、癒著騎』1文 思春期の慢性疾患患児の心理的特徴に関する研究 一ボディイメージの観点から一 呉大学看護学部 片山美香 論文要旨 本研究では、思春期の慢性疾患をもった患児に対して身体の各部位に対する意識度調査や、人物画テ ストを実施し、ボディイメージ、自己イメージに関する検討を行った。 その結果、てんかん群と低身長群とで疾患の種類の違いによる差異はほとんど認められず、ボディイメージの 形成には年齢や性別の影響が大きく、中学生よりも高校生の方が、男子よりも女子の方が身体意識度が高まるこ と、さらに身体部位によって得られる結果が異なる傾向が示された。一方、より無意識的な自己イメーシの測定が 可能となる人物画テストからは、患児たちの漠然とした不安や、自信のなさがよみとれ、慢性の疾患をもつことに よる心理的な影響が示唆された。(「看護学統合研究」 1巻1号 p.68∼74 平成11年〉 キーワード:思春期、慢性疾患患児、ボディイメージ ■ 問題および目的 ていくという質的な変化が起こる時期である。それ 己イメージに及ぼす影響についてはほとんど研究 されていないのが現状である。長期にわたって病気 とつきあっていくことを余儀なくされる思春期の 子どもたちのQualityoflifeを高めるためには、彼 らの自己イメージが良好に保たれるよう、彼らの心 身の発達をも考慮する必要があると考える。 にともなって、自分自身の視点が自己の身体、さら そこで、本研究では、思春期という微妙な年代の には自己の内面に向く契機となる。自己の身体に対 子どもたちが慢性の疾患とうまくつきあいつつ、精 するポジティブまたはネガティブな感情、あるいは 神的健康を維持・増進するための適切ななケアのあ 自己の身体についてもっているイメージと定義で きるボディイメージは、自己概念の一部であり、思 り方について考えるに際して、患児の心理的特徴に 焦点をあて、彼らが自分自身に対して抱くボディイ 春期にいっそう明確になると考えられているD。 メージの観点から検討することを目的とする。 思春期は生涯のなかで最も身体的変化の大きい 時期であり、それまでの身長や体重の増加といった 量的な変化から、より性的に成熟した身体を獲得し 思春期の身体の変化への気づきは、自分自身に対 する認識、あるいは他者と自己とを比較して導き出 ■ 方 法 される自己認識でもあり、必ずしも客観的な変化へ の気づきであるとは限らず、極めて主観的な要素を る。自己の身体に慢性の疾患のある思春期の子ども 1.調査対象者 1998年の夏休みを利用して小児科外来を受診し た患児とその保護者に、主治医から調査への協力を 依頼してもらい、双方から同意を得られた場合の患 たちはなおさらであろうと推察される。しかしなが 児に調査を実施した。その内訳は、てんかんと診断 らこれまでの研究では、自己のボディイメージが自 された中学生33名(男子14名、女子19名)および高校 含むものである2>。 病気になると自己の身体はますます意識化され かたやま みか 〒737−0く)04呉市阿賀南2−10−3 呉大学看護学部 一68一 思春期慢性疾患患児の心理的特徴に関する研究 生30名(男子16名、女子14名)、低身長と診断された な人でもいいので、人を一人、全身を描いて下さい」 中学生33名(男子18名、女子15名)および高校生1!名 という教示のもとに実施した。 (男子10名、女子1名)計107名(男子58名、女子49名) さらに両調査の終了後、可能な限り、病気による 生活上の制限の有無、病気のことが気になることが である。 あるかどうかなどに関する簡 顔の大きさ 単な聴き取り調査を行った。 藤驚鞠礁緊携≧整紺 ■ 結果および考察 榊 』へ\〕ど、 !/〆 〆’蒋 lまゆ毛 足首F\’、 、、羅㌧ 下肢灘 藷斜あご 隔章男司 収集したデータの有効回答 ・・壱一高校男子 率は100%であった。結果の処 1一・・高曝子 理は、分析対象をてんかんの中 L骨一中学女子 e、 太ももXl吻・1 ・〆、☆額 手首・ ・窺\〆/苓耳 学生男・女、高校生男・女、およ び低身長の中学生男・女、高校 〆/■’ / / 手腕灘ン、,業 生男・女の8群に分けて比較検 ヒッ ゲ’ ウエスト 討を行った。 お腹 ■ 身体の各部位に対する意 識度 Figure1てんかん群のボディイメージ調査結果 疾患別に身体の部位ごとの 意識度について平均値を算出した結果をグラフ化 2.言周査内容 したのが、図1および図2である。 