ここをクリック! - 缶詰技術研究会

CONTENTS
「王府井」北京(中国) KT
随 想
アルザスの四季… …………………………………………………… <髙木麻紀子>… 592
シリーズ解説 日本の伝統食品(第7回)
納豆… …………………………………………………………………………
<林 清>… 594
シリーズ解説 果実とその加工品の話(第13回)
果実・果汁飲料と機能性成分(11)
果実(ブドウ,スモモなど)の機能性 −アントシアニンを中心に−
…………………………………………………………… <寺原典彦>… 600
風水樹花徒然記☆11:ヨーロッパの大河を旅する… …………………… <大場秀章>… 607
「海外に見る容器包装最新事情」(第1回)
包装の主流になった軟包装でイメージ一新を図る大手ブランドメーカー
…………………………………………………………… <有田俊雄>… 610
海外技術・マーケット情報
フードトレンド・トップ10(2)………………………………………………………………614
炭酸飲料の課題と進化…………………………………………………………………………617
食品安全強化法 (FSMA) 対応のための5つのキーワード…………………………………620
オメガ脂肪酸の利点と飲料への適用…………………………………………………………622
昔ながらのコンフォート食品…………………………………………………………………624
クリーンラベル製品戦略のアプローチ………………………………………………………627
食中毒細菌を殺すバクテリオファージに注目………………………………………………630
過熱蒸気を利用した乾燥と滅菌………………………………………………………………633
業界トピックス:日本茶飲料市場,緑茶飲料が復調…………………………………………… 635
特別解説:野生動物肉の加工技術 〜血絞りと解凍について〜………… <坂田亮一>… 636
特別レポート:日本における清涼飲料,ビール系酒類市場
─平成25年の7,
8月を振り返って─
………………………………………… <醸造産業新聞社 編集部>… 640
業界の話題…………………………………………………………………………………………… 644
今月の統計…………………………………………………………………………………………… 648
最近の技術雑誌から………………………………………………………………………………… 650
野菜・果物を巡って(第五十八話) パッションフルーツジュースの魅力
… …………………………………………………… <吉田企世子>… 655
缶詰技術研究会 http://kangiken.net/
随想
で素朴な味
わ い だ が,
アルザスの四季
たか ぎ
ま
き
珍しい子羊
の 型 に は,
こ
ユダヤ教の
髙木麻紀子
「過ぎ越し
(東京藝術大学美術学部教育研究助手)
の祭」の際
フランス北東部に位置するアルザス地方の特色
に羊を食べ
は,何と言ってもその地理的状況にある。東部を
る習慣に由
縦断するライン河を渡ればすぐにドイツで,緑
来するとい
深いシュヴァルツヴァルト(独語で「黒い森」の意)
う説と,キリストを象徴する「神の仔羊」に由来
が広がり,一方,北部に聳えるジュラ山脈はスイ
するという説があるらしい。カトリック教徒の多
スまで続いている。かつてはケルト人が住んでい
いフランスでは,復活祭はクリスマスと共に重要
たというこの土地はまさにヨーロッパの「十字路」
なイヴェントなのだが,例え敬虔な信徒でないと
であり,様々な民族が行き来した末にようやくフ
しても,主の復活を祝う心は,すなわち自然が再
ランス領に落ち着いたのは世界大戦終焉間近の
び命を吹き返すこの季節への喜びでもあるのだと,
1944年のことであった。こうした背景はこの土
この土地に住んで初めて体感できたように思う。
地に独自の文化を育ませ,古くからの住人アルザ
街路樹の緑が濃くなり,日差しが強くなりはじ
ス人が話す言葉ひとつとっても,独語とも仏語と
めると登場するのが,クエッチ(Quetsche)や
も異なり,あるいはそのあいのこのようでもある。
ルバーブのタルトである。アルザスは果物の名産
ストラスブールはアルザスの中心都市で,ロー
地としても有名で,ワイン用のぶどうはもちろん
アニョー・パスカルはしばしば
粉砂糖でお化粧されている。 マ帝国の時代から交通の要所として栄えた街であ
のこと,他にも珍しい果物を味わうことができる。
る。筆者はこの街の大学で約2年間美術史を学ん
そのひとつのクエッチは西洋スモモの一種で,皮
だ。ストラスブールを含めアルザスは盆地で,夏
ごと食べて
は思いのほか暑く冬はしんしんと冷えるのだが,
も甘酸っぱ
こうした気候が街に四季折々の豊かな表情をあた
くて美味し
え,そこにアルザスの郷
いし,ジャ
土菓子がさらなる彩りを
ムやタルト
添えていた。ここではし
にされるこ
ばし,ドイツ風でありな
と も 多 い。
がらフランス風でもある,
ルバーブは
そんなこの土地ならでは
大きく広
のユニークなお菓子をお
がった葉と
供にしてアルザスの四季
フキのよう
を追ってみたい。
な太い葉柄からなるタデ科の植物で,最近でこそ
友人の母お手製のルバーブのタルトに
バニラアイスを添えて。 鈍色の冬が緩みはじめ
日本でも見かけるが,筆者にとってはフランス人
る頃,アルザスの小さな
宅でのお手製のタルトが初体験であった。こちら
パン屋や菓子屋には愛らしい子羊が並び始める。
もさわやかな酸味があって夏のデザートにはぴっ
アニョー・パスカル(Agneau Pascal)と呼ばれ
たりである。
ストラスブール大聖堂
る復活祭の時期にこの地方でだけ見かけるお菓子
大聖堂の前を筆頭に,夏の間,街のあちこちに
である。生地は至ってシンプルなスポンジケーキ
カラフルなテントを張っていたアイスクリーム屋
食品と容器
592
2013 VOL. 54 NO. 10
が消えはじめると,途端に秋の気配が漂う。スト
たが,ど
ラスブールにはマロニエの樹が多く,栗によく
うやらア
似た艶のある栃の実が道端に転がっていた。夕
ルザス人
方,美術史の授業が開講されるパレ・ユニベル
は幼い頃
シテ(ネオ・ルネサンス様式のまさに「Palais
からワイ
(城)」のような校舎で,普仏戦争後,アルザスが
ンを嗜ん
ドイツ帝国領だった時代に建てられたと建築史の
でいるよ
先生が話していた)を出ると,もうとっぷり日が
うだった。
暮れていて,なんだか気持ちが焦ってしまったこ
華やか
とがあったが,アルザスの冬はこうして突然始ま
なクリス
りそしてひたすら長い。ただ,この土地で暮らし
マス,新
てきた人々の知恵と思うのだが,冬のアルザス菓
年のソル
子は種類も豊富で,家で過ごす時間を楽しくして
ドが終わると街は急に静寂に包まれる。普段は観
くれる。サンタクロースのモデルと言われる聖ニ
光客で賑わう大聖堂前の広場でさえ閑散とする
コラの祝日が近づくと登場するジンジャーマン
が,コロンバージュと称される古い木組みの家の
のような人型のミルクパン(「マナラ(Manala)」
屋根に粉雪が降り積もる様子は,まるで粉砂糖で
や「サン・ニコラ(Saint Nicolas)」と呼ばれて
お化粧されたお菓子のようで,いつか見た絵本の
いた),冬の保存食としても重宝しそうな香辛料
中へ迷い込んだかのような錯覚を覚えた。なるほ
と蜂蜜がたっぷり入ったいかにもドイツらしい
ど,ヘンゼルとグレーテルがお菓子の家を見つけ
どっしりとした味わいのケーキ「パン・デピス
た森はアルザスの森らしい。暖房の入った図書館
(Pain d’épis)」,各家にレシピが伝わるクリスマ
で試験勉強に勤しむ学生達も,ヴァン・ショーを
スのクッキー「ブレデル(Bredele)」。特にブレ
片手にカフェでおしゃべりに夢中になるマダム達
デルは味も型も様々で,シナモンやカルダモンが
も,再び春がめぐってくるのを待ちわびていた。
ぴりっと効いたもの,クルミ入りのもの,アルザ
論文審査が終わり帰国した直後は,これでしば
スの果物のジャムが間に挟まったものと眺めてい
らくアルザスはいいかな,などと思っていた。井
るだけでも飽きない。寒さは厳しいが,街中に溢
の中の蛙ではないけれど,現地の洗礼はなかなか
れるクリ
に厳しく,気高く空へとのびる大聖堂の姿と共に
スマス市
立ち上がる記憶がなんとなく足を遠ざけた。よう
の灯りを
やく最近になり,特異な軌跡を辿ってきたあの土
見ると心
地の文化や郷土料理をもう一度,今度は少し余裕
が温まり,
をもって味わいたいと思えるようになってきてい
ヴ ァ ン・
る。須賀敦子さんが残した,アルザスを核として
シ ョ ー
展開されるはずだった未完の小説の一節が思い浮
パ
レ
かぶ。
(スパイ
アルザスのブレデルは形も味も様々。
スの効い
た 甘 い
「手入れのゆきとどいたぶどう畑を,ただ美し
ホットワイン)の屋台が体も温めてくれる。スト
ラスブールの屋台では,ヴァン・ショーと一緒に,
シードルやビール,さらにはノンアルコールのオ
いと思うだけで通り過ぎたあの道を,もういちど
歩いたら,あのときには見えなかった大切なもの
がみつけられるかもしれない。」
レンジジュースやリンゴジュースも煮詰めて売ら
須賀敦子「アルザスの曲がりくねった道」(未定稿)より
れているので,これなら子供にも安心と思ってい
食品と容器
クリスマス市のヴァン・ショーの屋台。
プレッツェルやベニエも一緒に売られ
ている。 (カラー写真を HP に掲載 C060 ~ C064)
593
2013 VOL. 54 NO. 10
◆ 第7回 ◆
❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品
納 豆
は や し・ き よ し
名古屋大学農学部卒業。
(独)農研機構 食品総
合研究所所長を経て,
現在,東洋大学食環境
科学部学部長,健康栄
養学科教授。
林 清
農学博士
◆1.納豆とは◆
ことから,多量の細菌を生きたまま,さらに耐熱
今日の納豆は通常,「糸引き納豆」をさし,蒸
性の芽胞が存在したまま摂取するという,特異な
した大豆に納豆菌を繁殖させた発酵食品である。
食品でもある。
通常の発酵食品は,数カ月から数年間にわたり発
総務省統計局の家計調査によると,1世帯あた
酵・熟成させた保存食品であるが,納豆菌(細
りの納豆の支出金額(平成24年)は,最も高い
菌)による発酵期間は1日ときわめて短く,発酵
のが東北地方4,786円,次いで関東地方3,949円
が過度に進行しないよう低温流通しており,納豆
で,最も少ないのは沖縄地方2,274円と,国内各
は保存食品で
地域での納豆消費量の差は縮まっており,全国で
はなく生鮮食
まんべんなく消費されている。なお,消費量日本
品である。一
一は福島県であり,生産量日本一は茨城県である。
般に,細菌の
水戸駅には納豆記念碑が建立された(写真1)。
ほうが酵母や
写真1 納豆記念碑
平成 20 年の納豆の日(7月 10 日),わら
の素材感や納豆粒をデフォルメした記念碑
の除幕式がJR水戸駅にて行われた。納豆
本体は高さ 1.9m 幅 0.6m であり,台座を
含めると高さ 2.4m となり人間より大きい。
(カラー写真を HP に掲載 C065)
食品と容器
カビよりも短
◆2.歴史◆
時間で繁殖す
納豆の原料である大豆は縄文時代後期中頃に
ることに加え,
中国東北部から朝鮮半島を経由し伝来した。一
微生物の繁殖
方,納豆菌は通常の稲わらに存在していることか
に抑制的に作
ら,縄文時代後期中頃には納豆を製造する原料が
用する塩分を
そろっており,かなり古くより食されていたと推
納豆では全く
察される。
使用していな
また,「納豆」という語句が確認できる最古の
いため,短時
書物は11世紀半ばの『新猿楽記』であり,「腐水
間で発酵が完
葱香疾大根舂塩辛納豆」という記述がある。この
了する。また, 「納豆」が現代の「糸引き納豆」であるのか,調
納豆は加熱せ
味料としての「塩辛納豆」であるのかは定かでは
ずに食される
ない。
594
2013 VOL. 54 NO. 10
◆
納 豆
り,旨みが増強される。納豆発祥の地ともいわれ
◆3.納豆の種類◆
ている秋田県での消費量が多い。
「干納豆」
「塩辛納豆,浜納豆,大徳寺納豆」
調味した納豆を干し上げたものである。干すこ
納豆とあるが,粘りを生ずる納豆菌ではなく
こうじ
しゅこう
麹 菌を用いて発酵させたのち,乾燥・熟成させ
とにより納豆の旨みが凝縮されており,酒肴や茶
たものであり,風味としては味噌に近い。中国か
うけとして,素朴な風味が好まれている。茨城の
ら日本に伝来した当初は「豉」と呼ばれ,調味料
名産品である。
そ
し
「そぼろ納豆」
として用いられた。寺でも盛んに生産したことか
茨城エリアを中心として昔から親しまれている
ら,寺納豆とも呼ばれるようになった。京都のお
寺で作られていた塩辛納豆のうちでも,大徳寺門
郷土食であり,醤油漬け風の割り干し大根のパリ
前で生産されていたものが「大徳寺納豆」であり,
パリした食感と,納豆の組み合わせが特徴である。
浜名湖畔のお寺などに伝わり「浜納豆」となった。
「納豆もち」
納豆発祥の地ともいわれている京都の京北地域
この他,「天竜寺納豆」,「一休寺納豆」などがあ
る。黒褐色の大豆粒大で,しっとり,ポロポロと
で正月三が日に食されている。もちを焼いて塩を
しており,味噌のような味わいが特徴で,旨みが
加え練った納豆をくるんだり,白もち,とちもち,
豊富で塩辛く,日持ちする保存食品である。
よもぎもちを練り合わせ,納豆に黒砂糖をまぶし
「丸大豆納豆(糸引き納豆)」
てつくる。すぐには食べず,発酵させ納豆と塩味
の染みこんだもちを焼いて焦がすと香ばしく,美
大豆を丸ごと煮て納豆菌で発酵させた一番ポ
ピュラーな納豆である。使用する大豆には,大粒,
中粒,小粒,極小粒があるが,小粒が好まれてい
味とされている。
「世界の納豆類似品」
我が国の「糸引き納豆」と同様な食品は,世界
る。なお,糸引き納豆には,丸大豆納豆,五斗納
には存在しない。存在したとしても,我が国の納
豆,ひきわり納豆が含まれる。
「雪割納豆,五斗納豆」
豆がその起源となっている。しかし,大豆を原
大豆の皮をとって2つに割り製造した納豆に,
料に発酵させた,納豆に似た食品は,ネパール,
塩と麹菌を混ぜ時間をかけ熟成させたものであり,
ブータン,インド,中国雲南省,ベトナム,韓国
外見は納豆というより味噌のようである。塩分も
などの東南アジア地域に見られる。タイ・ラオス
強く,普通の糸引き納豆のようにごはんにかけて
では納豆菌と同種類の菌を用いて「トゥアナオ」
食べるというよりも,塩辛である。古くは「五斗
という円板状の加工食品を作り,そのまま火であ
納豆」であったが塩分が強すぎることから,塩
ぶっておかずとしたり,調味料として使用してい
分を減らしたものが「雪割納豆」である。なお,
る。また,インドネシアのテンペも納豆様食品で
「五斗納豆」は大きな「五斗瓶(約90リットル)」
ある。テンペは,発酵に用いる微生物がクモノス
で作ったことに由来して名付けられたといわれて
カビの一種であることや,糸を引かないなどの違
いる。福島県の名産品である。
いもあるが,発酵が24時間と短時間であること
「ひきわり納豆」
や,大豆の食感が残っていることなど,類似点も
ある。
丸の大豆を半分に割ったもの,6〜8等分に
割ったもの,さらに細かく15等分ぐらいに割っ
なお,大豆の原産地は中国東北部からシベリア
たものを原料に,製造した納豆である。細かくす
といわれており,ヨーロッパには18世紀,アメ
るほど,大豆と納豆菌の接触面積が増大するため,
リカには19世紀に伝わった。そのため,大豆を
納豆菌の酵素がより強く作用し,柔らかくなった
原料とする発酵食品は,ヨーロッパやアメリカに
食品と容器
595
2013 VOL. 54 NO. 10
◆
❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品
かく,しかも比較的短時間で完了するが,豆を完
は存在しない。
全に水に浸して煮ることから豆の成分が多量に溶
◆4.納豆の製造方法と食べ方1~3)◆
出し,大豆表皮の破裂による豆の割れも生じ易い
という欠点があり,現在,納豆製造において水煮
商品となった納豆は糸を引き,取り扱いにくい
は行われていない。
が,納豆製造においては糸を引かない状態でパッ
発酵は湿度90%,39℃前後で18時間程度であ
ク詰めし,パックごと発酵し,製造している。具
体的には,第1図に示すように,大豆を選別後,
る。発酵終了時に煮豆のままの外観の大豆が認
浸漬し,蒸煮した後,納豆菌を接種する。この段
められることがあり(業界では「素豆」という),
階では接種菌数が少ないことから,蒸煮大豆と全
この原因として乳酸菌も疑われたが,茨城県工業
く同様であり,糸は引かない。これを包装容器に
技術センターの試験結果では,乳酸菌よりも酸素
詰め,包装容器ごと発酵させ納豆菌を増殖させた
不足がその要因であると推察している4)。発酵時
後,冷却・熟成すると,最終商品の納豆となる。
には,納豆菌が旺盛に繁殖するため,煮豆100g
一番重要な発酵工程は,温度以外の細かい管理が
あたり約5~6リットルの空気が必要である。
できないという点が特徴でもある。納豆は,見た
納豆菌にファージ(人間には無害)が感染する
目,香り,硬さ,味,糸引き,総合評価等の項目
と,納豆菌内で増殖した後,外に出る際に納豆菌
で官能検査する。
を溶菌し死滅させる。納豆の粘り成分であるγ -
なお,浸漬時間としては室温で4時間では硬く
ポリグルタミン酸を分解する酵素も生産すること
て食べられないが,6時間で食べられる状態と
から,ファージが混入すると納豆の糸引きがなく
なり,少なくとも8時間以上の浸漬が必要であ
なり,クレームの原因となる。今のところ,この
り,通常は10時間程度浸漬する。特に重要なポ
ファージに耐性のある納豆菌は見いだされていな
イントは蒸煮であり,最終的な納豆の品質に影
いことから,生産ラインを清潔に保つ以外の手立
響を及ぼす。蒸煮条件は0.10MPa で60 ~ 90分,
てはない。
0.14MPa で45 ~ 90分,0.18MPa の45 ~ 60分
納豆は,生鮮食品でもあり,冷蔵保存が必須で
であり,蒸煮が長いと大豆が褐色となり,好まし
ある。納豆は-25℃で3カ月保存しても品質に
くない。大豆の水煮蒸煮は,豆の色を白く,軟ら
大きな変化はなく,冷凍保存が可能である。
通常は,カラシ,出し汁,ネギ
などの薬味と数回まぜ,ご飯と一
緒に食べる。まぜる回数が多いほ
ど,おいしくなるともいわれてお
り,1,000回近くまぜると大豆が
つぶれだすことや,まぜている最
中にも納豆に含まれる酵素(特に
タンパク質分解酵素)が作用する
ことなどで,混ぜすぎると最終
的にはかなり異なったものとな
る。納豆を調理して食べる方法と
しては,納豆巻き,味噌汁に入れ
第1図 納豆の製造工程 (写真は全国納豆協同組合連合会提供)
(カラー図表を HP に掲載 C066)
食品と容器
596
た納豆汁,納豆チャーハン,納豆
そば・うどん,納豆スパゲティー,
2013 VOL. 54 NO. 10
◆
納 豆
卵料理,イカ納豆,納豆豆腐,納豆カレー,納豆
安全性を個別商品ごとに国が審査し,適切な摂取
トースト,マグロ納豆,天ぷら,和え物,お好み
量が設定されている特定保健用食品があり,平成
焼き等,多彩である。
25年6月現在,1,064品目が認可されている。納
豆関連では,以下の3商品が特定保健用食品の指
◆5.納豆の健康機能◆
定を受けている。
納豆による機能性に関しては,第1表に示すよ
骨を丈夫にするためにはカルシウムが必要であ
うに,納豆菌そのものをはじめ,ネバネバ成分で
るが,カルシウムが骨にしっかりと吸着されるた
あるポリグルタミン酸,発酵により強化される各
めには,骨タンパク質(オステオカルシン)の
種ビタミン類が,美容から抗ガン,老化防止まで
作用が必要である。この骨タンパク質の働きを
非常に広範な効果があるといわれているが,科
高めるのが,ビタミン K 2であり,納豆に含まれ
学的な裏付けが十分でないものもあ
る。また,全国納豆協同組合連合会
が2013年6月に20代から60代の男女
2,000名を対象に,納豆の健康効果認
知度を調査したところ,整腸効果が
第1表 納豆による機能性
有効成分
機能(いわれているもの)
納豆菌
美容美肌,整腸,ダイエット,風邪予防
ポリグルタミン酸 美容,美肌効果
ムチン
美容,美肌効果
43% と最も高く,美容に良い(30%), ポリアミン
コレステロールを抑制する(25%), ジピコリン酸
血栓を予防する(23%)と続いた(第
2図)。
「いわゆる健康食品」とは異なり,
その保健効果を当該食品を用いたヒト
試験で科学的に検討し,その有効性・
カリウム
動脈硬化予防
風邪,インフルエンザ予防,抗菌殺菌
美容,美肌効果,高血圧予防
セレン
抗酸化作用,抗ガン効果
ビタミン B 1
中性脂肪抑制,ダイエット,疲労回復,免疫力強化
ビタミン B 2
美容,美肌,整腸,ダイエット
ビタミン E
美容,美肌,更年期,中性脂肪抑御
ビタミン K
骨元気,老化防止,抗潰瘍
第2図 納豆の健康効果の認知度(2013年全国納豆協同組合連合会調査)
2,000名を対象としたアンケート調査結果。整腸効果が43% と最も高く,美容に良い(30%),
コレステロールを抑制する(25%),血栓を予防する(23%)と続く。 食品と容器
597
2013 VOL. 54 NO. 10
◆
❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品
と菌の増殖に伴い菌体外に分泌される
γ-ポリグルタミン酸(グルタミン酸
が30 ~ 5,000個結合したもので,ネ
バネバの成分)が特定保健用食品とし
第3図 納豆で初めて特定保健用食品として認可された
有効成分メナキノン-7 て認可されている。許可された表示は
「ポリグルタミン酸を配合しています
ので,大切な骨をつくるカルシウムの
るビタミン K 2の一種(メナキノン-7,第3図)
体内への吸収を促進します。」であり,1日あた
が,オステオカルシンの働きを高め,骨の形成促
り1袋(53mg のポリグルタミン酸と200mg の
進に深く関わっていることが実証された。納豆で
カルシウムを含んでいる)が摂取目安量である。
は初めて(2002年12月)特定保健用食品として
商品名は「カルバイタル」である。
認可された。許可された表示は「本納豆は,納
この他,有効成分として血栓溶解酵素のナット
豆菌(Bacillus subtilis OUV23481)の働きによ
ウキナーゼがあり,血液をサラサラにしたり,血
り,ビタミン K 2を豊富に含み,カルシウムが骨
栓を融解する作用があるといわれている他,アン
になるのを助ける骨タンパク質(オステオカルシ
チエージングに効果を示すポリアミンが納豆に含
ン)の働きを高めるように工夫されています。
」
まれているが,これらの効果は特定保健用食品と
であり,1日あたり,1パックが目安量(1パッ
しては認められていない。また,納豆菌は病原性
ク50g,ビタミン K 2 を650 µg 以上含有)であ
大腸菌 O-157に対する予防効果があることも報
告されている。
り,商品名は「ほね元気」,
「ほね元気 ひきわ
