オベリスク オベリスク

Obe-lisk
オベリスク
Vol.16,1
2011年1月1日発行
通巻29号(30ページ)
January
編集
発行
広報室
2011
オベリスク編集委員会
ハムリー株式会社
〒306-0101茨城県古河市尾崎2638-2
LAIC
Obe-lisk
Vol.16,1
January 2011
■感染症法における輸入サルに対する基本的な考え方等について・・・・・・・・・・(森田
剛史) 3
■サル類の輸入検疫制度等について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(高橋 周子) 7
■諸外国における繁殖施設の動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(日柳 政彦)11
■フィリピンの繁殖施設、SICONBREC の紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(植松 高宏)17
■インドネシア産カニクイザル
CV.LABSINDO 社 飼育繁殖施設の紹介・・・・・・・・・・(遠藤 昭久、池田 大志)20
■検疫の現況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(板垣
伊織)23
■カニクイザルを用いたテレメトリー試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・(木村 正紀、藤井
雅典)27
2
オベリスク Vol.16,1
January 2011
感染症法における輸入サルに対する
基本的考え方等について
森田 剛史
厚生労働省
概要
し、輸入サルを飼育する施設について、厚生労働大臣
平成 10 年に制定された「感染症の予防及び感染症
および農林水産大臣による指定が行われているところ
の患者に対する医療に関する法律」において、輸入さ
である。
れるサルについては、原則、特定された地域(輸入可能
感染症法の制定
地域という。)以外の地域からの輸入を認めておらず、
また、輸入可能地域から輸入されるものについては、エ
新興・再興感染症への対応、事前対応型の対策、
医療体制の進歩など、
感染症をとりまく環境の変化に対応する必要性
ボラ出血熱およびマールブルグ病に罹っていない、また
はその疑いがない旨などを記載した、輸出国政府機関
が発行した衛生証明書を添付した上で、農林水産省動
物検疫所での輸入検疫を受けなくてはならない、とされ
1998(平成10)年
感染症の予防及び感染症の患者に
対する医療に関する法律
ている。
輸入可能地域は、「感染症の予防及び感染症の患者
に対する医療に関する法律第 54 条第 1 号の輸入禁止
伝染病予防法(1987年(明治30)年) 廃止
性病予防法(1948年(昭和23) 廃止
後天性免疫不全症候群の予防に関する法律 1989年(平成元) 廃止
地域等を定める省令(平成 11 年厚生省・農林水産省令
第 2 号)」において規定され、現在、米国、中国、インド
感染症の予防及び感染症の患者に対する
医療に関する法律(感染症法)
ネシア、フィリピン、ベトナム、カンボジア、ガイアナ、スリ
ナムの 8 ヵ国となっている(当初 5 ヵ国、平成 12 年 2 月
【目的】
感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図
る
にインドネシアおよびベトナム、平成 21 年 12 月にカンボ
ジアを追加)。
【手段】
(1)基本指針(国)、予防計画(都道府県)の策定
(2)感染症発生動向の把握、公表
(3)感染症発生時の適切な措置(就業制限、入院、
調査、ねずみ族、昆虫等の駆除等※)
輸入可能地域の追加については、平成 11 年 10 月
に「感染症対策にかかる動物対策検討会」がとりまとめ
た「法第 54 条に基づくサルの輸入禁止地域の指定につ
※:疾病の分類等 に応じて、とりうる措置が規定
いて」の報告における基本的考え方を踏まえて行ってき
(4)適切な医療の提供(感染症指定医療機関)
(5)動物の輸入規制
(6)病原体等の管理体制の確立
等
たところである。
一方、輸入サルに関しては、平成 16 年 6 月 4 日に厚
生科学審議会感染症分科会がとりまとめた「動物由来
感染症に対する対策の強化について(意見)」において、
「現在地域を限定して輸入が認められているサルにつ
いては、今後ペット用の輸入は認めないこととし、輸入
されるサルは現行のエボラ出血熱等の検疫に加え、細
菌性赤痢などに感染していない旨の証明書を求めるべ
きである。」とされた。これを踏まえ、個別許可するもの
について、細菌性赤痢などに感染していないことを記載
した、証明書の添付を求めるなどの対応を行い、また、
省令改正により、平成 17 年 7 月から、試験研究や展示
の用途に供される以外のサルの輸入は認めないことと
3
オベリスク Vol.16,1
January 2011
感染症法における輸入サルに対する基本的考え方
法第54条に基づくサルの輸入禁止地域
の指定について<報告>
感染症法に基づく届出(獣医師)【サル】
一類感染症
二類感染症
エボラ出血熱 マールブルグ病
結核
平成11年
平成12年
平成13年
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
平成19年
平成20年
平成21年
0
0
0
0
0
0
0
0
0
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0
0
0
0
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0
0
0
三類感染症
細菌性赤痢
−
−
−
−
−
−
−
−
平成11年10月 感染症予防に係る動物対策検討会
−
−
−
−
−
○ 感染症法第54条に基づき、
・ エボラ出血熱及びマールブルグ病の発生状況、
その他の事情を考慮して、特定の地域からのサ
ルの輸入を禁止
・ 当該地域以外から輸入されるサルについても、
輸出国政府機関の発行する衛生証明書の添付
を義務づけ
0
45
45
51
29
31
0
0
0
○ 法第54条に基づくサルの輸入禁止地域の指定
の基本的な考え方及び現時点(当時)において収集
された情報に基づく輸入禁止地域の検討を実施
平成11年10月 感染症予防に係る動物対策検討会
感染症法に基づく動物の輸入規制
輸入禁止地域指定の基本的考え方 ①
【平成17年9月から施行】
強
・アフリカ等のサル
・プレーリードッグ ・ 特定地域のサル
・ハクビシン等
・コウモリ
・ヤワゲネズミ
原則輸入禁止
1
地域の指定
×
2
動物検疫所による
検疫の実施
3
衛生証明書の添付
<報告>
○ 定義
・ サル
当面、原猿亜目(prosimian)、真猿亜目(monkey)
及び類人猿(ape)
弱
・ 地域
アジア、アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、
オセアニア、中近東
・哺乳類
・鳥類
1 衛生証明書の添付
2 必要事項の届出
・ サルの自然生息地域
現在、サルが生息する赤道をはさんだ北回帰線と
南回帰線の間のいわゆる熱帯・亜熱帯を含む地域
個別に大臣許可
平成11年10月 感染症予防に係る動物対策検討会
<報告>
輸入禁止地域指定の基本的考え方 ②
(輸入禁止)
第五十四条 何人も、感染症を人に感染させるおそれ
が高いものとして政令で定める動物(以下「指定動物」と
いう。)であって次に掲げるものを輸入してはならない。
ただし、第一号の厚生労働省令、農林水産省令で定め
る地域から輸入しなければならない特別の理由がある
場合において、厚生労働大臣及び農林水産大臣の許可
を受けたときは、この限りでない。
一 感染症の発生の状況その他の事情を考慮して指
定動物ごとに厚生労働省令、農林水産省令で定める地
域から発送されたもの
二 前号の厚生労働省令、農林水産省令で定める地域
を経由したもの
輸入禁止地域の要件
○ サルの自然発生地域の場合
次のいずれかの地域は輸入禁止とする
① ヒト又はサルのエボラ出血熱又はマールブルグ
病が発生したことをWHO又は当該国政府が報告