ボディイメージ質問紙調査は、Thompson3)の研 究を参考に「身体の各部位に対する意識度24項目」 結果の処理にあたって、2(疾患の種類)×2(年齢) ×2(性)の3要因分散分析を行ったところ、「肌」で と「自分の身体や健康に対する意識度12項目」で構 年齢の主効果(F(、,1、、、〉一14・07,p<・001)と・疾患の種類 成した。前者の質問項目に対しては「全く気になら と年齢の交互作用(F(1,ム,,、)=5。17,p<。05)に有意差が認 ない:1点∼いつも気になる:5点」の5件法(5点満点) められた。さらに、年齢別に疾患の種類による検定 で回答を求めた。ここでは、得点が高いほど,より各 を行ったところ、高校生では低身長群の方がてんか 身体部位への意識度が高いことを意味する。後者の ん群よりも、低身長群では中学生よりも高校生の方 質間に対しては「全くあてはまら ない:1点∼どちらともいえない=3 顔の大きさ 点∼とてもあてはまる:5点」の5 髪の毛 件法(5点満点)で回答を求めた。こ 筋肉の状態 こでは、得点が高いほど,よりその 足(足首から先) ’ 質問項目の内容を肯定しているこ 足首 1・l とを意味する。さらに、質問紙の最 後のページには、係りや委員会の 、鼻 ロ(唇やロの大きさ) N\ \ ・:劔篇 \ 、、A㍉ 這1 l 一 下肢 麺アイあご 太も賠噸/ ノ ヅ )額 ’.パ 有無、クラブ活動の有無などの学 ノ ヘ ノ 校生活に関する項目や現在の自分 、ン耳 の身長と体重を記載する項目など ,くス草 を設けた。 エスト お腹 続いて実施した人物画テスト (Draw A Person Test=DAP)4・5) は、A4用紙1枚と2Bの鉛筆と消し ゴムを渡し、制限時間なしで「どん Figure2低身長群のボディイメージ調査結果 一69一 犀中学男司 1一昏・中学劉 1一鳶一・高校男子 高校女子」 『g一 ⊥、 思春期慢性疾患患児の心理的特徴に関する研究 が「肌」に対する意識度が高いことが示された。「髪の 毛」では、性の主効果(F(1,1〔)且)=5.33,p<。05)と疾患の種 類と年齢の交互作用(F(、,、,、、)=5・54,p〈・05)が有意で あった。さらに分析したところ、男子よりも女子の 方が、高校生ではてんかん群よりも低身長群の方 が、低身長群では中学生よりも高校生の方が「髪の 第二次性徴の発現によって全体的に丸みを帯びて くるという身体つきの変化に起因する結果である と同時に、年齢が上がるとともに、他者から自分が どう見えるかといった外見的な見えの部分に意識 が高まるためであるとも考えられる。 毛」に対する意識度が高いことが示された。「まゆ毛」 1.自分の身体や健康に対する意識度 では、疾患の種類、年齢、性の主効果(F(、,、(,、) 自分の身体や健康に対する意識度について、2(疾 =5。63,p<。05) (F(1,1()1)=6,89,p<。05) (F(1.1(〕1) =10.91,p<.005)、および疾患の種類と性の交互作用 患の種類)×2(年齢)×2(性)の3要因分散分析を 行ったところ、「公共の場に出かける前にはいつも (F(1,101)=465,p<。05)に有意差が認められ、てんかん 自分がどう見えるか気になる」という項目に関し 群よりも低身長群の方が、中学生よりも高校生の方 て、年齢の主効果が有意であり(F(1,1(》1)=7。15,p<.01)、 が、男子よりも女子の方が意識度が高いことが示さ れた。「足首」では疾患の種類と年齢の主効果が有意 中学生よりも高校生の方が他者から自分がどう見 えるかといった他者の目にうつる自己像について 意識度が高まるという結果が示された。 であり(F(1,1〔〕[)=7,08,p<。05)(F(1,i〔)1)=17.85,p〈。001)、 てんかん群よりも低身長群の方が、中学生よりも高 校生の方が意識度が高かった。「足(足首から先)」で は、年齢の主効果が有意であり(F ぐきロしのヒン 「ちょっとした体重の変動でもとても気にかか る」という項目では、年齢の主効果が有意であり(F (1.1(〕D=15.03,p〈.001)、性に有意傾向(F(1,1〔)[) =9.93,p<。005)、中学生よりも高校生の方がより意 =3.2,p<.10)が見られ、中学生よりも高校生の方が、 識していることが示された。「額」では、年齢および性 男子よりも女子の方が体重の変動に敏感であるこ の主効果が有意であり(F(1.1〔)1〉累4.44,p〈.05)(F(、,[()1) とが示された。 =5.06,p<.05)、中学生よりも高校生の方が、男子より 「自分の体格が好きでない」という項目に関して も女子の方が意識度が高かった。「手」では、年齢の主 は、統計的に有意な差異は認められなかった。 効果に有意差が認められ(F(、.