り」,「有機栽培大豆 ほね元気」である。
◆6.今後の展望◆
「おなかの調子を整える」ことが認められた特
定保健用食品もある。納豆菌「Bacillus subtilis
納豆製造業者は納豆菌製造メーカー3社から納
K-2株」を用いて製造した納豆は,関与成分で
豆菌を購入しており,現在市販製品に用いられて
ある納豆菌 K-2株が安定した芽胞を形成し,芽
いる納豆菌は,大手が自社開発したものを除くと,
胞のまま腸内まで生きて届き,小腸の上部で芽胞
わずか3種類(「宮城野菌」「成瀬菌」「高橋菌」)
の一部が発芽する。この時,腸内の善玉菌である
しかなく,この3種類の起源は同じで特性が類似
ビフィズス菌のエサとなる菌体成分が遊離し,ビ
しているといわれている。商品の納豆には生きた
フィズス菌が増殖し,腸内環境を改善し,整腸作
菌が存在しており,独自に開発した菌であっても
用を発揮すると推察されている。腸が元気になる
競合メーカーは容易に入手できることなどから,
と,便秘の改善だけではなく代謝や免疫力が向上
新たな菌株の開発が進まなかった。他社との製品
し,美肌効果のほか,風邪やアレルギーにもなり
の差別化が困難になっていることもあり,茨城県
にくくなるといわれるなど,腸内環境の健常化
工業技術センターでは,稲わらから納豆菌を分離
は,近年注目されている。許可された表示は「こ
したところ,424株の菌株が得られ,納豆製造試
の納豆は,納豆菌 K-2株の働きにより,腸内の
験結果から,納豆製造能を有する59株の菌株を
ビフィズス菌を増やし,おなかの調子を整えます。
単離している5)。こうした新菌株は,新商品開発
お通じの気になる方に適した食品です。」であり,
に直接結びつくことから大いに期待される。
摂取目安量は1日あたり1パック(納豆50g)
である。商品名は「おなか納豆」である。
大豆の9割はアメリカ,中国,カナダなどから輸
納豆を直接ではないが,納豆菌を液体培養する
食品と容器
一方,原料の大豆に視点を移すと,納豆用原料
入しており,国産の納豆用大豆はわずかである。
598
2013 VOL. 54 NO. 10
◆
納 豆
加工業者の声を育種に反映させ,国産大豆の優位
ス)を分解できる新しい菌株等が求められている。
性を確保するため国産大豆協議会という大豆の品
既に,表皮の紅色が鮮やかな紅大豆と,目(ヘ
質評価の場が設けられており,各種の品種改良が
ソ)の部分が白いミヤギシロメを使用し,縁起が
行われている。多く流通している大豆(黄大豆)
良い紅白の納豆「紅ずきん」「雪あかり」も商品
とは異なり,表皮が,黒・茶・緑など色がついた
化され,好評である。
有色素大豆も原料として有望である。一般に,有
納豆の原料である大豆には,イソフラボンや
色素大豆は難分解性の硬い皮があり,従来の納豆
β - コングリシニン等の特定保健用食品の成分が
菌では皮を適度に分解し柔らかくできないことや,
含まれている。納豆菌の育種・改良とあいまって,
糸引きが悪い。これらを克服する必要があり,硬
納豆の健康機能が一層強化され,我が国特有の納
い皮(セルロース,キシランなどのヘミセルロー
豆が世界に広まることが期待される。
参 考 文 献
1)納豆の研究法,永井利郎他著,恒星社厚生閣,2010
影響-,茨城県工業技術センター研究報告,28,88
2)納豆の科学(最新情報による総合的考察),木内 幹他
(1999)
著,建帛社,2008
5)Kubo Y, Rooney AP, Tsukakoshi Y, Nakagawa R,
3)納豆の快楽,小泉武夫著,講談社,2006
Hasegawa H, Kimura K., Appl Environ Microbiol., 77,
4)長 谷川裕正,納豆発酵不良原因の検討-酸素欠乏の
6463−9(2011)
講演会のご案内
創包工学研究会 第55回講演会 “医薬品誤飲と材料・包装・容器”
◇開催日時:平成25年10月25日(金)9:30~16:45
◇主催:創包工学研究会
◇会場:フォーラムミカサエコ 7F ホール
東京都千代田区内神田1−18−12
神田東誠ビル7F
◇申込先:創包工学研究会事務局
〒101−0047 東京都千代田区内神田 1−18−11−717
TEL & FAX:03−3291−3219
メール:[email protected]
参加申し込みがあった場合,請求書(振込先記載)
および参加証を郵送します。
◇参加費: 25,000円/人
食品と容器
599
◇演題および講師
○小児の医薬品誤飲の現状と対策
緑園こどもクリニック 山中龍宏
○小児の医薬品誤飲と包装に望むこと
国立成育医療センター 石川 洋一
○ Child Resistant Pharmaceutical Packaging
- Understanding the Global Trends and
Regulations - Honeywell Aclar Strategic
Melissa Green(通訳付き)
○幼小児の心理と医薬品の誤飲
東京福祉大学 青山郁子
○チャイルドレジスタント機能医薬品包装の紹介
東洋アルミニウム㈱ 久保博司
2013 VOL. 54 NO. 10
⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話
第13回
果実・果汁飲料と機能性成分(11)
果実(ブドウ,スモモなど)の機能性
―アントシアニンを中心に―
て ら は ら・ の り ひ こ
金沢大学大学院薬学研究科
修士課程修了。ブリストル
萬有製薬株式会社基礎研究
所を経て,現在,南九州大
学大学院園芸学・食品科学
研 究 科( 兼 健 康 栄 養 学 部
食品開発科学科)教授。
農学博士
寺 原 典 彦
コン(アントシアニジン)は第1図bのように,
●1.はじめに●
6種類が知られている。
ポリフェノールに属するフラボノイド系色素の
AN は溶液の様々な環境条件によって影響を受
アントシアニン(Anthocyanin:AN)は赤〜青
け,退色や変色などを起こしやすく,天然食用色
紫の色調をもつ水溶性の色素である。現在までに
素としての利用は限られていた。しかし近年,抗
500種類以上もの AN が花,果実,野菜,あるい
酸化性や酵素阻害作用をもつことが明らかにな
は培養細胞中に見いだされている。分子のサイズ
り,また,それらに起因すると思われる多くの生
も,最小のコウリャン種皮中に含まれるアピゲ
体調節機能(がん予防,動脈硬化予防,高血圧予
ニニジン
防,視力改善,血糖値上昇予防,肝臓機能改善,
1)
ナチン A1
から,最大のチョウマメ花中のテル
2)
抗炎症,抗ウイルス性など)が明らかにされてき
まで変化に富んでいる(第1図a)。
た。このように,AN は着色料としてだけではな
通常,AN は配糖体型で存在し,その主なアグリ
く,生活習慣病を予防する機能性
食品因子としても見なおされて
い る3−9)。
アピゲニニジン
(分子量 255)
(a)
(b)
ここでは,ブドウやスモモなど
テルナチンA 1
(分子量 2108)
の果実や加工食品に含まれる AN,
および関連色素を中心に機能性な
アグリコン(略名)*
ペラルゴニジン (Pg)
シアニジン (Cy)
ペオニジン (Pn)
デルフィニジン (Dp)
ペチュニジン (Pt)
マルビジン (Mv)
* OCH3: メトキシ基
R1
R2
H
OH
OCH3
OH
OH
OCH3
H
H
H
OH
OCH3
OCH3
●2.ブドウ●
ブドウはブドウ科のつる性落葉
低木であり,世界でバナナ,かん
きつ類に次いで生産量が多い果物
である。その果実は生食,乾燥
第1図 アントシアニン類(a)と主なアントシアニジン(b)
食品と容器
どを述べる。
600
レーズン,ジュース・ジャム・ゼ
2013 VOL. 54 NO. 10
果実(ブドウ,スモモなど)の機能性 ―アントシアニンを中心に―
リー・缶詰の原料用,およびワイン原料用として
ル(カテキン,プロアントシアニジン(縮合タ
栽培されているが,世界的にみると70%以上が
ンニン)),フラボノール,ジヒドロフラボノー
ワイン用である。ブドウの品種はヨーロッパ系種
ル,レスベラトロールなどの種々のポリフェノー
(Vitis vinifera)とアメリカ系種(V. labrusca や
ルを含み,含量は種子(50 〜 70%)
,果皮(25
V. rotundifolia など)に大別される。ヨーロッ
〜 50%),パルプと果汁(2〜5%)の順である。
パ系種は広がっていった方向によって西洋系と東
主に,AN は果皮に,プロアントシアニジンは種
洋系に分けられており,ヨーロッパ系西洋系品種
子と果皮に,レスベラトロールは果皮に含まれる。
は,白ワイン用のシャルドネ,ソーヴィニヨン・
ポリフェノールの含量と組成は品種,熟度,天
ブラン,リースリング,および赤ワイン用のカベ
候,生産地などにより大きく変わる。成熟した赤
ルネ・ソーヴィニヨン,カベルネ ・ フラン,ピ
ブドウ果実の総ポリフェノール量は260 〜 900
ノ ・ ノワール,メルローなどがある。東洋系品種
mg/100gで,総 AN 量は30 〜 750 mg/100gと
には甲州やマスカット ・ オブ ・ アレキサンドリア
されている。
赤ブドウには第2図のように5種類のアグリ
などがある。一方,アメリカ系種にはコンコード,
キャンベル,デラウェアなどの V. labrusca 系品
コンの 3-位にグルコースが1個結合した配糖体
種がある。また,ヨーロッパ系とアメリカ系の交
(3G)や 3,5-位にグルコースがそれぞれ1個ず
配品種としては,巨峰,甲斐路,ネオマスカット
つ結合した配糖体(3G5G),およびそれらに酢
などがある。日本で最も栽培されている品種は巨
酸やp-クマル酸がエステル結合したアシル化ア
峰で,デラウェア,
ピオーネ,キャンベ
ルアーリー,ナイア
ガラ,マスカットベ
リー A,スチューベ
ン,甲州,と 続 く。
さらに,東アジアに
はアジア系種の野生
ブドウ種が自生し,
中国の満州山ブドウ
や日本の山ブドウな
どがある。
世界最大のブドウ
生産国は中国,つい
でイタリア,アメリ
第1表 ヨーロッパ系種(V.vinifera )赤ブドウ品種のアントシアニンの組成(%)
No. *1
Dp3G
10.0
9.4
5.2
1.3
2.3
1.0
3
Pt3G
6.1
7.9
6.1
4
Pn3G
5.3
7.0
8.3
5
Mv3G
42.6
40.7
36.4
2.2
1.6
0.7
6
AN, フ ラ バ ノ ー
食品と容器
Dp3G-Ac
(Dp3G の酢酸エステル)
7
Cy3G-Ac
0.1
0.4
0.2
8
Pt3G-Ac
2.2
1.8
1.3
9
Pn3G-Ac
0.9
1.6
2.7
Mv3G-Ac
20.5
11.5
9.4
0.5
—
1.0
0.1
—
2.4
0.1
t *2
2.4
0.4
t
0.6
10
11
12
14
赤ブドウ果実は
シラー
Cy3G
スであり,日本では,
県の順となっている。
メルロー
1
13
形県,岡山県,福岡
カルベネ・
ソーヴイニョン
2
カ,スペイン,フラン
山梨県,長野県,山
アントシアニン No. *3
Dp3G-pC
(Dp3G のp - クマル酸エステル)
Cy3G-pC
Mv3G-Cf
(Mv3G のカフェ酸エステル)
Pt3G-pC
15
Pn3G-pC
0.6
2.0
2.0
16
Mv3G-pC
6.4
8.9
21.9
* 1No.=HPLC の溶出順である。
* 2t= 痕跡
* 3略名:デルフィニジン,シアニジン,ペチュニジン,マルビジンの3-グルコシド(Dp3G,Cy3G,
Pt3G,Pn3G,Mv3G), お よ び 同 3, 5-ジ グ ル コ シ ド(Dp3G5G,Cy3G5G,Pt3G5G,Pn3G5G,
Mv3G5G),酢酸 =Ac,p -クマル酸 =pC,カフェ酸 =Cf
601
2013 VOL. 54 NO. 10
⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話
ントシアニジンが750mg/
R1
R2
R3
AN
R3
OH
H
OH
Cy3G
G
OCH3 H
OH
Pn3G
G
OH
OH
OH
Dp3G
G
OH
OCH3 OH
Pt3G
G
OCH3 OCH3 OH
Mv3G
G
* OCH3: メトキシ基,G: D-グルコース
AN
Cy3G5G
Pn3G5G
Dp3G5G
Pt3G5G
Mv3G5G
*他に酢酸やp-クマル酸が結合した AN もある。
第2図 赤ブドウのアントシアニン
ントシアニン(AAN)などが含まれている 。
L, カ テ キ ン な ど そ の 他
のフラボノイドが250mg/
L,AN が150mg/L, フ ラ
ボノールが50mg/L 含まれ
る12)。 また,赤ワインの色
調は原料ブドウ果皮の AN
に由来しており,貯蔵・熟
成中に幾分か減少する。し
かし,赤色から深紅色へと変化し,退色しにくい
10)
ヨーロッパ系種赤ブドウの HPLC 分析では20
深みのあるワインレッドをもつようになる。この
種以上の AN が含まれ,第1表や第2図のように
色調変化と安定化機構の研究を通じて,AN が共
同定されている。いずれの品種も Mv3G が30%
存するフラバノール,AN の無色水和物(シュー
以上と最大で,次に,AAN が続く。p-クマル酸
ド塩基)
,および酵母の糖代謝産物(ピルビン酸
やカフェ酸が結合した AAN は温度,光などへの
やその誘導体,4- ビニルフェノール類,アセト
安定性が高い。また,3G5G タイプ(第2図)の
アルデヒドなど)などと反応して,新たな AN 縮
ものが含まれないのも特徴である。
合色素類が生成することが次第に判ってきた。主
一方,アメリカ系種では,3G 型が主要なもの
なものは第3図に示すように,3種類知られてい
(V. labrusca など)以外に,3G5G 型が主要なも
る。 まず,A+-F 型色素は A+(フラビリウムイオ
の(V. rotundifolia な ど ),Mv で は な く Cy や
ン:AN の発色型)と F(フラバノールやシュー
Dp が主要なものなど多彩である。また,AAN
ド塩基)が直接に縮合したもので, 橙 色を呈す
が少ないか,全く含まないのも特徴であり,ヨー
る5,13)。また,A+-Et-F 型色素類はアセトアルデ
ロッパ系種より安定性が低い3)。
ヒド由来のエチル架橋を介して A+ と F が縮合し
だいだい
交配品種の巨峰では約7種の AN を含み,その
た赤紫色の色素である。水溶液の弱酸性 pH やワ
うち2種ほどが AAN である。また,甲斐路では
イン製造の際に用いる SO2には安定であるが,も
約3種の AN が検出されるが,AAN は認められ
との成分に分解しやすい。最後に,ピラノアント
ない。野生の山ブドウは Mv 3G5G を主要な AN
シアニン(PyAN)類は A+ にピルビン酸や4- ビ
としている。このように,ヨーロッパ系種,アメ
ニルフェノール類が縮合・環化したもので,橙色
リカ系種,アジア系種ブドウの品種によって,含
〜紫色を呈する。Mv3G にピルビン酸が結合し
有する AN の量や種類に違いが見られる
たものは PyAN 類の基本型と考えられるビティ
。
4,11)
シン A で,ポートワインなどで最初に見いださ
●3.赤ワイン●
れた5, 13 〜 15)。同様に,ビティシンにさらにビニ
赤ワイン中のポリフェノール含量は白ワインに
ル基を介して F が縮合した,青紫色のポーテシ
比較して〜 10倍と高く,多くの点で機能性が優
ン類が熟成の進んだポートワイン中に認められて
れるとされている。これは,赤ワインは果皮,果
いる(第3図)。PyAN 類は4- 位置換体であるた
汁,種子込みで発酵および醸し工程を経るので,
め,弱酸性 pH や SO2には安定で,退色しにくい。
かも
ポリフェノールがより効率良く抽出されるためで
これらは,さらにより安定な重合型色素に重合し
ある。典型的な赤ワインの例では,非フラボノ
てゆくものと考えられている。
イドが200mg/L,フラボノイドとしてはプロア
食品と容器
602
2013 VOL. 54 NO. 10
果実(ブドウ,スモモなど)の機能性 ―アントシアニンを中心に―
ウ種子抽出物を摂取させたところ,血圧の低下な
●4.ブドウおよび赤ワインの機能性●
どが認められた。また,透析患者に濃縮ブドウ
ブドウ果実の主な効能として,抗酸化性,疲労
ジュースを摂取させたところ,総コレステロール
回復,眼精疲労改善,高血圧予防,動脈硬化予防,
の減少と善玉コレステロール(高密度リポタンパ
心筋梗塞予防,脳梗塞予防,がん予防,アルツハ
ク質,HDL)の増加が認められた。さらに,種
イマー予防,老化予防,メタボリック症候群予防
子抽出物は目の眩しさから来るストレスの軽減,
などが報告されている。抗酸化成分であるビタミ
夜間視力の向上などに有効性が示唆されている。
ン C やポリフェノール類などがこれらの効能に
赤ワインの効能については,欧米諸国でみられ
関与しているものと考えられている。また,果実
る心臓病による死亡率と動物性脂肪の大量摂取と
に多く含まれるブドウ糖や果糖は疲労回復に効果
の間に正の相関があるが,フランスでは高脂肪摂
がある。
取の割に死亡率が低いというフレンチ・パラドッ
まぶ
赤ブドウ果皮には,眼精疲労改善や活性酸素の
クスとよばれる疫学的事実がある。その原因とし
除去に効果があるとされる AN が多く含まれる。
て,フランス人の多飲する赤ワイン中の抗酸化性
また,AN は悪玉コレステロール(低密度リポタ
ポリフェノールが動脈硬化を防止していると説
ンパク質,LDL)の酸化を防ぐ働きがあり,動脈
明されている17)。これについては,健康な成人ボ
硬化やがん予防などが期待される。さらに,ブド
ランティアに赤ワインを数週間摂取させたとこ
ウの AN 類は,モルモットの毛細血管を強くす
ろ,HDL の増加,血清の抗酸化活性が有意に上
16)
る作用が報告されている 。
昇,さらに LDL が酸化されるまでの時間が長く
ヒトに対する効果としては,メタボリック症候
なり,LDL は酸化され難くなっていることが認
群のヒトにブドウポリフェノールパウダーやブド
められた。また,米国での疫学調査の結果,特に
A+-F型色素
(橙色)
(F )
アセトアルデヒド
+
A -Et-F型色素
(赤紫色)
Mv3G
+
(A )
ピルビン酸,
ピルビン酸誘導体
ビニルフェノール
アセトアルデヒド
Fなど
ピラノアントシ
アニン類
(橙〜青紫色)
ビティシン A
(橙色)
ポーテシン類
(青紫色)
第3図 アントシアニンから赤ワイン中での縮合色素の生成
(A :フラビリウム,F:フラバノールまたはシュード塩基,Et:エチル架橋)
+
食品と容器
603
2013 VOL. 54 NO. 10
⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話
すもも
赤ワインの摂取が,冠動脈性心疾患のリスクを低
salicina 和名 酢桃,李)は主に日本で栽培され,
下させることが示された18)。このように,赤ワイ
プルーンと区別するためプラムと呼ばれることが
ンポリフェノールは,動脈硬化症を予防すると共
ある。日本の主要産地は山梨県であり,主に東ア
に,動脈硬化症の進行も防止する可能性が示唆さ
ジア系と北アメリカ系の交配品種や,さらにこれ
れた。その他,赤ワインのヘリコバクターピロリ
らが交配された高級品種が主流を占めている。早
に対する作用,および血流増加作用,赤ワインポ
生種の大石早生,晩生種のソルダム,太陽などが
リフェノールの脳神経系に対する作用
主要品種で,貴陽,秋姫,紫峰,月光,いくみな
4, 19)
など
どの新しい品種も開発されている。一方,原種に
が知られている。
ブドウ果皮やワインに含まれるレスベラトロー
近い品種も栽培されており,例えば鹿児島県奄美
ルは,抗酸化作用,一酸化窒素の産生促進,血小
大島の特産スモモである花螺李などがある。台湾
板凝集阻害,HDL の上昇作用などがあることが
原産で,赤色が非常に濃く,国内で最も早く収穫
示されている
される品種である。
20)
か
。
ら
り
プルーン(学名 : P. domestica,和名 ヨーロッ
赤ワインの抗酸化性は,AN 縮合体画分や重合
体画分の寄与率が高く,年代の古いワインのほ
パ(セイヨウ)スモモ)はユーラシア系であり,
うが,抗酸化性が高いことと一致した 。また,
中心に大きな種を有し,水溶性食物繊維が豊富で
Mv3G とエピカテキンより合成した A -Et-F 縮
あるのが特徴的である。通常,半生状のドライフ
合型色素は血小板凝集阻害活性が原料の Mv3G
ルーツ(ドライプルーン)や,ペースト状のプ
よ り 3 〜 4 倍 高 く, そ の 抗 酸 化 性 は Mv3G よ
ルーンシロップに加工されて食されるが,新鮮な
り4〜5倍高いことが認められた。このように,
ものは生のままでも食べられることがある。米国
Mv3G は熟成中に,ワイン中に存在するエピカテ
カリフォルニア州が代表的産地であるが,日本国
キンなどと縮合体(第3図)を形成すると,もと
内では,山梨県,和歌山県,長野県,山形県,福
の Mv3G より機能性が高くなることが判明した
島県などで栽培されている。
19)
+
。
4, 19)
赤ワインの他に,皮ごと乾燥させた乾燥レーズ
日本スモモは主に生食用として栽培され,一方
ンもポリフェノール含量が高く,高い機能性が期
ヨーロッパスモモは生食用のほか,乾燥用やジャ
待されている。
ム,コンポートなど加工用としても栽培されてい
る。健康補助食品として用いられるドライプルー
●5.スモモ●
ンはヨーロッパスモモを乾燥させたものである。
スモモはバラ科サクラ属の落葉小高木で,ウメ
また,スモモのジュースやジャムへの利用は,爽
やアンズと同じスモモ亜属に分類されるが,非常
やかな酸味のリンゴ酸を含むために大いに期待さ
に多くの種類を含んでいる。形態的には果実の中
れている。
心に核を持つ核果実に分類される。2005年では
世界の生産量は930万トンに達し,果実の中では
●6.スモモの機能性●
第8位を占めている主要果実である。中国が約
ス モ モ 果 実 の 成 分 の 特 徴 は 有 機 酸, ミ ネ ラ
587万トンを生産し,全体の半分以上を占めてお
ル,ビタミンが多く,主な効能は疲労回復,貧血
り,次にセルビアで,ルーマニア,アメリカと続
予防,高血圧予防,動脈硬化予防,心筋梗塞予
き,日本は38位である。スモモはその原産地に
防,脳梗塞予防,便秘改善などで,健康食品と
よって東アジア系,ユーラシア系,および北アメ
して注目されている。主な栄養成分はカリウム
リカ系の3系統に大別される。
(200 mg/100g),リン,マグネシウム,カルシ
東 ア ジ ア 系 の 日 本 ス モ モ( 学 名 Prunus
食品と容器
ウム,葉酸(35μg)である。また,乾燥プルー
604
2013 VOL. 54 NO. 10
果実(ブドウ,スモモなど)の機能性 ―アントシアニンを中心に―
ンはエネルギー(235kcal),カルシウム(39mg),
マグネシウム(40mg)
,リン(45mg),鉄(1
R
AN
OH
Cy3G
