再建への切り札に
(1)財政危機に対処して
今日、石油価格の高騰から世界経済が低迷しており、出口が仲々つかめないままに深刻さを一層強めている。我国にお
いても、外需依存の一部の好調な業界はともかく、全般的な内需不振から国内景気は低迷し、その為、税収は伸び悩んで
国家歳入を圧迫している。そして、余りにも拡大し過ぎた歳出を合理的に整理削減しようとして、取り組み始めた国家的
課題の財政再建にも暗い影を落している。
今や、我国の財政危機は、公的債務が既にGNP額を大きく超えて、先進国の中では、歴史的にも初めての非常事態で
ある。こうした多額の公的債務を抱え、外国格付け機関による我国国債の格下げにも見られるように、国債の償還の実現
性についても大きな不安要素として浮かび上がっている。ところが、この国家財政の危機深刻化に対して、景気振興と財
政再建の選択を前に、国民全体の合意が見られず、総論賛成、各論反対の中で強力な打開策もないまま、様々な抵抗に押
し流されながら、国家迷走に至っているのが現状である。
実に、政府当局や国民の大多数は、国家財政の危機を企業の経営危機と同水準で真剣に憂慮することなく、比較的楽観
視し過ぎているのではなかろうか。多くの経済評論家の指摘するところでは、国家が財政的に破産することは終局的には
有り得ないということだ。確かに、国家財政の赤字拡大といっても、債権者は被統治者の国民であり、債務者は統治者の
政府であり、互いに日本国家の住民であり、日本という大家族の構成員である。
それ故に、万一の場合には、内閣、また政権政党、更には国家体制を崩壊させてでも、政府当局による大増税や大幅な
歳出削減、国有財産の払い下げ、そして最悪の場合には、公的債務の無効処分等の国家破産に関する法的強硬手段によっ
て解決することも可能であろう。歴史的にも、江戸時代の徳政令による借金帳消しや、経済恐慌や戦争等の非常事態下に
おける各種債務を、返還不能として一方的に公権力により廃棄処分にして来た経緯もある。緊急避難的な措置としてやむ
を得ない場合もあるが、安易に乱発してゆけば、最後には信頼関係を破壊させて国家体制の基盤までをも危機に陥れるこ
とであろう。
要するに、国家財政は、国家政府と国民と言った身内同士の債権債務の関係であれば、最後にはさほどの死活問題でも
なく、その上、最悪の非常事態をも回避できれば、特に国家の存立にも関わるというものではないのかも知れない。しか
し、国家自らが対外的債務を負う場合は簡単には解決しない。即ち、国内財政や貿易債務の一部を外国からの借款によっ
て補充する場合は、簡単には返還不能として処理する訳にはいかない。そして自らの再建努力を怠ったり放棄していくと、
国際的信用を喪失して、外貨貸出しも停止されて、国家的に破産することもあり得るのである。
また、従来のように、必ずしも債務国だけが巨額債務により破産するというものでもなく、日本のように世界最大の債
権国ですら、債権が回収できずに破産することもあり得るのだ。過去の政変や戦争等によっては、対外的債権が無効とし
て取り扱われた例もあったほどだ。今や、国際的道義を尊重して協調を図っていく為にも、世界最大の債権国の日本とし
ても、強硬な非常手段は最後まで取り得ないものだろう。即ち、国際経済は相互協調や相互協力の下に成立しているので
あり、強国が債務取り立てを強力に求めたりすれば、世界経済の共存共栄は不可能になるだろう。現に、最貧国に対して
は、人道支援の立場から、債務帳消しの方策さえ講じられていく有様だ。それ故に、日本も、下手すれば、巨額の貿易準
備高や、米国国債の債権ですら、回収できずに終わって、国家破産に至ることも決して荒唐無稽の話ではないのだ。
こうした状況下で、特に経済のグローバル下では、財政的に苦悩している諸国に対して、経済的に支援していくことも、
国際的責任でもあり義務でもあるが、今や国家財政の悪化や国内産業の空洞化により、従来通りの方法では、日本自らが
破綻しかねない状況である。もし、日本が真剣になって財政再建を実現できずに、あらゆる改革を怠っていけば、日本の
国家破産という財政的破局は、その世界的な規模の経済力からいっても、日本一国の問題にとどまらず、それ迄に多額の
国債購入を通じて財政を支えてきた米国をも巻き込み、更には欧州や、上海などの沿海州地域の中国経済、韓国などの東
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南アジア経済へと、実に全世界を巻く込んでいくことであろう。この日本国家の破産が、二〇〇八年の国債の大量償還に
よる財政破綻、また中国経済のバブル崩壊や、米国ドル暴落の危機などによる貿易上の破綻から極めて現実味を帯びてき
たようである。
既に、アルゼンチンが国家破産したが、財政危機に喘ぐ世界の多くの国家は、対外債務も次第に増加し、財政上も緊張
の度が増して来ている。単に経済危機にとどまらず、国家指導部と国民大多数との間の信頼関係が揺らぎ、国家体制の危
機、そして世界全体の危機に迄発展しようとしている。更に多額の借款を提供して来た先進諸国にも大きく影響を及ぼし
かねない状況であり、我国も何らかの対応をとるように迫られている。このように、国家財政も、国内要因はともかくと
して、海外要因によって大きな影響を受けるのであり、支援してくれる諸国が窮地に立ってきた時には、本当の国家財政
の破産となり国家体制は崩壊するのである。
我国経済は、中国特需でひとまずは回復したが、既にピークを過ぎ、中国経済のバブル崩壊如何によっては、次第に貿
易収支にも暗雲が垂れ込み始めるであろう。多くの企業の海外移転に見られるように、グローバル経済下では、貿易収支
の好調はさほど期待できないであろう。一部の大手輸出関連の製造業だけが活性化しているものの、産業空洞化や高い失
業率、原油価格の高騰、人件費の高止まり等の為に、大幅な税収改善もできず、中小企業や地方経済、非製造業などを含
めた国内経済全体の大々的な再生にも至ってはいない。既に、石油産業や素材産業等では、原油や素材の高騰を受けて、
利益幅にも後退感も出始めているようだ。また、貿易収支もこのところ赤字に転落していくようで、貿易上の破綻も現実
的になってきたようだ。今こそ、産業の国内空洞化を阻止して、資源・エネルギーに過度に依存しないで、強力な内需拡
大を推進する政策が求められていると言えよう。
このような現状下において、地球温暖化対策の京都議定書の批准を追い風にして、我国産業のエネルギー多消費型産業
構造を根本的に改革していかなければ、今後、中近東を巡る軍事的動乱の激化に伴って石油危機が一段と深刻さを増し、
我国経済の石油を始め各種資源の海外依存の強い体質から多大な打撃を受けていくだろう。
既に、過去二度の石油危機による合理化や国際競争の進展で、様々なコスト増を吸収し得る努力の限界に達しつつあり、
最早これ以上の石油エネルギー消費の削減に向けていくことは限界に達しているとも言えよう。従って、原油を中心とし
たこれ以上の海外不安定要因を受けていくことは極めて重大な局面に立つことになろう。貿易国日本は、目下の国家赤字
財政も国内的には非常手段に訴えても危機的事態は突破し得るものであるが、次第に、貿易収支の悪化や国際情勢の険悪
化に伴って国際経済危機に突入して、対外貿易面から多大な圧迫を受けて対外債務の増大へと繋がって、財政的破局を迎
えるようになると思われる。最後に国家破産の危機を招来していくことを懸念する。実に我国の国家財政(国際収支)の
破綻が、貿易面で顕著に現れて来る時期は、高騰する原油や素材価格を観察すると、今や数年後にも迫ってきたようだ。
こうした国家財政の破綻前夜の状況下で、火山灰利用の画期的技術の早急で且つ広範なる普及展開を国家的レベルで実
践することは、大いに国家的利益に関係した歴史的意義があると言えよう。即ち、国家が主導することにより、法制度や
流通網などの広範にわたって、技術普及の基盤を整備することにより、多大で早急な景気刺激から増収増益を生み出しな
がら、国家財政の再建に大きく寄与するものと確信するものである。
(2)行政改革に対処して
目下、強力に推し進められようとしている行政改革は、財政再建と並んで我国の近代史上、第三番目の国家的大事業で
あると各方面から期待されている。かつて、徳川幕藩体制から明治新政府への移行においては、封建制度を根底から変革
して鎖国主義を脱し、先進諸国の文明を積極的に導入して、廃藩置県などの種々の法制度を整備し、近代国家に生れ変る
為の大変革が成された。そして第二次世界大戦後の荒廃から、国家全体に亘る諸機能を全面的に見直して、農地解放や財
閥解体、そして憲法改正などの、新しい法秩序を確立せんとした大変革が成された。
今や、これらの大変革に匹敵する程の抜本的な行政上の整理統合を、財政的な背景や理由が大半とはいえ、明確な理念
に沿って推進していかねばならない時期に到達した。今日の我国を取り巻く国際環境は、誠に厳しくなって来ており、資
源小国としての様々な弱体部分の克服を、海外依存の低下や自主技術の開発等により強力に打開していかざるを得ず、併
せて経済大国としての国際的責務を的確に果していくべき時期となった。正に現在は、地球温暖化対策の国際条約の遵守、
実行を巡り、また、緊迫化する対テロ戦争拡大の国際情勢の緊迫化を背景に、不安定化する石油問題に対処するべく、国
家の基盤全体の根本的見直しを図っていかねばならない。我国の資源エネルギーに係る存立条件を根底から検討し、それ
に沿って経済的にも危急存亡の危機に際して、我国の経済、政治、社会的な基盤を強固なものにするべく、国家の行政機
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能をも全面的に整備していく必要があるものと思われる。
二〇〇一年から改革成ってスタートした省庁改革の理念は、「簡素で効率的な政府を作る」ことにあったが、この根底
には、国家基盤の強化が図られねばならなかったことは言う迄もない。簡素化や合理化を行政需要を厳しく且つ充分に見
ずに、一律に安易に削減し縮少して推進すれば、国家機能の弱体化を招来することになりかねない。しかし、従来のまま
では、高度に肥大化して機能的な行政の遂行に多大な支障を持たらしており、結果的には国家機能の弱体化を引き起して
いる状況とも言えた。即ち、本来の国家行政機能は、国家社会を公正で活力あるものにする為に、国家の存立基盤を堅固
にならしめることを第一義的に掲げ、そして国民の自由な自助自立努力を可能とする環境作り(サービス向上)に努め、
これを両輪にしていかなければならないものと言えよう。
然るに、真の改革理念に乏しく、今日のように、単なる数合わせに終始し、多くの不合理要素を内包した行政機能では、
このどちらも充分に果していないように思われる。国内外に向けた諸政策の推進を見ても、縦割り行政による主導権争い
や多角分散化等により、各省庁間の協調や連帯を阻害させて著しく行政効率を悪くしている。また国内的にも重複する各
種行政も多く、それに緊急の且つ現下の行政需要を適切に洗い出して対処し得る機能にはなっていない。国家機能は、民
間企業のように、簡単に合理化による統廃合を推進するような訳には行かないが、それでも、企業経営に見られる各種合
理化努力を大幅に取り入れて、国家全体にも経営感覚の導入を図らなければならない。そして行政改革は、財政再建とも
密接に関連させて推進していく必要があるのは言う迄もない。
更に、先の明治維新や第二次大戦の戦後処理に伴う大行財政改革も、歴史上の一大革命ともいわれる大変革に成り得た
のは、単に国内的要因のみならず、実に厳しい国際環境の下で、多大なる「外圧」が加わっていたことも大きく関係して
いる。むしろ、外圧によって、国家存亡の岐路に立たされたからこそ、大々的な革命的変革が可能だったともいえる。そ
れ故に、今回の行財政改革も、国内諸勢力の様々な圧力や抵抗の前に、単なる小手先のみの改革に終始してしまう可能性
も極めて大きいが、今後の国際情勢の悪化による強力な外圧によっては、国家存亡に関わる大変革を余儀なくされていく
であろう。今時の外圧で最大のものは、やはり、中近東情勢を巡る原油問題からくる経済破綻であろう。そういう非常事
態に陥ってから目覚めても既に遅いのである。早急に、国民全体が自らの意識を厳しく変革して、険悪化してゆく国際環
境に対しての危機感を心底から認識し、行財政改革を国家的見地から厳正に推進して、歴史上の一大変革としなけれはな
らない。
(3)行財政再建への突破口へ
目下、景気対策無くして財政再建なしの見解と、財政再建無くして景気対策なしと言った見解とが長期間に亘って対立
し、景気対策か財政再建かで論議が分裂気味であるが、これほどの多大な財政赤字やデフレ経済下を前にしては、最早、
通常の手段では、財政再建と並行しての景気対策は不可能である。病人で言えば、血圧が異常に降下しているのに、栄養
剤を無理に打って体力を回復しようとするようなものであろう。
こうした現状に対して、この火山灰利用の新素材を有効に国家社会に役立てて行けば、実に景気の大幅な刺激にもなり、
またそれによってもたらされる税収の拡大で大幅に財政再建も可能であろうと確信できるものである。財政再建のみ突出
していけば経済を縮小させて景気に水を差すことは当然である。やはり、景気を刺激させながら税収拡大を図り財政再建
を推進することが常道であろう。
単なる公共工事の拡大だけでは、景気対策に有効な手段では無くなってきているのは事実であろう。現に公共工事費の
ばらまきぐらいでは、景気を強力に押し上げる効果は期待できなくなって来たようだ。何らかの技術革新を伴った公共事
業が必須であろうと思われる。即ち、過去、一九九〇年のバブル崩壊後の一〇年間で一二〇兆円、ここ二年半でも一〇〇
兆円も公共工事を中心にして公的資金を投下して来たが、一向に景気が回復軌道に乗らず、ここに来て公共工事はばらま
きで効果が期待できないと言う指摘が為されてきている。しかしながら、公共工事も、新素材コンクリートを有効に活用
したものであれば、実に耐久性に富んだものになり、国民全体の利益になるような効果が期待できるだろう。
社会のあらゆる分野への波及効果で、税収拡大に大いに貢献できるものと確信する。目下の不良債権も、景気が回復す
れば優良債権に転化し得るものであり、逆に景気が回復しなければ、優良債権ですら不良債権に転化していくと言うこと
であり、こうした観点からも、この一大計画を実施することは、財政再建に対しても大きく貢献し得るものとなろう。
そして、新素材に関する特許権、ノウハウ、技術指導等の知的所有権を有効に買収して国家管理の下において、国家自
らが技術貿易の主役として諸外国と交渉していくことによって、大規模な普及展開を可能にするばかりではなく、技術貿
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易面でも大幅な外貨獲得の手段として寄与、貢献できるだろう。民間の技術を国家が買収して国有管理とし、更に、それ
を国家的技術戦略として展開するべく、外国への技術貿易を通じて国家の収益を挙げると言った思想や発想は、現在の慣
例重視の官僚をはじめ、官僚的政治家や、自己保身や既得権益擁護しか眼中にない連中には考えが及びも付かないだろう。
即ち、大局的総合的な国家戦略的思考や発想も、また破天荒な決断力や度胸もなく、更には実行する気概や情熱、能力も
無いのではないかと思われる。
そして、新素材の大々的な普及は、景気に対して有効な刺激となって税収拡大に貢献できるばかりか、行政庁をはじめ
とするあらゆる分野における既存の制度やシステムを解体していくほどの起爆剤的効果をももたらしていくことだろう。
既存組織を温存したままで、税収のみ改善できたらと言った虫の好い改革などというものは最早あり得ないだろう。多く
の血を流すような社会改革や産業構造改革、政治改革、行政改革、そして革命的技術改革にこそ、現下の行財政再建を根
本的に可能ならしめていくことだろう。
(4)火山国日本における行財政改革の推進
資源エネルギーの多くを海外に仰ぎ、資源小国と思われていた日本も、世界有数の火山国であるという原点に立ち戻っ
て認識を新たにすれば、世界有数の資源、エネルギー国に脱皮転換することが可能であろう。即ち、既に指摘したように、
火山灰・火山礫の積極的な利用の展開と、火山深部におけるマグマの有効利用の推進である。正に火山国日本を根本から
見直して、大自然が恵んでくれた素晴らしいこの国土に心から感謝して、全国民の総力を結集して新たなる再出発を図ら
なければならない。
しかしながら、現在の行政組織や行政姿勢では、行政が中核的に火山国日本の再検討を図って、強力且つ効果的な対応
を推進していくのには極めて困難な面が多々存在している。即ち、
1
火山自体が非常に多様で複雑な要素を包含している為に、各種の調査や事業等の行政上の対応組織も不充分で、妥当
な所轄官庁も存在していない、
2
火山地域や火山灰・火山礫の賦存地域の多くが国立・国定公園区域であり、それに森林、畑地、草地に覆われた地域
や荒地、離島等と国土全体に及んで、開発利用の推進に際しては、監督官庁の諸業務が錯綜し、幾多の摩擦や対立が予想
される、
3
火山灰・火山礫は非常に広範な地域に分布しその量も無尽蔵であり、従来の砂利、砂、鉱石の概念で把握することは
不可能であり、その産地も鉱山と言えるものではない。またマグマも鉱石と言うよりは鉱液であり、火山自体を鉱山と簡
単に呼べるものではない、
4
火山全体の有効利用を可能ならしめるのは、日本人全体の優れた頭脳資源を投入した技術的勝利によることであり、
正に技術立国化の達成である。然るに現在の行政組織は、技術立国化に向けた整備が不充分である等の点があげられよう。
つまり、新しい行政機構の検討や確立、様々な概念や価値観の再検討に伴う行政機構の見直し、行政庁間の密接な連携と
協調等が全面的に必要であると言えよう。
それ故に、目下、国家的課題となって大々的に推進されようとしている行財政改革とも密接に連動させていく必要も出
て来たと言える。こうした改革は、何も具体的な政策・タマもないところで推進しようとしても、迫力や緊急性も訴えら
れずに、抽象的な理念のみが先行してアイマイなものになり易い。そしてその結果、種々の骨抜きが行なわれて、答申の
内容や趣旨とは裏腹に実施されたり、また実施を引き延ばされたりして様々な抵抗に遭って、本格的且つ緊急に実践され
る見通しは暗いものとなり易い。
そこで、先に指摘した新日本列島大改造計画を大々的に推進して、激動の国際情勢に対処していく為の、即ち、火山灰、
火山礫、マグマの活用推進の為の行財政改革と言うスローガンの下に大出発を図れば、行財政改革も極めてすっきりした
ものになって、必要性も重要性も緊急性も行政需要性も全て満たして、国民の大多数からも歓迎されることであろう。ま
た撤廃を閣議決定した火山地帯の旧国鉄赤字ローカル線も、火山灰の搬出、搬入に向けて、その役割や効果の見直しが迫
られることだろう。大々的な普及促進は、財政の大幅な削減や転用が図られて、また産業界の構造や意識の変革をも迫る
ものとなるだろう。
正に国民全体による国民全体の為の行財政改革となっていくことであろう。何よりも、火山灰等の利用推進を強力に展
開する中核的な役割を果たすべき行政庁の機構改革を促し、そして行政官の意識の変革を追っていくことになるであろ
う。行政改革にも何らかの切り札となるべき壮大な目標が必須であり、今回の国家プロジェクトの実践こそが、全官庁を
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巻き込んで、一大行政改革を促進するものとなるだろうと期待する。
26 残された研究開発の課題
火山灰利用の新素材は、一応、素材としては完成されたものであり、即座に利用可能であり、広範に実践して普及促進
させる必要があるのは当然である。それでもセメントを従来どおりに用いるものであり、理想を言えば、セメントを全く
使用しない高度な改良も可能であると思われる。後述するように、古代のピラミッドの巨石建造物に見るようなものにし
てこそ初めて完成したと言えるかも知れない。
しかし、あくまでも理想であって、それまで何もしないというのでは、技術の進歩にはならないものだ。完成した時点
で、普及させて利益を享受しながら資金を回収し、そして併行して新たな問題を抽出し検討しながら、更に次の段階へと
挑戦していくことが可能になって、技術の発展があるというものだ。その過程において、セメントを全く使用しない新た
な材料も発見されてくると言うことであろう。
そこで、現段階で国家的な規模で大々的に活用していくためには、今後、調査検討を加える必要性が多分に有り、更に
性能の改良改善を強力に目指すことは当然である。しかもこれは、一業界や民間企業や個人の個別努力に委ねるべきでな
く、政府率先の国家的プロジェクトにより、大規模に展開し推進していく必要があると言えよう。この辺の根本的な国家
的な認識が無ければ、何故に政府が中心になって対処すべきかの意義、対応策も知恵も何もかも出て来ないであろう。
さて、広範な普及展開に向けて、国民全体が知恵・ノウハウを共有してしていくためにも、今後の研究開発の方向とし
ては、国家主導により、素材自体のより広範な性能向上と試験の推進、合理的な生産及び施工の諸問題の検討、全ての分
野・部位での応用化の用途開発、更に、適切な火山灰地の選定や搬出手段や跡地利用、流通網整備や産業政策等、広範に
普及する為の様々な環境面の各種整備の検討であろう。
(1)合理的な設計と各種材料代替化への研究開発
現在、新素材は普通一般通りに、住宅のパネルに利用することは可能であり、実際に、何棟かの住宅を建設したようだ。
それでも、強度性や軽量性から言っても、過剰性能であり、かなりのセメントや鉄の使用量を軽減できるはずである。そ
こで、住宅を始め、建造物の構造駆体として、各種補強材を最適で合理的な量で埋設する研究が成されていくことが望ま
しい。屋根・壁・床・地下等の用途を考慮して大型パネル化に向けて、合理的な埋設鉄筋の間隔、本数、端部定着方法等
を、強度や経済性との関連で検討する必要がある。また各種材料の代替化への応用を図る為に、様々な補強材(金網、ラ
ス、繊維、PC鋼線等)を埋設して、厚さ、付着性、強度、経済性等を考慮して、曲面板、薄板、棒状部材化等の研究を
することも、各種建材や鉄鋼製品への大幅な代替化を進めていく上においても、効果的となるものだ。
(2)鉄筋の防錆効果の検討
(2)鉄筋の防錆効果の検討
新素材は、非常に密実で強度も高く、熱による収縮亀裂もなく、鉄筋の防錆には申し分なく、通常のコンクリート以上
である。しかし一方、火山灰の可溶性珪酸がセメントの遊離石灰と反応して安定堅固な珪酸塩を形成し、コンクリートの
アルカリ性を減少させるのも事実である。この辺の原理を解明しながら、普及と併行しながら、コンクリートの中性化の
進行に関する長期試験を行なう。
(3)より広範且つ充実した試験の推進
関係者は試験体に関して今迄に約一〇〇〇体以上を試験したと聞き、既に住宅を建設した実績を有するものだが、大々
的な普及の為には、より多様で多彩な研究も必須であろう。即ち、より広範に、各地の種々の成分や性質を有する火山灰・
火山礫について、割合、投入順序、投入タイミング、各種混和剤、混和材等を調整しながら、多岐に亘る充実したより高
度の試験を、用途や形態との関係を追究して推進する必要がある(例えば、高精度な耐火試験、耐爆裂試験、耐塩水試験、
耐酸・耐アルカリ試験、耐汚染試験、耐紫外線劣化促進試験、放射線遮蔽効果試験、放射性廃棄物を含めた産業廃棄物の
混練利用試験等)。
(4)合理的な生産、施工システムの研究
目下、混練から打設迄は比較的短く、堅練りのスランプ〇で行なっているが、小規模な住宅用にはこれで充分であろう
が、現場組立ての型枠にミキサーより打設する場合や、ミキサーより打設型枠板までの移送距離が長い場合等も考慮して、
より高い施工軟度を持つ場合のコンクリート性状についての実験や検討を行なう必要があろう。また最適な調合、混練、
硬化、脱型、搬出、施工等に関して、高品質と低コスト化の下に、合理的な生産・施工システムの確立を図る為に、既存
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の各種設備・装置の検討や、必要に応じて新たな設備・装置の研究開発を行なう必要があろう。
(5)各種学会基準の見直し
(5)各種学会基準の見直し
現状では、天然の火山灰、火山礫は、その複雑で不安定な性質上、極めて低い評価しか与えられておらず、何ら加工を
施さずに、天然のまま、建築物の構造駆体に用いることは皆無である。従って、軽量で強度が高い新素材を各種構造駆体
に導入した場合、補強埋設鉄筋の最適な径と間隔、本数、端部定着方法、コンクリートのかぶり厚さ等がどのようになる
かを、建築物の部位毎に検討しなければならない。それに、現在、現場で使用できる骨材は、粉塵の飛散防止といった公
害上の観点から、粒径が〇・六ミリ以上と指導されており、それ以下の粒径を多く含む微粉末の火山灰は、現場では公け
には使用できない。(工場生産なら可能)それ故に、微細な粒子の火山灰は、骨材ではなくて、キラ等と同様に混和材と
解釈できるかをも検討する必要がある。その他、スランプ値、調合、投入順序、投入タイミング、脱型等に至る学会指導
基準全体を再検討する必要がある。
(6)JIS(日本工業規格)化への整備
天然の火山灰・火山礫は、吸水性が高い性質を有しており、種々の面で管理を誤れば、新素材の生産・施工に取り返し
のつかない失点を招来しないとも限らない。従って、繰り返して試行的研究を積み重ねるとともに、原料の採取から選別、
輸送、保管、生産(調合・投入・混練・硬化・脱型)、施工(運搬・打設・脱型・組立)、維持管理等の流通全般に亘っ
て、JIS(日本工業規格)化に向けて、各種規定・規準等の整備を図る検討が必要である。
(7)火山灰地域の選定、火山灰の性状や賦存量、搬出手段、跡地利用等の調査
我国に広く無尽蔵に賦存する火山灰・火山礫を大々的に活用するに際して、正確な分布地と分布量を成分や性質との関
連で調査し、最適な採取地を国立・国定公園地域との関連や、火山灰の搬出手段や搬出方法等との関連で選定し、そして
火山灰採取後の最適な跡地利用対策をも調査検討する必要がある。場合によっては、国内における火山灰調達の検討に併
せて、広く海外の火山灰調査も実施していくことであろう。
(8)合理的な流通システム整備に向けての検討
火山灰地の調査に加えて、火山灰地の地域振興、輸送手段の活用、産業対策(保管地・設備投資・公共工事)等を検討
していく必要がある。また火山灰、火山礫の採取から選別、輸送、保管等に亘って、各種の機械、装置等のハード面での
現状の見直しと新たな技術開発、また国民消費における経済的影響、各種産業構造への影響、産業立地等の流通面全般に
亘るソフト面での現状の見直しと新たな調査研究を行なって、流通システム全般の整備を推進していく必要がある。
上記の(1)~(4)の課題は民間レベルでもある程度は対応できるが、(5)~(8)の課題に関しては、どうして
も政府が総力を結集して対応していかなければ、効率的で速やかな普及展開を図っていくことができないであろう。もっ
とも、(1)~(4)に関しても、政府主導により、発生した特許権やノウハウ等は、適切で合理的な価格で国家が買収
して所有し、国民全体の財産にして共有化していかねば、権利の錯綜、対立等を招来し、広範なる普及に大きく支障とな
っていくことは間違いない。その意味でも、国家が主導していく必要性、緊急性、重要性があると言えよう。
27 新素材の普及における様々な障害
今般、提示する新素材技術により、天然火山灰の大量且つ広範多岐に亘っての活用が実現できることが解ってきた以上、
正に国家的プロジェクトとして推進していくべきものである。これは政府当局にこそ、提言などで公表すべきものかも知
れないが、既に、某省庁で、国家プロジェクトに一度は採用されながらも、無知蒙昧の無理解な抵抗・嫌悪・反発に阻ま
れて、排斥・否定・排除されていった経緯があるようだ。発明者自身も周囲に公表しても、無視されたり排斥されていっ
た経緯があるようだ。当方にしても、周囲に話しても、同じ感触や感想であることに変わりはない。
そのうち表面化して来るに連れて、外国からも研究の狼煙が上がり採用に意欲的な動きが現れるようになるだろう。技
術というものは、可能性がない時には疑心暗鬼により積極的に挑戦しないものだが、一旦、誰かが完成させてできると分
かった以上は、必死になって研究すれば、不思議と成功するものだ。その際には、もっと効率的、効果的な素材に改良さ
れていることであろう。即ち、セメントすら使用しないもので、恐らく、古代エジプトにおけるピラミッド建造に活用さ
れた技術と同様なものであろうと想像できる。その際には、多大なる後悔が待っていることであろうと悔やまれる。しか
しながら、最早、個人や一企業の力でどうにか成るものでもないだろう。そう言う観点からも、新素材技術を早急に国家
の総力を結集して解明し、適切な対価の下に、国民共有の財産としていくことが大切と言えよう。強力な国家主導の政治
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力や指導性が要求される所以でもあると言えよう。
なお、発明者の努力もあって、既に四〇棟ほどの住宅を建設しており、また一九八四年にも三宅島でも宣伝し技術指導
するなどして大々的に動き始める兆しがあった(昭和五九年東京新聞六月六日)。そして一九八六年の韓国のソウルオリ
ンピックのメイン競技場内壁に適用されようだが、その後、契約に関して、相手側に不誠実な面があり撤退した故に、韓
国では技術の契約にトラブルを生じて破綻して、他の工事への普及展開に関しては継続できなかったようである。我国の
前途をも何やら同様な結果に招いていくような事態を暗示しているようである。火山灰技術は歴史上の一大発見にも繋が
るものだが、盗用や狡猾な対応如何によっては、関係者をして過剰な権利の防衛に走らせていき、永久に埋もれて大きく
失敗することになろうし、場合によっては、歴史の舞台から消滅して、二度と表面化しなくなるかも知れない。無視と偏
見と排斥が人類の歴史を左右するほどの運命の明暗を担っていると言えよう。
この一大プロジェクトは、実に国益を最大限に重視して、換言すれば、私益を極力排除して、総合的、大局的、戦略的
見地から国家主導で実践していかなければならないことを理解する必要があるだろう。役人根性の官僚的発想や利権追求
型の政治屋的思考ではとても手に負える代物ではないだろう。公明正大で強力な政治力が求められてもいるだろう。局有
って省無し、省有って国無しと言われる現状を打開していくことが求められてくるだろう。
思えば、かつて活躍した故田中角栄氏ほどの強力な政治力を発揮し、縦割り社会の縄張り意識を排して横断的に束ねま
とめることができる政治家でしか実行できないものと危惧される。また超党派での協議会の設置をはじめ、各省庁の連帯
や地方との提携が無ければ実現不可能と言えるだろう。更には公的機関や民間団体などの連絡、連携も必要になってくる
ことであろう。関連する様々な法律改正や制度の整備が必要になってくるからである。
そもそも火山灰は微細な粉末故に、〇.六ミリ以下のものは、公害対策上、屋外で利用してはいけないという規制もあ
って、火山灰自体を所管する担当官庁もないのが現実である。砂利、砂に類するものとした扱うわけにもいかないだろう。
そして建築基準法や学会指導基準に関しても、利用しやすいように改正する点も出てくるだろう。火山灰の採取や運輸、
保管等の面での流通網を整備していくことが必要だろう。そして多くの火山灰地帯が国立公園、国定公園区域に指定され
ており、最大の廃棄物で処理が難儀な火山灰といえども、勝手に無許可で処分できない法律内容になっているのが現状で
ある。
例え、国立公園区域、国定公園区域でなくても、火山灰採取を民間企業に勝手に委せておけば、大雨等により土石流と
なって大惨事を引き起こすこともあり得よう。しかし、何もしなくても、こうした火山灰地帯は泥流発生や土砂崩れ等の
災害と表裏一体になって、巨大な天然の廃棄物となっているのであり、適当な砂防ダムの建設と合わせて有効採取を図っ
ていくことが大切になってくるのである。
こうしてみると、関係省庁は実に広範多岐に亘ってくると言えるだろう。また関連法制度も同様に広範に亘っての検討
乃至改正、整備が必要にもなってくるだろう。正に国家的一大プロジェクトとして遂行すべきであり、個別業界や、まし
てや一個人の個別努力に委せられるものでもあるまい。また、一省庁の力量でも手に負えないだろう。現在の役人根性で
はどれ程理解できるであろうか。恐らく無理であり、国家社会の衰退を傍観し増進させていくだけであろう。それでも既
得権益に固執している連中に鉄槌を下して解体させ、新たな改革への出発点になれば本望なのである。外国でも誰でも早
く実行した国家が勝利を掴むだろう。早急に目覚めて意識改革を自らの努力で成し遂げて、実現に向けて協力、支援して
いただくことを祈念するものである。
何よりも大切なことは、契約観念をもって誠実に履行していくことであり、国家が技術買収することでしか広範且つ早
急なる普及が期待できないということである。だからこそ、強力な政治的指導力が求められているという訳である。恐ら
く、ここで紹介した技術が次第に表面化するに連れて、政府当局も関心を示して各種の政策を実施しようとするかも知れ
ないが、結局は破綻していくことだろう。その原因は、最早、官僚主導による従来通りの縄張り意識、縦割り型の役人根
性的意識では、時間に迫られている現在において、民間の方で悠長に待っているようなことはできなくて、現状の各種法
改正を待たずして暴走していくことになるものと危惧するからだ。
そして、発明者等に対する正当な対価や評価無しでは、天が邪魔し、最早、そうした狡猾さや打算、利権志向を決して
許さないだろうと思われるのである。かつて発明者も某建設会社の幹部連中に技術説明をしたこともあったらしいが、長
い時間を経過して関心がないと言う解答をよこしてきて、その後、暫くして、提供した膨大な資料を基にして関連特許を
出願しているような有様だ。こうした狡猾な対応では、遅々として進展することはないであろう。国家自体もそうした態
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度を往々にして取りやすいことは、現在の公共工事における行政発注官庁の特許軽視・無視の狡猾な役人根性を見れば明
白であろう。要するに、最大の障壁は、種々の法制度もさることながら、無視、無関心、そして嫉妬、妬みの役人根性や
出る杭は打てと言った国民性なのであろうか。結局は、外国勢力により、効果的な改良技術を独占されて、国家社会全体
で多大なる損失を味わって初めて事態の深刻さを痛感し後悔していくのであろう。
その内に、次第に大々的に関心を呼んでくることも考えられるが、猜疑心旺盛で、契約観念の甘い狡猾な日本人の国民
性では、そのうち表面化して来ても、正しい権利関係に基づいた普及は期待できないであろうと懸念するものだ。そして
万一表面化してきたならば、政府当局も関心を示して積極的に施策を実施することになるであろうが、時代の急激な進展
に流されて、政府主導による展開は失敗に終わるであろうと思われる。最早時間との勝負になってきたからである。政府
の遅々とした対応に、業界や地方や国民は待ってはいないであろうと思われるからだ。それに、従来のような利権の対象
にしたり、国家社会の立場を忘却したような計画では大きく破綻していく状況を厳しく認識することが大切であるからで
あり、目下の政府にはそうした認識に大きく欠乏していると思われるからだ。恐らく、そうした試練を経てこそ、大きな
改革に発展していくのかも知れない。正に、政府の関心や取り組み如何によっては、我国の将来や世界の歴史の明暗を決
していくことになるであろう。
かつて発明者も、日本での余りにも猜疑心が強く、無関心や遅い対応に業を煮やして膠着状態に陥っていたようだ。そ
して外国でも関心を呼んでいくこともあろうが、いい加減な内容の契約により、技術をすっかり騙し取られてしまう危険
性もあると言えよう。現在でも、外国において有数な日本企業でさえも、契約の不備により、技術や資金を騙し取られて
撤退し破綻していく企業が随分と存在しているようだ。一刻も早く、外国に情報が伝達されて積極的に関与される前に、
国家主導による国家的なプロジェクトにする必要性や緊急性があると言えよう。ここにこそ日本人の国民性が試される歴
史的な岐路に立っているとさえ言えよう。
正に、この計画は国家的規模で国家の主導によって実践する必然性があるからである。特に各省庁にまたがる課題に対
し、縦割り行政を排し、大局的、総合的、戦略的に思考し行動することが求められていると言えよう。目下、そうした高
次元の意識のある政治家や官僚が殆どいないように危惧される。
精々、国民に、「良い技術があるから、皆さん、活用して下さい」と宣伝したり、「民間でやることだ」と忌避してい
くぐらいであろう。それぐらいの政治力や行政力ならば、誰でもできると言うものだ。あるいは、「協力してやるから技
術を公開せよ」と狡猾に技術を横取りしていくことも懸念される。殆どの官僚や政治家は、そういう低次元の無責任で他
人任せの感覚に汚染されており、あるいは、適切な対価で普及させるという公明正大な正義感に欠けているのではないか
と憂慮するものだ。利権確保や天下り確保には熱心になるが、国家社会の為にといった使命感や責任感が大きく欠如する
のではないかと思われる。国民の権利や立場に立った国益感を必死に感じていないのが大きな懸念材料である。
第4章 国家の総力を結集した推進体制の確立
28 国家的プロジェクトへ(火山灰利用総合推進対策本部の設置)
国家的プロジェクトへ(火山灰利用総合推進対策本部の設置)
真の自主、自立、自存の独立国家樹立に向けて、日本の経済・産業の基礎・基盤を資源・エネルギー的に強化する為の
先の列島大改造のシナリオ・実践計画は、
1
短期的には、火山灰利用新素材や火山灰道路の建設事業分野への積極的な導入を図って普及促進に努めることであ
り、
2
中期的には、当該新素材を適切な補強材と組み合わせて、棒状、薄板状、曲面状等の展開によって種々の金属、樹脂、
木材等の代替化を全産業分野に応用し普及させること、そして新素材に係る製造技術原理を、各種廃棄物処理を始め、放
射性廃棄物処理にも適用していくことであり、
3
長期的には、こうした有益な火山灰・火山礫を特殊化学反応にて生産噴出する火山自体を積極的に解明し、マグマか
らのウラン等の放射性物質を始め各種金属資源の抽出や、マグマから放出される各種放射線、素粒子の活用を推進してい
くことであろうと思われる。
なお、この新日本列島大改造の強力な推進は、内閣主導により現内閣府が中心であるのは当然である。そして政治家や
個別産業界や地元関係者の方々の協力が必要なのは申すまでもないが、しかしながら、民間や地方に主導を委ね得るとい
うものではなく、正に国家的大事業として、国家目らが卒先して中核的役割を果たすべく、国家の全行政機関を総動員し
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て対処していくことが何よりも必要と思われ、当面は次のような短期的、中期的課題の火山灰利用に係る実践体制を確立
すべきだろう。
(1)火山灰利用総合推進関係閣僚会議の設置
火山灰・火山礫の広範な有効利用を国家的事業として強力に推進していく為には、まず、内閣総理大臣を筆頭に、関係
省庁の全大臣によって「火山灰利用総合推進閣僚会議」を設置し、これをもって火山灰利用総合推進対策本部とし、国家
の基本方針を検討したり、国家的重要事項を最終的に判断し決定していくべきであろう。
(2)火山灰利用総合推進関係省庁間連絡協議会の設置
火山灰等の適切な採取地選定から、採取、跡地利用、環境への影響、運搬、保管、生産加工、各種研究試験、産業立地、
産業構造への影響、経済への影響等に至る広範多岐に亘る諸事項を効率的に検討し、それに係る諸業務を円滑に遂行し得
るようにする為に、関係省庁との間で横断的に連帯した「火山灰利用総合推進関係省庁間連絡協議会」を設置し、先の総
合推進対策本部の基本方針を受けて基本政策を策定したり、関係全省庁の役割と分担を明確化して連絡調整を司掌する機
能を充実させていくべきであろう。
(3)火山灰利用総合推進における各省庁検討組織の確立
前記連絡協議会の基本政策を受けて、関係各省庁で個別具体的な関係事項を検討し、適切な実施計画を策定する組織体
制を確立していくべきであろう。そしてこれによって、先の二大推進体制の確立と併せて、国の全行政機構を総動員して
強力に推進でき、そして多大なる国家的利益を得る基盤の確立となり得よう。
(4)火山灰利用総合推進開発機構の設立
各省庁行政機関の実施計画を受けて、更に細部に亘る本格的実施計画を策定して、国家的大事業の中核的実践母体を担
うには、個別産業界では無理であり、国家の行政機関に準ずる組織として「火山灰利用総合推進開発機構」等の推進体制
を設立していくことが必要であろう。この組織は、実に国家的な見地から、各種調査や検討、試験研究、大規模施設の整
備や運営、大規模な利用や普及等の任務を遂行していくことになり、具体的な構成組織の一参考案は、次項で簡単に紹介
することにする。
(5)火山灰利用総合推進における地方行政庁の体制確立
火山灰等の採取から運搬、保管、加工生産、利用等に関して、火山灰等の産地から消費地に至る全国各地方行政庁にお
いても、国の各行政機関と連携して総合的な推進体制を確立していくべきであろう。何よりも火山灰利用を広般に普及な
らしめる為には、各種公共事業への積極的な導入を図っていくことが大切であり、この点からも全地方行政庁の協力が不
可欠となるであろう。
(6)火山灰利用総合推進超党派議員連盟の結成
火山灰利用の広範な普及展開を可能にする為には、何よりも中央の各行政機関と地方の各行政庁との密接な連携協調を
図っていくことが肝要である。この橋渡しの役割を担当できるのは全国会議員の方々であり、超党派的な立場から推進議
員連盟を結成して、火山灰地の開発・採取から、跡地利用、国鉄の活用、港湾整備、各種産業の育成、誘致、公共工事へ
の導入等に向けて、地方の発展と国家基盤の強化の両面に亘って、情熱を傾注していくことが国家的大事業を成功に導く
ものと期待される。
(7)火山灰利用総合推進における関係産業界の体制確立
火山灰利用を積極的に推進して、我国の経済を活性化させ、併せて産業体質を変革させて産業構造基盤の強化を図る中
核的推進役は産業界自身であろう。従って、産業界自らも、中央政府及び地方行政庁の各種行政施策の推進に全面的に協
力して、国家社会の健全な発展に寄与していくことが望まれよう。
(8)火山灰利用総合推進における関係学界の研究体制の確立
火山灰利用の大々的な推進は、従来の学問体系を大きく変革し、また個々別々の学問分野に密接な連関を持たらして連
携を必然化するものであり、更に火山灰の複雑な物性や生産原理を徹底的に解明することはより高度の利用可能性の開拓
であり、関係学界においても、万全の協調的な研究体制を確立していくことが大切であろう。単に建築工学、土木工学、
コンクリート工学、材料力学、構造力学、土質工学等の建設関係のみならず、地学、岩石、地球物理、地球化学、放射線、
素粒子、電磁気、無機化学、金属、船舶、機械、材料、物性、結晶などの等の理工系各分野や、農学、林学、医学、薬学、
衛生、環境、土壌学等の各分野、それに地理、歴史、考古、社会、行政、経済、金融、財政等の人文科学全般に亘る各分
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野の協力が是非とも必要となって来るであろう。
こうして国家や地方の全ての行政組織を総動員し、そして政界、産業界、学界等の総力を結集して、火山灰利用を国家
的大事業として強力に推進する為の体制を確立していってこそ、真の実りある歴史的成果が得られるものと確信する。そ
して広範な国民、産業界、地方自治体、政界、官界の全面的な協力が得られて、大々的に推進体制ができてきた暁には、
現在の私的な「列島改造連絡協議会」は大きく様相を変えて、公営的組織の「火山灰利用総合推進開発機構」として生ま
れ変わっていくであろうと期待するものだ。
29 火山灰利用総合推進開発機構の設立へ
火山灰利用の広般多岐に及ぶ諸事業を総合的且つ中核的に推進していく主体は、国家的な事業機関でなければならない
であろう。個々の事業については産業界等の活力に委ねるのは当然であるが、全国土に亘る各種調査や調整、大規模な開
発、整備、運営等の国家的大事業の推進母体には、国家的な責任と義務、そして機能を有した組織が適切であろう。この
新しい国家的大事業の中核的実践を担う組織体は、個々別々に火山灰利用が推進されることから招来される幾多の弊害を
除去し、総合的に取り組んで国家的利益を第一義的に確保せんとする目的に沿って運営されよう。この新組織は、現在の
種々の公社、公団、特殊法人等の機構の統合化や系列化を図る過程においても確立され得るものであるが、例えば「火山
灰利用総合推進開発機構」等の国家的事業機関を設立して、中央行政庁や地方行政庁、そして産業界とも密接な連絡を取
り合う要として、全国レベルでの諸業務を総合的に推進する母体を確立していくことが必要であろうと思われる。
この新機構は、内閣主導による内閣府の指導の下に、現在の多くの産業分野を管掌し、我国経済の活性化に多大な責任
と権力を有して経済産業に関する行政を展開している現在の経済産業省(旧通産省)を中心に設置して、火山灰総合利用
の実質的な推進部隊として機能させ、他の関係省庁による協力の下に推進していくのが好ましいと思われる。経済産業省
ならば、これまでの多くの行政的経験や人材の豊富な点からも、官庁組織の中でも最も相応しいものと言えよう。参考ま
でに、この組織構成を紹介すれば、例えば次のような部門より成立されよう。
1
火山灰・火山礫の全国の分布地や分布量の把握調査や、経済的効果を最大限に考慮し
た最適な開発採取地の選定
を行なう調査選定部門、
2
火山灰採取事業を推進する火山灰採取部門、
3
火山礫採取事業を推進する火山礫採取部門、
4
採取天然資材の運搬事業を行なう運輸部門、
5
採取に伴う諸環境への影響を検討する環境評価検討部門、
6
採取後の跡地の山林、田畑等への有効利用を推進する跡地利用推進部門、
7
採取天然資材の流通の中で、多量のこれら資材を一時的に集積し保管していく為の諸
事業を推進する集積保管部
門、
8
建築事業分野への導入を推進する建築部門、
9
土木事業への導入を推進する土木部門、
10
特に新素材の優れた耐火、防水、強度性が発揮される地下室、地下退避施設等への普
及促進を担う地下空間利用
推進部門、
11
耐火性、耐酸性、耐爆裂性等が要求される特殊工場や特殊施設への導入を推進する特
12
各種産業における金属の代替化を推進する金属代替化部門、
13
同様に樹脂成型品の代替化を推進する樹脂代替化部門、
14
更に木材の代替化を推進する木材代替化部門、
15
特殊耐熱、耐摩耗等の特性が要求される分野に無焼成ニューセラミック体として導入
殊建造物導入推進部門、
を推進する特殊用途開発促
進部門、
16
特に風化火山灰(ゼオライト、粘土、各種土壌)の総合的利用を検討し推進する風
17
放射性廃棄物等の処理を検討し推進する産業廃棄物処理部門、
18
火山深部のマグマの実態を解明し、利用の在り方を検討するマグマ利用推進部門、
19
種々の研究成果としての特許等を一元的に管理し普及促進を担当する特許部門、
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化火山灰部門、
20
更に火山灰地の大規模原油備蓄を検討し推進する原油備蓄推進部門等であり、その他
にも種々の部門が考えられ
よう。
これらの中には、現在の国家的な特殊法人、研究機関、事業機関でも充分推進できるものや、民間の活力に委ねられる
ものもあり得るだろう。火山灰利用を総合的に推し進めていくことは、個別閉鎖的な各種行政部門や政界、産業界、学界
から幾多の摩擦や閉鎖性や独善性等を排除し、相互理解や相互交流を深めて、国民全体の一致団結した意識を確立して挙
国一致体制の下で強力に推進していこうとするもので、国内体制の強化の出発に他ならない。
30 政府主導による関係省庁の役割分担と連携
火山灰利用を国家主導により総合的に展開し推進していく中で、主要で且つ中核的任務を担当する官庁は、内閣主導と
いう観点から現内閣府であろうが、その実践部隊としては、何と言っても経済産業省が相応しいと言えよう。広範多岐に
亘る行政分野を掌握し、数々の実績を有し、現在、我国が直面する多くの経済問題に関しても、実に多大な権限と責任を
有していることでも当然と言えるであろう。それに人材も豊富であり、他の官庁との連携においても、あらゆる官庁との
協調が求められている故に、最も中核的な推進官庁として適切であろうと思われる。もっとも、経済産業省に、国家的プ
ロジェクトとして火山灰利用を総合的に推進する関心や情熱、能力や意思がなければ、他の官庁が経済産業省に代わって
中心的役割を担って実践していく可能性を排除するものではないことは当然である。
なお、政府主導として中核的な指導権を発揮する経済産業省(旧通産省)の各組織が、他の官庁と共に推進し、そして
協力を仰いでいける業務分野は次の通りであろう。
1
鉄鋼やセメント等の基幹建設資材や、住宅及び住宅用資材、設備等の生産や流通を管
製造産業局の鉄鋼課、製鉄企画室、住宅産業窯業建材課等
等)は国土交通省(旧建設
2
省)と、
事項を管掌している部局、例えば、経済産業政策局の地域
3
経済産業政策課、立地環境整備課、地域産業振興室等の関
産業上の様々な公害問題を検討する為に、種々の関係する行政事項を管掌している部
導課等)は環境省(旧環境
庁)と、
行政事項を管掌している部局、例えば、資源エネルギー庁
5
進の為に、種々の関係する
や原子力安全・保安院(旧工業技術院や他局の関係部課)
庁)と、
産業構造の在り方を始め経済活動全般を検討する為に、種々の関係する行政事項を管
ば、経済産業政策局(旧産業政策局)や中小企業庁は内閣
6
局、例えば、産業技術環境
環境対策室等の関係課(旧公害防止企画課や旧公害防止指
省資源化や省エネルギー化、原子力普及、鉱山開発や保安行政、工業技術行政等の推
は文部科学省(旧科学技術
けて、種々の関係する行政
立地指導課、旧工業用水課、旧地域振興対策室等)は国土交通省(旧国土庁)と、
局の環境政策課、環境指導室、環境調和産業推進室、地球
4
(旧鉄鋼業務課、旧製鉄課、旧窯業建材課、旧住宅産業課
工業の再配置や立地、そして工業用水の確保、地域振興等の為の各種対策の検討に向
係課(旧工業再配置課、旧
掌している部局、例えば、
掌している担当部局、例え
府(旧経済企画庁)と、
通商貿易を円滑に推進する為に、種々の関係する行政事項を管掌している担当部局、
例えば、通商政策局や貿易
経済協力局(旧貿易局)は外務省と、
7
各種運搬手段検討の為に、種々の関係する行政事項を管掌している担当部局、例えば、
機械情報産業局の自動車課、車両課、航空機武器課等)は国
8
土交通省(旧運輸省)と、
産業政策面における資金の運営や貿易上の為替金融の諸問題を検討する為に、種々の
ている担当部局、例えば、経済産業政策局の関係課(旧産
製造産業局の関係課(旧
関係する行政事項を管掌し
業政策局の産業資金課や貿易局の為替金融課等)は財務省
(旧大蔵省)と、
9
労働環境改善を検討する為に、種々の関係行政事項を管掌している担当部局、例えば、
商務情報政策局の関係課
(旧産業政策局の余暇開発室)は厚生労働省(旧労働省)と、
10
特許庁は厳正中立の準司法的な観点から、独自に特許制度や技術の啓蒙や普及奨励、
で参加し、また技術契約上の諸問題に向けて、関係各行政
出願審査、権利付与等の面
庁や研究機関と広く協力する。
そして、火山灰利用新素材を広範に普及させ、また様々な応用展開を図って、我国経済を活性化させて国家基盤を強化
ならしめる為に、経済産業省が中心となって関係各省庁と友好的に協力して連携していく上で、関係省庁が経済産業省と
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協力できる業務上の役割分担は次の通りであろう。
(1)現内閣府(旧総理府)
火山灰利用新素材の国内外への広範且つ強力な普及展開を図る為に、新素材に係る企業の特許やノウハウ等を、適切な
対価の下に国有管理とし、また新素材の様々な応用研究についての、国立研究機関の各研究者の為した発明や考案を、適
切な報償の下に国有管理として、国家的な特許戦略推進の為の諸政策を遂行する。
(2)特許庁
前記の現内閣府(旧総理府)に対して、側面から特許制度の啓蒙普及、研究成果の出願への指導、取得特許等の権利範
囲や技術範囲の解釈の指導、技術契約上の諸問題検討等に関する種々の協力業務を行ない、そして新素材を始め、種々の
関連特許技術の審査から権利付与に至る諸業務を厳正中立に遂行する。
(3)農林水産省(特に林野庁)
(3)農林水産省(特に林野庁)
有益な火山灰、火山礫の国内天然資源の賦存量や分布地域の調査、採取事業、過疎地対策、各種産業の立地等の検討を
行ない、最適採取地の選定や円滑な採取業務を遂行し、また採取後の植林等の治山対策事業を推進して現環境省(旧環境
庁)や現国土交通省(旧国土庁)とも連携していく。
(4)現環境省(旧環境庁)
国立、国定公園区域における火山灰、火山礫の採取地選定や採取跡地の活用に関して、自然環境に及ぼす諸影響を経済
的効果と調和させて評価検討し、火山灰、火山礫の産地開発を担う現国土交通省(旧国土庁)や林野庁とも密接な連携を
図る。
(5)林野庁
森林下に眠る火山灰・火山礫の採取に際して、木材の伐採事業を自然環境への諸影響を考慮しながら遂行し、また採取
後の植林等の治山対策事業を推進して現環境省(旧環境庁)や現国土交通省(旧国土庁)とも連携していく。
(6)現国土交通省(旧建設省)
火山灰・火山礫の建設用資材としての評価を大々的に行ない、火山灰利用新素材の性能認定や、生産及び施工に係る各
種学会指導基準の再整備を図り、公共工事への採用基準を統一的に検討して、広範な建設事業分野への導入を促進させる。
(7)消防庁
耐火性の優れた新素材を、建設材料として積極的に活用していく際、防災効果が著しいことから、現行消防法規を全面
的に再検討し、新たな再整備を図って、建設工事の推進を担う現国土交通省(旧建設省)とも連携を進めて、必要な諸施
策を遂行する。
(8)現国土交通省(旧運輸省)、現JR各社(旧国鉄)
火山灰・火山礫の産出地から消費地への大量輸送に際して、最適運搬手段(鉄道、船舶、トラック)や経路(距離)や
保管集積地、そして付帯設備等について、地域開発や経済効率の両面から種々の問題を検討して運搬業務を推進する。
(9)現厚生労働省(旧労働省)
(9)現厚生労働省(旧労働省)
火山灰・火山礫の産地は人家の少ない荒地、僻地、離島等である故に、地域の開発振興に際して、充分な労働力の確保
や労働環境の整備等を検討し、必要な諸施策を遂行する。
(10)現郵政事業庁(旧郵政省)
)現郵政事業庁(旧郵政省)
火山灰・火山礫の産地の開発に際して、山野の大幅な形状変更による通信施設への影響調査や再配置化への検討、そし
て非通信地域の開発に対する通信施設の整備等を検討して、必要な諸施策を推進する。
