「FX特別レポート」(6/10) サミットの影響を考える (株)マネー&マネー編集長・吉田 恒 米シーアイランド・サミットが始まっている。世界的な景気回復の中で、経済問題は大 した議論にならないというのが事前の一般的な見方だったと思うが、とくに欧州参加国か ら、原油高や為替などを巡る注文が相次いで報道されている。最終的にこれらがどれだけ サミット合意という形で結実するかはわからないが、一年前のサミットに比べて見事なほ ど欧米の関係が攻守逆転となっていることの影響が大きいことは確かだろう。 今回はシーアイランド・サミットについて考察してみる。 ◆欧米は一年前と攻守逆転 昨年のサミットのホストはシラク仏大統領。しかし、イラク戦争勝利直後の勢いで、戦 争を巡って対立した米ブッシュ大統領はサミットを中座するといった意趣返しに動いて、 シラク大統領の面目は丸つぶれとなった。 あれから一年たって、今度のサミット・ホストは米ブッシュ大統領。中東政策への批判 が強い中で、一年前のような威勢の良さは全く見られない。6 月末のイラク政権移譲を目前 に控え、独仏などからの協力が喉から手が出るほどに欲しいところだろう。 さて、それに対して今度は攻守逆転のようになったシラク大統領などが意趣返しに動く ことになるだろうか。その可能性は十分あるといった見方もある。11 月に米大統領選挙を 控え、ここでブッシュを突き放せば、政権交代の可能性が出てくる。逆に手を差し出し、 ブッシュ続投となり、一国至上主義を続けさせていいだろうか。 しかし、逆にブッシュ大統領が窮地に立っている時だけに、独仏などは交渉で最大限の 譲歩を米国から引き出せるチャンスといった見方もできる。 さて 2 年連続欧米決裂のサミットになるか、それとも一転して欧米協調再構築のきっか けになるか、政治的駆け引きとしては大いなる見所となりそうだ。 ◆為替・株価への影響は? ところで、欧米歩み寄りといった観点では、経済問題、とくに原油高への対応が注目さ れる。今のところ歴史的な原油高に対しても、米国は比較的関心が薄く、一方欧州は米国 に比べて懸念が強いとされる。欧州が米国から最大限の譲歩を引き出そうとしたら、この 原油高問題は一つの鍵を握ることになるだろう。 先週のOPEC総会を前後して、原油相場はいったん反落、関心はやや小康になってい るようだが、このサミットでもう一押し「サプライズ」があるかによって、当面の相場は かなり変わったものになりそうだ。 ところで、この原油高問題は、私などは過剰流動性相場の一つと位置付けている。この ため原油高是正は、過剰流動性相場の修正の一環ということであり、為替や株価とも密接 につながるものだと思う。要するに、シーアイランド・サミットの結果次第では為替への 影響も注目されると考えられるわけだ。(Y)
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