Rh
Cy3Rut
*Rh: L-ラムノース
Rut: ルチノース
mg), 亜 鉛(0.5mg), 銅(0.3mg), カ リ ウ ム
(480mg),βカロテン当量(1,100μg),ナイア
シ ン(2.2mg), ビ タ ミ ン B 6(0.34mg), 食 物
繊維総量(7.2g)である21)。
せつ
カリウムはナトリウム(塩分)を排泄する役割
第4図 スモモのアントシアニン
があり,高血圧に効果がある。また,長時間の運
けいれん
動による筋肉の痙攣などを防ぐ働きもある。ほか
心筋梗塞,脳梗塞のリスクを減らすことが判明し
に,マグネシウムやリンなどミネラルが多く含ま
ている。また,スモモのポリフェノールとカリウ
れている。エネルギー代謝に必要なナイアシン,
ムを摂取することにより骨粗しょう症のリスクが
タンパク質の代謝に必要なビタミン B 6なども多
軽減されることがイギリスの調査から明らかに
く含まれている。また,ペクチンなど水溶性食物
なっている。さらに,最近増加しているアレル
繊維も多く,その整腸作用は便秘予防に効果があ
ギー症状の緩和にも効果が期待されている。最近
る。子供の成長に必要なビタミン E や葉酸はカ
行われたラットを用いた実験では,スモモにはア
ロリー単位(100kcal)で比較すると,牛乳の10
ンジオテンシン I 変換酵素活性を阻害する効果が
倍以上も含まれる。 ビタミン E は女性に多い冷
あり,血圧上昇抑制が証明されたとの報告があ
え症の予防にも効果的である。また葉酸は,貧血
る。スモモに含まれる主要な AN としては,第
4図のような Cy3G とシアニジン3- ルチノシド
に悩む人や妊娠した女性に有効である。
遊離アミノ酸のうちアラニンやグルタミン酸も
(Cy3Rut) が 知 ら れ て い る22, 23)。 こ れ ら の AN
成熟過程で増加し,完熟期には顕著に多くなる。
は果汁中に43 〜 168 mg/L 含まれ,抗酸化活性
また,ブドウ以外の果実ではあまり見られないプ
が認められ,毛細血管の強化や眼精疲労回復など
ロリンを特徴的に多く含んでいる。糖分はショ糖
の機能性が示唆されている。
が主要構成糖で,5~ 15%含んでいる。スモモ
このような特徴を持つスモモは,健康維持に良い
は多酸系果実に分類され,香りは少ないものの,
機能性に富んだ果実として注目されており,特に各
爽やかで,刺激的な味を持つリンゴ酸が主要酸で
種成分が濃縮した乾燥プルーンは栄養価や機能 性
あり,収穫期では1%以上含む。また,クエン酸
が 高い健 康 補助食品としての利用が 高い24 〜 26)。
や,他の果実にはあまりないキナ酸やシキミ酸を
含んでおり,独特な酸味を呈する。主要酸である
●7.おわりに●
リンゴ酸は,エネルギー産生回路である TCA 回
ブドウ果実や(赤)ワインは AN をはじめ,各
路の主要な有機酸であり,疲労回復に大きな効果
種のポリフェノール成分を豊富に含み,疲労回復,
を有する。これらの糖 - 有機酸構成成分から,甘
眼精疲労改善,高血圧予防,動脈硬化予防など多
酸っぱい味がスモモの特徴で,収穫期によって味
くの機能性が知られており,さらなる新規な機能
のバランスが大きく変わる。さらに,糖アルコー
性検索や利用法が期待されている。しかし,ワイ
ルの一種であるソルビトールを含み,便秘改善に
ン中のレスベラトロールはキイロショウジョウバ
有効といわれている。
エなどの寿命延長効果をもつとされ,大変注目さ
スモモはポリフェノール類も豊富に含み,血管
れたものの,その後否定的な報告も出されている。
中に蓄積する酸化 LDL をポリフェノールの抗酸
最近,ワイン中のプロトカテキュ酸にショウジョウバ
化作用で低減化させることにより動脈硬化予防や
エの寿命延長効果が見いだされた27)。このように
食品と容器
605
2013 VOL. 54 NO. 10
⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話
新規な機能性の発見では,発現機構まで含めて,
の他への応用なども大いに期待されている。ワイ
広範で注意深い確認の必要があると考えられる。
ンの場合,酵母による酸を減らす工夫や,AN 含
スモモは機能性が高く,菓子類,調味料,リ
量の高い赤色系品種のソルダムや花螺李を素材に
するなどの試みがなされている24, 25)。
キュールへの利用の他に,フルーツワイン醸造そ
参 考 文 献
1)Shimizu, T. et al : J. J. Food Chem., 3, 21−26(1996)
2)Terahara, N. et al : Tetrahedron Lett., 31, 2921−
2924(1990)
3)M azza, G. and Miniati, E. : Anthocyanins in
Fruits,Vegetables, and Grains, CRC Press, Boca
Raton, FL(1993)
4)大庭理一郎ら編:アントシアニン−食品の色と健康−,
建帛社(2000)
5)A ndersen, O. M. and Markham, K. R. (ed):
Flavonoids – Chemistry, Biochemistry and
Application, Taylor and Francis Group, Boca Raton
London New York(2006)
6)津田孝範ら編著:アントシアニンの科学 - 生理機能・
製品開発への新展開−建帛社(2009)
7)武田幸作ら編著:植物色素フラボノイド,文一総合出
版(2013)
8)Tsuda, T. et al. : Arch. Biochem. Biophys., 368, 361−
366(1999)
9)Hou, D. X. : Curr. Mol. Med., 3, 149−159(2003)
10)岩 科司 : 食品工業 , 37(12), 52−70; 37(14), 67−
79; 37(16), 67−81; 37(18), 55−69(1994)
11)木村進ら編 : 食品の変色の化学,p.23,光琳(1995)
12)S ingleton, V. L. and Nobel, A. C. : “Phenolic,
Sulfur,and Nitrogen Compounds in Flavors”, I. Kats
(ed.)ACS Symposium Series, 26, pp. 47−70(1976)
13)Waterhouse, A. L. and Kennedy, J. A.(ed): Red
Wine Color − Exploring The Mysteries. ACS
Symposium Series 886, American Chemical Society,
Washington, DC(2004)
14)Bakker, J. et al. : Phytochemistry, 44, 1375−1382
(1997)
15)Mateus N. et al., J. Biomed. Biotechnol., 5, 299−305
(2004)
16)Leung, A. Y. and Steven Forster, S. 著, 小 林 彰 夫 ,
斎藤洋翻訳:天然食品・薬品・香粧品の事典,朝倉書
店(1999)
17)Renaud, S. et al. : Lancet, 339,1523-1526(1992)
18)Mink, P.J. et al. : Am. J. Clin. Nutr., 85, 895-909(2007)
19)食品機能性の科学編集員会:食品機能性の科学,(株)
産業技術サービスセンター(2008)
20)Martin, A.R. et al. : Biochem. Pharmacol., 67,1399−
1410(2004)
21)宮澤孝幸,田尻勝博:新特産プルーン−栽培から加工,
売り方まで−,農文協(2003)
22)Wu, X. and Prior R. L. : J. Agric Food Chem., 53,
2589−2599(2005)
23)Will, F. and Dietrich, H. : Eur. Food Res. Technol.,
223, 419−425(2006)
24)辻政雄,小宮山美弘:日食保誌,34, 359−366(2008)
25)小宮山美弘,辻政雄:日食保誌,35, 37−46(2009)
26)田中敬一:果実日本,62(5), 31−34(2007)
27)八木勇三ら:Food Function, 11, 9−13(2013)
シンポジウムのご案内
日本包装学会 第62回シンポジウム
医療安全・医療過誤への医薬品包装の役割
◇定員,締切:100名,10月8日(火)先着順にて締切
◇内 容
・「医薬品の回収のトレンドを探る」
(株)じほう 橋都なほみ氏
・「吸入剤・吸入デバイスの現状と課題」
東京理科大学 山下親正氏
・
「社会のニーズと薬剤包装」
横浜薬科大学 定本清美氏
・
「医療現場から見た医薬品の包装・表示について
-薬剤師の立場から-」
東京慈恵会医科大学付属病院 北村正樹氏
・「水分予測技術を用いた包装設計デザインスペース」
武田薬品工業(株) 森 宏平氏
◇日 時:平成25年10月18日(金)10:00 ~ 16:45
◇主 催:日本包装学会
◇協 賛:日本包装技術協会
◇後 援:日本食品包装協会,軟包装衛生協議会,日
本接着学会,日本食品科学工学会
◇会 場:きゅりあん 6F 大会議室
東京都品川区東大井 5-18-1
(JR 大井町駅前)TEL 03−5479−4100
◇参加費:維持会員15,000円,企業に属する個人会員
10,000円,その他の個人会員および学校・公的機
関の会員5,000円,エキスパート会員2,000円,学
生2,000円,非会員18,000円
◇申込・問合せ先:日本包装学会「第62回シンポジウ
ム」係 〒169−0073 東京都新宿区百人町1−20−3
バラードハイム703
TEL 03−5337−8717 FAX 03−5337−8718
食品と容器
○シンポジウムの詳細については,ホームページをご覧
下さい。(http://www.spstj.jp/event/sympo/index.html)
606
2013 VOL. 54 NO. 10
人々の暮らしを支え,文化の伝播に深く関わって
風水樹花徒然記 ☆11
きた三大河川といってよい。
ヨーロッパの大河を旅する
おお
ば
ひで
流域面積の大きさでみると,ヨーロッパ最大の
河川は1,380,000㎢でカスピ海に注ぐ世界13位の
あき
大 場 秀 章
ボルガ,それに続くのは24位で817,000㎢に達
(東京大学名誉教授)
するドナウ(ダニューブ)である。以下,流域面積
私は川があるとつい足を止めてしまう。川はど
170,000㎢のラインと95,500㎢のローヌ川が続く。
こにでもある。しかしそれぞれが固有の名をもち,
歴史をもち,源流から河口まで大地を刻み特有の
☆アルプスは地中海と北海の分水嶺
景観を生み出していく。多くの人が古来から川に
ラインとローヌ川の源流はスイス・アルプスに
関わり,舟や筏で川を上下し,また物資を運んだ。
ある。ラインの源流はグリソン(Grison)地方
発電にも利用される一方で,ときには洪水などの
の標高2,345m にあるトーマ湖(Tomasee)だが,
氾濫も起こした。水の分配さらには領有を巡る争
ロ ー ヌ は 観 光 で も 名 高 い 標 高1,763m の サ ン・
奪など,争いの対象や場にもなった。そればかり
ゴッタルト山地である。
かんよう
ではない,川は下流域の平野を涵養し,海の魚族
山岳観光の基地でもあるアンデルマットの真西
にフルカ峠(写真1)がある。この峠は古くから
にさえ栄養分をもたらしさえするのである。
ここ10数年私はヨーロッパによく出かけるよ
有名で,ヨーロッパの分水嶺と呼ばれてきた。そ
うになった。なかでもドナウ,ラインそしてロー
れは,峠の西側の流水はローヌ渓谷を下り,ブリ
ヌ流域が多い。私の見聞を含めこれら河川の特徴
エンツ湖,トゥーン湖,そしてレマン湖を経て,
や表情などを紹介しよう。
リヨン,マルセイユを通り地中海に,東側の流水
☆ラインとローヌの源流を訪ねる
は合流してライン川となり北海に注ぐからである。
ヒマラヤを中心に極限環境を生きる植物を研究
く,南東側にある。それはイタリアのミラノとス
していた私は標高4千 m を超す高山を何度も歩
イスのルツェルン,チューリヒを経由してドイツ
いた。夏のことであり,すっかり残雪は消え去
とを結ぶサン・ゴッタルト峠の近辺(写真2)だ。
り,はるか後方に氷雪に被われた氷河が白く輝い
なので見かたによるとはいえ,フルカ峠を地中海
ている。歩いているのは古い氷河が残した皿状の
と北海の分水嶺とするのには無理がある。
しかしローヌ川の源流はフルカ峠の西側ではな
とはいえフルカ峠からの眺望は素晴らしい。峠
谷(デレ)で,そこには四方八方から雪や融けた
凍土から流れ出る水流が次々に集まり,ちょっと
付近の崖上に立
した幅の小川へと生長し,さらにそれらが集合し
ち,西側を眺め
谷となり激流となって山腹を下っていくのだ。
ると遠くにユン
印象的だったのはカラカラに乾いた崑崙山脈
グフラウ,メン
(中国新疆省)でも高度5千 m になると融けた凍
ヒ,アイガーが
土からの水が地中を音を立てて流下していたこと
聳え立ち,眼下
だ。毎日融け出る融氷水がばく大な量になること
にローヌ川の源
は容易に想像がつく。
流となるいくつ
そび
ナイルやアマゾンのような大河といえども原理
もの氷河湖から
は同じで,その源流は融けた氷雪や凍土がつくる
流れ出た水流が
ごく小さな流れに過ぎないはずである。
合流し急斜面を
ヨーロッパには全長6千キロにも及ぶナイルや
流下する様子が
アマゾン級の大河川はないが,ライン,ローヌそ
眺められる。か
してドナウ川はヨーロッパに独自の景観を生み,
つては峠と接し
食品と容器
607
写真1 フルカ峠から西方の眺望
2013 VOL. 54 NO. 10
は1,078m である。冬期を除き融解水が入り込む
ラインやローヌと異なり,森林地帯に源流のある
ドナウの本流は主に雨水を集め流下する河川だと
いえる。ところでドイツ・スイス・オーストリア
の国境に位置するボーデン湖に流れ込んだライン
川はそこから西に流れ,黒森の西側に沿って北上
していく。ボーデン湖とドナウの源流であるマル
チンスカペレは距離にして50km ほどしか離れて
写真2 サン・ゴッタルト峠付近の景観
て氷雪を湛えた雄大なローヌ氷河がみられたが,
今は表面の氷雪が消失してしまっている。
トーマ湖はフルカ峠から東に20km ほどのとこ
ろにある。氷河の端末に生じた小さな湖で,ここ
が公式上のライン川の源流に指定されている。
おらず至近距離にあるといってよいが,すでに大
河川となったラインに較べ,ドナウはほんの小河
川に過ぎない。そのドナウが大きな流域をもち幅
もある大河川へと生長するのは実は支流との合流
によっている。
最初の大きな合流点はドナウエシンゲンで,さ
らにドナウヴエルトと他河川との合流が続くが,
☆源流の標高が低いドナウ
そこまでのドナウは川幅も狭く,中流とはいえ大
ドナウ川の全長は2,860㎞に達するという。そ
に様変わりするのは,オーストリア西部の山岳地
の源流はドイツ南西部に位置するシュヴァルツ
河の風貌に欠ける。それがヨーロッパ第2の河川
ヴァルト(黒森)の東麓にある,標高1,078m の
マルチンスカペレ(Martinskapelle)である。その
場所を訪ねることはできなかったが,源流域には
小さな流れがいくつもあり,そのひとつが源流と
されたマルチンスカペレのものなのだろう。有名
な泉のあるドナウエシンゲン(Donaueschingen)
でドナウはさらに多くの支流を集め,インゴル
シュタト,レーゲンスブルグを経て東進し,日
写真4 ウィーン西方のヴァッハウ渓谷,ドュルン
シュタインを流れるドナウ川 本ではドナウベントと呼ばれるブタペストの手
前のドゥナカニャル(Dunakanyar,写真3)で
向きを南に変えるなどして,ルーマニアで黒海に
注ぐ。
標高1,700m を超える高山帯に源流をもつライ
ンとローヌ川にたいして,ドナウ川の源流の高度
帯である,チロル地方を源流とするレッヒ川やイ
ン川との合流によるところが大きい。
とくにインスブルグから北に流れパッサウでド
ナウと合流するイン川の流量は大きく,パッサウ
からドナウは初めて大河川の様相を呈するように
なる(写真4)。源流が森林地帯にあったドナウ
は,イン川などとの合流を通して高山帯からの流
水の供給を受けることで大河川になることができ
たといってよい。ドナウは,大河川は高山帯から
発する源流をもつとする私の仮説から外れるが,
高山帯に源流をもつ支流の合流でやっと条件が満
たされる,という異例的な大河川だといえよう。
写真3 ドゥナカニャル付近のドナウ川
食品と容器
608
2013 VOL. 54 NO. 10
☆ 河川を涵養するもの
河川の水源として誰しも予想するのは流域に降
る雨や雪などであろう。確かに降水は河川涵養の
一大資源ではあるが,ヨーロッパでいえば年間
降水量は1,000mm を超えることはめったになく,
それだけで大河川を充たすのはむずかしい。
大河川を維持しているのはライン川等でみてき
たように高山の氷河や凍土,残雪の融解水であり,
このことはヨーロッパ以外の大河川にも当てはま
る。ただし北極海に注ぐ,ロシアの大河であるオ
ビ,レナ,エニセイはいずれも源流と河口との間
の標高差が小さい。高山ではなく中央シベリア高
原の凍土帯を源流とする河川である。
なお,日本の河川の大半は凍土等の融解水の供
給がないため,もっぱら降水と残雪が水源になっ
ている。因みに信濃川は日本では最長の川だが,
写真5 ストラスブール市を流れるラインの分流
真5)を通り,有名な保養地であるバーデン・
バーデン付近で再びドイツに入って北上し,カー
ルスルーエ,コブレンツ,ボン,ケルン,デュッセル
ドルフ(写真6)を通り,デュースブルグ付近で
北西に向きを変え,オランダに入る。こうした諸
都市の名をみるだけで,ラインのヨーロッパの発
展や文化形成に果たした重要性が読み取れよう。
その全長は367km で,大陸河川との差は歴然と
している。日本の河川は流域が小さいためか,概
ね通年の2,000mm 位の降水量で枯渇することは
あまりない。だが流量の変動が大きく,管理や発
電への利用は凍土融解水に由来する大陸の大河川
に較べ困難な点が多い。
☆ オランダの国土を生み出したライン
オランダのライデンによく行く。ライン川河口
のデルタ地帯に出来た町で,未だに古くからの街
路を歩くとかつての砂浜に刻印された波状の凹凸
が判る。
オランダ語でラインのことを Rijn と書く。当
初ラインといえば,ローレライの歌で名高いドイツ
中西部を流れる河川だと記憶していた私はこの名が
ライン川を指すオランダ語だとは想像もしなかった。
オランダ国内を縦横無尽に張り巡らされた運河
のため,視覚のみでラインの本流を見分けるのは
むずかしい。地理書はライン川がライデンの南,
ロッテルダムで北海に注ぐ,と記している。無数
の運河が表徴するようにオランダの国土の半分以
上はライン川のデルタが土台であり,運搬され堆
積した土砂を干拓により陸化した土地も多い。
ボーデン湖を発したライン川は,スイスのバー
ゼル,今はフランス領であるストラスブール(写
食品と容器
609
写真6 デュッセルドルフを行くライン川
☆長い旅の終りに
ライン川がオランダに入ってすぐの町,ナイ
メーヘンは戦禍で大半を失ったが,いかにも防衛
上も経済上も重要な地であることが伝わってくる。
ラインを行き来する船から徴収される税収もばく
大なものであったろう。ローマ帝国軍はここに前
線基地を設けたし,8世紀にはフランク王カール
大帝が王宮のひとつをここに置いた。現在のオラ
ンダでローマ帝国から最初の都市権をえたのもナ
イメーヘンだった。
ナイメーヘンから下流側のラインは,下流域の
特徴である分枝を繰り返し,流れも緩やかになり,
流水中の土砂を排出し,デルタ(三角州)を生み,
河口から海に入りその生涯を終える。
2013 VOL. 54 NO. 10
●海外に見る容器包装最新事情●
第1回
包装の主流になった軟包装でイメージ一新を図る
大手ブランドメーカー
有田 俊雄
(Toshio Arita)
取締役社長
(株)パッケージン
グ・ストラテジー・
ジャパン
東京大学工学部応用化学科卒,旧日本パルプ工業(現在王子製紙),ダイ
ヤパッケージング(現在三菱商事パッケージング)を経て,1997年より
米国・パッケージングストラテジーの日本代表,2007年に(株)パッケー
ジング・ストラテジー・ジャパンを設立。
技術士(経営工学部門・包装物流),包装管理士。 米国包装殿堂入り(2005)
Institute of Packaging Professional(USA)および International Packaging Press Organization 会員。
過去最大の会議となり,世界中から500名を超え
◦はじめに
今号より「海外に見る容器包装最新事情」を連
る参加者と75社の展示で,会場となった Westin
載することになった。過去40年にわたり海外の
Beach Resort(フロリダ州 Fort Lauderdale)の
最新包装事情に接してきた立場から,単に包装技
会場はその熱気で溢れかえった。その顔ぶれも原
術の紹介だけにとどまらず,それを進化させてき
材料メーカー,コンバーター,包装機械メーカー,
た要因である社会的背景や消費者のライフスタイ
ブランドオーナーと多彩であった。日本企業から
ルにおける変化,それを的確に捉える小売業の動
は,現地法人やそのスタッフを含めて21社51名
向と合わせて紹介したいと考えている。
が参加し,講演者の一人として,凸版印刷ニュー
あふ
この数年間,筆者は「今こそ包装の本質的価
ヨーク駐在の川本裕之氏が登壇し,同社の透明蒸
値を見直そう」と題して,毎年提言を行ってい
着フィルム GL シリーズ,詰め替え用パウチにお
る
ける「注ぎ上手」および口栓付き液体製品用「エ
。一つには,包装を「必要悪」とし
1)2)3)4)
アホールドパウチ」について語った。
て考える時代は終わり,包装を新しい「価値創造
の手段」として評価する時代の到来であること。
◦ハインツ社のパッケージング戦略
Global Packaging Innovation and Execution
二つ目は,包装個々のサステナビリティ(4R:
Reuse, Reduce, Recycle, Renewable)よりも,
部門副社長,M. Okoroafor 氏はその基調講演で,
商品をサステナブルにする包装のトータルでの役
同社のパッケージング戦略について「製品とパッ
割に注目してくださいと訴えている。最近では,
ケージが一体でイノベーションを推進している。
4R に,「食品ロス低減に向けて包装ができるこ
イノベーションとは,消費者が価格が高くても欲
と(Save Food)」を加えているが,海外におけ
しいと思うことを単純に成し遂げること」 と語り,
る同様の事例についても取り上げていきたい。
“ 伝統的だが時代遅れ ” のイメージからの脱却の