(11)外務省
)外務省
海外の火山灰・火山礫の分布、量、性状等の各種調査を関係省庁と連携を持って実施し、火山灰利用新素材に係る各種
製品の海外輸出や技術の輸出・指導を推進する。特に技術契約については、現内閣府(旧総理府)や特許庁、そして関係
省庁との密接な連携を図る。
(12)現文部科学技術省(旧科学技術庁)
)現文部科学技術省(旧科学技術庁)
火山灰利用新素材の大々的な普及展開に際して、多大な資源エネルギーの節減に係る諸施策を中核的に推進し、また火
山灰利用新素材に係る各種の試験研究を実施し、無焼成ニューセラミック材料として建設材料以外への積極的利用を図
り、そして当該諸技術の放射性廃棄物処理への導入を検討し、更に火山機構やマグマ解明への各種調査試験を推進する。
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(13)現文部科学技術省(旧文部省)
)現文部科学技術省(旧文部省)
火山灰利用新素材の普及に際して、各種学会指導基準の全面的見直しや、火山噴出物や火山機構に関する各種調査研究
を、大学や付属研究機関や学会等の協力を得て推進し、また関係省庁の各研究機関とも密接な協調を図っていく。
(14)現厚生労働省(旧厚生省)
)現厚生労働省(旧厚生省)
微細な火山灰の人体への諸影響を調査研究し、またその優れた殺菌性、解熱性、吸着性等の諸特性を分析研究して医学
への導入を図り、更にマグマから放出されると思われる各種素粒子・放射線の医学的利用の検討を推進する。
(15)農
)農林省
)農林省
火山灰・火山礫の採取跡地の田畑、果樹園の利用化を検討し、また風化火山灰の有する各種肥料効果を、各地の気候風
土、火山灰性状、農作物等との関連において調査研究し、更にマグマから放出されると思われる各種素粒子・放射線の農
作物への影響効果を分析して、火山灰地等の農業上の総合的利用を検討し推進する。
(16)現内閣府(旧経済企画庁)
)現内閣府(旧経済企画庁)
火山灰・火山礫の積極的利用展開による省資源、省エネルギー効果や各種産業に及ぼす諸影響を経済面から分析検討し
て、国民経済の円滑な推進を図る為の諸施策を遂行する。
(17)防衛庁
)防衛庁
優れた諸特性を有する火山灰・火山礫の大々的な利用に際して、離島、荒地、辺境等の産地の開発と活用を、また耐火、
対爆裂性の優れた新素材の全ての建造物への導入等を、諸分野(地域開発、輸送、省資源、省エネルギー、防災等)とい
った国土防衛上の観点から検討し、必要な諸施策を推進する。
(18)現総務省(旧自治省、旧沖縄開発庁、旧北海道開発庁)
)現総務省(旧自治省、旧沖縄開発庁、旧北海道開発庁)
全国的に賦存する火山灰・火山礫の採取や集積保管、運搬、加工、施工等の各種業務の遂行において、地元産地や地方
自治体の行政庁、そして国の各行政機関との連携や調整を図って円滑な普及を推進する。
(19)法務省、検察庁、国家公安委員会、公安調査庁
)法務省、検察庁、国家公安委員会、公安調査庁
火山灰・火山礫の大規模な活用に際して、各種悪徳ブローカーや産業スパイ等の利権的暗躍を防止し、秩序正しい地域
開発、経済発展を推進する為の諸対策を検討し遂行する。
(20)公正取引委員会
)公正取引委員会
火山灰・火山礫の産地の不当な買占めや、公共工事導入の際の談合による不当な価格調整や、その他の不正な商取引を
防止して、健全な経済活動推進の為の諸施策を遂行する。
(21)現財務省、現金融庁(旧大蔵省)
)現財務省、現金融庁(旧大蔵省)
以上の各業務の検討や遂行に際して、国家的大事業にするべく、民間資本の導入と国家資金の投入等の諸問題を、金利
政策や租税対策と関連させて検討し必要な施策を推進する。
(22)現内閣府(旧行政管理庁)
)現内閣府(旧行政管理庁)
同様に以上の各業務の遂行に際して、関係各省庁が無益な摩擦や抗争を演ずることなく、円滑に連携を図って協力して
推進しいけるように、各省庁の役割分担を明確化しながら、各行政庁の最適な組織運営の検討を行ない、現下の行政改革
の方向と密接な連携を保つ為の諸施策を強力に展開する。
31 内閣府(旧総理府)による特許等の国有管理化へ
火山灰利用新素材によって、様々な角度から日本列島の大改造を実施し、我国経済の基礎を強固にしていくに際して必
要にして大切なことは、当該火山灰利用新素材に関する多くの特許やノウハウ類への対処である。これらは多額の研究費
用をかけて研究開発して来た先の個人が特許出願して既に権利も下りて、今は相続人が特許権を取得保有しており、実施
に際しては、協力者が膨大なノウハウを保有しているものだ。また新しい分割出願も為されており、これは未だ特許審査
にも付されていないが、審査請求をすれば、権利が下りるのも時間の問題だ。
それ故に、国として大々的な特許の普及手段を講ずることなく、傍観者的に当該開発個人の個別努力に一切を委ねると
いうのでは余りにも消極的であり、広範な普及展開にはなり得ないであろう。即ち、個人に火山灰利用新素材に係る特許
やノウハウ類の管理一切を委ねておくならば、普及速度も極めて遅々たるものとなり、また利用できる企業も極めて限定
されたものとなり易いだろう。そして国が個人に対して普及展開を広範囲に実施するように督促するならば、当該特許・
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ノウハウ類を所有する個人と、その特許類の実施権を切望する多くの企業との間での、特許類の使用許諾に関する締結契
約は極めて多数となり、事務手続きは繁雑を極めていくことであろう。
更に当該新素材は、我国のみならず、国際的にも充分に通用し得るものであるだけに、対外的な契約を考慮すると実に
膨大となるものである。ただ当該特許技術は外国出願は成されていない故に、外国が勝手に日本以外で模倣して実施する
のは権利侵害にはならず、その点は、画期的な技術に関する特許管理の認識が極めて甘かったとも言えるが、資金調達の
面から仕方なかったとも言える。しかし、技術の実施に際しては、特殊混和剤が必要であり、その混和剤入手に際しては、
契約が必要となるだろう。これは国内での盗用や模倣に対しても同様である。もっとも、新たに特殊混和剤を開発し特許
取得すれば論外であるが。
なお、国内外への技術供与などで、政府が率先して指導力を発揮していくためには、権利を保有する一個人の単独管理
や個別努力に任せておくべきではなく、国家自らが適切な価格によって買い上げて国有管理とし、その普及展開に向けて
国の総力を挙げて対処していくことが大切であるだろう。国家が直接に担当して適切な管理運営を図っていかねば、広範
に普及させ、多大な国家的利益を期待するのは不可能であろう。経済的に逼迫化しつつある現在の諸情勢下では、急速に
立ち上げていかねばならない緊急性を要する時期が来たようだ。長時間掛けて検討するといった余裕がなくなりつつある
のも事実であろう。一挙に、広範多岐にわたる諸問題の解決を強力に推進させていく必要があると言えよう。
即ち、火山灰利用新素材に関する一切の特許ノウハウ類について、技術契約の締結や技術修得から、各種教育機関での
教育指導、各種研究機関での試験研究、そして全産業分野における各種利用や応用研究等に至るまで、国が全責任を持っ
て管理し、推進指導する体制を確立していく必要があるだろう。そして対外的な普及促進においても、相手国への出願や
技術契約や技術指導に当って、国自らが率先して中核的役割を果たし、国有特許の国際的な特許戦略の展開として最大限
の活用を図っていくべきであろう。
もちろん技術契約の締結に当っては、相手国の政治的、経済的、技術的、そして財政的、更に火山灰等の賦存量等の諸
事情を充分に考慮検討して、適切な対価でもって対処し推進していくことが大切であろう。たとえ個人に多額の買収資金
を供与しても、国自らの対外的諸政策の適確な推進により、充分な利益の還元が図られるものと期待される。なお、国家
自らが、この特許権を侵害したり、侵害を助長し放任していくようであれば、これはもう特許制度の崩壊であり、倫理、
道徳の破壊を国自らが犯していくことになるであろう。
ところで、火山灰利用新素材に係る特許等の国有管理化や国際的な特許戦略の展開を中核的に推進し得る最適な官庁
は、科学技術会議を所掌する現内閣府(旧総理府)であろう。なお、特許庁は特許業務に深く関係しているが、内外人平
等の原則に従って、厳正中立な審査から権利付与を業務とする官庁であるから、中核として推進するのは適切ではない。
裁判所が検察庁や警察庁を兼ねるようなものである。
しかし、特許庁は、現内閣府(旧総理府)に対して、豊富な特許知識を活用して、特許料の算定から特許技術契約の内
容検討に至る多くの業務を職員の派遣を通じて側面から協力していけるであろうし、またこれができるのは特許庁しか存
在しない。また他の国有特許を個別に管理している各官庁も、国有特許の管理一元化を担うべき総理府に全面的に協力し
ていくことが望まれる。
目下、科学技術の世界的大先進国の米国では、国有特許の管理を国家の最高指導者に直属した機関によって行ない、優
れた特許等を選別して国家自らが国際的な特許戦略として国益を最大限に考慮して活用していると言われている。然るに
我国の場合、国有特許というものはあっても、その管理は各省庁がバラバラであり、優劣の選別すらしていず、国際的な
優れたものでも外国出願すらもしていず、全く放置されており、国有特許の統一的管理はおろか、国際的視野に立った国
家的な特許戦略もないのが現状である。
また国立大学及び付属研究機関は既に独立行政法人になったが、以前はこれらの研究者においては、国の予算や施設を
利用して為した成果としての特許等であるにも拘らず、監督官庁の特許の重要性に対する認識不足や国有化への情熱の欠
如から、某学術団体の答申通りに研究者独自の私物になっていたのが実情であった。それに国立大学関係の研究者といえ
ども、各行政庁の付属研究機関の研究者と同様に国家の公務員であり、研究成果の管理態様に関して何ら差異はないはず
であった。最近は、原則として大学に特許権が帰属するように、従来から一八〇度の方針転換により根本的に改められつ
つあるようだ。これも特許権の重要性が次第に認識されてきたからであろうと思われる。
さて、このような従来のままの自由放任主義における我国の特許制度の重要性に対する国家的な無知や無理解の下で
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は、一民間の無名個人が開発した画期的で国際的な大発明を、国家的利益とする為に国有管理化して、国家主導による国
際特許戦略として組み入れて大々的に活用していくといった発想は生じにくいことであろう。少なくとも現在の官僚意識
や官僚機構の中からは生れて来ることはなく、特許制度の普及を担当する特許庁は勿論、特許庁を外局として管理する経
済産業省(旧通産省)からも生れて来ることはないだろう。
もし、火山灰利用新素材に係る特許等の国有管理化への道が真剣に検討されずに放置された場合、国内の各企業を始め、
外国企業や外国政府の暗躍による権利盗用や、契約事項の解釈相違による権利侵害等に至る幾多の混乱や衝突、更には国
家的損失は、これは全てこの当方の提言内容の中での数々の指摘を無視した日本国政府当局にあるといえよう。
火山灰利用新素材に係る特許やノウハウ等が、産業スパイ的行為や、契約観念の甘い我国国民性や、無為無策の国家当
局等によって侵害されて普及していくのであるならば、たとえ開発所有個人の防備の甘さや極度の善良性が指摘されよう
とも、これは最早、我国の倫理道徳の崩壊となるであろう。そしてこれは、特許制度の崩壊につながり、至っては技術立
国を目指して、頭脳資源の活用を図るべく、発明や考案を大々的に奨励していかねばならない我国の将来に、重大なる禍
根を残すことになるだろう。
32 旧国土庁による火山灰等採取の推進
火山灰・火山礫が建設資材のみならず、他の様々な応用分野に対しても極めて有望な国家的資源になり得ると解った現
在、この無尽蔵に近い国内天然資源の採取を大々的に推進する事業の監督官庁を見つけていかなければならない。勿論、
当面は、大局的には現経済産業省が担当するものであるが、究極的には、新素材の特性や従来の法律に合わない面が多く、
その他、様々な問題が横たわっているのは間違いない。したがって、従来の法制度に囚われない柔軟な発想にて対応して
いく必要性も出てきたことは否めないようだ。以下、種々の問題点を考慮、検討していこう。
この火山灰、火山礫は、火山国日本においても、また世界的にも広域的且つ無尽蔵に賦存するものであり、従来の鉱石
といった概念では把握し難く、またその産地は従来の鉱山といえる性格のものではない。そして単に建設用骨材としてば
かりでなく、無焼成ニューセラミックとして他の様々な産業分野にも応用が可能な天然資源である故に、従来の砂利、砂
の概念で把握し得るものでもない。それに火山灰は余りにも微細な物質故に、通常の砂のような骨材としては規定しにく
いものである。従って、火山灰や火山礫の採取事業を所掌し監督する官庁は、従来の鉱石や砂利、砂の採取に関する官庁
である現経済産業省(旧通産省)が担当し得るものではなく、新たな所轄官庁を積極的に見出していくべきであろう。現
在のところ、現経済産業省(旧通産省)はもちろん、火山灰・火山礫の採取を積極的に担当し推進している官庁は我国に
はどこにも存在していないのが実状である。
火山灰、火山礫の採取に関する事業の所管は、これら天然資源が極めて豊富に且つ全国的に賦存しているという性格や、
採取に伴う種々の業務(開発、運搬、跡地利用、影響評価等)には多くの関係官庁の協力が必要であるということからし
て、各省庁との調整を担って国土全体の開発を推進する現国土交通省(旧国土庁)が最適であるだろう。
かつては、行政改革の論議が進行する中で、各界の有識者の間から、旧国土庁不要論や旧建設省との統合論が飛び出し
て来ていたが、そして現在では国土交通省の中に統合されてしまったが、いささか早計というものだろう。確かにこれま
での旧国土庁は、単なる関係省庁間の調整役しか果たし得ず、自ら積極的に且つ具体的に事業政策を展開していくといっ
た官庁ではなく、人員溝成も各省庁の出向者による寄せ集め的な集団であった。それに担当する業務も余りにも長期的展
望に立って全国土を鳥瞰図絵的に把握していくというものであり、政策の対象も直接に国民自身と結びつくものにはなり
にくく、多くは各公共団体を相手にしたものであると聞く。
然るに今回、有益な火山灰・火山礫の大規模な採取事業の所管を旧国土庁が担当することによって、旧国土庁の存在意
義も明確となって来るものと思われる。国土全体の有効な土地開発や土地利用を積極的に推進する為の具体的なタマが、
火山灰、火山礫の採取という形で登場して来たからである。各省庁との連絡調整機能を有する旧国土庁が、火山灰・火山
礫の採取事業を所管し、そして大量の需要先である建設業界を所轄する旧建設省や、運搬業務の所轄である旧運輸省や、
跡地利用に向けての諸事業の担当である農林省等と密接な連携を図っていくのに最も妥当であろう。
また火山灰・火山礫という天然資源の賦存地域の多くは、国立・国定公園等の国家的な風光明媚な景勝地に指定されて
いて、開発・採取に当っては厳しい規制が敷かれている。大自然の生態系の改造による悪化を最小限に食い止めるべく、
経済的開発効果を考慮したこれら規制の見直しや、採取による自然変革への影響や、採取後の自然環境の蘇生化に向けて、
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環境保全や環境への影響評価を担当する現環境省(旧環境庁)とも密接な連携をとって、一体となって開発推進を担うこ
とが必要であろう。また採取後の跡地の植林事業を推進して治山対策に努めるべき林野庁とも、特に密に連携し合い、共
同して開発業務を遂行していくことが必要だろう。
即ち、火山灰・火山礫の産地の採取に伴う開発と、採取後の跡地の有効利用に関する対策及び業務は、大自然環境の大
改造に関することであり、それ故に生態系の改悪化の回避と、治山治水対策の効率的な統合化を第一義的に考慮して推進
する必要があろう。その為には、旧国土庁(現国土交通省)は、旧環境庁(現環境省)及び林野庁との連携を特に密にし、
一体となって共同して対処していく姿勢と体制が必須となってくるだろう。
33 旧国土庁、旧環境庁、林野庁の統合
火山灰利用の国家的推進に際しての現国土交通省(旧国土庁)、現環境省(旧環境庁)、林野庁の果たすべき役割は既
に説明した。即ち、現国土交通省(旧国土庁)は火山灰等の産地の調査や選定、採取事業、跡地の有効利用等に関して、
旧環境庁は火山灰等が分布する国立、国定公園区域の開発の際の、景観変更や自然改造に伴う諸影響評価に関して、林野
庁は森林の下部に賦存する火山灰等の採取における森林伐採や、火山灰等の採取後の植林事業に関しての役割である。
旧国土庁(現国土交通省)や旧環境庁(現環境省)は、共に行財政改革において、不要不急の官庁として廃止も検討さ
れ、某省庁への吸収合併が実施された。そもそも旧国土庁や旧環境庁、それに林野庁といった官庁は、特に目まぐるしく
変化する諸情勢に対処して、次々に適切な諸政策を打ち出していくといった性格のものではない。即ち、極めて長期的な
展望に立って、国土全体の大自然を相手に、時には地球的規模の大自然を相手に、様々な角度からの検討、対策、指導等
の行政を推進する責務を負った官庁である。
それ故に、ややもすると昨今の目まぐるしい性急な社会情勢や人間心理の下では、緊急の必要性が無しとか、無用の長
物として近視眼的に見られて、その長期的な任務を負う存在意義すら忘却されかねない官庁である。なお大自然を相手に
業務を遂行する官庁は他に気象庁があるが、こちらは特に気象情報を必要とする船舶や飛行機の運航に極めて日常的な任
務を負っているもので、旧国土庁、旧環境庁、林野庁と同列に論じることはできない。
ところで旧国土庁(現国土交通省)は、関係省庁間の連携、調整を所掌するといった性格が濃く、独自に国民各個人と
直結する特別な許認可や事業を有しているものではなく、殆ど公共団体を対象とした国土全体の開発、利用の計画作成に
係る業務であろう。この旧国土庁(現国土交通省)の新たな存在意義が、火山国日本の再開発に伴う大々的な火山灰、火
山礫の採取に際して、大きく認識を変革させて浮上して来たのである。
正に全国土にまたがる火山灰、火山礫の産地の開発を軸にした国土の総合利用の推進は、旧国土庁(現国土交通省)が
中核的存在として適切な官庁と言えよう。また旧環境庁(現環境省)は、これまで国土自然環境の保全に努める守りの行
政を強いられて来た傾向が強いが、国立、国定公園区域に大量に賦存する火山灰、火山礫が宝石のような価値を生み出し、
火山地帯は正に宝の山であると解った現在、自ら積極的な開発利用に向けて、環境上の影響評価を経済効率を充分勘案し
て推進していく必要に迫られよう。即ち、旧環境庁(現環境省)自らが、国立・国定公園というタブーの地域開発を、跡
地の有効利用も充分考慮して、調査、検討、決定に至る業務を自己の責任で遂行することができるものと言えよう。
更に林野庁は、伐採できる森林が次第に減少しつつある現在、そして仮に植林した木が成長して来ても自然環境や治山
対策上、大規模に伐採できずに森林資源の保護に努めていかなけれはならない現在、さほどには日常的な業務が多くなく、
農林水産省の中でも特に長期的な視点から、国土全体の環境保全行政を求められている官庁である。森林下に眠る大量の
火山灰、火山礫の採取除去の推進に伴い、森林伐採業務の増大、採取後の平担化による治山管理の容易化、採取跡地の植
林業務の推進へと、林野庁の果たすべき役割は、旧国土庁(現国土交通省)、旧環境庁(現環境省)と密接な連携の下に
大きく浮上して来るであろう。
火山灰、火山礫の産地の大々的な開発、利用の推進に際して、旧国土庁(現国土交通省)、旧環境庁(現環境省)、林
野庁が統合されて、互いに協調し連携を取り合って一体的な行政を実施していけば、極めて効率化が達成されることだろ
う。即ち、旧国土庁(現国土交通省)の治水対策と林野庁の治山対策も一体化されて、極めて効率良く推進されることが
期待でき、採取地の選定から採取事業の推進、そして跡地の有効利用に至る一連の開発利用業務も一体的に且つ強力に実
践できるだろう。
これら三官庁が強力に統合化されれば、火山地域や国立、国定公園区域の開発利用に際して、省庁間の摩擦や対立も最
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小限に抑えることができ、効率的に、大々的に推進して行けるものと期待できる。火山灰、火山礫の大規模な採取に伴う、
離島・荒地等の過疎地対策、自然環境問題の検討、森林伐採と植林事業等の一連の国土再開発、国土改造は正に一元一体
化された新しい推進母体により、効率的に実現されていくことだろう。国土全体の開発利用と、それに伴う自然改造の影
響評価、跡地対策等に係る業務を統合することは、正に開発、規制、跡地処理に係る諸機構の統合であり、諸権限の統合
である。これによって火山灰、火山礫利用に伴う国土開発が、経済的側面と自然環境的側面の両方から相互理解、相互協
調、相互評価し合って推進でき、多大なる国家的利益が得られるであろう。
こうしてみると、実に、二〇〇一年からスタートした新たな行政改革に伴う省庁再編が、如何に理念に乏しいもので、
場当たり的再編であるかが理解できるであろう。再度の行政改革が実施されていくのも時間の問題であろう。恐らく火山
灰が大々的に普及していくに連れて、現在の行政組織では十分に対応しきれない状態に陥っていくことであろう。その新
たな仕切り直しの行政改革に際して、火山灰技術の登場とそれに伴う担当行政庁の対立的関与と縄張り争いにより、立ち
往生し、民間の政府に対する要望の早さに置いてきぼりを喰らって、政府不在のままに展開していく可能性もあることは
否定できない。そうした暁にこそ、官庁組織の再編に向けて新たな検討が始まることであろう。
第5章 新たな文明史大転換に向けて
34 旧科学技術庁によるマグマ等の解明
火山灰利用新素材に係る諸性能や諸技術は、原子力発電所から大量に産出される放射性廃棄物の処理にも極めて効果的
と思われることは既に指摘した。この問題は、目下、各国とも研究に積極的に取り組んでいるが、安全性や採算性等を巡
り、密閉材質や処理技術等の点で種々の技術的困難性を有しているのが実情である。また投棄においても汚染や環境破壊
に対する地域住民の不信感が拭えず、極めて憂慮すべき社会問題化、政治問題化し、現在では国際問題にまで発展してい
る。
火山灰モルタルを利用して危険な放射性廃棄物を処理する研究の推進は、安全管理や開発費等の多大なリスクの為に、
一民間私企業の企業努力に委ねられるものではない。これは、原子力発電所を有する、及び有する計画のある世界各国に
共通した世界的な課題であり、その研究成果は世界に通用し教示できるのである。それ故に、放射性廃棄物の処理には、
国自らが、国家的課題として指導性を発揮して推進していく必要があるだろう。
そしてその為には、民間の技術や頭脳を最大限に活用しながらも、国家資金を投入して、民間の企業負担やリスクを最
小限に抑制していく努力が必要となるであろう。たとえ、この研究に国家資金を支出したところで、この技術的成果は国
有財産として日本の国家や産業全体の利益になるばかりでなく、広く海外との技術契約による技術供与を通じて、技術貿
易収入として国家財政に大きく寄与して多大な国益となるだろう。
また既に指摘したように、火山国日本の地下に無尽蔵に眠るマグマ溜まりは、濃縮過程にある豊富なウラン等の放射性
物質により満たされている可能性が非常に強いと思われる。そしてこのマグマ溜まりに貯蔵されるマグマを送り出してい
る地殻深部の排水殻は、実に多種多様で無尽蔵の鉱物資源の宝庫である。こうしたマグマ溜まりからのウラン等や排水殻
からの各種金属資源の抽出に向けての、幾多の調査や実験、試掘等の研究開発は、同様に国家的な大事業であり、一企業
の商業的努力に委ねられ得るものでは決してない。またマグマ溜まりの主要構成要素と思われるウランは、目下、原子力
への利用の中心的資源であることから、マグマ溜まりからウランを抽出する各種研究は、原子力発電所における放射性廃
棄物の処理の研究と密接に関連を持って推進される必要があるだろう。
この研究の推進を担当するのに最も適切な官庁は、実際の産業化を前提にした現産業経済省(旧通産省)よりも、研究
開発を主体とする旧科学技術庁(現文部科学省)であろうと思われる。即ち、旧科学技術庁は、今日、技術立国を目指す
我国の技術政策官庁の中核的存在であり、かつては庁内に総理大臣直属の原子力委員会や科学技術会議を所掌して、原子
力や資源探査等の新技術の開発推進を担っていた。また新技術の開発や普及を事業目的として設立された新技術開発事業
団の監督官庁でもあり、外部に原子力研究所をも有し、誠に適確な担当官庁であるといえよう。
なお、旧科学技術庁(現文部科学省)は、こうした技術開発の中核的役割を果たす官庁であるが、目下のところ、産業
として成立する以前の、即ち基礎的分野の技術研究を守備範囲としている。一方、基礎的研究段階を終えて応用的な実践
分野の研究、即ち産業として利用可能な分野の研究は現経済産業省(旧通産省)の担当となっている。しかし、技術には、
旧科学技術庁(現文部科学省)の所掌する基礎技術、即ち科学技術と、一方の旧通産省の所掌する応用技術、即ち産業技
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術との間の区別はそれ程に明解なものではなかった。
特にパイオニア的な技術開発は、基礎と応用の各研究を相互交流の下に一貫して推進した方がはるかに効果的でさえあ
る。また一体的な組織運営の下に推進すべきでもある。そして本来は、産業技術の研究開発は民間の研究機関に委ねられ
るべきもので、現産業経済省(旧通産省)が民間と競合して推進すべきではなく、官庁の研究機関は民間が手を付けられ
ない基礎的な研究に主力を注ぐべきものであろう。
それ故に、現文部科学省(旧科学技術庁)は、火山灰利用新素材の物性的基礎研究から、放射性廃棄物処理に至る様々
な応用分野の技術開発や、マグマ解明の為の基礎的研究からマグマ溜まりからウラン等の抽出の産業的利用に至る応用的
研究までをも全て包含した大々的な研究を、民間と協力連携を保ちながら推進していくべきであろう。またそうした姿勢
こそが、強力且つ速やかな研究を達成させ、多大な成果を期することができるだろう。
35 資源エネルギー立国への展望
新素材を基調とした新たな新日本列島大改造計画の推進や石油消費の大幅削減に向けた諸改革の実践で、我国における
石油や鉄鋼等の重要資源の海外依存の体質を大幅に改善できることになるだろう。細かい数値的推計は様々な分野の専門
家のご協力を仰がなければならないが、恐らくは、海外依存は半分ぐらいになるのではないかと思われる。
即ち、産業分野における鉄鋼や樹脂、石材、セメント等の大幅使用の削減化、そして鉄鋼や、ガラス、セメント等の製
造面での溶鉱炉における耐熱性の向上した耐火煉瓦がもたらすエネルギー消費の削減化、建造物や車体、タンク、倉庫等
における冷暖房の向上による維持管理面でのエネルギー消費の大幅低減化、各種鉄鋼製品や機械部品の性能向上による製
造、維持管理等の面における費用の節減化と言った、実にあらゆる分野においてもたらされる石油を中心としたエネルギ
ー消費の削減は、膨大なものになるであろう。
日本が海外に依存する石油資源の調達先の多角化、分散化も思うように行かない現在、将来においても石油資源の枯渇
化が懸念されている以上、国家自らが主導権を持って石油消費の大幅節減化に向けた政策を展開していく時期に来たと言
えるであろう。特に最近の石油価格の高騰は将来に不気味な不安要因を暗示していると言っても良いだろう。また、現在
進行している地球温暖化対策に対しても効果ある対応を為していくためにも、石油等の大規模な消費削減は避けては通れ
ないであろう。京都議定書の目標達成や石油価格の高騰による需給逼迫の要因を、神風と受け止めて、今こそ思い切った
改革が求められているものと思われる。
更に、後編で指摘するように、我国は世界有数の火山国であり、豊富なマグマに恵まれている。火山爆発のエネルギー
源はマグマ内部のウラン等の放射性物質であり、火山爆発の原理はウラン等の放射性物質の核反応によるものであり、火
山爆発後に悪性の放射能が見られないのは、放射性物質が別の核種に核壊変したり、火山灰中に吸着されてしまって、爆
発瞬間に消滅してしまうものと考えられる。こうした点の実証を含めて、我国火山国の特質を生かして、火山の火口直下
付近に存在すると思われるマグマ溜まりからのウラン等の各種金属資源に対し、効果的な採取に向けて技術的解決を図る
政策を推進していけば、場合によってはウラン等の資源国にも脱皮していけるであろう。
目下、我国は石油や各種資源エネルギーの大消費国であり、且つ殆どを海外に依存する脆弱な経済基盤を有している。
そして不安定な石油情勢を反映して、石油代替エネルギー源として原子力に大きな期待が寄せられている。しかし、その
資源であるウランも石油と同様に海外依存が極めて高い資源であることには変わりはない。また放射性廃棄物処理の不徹
底さを巡り、国民世論や投棄地域の各国政府の強硬な反対の前に、原子力発電所の建設が著しく難航している。
原子力に対する国民のアレルギーが蔓延しつつあるが、多くの国民は、原子力に対しては感情的な原因で嫌悪している
とも言えるのであろう。それに石油消費の大幅な節減を図れない現状下で、原子力発電を否定することは、そうした決定
に賛同する国民が自ら、消費電力を節減して生活水準を低下させる意識や情熱があるのなら結構であるが、とてもそのよ
うな高邁な意識など原子力に反対する勢力には無く、単なるエゴイズムでしかないだろう。やはり、米国の方向でも見ら
れるように、石油の高騰化や脱ダム傾向からすると、将来は原子力発電に頼らざるを得ない状況が生まれてくることであ
ろう。
原子力発電は戦争においては爆撃等により危険ではあるが、平和な時代では、その構造上、国民が思っているほど決し
て危険ではないのである。航空機の衝突に対しても実に五重の障壁にて防御されていて、極めて安全であるものと思われ
る。それにいざ戦争にでもなれば、ダムや河川の飲料用水への毒物混入や交通遮断等による危険もあり、こちらの方も原
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子力に劣らず非常に危険であるだろう。むしろ食品添加物による影響の方が非常に危険であると言えるだろう。
なお、火山灰利用新素材に係る諸技術は、放射性廃棄物処理にも極めて有効である。またマグマからウラン等の放射性
物質を抽出する際の耐熱、強度を要求される掘削刃(ビット)や導管(パイプ)等の各種材料にも、数々の優れた性能を
有し、特に耐火性、耐熱性、強度性、耐衝撃性が優秀な火山灰利用新素材が充分に活用できる可能性がある。
石油やウランに恵まれない我国が、火山灰利用新素材を最大限に利用して石油消費節減に努め、そしてマグマ資源の
大々的な活用を目指すことは、実に画期的な文明史の転換とも言える。即ち、今日の国民経済に大きな位置を占める石油
の依存を極力減少させて、火山灰・火山礫の広範な産業分野への導入を促進させ、またマグマから地熱や放射性物質の抽
出や、放射線・素粒子、原子力の活用を図っていくことは、これまでの石油中心の文明から、火山及びその噴出物活用の
文明への転換とも言える。
特に我国が火山国の特殊環境を最大限に生かして、火山灰やマグマの有効利用を強力に推進することは、今後の石油情
勢の緊迫化を打開し得るのみならず、最大の資源エネルギー国に脱皮転換し得て、文明史転換の突破口を開くことにもな
るのである。そして不安定な石油情勢の下で、インフレや国際収支の悪化や国内景気の後退等に喘ぐ非産油国の火山国や
先進工業諸国の窮状をも救済していけることにもなるだろう。
我々は、これまで、余りにも海外資源に目を向け過ぎて、身近な国内火山資源の豊かさに殆ど気付かずに来た。そして
国内火山資源に関しても、単に地表の一部の火山灰・火山礫の消極的な利用や、地下の比較的浅いところの地熱の小規模
な利用くらいしか着目せず、地下深部の放射性物質や種々の金属元素に対する関心はおろか、地表の火山灰、火山礫の大々
的な活用への関心は殆ど払われて来なかったと言える。これは、日本のみならず、世界全人類の太古史以来の文明的死角
であったとも言えよう。目下、活発な宇宙探査や核兵器の開発を更に推進させていくよりも、もっと地殻内部における種々
の物理探査や諸現象の原理解明に多大なる努力を傾注し、人類の共存共栄を図る方途を確立することが大切なことと思わ
れる。
ところで、日本は世界最大の資源エネルギー国に大きく転換していくことが可能であろう。決して虚言や妄言ではない。
要は創造力、知恵の出し方である。従来の常識や学識の打破であり、固定観念や先入観の打破に他ならないと言えるだろ
う。現在の段階では、狡猾な連中が多い中では、これ以上言及することはできないのが残念でもある。当方の最大の目的
は、国民意識の変革であり、既存システムとの決別であり、そして新たな国家的な大改革であり、現状の腐敗し硬直化し
た制度や組織の単なる維持ではないからである。実に国家社会が危急存亡に遭遇するか、崩壊後にこそ、エネルギー問題
をも含めて、様々な分野において思い切った改革ができるものと確信するものである。
36 マグマ探索への請願書
詳細は後編で紹介するが、火山灰利用の新素材を色々と調査研究していくにつれて、次第に火山灰を生み出している火
山活動そのものに行き着いた。そして、国内のみならず、外国の研究者に至るまで、火山の噴火の原因や火山活動の背景
に関する文献を調査した。そうした過程を経る中で、ある特殊能力を有する御方が何気なく撮影された一枚の写真から電
光石火の如く火花が走ってインスピレーションが閃いた次第である。
即ち、その写真とは、当方の恩師であられた聖心先生が、夜間に普通のカメラで撮影したものである。そこに写されて
いるのは、噴火活動が最も活発な九州鹿児島の桜島火山の麓で、夥しい数の色とりどりの光線群が地表面から空中に向か
って放出されている光景であった。この光景は、普通の人が写しても決して写ることがないものであり、ましてや現在の
科学でも解明できないものであり、実に、数千年来の仏身顛化の歴史的大偉業を達成され、人間を超越されて特殊な能力
を持った御方にこそ可能であると言えるだろう。
一瞬、当方の脳裏に走ったことは、これこそ、火山の地下深くのマグマ溜まり付近から放射されている一種の放射線、
素粒子の類ではないかと思われた。それまで火山噴火の原因に関しては、通説のようなプレートテクトニクス説の不合理
性や矛盾、限界を感じていたからだ。即ち、巨大なプレートが移動して、そのプレート相互の境界で発生した摩擦熱によ
り、歪みエネルギーが蓄積されて、その結果、地震や火山爆発に繋がっていくという理論である。
この一般化した理論がおかしいことは、年間数センチしか移動しない巨大プレートの境界で、巨大なエネルギーが発生
することなど有り得ないことは、子供でも解ろうというものだ。プレートの浮上と沈降、四散と言ったシーソーゲームを
通して、巨大な摩擦熱などが発生した結果、それが溜まってきて、ある時に火山噴火や地震になっていくという理論はと
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ても受け入れられないものであった。
そのような時に、先程の一枚の写真が大きく思考を前進させ、正に火山噴火はマグマ溜まりに存在するウラン等の放射
性物質の核分裂反応によるものではないかという仮説が浮上してきた次第だ。然らば、火山噴火後に、どうして放射能が
発見されないのかという疑問も出てくることは承知している。その結論は、実に、火山噴火直後に、または火山噴火の祭
に、消滅してしまうか、火山灰に吸着されてしまうか、或いは両者の併用合体化された結果ではないかと思われる。
火山灰の有効で画期的な特性が、実に従来の常識的理論では解明できないのも、こうした火山噴火の原理に大きく関係
しているものと思われる。単なる岩石が粉砕されてできた砂利、砂の類ではないのである。即ち、単なる粒径の差異では
なく、実に、その微細な結晶構造と不可解な特性は、普通の岩石が風化したり粉砕されてでき上がっていった砂利や砂と
は大きく様相を異にしているものだ。
従って、火山灰の数々の特性が解明される暁には、火山噴火の真の原因が解明され、その際には、併せて地球内部の構
造も解明されていくことであろうと思われる。その結果、鹿児島の桜島大根が肥大化しているのも、地下から放射線が多
量に放射されている結果であって、実験で放射線照射を施して昆虫の突然変異を実現させたりしている行為と同じものだ
と言うことも理解されてくることであろう。また、ガラパゴス諸島に見られる巨大な植物や変わった動物なども、実に、
火山島の地下深くから照射されている特殊な放射線の影響によるものではないかと言った解明も成されていくものと思
われる。
また一方で、火山噴火がマグマ溜まりでのウラン等の放射性物質の核分裂反応によるものであると言うことは、火山爆
発の前に、マグマ溜まりからウラン等の放射性物質を抽出することを実践すれば、豊富なウラン等を獲得することが出来
るであろうと言う仮説も成立するだろう。しかしながら、マグマ溜まりは火山の近傍にあるとは言えても、必ずしも火山
の噴火火口の直下にあるとは限らない。多くは四,五キロ程もずれている場合が多いと言えよう。その探査も現在の技術
では決して容易なものではないと言えよう。
そして何よりも、火山の噴火直前でなければ、ウラン等が濃縮されて臨界点に到達して火山爆発にまで至らない故に、
逆に言えば、ウランを抽出できると言うからには、火山の爆発寸前であるという可能性が高いと言えよう。従って、マグ
マ溜まりの探査の困難性に加えて、そこからのウラン等の抽出には非常に危険が伴うことも確かであろう。探査に、抽出
においては、地熱との戦いになる故に、耐熱性や強度の高い掘削歯や爪(ビット)や導管(パイプ)の開発も要求されて
くることだろう。
火山灰利用の新素材技術に関しても、多くの日本人は何も関心を払わずに極めて猜疑心旺盛に対応している嫌いがある
が、恐らく火山灰技術に関心を示して、いち早く実践する外国の研究者がその優秀な特性に気が付きだしたら、後は火山
の噴火の原理に到達するのも時間の問題であり、そうなったら、当方の仮説を実証してみる好奇心に駆られて、研究し仮
説を証明していくのも同様に当然に考えられる帰結であろう。やはり、好奇心旺盛で様々な仮説を立てて自ら挑戦してい
く外国の研究者にこそ、当方の仮説への挑戦を期待するしか無いようだ。
日本人の研究者には、そもそも仮説を打ち立てて、それを検証し実証すると言った研究姿勢に乏しいようだ。そして他
人の立てた仮説を評価していくという姿勢も欠如しているようだ。日本では基礎理論よりも、応用的で数値解析に拘り、
実証主義に走りやすい研究に陥っているようだ。従って、眼に見えにくいものや姿形になりにくいものに関しては、評価
すらできないようだ。抽象的で解りにくいとか、具体性に乏しいとか、時期尚早であるとか言って、無視したり軽視して
いきやすいと言えよう。
学問や研究は、基礎段階でも仮説や思い付きや直感を大切にしていかねばならないのに、往々にして、日本では、証明
されていない空理空論とか言って罵倒し拒絶して、本末転倒の議論になっていく傾向が強いと言えよう。基礎的な研究に
乏しいとか言われるのは、案外、こうした国民性や気質に依るところが大きいと言えよう。外国では、研究者自ら大胆に
仮説を提起して、それを解明するべく挑戦していく姿勢があるようだ。単なる現状の改良的思考に留まっている保守的な
日本とは正反対で、外国の方が実に進取の気性に富んでいると言えよう。
ところで、以前に、こうした火山活動から得たヒントを基にして、その背景を簡単に説明しながら、桜島火山地帯にお
ける前記の光線群が写った写真を同封して、「火山の有効利用における可能性に関する調査研究について」と題する某提
言書を旧科学技術庁の長官殿に提出した。その後の長官の心理を見ると、無関心な官僚と異なって、どうも真剣に読んで
興味や関心を持ったように思われる。これは、ふとしたことで巡り会った火山灰利用新素材の調査研究において、火山灰
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の優れた性質に基づくもので、いわば、それから派生して、数々の有益な物性を示す火山灰が噴出される火山自体を充分
に国家的プロジェクトとして研究してみる価値があるとの認識に立ってのことであった。
これは、先に紹介したように、「火山灰利用新素材に関する関係省庁間連絡協議会」を設置して、大々的に普及できる
数年後の時期に併せて、それから火山灰の採取、運搬、利用等の流通全般に亘る諸問題の検討を開始するべきであるとい
う確信から提言したものであった。即ち、火山灰から火山自体への研究に繋げて、国家的研究課題にすべきであろうとい
う観点に立ってのことであった。
この提言書では、まず、(1)画期的な特性を有する火山灰利用新素材が登場し、今迄にない火山灰の有益なる物性が
多く見出されて来ていること、(2)しかし現状では、このような優れた諸性質を有する火山灰を生産噴出する火山深部
の構造は、高温高圧下の環境や技術的諸問題の為に未だ充分に解明されていないこと、(3)しかもこの研究は産業の前
段階としての性格が強く、また研究課題が余りにも大きい為に、一民間や個人で研究できるものではなく、(4)従って、
科学技術庁が新政策課題として国家的研究課題として取り組まれることを祈念すると冒頭に述べた。
そして、(5)同封した写真は、ある御方が鹿児島県の桜島火山付近で、深夜、フラッシュなしで普通に撮影したもの
であり、これは普通の人が普通に撮影しても全く不可能と思われること、(6)そして私の推理では、この写真の光線群
が、火山の地下深部のマグマから放出される一種の素粒子・放射線であると思われること、(7)もしそうなら、火山内
部のマグマ溜まりやその近傍において、ウラン等の放射性物質が存在し、それによって原子核反応が生じている可能性が
強いこと、(8)そうした仮説に立てば、火山内部のマグマ溜まりから、直接に、またはある反応を通じてウラン等の放
射性物質を大量に採取できること、(9)また同種同質の物質は共存し易いことや、火山灰利用新素材の特性から、目下、
投棄をめぐって国際問題化、乃至は政治問題化している放射性廃棄物も火山灰によってうまく処理できる可能性があるこ
とを指摘した。
そればかりか、場合によっては素晴らしい性能を持った物質に転換できる可能性があること、(10)そして写真の解釈
からくる仮説を裏付けるものとして、桜島火山地帯で採れる桜島大根は、その種を近くの鹿児島市近郊で播いても、これ
程に大きくはならず、桜島大根の巨大さを説明できる者は全くいないこと、正にこの桜島大根が特別に大きいのは、桜島
特有の気候や火山灰性土壌の性質に加えて、何よりも火山の地下深部のマグマからの各種放射線照射による為と考えられ
ること等を示唆して、次のような研究課題を新政策として取り組まれることを提言した。そして、これに対して多大なる
関心を示され、それが単なる関心に終わることなく、実践への情熱に結晶化されることを祈念し、全ての面での協力は惜
しまない旨を付け加えた。
新政策に向けての調査研究の内容(案)
(1)火山構成物の総合的検討
火山灰、火山礫、地熱、マグマ、地殻構造等を有機的関連の下で、多角的に物性、機能等を解明し、総合的な利用態様
を検討する。
(2)マグマより各種金属等の抽出に向けての検討
特に、マグマ自体の構成成分、物性を分析解明して、各種金属資源の抽出に向けた有効利用性を各種実験、測定にて調
査検討する。
(3)マグマ溜まりの原子炉としての利用可能性に向けての検討
更に、マグマ溜まり自体から放出されると推定される各種素粒子、放射線の実態を多角的に分析、解明して、放出エネ
ルギーの利用可能性を各種実験測定にて調査検討する。
(4)マグマ溜まり制御に向けての新素材開発の検討
放射性廃棄物と火山灰、火山礫、その他の廃棄物を種々の方法にて組み合せて、超耐火性、超強度性、超耐久性等の優
れた各種性能を有する新素材開発に向けて、多角的な実験、試作を行なう。
以上の研究開発に向けての予算措置の概要は次の通りである。
1
火山灰、火山礫、地熱、マグマ、地殻構造等に関する各種文献、資料の収集、分析、検討等に係る費用。
2
マグマの構成成分、特性の化学的、物理的分析調査等に係る費用。
3
マグマ溜まりから放射される各種エネルギーの測定、分析等に係る費用。
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4
放射性廃棄物と火山灰、火山礫、その他の廃棄物との組み合わせによる新素材開発に向けての各種実験、試作に係る
費用。
このような提言書を提出した次第であるが、ここで紹介する火山灰利用新素材に関する多くの提言とも密接な関係を有
しており、これら二つの提言、即ち火山灰利用による新日本列島大改造の実践と、火山活動の解明を通じてマグマ溜まり
内部からのウラン等の放射性物質の抽出に向けた研究の開始という提言に関して、これらの内容、課題を国家的な立場で
真剣に検討して、そして採用されて強力に実施していかれることを祈念するとした。正に、この研究が日本の将来のエネ
ルギー事情において、極めて輝かしいものにすると確信する次第だ。
然るに、日本人の国民性では、火山灰と同様に、このマグマ溜まりに豊富なウラン等が眠っていると言った画期的な技
術的事項に加えて、国家として取り組むことの重要性や緊急性も何ら気が付くことがないであろうと思われる。恐らく、
火山灰技術に関心を示した外国の研究者あたりが、それに成功して味を占め、次なる目標として火山活動からのヒントを
得てマグマ溜まりに対する関心を抱き、あたかも、当方が行き着いた結果と同様に、マグマ溜まりの研究課題に到達して
挑戦することに成るであろうと思われる。また、気が付かなければ人類の将来に明るい未来がないことになるであろう。
37 日本人の意識改革の起爆剤に
昨今の原油高騰や景気の低迷感を反映して、国内外で、画期的な火山灰技術に次第に関心を示し目覚め出してくると言
う時代の流れを痛感せざるを得ない。これには、今回の当方の紹介も大きく関係していくものであろうが、他方では、関
係者の長年の努力が次第に実りつつあるものと思われ、むしろ自然な潮流であり、時期が来たということでもある。目下、
国内産業の空洞化も次第に激しくなってきており、失業者の数も上昇気味であり、実に国民経済は地方の末端に至るまで
破綻寸前であり、早急に実行していかねばならない必然性は高まっているものだ。恐らく、民間で火山灰技術の優れた効
果・特性に気が付いて次第に関心が高まっていけば、法制度や流通面での整備を含めて、余りにも多くの障害や施策が横
たわっており、どうしても政府の行政指導・規制緩和・新たな規制などが必要になってくることが分かってくるだろう。
正にここにこそ、国家的プロジェクトで推進する必要性があるものだ。
企業や国民の関心や動向によっては、政府の関係当局や、火山灰地帯の地方自治体の行政側も無視・傍観することもで
きなくなるであろうが、政府が学識者の鷹揚な意見を聞きながらのんびりと対応して、悠長な計画を立てていくような余
裕はないであろう。様々な問題点に関して、迅速・的確な解決策を提示していくことが要求されているものだが、果たし
て、こうした動きに上手く対処できるであろうか。恐らく、政府の関係省庁がリーダーシップを執って担当していっても、
これは大きく失敗していくであろう。何故なら、ここで当方が指摘するような国家の総力を結集した国家的なプロジェク
トに位置付けていかねばならないからだ。即ち、一省庁の一担当課の利害得失によって、単なる看板だけの国家プロジェ
クトで実施できるものではないからだ。官僚の縦割り意識や縄張り根性、省利省益、そして関係業界の利益代弁の意識で
行動して、小手先を弄した施策を展開したところで、最早どうにもならないであろう。ここで指摘したような国家的プロ
ジェクトに仕立てていける官僚や政治家は残念ながら皆無であろう。強力な政治力や洞察力、指導力を発揮できる人物で
しか実行できないであろうと懸念されるものだ。国家社会のために身命を賭して行動する、破天荒な実行力を有した指導
者に恵まれることが、今や必須となってきたと言うことである。
今後、一体どういう展開が見られるか予断を許さないが、民間主導といって、政府が何もしないで民間に委せておれば、
恐らく、打算的で利欲的な実践で、政府当局も巻き込んで、技術契約が上手く進展せずに膠着状態に陥って行かざるを得
ないことも有り得るものだ。火山灰技術の普及・促進を大々的に且つ早急に図っていくためには、国家が技術を適切な対
価で買収することが大切である。ところがこうした観点に立って、国家的プロジェクトにまで仕立て上げて、その必要性
を痛感できる者はいるであろうか。恐らく、最大の成否の鍵は、発明者に適切な対価を国家が支払って、国民全体の共有
財産にしていけるかどうかの点であろう。これなくしては、大々的で広範囲な普及・推進が不可能であり、混乱に陥って
いくだけであろう。正に、これほどの発想や実行性は全く過去にも前例もなく、国家が一民間の技術を買い上げるなどと
言ったことは、諸外国では極めて常識的に思考し行動するものであるが、出る杭は打てといった国民性が濃厚に支配し、
近視眼的思考しかできない日本では、一体誰が、その必要性を強く認識して、財政当局に強く訴えて働きかけて、公平な
立場で情熱を持って実行し得るであろうか。
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これはある意味では、我国が創造立国への飛躍を遂げられるかの試金石ともなるであろうと思われる。創造立国を目指
す掛け声だけは大きく、具体的には知的所有権の尊重であるものだが、如何せん、出る杭を打つと言った国民意識を始め、
公共工事の発注官庁の行政庁自らが知的財産権の尊重の意識に目覚めていないのが現状だ。知的所有権こそ、正に出る杭
であるものだ。この新素材技術に関する対応は、実に我国の将来の命運を決する知的所有権の在り方、創造立国を目指す
意味で、国民性変革に向けた試練ともなるであろうと確信するものだ。即ち、画期的火山灰技術の普及に向けて、国家が
強力な指導力を発揮して主導するというのは、正に、知的財産に対する模倣、盗用を厳しく取り締まって、個人の権利を
最大限に尊重していくという知的財産立国への布石ともなるものだ。これなくしては、特許権者や関係者の協力も得られ
ないし、早急で広範な普及など期待できないものだ。
これを成し遂げられる前提としては、類い希な政治力や実行力に加えて、何よりもこの技術の広範多岐に亘る経済効果、
社会的影響力を心底から理解し、経済再生に向けて、この救世主的技術に対して正しい評価を下していける公平無私の人
物でしか有り得ないであろう。真に国民の知的所有権を正当に評価し、適切な対価の下に公明正大なる技術契約を実施し
て、天下国家のために、そして国民のために正当な財産を尊重していく人物が登場して、広範な普及に役立てて国家的プ
ロジェクトにして成し遂げていくことだろう。利権や利欲、我欲、売名に凝り固まった連中では、天が味方せずに大きく
破綻していくことであろう。誠にもって、国民から要望・要求されて初めて腰を上げていく従来のような、よく言えば待
ちの積み上げ式タイプでボトムアップ型の、悪く言えば無責任で狡猾な良い所取りの摘み食い型の政治家や官僚では対応
できないであろう。正に強力な指導力を発揮して、トップダウン型の責任感・正義感の旺盛な公正な人物により迅速果敢
に対処していくしかないであろうと思われる。
ところで、発明者は、過去にも某国で某巨大施設の内壁工事や、国際空港のヘドロ処理、地盤沈下などで、火山灰技術
を提供したが、契約違反で技術を盗用していく狡猾さが目立ったが為に、それ以来、撤退したそうだが、今回も、日本政
府のとる態度が同じような結果をもたらしていくことであろうと懸念される。要するに、狡猾さが関係者の心を頑なにさ
せて閉鎖的にしていき、折角の契約も破綻させるというわけだ。今回は過去の某国の場合と異なって、最早、狡猾に盗用
したり、場合によっては無視していくことは不可能であろう。何故なら、経済的な困窮が深まりつつあるからで、のんび
りと後退するわけには行かないからだ。一旦、大々的に公開していく以上は、また、広く国民の関心や情熱に火が付いた
以上は、政府当局自体が、無視し排除したりしていくことは出来ないからだ。正に政府当局の責務が根本から問われるで
あろうと思われる。
特に、新しい火山灰技術は、多くの利権が絡んでいくことは明白であり、政府が対応を誤れば、国民が政府の指導を待
たずに、注意や制止を聞かずに勝手に走り出していくことであろう。即ち、火山灰技術が表面化し、そして政府当局が関
与していく中で、利権的な省利省益の反国民的な方策が大きく破綻する可能性もあると言うことだ。経済状況は正に破
綻・崩壊の危機に直面しており、時間が勝負であるからだ。恐らく、政府が失敗していくとすれば、その後は半ば無政府
状態、無秩序状態のまま、新技術の普及・展開が成されていき、最後には、政府権力が形骸化、無力化し、権威の失墜・
崩壊に至るだろう。政府主導の火山灰技術の普及・展開が失敗したら、その際には、責任を取るべく主役の交代が待って
いることだろう。それほどのインパクトを伴うものと展望しているものだ。これは、利権政治や天下り確保の行政に終止
符を打つ絶好の機会でもあろう。当方の目指す新しい国家社会の建設は、既得権益者が自ら目覚めない限り、その利権集
団、権力機構の崩壊がなければ不可能でもある。それを実行ならしめるための大失敗ならば、むしろ大歓迎するものだ。
実に、新しい国家社会の建設に向けた環境作りが始まる起爆剤にもなるであろうと思われる。
ところで、画期的な火山灰技術に関して、当方を熱心に掻き立てるものは、何も利権獲得でも無ければ売名でもない。
当方の当該新技術に対する関心は、既に、建設や地盤改良、廃棄物処理などへの広範な普及展開による国家経済の再生を
大きく超えて、むしろ、この機会に便乗して、新しい国家社会の建設のために邁進するものだ。このために、火山灰技術
が国民意識の変革に繋がればと言う期待が優先するものだ。画期的な技術による経済再生が、単に利権獲得の意識の再
生・復活であっては、、新しい国家社会を創生していく原動力にはならないし、むしろ大きな障害になるものだ。
多くの普通一般の国民は、新素材に対しては、単なる利権絡みでしか関心がないものであろうと思われる。例え、火山
灰技術の推進に向けて個人的利害関係で協力できても、国家的なプロジェクトの内容や必要性、緊急性を強く訴えて指摘
しても、理解も評価もできないものと憂慮するものだ。そしてこの提言を紹介しても、当方に対して協力するどころか、
逆に適当に提言内容を摘み食いし、アイデアを横取りしていく可能性が高いと言えよう。即ち、新しい国家社会の建設に
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向けて、積極的に参加し投資する情熱や関心などは、余り期待できないように思われる。これは、利権にしか関心がない