した国又はそのサルの原産国を含む地域
② ヒト又はサルのエボラ出血熱又はマールブルグ
病の発生情報が不明と判断される国を含む地域
上記にかかわらず、次に該当する国は輸入禁止地
域から除外する
【
4
次のスライド】
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感染症法における輸入サルに対する基本的考え方
平成11年10月 感染症予防に係る動物対策検討会
<報告>
動物由来感染症に対する対策の
強化について(意見) 【一部抜粋】
輸入禁止地域指定の基本的考え方 ③
A ①に該当する地域のうち、その報告がヒトへの病
原性が明らかでないウイルス株(例:エボラウイルス
レストン株)によるサルのエボラ出血熱の発生のみ
であって、かつ、次に掲げるサーベイランス等の制
度及び実施体制が全て整備されている国
・ヒトの感染症に関するサーベイランス
・野生サルの監視
・サルの輸出入検疫
平成16年6月4日 厚生科学審議会感染症分科会
感染症法の改正に基づき新たに創設される動物の
輸入届出制度については、(中略)を参考に定める
べきである。なお、現在地域を限定して輸入が認め
られているサルについては、今後ペット用の輸入は
認めないこととし、輸入されるサルは現行のエボラ出
血熱等の検疫に加え、細菌性赤痢等に感染していな
い旨の証明書を求めるべきである。
さらに感染症法改正により4類感染症が獣医師等
の届出対象に追加されたこと等を踏まえ、(後略)
中華人民共和国、フィリピン共和国
B ②に該当する地域のうち、上記に掲げる制度及び
実施体制がすべて整備されている国
ガイアナ協同共和国、スリナム共和国
平成11年10月 感染症予防に係る動物対策検討会
<報告>
ペット用サルの輸入禁止
輸入禁止地域指定の基本的考え方 ④
(平成17年7月から施行)
○省令改正の趣旨
・サルは人に感染症を感染させる可能性が高いこと
から、OIE国際動物衛生規約にも準拠し、試験研
究等の用に供されるもの以外のサルの輸入を認
めない。
輸入禁止地域の要件
○ サルの自然発生地域以外の地域の場合
サルの輸出入検疫の制度及び実施体制が整備さ
れている国は輸入禁止地域から除外する。
○改正の内容
① 試験研究機関又は動物園において、業として行
われる試験若しくは研究又は展示の用に供される
サルのみ輸入を認める。
② 輸入サルを飼育するためには、試験研究機関
又は動物園は、厚生労働大臣及び農林水産大臣
による施設の指定を受けなければならない。
14
アメリカ合衆国
輸入可能地域の追加
サルの輸入の流れ
○省令改正(平成12年2月28日施行)
厚生労働省・農林水産省
[指定地域から]
一定の手続きにおいてサルを輸入できる地域に、
インドネシア共和国及びベトナム社会主義共和国を
追加。
輸入者
申請
指定
仕向先の確認
A研究施設
○省令改正(平成21年12月22日施行)
動物検疫所
検疫
一定の手続きにおいてサルを輸入できる地域に、
カンボジア王国を追加。
ペット用は ×
×
B大学
C施設
計8か国が
輸入禁止地域以外の地域として規定
輸入
12
15
5
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感染症法における輸入サルに対する基本的考え方
輸入サルの飼育施設の指定申請①
輸入サルの飼育施設の指定後の対応
○指定のための申請書の主な記載内容
指定の有効期限、条件等
・輸入サルの飼育施設の所在地・位置
・法人の場合は、役員の氏名・住所
・施設の管理者の氏名・住所
・3年ごとに更新
・衛生管理、飼養管理に関する記録を3年間保存
・輸入サルは指定施設以外に譲渡等しないこと など
○添付書類等
・施設の構造(平面図、構造図)
・施設の付近の見取り図
・試験・研究の概要、実績
・施設の維持管理
・輸入サルの取り扱い作業手順
・業務に係る従業員の雇用、配置、技術的能力
・施設の衛生管理に従事する獣医師の氏名・登録番号
・業務に要する資金等
・法人の場合は、直前3年の賃借対照表、定款など
・個人の場合は、資産の調書、住民票写しなど
・欠格条件に該当しない旨
・施設の使用権限を有する旨
変更の指定等
・変更の承認(事前)
業務の範囲を変更しようとするとき
・変更の届出(変更後30日以内)
業務を廃止したとき、住所・事務所の所在地・
氏名・名称・法定代理人・役員・使用人・主要な飼
育施設・設備の設置場所・主要な設備の規模・構
造に変更があったとき
施設の能力
申請者の能力
16
輸入サルの飼育施設の指定申請②
指定の審査基準等
① 施設の能力
・輸入サルが逸走しない構造
・必要な消毒設備等
・獣医師による適切な衛生管理 など
② 申請者の能力
・試験・研究、展示を的確に行える知識及び技能
・的確かつ継続して行える経理的基盤
③ 欠格条項
・指定の取り消しの日から5年を経過しない者
・指定施設以外にH17年7月以降の輸入サルを譲
17
渡等した者 など
6
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サル類の輸入検疫制度等について
高橋 周子
農林水産省消費・安全局動物衛生課
はじめに
ルグ病が対象となっている。
サルは、感染症の病原体を媒介する恐れがあること
から、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療
(3)2 国間の衛生条件
に関する法律」(平成 10 年法律第 114 号。以下「法」と
輸出国での検査などが的確に実施されていることを
いう。)に基づく輸入検疫の対象とされている。サルの
担保するため、輸出国と日本との間で衛生条件が締結
輸入検疫は、人への危険性から見た重要性が極めて
されており、日本にサルを輸入するためには、相手国政
高い感染症であるエボラ出血熱やマールブルグ病を対
府よりこの衛生条件に沿った証明がなされる必要があ
象として、平成 12 年 1 月 1 日から実施されている。本稿
る。(各国との衛生条件は、動物検疫所のホームページ
では、サルを輸入するに当たっての検疫制度や具体的
参 照 。http://www.maff.go.jp/aqs/hou/require/
な措置などについて説明する。
monkey.html)
輸入検疫制度
(4)輸入検疫措置および検査に基づく処置
(1)輸入禁止対象動物および輸入禁止地域
サルの輸入検疫措置は、法第 55 条(輸入検疫)、第
法第 10 章では、感染症の病原体を媒介する恐れのあ
56 条(検査に基づく措置)、第 61 条(費用負担)及び第
る動物の輸入に関する措置が規定されており、第 54 条
69 条(罰則)のほか、「感染症の病原体を媒介するおそ
において、輸入禁止対象動物が指定動物として定めら
れのある動物の輸入に関する規則(平成 11 年 12 月 1
れている。サルは、これに基づく「感染症の予防および
日農林水産省令第 83 号)(以下、「規則」という。)により、
感染症の患者に対する医療に関する法律第 54 条第 1
サルの輸入港(成田国際空港、関西国際空港の2空港
号の輸入禁止地域等を定める省令」(平成 11 年 12 月 1
のみ)、輸入に関する届出、輸出国の検査、輸入検査、
日厚生省・農林水産省令第 2 号)により、輸入が禁止さ
係留期間(原則 30 日間)などが定められている。
れている指定動物に定められている。なお、厚生労働
このほか、サルが日本に到着した際、輸入検疫を円
大臣および農林水産大臣が指定した試験研究機関ま
滑に行い、サルの取扱者が、サルの媒介する感染症の
たは動物園において、試験若しくは研究または展示の
感染予防を図ることを目的として、以下の要領が定めら
用に供されるサルについては、一部地域からのものに
れている。
限って輸入することができる。
○サルの輸入検疫実務要領(平成 19 年 4 月 20 日施
現在、サルの輸入可能国とされている地域(輸入禁止
行)
地域以外の地域)は、アメリカ合衆国、インドネシア共和
①指定動物(サル)の輸入検疫要領
国、ガイアナ協同共和国(注:平成 14 年 7 月 31 日付け
②サルのエボラ出 血 熱及 びマールブルグ病 の診 断
で衛生条件効力停止中)、スリナム共和国、中華人民
指針
共和国、フィリピン共和国、ベトナム社会主義共和国お