ためにパッケージが重要な役割を果たしつつある
◦今や包装の主流に躍り出た軟包装
として,次の三つの事例を挙げた。
連載の第一回は,今や世界の包装産業成長のド
① Dip & Squeeze Ketchup:長年にわたり小
ライバーとなり,包装の主流に躍り出た軟包装の
袋入りであったファストフード向けケチャップの
最先端をいくつかの事例で紹介する。
今年6月に米国フロリダで開催された世界軟包
一回使い切り容器(ポーションパッケージ)とし
装会議(Global Pouch Forum)のメッセージは,
て開発されたものであるが,現在では家庭用にも
パッケージ分野での軟包装パウチの持続的成長は
市販されている(10個入り,小袋の3倍の容量,
もはや見逃せない存在であるということであった。
269g)。硬質容器に易開封のフタ材を付けたも
1998年 以 来16回 目 を 迎 え た 今 年 の 会 議 は,
の(第1図左)で,消費者は好みに応じて二通り
の使い方ができる。左下のコーナー部から剥がす
Packaging Strategies 誌がこれまでに開催した
食品と容器
610
2013 VOL. 54 NO. 10
ことでディップ容器として使え,頂
部を手で引き裂くことによって絞り
出し容器ともなる利便性を特徴とし
ている。2010年2月の新製品発表
にあたっては全米のテレビメディア
が一斉にこれを取り上げ,ファスト
フードに40年ぶりの革命をもたら
し,消費者はこれまでの開けにくい,
こぼれる,汚れると不評だった小袋
からようやく解放されると報道した。
第1図 ハインツ社の新製品(HP:C067)
(左)
一回使い切り容器 (右)スタンディングパウチ
Dip & Squeeze Ketchup
会議で Okoroafor 氏はその報道を動画で紹介し
③ Plant Bottle で コ カ・ コ ー ラ 社 と 提 携:
たが,あらためて,この小さな容器が古いパッ
Okoroafor 氏はまた,コカ・コーラ社が開発し
ケージに四苦八苦していた消費者の間で大きな反
た30% 植物由来樹脂 Plant Bottle を基幹商品で
響を呼び,消費者にとっていかに期待の大きいイ
あるケチャップボトル(20オンス入り)に採用
ノベーションであったかを参加者に実証して見せ
し,同時にボトルのラベルを一層グリーンなイ
た。
メージのものに変更したことを紹介した(第2
図)。Plant Bottle については,昨年6月に,コ
②パウチ入りケチャップ:2012年2月に発表
カ・コーラ社主導のもと,ハインツ,フォード
したスパウト付きスタンディングパウチ入りケ
チャップである(第1図右)。当初,ハインツは
モーター,ナイキ,プロクター・ギャンブルの
この10オンス入り(99セント)をこれまでの定
各社が植物由来の PET に関する技術協力体制
番であった12オンスボトル入り(1.99ドル)に
Plant PET Technology Collaborative を 発 表 し
対してもっぱら安値を特徴とする小売業向けと位
ている。本年6月のコカ ・ コーラ社の発表によれ
置づけて発表したが,結果的に消費者はパウチ入
ば,2009年の導入以来,世界25カ国で既に150
りがお気に入りであることが分かり,今ではかな
億本以上の Plant Bottle が投入され,昨年にお
り広く販売されているという。ボトルを逆さにし
いてはコカ・コーラの全 PET ボトルの約8% が
て振らなくても済み,絞り出すだけで最後まで使
Plant Bottle 技術によるものだという。
えること,使い終わったあとかさばらず廃棄しや
◦ついにレトルトパウチ参入を決めたキャンベ
すいこと。さらにいえば容器重量も軽く,価格も
ルスープ社
キャンベルスープといえば,ニューヨーク近
お徳用というのだ。
代美術館に収められたアンディ・ウォーホルの
Okoroafor 氏は声を高くして,「パウチに包装
された商品は商品棚で存在感を増している。わが
社は消費者ニーズを満たすべく,全てのブランド
のイノベーションを推進しており,市場でこの動
きをさらに加速させていく」 と語り,ハインツ
が競争相手の誰より早く新製品を市場に投入し,
同社のイノベーションへの情熱を伝達する手段と
して,軟包装をベースとする確固たる新製品投
入の必要性を語った。同氏はまた,今後開発途上
国の液体調味料市場においてはパウチが主流に
なるであろうとその見通しを述べ,同社の世界各
第2図 Plant Bottle を採用したハインツ社の新しい
ケチャップボトル(20オンス入り)
(HP:C068)
地域におけるパウチ包装の事例を紹介した。
食品と容器
611
2013 VOL. 54 NO. 10
「32個のキャンベルスープ缶」で
代 表 さ れ る よ う に,100年 以 上
にわたりアメリカの食文化その
ものであった。キャンベルはす
でにプラスチック製バリア容器
(Chunky お よ び Soup at Hand
ブランド)や無菌充填の紙パック
(Gourmet Bisques ブランド)に
も踏み込んでいるが,ブランドの
アイコンともいうべき金属缶に新
たにレトルトパウチを加える時代
第3図 キャンベルスープ社のレトルトパウチ新製品(HP:C069)
(左)Go Soup (右)Skillet Sauces
がやってきた。 Gregg 氏の両氏ともにたまたま女性である点も
昨年2月,同社 CEO の D. Morrison 氏は,消
興味深い。ハインツといいキャンベルスープとい
費者アナリスト団体の会議において,停滞気味の
い,大手消費財メーカーの “ 新しい器で古き良き
スープカテゴリーを活気づけ,同社にとって象徴
伝統を活性化し継承する ” ことへの並々ならぬ意
的なスープブランドを引き締めるため,新たな包
気込みを感じさせる。
装形態を加えると語っていた。Morrison 氏はこ
◦キャンベル製品に次世代レトルトパウチへの
こ数年にわたるスープの低価格化が収益を高める
兆候を見る
上で功を奏していない事実ならびに新たな策が求
筆者はかねてから次世代レトルトパウチとはど
められている現実を示唆し,畜肉 ・ 鶏肉料理用
のようなものかをいろいろと想定していた。
Skillet Sauces にも手を広げ,一層際立った味覚
1)アルミ箔構成ではなく,透明バリアフィルム
を加えようとしていた。
を使って中身が見えること。
はく
このような背景の下に発売されたのがレトル
2)封を切らずにそのまま電子レンジ加熱ができ
トパウチ Go Soup と Skillet Sauces である(第
ること。
3図)。「キャンベルブランドを支持する消費者
3)熱い状態で開封および容器への移し替えが安
が,自らにとって価値のあるこのような体験に対
全であり容易であること。
してより多くの代価を支払うことに前向きであり,
4)外箱がなくても,そのまま流通条件に耐え,
我々も若年消費者層や文化的に多様な背景を持つ
商品棚への陳列が容易であること。
買い物客を新しいターゲットにする考えである」
5)海外で普及しているフレキソ印刷でも対応可
と同氏。
能なこと。
昨年秋に発売されたレトルトパウチ Go Soup
6)印刷・ラミネート貼り合わせ加工において無
について,同社のプロジェクトリーダーである
溶剤であること。
M. Gregg 氏は,
「我々のチームは最初にターゲッ
トを若い成人層であるミレニアル世代(20-40
7)印刷方式を問わず表印刷が可能となれば,ラ
歳)において彼等のパッケージに対する嗜好調査
ロット,短納期,コストダウンが可能になること。
を行った。その結果,彼等が好んで食べる食品の
8)備蓄用として超ロングライフ商品(賞味期間
多くがパウチ入りであることがわかった。そこで,
5年)が登場すること。
ミネート基材の中間ストックが可能になり,小
し
C&K Propack 社(韓国) と共同で世界中の最
昨年発売されたキャンベルのレトルトパウチな
先端にあるレトルトパウチを調査した結果ご覧の
らびに今年2月に45年振りにリニューアルされ
通りとなった」と語っている。ちなみにこのよう
た大塚食品のボンカレーによって,筆者はそこに
なイノベーションの担い手となった Morrison 氏,
次世代レトルトパウチの片鱗を見た。
5)
食品と容器
612
へんりん
2013 VOL. 54 NO. 10
第4図および第5図は米国市場で発売された
キャンベル品のラミネート包材の特徴を,また以
下にそのラミネート構成を示した6)。
( )内の数字は厚さ(ミクロン),ad は接着層,
R-CPP はレトルトグレードの CPP を意味している。
Go Soup(397g,サイズ181×147mm)
*
胴部:PET(12)
/ad/white PET(25)/ad/O-Ny
(15)ad/R-CPP(70)
*
底 部:PET(12)
/ad/O-Ny
(15)ad/R-CPP(70)
Skillet Sauces(255g, サイズ 181×147mm)
胴 部:Matt coat(2)/PET(12)/ad/Al(9)/
ad/MXD-6 Ny**
(15)/ad/R-CPP(70)
底部:PET*(12)/ad/O-Ny
(15)/R-CPP(70)
(*は透明 PET 蒸着フィルム **は直線易
第4図 キャンベルスープ社のレトルトパウチ
Go Soup の特徴(HP:C070)
カット性を有するナイロンフィルム)
これらのことを次世代レトルトパウチという観
点からまとめると次のようになる。
どちらの製品も透明バリアフィルムを使用し
て中身を見せているが,Go Soup で胴部に白色
PET を使用して内容物の色の隠蔽性を高めてい
る こ と( 白 色 PET は 日 本 で は 生 産 さ れ て い な
い。韓国品が使用された可能性が高い)。Skillet
Sauces では胴部表面にマットコートを使用し,
ラミネート構成にアルミ箔および直線易カット性
を有するナイロンフィルムを使用している点に注
目したい。特に後者は日本ではあまり例を見ない
が,これが熱いうちに内容物を取り出す助けとし
て定着するか注目したい。どちらにも電子レンジ
加熱時の内圧解放機構はまだ装着されていない。
第5図 キャンベルスープ社のレトルトパウチ
Skillet Sauces の特徴(HP:C071)
透明バリアフィルムでは世界のリーダーとなった
界の常識・日本の常識-どこが違う?」包装技術,平成
凸版印刷の GL フィルムは,現在では世界40カ
23年2月号(2011)
2)有田俊雄:提言2012「教訓生かし日本ブランドの復
国,1,000社以上で使用実績があるとされている
興を-3.11で気づいたこと・感じたこと」ポリオレフィ
が,今後は日本発の直線易カットフィルムや内圧
ン時報,平成24年3月27日号(2012)
解放機構などにも海外レトルトパウチ市場への進
3)有田俊雄:提言2013「今こそ包装の本質的な価値を
出の期待がかかる。
見直そう」食品包装,平成25年3月号(2013)
次世代レトルトパウチに関連して,海外で一般的
4)有田俊雄:提言2013「食品ロス低減に向けて包装が
なフレキソ印刷を使ったレトルトパウチも既に実用化
できること」ポリオレフィン時報,平成25年2月7日号,
の段階にある。これについては次回に触れること
2月17日号(2013)
にする。(第1~5図は HP にカラー写真掲載)
5)http://ckpropack.en.ec21.com/company_info.jsp
◦参考資料
6)ラミネート構成は東洋紡パッケージングプランサー
1)有田俊雄:提言2011「海外包装事情を通じて見た世
食品と容器
ビス社に依頼した。
613
2013 VOL. 54 NO. 10
●
海外技術情報●
フードトレンド・トップ 10(2)
(TOP TEN FOOD TRENDS)
Food Technology(USA)p. 25( ’13・4 )文献 № 5865
コーヒー/
(9月号よりつづく)
茶,36%
5. 真の透明性を求めて
大人の8割以上が,昨年,安全性に注目した。
がフェアト
食品の安全性を心配し17% が購入をやめており,
レードチョ
懸念している内容は,微生物汚染51%,化学薬品
コレートを
汚染51%,輸入食品49%,殺虫剤47%,動物の抗
購 入 し た。
生物質30%,アレルゲン25% であった。
食品流通が
大規模化し,
消費者の27% は,肉に含まれる抗生物質/ホ
ルモンは健康上有害であると考えている。肉購入
その信用が
客の6割は,ステロイドやホルモンを含んでい
失われつつ
ないとする表示に影響された。消費者の72% は,
あることか
家畜の飼育で人道的な対応が重要であると考えて
ら,消費者
おり,35% が「野放し鶏卵」,29% が「牧草肥育
が「フェア
牛」の表示を捜した。McDonald’s 社,Arby 社,
トレード」,
Wendy’s 社と Burger King 社は,オリに閉じ込
「 グ リ セ コムギグルテンを含まない Beanitos
チップではパッケージ中央下部に
ミックイン GMO でないことを表示。
デックス」,
めて肥育した豚の肉は使用しないと宣伝している。
2018年 ま で に す べ て の 遺 伝 子 組 み 換 え 食 品
「GMO」などの第三者機関による認証を求めるこ
(GMO)を表示するという Whole Foods’ 社の決
定は,GMO 問題を加速するであろう。2012年,
GMO を憂慮している消費者は17% 程度であり,
とは,当然である。
メニューへのカロリー表示にも透明性が求めら
大きな問題となってはいない。しかし,健康食品
れている。レストランに行く前に,3人に1人は
でのマーケティングや,極めて健康志向の高い消
インターネットで栄養情報をチェックした。35
費者向けには,GMO でないことを表示するのに
歳未満の消費者のうち4割,35歳以上では22%
ちょうど良いタイミングである。GMO 表示を求
が,カロリー表示があるレストランを選び,料理
める法案は,国会で保留中であるが,2013年3
の注文にカロリー表示が大きな影響を及ぼした。
月現在,13の州で GMO に関わる立法上の行動
アメリカまたはカナダで生産されたことを売り
をとった。GMO に対する憂慮のため,米国農務
込むことは非常に重要である(大人の91% が重
省のオーガニック基準により非 GMO であること
要視)。産地がラテンアメリカ,南アメリカ,西
がお墨付きのオーガニック認証食品・飲料の販売
ヨーロッパで満足している消費者は63%,イン
に拍車がかかるだろう。
ド,中国,東南アジア,アフリカ,中東産では1
/3以下である。
2012年,買い物客の64% が「人工甘味料不使
用」,56% が「未加工」,52% が「保存料不使用」,
6. グローバル化する類似品
消費者の37% はエスニックなフレーバーや食
28% が「グルタミン酸不使用」を表示した商品
を探した。1/4の消費者は小売りで「フェアト
品に関心を持っているが,外国食品の販売となる
レード」を捜し,昨年,52% がフェアトレード
と,それはもはや料理の問題ではない。成功させ
食品と容器
614
2013 VOL. 54 NO. 10
るには,アメリカの食品や形態になじみやすいエ
ワナ,スズキ,バラマンディ,サバ,ムツ,メ
スニックな食品,フレーバー,成分を見つけ出す
バルは,2013年のホットなメインディッシュで
ことが重要である。
あった。アメリカ料理連盟は2013年流行の調理
例えば,インドのナンはファストフードのサン
として,自家性塩づけ肉,自家性ソフト・ドリン
ドイッチ/バーガーとなっているし,メキシコの
ク/ソーダ,レモネード,酢,匠のアイスクリー
グリルサンドイッチおよびキューバのサンドイッ
ムを挙げた。消費者の2割はレストランで,14%
チは,流行しているパニーニに代わるであろう。
はお店で匠の食品を探した。匠/特製ベーコン,
ライ麦パン,ブリオッシュ・フレンチトース
チーズは2013年トップに分類される素材である。
古くから伝わっているリンゴ・豆・トマト,交
ト,ブリート,ウェボスランチェロスは,2012
年,急成長したレストラン朝食アイテムである。
配種の果物/野菜,ユニークな品種,ミクロの野
フォカッチャとバゲットは朝食で使用されるパン
菜/葉物,花のシロップ/エッセンスは2013年
のトップである。パンナコッタは2012年にレス
流行の素材である。Frieda 社では特別な最新商
トランメニューの急成長デザートで,カスタード
品として,紫サツマイモ,小型キウイ,パッショ
とムースはケーキのトップ10の一つであった。
ン・フルーツを生産している。
料理に対する知識が向上し,エスニックに対す
アメリカ料理連盟は,ホットなメニューとして
る消費者の概念が変化しており,73%の消費者
ランブータン,ドラゴンフルーツ,ポーポー,グ
は,日本の寿司は日常の主流提供品であるとみな
アバを挙げた。このほか,サツマイモ・フライ,
していた。アメリカ料理連盟の44% のシェフは
根菜,暖かい前菜サラダ,野菜チップ,野菜マリ
ホットな流行として子供用寿司を挙げ,35% は
ネも前途有望である。古代穀物は2013年流行素
寿司/寿司スタイル・アイテムを挙げた。
材の5位にランクされており,スペルト小麦,ヒ
65% はケイジャン料理,64% はギリシャ料理,
ラマメ,アマランサス,マコモもアメリカ料理連
盟がとりあげている。
63% は フ ラ ン ス 料 理,62% は タ イ 料 理,59%
はインド料理,55% はテキサス・メキシコ料理,
ピーナツ,キビ,大麦,米,豆類,ココナッツ
55% はスペイン料理,55% はドイツ料理が,い
などを製粉したものは,シェフおよび消費者の注
まや主流の料理であるという。
目を集めている。薪グリル,フランベ,焦げ,火
炎で焼く等の火に近づけてあぶり焼きすることは,
7. 農場の調理法
野趣や優れた技量を求める傾向と共通点がある。
ガーデンレストランのような地域資源,農場ブ
ランド,小規模生産者・流通業者,既に主流と
8. つまんで食べる食品
昨年のベストセラー食品の2割は,一口サイズ
なっている農家直売に対して,消費者はますます
魅力を感じている。消費者の半分以上が「ローカ
か携行型であった。消費者の45% は歩きながら
ル 」,46% は「 旬 」,40% は「 農 場 育 ち 」,28%
食べることができるスナックを望んでいる。冷蔵
は「サステナブル」の表示に注目した。
前菜/スナックは4.9% 増,冷凍前菜/スナック
は4.7% 増と成長した。2012年,消費者の69% は,
アメリカ料理連盟の2013年のホットな調理の
傾向リストで,地域産の肉/シーフードがトップ
スナックを買うために1カ月当たり2.7回,ファ
であった。消費者の2/3以上が好むカットおよ
ストフード店に立ち寄った。
び種類(例えばバークシャー豚肉あるいはアンガ
レストランで最も選ばれたスナックはサイド
ス牛肉)は,プレミアム品質のトップ要因であっ
デ ィ ッ シ ュ で37% で あ り, 前 菜 が28%, ポ ー
た。買い物客の26% は,自然かオーガニック・
タ ブ ル・ メ イ ン デ ィ ッ シ ュ が27%, サ ラ ダ が
ミートを購入し,2011年比で6%増であった。
23%,ベーカリー・アイテムが19%,デザート
ほとんど知られていなくて利用されていない種
が18% であった。一方,家庭外で食べるスナッ
類のものは,消費者の注目をひいた。アルプスイ
ク の フ ラ イ / オ ニ オ ン・ リ ン グ は,2010年 の
食品と容器
615
2013 VOL. 54 NO. 10
55% か ら2012年 の39% に 低 下 し, 宅 配 ピ ザ は
脂肪酸が心臓病のリスクを低減することを知って
49% か ら36% に 低 下 し た。McDonald’s 社 は
いた。アントシアニンとレスベラトロールは,大
Fish McBites を,Pizza Hut 社 は Pizza Sliders,
型市場を形成した。
2012年,買い物客の37% が心臓,32% ががん
Burger King 社は Cini-Minis などの小型商品を
予防,29% がカロリー,29% が消化吸収,26%
メニューに追加した。
消費者の67% はディップソースが「非常に魅
が免疫改善,25% が体力,27% が骨密度に関心
力的」と回答しており,2009年比で8% 増であ
があった。大人の2/3が,循環器の健康に関心
り,40% は,本当に欲しいディップソースであ
があり,ココアのフラボノールのように循環を促
れば,さらに高額でも購入したいと考えていた。
進する天然素材は大きな需要が見込まれる。
ニンニク,ごま,四川,ショウガ,チリ,マン
食品,飲料,代用食品,ダイエット補助薬等の
ゴーおよびピーナッツ・ソースはアジアフレー
体重管理商品の販売額は,2016年までに400億
バーのディップソースとして,チリコンカン,ピ
ドルを上回ると予測されている。消費者の1/3
コデガヨ等はメキシカンフレーバーのディップ
は,血糖値に効果のある素材を望んでいる。
長期的で持続可能なカロリーコントロールと体
ソースとして,大いに可能性がある。
ス ナ ッ ク を 選 ぶ 際 に, 女 性 の69%, 男 性 の
重コントロールは,糖尿病よりも血糖値コント
46% がより健康的なものを選択しており,2010
ロールのための市場として有望である。糖尿病の
年よりもそれぞれ23% および13% 増加した。冷
リスク要因(例えばインスリン抵抗性やメタボ
凍ヨーグルト/豆腐,フムス(中東の伝統料理),
リックシンドローム)への取り組みを支援する商
低脂肪アイスクリーム,ストリング・チーズなど
品は,手つかずの絶好の機会であり,グリセミッ
が好評である。スイート/風味の良いスナック食
ク・インデックスは,健康食品のマーケティング
品ならびに甘いデザートは2018年まで最も急成
にはうってつけである。
長するカテゴリーであると推察されている。
10. 母親
子供の健康は重要である。しかし,2010年,
9. 栄養情報
100億ドルの米国の子供向け食品・飲料市場のう
2012年, 消 費 者 の78% は ビ タ ミ ン,57% は
特 別 な 栄 養 素,45% は ハ ー ブ,42% は ミ ネ ラ
ち40% だけが,健康増進食品であった。母親は,
ルを摂取するよう努力した。消費者の44%がビ
栄養増強された食物/飲料を購入し(46%,買
タミン D,40% がビタミン C,34% がビタミン
い物客全体では39%),栄養情報やガイドライン
B,34% がオメガ3脂肪酸,26% が抗酸化物質,
を積極的に参照した(61%,買い物客全体では
25% がビタミン E ,24% がビタミン A を摂取
56%)。高ファイバー,高カルシウムの商品を購
するよう努力した。消費者の半数は,タンパク質
入する傾向が著しく高かった。
母親は,食料品店が健康な食生活をサポートす
をより多く摂取するよう努力した。
アメリカ人の9割でコリンが不足していること
べきであると(57%,買い物客全体では52%)感
からビタミン B 群強化食品は,大きな可能性が
じていた。ヨーグルト,肉/鶏肉,チーズ,パン
ある。