殆どの政治家や官僚にも、そして大多数の国民自身にも言えることであろう。
長年の経験から言っても、今回の提言に関し、多くの日本人は、ある程度は関心を示すものの、極めて猜疑心が強くて、
正々堂々と正面からの思い切った契約にまで至ることもないように思われる。評価よりも嫉妬や妬みが勝って、出る杭は
打つ、沈黙は金というのが大多数の日本人の国民性であるからだ。あるいは、評価するように見せ掛けながら、他人の技
術を盗み取っていったり模倣するような狡猾な面も多く、政府にしても、関係業界の利益を優先させて、権利の侵害を助
長・促進・推進していくような状況の展開になるのではないかと懸念するものだ。
むしろ、日本で表面化する火山灰技術を知った外国が最大の関心を示すものと思われる。日本よりも外国の方が、進取
の気性に富んで、優れたものは率直に評価していく傾向が強いように思われる。恐らく、外国の中でも米国当たりが多大
な好奇心・関心を持って着手していくことであろうと思われる。その結果、真剣に研究を進めて、より改良されたものを
追求していくことであろうと思われる。即ち、特許権利が抵触しない方向・方法で新しい技術を開発していくことであろ
う。
その新しい技術とは、当方がここで指摘したように、セメントを一切利用しないものであり、正に、古代エジプトのピ
ラミッドの建設に使われた可能性の高い技術であろうと思われる。現在の火山灰技術は、画期的な性能・特性を発揮する
とは言うものの、従来通りのセメントを使用するものである。ただ、火山礫の空隙の分だけ、セメントの使用量が節減で
きると言うものだ。勿論、強度向上のために、高価な混和材を多量に投入していけば、セメントを全く不要にするか大い
に減少ならしめることは可能であるが、これでは経済的、実用的、現実的ではないことは明白だ。
折角の日本発の大発明も、外国から、より一層改良された火山灰技術が登場して、日本国内で特許権を押さえられて日
本の建設市場を支配するようになっていった時には、多くの日本人が、政府の失態に気が付き、国家全体の損失に目覚め
るようになり、そして後悔の念を持って、特許の重要性に改めて教えられて気付いていくことであろう。それでも、政治
家や官僚、マスコミ関係者や学者連中には何も後悔の念など湧かないであろう。それは死活問題に直面していないからだ。
国際競争に晒されている経済界の一部から後悔が現れるであろう。その勢力こそが新しい国家社会を建設していく原動力
になっていくことを期待したいものだ。恐らくその時期は決して遠くないもので、国家の財政破綻を経た頃であろうと思
われる。今回ばかりは、火山灰普及の大失敗、国家的大損失における責任の所在を明らかにしていくようになるであろう。
それなくしては、国家の意思や責任を明確にしていく新しい国家社会の建設が不可能になるからだ。
そして、最後は、意識変革がなった日本自身が、外国からより高性能に改良された火山灰技術を大々的に購入して、こ
こで紹介した「新日本列島大改造論の確立と実践」を目指して、種々の施策を実施・展開していくことを期待するものだ。
即ち、当方の提言を無視していく中で、好奇心旺盛な技術先進国である米国あたりから、この画期的な火山灰技術に多大
な関心を示して、より高性能の火山灰技術を開発してくることが予想されるものだ。そして、日本は、当該新規特許権を
国家レベルで米国から購入し、大々的に国家プロジェクトとして遂行していくことであろう。
なお、先に今後の短期、中期、長期に亘る実践課題を提示したが、日本では、その国民性から言っても、仮に、当方の
提言に関心を示したとしても、精々が火山灰利用新素材を短期的な分野で実行することでしかないものと憂慮され、とて
も中期的な高レベル放射性廃棄物の処理や、ピラミッド建造における巨石の謎の解明、更にはマグマ溜まりからのウラン
や各種希少金属資源の抽出への、実に長期的な視野や展望に立った関心も実行力も希薄であろうと思われる。本来ならば、
希少金属資源を最も希求する資源小国で経済大国の日本が多大な関心を示すべきであるのに、日本では、海外から資源を
購入するばかりで、資源探査への挑戦やその技術も極めて貧弱であるのが残念である。
むしろ、中・長期的な課題に対しては、好奇心や挑戦意欲の旺盛な外国あたりから火の手が上がってくることと期待す
るものである。恐らく、今回の様々な提言や仮説を参考にして、米国あたりから、火山灰技術の様々な適用、特に放射性
廃棄物処理への応用などに展開させていくものと思われる。更に、これが大きく発展して、当方の提言に沿って、マグマ
溜まり内部の探査に至るまで、米国を中心として、火山噴火の原理に関する解明が大きく進んでいくものと思われる。む
しろ人類の輝かしい未来のためにも、そのように発展していくことを心より期待するものだ。米国に火山灰利用技術から、
その応用である放射性廃棄物処理の技術、そしてマグマ溜まりからの各種金属資源の抽出に関する研究の主導権を奪われ
るのも仕方ないことだ。
恐らく、今回の提言で、国家的にも経済的にも多大な利益や効果を指摘しても、内閣中枢や関係政府機関、そして国会
小山 清二 出版物ファイル
議員やマスコミ関係者、更には大学研究者の方々には、場合によっては何も関心や感動も湧かない可能性もあろう。それ
ほど、現在の日本人は正常な感覚や評価力すらが麻痺し、喪失しつつあると言えよう。新しい国家社会の建設への出発は、
正にこの火山灰技術が発火点になって、国民意識の変革を促していくであろうと思われる。
38 文明史の大転換へ(オイル文明からマグマ文明へ)
今回の火山灰コンクリートの混練製造技術から膨大な石油消費を削減して、地球温暖化対策にも有効に貢献していくこ
とが分かった。そして、後編で詳述するように、歴史上の古代文明における巨石建造物の建造に関する材料や手段におい
て、実にそれらが人造、人工のものであり、今回の火山灰コンクリート技術に他ならないものと洞察できるものだ。火山
灰コンクリートを通じて、これまでの歴史上の様々な神秘的な謎が解ってきたものだ。これは正に、人類の常識を根本か
ら変革して、広範多岐に亘る改革に発展していくであろうと予測される歴史的転換点、人類の新たな出発点におけるに相
応しいものである。
二〇世紀文明の後半において、世界のエネルギーの中核を為して来た石油文明に対して、その資源の枯渇化や価格高騰、
そして環境汚染などの面での供給の不安定さに対して、人類は今、重大な岐路に立たされているとも言えよう。石油の争
奪戦を巡る壮絶な世界大戦が到来するとしたら、その破局を回避するものは、まずは今回の火山灰新素材技術の広範な普
及を中心とする有効な石油の消費削減でしかないであろう。日本は、経済的規模で世界有数の石油消費国でもあり、しか
も海外への依存度も圧倒的に高いからこそ、多大なる効果をもたらしていけるであろう。火山灰を中心とする各種政策を
推進していくことは、世界経済の不安定な需給逼迫と言った石油を巡る混乱状況からも大きく離脱していけることにな
り、エネルギー資源の確固とした基盤を構築していけるであろう。日本の一国の利益に適うのみならず、全世界の窮状に
対しても大きく貢献していけるであろう。また、ここにこそ、日本を始め、世界の二一世紀における命運を決する鍵があ
ると言えるだろう。
ところで、日本では火山灰自体は豊富に賦存するものの、国立・国定公園法等の各種法制度の制約で有効な採取・利用
が極めて困難であるのが現状である。だが、火山灰の賦存地滞は世界中の原野や荒野、砂漠に及んでおり、実に地球上に
残された最後で最大の未利用の有効資源であると言えるであろう。例えば、中東を始め、世界の大砂漠地帯は豊富な火山
灰の宝庫であり、中国の黄砂やイラク等の中近東一帯における砂漠の砂嵐にみる微細な結晶の砂こそが火山灰である。そ
の性質から見ても普通の砂ではないことが素人でも解ろうというものだ。こうした砂漠の砂である火山灰資源の大々的な
活用から、世界経済を救済していけることは明白であろう。この火山灰である砂漠の砂の採取から搬出、製品加工、製造、
利用、そして採取後の跡地利用等で経済活性化が可能であろう。正に、画期的新素材の広範な活用により、石油争奪戦な
どでオイル文明が大きく行き詰まっている中で、全世界が原油を巡る混迷状態から脱却し、新たな文明に大きく方向転換
することができよう。
目下、世界有数の産油国であるイラクも、イラク戦争後、治安も回復できずに益々混乱の度を深めているようだ。仮に、
治安が回復されたとしても、中近東の砂漠地帯では大した産業も興り得ないのが悲しい現実だ。偶然にも豊富な石油や天
然ガス等の資源エネルギーが発見されたから繁栄を保っているものだ。この中近東経済を支えている豊富な原油や天然ガ
スが枯渇したり、代替エネルギーが成功したら一体どうなるのか。目下、イラクの経済復興支援が喧伝されているが、見
返りの原油収入を当て込んだものが殆どであるが、当該原油や天然ガス自体が果たして何時まで継続していくのか大いに
疑問である。むしろ原油・天然ガス後に経済・産業が自立していけるのか全く展望が見えてこない。中近東全域から原油
や天然ガスが無くなれば、一気に発展途上国に転落していくのは明白だ。ところが、混迷する中東地域は広大な砂漠地帯
が殆どだ。この中近東全域に対する経済支援としては、広大な砂漠地帯の再生が、世界最大の未利用資源の火山灰を活用
した画期的な新素材の広範な普及で可能になることを指摘したい。
また、既に石油後の時代を展望して、水素エネルギーの研究開発が進展しているが、実現までには、コストや安全面で
幾多の難題が横たわっており、かなりの紆余曲折が予想されるのが現状だ。将来、水素エネルギーの大々的な普及が完成
した暁には、石油や天然ガスも次第に市場から淘汰されるであろうことは明らかだが、それまでは、原油消費量の大幅な
削減が緊急課題となるであろう。恐らく、水素エネルギーの広範な普及に向けた突破口を切り開く時期は、早ければ二〇
一〇年頃にも到来するものと思われる。日本から見れば、豊富な海水中から抽出される水素エネルギーにより、日本のエ
ネルギーの海外依存から大きく解放されるであろう。
小山 清二 出版物ファイル
ところで、後編で、火山爆発の原理が、マグマ溜まりからの濃縮されたウラン等の放射性物質による核分裂反応であろ
うと思われる仮説を提示する。こうした点を実証するために、マグマ溜まりを突き止めて採取していけば、膨大なるウラ
ン等の放射性物質が得られると推察できよう。ウランと言えば、原子力発電等の利用に欠かせないものである。目下の原
子力に対する反対運動の広がりは、高レベル放射性物質の膨大なる廃棄物の処理に行き詰まっている面が大きな原因であ
ろう。こうした点での処理に対しても、今回の火山灰混練技術や火山灰の性状は、極めて有効に対処できるということも
指摘した。その結果、日本のエネルギー完全自給率の達成は、今回の火山灰利用技術によるセメント、鉄、樹脂、石材、
木材などの広範な代替製品の普及と併せて、水素エネルギー技術の確立、更にはマグマ溜まりの特性を解明して、ウラン
資源などの自主調達によるものと確信するものだ。
我国が抱える種々の難問山積を前にして、激動の国際情勢の渦中で、国家的危機に直面しつつある我国の現状を憂え、
輝かしい将来への発展を祈念する心情から、火山灰利用の新素材技術を中心にして、諸々の問題点解決への施策を提起し
て来た。石油やウランに恵まれない我国が、火山灰利用新素材を最大限に利用して石油消費節減に努め、そしてマグマ資
源の大々的な活用を目指すことは、実に画期的な文明史の転換とも言える。即ち、今日の国民経済に大きな位置を占める
石油の依存を極力減少させて、火山灰・火山礫の広範な産業分野への導入を促進させ、またマグマから地熱や放射性物質
の抽出や、放射線・素粒子、原子力の活用を図っていくことは、これまでの石油中心の文明から、火山及びその噴出物活
用の文明への転換とも言える。即ち、有機から無機へと、火山爆発に伴う火山灰を中心とした新素材の「銑テラ」の有効
活用は、マグマを源泉とする文明史の転換とも言えるであろう。実に、歴史的な偉大な新技術による社会の改革に相応し
く、「オイル文明」から「マグマ文明」への大転換と名付け得るものであろう。
この地球は実にうまく形成されており、オイルとマグマは性質的には共存しない。即ち、オイルあるところにマグマは
なく、マグマあるところにオイルはない。もちろん、オイルもマグマの高温高圧による変成作用が大きく影響して生成さ
れたものであるが、地中では両者は共存しないのは、単純に考えても、マグマの高熱により、オイルが変質し消滅してし
まうからで当然とも言える。そしてオイルとマグマの中間地域には、風化火山灰による豊かな森林、田畑、草地等の農林
地帯を形成している。
これらの三大資源は、即ち、地球上の最大の有機系資源である石油と、最大の無機系資源である火山噴出物とマグマ、
そして最大の生物系資源である農林、牧畜資源は、今後の人類の文明において等しく大切なものである。仮に石油の過度
の消費量を大幅に減少して、火山灰やマグマ抽出のウラン等による原子力が主流を占める将来が到来しようとも、石油は
その優れた粘性や高分子構造から様々な用途に最後まで不可欠な資源であり、また種々の食料資源も人類が生存し続ける
以上、共に重要な資源であることは言うまでもない。それ故に、産油国と火山国と食料国(農林・水産・牧畜国)とは、
共に貴重な資源を分かち合って、共存共栄の道を歩むことにもなるだろう。
39 世界の救世主的技術革新に
目下、世界中を席巻し、技術革新の救世主であるかのように喧伝されているIT技術であるが、ここに来て経済界から
も大きな疑問が出されてきており、IT技術に代わる大規模な技術革命が望まれるといった期待乃至要望も為されている
ようだ。確かにIT技術は世界を空間的にも時間的にも場所的にも人員的にも多大なる省略化、節減化をもたらしていき、
Eコマース、Eビジネス、Eガバメント、Eカンパニー等と何から何までも電子技術一色であり、社会の隅々にまで大変
な革命をもたらすかの状況である。ある面ではIT技術の普及や浸透で多大なる影響を及ぼしていくことは必然であろ
う。
ところが中抜き現象と言われるように、組織では中間職、流通では問屋や商社と言った存在をも省略化して不要にして
いく傾向が強いと言える。その結果は大量の失業者の発生であろう。こうして溢れ出した膨大な失業者を有効に活用して
いくような他の産業分野が存在すれば良いのだが、現実には殆ど見当たらないのが実状であろう。要するに、IT革命は、
多大なる効果をもたらしはするが、社会的な混乱をも生じさせることになるであろう。経済界からも雇用対策上、他に有
効で大規模な技術革新が登場していかざるを得ないという指摘も為され、IT革命の盲目的な推進に深い憂慮が為されて
いるようだ。
そこで当方が提唱する火山灰利用の新素材を核心とする新日本列島大改造計画の推進こそが、大々的な内需拡大を図っ
て、新たな税収増や雇用創出に役立っていけるばかりか、石油資源の大幅な節減化と共に産業構造改革にも大きく貢献で
小山 清二 出版物ファイル
きることであろう。正に、火山灰利用の新素材技術は、経済界からも要望の強い、IT技術革命に取って代わる程の新た
な産業分野と言われる新規な技術革命にこそ相応しいものであろう。そして日本のみならず、全世界に対して、失業者の
増大や石油価格の高騰といった当面する混迷状況に対して、景気活性化や資源・エネルギーの大幅な消費節減化を成して
大きく貢献していけるものであろう。その上、世界中の原野や荒れ地、砂漠における砂や礫が実に火山灰、火山礫そのも
のであることから、火山灰や火山礫の大量に存在する荒れ地や原野、砂漠の開発にも多大なる経済効果をもたらしていく
ものだ。
これぞ正しく、中世の予言者であるノストラダムスの研究者が指摘するところの技術であり、ノストラダムス自身が指
摘した今世の社会を救う画期的技術の到来ではないかと思われるのである。ノストラダムスの予言によれば、実に二〇世
紀の終わりから二一世紀の初めにかけて、世界的で画期的な技術が東洋の某国から出現し、これが全世界に波及していき、
世界経済の救世主的存在になっていくだろうと言った指摘が為されているようだ。
こうした予言の存在を見ると、今更ながら火山灰技術こそ、このノストラダムスの予言に登場する画期的な技術に相応
しいものと痛感する次第である。思えば、古代文明の崩壊と共に失われてしまった建造技術が、今ここに材料を通じて蘇
って来たものと思われるのである。不思議な歴史的因縁のようなものを感じざるを得ない。予言の存在が公表されたのが
実に数十年も前らしいが、当時であれば誰も耳を傾けるたりしなかったであろうと思われるし、実際にそうであったが、
今でこそ、IT技術が社会の革新的な進歩と同時に破壊、崩壊をも招来しかねない魔の技術革命のようでもあり、とても
ノストラダムスの指摘したように世界を救済していく革新的な技術に相応しいものとは思えない。火山灰技術こそが正に
世界の救世主的技術となるものと思われる。
現在の国内外の政治や経済、軍事などの動向、特に原油を巡る諸情勢を展望すると、次第に資本主義の行き詰まり、即
ち、世界経済の破綻が発生して来るであろうと思われる。その破局回避に向けて、この火山灰技術が正しく国家的プロジ
ェクトとして浮上し実践していくとしたら、その時期は、恐らく、二〇〇六、二〇〇七年頃であろうと思われる。それ以
降ならば、既に時間的に間に合わず、歴史の闇に消えていくか、大混乱の状況下で揉みくちゃにされていく可能性もある
と言うことだ。そこに至るまでには、日本の国家社会も大きく行き詰まって破綻し始め、また世界の経済が破綻しかけて
いることが必至であろうと思われる。何故なら、そういう緊急非常事態が発生しない限り、注目を浴びたり関心を呼び起
こしていかないのが常だからだ。そして多くの国民から、特に経済界あたりから、もっと早くから正しく実施しておけば
良かったという後悔の声も聞こえてくるようだ。誠に残念ながら、そうした破局や失敗を経由しないと国民意識の変革も
有り得ないであろうし、また、日本の根本的な改革も実践できないからだ。恐らく、画期的な火山灰技術が何らかの引き
金となって、国家社会に大きな影響を及ぼして国民意識を変革し、また歴史的大転換の流れを促進させて、日本から新し
い時代に向けての改革が浮上してくるであろうと思われる。その時期は恐らく二〇一〇年頃からと思われる。
なお、今や一部の有識者の間では、二〇一二年一二月二三日に太陽系全体が、宇宙における超電磁波帯のフォトンベル
トに突入すると言うことが指摘されている。それによると、コンピューターなどの電子機器の故障から、人間の脳波や脳
細胞、意識にも大きく影響を及ぼし、場合によっては、人類の文明史の飛翔、人類の意識の覚醒になるものと指摘されて
いるようだ。なお、アカデミックの世界では、とんでもない荒唐無稽として、一笑に付しているのが実状だ。しかしなが
ら、何も二〇一二年を待たなくても、二〇〇〇年に入って以来、既に太陽系の一部はフォトンベルトに突入しているもの
だ。その結果が、最近、頻りに発生している地球規模の異常気象であろうと思われる。
このフォトンベルト現象は、今から一万二〇〇〇年前に滅亡したムー、アトランティス、レムリアなどの超古代文明の
崩壊などに照らし合わせて、同じ現象の到来であると警告され認識されているようだ。この太古地球文明の崩壊の真の原
因や背景も、詳細には解明されているわけではないが、やはり、フォトンベルトにも似た宇宙的異変、天変地異の側面が
あったものと思われる。そして後編でも指摘するように、この地球規模の火山の大爆発にも似た天変地異の背後には、人々
の邪悪な想念波動の蔓延があったもので、それが地殻内部の物理化学反応を誘発したものと思われる。先に指摘したよう
に、日本から始まると思われる歴史的な改革が、二〇一〇年頃からとなれば、このフォトンベルトによる破局の回避にも
何らかの関係をもたらしていくものと思われる。
終わりに
今正に世界は、資源・エネルギーを巡る価格高騰化や枯渇化、環境問題などで歴史的難局に直面しつつあると言えよう。
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特に、石油や鉄鉱石などの主要資源の殆どを海外に依存する日本にとっては、二一世紀国家の命運を決する死活問題であ
ろう。こうした厳しい状況を背景に、亡国への危機を回避し、国家的基盤の強化から経済の活性化を図って、新しい日本
の二一世紀の将来を切り開いていくに当たって、一国民の立場から、歴史的・画期的な技術を紹介し、それに基づいた提
言をなす責務を痛感するものである。特に我国を取り巻く資源・エネルギー情勢に関する観点を中心に、実に国家的見地
からの種々の打開策を目指した政策展開に関する建白として提起するものである。
山積する複雑な諸難題の解決に際して、ここに展開した諸施策を一括して、国家の総力を結集して強力に推進していっ
てこそ、多大な国家的利益を得るものであり、個別選択的な関心や採用による摘み食い的な実践では、最早、激動の国内
外の諸情勢に対して、適確且つ機敏に対応していくことは不可能と思われる。この身命を賭して提出する建白に対して、
国民各位各層全体が、何らかの態度決定を迫られ、判断、決断を要求されていくものと思われる。今や、国家自体のみな
らず、国民自身が各々の立場で何らかの岐路に立たされ、難局突破の為の勇断を迫られているものと思われる。正に、こ
の建白は、今後の日本の進路に向けて、国家的明暗を決していくものと思われる。限られたスペースと、また直接の権力
と権威、また責任と義務のある政治や行政の担当者、また学術的研究者でもない為に、これ以上、詳細に種々の施策内容
や研究内容を陳述し展開することには限界があろうかと思われる。それでも、国民的関心や政府当局の役に立てばと思っ
て、利害得失を越えて基本的な分野及び事項は、可能な限りに亘って言及して来たつもりである。
ところが、果たして当方のこうした心情や立場からの提言に対し、一体どれほどの関心と理解を持って、広く国民全体
に迎え受け入れられるであろうか。即ち、国家が主導して実践するという必要性や重要性、緊急性に関することである。
この提言の内容を実践して国家的難題を解決していくに際して、広く国民全体の叡智を結集していかねばならないが、こ
れまでの経験や行動から考えると、猜疑心旺盛で無関心な日本人の国民性、そして国益観を喪失した政治家や官僚などの
政府当局の姿勢などでは、なおも傍観者的態度を取り続けていくことも十分に有り得るものだ。即ち、日本国政府及び日
本国民が総力を挙げて、この建白を無視し拒絶する場合もあろうと危惧するものだ。
それでも、現下の状況を考えると、最早、古代技術の解明にも繋がる画期的な火山灰利用新素材技術が、このまま悠久
の歴史の中に埋没していくのは有り得ないことだろうと思われる。それほど資源・エネルギー問題も、また景気や環境問
題も一段と深刻さが急迫してきたからだ。今や、既得権益団体が抹殺していったり、政府当局が否定し無視、抹殺し排除
していくことは最早時代の趨勢からいっても無理になってきたようだが、危機感がない国民全体の無関心や政府当局の不
作為の場合も有り得るものだ。
しかし、この提言に対して、従来通りの甘い感覚で、即ち、無視や盗用などの邪悪で猜疑な精神で対処していけば、そ
の因果が自らに跳ね返っていき、自業自得の結果をもたらし、大失敗に繋がっていくものと思われる。正に、画期的な新
素材技術の国家的レベルでの普及促進による新しい国家社会の建設に際しては、利害得失の打算や、利権追求の利欲を乗
り越えて、個人の権利の尊重を始め、正しい心魂で成していくことが大切だ。この対応を誤ると、実に、既存システムの
崩壊破綻、権威や権力の崩壊・失墜・形骸化が成されて、主役交代に至ることも有り得るものだ。実に、今回登場した画
期的・歴史的な火山灰利用の新技術に対する対応如何によっては、巨大火山の大噴火と同様に、国民意識や権力機構を大
きく根幹から変革していく起爆剤・噴火剤・原動力となっていくであろうと思われる。皮肉にも、既存意識が破綻して国
家社会の崩壊に結び付いていってこそ、国民意識の変革に至るものであろう。
万一、政府当局を始め日本国民全体が無関心や無視の対応に終始した場合には、世界的且つ歴史的な大損失を招来する
ことになるものと思われるが、こうした由々しき状況を憂慮して、この建白の内容は、広く海外にも伝播され、世界的な
関心を呼び込んでいくことを祈念したい。それほど、内容が単に日本一国の利害関係に留まることなく、広く全世界の窮
状を打開する画期的なものを含んでいると自負するからだ。すなわち、ここに提起し展開した種々の内容、即ち、火山灰
の有効利用や放射性廃棄物の処理への対応、更には、マグマへの挑戦へと、幾多の強力な実践等の国家的推進は、日本一
国の利益を超越して、全世界に対して多大なる利益を提供して、我国経済の再生に向けて多大なる貢献をもたらしていく
ものと期待するからだ。また、その為の適切に効果的ならしめる指針と規範を提示しているものと確信するからだ。
さて、火山の大爆発によって、一時的には種々の災害や被害を伴うものの、中長期的には、噴出した火山灰は、地球を
駆け巡って世界中に降下していくことになる、そして、火山灰は、適度の風雨・光熱等の気侯風土の下で、様々に溶脱・
風化・変質して、工業や農業等の種々の分野で活用されて多大な利益を持たらすようになる。これと同様に、火山に魅せ
られ、火山灰・マグマに熱せられて、そして火山国を想い、火山灰国土を愛する心情から提起するこの建白も、一時的に
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は、某国民・某省庁・某団体・某組織の利益に反するものかも知れないが、時間の経過と共に、思慮深く暖かい慈愛に満
ちた人々の心からの御支援と御協力によって、検討を重ねられて充実したものに結実し、この日本国家・国土を始め、世
界中に多大な利益を持たらすものと確信し祈念するものだ。火山の大爆発による災害も忘れた頃にやってきて、周辺地域
を驚天動地の轟音に巻き込んで、噴出した大量火山灰が全世界を覆って撒き散らしていくのと同様に、この提言が国内を
始め全世界に向けた意識変革の起爆剤になるであろうことを心より祈念し期待するものだ。
ところで、ふとした偶然からこの画期的な火山灰技術を知って、それ以降、随分と時間が経過したが、発明者や関係者
の行動を邪魔しないようにと、事業に参加することもなく、静かに傍らから見守っていた。ただ惜しむらくは、もっと早
くから、当方を全面的に信頼して心を寄せ、当方を中心に展開しておられたならば、今頃は大々的に普及していたであろ
うと思われる。当方を脇役において、敬遠しておられたことが、案外、幾多の邪魔を招き寄せて妨害されていったのでは
と懸念されるものだ。それでも最後に、周囲から指摘された特許取得の必要性を自ら痛感・納得されて、最終的に技術改
良された段階で出願されたようだ。
残念ながら、この国家的プロジェクトは、発明者や関係者にも教えられないものであった。何故なら、国家プロジェク
トに対する理解と関心がないばかりか、下手すれば、当方がアイデアを盗用するのではないかという嫉妬や妬み、猜疑や
疑念を生んだり、また、逆に、当方を差し置いて、協力するどころかアイデアを盗用していく懸念があったからだ。当方
に全面的に心を寄せて、当方を中心にまとまっていたならば、当方も協力して大きく発展できたものと後悔される。しか
しこれも運命であったものと思われる。
聞くところによると、随分と長い間、発明者や関係者は、周囲の多くの日本人を相手に、大変難儀をされていたようだ。
即ち、画期的な技術に対して、先入観に囚われて無視したり、また関心を有しても、正面から正々堂々と契約することも
なく、傍らから技術を狡猾に盗用したり模倣したりする日本社会の風潮に、大変な苦労をされておられたようだ。これこ
そ、日本人特有の無関心や無感動の国民性、他方では、嫉妬や妬みの強い国民性を反映しているとも言えるものであった。
そんな折り、次第に周囲の理解と関心が高まっていく兆候が現れてきた矢先に、発明者が病で倒れられたと聞いた。そ
の後、長い間のリハビリの末に、ようやく意識が明瞭に回復したとは言え、従来通りのような自らの自由な行動には、多
大な支障を来していったようだ。それでも、他人の車の運転で、何処にでも自由に移動できたり、周囲への技術指導には
何ら障害となるものではなかったし、知能はしっかりしていたようで、当方も将来を期待していたものだった。それでも、
頭の片隅に、万一のことを考えて、画期的技術の前途を心配していたことも確かだった。
そんな状況の中で、この技術に基づく国家プロジェクトの提言を、如何なる方法で世に出そうかと思っていたが、奇縁
での投稿が、審査を経て奨励されて出版することになった。その後、精神的にも元気であった発明者が、二〇〇五年三月
末に急に亡くなられたのを二カ月以上も経ってから知った。思えば、不思議にも、原稿の投稿後の一〇日後であった。そ
の時に、まずは脳裏を横切ったことは、これで画期的技術も、歴史の闇の中に永遠に埋没していくのかといった不安と失
望であったが、その後に、特許権は遺族に継承され、技術の実行は友人の清水長太氏に継承されて、技術の実施には何ら
支障のないものであることを知り、予定通り、出版することを決意したものだ。
今から考えると、発明者の突然の不幸によって、火山灰技術の大々的な普及に向けて、後継者の友人の清水氏と主役が
大きく交代することで、即ち、権限が、研究中心の発明者から、ビジネス感覚優先の後継者に全面的に委譲したことで、
一段と広範な実施が可能になっていくようにも思われる。逆にみれば、発明者の研究中心の姿勢が、事業化に大きく後れ
を取っていたとも思われる。
また、当方にとっても、火山灰技術の大々的普及に向けた原稿の投稿と、発明者の思惑が、運命的に入れ替わったよう
に思われる。即ち、一個人の利益追求による立場から、一挙に、国家的プロジェクトによる推進へと、状況が大きく運命
的に転換していくように思われる。最近の発明者の気持ちも、次第に、様々な法制度的制約から、個人として実行する限
界を感じていたようにも思われる。発明者にも、次第に、国家主導の必要性を痛感させ、当方をして、啓蒙普及に向けて、
後を宜しく頼むとの意識が働いていたように思わざるを得ない。後継の清水氏も、当方の利害得失を超えた公平無私の国
家的プロジェクトとして推進するという見解には、多大な理解と信頼を寄せて下さっているようにも思われる。それに、
見えざる神仏も、そのような時期が来たと判断し、当方に、大々的な普及に向けて、出版へと誘導したのかも知れない。
この出版を契機に、改めて発明者の岩瀬嘉市氏の画期的な歴史的業績を讃えると共に、今後の広範な普及発展を期すこ
とをお誓い申し上げ、世界に大きく貢献できる日の来ることを祈念したい。そして、これが何よりも、長年、火山灰一筋
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に刻苦勉励され、艱難辛苦され、孤軍奮闘されて普及に努めてこられて、目的達成を前に、志半ばにして、不本意にも病
で亡くなられた岩瀬嘉市氏の御霊に対して、最大の慰謝と供養になるものと思う。当方も氏の画期的な技術より、色んな
ことを教えられて、多大な興味と好奇心をそそられ、大変有意義な人生の一齣であったものと感謝しているものだ。今は
亡き岩瀬嘉市氏の安らかな冥福を心からお祈り申し上げると共に、この本を氏の御霊に捧げるものである。
後編
火山灰及び火山に関する考察
はじめに
今回登場した火山灰利用の新素材は実に多様な特性を有している上に、広範多岐に亘って多大な効果をもたらすもの
で、様々な分野に適用されて画期的なインパクトを提供するものであろう。実に、世界史の中でも特筆されるに値するほ
どの技術革新や産業構造の大変革にも繋がり、人類史上においても大きく貢献し得るものと成るであろう。また、一方で、
無知蒙昧の頑迷で固陋な有識者の意識を根本的に変革していく起爆剤にもなるであろうと確信する次第だ。
さて、こうした画期的な新素材の中核を成す火山灰の特性の解明をすることは当然に要求される課題であろう。即ち、
火山灰の特性を探求し、国内外における火山灰の分布地域、そしてその火山灰を生産する国内外の火山の分布地域を紹介
していく必要性が出てきた。実に、新素材原料の火山灰の分布地域や火山地帯が全世界に広がっているのかが解るであろ
う。
また極め付きは、そうした天然火山灰が、実は時間の経過と共に、その地域特有の気候風土により次第に風化して天然
の肥料となって世界的な大穀倉地帯を形成していることや、また、地球環境破壊の代表格である砂漠の砂が実に火山灰で
あり、その火山灰が地球上に残された世界最大で無尽蔵且つ天然の未利用資源であるということを指摘しておこう。こう
した発見は未だ誰も成し遂げていないものであろう。誠にもって、この砂漠の砂が天然火山灰であるという指摘は世紀の
大発見に値するものであろう。もっとも、砂漠の砂といえども、周囲からの雪解け水による洪水や土砂崩れなどにより、
普通一般の岩石が風化した砂や瓦礫と混入して解らなくなっている地域もあり、そこが専門家でも容易に思い付かない盲
点であるのも確かである。それに砂漠付近に火山が直接に存在しないのも、理解に苦しむ盲点となっているようだが、微
細な火山灰が風によって飛散しやすいという性質や、断熱性に富富んだ特性などを考慮すると、正に目からウロコのよう
に、通説や常識を越えた世界的大発見であることが理解出来るものと思われる
また、火山灰を噴出する火山がもたらす影響には短所と長所の両面があり、それら両面の紹介を通じて、実に、降下火
山灰や火山噴火活動自体において、多大な災害面ばかりが強調される嫌いがあるが、一方では、火山灰や火山活動による
恩恵の方が遙かに大きいと言うことも指摘し、火山灰や火山の有する特徴を様々な観点から提示しておこう。
そして歴史的に見ても、こうした火山灰の有効な特性は、案外古代においても広く知られていた痕跡があり、古代ロー
マ帝国の現存する遺跡建造物は、火山灰利用のものとして当然に記録文献上も知られていた。しかし、当時の火山灰コン
クリートは、ローマ帝国時代において発明されたものではなく、何とその古代ローマ時代より遙か以前から継承されてき
たものであり、巨石建造物の代表格である古代エジプトのピラミッドにおいても、その原料に火山灰が用いられていた可
能性が高いことも指摘しよう。これも実に歴史的通説を根本から変える画期的な発見であろう。実に失われた超古代の歴
史上の微かな記憶を求めての旅にも案内しよう。ここでは火山灰利用の巨石における材料面に関してしか紹介できないの
が残念であるが、この巨石建造に際しては魔法、魔力が行使され、超古代文明の滅亡に影響を与えたことを指摘し、実に
人類の魔の想念波動の結果が地球的災害をも招来し、技術の開発や普及に際しても、正しい想念が大切であることに警鐘
を鳴らしておこう。
さて、火山灰や火山の特性をはじめ、火山灰の新たなる応用分野の開拓、そして、その火山灰、火山礫を生産する火山
という天然の生産加工工場での製造過程やその生産原理等の解明、更には、生産の中心に位置するマグマ溜まり内部への
探求に向けた挑戦をし、大胆な幾つかの仮説を展開していくものである。即ち、マグマ溜まりは天然の原子炉であり、火
山の噴火は実に、マグマ溜まりにおける天然のウラン等の放射性物質による核分裂反応の結果によるものであり、マグマ
溜まりこそはウラン等の放射性物質の宝庫であり、火山自体やその周辺からは地上に向けて天然のある種の放射線や素粒
子、特に最近発見されている地球ニュートリノが照射されているのではないかと言った仮説である。これも、世界の常識
を打開する歴史的な大発見に至るものではないかと期待するものである。
こうしてみると、実に火山国日本は、天然火山灰の宝庫であると同時に、それらを大量に生産する天然の原子炉を数多
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く抱えている故に、正しく、世界最大の資源エネルギー国に大転換し得る可能性も出てきたようだ。即ち、火山の地下深
くからのウラン等の放射性物質の採取を国家的プロジェクトとして実践していくことによって、石油消費量の大幅な節減
に加えて、海外依存の高いウラン等の原子力エネルギーを国内生産による入手が可能になっていくことであろう。
しかしながら、火山国といった特徴は何も日本独特のものではない。米国やロシアやその他の国々も日本以上に豊富な
火山に恵まれた火山王国である。これらの火山灰や火山に関する諸計画は、傍観者的で無関心な日本国政府や企業、学者
や官僚達よりも、案外、海外から関心を示して、研究に着手して成果を勝ち取っていくことに成るのではないかと思われ
る。この成否如何によっては、多大な後悔や国家的損失と共に、日本国民や政府当局の意識改革にも繋がっていくものと
密かに期待するものだ。
この火山灰や火山活動の特徴、そしてマグマ溜まりの解明を通じた新たな文明史の大転換は、正に、これまでの石油多
消費の産業を中心とする「オイル文明」から、火山灰を中心とした天然資源活用の新たな「マグマ文明」への大転換に成
るであろうと確信する。しかし、当方は何も個人的利益追求に汲々とするものではない。国家社会の利益を最大限に優先
させて模索するものであり、その火山灰普及の過程を通じて、既得権益が復活し、邪悪な想念が蔓延することになれば極
めて不本意である。むしろ、反対に既得権益に拘泥する悪徳権益者の一掃、崩壊を期待し、国民総懺悔を図って意識の総
変革を志向するものだ。そしてこれが、新しい国家社会の建設に向けた起爆剤となっていくことを祈念するものだ。
第1章 火山灰の特徴と作用効果
1 火山灰の特徴
火山灰に関して、既に多方面から様々な方が分析をしているが、中でも特に詳細な解明をしているものとして、旧ソ連
の研究者達の「水-地球の彫刻家」(S・グリゴリエフ、M・エムツェフ共著 中山敬一郎、平山次郎共訳 昭和五五年
五月五日 共立出版株式会社発行)の本がある。それを一部参考にして火山灰の特徴を説明する。
まず火山噴出物には、各種の化合物やガス、水蒸気、元素等があり、それらは、火山という一種の天然の化学工場から
の生産物である。火山内部においては、複雑で様々な化学反応が行なわれていると想像されるが、火山噴火に伴う化学作
用と共に、未だ充分に解明されてはいない。普通、化学工場の物質生産工程における化学反応には三つの要因が存在する。
即ち、一連の反応過程における一番始めの入り口での原材料と、途中の反応工程の条件と、最終生産物の三要素である。
ところが、火山内部は非常に高温高圧であり、火山作用の中ではっきり知り得るのは、火山より放出されるガスや蒸気、
灰、塵、砂、礫、そして溶岩等の最終生産物のみである。人工的に管理された化学工場と異なって、火山の場合は、途中
の過程は全く解らない。
火山噴火に当って、地下深部で、どのような初成物質である原料が、如何なる化学反応過程を経て変化生成し、そして
地表上に放出して来るのかは推測するしかない。最終生産物の種々の構成や性状を分析しても、複雑な地球内部の構造か
らすれば、必ずしも初成物質と同じ成分や性状であるとは限らない。これには、地球内部の構造や内部の様々な物理化学
的作用から総合して検討を加えていかねばならない。
さて、火山爆発の際には、地下深部から高温で大量の水蒸気流によって、火山礫、火山砂、火山灰、火山塵等が噴出し、
最後に一〇〇〇℃程の溶岩が流出してくることが解っている。溶岩や火山灰等の地上に放出された火山噴出物の中では、
火山灰等の粒状物質は八割余りに達している。それほどまでに火山灰の量が圧倒的に多いのが事実である。なお、火山礫
から火山塵へと分けるのは、色、形、化学組成等に関係なく、単に大きさの粒径上の分類であり、構成物質や性状は考慮
していない。一応、粒径の微細なものから順に、火山塵、火山灰、火山砂、火山砂利、火山礫、溶岩等へと分類されるも
のだ。
ところで、火山灰は、直径数ミリの複雑な不整形をなす様々の大きさの粒子から成り、中には空中に浮遊するものもあ
る。そのような微細な火山灰は、空中を長い間漂流し、時には、高度八〇〇〇メートルから一万メートルくらいの成層圏
にまで達して滞留し、完全に落下するまでに地球を何周もすることがある。火山灰は、その粒径や比重等によって、落下
に至るまでの時間や落下地域も異なり、また長く空中に留まることによって、その化学組成も変化する。即ち、噴煙が火
山から風下に向かって遠去かるにつれて、運ばれる火山灰の粒径が次第に微小になり、火山灰中のマグネシウムやカリウ
ムの酸化物の含有量、更に化学組成も一層変化する。
そして火山灰粒子は、極めて複雑な構造をなしており、その非常に薄い表面膜は、選択的吸着性が高く、まるで磁石の
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ように集中して、様々な化合物を吸着する。火山噴火に伴って、噴煙中に放出される化合物は、原子、陰イオン、陽イオ
ン、各種化合物等と様々であり、火山灰も、それぞれ性質が異なって一様ではなく、化合物の吸着にも選択的である。一
般に、微細な火山灰は正電荷をもち、硫酸イオンや炭酸イオンをよく吸着し、またより大きな粒径の火山灰は負電荷をも
ち、塩素イオンをよく吸着する。そしてカリウム、ナトリウム、マグネシウムのイオンを吸着する火山灰もあり、特にガ
ラス質の火山灰は、鉄、マンガン、リン、イオウを取り込む傾向がある。更に火山灰の薄膜の中には、チタン、マグネシ
ウム、マンガン、ニッケル、バナジウム、タリウム、銅、クロム、ストロンチウム、ジルコニウム、ウランといった元素
が蓄積されている。
以上のような説明であるが、最終生産物である様々な火山噴出物の中でも、特に興味ある有用な特性の火山灰の特性に
ついては、様々な事例を挙げて後で考察することにする。また、火山噴火の初期段階では、特に圧倒的に多くの水蒸気が
放出されることが知られているが、これらの大量の水が、一体どこから持たらされ、それらが初成物質の形成や火山爆発
にどのように関係して来るのか、そして火山作用における地球内部の原理的な考察に関しても、後ほど別に紹介する。
さて、世界中に火山灰が存在するとは言うものの、その特性や性状は地域によって実に様々である。我国を始め、島弧
の火山から噴出される火山灰は、珪酸分(ガラス質SiO2)が多くて一般に酸性質(安山岩質)と呼ばれている。そし
て粘性度が高くて、噴火に際して、爆発的に溶岩を流して噴出量も多い。これと対照的に、一般に大陸塊や大洋の中央部、
例えばハワイ島などの孤島の火山から噴出される火山灰は、珪酸分の割合が少なくて、ソーダ(Na2O)やカリ(K2O)
の割合が多くてアルカリ質(玄武岩質)と呼ばれている。また噴火も島弧の火山とは全く対称的である。
そして我国の代表的な大火山灰地である九州南部の火山灰(シラス)についてみると、某調査では、シラスを結晶質鉱
物、火山ガラス、軽石の三つの鉱物組成に大別した場合、粒径二~〇・三ミリのものは火山ガラスを七〇~九〇%も含ん
でおり、微粒分の殆どがガラス質であることを示している。そして当地域の火山灰(シラス)の化学分析では、SiO2
が極めて多く(七四%)、次いでAl2O3(一四%)、Na2+K2O(六%)、Fe2O3+FeO(二・三%)、Ca
O(二・七%)となっており、他にMgO、TiO2、MnO、P2O3が含まれている。そしてシラス軽石等の可溶部分
の分析結果から類推すると、この多量のSiO2のうち、反応に富んだ可溶性部分は二五~三〇%であると推測されてい
る。
なお、火山噴火によって火山灰が放出されると雷光がみられることがある。これは、噴煙の下方に負電荷をもった大粒
の火山灰粒子が、そして上方には正電荷をもった小粒の粒子が集合して、噴煙内部や地面との間にある空気の絶縁が破れ
る為に発生する火花放電により起ると考えられているようだ。しかしながら、後で指摘するように、火山灰が何らかの放
射性物質と関係していると思われるので、案外、そうした火山灰に含有される特殊な素粒子や放射性物質が原因であるの
ではないかと思っている。
2 火山灰は風化して天然の肥料となる
天然の火山灰は極めて吸着性に富むことにより、様々な金属イオンやガスを含有して降下して来る。火山の爆発の際に
も、大量の水蒸気の他に、二酸化炭素、窒素、硫化水素、二酸化イオウ、塩素等のガスが放出され、火山灰の性質ごとに
様々な物質を選択的に吸着する。火山噴火後に、火山灰が降下した直後やしばらくの間は、火山灰はこうした有毒な金属
イオンやガスの為に、農作物や森林を枯死させる極めて有害な物質であることはよく知られた事実である。それ故に火山
灰利用新素材に係る工業的利用には何ら差しつかえない有用な火山灰も、農業や林業の分野における利用には、有害な物
性故に、正に毒物以外の何物でもないのが周知の事項である。
しかし、火山灰は降下して堆積して、その後、長い年月を経てくると、アルカリから酸性に変わり、その地域特有の気
候風土により、次第に風化して様々な特性を発揮して来る。即ち、雨水や太陽光線・熱、そして雪や霜などの物理化学的
作用や、微生物や虫や様々な動植物等の生物的作用により、次第に火山灰に含有された有毒物質も毒性を緩和したり洗浄
したり、また駆除されたり、更には別の組成物質に変化して来るのである。
それ故に、多くの火山灰地では、適切な気候風土の下で、長い年月の後には、草木が生い茂る肥沃な土壌に変ることが
多い。地域によっては全く不毛の土地から、緑が生い茂るジャングル地帯にまで変貌してしまう場合も決して少なくない。
これは、実に火山灰が風化変質して、その中の有効な肥料的成分を現出して来たものと思われる。即ち、長い年月を経過
していくと、旧い火山灰地帯では、肥沃な表層土壌を形成して、時折、特有な野菜、果樹、穀物、森林等の豊かな地域が
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見られる場合が多い。例えば、大根、ブドウ、リンゴ、ジャガイモ等だ。その地域独特の降下火山灰の成分や性質、そし
て様々な気候、風土の相違により、変質した火山灰の性状も異なり、肥料効果も農作物や森林の種類ごとに、地域的にも
千差万別となるようだ。目下のところ、火山灰が如何なる条件や作用により、如何なる物質に変質し、それがどういう原
理によって肥料効果を持たらすのかは、残念ながら詳細には解っていないようだ。
さて、農業や林業に、様々に肥料的性質を異にする火山灰であるが、特にその肥料効果に影響を与えている要因として、
窒素が関係しているのではと思われる。即ち、火山灰が火山から空中に放出されて、空中を漂流して落下して来る間に、
地殻内部や空気中の窒素を極めて有効に吸着するのではないかと思われる。降下した直後やしばらくの間は、他の有害物
質の為に、森林田畑の植物に多大な損傷を与えるが、次第に風化して来ると、吸着された窒素が有効に働いて多大な肥料
効果を持たらすのではと思われる。なお、植物は肥料が強すぎても枯死するのであり、窒素肥料も適度に薄められてこそ、
真の効果を発揮するものと考えられる。正に、火山灰によって植物が枯れるのは、単に火山灰が有害物質であるからとい
うことではなく、逆に肥料効果が強すぎるためという場合も多いと思われる。我々は、経験上、植物に大量の肥料を与え
すぎる時にも、枯れることが多いことを知っている。
それ故に、火山噴出口から距離的に遠去かるにつれて、そして火山灰の降下堆積した期間が長いほど、更に適当な気候
風土によって、天然火山灰の風化物の成分濃度が希釈化されて、次第に肥料効果を発揮していくことも多いようだ。主と
して窒素系肥料として、肥沃な土壌に大地を形成していくものと思われる。正に、現在の人工的な空中窒素固定法による
窒素肥料の製造が、大自然界でも、火山灰を通して行なわれているものと想像される。これは火山灰の有する吸着性によ
るものかと思われる。即ち、火山灰が空中を浮遊して落下してくる際に、空気中の窒素を吸着して固定し、大地に降下し
てくるときには多大な窒素肥料効果を運んでくるものかと思われる。
なお、これと同様な原理として、大自然界における空中窒素の吸着固定を通して、大地への窒素の還元は、空から降っ
てくる「雪」にも言えるのではないかと思われる。即ち、雪も火山灰と同様に、極めて微細で複雑な結晶をしていて、吸
着性に富んだ物性と考えられている。その為、雪が空中から落下して来る際に、空中の窒素を豊富に吸着して取り込んで、
土壌に肥料効果を持たらすものと思われる。その根拠として、我国の稲作は、太平洋岸地域よりも日本海側の雪国の地域
が米の単位当りの収量が高いし、特に豪雪の年には、豊作であることが多いと言われることである。裏日本海の積雪地帯
では、一年に一回しか米の収穫をしていないが、四国の高知などの三毛作の米作地帯での米の収穫量よりも遙かに多いの
である。これらは、日本海側特有の夏期の高温多湿といった気候風土もさることながら、日本海側に多量に分布している
緑色凝灰岩といった風化火山灰が、米の生育に特に効果的なことに加えて、多量の雪から持たらされる窒素等が影響して、
豊かな稲作地帯を形成しているものと思われる。
そして、雪が、植物のみならず、動物等の生命体全般に対して極めて有益で、活動力の源泉ともなっていると思われる
ことは、雪融け水の効用を見てもある程度解る。降雪を通して土壌に染み込んだ雪融け水は、その吸着性により、土中の
豊富なミネラルを吸着しているものと思われる。それ故に、長い冬が終って植物の繁茂も未だ乏しい時に、冬眠から覚め
出た動物に躍動を漲(みなぎ)らせ、そして植物に生命力を吹き込むのは、実に清々しい春の太陽光線もさることながら、
新鮮な窒素や酸素等を空気中から吸着固定して多量に含んだ雪融け水も、空気中、そして土中からの豊富な物質の吸着を
通して多大な影響を与えているのではないかと思われる。
実に、大自然界は、火山灰や雪や、その他様々な原因によって、窒素を始め種々の物質が大循環を繰り広げているもの
と思われる。火山灰は、正に天の神仏が与えてくれた地球上の最後で最大の未利用資源であり、ここで提起した火山灰利
用の新素材の今後の様々な研究、開発、応用等によって、新たな歴史の展開を促進させていくことであろう。
3 火山灰風化物の様々な利用
天然の火山灰が適当な環境条件の下で風化して変質したものの一つに、ゼオライトという物質がある。このゼオライト
は、以前より無機工業原料の一つとして脚光を浴びているものであり、火山灰の風化した「沸石」として総括される一群
の鉱物である。ゼオライトの主要化学成分は、SiO2、Al2O3、CaO、NaO、K2O、H2O(珪素、アルミニウ
ム、カルシウム、ナトリウム、カリウム等の酸化物と水)等であり、天然火山灰の構成成分と極めて類似し、火山灰の一
部の成分が溶脱したり変質したものであろうと思われる。そして比較的低温度で加熱することによりガラス化し、更に多
量の水分を放出することにより発泡状態となることは良く知られている通りである。
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ゼオライトの分布は、我国の場合、第三紀中新世の時代の比較的活発な火山活動によって噴出し堆積した凝灰岩の分布
地域と一致しているようだ。そしてこの凝灰岩層に対する様々な物理的、化学的、生物的作用がゼオライトの生成に大き
く寄与していることは事実である。即ち、現在のところ、良質のゼオライトの分布として、東北地方、日本海側に広く分
布する緑色凝灰岩地域(グリーンタフ)があることも周知の事項であろう。また世界的に見ても、火山灰が様々な風化作
用、続成作用を受けて変質したものである故に、アメリカ南西部の砂漠地区やアフリカ東北部の大地溝帯、そして東ヨー
ロッパやその他の世界全域の火山灰分布地域に及んでいるようだ。
なお、ゼオライトの特性としては、某研究者により、(1)沸石水を持ち多量の水分を保持する、(2)比重が比較的
小さく、且つ脱水物は大きい空隙をもつ、(3)陽イオン交換性をもつ、(4)分子サイズの空洞をもち、ガス吸着や吸
湿作用を行う、(5)触媒作用をもつこと等が指摘されている。そして、これらの特性に基づいて、様々な利用が検討さ
れ実施されている。この火山灰の風化してできたゼオライトの特性も、実に地方独特の気候や風土により、様々な性質の
変化があるようだ。
このゼオライトは、目下のところ、その利用分野は、例えば、(ア)製紙用ソフトクレー(充填材)、(イ)ガス体の
分離剤(酸素と窒素の分離、SO2ガスの吸着)、(ウ)脱湿剤、(エ)イオン交換体(各種廃水の処理)、(オ)土壌
改良資材(土壌性質の改善と窒素肥料の保持力の増強)、(カ)粒状肥料の固結防止材(粒状肥料の被覆による吸湿防止)、
(キ)家畜飼育用(悪臭の処理、糞の脱臭・乾燥、廃水の処理、飼料に混入)、(ク)触媒担体(NO2ガスの酸化触媒
等にみられる化学処理ゼオライトの触媒としての利用)、(ケ)その他の工業的利用(硬水の軟化剤、有毒ガスの吸着材、
悪臭の吸収材、有害廃水の処理等)等と多方面での利用が倹討されつつあるようだ。
また今日、我々の生活において、実に多角的に多大なる恩恵を授けてくれている粘土も、実は天然火山灰の風化したも
のであると言えよう。粘土とは、「粘性を有する微小な粒子の集合であり、主構成成分は珪素、アルミニウム、鉄、マグ
ネシウム、及び酸素等の原子と水分子である」と規定されるが、正に火山灰の組成そのものであり、火山灰の風化変質し
たものであることが解る。そして粘土は、環境条件によって、様々な成分や性質があり、その種類に応じて、工業や農業
等の各方面において実に多様に利用されている。即ち、粘土には、ベントナイト、酸性白土、活性白土、カオリン粘土、
セリサイト、パイロフィラメント、モンモリロナイト等の種類があって、実に様々な性質(膨潤性・粘着性・吸着性・触
媒特性・可塑性・加熱固結性・光沢性・懸濁性・展延性・解熱性・解毒性・塩基交換性等)をその種類ごとに有して、多
様な分野で活用されているものだ。
例えば、(1)石油工業では、石油のボーリング用泥水調整剤、石油井戸掘進ドリルの保護剤、石油井戸の壁面崩壊防
止剤、原油の脱色精製剤等、(2)窯業では、陶磁器・屋根瓦・タイル・耐火レンガ・セメント等原料、鋳物の砂型結合
剤等、(3)化学工業では、製紙用充填剤・コーティング剤、ゴム充填剤、合成樹脂充填剤、油脂脱色剤、精製剤、顔料、
化粧品・医薬品の原料、放射性廃棄物処理剤等、(4)農業では土壌改良剤(土壌の水もちを改良・肥料要素の保持の増
強・土壌の酸性化防止等)、農薬の分散剤、水田の漏水防止剤等と活用されているが、一方で、粘土は、その膨潤性や圧
密性の為に地すべりや地盤沈下等の災害の要因ともなっていると言われている。
このように、火山灰は様々な環境条件の下で、種々の成分や性状に風化変質して、知らずの内に、我々の生活に大きく
役立っていると言えよう。火山灰でも、新しいものは工業的に利用され、また、噴火堆積後、五〇〇〇年程経過したもの
が吸着性が最も良いように思われる。そして風化した火山灰は、肥料効果が現れて野菜や果樹などの農業に適していくも
のであるが、更に古くなると粘土となって米作に効果的と言えるであろう。このように、火山灰土壌が時間の経過と共に、
次第に風化してその性状が様々に変質していくと言うことが案外知られていないようだ。専門家の間でも良く理解できて
いない場合が多いようだ。
4 火山灰の意外な作用効果
火山灰には実に多くの方が気付かない意外な作用効果があるが、それらを思い付くままに列挙しておこう。