③エボラ出血熱およびマールブルグ病防疫実施要領
よびカンボジア王国(カンボジア王国については平成 21
④農林水産大臣の「サルの検査場所」指定要領
年 12 月 22 日付けで指定)である。
(各要領については、動物検疫所ホームページ参照。
http://www.maff.go.jp/aqs/hou/96.html)
(2)輸入検疫の対象となる感染症
同法施行令では、輸入検疫の対象となる感染症がサ
ルにのみ定められており、エボラ出血熱およびマールブ
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サル類の輸入検疫制度等
(5)農林水産大臣が指定する輸出検疫施設
(4)係留検査(規則第 9 条、第 10 条)
規則第 4 条の規定に基づき、米国以外の地域から輸
動物検疫所の霊長類検疫施設(成田国際空港、関西
入する場合、相手国の輸出検疫施設は「感染症の病原
国際空港)または農林水産大臣の指定検査場所で 30
体を媒介する恐れのある動物の輸入に関する規則第4
日間以上の隔離検査が実施され、その結果、エボラ出
条」の規定に基づき農林水産大臣が指定する施設」(告
血熱、マールブルグ病に罹っている恐れがないと判断
示)に定められた施設でなければならない。
された場合には、輸入検疫証明書が交付される。なお、
これらの病気に罹っている恐れがあると判断された場
サルの輸入検疫の流れ
合は、隔離、消毒、殺処分その他の必要な措置が講じ
サルの輸入検疫は、先述したとおり、法や関連する政
られる。
省令、要領などに基づき実施される。
実際の輸入検疫について
サルの輸入検疫の流れ
輸出国
日本に到着したサルは、対象疾病であるエボラ出血
熱、マールブルグ病が万一発生した場合であっても、作
日本
業者が感染しないように個人防護を行うとともに、病原
出国検疫
到着時検査
輸入検疫
体が隔離検疫施設の外に漏出しないように管理されて
いる。輸入サルが空港に到着した後の、実際の輸入検
航空機輸送
出国検疫施設
30日以上の隔離
疫措置について具体的に説明する。
陸上輸送
到着港
成田国際空港
関西国際空港
動物検疫所
指定検査場所
(1)輸入港での到着時検査
30日間の隔離
輸入港において、動物検疫所の家畜防疫官は、輸出
国政府機関の発行する証明書および輸送状況の確認
(1)輸入に関する届出書の提出(規則第 2 条、3 条)
を行うとともに、到着した動物の健康状態を観察する。
サルを輸入しようとする場合には、入港あるいは着陸
作業者はリスクに応じて防護のための着衣を行い、サ
予定の 70∼40 日前までに、動物検疫所に、荷受人・荷
ルのケージの接触した場所についてはすべて消毒する
送人の氏名など、動物の種類、用途、生産地、搭載予
などの徹底した措置がとられる。
定年月日などを届け出なければならない。
到着時検査の着衣
サルからの距離により作業者の着衣標準は異なる
(2)輸出国での出国検査(規則第 4 条)
直接作業者
A
農林水産大臣(米国は政府機関)が指定する施設に
サルおよびサルの排泄物等に直接接触する作業者
おいて、出発前 30 日以上の係留による隔離検査を行
い、また、輸出国政府機関発行の検査証明書を添付さ
直接作業者
B
れなければならない。
(3)輸入港到着時の検査(規則第 5∼8 条)
輸送箱、ケージ等に接触する作業者
間接作業者
5 フィート(約 1.6 m)
サルを輸入しようとする者は、入港または着陸後遅滞
サルの輸送箱 5 フィート以内に
近づかない作業者
なく、当該港を管轄する動物検疫所に輸入検査申請書
を提出し、検査を受けなければならない。
家畜防疫官の指示なく、航空機から動物を搬出するこ
とは禁止されている。
8
オベリスク Vol.16,1
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サル類の輸入検疫制度等
着衣標準例
(3)係留検査
家畜防疫官は、農林水産大臣の指定する検査場所で
検疫を行うサルについて、30 日間の検疫期間中、①初
回検査(通常、到着後1週間以内)、②臨時検査(必要
と判断された場合)、③最終検査(原則として係留検査
機関が終了した日の翌日)として立入検査を行う。その
他の係留期間中は、担当獣医師または飼育担当者が、
直接作業者A
直接作業者B
間接作業者
家畜防疫官
積みこみ作業者
機外搬出作業者など
航空会社
通関業者など
毎日臨床観察を行い、動物検疫所に、毎日その記録を
提出する。
輸入者の自主検査については、あらかじめ計画書を
ハ ッチ オ ー プ ン
家 畜 防疫 官 に よ る 確認 、
外 装 消毒
提出し、家畜防疫官の承認を得た上で行い、また結果
を動物検疫所に報告することとされている。
輸入サルに、特にエボラ出血熱やマールブルグ病を
疑う症状(特定症状)が認められた場合には、当該サル
から採材し、精密検査を実施する。採材時には、病原
体に直接暴露する危険性が高いため特に注意を要し、
オ ペ レー タ ーも 防 護服
実施者は指定検査場所の担当獣医師、家畜防疫官、
(パ レ ット 積 み方 式 )
これらの者が専任した者に限られる。作業は 2 人以上
ケー ジ 及 び 接 触場 所 の 消 毒 、
サル の 状 態 確 認
輸 送 車 への 積 み 込 み
で行うことが原則であり、安全キャビネットやグローブボ
ックス内などで行うなど、飛沫核感染対策を講じた上で
行う。また、検査材料は 3 重包装で梱包するなど、厳重
な管理がとられた上で輸送される。
精密検査の流れ
( バ ル ク 積 み 、 ベ ル トロ ー ダ ー で の 取 り下 ろ し の 場 合)
異常発見
死亡サル
作 業 現 場、
作 業 者 の消 毒
生存サル
肝臓、脾臓、血液の採取
(2)係留検査場所までの陸上輸送
陰性
係留検査場所への送致は、サルを防疫上安全に輸送
解放
することができる専用の車両により、直接輸送されなく
陰性
てはならない。輸入者は輸送計画書にて、輸送経路・輸
解放
血液の採取
ウイルス遺伝
子検出
スクリーニング検査
RT-PCR
疑うサル
ウイルス抗原検出・血清抗体の変動
確認検査
蛍光抗体法・
抗体検出ELISA
感染しているサル
送車・運転者などをあらかじめ報告することが求められ
る。専用輸送車の貨物室は、運転席から隔離され、独
精密検査の結果、陽性が確定したサルについては、
立した空調を備え、容易に清掃・消毒できる構造でなけ
殺処分が行われる。同一の検疫単位として隔離検疫を
ればならない。
行っているその他のサルなど、感染の疑いのあるサル
到着港での検査で死亡や特定症状が認められた場
についても、隔離や安楽死処分などの必要な措置がと
合などについては、係留施設が、指定検査場所から動
られることとなる。
物検疫所検疫施設へ変更される。
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January 2011
サル類の輸入検疫制度等
おわりに
れる可能性は否定できないことから、今後も適切な検
近年、サルは医学実験用や展示用に有効活用されて
疫を行っていくことが重要である。今回、制度や措置の
おり、平成 21 年には、医学実験用(カニクイザル、アカ
一部について説明したが、サルの輸入に当たっては、
ゲザル)5,149 頭、展示用 6 頭が輸入された。これらの
関係する法、政省令、要領などを熟読いただき、適切か
多くがアジア地域からの輸入であるが、エボラ出血熱や
つ円滑な動物検疫業務にご協力いただきたい。
マールブルグ病を含む重要な伝染病が日本に持ち込ま
10
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諸外国における繁殖施設の動向
日柳 政彦
株式会社日本医科学動物資材研究所
はじめに
各国の生産施設の概要
近年、世界的に動物実験に使用する動物種としてサ
実験用サル類のうち、カニクイザルやアカゲザル輸
ル類が急増している。この現象はわが国でも同様であ
出国の生産施設すべてが検疫施設を併設している。ま
り、脳科学や医薬品の安全性試験などに多く利用され
た、そのほとんどが日本国農水大臣指定輸出検疫施設
ている。使用する種のほとんどがカニクイザル
(輸出検疫指定施設)をもっている。