および生鮮品の購入の際には,オーガニック食品
を選択する傾向が強かった。
消費者の55% は,強化栄養素の生体内利用に
オーガニック食品を購入する可能性は冷凍食品
関する臨床試験に関心がある。プレバイオティ
クスは今年大型市場となると予測されている。
(36%),パスタ(30%),ソース(28%),マリネ
2012年,大人の31% がプレバイオティクスに関
(28%),スープ(26%),チョコレート(22%),
心があり,17% はより多くのプロバイオティク
朝食用シリアル(17%)であった。新鮮な肉/
スを摂取するよう努力した。一価不飽和脂肪酸は
シーフードを購入する際には,食品安全性/汚
未開発の大型市場である。74% は,一価不飽和
染が主な関心事(61%,買い物客全体では56%)
食品と容器
616
2013 VOL. 54 NO. 10
キンナゲットを提供している。Darden 社のレッ
であり,成長ホルモン,GMO に反対であった
ド・ ロ ブ ス タ ー 等 の レ ス ト ラ ン で は, 子 供 メ
(63%,買い物客全体では58%)。
母親の子供向けのよりヘルシーな食品に対す
ニューからフライとソーダを無くした。成人向
る 需 要 は, 家 庭 外 に も 及 ん だ。 ア メ リ カ 料 理
け料理の量を減らした子供版,エスニックな子
連 盟 等 は,2013年, 子 供 向 け の ヘ ル シ ー な 食
供料理,子供用グルメメニュー,子供用寿司は,
事は3番目に重要な項目として評価している。
2013年の大きなトレンドである。早朝に営業し
McDonald’s 社 は,Happy Meals で の フ ラ イ の
ているファストフード店における最も強い要望の
提供サイズを小さくした。Chick-fil-A 社は,油
一つが,子供用朝食での健康的なメニューである。
摂取を減らすため子供用にパン粉を使わないチ
(林 清)
●
海外技術情報 ●
炭酸飲料の課題と進化
(Refreshing the Category)
Beverage Industry(USA)p. 242( ’
13・4 )文献 № 5871
過去5年間で炭酸飲料の全世界での新製品発
若者の人気を唯一維持している CSD ブランドは,
売点数は著しく多くなったという (Innova 社リ
PepsiCo 社のブランド Mountain Dew である。男
ポート )。確かに,米国は炭酸の新製品発売活動
性への訴求を強化するために,同ブランドはパッ
の点では今もなお最も活発な国だが,炭酸飲料の
ケージおよびマーケティング素材にある商品名を
金額ベース売上高は0.8%とわずかながら落ちて
Mountain Dew から Mtn Dew に変更した。また,
28億7千万ドルとなり,数量ベースでも1月27日
同ブランドは宣伝にソーシャルメディア戦略を使
までの52週間では昨年同期比で約2%減少した
い,狙いの消費者グループに到達しているという。
(Symphony IRI 社リポート ) 。
CSD の飲用機会を拡大すべく,飲料メーカーは
消費者のより健康的な飲料への選好が次第に
さまざまな時間帯にふさわしい位置づけの新製品
高まるにつれ,炭酸ソフトドリンク(以下 CSD)
を発売してきた。例えば,今年始めに PepsiCo 社
カテゴリーの苦戦は続いており,加えて,同カテ
は16オンス缶当たりカフェイン92㎎,80kcal で果
ゴリーは,エナジー飲料や RTD ティーといった
汁5%の Kickstart を,朝の飲用機会に位置づけ,
その他のカフェイン入りセグメントから,挑戦を
Mountain Dew ブランドで発売した。
受けているという (Mintel 社リポート ) 。
これに対し,The Coca-Cola 社は,カフェイン
とは言っても,CSD は米国の消費者に広く浸
フリーの Coke Zero を全く正反対の時間帯である
透しているのだが,しかし健康やウェルネスの面
終業時に飲むようオランダで発売した。消費者が
で直面する課題に加え,男性消費者の基盤を維持
一日の仕事をやり遂げるために,PepsiCo 社は日本
することに汲々としているという (Euromonitor
では Pepsi EX Extra(長時間労働用にカフェイン
Intenational 社リポート ) 。
を38mg と2倍に強化)を発売した。
男の世界
ま た, 男 性 消 費 者 を 誘 引 す る べ く,PepsiCo
さらに,CSD は20歳以下の男性消費者に人気を
社 , The Coca-Cola 社 , それと Dr Pepper Snapple
失いつつあると Euromonitor 社は報告する。カフェ
Group(以下 DPS)社の各社は,男性向けに特
イン値が高いエナジー飲料の方が男性には好まれ,
別に調合したゼロカロリーおよび中間カロリー
それ故元気回復には,CSD よりエナジー飲料を選
のコーラを米国で発売した。The Coca-Cola 社の
ぶ傾向があるという。
Coke Zero や PepsiCo 社の Pepsi Max のようなゼ
食品と容器
617
2013 VOL. 54 NO. 10
ロカロリー商品は,通常の味覚特性をもちながら
独自の中間カロリーソー
文字通りカロリーはゼロであるように調合されて
ダのテストを開始した
いる。一方,DPS 社は男性に提供する Dr Pepper
(Sprite Select と Fanta
Ten を中間カロリーで売りだした。
Select は,それぞれカロ
Coke Zero は中でも急速に成長したが,その第
リーが通常製品の50%し
一の理由は,マーケティングが女性ではなく男性
かない)
。2011年 の Dr
向けであったことだ。男性は一般的にはダイエッ
Pepper Ten の発売に続い
ト飲料には近づかない。ダイエットという言葉が
て,DPS 社は今年,限定
女性的と認識されているからだが,消費者に対す
市場の10カロリーシリー
る Coke Zero の訴求は,ダイエット飲料だと実際
ズ を7UP, Sunkist, A&W,
に言わずにゼロカロリーであることを理解させて
Canada Dry, RC 各ブ
いる。そのことから,Coke Zero は Diet Coke 消
ランドにも拡大した(Innova 社リポート)
。
費者と重複することなく,その消費者基盤を活用
「消費者が日々健康志向になるのは驚かないが,
できたのである。
飲料購入の際には味覚が今なお支配的である」と
2008年には,PepsiCo 社は Diet Pepsi Max ブラ
DPS 社社長兼 CEO の L. Young 氏は語った。
「だか
ンドを Pepsi Max として,ダイエットという表示
ら,10シリーズを作った。これは,通常のソフト
がなくてゼロカロリーが欲しい消費者,特に男性
ドリンクと同じ素晴らしい味覚と口当たりであり
を獲得することを狙って,ブランドを再構築した。
ながら,12オンス当たりわずか10kcal しかない」
。
Coke Zero のように,Pepsi Max もカロリーがゼロ
低カロリーの位置づけに加え,Dr Pepper Ten
で,通常の Pepsi に味が近い特性を持っていること
はガンメタル・グレーのカラーと「女性向きでは
を特徴とする。
ない」という物議を醸すキャッチフレーズで,男
女性消費者向けには,PepsiCo 社は Diet Pepsi
性だけに的を絞ったマーケティングキャンペーン
ブランドでマーケティングとパッケージングを担
を打った。また,消費者のアイデンティティーに
当するブランドアンバサダーを使っている。例え
的を絞った,「アイデンティティーとしての飲料」
ば,昨年の夏には Diet Pepsi ファンに「the Sip in
というコンセプトは,最近の宣伝キャンペーンに
Style Sweepstakes(Pepsi をおしゃれに飲んで大当
も継承され,多くの新製品発売はこの「個とし
たり)
」という懸賞を仕掛けた。これによって彼女
ての消費者」手法と同様のスタンスをとる。Dr
らは,口紅や女優 Sofia Vergara のパーソナルスタ
Pepper Ten のように,性別が特定されていよう
イリストによるトータルなイメージチェンジ,そ
が,一部のスポーツドリンクのように,ライフス
してニューヨークで1,000ドルの買い物三昧といっ
タイルに焦点が当てられていようが,ニッチ・ポ
た賞品を得る機会に参加できる。
ジショニングが将来も重要なマーケティングツー
中庸の道
ルであるのは変わらない。飲料にまつわるストー
昨年,PepsiCo 社は中間カロリー Pepsi Next を
リーを,「個としての消費者」である個人に売り
全米で発売した。Pepsi Max と同様にそのソフトド
込む能力があれば,自分と重なるイメージを求め
リンクは,
通常の Pepsi に近い味覚を特徴とするが,
る消費者と繋がる鍵となりうる。
特許をもつ甘味料をブレンドし,糖分を60%もカッ
CSD カテゴリーを全体で見ると,中間カロリー
トしたと同社はいう。初年度は推定小売りベース
ソーダが今は流行しているようである。「中間カ
売り上げで約1億5千万ドルを達成したと,副社
ロリーソーダコンセプトは,消費者の選択を増や
長兼 CFO の H. Johnston 氏は CAGNY
(ニューヨー
すには,市場がカテゴリー別に製品差別化をどう
ク消費者アナリストグループ)会議で発言した。
続けていくかを示す,もう1つの事例である」と
同様に,The Coca-Cola 社は,昨年アメリカで
Innova Market Insights 社市場アナリストの N.
食品と容器
618
DPS 社の7UP TEN
2013 VOL. 54 NO. 10
勢いを得ていると Innova 社リポートは語る。
例 え ば, 昨 年 の 夏 に は ミ ネ ア ポ リ ス の
Boundary Waters Brands 社 が シ ョ 糖, ス テ ビ
ア,モンクフルーツ ( 羅漢果 ) で甘味付けされた,
JOIA 無添加ソーダのラインに,天然甘味料のト
レンドを反映して2つのフレーバーを追加した。
新しいフレーバーはジンジャ―,アプリコット&
オールスパイスとオレンジ,ジャスミン&ナツメ
グである。
CSD は各地域特有のトレンドに,より焦点を
ステビア甘味料を使用した ZEVIA 天然ソーダ
絞り始めたかもしれず,新興国はグローバル製造
Tremellen 氏は言う。「例えば,ゼロ/ダイエッ
者が看過できないローカルブランドやなじみのフ
ト飲料にうんざりさせられた男性,あるいはもと
レーバーの(地域を越えた)拡散に遭遇している
もとのカロリーが高い炭酸よりは,糖分が少ない
と Euromonitor 社の Feliciano 氏は言う。
人工甘味料好きの健康志向の消費者といった広範
「東欧のクワス *1) ベースのドリンクであれ,ラ
多様な消費者にとって,中間カロリーソーダは魅
テンアメリカのガラナ炭酸,あるいはインドのレ
力的だから,消えずに残ると思う。同様に,カロ
モン・ライム飲料であれ,ローカル文化の典型と
リー負荷を軽減するためにミキサー(アルコール
もいえる飲料がもつ可能性に,大企業は気付いて
を割る飲料)として,中間カロリーソーダはバー
いる。行きつく先はソフトドリンクの多種多様な
やクラブに行く若い男性や女性にも訴求できる可
ポートフォリオ(選択肢)だ」と同氏は語る。
能性がある」。
こうしたトレンドはアメリカの新製品にも影
消費者が糖分に背を向けて,天然の代替品に向
響を及ぼす。例えば,昨年の終わり頃,フロリ
かうことが続いていることから,中間カロリー
ダ州 Ft.Lauderdale 市の Pure Ally 社がクワスを
ソーダやステビア甘味料のソフトドリンクは成功
モデルにしたノンアルコールのモルト飲料である
するはずだと Innova 社リポートは述べる。全世
“Kwass Up” を発売した。昨年の秋にはペンシル
界でステビアの採用は2012年前半では41.6%も
バニア州 Easton 市の Bebidas USA 社は,パラ
前年同期に比べ増加した。
グアイで人気がある Planet Pulp 炭酸フルーツ飲
コーラの先を見つめて
料を米国に導入した。その製品ラインには数種の
Euromonitor 社2012年5月リポートによると,
シトラスフレーバーだけでなくガラナとダイエッ
レモネード,ライム,オレンジといったコーラ以
トガラナがある。
外のフレーバー CSD の成長がコーラ CSD 全体
「多様な範囲の消費者グループの要求を満たし
の落ち込みとほぼ等しくなったという。つまり,
続けるためには,ソフトドリンク製品の新発売活
消費の移行はフレーバー炭酸への消費者の好みの
動は成長しなくてはならない。中間カロリー飲料
移行を表す。コーラ CSD は,成分が同じタイプ
や天然甘味料に関連した健康的な革新によって,
であり,カロリーの数値が同等だとしても,その
このカテゴリーの消費者は増大するだろう。つ
他の炭酸より不健康だと,しばしば消費者に受け
まり,誰にとっても価値ある CSD が何かしら存
取られていると同リポートはいう。にもかかわら
在しているだろう」と Euromonitor 社 Feliciano
ず,コーラは依然 CSD カテゴリーでは最も人気
氏は結ぶ。 (常盤恭徳)
のあるフレーバーであり,シトラスフレーバーが
CSD では2番目に人気のあるフレーバーで,さ
*1)ロシア・東欧の伝統的な,ビールに似た褐色で微
炭酸の低アルコール性飲料
らにハーブとスパイスを特徴とするニッチ飲料は
食品と容器
619
2013 VOL. 54 NO. 10
●
海外技術情報 ●
食品安全強化法(FSMA)対応のための5つのキーワード
(Top Five Ways to Get Your Plant Sanitation FSMA-Ready)
Food Engineering(USA)p . 89(’13・4 )文献 № 5870
FSMA が 成 立 し て 2 年 が 経 過 し た 今 年2013
業界のコスト負担増は初年度で約7億100万ド
年1月,FDA は HARPC(危害分析とリスクに
ル,1工場あたりでは1,000 ~ 25,000ドルと見
基づいたその予防管理)規則を発布すると共に,
積もっている。ある食品安全コンサルタント会社
1986年以来大きな改正のない GMP(適正製造規
にいわせれば,実際のコスト負担はおそらくもっ
範)の見直しを進めるとしたが,特に食品工場の
と大きいが,食品媒介の疾病に掛かっているコス
衛生に焦点を当てて FSMA への対応準備を促し
トを見れば,いま行動を起こすことが必要であり,
ている。
そのことを FSMA は食品メーカーに求めている
のであり,そうすることによってより効果的な衛
準備が肝心:
生プログラムが実現できれば,それは事業の効率
FSMA の基幹をなす HARPC は,内外の食品
化にもつながるだろう,という。
製造工場に対して食品安全プランの策定と予防管
理の実施,そして関連記録の維持を求めるものだ
差し当たって投資や訓練のためのコストが発生
が,基本的な内容はこれまでの果汁・海産物に関
するにしても,何もしないでいることによるコス
する HACCP 規則と似たようなものとなってい
トの大きさ,つまり,ブランド価値の毀 損や顧
る。安全プランの策定にあたってはその施設にお
客の喪失などを考える必要がある。何年か前に
ける微生物学的,化学的,その他の危害の可能性
Kellogg 社などが当事者となったピーナツ食品の
について分析し,これらを軽減するための予防管
食中毒事件で,数百万ドルあるいは数千万ドルの
理を行うことを求めている。一方,GMP 関連の
コストが掛かったことをみれば,この食品安全の
措置としては食品アレルゲンと病原菌の管理,従
ための投資コストは当然のこととして受け止める
業員訓練,食品接触面の消毒などについて,単な
べきなのだ。FSMA に対応するための費用が製
る勧告ではなく命令とすることを求めている。こ
品1ケースあたりでいくら掛かるかということだ
れまでは,消毒や清掃をして,その結果工場が清
けを見るのではなく,それらの投資が労務費や生
潔に見えて異臭などもなくなればそれで終わりと
産効率,その他に及ぼす効果を考えるべきで,そ
いうことになり,結果を数値的に検証するという
の意味では技術陣だけでこの FSMA への対応に
ようなことはなかった。今回の規制では,消毒を
取り組むのは間違いであり,原価管理の責任者も
すればその証拠を示し,記録として残すことが必
プロジェクトに加えるべきなのである。
き そ ん
要とされるようになる。
1.アタマを切り替える
FSMA が最終的に目指すのは米国の食品安全
アトランタに本拠を置く食品充填下請けメー
システムを強化し,食による疾病の経済的負担と
カ ー の GSC Packaging 社 で は,2012年 に10万
国民の保健のコストを減らすことにある。2010
平方フィートの最新工場を建設したが,その衛
年の統計では,この食品に起因する疾病による経
生・品質プログラムの策定にあたっては薬品業界
済損失は毎年1,520億ドルに及ぶという。FDA に
の基準を取り入れたため,HARPC の求める要件
よれば,今回 FSMA の規制対象となる食品に関
を凌駕するものになっているという。「購入した
わる病気は年間100万件あり,これを防止できれ
建屋に一から手を入れ,最高レベルの衛生管理が
ば,その効果は年間20億ドルになるという。
できるようにした。コストのことを考えないわけ
りょうが
FDA の試算では,HARPC 実施に伴う食品
食品と容器
ではなかったが,『品質第一』という社是のもと
620
2013 VOL. 54 NO. 10
にこれに反することがないようにするための投
4.衛生訓練が重要
HARPC や GMP が求める衛生訓練の役割とい
資は惜しまずにやった」と同社は言う。PepsiCo
International 社の原料食品安全・品質担当責任
うものは明確には定義されていないが,それが予
者を務めたこともある食品安全コンサルタントの
防管理上決定的な役割を果たすことは明らかだ。
J. Roberts 氏は言う。「今回の HARPC の対象と
GSC Packaging 社では従業員のために充実し
なる食品会社はアタマを切り替える必要があるだ
た個人訓練プログラムを用意しているが,それだ
ろう。殊に,強力な食品安全システムを備えてい
けにとどまらず,工場に出入りする業者に対して
ない中小企業の場合,会社トップに対してそれが
も同じ訓練を施している。さらに,設備のメンテ
余計な投資ではなく,また,単に FSMA に対応
ナンス要員にも病原菌繁殖への対応の仕方を教え
するためというだけではなくて,事業に不可欠な
ている。そうすることによって,彼らも製造ライ
ものであることを分かってもらう必要がある」。
ン内での作業をスピードアップすることができる
し,それがコストの節減にもつながるからである。
2.強力な衛生管理体制への基礎固め
HARPC 規制のもとで最も重大なステップは,
5.実証と検証
プロセスの実証・検証と予防管理というのは
まず徹底的な危害分析を行うことである。これな
しには適正かつ効率的な(食品事故)予防管理と
HARPC の規則のもうひとつの重要な側面である。
いうのはあり得ない。前出の GSC 社の場合,製
実証と検証ということ自体は食品技術者にとっ
品が消費者に届くまでの事業のあらゆるプロセス
て別段目新しいことではないが,工場のオペレー
にわたって徹底的なリスクアセスメントを行っ
ションに携わる者には分かりにくいことかもしれ
たという。工場の床,天井からダストボックス,
ない。簡単にいえば,HARPC の食品安全プラン
フィルター,等々に至るまであらゆるものについ
の中でいうプロセス,手順そして予防管理という
て検討し,例えば,コンプレッサーのエアーもそ
ものは,システムが効果的に機能しており,かつ
れが食品の表面に接触するというので,2ミクロ
その結果の再現性が極めて高いことを実証する必
ンという微細なフィルターにかけるというような
要があるということである。そして,検証という
ことまで行ったという。
のは,システムなりプロセスが実証されていると
いう仮定のもとに,これを継続的に監視し,所期
3.機械・設備の衛生設計原則の導入
の結果がコンスタントに生み出されることを確認
90年 代 に 調 理 済 み 肉 食 品 工 場 で の 病 原 菌 排
するということである。 除プログラムを作ったことで知られる Land O’
Frost 社は,機械・設備の衛生設計は予防管理プ
例えば,食品接触表面の除染に高輝度パルス光
ランに不可欠であると主張する。「機械によって
を使ってリステリア菌を5ログのレベルに減らそ
は掃除が不可能なものもあり,これをなんとか掃
うという場合,単位面積あたりの照射量と時間が
除しようとすればそのコストは膨大なものとなる
これに適したものであるかどうかを証明する実験
が,不衛生な機械・設備を使うことでもたらされ
結果を準備するのが実証であり,検証というのは,
る結果というものはもっと恐ろしいものだ。その
その接触面から綿棒で検体を採取し,リステリア
意味で,機械メーカーにとっては最先端の衛生的
菌の量が所期のレベルまで減っているかどうかを
機械を開発する絶好のチャンスだと思う」と言う。
測るというようなことである。見た目の清潔さだ
HACCP の手法で考えれば,この機械は洗浄す
けで衛生的かどうかを判断するのではなく,実証
るためには分解しなければならないとか,ここに
と検証というステップこそがこれからは必要にな
ヒビが入っているのでそこが微生物繁殖の温床に
るのである。
なるとかが分かるので,こうしたことを設計思想
良き防御は良き攻撃:
FSMA の施行はまだ1年以上先とみられてい
に入れた機械・設備を作れば,それが工場の能率
るので,その影響を受ける食品会社,殊に中小の
アップにつながるというわけである。
食品と容器
621
2013 VOL. 54 NO. 10
会社にとってはいまが科学的な食品安全の体制を
しているわけでもないし,工場の何をどうせよなど
整えるチャンスといえる。その大前提となるのが
と言っているわけではないが,その細則が決まる前
病原菌の除去・洗浄ができる機械・設備の準備で
に食品メーカー自身がこうした準備をしておかなけ
ある。FSMA 自体はそうした個々の機械やその
れば,いずれ FSMA によって罰せられるという結
設計者,エンジニアなどについてどうこうと規定
果を招いてしまうことになるだろう。
(大池静男)
●
海外技術情報 ●
オメガ脂肪酸の利点と飲料への適用
(Counting the Benefits of Omega Fatty Acids)
Beverage Industry(USA)p . 54(’13・4 )文献 № 5872
「アメリカ人の食事は,日本や中国などの魚を
と Packaged
主なタンパク源とする国に比べ,魚の消費量は
Facts 社 の 報
少なく,オメガ脂肪酸のそれも少ない」と LA の
告に述べてい
Crowley にある The Wright Group 社 CEO の S.