(1)産業廃棄物処理
二〇〇二年三月五日の毎日新聞夕刊紙によると、[産廃の石炭灰+火山灰の「アロフェン」環境ホルモン分解]と題し
て、信州大と地元企業が共同研究して、産業廃棄物の「フタル酸ジエチル」「トリクロロエチレン」で実証し、低コスト
での「応用」も可能であると公開した。この「アロフェン」とは粘土の一種であり、実に火山灰が風化したものである。
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当方の指摘する産業廃棄物の処理に対して、同等な見解が登場したものだ。
当該新聞によると、火力発電所などから出る産業廃棄物の石炭灰と、火山灰から抽出した粘土物質「アロフェン」を混
ぜることで、生物の生殖に悪影響を及ぼす環境ホルモン(内分泌撹乱物質)などの有害物質を常温、低コストで分解でき
ることが、信州大と地元企業の共同研究で分かったと言う。
実験では、塩化ビニールを加工する際に使う環境ホルモンの「フタル酸ジエチル」にアロフェンを混ぜたところ、フタ
ル酸ジエチルの分子構造の骨格部分から伸びた枝の部分が根本から切断されたと言う。アロフェンと化学構造が似ている
石炭灰を混合すると、分解力がさらに増すことも分かったという。環境ホルモンと分子構造が似ている発ガン性物質「ト
リクロロエチレン」も、同じ方法で分解に成功したようだ。
なお、火山帯に多く存在するアロフェンは、環境ホルモンを吸着することが知られていたものだ。そこで、吸着フィル
ターの研究を進めていたところ、アロフェンによる分解作用が分かったと言う。藤井教授は、環境ホルモンは全般的に分
子レベルの骨格構造が非常に似通っているため、他の環境ホルモンの分解作用にも応用できると推測しているようだ。産
廃の汚染水を浄化するフィルター、環境ホルモンに汚染された土壌を無害化する「土壌改良剤」、電子部品の洗浄などに
使われ各地で汚染が問題になっているトリクロロエチレンの分解フィルターの実用化---などが期待できるという。
環境ホルモンはこれまで、レーザー光線の照射や高圧をかける方法で分解されていたが、コスト高や二酸化炭素排出問
題を抱えていたようだ。今回の手法は、不要な石炭灰を有効に活用するだけでなく、常温で混ぜるだけで分解できるため、
コストも従来の半分以下に抑えられるという。
ここで重要なことは、火山灰で産業廃棄物の処理が、常温で安価にできることである。これは当方が指摘する様々な火
山灰の特質とも相通じるものである。即ち、火山灰の有する吸着特性であり、その吸着力のある粘土こそが実に火山灰が
風化したものである。今後の大々的な展開に、専門家が関与し注目し始めたことは評価に値すると言えよう。
(2)酸性雨の吸着
最近の中国大陸から飛来する黄砂に関して言えば、黄砂が飛び交っている河北地方では、工場などの煤煙が多いにも拘
わらず、酸性雨が少ないというデータが出されているようだ。一方で、河南地方では河北地方に比べて工場から出る煤煙
が少ないにも拘わらず、酸性雨が多いという結果が現れているようだ。これは一体何を物語っているのであろうか。実に、
この黄砂こそ火山灰であると言うことだ。その火山灰の黄砂に吸着作用がある故に、酸性雨の原因である窒素酸化物など
を吸収し吸着しているものと思われる。
(3)湖沼の浄化
以前に、米国で火山灰を使った湖沼の浄化が行なわれていることを知った。即ち、湖沼に雪が積もって氷結した冬に、
火山灰を大量に積載したトラックを固く氷結した湖面上に搬入し、その湖面に火山灰を散布する。これによって、春先に
なって気温が上がって氷が氷解した際に、湖面上の火山灰が水中に沈降し、その過程で水中の不純物が綺麗に火山灰によ
って吸着されて浄化されるそうだ。しかし、これも一回限りの浄化に留まるようで、半永久的な浄化には成らないようだ。
つまりは一時的で緊急避難的には効果的であるにしか過ぎないようだ。それでも、既に米国では、火山灰の吸着性が、湖
沼の浄化作用に効果的であることが解っていると言うことだ。
(4)海水が淡水化
確か米国のフロリダ半島の某所であると思うが、船底に多量に海草や貝殻が付着した船舶が、海水の運河を上流に遡っ
ていくと、次第に船底の当該海草等が海中に落下していくそうだ。何故、そう言うことが解るかと言えば、次第に船の速
度が上がってくるからだ。逆に言えば、船底に多量の海草や貝殻が付着していると、船の速度が次第に低下してくるそう
だ。それでは何故に、海草等が付着しないで落下していくのかと言えば、実に海水が次第に淡水化していくからだ。と言
うことは、海水の塩分が次第に希薄化して消滅していくからである。その結果、海草や貝殻が淡水の中では棲息できずに
死滅し船底から落下していくからに他ならないようだ。
それでは何故、海水が次第に淡水化していくのであろうか。この運河には周囲から何も河川から水が流入していないに
も拘わらずにである。その原因は、実に運河自体やその周囲が実に火山灰地であるからに他ならない。恐らく、遠くメキ
シコやカリブ海地方の火山から飛来した大量の火山灰によって、海水中の塩分が吸着されていく結果の淡水化であろうと
思われる。これは、別の観点から見ると、船底に大量に付着した海草や貝殻を取り除くのに、目下、二年から四年の頻度
で船底に付着した当該海草等を、ドックに船舶を揚げて、人海戦術で除去している事実に際して、淡水が満水したドック
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に船舶を揚げてそのまま放置すれば、付着した海草等も次第に離散していくものと推察される。ちょっとした知恵で多く
の難問が解決できる事例と言えよう。
こうした火山灰による海水の淡水化と言う原理を活用すれば、二一世紀の新たな水不足による全世界的な混乱や対立を
大々的に防止することができるであろう。即ち、火山灰の吸着性を有効活用して海水を濾過していけば、極めて安価に且
つ大量に、海水から真水、淡水を得ることができるであろうと期待されるものだ。
(5)水俣の汚染水銀を封印
水俣病の原因となった水銀はその後どうなったのであろうか。海底に沈殿した膨大な水銀を全て除去したのであろう
か。決してそのような面倒なことはしていない。しかし、その後、水銀汚染が発生したとは聞いていない。一体どのよう
にして解決したのであろうか。結局、鹿児島あたりから大量の土砂を運搬して埋め立ててしまったのだ。その埋め立てに
使った土砂こそが火山灰なのだ。火山灰の有する緻密な堅固性の結晶構造が水銀を封印してしまったものだ。普通の土砂
ならば、空隙部を透過して水銀が再度漏洩してくる恐れもあるが、火山灰ではその可能性が極めて皆無に近いのである。
これを実行した担当者や行政当局は、投下した土砂が火山灰であることや、その火山灰の有する特性を知っていたわけで
はないようだ。
ヘドロ処理においても、産業廃棄物の処理に対しても、除去することなどは膨大な経費と時間が掛かって極めて現実的
でもないし、全くお手上げの状態である。この解決としては、水俣水銀を処理したように、上から火山灰を投下して覆い
尽くすことにより、決して外部へ漏洩しないように火山灰で封印してしまい、環境汚染を防止することができるというも
のだ。これは火山灰の有する緻密堅固な結晶構造によるものだ。
(6)放射能汚染も除去
かつてフランスや英国、アメリカにより南太平洋で核実験が幾度ともなく実施された。当時は、実験後も放射能が残留
して、人が入り込めないほど環境汚染があるだろうと言われたものだ。ところが、数年も経たない内に、残留放射能が検
出されないほどに雲散霧消してしまったようだ。勿論、被爆した船舶からは、今でも放射能が検出されてはいるが、核実
験場の現地では、殆ど放射能が検出されていないようだ。これなどの原因は、実に南太平洋の火山島に大量に賦存する火
山灰にあるように思われる。火山灰には放射能汚染の除去などの吸着特性による浄化作用があるものと思われる。これは、
広島や長崎でも同様なことが言えるようだ。原爆投下後には、現地では実に二〇年ぐらいは草木も生えないであろうと言
われたものだ。それが数年も経過しない内に、木が生い茂るほどに環境が浄化してしまった。日本という火山列島に大量
に存在する火山灰の吸着性によるもので、実に火山灰による土壌や大気の浄化作用にあるものと思われる。
(7)爆弾投下も効果無し
米軍によるベトナム戦争で投下された爆弾の量は実に夥しい限りで、一人殺すのに何と三〇〇〇発もの爆弾の量を要し
たようだ。これは爆弾投下が大して効果無しと言うことでもあった。ジャングルに塹壕を掘って身を隠せば、その上に爆
弾が投下されても、地下にまで爆弾の影響がさほど届かなかったと言うことだ。この背景には、ジャングルと言えども、
実にその土壌は火山灰が風化したものであり、微細な結晶構造の火山灰の堅固緻密な高強度性の土質から、爆弾投下も効
果無しの状況を呈したものだ。ただでさえ、火山灰の掘削地では、ダイナマイトが効を奏さないほどに堅固な地盤を形成
しているようだ。
(8)味覚の変質作用
(8)味覚の変質作用
火山灰の吸着特性は、単に水分を吸収したり、有害物質を吸着すると言っただけではなく、実に、その物質の性状を大
きく変化させる性質があるようだ。火山灰を透過する飲料水の場合には、その味覚が大きく変質するようだ。例えば、火
山灰中に二級酒を濾過させると、下から出て来る酒は実に円やかな味に変質し、あたかも幻の特級酒のように高級酒に変
化していることがあるようだ。逆に、コーヒーやコーラなどは味を悪くするようで、全てが良い方向に変質するわけでは
ないようだ。単なる吸収や吸着を越えた化学変化が生じているものと思われる。これは、火山灰地を透過してくる地下水
についても当てはまるようだ。実に火山灰地の地下水の味が良いのはこうした火山灰の味覚変質作用とでも言う特性、乃
至は特殊な吸着性、イオン交換特性に原因があるようだ。なお、卑近な例を紹介すれば、火山灰中に投下した小便でも、
下から抽出して出てきたものは、何と塩分が無くて、ニオイなどの不純物が濾過浄化されているようだ。恐らく火山灰が
有するイオン交換反応に近いものによるのではなかろうか。この点でも、火山灰の特性が単なる結晶構造では解明できな
いものを感じる思いだ。
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(9)美容効果
目下、泥パックとか称して泥を顔に塗ったり、皮膚に塗りたくったり、また温泉地などや都会の美容院でも泥湯に浸か
った美容も盛んである。これなどを推察すると、実に、泥の成分が火山灰が風化した粘土質にあるからと思われる。粘土
の有する吸着性が、美容効果をもたらしているものと思われる。即ち、皮膚に付着した汚れやシミなどを泥の火山灰の吸
着特性によって除去できるというものだ。粘土と言えば、その優れた吸着性等を利用して、美容の他にも様々な商品など
も開発されているようだ。
(10)火山灰プリント
)火山灰プリント
二〇〇〇年の三宅島・雄山の噴火によって二二〇〇万トンもの火山灰が降ったことが東大地震研究所から報告されてい
る。この火山灰を復興の足掛かりにしようと、火山灰の有効利用に向けて様々な試みが研究されている。その成果の一つ
が、「火山灰プリント」。火山灰そのものを布地に転写する。簡単な道具でできるこの技術は、紙や絵葉書にも応用可能
で、研究に携わった人の話では色々な衣料製品に生かすことも可能であるらしい。布地を草木染で植物で染めるとき、火
山灰が入った液に漬けると、独特の深みのある色が出るという。色も褪(あ)せにくくなるようだ。火山灰に含まれる鉄
分のおかげのようだ。
(11)溶射技術に活用
)溶射技術に活用
建築資材の分野でも、本来は鉄粉を使う「溶射」と呼ばれる技術に火山灰を応用できないか模索中であるようだ。火山
灰を三万度のガスバーナーで金属に吹き付けると高い耐久性を持った表面になり、海辺の建築物など耐腐食性が求められ
るものに生かされるようだ。当方が指摘する火山灰の耐火性や耐久性、耐塩害性などの特性によるもので、次第に広く火
山灰の有効性が認識され出してきているものであろう。
(12)火山灰土壌の有効利用
)火山灰土壌の有効利用
東京都の農業試験場は、三宅島を覆う火山灰との共生を探る研究を続けている。畑などに積もった火山灰の成分は、長
い間の雨で土壌に浸透している。土に火山灰が混ざった状態でも植物が育つのか実験が繰り返されているようだ。おそら
く、火山灰が風雨によって次第に風化してきた折には、火山灰が有する肥料効果により、肥沃な土壌に転換していくこと
になるものと思われる。
(13)ハワイ島に緑化現象
)ハワイ島に緑化現象
目下、火山島の荒れ地のハワイ島に、草が生い茂り、緑化現象が押し寄せるという奇妙な現象が現れたようだ。火山灰
地は酸性土壌である故に、草も生えないはずなのに、こうした現象に対して、某研究者は、中国本土から飛散してくる黄
土が肥沃な栄養分を含んでいるからと指摘している。確かに黄土は火山灰そのものであり、長い年月の間には風化して、
肥沃な大地を形成するほどの肥料効果があるものだ。その火山灰の黄土が飛来してきた結果、これまでの荒れ地であった
ハワイ島に草が生えだしたことは案外真実であろう。しかしながら、ハワイ島自身の火山灰が、長い年月を経て風化して
きた結果、肥沃な栄養分を含んだ土壌に変質してきた可能性も考えられる。いずれにしても火山灰が風化してきた折りに
は、肥沃な土壌に変化していくことが次第に解明されていくことであろう。また、黄土自体が肥沃な火山灰であるという
ことも理解されていくことであろう。
(14)床下の防蟻効果
)床下の防蟻効果
高温多湿の床下はシロアリなどが発生し易く、その為に毒性の強い農薬や毒物、薬品を投入していることが多い。それ
でも木材の腐朽を招いている有様だ。特に、日本では農業や食品では禁止されている毒性の強い薬品や化学物質でも、か
つては住宅用には禁止されていなかった時期もあった。しかしながら、既に指摘したように、新素材の原料である火山灰
は吸着性に加えて、火山灰自体が極めて滅菌性、殺菌性があることが解っている。それ故に、火山灰をそのまま、何も焼
成加工しないで、生シラスのまま、床下などに投入すればシロアリなどの発生を確実に防止できるようだ。そのまま床下
の土壌面一面に散布しても良いし、基礎と土台の間にモルタルに火山灰を混練させて塗り込んでも効果があるようだ。即
ち、シロアリの通り道に火山灰が存在しているだけでも、シロアリ退治に効果的と言えるだろう。これなどは場合によっ
ては特許性があるとも言えるが、火山灰の特性から当業者ならば当然に想定できる事項でもあると言えよう。
(15)海岸の砂浜に小さな虫が多くいた
)海岸の砂浜に小さな虫が多くいた
普通は、太陽光熱が強い砂漠の砂浜は熱く照射されて、とても昆虫や生物が生存できないほどであるのが常識である。
夏の季節に、コンクリートの上を裸足で歩いてみれば、熱く感じてとても歩ける状態でないのが解るというものだ。然る
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に、海岸近くの砂漠の砂浜に小さな虫が大量に棲息しているのは、その砂浜の砂が火山灰であるからに他ならない。火山
灰の有する断熱効果、遮熱効果、耐熱効果によるものと言えるであろう。これは日本でも、岩石に風化してできた海岸の
砂は熱くて裸足で歩けないが、火山灰による砂浜の砂は、虫も多く、また裸足で歩いても殆ど熱さを感じないものである。
福井の海岸の砂が熱いのに対し、金沢の海岸の砂は熱くないのも、金沢の方は火山灰であることによるものだ。これは房
総の海岸や伊豆七島の海岸の砂にも言えることだ。これは殆ど遠方や近くから飛来して堆積された火山灰によるものと言
えよう。
(16)ヘドロの実態は火山灰
)ヘドロの実態は火山灰
目下、ダム内に沈殿して堆積しているヘドロ状の堆積土、そして湖沼や沼、河川、河口や湾口に堆積沈殿している泥状
の堆積土も火山灰であろう。実に、日本は火山国であり、山野の殆どが豊富な火山灰で覆われており、降水によって山腹
の火山灰層が洗い流されて、ダムや河川、湖沼や沼、河口や湾口、そして海洋に流出してくるものだ。洪水があれば泥流
と化すのも火山灰土質であるからだ。正に泥流や土石流の実態は火山灰である。そして火山灰が堆積し沈殿していったも
のがヘドロになっていると言えよう。今回の火山灰利用の新素材は、こうしたヘドロ状の火山灰であろうが、腐葉土や海
砂の塩分が混入していようが、強度や鉄筋の錆を無視すれば、あらゆるものを混練し封印密閉していくものである。もっ
とも、腐葉土などを除去し精選すれば、骨材として有効に活用出来るものである
(17)火山灰を屋上緑化に有効活用へ
)火山灰を屋上緑化に有効活用へ
二〇〇二年八月二二日付けの日経新聞によると、「汚泥・火山灰で人工土壌 屋上緑化用 都が開発、価格五分の一」
と題して、火山灰の新たな性状の発見に基づいて、屋上緑化に活路を見出している記事があった。火山灰は、その断熱性、
耐火性、耐熱性により、当然の如く、都市のヒートアイランド化にも大きく貢献できることは、既に当方が指摘してきた
し、次第に多くの人々に理解されていくことであろうと期待される。
「東京都は下水の汚泥や火山灰を原材料にした軽量の人工土壌を相次いで開発した。都市部で気温が異常に上昇するヒー
トアイランド対策の一環として普及している屋上緑化用の土壌などとして商品化のメドをつけた。専用の土壌に比べて五
分の一の低価格で供給できるのが特徴で、性能もそん色ないという。事業化を急ぎ、下水汚泥や火山灰の有効利用につな
げる。
下水道局は下水汚泥の焼却灰を粒状化した軽量細粒材を屋上緑化の植栽用土壌として利用できることを確かめた。プラ
スチックトレーに軽量細粒材を入れて芝生を植えると、市販の人工軽量土壌と比べて生育にほとんど差がなかったとい
う。」
なお、この場合の火山灰技術は、当研究所が長年研究してきた石炭灰処理技術の延長によるものであるようだ。担当者
は、火山灰は熱焼却していない、即ち、シラスバルーンではなく、生シラスを使用するものと言っていたが、もしもそう
であれば、従来、旧通産省の九州工業試験場が試みてきたシラスバルーン技術から大きく飛躍するものとなるであろうと
期待される。
(18)都市ヒートアイランド化を緩和
)都市ヒートアイランド化を緩和
現在、土壌水や雨水などに、あたかも樹木のように吸水、保水、蒸散させる機能を持たせながら、ヒートアイランド化
現象を緩和するような技術も研究開発されつつあるが、高価な高分子化学物質を使用する余り、大した普及展開になり得
ないものを痛感する。このヒートアイランド現象の原因に挙げられるのは、都市域の人工排熱(排出熱)の増大、緑地面
積の減少による蒸発潜熱の減少、コンクリートやアスファルトによる日中の蓄熱、夜間の放熱、そして自動車からの排ガ
スや廃熱の放出などだ。アスファルトやコンクリートでは日中に蓄熱、夜間に放熱される上、都市インフラの整備で緑地
が減ったため、植物の水分蒸散作用による冷却効果も小さくなったと考えられている。
研究開発されているものは内部に空隙部を有するようにして、吸水、保水、蒸散作用があり、水分蒸発による温度上昇
抑制機能を持たせるようにしたものだ。外壁パネルやインターブロッキングとしても使えそうとも言われ、用途の拡大や
圧縮強度を検証しながら展開する意向と伝えられている。こうしたヒートアイランド化現象の緩和策として、断熱性、耐
火性に富み、空隙部を有する火山灰が有効活用できるであろうと期待されるものだ。
(19)火山灰は健康に効果的
)火山灰は健康に効果的
火山灰には磁気効果、遠赤外線効果、マイナスイオン効果があるようだ。これらの磁気や遠赤外線やマイナスイオンな
どは、最近の生理研究からも、筋肉系や神経系、内分泌系、心臓循環系などにも大いに影響を与え、リラックス感や血圧
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の安定、心拍数の減少などをもたらし、人体の細胞の活性化を図って健康にも大いに効果的であると指摘されている。即
ち、心筋細胞などに、ナトリウム、カルシウム、カリウム等のミネラルが存在し、そこに磁力線やイオンが流れて刺激さ
れるからである。火山灰も人体の健康に大きく貢献するものと期待される。実際に、既に、韓国式のサウナでは、黄土が
大量のミネラルを含んでおり、それが遠赤外線効果やマイナスイオン効果があって健康に役立つことが解っており、サウ
ナ室の内装に塗ったりして使用されているようだ。この黄土こそ、実に火山灰であるというものだ。恐らく、磁気効果や
遠赤外線効果、マイナスイオン効果の背後には、未知の放射線、素粒子が大きく関係しているものと思われる。
(20)火山灰は電子機器を狂わせる
)火山灰は電子機器を狂わせる
人体の健康には効果的な火山灰であるが、火山灰自体及び火山灰利用新素材においても、全てに対して良好とは限らな
い。例えば、火山灰地では磁石やレーダーや時計が狂うことがあるが、これは未だ明確に解明されていない現象である。
恐らく、一種の電磁波や素粒子、放射線などによる火山灰独特の性質ではないかと思われる。従って、建造物でも、使用
する部位によってはコンピューター機器などの精密機械に影響を及ぼすことが考えられる。これは、後述するエジプトの
未知のピラミッドパワーの原因や背景とも関係するものだ。なお、リン状黒鉛は火山灰中のリン(P)であるが、これは
電波を吸収する特性を有するもので、ミサイルの弾頭に付ければ、レーダーを錯乱させる効果が期待できるというものだ。
(21)火山灰地の松林には松食い虫がいない
)火山灰地の松林には松食い虫がいない
聞くところによれば、何と鹿児島の火山灰地帯の松林には松食い虫が発生していないという。これも考えてみれば、火
山灰特有の殺菌性、滅菌性、抗菌性によるものであろう。これは檜のような殺菌性の強いものにも当てはまるもので、檜
の住宅にはシロアリが発生しないとか、檜林には蚊が発生しないとか言われるように、殺菌性の強い物質にみられる共通
の現象である。
(22)古い火山灰層に独特の薬草が生育
)古い火山灰層に独特の薬草が生育
中国の上海の南の浙江省に切り立った断崖の山があるが、そこには独特の効果を有する薬草が生育している。それを採
取するために、地元の人は、ロープを伝って危険な断崖絶壁に挑戦している。この垂直に切り立った絶壁の山肌を見ると、
何と火山灰層に他ならない。ここは活火山地帯ではないが、古い火山灰地帯が風化して、火山灰が有する特殊なミネラル
のために、天然の肥料効果、薬用効果を発揮しているものだ。
(23)追記
)追記
当方が指摘し提唱する火山灰の有効活用に向けての様々な研究が、次第に表面化し集約されて大きな波となって盛り上
がっていく前兆を感じる思いである。今後とも機会が有れば、色んな火山灰研究に関する成果を紹介していこうと思って
いる。その内、火山灰が大きく注目されていくことになるだろう。実に小さなところから大きく発展していくことに成る
であろう。その大々的な表面化の時期は、既に指摘しているように、二〇〇七、二〇〇八年頃であろうと思われる。
第2章 国内外の火山地帯と火山灰分布地域
5 世界の火山地帯
目下、世界で活動中または活動可能な火山の総数は、噴火記録のあるもの、噴気中のもの、及び噴気地帯を含めると八
〇〇以上もあり、その中の八割程が、環太平洋地域の弧-海溝系に属するものであると言われている。その他、現在、活
火山ではないが、鮮新世第四紀(五〇〇万年前から一六〇万年前までの期間で、新生代の第五の時代)に活動した火山は
三八〇〇程もあると言われている。実に、大陸部も島弧も含めて地球上のあらゆる陸地全体が、かつて何らかの噴火活動
によって形成されてきたようだ。
ところが最近の海洋底の調査によると、島弧や大陸縁部の火山に対して、海中に存在する海底火山の予想外の活発さを
示す痕跡が発見されている。即ち、太平洋には非常に沢山の火山があり、中央部だけでも二〇万の火山円錘丘と二〇〇〇
から一万の平頂火山(ギョー)の存在が知られている。ハワイ諸島を始め、地殻内部からの熱の噴出が活発なことで知ら
れるガラパゴス諸島やイースター島はこうした海底火山の頂部が海面上に姿を現わしたものとされている。またハワイ北
方に、海面下に一列に並んでいる天皇海山群も海底火山であり、古くは、ハワイ諸島のように海面上に姿を現わした火山
島であったものと思われる。
そして太平洋以外でも、例えば大西洋の中央海嶺にもこうした海底火山が特に集中しており、海丘、即ち、海洋学者が
言うところの小火山の総数は、数十万という膨大な数に達しているようだ。海洋底は地殻が大陸部に比較して薄く、地球
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内部からの熱の湧出量も高く、特に海嶺部分は、地殻下面からの高温の熱水及び蒸気の混合体の大規模な噴出地帯と見ら
れている。インド洋についても同様のことが言える。ここでは、海面下に存在する膨大な海底火山は別にして、直接、姿
を見せている大陸部及び島弧の活火山について挙げてみよう。
まず、環太平洋地域であるが、ここは世界でも最多数の活火山が存在し、特に最も多いのは、カムチャッカ弧、東北日
本弧、千島弧、そしてインドネシア弧の各火山帯となっている。そしてこの環太平洋火山帯を、南端の南極大陸から見て
いくと、ここの火山の分布は、ロス海西側の南極大陸沿岸部の火山群と、南極半島から西南極大陸のはずれに続く火山群
とに大別される。前者には、ロス海西端の火山島のロス島にあるエレベス山、メルボルン山、ディスカバリー山、ブラウ
ン半島、ブラック島、ホワイト島、デイリー諸島等によって代表されると言う。また後者には、デセプション島があり、
フォスター湾は、火山活動後に陥没してできたカルデラであるとされている。更に両火山群の中間部にはハンプトン山、
ベルリン山等の火山がそびえていると言われている。このように、南極にも火山が存在しているが、地震の方は、厚い氷
の為に地上で観察されるものはないとされている。
次に南米大陸に渡ると、南端のパタゴニアからアンデス山脈に沿って多数の火山がある。特にチリ北部のアタカマ砂漠
付近の火山やチリ中央部の火山、そしてペルーのミスチ、エクアドルのコトパクシ、チンボラソ等の火山が知られている。
またカリブ海の西インド諸島では、小アンチル諸島におけるべシー、スーフリエール、モンベレー等が有名である。そし
て中央アメリカから北米大陸にかけては、シエラマドレ、シエラネバダ、カスケード、ロッキー等の各山脈に沿って、特
に米国やカナダの太平洋側に沢山の火山がそびえてアラスカに至っている。
主な火山としては、コスタリカのイラズ、ボアス、エルサルバドルのイサルコ、ニカラグアのモモトンボ、グアテマラ
のサンタマリア、フエゴ、アグア、アカテナンゴ、そしてメキシコではオリサバ、ポポカテベトル、パリクテン、コリマ、
カリフォルニア半島部のトレスビルヘネス等の諸火山がある。大火山国のアメリカにも、ベーカー、ラッセンピーク、シ
ャスタ、クレーターレイク、セントヘレンス、サンホアン、アブサロカ等があり、カナダではレイニア山、そしてアラス
カではマッキンレー、カトマイ、マウント・スパー等がある。
そして北米大陸からアリューシャン列島のタナガ、ウナラスカ、ノパブロス等の火山島を経てカムチャッカ半島に至る。
ここは世界で最も多くの活火山を有し、ベズイミアニ、クリュチエフスコイ、シベルチ、プロスキ等がある。更に多数の
活火山が存在じている千島列島から日本に至るのである。この千島列島は、二重の弧状(南側の歯舞~色丹島、北側の国
後~択捉島)の配列をしている。このうち、南側の島々には数百万年前以降に活動した新しい火山はない。しかし、北側
の国後島からカムチャッカ半島まで続く島々のうち、最北端の占守島を除く島々では新しい火山活動が起こっており、文
字通りの火山島である。現在でも活動中の火山が多く、北方領土の国後・択捉の二島だけでも、気象庁の認定による一〇
もの火山がある。
参考までに、千島列島の火山を紹介すると、アライド火山があり、島全体が火山島であるアライド島、チクラ火山やシ
リヤジリ火山があるパラムシル島、黒石火山や幽仙湖カルデラがあるオンネコタン島、ハルムコタン火山があるハルムコ
タン島、芙蓉火山があるマツワ島、ケトイカルデアとカルデア形成後にできた火山群からなるケトイ島、プロトン湾カル
デアと橘湖カルデアなどのカルデラ火山やシンシル富士火山などがあるシンシル島、地獄山火山やベルゲ火山などがある
ウルップ島、美しい山容のアトサヌプリ火山や溶岩ドームで有名な択捉島、爺爺岳火山がある国後島である。
なお、日本の活火山は、これだけでも一〇〇前後の膨大な数になるものである故に、別項に譲ることにして、日本の南
方にいくと、真南にはウラカス、アグリガン等の火山があるマリアナ諸島の火山列島が連なり、更に南にはインドネシア、
ソロモン、ニューヘブリーズ、トンガ、ケルマデイックの火山諸島が弓なりに連なっている。
また日本の南西方面には、琉球列島を経て、台湾、フィリピン、そしてインドネシアで合流している。フィリピンでは、
ピナツボ、タール、マヨン、ヒボックヒボツク等の活火山があり、またインドネシアは世界有数の大火山群島であり、ス
マトラ、ジャワ、セレベス、ニューギニア等を中心に沢山の火山が存在している。主なものでは、スマトラ島のマラビ、
リリンチ、クラカタウの火山、ジャワ島ではメラピ、クルート、ラウン、タンク・パンベラフ、ニューギニア島ではラミ
ングトン、ファルコン等の火山があり、その他にバリ島のアグン、パトールや小スンダ諸島のタンボラ火山が有名である。
そしてニュージーランド北島にも、タラウエラ、ルアベフ等の火山があり、ロトルア湖やタウポ湖は火山爆発によって
生じた陥没湖であるという。また、ビルマやベトナム地方には活火山と呼べるものは一つもないが、鮮新世第四紀火山は
実に四〇余りもあり、ここでも昔、火山活動があったことが知られている。同様に、オーストラリアやタスマニア地方も
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活火山こそ殆ど存在しないが、火山群中の個々の火山体を一つ一つ数えていくと、鮮新世第四紀に活動した火山が六〇〇
余り程あることが解っている。
そして、中国東北部、モンゴル、シベリア、朝鮮等にも数は少ないが活火山が分布しており、広大な溶岩台地もあり、
鮮新世第四紀火山も九〇余り存在していると言う。因みに、中国東北部には、中国を代表する火山の長白山火山(半分は
北朝鮮に存在し、朝鮮名は白頭山)があるが、これは、一〇世紀に過去二〇〇〇年間で、一八一五年のタンボラ火山(イ
ンドネシアのスンバワ島)噴火に次いで世界最大級の噴火をして、三〇〇個以上の火山体からなる巨大な玄武岩質複成の
活火山である。また、中国・モンゴル国境近くの大興安嶺山脈には伊爾施(イルス)火山があり、更に奥地(北東部)に
も、伊爾施(イルス)火山よりも大きな火口湖を持つ火山が幾つもあるようだ。また、長春市南方の馬鞍山火山、黒龍江
省牡丹江市南方の鏡泊湖火山も知られており、黒龍江省北西部の中国最北部の五大連池火山は、合計一四個の火山から成
り中国で最も新しい火山である。我国に最も近い韓国の済州島や鬱陵(うつりょう)島も火山島であり、本土にも多くの
火山が分布している。
中国には、先の東北部の玄武岩質火山群の他に、ヒマラヤ造山系の安山岩質火山群があり、チベット高原周辺部、タリ
ム盆地南側のコンロン山脈、中国南東部の雲南省騰沖周辺部、また海南島及びそれに面する中国大陸側にも火山活動が知
られているようだ。中央アジアに通じる中国西域のタクラマカン砂漠の入口トルファンという地の近郊にも、その昔、火
焔山という火山が赤々と燃えていたと中国の古書に某詩人が謳っていることが伝えられている。今は周囲がすっかり砂漠
化してしまったが、火焔山は、決して赤々と太陽を背に受けて燃えるようであったとかの比喩ではなく、案外、火山その
ものであり、周囲一帯はかつては火山の噴火する地帯であったように思われる。
なお、アジアの台湾、フイリピン、インドネシア、中国、インド、これらは皆火山国である。
またアラビア半島からアフリカに目を向けると、紅海付近からエチオピアを経て東アフリカ大地溝帯にも多数の活火山
が分布している。即ち東アフリカでは、キリマンジャロ、ニーラコンゴ、ニヤムラギラ、ミケノ、カリシムジ、オルドイ
ニョレンガイ等の活火山があり、更に離れてギニア湾に面したカメルーン、そして大陸部に近い大西洋上にはカナリア諸
島のテネリフエ島、アセンション島、セントヘレナ島、インド洋上のレユニオン島等の火山島がある。またサハラ砂漠中
央部にも火山があると見られており、リビア、アルジェリア、チュニジア、モロッコから地中海を経てフランス中央高地
のオーベルニュに至っている。
そしてヨーロッパでは、火山の博物館として有名なこのフランス中央高地やライン地溝帯があり、イギリスにもスコッ
トランド地方に広大な溶岩台地があって、アドナムルハン半島には火山が存在し、ムル島はカルデラであると言う。更に
東ヨーロッパからトルコ、中近東に及び、中央アジアに達している。ノアの箱舟で有名なアララト山は確認されてはいな
いが、古い火山ではないかと思われる。
また地中海には、イタリアを中心に、ポンベイやリクラニウムの都市を壊滅したべスビウスを始め、ストロンポリ、エ
トナ、プルカノ、サントリン等の地中海火山群が存在し、バルカン半島から先の東ヨーロッパと連なって、小アジア、中
央アジアへと続いている。なお、イスラエルとシリアとの係争地であるゴラン高原は火山灰の宝庫だ。そしてイスラエル
やシリア、サウジアラビア、イラク、イランなどは正に砂漠の国である。
一方、大西洋中央海嶺沿いには、北のアイスランドのスルツエイ、ラキ、ヘクラ等の火山から、アゾレス諸島、ファロ
ス諸島、バーミューダ諸島、そしてトリスタン・ダ・クーニャやアフリカ西岸に近いフエルナンドプー、プリンシップや
先述の火山諸島があり、海嶺から大陸に向かって遠去かるにつれて生成年代も古くなっている。
さて、太平洋に目を転ずると、ハワイ諸島は有名な火山群島であり、オアフ島にワイアナエ、クーラウ、ハワイ島には
コハラ、ファラライ、マウナケア、マウナロア、キラウエアの火山が存在して、東にいくにつれて新しい活動型の火山と
なっている。またクリスマス島やビキニ島等はサンゴ礁が発達して上部は石灰岩で覆われているが、その下は火成岩によ
る火山島または海底火山等となっていると言われる。他にも多数の活火山のある火山島が存在している。
こうした活火山の他に、世界には多くの溶岩台地も見られる。例えば、北アメリカのアリゾナ州のウイリアムキャニオ
ン、インドのデカン高原、北アメリカのコロンビア台地、スコットランド、北西大洋地域、南アメリカのパタゴニア台地
等である
6 世界の火山灰分布地域
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火山灰は、より微細な粒子の火山塵や、より粒径の大きい火山砂、火山礫と共に、火山噴火に伴って空中に放出され、
風によって周囲に飛散する。そして火山爆発の威力や、爆発時や爆発地域の風の方向や速度等によって、これらの火山噴
出物は、空中に長期間滞留したり、遠方に運搬されて降下堆積することになる。地球上には、低緯度では貿易風、中緯度
付近で偏西風、極地付近で極東風、そして季節的な気圧配置による季節風や、地勢学的な気温変化に伴って生ずる各種の
地域的な風が存在している。火山灰は、こうした様々な風に乗って風下に向って飛来し降下堆積する。従って火山灰は、
火山分布地帯はもちろん、それから遠く離れた非火山地帯にも降下して賦存することになる。
火山灰は地域独特の気候風土の下で、即ち、特有の雨水や太陽光線・熱、それに微生物等の様々な作用によって種々の
成分や性状の物質に風化変質する。そして厳しい気候環境の下では、含有する某種の元素やイオンを選別的に流出したり、
残留させたりもする。また風化して粘土化したり、有機質と混ざって来た時には、多大な肥料効果を土壌に提供したりし
て肥沃な森林地帯や穀倉地帯、そして果樹・牧草等の地帯に変えていくことも多い。逆に著しい乾燥気候の下では、大砂
漠や荒地に変化させることもある。
今日の高温多雨の熱帯地方である東南アジアやブラジル等の丘陵地帯や山岳地帯の地表は、ラテライトと呼ばれる赤褐
色で砕け易く多孔質な土壌(赤・黄色土)に覆われ、極めて肥沃な山野を形成している。実はこのラテライト土壌は、周
囲のまたは遠方の火山爆発によって持たらされた火山灰が風化し、某種の成分が溶脱したものと思われる。即ち、降下堆
積した火山灰が、東南アジアや南米独特の太陽光熱、雨水、微生物等による強い化学的風化作用の下で粘土等に変質し、
更に、それから粘土中のNa(ナトリウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)の各イオン
が次々と溶脱する。
そしてこれらの各イオンは地表や地中の水を中性あるいはアルカリ性に変え、その結果、比較的溶脱しにくいSi(珪
素)も溶脱することになる。しかし、Al(アルミニウム)やFe(鉄)はアルカリ性の水には溶脱しにくいので、地表
や地表近くの地中に残留することになる。こうしたAl(アルミニウム)とFe(鉄)は、酸素や水分子と化学的に結合
して水酸化物を作り出すことになる。こうしてできた鉱物の色がラテライトの色だと言われている。そして特に、シンガ
ポールの南にあるビンタン島や、南アメリカ北部のギアナ等の赤道付近では、厳しい気候条件の下で、ボーキサイトとい
われるアルミニウム鉱石に恵まれることになるのである。
また北半球の亜寒帯北部に連なる針葉樹の大森林地帯、即ち、タイガの下に、発達した土はポドソルと言われ、逆に、
鉄やアルミニウム、それにカルシウム等の塩基成分が、水によって溶脱され下方に洗い流されて生成されたもので、火山
灰の風化変質と何らかの関係があるものと思われる。そして低緯度地方のラテライト(赤・黄色土)と高緯度地方のボド
ソルの中間地域には、湿潤地帯では褐色森林土、乾燥地帯では灰色森林土やチエルノーゼム(ステップの土)が分布して
いる。褐色森林土は、比較的温暖で湿潤な地方の、主として広葉樹の下にできる褐色の土である。そしてアルカリ金属や
アルカリ土金属の相当量が流出しており、粘土鉱物に富み、鉄やアルミニウム等の溶脱は余り行なわれないと言われる。
これも火山灰の風化と何らかの関係を有しているのではと思われる。
更に、ヨーロッパ・ロシアのような乾燥地帯では、北から南へ下るとポドソルから灰色森林土、そして更にチエルノー
ゼム(ステップの土)と変化する。この灰色森林土地域の森林はナラを主体としたものといわれ、ポドソル分布地域とチ
エルノーゼムの分布地域の中間にある。その為、ポドソル化作用と腐植集積作用の両方の影響を受け、褐色森林土よりも
粘土生成作用が少ないと見られている。これの成分や性状も火山灰と何らかの関係があるものと思われる。
そしてチエルノーゼムは、ウクライナ地方に分布し、ステップ気候によって生成された黒色の土で、大量の腐植土が地
中に集積して世界的大穀倉の黒土地帯を形成している。これとよく似た土は、他にも北アメリカ中央部の大平原に拡がる
プレーリーがあり、同様に肥沃な穀倉地帯となっている。実にこの腐植土の集積である草原の黒い土は、日本でも黒ボク
土などといわれて肥沃な土壌を形成しているもので、火山灰が降下堆積して特有の気候条件下で風化したものである。
その他、今日の肥沃な地帯を形成している多くの河川の流域も、上流の火山灰が適度の気候で風化し、そして有機腐植
土などと混ざりあって優れた肥料効果をもたらしているようだ。即ち、ナイル河流域やユーフラテス河流域、そしてアマ
ゾンやラプラタ河流域の肥沃さは、何らかの形で火山灰が関係しているようだ。世界の全ての森林、田畑を形成している
土壌には、何らかの火山灰の風化物が混ざりあっていると思われ、火山灰が適度の雨水や太陽光熱、そして生物等の作用
により、様々に変質した上で種々の腐植土、溶脱土、粘土等に生成し、これらが適度に土壌を構成しているものと考えら
れる。また地域的にも多種多様の土壌が存在するのも、当初の火山灰自体の成分や性質上の差異に加えて、その地方独特
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の気候風土等の環境から来る風化条件の多様性によるものと思われる。
一方、地球上には、森林や田畑等のように植物が繁茂する地域以外に、極度の乾燥気候によって大砂漠や大荒地を形成
している地帯がある。こうした大砂漠地帯等に多量に分布する砂も実は火山噴出物としての火山灰・火山砂であることが
多いと思われる。たとえ、成分的に特定のものに偏していても、それはその地方独特の乾燥気候によって変質したり溶脱
したものであり、元来は火山灰に由来するものも多いと思われる。そして森林の伐採や田畑の酷使等の人為的理由によっ
て砂漠化した地域でも、有機質や粘土質が極度に乾燥分解して消滅して、元の無機物である火山灰質のものに還元された
ものもあることと想像される。南米チリ北部のアタカマ砂漠の砂はアンデス山脈中の多数の火山噴火によりもたらされた
ものと思われる。
また米国南西部のアリゾナ、ユタ、ネバダの各州にある砂漠も、溶結凝灰岩の柱状節理が示すように、周辺の火山群よ
りの火山灰・火山砂等によるものと思われる。メキシコ地方の砂漠も同様である。そしてアフリカの大サハラ砂漠も、大
西洋及び紅海・大地溝帯の火山からの噴出物に関係があるのではと思われる。同様にシリア砂漠やネヘド砂漠も紅海や地
中海の火山群からの飛来物によるのではと考えられる。更に、中国の黄砂、黄土も微細な多孔質の物質であり、西方の砂
漠地帯から風で運ばれて来るが、元来は火山灰の一種ではないかと思われる。これらの砂漠では、砂漠特有の気候により、
溶脱されて褐鉄鉱が著しく発達したり、石膏、カリ塩、岩塩等がたまることもあるが、火山灰質も極めて多いものと想像
できる。
7 日本の火山地帯
我国は世界でも有数の火山国であり、世界の一割程になる約七〇~八〇の活火山が存在すると言われており、昔から火
口より噴煙を上げて活動中のものは、以前からでは桜島火山、阿蘇山、三原山、浅間山の四つであったが、最近噴火した
火山では有珠山、雲仙普賢岳、三宅島がある。そして最近、政府筋の某研究所からは、かつて一万年以内に噴火活動した
火山も活火山と再定義し直したようだ。そして新たに二〇ほどの活火山を追加したようだ。
日本の火山分布は、北から千島、那須、鳥海、富士、乗鞍、白山、霧島と多くの火山帯に細分化されるが、大別すると
近畿地方を境にして東日本火山帯と西日本火山帯の二つに区分される。これらの火山は、ある火山前線(火山フロント)
を境にして、これより西側に分布している。この火山フロントは、日本列島に沿って中央部を南北に走り、富士山付近よ
り南方の伊豆・小笠原諸島に向かっており、海洋地殻が沈降する太平洋側の海溝部から陸側一〇〇~三〇〇キロのところ
を走っている。
そしてこの火山フロントに近いところ程、多くの活火山が集中しており、火山フロントを離れる程、火山の数もまた噴
出物の量も減少している。そして噴出物も珪素(SiO2)に富んで粘性の強い安山岩質から、カリ(K2O)やソーダ(N
a2O)に富み粘性の小さい玄武岩質のものに、即ち酸性からアルカリ性に富んだものへと変化する。また我国には、世
界的に大規模なカルデラも多く、湖や湾や火口原として存在する。即ち、北海道の屈斜路湖、洞爺湖、支笏湖、東北の十
和田湖、九州の阿蘇山、姶良、阿多等の巨大カルデラ群である。次に、参考までに、日本の有名な火山を列挙しておこう。
まず北海道では、千鳥列島の国後島の爺々岳から知床半島の硫黄山や羅臼岳、そして屈斜路湖、摩周湖のカルデラ湖や
雄阿寒岳、雌阿寒岳等を形成する阿寒国立公園区域の各火山がある。旭岳を主峰とする大雪山系や十勝岳は大雪山国立公
園の火山である。なお、北の日本海側の利尻島は火山島である。また北海道南部では、洞爺湖、支笏湖の大カルデラ湖を
始め、昭和新山、羊蹄山、有珠山、樽前山等の火山があり、支笏洞爺国立公園となっている。近くにはニセコ火山群もあ
る。そして南に下ると、駒ヶ岳、恵山、渡島大島等の火山がある。
東北地方では、下北半島に恐山があり、そして岩木山がある。次いで大カルデラ湖の十和田湖、八甲田大岳を主峰とす
る八甲田火山群、そして八幡平、焼山、岩手山、駒ヶ岳等の十和田八幡平国立公園の火山がある。そこから南にいくと、
磐梯山、吾妻山、安達太良山、月山等の磐梯朝日国立公園の火山や、栗駒山、蔵王山、鳥海山等の国定公園の火山がある。
また日光国立公園には、男体山、燧ヶ岳、日光白根山、那須岳、茶臼岳等の火山があり、周辺には、榛名山や赤城山があ
る。なお、茨城県の筑波山も古い火山であろうと思われる。
そして上信越高原には、浅間山、荒船山、草津白根、妙高山、焼山、霧ヶ峰、八ヶ岳等の火山があり、中部山岳地域に
は、乗鞍岳、焼岳、立山、御獄山等の火山がある。日本一の成層火山の富士山や箱根山の南には、天城山、大室山等の天
城火山群のある伊豆半島があり、太平洋に進んで、三原山のある大島、雄山をいただく三宅島、新島、式根島、神津島等
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の伊豆七島の火山島があり、国立公園区域となっている。更にその南方海上には、御蔵島、八丈富士をいただく八丈島、
青ヶ島、明神礁、スミス礁、鳥島、西之島新島、西之島、北硫黄島、硫黄島、南硫黄島等の火山島が一列に連なっている。
また北陸から山陰の日本海側にかけては、白山、大日山、大山、三瓶山、飯ノ山等の火山があり、日本海上の隠岐諸島の
中で最大の島である隠岐島後は火山島である。
そして九州には、雲仙岳を中心とする雲仙火山群を始め、阿蘇山、九重山、由布岳等の火山があり、南部では霧島山の
大火山群、姶良カルデラの一部に噴出した桜島、開聞岳があり、更に南西海上には、硫黄島、口永良部島、中之島、諏訪
之瀬島等の火山列島が続いている。そして西海地域にも、五島列島の福江島に鬼岳、火ノ岳等の小火山があり、国立公園
地域を形成している。なお、対馬海峡の壱岐は、全島が玄武岩の溶岩台地である。以上の他、瀬戸内海の屋島や、近畿地
方の奈良盆地の大和三山等は古い第三紀の火山と言われている。そして火山ではないが、熱水や熱気の噴出地帯として火
山同様の活動をしている地域は沢山ある。
8 日本の火山灰分布地域
我国は、世界的に見ても多様な火山の宝庫であり、実に様々な良質の火山灰が多量に賦存する。火山灰は火山からの噴
出物である故に、当然、先程の火山地帯に多く分布する。火山の噴出物は、火山塵や火山灰のような粒径の小さいものか
ら、次第に粒径の大きい火山砂、火山砂利、火山礫、そして火山岩や溶岩と多様である。火山噴火の際、空中に放出され
たこれらの噴出物は、比重の大きいものから早く且つ火口近くに順次落下する。そして火山灰や火山塵のような微細な粒
子は、空中に滞留している時間も比較的長く、風に乗って火山地帯から遠く離れた地域に運ばれることも多い。
我国の場合、その折々の季節風や地域風によって、空中高く放出された火山灰が流される方向や距離は異なるが、概し
て、偏西風に乗って火口より東側地域に運ばれることが多い。そして爆発火口に近いところ程、堆積する火山灰の量も多
く層も厚いようだ。また遠方にいくに従って降下堆積する量も少なく層も薄いようだ。それ故に、降下堆積された同種同
質の火山灰の層厚を辿っていくことによって、噴出された火山灰の給源火山を突きとめることができると言えよう。
こうした調査によって、現在では、栃木県宇都宮市近郊の園芸用に利用される鹿沼土の火山灰が、群馬県の赤城山の火
山から噴出して飛来降下したものであることや、関東平野一帯に堆積する関東ローム層の火山灰が、遠く富士・箱根の両
火山より持たらされたことも解っている。また、九州南部の鹿児島県全体や、宮崎・熊本両県の一部に数百億立方メート
ルもの火山灰を降下させて、大シラス台地や姶良・阿多の両カルデラを形成した大火山の爆発は、実に遠く東方一帯に、
関東平野にまで及んで火山灰を飛来させたことも解っている。
実に、微粒子の火山灰は火山周辺に比較的多く賦存してはいるものの、それ以外にも、即ち非火山地域にも多量に飛来
し堆積されることもある。その例として、東京に近い千葉県の房総半島である。房総半島一帯は海が隆起して形成された
もので、南方海域から移動して形成された房総半島南部の火山系地質を除き、火山活動は全くないが、小高い丘陵地帯に
多くの山砂が存在する中に、明らかに火山灰と認められる地層も多くある。また長い九十九里や外房などの海岸線にも、
極めて断熱性に富んだ砂が多く、これらも同様に火山灰である。これらの火山灰は、遠く富士、箱根の両火山より、また
伊豆七島等の火山より偏西風に乗って飛来したものであろう。
同様に、日本海側に突き出た能登半島一帯にも、火山はないが比較的多くの溶結凝灰岩層(グリーンタフ)に恵まれて
いる。恐らくこれも周囲のまたは遠方の火山から、例えば白山、大日山、大山等の日本海側の諸火山や中部山岳地帯の方
面からの火山噴出により持たらされたものだろう。
なお、有名な鳥取砂丘は強風によって砂山が重なり合った風紋が出来るが、小さな砂紋は不可能であり、また昆虫がい
たり植物が繁茂しているが、単に、地下の粘土層に蓄えられた雨水により砂が湿っているからであり、それに真夏には高
温に熱されるから、耐熱性のある微細な火山灰ではなく普通の砂である。
我国の国土は極めて豊かな森林や田畑に恵まれているが、田畑でも半分以上は火山灰地土壌であると言われており、上
流から土砂に混って運搬されて来てできた土壌等も考慮すると、実に火山灰が何らかの形で関係している地域は更に広範
に及ぶのではないかと思われる。それは、大雨が降った後に、河川に流れてくる多くの土石流とか泥流とか言われるもの
をつぶさに観察すると、実に山野に堆積する火山灰が、降水と共に流出してくるものと思われ、日本の山野は正に火山灰
の豊富な堆積層であろうと思われるからだ。
そして我国で火山灰や火山礫が極めて豊富に賦存する地域は、姶良・阿多の両カルデラによる爆出で持たらされた九州
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南部であり、また十和田湖の大カルデラによる青森、秋田、岩手の各県にまたがる降灰地域である。そして大東京の近く
では、富士山麓、伊豆半島、群馬県の赤城、榛名、浅間の各火山周辺、栃木県の日光付近、更に大島、三宅島、新島等の
伊豆七島の各火山島が火山灰・火山礫の最大の且つ比較的新しくて工業的に利用可能な分布地域と言えよう。
更に我国の周辺にも火山灰・火山礫は極めて豊富に賦存している。例えば、韓国の済州島や鬱陵(うつりょう)島)は
全島が豊富な火山礫で覆われた火山島であり、韓国本土にも多く賦存している。ただ韓国には降水により流出してしまっ
たせいか、火山灰は少ないようである。また台湾やフィリピン、インドネシアはもちろん火山王国であり、更に千島列島
からカムチャッカ半島にかけては、世界最大の火山地域であり、島弧全域や半島全域に亘って極めて豊富な火山灰・火山
礫の分布地域となっているものと思われる。そして北朝鮮から中国東北部、ロシア国境地帯にかけても広大な溶岩台地を
形成して、極めてアルカリ質に富んだ火山灰・火山礫が存在することと思われる。
なお、我国は火山列島であり、全国土の山野が火山灰で覆われていると言うことである。これは何を物語っているのか
と言えば、降雨があれば山野から洗い出された泥、土等が河川に流入して、所謂、泥流や土石流となって氾濫していくこ
とを考慮しても理解できるが、ダムや湖沼、沼、河口や湾口、海底に堆積し沈殿するヘドロ状の堆積土の殆どが火山灰そ
のものであると言うことだ。微細な結晶の崩落しやすい土石や泥、ヘドロの実態は実に火山灰と言うことだ。そして豊穣
な田を形成している粘土も、また果樹などを生産する地帯の土地の腐葉土も、実に火山灰が風化したものであると言うこ
とだ。
日本の海岸も実に青松、白浜で美しい風景を醸し出しているところが多い。この白浜も実に火山灰そのものであること
が多いようだ。もっとも海岸の砂には岩石が風化していったものもあり、こちらは、太陽の光熱で熱されて表面温度が上
昇するものであるが、火山灰の白浜海岸の砂は結晶構造も微細で、断熱性もあって太陽光熱でも熱くなく、また、豊富な
虫が生息する環境を形成しているようだ。即ち、海岸の砂には、岩石が風化してできた砂と、火山灰起源の砂とがあると
言うことだ。これらの相違は結晶構造もさることながら、断熱性、耐火性、虫の棲息性、噛み合い効果による堅固な堆積
性、降水に対する崩落性等が挙げられるであろう。
9 砂漠こそは火山灰の宝庫
砂漠は世界最大の且つ地球上で最後に残されたフロンティアである。この砂漠の砂こそが、世界最大の未利用資源であ
り、実にその性状は火山灰そのものである。これは、人類史上において誠に画期的な大発見である。この砂漠こそは、歴
史的に最後に残された有効活用が可能な天然資源である火山灰の宝庫とも言えるものだ。
火山灰を有効に活用していけることが明らかになってきたこの段階で、その火山灰が実に地球上で最後に残された最大
の天然の未利用資源であることも既に指摘した。そこでこの火山灰が大量に賦存している場所が、実に、砂漠に他ならな
いことを指摘しよう。これは実に、誰も明確には気付かなかった歴史的大発見ではないかと思われる。全く何の利用価値
もない砂漠の砂が、実に有効な資源に大変換していく可能性を有することになった。
岩石が風化し崩壊してできた一般の砂利や砂では、太陽の光熱によって表面が熱くなるほど断熱性もないが、火山地帯
や荒れ地や原野や砂漠の火山砂は決して熱くならないほど、極めて断熱性に富んでいるものである。これは日本の海岸の
砂でも、断熱性において相異があるようだ。即ち、海岸の場所により、岩石が風化した砂で熱いものと、火山灰による砂
で熱くないものとの相違である。これは、実に、多くの人の常識を打破する画期的な思考と言えるだろう。
即ち、砂漠の気候が暑いのは、水分が無く太陽光熱が熱いからだ。砂漠の砂自体は、断熱性に富み、決して熱くはない
のである。ここに大きなヒントが隠されていると言えよう。砂漠では、ジープがパンクもしないで疾走したり、ラクダや
人間が裸足で歩けたり、様々な動物や昆虫が棲息するという事実からも、砂漠が決して熱くはなく、そして不毛の地では
ないと言うことが、容易に理解できるであろう。即ち、砂漠は、豊富な火山灰、火山砂という、実に豊かな世界最大の未
利用資源が存在する宝庫なのである。
当方が実に、砂漠の砂は火山灰であることに気付いたきっかけは、一枚の写真であった。それはある観光旅行会社のパ
ンフレットであった。そこには南太平洋の某島の海岸で、上半身裸でシーツも何も敷かないで炎天下の太陽の下で寝そべ
る女性の姿であった。この一枚の何気ない写真が不思議と言いようのない衝撃というか注意を引いたのであった。何も不
謹慎で女性のヌード姿の写真に見とれたわけでも無く、当方の遙か来し方の原体験と不思議と重なって、故郷の福井で過
ごした子供の頃の記憶が呼び戻されたのであった。
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これは何かと言えば、夏の炎天下での海水浴の光景や体験であった。太陽光線により射熱輻射された故郷福井の海岸の
砂の熱さは今でもはっきりと思い起こされるほど、熱くてしようがないものであり、海水浴の際には、砂浜をとても裸足
では歩けないものであった。浜茶屋で海水着に着替えた後は一目散に海岸に向かって走るか、サンダルのような物を履い