(Cynomolgus monkey)で、海外特にアジア諸国からの
中国における輸出検疫指定施設 10 施設のすべてが
輸入に頼っている。
生産施設を有しているが、その規模にはかなりの格差
周知の通りわが国は、2005 年に施行された改正感
がある。もとより、経営者の資金力によるところが大き
染症予防法により、原則としてサル類の輸入を禁止し
いが、品質管理面においても格差が大きい。そこで、演
た。しかしながら、例外的に試験研究などに使用される
者は生産規模、生飼育管理・品質管理、ならびに教育
サルに関して、一定の条件を設定し許可している。その
訓練など 15 題 90 項目にわたる質問状を 10 施設すべ
一つに輸入許可国を設定(厚労省、農水省共管省令)
てに送り、回答のあった 6 施設に対して現地調査を実施
し輸出前検疫を義務づけている(農水省令)。現在のと
した。他の 4 施設のうち雲南霊長類実験動物有限公司
ころアメリカ合衆国、中華人民共和国、インドネシア共
については、現在施設改装中のため現地調査が不可
和国、フィリピン共和国、ベトナム社会主義共和国、スリ
能であるとの回答を得た。
ナム共和国、ガイアナ協同共和国、カンボジア王国(昨
一方、ベトナムの VAFOVANNY、アメリカの Covance
年 12 月 12 日に追加)の 8 ヵ国から、繁殖生産されたサ
Research Products, Texas Primate Center およびカンボ
ルのみが許可されている。さらに、農水省令でそれぞれ
ジアの VANNY CAMBODIA については別途調査を実施
の輸入許可国との間で衛生条件を締結し、わが国の農
した。なお、フィリピンの SICONBREC、カンボジアのティ
水大臣が指定した輸出検疫施設(米国だけは米国政府
エン・フー・カンボジア、アンコール・プライメイツ、ならび
が指定した検疫施設)で 30 日以上の輸出前検疫が義
にインドネシアの指定施設については、関係の演者が
務づけられている。
それぞれ紹介するのでここでは省略する。
平成 2 年 5 月 22 日現在農水大臣が指定している輸
現在輸入許可国に指定されていないモーリシャスをあ
出検疫施設は、中国 10 施設、インドネシア 5 施設、フィ
えて加えた。モーリシャスのカニクイザルは、B ウイルス
リピン 5 施設、ベトナム 1 施設、カンボジア 3 施設、ガイ
がフリーであることはすでに多くの研究者の知るところ
アナ 1 施設、スリナム 2 施設の 27 施設に及ぶ。これら
であり、その他のサルウイルス(SIV、SRV、STLV-1 等)
の施設は、農水省との間で衛生条件 13 項目、輸出検
についてもフリーといわれていることから、欧米で多く使
疫施設条件 15 項目に適合した施設であり、いずれの項
用されており、有用な情報として詳細を紹介する。
目においても違反した場合は指定が取り消される。
日本に輸入される実験用サル類のほとんどはカニク
イザルであるが、これらはアジア 4 ヵ国(カンボジアは輸
入 実績 なし)からの輸 入であり、昨年の輸入 総数は
5,155 匹(動物検疫所統計資料による)である。
11
オベリスク Vol.16,1
January 2011
諸外国における繁殖施設の動向
表 1.サル類の国別年次別輸入状況
年
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
フィリピン
352
443
401
462
418
556
505
701
810
577
インドネシア
163
569
100
760
385
346
963
627
435
158
2,940
4,047
3,751
874
3,898
3,575
4,420
5,065
3,028
3,272
ベトナム
773
1,185
914
1,488
1,411
1,213
1,300
1,084
1,374
1,149
アメリカ
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4,229
6,244
5,166
3,584
6,112
5,690
7,188
7,477
5,647
5,156
ガイアナ
111
655
185
0
0
0
0
0
0
0
スリナム
163
0
0
0
375
346
35
0
0
0
4,503
6,899
5,351
3,584
6,487
6,036
7,223
7,477
5,647
5,156
中国
小計
合計
(農林水産省動物検疫所 輸入統計より)
表 2.世界におけるマカクザルの生産動向(推定値)
生産数(推定値)
2005
2009
2011
中国
16,000
22,000
27,000
30,000
ベトナム
7,000
9,500
12,000
12,000
インドネシア
4,000
4,000
4,000
4,000
フィリピン
1,800
1,800
1,800
1,800
モーリシャス
9,000
11,000
13,000
15,000
カンボジア
総数
−
37,800
20,000
51,800
64,800
80,800
8,780
10,080
−
30,800
43,020
54,720
−
81.5%
83.1%
84.4%
−
品質不良動物
使用可能動物
3,500
*不良個体の基準 Bウイルス(+),SRV(+),3歳齢で 体重2kg以下 (米国CROからの資料)
12
オベリスク Vol.16,1
January 2011
諸外国における繁殖施設の動向
農水大臣指定施設 (輸入許可検疫施設)
(農林水省令第告示 793 号 平成 22 年 5 月 20 日公布)
中華人民共和国 10 ヵ所
雲南霊長類実験動物有限公司
カンボジア王国
海南金港実験動物科技有限公司
ハンセン・トロピカル・ワイルドライフ
広東省肇慶市実験動物科技研究中心
アンコール・プライメイツ・センター・インコープレーション
広東省肇慶創薬生物科技有限公司
ヴァニー・バイオリサーチ・コーポレーション・リミティド
3 ヵ所
玉林市洪峰実験動物馴養繁殖中心
広西桂東霊長類開発実験有限公司
ベトナム社会主義共和国 1 ヵ所
広西新豊源生物科技有限公司
ナホバニー社
広西雄森霊長類実験動養殖開発有限公司
防城港常春生物技術開発有限公司
フィリピン共和国
軍事医学科学院実験動物中心
イナリサーチ・フィリピンズ霊長類品質管理センター
5 ヵ所
イナリサーチ・フィリピンズ
インドネシア共和国 5 ヵ所
サイエンティフィック・プライメイツ・ フィリピナス
ファウナ・ヌーサンターラ社
サイコンブリック社
タマンサファリ・インドネシア社
デルムンド・トレーディング
ニュー・インクアテックス社
ボゴール農業大学霊長類研究センター
ラブシンド社
表 3-1.中国の生産施設の現地調査概要
開 所(年)
敷 地総 面積
(㎡ )
サ ル保 有 数 ( 頭 )
出 荷可能 数
(年 )
日本 許可
(年 )
飲水
従 業員
(獣 医 師 )
建築 面積
(㎡ )
種 動物 数
種 動物由 来
(カ ニ ク イ)
検 疫 可能 数
(頭 )
飼料
2001 年
184 ,800 ㎡
カ ニ ク イ 5,5 00
ア カ ゲ 62
カ ニ ク イ 1,4 00
アカ ケ ゙ 134
20 05年
井水
( 検 査 : 1回 / 年 )
85 人
(2+ 20)
20 ,000 ㎡
カニクイ ♂ 2 14 ♀ 1 75 0
ア カゲ ♂ 38 ♀ 3 79
ベトナム
ラオス
360 匹
市販
1/3
自 家 製 2/3
200 4
13 2,00 0
カ ニ ク イ 3,000
アカ ケ ゙ 100
カ ニ ク イ 1 ,500
2 009
45
( 2)
8 ,000
カニ クイ ♂ 400 ♀
3300
ベトナム
ラオス
36 0
198 7
40 0,00 0
カ ニ ク イ 27,00 0
ア カ ゲ 3,00 0
カ ニ ク イ 11,5 00
ア カ ゲ
10 00
2 005
井水
( 検 査 : 1回 / 年 )
1 72
( 8)
2 4,00 0
カ ニクイ
♂ 2,0 70 ♀ 2,5 11
ベトナム
25 00
自 家 製 (ヘ ゚レット )
199 6
3 0,00 0
カ ニ ク イ 5,000
ア カ ゲ 62
カニ ク イ 800
ア カケ ゙ 50
2 005