、〔、,)=5。3,p<。05)、中学生 「自分の身体的健康のちょっとした変化にきちん よりも高校生の方が意識度が高かった。「ウエスト」 と気づいている」という項目に関しては、年齢の主 では、年齢および性の主効果が有意であり(F(、,、、、、) 効果に有意差が認められ(F(1,、,,、)=4。02,p<,05)、年齢 =23.61,p<,005)(F(1,lol〉一7。41,p<,01)、中学生よりも が上がるとともに自分の体調をきちんと把握する ことが出来るようになってくることが示唆された。 高校生の方が、男子よりも女子の方が意識度が高 かった。「お腹」では、年齢の主効果(F(、,、、,、) =13.63,pく.001)、および疾患の種類と性との交互作 2.クラブ活動への参加状況 用に有意差(F(1,、(、、)=3,97p<。05)が認められ、中学生 クラブ活動への参加状況について、疾患別に運動 よりも高校生の方が、てんかん群では女子よりも男 クラブ、文化クラブ、無所属に分類し、クラブヘの入 子の方が、低身長群では男子よりも女子の方がより 部の割合を図3および図4に示した。運動部への所属 意識していた。「ヒップ」では、年齢および性の主効果 は、すべての群において、てんかん群よりも低身長 (F(【,1(〕[)三25.8,p<.001)(F(【,[〔)1)=9。1,p<。005)、および 群の患児に多い傾向が認められた。各群ともに運動 疾患の種類と性の交互作用(F(、,、、、、〉=4。1,p〈。05)に有 制限はほとんどなされていないというインタ 意差が認められ、中学生よりも高校生の方が、男子 ビューでの聴取内容からすると、低身長群は、自分 よりも女子の方が、てんかん群では男子の方が、低 なりに身体を鍛え、背の低さを補完しようと努力し 身長群では女子の方が意識度が高かった。「太股」で ているのではないかと推察される。一方、てんかん は、年齢の主効果に有意差があり(F 群は、医師からは特に病状の悪さを指摘されていな =13。32,p<.001)、中学生よりも高校生の方がより意 いにもかかわらず、自分の病気に対して不安を抱い 識していることが示された。 ている患児が比較的多かったことから、特に運動制 以上のことから、身体部位への意識度(ボディイ 限はされていなくても、自分では予測できない発作 メージ)には疾患の種類よりも年齢や性別による影 の出現を気にして、自分の行動に慎重になっている 響が大きく、さらに男子よりも女子の方が意識度が のではないかと考えられる。 ヱドロロラ 高い傾向が示唆された。これは、とくに女子の場合、 一70一 思春期慢性疾患患児の心理的特徴に関する研究 4.病気のことで気になること 100% てんかん群では、男女ともに 一挿蕪所颪 樽文化部 80% 漫運朗紅 60% 「自分が病気であることを友だ ちに知られたくない」「いつ倒 れるかわからないので心配」 「薬を飲むのが面倒」などを挙 入部率 げ、男子のなかに「ファミコン 40% をあまりしない方がいいと言 われているので、友だちと…緒 20% に遊べないのがイヤだ」「将来、 自動車の運転免許が取れない 0% 中学男子 中学女子 高校男子 高校女子 と言われているので楽しみが Figure3てんかん群のクラブヘの参加状況 ない」といった意見を述べる者 があった。友だちとの関係につ いて、女子の場合は「仲の良い 友だちには病気のことを話し 100% 90% 80%ト ているので、自分が突然調子が 旧蕪所颪 70%L 6・%! 1!■文化部i 撫運動蟄 入部率 50%1 40%r 30%r が、男子の場合は「仲の良い友 だちにも病気のことはあまり 知られたくない」という意見が 多く、そのうち「親友に病気の 20% 10%」 O%L一 中学男子 悪くなっても助けてくれると 思う」という意見が多かった ことだけを隠しているので、も 一i ! のすごく罪悪感を感じている」 という意見も出された。ここ 中学女子 高校男子 高校女子 に、男女間で病気をめぐる友だ ちとの関係の持ち方に違いが Figure4 低身長群のクラブヘの参加状況 存在し、女子の場合には病気で 3.BM l 疾患別に体格の平均値を算出した。身長について ある自分の秘密を打ち明けることによって親和性 がより高まる一方、男子の場合は病気であることは は、低身長群のほとんどが同年齢児の平均値より 触れられたくない事実として存在する可能性が示 も一2SD以上低いことが特徴であることもあって、 てんかん群の平均値の方が高かった。体重(kg)を身 長(m)の2乗で割って算出したBM I(body mass index)を疾患別に示したのが、表1および表2であ る。