て行くしかないほど、砂の熱さはとても我慢できるものではなかった。
こうした子供の頃の原体験というべき記憶の中にある砂は、太陽光熱により熱された熱いものであり、とても裸足で歩
けないものという記憶であり意識であった。それが社会に出て間もなく見た観光パンフレットによる南太平洋の海岸でシ
ーツやマット無しで寝そべる女性の裸同然の姿は、「一体何だ、これは」と激しく興味をそそられた想いがしたものだ。
その後、伊豆七島の島々の海岸や、また日本列島の様々な海岸でも、同じような光景があるのを見聞した。
そこで解ったことは、海岸の砂には、当方が子供の頃に夏の海水浴で体験した太陽光熱で熱く熱せられる砂と、外に、
全く太陽光熱により影響を受けずに、即ち熱くならない砂があることを知った。これは、前者は、コンクリートに見られ
るように、岩石と同じ成分であり、岩石が砂利や砂に崩壊・解体されていく過程でできた砂であり、これは太陽光熱によ
り暖められて熱されるものである。
ところが一方の全く熱くならない砂とは、岩石が風化解体されてできたものではなく、別の由来に関係する砂であると
言うことだ。これが実に断熱性に富み、微細で複雑な結晶構造を有し、昆虫や微生物も生息し得るほどの通気性や断熱性
を有するものであることが解ってきた。こうした海岸の砂には決まって、単に太陽光熱により熱くならないと言う側面の
背後には、様々な昆虫や微生物が生息していることも知った。
こうした一例を挙げれば、後日知ったことだが、北陸の金沢近郊の海岸でも、また、千葉県の外房の海岸でも、そして、
東北の三陸海岸の釜石近くにある浪花海岸でも、実に夏の炎天下でも太陽光熱に晒されても全く熱くならない砂であると
共に、多くの虫が生息していた。砂をよく見ると実に多孔質の結晶をしており、通気性にも富んだものであった。
極めつきの写真は、某高名なカメラマンが写した中央アジアの砂漠を疾走する馬車の姿であった。普通の人は殆ど気付
かないものだが、何と当方は、そこに写っている写真に不思議と見とれたものだった。それは砂漠の砂に明確に写ってい
る車の轍(わだち)であり、砂埃(すなぼこり)であった。「一体それがどうした」と言う者が殆どであろうが、ここが
大きな発見に至る分かれ目とも言えるだろう。
つまり、普通の岩石が風化してできた砂の上を馬車や車が疾走しても、砂が湿っていない限り、轍やタイヤの跡ははっ
きりと付かないものである。そして轍や車の跡が付く以上、湿っているが故に、砂埃は立たないのである。つまり、普通
の砂では車輪の跡と砂埃は両立しないのが常識である。それが砂漠を疾走する馬車が走った跡は、くっきりと轍が残って
しかも砂埃が立っていたと言うことである。これは実に砂漠の砂が、単に岩石が風化してできた普通の砂ではないと言う
大きな疑問から解明へと繋がっていくことになる。
この光景は日本でも、注意深く見ると、渚ドライブウェーと言われる海岸でもよく見られるものだ。即ち、普通、岩石
が風化した海岸の砂では、砂が崩壊し易いために、雨で砂が湿っていない限り、車が走ってもタイヤが砂中にめり込んで、
容易に疾走できるものではない。逆に言えば、砂が湿っていれば、タイヤは砂の中にめり込まないで疾走できるというも
のだ。そして疾走できる際には、砂埃は立たないものだ。こうした海岸は先程の金沢近郊の海岸の渚ドライブウェーでも
見られるし、千葉郊外の房総の九十九里浜海岸でも見られることだ。
こうした車や馬車が、乾燥した砂の上を疾走してもくっきりと明確な跡が残り、且つ砂埃(すなぼこり)が舞い上がる
という光景は、砂漠の砂、そして渚ドライブウェーの海岸の砂は、共に同じ性状、成分であり、同じ生成・起源であるも
のと推察されると言うものだ。その結果、これらの砂漠の砂や渚ドライブウェーの砂は、実に火山噴火によりもたらされ
た火山灰起源の砂であるという結論に到達した次第である。
こうした観点から、砂漠や、その砂漠の砂を改めて観察すると、実に様々な現象や光景が解ってくる。即ち、世界中の
荒涼とした原野や荒れ地や広大な砂漠の砂は、実に火山噴火の際にもたらされた火山灰である。そして砂漠ばかりではな
く、地球上の殆どの地表面は火山灰に覆われており、それらがその地域特有の気候や風土により、風化した火山灰として、
強酸性物質などの成分の一部が溶脱し変質したりして、ゼオライトや粘土や腐葉土質に変化したしていっていることが多
い。
その中でも砂漠の砂は、地域の気候風土の特性によっては、幾分成分が溶脱したものもあるが、大抵の砂漠の砂は火山
灰そのままの原形を留めていると言っても良い。実に、これは極めて破天荒で大胆な発想であり、歴史的にも一大発見で
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あろう。つまり、世界的にも火山地帯をはじめ、多くの荒涼とした荒れ地や原野、砂漠地域に、無尽蔵と言っていいほど
賦存する砂は実に火山灰である。荒涼とした原野や砂漠の砂は、単に岩石や砂利や砂が風化して微細になったものではな
い。そもそも成因や結晶構造が異なるものである。
岩石が風化し崩壊してできた一般の砂利や砂では、太陽の光熱によって表面が熱くなるほど断熱性も耐火性もないが、
火山地帯や荒れ地や原野や砂漠の火山砂は決して熱くならないほど、極めて断熱性に富んでいるものである。即ち、砂漠
の気候が暑いのは、水分が無く太陽光熱が熱いからだ。砂漠の砂自体は、断熱性に富み、微細な結晶構造で多孔質の性状
を成しており、決して熱くはないのである。ここに大きなヒントが隠されていると言えよう。
砂漠では、ラクダや人間が裸足で歩けたり、様々な動物や昆虫が棲息するという事実からも、砂漠が決して熱くはなく、
そして不毛の地ではないと言うことが、容易に理解できるであろう。即ち、砂漠こそは、世界的に見て実に最後に残され
た未利用の無尽蔵な資源である豊富な火山灰の宝庫なのである。火山灰、火山砂という、実に豊かな世界最大の未利用資
源が存在する天然資源の宝庫なのである。これは正に世界的な大発見であると言えよう。
ここで、砂漠の砂、即ち、火山灰が招来する様々な特性、性状において、非常に解りやすいものは、火山灰の断熱性、
耐火性である。そしてこの外には、吸着性、耐酸性、耐アルカリ性、殺菌性、滅菌性、堅固緻密性、水に弱い崩落性、微
細で多孔質な結晶構造性、超軽量・浮遊性などである。これらの特性に関する諸現象について、先程の砂漠を疾走する馬
車の轍や砂埃との関係や砂漠に棲息する多くの動植物との関係を含めて幾つかの事例を挙げて紹介しよう。
(1)湿ってもいないのに砂漠の砂に轍と埃が
普通の岩石が風化してできた砂の上を馬車や車が疾走しても、砂が湿っていない限り、轍やタイヤの跡ははっきりと付
かないものである。そしてこうした砂の上に轍や車の跡が付く以上、砂自体が湿っているが故に、砂埃は立たないのであ
る。つまり、普通の岩石が風化した砂では車輪の跡と砂埃は両立しないものであるのが常識である。それが砂漠を疾走す
る馬車が走った跡は、くっきりと轍が残ってしかも砂埃が立っていると言うことは、実に砂漠の砂が、単に岩石が風化し
てできた普通の砂ではないと言うことで、他ならぬ微細で緻密で超軽量の結晶構造を有した火山灰であるからだ。
(2)車が砂漠を疾走できるのは何故だろう
サハララリーとかで、砂漠の中を車で疾走するレースが行なわれる。これもよく見ると、普通ならば、砂の上を車が疾
走すると、車の重量でタイヤが砂の中にめり込んでいくものだが、決してそうはならず、まるで堅固なコンクリート道路
の上を疾走しているものだ。何も砂漠の砂を人工的に固めて疾走しやすくしたものではないのは明らかだ。実にこの砂漠
の砂こそ、火山灰に他ならない証拠であり、複雑で緻密な結晶構造を有する火山灰の性状により、噛み合い効果を発揮し
て、堅固な地盤を形成するものだ。普通の砂漠の舞い上がる砂塵を見ていると、不思議に思うものだが、一旦、締め固め
られたが堅固な構造を発揮していくもので、それが風や雨水などで崩壊すると、あたかも泥流や土石流の如く崩落し飛散
し浮遊していくものである。
(3)砂漠の砂は何故に熱くないのか
北アフリカのチュニジアの砂漠で、海岸近くの砂浜に小さな虫が多く棲息していた画面がテレビで映し出されていた。
普通は、太陽光熱が強い砂漠の砂浜は熱く照射されて、とても昆虫や生物が生存できないほどであるのが常識である。例
え、海岸であっても、砂漠であることには変わりはない。このように、多くの砂漠では、ラクダや人間が裸足で歩けたり、
様々な動物や昆虫が棲息している。この事実は、実に砂漠が決して熱くはなく、そして不毛の地ではないと言うことを物
語っている。然るに、海岸近くの砂漠の砂浜に小さな虫が大量に棲息しているのは、その砂浜の砂が多孔質で断熱性に富
んだ火山灰であるからに他ならない。砂漠の砂が熱いのは太陽光線で乾燥し水分が消失しているから熱く感じるのであっ
て、砂漠の砂自身は、内部に潜れば極めて断熱性、耐火性に優れており、内部まで太陽光熱が浸透はせずに、ひんやりと
し、それが為に多くの動植物が棲息できるものである。夏の季節に、コンクリートの上を裸足で歩いてみれば、熱く感じ
てとても歩ける状態でないのが解るというものだ。
(4)凝灰岩が堅固な住居を提供
(4)凝灰岩が堅固な住居を提供
先日、北アフリカの砂漠の民であるベルベル人の垂直に切り立った洞窟住居、穴居住居がテレビで映し出された。正に
切り立った断崖絶壁の住居構造を可能ならしめるのは、火山灰が凝固した凝灰岩によるものであろう。乾燥した火山灰だ
からこそ、湿気もなく、カビも生えずに快適な環境を提供してくれるものと言えよう。実に、ベルベル人の穴居住居は、
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堅固な構造を有する火山灰が凝固した凝灰岩によるものである。
なお、切り立った洞窟住居は、中国の黄河上流の黄土高原にも見られるものだが、こちらも同様に、火山灰が堆積し凝
結した結果、微細な結晶構造が緊密に噛み合わさった故の堅固な構造と言えるであろう。他にも、絵葉書などで見ると、
ギリシャ地方に断崖絶壁上に古い教会建築物が建てられていたが、案外、垂直の切り立った断崖上に建築されているのに
も拘わらず安全なのは、火山灰が堆積し凝固した結果の凝灰岩による土質の影響であるものと思われる。
(5)海岸近くの砂漠の砂浜から塩分が無い真水が浸出
アフリカの砂漠の海岸近くの砂浜で、住民達が穴を掘ってそこから水を汲み出していたが、そこから湧き出る水は何と、
飲料に供していたほどに、真水であった。普通は、海岸近くから浸出する水は、海水が浸透してきて塩分が混じっている
ことが多いが、何も塩分が混入していなくて、実に真水になっているようだ。これは正に砂漠の海岸の砂が火山灰の砂で
あるためで、火山灰による海水中の塩分の吸着効果によるものであろうと思われる。先に指摘した米国のフロリダ半島で
の、海水が真水に変化する現象と同じ原理によるものと言えよう。
(6)黄土高原からの黄砂は火山灰
遠く日本や米国にまで飛散し飛来してくる黄砂の発生源は、カザフスタン東部の砂漠地帯(サルイ・イシコトラウ砂漠
など)、タクラマカン砂漠・ジュンガル盆地、ゴビ砂漠とその南縁の小砂漠群(バタインジャラン砂漠、ソニド盆地など)、
黄土高原(オルドス)であるが、それらの黄砂も付近や更に遠い西方の火山から偏西風に乗って飛来して来たものであろ
うと思われる。この黄砂は微細な粒子結晶の火山灰に他ならず、黄河の濁った水流を観察すると、実に微細な火山灰特有
の泥流である。火山灰地は、こうした水に弱い泥流と化す災害地であるか、または砂漠などの不毛の地となっている場合
が多いようである。
なお、黄河が流れ込む渤海湾は火山灰・黄砂が沈殿堆積した泥の海であるようだ。
(7)砂漠の砂が海水を濾過
(7)砂漠の砂が海水を濾過
火山灰地である砂漠の海岸近くの砂浜から塩分が出ない真水が浸出するのも火山灰の性状に由来するものだ。北アフリ
カの砂漠の海岸近くの砂浜で、住民達が穴を掘ってそこから水を汲み出していたが、そこから湧き出る水は何と、飲料に
供していたほどに、真水であった。普通は、海岸近くから浸出する水は、海水が浸透してきて塩分が混じっていることが
多いが、何も塩分が混入していなくて、実に真水になっているようだ。これは正に海岸の砂が火山灰の砂であるためで、
火山灰による海水中の塩分の吸着効果によるものであろうと思われる。先に指摘した米国のフロリダ半島での、海水が真
水に変化する現象と同じ原理によるものと言えよう。
(8)敦煌遺跡の壁画の保存状態が良好なのは火山灰が関係
目下、日本の高松塚古墳内部の壁画は、開封して時間が経過してくると、湿気の充満などでカビが発生して大問題とな
っているようだ。然るに、中国西域のシルクロードの敦煌などの古代遺跡の壁画の保存状態は極めて良好だ。この付近は
見渡す限りの砂漠地帯であるが、細かな微粒子の堆積する火山灰地帯である。恐らく、この敦煌遺跡の内部の壁も、吸湿
性に富んだ火山灰により形成されているものだろう。それ故に、壁画の保存状態が良好なのは、火山灰に関係しているも
のと思われる。
(9)裸足で疾走できるのも火山灰が原因
かつてマラソンで、裸足で力走するエチオピア出身の選手がいたが、これは普通の堅いコンクリート上では、幾ら堅固
な足を有していても、長時間の走行は無理である。何故なら足の筋肉に多大な負担が掛かるからである。現地では裸足で
走っても、コンクリートの路上では、最後には靴を履かざるを得なかったようだ。これは猫でも、柔らかい土の上に落下
すれば怪我がないが、コンクリート上に落下した場合には、骨折することも有り得ることでも理解できる。そこで、裸足
のマラソンランナーの場合は、エチオピアの高原地帯の土が柔らかく弾力性に富んだ火山灰であったからこそ、鍛錬によ
って、マラソンのような長時間疾走が可能であったものと言えよう。
(10)ジンギスハーンの大陸制覇も火山灰草原が大きく貢献
)ジンギスハーンの大陸制覇も火山灰草原が大きく貢献
一三世紀の初めにモンゴル帝国を興したジンギスカンの広大なユーラシア大陸制覇を可能にしたのは、騎馬軍団による
迅速果敢な戦闘技術によるものである。ところが、この短時間で草原の大移動を可能にしたのは、実に、草原の有する土
の特性に他ならない。即ち、断熱性があって堅く敷き固められた柔らかい火山灰の影響である。この草原こそ、下手する
と、乾燥化して砂漠化と隣り合わせのものでもあるが、これにより、馬の全力疾走を可能にし、一気呵成に大遠征を可能
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にし、大帝国の建設を成し遂げられたものである。
目下、地球上の砂漠は、数年に一回程度大雨が降る以外は、殆ど降水のない地域で、川は大雨の後だけ一時的に水が流
れるところが多い。気温の日較差が著しく大きいので、岩石の風化と風食が盛んな地域である。この砂漠の定義に関して
は、広辞苑や気象の辞典によれば、『砂漠とは、乾燥気候のため、植物がほとんど生育せず、岩石や、砂礫からなる荒漠
不毛の広野』とされるぐらいである。然るに、世界最大の過疎荒廃地である砂漠が、決して不毛の地ではなく、不毛の砂
漠の砂こそ、火山灰に他ならず、火山灰が有効利用できものである。実に砂漠こそが、地球上において最後に残された、
世界最大の未利用天然資源の火山灰の宝庫と言えるものだ。既に砂漠が、世界最大の未利用資源の宝庫であることが解っ
た以上は、その開発に大きな歴史的展望が開けてきたと言えるだろう。この指摘は、実に歴史的にも画期的なものと言え
よう。
なお、この地球上の実際の砂漠地域を見ていくと、殆ど全大陸に亘って広大に広がっていることが解る。特に、北緯三
五から五〇度に亘る中緯度砂漠が有名だが、これは中緯度においてほとんど常時吹いている西寄りの風である偏西風の影
響も関係しているものと思われる。世界の砂漠は、中規模程度の砂漠まで含めると非常に多く存在しているものだが、大
砂漠は次の通りである。
北アメリカ地域では、アメリカ西部のグレートベーズン砂漠(Great Basin)四九万平方キロ(以下、単位は平方キロ)、
メキシコのチワワ砂漠(Chihuahuan)四五万、アメリカのアリゾナ州、カリフォルニア州およびメキシコのソノラ州にか
けて広がるソノラ砂漠(Sonoran)三一万、アメリカ南西部のカリフォルニア州、ユタ州、ネヴァダ州、アリゾナ州にまた
がるモハーベ砂漠(Mojave)七万、
南アメリカ地域では、南部のパタゴニア砂漠(Patagonian)六七万、チリ北部のアタカマ砂漠(Atacama)一四万、
オーストラリアでは、南部のグレートビクトリア砂漠(Great Victoria)六五万、北西部のグレートサンディ砂漠(Great
Sandy)四〇万、中央部のシンプソン砂漠(Simpson)一五万、
アジア地域では、サウジアラビアのアラビア砂漠(Arabia)二三三万、モンゴルのゴビ砂漠(Gobi)一三〇万、中央ア
ジアのトルクメニスタンにあるカラクーム砂漠(Karakum)三五(三〇)万、カザフスタンとウズベキスタンにあるキジ
ルクーム砂漠(Kyzylkum)三〇万、中国の新疆ウイグル自治区にあるタクラマカン砂漠(Takla Makan)二七(三二)万、
イラン北部のカビル砂漠(Kavir)二六万、シリア砂漠(Syrian)二六万、パキスタン東部のタール砂漠(Thar)二〇万、
イラン東部のルート砂漠(Lut)五万、
アフリカ地域では、サハラ砂漠(Sahara)八六〇万、南部のカラハリ砂漠(Kalahari)二六万、ナミビアのナミブ砂漠(Namib)
一四万、などが有名で、他にも、スーダンのヌビア砂漠(Nubian)、ケニアのニーリ砂漠(Nyiri)、国土の三分の二が砂
漠のモーリタニアの砂漠などがあり、アフリカ地域は小計九〇〇万平方キロで多く、地球全体の合計では一七六五万平方
キロにも達する。
第3章 火山による災害と恩恵
10 火山による災害
世界的な火山の大爆発の際には、多量の高熱の火山灰・火山礫や地表を覆っていた岩石も粉砕されて、空中高く放出さ
れ飛散落下して来る。特に微細な火山灰は火口から空高く放出された四〇〇~五〇〇℃の水蒸気雲から直接降下する。ま
た時速百数十キロの猛スピードで摂氏数百度の高温の熱雲と呼ばれるガス状のものが山腹を駆け下り、最後には一〇〇
〇℃内外の高温の溶岩が噴火孔より溢れ出して山腹を下って来る。今日までのところ、西暦七九年のイタリアのべスビウ
ス火山の大噴火を始め、一七八二年の日本の浅間山の噴火、そして一八一五年に死者九万二〇〇〇人を出したインドネシ
アのタンポラ火山の大爆発、同様に一八八三年に死者三万六〇〇〇人を出したインドネシアのクラカトア火山や、死者二
万八〇〇〇人の犠牲を出した西インド諸島のマルチニック島のプレー火山の大噴火があり、枚挙にいとまがない。
少し前では、フィリピンのピナツボ火山、日本でも有珠山、雲仙普賢岳、伊豆七島の三宅島の噴火がある。今日、世界
的な火山の大噴火は地球上で年間約四~五回発生していると言われる。なお、火山爆発の態様は、火山の性格や噴出物の
性質によって異なり、熱雲は極めて粘性に富んだ溶岩を持つ火山に起りやすいと言われる。熱雲や溶岩が山腹を下って森
林や田畑、人家に襲いかかって持たらす被害は言うまでもなく、極めて残酷な惨状を呈することになる。
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ここで、微粒子の火山灰(火山塵・火山砂も含む)について見ると、降下直後は高温で、且つ徴量の亜鉛、鉛、銅等の
重金属元素の他、塩素ガス、亜硫酸ガス、フッ素ガス等も含んでおり、これが、田畑の農作物に被覆すると気孔を塞いで
枯死される。人体でも毛孔を閉塞して死亡させる。そしてこれらの有害な金属イオンやハロゲンイオン等は、水と反応し
て塩酸や硫酸に変わって植物に吸収されて枯死させたり、それを食べる動物にも異常が見られるという。また火山灰中の
珪酸(火山ガラス)は、人体の肺内に入ると、有害な化学反応を起し、珪肺や塵肺等の症状を持たらしていくこともある
と言われている。
また火山灰が道路上に落下して来ると車のスリップ事故にもなり、火山礫や火山岩になると車のフロントガラスや家屋
の窓ガラスを割ることにもなるし、家屋や草木を倒壊させたりもする。道路での降灰処理は言うまでもなく、降下堆積後、
多量の雨水の為に崩壊して流出した火山灰・火山礫は、新たに人家や田畑や道路等を埋め尽くすばかりでなく、海にも流
出して、時には養殖事業にも多大な影響、被害を与えていると言われる。即ち、火山灰・火山礫等の軽石は、空隙部が多
い為に水に浮き、養殖魚が餌と間違えて食べ、火山灰・火山礫中に含まれる有害な硫黄等の為に、死んで浮き上がる事故
もあるという。また活発な火山の近くの海底から噴出して来る水銀等の重金属イオンによって酸性水塊が生じ、その為に
水銀汚染が出現し、魚類等にも被害が及ぶこともあるという。
なお、火山灰・火山塵が空中で大量に且つ長く滞留すると、その為に日射を遮断して、火山活動があった年は必ずどこ
かで異常気象による冷害を持たらすと言われている。しかし、これは、空中に放出された大量の火山灰が、雲のような役
割をして太陽光線や熱等を遮断するからというような単純な理由ではないと考えられる。即ち、真の理由は、火山塵・火
山灰が空中高く成層圏にまで達すると、微粒子は太陽から地球に降り注ぐ紫外線を吸収したり、宇宙線を錯乱させたり、
また微粒子に含まれる様々な金属イオン等が大気中の水蒸気と反応したり吸収したりして大気圏を破壊し、その為に大気
が太陽光線や熱を調節したり、地球の保温を調整したりする機能に支障を来す為ではないかと思われる。今後の明確な科
学的解明を期待したいものだ。
更に、火山灰は吸水性が非常に強い為に、降雨があると崩壊しやすく、その土石流を防止する為に多大な費用を要して
砂防ダムを建設する必要に迫られて実施されているが、それでも、すぐに多量の土石で埋まり、火山灰地での土砂の崩壊
による悲惨な事故は後を絶たない。しかし、これには火山灰の性状に対する無知から来る人為的な災害による面もかなり
多い。即ち、火山灰地では、昔から生活の知恵として、道路側部や宅地、採取場等の開発に際じては、火山灰が雨水を吸
収しにくくする為に、断崖状に垂直に掘削し、むしろ少し内側にえぐりとるようにして、上から流出して来る雨水が斜面
に直接当らないようにしている。そうして長い間、火山灰地の崩壊を何とか未然に防止して来たのである。これは火山灰
地ではダイナマイトも効を奏さないほどの、火山灰の緻密な結晶構造による噛み合い効果から来る堅固な地耐力を有する
反面、極めて水に弱い性質を示しているものである。
以前にも、政府の旧国土庁が作成した災害発生への注意を喚起させるポスターに、断崖絶壁の真下にある住宅写真が掲
載されていた。これなども、常識的に見れば、極めて危険なものであるように見えるが、その断崖を形成する土質こそが
火山灰が堆積した凝灰岩であり、降水さえ直接に当たらなければ、極めて堅固な地盤である故に安全なのである。全く、
様々な土質に関しても画一的に認識しており、単なる外見的な形状でしか、安全性を見ていないと言うものだ。
火山灰地でも、中央の権威的な役人や学者の指示により、これまでの断崖絶壁を改修するべく、一律に傾斜した法面を
設けて、しかも階段状にして、道路建設や宅地開発を実施しているという。この為、斜面に露出した火山灰が雨水を吸収
してもろくなり、崩壊の大惨事を招いている面も決して少なくない。これらは、正に、火山灰の性状に対する無知、無理
解が、地域住民の長い生活体験上の貴重な知恵を無視・放逐して、「科学的」と称する学問的知識を押し付けた結果、持
たらされている人為的な惨事であろうと思われる。今後の真剣なる検討を切望するものである。
11 火山による恩恵
火山は悲惨な災害面も少なくないが、むしろ恩恵の方が多いと思われる。これまで、恩恵の方が余り気付かれずに、災
害面の方が少し強調されて、大自然に対する心からの感謝の念が忘却されて来たのは、誠に残念なことである。火山灰や
火山礫は、天然のままでも、優れた耐火性や耐酸性や滅菌性の諸性能を有していると思われ、更に今回の新素材の登場で、
数々の優れた性能を有する新材料に生れ変ることが解った。この火山灰・火山礫は、天然の溶鉱炉とも言える火山から、
超高温・超高圧の下で複雑な化学反応を経て生産されて来たものであり、現在の科学に基づく如何なる化学工場でも、こ
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れ程大規模にはとても生み出せない材料である。
正に、大自然が恵んでくれた貴重な資源と言えよう。そして火山灰・火山礫が、新素材の「銑テラ」として、建設材料
のみならず、全産業分野における代替素材として活用できる可能性も大きく、更に、その風化物は、様々に変質して適度
の吸着性、粘着性、吸湿性が発揮されて来て、この特性を最大限に活用すれば、実に用途の拡大は図り知れないものであ
り、我々の生活に多大なる利益を持たらすものであり、現に一部では既に利用されてもいる。
また先述したように、火山灰には、重金属イオンや硫酸イオン、塩酸イオン等の有害物質が含まれる為に、しばらくは
農業には不適ではあるが、しかし降雨と共にそれらの有害物質が除去され洗浄され、そして希釈されたり、更に太陽の光
熱等により適度に風化変質して来た折には、その地域特有の立派な肥料効果を発揮して来るのである。地域特有の火山灰
の成分や性状、及び気候風土等の風化環境条件により、様々に変質した火山灰は、ある種の、例えば、大豆、馬鈴薯、さ
つまいも、大根、クワ、ブドウ、キャベツ、レタス等の作物を始め、牧草地等には好適な土壌を持たらすことになる。
桜島における大根やビワ、鹿児島県地方のさつまいも、十勝平野のブドウ、羊蹄山麓のアスパラガス、山梨県勝沼地方
のブドウ、そして東京近郊(富士、箱根の両火山から持たらされる火山灰層である関東ローム層や立川ローム層)の練馬
大根等や、その他、実に各地域特有の作物の豊かさには、その地方特有の気候と共に、風化した火山灰の肥料効果が大き
く関係しているものと思われる。これらの作物の種を近くの別の場所に持って行っても、これ程、大きく、または豊かに
は実らない。仮に実っても、幾代にも亘って継続されることはないと思われる。例えば桜島大根の種にしても、湾を隔て
た鹿児島近郊に持っていって植えても、これほどに大きく実るのも一代限りのようらしい。
また火山周辺地域では、たとえ有害な金属イオンやハロゲンイオン等が雨水で洗い流されて風化しても作物が育ちにく
いのは、肥料効果がないというよりも、肥料効果が強すぎる為であることも多い。それ故に、火山灰がその給源火山付近
から遠去かって、沖積平野に押し流されるにつれて、様々な有機質土壌と混ざり合ったり、また強すぎる肥料分も適度に
薄められて行った時には、肥沃な地域を形成することになるのである。
今日、様々な分野で利用されているゼオライトや粘土も、火山灰が風化してできたものであることは先述した。概して、
火山灰は新素材の銑テラ製造のような工業的利用には、風化していない新しいものが好適であり、肥料効果や土壌効果を
生む農業的利用には適度に風化したものが好適であると言えるだろう。また火山灰は吸着性や吸水性に富む為に、その降
下堆積地域は天然の濾過装置となる。それ故に火山灰地域を透過して来る水は、地下水として豊富なミネラルを含みなが
ら、地下を濾過してくる飲料水として実に美味く、とても空気に触れて流出してくる河川の水の比ではない。そして透き
通って豊富な水は、富士山麓の富士市のように製紙工業に利用されている例もある。
更に火山活動地域や火山灰地域は、風光明媚な景勝地を作り出し、国立・国定公園の指定になっているところが実に多
く、観光上も多大な恩恵を持たらしている。また、そうした風景の美しさと相まって、一一〇〇余りの温泉地を提供して
くれて、その湧出総量は年に四~五億トンにものぼり、これらの熱水は熱気と共に、浴用の他、農業用暖房や建物の暖房
を始め、地熱発電等にも利用されている。
余談であるが、最近のボーリング技術の発達により、地下深く一〇〇〇メートルから二〇〇〇メートルも掘削すれば、
高知市など、付近に火山もないのに、豊富なお湯が湧き出て温泉地帯となっているケースが続出している。正に、日本全
国、何処でも温泉地帯になり得るというものだ。火山もないのに温泉とは如何なる理由によるのであろうか。
この背景には、温泉には火山系と天然ガス系の二種類があると思われ、東京や千葉などに見られる温泉の源泉は、富士
箱根や伊豆七島の火山系と言うには距離的にも遠く、むしろ、この天然ガス系のものであろうと思われる。実際に、千葉
県は新潟県に次いで全国第二位の天然ガスの生産地域であるのも案外知られていないようだ。そして、天然ガスの下には、
往々にして原油が存在しているのも事実である。
12 異常気象の真因は核実験による放射性塵
今日、地球的規模での異常気象の背景には、成層圏におけるオゾン層の破壊が関係し、その原因として様々なものが考
えられている。その中でも、目下の通説では、地球温暖化現象の主因として、炭酸ガスがあげられているようだ。これは、
炭酸ガスが高度二〇〇〇メートルとか、三〇〇〇メートルとかのハワイ島上空で観測されたから、太陽光熱の反射で地球
の温暖化が発生しているというものである。しかしながら空気よりも重い炭酸ガスやフロンガスは、三〇〇〇メートル上
空の対流圏までは対流現象で舞い上がって停滞することはあり得るかも知れないが、更に、上空の八〇〇〇から一万メー
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トルの成層圏にまで達して、オゾン層を破壊しているとは到底あり得ないものと思われる。
目下、空気よりも重い炭酸ガスが、空気よりも軽いメタンガス等に間接的に影響を及ぼしていき、その結果、オゾン層
の破壊をもたらしているといった間接効果ガス説なるものが登場しているようだが、真の原因が分からずに、迷走してい
ることを伺わさせるものだ。即ち、間接効果ガス説なるものも、炭酸ガスが直接的な原因であることに対して、何か不確
実な要素があって、後ろめたい自信喪失が見え隠れしているようだ。それ故に、炭酸ガスを間接的原因としているもので
あろう。炭酸ガスが直接的な因果関係でなくて、間接的な原因では、結局、真の因果関係が何も解っていないことを自ら
証明するものであろう。
この炭酸ガスは、森林でも植物の光合成作用によって空気中から吸収されて、酸素に変換されて空中に放出されるし、
また雨水等に溶解して海洋に運ばれ、そこでは貝等の炭酸カルシウムとして吸着されて沈殿し、大自然界では巧く循環し
ているのである。それに植物による光合成作用と言っても、単純に空中に現存する炭酸ガスだけの吸収分解だけでは、量
的にも大きく不足するようである。そこで、光合成作用などで大量に消費される炭酸ガスは、我々の想像を遙かに超えて、
地殻内部から大量に空中に放出されているようだ。即ち、炭酸ガスは、植物の光合成作用による吸収・蓄積から、植物の
腐敗によって大地へと蓄積され、また、海洋の貝殻への吸着・蓄積から、海洋底へと堆積されており、更に、そこから地
殻内部を通して大陸地殻の隆起へと、そして地上への放出、空気中への還元へと、実に、壮大な地球規模での大循環作用
が働いているようである。
ところで、異常気象は太古の昔からも存在したが、地球全体での温暖化、寒冷化であった。然るに現在での異常気象は、
地球上で同時に両極端な現象が発生しているのである。即ち、猛暑と寒冷、豪雨と干ばつ等の両極端な現象が同じ地球上
で同時に起こっているのである。酸性雨や光化学スモッグなどの大気汚染現象と、オゾン層破壊に伴う異常気象や地球温
暖化現象とは、大きく背景や因果関係が異なっていると思われる。即ち、現在の世界的な異常気象や地球温暖化の主要な
原因は、炭酸ガスやフロンガスでもないものと思われる。この炭酸ガスは、窒素酸化物も同様に、光化学スモッグや酸性
雨などの大気汚染の原因にはなっても、今日の極めて深刻な地球温暖化や異常気象の主因ではないようだ。こうした両極
端の異常気象の現象は、一九六〇年頃から現れて来たようである。それが産業の発達と共に、炭酸ガスの大量排出とも関
係して炭酸ガスが犯人と誤認されたのであろう。
また、火山灰も気象の異常化の原因として指摘されているが、火山噴火による火山灰が異常気象に与える影響は短期で
あり主因ではない。確かに、火山の大噴火直後は、局所的に太陽光線を遮って寒冷化し、その後に一時的に冷害として冷
夏の発生や、降水量に異変をもたらして農作物の生育に影響を与えることもあるようだ。即ち、火山の爆発が強力である
程、微細な粒子の火山灰や火山塵は空中高く放出されて、一部は成層圏にまで達することがある。火山灰は極めて吸着性
に富んだ複雑な結晶の物質であり、空中に漂流して落下して来る間にも実に様々なイオンや物質を吸着して来る。火山灰
のこの吸着性は、太陽からの紫外線をもよく吸収し、また大気圏の水蒸気をも実によく吸収するものと思われる。その為
に、太陽からの紫外線の地上への浸透が極度に低下し、太陽光線(宇宙線)に異常な拡散・反射現象を引き起こして、局
部的に寒冷化等の異常気象を招来させるものと考えられる。
しかしながら、火山灰が空中に漂流している間は通常は一年程である。時折、世界的な且つ歴史的な大噴火の際には三
年程も空中に滞留していることもあるが極めて希有である。今日、世界的な火山の大爆発は年に四~五回程であり、その
都度、空中に放出される火山灰によって、地域的に寒冷化等の異常気象が一時的に発生しているが、現在のような世界的
な異常気象の直接的原因ではないように思われる。即ち、火山灰や火山塵が極めて大量に且つ長期間に亘って噴出される
ような大噴火が、世界各地で頻繁に発生しない限り、今日見られるような長期に言る深刻なオゾン層破壊等の、世界的規
模での異常気象や地球温暖化の真因ではないと思われる。それに火山灰は、一見、異常気象として人類に悪影響を及ぼす
ように見えるが、降下して風化して来た折りには、恵まれた気候環境の下で、有益な肥料効果を発揮して肥沃な大地を提
供し、人類に大きく貢献してくれているのである。これは雪の場合も同様である。大自然の様々な現象は、一見、災害と
見えても、結果的には多大なる恩恵を与えてくれているのである。
然らば、今日のように、地球上で同じ時期に同時に地域により、干魃と豪雨、寒冷・酷寒と猛暑・酷暑の極端なる気温
や降水の激変を発生させ、そして、農作物の収穫を始め、魚の移動にまで多大なる影響を及ぼしつつある異常気象は、一
体何に由来していると言えるのだろうか。最近の単なる地球温暖化とか、少し前に喧伝された氷河期到来の地球寒冷化な
どと、画一的に単純に片付けられるものではないだろう。残念ながら、目下のところ、明確に解明されてはいないように
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思われる。
想うに、現在のオゾン層破壊や世界的に両極端なる異常気象は、火山灰や火山塵と一見よく似た微細な物質を空中に大
量に且つ頻繁に放出させている人為的な大爆発に起因しているものと推定される。即ち、地球規模の異常気象の真の原因
は、過去の放射能核実験による多量の放射性塵によるものと思われる。この原子核実験は、大東亜戦争の末期の一九四五
年の広島、長崎への原爆投下に始まって、一九六〇年代頃から多発化して、これまでに、毎年平均で五〇回から六〇回ほ
どで推移し、累計で一八〇〇回以上も実施されて来たものである。実に、この核実験による放射性塵が成層圏などの地球
環境・生態系を狂わせているものと思われる。米国の原子物理学者は、放射能核実験は自然界の生態系に対して何も影響
は無いなどと明言しているが、一体何の根拠があってそう断言できるのか理解に苦しむ。ただ未解明・未検証であると言
うことではないのか。それとも、核実験に対する驚異や恐怖感を払拭し安心させるための、根拠なき単なる方便に過ぎな
いのかも知れない。
ところで、火山の爆発と核実験による爆発は、別に詳述するが、実に様々な面で類似している。火山噴火における爆発
噴火の噴煙に見られるような噴火現象も、正に原水爆の核実験における大爆発のキノコ雲の発生とそっくりであることに
気が付くことであろう。放出される火山灰や火山塵と、放射性塵とも互いに微粒子であり、反応性(吸着性)に富み様々
なイオンや物質を付着させるものと思われる。ただ一点のみ性質を大きく異にする。それは、火山灰や火山塵には放射能
が極めて少ないか殆ど無いのに対し、核実験による放射性塵には極めて大量の放射能が含有されているということであ
る。放射性塵は、空気中からもまた地球上からも容易には消滅していかないものであり、生態系を大きく狂わせていって
いるのであると思われる。最近の調査では植物の内部に放射性塵が大量に発見されているといった報告も為されているよ
うだ。
そして、この放射性塵は、火山灰や火山塵と同様に、空中高く舞い上って一部は八〇〇〇から一万メートルもの成層圏
に達して太陽からの紫外線を吸収したり、反射、錯乱したり、また大気圏の水蒸気層にも何らかの影響を与えるものと思
われる。しかし、この放射性塵は、火山灰や火山塵と異なり放射能を大量に含有しているが為に、単なる吸着や吸収では
済まされず、物理化学的に複雑な諸々の反応を引き起こし、大気圏全般に亘って様々な未解明の生態系の破壊現象を招来
させることになるものと思われる。
先程述べた自然現象の火山爆発による火山灰と異なって、人為的に核爆発を起して放出せしめた大量の危険な放射性塵
は、爆発の規模の大きさや頻度の高さによって、実に世界的で極端で長期的な異常気象を引き起こすばかりでなく、地上
に降下して来た折にも、水や農作物等に浸透して、これを飲食する人間の身体内部にまで間接的に、また直接的に侵入し
て諸々の悪影響を及ぼして環境を破壊していくのである。そしてこの放射性物質が核壊変して放射能が消去する迄には、
実に天文学的な時間を要するのである。大量の放射性塵による長期に亘る諸影響は、現在の科学では充分に解明し尽くし
ているとは言い難く、実のところ、殆ど解っていないのが真相ではないかと思われる。
なお、特に原水爆の核実験が始まって活発化して来た第二次世界大戦後において、台風の進路や速度等の諸性状も著し
く変化して異常化して来ており、異常気象も世界的な規模で長期化且つ極端化して来ているのである。日本の気象庁も、
近年の異常気象は、特に一九六〇年代に入ってから活発になったと認めている。特に、日本に襲来する台風を注意深く観
察してみると、実に予定進路を急変させたり、一時的に前進を停滞させるなどの迷走がみられるのである。今後とも、極
端な異常気象の主要な原因は放射性物質によって引き起こされていくものと確信できる。太古史における幾多の気候激変
によって、ある種の動植物が急速に絶滅したり、突然変異的に出現したりして来ているのも、宇宙からの各種の放射線(太
陽の高エネルギー粒子・宇宙線)や地球内部からの諸々の放射線・素粒子の大量放出が、何かの原因で発生した為に起こ
ったものと推察される
さて、地球温暖化現象や異常気象の多発化が炭酸ガスの大量発生による真因では無くても、炭酸ガスを減少させること
が、大気汚染の防止や酸性雨対策に貢献できるのならば、それも大いに結構なことでもある。敢えて誤った原因説でも反
対することも無いし、石油消費を大幅削減できる方策を講じる道を切り開いていく口実もできるというものであろう。皮
肉な事例は歴史上山ほどあり、人類に対する神の為せる仕業であろうと思われる。当方は、何も炭酸ガス排出削減を緩和
したり反対するものでは無い。ただ、異常気象や地球温暖化のオゾン層破壊の真因が放射性核実験にこそあると指摘し、
核戦争や核実験が、生態系を破壊し地球を滅亡させる元凶であることに強く警告を発するものである。
ところで、既に地磁気の逆流が発生したり、地球を取り巻く磁気量も著しく減少するなど、地磁気に異常が発生してお
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り、最近特に頻繁に見られる大量の鯨やアザラシなどの座礁も地磁気の乱れによる方向感覚を喪失した異常行動に他なら
ないものと推察する。日本の東京などにも現れるアザラシも、海水の冷却化と共に、方向感覚を喪失した結果ではないか
と思われる。次第に人間の精神状態にも異常さが反映されていくものと思われる。
また、赤道面での半径が約六三八〇キロメートル地球内部にコアとして存在する半径約二四四〇キロメートルの内核
が、何と地球の中心から六〇〇キロもずれているという観測・指摘もあるようだ。目下、南極大陸の下から石炭が発見さ
れたりしているが、この事実がかつて南極が樹木の生い茂る暖かい地帯であったことを物語っており、何らかの地軸の移
動などの地球的規模の変動で極地化したものと思われる。
今や、一部の研究者から、過去の地球の歴史において幾度となく発生した地球軸の移動(ポール・シフト)が、近未来
において発生することがまことしやかに予想されているが、案外、こうした一連の地磁気の異常さが拍車を掛けていくの
かも知れない。一体何が地球規模の異常気象、地磁気の乱れ、内核のずれなどの原因であるのか、またそれらが将来の地
球運命に如何なる影響を与えるのかは、殆ど解明されていないで、右往左往しているのが現状であろう。
第4章 失われた歴史上の記憶を訪ねて
13 古代ローマ帝国の火山灰利用
天然火山灰を混和材としてセメントモルタルを作り、これを建造物に利用するのは、何も現代のポゾランセメントにお
ける技術が最初ではない。実は遠い昔において大々的に利用されていた実績がある。即ち、古代ローマ帝国におけるもの
である。案外、古代ローマ帝国の遙か前のエジプト王国においても使われていたようにも思われるが、目下、遺跡として
明瞭に残存して周知のものでは、古代ローマ帝国における数々の建造物がある。
現在のイタリアを中心とする地中海地方には、古代ローマ帝国の数々の遺跡や建造物が現存している。水道や道路を始
め、バシリカ(公会堂と法廷とを兼ねた建物)、公衆浴場、劇場、円形劇場、キルクス(軽車競争場)、彰徳建造物(勝
利門と円柱塔に大別される入噴墓、噴泉舎、泉亭、倉庫等である。そしてローマ市内のコロセウムやパンテノンやその他
多くの建造物は、今日に至るもさほどの亀裂が入ることなく風化もせずに、抜群の耐久性を誇っている。同じローマ市内
にある建造物でも、数十年前に築造したコンクリート建造物が、既に様々な要因により亀裂が入ったりして補修を必要と
しているのに対して、これら古代ローマ帝国時代の建造物は、二〇〇〇年間を経過しているにも拘らず、さほどの損傷も
なく、中には今日でも充分に利用可能であることは実に驚嘆に値するものだ。
このように、極めて長期に亘って風雨や太陽光線・熱、そして地震等の厳しい自然環境の下においても、著しく風化す
ることなく、今なお堅固な構造体を有している原因は、建造技術や材料の質及び地盤に依拠しているものと言えよう。古
代ローマ帝国においては、古代ギリシアから伝承されたアーチ構造が、完成された形で建造物に多く採り入れられていて
構造耐力の向上を図っているが、何よりも建設材料として天然火山灰が豊富に利用され、そして堅固な地盤の火山灰地の
上に建設されていた。
イタリア半島は、古代ローマ帝国時代に栄えたポンペイの町を一瞬に死滅させたべスビウス火山の大噴火を見るまでも
なく、古代より絶えず火山の噴火に見舞われて来たところであり、地中海火山群の中にある。その為に半島全域及びその
周辺地域には多量の火山灰が降下堆積しており、その自然環境は古代ローマ帝国時代も今も同様だったと思われる。従っ
て、当時の建設技術者達は、全土を厚く覆っている火山灰を極めて身近な天然資材として利用し得る環境の中にいたと言
えよう。そして彼等は、天然火山灰を独創的に分析し究明して積極的に利用したというよりも、古代ギリシアよりの技術
を受け継ぎ、身近に天然火山灰が豊富にあるという環境も手伝って、その中で実用上の様々な知恵や経験を通して、火山
灰の優れた諸性状を大々的に実証していったものと推察される。
古代ローマ帝国が北方に版図を拡大していく際に築いた砦・城壁などにも火山灰が多量に利用されたものと思われる。
そうした堅固で耐火性や耐久性に富む火山灰利用の優れた建造技術や豊富な天然火山灰が存在していたからこそ、古代ロ
ーマ帝国もその領土を拡大でき、また巨大な建造物によって多くの人々を畏怖させて権力を集中でき、強力な帝国を築き
得たのではないかと想像される。彼等が用いた材料は、石灰、石膏、天然火山灰を適宜組合せて気硬性(空気、即ち常温
で硬化する性質)のモルタルとして使用したものであり、これは石材と石材との接合にも利用されたらしい。
また道路にも火山灰は極めて多量に活用されていた。即ち、古代ローマ帝国内には縦横に走る道路網があり、そこには
強力なローマ軍の戦車や荷馬車が走っていた。当時の戦車は、鉄の車輪を付けた台に軍人が乗って馬に引かせて走らせる
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ものであった。その戦車が重装備をして速やかに移動して戦闘に備えたり、域内の荷馬車等の大量移動によって活発な商
業活動を支えたりするのにも、何よりも堅固で耐久性に富む道路が必要であった。それを可能にしたのが実に火山灰使用
の道路であった。この道路は、下層にはモルタルで接合した切石を敷き、中層には砕石、砂、石灰、火山土から造ったコ
ンクリートを打ち、上層にはモルタルで接合した多角形の切石(多くは玄武岩)で舗装したものであった。
そしてこのモルタルは石灰とポゾラン(天然火山灰)によって造られ、何でも接合し得たのであった。例えば凝灰岩の
細片、溶岩の塊り、煉瓦の破片、それどころか、鉱石を精錬するときに出るかす、即ち鉱滓(例えばイギリスにある多く
のローマ時代の道に使用されている)までも接合したようだ。これ等の技術的性質から言うと、近代的な道路コンクリー
トに比べてもそれ程劣るものではなかった。今日残っているアッピア街道は、前三一二年にローマとカプアとを結ぶ為に
造られ、その後、更に延長された最初の一級国道であるが、現在でもさほどの損傷もなく、充分使用に値する程の抜群の
耐久性を誇っていると言われる。なお、これらの道路技術は、ローマ人の独創ではなく、エトルリア人、ギリシア人、更
にはカルタゴ人、フェニキア人、エジプト人等から学んだと思われるが、道路網を造ったのはローマ人の創造であったと
言える。
このように古代ローマ帝国においては、建築や土木等の全建設分野に火山灰が極めて有効に利用されて帝国の繁栄をも
たらした。しかし、古代ローマ帝国の多くの技術は、殆どが先の古代ギリシアから伝承されたものであり、ローマ人の独
創によるものは極めて少なく、彼等は実用的に改良を重ねただけであったようだ。この火山灰を用いた気硬性モルタルも、
古代ローマの独創ではなく、古代ギリシヤやそれ以前の古代エジプトから受け継いで来たものと思われる。
然るに残念ながら、古代ローマ帝国時代に見られた火山灰を有効に且つ大々的に用いる技術は、それを最後にして、古
代ローマ帝国の崩壊と共に、その後、中世を経て近世初期に至るまで、セメントの歴史に大きな変革や進歩は見られなか
った。と言うよりも次第に忘れ去られて来た感がする。世界の中世や近世の建造物を見ると、一部には明らかに火山灰利
用と思われるものもあるが、極めて少なく且つ部分的使用である。歴史的な大きな流れとしては、残念ながら、古代の優
れた技術は幾多の戦乱等によって、知識を所蔵したと思われる図書館も破壊されて忘却され、今日に伝えられることがな
かったと言えよう。
14 古代ピラミッドへの疑問
ところで、古代ローマ文明以前の古代エジプト文明においては、歴史的にも有名な多くのピラミッド群があり、目下、
これら巨石建造物が如何にして建造されたのかは正確には解明されてはいない。古代エジプトのピラミッド以外にも、中
近東のパールベックの神殿、イギリスのストーンヘンジ、フランスのドルメン、メキシコの巨石建造物や南太平洋イース
ター島のモアイ像やナイマールの遺跡群、その外、世界各地に存在している巨石建造物に対しても、その建造方法・手段
に関しては、誰も明瞭なる解答を導き出していないものと思われる。日本でも飛鳥時代の奈良の石舞台をはじめ、各地に
残る巨石やその建造手段に関しては大いなる疑問の残る建造物も多いと言えよう。
一般的に、エジプトのピラミッド建造における通説といわれているものは、遠く四〇〇キロも離れたエチオピアの山中
から数十万人もの奴隷や農閑期の農業従事者等を使って、筏(いかだ)やコロを利用して運搬し、巨大なスロープを建造
して運び揚げていったというものである。ところがそうした膨大な建設労働者の人口を擁した都市の痕跡も見当たらず、
また道具と言ってもコロやワイヤーぐらいで果たして可能かどうかの疑問も依然として根強いと言えよう。恐らく当時
は、道具類として滑車等は存在しなかったであろう。
それにピラミッドの石材にしても小さいものでも数トンあり、巨大な石材に至っては数百トンもあることが確認されて
おり、これらの巨石をどのようにして調達し、一体如何なる材料で、そして建造手段で、更に如何なる目的で建造したも
のであろうか。目的としては、墓だけの建設でなく、宮殿や何か地球的規模での大破局の退避壕としても機能していたの
ではないかと思われ、様々な機能や目的を有した複合建造物であろうと思われる。
ところで、外国の某研究者の詳細な分析によれば、太古の巨石建造物の中でも特に注目されるのは、エジプトの大ピラ
ミッド群であるが、ピラミッド群は、ナイル河から離れた砂漠の中の堅い岩盤の上に建造されているという。そしてケオ
プスの大ピラミッドは、エジプトのナイル河の三角州に沿って狭い帯状の土地に広がっている約六〇ほどの不可解な石造
建造物のひとつであるが、それぞれ、二トン半から一〇トンの重さがある二六〇万個の石材から構成され、通路に沿って
五〇トン以上の平石が並べられてあり、また主室の上部にはそれぞれが八七トンの重さがある八四個の重量緩和用の梁
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が、互い違いに積み重ねられて置いてあるという。
この大ピラミッドの建造については、ギリシアの歴史家へロドトスがエジプトの神官から聞いたものとして、ケオプス
王の墓として建てられ、その建造工事には一〇万人の労働者がかかり、完成までには二〇年の歳月を要したとされている。
そして、このことからその建設は、紀元前二六〇〇年から二五〇〇年、古王国時代の初期とされている。そして今日では、
これに基づいて、通説として、ピラミッドの石材は遠くエチオピアの山から切り出して、ナイル河の水運を利用して平底
船により下流に運搬し、そして長大な傾斜路を造って引き上げ、要した大労働力は、古代の専制的な巨大集中権力の下で
集められた奴隷や人夫達によるものとされている。しかし、実にこうした通説では多くの矛盾が見出されるのである。
まず、ピラミッドの壮大さと数を考えてみると、人力でピラミッドを建造するのに必要な大労働力をまかなえられたよ
うな都市発展の形跡がないという。また、ピラミッドに関しては、その後のエジプト王国の石柱や建物が、莫大な量の石
や材木、装飾品、就労人員、更に建築家や技術者達の名前まで刻明に書き記しているのと全く異なり、何一つ記述された
ものはなく、その建造工事に使われた方法や道具などは全く解っていないとされる。ピラミッドが建造されたと想像され
ている歴史時代に知られていた金属は、銅または鋼の合金、それに錫と青銅だけであったと考えられている。
そうした金属の他には、ロープやローラー、そして坂道の利用しか技術的に知られてはいなかったようである。にも拘
らず、四〇〇キロも離れたエチオピアの石材採取地より、巨大な石材を切り出し、切断、整形、磨き作業を毎日多量に行
い、ナイル河を平底船にて横切って運搬し、無数の傾斜路上を引きずって運び、ピラミッドの定位置に載せることができ
たのは如何に説明し得るのだろうか。
ピラミッド群は、他の巨石建造物の場合と同様に、車輪、滑車、複滑車等を使わずに建造されたことは明白であるとさ
れる。当時のサハラ砂漠は、洞窟壁画や古文献により緑したたる牧場であり、象も多勢いたと想像されるが、仮に象を多
用して運搬したところで、次第に狭くなっていく傾斜路の最終地点であるピラミッドの最頂部の巨石を、狭い場所でどの
ような道具を使用して、どのように定位置に固定し得たのか全く説明できない。石材の表面は寸分の狂いもなく滑らかに
なっていると言われ、据え付けにおいてもぴったりと密着させて定位置に据え付けられているという。
これは最早、通説の解釈では全く不可能であることを示している。事実、今日の最高の機械装置やコンピューター利用
の建設技術を持ってしても、大ピラミッド群と同じものを建造することは不可能であると多くの専門家が認めている。従
来のピラミッドの研究者の多くも、ここまでは分析して、人海戦術による通常の建造方法には多大な疑問を提起して、通
説を強く否定するのであるが、その建造手段については何も解明できないでいる。
15 太古巨石建造物は人工火山灰コンクリート
世界的に最も有名なエジプトの古代ピラミッドにおいては、如何なる科学者でも、その建造目的をはじめ、建造材料、
建造手段に関して明解なる結論を出してはいないようだ。これまでの多くの学説や研究は、ピラミッドの石材を遠方から
大量の奴隷を使って運搬して来たとするところに、発想の出発点から多くの矛盾を抱えていた。そこで、この大ピラミッ
ド群の建造方法について別の角度から考察してみることにする。
石の専門家によれば、石材にしても、当初は人工で混練したものか自然のものかの区別が解るが、時間の経過と共に、
次第にその区別が解らなくなるという。当方が洞察するに、自然か人工かの判断は、その石材の表面を見れば明白となる
であろう。人工のものにはどうしても石灰や岩塩、またはニガリなどの様々な物質を混練するが為に、不思議とコケが生
えにくい性質を有するように思われるが、これは専門家でも案外気付いていないようだ。当方はこうした何気ない事実に
も着目して行った。古代エジプトのピラミッド、そしてマヤ文明やインカ文明などの巨石・ピラミッドを始め、世界中の
古代・超古代文明における巨石建造物の巨石には、周囲の天然石と異なり、不思議と石の表面にコケが生えていないよう
だ。これは、現地を訪れて巨石を観察した者の紀行文でも指摘されていることだ。人工石には、湿気などでカビこそ生え
るが、特有の現象として、天然石に見られるようなコケが生えないようだ。
ところで、ピラミッドの石を破壊すれば、中から何と髪の毛や落ち葉が時折発見されることもあるようだ。また、かつ
てフランスの応用化学者ヨセフ・ダビドビッツ博士が、米国の新聞「マイアミ・ヘラルド」紙に、「カイロ郊外ギザに残
るピラミッドが、実は自然の石ではなく、一種のコンクリートで造られたものだった」、「岩の中から人間の髪の毛が出
てきたのがなによりの証拠」との主張を紹介した。
恐らく、当方がかつて在日大使館を通じて全世界に発信した情報が何らかの形で伝わったものであろうと推察されるも
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のだが、まさか当方の示唆がヒントになったとは、公言できないものだろう。しかし、時期的にも合致するし、後述する
聖心先生も、そのような因果関係を顕証し示唆しておられたものだ。参考までに、新聞記事を全面掲載しておこう。
毎日新聞紙一九八三年九月一六日付け夕刊報道
ン! ピラミッドはコンクリート製?