る。
「 こ れ は,
Wright Ⅳ氏は言う。
「実際,アメリカ人の1日の平均のエイコサ
40 % 以 上 の
ペンタエン酸 (EPA) およびドコサヘキサエン酸
アメリカ人が
(DHA)長鎖オメガ3脂肪酸消費量は,185mg
薬を服用する
にも満たないが,各国の専門家は250~500mg
ことができな
を推奨している」とミネアポリスにある Cargill
い,あるいは,
社の開発担当副社長補佐の L. Debonte 氏は,健
したくないと
康栄養調査データを引用し,述べる。
いうことと関
Oceans Omega 社は EPA とEPA脂肪酸
を強化した飲料 Omega Infusion を上市
メリーランド州ロックビルの Packaged Facts
係し,飲料業界にとっては消費者の要求に応える
社によると,オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸の
好機である」とニュージャージー州パラマスに
理想的な摂取割合は1:1から4:1の間である。
ある Mycell Technologies 社の子会社の Oceans
オメガ6脂肪酸は大豆,種子油,畜肉,鳥肉,卵
Omega 社の共同設立者で最高執行責任者,最高
に含まれ,オメガ3脂肪酸はウォールナッツ,魚
技術責任者の V. Berl 氏は言う。
や藻類の油に含まれる。しかし,アメリカ人の
「飲料業界は,健康および栄養の供給のすばら
消費割合は10:1から20:1という傾向がある。
しい運び手であることを示している。メーカー
この,オメガ3,オメガ6脂肪酸のバランスの悪
は,炭酸飲料が肥満の流行の根底にあるだろうと
さは循環器系疾患,関節炎,アトピー性皮膚炎,
いう認識を克服するため,製品に栄養を加えるこ
アルツハイマー病など,さまざまな病気の原因と
とで反撃に転じようとしている」と The Wright
なる,と2011年6月の「アメリカのオメガ3食
Group 社の Wright 氏は言う。
The Mintel Global New Products database
品と飲料 第3版」で述べている。
オメガ3脂肪酸の不足は,記憶力,視力の低
によると,2012年2月から2013年2月まで,オ
下,神経痛,免疫機能の減少,トリグリセリド
メガ脂肪酸を含んだ70以上の飲料が世界的に発
および低密度リポタンパク質(LDL)レベルの増
売された。さらに,食品,飲料,ペットフード,
加,膜機能障害,高血圧,不整脈,学習障害,更
サプリメント,臨床栄養,製薬,幼児用調製粉乳
年期の不快感,子供の発育遅延などの原因となる,
部門における EPA および DHA 強化製品への消
食品と容器
622
2013 VOL. 54 NO. 10
費者の支出は2011年には254億ドルに達し,売
げ,心疾患やガンを予防,糖尿病や炎症を制御抑
り上げの42.6%は北アメリカが占めたと,2012
制し,カルシウムの吸収などをも促進する,と
年9月の「世界的 EPA/DHA オメガ3製品市場」
Packaged Facts 社は報告している。「実際,オメ
で Packaged Facts 社は述べている。
ガ3類はさまざまな効用に常時使用されているた
めに,この種の脂肪酸は過剰摂取にはなりにく
専門家は,消費者の意識や栄養強化技術の向上
により,オメガ脂肪酸市場は成長を続けると予測
い」と The Wright Group 社の Wright 氏は言う。
している。「我々の予想では,オメガ3脂肪酸は
「循環器系や抗炎症へのオメガ3脂肪酸の効能
今日のビタミン C のように飲料として一般的な
はベビーブーム世代の消費者をひきつける」と
ものになるだろう」と Oceans Omega 社の Berl
Omega Protein 社 の Hernandez 氏 は 言 う。 ま
氏は言う。Packaged Facts 社の予想では,2016
た,「母親は自分の子供の脳の発育に十分なオ
年に EPA および DHA 添加製品の市場は347億ド
メガ3類を摂取させることに特に関心がある」
ルに達し,その内,北アメリカの売り上げが130
と The Wright Group 社の Wright 氏は加えた。
億ドルに,また同時期の EPA/DHA 強化食品・
「Packaged Facts 社は,飲料メーカーはオメガ3
飲料の世界での売り上げは102億ドルとみられて
類をエナジードリンクや栄養ドリンクなどの機能
いる。
性飲料に添加することを勧める。血中コレステ
オメガ脂肪酸について
ロールを下げる研究において,オメガ6類の適切
オメガ脂肪酸は,脂肪酸鎖のメチル側末端から
な量が明らかにされているが,オメガ3類とのバ
数えた最初の二重結合の位置で番号付けされる,
ランスが悪いと,2種類の脂肪酸の構造が似てい
とヒューストンの Omega Protein 社加工開発部
るため,オメガ6類の量によってはオメガ3類の
の Ernesto Hernandez 博士は説明する。
「つまり,
効果を妨害し得る」と Oceans Omega 社の Berl
オメガ3脂肪酸は3つ目の炭素に,オメガ6脂肪
氏は言う。
「オメガ9脂肪酸の代表はオレイン酸であるが,
酸は6つ目の炭素に最初の二重結合を持つ」と彼
人体はそれを微量に生産できるため必須脂肪酸で
は言う。
「オメガ3脂肪酸およびオメガ6脂肪酸は多価
はない。オメガ6類と同様,量のバランスが悪い
不飽和脂肪酸であるとされ,そのいくつかは必
とオメガ9類は,オメガ3類の有益な効果を妨害
須脂肪酸であり,人体にとって不可欠でそれら
する」と同氏は加える。
を食事から得なければならない」と The Wright
魚油の適切な利用
「飲料市場において,オメガ3脂肪酸が含まれ
Group 社の Wright 氏は言う。
る飲料は,冷蔵用ジュースや乳飲料が主流である。
Cargill 社の Debonte 氏によると,最も一般的
に使われるオメガ3類には,ウォールナッツや
オメガ3脂肪酸は酸化に対し,不安定であり,よ
亜麻種子,大豆,キャノーラ油に含まれている
り低温にすることで酸化を抑制でき,また,容器
α - リノレン酸(ALA)や脂ののった魚や魚油中
を閉めれば,脂肪酸の空気への暴露やそれ以外の
にみられる EPA,脂ののった魚,魚油,藻類の
変質は最小限に抑えられる」と Oceans Omega
油にみられる DHA などがある。「魚油および微
社の Berl 氏は述べている。
細藻類由来のオメガ3類は長鎖脂肪酸と考えら
「 オ メ ガ 3 脂 肪 酸 の 普 及 の た め に,Oceans
れており,そのうち EPA および DHA は最も生
Omega 社はさまざまな飲料用に,製品の味,に
物活性があり,一方 ALA のようなオメガ3類は,
おい,テクスチャーに影響しない植物,魚由来の
非水産物由来の短鎖脂肪酸であり,EPA,DHA
オメガ3脂肪酸を高濃度に含んだ安定なエマル
と比較して,それほど代謝的に有効でない」と
ションを開発している」と同氏は言う。
「飲料中における水産物由来のオメガ3脂肪酸
Omega Protein 社の Hernandez 氏は言う。
の酸化は,魚臭さの原因になり,不適切な安定化
オメガ3脂肪酸はコレステロールや血圧を下
食品と容器
623
2013 VOL. 54 NO. 10
処理は魚の味を生じる可能性がある」と専門家
る た め に,Cargill 社 は BASF 社 ( ド イ ツ ) と 提
は言う。「この問題を乗り越えるために,Omega
携し,種子に EPA と DHA を持つキャノーラ品
Protein 社はメンヘーデン油を精製し,臭いを取
種の開発に取り掛かる」と Cargill 社の Debonte
り除き消費者の口に合う油を製造する」と同社
氏は言う。
の Hernandez 氏は言う。「さらに,味の問題を
また,「The Wright Group 社のマイクロカプ
解決するために,飲料メーカーはマイクロカプセ
セル化された野菜由来オメガ3粉末のような非水
ル化を利用できる。マイクロカプセル化は味やに
産物の供給源は,安価であることに加え,飲料に
おいを改善するだけでなく油焼けや色調,その他
も使いやすく,ベジタリアン消費者への宣伝にも
の問題を引き起こすミネラルとの相互作用も防ぐ。
なる」と同社の Wright 氏は言う。
The Wright Group 社が提供するマイクロカプセ
「飲料メーカーは飲料用の安定かつ安価なオメ
ル化された魚や藻類由来のオメガ3粉末は,他の
ガ3脂肪酸の混合された原料ミックスを見つけて
成分にも受容されるため処方が容易になる」と同
も,消費者にその素材と関連する健康表示を提示
社の Wright 氏 は述べる。
するという課題に直面する」と Omega Protein
「水産物由来のオメガ3脂肪酸は他の脂肪酸よ
社の Hernandez 氏は言う。また,「政府直属の
り代謝的に有効であるという傾向があるが,高
健康関連機関は,オメガ3脂肪酸の1日の推奨摂
価である」と専門家は言う。2月にオランダの
取量の設定に手間取っている」と同氏は言う。た
DSM Nutritional Products 社は魚由来のオメガ
いていの先進国は,ある種の推奨摂取量を設定し
3製品の国際的な価格が,貿易費,原料費,限ら
ている。1日の推奨摂取量の設定は,消費者への
れた資源量やその需要の高さのために最低15%
情報伝達をより簡単にし,明確な商業用ガイドラ
上昇したことを公表した,と同社は言っている。
インを製造者に提供するための一助となる。
(岡崎 樂)
「より安価なオメガ3脂肪酸の供給源を提供す
●
海外技術情報 ●
昔ながらのコンフォート食品
(A Flair for Comfort)
Prepared Foods(USA)p . 29(’13・4 )文献 № 5867
い
作るのが目標となる。
心癒やされる家庭料理の商品化
ポットパイ,ポットロースト,チキンスタッ
調理する量の違い
おそらく家庭料理を商品化する上で最も難しい
フィング,ブラウニー,マッシュポテトなどの昔
から親しまれてきた家庭料理は強い情緒的な愛着
のは,家族の人数分のレシピを数千食以上の分量
心を感じさせる。おばあちゃんが作ってくれたブ
に合ったものにしなければならないことだ。素材
ルーベリーバックルもあれば,代々伝わるエス
の量を増やして回転釜や二重釜で調理すれば,家
ニック料理や子供の頃に大好きだった食べ物もあ
庭料理と同じものができるとは限らない。投入し
る。こうした料理を商品として大量生産するには
た素材が釜の深さに対して少なすぎたり多すぎたり
調理面からの見直しが必要となる。味,質感,外
して,まずは水分量が問題となる。
観を元に商業化するための調理法を開発してゆく。
家庭料理でとろみを付け,また,特にソース類
新たな素材の追加は最小限に抑え,添加剤はどう
の味を出すのに小麦粉が使われるが,消費者が解
しても必要なときにのみ使用するよう心がけるこ
凍,再加熱する段階でソースがゆるくなりすぎな
とが望ましい。できるだけ家庭料理に近いものを
いようにするために,小麦粉と別のスターチを併
食品と容器
624
2013 VOL. 54 NO. 10
ど,調味料が
翌 日 ま で24
時間浸された
後の方がおい
しくなる理由
なのだ。
油やバター
が入った料理
では,家庭で
少量を調理す
るときよりも
用するのが一般的だ。完全に小麦粉を使わないレ
長い時間を掛
シピに切り替えることが必要となる場合もある。
小麦粉を使用する場合には,酵素が変性するよう
けると分離が 成分を閉じ込めている揮発性油分は家
生 じ や す い。 庭での調理とは異なった挙動を示す。
に十分な温度で調理することが必要だが,他の素
油の分離を防
材や添加したスターチに高温の影響が出たりする
ぐためによく
こともある。ほとんどのスターチは完全に膨張す
大豆のレシチンが使われるが,商品を家庭料理の
るまで高温で加熱するので,十分な水分を保つこ
ような見栄えにするためにあえて油がある程度分
とも必要だ。調理時間は調整を要するが,野菜類
離するような作り方をすることもある。乳製品を
や動物タンパクなどの固形物素材のほとんどは,
使ったソースのような製品に適量のレシチンを使
家庭料理の材料比率をほぼそのまま生かせる。素
用すれば一部の油分が分離して家庭料理のような
材の全体量を決める上では,肉類は加熱処理済み
見栄えになる。
大量に調理すると,スパイスやハーブ
味付けを工夫することでムラの無い本
物の味が出せる。
のものではなくできるだけ生のものを使用すると
家庭のレンジで深鍋を使って調理する,高脂
よい。肉類は一度加熱処理してしまうとソースや
肪でクリーム状の乳製品をベースとしたソース
スープの味が馴染まなくなってしまう。
を,二重釜を使って生産しようとすると,とりわ
な
じ
家庭料理を商品化する上では,できるだけもとも
け油分が大量
との形に近いものにすることが重要で,調理したま
に分離する場
まのパックか冷凍パックにすればよい。商品化レシ
合がある。単
ピでは,調理の過程で果実や野菜から出てくる水
純にレシチン
分を考慮して,水の投入量を調整する必要がある。
の使用量を増
やしても効果
家庭料理のような見栄え
スパイスや食塩の効果は幾何学級数的に高まる
がないが,レ
ので,素材の全体量と同じ比率で増量したのでは
シチンの分子
若干濃すぎることになる。ハーブは単純に増量す
はバーベル状
ると料理の質感や見栄えを悪くし,草のにおいや
になって片方
苦みが出てくる。スパイスやハーブの香りは揮発
の端が油分と
性油分に閉じ込められていて,調理の過程で解放
結び付き,も
されるためだ。ほとんどの家庭料理のレシピは少
う片方は水分
量を短時間で調理するものなので,揮発性油分が
と結び付くと
味の成分を開放するだけの時間が与えられない。
いう性質があ ストロベリーは心を癒やし超ヘルシーな
るため,水を 2010年代の最も時代に合った食材だ。
これがスパゲティソースやスープ,チリソースな
食品と容器
625
2013 VOL. 54 NO. 10
加えればレシチンがより効果的に油分を取り込み,
レートと同じ
まともなソースに仕上がる。生の乳製品も使用で
ようにスイー
きるが,チーズは問題となる場合がある。十分な
ツの分野の心
チーズ風味を出すために必要な量のチーズを使う
を癒やしてく
と糸を引くような状態になったり脂ぎったものに
れる代表的な
なったりして商品にならないことがある。この場
食 材 だ。U.
合には,チーズの使用量を減らして濃縮フレーバ
S. Highbush
と併用すれば,十分な風味を出しながら質感のよ
Blueberry
い製品を作ることができる。
Council 社
の産業スペ
時代のトレンド
チーズは心を癒してくれる重要な食材
だが,その味を活かすのは難しい。生
のチーズの量を減らして天然濃縮チー
ズフレーバーと組み合わせればチーズ
の味を出しながら質感の良い商品がで
きる。
おばあちゃんが作ってくれる料理はおいしいし
シャリスト T.
心を癒やしてくれるが,これを商品化するとなる
Payne 氏 に
とどう市場を開拓してゆくかが問題だ。単に本物
よれば,それ
の味に仕上げる
は,用途の幅広さ,入手のしやすさ,いろいろな
だけでなく,時
加工品がある,といった特徴を備えているためだ。
代のトレンドに
丸ごと,あるいはさいの目切りにして乾燥させた
合ったものにし
ブルーベリーは,焼き菓子に甘みと深い味わいを
なければならな
持たせ,その青い色が人の目を引き付ける,と同
い。無塩,無脂
氏は言う。
肪にして,しか
凍結乾燥したブルーベリーを使えば新鮮な歯ご
もそう感じさせ
たえ,風味,本物の果実の味が出せる。焼き菓子
ない,というよ
には,丸ごと瞬間冷凍したブルーベリーを解凍せ
うな工夫が必
ずにそのまま利用してもよい。ブルーベリーの
要 だ。 例 え ば,
ジュースやピューレは pH が低いので味にピリッ
PepciCo 社 は
とした感じを与え,また,貯蔵時の安定性を高め
Frito-Lay ブ ラ
ンドのチップの
塩の効いた味を
損なわずに塩分
を減らす方法を
る効果がある。粉末状にしたものをチョコレート
心を癒してくれる昔ながらの料理に
は強い情緒感が伴っている。大量生
産して商品化するにも,本物の味,
質感,外観へのこだわりが必要だ。
菓子,シリアル,棒菓子のコーティングに使うこ
ともできる。瓶詰など,さまざまな加工品がある
ので製パンにもいろいろな形で利用できる。
人々は日々のストレス解消のために子供の頃を
模索する中で,オープンイノベーション・プロバ
想起させるおいしい食物を求めるので,心を癒や
イダーの NineSigma 社の協力によりハロゲン化
してくれて簡便で健康によいという特徴を兼ね備
合物のナノ粒子を連続生産する新技術を見いだし,
えた食品は,今後伸びてゆく強い力を秘めている。
これをパートナーに提供してディップコートでナ
それぞれの年代層が齢を重ねキッチンから遠ざ
ノ粒子の表面層を作れるようにした。これにより,
かってゆくに伴い,そのギャップを埋めるものを
表面積の小さい “ 結晶塩 ” で塩味を効かせながら
作り出す食品加工業者が家庭のテーブルの大きな
塩分量を減らすことに成功。ペプシのスナック食
位置を占めることになってゆくと思われる。人々
品にはこの新処方が取り入れられている。
の心を癒やす次世代の食品は,おばあちゃんが煮
込んだり焼いたりしてきたものを想起させるよう
心を癒やしてくれるスイーツ
なものになりそうだが,素材,味付け,香りが本
おばあちゃんのブルーベリーバックルケーキの
物である限りは大丈夫だ。
味を覚えているだろうか。ブルーベリーはチョコ
食品と容器
626
(桜田三郎)
2013 VOL. 54 NO. 10
9/19/2013 4:02 PM
クリーンラベル製品戦略のアプローチ
(How to Clean up Your Label)
クリーンラベル製品戦略のアプローチ
●
海外技術情報 ●
(How to Clean up Your Label)
The World of Food Ingredients (NLD) p10 (’13・4/5) 文献 No.5873
The World of Food Ingredients(NLD)p . 10(’13・4/5 )文献 № 5873
ベル計画を実施し,その効果や達成度合いを評価
ル計画を実施し,その効果や達成度合いを評価す
することを難しくしている。何が「クリーンラベ
ることを難しくしている。何が「クリーンラベル」
食品成分表示は消費者が摂取する食品の情報源
⾷品成分表⽰は消費者が摂取する⾷品の情報源
としての役割を果たすものだが,ほとんどの消費
としての役割を果たすものだが,ほとんどの消費
者にとって情報を得るというよりはむしろ混乱を
者にとって情報を得ると⾔うよりはむしろ混乱を
招くものになっている。というのも,お気に入り
招くものになっている。というのも,お気に⼊り
のクッキーになぜブチル化ヒドロキシアニソール
のクッキーになぜブチル化ヒドロキシアニソール
ル」を特徴づけているのかを理解しようとする場
を特徴づけているのかを理解しようとする場合,
合,消費者調査の結果や食品業界の実例,法規制
消費者調査の結果や⾷品業界の実例,法規制の例
(BHA,
(BHA,E320)や炭酸水素アンモニウム(E503)
E320)や炭酸⽔素アンモニウム(E503)
が含まれているのか。食品技術者や開発者であれ
が含まれているのか。⾷品技術者や開発者であれ
ばこうした成分が製品のシェルフライフを長くし
ばこうした成分が製品のシェルフライフを⻑くし
たり(E320は酸化防止剤)
,品質改善効果のある
たり(E320は酸化防⽌剤)
,品質改善効果のある
こと(E503は
こと(E503は pH
pH調整剤)が認識できるが,普
調整剤)が認識できるが,普
通の消費者にとっては
E の頭文字が付いた番号
通の消費者にとっては E
の頭⽂字が付いた番号
と化学薬品のような名称が並んでいるだけにすぎ
と化学薬品のような名称が並んでいるだけにすぎ
ない。
ない。
Kampffmeyer
Kampffmeyer Food
Food Innovation
Innovationのグループが
のグループ
最近行った調査では,調査対象となった欧州人の
が最近⾏った調査では,調査対象となった欧州⼈
約77%が化学添加物の入っていない食品を好む
の約77%が化学添加物の⼊っていない⾷品を好
という結果であった。また,約61%が持続可能
むという結果であった。また,約61%が持続可
な食品を好み,78%が主食はできればもっとよ
能な⾷品を好み,78%が主⾷はできればもっと
り自然に近い化学添加物の入らないものが望まし
より⾃然に近い化学添加物の⼊らないものが望ま
いとしている。
しいとしている。
今や,より透明
今や,より透明
の例を考えてみることが必要だ。
を考えてみることが必要だ。
消費者の観点からは,
「クリーンラベル」は,
消費者の観点からは,「クリーンラベル」は,
食品に含まれる成分の分かりやすい表示を暗示す
⾷品に含まれる成分の分かりやすい表⽰を暗⽰す
るものであり,表示される成分のすべてとはいわ
るものであり,表⽰される成分のすべてとは⾔わ
なくてもほとんどが普段食器棚に置かれているよ
なくてもほとんどが普段⾷器棚に置かれているよ
うななじみのあるものであることが重要となる。
うななじみのあるものであることが重要となる。
さらに,ほとんどの消費者は成分表に
E 番号や
さらに,ほとんどの消費者は成分表に
E 番号や
化学薬品名のような成分が記載された食品はク
化学薬品名のような成分が記載された⾷品はクリ
リーンラベル製品から除外して考える。
ーンラベル製品から除外して考える。
販売店の動き
販売店の動き
食料品販売業界でもクリーンラベルを推進する
⾷料品販売業界でもクリーンラベルを推進する
動きが出てきている。その好例が米国のスーパー
動きが出てきている。その好例が⽶国のスーパー
マーケット・チェーン
WholeFoods
FoodsMarket
Marketで,
で,
マーケット・チェーン
Whole
取り扱う商品に使用できる成分と使用できない成
取り扱う商品に使⽤できる成分と使⽤できない成
分を列記した表を作成した上,この成分表に合致
分を列記した表を作成した上,この成分表に合致
度の高い,分か
度の⾼い,分か
りやすい食品成
りやすい⾷品成
分表示が求めら
分表⽰が求めら
れている。そこ
れている。そこ
にクリーンラベ
にクリーンラベ
ルが登場してき
ルが登場してき
ているのだ。
ているのだ。
求められる明
求められる明
確な定義
確な定義
現時点で「ク
現時点で「ク
リーンラベル」
リーンラベル」
の法的な定義が
の法的な定義が
存在しないこと
存在しないこと
が,クリーンラ
が,クリーンラベ
食品と容器
第1図 クリーンラベル食品開発の諸課題にシステマチックな科学的手法で取り組む
第1図 クリーンラベル食品開発の諸課題にシステマチックな科学的手法で取り組む
1627
2013 VOL. 54 NO. 10
はんちゅう
しない食品の販売を拒否する権利を留保してい
する現在の研究対象は2つの範疇に分けられる。
る。人工香料,人工着色料,ほとんどの化学保存
1つは,的を絞って処方の変更を行うために食品
料,トランスグルタミナーゼのような酵素類やス
組成を把握することであり,各種素材の役割や相
テビアのような甘味料,等々が使用不可の成分と
互間の働き,それらがどのように官能的特徴,安
して列記されている。
全性,安定性に影響を与えているのかを理解する
食品加工業者も処方を変えて原料の種類を絞っ
ことにより,各種の食品について包括的な新処方
たグリーンラベル製品を立ち上げている。例えば,
モデルが得られる。2つ目の範疇は,「クリーン
2009年に新発売された Haagen Dazs Five アイ
ラベル」と見なされる材料に新しい機能を持たせ
スクリームは家庭でなじみのあるスキムミルク,
る技術の開発だ。食品の化学組成を改変するので
クリーム,砂糖,卵黄,天然香料の5種類の原料
なく,伝統的で家庭の食器棚に置かれている食材
しか使用していない。
に近いものに代えてゆく技術だ。実際には,こう
法規制
した広大な研究に取り組むには緊密な相互協力に
消費者や業界の動きとは別に,司法 / 行政当
よる努力が求められる。
局の動きも見られる。EU は,英国サザンプトン
「クリーンラベル」製品開発への戦略的アプローチ
大学で2007年の研究対象とされたアルラレッド,
「クリーンラベル」製品の開発では新処方の設
ポンソー,タートラジン,サンセットイエロー,
定が出発点となる。TNO 社の新処方開発プロセ
キノリンイエローおよびカルモイシンなどの着色
スでは,まず製品のベンチマークを作成して食品
料を含む食品に「着色料が子供の多動性障害・注
モデルシステムに落とし込む(第2図)。そのため
意欠陥を招く危険性がある」旨の警告表示を義務
には製品組成の構成要素,およびそれがその製品
付けた。これが合成着色料から天然着色料,有色
の官能的特質と加工性に及ぼす相互作用と影響に
食材の使用へと数多くの菓子類の素材見直しを促
ついての知識が不可欠だ。食品モデルは特定の食
した。さらに,EU では安全性の面から食品添加
品素材・成分の機能性を理解する上で不可欠なマ
物に関する規制全体の洗い直しを進めている。
トリックスを提供する。食品モデルを特定した上
技術的課題
で,戦略的,技術的取り組みに入る。この段階で
では,製品の官能的
第1表 食品添加物の種類と “ クリーンラベル ” 食品開発の主要課題
特徴を維持し,食品の
ライフサイクルを通し
機能
て安全性と安定性を確
保しながらクリーンラ
ベルを実現するにはど
着色料
うすればよいか,どの
素材や成分を外し,ど
んなものに代えるべき
か,食品開発者には検
討すべき疑問点や難し
い技術的課題が課され
ている。科学的手法が
こうした疑問に応えて
くれる(第1表)。
新処方モデル
クリーンラベルに関
食品と容器
保存料
添加剤の具体例
(E 番号)
E100 ~ 199:キノリンイ
エロー,カーマイン,コ
チニール,アマランス,
クルクミン,ターメリッ
ク,パテントブルー
クリーンラベルを実現する
代替え成分および加工法
有色食材 , 例として,
黄色にニンジンジュース,
赤色にビートジュース,
青紫色にキャベツ抽出物
E200 ~ 299:ソルビン酸
乳酸菌の自然発酵
塩,安息香酸塩,硫酸塩,
無菌製造への加工法の
フェノール,硝酸塩,アス
変更
コルビン酸(ビタミン C)
E300 ~ 399:没食子酸塩,
酸化防止剤 エリソルビン酸塩,エリ 植物からの天然抽出物:
および
ソルビン酸塩,リン酸塩, ローズマリー抽出物,
pH 調整剤 コハク酸塩,トコフェロー ニンニク抽出物
ル(ビタミン E)
E400 ~ 499:ポリオキシ
増粘剤,
エチレン,セルローズ誘
安定剤,
導体,脂肪酸(および脂 物理変性スターチ
乳化剤
肪酸誘導体),変性スター
チ,天然ガム
628
重要課題
使用量が多い
安定性(光と熱)
容易に入手できるか
加工法の変更
工程管理の負担が
増加
オフフレーバー
素材・成分の
交差反応
信頼性
コスト
加工安定性
2013 VOL. 54 NO. 10
プ防止剤の使用を取りやめたのが
この典型的な例だ。ジアセチル酒
石酸エステル(DATEM),ステア
ロイルラクチレート(SSL)のような
パンのドウ調整剤は今ではリパー
ゼを代表とする酵素やアスコルビ
ン酸(ビタミン C)のような有機化
合物に取って代わられつつある。
ほとんどの食品防腐剤,安定
剤がその化学的性質からおおむ
ね “ クリーンラベル ” と相いれ
第2図 クリーンラベル食品開発の第一歩としての TNO
社新処方開発システムによる取組
第2図 クリーンラベル食品開発の第一歩としての
TNO
社新処方開発システムによる取組
な い も の と し て 見 ら れ て い る。
ブチル化ヒドロキシアニソール
BHA),ブチル化ヒドロキシトル
は素材・成分の入れ替えや加工法の変更が必要と
エン (BHT),プロピオン酸カルシウム,安息香
なる。食品モデルシステムを使って作業すること
第1表 食品添加物の種類と“クリーンラベル”食品開発の主要課題
酸,等の酸化防止剤は多くの加工食品に一般的に
の主な利点は,特定のマトリックスの中で素材・
添加剤の具体例
(E番号)
クリーンラベルを実現する代
替え成分および加工法
重要課題
使用されている。これら添加物の使用料はごく微
成分の機能性をシステマチックに定義することに
機能
ある。食品モデルシステムの使用により,望まし
イン、コチニール、アマランス、クルクミ 色にニンジンジュース、赤色
E100~199: キノリンイエロー、カーマ 有色食材。その例として、黄
着色料
ン、ターメリック、パテントブルー
に利用できる。目下,こうしたものと同様の特質
にビートジュース、青紫色に
キャベツ抽出物。
い官能的,物理的特性に不可欠な特定の素材・成
分の機能性に関する情報が得られる。この情報が
保存料
E200~299: ソルビン酸塩、安息香酸
塩、粒酸塩、フェノール、硝酸塩、アス
コルビン酸(ビタミンC)
E300~399: 没食子酸塩、エリソルビ
ン酸塩、エリソルビン酸塩、リン酸塩、
コハク酸塩、トコフェロール(ビタミンE)
乳酸菌の自然発酵。
無菌製造への加工法の変
更。
植物からの天然抽出物:
ローズマリー抽出物、ニンニク
抽出物。
クリーンラベル素材・成分の開発には不可欠なのだ。
酸化防止剤および
pH調整剤
素材成分の物理的改変
量で,安価であり,かつ,いろいろな食品に容易
使用量が多い
安定性(光と熱)
容易に入手できるか
を持つ天然保存料を見いだすことが求められてい
加工法の変更
工程管理の負担が増加
る。研究分野では植物抽出物から得られる生物
オフフレーバー
素材・成分の交差反応
活性化合物のハイスループットスクリーニング
の開発が広がりを見せている。欧州食品安全機
E400 ~499: ポリオキシエチレン、セ 物理変性スターチ
クリーンラベル製品の開発においては,数多く
ルローズ誘導体、脂肪酸(および脂肪
増粘剤、安定剤、乳
酸誘導体)、変性スターチ、天然ガム
化剤
の素材が可能性と課題を秘めている(第1表)。
信頼性
コスト
加工安定性
多くの製品開発者が従来の化学的に変性させた
クッキーなどの保存料として使用できる酸化防止
剤としてローズマリー抽出物を承認した。食品用
スターチ(アセチル化デンプン,プロピル化デン
にローズマリー抽出物の使用を承認したことは今
プン,酸化デンプン,等々)を物理的に変性させ
たスターチに入れ替えている。混合成分の分別,
調合という戦略を取り入れることで化学的変性を
後の新たな食品添加物の方向を指し示していると
思われる。EU が資金支援しているプロジェクト
NOCHEMFOOD は,畜肉業界で使用されている
回避することができる場合もある。これは硬化油
化学保存料に代わる可能性のある植物抽出物を特
とパーム油をブレンドした製品のような化学変性
油脂の代替に利用されてきた。成分分別の過程で,
パーム油の飽和・不飽和脂肪酸の量や混合比率を
定してベンチマーキングを実施することを目的と
している。加工肉には主に亜硝酸塩とエリソルビ
ン酸塩が保存料として使用されている。
変えることでパーム油の安定性,溶融性,展延性
目下,TNO 社はクリーンラベル製品に関わる
といった物理的特性を制御するものだ。
科学的,技術的開発の中心に位置している。クリー
化学合成添加剤の排除
ンラベルの真の技術的課題に応えるために必要な
加工工程の変更により添加物の使用を取りやめ
新たな知識は相互協力によってこそ迅速に知得で
る方向で開発を進めることもある。パンの製造で
きる。さまざまな食品業界関係者がクリーンラベ
は,サワードウを使った製造工程と似た乳酸発酵
ル製品開発に向けて共同計画を進めてゆくことが
を利用することによって天然の抗かび成分が生成
望まれる。
されるので,プロピオン酸塩のような抗かび,ロー
食品と容器
関(EFSA)は最近になって飲料,ソース,菓子,
629
(桜田三郎)
2013 VOL. 54 NO. 10
●
海外技術情報 ●
食中毒細菌を殺すバクテリオファージに注目
(Bacteriophages : Back to the Futures)
Food Technology(USA)p . 46(’13・4 )文献 № 5877
最近,食中毒細菌を殺すバクテリオファージ(以
キャプシド
後,
「ファージ」と略す)の食品への応用が研究
者に注目されている。ファージ研究は,ヒト細菌
感染症に対する抗菌剤として 20 世紀初頭(1920
核酸
~ 1940 年代)にピークを迎え,その後の抗生物
カラー
収縮鞘
質の発見と普及にともない,薄れていった。しか
尾部
しながら,抗生物質に対する耐性菌の出現問題や
基盤
尾繊維
天然抗菌物質への要望などから,ファージへの関
心が 21 世紀初頭から再燃している。
1.ファージの特徴
(1)生物学とライフサイクル
ファージは,真正細菌の寄生体であり,自らエ
ネルギーやタンパク質の合成能力を持たず,その
第1図 典型的なバクテリオファ-ジの構造模式図
図1.