米連邦政府が示した新たなガイドライン6)によ る正常値は18.5∼24.9であることからすると、最低 Table1てんかん群の体格平均値 kg BMI cm 162.7 54.16 20.46 子 153.6 49.62 21.03 。父 子 騨父 子 169.9 60.17 20.79 158.1 51.36 20.53 :子 子 値の低身長群の中学男子は「やせ」の領域に入り、そ れ以外の群は正常値の範囲内に入るもののやや低 めの値となっており、とくに低身長群はてんかん群 に比べてやせ気味であることが示唆された。低身長 群へのインタビューでは「今、伸びつつあるから」「前 よりだいぶ伸びてきたから」など自分の現在の体格 を肯定的に受けとめる回答をしてお1)、今後の身長 の伸びへの期待が大きいことがうかがわれた。 一71一 Table2低身長群の体格平均値 kg BMI cm 子 子 子 子 目 子 。父女子 146.7 38.49 17.81 148.21 41.22 18.71 51.6 46.8 19.85 160.8 152.6 20.1 思春期慢性疾患患児の心理的特徴に関する研究 唆された、、思春期は自分によって重要な友だちをつ らは自信のなさがうかがわれる。また、目、鼻、口の描 くることが発達課題として掲げられていることか かれていない顔からは描き手自身のアイデンティ らすると、このように病気を介した仲問とのかかわ ティの不確実さや現実を直視できない様が、また、手 りの質的な内容が患 を身体の後ろにまわしていたり、一度描いた足を消 しているところなどからは、環境 撫 イ娩、 に自ら積極的にはたらきかけるこ とをせず、臆病な様が推察される。 図7は、低身長の中3男子の描 画である。まったく年齢、性別とも に不詳な人物だそうだが、きつく 結んだ口からは不満に耐えている 様が、瞳が描かれていないところ からは現実が直視出来ない状態で あることが見て取れる。また、全身 を描くよう教示したにもかかわら ず、このように身体の一部しか描 けないというところからは、自己 のボディイメージがきちんと獲得 図5 図6 児の発達においてどのような影響をもたらすのか について十分検討する必要があると考えられる。 低身長群では、男女ともに「背がどのくらい伸び されていない可能性も示唆された。 図8は、低身長の中2女子が描いた描画である。小 学5年生の弟を描いたということであるが、人物画 るか気になる」「自分で注射をする のがイヤ」という意見が多かった。 また、女子のなかに「洋服を買いに 行っても自分に合うサイズがな い」「スタイルが良くないので何を 着ても似合わない」といった自分 の外見を意識したうえでのややネ ガティブな意見が挙げられた。 5.人物画テスト 特徴的な人物画を中心に、それ 1 1 ぞれの疾患をもった子どもの心 理的特徴について考察を加える。 図5は、てんかんの中1男子が描 いた描画である。年齢不詳の男の 図7 図8 子を描いたということだが、人物画サイズは小さ サイズが大きすぎて、紙面からはみ出ているところ く、筆圧も弱い。さらに、きれぎれの線で描かれてい からは現実吟味力の曖昧さとともに、自我肥大傾向 の存在も示唆されよう。また、後ろにまわした手から ることから全般的に不安があり、自信のなさが見て 取れる描画である。また、人物画が左上隅に位置し は現実に積極的に対処していく力の不十分さが、足 ているところからは、非常に受け身的なスタンスで が途中で途切れて描かれていないところからは行動 日常生活をおくっている可能性が示唆される。 化できないでいる様子が見て取れる。 図6は、てんかんの中3女子が描いた描画であ 以上の描画からは、患児が自信のなさや漠然とし る。本人よりも2歳年 ヒの女の子を描いたというこ とだが、筆圧が弱く、複数線で描いているところか た不安感を抱いている可能性が示唆された。これが 慢性の疾患をもつことに起因するのか、思春期とい 一72一 思春期の慢性疾患患児の心理的特徴に関する研究 う年齢段階特有の心理的な特徴に起因しているの える要因は、疾患の種類よりも年齢や性別による違 かについて明らかにするためにはさらなる検討が いの方が顕著であった。この点について、今後さら 必要であると考える。 に対象群との比較を行い、思春期特有の特徴である のか、疾患の有無による違いが認められるのかどう ■ まとめと今後の課題 かについて検討を加える必要があると考える。 