仏の学者が新説 エジプト当局は一笑
【カイロ一四日UPI】カイロ郊外ギザに残るピラミッドが、実は自然の石ではなく一種のコンクリートで造られたもの
だったーーーという珍説(?)がこのほど発表され話題を呼んでいる。エジプト文化財委員会は「全く非論理的な仮説だ」
と一笑に付しているが、コンクリート説の側は「”石”の中から人間の髪の毛が出てきたのがなによりの証拠」と主張す
るなど、ピラミッド建造のナゾをめぐる新たな議論はなお続きそうだ。
新説を唱えているのは、フランスの応用化学者ヨセフ・ダビドビッツ博士。このほど米国の新聞「マイアミ・ヘラルド」
紙に「カイロ部外のピラミッドは採石場から切り出した石灰岩で造られたとされているが、実は型に流し込んで固められ
た合成物(コンクリート)だ」と発表した。
同博士はピラミッドの外面を覆う石のかけら五つを化学分析と顕微鏡によって調べた結果、石灰岩と貝の化石を砕いた
ものの合成物だとの結論に達したもので、とくに石の中から見つかった長さ二センチ五ミリの人間の髪の毛が決め手にな
っているという。「この毛は、コンクリート用の混合物を作っている途中で作業員の頭から落ちたものに違いない」とい
うわけだ。
しかし、エジプトの考古学者で同国政府直轄の文化財センター前所長、ガマル・モクタール氏にいわせればダビドビッ
ツ博士の説は全く論外だ、ということになる。「カイロの周辺には花崗岩の岡がたくさんある。そこから切り出せばすむ
ものを、わざわざ複雑な工程を経て一個の重さが一トンもある(コンクリートの)石を二五〇万個も造る必要があるだろ
うか。それに、当時の作業員たちは髪を長くしてはいなかった」というのがモクタール氏の反論。
このように、人工石にはコケが生えないことや、巨石から髪の毛が発見されることからも、自ずと、巨石は自然石を切
り出したものではなく、火山灰を利用した人工コンクリートであろうと推察できるものだ。巨石の多くが、表面に青草も
コケも生育していないのも、正に新しい天然火山灰の有する耐酸性や滅菌性によるものであり、新素材銑テラとの間で多
くの類似点が見出されるのである。
こうした種々の情報を踏まえて、しかも今回、登場した火山灰を主原料とした高性能な新素材銑テラの技術を前にして、
古代ローマ帝国のはるか以前のこの大ピラミッド群の建設にも活用されたのではないかと、当方は実に重大な結論に到達
した。つまり、古代乃至超古代の巨石建造物に利用されている材料こそが、実に火山灰そのものだということである。つ
まり、建造材料は火山灰であり、建造手段は人工での混練によると言うことである。
既に紹介したように、火山灰利用の新素材は、天然火山灰をセメントと特殊混和剤を調合させて、常温常圧下で、即ち、
大自然のそのままの状態で極めて優れた強度や防水性、耐火性、表面平滑性、滅菌性、耐酸性、耐久性に富んだ材料に硬
化させ得るものである。全くこれと類似の技術的原理が大ピラミッド群の建造にも活用されていたものと考えられる。既
に、石灰を砕いてセメントを作る技術は、古代ローマ帝国はもとより、古代ギリシアやはるかそれ以前の古代エジプトで
も使用されていたと言われ、それ故に古代エジプトの初期またはそれ以前の建造になると思われるピラミッド群の建造当
時も、石灰を粉砕することによりセメントを生成し、これが水や空気の存在下で硬化することは知られていたものと思わ
れる。そして、大ピラミッド群が建造されている周囲は、地中海周辺でも地質学上全く安定している唯一の地域であるが、
豊富な砂漠の砂に恵まれているところでもある。この砂漠の砂は、火山砂のような極めてシリカ質に富んだ多孔質のもの
ではないかと思われる。
ピラミッド群の建造地域に火山は直接存在しないが、周囲にはセラ火山を始めとする地中海の諸火山や、紅海や東アフ
リカ大地溝帯における諸火山、またサハラ砂漠中央部や北アフリカの各火山、そして大西洋のアフリカ大陸に近い各火山
諸島がある。それ故に、これらの火山地域から様々な風に乗って噴出物である火山灰・火山砂が運ばれて来ている可能性
も大いに有り得る。
また、大陸塊や大洋の火山から噴出されたアルカリ質火山灰ならば、粘着力に富む為に混和材も粘土や泥等で十分であ
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ったことと思われる。こうして、砂漠の砂(天然火山灰・火山砂)と石灰と岩塩と水、それに適当な混和材を調合して大
ピラミッド群の石材は現地で生産されたのではないかと考えられる。即ち、石材を遠方から切り出して運搬することもな
く、現場で必要に応じて適当な型枠材を固定してそこに火山灰系統のモルタルを打設し、太陽の自然光熱の下で乾燥固化
させたものと思われる。それ故に、より少ない労働力によって優れた諸性能を持つ石材、恐らく新素材銑テラと類似のも
のが大量に且つ簡単に作り出すことができたものと想像できる。思うに、石灰や岩塩は如何にして調達したのか解らない
が、恐らく、ピラミッド周辺の地下には石灰や岩塩等の資源が埋まっているものと思われる。また、ピラミッドの建設の
際の道路や住宅は風砂によって埋没したのであろう。これも砂漠の中から都市の痕跡や住居跡が発見されるものと思われ
る。
なお、ピラミッド以外の他の多くの巨石建造物も同様の原理で作られたに違いない。大ピラミッドを中心とした世界中
の巨石建造物の建造手段や材料について、長い間、多くの謎に包まれていたが、火山灰利用の新素材の新規で画期的な製
造技術や、優れた諸性状を詳細に分析すれば、これらの巨石建造物の場合にも適用されたものと確信できる。新素材銑テ
ラの登場によって、即ち、天然に豊富に存在する材料を用いて、極めて簡単に特殊な製造装置や加工手段も必要としない
で、優れた性能を生み出せる技術の登場によって、太古史の未知の一端が解明され得るものと思われるのである。
今回の火山灰利用新素材に接して、それと極めて類似した混練技術が古代において実施されていたのではないかと確信
した次第である。即ち、これらの古代ピラミッド建設に際しては、通説に言われるような天然の石材を切り出して建造し
たものではなく、現地の諸材料を混練して固めた人工コンクリートであり、恐らく、砂漠の砂(天然火山灰)、岩塩、石
灰、粘土、有機質剤などを常温で混練し凝固させたものであろうと思われる。即ち、その材料は付近にある砂漠の豊富な
火山灰であり、それにナイル川の粘土や有機材等が混和剤、減水剤等として用いられ、セメントの石灰にしても、石灰石
を焼いて加工して生成する現在のような面倒な手段を採ることもなく、天然石灰石をそのまま微粉砕して用い、一部では
石灰には、大量のサンゴや貝殻が用いられたものと思われる。そして表面の平滑性や急結性を発生させる為に塩分(岩塩
またはニガリ)等も少々加えられたものと考えられる。そしてアルカリ性を増す為の混和剤も、天然界には豊富に存在す
る石鹸水のような有機質溶剤であったものと推察できる。また新素材の軽量性から言っても、これらの巨石の重量は、今
日、考えられているよりは若干軽いのではとも考えられるのであり、現にそうした指摘をする研究者もいるらしい。
なお、天然火山灰のような無機物を、天然の石鹸水のような有機質溶剤によって堅固に硬化させることは、この大自然
でも頻繁に見られることであり、大自然と一体に生存している鳥や動物が何よりもよく知っている。即ち、ツバメは、ど
のようにして巣を作るのかを観察して見ると解る。ツバメは小枝や葉、草等を補強材として、土や泥を口にくわえて運び
積み重ねて巣を作る。土や泥の粘性のみでは、土同士の接着が堅固にできないばかりでなく、土の表面強度や防水性の点
でも難点があるものと思われる。そこでツバメの巣作りを細かく観察すると、ツバメは運んで来た土や泥を接着させるの
に、実に自分の唾液を接着剤として利用しているのである。つまり土や泥という無機物に唾液という有機系溶剤を一種の
混和剤として加えて調合し、そして堅固に硬化させているのである。そしてこの原理は他の様々な動物にもよく見られる
ものである。
余談だが、奈良の石舞台の石でも同様にコケが生えていずに、周囲の石とは何処か不自然なものを感じるものである。
それに周囲にはそのような巨石は全く存在していないのである。上流から運び出してきたにしても、当時はロープやコロ
しかないのに、、一体如何なる手段で運搬したのであろうか。これも、粘土を石灰で固めたものが岩石化したものであろ
うと推察するものだ。直接には火山灰を使ってはいないが、実に粘土こそ火山灰が風化したものに他ならない。粘土の優
れた点は、たたきと言って土間コンクリートにも使われてきた経緯もあり、また耐火性の七輪に使われている材料も、粘
土に他ならないものだ。
ところで、目下、琉球諸島の南端の与那国島の海底から、巨大石造物の遺跡が発見されており、自然のものか人工のも
のかで、専門家の間でも大いに見解が分かれているようだ。仮に、人工のものだとしても、石造自体がエジプトピラミッ
ドにおける人造石と同様に、人工の火山灰利用コンクリートではないかと思われる。これも、周囲の海底の岩石群などと
比較すれば、案外、周囲の天然の岩石ほどには、コケが生えていないのではないかと思われる。そこからも、天然石か、
人造石かの区別も付くのではないかと思われる。これこそ、後述するように、一万二〇〇〇年前に、地球規模の大変動に
より、即ち、地殻内部の放射性核融合反応を引き起こして崩壊し沈没したとされる超古代ムー文明の残滓ではないかと思
っている。
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なお、それでもピラミッドの建造の目的が未だ不明だが、聖心先生は、「ピラミッドはタイムトンネル(カプセル)だ
った。また、ピラミッドは待避壕と宮殿、墓所を兼ね備えていたもので、頂上の冠石はダイヤモンドの金剛石だった。そ
して盗難に遭って今は無いが、その冠石は磁力線を防ぐものだったようだ。一部で、石棺の中にミイラもなく墓所ではな
いという指摘もあるが、石棺の中味のミイラは装飾品と共に、蓋も盗難に遭ったものであろう。蓋は比較的軽いものだっ
たから、容易に運び出せたのだ」と言われた。
16 巨石建造には魔術、魔法、魔力が関与した
さて、超古代や古代の巨石が人工コンクリートであることを指摘したが、それでは如何なる方法で、地上から様々な材
料を運搬し混練させて積み上げ製造していったのであろうか。最近の調査では、何十万人もの奴隷を過酷に使役していっ
たものではなく、仲むつまじい家族の生活ぶりが存在したことが指摘され、極めて平和な環境の下に建設されたことも分
かってきている。
然るに、巨大なピラミッド建設工事においては、やはりギリシアの歴史家ヘロドトスがエジプトの神官から聞いた一〇
万人の労働者、あるいはそれ以上の数十万にも上る労働者による壮大な事業であったのは明らかだ。
そこで、聖心先生は、「その建設労働者を駆使する手段としては、労働者に一種の魔法や魔術などの催眠術を施してい
ったものであろう。なお、王家の谷には怨念が多いが、個々の巨石の建造における材料の混練に際しては、怨念はなく、
さほどの魔力もなく、ピラミッド自体にも魔力も感じられないが、巨石を積層する建設には、現在の科学では想像も付か
ないほどの物体浮揚などの魔力、魔法が用いられたものである。ピラミッド建造の謎も、魔力の点にまで行かなければ本
物(真の解明)には成らないであろう。畜生死霊魂の魔働によるこうした魔力や魔術を駆使(利用)していったがために、
魔神、魔仏(畜生死霊魂)の祟り(罰)を受けて、古代文明は、突然の天変地変を招来して、その影響を受けて崩壊して
いったのだ。」とご指摘された。
ピラミッドの建設には、労働者への催眠術や、巨石浮揚の魔力が行使されたとはいえ、今ではピラミッド自体には何ら
魔力が感じられないというのは、恐らく、奴隷達の遺体が一緒に埋葬されて現在でも怨念が漂流する王家の谷と異なり、
ピラミッドの場合は、文明崩壊とともに、魔力行使の痕跡も巨石に残留することもなく消滅していったのではないかと思
われる。
ところで、日本にも明らかに人工ではないかと思われる巨石群が存在しているのも事実である。かつて聖心先生に、日
本の広島県庄原市の葦嶽山山頂の人工かと思われる巨石の写真を提示した際に、先生の霊顕で顕証されたところ、髪の毛
の長い女性が立っている姿が見えると言っておられたことが印象的であった。恐らく、巫女、即ちシャーマンが、何らか
の形で、超能力、霊力、魔力を行使して人工石建造物に関与していた可能性が高いものと思われる。
最近は、超古代文明の存在や、その高度性や偉大さを称える余り、シャーマニズムを絶賛したり魔力崇拝に至る研究者
が多いが、これは、実に、超能力の背景や原因に、幻視、幻覚、幻聴を伴って畜生死霊魂を操作する魔術、魔法、魔力が
存在し、これらの行使が、天変地異などを招来して文明崩壊に繋がっていく霊的因果関係を有しているものと思われる。
古来、魔力・魔法に対しては、触らぬ神に祟り無しと伝承されてきた所以のものである。謎の解明に迫りながら、真の因
果関係における判断や理解を誤って、真実から懸け離れた結論に至るのは残念なことである。
この、魔法による物体浮揚に関しては、現在の科学でも、反重力なる概念により、物質を上方に持ち上げる現象を解明
していく傾向もあり、あながち荒唐無稽というものでもないだろうし、当方も有り得るものと確信しているものだ。因み
に、スフィンクスは魔除けのものであり、魔界の動物にはかなり効果的と言えるものだ。また、南太平洋のイースター島
のモアイ像も、聖心先生のご指摘では魔除けであったという。
余談であるが、米国の一ドル札紙幣の裏側に、ピラミッドと巨大な「目」が描かれているが、一体何のためにこのよう
な図柄が描かれているのであろうか。政策担当者に直接に問い合わせてみなければ真意のほどは解らないが、想像するに、
ピラミッドとは、単なる階層社会の象徴と言うよりも、古代エジプトのピラミッドそれ自体であろうと思われる。また、
「目」とは一部有識者からも指摘されているように、ルシファーの「全てを見透す目」であり、ルシファーとは、知られ
ている歴史の人類発生の実に数千年来の、魔力、魔法を授持される悪魔崇拝の大権化であるようだ。もしも、それが真実
だとするならば、正に、このルシファーの魔力を駆使して建設した象徴がピラミッドであるのではないかと思われる。即
ち、魔法、魔力、魔術が現実に行使された残滓ではなかったかと思われる。それが伝承されてきて、過去から将来に亘る
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文明史のシンボルとして、ピラミッドとルシファーの「目」が描かれているのではないかと思われる。しかし、この悪魔
崇拝のルシファーも、聖心先生の神聖な波徴の広範な神道と伝播により、西暦二〇〇〇年に懺悔を伴って昇天させられ、
二〇〇二年以降は次第に光の天使として再降臨されて、人類が知らずの内に意識変革を促されていくように思われる。
さて、科学の世界でも次第にこれまでの超常現象を科学的に様々な検討を加え解明しようとしているようだ。単なる火
山灰コンクリートの技術のみならず、歴史的遺産である古代の巨石建造物の建造手段や方法、そして宗教的な霊力や超能
力等の分野にも焦点を当てていくことによって、歴史上の解明のみならず、新たな文明史を切り拓いていく展望が見えて
きたと言えるだろう。実に、火山灰技術から超古代巨石文明の建造手段、宗教的魔術・魔法の行使から文明崩壊に至る相
関関係、因果関係にも、道を切り拓いていくことになるだろう。
第5章 現代地球物理学の大改訂へ
17 通説のプレートテクトニクス説の限界と破綻
火山灰の有効な性状を前にして、一体どういう理由で火山が噴火して火山灰が噴出されるかを考察するに際して、地球
の内部構造に大いに関心が引き付けられるものだ。現在、地球の内部は宇宙ほどには殆ど解明されていないのが実状であ
ろう。単純に考えてみても、火山噴火のエネルギーは一体どこから来るのであろうか。大量の降雨があって山野が削られ
洗い流されて海洋に運ばれて次から次へと堆積されていくのに、海洋は一向に堆積物で埋まってしまうことなく、半永久
的に海洋のままであるのは一体どうしてだろうか。陸地がどんどん削られていけば、陸地は次第に平坦化され、海洋も土
砂で埋まり、地球全体が平準化されてしまうことになるはずだが、そうはならないのは一体どうしてだろうか。
当方は、地球物理学の専門家でもないが、現在の地球物理学における火山の爆発の原理や地震の発生メカニズムに関す
る通説に対しては、大いなる疑問を抱くものである。現在の定説となっているプレートテクトニクス理論によると、地球
上に数枚のプレートが存在して、それらが相対的に移動して、相互の摩擦熱により、歪みエネルギーが蓄積されてきて最
後に火山の爆発や地震の発生に繋がっていくというものである。ところが、年間数センチしか移動しない巨大プレートの
単なる摩擦熱ぐらいで巨大エネルギーが発生するというのは、余りにも単純極まる子供騙しのような図式的な思考であろ
う。一体何を根拠にしてそうした結論を自信を持って提起され、支持されていったのか理解に苦しむものである。
プレートテクトニクス説による単なる巨大プレートの上昇と沈降、そして相互の摩擦熱と言った単純な説明では、複雑
な地球内部の種々の動きに関しては何も解明できないものと思われる。今日、地球を被っているプレートは、数枚どころ
か数百枚にも及ぶ程に膨大なものであることも解明されている。既に、プレートテクトニクス理論は、欧米の一部の専門
家の間でも疑問視されており、既に破綻しているものと思われる。また現在、新たなプルームテクトニクス理論なるもの
も登場しているが、似たり寄ったりの大して変わりの無い理論であろうと思われる。
更に、最近は、プレートの境界に該当しない場所での地震の発生場所について、かつての活動があった地点をピックア
ップして活断層なる理論が提唱されているが、これとておかしな理論であろう。地殻の変動が生じた場所等は世界中至る
所に存在し、全てが活動した可能性のある場所で活断層に該当するものであり、何処でも地震が起きることを正当化する
ようなものであろう。そうした理論は、単なる経験則にも似た確率的なものであろうと思われる。あたかも、昔、怪我を
して出血したところは再度出血しやすいと言う類のようなもので、後からのこじつけ的理論にしか過ぎないのではないか
と思われる。これでは、地球の地殻変動の壮大な歴史を振り返ってみれば、世界中全てが活断層の地点になるであろう。
今後の火山活動を予測するにおいても、大して参考にもならず、過去の地震の発生場所と今後の発生場所とは、確率的に
はある程度の関連はあっても、直接の因果関係は無いものと思われる。
多くの書籍や研究論文が氾濫する中で、可成り昔の本であるが、当方の疑問に答えているものがあった。それは先に紹
介した旧ソ連の研究者達によるもので「水-地球の彫刻家」と言う本だ。恐らく、これを超えた研究は未だに成されてい
ないのではないかと思われる。それどころか、この本で紹介されている説は、殆ど日本の学界では無視されているものだ。
もっとも、翻訳者の当時の日本人研究者自身も、電話で確認したところ、単なる理論を紹介した程度であり、全くの半信
半疑、疑心暗鬼の感想であった。
まず、彼等は、現代の通説であるプレートテクトニクス説に関して、次のように限界と問題点を指摘する。
「現在の主流であるプレートテクトニクス理論は、単に現在の地球上での動き、或いは現在から比較的簡単に遡れる精々
八〇〇〇万年前までの海洋底の拡大過程を、幾何学的に説明しているに過ぎず、細部の現象については何も解明してもい
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ない。プレートテクトニクス理論は、大きな現象は上手く説明できても、複雑な地球表面層の性質に対しては全く無力で
あり、地球内部の本質的なところまで何も説明し尽くしてはいない。即ち、例えば、
・海洋下より大陸下の地殻が厚いのは何故か。
・海洋下の地殻に花崗岩がないのは何故か。
・花崗岩に集中している殆どあらゆる放射性元素が、地殻内部からどんな経路と過程を経て地殻へと上昇したのか。
・陸地が北半球に集中しているのは何故か。
・陸地に比べて海底に火山が非常に多いのは何故か。
・大陸地殻が上部は花崗岩、下部が玄武岩で構成されているのは何故か。
・河川は大量の降雨水により一〇〇〇万年程で全陸地の土砂を海洋に流失させるはずであるが、何故に大陸は消滅しない
のか。
・南極大陸には火山があるのに殆ど地震がないのは何故か。
・数千億トンのマンガン、鉄、ニッケル、コバルト等の鉱物資源を含む地層が海底にあるのは何故か。
・塩化カリウムの方が水によく溶けるのに、何故それは海水中に塩化ナトリウムの五〇分の一しかないのか。地球内部を
暖めている主要熱源は放射性元素であると推定されているが、この種の元素の殆どは陸地の地殻の上半部や高さ数キロに
及ぶ山脈を構成している花崗岩表層の中に含まれているのは何故か。
・火山の瞬間的な大爆発は如何なる化学反応原理で生じるのか。そして何回も継続し得るのは何故か。
プレートテクトニクス説により、以上の地球内部の基本的なことを説明できるだろうか。単なるプレートの浮上と四散
と言った説明では、地殻の複雑な性質を解明できないであろう。」
今回の画期的な火山灰技術の登場により、火山灰の有する特殊な性状に遭遇して、改めて現在の通説である様々な地球
物理化学の諸理論に対して再検討をし、様々な疑問点を解消して新たな理論を構築していく必要性が生まれてきたものと
思われる。即ち、火山の大爆発という物理化学反応の入り口と出口と途中の過程に関する解明への取り組みが始まるであ
ろう。そして、火山灰の各種の物性に対しても、実に様々な分野の専門家による総力を結集して取り組んでいく必要性が
出てきたようだ。
18 地殻内部における「排水殻」の存在と活動
先の旧ソ連の地球物理学者達は、著書の中で、最新の地球物理学、及び地球化学の分野では、地球内部に蓄えられてい
る大量の「水」の働きが注目されているという。現段階では仮説の域を出ていないと断った上で、地殻内部において、モ
ホロビチッチ面の上に「排水殻」なるものが存在するという考えを提唱している。このモホロビチッチ面とは、発見者の
名を取って命名されたものであるが、地表面下ある深さで地震波が急激に増大する不連続面があり、物質組成が急激に変
化することを示しており、地殻下層の玄武岩層とマントル層とを分ける境界面をいう。この地殻深いところの対流層であ
る排水殻により、地殻内部のあらゆる現象の説明が付くとしている。現在の通説のプレートテクトニクス説では、複雑な
地殻内部の動きには何ら役立たないものだ。今回、地球の内部構造や幾多の現象を理解する上で、通説を大きく超えた新
たな地球物理学の「排水殻」理論に対し、極めて説得力のあるものを感じた次第だ。
例えば、ヒマラヤ山中で-北海道の日高山脈の山中でもそうだが-時折、貝殻が発見されたりするが、通説では、決ま
り切って、かつてそこは海であったとかの見解が堂々と主張されるが、当方も以前から大いに疑問に思っていたものだ。
ヒマラヤや日高山脈に貝殻が存在するからと言って、ヒマラヤや日高山脈のような巨大な山塊が、海底からそのまま隆起
することはまず考えられなかったからだ。ヒマラヤや日高山脈を、かつて、海岸が海の方へ後退して海底が隆起してでき
た、千葉県の房総半島や関東平野などに例えたり、また海岸に近い平野部や小高い丘や谷の低地に多く見られる縄文遺跡
の貝塚などと比べたりするには、余りにもスケールが違うというものだ。実に、ヒマラヤや日高山脈に対し、そこがかつ
て海だったというよりも、むしろ海だったところから運ばれてきたと考えた方が合理的ではないかと思っていた。そのま
ま海底が隆起して山脈になったと言うよりも、海底が沈降して、地殻内部の巨大な溶液流(排水殻)により、堆積した貝
殻も海洋底から地殻内部を通って運搬されていき、遠く離れた大陸塊の底に潜り込んで、そこから隆起していったと考え
る方が理に適っているというものだ。即ち、ヒマラヤや日高山脈は、かつて海だったところがそのまま隆起したのではな
く、海だったところから運ばれてきて隆起したというものだ。当方も既に、排水殻理論に巡り会う前から、通説のプレー
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トテクトニクス説に限界を感じており、またヒマラヤや日高山中の貝殻の起源に対する通説に多大な疑問を有していたも
のだ。排水殻理論を主張した本に出会ったのも、不思議と見えざる神仏が導いてくれたように思われてくる。
なお、「排水殻理論」の提唱者達は、火山の爆発の原理に関しては、詳細な検討の延長に、放射性物質が関係している
のではないかとの疑問を提示しながら、最終的には、未だ理解できないとして、完全に解明するには至ってはいないよう
だ。それでも、かなりの核心にまで迫っているのも確かだ。当方も、排水殻理論により、幾多の基本的な重要知識を教え
られながら、更にそれを踏み台にして、後述するように、聖心先生の最終的な真理と思われる指摘に至るまでの、通説と
の乖離を埋めるためにも、新たに提示する仮説に繋げていくためにも、多大なる示唆を受け大いに参考になったものだ。
さて、当該研究者達によると、地殻中に一面に蒸気や溶液の循環の結果できた「排水殻」があり、それが地殻の「花崗
岩層」と「玄武岩層」とを形成させ、地質時代にも大陸と海洋とが絶えず存在し、大陸は絶えず浸食されては「浮上」し、
海洋は陸地からの削剥で間断なく満たされ、形成された海洋の地殻が大陸下へと「潜入」することによって沈降すると言
う。そして、蒸気は凝結して水になり、この水は熱水溶液を形成し、ゆっくりと下方へ「流下」し始め、蒸発する地点に
達すると、再び蒸気となって上昇運動を開始する。水によく溶ける物質は下方へ運ばれるが、揮発性物質は蒸気とともに
上昇する。蒸気の凝結する境界はそう深くなく、大陸では地表下一五~二〇キロメートル、海洋底下では五~一〇キロメ
ートルであり、流体が気化する境界は三五~四〇キロメートルの深さで、そこでは温度は四二五~四五〇℃である。水が
状態変化を起こすこの二つの境界(下の境界では液体→蒸気、上の境界では蒸気→液体)の間が地球の「排水殻」となっ
ていると言う。実に、この「排水殻」という名の物理化学的コンビナートでは、地殻の多様性を生み出し維持する過程が
絶えず進行していると言う。
ところで、地殻内部で地震波が大きく変わる部分はモホロビチッチ層とも呼ばれているが、海洋下ではモホロビチッチ
層の横たわる深さは、通例五~七キロメートル、まれに一〇~一五キロメートルであるが、大陸下では三五~四〇キロメ
ートル、高い山脈の下では七〇~八〇キロメートルにもなる。モホロビチッチ面より上にある層全体が地殻とみなされ、
地殻には厚さと組成の異なる大陸地殻と海洋地殻の二種類が存在することが解っていると言う。だが、
・モホロビチッチ層がなぜかくも様々な深さに存在し、大陸や山脈の下ではそれは数十キロメートに「沈む」のに、海洋
の底では逆に「浮き上がる」というふうにその地域の地形の影響を受けているのはなぜか?
・同時に、この不思議な層の横たわる深さが、地殻を構成している岩石の年令と如何なる関係も持たないのはなぜか?
・地殻は概略的に、堆積岩層、花崗岩層、玄武岩層の三層に区分されるが、花崗岩層と玄武岩層とは地殻の初成物質が分
化したものと考えられ、それら二層を境しているのがコンラッド面と呼ばれるものであるようだ。このコンラッド面はど
うして出現したのか?
・また海洋地殻に花崗岩層がないのはなぜか?
・山岳地方は主として海でできた堆積岩層から成っているのはなぜか?
・古い地層が新しい地層の下に横たわるのが自然なのに、新しい地層が古い地層の下になっているような地域が多いのは
なぜか?
・海洋底には割れ目と中央海嶺があり、その全長は八万キロメートルに達しているが、どのようにして発生し、その出現
の原因は何か?
・また、地殻熱流量が最も大きいのは陸地の山脈中にあるのではなく、海洋底の中央海嶺であるのはどうしてか?
・深層の石油の起源はどう考えたらよいか?
などと疑問を投げ掛けて、これらの様々な問題に対して、「多くの学説は充分に応えていない。地殻内部に豊富な水が
あることは疑うことはできない。地球内部には色々な資源、鉱物の熱水鉱床がたくさんあるが、それらは高温の熱水溶液
が作用した結果生じたことを物語っているからだ。」とし、この新しい排水殻の仮説は、これまで曖昧なままに隠されて
いた多くの問題を極めて鮮明に解決していくものだと言う。
この排水殻は、大陸下では、マントル物質を大陸性の岩石に変化させ、海洋下では、大陸から削剥された岩石が海底に
堆積してマントルを作る化合物や鉱物に改造される一大工場であり、全地球的規模の強力な深層水溶液のシステムであ
り、地球物質の全循環機構の一部であると言う。
即ち、《厚い大陸地殻と薄い海洋地殻という二種類の地殻の出現は水の垂直循環と排水殻を伝わって海洋下へのその移
動によって説明される。大陸は洗い流されては浮上し、大陸に続いてマントルの密な物質が上昇するが、排水殻がなけれ
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ば陸地の軽い岩石のように浮上することはないだろう。即ち、排水殻内では既知のようにマントルの岩石の大陸性の岩石
への転化が起こっている。臨界点を越えた蒸気がシリカを上方へ運び、熱い液体がマグネシウム、カルシウム、鉄分を洗
い出して下方へと運び、そこではまた、推量することしかできないが、他の重要な化学反応も多数起こっている。
第二の、いわば天上の循環枝もまた水の作用で生じた。雨水は陸地の岩石を海洋へと洗い流し、それを海底に軟かい底
質として堆積させ、その後この底質は新しい地層の重みによって圧縮を受けるだけでなく、排水殻から常に熱い水溶液が
上昇し、浸透し膠結して、底質の密度を増し、温度を上昇させる。そして底質より重くなり、ますます深く沈降し、つい
には海洋底の岩石に変化する。
海洋地殻は新しい堆積物の重みで排水殻の下へ下降し、やがてマントル物質と区別がつかなくなり、マントルに属する
ものとなる。この循環で重要なことは、氷山の融解のところ(省略)で触れたように、海水面上の大陸の高さは長期間動
力学的な平衡によって初めて保たれていたということである。即ち海洋殻の物質がマントル物質に転化したのと同じ量の
マントル物質が大陸地殻の物質に転化した。こうして排水殻は、大陸下では、マントル物質を大陸性の岩石に変化させ、
海洋下では、大陸から削剥された岩石が海底に堆積してマントルを作る化合物や鉱物に改造される一大工場である。》
《排水殻は全地球的規模の強力な深層水溶液のシステムであり、地球物質の全循環機構の一部である。排水殻に沿って
固形物質が運ばれ、また排水殻のおかげで驚くほど一定の地形が維持され、それから生じた大陸が浸食によって軽くなり
浮上し、一方、海洋底は堆積物が堆積し、沈降し、絶えず若返りながら、その水準を維持している。そしてマントルだけ
が地質学的な仮説の結末を隠蔽した謎の根源として、大循環の輪の下降して来る場、上昇の始まる場として残されてい
る。》
《花崗岩は大陸の地殻の上半分を作り、海洋地殻には存在しないが、古い島や小大陸には存在する。山岳地方が生まれ
それが激しく浸食された時期は極端に異なるのに、なぜ花崗岩は常にほぼ同一の深さにあるのだろうか? また放射性元
素が特に花崗岩中に集中しているのはどうしてだろうか?
もしも玄武岩がコンラッド面を横切って上昇したのだとす
れば、それはどのようにして花崗岩に変化するのだろうか? もしも花崗岩がコンラッド面を横切って沈降したのだとす
れば、それはどのようにして玄武岩に変化するのだろうか? 海洋下の地殻に花崗岩が形成されるのを妨げている要因は
何か? これらの花崗岩に関する問題にも多くの学説は充分な解答を見出せないでいる。》
《排水殻は、鉱物質の水溶液をモホロビチッチ面上の層準に沿って遠く大陸下から海洋地殻内に移動させることができ
るのが本質的な特性である。排水殻へ下降した水は大陸の物質や大陸中に上昇するマントル物質から、ある種の化合物を
洗い出して排水殻中の運河沿いに海洋下へと運搬し、そこで水溶液は上昇して海洋地殻にしみ込んで地殻を作る堆積岩を
玄武岩に変える。かつてはどこでも同じであった原始地殻が大陸地殻と海洋地殻に分かれるには、水溶液は排水殻沿いに
大量の熱と溶解物質を運んだに違いない。》
《大陸下から海洋下へ、次いで海洋地殻へと熱や溶解物質が移動することによって海洋地殻がマントル物質に転化した。
なお、花崗岩と玄武岩の化学組成を比べて見ると、著しい差異がある。即ち、花崗岩には玄武岩よりもシリカが一〇~一
五%も多いのに、玄武岩にはマグネシウム、カルシウム、鉄の酸化物が花崗岩よりも多く含まれ、この為に大陸の物質は
より酸性であり、海洋底の岩石はよりアルカリ性である。正に花崗岩は大陸を特徴づけるものであり、海洋地殻にはそれ
は一般に含まれていない。この問題に対する解答は、排水殻とそこで進行する過程の中にある。》
《花崗岩から玄武岩、あるいはその逆への変化はコンラッド面で行なわれており、排水殻という特珠な化学工場の中で
の花崗岩と玄武岩の生産工程の基礎となるのは、モホロビチッチ面とコンラッド面との間の岩層内で進行する物理化学過
程である。この過程では、コンラッド面から下方へとカルシウム、マグネシウム、鉄に富む液状溶液が移動し、モホロビ
チッチ而からは逆にシリカ、カリ塩などの揮発性物質を含む蒸気が上昇する。カルシウム、マグネシウム、鉄を溶脱し、
それをシリカで置換する過程が即ち花崗岩化作用である。ある元素と他の元素との置換は特にコンラッド面付近で激しく
起こり、ここでは蒸気がシリカを運んで来るが、このシリカがカルシウム炭酸塩その他の岩石と作用するようだ。そして、
カルシウム原子の場所に珪素原子が「座って」、全体的に珪酸質となり、当初の性質が消えうせて花崗岩となる。
このように、地殻が隆起して玄武岩がコンラッド面を越える場合には、分子構造や化学組成を含めて内部構造の再編成
が起こり、コンラッド面では、「花崗岩化作用」が進行する。一方、花崗岩が沈降して排水殻へ入り込むと、やはり大改
造を受ける。即ち、上昇して来る臨界点を越えた蒸気が花崗岩からシリカを「吹き払い」、コンラッド面の上へと運び去
り、その代わりに上から浸入して来る液状溶液がマグネシウム、カルシウム、鉄を持ち込み、珪素から解放された場所を
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「静かに」占領して、花崗岩が玄武岩に変わる。》
《大陸地殻下の排水殻は大陸の液柱の重みで高圧となり、溶液を排水殻沿いに海洋の方へ押しやり、外側へ、上方へと
追い出す。一方、海洋地殻では水柱圧が小さい為、水は地下深部に浸み込まない。簡単に言えば、海底には花崗岩化作用
の工場がなく、そのような条件はそろっていない。海洋地殻にはアルカリ金属を始め、下方から蒸気によって持たらされ
るシリカや、カルシウム、マグネシウム、鉄の塩類が水溶液とともに持たらされ、これらの成分が岩石中に入り込んで相
互に作用し、堆積岩を各種の海洋玄武岩に作り変える。実に排水殻は素晴らしい鉱物の工場である。》と指摘する。
そして肝心の火山爆発に関係すると思われるエネルギー源としての放射性物質に関しては、《放射性物質の大部分は地
球全体のわずか四〇〇〇分の一の質量しか持たないこの薄膜に集中している。この過程の考察として、かつて冷たかった
地球が中心から徐々に加熱され、そして中心部に排水殻が生まれたが、それは現在のものとは余り似ていなかった。だが
非常に古い地質時代にも、液状溶液は下降し、上昇する蒸気はシリカや放射性物質を含む揮発性物質を上方へと運び出し
た。そして地球が加熱され、排水殻が中心からだんだん上昇するにつれて、岩石一トン中に数十分の一グラムしか含まれ
ていない放射性化合物も排水殻と一緒に動いて、排水殻に集中した。
その結果、放射性物質の圧倒的部分(計算上は約九五%)が地殻中に集中するという現在の力学的状態が生じた。残り
の五%はマントル中にあり、核中には全く存在しない。また排水殻説に立って、放射性同位元素-四〇を含むカリウムが
花崗岩中に集積している理由も考察できる。つまり、塩化カリウムは塩化ナトリウムよりも水によく溶けるにも拘らず、
海水中のナトリウム原子はカリウム原子よりおよそ五〇倍も多いが、花崗岩中ではカリウムの方が優勢なのは、より塩基
性の強いカリウムがナトリウムやカルシウムを追い出して、自身が花崗岩の構成鉱物、特に長石の成分として入り込む為
である。
固形物質の循環の際に排水殻に入り込んだカリウム塩は上昇する蒸気によって運び去られ、カリウムが花崗岩の長石の
中に蓄積される。そして山岳部で最も激しい陸上浸食が進むにつれて、特に陸地の地殻は花崗岩とともに上昇して地表面
にますます近づき、ここで花崗岩は風化されて、カリウムも水溶性の塩を作る。水は再び下降してカリウム塩の大部分を
コンラッド面へ持ち去り、そこでカリウムはゆっくりと上昇して来る若い花崗岩に出会ってその成分となる。新しく出来
た花崗岩はカリウムに富むようになるが、その中には放射性同位元素のK-四〇も含まれている。そして他の放射性元素
も同様にして、花崗岩を構成する鉱物に取り込まれる。》
とし、《排水殻の単純なメカニズムによって地球化学の多くの問題が説明される。》と、上昇する蒸気と共に、放射性化
合物も排水殻と一緒に動いて排水殻に集中して、花崗岩に取り込まれていくことを指摘するものだ。
19 火山噴火活動に関する説明の限界
地殻内部の様々な現象に対して、現在の地球物理学は明快な解答を提起していないように思われる。特に火山の爆発に
関しても、単なるマグマの沸騰ぐらいにしか認識していなくて、噴火の際に大量の水蒸気が発生する理由も単に地下水が
浸透したからとかの説明しか為されていないようだ。それに火山灰の様々な特殊な性状に対しては有効な説明が殆どでき
ないようだ。既に、理論的にも限界を露呈して破綻しているものと思われ、論外である。先の排水殻理論を提唱し、多く
の示唆を提供してくれたこの地球物理の科学者達から、最も関心のある火山活動のエネルギーやその原理について、詳細
な現状分析から幾つかの仮説に対して説明を拝聴することは、現在の通説の限界を知る上でも大いに参考になるものだ。
まず、先の研究者達は次のように指摘する。
《火山活動で最も驚くべきことは火山のものすごいエネルギーであるが、平均的な規模の噴火の際で、石炭の四〇万トン
分に相当する量のエネルギーを放出している。大噴火の際には石炭五〇〇万トン分のエネルギーを、火山からの一瞬の爆
発で放出しており、地殻と火山がエネルギーを引き出している場所のエネルギー埋蔵量を概算してみるとこの数字は驚嘆
に値する。
火山が放射性物質から放出される熱で活動しているとして、一回の噴火に要するエネルギーは一年かかってマントル数
百万立方メートルの中で作られるエネルギーに相当していることを計算は示している。この放射性崩壊熱がどのようにし
てマグマ溜まりに集中するのかは全く解らない。火山活動の原因をガス圧に求めようとする試みが為されているが、この
仮説の同調者達は次のように考えている。数百年、数千年に亘って、マグマからそれに溶けているガスの気泡が放出され
ると、気泡が上昇するにつれて、その周囲の媒体の圧力が低下するので、ついには気泡は破裂し、マグマの一部をもぎ取
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って地表面に放り出す。
噴火の周期性についてはマグマの外殻によるガスのせきとめによって説明される。外皮を突破し、「栓を抜く」為には、
ガスは蓄積して力をためなければならない。この仮説の弱点として、この科学者は、マグマの外殻が一度破られると、ガ
スは全て抜けてしまい、新たにガスをためるような過程は起こり得ない。即ち、既に栓を抜いたビンから何度もシャンパ
ンをあふれさせることは不可能である。
火山活動のエネルギー源を探して、学者達は地球内部へ眼を向けるはめになった。謎を解くカギは地球深部に秘められ
ていると考える火山学者もいる。だがマントル内部には爆発できるほど恒常的なエネルギー源もガス源もない。既述した
ように、放射性物質は地球内部に一様に分布しておらず、主として花崗岩の中に、つまり大陸地殻内に集中している。し
かし火山放出物中に放射能が高いという証拠も見つかっていず、その水やガスの同位体組成は地表面の水やガスと同じで
ある。》
《地殻下の高温流体の分泌物も存在しているが、その量はそれほど多くなく、地球内部に分散しているので、地球上の
長期に亘る火山活動の熱水部分すら保障することはできない。相変わらず、火山活動については解らないことだらけであ
る。火山が若い海洋底に集中しているのはなぜなのか? 噴火が何度も見られ、噴火の継続時間や活動が大きいのはなぜ
なのか? また蒸気やマグマの大きなエネルギーはどこから得られるのか?