典型的なバクテリオファージの構造模式図
複製は宿主の細胞機能に完全に依存する。ファー
ジは宿主細菌と同じく多様な環境下(土壌,水圏,
食品など)で見いだされ,地球上には約 10 の
23
細菌の代謝活性維持が必要であり,感染は宿主細
菌の増殖温度に依存する。ファージの中には,溶
原ファージと呼ばれるものがある。このファージ
ファージが存在すると推定されている。ファージ
の細菌種に対する特異性は極めて高い(例えば,
あるファージは,Escherichia coli O157:H7 を溶
菌するが E.coli O104:H4 を溶菌しない)。従って,
の核酸は宿主細菌のゲノムに組み込まれ休眠状態
として維持されるが,特定の刺激(例えば紫外線
や化学物質への暴露)によって,初めて溶菌サイ
ある食中毒菌に特異的なファージを用いた場合に
クルが活性化される。
は,食品中の標的細菌を殺すがそれ以外の微生物
(2)外因性溶菌(Lysis from Without)
食品への溶菌ファージの利用を議論する上で,
の生態フローラに影響を与えない。
“ 外因性溶菌 ”(LO)の概念を理解することは,
一般的なファージの構造は,キャプシド(外衣
大変重要である。LO は多数のファージが宿主の
タンパク質),核酸および尾部構造で構成される
1細胞に吸着し,感染サイクルを完了せずに,溶
(第1図)。溶菌ファージの感染サイクルは,①尾
菌を引き起こす(多数のファージ粒子から溶菌酵
部繊維を介した宿主細胞表層の特異的受容体への
素が一度に放出されるため)ことである。冷蔵温
結合とそれに続く細胞壁ペプチドグリカンへの不
度において,ほとんどの食中毒細菌は代謝的に不
可逆的結合,②キャプシド内核酸の尾部への移動
活性であり,ファージの感染サイクルは完了でき
と細胞内への注入,③宿主細胞機能を利用した
ない。しかしながら,吸着が可能な限り LO を発
ファージ遺伝子の転写と複製および核酸のプロ
生させることができるため,食品中の食中毒細菌
キャプシドと呼ぶタンパク質構造体へのパッケー
ジング,④ファージ由来のペプチドグリカン分解
を殺すことが可能である。
酵素による細胞溶菌と完全ファージ粒子の放出,
(3)ファージに対する耐性
である。ファージの感染サイクルの進行には宿主
食品と容器
630
以 下 に 本 文 で 紹 介 す る ほ と ん ど の 研 究 は,
2013 VOL. 54 NO. 10
ファージ感染に耐性を示す非感受性変異株(BIM,
処理と異なり,ファージ処理直後ではコントロー
Bacteriophage Insensitive Mutants) の 出 現 を
ルに比べ有意な菌数減少は認められないが,24
最小限に抑えるために,1種の食中毒細菌に特異
時間後には有意な菌数減少が認められ,4℃保
的な複数種のファージカクテルを用いている。す
存3日後には菌数が検出限界未満まで低減した。
なわち,吸着過程で異なる受容体分子を認識する
MAP(Modified Atmosphere Packaging) 保 存
複数種ファージのカクテルを利用すれば,宿主細
条件下でファージ処理を行った場合に,コント
菌がこれらファージに同時耐性を獲得することは
ロールに比べホウレンソウ,緑葉レタスおよびロ
ほとんどないと考えられるからである。
メインレタスで 24 時間後にそれぞれ菌数が 2.18
1つの細胞あたりのファージ粒子の感染平均数
log, 3.50 log および 3.13 log CFU/cm2 減少した。
である MOI(Multiplicity of Infection)も標的
新鮮なカットレタスを E. coli O157:H7 特異的
細菌に使用する溶菌ファージの重要な属性であ
なファージ(散布処理)と 50ppm 次亜塩素酸(浸
る。標的細菌を迅速に殺すため,特に主な溶菌メ
漬処理)の組み合わせで処理した場合は,それぞ
カニズムが LO あるいは1種のファージ使用の場
れの単独処理に比べ菌数減少効果が大であった。
合に,十分に高い MOI を維持することが重要で
これらは,ファージ処理を現状の加工工程や包装
ある。
条件に組み込むことが可能であることを示している。
2.農畜産物への溶菌ファージの利用
(2)トマトとスプラウト
(1)葉物野菜
Salmonella Javiana 特異的なファージ5種の
さまざまな葉物野菜において,食中毒菌の菌
カ ク テ ル( 6log PFU/mL) で ト マ ト 花 弁 を 処
数低減に対する溶菌ファージの有効性が報告さ
理すると本菌の果肉への内部侵入を低減できた。
れている。E. coli O157:H7 を接種(約 2.5 log
カットトマト表面を E. coli O157:H7 特異的な
CFU/cm )した新鮮なカットレタスを市販の3
ファージカクテルで散布処理すると,24,120,
種 の フ ァ ー ジ カ ク テ ル 剤(EcoShield : 6log
168 時間後にそれぞれ菌数が 99%,94%,96%
PFU/mL)で MOI= 約 1000 となるように散布処
低減した。特異性の異なる2種のファージ(1つ
理した場合,コントロールに比べ処理 30 分で菌
は S. Montevideo にもう1つは S. Typhimurium
数が 1.9 log CFU/cm ほど低減した。同じカク
と S. Enteritidis に特異的)の組み合わせでブロッ
テル剤を約4log CFU/g 接種したホウレンソウに
コリー種子を浸漬処理(6.7 log PFU/mL)した
散布したところ 24 時間後に菌数は 100%減少し,
場合に菌数が約5log CFU 低減した。
10℃で保存した場合には 168 時間で菌数が 99%
(3)メロン
2
TM
2
S. Enteritidis 特異的な4種の溶菌ファージカ
減少した。E. coli O157:H7 特異的な8種の溶菌
ファージカクテルを MOI(1,10,100)と保存
クテル(SCPLX-1)で新鮮なカットマスクメロ
温度(4℃,8℃,23℃,37℃)を変化させて,
ンをスポット処理した場合に,コントロールに比
新鮮なカットベビーレタスあるいはホウレンソウ
べ 5℃と 10℃の 3 日間保存後に菌数が約 3.5 log
に散布処理した場合には,処理後1時間以内に菌
CFU 低減した。この場合には,菌数減少が 20℃
数の減少が起こり,MOI の増加にともない菌数
に比べ 5℃と 10℃の方が大きかった。Listeria
低減効果が大きくなった。
monocytogenes 特 異 的 な 6 種(LMP-102) お
溶菌ファージの効果は,加工工程および保存条
よび 14 種(LMP-103)の溶菌ファージカクテ
件下でも評価されている。新鮮なカットレタスを
ルの組み合わせでカットハネデューメロンをス
E. coli O157:H7 に特異的な 9.8 log PFU/mL の
ポットあるいは散布処理した場合に,LMP-102/
ファージ溶液(カット野菜の洗浄操作をシミュ
LMP-103 処理の方が,水洗浄あるいはバクテリ
レーション)に2分間浸漬後,食中毒菌を接種し,
オシンのナイシン処理単独に比べ,10℃で7日
4℃に7日間保存した。前述のファージ液の散布
間保存まで菌数減少が有意に大きくなった。E.
食品と容器
631
2013 VOL. 54 NO. 10
coli O157:H7 特異的な溶菌ファージ3種のカク
としては,1)ブロイラー生体内の Salmonella 細
テルで新鮮なカットマスクメロンをスポット処
胞への感染に必要十分なファージ数を維持できな
理した場合に,菌数を4℃,7日間の保存で約
かった。2)ファージと Salmonella の相互作用
2.5 log CFU/mL 減少できた。効果は 20℃に比
を盲腸および腸内環境の他の細菌フローラが阻害
べ4℃の方が高かった。以上の結果は,新鮮な
している,ことが考えられる。E. coli O157:H7
カットメロンのファージ処理が 10℃以下の保存
特異的なファージに関して,羊では MOI= 1の
温度との組み合わせで食中毒菌数をより効果的に
方が MOI=10 あるいは 100 に比べて菌数低減の
低減できることを示している。リンゴスライスに
効果が大きかった。また,牛(去勢牛)への非
おいて,Salmonella 特異的ファージのカクテル
経口投与試験では,コントロールに比べ E. coli
で S. Enteritidis 菌数を低減できなかったが,L.
O157:H7 菌数を大幅に低減した。
monocytogenes 特異的な溶菌ファージ(LMP-102/
3.ファージ製剤の規制状況
LMP-103)処理ではコントロールに比べ菌数が
米国農務省(USDA)は,ユタ州ソルトレイク
減少した。すなわち,L. monocytogenes 特異的
市の Omnilytics™ が開発した E. coli O157:H7
ファージは Salmonella 特異的ファージに比べリ
(Finalyse) お よ び Salmonella(Armament) を
ンゴスライスの低 pH の影響を受けにくいことが
標的とした溶菌ファージ剤について,屠 殺前の
示された。これらの結果は,ファージによっては
牛表皮のスプレー処理への使用を承認した。米
外因性の影響を受ける可能性があり,対象食品に
国食品医薬品局(FDA),続いて USDA の食品安
対して,使用するファージカクテル / 食中毒細菌
全検査局(FSIS)が L. monocytogenes 特異的溶
の組み合わせそれぞれについて評価が必要である
菌ファージ6種の混合(ListShieldTM,Intralytix
ことを示している。
社)の食肉 RTE(Ready-to-eat;そのまま食べる)
(4)食肉と家禽
食品への使用を承認した。規格基準に従って適切
E. coli O157:H7 特異的ファージ3種のカク
に ListShieldTM を使用すれば,現状ではヒトの健
テ ル を 用 い て,106 の MOI で ビ ー フ ス テ ー キ
康へのリスクはないとの見解に立って,FDA は
肉を処理すると,コントロールに比べ菌数を 4
このファージ製剤を他の化学物質同様に食品添加
~ 5 log CFU 低減できた。鶏皮を1種の特異的
物として承認した。他の1種の溶菌ファージ製剤
フ ァ ー ジ を 用 い て MOI= 1 で 処 理 す る と, コ
である ListexP100(Micreos Food Safety 社)は,
ントロールに比べ 48 時間で S. Enteritidis 菌数
FDA に よ り GRAS(Generally Recognized as
を 1log CFU/cm 減 少 で き た。 ま た, 鶏 皮 を
Safe;一般的に安全と認められる)と認定され
Campylobacter jejuni 特異的な1種のファージで
た。このファージ製剤は,ブリー,チェダーおよ
処理した場合,コントロールに比べ 24 時間で菌
びスイスチーズでの L. monocytogenes の増殖阻
数を 2.2 log CFU 低減できた。
害に使用された。その後,他の RTE 食品への使
前述の農産物同様にファージを使用する食肉マ
用も認められた。FDA に続いて FSIS により,溶
トリックスが標的食中毒細菌の溶菌能力に影響を
菌ファージ製剤 EcoShieldTM(Intralytix 社)の
与える可能性が示されている。L. monocytogenes
赤肉およびひき肉の枝肉への使用が認可された。
特異的ファージの LH7 は,バクテリオシンのナ
2013 年,FDA は Salmonella 特異的溶菌ファー
イシンとの組み合わせ処理で肉汁中の菌数を低減
ジのカクテル製剤,SalmoFresh を赤肉と鶏肉に
できたが,生牛挽肉試料では効果が認められな
使用する場合は GRAS と認定した。米国以外で
かった。同様に,Salmonella 特異的ファージを
は,オーストラリア・ ニュージーランド食品基
用いた in vivo でのブロイラー給餌試験において,
準機関(FSANZ)が,前述の ListexP100 を食肉,
菌数減少に必要な MOI(10 )は in vitro 試験
魚介類,チーズおよび RTE 食品への “ 加工助剤 ”
の MOI(10 )に比べかなり高かった。その原因
としての使用を認可している。 (川本伸一)
と
かきん
2
きゅう じ
8-9
6
食品と容器
632
2013 VOL. 54 NO. 10
●
海外技術情報 ●
過熱蒸気を利用した乾燥と滅菌
(Using Superheated System in Drying and Sterilization)
Food Technology(USA)p . 91(’13・4 )文献 № 5878
水分の除去や材料の加熱に水蒸気を用いること
あれば,わずかに水分が存在する環境で効果的な
は,にわかには信じがたいが,実際に存在しいく
ものもある。例えば,一般的に微生物は乾熱より
つかの利点がある。ここでは過熱蒸気とその応用
も湿熱に弱い。また,蒸気の再利用は興味深い。
例について紹介する。
凝縮熱は多量の熱量を有するので,他の加熱工程
にも利用することができる。
過熱蒸気
過熱とは,一定圧力下で沸点以上の温度に蒸
一方で短所もある。複雑な装置を必要とするこ
気を加熱することである。一気圧での水の沸点
とや,加熱温度が高いために熱に弱い食品には利
は100℃(212°F)である。水蒸気の比熱は水の
用しがたいことである。
約半分であるので,温度を1°F 失うと過熱蒸気
デンプンはゼラチン化するために湿熱が必要で
は蒸気1ポンド当たり0.5 British Thermal Unit
あり,表面に水分が存在するために空気加熱より
(BTU)を供給する(1BTU は1ポンドの物質の
も過熱蒸気によってゼラチン化しやすいと思われ
る。これは乾燥食品の外観に良い影響を与える。
温度を1°F 上げるために必要な熱量)。
過熱蒸気が飽和温度(一定圧力での沸点)まで
過熱蒸気の具体的な応用例にパーボイルド米が
冷めると,被加熱物表面で凝縮し始め,この凝縮
あり,過熱蒸気を用いることでいくつかの製造工
熱により加熱される。凝縮による熱量は1ポンド
程が省かれ,より短時間に,簡単な装置で,より
の蒸気当たり1,000BTU である。これは食品を
よい品質のものが製造されている。他にも,水に
乾燥しようとする最初の段階で,水分が付着する
漬けた後の水稲の過熱蒸気乾燥では空気乾燥と比
ことを意味する。同時に食品は速やかに加熱され,
較して,製粉時の収率が向上する,といった例も
水の飽和温度に達すると凝縮は止まり,凝縮水の
ある。
大豆ミールには栄養阻害因子を不活性化するた
乾燥が始まる。
凝縮によって多量の熱が与えられるので,実際
めに加熱処理が必要である。加熱空気のみによる
に食品表面に付着する水分は少なく,過熱蒸気の
乾燥では,水分含量の増加と長時間の加熱が必要
温度が高ければ,その分凝縮する水分は少ない。
とされるが,過熱蒸気では大豆ミールにも,また
過熱蒸気による乾燥は,加熱した空気によるそれ
さらに低い温度においても効果的である。より低
と比べると,乾燥度が大きい。なぜ過熱蒸気を用
い温度で短時間の加熱はミールの消化性やその他
いることを検討しているのか? という疑問が投
栄養的特性を向上させる。
過熱蒸気はバナナなどある種の食品では膨張を
げかけられるかもしれない。
過熱蒸気を乾燥に用いる長所は以下の通りであ
引き起こすが,これは各部での急速な水分の拡散
る。1)酸素のない環境となり,食品の酸化を防
による。また,種が破裂するケースでは過熱蒸気
ぐこと,2)乾燥と同時に,食品の殺菌や脱臭さ
中での体積膨張は抑えられるが,これはおそらく
らには調理が可能であり,製造段階のいくつかの
種皮がぬれてやわらかくなったことが原因である,
工程を省くことができること,3)排出される蒸
と考えられる。種がはじける際,種皮は内部の圧
気を再利用することが可能であること,4)乾燥
力が低い血管のようにふるまい,内部の圧力が十
食品が多孔質になり,水で戻しやすくなること。
分高くなり,最終的に破裂する。
上記の例に示したように,過熱蒸気はある種の
上記長所には,単に高い温度で効果的なものも
食品と容器
633
2013 VOL. 54 NO. 10
食品を乾燥するには有用な技術となり得るが,あ
ぐために隔離されたクリーンルームで包装する。
らゆる状況で利用できるわけではない。
そのシステムは,それぞれ約100万ドルの費用が
かかるが,BI 社は4つ保有し,そのうち3つは
蒸気滅菌
カリフォルニアに,1つは中国にある。
オーバークッキングしない場合,あるいはカビ
の増殖を促進する水分が残っている場合は,木の
BI 社は大量の製品を輸送し,また原料は35カ
実やハーブ,茶などの製品は滅菌あるいは殺菌が
国から輸送して,収穫から包装にいたる全工程を
必要とされる。そこで,注意深く蒸気の露出をコ
監視できることを誇りにしている。Pontiakos 氏
ントロールし,急速に熱と水分を除去するなど,
が指摘するように,原料がひとたび粉末になる
いくつかの技術が開発された。
と,判別および純度の確認が困難となり,それゆ
え,粗悪品でもさまざまな価格が設定され得る。
通常,熱移動の向上,温度低下,冷却の加速の
ために真空が用いられる。加工方法はさまざまあ
BI 社のカリフォルニア工場の1つは SQF(安全
り,原料処理方法,接触方法,容量に違いがある。
品質食品基準)認証を保有している。
いくつかの装置は,連続的に加熱あるいは冷却す
調理用蒸気
直接蒸気あるいは過熱蒸気接触による乾燥およ
るための接触方式として,スクリューコンベヤー
を使用する。コンベヤーの加熱には電気や蒸気が
び滅菌のいずれにおいても,ボイラーのさびや水
用いられる。
垢を抑える薬剤が含まれない調理用蒸気が使用さ
あか
畜肉表面の直接蒸気法は,塩素処理水あるいは
れるべきである。調理用蒸気は一般的に使用場所
酸処理水洗浄がそうであるように,残留物を残さ
の近くで生産され,フィルター,バルブおよび熱
ない殺菌方法である。その特徴は,微生物を加熱
交換器一式を必要とする。
殺菌する間,表面が焼けるのを回避することであ
もし工場の蒸気が十分に清潔であればフィルタ
る。
リングで十分であるが,そうでない場合,ステン
レス製熱交換器の軟化水を沸騰させるために工場
蒸気滅菌:実践的応用
BI Nutraceuticals 社 CEO の G. Pontiakos 氏
の蒸気が使用される。調理用蒸気は食品の要素と
によると,同社は香港およびカリフォルニア州に
して,ステンレス製パイプあるいはチューブで分
オフィスがあり,調合薬および栄養補助食品の原
配される。
料となる植物性薬品の大手供給メーカーである。
調理用蒸気の凝結水が非常に少なくても,どの
BI 社は,世界中でさまざまな植物原料を調達し,
ようにそれを使用するかによっては,回収する価
約700の製品を有する。その多くは中国産,ある
値はあるかもしれない。しかしながら,乾燥機の
いは中国で加工されたものである。
過熱蒸気の再利用の可能性は,エネルギー効率化
Pontiakos 氏によると,原料の滅菌には放射線
のステップとして考慮されるべきである。殺菌装
照射およびエチレンオキシド(EtO)が使用され
置からの排出水は,おそらく単に凝結,排水され
てきたが,両者には短所がある。EtO には毒性お
たものであるが,原料の揮発性物質によるコンタ
よび可燃性があり,一方放射線照射は費用が高く,
ミネーションがない限り,回収を試みる価値があ
ヨーロッパなどいくつかの地域で反対されてい
ると思われる。
る。いずれの方法も,オーガニック表示が許可さ
過熱蒸気および真空後の蒸気は用途の広いツー
れていない。それゆえ,BI 社は代わりとなる技
ルであり,食品安全プログラムの強化を求める監
術を探し求め,ドイツのハンブルクの SteamLab
督機関および消費者の要求に応えるため,食品産
Systems 社と同様のシステムを開発した。
業においてさまざまな利用方法が見いだされる。
このシステムでは,蒸気をローディングし,真
それらは,多くの場合において化学的殺菌剤およ
空状態にして,原料を冷却および乾燥させる。処
び伝統的な乾燥を超えた利点をもたらす。
理後,原料は製粉され,コンタミネーションを防
食品と容器
(中川樹里)
634
2013 VOL. 54 NO. 10
業
T
界
O
ト
P
ピ
I
ッ
C
清涼飲料市場で最大のカテゴリーである無糖茶