井水
( 検 査 : 1回 / 年 )
52
( 7)
8 ,500
カニクイ ♂ 2 70 ♀ 1 60 0
ア カゲ ♂ 10 ♀ 1 00
ベトナム
38 0
市販
1/3
自 家 製 2/3
199 6
1,848,000
カ ニ ク イ 8,600
2 ,000
2 005
井水
( 検 査 : 1回 / 年 )
62
(1 +4)
7 ,000
ベ トナ ム
カンボ ジア
38 0
200 3
4 6,00 0
4 ,500
2 009
市水
(検 査 :な し )
138
2 6,00 0
カンボ ジア
ベ トナ ム
90 0
外部 委託
( ペレッ ト)
名称
住所
肇慶市実験動物科技研究中心
広 東省 高要 市蜆 崗鎮 富金村
桂東霊長類開発実験有限公司
広西 チワン族自 治区 梧州 市蒼 梧県 二項
雄森霊長類実験動物養殖開発有限公 司
広 西チワ ン族自 治区貴 港市 平南 県大 乙嶺
玉林市洪峰実験動物馴養繁殖中心
広 西チワ ン族自 治区玉 林市 福錦 区石 和鎮
防城港常春生物技術有限公司
広 西チワ ン族自治 区防 城港 市防 城区 江山 郷江 山半島
海南金港実験動物科技有限公司
海南省 海口 市環 山区 府城 鎮那 央村
品質 検査
♂ 50 0
♀ 270 0
カ ニ ク イ 20 ,000
♂ 80 0
13
♀ 900 0
定 期 検 査 TB ・ 細菌 ・
寄 生 虫 半 年 毎
出 荷 サ ル T B: 3- 5回
SS: 3 回 寄 生 虫 : 3 回
B : 自 社 2 回 依 頼 は 任 意
− VR L AA A LAC 予 定
定 期 検 査 TB ・ 細菌 ・
寄 生 虫 半 年 毎
出 荷 サ ル T B: 1回
SS:1 回 寄 生 虫 : 1 回
自 家製
B : 自 社 1 回 依 頼 は 任 意
(ヘ ゚レ ット・ ハ ゚ンケ ー キ ) − VR L AA ALA C 認 識 あ り
市水
(検 査 :な し )
親 育成
定 期 検 査 TB ・ 細菌 ・
寄 生 虫 半 年 毎
出 荷 サ ル T B: 3回
SS: 2 回 寄 生 虫 : 2 回
B : 自 社 2 回 依 頼 は 任 意
− VR L AA ALA C 意 志 あ り
定 期 検 査 TB ・ 細菌 ・
寄 生 虫 半 年 毎
出 荷 サ ル T B: 2回
SS: 2 回 寄 生 虫 : 2 回
B : 任 意 VRL)
A AA LA C知 ら な い
定 期 検 査 TB ・ 細菌 ・
寄 生 虫 半 年 毎
出 荷 サ ル T B: 2回
SS:2 回 寄 生 虫 : 2 回
市販
B : 自 社 2 回 依 頼 (任 意
市 販 + 自 家 VR L)
定 期 検 査 TB ・ 細菌 ・
寄 生 虫 半 年 毎
出 荷 サ ル T B: 3- 5回
SS: 3 回 寄 生 虫 : 3 回
B : 自 社 2 回 依 頼 は 任 意
− VR L AA A LAC 取 得
オベリスク Vol.16,1
諸外国における繁殖施設の動向
表 3-2.中国内のその他主要生産施設の概要
中国内のその他主要生産施設の概要
開所(年)
敷地総面積 (㎡)
サル保有数
(頭)
出荷可能数
(年)
日本許可
(年)
水
従業員
(獣医師)
建築面積 (㎡)
種動物数
種動物由来
検疫可能数
(頭)
飼料
-
250,000㎡
カニクイ 28,000
カニクイ 6,000
−
井水
76人
(4)
3,400㎡
カニクイ ♀7,800
ベトナム
3,500
市販+自家製
(パンケーキ)
2002
800,000
カニクイ
カニクイ 4,000
−
井水
45
(1)
70,000
カニクイ ♀7,200
ベトナム
997
市販+自家製
(パンケーキ)
名称
住所
从化市華珍動物養殖場
広東省広州市
春盛生物科技有限公司
広東省広州市
品質検査
広東省肇慶創薬生物科技有限公司
省
広東省高要市
22,000
略
軍事医学科学院実験動物中心
北京市豊台区東大街
広西王夷美(WEIMEI)生物科技有限公司
広西壮族自治区南寧市金州
2002
313,490
カニクイ 8,500
アカゲ 少々
カニクイ 2,000-3,000
アカゲ 30
−
市水
76
(5)
10,000
カニクイ 2,000
アカゲ 少々
ベトナム
カンボジア
160
市販
(ペレット)
雲南霊長類実験動物有限公司
雲南省昆明市人民東路
中国科学院所属昆明動物研究所
雲南省西双班納
表 4.ベトナム NAFOVANNY サル生産施設の概要
14
January 2011
オベリスク Vol.16,1
諸外国における繁殖施設の動向
表 5.カンボジア
表 6.アメリカ
VANNY-CAMBODIA サル生産施設の概要
Covance Research Products サル生産施設の現状
15
January 2011
オベリスク Vol.16,1
諸外国における繁殖施設の動向
表 7-1.モーリシャス
Noveprim (Covance JV) サル生産施設の現状
表 7-2.モーリシャス
Bioculture (Charles River, BRF JV) サル生産施設の現状
参考
モーリシャスのサル繁殖事業者(総生産能力)
・Novenprim 6,000 頭 米国 Covance Research Products 47%とモーリシャス最大の投資会社
CIEL Group 53%の合弁
・Bioculture(Biopharm) 4,000 頭
米国販売はチャールス・リバー社 欧州は直売
・Biodia
(ただし、Covance Europe とは直接売買)
・Tamarinier
・Biosphere
2,000 頭
500 頭 フランスの CRO である CIT が投資
0 頭 生産ライセンスを申請中
16
January 2011
オベリスク Vol.16,1
January 2011
フィリピンの繁殖施設、SICONBREC の紹介
植松 高宏
エルエスジー株式会社
SICONBREC 社は、1983 年カニクイザルの生息国で
SICONBREC 社は、設立以来すでに 4 万頭以上の繁
あるフィリピンにおいて、世界に先駆けて繁殖事業をス
殖カニクイザルを世界中の研究機関に提供し、新薬の
タートさせました。
開発・生命科学の研究に貢献してきました。さらに衛生
的な飼育環境と、動物福祉を配慮した繁殖・育成プログ
当時、生命科学・医学研究用として使用されていたの
ラ ム の 維 持 ・ 改 善 に よ り 、 1995 年 ア ジ ア で 初 め て
は、主に野生カニクイザルでした。よって、種親の由来・
AAALAC 認証を取得いたしました。
生年月日・個体管理記録が明確である高品質カニクイ
ザルを継続的に使用することは、世界中の研究者の切
カニクイザルは、生命科学・疾病の治療研究など、さ
望でありました。
まざまな分野で重要と考えられ、今後もますます必要性
が高まるといわれております。
写真 1.ゲート正面より SICONBREC 社を望む
図 2.繁殖・育成・出荷の流れ
繁殖・育成・出荷の流れ
BREEDING
◆ 生後8∼10ヶ月齢まで親と同居
◆ 種♂1 :種♀10∼20/群飼
REARING
◆ 離乳から約18ヶ月齢まで
◆ ペア飼→8∼10頭/群飼
SHIPMENT
一部の動物は
F1 Breeder
Colonyへ
Colonyへ
図 1.SICONBREC 社のパノラマイラスト
Japan
Europe
U.S.A
Local
GROWING
◆ 約1.5から2.5∼3.5歳齢
◆ 10∼20頭/群飼
EXPORT
◆ 出荷前2∼3ヶ月前
◆ 個別ケージ飼育
写真 2.ハーレムタイプ繁殖ケージ内のコロニー
SICONBREC生産施設の概要
SICONBREC生産施設の概要
【生産施設全景】
生産施設全景】
17
オベリスク Vol.16,1
January 2011
フィリピンの繁殖施設、SICONBREC 社
その使命に応えるべく、高品質なカニクイザルを安定
植生の乏しかった敷地内に、多様な植物で計画的に
的に供給するとともに、研究者の研究ニーズに合致し
植樹を行い、長い年月をかけて自然豊かな環境をつく
たカニクイザルの提供も行ってまいりました。
ることに成功いたしました。また、こうした飼育環境の整