全く解らないという。それでも、火山活動
は陸地ではなく主として海洋に固有の現象であるということができる。
通常、火山活動の原因は上部マントルに求められている。深さ二〇〇~四〇〇キロメートルのその場所にはアステノス
フエアと呼ばれる軟化した物質の層が存在しているが、そこからエネルギーや物質がやって来て、大気圏へと放出され、
火山丘を作るとする仮説がまだ支配的である。その為には小さい火山丘でさえ、高さ二〇〇~四〇〇キロメートルに及ぶ
垂直な導管をもっていなければならない。砂の層を通って蒸気が放出される過程をモデル化した実験で解ったことだとし
て、蒸気を噴出する地点の間の距離は砂層の厚さに依存していて、平均すると厚さの三~五倍であるが、海洋底上の火山
丘の間隔は二五~三〇キロメートルだ。
通常、火山の密集を説明する為に、どろどろ溶けたマグマの中継地が深くないところに存在すると仮定している。多く
の火山丘の出現を説明する為には、海洋地殻の下に巨大なマグマ溜まりがあり、しかも数十万を数える火山の数を考える
と、深さ数キロメートルという極めて浅い所に単一の連続したマグマ溜まりを考えなければならない。
ここで排水殻説の助けを借りて、海洋における火山活動の原因を考察してみると、海洋地殻の排水殻は、火山噴火の為
に必要な普遍なマグマ溜まりの存在する深さにある。排水殻は過大な圧力をを持った高温の水蒸気性溶液で満たされ、海
水や水溶液の重さによる海洋の排水殻の静水圧はほぼ一〇〇〇気圧であるが、陸地の地殻の排水殻中のそれは三〇〇〇~
六〇〇〇気圧(地殻の厚さが三〇~六〇キロメートルのとき)に増加する。大陸下の排水殻中の静水圧がより高いのは、
大陸が海水面から平均八七五メートルの高さにある為だけでなく、また大陸地殻内の割れ目や断層が、大陸沿岸部の排水
殻から海洋の排水殻へと上昇する蒸気状の溶液よりも重い溶液によって満たされている為でもある。
大陸地殻と海洋地殻はU字管のような役割をしており、しかも一方の管、即ち大陸地殻のほうが海洋地殻よりも静水圧
が高い。その為に海洋の排水殻は大陸の排水殻を充填している高塩の水溶液ないしは蒸気状溶液の放出の場となる。溶液
が絶え間なく流入して来るため海洋の排水殻に過大な圧力が生じ、それが海洋底の多数の火山活動を誘発している。
この噴火は「安全弁」に似た働きをする。圧力が深さ四~五キロメートルの海底の水圧に打ち勝つことができる間は、
地殻を突き破ってこのような「安全弁」が働くが、最終的には圧力が低下して火山は休止する。しかし、静止期間は長く
はない。
排水殻は全地球をカバーしており、至るところに高圧の蒸気があるのだから、しばらくすると圧力は再び水圧に打ち勝
つ程になる。噴火の際にはいつも大量の高温蒸気を吹き出し冷却すると、この蒸気から大量の火山灰が降って来る。火道
や排水殻の中の所定の場所の圧力が急激に低下すると、珪酸塩、珪酸アルミニウムその他の物質の溶解度が低下し、それ
らの物質は粘っこいゼリー状の塊となって沈殿する。この鉱物性の「どろどろした溶液」は火道に溜まり、海底に溶岩、
凝灰岩、軽石の形で堆積する。
深さ三~四キロメートルの海中で起こる噴火は多くの場合大気中には蒸気さえも吹き上げない。というのは蒸気は臨界
値を越えた圧力と水中での急激な冷却によって水となるからである。海洋底の排水殻中の過大圧力は大陸の排水殻の高圧
によって永遠に支えられており、海洋底の驚くべき活発さは排水殻の存在の当然の結果である。そこでは圧力が下がって
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も絶えず元に戻り、様々な組成と濃度を持った沸騰した液状とガス状の溶液に満ちている。
さて、火山の産物は、各種の化合物、ガス、物質、元素の総体であり、火山の化学作用には、ある種の天然の集合体、
即ち加熱、圧縮、反応、混合などの様々な変化が起こる、まだ充分に解明されていない装置の複雑なシステムが存在して
いる。そして排水殻の水が関与した火山灰の生産工程の説明として、圧力二〇〇〇~四〇〇〇気圧に達している火道中か
ら、火道沿いに上昇した蒸気は膨張して冷却し、圧力が低下する為、各種の化合物や鉱物の溶解度が著しく低下して、溶
液中に含まれていた物質が分離して濃厚な液状物質が生ずる。
恐らく、これは溶液が上昇する火道の口またはその周囲に集まり、蒸気やガスの流れがそれらを強い圧力で上へ押し上
げ、これらの物質は途中で細かく砕かれ、火山灰の雲や微細な溶岩粒の集合体に変化する。また火山噴出物の化学組成と
海水中の元素の組み合わせとが類似しているのは、正に火山活動と海水の塩分組成の形成に排水殻が一役かったことを証
明している。というのは海水の塩分組成を始め、海洋底のリン鉱層や鉄マンガン鉱層の化学組成は多くの点で排水殻の活
動に規制されているに違いないからである。
ここで溶岩を五〇〇~六〇〇℃、ときには一〇〇〇℃以上の高温に保っているエネルギー源が何であるかは非常に重要
な問題であるとして、残念ながら排水殻の溶液はそのように高温ではない。しかし火道内には溶液とともに、硫化水素、
亜硫酸ガス、メタン、水素、塩素、酸素などの多くのガスが含まれており、そこでは熱を発生する激しい化学反応が起こ
っている。例えば金属酸化物は水素やメタンと容易に反応する。これらの反応は鉄を還元し、降ったばかりの火山灰は、
二価の鉄が空気中の酸素によって三価に変わるため急速に黒っぽい色や褐色になるのが普通である。
もう一つの熱源として、堆積岩に絶えず集積し、固形物質の循環に加わってマントル内へと入っていく分散した有機物
質が、高温・高圧の下で変質形成する各種の化石燃料がある。石油やガスのような移動し易い燃料は排水殻の貯溜層の中
に集積することがあり、その発熱量(堆積岩一立方キロメートル中にある約二〇〇〇万トンの有機物質)は通常の火山噴
火のエネルギーの一〇~一〇〇倍に相当している。
また火山噴火の際に生ずる他の塩素、臭素、フッ素などの派生ガスの起原について、岩石が普通に溶融する際にはこれ
らのガスは発生せず、排水殻中でシリカが他の化合物の塩と反応して珪酸塩を作って酸を分離し、この酸が蒸気と一緒に
地表面に噴出する。》
以上のように、当該地球物理学者は、火山活動について諸説を紹介しながら、その矛盾や限界を論破するのであるが、
噴火の原理はなおも未知のままである。火山噴火のエネルギーが様々なガスの発熱反応であるとしても、それは飽くまで
もエネルギー量であり、瞬時に大爆発を発生させるエネルギー源や原理については何も示唆していない。排水殻内の溶液
は、溶岩ほどの高温ではないと言うものの、花崗岩中に多く濃集され、地殻内部に多量に存在するといわれる各種の放射
性物質は一体どこに行ってしまったのだろうか? そのまま地殻内部に不活発の状態であるとは思われず、全てはこの豊
富な放射性物質に多くの謎が隠されているように思われるのである。
第6章 火山に関する通説を越えた大胆な仮説を提示
20 火山内部から放射線・素粒子が地上に放射
さて、当方の手許に不思議な一枚の写真がある。これは、当方の恩師の聖心先生が、鹿児島県の桜島火山の山麓に向け
て、普通のカメラで、夜、フラッシュなしで、普通にスイッチを押して撮影したものである。写真には、暗闇の中に、地
表面より無数の様々な色彩をした光線が上昇して、ある高さより横の方へ、風になびいているのが写っている。これは、
普通の人が、普通の撮影方法で撮影しても、決して撮影できるものではないと思われる。この写真は、後日、写真店に現
像を依頼した際に、店主から失敗作と錯覚、誤解されたという。なお、これとよく似た写真で、場所や、光線の数や色、
方向、運動性、太さ等が異なった写真が他にもあるが、ここでは本のカバーにしか掲載できないのが残念だ。なお火山地
帯を撮影したものはこれのみであり、これを解明して下さる国内外の関心や興味、好奇心に満ちた思慮深い科学者の方を
捜している次第である。
当方は、これらの種々の光線群は、桜島火山の地下内部にあって火山活動のエネルギー源となっているマグマより放出
されているものであり、一種の素粒子、放射線の類ではないかと思っている。もちろん、放射線や素粒子といっても様々
なものがあり、未だ解明されていない特殊なもので、人類にさほどの害を及ぼさないものではないかと推察している。
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なお、この当方の仮説は、既に二五年以上も前の一九八六年頃に、聖心先生の写真と共に国内外に公開したものである
が、殆ど理解も関心もなく無視されたものである。然るに二〇〇五年七月二八日付け大手新聞紙上に、何と日米中の研究
者グループが、地球内部で発生したニュートリノの検出に初めて成功したことが新聞に掲載されていた。正に、聖心先生
の撮影された火山内部から地上に向けて放射されている未知の謎の写真の光線群こそが、地球ニュートリノの存在を示唆
するものではないかと思われる。
ニュートリノは宇宙から飛来するだけではなく、地球内部からも地上に放射されているという当方の仮説と符合するも
のと思われる。実に、4分の1世紀も前の提示が今ようやく証明されていくように思われる。それでも、聖心先生でしか
撮影出来ない未知の謎の光線群の写真に対して、一部の有識者が関心を示し始めたとはいえ、未だに、大多数の有識者が
無視、無感動、無関心であるのは実に残念なことである。
ところで、この当方の仮説、即ち、火山深部のマグマより、特殊な未知の放射線・素粒子が放出されているという仮説
を立証するものとして、幾つかの例証を挙げてみよう。
まず、先に指摘したように、火山灰は適当に風化変質して来た折には、多大なる肥料効果を発揮してくる。そしてその
効果は、火山灰の成分特性により、極めて選択的に植物に作用するのである。この原因は現在の科学では何も解明されて
はいない。これは、火山灰の中に極めて微量ながらウラン等の放射性物質が含有されていることからも想像できるように、
火山灰中のある種の核壊変した放射線・素粒子・地球ニュートリノによるものではないかと思われる。今日、ある種の放
射線が植物の生育に効果的であることが解って来ているが、火山灰の肥料効果も、特殊な放射線によるものと考えられる
のである。
また、火山地帯で、例えば桜島大根のような巨大な作物が世界的に見られる現象に対しても、農業の専門家でも明快な
解答を提起していないものと懸念される。メキシコでも巨大なカボチャやジャガイモが収穫されたり、ギリシアでも豊富
なブドウが採取されたりしているが、誰もこうした現象を解明していないようだ。天候や管理方法には大して差異がない
ことは歴然であり、土地の性状に大きな原因があるようだ。
こうした火山灰の豊富な火山地帯の中でも、特に桜島の大根は注目に値するものである。同じ火山灰地の肥沃な地域で
も、これほど大きくはならないものである。桜島大根でも、その土地でこそ巨大な作物が可能なのであり、この桜島大根
の種を、同様な火山灰地帯の湾を隔てた鹿児島市近郊の畑地に持って行って播いても、巨大な大根の採取は、一代目は何
とかできても、後はこれほどには大きくは実らず、普通の大根のようだ。桜島大根が何故にこれほどまでに大きいのかは、
今のところ誰も明快には解明していない。普通、作物がよく実る為には、日照や雨量等の気象条件の他、土壌、そして人
為的な管理が関係するのであるが、桜島大根の巨大さは、これ以外にも原因があるものと思われる。即ち、桜島特有の気
候環境と、肥沃な風化火山灰性土壌の他に、未だ誰も気付いていない原因である。
正にこの未知の原因こそが、写真にも写っていた無数の光線群にあるものと考えられる。当方の仮説では、これらの光
線、即ち地下のマグマから放出される特殊な放射線・素粒子の地表への照射が、桜島大根の生育の異常さに大きな影響を
与えているものと思う。今日、農作物の様々な品種改良の為に、種々の放射線が効果的なのは知られており、肥大化にも
大きく役立っていることが解っている。実に桜島大根の肥大さは、大自然界における放射線・素粒子の照射に寄因してい
るものと推察できる。しかも、この放射線、素粒子は、今日解明されているような極めて毒性の強いものではなく、放射
性物質が核壊変を起こして別の核種に変化するなどして生ずるもので、人体には悪影響を及ぼさないものと思われる。
思うに、当方の仮説としては、実に火山地帯にはマグマ溜まりを中心にして豊富な放射性物質が存在し、そうした放射
性物質による放射線照射が突然変異を生じさせるほどに、植物や農作物に対して大きく影響を与えているものと思われる
のである。この放射性物質は、恐らく人体にそれほど悪影響を及ぼさないような性状を有したものかと思われる。
そして何も植物や農作物に限らず、動物や生物にも同様に多大な影響を及ぼす可能性もあるものと思われる。例えば、
南アメリカのエクアドルの海岸から西へ約一〇〇〇キロメートル離れた東太平洋の赤道直下に、ガラパゴス諸島が点在し
ている。この島々は実に不思議なことが多い。そこは周囲の大陸や諸島とは大きく異なった形態を有する動植物が存在す
ることが解っている。即ち、赤道直下だというのに、南極の寒冷地特有の海鳥であるペンギン、それに氷の海にいるアシ
カやアザラシが生息しているのだ。更にゾウガメや、恐竜の子孫のようなオオトカゲやウミトカゲ、翼が退化して飛べな
くなったコパネウ、そして菊科植物の大木であるスカレシア等のように、この諸島固有の動植物が多い。特にこのガラパ
ゴス諸島には、爬虫類が栄えていて、奇妙な形に発達しているものだ。これらの動植物が、どうしてこのような異常な形
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で発達しており、またどのような経路や方法によって大陸から移動して来たのか、実に多くの疑問を投げかけている。一
体この島々でどのような影響を受けて、現在のように発達して来たのであろうか?
これらの原因を考察すると、このガラパゴス諸島は排水殻より多量の熱水やガスの湧出する地域で、最も活動的な火山
諸島である。それ故に、火山島の地下深くのマグマより地表に向かって放出される各種の放射線・素粒子による照射で、
このように動植物の細胞や染色体に様々な変異を発生させて、独特の形状や性質を有するものや、絶滅・退化に至ったも
のを生み出していったものと思われる。また、寒冷地特有の動物が見られることは、ガラパゴス諸島の形成が、排水殻か
らの溶液の噴出により、南極大陸や南アメリカ大陸の海岸線から次第に始まったと考えられる故に、陸橋のような役割を
果たすことによって、これらの大陸から移動して来たものと思われる。このように考えれば、実にガラパゴス諸島の動植
物の異常さは、火山深部のマグマより放出される特殊な放射線・素粒子によるところの、一種の突然変異的作用の結果生
じたものであり、火山島の形成には排水殻説が大いに活用され、多くの問題が解明されて来るものと思われる。
そして、火山灰を含めて、火山噴出物に磁石を接近させると、針が振動して、一見、火山噴出物に帯磁能力があって磁
性体と解釈されることがあるが、これの真相も、実に火山深部のマグマから、各種の放射線・素粒子・地球ニュートリノ
を選択的に吸着して内包していることに原因があるものと思われる。それに、火山地域で磁石が全く効果的でない理由も、
地下深部にある放射性物質による放射線・素粒子の影響の為であると推察される。これは、地磁気の大きな乱れが、太陽
光線(高エネルギー粒子・宇宙線・放射線)の大量放射によって生じ得ると思われることとも大いに関連があろう。地球
の歴史において、様々な動植物が絶滅したり、退化したり、突然変異的に発生して来たりすることにも、地殻内部や宇宙
からの種々の放射線、素粒子の大量照射が大きく関係しているものと思われる。
当方のこれらの仮説を証明する為には、実際に、活発な火山地帯で地下のマグマより放出されていると思われる各種放
射線・素粒子・地球ニュートリノの存在やその種類・量・性質などについて調査すればよいのであるが、当方にはそれを
実施する手段がない。ただ様々な文献や情報を組み合せて真相を推察するのみである。しかし、現在の科学の水準では、
先程の写真の解明や当方の仮説の立証が充分可能かどうかは解らない。
何故なら、今日、地球ニュートリノの発見が検証され始めたとはいえ、素粒子の数がその種類からしても数百種も存在
し、それぞれが様々な性質を示すことが報告されているが、その各種素粒子の生成過程や性質等の詳細なことは未だ充分
に解明されてはいないからである。即ち、素粒子の大きさは原子の大きさに比較してずっと小さい粒子であること、そし
て光子(光)や軽粒子群(光子、陽電子、ニュートリノ)、中間子群、重粒子群(核子)などの素粒子の中で、自然の状
態で我々の観測にかかるのは、光子と陽子、中性子、電子ぐらいのもので、他の粒子は不安定で、たとえ発生しても直ち
に消滅してしまうものと言われているからである。
なお、他にも、聖心先生が撮影した色んな写真があり、その中には、都会や大自然など、実に様々な地域において、空
中に浮游し漂流し放浪する短いひも状の白い光線が写った不思議な謎の写真もある。これは恐らく、現在、科学の最先端
で話題になっている超弦理論でいうところのひも状のクオークと言われるもので、素粒子の根源に迫る超物質を示すもの
ではないかと思っている。また太陽が空中に反映された写真や、太陽を転写したような写真もある。
これらは決してレンズのいたずらや、意図的に修正して作成したものではないと確信するものだ。この聖心先生の写さ
れたこれらの写真を前にして一笑に付し、そして当方の仮説を無視することはいとも簡単であるが、これは科学的な思考
を心がける者のとるべき姿勢ではないだろう。拒絶し否定する場合でも、明確な科学的根拠に基づかねばならず、通常の
思考方法や思考範囲で説明のつかないものとして一方的に排除してはならないものだ。これは、様々な伝説や遺物・遺跡、
そして迷信に対しても言えるものであろう。現在、科学、ないしは科学的と言われて解明し得ているものは、人類の知り
得べく知識のほんの一部であり、実に多くのことに対して未知のままであると思われる。
とにかく、火山の地下深部のエネルギー源としてのマグマ溜まり内部のある種の放射性物質から人体に差程の悪影響を
及ぼさない未知の特殊な放射線・素粒子が地表に放出され、火山灰の中にもそれらが含有されていると思われることを、
当方自身の仮説として提起しておこう。恐らく、多くの専門家の方々の理解と協力により、この仮説を立証し、桜島山麓
の謎の光線群の写真と共に、ひも状の写真の謎を解明し得たときにこそ、火山作用の真の原因も解り、そして火山灰の特
性が真に明らかとなり、火山灰利用の新素材の優れた諸性状の真の原因も解明され、同時にピラミッドを始め、火山噴火
の原理の謎、そして物質の根源に至る多くの未知の部分が明解になって来るものと思われる。
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21 マグマ溜まりは天然の原子炉である(火山爆発の原理は原子核分裂反応)
現在までのところ、火山爆発の際の巨大なエネルギー源が何であり、またその爆発原理がどのようになっており、マグ
マ溜まりの内部が何で満たされているのかを明解に解明している者は、世界中広しと言えども皆無ではないかと思われ
る。
即ち、火山という一種の化学工場における火山爆発の化学反応工程で、初成物質が何であり、反応過程がどうであるか
ということである。火山活動の原因をガス圧によるものとする通常の説明は、先の外国の某科学者による指摘から納得し
得ないものである。また火道内に多量に含まれる様々なガスの化学反応による発熱作用や、豊富な化石燃料の燃焼作用に
よるものであるとするこの科学者の説明も、火山爆発のエネルギー総量が適合するというだけであり、瞬時の大爆発の原
因については満足できる解答を何ら示唆していない。それに今日、多くの化石燃料資源は、たとえマグマの熱的変成作用
を受けたにせよ、火山地帯以外のところから発見されているからである。
当方は先述した旧ソ連の研究者達の論文から、排水殻説を通じて、地殻の内部構造を理解する上で、多大な啓発を受け
たことを心から感謝するものであるが、火山爆発の原理やエネルギー源についてはなおも不透明なものを感じざるを得な
い。
彼等によると、マントル上部にある排水殻の内部は全ての物質を溶解し運搬していて、そこでは未知の様々な化学変化
が起こっているが、何よりもマントル岩石の大陸性の岩石への転化が生じており、臨界点を越えた蒸気がシリカを放射性
物質とともに上方へと運んで花崗岩を形成させているという。即ち、花崗岩は下層の玄武岩よりもシリカに富み、トリウ
ム、ウラニウム、カリウム等の放射性元素を内部に濃集させて不活発にしているのである。また地球の生成当時より、地
球内部の熱エネルギーは、実に放射性物質の核壊変に伴う核エネルギーであったが、この放射性物質の大部分(約九五%)
は、現在では地殻という薄膜に集中し、残りはマントル中にあるという。
一方、彼等は、火山爆発のエネルギー源を放射性物質から放出される熱によるものではないかと関心を示しながら、こ
の放射性崩壊熱がどのようにしてマグマ溜まりに集中するのか全く解らないし、また火山放出物中に放射能が高いという
証拠も見つかっていないとして、大きな壁の前に立ち止まってしまったのである。もとより、火山噴出物の火山灰や溶岩
の組成を定量的に分析すればマグマの成分や性質が明らかになるというような通常の学説は採用し難いものであると言
う。なぜなら、地下深部の高温高圧下では、岩石すら金属化したりして、組成や性質も著しく変化し、また噴出する時の
速度による冷却過程の違いによっても大きく変質するものといわれ、単純に可逆的に分析して解明できるものではないか
らだ。
さて、当方の推察するところ、地球内部にある排水殻を対流してくる各種金属資源の中に、ウラン等の放射性物質も多
量に含有されているものと思われる。そうした放射性の物質がマグマ溜まりで濃縮されて来て、ある一定の臨界点に達し
た際に、豊富な水分と遭遇して核分裂反応を引き起こしていく結果が、実に火山の噴火として大爆発を生じさせるものと
思われる。即ち、火山爆発の原理とエネルギー源は、排水殻よりマグマ溜まりの内部に持たらされる放射性物質によるも
のと推理する。
つまり、四五億年の地球史の中で繰り返し起こって来た火山の爆発、その原因となった地球内部でのマグマの発生は、
ウランやトリウム等の放射性元素の放出する核壊変エネルギーによるものと推察する。そのウランとトリウムは、イオン
の電荷が等しく、大きさも相似していて化学的性質も極めて似ているものだが、イオン価数が大きい為に鉱物結晶の中に
は取り込まれにくく、排水殻内部においても単独の結晶として集積され易いものと思われる。こうしてウラン等の放射性
元素は排水殻より地殻の花崗岩中に集中して来るのであるが、マグマ溜まりにこそ多量のシリカと放射性物質が濃縮され
ているものと思われる。
ここで、今日、ウランが原子炉内や原子爆弾として核爆発の連鎖を起こす原理を見ると、充分に濃縮されて臨界点に達
したウランが、多量の水が減速材として周囲に存在する条件下で、ウランから放出された中性子が水素原子に衝突して減
速され、次のウランとの反応即ち連鎖反応が起こり易くなって核反応を発生させている。火山が瞬時に爆発する原理は、
実に多量に噴出される水が減速材の役割を果たして、濃縮ウラン等の放射性物質から放出される中性子のような素粒子に
よって、豊富な放射性物質が連鎖反応的に核分裂を起こす原理に似たものに基づくものと思われる。
当方の考えでは、火山内部のマグマ溜まりにおいては、排水殻からのシリカや放射性物質が濃集され、豊富な水の存在
と併せて、核分裂反応による核爆発が発生し得る条件が充分整っているものと思われる。また火山活動の長い休止期間は、
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実に核爆発が起こり得るに充分なウラン等の物質の濃縮が進行しているものと考えられる。火山爆発の際に空中高く舞い
昇る巨大な雲を見ても、核爆発実験の際に見られる巨大な原子雲(キノコ雲)と何と似ていることだろう。正に火山内部
のマグマ溜まりは天然の原子炉であり、火山爆発は天然の核爆発に他ならないのであり、放射性物質による原子核分裂反
応であろうと思われる。
なお、火山爆発は、現象面だけに着目して解りやすく例えれば、真っ赤に熱した炭火に水を掛けた際の一瞬に爆発的に
噴出する現象にも酷似したものであろう。
22 マグマ溜まりよりウラン等の各種金属資源抽出へ
さて、先の研究者たちも、火山噴火の原理が未だに解らないと言いながらも、排水殻に豊富な鉱物資源が存在している
ことを示唆している。彼等によると、
「マグマ溜まりのマグマは、地球内部のモホロビチッチ面とコンラッド面との間の層を占めている排水殻より持たらされ
る。この排水殻の層厚は、陸地では五~一〇キロメートル、山岳地域では一五キロないしそれ以上と言われる。海洋地殻
にはコンラッド面は存在せず花層岩層もないが、海洋地殻も大陸地殻と同様に、二つの層、即ち堆積岩層、第一玄武岩層、
第二玄武岩層から構成されている。モホロビチッチ面のすぐ上に横たわっている第一玄武岩層の厚さが一番安定してい
て、この層の厚さが排水殻の主要な厚さと考えられている。即ち排水殻の厚さは海洋では平均して三キロメートルである。
排水殻は実に豊富な蒸気、ガス及び溶液で満たされているが、その中には花崗岩層や透水殻巨体の岩石から溶脱した多
量のヘリウムや、各種の溶解した鉱物資源が大量に含まれている。排水殻ができて以来、その溶液中にメンデレーエフの
周期表にある全ての元素を含む化合物が蓄積されて来た。この規模の大きさや全地点で入手できる点で、排水殻に比肩し
得る程の鉱液源はこの地球には存在しない。海水中に多量に含まれて核融合炉で利用できる重水や、大洋底に賦存する四
〇〇〇億トンもの鉄マンガン団塊や、地表面に噴出している各種鉱物資源の鉱床を形成した溶液供給源は排水殻以外に考
えられない。
熱水鉱床の形成は多くの要因に規制されるが、鉱物を濃集する主な条件は、鉱石成分を含む水溶液の存在である。鉱床
の大部分は深部断裂に伴われるが、このことは鉱石が排水殻の溶液から生じたことを証明しているという。断裂に沿って
上昇した溶液は反応に適した条件に出会って、溶解していた化合物が非溶解質に変わり、沈殿して鉱床を形成する。また
排水殻の溶液中に含まれる諸物質は溶解度や化学的性質が異なる為、上昇の初期には溶液は周囲の母岩の鉱物と最も活発
に反応して、難溶性の化合物を形成するものが晶出する。鉱床を作る化合物を失った残液は、周囲の岩石から抽出された
物質に富む様になる。溶液はなお動き続け、別の条件をもった他の層では、別の活性に乏しい成分から成る鉱床を形成す
る。
排水殻がいろいろな物質から成る溶液によって満ち、鉱床の形成に大きな役割を果たして来たと考えると、近い将来に
は必要な鉱物原料は坑道からではなく、排水殻の溶液から直接採取されるだろうと期待できる。排水殻から地表面に溶液
を取り出し、その溶液から全物質が、新しい方法によって抽出し得ることだろう。その様な新しい方法としては、イオン
交換樹脂による吸着法、クロマトグラフ法、電気化学法等があげられる。
排水殻中の溶液(マグマ)からの鉱物析出は、鉱物毎に極めて規則正しく系列化されている。即ち、地殻中の元素存在
度が〇・一%以下の金属は、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、モリブデン、金、銀、プラチナ、クロム、錫、タングステン、水
銀であるが、この様な地殻中における希有金属の存在している有様は、地殻に多量に存在する金属とは全く異なっている。
地殻に多量に存在する金属は鉱物中の主要構成元素として存在するが、希有金属は、硫化物、酸化物、珪酸塩などの結晶
中の、主要元素の一部を置換した形で存在している。
また希有金属の鉱床の多くは局所的でしかも小さい為に、鉱床探査は極めて難しい状況である。一方、火成岩の中でマ
ントル上部の組成を持つものに、プラチナ、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等の白金属元
素が含まれることが多い。それに対して金は地殻の組成を持つ火成岩に含まれていることが多く、砂金鉱床として存在す
ることもある。クロム、タングステン、タンタル、バナジウム、ニオブ、ウランなどは酸化物の形で産出する。
このクロム鉄鉱は塩基性質の末期マグマ鉱床のカンラン岩中に見られ、タングステンは鉄マンガン重石や灰重石の熱水
鉱床や接触交代鉱床、砂鉱床として産出する。またチタンを含む主要鉱物にはチタン鉄鉱とルチル(金紅石)があるが、
チタン鉄鉱はマグマの結晶分化作用に伴って析出することが解っている。しかし、現在の多くの鉱床は、地表面に極めて
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近い部分に限られていて、地下深部に対しては殆ど採取していないのが実状である。」
ところで、先に当方が示唆したように、火山爆発の際の膨大なエネルギーがウランなどの放射性物質による原子核分裂
反応であり、マグマ溜まりが天然の原子炉だとすると、火山爆発の反応前におけるマグマ溜まりは、火山爆発のエネルギ
ー源としてのウラン等の放射性物質を濃集している場所と推察される。そして、火山灰中に含まれる種々の金属元素、そ
して排水殻に含まれる豊富な鉱物資源も存在している可能性が高いと思われる。即ち、先の研究者らが指摘した火山灰の
特性から観察すると、マグマ溜まり内部からは、ウランなどの放射性物質のみならず、鉄、マンガン、リン、イオウ、チ
タン、マグネシウム、マンガン、ニッケル、バナジウム、タリウム、銅、クロム、ストロンチウム、ジルコニウムなどの
希少金属の抽出も不可能ではないように思われる。
それに、火山噴火が不発に終了した場合などは、そのマグマの中には濃縮ウランが存在している可能性も高いと思われ
る。事実、聖心先生も、火山の爆発時に、火口内部より吹き上がるマグマにはウランがあるが、爆発後に流出する溶岩(マ
グマ)にはウランが無いと言われ、日本にはウランなどの鉱物資源、エネルギー資源が豊富に存在していると指摘されて
おられた。地下深部の沸騰しているマグマ溜まりにまで探査しなくても、マグマが上昇してきた際に、噴火爆発にまで行
かずに、そのまま急冷して固化してしまったマグマも多いはずだ。このマグマはウランなどを豊富に含有しているものの、
極めて地表に近いところに存在しているものと思われる。このウランは、現在の探査技術では、実に岩石の表面に露出し
ているものしか検知できないのが現実だ。即ち、岩石内部に包合されているウランに関しては何も解らないと言うことだ。
岩石をハンマーなどで割って、露出させて初めて検知できるというものだ。
ところで、このマグマ溜まりから、あるいは火口直下から豊富なウラン等の放射性物質を始め種々の金属資源を採り出
すことは、より地下深部の排水殻から様々な鉱物溶液を採り出すのに比較して、掘削や搬出がはるかに容易であり、採り
出した後の特定鉱物の抽出や分離の作業も少なくて済むことであろうと思われる。既に、最近は外国の研究者からも、火
山の地下深部に、様々な金属資源が存在することが指摘されており、そこから各種金属資源の抽出を示唆する見解も出て
いるようだ。排水殻に豊富な金属資源が存在することは、既に指摘されていることから、そこから運ばれてきたマグマ溜
まりや火口直下には、金属資源が豊富に存在することが明らかになるのは、時間の問題でもあったと言えよう。
目下、ウラン鉱床の九〇%は先カンブリア紀の楯状地ないしその地層の古生代層に見出されるというが、ウラン探査は
地表付近に限られ、地殻深部には技術的困難性から探査していないのが実状である。このウランを始め、種々の金属元素
を、地下数キロメートルのマグマ溜まりより採り出す為には、マグマ溜まりの所在位置を正確に探査できる技術、地下の
高温・高圧下のマグマ溜まりに到達する為の掘削技術、マグマ溜まりからウラン等の組成や性状を変化させないで地表に
まで搬出させる技術等が必要となるだろう。また、掘削する際には、掘削器の先端刃(ビット)は岩石との摩擦の為に多
量の熱が発生して損傷し易いことから、このビットには耐熱性や強度を要求されるものだ。現在のところ格別に優れたも
のは極めて少ないが、掘削中や掘削後の挿入パイプ(導管)には、耐火性や強度性や耐磨耗性に富む火山灰利用新素材の
銑テラが極めて有効に活用できるだろう。
更にマグマ溜まりの位置は、石油の油井や、地雷原や不発弾の探査と同様に仲々発見困難なものであり、必ずしも火山
噴火孔の直下にあるとは限らないものだ。多くの場合、噴火地点よりずれて存在しているものと思われ、それに噴火の正
確な時期や噴火力(マグマの成長や大きさ)などは現在の科学技術では明確に解明されてはいない。それ故に、目下の探
査技術では、たとえ最先端の種々の物理探査法を活用しようが、正確なマグマ溜まりの位置などについて、多くの試掘を
行なう必要があるものと思う。それに、このマグマ溜まりの存在場所、ウランの存在、核爆発の可能性などについては、
かなりの技術的困難さや危険性が横たわっているのも確かだ。
ところが、先の桜島火山の写真撮影をされて偉大な仏知恵を会得された仏身顛化の聖心先生は、各種エネルギーや地下
資源の探査においても、偉大な真法により、即座に発見することが可能であられたようだ。即ち、このマグマ溜まりの正
確な存在場所、深さ、大きさ、ウランの存在可能性、核爆発を起こす時期や威力などについては、そして地表に近いとこ
ろに賦存するウランや、あるいは石油などの存在場所などについても、かなり正確に把握することができたようだ。但し、
聖心先生は、国家的事業に供するという趣旨や目的に沿った場合にのみ、他の様々な地下資源と同様に探査に協力できる
であろうと言われた。単なる個人的な利益追求の野心の下では、偉大な真法を行使して協力はできないものと言及されて
おられた。しかしながら、政府当局からは、何らの返答もなく、全く無視されてきたものだ。
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23
火山爆発の瞬間に放射能は消滅
既に、当方自身の仮説として、マグマ溜まり内部が天然の原子炉であり、火山爆発の原理が、放射性物質が濃縮化され
た際に、臨界点に達して核分裂反応を生じさせる結果であることを指摘した。そうだとしたら、当然に投げ掛けられる疑
問は、爆発後に放射能も殆ど検出され得ないのは何故なのであろうか、放射能は何処に消えたのであろうか、というもの
だろう。確かに、問題の放射性物質であるウランは、火山噴出物(火山灰)中には極めて微量にしか含有されていず、原
子核分裂反応による爆発の際に生じたと思われる放射能は空中にも存在していない。それでは、一体、如何なる原理によ
る物理化学反応であったのだろうか。
思うに、当方にも詳細な反応原理は未だ分からないが、聖心先生がご指摘されたように、恐らく、火山爆発の瞬間に、
即ち核爆発の際に、放射性物質が別の核種に変化するなどして、放射能は消滅するのではないかと思われる。また、一部
は微細な結晶になった直後の火山灰によって放射能は吸着されるのではないかと思われる。それが実に火山灰の不思議な
各種の性状にも影響を及ぼしているものと思われる。火山灰の性状の研究に関しては、放射線、高エネルギー粒子、素粒
子等が吸着されているといった観点から解明していく必要があるだろうと思われる。
ところで、核反応の際に放射能が消滅するというのは、決して有り得ないことではない。今日、様々な核兵器が、熱線、
爆風、核反応によって放出される中性子線とガンマ線、核反応で生ずる放射性物質、放射線によって周辺の物質に引き起
こされる放射化作用等の力で、破壊殺傷することが知られ、また放射能を多量に発生しない「きれいな核爆弾」も出現し
て来ている。その中には、核反応によって、放射線の一種である中性子を大量に発し、その強力な物質透過力で人間の細
胞を破壊し、建物や遮蔽体には何の損傷も与えない中性子爆弾や、またそれとは対照的に、多大な爆風を発生させて建物
等を破壊させるにも拘らず、放射能の残留が極めて少ない残留放射能低減爆弾がある。火山の核爆発の原理も、これらの
核爆弾の核反応の原理またはその組み合わせや、あるいは類似した未知の原理によるものではないかと思われる。これに
は、先程の写真の光線群の謎を解明し、素粒子の諸性状を分析することが必要となるであろうと思われる。そしてこれら
光線群が未知の素粒子・放射線群であると仮定すれば、火山の爆発原理の解明に何らかの可能性が生じて来るものと確信
する。
ところで、以前に、産業上利用可能かどうかの特許性の有無を論じる事例を掲げた某政府文書の中で、火山の爆発が放
射性核物質による原子核分裂反応であるという見解を目にしたことがあった。それは火山の爆発を防止するために、噴火
直前の火口に中性子を大量に放射する物質、例えば、硼素(ほうそ)等を多量に投下すれば、それによって、爆発噴火を
防止し回避できるというものであった。当方と同様に考える人がいたのかと興味深い思いがしたものである。ところがこ
うした見解も、政府当局によって、全くあり得ない事例で、産業上利用できないということで拒否されていたようだ。火
山の爆発で放射能が何処に消えたかが解らないし、どうして放射性物質が生じるのかが解らないからでもあるようだ。更
には、どうして放射性物質が核分裂反応をするのかも解らないからだ。当方も筑波の政府の研究機関の専門家に電話で質
したが、相手の方も、万一、そうだとしても、放射能は一体何処に消えるのかと言って、一笑に付していたものだ。しか
し、何時の日か世界の何処かで、誰かがこうした当方の火山噴火の原理に関する仮説に対して、否、聖心先生がご指摘さ
れる真理に対して、解明することもあろうと確信するものだ。
24 地震発生も火山爆発と同じ原理
なお、地震発生の原理に対しても、現在の地球物理学は明快な解答を提起していないように思われる。現在の定説は、
プレートテクトニクス理論により、地球上を被っている数枚の巨大プレートが存在し、それらの各プレート同士の境界で
の沈降と浮上に伴う相互移動による摩擦熱によって、歪みエネルギーが溜まってきてある瞬間に至ると、地震が発生する
というものである。しかしながら、年間で数センチしか移動しないところで生じる単なる摩擦熱ぐらいで、歪みエネルギ
ーが蓄積されて、それが地震発生とかの莫大なエネルギーを生じること自体が余りにも不自然であろう。
地震の発生も火山の爆発も、同様に、聖心先生がご指摘されたように、共に地殻内部からの巨大エネルギーによるもの
であり、同じ原理に基づく現象であろうと推察できる。即ち、火山噴火も地震の発生も共に、地殻内部のマグマ溜まりに
おけるウラン等の放射性物質による原子核分裂反応という同じ原理によるものであろうと思われる。地震が、火山爆発に
比べて、地下深部で発生していることから考えても、単なる地殻内部の発生場所の深さの相違により、火山の爆発になっ
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たり、地震になったりするものと思われる。即ち、原子核分裂反応が浅いところで発生すれば火山の噴火となり、深いと
ころで発生すれば地震となるものであろう。ただ、地震の場合には、火山の場合に比べて、余りにも地殻の深いところで
発生する故に、火山との共通性に容易に思考が及ばないのではないかと懸念するものだ。
ところで、火山地帯が環太平洋地域に弧状に集結していたりして、何となく、現在の通説として主流を示すプレートテ
クトニクス説により、プレートの境界で発生しているような説明もある程度、図式的説得力を有しているものだ。しかし、
地震は、火山地帯とは全く無縁の大陸内部でも起きており、それはプレートの境界説では説明できないものだ。
火山爆発は比較的浅い地殻内部によるもの故に、プレートの境界と何となく合致するものであろうが、地震の場合には、
比較的深いところで発生するものだから、必ずしもプレートの境界と適合しないものであろう。そこからしても、プレー
トテクトニクス説の限界を感じ取ってもいいものだ。
先の排水殻理論を援用すれば、火山爆発も地震発生も、共に、排水殻から運搬され凝縮された高濃度の放射性物質によ
るものであろうと推察できる。それ故に、偶々、排水殻から地下数キロほどのマグマ溜まりを上昇してくる放射性物質の
場合は、地表に噴出する火山の爆発に至り、それより深い場合は、地下内部での核分裂反応で終わって地震の発生となる
ものと思われる。実に、火山深部のマグマ溜まりのような天然の原子炉は、地殻内部の至る所に存在しており、原子核分
裂反応による爆発が、発生深度の相違により、火山爆発になったり、地震発生になったりするものと思われる。
ただ一九九九年九月二一日午前一時四七分の台湾中部で発生した台湾大地震は、マグニチュード七・七で、被害総額一
兆円、死者二三二二人を発生させた巨大地震であったが、震源の深さは何と地下一キロであったと報告されている。この
ような浅い深度での地震発生は、普通の常識を大きく越えているものだ。自然に発生した地震の震源の深さがこんなに浅
いのは異常であった。当方も、当地の地殻内部の構造に関心と興味を持っているものであるが、案外、マグマ溜まりが急
上昇してきたにもかかわらず、何らかの岩盤などで地上に噴出しなかった可能性も考えられるものだ。
他方では、余りに震源の浅い地震発生に疑問を抱いて、人工地震の実験であったとか、色んな憶測も飛び交っているよ
うだが、真偽のほどは解らない。ただ、現在の地下ボーリング技術が、温泉の掘削技術の進展などでも解るように、今や
地下二〇〇〇メートルぐらいは簡単に達成できるようだ。万一、そのような地震兵器などに悪用していけば、何処かで科
学過信から制御できなくなって、人工地震が天然地震を誘発して、とんでもない予測不能、制御不能な結果をもたらして
いく場合もあろうというものだ。それに、何も地域的な物理的な因果関係にだけ及ぶものではなく、因果応報、自業自得
の原則により、そして霊的な因果関係により、自らに天罰となって跳ね返ってくるであろうと思われる。
なお、火山爆発と地震の発生とは同じ原理であるとすれば、先述したように、天然の原子炉であるマグマ溜まりからウ
ラン等の放射性物質を抽出することは、副次的な効果として、火山の爆発と地震の発生を抑制できるものと思われる。即
ち、巨大災害の防止にもなっていくと推察するものだ。これは、聖心先生も、その可能性を示唆されておられたものだ。
現在の科学では地震の予知にばかり関心が行っているが、大胆な発想に基づいて、火山噴火や地震発生の抑止、抑制にま
で考えている者は皆無ではないだろうか。
25 東海沖地震は直ぐには来ないだろう
現在、伊豆半島の西側の駿河湾沖で大規模な地震、即ち、東海沖地震が発生すると喧伝されているが、当方は、政府や
地震の専門家が指摘するような可能性は早急にはないであろうと思っている。もしも東海沖や伊豆半島などの太平洋側で
巨大地震が近い内に来るとしたら、むしろ伊豆半島の反対側である東側の相模湾沖における地震の可能性が高く、これが
関東大地震になっていくように思われる。
伊豆半島の東側の駿河湾沖と西側の相模湾沖とでは、一見して距離的にも大差なく、同じような場所に見えるようだが、
実は大変な違いである。即ち、伊豆半島の西と東とでは地形的にも地殻構造的にも、全く相異しており両者に相関関係も
ないものと思われる。実際に、現在起きている不気味な三宅島を中心とする地殻の異常に活発な運動は、相模湾沖の大規
模な地震を想起させるような兆候とも言えるであろう。場合によっては関東大地震にも発展するかも知れないと思われ
る。既に、一九二三年の関東大震災から随分と時間を経過し、地震発生の周期からいっても、何時でも関東大地震が発生
してもおかしくないとして、首都圏直下型地震が急迫していると指摘する声もある。
それに東海沖地震が一九七八年頃に指摘されて対策室が設けられてから、既に二〇年以上も経過しているのである。一
旦下火になった東海沖地震が再問題化してきて、被害地域が小田原市や箱根あたりや山岳地帯の山梨方面にまで拡大され
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て警告が発せられている。しかしながら、仮に、東海沖地震が発生したとしても、伊豆半島や富士箱根の堅い岩盤により、
伊豆半島を越えて東側には伝わらないものだ。これは、関東大震災において、伊豆半島から西へは伝播しなかったことで
も解る。また、濃尾地震でも、飛騨の山岳地方には山の岩盤地帯のせいで伝播していないことでも証明されるであろう。
単なる距離の問題ではなく、メキシコ地震の場合でも、震源地の地中内部の岩盤が大いに関係しているようだが、こんな
単純なことに理解が及ばない専門家も多いように思われる。
思えばメキシコ大地震で、震源地から遠く五〇〇キロも離れたメキシコシティーが甚大な損害を受けたことに対して
も、多くの地震学者や建築学者が何も解明できずに終わったように覚えている。五〇〇キロと言えば、日本ならば、東京
と大阪の距離である。即ち、大阪が震源地なのに、五〇〇キロも離れた東京が最大の被害地であったと言うことだ。メキ
シコ地震にしても、メキシコシティーの被害が大きかったのは、堆積層による地盤の液状化、軟弱化が原因であることは
必然であろうと理解ができても、どうして五〇〇キロも離れた場所が震源地であり得るのかに対して、大きな疑問を呈し
たままに終わってしまったようだ。普通の常識では考えられないことだ。当方の推察では、恐らく、震源地の上方に、か
なり堅固で分厚い岩盤が水平に長く横たわり、その為に地震波が横方向にのみ伝播し、上方には殆ど伝わらなかったこと
が真相であろうと思われる。聖心先生もそのように言われたが、残念ながら、当時は、専門家でもそこまでの地殻内部の
解明はされていなかったように思われる。恐らく、これはや現在でも大して変わりはないであろう。なお、これらのこと
は、後述するように、あらゆる事象の因果関係や背景を偉大な仏知恵で解明される聖心先生がご指摘されたことでもある。
第7章 地球文明の過去から未来を展望して
26 一九〇八年ツングースカ核爆発は、地殻内部からの原子核融合反応
一九〇八年ツングースカ核爆発は、地殻内部からの原子核融合反応
ところで、一九〇八年六月三〇日午前七時二分、中央シベリアの奥地ツングースカ川上空で原因不明の大爆発が発生し
た。歴史的にも有名なツングースカ核爆発事件があった。これは、事件から二〇年後の探検隊の調査により初めて事件が
明らかになったもので、日露戦争が終わった一九〇四年の四年後の一九〇八年に、シベリアの西方のツングースカ地方の
上空で何かが大爆発した事件だ。その後の調査で、現場の周囲には、半径二〇キロの広範囲の円形状にわたって木が焼け
焦げてなぎ倒されていることが解った。そして爆発の威力は、何と広島に投下された原爆の一〇〇〇倍ほどの大爆発であ
り、爆発時には数百キロ離れた所からもキノコ雲が観測され、衝撃による地震活動もヨーロッパの各地で観測された。そ
して放射能が検出されたと言うことであった。当時は放射能とか原爆なども未だ知られてもいず、また開発されていなか
ったものだ。
インターネット上の某サイトによれば、当時の目撃者の話から「とっさに動くまもなく服に火がつき、強烈な突風(衝
撃波)に吹き飛ばされて引っくり返り、爆音のために耳が聞こえなくなったという。木々が地面にばっさりと倒れ、風が
火を吹き消した。燃え続けるための十分な酸素を取り入れること ができなかったのだ。」、「シベリアのツングース・
タイガ(大森林)の上空に巨砲のごとき轟音がとどろいた。数百の農夫、狩人、漁師たちの目にうつったのは、太陽より
も強烈な光を放ちながら、ものすごいスピードで空中を飛ぶ一個の物体である。そのあとバノバラ村の住民たちは地平線
上にきらめく火球を見たが、次いでそれはキノコ型の雲に変わった。」、「すさまじい大音響が村から八〇〇キロメート
ルも離れたカウシュにまで聞こえたのである。カウシュの列車機関士は列車をとめた。貨車が爆発したと思ったのだ。」、
「アウガラ川の岸辺には大波が溢れ、他の河川に浮かんでいた材木が空中高く跳ね上がった。イェナ、イルクーツク、そ
の他の町の地震計は地震を記録し、連続三夜、ロンドンやパリの市民は電灯なしで新聞を読むことができた。モスクワで
は夜間に写真を撮ることもできたほどで、事件が発生した頃にシベリアにいたロシア科学アカデミ-会員 A・ポルカノフ
の日記によれば、シベリアの雨天時の雲は黄緑色なのだが、この黄緑色がときどきピンク色に変わったという。結局、あ
の途方もない火球は二〇〇〇万平方キロメ-トルの地球と数千万本の樹木を破壊したのである!」と報告されている。
一説では、隕石の衝突であるとする見解も出ていたが、現場では焼け焦げ放射状になぎ倒された樹木が残るのみで、隕
石衝突跡であるクレーターは発見されなかった。そこで、「ツングースカの隕石が石質隕石と呼ばれる、ざらざらとした
石でできていた(金属をそれほど含んでいなかった)ものだったため、空中で分裂してしまってクレーターのような地形は
現れず、むしろ中心では木が倒れず、周辺の木が外側に倒れるという奇妙な現象が起きたのだ」とする見解もある。とこ
ろが、衝撃のエネルギーは一五メガトン級と推定される巨大隕石が衝突したと言いながら、クレーターがないのは空中分
解だとするのは余りにも矛盾が多すぎるというものだ。空中分解ならば、空中高いところでの分解であり、地上への衝突
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もないと思われるからだ。それにイルクーツクなどで地磁気の異常も発見され、ロンドンやパリの空が明るい光輝現象も
報告されているが、隕石の粒子雲では決して起こり得ない現象だ。これからしても、巨大隕石の衝突は有り得ないものと
思われる。
また、一九九四年の木星への半径数キロの彗星のかけらが衝突した事例から、ツングースカ事件も彗星が衝突したと言
われている。しかしながら、木星への彗星衝突の事件とは異なって、氷でできた彗星が地球に接近することはあっても、
大気圏を通過する間に莫大な摩擦熱で氷解してしまうものであり、そうした大気圏を通過してまで地球に衝突することは
あり得ないものだ。それに、隕石と同様に、衝突の痕跡を示す巨大なクレーターなどは発見されていないし、彗星の衝突
では、当時確認された地磁気の異常や光輝現象も見られないものだ。なお、彗星にはシアンなどの毒性物質が存在しても
放射性物質などは全く存在していないことからもあり得ないことだ。近郊に残る某民族の神話や伝説などからも、そうし
た出来事は昔にも発生していたようだ。それに当時の目撃者の話では、大地が赤く染まるように見えたということで、空
からの物体飛来のような異変は何も確認されてはいない。
これまでに、世界の著名な多くの科学者達が解明に当たってきたが、未だに真相が解らないようだ。今日、(1)ツン
グース・タイガのこの大爆発は宇宙空間から来た天体によって発生した。(2)この爆発は地上約一〇キロメートルの位
置で起こった。(3)これは一〇メガトン水素爆弾の力を持つ原子核分裂現象であった。などの説が一般に認められてい
るようだ。
ところで、アメリカのノーベル賞科学者リビーの、「あの爆発は原子核分裂により放出される熱エネルギーだった」と
いう説が紹介されている。彼によれば、
「爆発現場の中心から約一七・八キロの所で、樹木群がハダカにされ、爆発中に光の放射によって燃えたことが発見され
ている。生木ならその表面の一平方センチメートルが六〇ないし一〇〇カロリーの熱線の放射を受けて初めて燃えるので
ある。このことから推定できるのは、爆発で発生したエネルギーはおよそ一・五×一〇の二三乗エルグに達したに違いな
いということである。これはもっぱら核爆発をあらわすものであって化学的な爆発ではない。
我々が爆発の最も重要な媒介変数を知っているとすれば、関連した温度を計算できる。ツングースの爆発は数十億度の
熱を発生したのである。あまりの高温なので一五-一八キロメートルの範囲内の生木は燃えた。
別な奇妙な事実は、木が焼けた度合いはどれも同じではないということである。このことから大火は樹木の下の方か
ら発生したのではないと推定された。焼け焦げた跡は高熱のガスでできたものではない。高熱のガスとすれば爆発は数十
倍も強烈となり、中心地から遠く離れた木も根こそぎやられたことだろう。以上のすべてを考えれば、熱放射によって誘
発された火事は核爆発の結果だということになるのである。
更に各地の観測所における一九〇八年六月三〇日のマイクロ自記気圧計は〇・〇〇一~〇・一ヘルツに及ぶ周波数の
衝撃波を記録しているという科学的証拠が残っている。このような周波数は大気中の巨大な核爆発の典型的なものであ
る。
磁場の変化と西ヨーロッパ各都市の連続三夜に及ぶ光輝現象に関する限り、トムスクのプレカノフが長となっている物
理学者のグループが一九五八年のアメリカによるビキニ核爆発と半世紀も前のシベリアの爆発とを比較検討した結果を
一九六〇年に公表している。ビキニの爆発はツングースの場合に酷似した地球重力場の変化をひき起こしたし、また夜間
の激烈な光輝現象も発生したのだが、シベリアの事件ほどにはおおやけにされていない。シベリアの雲が黄色からピンク
に変化したのは、大気圏内に放出された放射能塵との接触の結果である。したがって一九〇八年六月の末にツングース・
タイガの上空で核爆発が起こったことは、だれも否定できないのである。」と核爆発の根拠を指摘する。
しかし、彼は、原因を「反隕石」による大気圏突入に求めているが、これには、弾道波の点や反物質の存在、そして大
気圏の高い位置での爆発などから、疑問を指摘する声もある。