また、病気のことで気になることがあるかどうか 本研究において、ボディイメージの形成に影響を に関するインタビューの中で、てんかん群の男子が 及ぼす各身体部位への意識度の相違は、疾患の種類 自分が病気であることをなかなかうち明けられず、 よりも年齢や性別の要因の方が大きく、中学生より 友だちとの関係にやや問題を感じている結果が示 も高校生の方が、男子よりも女子の方が各身体部位 されたが、このことについてはWolman【())らの調査 への意識度が高く、自分の身体や健康に関して敏感 においても同様に、慢性疾患群の男子が健常群より であることが示唆された。 も仲間関係についで1歯みをもっているという報告 従来のボディイメージの研究から、思春期にはボ がなされている。これは、慢性の疾患をもつことが ディイメージがself−esteemを構成する重要な要因 作用して二次的に心理社会的な問題をも抱える可 能性が示唆されたこととなり、彼らへの適切な支援 であり7)8)、さらにself−esteemの高低が自己イメー ジの形成にも影響することが指摘されている9)。本 についての知見を得るためにもさらなる検討が必 調査の項目としたそれぞれの身体部位に対する意 識度に関して、さらに肯定度を含めた評価基準を設 定することによって、よりself−esteemとの関連が 明らかになることが予想される。今後は、この点に 要であると考える。今後は、患児が自分の病気をど ついて対象群との比較検討を行い、慢性の病気を もっていることが自己イメージの形成にどのよう な影響を及ぼすかについてさらなる検討を加えた 較しながら慢性の疾患をもつことが患児のこころ にどのような影響を及ぼすのかについてさらなる 検討を行っていく予定である。 のように理解し、どのくらい受容しているかといっ た自分の病気に対する認知度とボディイメージ、さ らには自己イメージとの関係について、対象群と比 いo また、Wolmanらlo)は、慢性の疾患をもつ中1から 謝 辞 高3までの男女1683名と同年齢の健康な子ども 本研究の調査にあたりまして、多大なるご協力をいただ 1650名を対象に慢性疾患がボディイメージに及ぼ す影響に関する調査を行っているが、この結果で 生、広島赤十字・原爆病院小児科部長 西 美和先生、およ は、慢性疾患群は健常群よりもネガティブなボディ び、患児の皆さんと保護者の方に心より御礼申し上げま イメージをもっていることが報告されている。しか す。また、本研究をすすめるにあたりご指導いただきまし しながら、年齢や性による差異については言及され た広島大学教育学部 松橋有子教授に深謝致します。 きました社会保険広島市民病院小児科部長 岡崎富男先 ていない。本調査では、ボディイメージに影響を与 文献 1)齊藤誠一=自分の身体・性とのつきあい.落合良行,楠見孝(編).講座生涯発達心理学一4 自己への 問い直し青年期.東京:金子書房,23∼56,1995. 2)山口俊郎=身体図式の発達とその障害.梶田叡一一(編).自己意識の発達心理学.東京:金子書房,266 ∼288,1989。 3)Thompson,J。K.:Body image disturbance,1st.USA:Pergamon Press 1990 4)日比裕泰=人物描画法一絵に見る知能と性格一. 第一版.京都=ナカニシヤ出版 1994 5)高橋雅春,高橋依子;人物画テスト.東京二文教書院 1991 6)MedicalTribune.:日本アクセル・シュプリンガー出版株式会 31(51):15,1998. 7)Carol G,1ris F:Adolescent attitude toward body image and anorexic behavior.Adolescencθ,2!:269−281,1986. 8)Zakin F,Blyth A,Simmons D:Physical attractiveness as a mediator of the impact of early 一73一 思春期慢性疾患患児の心理的特徴に関する研究 pubertal changes for girls.10ロrnal of yiou亡力Ado1θscenoθ,13=439−450,1984. 9)梶田叡一:自意識の心理学.東京大学出版会,1988. 10)Wolman C,Resnick,M.D.,Harris,L.J.,and Blum,R.M.=Emotionalwell−being among adolescents with and without chronic conditions./0ロmalof 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