備だけでなく、動物福祉を視点に据えた各種エンリッチ
未だ解決できない病気に対する新薬開発の一助とな
メント計画も同時に進めております。
り、人類の健康福祉に貢献することが SICONBREC 社
に与えられた使命であると確信しております。
図 3.出荷検査の流れ
繁殖・育成・出荷の流れ
SICONBREC 社は、サルが本来生息している自然に
【EXPORT & LABの風景
】
LABの風景】
近い環境をつくることに注力してまいりました。このこと
は、サルの精神的な安定と、新しい環境への受容の促
進に役立ちます。
写真 3.ケージ内でのグルーミング
写真 5.離乳後のペア飼育
写真 4.捕食中の幼若育成カニクイザル
写真 6.幼若育成カニクイザルの人工哺乳
18
オベリスク Vol.16,1
January 2011
フィリピンの繁殖施設、SICONBREC 社
このように繁殖飼育現場において、可能な範囲で
いう目標を掲げ、日々邁進しております。
の各種エンリッチメント計画を導入することは、霊長類を
保有する当センターにとって、自らに課した課題であり、
SICONBREC 社は、今後もさまざまなエンリッチメント
一つ一つその課題をクリアーしてきました。さらに、カニ
計画を推進し、動物福祉の観点からもより充実した飼
クイザル繁殖コロニーの繁殖飼育環境を向上させると
育環境を整備できるよう日々努力いたしてまいります。
写真 7.育成ケージの全体写真
写真 10.笹の中から穀物を探すエンリッチメント
写真 8.リラックスしている育成カニクイザル
写真 11.群ケージ内のエンリッチメントで遊ぶ幼若育成
カニクイザル
写真 9.繁殖ケージ内にて椰子の実に興味を示す繁殖
種親カニクイザル
写真 12.光に輝く育成カニクイザル
19
オベリスク Vol.16,1
January 2011
インドネシア産カニクイザル
CV.LABSINDO 社飼育繁殖施設の紹介
遠藤 昭久、池田 大志
日本クレア株式会社
日本クレア(株)は、インドネシア共和国
Deli 島内には、6 つの野外飼育繁殖施設、4 つの個別
CV.LABSINDO 社とともに、1989 年よりインドネシア産カ
飼育施設があります。島内で捕獲したサルや、施設で
ニクイザルの生産・販売を行っております。
繁殖したサルを種ザルとして用いて、50 匹程度のハー
LABSINDO 社には、本社および輸出前検疫施設・
レム方式により繁殖を行っています。
Duraen 飼育繁殖施設、Deli 島飼育繁殖施設の 3 つの
施設の地面は砂地で、高さ 3∼4m ほどのコンクリート
施設があります。
壁で囲まれ、中央に風雨除けの居住区を設け、チェー
インド洋に浮かぶ約 180ha の Deli 島をインドネシア森
ンや登り棒などのエンリッチメントを設置しております。
林局より借り受け、野生ザルが生息していないことを確
朝夕 2 回、健康観察や清掃・給餌を行っております。飼
認した後に、ツベルクリン反応・赤痢・サルモネラ陰性の
料は、固型飼料、乾燥トウモロコシ、モンキーバナナを
スマトラ原産の種ザル(♂520 頭、♀2,858 頭)をリリース
給餌しております。
し、島内繁殖を始めました。
毎日の観察から、母ザルの出産日を記録し、離乳段
島という立地を生かし、閉鎖環境下で約 2 万頭を放飼
階で仔ザルにイヤータグを付け、個体番号を割り当て
しております。
ます。その後、群飼育の育成コロニーや、個別飼育施
設へ収容されます。
島内に放飼されているサルは、数頭からの群れを作り、
樹上生活を行っています。島内の各所に固型飼料や乾
図 1.CV.LABSINDO 社
燥トウモロコシなどを給餌しております。また、島内各所
に水飲み場も設け、乾期に対応しております。
島内に点在するトラップにかかった群れの、健康な♀
ザルを選抜し、繁殖用の種ザルとして使用しておりま
す。
繁殖をリタイヤしたサルも再放飼し、余生を過ごしてお
ります。
このような自然環境化で、健康なサルを飼育繁殖して
おります。
写真 1.Deli 島 野外繁殖施設
写真 2.Deli 島 放牧サル
20
オベリスク Vol.16,1
January 2011
インドネシア CV.LABSINDO 社飼育繁殖施設
敷地内には同様の飼育繁殖棟を 10 棟程建設できる
こちらの飼育繁殖施設では、B ウィルス抗体陰性確認
土地があり、お客様のニーズに応え、若年齢での群飼
済みの種ザルを選抜し、交配に使用する計画を進めて
育や個別飼育が可能です。
おります。
また、安価な飼育管理費用で B ウィルスやその他の
ジャカルタのスカルノ・ハッタ国際空港から車で 20 分
検査をお客様のスケジュールで行い、ご希望の年齢、
ほどの場所にある、CV.LABSINDO 社の本社施設には、
体重になるまでの飼育管理が可能です。
輸出前検疫施設、群飼育施設、個別飼育施設、検査室
その他、50 頭単位で飼育できる半地下型の飼育施設
がございます。
が 3 棟、ギャングケージタイプの繁殖施設が 2 棟ござい
スタッフは社長はじめ、従業員の健康管理を行う専属
ます。
医師、2 名の獣医師による全施設の動物の健康管理、
Duraen 飼育繁殖場は海岸線にあり、水はけ・風通し
経験豊かな飼育管理者が SOP を順守し、日々の飼育
の非常に良い場所に建設されております。ここでは、♂
管理に従事しております。
1頭:♀15 頭のハーレム方式で繁殖を行っております。
新飼育繁殖施設は、幅 3m×奥行き 4m×高さ 2m で、
天井部分の反面はフェンス張りになっており、太陽光が
十分に差し込みます。
写真 3.Duraen 飼育繁殖施設
写真 5.Duraen 施設 繁殖群
写真 4.半地下型育成施設
写真 6.飼育繁殖施設
21
オベリスク Vol.16,1
January 2011
インドネシア CV.LABSINDO 社飼育繁殖施設
輸入法定検疫では主に(株)エーキューエスで実施して
現地への視察も随時承っております。お気軽にお問い
おります。
合わせ下さい。
B ウィルス検査・ツベルクリン反応検査・赤痢・サルモ
ネラ検査を各 1 回、弊社規定として実施しております。
現在、日本クレアでは 2 歳から 7 歳程度の個体管理さ
その他お客様のご要望に応じて各種追加検査も実
れたサルの血清を輸入し、予防衛生協会にて B ウィル
施いたします。
スの検査を、年 2 回を目標に実施しております。その在
庫の中から、お客様のご要望に応じた個体を選抜いた
ご存知のように、カニクイザルの輸入には関係省庁
します。当社の自主規制として、B ウィルスの OD 値が
への申請を含め、個体選抜のための各種検査などを含
0.15 を超えるカニクイザルは輸入いたしません。実質の
めますと、3 ヵ月ほどお時間が必要となっております。是
値は 0.00∼0.05 以内で個体選抜を行っております。
非、早めのお問い合わせをいただければ幸いです。
その他、お客様のご要望により、各種検査を事前に行
い、輸入することも可能です。
日本クレアと CV.LABSINDO 社は、自然環境を十分
に生かし、品質の向上、自然環境保護にも努めた繁
写真 8.現地スタッフ
殖・育成を行っております。
写真 7.JAL 便
写真 9.輸入検収時のサル
22
オベリスク Vol.16,1
January 2011
検疫の現況
板垣 伊織
社団法人 予防衛生協会
はじめに
予防衛生協会が行っている検疫
過去 5 年間の統計を見ただけでも、日本には毎年
予防衛生協会が行っている輸入検疫の標準スケジュ
5,000 頭を超えるサル類が輸入されている。詳細なデー
ールを表 1 に示した。最低検疫日数は 35 日間と、動物
タ は 農 林 水 産 省 動 物 検 疫 所 の
Website
検疫所の要求している 31 日間よりも長く設定してある。
(http://www.maff.go.jp/aqs) に詳しいのでここでは述べ
これらの検査を実施した上で、次の要件を満たす動物
ないが、輸入されるサル類のほとんどは中国、ベトナム、
を合格としている。
フィリピン、インドネシアからのものである。これら産地を
考えると、日本に輸入されるサルの大半は、科学実験
・検疫期間中の健康状態に著しい異常が認められない
用のマカク属であろうと推察される。
・最低 2 回実施のツベルクリン試験がいずれも陰性