なお、放射能の影響に同意する見解として、現地を特別調査したあとの一九六九年に発表された旧ソ連の植物探険隊の
驚くべき調査結果がある。それによると、樹木の年輪から、爆発を境に、放射線照射による著しい樹木の成長があったと
して、「実に、樹木の遺伝構造が一九〇八年に根本的に変えられたのであり、これは放射能で起こった現象なのである。
この種の異常な発達は放射能をあびた植物に見られる特徴である。生木にせよ枯木にせよ大多数の木は爆発時かまたはそ
の後に放射能をあびたという事実である。最近の調査の結果、外側の一〇ないし一五本の年輪は放射能を多く含んでいる
ことも判明した。最も重要な事実は次のとおりである。一九〇八年中かまたはその直後にたくわえられた年輪の増加放射
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能は、人工的な放射性同位元素の存在の仮定を必要とするということである。 焦げた木片の調査中に高感度の分光計が
用いられて、放射性同位元素セシウム一三七の存在が確証された。」と指摘する。
以上のように、ツングースカ大爆発は、爆発エネルギーの規模、超高温による熱放射、光輝現象、地球磁場の変化、植
物の突然変異による急成長、放射能・放射性物質の発見などで、核爆発であったという見解が登場しているものだ。それ
でも、その核エネルギーが一体どこからやってきて、如何なる反応にて成されたかのは、依然として謎のままである。
思うに、その核爆発は、火山爆発や地震発生と同様に、地殻内部からの原因であろうと思われる。即ち、既に地下断裂
帯上部に多量のヘリウムを含む豊富な水が発見されていることから、ツングースカ核爆発にも地殻内の諸物質の特殊な化
学反応が大きく関係していたものと思われる。恐らく、それは地殻内部からの彗星的物質による「核融合反応」による核
爆発ではなかったのではと思われる。こうした地殻内部の大量の放射性物質は、火山爆発やツングースカ異変など、大規
模な地殻変動、そして地球磁場の形成にも、更には、超古代の大陸沈降と隆起などの地球規模の地殻変動にも大きく関係
しているのではと考えられる。そうして、放射性物質を多量に含む地殻内の溶液の移動や圧縮、濃集、分離などの現象に
は、太陽系の諸々の惑星やその他の様々な星から受ける引力によって生じる地殻内溶液の潮汐作用も大きく影響を及ぼし
ているものと思われる。
なお、先程の火山爆発が地球内部からの放射性物質の「原子核分裂反応」によるものであると思われるのに対し、ツン
グースカのものは「原子核融合反応」によるものと思われるのである。そして、火山爆発の「原子核分裂反応」の際には、
噴火瞬間に放射性物質は別の核種に変換することにより、放射能が消滅したものと思われるのに対し、ツングースカ核爆
発における核融合反応においては、放射能が残存したと言うことであろう。これは、火山特有の原子炉の性格や噴火特有
の原子核分裂反応が関係しているものと思われる。目下、地球内部からも地球ニュートリノが発見されている状況であり、
ツングースカ核爆発の原因も、火山爆発の解明を通じて、何れは人類の前に明確になっていくものと思われる。
27 過去に地球に襲来した天変地異も人類の想念と呼応したもの
ところで、伝説上ではかつて太平洋にムー文明、インド洋にレムリア文明、大西洋にアトランティス文明などと、超古
代文明が存在したとされている。そして、今から一万二〇〇〇年前に、太平洋に存在したムー文明は地球規模の大変動に
より崩壊し沈没したとされている。他の文明も火山の大爆発や大地震の発生を伴って崩壊したとされているが、これらの
文明崩壊、大陸沈没の原因は、案外、一九〇八年のツングースカ核爆発と同じ原理であり、実に、地殻内部からの核融合
反応によるものではなかったかと思われる。
地球創生以来、様々な進化の過程において、恐竜の滅亡や、哺乳類の登場、マンモスの絶滅などの原因や背景を観察し
てみると、やはり、天体との関係に思いを馳せざるを得ないようだ。そこには惑星間の引力から来る地軸の変動、例えば、
極移動、地球揺動などが発生し、宇宙空間からの様々なエネルギー素粒子などを受けたり、地球内部のマグマ溜まりの放
射性物質にも大きく影響を及ぼして核分裂乃至核融合反応を発生させて、一種の突然変異的作用をもたらしていったので
はないかと思われる。
ところで、恐らくノアの大洪水もそのような天体の異変という背景の下に発生し、生態系の水蒸気層が破壊されて大降
雨を生じさせたものであろう。単なる地球上の大洪水では済まされないほどの大量の水が一体何処から来たのかも大きな
謎である。一説には、月の地球への接近により、月が地球の引力に引っ張られて、月の地殻が断裂し内部からの大量の水
が地球に降り注いだとも指摘されている。その証拠に、月が地球の衛星であるにしては、月が余りにも大きいこと、月の
方が地球の四五億年に比べてずっと古いことや、月が地球に表側しか見せずに、裏側は永久に見せない謎も、また、聖心
先生がご指摘されたように、月の内部が暗く、がんもどきのようにふかふかの空洞になっているという謎も理解できると
いうものだ。それに何と聖書には、大量の水は天空が裂けて降ってきたとする記述があるようだ。なお、ノアの大洪水の
前後では、人類の寿命も大きく変化したようだ。
さて天体を仰げば、二〇〇三年は火星が地球に六万年ぶりに超接近したと言う。こうした惑星間の引力バランスの変化
も、地上の生物の遺伝子や意識、波長、波動想念、脳波などに何らかの影響を及ぼしていくものであろうと思われる。そ
れでは今から六万年前には一体何が起きたのであろうか。実に人類の進化において、類人猿に近いネアンデルタール人か
ら現代人に近いクロマニョン人に進化したとされている。通説ではクロマニョン人が登場するのは、三~五万年前となっ
ているが、当方はもう少し遡って火星が地球に超接近した六万年前と何らかの関係があったものと思っている。
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その際にも宇宙からの電磁波、宇宙線、太陽光線、高エネルギー粒子などの地球への影響により、生命体にも遺伝子や
脳波、想念などに多大な影響を及ぼしていったのではないかと思われる。今正に、同じような天空の異変による地球事象
の大変革の襲来が有り得るもので、人類の大いなる意識の飛翔、覚醒に繋がっていくものと思われる。なお天体の異常現
象に際しても、生存できるか否かの選別淘汰は、科学的に言えば遺伝子の態様により実施されるものだろうが、波動想念
的には邪悪で猜疑な波動こそが、宙天よりの神仕組みにより一掃廃絶されていくものと思われる。
そして目下、異常気象や地震の発生が、地球や太陽系全体における変化と関係があるとして、フォトンベルトに関する
問題が大きく浮上してきている。フォトンベルトとは、宇宙における超電磁波帯であり、ロシアの某科学者によると、地
球を含む太陽系は、我々の星雲の中心である星アルキオンを囲むフォトンベルトに次第に入りつつあり、あるいはその影
響を受けつつあると言う。彼らの理論によると、太陽系は他のプレイアデス(すばる)星座のシステムと一緒にアルキオン
を中心に回っている。太陽系はアルキオンの周りを一周するのに二・四万年かかるという。一万年ごとに地球はフォトン
ベルトに入り、さらに二〇〇〇年間そこに留まるというのである。地球には少なくとも過去五回、氷河時代が訪れていた
ようだが、各氷河期は二〇〇〇年間くらい続いたのであった。既に西暦二〇〇〇年に入ってから太陽系の一部は入ってい
るものだが、地球全体がフォトンベルトに突入するのが何と二〇一二年であるという。しかし、具体的な影響が出てくる
のは二〇一二年以降だとするが、既に、異常気象や地震の多発などで影響が出ているようだ。目下の予測では、まず第一
に、太陽輻射から地球を守ってくれるオゾン層が破壊されるとする。太陽輻射の影響は、人間の脳波や脳細胞、意識や免
疫機構、そして遺伝システムに変化をもたらしていくとする。そして、フォトンの流れが大きくなればなるほど、異常気
象や頻繁に起きる地震を誘発したり、生活機器を制御するコンピューターシステムにも異常を来し、世界経済にも大混乱
や大崩壊をもたらしていく危険性が指摘されている。しかし、他方で、人類の文明史の飛翔、人類の意識の覚醒になると
も言われている。
さて、フォトンベルトによる地球的規模の破局を回避し、新たな人類の再生を目指すシナリオがあるとしたら、一体如
何なるものであろうか。このフォトンベルト現象は、今から一万二〇〇〇年前に滅亡したムー、アトランティス、レムリ
アなどの大陸、文明の崩壊などを照らし合わせて、同じ現象の到来であると思われる。この太古地球文明崩壊における真
の原因や背景も、現在の科学では詳細には解明されているわけではないが、やはり、フォトンベルトにも似た宇宙的異変
の側面があったものと思われ、そこから地殻内部の放射性物質による核融合反応を招来した天変地異であったものと思わ
れる。そしてこの背後には、人々の邪悪な想念波動の蔓延があったものと想像するものだ。
ところで、数年前まではノストラダムスの魔の預言により、一九九九年の八月に、地球を中心にして、太陽を始め太陽
系の惑星全体が十字形に配列する現象、俗に言う、グランドクロスの天体現象により、地球滅亡の危機などが大きく喧伝
されたものだ。当時は、可成り恐怖の気持ちで迎えた人々も多かったようだが、それが肩透かしにあったように何も影響
はなかった。これをもって即、荒唐無稽の考えすぎと言うことにはならないものだ。むしろ回避できた何かが発生した可
能性にも考えを及ぼしていくべきであろう。その後、西暦二〇〇〇年のコンピューター危機のY2K問題も回避され、実
に西暦二〇〇〇年から波動の大転換が、知らずの内になされていき、人類の意識に変化が現れているように思われる。正
に、聖心先生がいみじくも指摘されたように、「国民が気付かぬ内に(国民意識の)改革が進展するであろう」との御言
葉を感慨深く噛みしめているものだ。
さてノストラダムス研究者の方々の分析では、一九九七年頃からノストラダムスの予言も大きく外れていったようだ。
しかしながら、これは巷間指摘されているように、予言が外れたのではなく、逆に予言が当たっていったものだと思われ
る。案外知られていないことだが、ノストラダムスは、「別のもの」が現れれば、自分の予言が当たらなくなるだろうと
も予言していたものだ。この予言に注目する者は極めて少ないようだが、むしろ、この「別のもの」の登場により、ノス
トラダムスの予言が外れていったと言えよう。この「別のもの」の解釈を巡って、多くの研究者が様々な見解を表明して
いるようだが、殆どが見当違いであるように思われる。洞察するに、「別のもの」とは、魔を一掃し封印する神聖で清浄
な波動に他ならないものと思われる。
ところで、今時の改革の核心は意識変革に他ならないものだが、邪悪な想念波動を一掃・廃絶するという地球レベルで
の意識変革というのは、何も食べ物を大切にするとか、人に親切とかの、単なる倫理、道徳、礼儀などのレベルや部類の
ものではない。それらも大切だが、もっと大規模な天変地異を惹起するほどのものであり、正にこの意識変革とは、宗教
的・信仰的側面を有したものであり、悪魔崇拝による邪念波動に関係するものであり、それらの根絶であらねばならない
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だろう。正に悪魔崇拝による邪念波動の発信である魔の封印であり密閉に他ならないものだ。一万二〇〇〇年前のムー、
アトランティス文明の崩壊の場合も、邪悪な想念波動が、地球や宇宙の電磁波と呼応して、地殻内部の放射性物質による
原子核融合反応の天変地異を招来させた可能性が高いと思われる。
さて、今後の世界情勢は、日本の国家財政の破産や、ドル暴落などによるアメリカ連邦政府の崩壊、欧州連合の破綻、
ロシアや中国の分裂破綻が必至であろうと思われる。そして、最も矛盾が山積する中で、経済規模の大きい日本の崩壊が、
全世界に大きく影響を与えて、世界経済の崩壊、即ち、資本主義の行き詰まりに至ることが予想される。それに伴って、
日本国民が意識変革を達成できたならば、新しい地球文明創設に向けた種々の改革は、日本から現れる可能性もあろうと
思われる。その時期は、恐らくフォトンベルト突入の二〇一二年に間に合う二〇一〇年頃からと思われる。
この最終的に二〇一〇年頃から、日本が世界に向けて主導し教導する文明史大転換の改革があるとすれば、正に邪念波
動を一掃し廃絶し封印する宗教改革に他ならないものと思われる。今時のフォトンベルトによる破局到来も、知らずの内
の意識変革により、即ち、宙天よりの真の神仏による悪魔崇拝の宗教の破綻、封印・密閉・廃絶・一掃により、回避され
ていくものと思われる。決して、一部の善良な有識者の方々の、単なる祈りの儀式やお祭りぐらいの意識変革で回避され
るものでは有り得ないものだ。先ずは日本で、真の正しい宗教や信仰が実現されて、その後に全世界的規模で実践されて、
神聖な波動が広く伝播し浸透していくことがあれば、ノストラダムスの預言回避のように、フォトンベルトによる地球破
滅も回避されるものと思われる。この正しい信仰こそは、国民総決起による「真仰」の実践に他ならないものであり、こ
の「真仰」こそが、邪悪で猜疑な波動想念の一掃に繋がって、今世社会を救う第一義のものとなるだろう。
28 偉大な仏身顛化の聖心先生からの御示唆が大いに参考
さて、画期的火山灰利用新素材技術の優れた各種性能の解明に当たっては、既に紹介した桜島火山の麓における不思議
な光線群の写真の解明と併せて、火山噴火の原理の解明と共に成されていくであろうと思われる。換言すれば、写真の謎、
即ち、桜島火山内部から地上に向かって照射される無数のカラフルな光線群の解明ができてこそ初めて、火山噴火の謎も
解明でき、併せて、火山灰利用の新素材の画期的な特性の謎も解明できるだろうと確信するものだ。
恐らくは、写真の光線群は未知の素粒子群であり、それらは、今回登場した火山灰利用による新素材の謎の解明を始め、
古代文明における巨石建造物の謎の解明にも関係してくるものと推察される。また桜島大根の巨大さや、ガラパゴス諸島
における巨大な動植物群の謎、そして火山噴火の原理から、噴火直後に放射能が消滅するという不思議な仮説の謎の解明
にも関係してくると思われる。画期的な火山灰利用の新素材の様々な特性こそは、実に、地球内部、それも火山深部から
放出され照射される素粒子群であろうと思われる。それも人類にとっては全く未知の物質ではないかと思われる。これを
解明した暁にこそ、新素材の物性も解明されるものと確信するものだ。
ところで、幾多の試行錯誤の中で、多大な示唆を与えて下さった方が、当方の人生最大の恩師であられた聖心先生であ
った。先の桜島火山の麓において、地上に向かって放射され乱舞する色とりどりの不思議な光線群の写真を、普通のカメ
ラでフラッシュ無しで撮られたのも聖心先生である。これは普通の者では決して撮ることができないもので、特殊な能力
と言うしかないが、恐らく、大宇宙の最果てよりの特殊なエネルギーをキャッチされて撮影されたものと推察される。こ
うした素粒子光線群と思われる写真は他にもある。即ち、目下、素粒子の形状に関して、ひも状理論、ストリング理論な
どと言われているように、ひも状の光線が写った写真である。これも何かのヒントになるであろうと思われる。
ところで、聖心先生は、二五〇〇年前の古代インドにおける釈尊と同様に、人間を超えた仏身顛化への歴史的偉業を達
成された方である。その結果、広大無辺の偉大な仏知恵を、何人も犯すことが許されない超絶無限の神聖な「波徴」(輪
廻転生界を超絶した神聖で清浄な宙天からの「徴微の波動」によるもので、自然界の「波動」と区別)が充満する宙天よ
り授持され、前世、現世、来世に亘って、あらゆる分野における真正な因果関係や解決策を把握されたものである。即ち、
釈尊の時代を大きく超えて、現在の全ての科学をもってしても解明できない難病・奇病や複雑骨折、大火傷の治療を始め、
地下資源探査など数多くの難題に対して、適確な判断と分析の下に、霊的因果を含めてあらゆる因果関係や解決策を指し
示され、実に空を飛ぶこと以外は何でもできるほどの、偉大な法力を授持されたものである。因みに、釈尊の場合は偉大
な仏身であるものの、その後の修行は為されず、一種の超能力である法力と呼ばれるものは皆無であり、もっぱら、説法
により布教されたものである。聖心先生のこの事実は、人類の歴史上、画期的偉大であろうと思われるが、残念ながら、
これまでにも、多くの方々に紹介してきたが、誰も関心を抱かないものである。
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今回は、偉大な仏知恵に基づいた先生との対話が、火山灰技術を通して、何よりも最大で最終的なヒントを数多く与え
てくれたものだ。聖心先生には、当方も、様々な知識を駆使して、色んな角度から疑問や質問をぶつけていった。ある時、
聖心先生に、某写真家が撮影した一枚の写真をお見せした。そこには、砂漠の中を微細な粉塵をあげて疾走する馬車が写
っており、大地にはその馬車の車輪がくっきりと残った轍を見せていた。そこには、不毛な砂漠といった印象を大きく超
えて、何とも言えない荘厳な感じがしたものだった。そこで、案外、砂漠の砂が火山灰ではないのかということを先生に
問い質したら、正しくその通りだと言われた。微細な火山灰だからこそ、湿ってもいないのに、明確な車輪の跡が残って
砂埃も立つものであり、普通の砂ならば、湿っていない限り、これほどはっきりとした跡は残らないし、それに湿ってい
たら砂埃も立たないというものだった。即ち、普通の砂では、車輪の跡と砂埃とは両立しないということであった。
実に、一枚の写真を通して、火山灰の性状から砂漠の砂とを結び付けた観察から理解し納得し、砂漠の砂は火山灰だと直
感した瞬間だった。聖心先生によれば、実に、これはノーベル賞にも値する歴史的大発見であろうとも言っておられた。
そして今回の火山灰コンクリートに関しては、その独自の物性や混練方法により、目下、懸案になっている高レベル放
射性廃棄物の処理にも効果的であるということも指摘されておられた。これも実に画期的なもので、当方も関係方面に火
山灰技術の紹介と共に打診したが、何ら関心も注意も引かなかった。ただこれを知った研究者が、参考にしてアイデアを
適当に取り入れていったようだ。しかし、当方を無視した狡猾で邪悪な想念のために、何か天によって邪魔されて、その
後、思い通りには進展していかなかったようだ。
なお、異常気象や地球温暖化にしても、目下、喧伝されている炭酸ガスが主因でもなく、ましてや、火山灰が主因でも
なく、実にこれは、一九六〇年代以降、年間五〇、六〇回で延べ一八〇〇回以上も実施されてきた放射性核実験による放
射性塵が原因であると言うことも、聖心先生のご指摘であった。この仮説に対しても、未だ誰も言及していないものであ
る。精々、太陽の黒点活動が関係しているのではないかとの説が登場しているくらいだが、この太陽活動に影響を及ぼし
ているのが、実に放射性塵なのであろうと思われる。
また、古代エジプトのピラミッドの巨石こそは、現地の砂を使った人工コンクリートではないかとの問い掛けに対して
も、同意を与えて下さった。その証拠に、人工のものには、火山灰や石灰や岩塩などにより、コケが生えないはずだとも
言われた。この事実からも、ピラミッドの建設で周囲の砂漠の砂を利用したとするならば、その周囲の砂漠の砂こそは火
山灰ではないのかとの感触はあった。古代の巨石建造物は、今回の火山灰とセメントとガラス質粉末のキラと混和剤を用
いた火山灰コンクリートと異なり、ピラミッドなどの大陸系のものは、火山灰と石灰(石灰石)と岩塩(マグネシム系化
合物)を使用し、モアイ像などの海洋系のものは、火山灰と石灰(サンゴや貝殻)とニガリ(海水中のマグネシム塩)な
どを用いて混練したものであろうとも言われた。思うに、火山灰コンクリートは、現代のポゾラン(シリカ)セメントと
アルミナセメントの中間的なものであろう。
結局、聖心先生のご指摘では、「塩田に火山灰を撒くと固まる」と言うが、塩田の塩には塩化マグネシウム(ニガリ)
が含まれるとし、これさえあれば、ヘドロでもフライアッシュでも何でも固めてしまうのである。太古の巨石には岩塩や
ニガリなどのマグネシウムが含まれていると言う。古代ローマ帝国やピラミッド建設時では、どうしてマグネシウムを入
手したのか解らないが、火山灰人工コンクリートにも、マグネシウムが大きく関係していると言う。なお、日本の奈良の
石舞台の巨石も、どうも付近に巨石もなく、人工的なものを感じて質問したところ、石灰に火山灰が風化した粘土を混練
したものが岩石化したものであると言うことだった。やはり、火山灰、粘土(カオリン)、マグネシウムなどが関係して
いるものだ。
なお、ピラミッドの巨石が人工のものであることに関しては、かなり前の昭和五七年(一九八二年)春に、在日外国大
使館にピラミッドの巨石に関して人工であるとの指摘を紹介した小論文を送付したことがあった。恐らく、それからヒン
トを得たのか、先述したように、フランスの某化学者が米国の某新聞にその旨を発表した。ところが、エジプト考古学庁
からも全く無視されたようだ。これは日本でも、某週刊誌に紹介されたし、また先述の昭和五八年(一九八三年)九月一
六日付け毎日新聞夕刊にも、ピラミッドの巨石が人工のものであるということが紹介されていた。当方の指摘が発端であ
ろうと聖心先生も霊感にて述べておられた。今回の火山灰コンクリートにより、しかも砂漠の砂が火山灰であることと併
せて、広く理解と評価を受けていくのではないかと期待するものだ。また、これでないと、発展性がないというものだ。
なお、巷間、ピラミッド内部には不思議な力が充満しているとの指摘があるようだ。即ち、ピラミッドパワーと言うも
ので、錆びたナイフの錆が取れて切れるようになったとか、食べ物がなかなか腐敗しないとか、また機器が狂いを生じる
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とか、磁石が功を奏さなくなるとか、様々な報告が成されているようだ。このピラミッドパワーなるものを、多くの者は、
ピラミッドの正四角錐の形状に求めているようだが、聖心先生によると、そんな形状に関係するものではなく、実にそこ
に使用されている火山灰の物理化学的性質からもたらされるものと指摘された。また、一九八四年四月頃であったであろ
うか、以前に、ピラミッド内にガスが発生したことがあったが、これは火山灰が原因であると言われた。そして、恐らく、
現代の科学では解明されないだろうが、もしも将来に、これが解明されれば世界の歴史は変わるだろうと言うことだった。
今回、火山灰利用の新素材の様々な特性を解明していくに連れて、やはり、ピラミッドパワーの実態は、実に砂漠の砂
である火山灰の特性に存在するように思う次第だ。聖心先生も、火山灰利用新素材の特性の解明に当たっては、素粒子学
や放射線学などの学問分野の方々の協力が必須であり、またそれが解明できた暁にこそ、火山の爆発の原理も解明できる
ことに至ると指摘された。また、ピラミッドを始め、超古代の巨石の建造は確かに人工による混練方法によるものである
が、その積み上げや建設においては、膨大な労働力を駆使していったことは当然だが、そこには、催眠術や浮遊術という
魔術を駆使して成されていったとも指摘されておられた。そんな魔術を使ったからこそ、魔の祟りを受けて、地殻内部か
らの核融合反応を招来して、高度の巨石文明が崩壊したと言うことであった。
なお、聖心先生と一緒に、かつて茨城県の筑波にある某研究所の地質標本館を訪れた際、
偶然にも最初に立ち寄った部屋で火山爆発の映画を見て、先生が火山爆発の原理を瞬時に解明されたのであった。即ち、
入館した時間帯に上映されていた火山爆発の映像を見ながら、先生は手をかざして顕証され、火山爆発の前の煮えたぎる
マグマには豊富なウランが検出されるが、爆発後のマグマには何も検出されず、火山爆発の原理こそ、放射物質による核
分裂反応に他ならないと指摘された。
それでも最後に残った疑問は、もしも放射性物質による核分裂反応であるならば、放射能は一体何処に消えたのであろ
うか。先生の御回答は、放射性物質が検出されないのは、放射能は噴火爆発の瞬間に消えるのであり、人体に影響のない
別の核種に変化して放射能は消滅するということだった。それ故に、爆発後の溶岩や火山灰などには放射能は検出されな
いと言うことだ。恐らく、詳細には検討していないが、吸着性の強い火山灰も、ある程度、放射性物質を取り込んで封印
し密閉していくのではないかとも思われる。
ところで、火山爆発が地殻内部のマグマ溜まりにおける放射物質による原子核分裂反応によるものだとすれば、火山爆
発寸前のマグマ溜まり内部で煮えたぎっているマグマや、それが冷却したものを採取すれば、当然に、豊富なウランが検
出されるということだった。また、高温マグマの抽出・除去は地震の発生の抑止にもなるだろうと言うことであった、し
かし、それは極めて危険を伴うものであり、マグマ溜まりの探査も、必ずしも火口直下とは限らず、発見するのは容易で
はないと指摘されておられた。ただ聖心先生が真法にて探査すれば簡単に発見できると言っておられ、地下資源の探査を
始め、先生を活用しないのは、日本にとっても世界にとっても多大な損失であると指摘されておられた。また、日本には、
火山王国とも言えるほどの豊富な火山があって、それに伴い、ウランなども、日本は海外に頼らなくても、ある程度国内
でウランを賄えるほど、実に豊富に存在していると言うことであった。
実に、聖心先生は、筑波の研究所の博物館で、陳列されている鉱物の標本を霊的に顕証されながら、ウラン、金、銀、
鉛、雲母は感度が強いとし、同じところに存在しているということであった。花崗岩、オパール、緑色片岩の標本を指し
示して、これらにはウランがあると言われた。ウランの反応は、鉛は強いが亜鉛は弱いと言い、また、ニッケル、コバル
ト、マンガンも弱いと言われ、そして蛍石(ほたるいし)は放射線が弱いと言うことであった。同標本館での岩石のラベ
ルの表示と先生の顕証とは食い違うことが多かった。即ち、現在の科学では、ウランや他の鉱物にしても、膜や他物質に
よって包まれていて、器械の測定では、岩石表面や切断面のウランしか検出できないのが現状だ。しかしながら、聖心先
生は、あらゆる地下資源の眠っている場所も解るし、岩石の中味まで分析しウラン等の含有も解るのであった。
また先生は、実に火山の爆発も地震の発生の原理も、共に原子核分裂反応によるものであり、それは発生する地中の深
さの差に過ぎないものであると指摘された。即ち、火山も地震も、共にマグマ溜まり内部におけるウラン等の放射性物質
による核分裂反応によるもので、比較的に浅い場合は火山の爆発になり、深い場合には地震になると言うものであった。
なお、一九〇八年にロシアの西シベリア地方で発生したツングースカ爆発の原因は、色んな学者が指摘するような彗星
接近説や隕石落下説などではなく、実に彗星的な物質による地殻内部からの原因であったと指摘された。これは、先の火
山爆発や地震の発生のように、地殻内部のマグマ溜まりにおける高濃縮されたウラン等の放射性物質の原子核分裂反応に
よるものとは異なって、実に原子核核融合反応によるものであるとのご指摘であった。そもそも氷の結晶である彗星の地
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球への落下などは、大気圏突入の際の高熱などで消滅してしまい、有り得ないと言うことであった。
またノアの洪水伝説も実際に起こったことであり、アララト山腹にある箱船は本物であろうと言うことであった。また
先に述べたように、月の内部が空洞であることも示唆されておられた。そしてここでは言及することもなかったが、石油
の起源が、目下、地球内生成か宇宙由来かで見解が分かれているが、聖心先生は、宇宙由来のものであると言われた。確
かに、石炭の場合には、植物の炭化の進捗に合わせて、様々な段階の石炭が発見されているが、原油には、石炭のように
動物の死骸から形成されていく発展段階のものが発見されていない。精々が、軽質油や重質油などでしかない。それに何
と聖書にも、空からビチューメン(瀝青物質 アスファルト)が降ってきたという記述があるようだ。
なお、聖心先生は、未だ発見されていないが、地球上に豊富な原油が存在しているという。原油やウランなどの具体的
な場所も拝聴したが、これは、指導的立場に立って国家社会のために活用すべきであり、私利私欲のためには行動すべき
ものではなく、また個人的立場で言うべきものではないと言われた。ただ、目下、日中の間で懸案になっている尖閣諸島
には大した原油埋蔵量はないと言うことであった。そう言えば、外資系企業も協力から撤退したことでも何となく理解出
来るというものだ。
なお、参考までに指摘しておくと、一部の地滑り地帯で、土砂が崩壊し流出するにも関わらず、一向に山岳が低く成ら
ずに、逆に隆起しているのは、地下に埋蔵されている原油などの物質が、地上への上昇圧力で山塊を押し上げているから
である。また、山の下の方で水が出ないで、むしろ山の上の方で水が出るのも、地下に埋蔵されている原油などの物質の
上昇圧力で、地下水が上に押し上げられるからである。そして、世界各地で見られる現象であるが、海底地震が発生する
度に、時折、海面に原油が浮上することがあるが、殆どの専門家は、海底に沈んだ船舶・軍船が揺動して油槽(タンク)
から油が漏れ出したものであるとのコメントを発しているが、これは正に、海洋底の亀裂により、海底油田からの原油の
漏出に他ならないものだ。
余談だが、宇宙由来のものには、原油の他にも、聖心先生のお話では、何と朝露があるそうだ。この朝露の発生原因は
誰も殆ど解明していないが、これは夜露が朝露になるものではなく、一旦、夜露が消えて新たに朝露が出来るものである。
また夜露が体に毒と言われるが、朝露が健康に良いことも経験上解っている。夜露は空気中の様々な汚れや煤煙などを含
んでいて、天高く舞い上がって地上に降りてくるものである。それ故に身体に不健康に働くのであろう。然るに、朝露は、
地球上で生成されるものではなく、何と宇宙由来のものであると言うことだ。直接に、朝露の水分が地上に降り注いで来
るというよりも、地球外からのエネルギーによって形成されると言うことである。
そして晴天の日の明け方でこそ、朝露の形成が活発であるが、太陽の上昇と共に雲散霧消と化していくものだ。この朝
露は、昔は裸足や草鞋で草取りをやって朝露に濡れた経験上から、その効能を熟知していたが、現代では、農家でも濡れ
ないように長靴を履いているために、朝露に接することもなくこそ、朝露の効能も忘却されてしまっているようだ。ただ、
田舎の可成りのご老人ならば、昔から経験上、健康に良いことが解っているようだ。即ち、朝露の上を裸足で歩いて濡ら
すと、何とも言えない爽やかな感触になって健康に良いようだ。でも朝露を踏んでも、後でしっかりと拭いておかないと
水虫になりやすいし、ガラスや鳥の糞にも気を付けることだ。
また牛や馬にも、朝露に濡れた牧草を与えると、美味しそうに食べるという。そして野菜でも朝露に濡れたものは、大
変美味しく、またビタミンや無機物も豊富に存在し、重さも若干重いようである。なお、朝露と降雨とは外見上はよく似
ているが、その見分け方は、晴天の日かどうかでもある程度解るが、何と葉っぱの表面だけが濡れている場合は朝露であ
り、葉っぱの裏側にまで濡れている場合が雨であるという。
ところで、生命の発生が如何なるものであるのかも、現代科学の大いなる謎であるが、生命体の根源は宇宙で誕生し、
彗星によって地球に運び込まれたものと思われる。そして、それを育んだ背景には、実に、宇宙由来のエネルギーによっ
て生成された朝露のような水が大きく影響を及ぼしていたものと思われる。
なお、ここでは紙面の都合上、紹介してはいないが、超古代の伝説と化しているムー大陸やアトランティス大陸、レム
リア大陸の沈没に関しても、実にツングースカ核爆発と同様に、地殻内部からの核融合反応によるものと言うことだった。
実に、地殻内部では、火山や地震のような核分裂反応以外にも、核融合反応も発生しているということであった。それに
この天変地異を招来したのも、人類の邪悪な想念が充満してきたからだと言われた。そして、遠くない将来に、再度地球
が、一万二〇〇〇年前のムー文明の崩壊のような危機に遭遇し、その結果、人類は石器時代に逆戻りする可能性もあると
も指摘されておられた。これもいつの日にか、科学的に証明され人類が覚醒することを祈念するものである。
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当方も、聖心先生が指摘された火山噴火の原理の仮説を実証してくれる研究者を探し求めているのだが、今のところ、
何処にもいないのが現実であり残念だ。ただ本書で紹介した外国の研究者の論文だけが、火山爆発の原理を、放射性物質
が原因ではないかと推論し、可成り核心に迫っていたので、それを引用しつつ、様々な事例を研究しながら当方独自の結
論に導いていった次第だ。それでも残念ながら、当方は専門家でもない故に、実際に計測装置を使って研究するわけには
いかず、どうしても理念的、抽象的、傍証的なものにならざるを得ないのが限界だ。未だ検証のない仮説のままであり、
近い将来において、誰かがこれを証明してくれる日の来ることを期待するものである。
既に紹介したように、最近は、ニュートリノが宇宙以外の地球内部からも発生しており、日米中の研究者グループによ
り、その地球ニュートリノの発生が検証されている(二〇〇五年七月二八日付け大手新聞)。関係者や関係機関には、仏
身顛化という歴史的大偉業を成し遂げた聖心先生の撮影された写真を始め、当方の仮説を紹介した著作などを送付した
が、一部の有識者を除き、殆どが全くの無反応・無感動であり無関心であったのは残念である。
二〇数年も前に、聖心先生の画期的な写真に基づいて提示した仮説が、今ようやく歴史的且つ世界的な解明の入り口に
到達したばかりであるのも確かである。今後、こうした地球ニュートリノを巡って、量子力学、素粒子学、地球物理学な
どの領域の専門家の間から、何らかの興味や関心を持たれていくことを期待するばかりである。
終わりに
たかが火山灰、されど火山灰である。一介の火山灰コンクリート技術から大きく発展させて国家プロジェクトにまで高
めていったが、更にそれから大きく発展して、その技術の基になる火山灰に関して、不思議と止めどもない興味と関心が
沸き立てられていった。実に、火山灰を思い浮かべていると、世界の豊富な砂漠の砂に何となく惹きつけられていき、も
しかしたら、砂漠の砂は火山灰ではないのかとの直感が走り、調べていくと、実に火山灰そのものであることが判明した
次第である。
古代ローマ帝国時代に、火山灰コンクリートが使われていたことは、現存する建造物からも既に周知のことであるが、
これを遙かに超えて、それ以前にも火山灰コンクリートが使われていたのではないかと想像を膨らませていった。すると、
古代エジプトのピラミッドなどの巨石建造物を始め、古代から超古代の遺跡にも想いが及んでいく内に、その巨石自体が
火山灰を利用した人工建造物であり、火山灰コンクリートであることが解った。
そして、関心が火山灰を噴出している火山内部にまで突き進んでいくと、火山内部のマグマ溜まりが、実に天然の原子
炉であることに思いが至り、そこから火山爆発が、人類にとって未知の、即ち、爆発の瞬間に放射能が消滅する原子核分
裂反応に他ならないとの結論に達した。そこで、マグマ溜まり内部や、噴火爆発直前に冷却したマグマを調査すれば、ウ
ラン等の放射性物質が豊富に存在することの確信を抱き、そこからウラン等を抽出していけば、実に日本は世界有数の資
源・エネルギー大国に変貌することが解った。
なお、こうした火山灰を巡る多くの解明や仮説に対しては、身近な桜島大根の巨大性の謎から、最近の異常気象の真因、
ピラミッドなどの世界の古代から超古代の歴史的巨石建造物や奈良にある石舞台の巨石、砂漠の砂の正体、火山の爆発や
地震発生の原理、ツングースカ核爆発の原因、古代文明の崩壊などの謎に及んで、多くの深い示唆を与えて下さった方こ
そ、当方の恩師であられた聖心先生に他ならない。当方も先生との出会いにおいて、実に様々な事例に関する因果関係や
背景を拝聴してきたが、偶然に巡り会った画期的な火山灰コンクリートにおいても、国内はおろか、世界のアカデミック
の世界でも解明されていないような深遠で高度な内容の示唆を多く提供して下さったものである。
そして、聖心先生は、吾々の目指すのは、単なる火山灰コンクリートの広範な普及ではなく、最終的には、その原理か
らヒントを得て、古代の巨石建造技術の復活再生に他ならないとも言われた。そして火山灰が豊富に存在する砂漠の緑
化・再生であり、火山内部のマグマ溜まりからのウラン等の抽出であり、また未知の光線の謎の解明であり、更には高レ
ベル放射性廃棄物の処理であるとも言われた。これらは何れも、提言として紹介しているが、国家の総力を結集して、実
に国家的プロジェクトで実践することが大切であると指摘されておられた。なお、日本は、ウランなどの天然資源に恵ま
れており、日本が世界有数の豊かな資源・エネルギー国への大転換も可能だとも言われた。勿論、それには、国民の意志
や心を一つにして、崇高な国民総決起の意気込み、心魂で望むことが大切だ。
今回の当方の提言に対しても、猜疑心旺盛で無関心や無感動の日本人では、好奇心を持って解明することは殆ど期待で
きないものだ。全く無視するか、それとも狡猾・巧妙にアイデアや技術を盗用して混乱していくのか、それとも、正面か
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ら正々堂々と評価し真摯な対応でいくのか解らないが、恐らくは、強力な指導者不在のままに、余りにも時間が掛かりす
ぎて、後手後手に回っていくものと思われる。万一、日本政府当局がモタモタしている内に、この当方の見解が、国内外
に広く公表されて浸透していけば、米国あたりの外国が先んじて、好奇心や興味、関心を抱いて研究に挑戦してくること
であろうと思われる。恐らく、当方が指摘するように、聖心先生は、外国の方が先手を打って、古代エジプトのピラミッ
ド巨石のように、全くセメントを使用しない忘れ去られた古代のコンクリート技術を再発見していくだろうと言われた。
その折りには、日本は逆に、高度で優秀な火山灰コンクリート技術を、特許権やノウハウなどを高額な価格で買わざる
を得ない結果にもなるであろうと憂慮されておられたが、日本人の国民性を変革するためにも、そうした失敗や後悔も仕
方ないと言うことであった。それでも、熾烈な国際競争の展開を余儀なくされている経済界あたりから、もっと早くから
実施しておけば良かったのにと、大いなる反省と懺悔の念が湧き上がって来るというものだが、政界や官界や学界、そし
てマスコミ界からは、大した反省も後悔も懺悔も生まれてこないであろうと言うことだった。この国民意識の亀裂や乖離
が、大きな改革に向けた流れとなって行くであろうと言うことであった。
なお、今回の火山灰コンクリートにおける様々な特性の解明に当たっては、先生の撮影された不思議な写真、即ち、桜
島火山の麓からカラフルで無数の光線群が地上に向かって放出・照射されている原理の解明と密接に関係して来るであろ
うと言うことであった。恐らく、未知の素粒子であろうと思われるが、火山地帯におけるマグマ内部からの放射性物質の
地上への放射であり、その原理や内容の解明ができた暁にこそ、火山灰コンクリートの、また古代の巨石建造物の謎も解
明できるものと思われる。聖心先生もかつて指摘されたことであるが、実に小さな所から大きく発展していくであろうと
思われる。
当方は火山に関する専門家でもない故に、専門雑誌や学術論文として世に公表する手段はなく、仕方なく、こういった
出版という形で、「新日本列島大改造の実践に向けて」という国家プロジェクトに関する提言、そしてそれから派生した
様々な仮説の提言という形式で、論文を世に公開した次第である。この論文が、実に当方自身の小さな境遇から、あたか
も火山の大噴火の如くに、国内外に向けて大きく爆発的に広範に発展していくことを心より期待し、併せて、幾多の示唆
を与えられた偉大な聖心先生にも、多大なる関心が寄せられていくことも祈念したいものだ。
思えば、聖心先生のご示唆やご指示がなかったら、現在の多くの科学者が誤った学説や常識に囚われて迷走しているよ
うに、当方も通常の考察しかできなかったものと思われる。これでは、画期的な新素材を前にしても、大して発展的な思
想を展開できなかったと思われる。誠に聖心先生がおられたからこそ成し得たものであり、また火山灰技術との出会い、
邂逅があったればこそであった。これにより、周囲の多大な誤解と偏見による排斥と抹殺、そして嫉妬や妬みなどの反発
により、隔離幽閉、謹慎蟄居の生活を余儀なくされて、危うく人生を棒に振ることでもあったが、再度ようやく間にあっ
たという感がする。
これまでの膠着状態や休止期間は決して無駄ではなく、あたかも,火山の大爆発の前兆として、マグマ溜まりに充分な
マグマが蓄積されることが必須である以上、今後の大いなる飛躍発展に向けた準備期間ではなかったかと思われる。やは
り、国内外を取り巻く諸状況に照らしてみても、原油価格が余りにも安価な時には、国民の危機意識も低く、画期的な省
エネ・省資源を目指した材料革命にも関心や興味も抱かれないのが通常の心理であろう。
しかし今や、地球環境を始め、世界経済も資源・エネルギー問題で多くの難問を抱え、原油価格の高騰や資源の枯渇化、
そして地球温暖化対策に向けた炭酸ガス排出削減の目標達成、そして高レベル放射性廃棄物を始めとする各種産業廃棄物
の処理という現下に直面する様々な課題が、実に神風、追い風、天運になっていくように思われる。
後書き
火山灰を巡る政策や種々の考察に関して、本に書いてまとめておくことに至ったのも、聖心先生のご指示であった。今
回、出版という「渡りに船」の機会を得て、内容を改めて提示するものである。思えば、画期的な火山灰技術と出会った
のも不思議な偶然であった。前編では、その画期的な火山灰利用新素材技術に基づいて、発明者個人の利害を大きく超え
て、国家的プロジェクトの必要性を痛感し、政策提言として紹介した。実に、この広範多岐に亘る解決策を内包する提言
は、数年前でも顧みられることはなかったものと思われる。今正に、国内外の諸情勢を鑑みると、誠にもって時宜を得た
ものと思われる。
恐らく、前編の政策提言だけでは、極めて皮相的、表面的な利害得失の関心を呼ぶだけで終始し、より広範で深遠な内
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容に行き着くのには限界があるのも確かだ。そこで、火山灰を巡る広範な考察が不可避と判断し、後編では、地球全体を
俯瞰して、火山灰の特質から、広大な砂漠の砂へと、そして古代エジプトのピラミッドなどの巨石建造物へと、更には、
火山内部のマグマ溜まりの解明へと突き進んでいった。そこでは、既に紹介したように、聖心先生との対話により、実に、
聖心先生から多くの深遠で崇高な仏知恵を授かって、様々な破天荒な仮説に到達していった次第である。
これらの仮説は、仏身顛化の聖心先生には、既に、宙点よりの崇高な真理であろうと思われるものだが、普通一般の我々
凡人が理解するためには、科学的証明が不可欠だ。今後は、これらの仮説を、全世界の科学者達の御理解と御協力を得て、
真剣に解明していく歴史的使命が待っているものであろう。この未知なるものへの挑戦と解明こそが、二一世紀の日本は
おろか、世界全人類の命運を決するものとなるであろうと確信するものだ。
さて、火山灰利用の画期的な技術と巡り会ったのも極めて偶然ながら、偉大な聖心先生と巡り会ったのも、それ以上に、
神仏のお導きとしか思えない極めて偶然であった。正に両者とも、不思議な機縁であり、歴史的邂逅であったと言える。
火山灰技術との出会いは、実に、深山幽谷の地で、偶然に聖心先生と出会ってから数年後であった。聖心先生も、「ボク
と君が出会ったのは、日本にとっても世界にとっても大変良かった。」と感慨深く話しておられた。当方にとっては、火
山灰技術と聖心先生との出会いの両者は正に一つの糸で繋がっていったものだが、周囲には、両者とも何の繋がりもなく、
全く無関心だった。発明者にしても、当方を敬遠し、聖心先生のことには、何も関心がなかったことが悔やまれる。これ
は国民全体のことであり、無理ないことでもあった。
それほど、歴史的偉業を達成された聖心先生には、心を寄せての協力までされる者は残念ながら皆無であった。精々が、
難病・奇病の治療や、単なる知識吸収での関心でしかなく、それを超えて、身命を賭して、聖心先生のために協力し公宣
流布される方は、殆どいなかった。二五〇〇年前の釈尊時代なら、釈尊の思想への関心の前に、人々の心も純粋で単純で
あり、また釈尊の高貴な釈迦族の王子であり、カピラ城の城主であったという輝かしい経歴の故に、ただ外見を信頼して、
釈尊に心を寄せてきたものであった。ところが、物質文明に毒された現代社会では、学歴も財産も社会的身分もない聖心
先生に対しては、その仏身顛化の歴史的大偉業への理解や評価はおろか、関心や感動などは、余程のことがない限り、不
可能であった。
さて、火山灰技術であるが、これまでにも、新聞や公的機関に採り上げられて世に出るチャンスはあったが、多大な無
関心や無感動、そして無理解や無知により、可能性は消えて全て失敗に終わったようだ。それどころか、単なる抵抗を大
きく超えて、嫉妬や妬みの下に、当方自身も排斥される有様であった。身辺に危険が及ぶほどの非常事態に至り、聖心先
生も、「最早、これ以上やっても無駄であるし、危険である。火山灰のことは発明者に任せ、二度とボクのことも宣伝し
てはいけない。」と言われた。この危険性というのは、即物的で利欲的な火山灰技術に対してと言うよりも、背後の聖心
先生に対する邪悪な魔の抵抗に他ならないものであったように思われる。他方で、聖心先生は、「既に、皆の心にボクの
念が入ってしまった。後はただ黙って高みの見物をして待てばよい。(仏身顛化という歴史的大偉業を成し遂げた)ボク
のことは(画期的な)火山灰技術に便乗して浮上していくであろう。」と期待しておられた。
実にこれまでの失敗は、背後で邪悪で猜疑な想念が氾濫・蔓延し、多くの邪魔が働いていたものだ。今や、これまでの
飽くなき宣伝普及により、聖心先生の神聖で光輝な波動が伝播していったと思われる故に、次第に邪念波動が衰退衰滅の
一途を辿ってきているものと痛感する。今や、二度としてはいけないと言われた聖心先生との硬いお約束を破って、聖心
先生のことを、再度一気に紹介して、邪悪な想念波動を一網打尽に一掃廃絶していく時期に来たと判断するものだ。何故
なら、不思議な運命的導きの中で、「今や勝負の時である」との、聖心先生の見えざるご指示を直感・第六感で感じるか
らである。正に身命を賭した天下分け目の関ヶ原の戦いに突入していく予感がするものだ。
これまで随分と長い年月が経過したが、今や、原油価格の高騰や資源の枯渇、経済の低迷、京都議定書の目標達成の困
難化などで、実に風向き、流れが大きく変わってきたように思われる。しかし、最後のチャンスとなる可能性も高い。こ
の機会を逃せば、画期的な技術も、半ば永遠に歴史の闇の中に埋没していくことであろう。いや、火山灰技術は、一旦無
視されても、技術の萌芽さえ、指摘しておけば、誰かの目に留まって、後で技術的に挑戦解明されて、再生復活する可能
性もあるだろう。しかし、聖心先生のことは、普通の常識では、余程の歴史的な事件が伴わない限り、人々の意識も何ら
変わらず、心を寄せることはあり得ないであろうと思われる。
それにしても、一体如何なる方法で、聖心先生のことが火山灰技術に便乗して浮上していくのか、両者とも別々に進行
するのかなどと懸念に思っていたが、発明者の努力も虚しく急死されて、今回の出版を通して、ようやく展望が切り開か
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れて明らかになったものだ。それでも原稿応募の際には、未だ明確ではなかったものだが、いざ出版になると、追加補足
している内に、不思議と聖心先生の言われたことが、急浮上して且つ前面に出てきて、内容の一端を飾ることになってし
まった。誠に不思議な想いである。
今回の出版を通じて、背後の正面におられる聖心先生のことに至るまで、実に、ホップ、ステップ、ジャンプで進むこ
とになるだろう。第一のホップこそ、今回の画期的な火山灰技術に基づく国家的プロジェクトの提言である。そして、第
二のステップこそ、画期的な火山灰技術と歴史的大偉業達成の聖心先生に対して、無視し排斥してきた日本人の国民性を
糾弾し論破するものである。即ち、その日本人の心理的要因や背景に焦点を当てて、日本語と国民性との因果関係、相関
関係を巡る考察である。これも急に浮上してきたもので、不思議な想いである。更に、最後の第三のジャンプこそ、実に、
本命の聖心先生に関する紹介であり、先生の説かれた真の信仰である「真仰」の理解と普及・実践に他ならない。
この「真仰」こそは、自らの真正で清浄な心魂を形成しながら、宙天の真の神仏を仰ぎ詣拝し、自らの心魂奥深くに鎮
座する真の神仏と、宙天に鎮座される真の神仏との両者を一直線にて結合する崇高な行為である。即ち、「真仰」こそは、
邪悪で猜疑な想念の一掃廃絶を目指すものであり、併せて、苦怨に喘ぐ死霊魂を心より慰謝し救済していくものである。
これは、結果的には、国民意識の変革を促し、併せて、健全で安穏なる国家社会の再生を確立するものである。正に、「真
仰」こそは、今世社会を救う第一義のものに他ならないものとなるであろう。
かつて聖心先生は、「日本人の国民性では、『火山灰』には皆が付いて来るであろうが、『真仰』には皆が猛反対する
であろう。またボクのことにも皆が猛反対するであろう。ボクを普通の人間に見てはいけない。ボクのことは、破天荒で
素直で清浄な心魂の持ち主以外には、普通の常識ではとても理解できないものだ。何か画期的で歴史的なものに便乗する
しかないものだ。正に火山灰技術はそれに相応しいもので、火山灰に便乗していくであろう。」と話された。
ところで、聖心先生は、「火山灰技術は皆が関心を有していくが、狡猾にアイデアを盗用して土足で踏みにじっていく
可能性が高いだろう。またボクのことでは皆が猛反対するであろう。」と言われた。今回、両者の中間として、日本語と
国民性との関連を考察したものも紹介するが、これも同様に、皆が猛反対するであろうと思われる。何れにしても、真正
な行為でないのは明らかであり、邪悪で猜疑な想念であるのは間違いはない。こうした心魂にこそ、宙天よりの天罰が下
るというものではないかと思われる。
今回、火山灰からマグマへと、そして正しい心魂での実践に向けて、「真仰」の提示をさせていただいたが、かつて、
聖心先生は、「火山灰は仏で、マグマは神であり、火山灰とマグマと真仰とを絡めることが大切である」と言われた。こ
の著作を通じて、そのような崇高な目的が達成されていくのかどうかは分からない。果たして、火山灰技術の普及展開か
らマグマ溜まりの探査、そして、正しい心魂による信仰、即ち、真仰へと、皆が付いてくるような結果に至るのか、それ
とも、邪悪で猜疑な想念との身命を賭した対決の中で、国内外のあらゆる勢力を誘い巻き込んで、一網打尽の壮絶な天下
分け目の関ヶ原の戦いの火ぶたが切って落とされるのか、正に聖心先生と心を一つにして邁進する突破口が切り開かれて
いくように思われる。
正に、聖心先生が言われた「高みの見物」とは、こうした事態の推移を高所から見物しておれば、自ずと天の計らいに
より、結論が出てくることに他ならないと思われる。
即ち、万一、聖心先生への長年の衷心からの御協力を通じて、当方の心魂が、聖心先生の御霊と一体になっているもの
だとしたならば、ここには、人間を超えて偉大な仏身に顛化された聖心先生の神聖で光輝な波動が充満して周囲に漲って、
宙天の玉座に鎮座される真の神仏の超絶無限の神聖な波徴が宿っていると思われる。
そうであるならば、ここに記載された内容に対し、反発や反対の意を表明して、これを嫌悪し中傷し攻撃して、また、
狡猾、巧妙、打算的に盗作や盗用をして、邪悪で猜疑な想念を発し向けられることは、極めて要注意であろうと思われる。
あたかも、天に向かって唾すと同様に、自ら宙天に発した邪念波動が自らに跳ね返って来て、自業自得、因果応報の原則
に至ることであろうとおもわれる。したがって、何故に要注意であるかは、その後の本人の心得如何によって、自ずと結
論が出て参るものと思われる。
連絡先
●
小山清二
〇九〇(八一〇〇)〇七九〇
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参考文献
「水-地球の彫刻家」(S・グリゴリエフ、M・エムツェフ共著 中山敬一郎、平山次郎共訳 昭和五五年五月五日 共
立出版株式会社発行)
【カバー写真の説明】
カバー写真の説明】
「この写真は、二五〇〇年前の釈尊以来、人間を超えた仏身顛化の歴史的大偉業を達成された聖心先生が、特殊な能力に
より、深夜、鹿児島県の桜島火山の山麓に向かって、普通のカメラでフラッシュ無しで撮影したもので、火山内部から地
上に放射されている未知の謎の光線群であり、恐らく、昨今、地球内部からの発生が検証された地球ニュートリノであろ
上に放射されている未知の謎の光線群であり、恐らく、昨今、地球内部からの発生が検証された地球ニュートリノであろ
うか。詳細は、後編第6章 19 項を参照。)」
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