・赤痢菌、サルモネラ検査が陰性
ところで動物検疫所の統計データをよく見ると、入検
・蠕虫類の重度寄生が認められない
頭数と解放頭数が異なっていることに気づく。つまり輸
・血液検査において著しい異常が認められない
入の申請がなされた頭数、もしくは実際に輸入検疫に
・検疫期間中に B ウイルスなどウイルス抗体の有意な
供された頭数に較べ、検疫に合格した頭数は若干少な
上昇が認められない
いのである。申請後に輸入がキャンセルされた例もある
かも知れないが、検疫中に健康状態が悪化して死亡す
表 1.予防衛生協会のサル類輸入検疫標準プロトコル
るなど、何らかの事情で検疫に合格できなかった動物
が存在するのである。
長時間輸送された後に全く異なった飼育施設に搬入
される。これはサル類にとって大きなストレスである。自
らを取り巻く環境の急激な変化で、自律神経のバランス
が崩れ、体力と免疫応答能が低下することにより、サル
類は感染症に罹患したり、発症し易い状態となる。かけ
がえのない生物であり、貴重な研究リソースでもあるサ
ル類の集団を、外部から侵入する病原体から守るため
には、到着時の検疫は絶好の機会なのである。
筑波霊長類医科学研究センター開設以来、社団法人
予防衛生協会は、一貫して輸入検疫を行ってきた。い
わば日本における実験用サル類輸入検疫の草分け的
検疫期間中の第一義は「バイオセーフティ」である。
存在といっても過言ではない。30 余年の歴史の中で培
対象サル類が、既知あるいは未知の病原体を保有する
って来た検疫システムを、ここに公表することで読者諸
可能性を想定し、飼育担当者は自らを守る個人防護具
兄の参考になればこの上ないが、外部の目で見ると不
を着用する (写真 1)。
適切な操作手順もあるかも知れない。気付いた識者か
ら指摘を受けることもまた、今回執筆を決意した目的の
一つである。
23
オベリスク Vol.16,1
January 2011
検疫の現況
写真 1.検疫期間中の飼育管理風景、個人防護具と係
獣医師による検診所見は別室に控えた筆記者に無
留室内
線通信を通じて伝達され、検収室への入室人数を最低
限とする配慮がなされている。
対象サルから採取した生体サンプルは、バイオセーフ
ティレベル 2 の基準を満たすラボで検査している。操作
はすべて、個人防護具を着用した熟練の担当者が安全
キャビネット内で行っている。検査を外部委託する場合
には、国連の病原体輸送基準クラス II に準じて生体サ
ンプルを輸送している (写真 3)。
写真 3.サル類から採取した生体サンプルの輸送梱包
ただし所管の動物検疫所からの指導により、現在は
前掛けと腕カバーにはディスポーザブルタイプのものを
使用し、グローブと腕カバーのつなぎ目を粘着テープで
固定している。一度使用したマスク、グローブ、前掛け
や腕カバーは再使用せずに廃棄する。全身を覆うつな
ぎ服は、使用ごとに高圧蒸気滅菌処理し、規定回数使
用した後に廃棄する。これらの厳重な個人防護具はま
た、ヒトからサルへの感染を防ぐ役割も担っている。ま
た写真 1 に示すケージ間のパーティションは、サルから
サルへの水平感染を防ぐ目的で設置されている。
すなわち、血清などのサンプルを直接収めた一次容
輸入サルの検収は、期間中で最も神経を使う作業で
器は、十分量の吸収体とともに気密性の高い二次容器
ある。専用の検収室で、個人防護具を着用した担当者
に収納され、それを輸送体である発泡スチロール製の
が、予め割り当てられた作業を流れ作業的にこなす
三次容器に入れる。取り扱い注意、天地無用などの注
(写真 2)。
意書きラベルは、最外層の段ボール箱に貼付する。ドラ
イアイスなど冷却剤は、必ず二次容器と三次容器の間
写真 2.輸入サル類の検収風景、検収室内の作業配置
に入れている。これは気化した炭酸ガスで高気密性の
二次容器が破裂し、生体サンプルが周囲に飛散する最
悪の事態を防ぐためである。
緊急時の対応
動物の取り扱い中には、大小さまざまな事故が起こり
得る。これが検疫期間だと問題の規模は大きく、そして
深刻な事態に発展しかねない。そのリスクを制御するた
めに大切なことは、起こり得る危険な事態を予測してあ
らかじめ対策を講じておくことである。対策はマニュアル
化しておき、さらに担当者全員に周知する。つまり重要
なのは普段の取り組みで、事態が発生してから何かを
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オベリスク Vol.16,1
January 2011
検疫の現況
考えて行動する余地のないようにしておかなくてはなら
育管理はロット内の最後に行い、排泄物はクレゾール
ない。緊急連絡網を飼育現場に掲示したり、救急箱な
で消毒後、専用の処置槽に廃棄する。
ど対策に必要な備品や薬品の位置を明示し、そしてそ
の状態を定期的にチェックすることはいざという時の役
輸入検疫で発生した事例、その 2
に立つ。また飼育管理現場を含む職場環境を定期的に
サルに発生する感染性疾患で、獣医師が届け出の義
巡視し、事故発生のリスクを低下させる取り組みも有効
務を負うものは、エボラ出血熱、マールブルグ病、細菌
である。
性赤痢、結核の 4 種である。ここに示す事例は係留期
間の死亡例で、剖検所見から、結核を排除できなかっ
輸入検疫で発生した事例、その 1
たために届け出たものであるが、その後の詳細な検査
検疫期間中に発生する不測の事態は、何も事故ばか
で腫瘍性疾患と診断され、結果として結核は否定され
りではない。各生産国の努力により、日本に輸入される
た。特異な事例ではあるが、貴重な経験ではある。ここ
サルの品質は一時期と比較して随分向上しているが、
に記すことで情報を共有したい。
それでも係留中に疾病を発症したり、外見上は健康で
死亡したのは雌のカニクイザルで、輸入時 3.5 歳であ
も病原体が検出されることが稀にある。
った。到着時の検査で、下腹部に硬結が蝕知され、また
輸入検疫期間中、予防衛生協会ではサルモネラ/赤
血液検査の結果を待たずとも、外貌から強い貧血が示
痢菌の検査を 3 回行う。初回は麻酔下で採取した直腸
唆された。ツベルクリン検査、サルモネラ/赤痢菌検査、
スワブを材料とし、その後 2 回は自然排泄便を材料とす
B ウイルス検査、サル水痘ウイルス検査および寄生虫
る。この一連の検査で何度か赤痢菌を検出したことが
検査の結果はすべて陰性であった。貧血は検疫期間中
あった。菌培養法で赤痢菌を検出すると、PCR を含む
継続して観察され、次第に削痩の度合いを強くしていっ
詳細な検査を行う。同定されるのはほぼ毎回 Shigella
た。鉄剤投与や経皮下輸液による栄養剤の投与で対
flexneri 血清型 5a である。もちろんこの菌はヒト細菌性
症療法を試みたが、検収から 26 日後、死亡している所
赤痢の原因となる。2007 年に感染症予防法 (感染症の
を発見された。
予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律:
直ちに所管の動物検疫所に報告を行い、その指示に
1999 年施行) が改正され、サルの細菌性赤痢を診断し
基づいて施設内で剖検を実施した。肝臓や腹膜など全
た獣医師には、所轄の保健所を通じて都道府県知事に
身の諸器官・組織に、白色の結節性病変が散在してお
届け出る義務が生じた。保菌サルが赤痢の臨床症状を
り、特に肺に顕著であった。子宮とその周囲組織は線
呈したケースはこれまでになかったものの、この法律に
維性に固着し、一塊となっていた。
より菌を検出した場合は毎回保健所に事例を届け出て
この時点では、可能性としてさまざまな疾患が考えら
いる。なお届け出のための様式は定められており、各
れたが、厄介なことにマカク属のサルで、全身に白色結
保健所で入手できる。オンラインであれば、少なくともつ
節性病変が見られた場合に、まず疑うべきは結核であ
くば市保健所のウェブサイトにはダウンロード用のファ
る。ツベルクリン検査の結果は陰性だったものの、サル
イルが用意されている (http://www.pref.ibaraki.jp
では結核が進行すると、免疫不応答 (アネルギー) の
/bukyoku/hoken/tsukuhc/)。
状態に陥ることがある。そうなると病変が急速に全身へ
赤痢菌が検出されたサルには抗菌剤による治療を施
拡がるとともに、ツベルクリン液に対する反応も低下す
す。使用している薬剤はホスホマイシンカルシウム水和
るのである。
物 (製品名: ホスミシンドライシロップ 400®、明治製菓
結核の可能性が否定できない以上、事態は重大であ
株式会社) である。200 mg を 1 日 1 回、3 日間連続して
り、かつ慎重な取り扱いを要する。まずは所管の動物
経口投与すると、以降赤痢菌が検出されることはない。
検疫所に報告した。検疫官と協議した結果、屍体とこれ
処置後 1 週間ごとに検査を行い、3 回連続して陰性の結
までに採取した材料を全て動物検疫所に搬送して、そ
果が得られれば細菌が駆除されたと考え、検疫合格要
の後の検査を依頼することとなった。材料の搬送には
件を満たすと判断する。それまでの間、保菌動物の飼
密閉性のプラスチックコンテナを用い、動物検疫所の検
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オベリスク Vol.16,1
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検疫の現況
疫官が自ら輸送を担当した。
入ルートはただ 2 つ、施設に出入りするヒトと、施設に新
一方、サルの結核は疑い事例であっても届け出が必
たに入ってくるサルである。飼育されているサル類を守
要である。そこで、事例 1 と同様に最寄りの保健所に届
るための検疫は、同時に施設そのものを守るためでも
け出を行った。
ある。施設への導入後に病原体が検出された場合、飼
動物検疫所からの診断結果を待つ間、同居していた
育サルの生物学的ダメージに加えて、施設の経済的ダ
生存動物の検疫期間を延長し、2 週間ごとにツベルクリ
メージを避けることはできない。しかし同じ病原体が検
ン検査を繰り返した。結果はすべて陰性であった。
疫期間に検出された場合は、それは検査担当者と施設
死亡発見から 40 日ほど経過したある日、動物検疫所
のサクセスストーリーとなる。
から届いた診断結果は「絨毛癌」であった。結核ではな
検疫でサルと施設を守ることができるか否か、それは
かったことがはっきりしたため、生存動物の検疫を終了
検査を行う施設のハードウェアとソフトウェアに依存す
することができた。届け出を行った保健所と、そこから
る。予防衛生協会も現状の検疫手順に満足することな
の連絡で何度か問い合わせを受けた厚生労働省にそ
く、常に最新の情報を入手しつつ、よりよい手法に改善
の結果を報告したところで、一連の事案は終結した。
し続ける姿勢を持ち続けたい。また、遵法精神と情報の
公開性を忘れてはならない、と決意を新たにする次第
おわりに
である。
施設に飼育されているサル類は、常に外部から侵入
する病原体の脅威にさらされている。病原体の主な侵
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オベリスク Vol.15,1 June 2010
オベリスク Vol.16,1
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カニクイザルを用いたテレメトリー試験
木村 正紀、藤井 雅典
ハムリー株式会社
はじめに
テレメトリー試験は、動物の体内あるいは体外に取
り付けられたセンサーで生体情報を取得し、センサー
と一体化した送信器によって、無線で受信器に伝え
る手法である。得られた生体情報は、コンピューター
解析装置によりリアルタイムでデータ化され、解析に
用いられる。この手法は、マウス、ラット、ウサギ、ミニ
ブタ、サル、イヌなど、幅広い動物で行うことが可能と
なっている。現在、日常的に使用されているテレメトリ
ー指標としては、心電図、血圧、体温、活動量、脳波、
筋電図などがあり、単独または複数の同時記録が行
われている。テレメトリー試験の最大のメリットは、測
定時に無麻酔・自由行動下の動物から、各種の生理
送信器を埋植したカニクイザル(n=5)に、被験物質
的変化を長期間に亘って、連続的に観察することが
としてソタロール(5∼20mg/kg)を経口投与し、投与
可能な点である。そのためテレメトリー試験は、動物
後 24 時間まで心電図の測定を行った。ソタロール
のさまざまな病態解析やバイオリズム研究に極めて
は、アドレナリン作動性β受容体の遮断と、心筋カリ
有効な手段となっている。さらに、ICH による安全性
ウムチャネルの遮断によって、QT 間隔延長に作用す
薬理試験ガイドラインにおいて、慢性的にテレメトリー
る抗不整脈薬である。
システムを装着した無麻酔・非拘束動物の利用が推
測定の結果、溶媒投与時と比較して、ソタロール
奨されていることから、テレメトリー試験は、生体機能
投与時では、QT 間隔延長が投与後 1.5∼2 時間をピ
評価には欠かせない方法の一つである。
ークに現われ、その後徐々に回復し、24 時間後には
完全に見られなくなることが分かった(図 2)。また、ソ
タロールは濃度依存的に作用することが示された(図
今回、弊社筑波研究センター試験研究所で実施さ
2)。
れたテレメトリー試験例について、簡単に紹介する。
当研究所では、解析装置としてハイエンドデータ取
得・実時間解析システム NOTOCORD‐hem evolution
(NOTOCORD 社)を導入し、PhysioTel シリーズ送信
器(DATA SCIENCES INTERNATIONAL 社)を動物体
内に埋植することによって、心電図、体温、血圧を、
同時にリアルタイムで測定することが可能であり、さ
らに PR 間隔、QT 間隔、RR 間隔などの計測も行うこ
とができる(図 1)。
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オベリスク Vol.16,1
January 2011
カニクイザルを用いたテレメトリー試験
今回の結果により、当研究所に導入したテレメトリ
ツールとして、利用が高まることが予想される。その
ーシステムで、カニクイザルを用いてソタロールの QT
ため、今後は基礎的なバックグラウンドデータの取得
間隔延長作用を、24 時間連続的に調べることができ
や、ソタロール以外の薬剤による QT 間隔延長作用
た。テレメトリー試験は、医薬品開発初期のスクリー
の検討などを行い、当研究所におけるテレメトリー試
ニング試験として、また副作用予測のための有効な
験体制の強化を図る予定である。
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オベリスク Vol.15,1 June 2010
マウス・ラット・サルの睡眠ポリグラフ測定・解析
„ サル の テレメトリ−システム
„ サル 睡眠経過図
„ マウス ・ ラット の 記録解析システム
„ 脳波電極装着
サルの調教
„ 脳波電極装着
マウス・ ラット
現代は不眠時代ともいわれ、交代制勤務、夜型若者の増加、社会的ストレスや老化による不眠などで、睡眠不足に悩む人々は
ますます増加しています。厚生労働省の睡眠調査では、日本人の5人に1人が睡眠に関する悩みを抱えていると報告されるほど
です。近年クローズアップされている睡眠時無呼吸症候群や睡眠不足に起因する事故など、人命や社会的損失にかかわる問題も
多く含まれており、これら睡眠問題の改善に、新規治療薬や治療法の開発が強く求められています。
睡眠科学研究所では、睡眠障害あるいは中枢機能障害をターゲットとした新規治療薬の開発に貢献するため、洗練された脳波
の記録・解析技術をもとに、マウス・ラットおよびサルを用いた前臨床的試験研究を実施します。得られた成果をもとに、製薬企業・
関連研究機関と連携を図りながら、新規治療法や医薬品の開発をサポートします。
このほか、サルを用いた試験として、誘発電位測定による認知機能・意識レベル・知覚感覚系の評価、薬効薬理試験や安全性
薬理試験なども将来順次可能とし、小動物からサルまで一貫した前臨床的な睡眠の試験研究を目指します。
本社営業所
東京営業所
大阪営業所
TEL 0280-76-4477
TEL 03-5828-4477
TEL 06-6306-4477
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