飲料。その中でも日本茶飲料は,緑茶飲料を筆頭
に,混合茶,麦茶と多様なカテゴリーを有する。
市 場 は07年 以 降 他 カ テ ゴ リ ー へ の 流 出 や コ モ
ディティ化で低迷傾向が続いていたが,昨年5年
ぶりにプラスとなり回復基調にある。緑茶飲料は
主力商品に加え,“ にごり系・抹茶入り ” がヒッ
トし,さらに麦茶や混合茶といった “ カフェイン
ゼロ ” 商品が幅広い層に人気を集めるなど,新た
な動きもある。今期も市場全体で上期をプラスで
折り返し,2年連続のプラスに期待がかかってい
る。
○12年は日本茶全体で3%増
日本茶飲料市場は,消費者の無糖志向を反映し
2000年以降急成長したカテゴリー。07年をピー
クに炭酸飲料など他のカテゴリーに押されマイナ
ス実績が続いていたが,11年に底を打ち,12年
は5年ぶりのプラス着地となった。
昨12年は緑茶飲料,麦茶が好調で上期をプラ
スで折り返し,さらに8月以降の猛暑・残暑も
寄与し,箱数ベースで3.1%増の3億2,550万箱,
容量で3.9%増の352万5,320kL となった。飲料
市場全体が3%増となった中でそれを上回る実績
をあげた。
カテゴリー別では最大量の緑茶飲料が2%増,
混合茶は5%減,麦茶は19%増と唯一混合茶が
マイナスとなった。全体の構成比をみると,緑
茶:混合茶:麦茶=7:2:1だが,中でも麦茶
は6年連続の右肩上がりで規模も倍に拡大と目
第1表 日本茶飲料の年次別生産量
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
単位
千箱
kL
千箱
kL
千箱
kL
千箱
kL
千箱
kL
千箱
kL
食品と容器
缶
29,800
211,090
25,890
183,390
24,970
174,600
22,940
160,400
22,770
159,210
19,630
137,410
ス
立った伸びで全体を底上げした。“ カフェインゼ
ロ ” の特徴が見直され,子どもからサラリーマン,
高齢者まで幅広い層に支持されていること,また
一昨年から昨年にかけて新ブランドやリニューア
ルなど商品の充実も図られ,さらに市場が盛り上
がっている。
今年は,上期で緑茶が3%増と堅調に推移して
いるほか,混合茶が4%増,麦茶が20%増と3
カテゴリーともプラスで折り返した。昨年までマ
イナスだった混合茶もトップブランド2製品の好
調で無糖茶飲料全体で好調。
○緑茶飲料は7年ぶりのプラスに
日本茶飲料の全体の7割を占める緑茶飲料の
12年 実 績 は, 容 量 で2.4 % 増 の241万7,570kL,
箱数で2.5%増の2億2,814万箱と7年ぶりのプ
ラスに転じた。05年をピークに炭酸やミネラル
ウォーターなど他カテゴリーへの流出やコモディ
ティ化の影響でマイナスが続いていたが,10年
頃から “ にごり ”“ 抹茶入り ” といった新たな嗜
好の商品が登場。それまではクリアな液色の商品
が中心だったが,にごった中身も “ 旨み ” として
評価され受け入れられるようになったことが緑茶
飲料の幅を広げた。
○2年連続プラスへ期待
今年の日本茶飲料は上期をプラスで折り返し,
通期での実績確保も期待できそうだ。
新ブランドなど大きな動きはないものの,今年
は各カテゴリーで話題があり,安定した動きを見
せている。緑茶飲料は新商品も発売され,さらに
嗜好の広がりを見せ,今後の動向も期待される。
(業界誌記者 稲野結子)
日本茶飲料市場,緑茶飲料が復調
年次
ク
S
日刊経済通信社調
緑 茶
麦 茶
混 合 茶
PET 他
計
前年比 缶 PET 他
計
前年比
缶
PET 他
計
前年比
207,600
237,400
99.6
250 18,250 18,500 119.7
7,810 73,890 81,700 112.0
2,246,620 2,457,710
99.1 2,230 210,980 213,210 117.0 63,370 817,630 881,000 111.5
206,510
232,400
97.9
240 19,460 19,700 106.5
6,140 69,110 75,250
92.1
2,247,810 2,431,200
98.9 2,140 227,140 229,280 107.5 49,820 772,220 822,040
93.3
201,270
226,240
97.3
240 19,800 20,040 101.7
6,140 66,240 72,380
96.2
2,208,300 2,382,900
98.0 2,050 230,530 232,580 101.4 49,800 741,800 791,600
96.3
200,850
223,790
98.9
240 22,120 22,360 111.6
4,900 65,120 70,020
96.7
2,206,050 2,366,450
99.3 2,050 256,430 258,480 111.1 39,750 729,370 769,120
97.2
199,870
222,640
99.5
200 24,870 27,120 121.3
4,220 61,600 65,820
94.0
2,201,120 2,360,330
99.7 1,700 306,370 308,070 119.2 34,230 691,970 726,200
94.4
208,510
228,140 102.5
100 33,610 33,710 124.3
3,790 59,860 63,650
96.7
2,280,160 2,417,570 102.4
850 399,420 400,270 129.9 30,740 676,740 707,480
97.4
635
2013 VOL. 54 NO. 10
●
特別解説
●
野生動物肉の加工技術
~血絞りと解凍について~
さ か た ・り ょ う い ち
九州大学大学院農学研究
科博士取得。フンボルト
財団研究員としてドイツ
国立食肉研究所に留学。
現在,麻布大学獣医学部
動物応用科学科教授。
坂 田 亮 一
農学博士
1%の NaCl と0.1% の塩漬剤(ニュー硝素,千
1.はじめに
代田化成)を用い,これらを乾塩漬方式でシカ肉
現在,野生動物による農作物の食害が増加の一
表面に擦り込み,重石をして一晩置いた。それを
途をたどり,その被害額は甚大である 。被害の
流水で数分洗い,肉表面の水気を除いた後,生肉
約6割がシカによるものであるため,個体数の調
の状態でヘム色素注3) 量4) と,TBARS 値を水蒸
整を含め,自然資源であるシカを有効利用する試
気蒸留法5)で測定した。
1)
みが国をあげて行われている2)。
次にこれらのシカ肉を用い,湿塩漬にてベーコ
ンを作製した。その後,クッキングロス,最終収
しかし,シカ肉は狩猟後の取り扱いの不備等に
より残血による濃い肉色と臭いが問題となりうる。
量および pH 値の測定,および官能検査を行った。
そのため,本研究では加工技術の中で血絞りによ
官能検査の方法には評点法を用い,最も好ましい
るシカ肉やイノシシ肉の品質向上を目的とし,そ
ものを3,最も好ましくないものを-3とし,7
注1)
といわれる肉素材を用いた食肉加
段階で評価した。項目は色,香り,味,歯応えの
工品を作製し,その加工特性,野生動物肉の食肉
4項目について行った。パネルとして,本学で食
利用の可能性について考察した。
品科学を専攻する20 ~ 21歳の男女学生21人を
れらジビエ
対象にした。
また,これらの肉は凍結されて流通するもの
が多いが,ピックル
加するという報告
注2)
3)
また,シカ肉・イノシシ肉混合(3:1)ソー
解凍により最終収量が増
を参考に最終収量を測定し,
セージを作製しアンケートにより野生動物肉製品
この解凍塩漬法の野生動物肉への適応について検
の消費者受容性を調べた。項目は色,香り,味,
討した。
歯応えおよび総合評価の5項目で行った。この実
験には動物脂でなく植物油を用い,シカ肉の味を
2.実験の概要
損なわないようにした。
2-2.凍結-解凍法と血絞りの影響
2-1.シカの肉質に及ぼす血絞りの効果
凍結されたイノシシおよびシカのモモ肉150±
シカ肉(長野県,神奈川県で採取)を血絞りし
たものを血絞り区,血絞りしていないものを無処
30gを,ピックル中で解凍するものを除き,解
理区とし,1週間冷蔵保存後,脂質酸化の指標
凍を行った後,それぞれ血絞り無し乾塩漬,血絞
として TBARS 値を測定した。血絞りには重量比
り有り乾塩漬,湿塩漬,ピックル解凍区の試料
食品と容器
636
2013 VOL. 54 NO. 10
(ベーコン)を作製した。解凍は塩漬の前日に冷
第1表 シカ肉ベーコンの官能検査結果
蔵庫(4℃)で一晩行った。血絞りには食塩1.5%,
無処理区
血絞り区
1.00
亜硝酸ナトリウム0.1%を乾塩漬と同様に擦り込
色
0.65
んだ。血絞りと塩漬の後に流水で塩抜きを5分間
香り
0.85
くん
行った。その後,燻煙加熱処理を行い作製した試
味
1.45
料に関してクッキングロス,最終収量,pH,色
歯応え
1.00
調(L ,a ,b 値),発色率 ,残存亜硝酸塩
*
*
*
0.70
a
0.35b
0.60
4)
量6)および TBARS 値について測定し,比較した。
3.実験結果
3-1.シカの肉質に及ぼす血絞りの効果
全ヘム色素抽出後の吸光度(波長383nm)は
血絞り区と無処理区を比較した場合,血絞り区が
0.33%,無処理区が0.32%の値を示し,血絞り
第2表 シカ肉・イノシシ肉混合ソーセージの
アンケート結果 好ましい
好ましくない
色
18
9
香り
26
1
味
27
0
歯応え
24
3
総合評価
27
0
による影響は確認できなかった。TBARS 値は血
本来,血絞りは肉の品質向上に使われる技術で
絞り区が0.131,無処理区が0.206で無処理区の
あるが,このような結果が出た原因として今回使
方が高くなる傾向を示した。
加工特性においてクッキングロスは血絞り区,
用したシカ肉の放血状態が良かったことが考えら
無処理区両方とも30% 前後を示した。加熱後の
れる。おそらく今回の狩猟者のスキルが優れてい
最終収量は両方とも約90% であった(第1図)。
て,シカの心臓を射抜いたと想像される。その場
pH 値は血絞り区が5.68,無処理区が5.65を示し,
合,血絞りで残血を取り除く必要性はなく,流水
シカ肉の加工特性における 血絞りの影響は特に
で洗う工程でうまみ成分が流出したと考えられる。
認められなかった。
歯応えは血絞り区が0.60,無処理区が1.00で血
絞りによる影響は確認できなかった。
シカ肉ベーコンの官能検査(第1表)で,色は
血絞り区が1.00,無処理区が0.65,香りは血絞
シカ肉・イノシシ肉混合ソーセージのアンケー
り区が0.70,無処理区が0.85でそれぞれの項目
ト(第2表)で色に対して好ましいが18人,好
で血絞りによる影響は確認できなかった。味は血
ましくないが8人で,3人に1人は赤い色を好
絞り区が0.35,無処理区が1.45で無処理区の方
ま な い 傾 向 が 見 ら れ た。 香 り は 好 ま し い が26
が有意に高い値を示し,血絞りにより味が低下す
人,好ましくないが1人,味は好ましいが27人,
る傾向が見られた。
好ましくないが0人,歯応えは好ましいが24人,
好ましくないが3人で,それぞれの項目でこの
ソーセージに対して高い消費者受容性が確認でき
た。総合評価でも好ましいが27人,好ましくな
いが0人で高い消費者受容性であった。
3-2.凍結-解凍法と血絞りの影響
最終収量はイノシシ肉ではピックル解凍区が最
も高く,次いで湿塩漬区,血絞り区,乾塩漬区と
なったのに対し,シカ肉では最も高かったのは湿
塩漬区で,次いでピックル解凍区,乾塩漬区,血
絞り区となった。乾塩漬では塩漬によってほとん
ど重量に変化は見られないが,湿塩漬は塩漬期間
第1図 加工での重量変化。
食品と容器
637
2013 VOL. 54 NO. 10
中に重量が増している。塩漬期間に重量が増える
第3表 残存亜硝酸塩量(NO 2−ppm)
ほど,クッキングロスも大きくなるという傾向が
イノシシ
みられた。
発色率はイノシシとシカの両方に共通して,乾
塩漬では血絞り無しの乾塩漬区の発色率が血絞り
有りよりもやや高くなった。湿塩漬では,イノシ
シはピックル解凍区が高いのに対し,シカでは湿
シカ
乾塩漬区
3.8
21.8
血絞り区
3.3
22.6
湿塩漬区
21.3
67.4
ピックル解凍区
9.5
61.2
塩漬区が高くなる結果が出た(第2図,第3図)。
クル解凍によって最終収量はイノシシでは増加し
残存亜硝酸塩量はイノシシでは血絞り区が血絞
たが,シカでは低下した。参考にした論文ではブ
り無しの乾塩漬区よりやや低い値を示したが,シ
タロース部での実験だったため,ブタに近いイノ
カではその逆の傾向を示し,血絞りが残存亜硝酸
シシでは同様の結果が得られたが,シカでは異な
塩量に影響を与えるとはいえなかった。一方湿塩
る結果が出た可能性が考えられる。
今回,血絞りやピックル解凍の影響はイノシシ
漬ではイノシシとシカに共通して,ピックル解凍
とシカで異なる結果となったが,対象とした肉試
区が湿塩漬区よりも低い値を示した(第3表)。
料数が限られたため,これらの項目を再度調べる
血絞りによって発色率は下がり,TBARS 値は
必要がある。
上がった(データ省略)。血絞りには発色剤を用
いるが,血絞り後に水洗によって塩抜きも行うた
め,これが発色率を下げる要因になった可能性が
4.おわりに
ある。またピックル解凍により残存亜硝酸塩量が
シカ肉の全ヘム色素量および TBARS 値におい
対照の湿塩漬区と比較して大幅に低下した。ピッ
て血絞りによる影響は認められなかった。シカ肉
ベーコンの加工特性でも血絞りによる影響は見ら
75.0
れなかった。クッキングロスは約30%,最終収
量は約90%であった。シカ肉ベーコンの嗜好性
70.0
は血絞りによって味に有意な差があった。その理
乾塩漬区
65.0
由として血絞りの工程で塩漬剤を洗い流す際,う
血絞り区
60.0
まみ成分まで流れてしまったことが考えられる。
湿塩漬区
シカ肉・イノシシ肉混合ソーセージは高い消費者
ピックル解凍区
受容性を示した。味や香りに関してはほとんどの
55.0
パネルが好ましいと評価した。色に関してのみ9
人のパネルが好ましくないと評価した。感想欄に
50.0
は濃い赤色が良くないという意見があり,シカ肉
第2図 イノシシ肉の発色率(%)。
およびイノシシ肉特有の濃い肉色が消費者に対し
100.0
良くない印象を与えることも,今回のアンケート
で示された。
90.0
本実験では使用したシカ肉の状態が比較的新鮮
乾塩漬区
80.0
70.0
60.0
血絞り区
で良かったため,血絞りによる影響は認められな
湿塩漬区
かった。今後シカ肉の放血状態などを考慮し,繰
ピックル解凍区
り返し実験を行う必要がある。
50.0
第3図 シカ肉の発色率(%)。
食品と容器
638
2013 VOL. 54 NO. 10
部は麻布大学より支援を受けて実施しました。
謝辞
本研究を行うにあたり,シカ・イノシシ肉を提
注)
1)ジビエ:狩猟によって食材として得られた野生の鳥
供下さった神奈川県猟友会ならびに時田登臣先
獣肉のこと。
生(日本獣医生命科学大学),NPO 法人 地域交
2)ピックル:塩漬剤の溶液。塩を主成分とし,発色剤,
流センター,ペンション小河原(長野県山ノ内
砂糖などを加える。ハムやベーコン用の肉の処理に用
町),また本実験の遂行に関わった麻布大学獣医
いる。
学部食品科学研究室,通称肉組の田中健介卒業生
3)ヘム色素:筋肉に含まれるヘム鉄を含んだ赤色の色
素のこと。ミオグロビン,ヘモグロビンがある。
(現,徳島県阿南市職員),牛山聡卒業生(現,信
州ハム㈱)にも感謝致します。なお,本研究の一
引 用 文 献
1)長 野県.2012.信州ジビエ衛生管理ガイドライン.
4)坂 田亮一 . 1999.食肉・食肉製品の分析技術 / 第2
長野県衛生部.長野県林務部.長野. http://www.
章 食肉・食肉製品の品質評価法/色調およびヘム色
素.食肉の科学,40, 221−224.
pref.nagano.lg.jp/eisei/syokuhin/nyuniku/jibie/
jibie03
5)山 内 清,安藤則秀,1973.亜硝酸塩が存在する場
合の肉の TBA number 測定 . 日本畜産学会報 , 44,
2)農林水産省.2010.特集 鳥獣被害対策を考える(1)
農林水産省.東京.
155−158.
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1011/spe3_01.html
6)M irna, A. and G. Schüzt, 1973. A method for
3)宮 原晃義,赤尾 真,櫻井英敏,金山喜一,村上直哉.
the simultaneous determination of cured colour
2011.塩漬解凍法によるロースハムの品質と歩留ま
and of nitrite and nitrate in meat products.
り.日本食品科学工学会誌 , 58(2),62−66.
新刊紹介
ソフト・ドリンク技術資料 No.170 発刊のお知らせ
(一社)全国清涼飲料工業会では,「ソフト・ドリン
ク技術資料170号」を発刊しました。ご希望の方はホー
ムページよりお申し込み下さい。
◇書 名:ソフト・ドリンク技術資料 No. 170
(2013年・第2号)B5判 128ページ
◇価 格:1部購入の場合=4,500円(全清飲また
は日清研会員は3,000円),定期購読の場合=
9,000円(全清飲または日清研会員は6,000円)
◎定期購読は年間3冊,価格はいずれも消費税
込,送料サービス,10部以上お求めの場合には
1割引。
◇申し込み先:ホームページ http://www.j-sda.or.jp
◇お問合せ先:(一社)全国清涼飲料工業会
TEL 03(3270)7300 担当 古内または安達
◇内 容
1.消費者はどのようにしておいしさを感じている
のか?
(東北大学 坂井信之)
2.ルミナコイドと食物繊維
(関東学院大学 倉沢新一)
3.大豆由来ポリフェノールと糖尿病予防・抑制作
用 -黄大豆のイソフラボン,黒大豆のアント
シアニン,プロシアニジンの機能と分子メカニ
ズムを探る- (中部大学 津田孝範)
食品と容器
Fleischwirtschaft, 52, 1337−1338.
4.国産農産物の高付加価値化に関する研究:沖縄
産シークワシャーを中心として-
(中村学園大学 太田英明)
5.糖質について (日本食品化工(株) 藤本佳則)
6.栄養関連成分測定の迅速化検討
((一財)日本食品分析センター 君塚高広他)
7.サントリープロダクツ株式会社 木曽川工場新
カテゴリーを開拓する フルアセプ炭酸 PET
ラインの立ち上げについて
(サントリープロダクツ(株) 武田一郎)
8.FAO/WHO 合同食品規格計画 第45回食品添
加物部会報告 (サントリービジネス
エキスパート(株) 細野秀和)
9.FAO/WHO 合同食品規格計画 第7回汚染物
質部会報告) (特定非営利活動法人
ティータイム
国際生命科学研究機構 岩田修二)
▶健康食品によせて (大塚製薬(株) 畑井龍一)
▶そうだ キューバ,行こう
(カルピス(株) 林 正英)
639
2013 VOL. 54 NO. 10
Report
特別レポート
日本における清涼飲料,ビール系酒類市場
―平成25年の7,8月を振り返って―
昨年(13%増)の裏返しから数字を維持するの
▉清涼飲料の最新市場動向
は難しいとの見方もあったが1%増と前年をクリ
7月11%増,8月1%増で夏場3カ月は5%増
ア,8月単月最高記録を更新。7,8月累計の数
字も過去最高,6~8月の夏場3カ月では5%増
上半期(1~6月)の清涼飲料市場は,本紙
と好調な動きとなった。
(第54巻8号)のとおりで,前年比3%増とプラ
スで折り返した。「4年連続の市場拡大も」(メー
ここでは,7,8月の状況を振り返るとともに,
カー関係者)との声が飛び出すなど順調さが目
秋冬商戦の中心となるコーヒー市場を CVS のカ
立った。夏に入って気温上昇に伴い,一時的には
ウンターコーヒーの影響も含め展望していく。
7月:市場全体11%増,4社が20%超の伸び
商品が品薄となる状況が一部でみられた。今年の
7月は市場全体が大きく伸び,11%の2ケタ
7,8月は「1000年に一度の猛暑」との報道がさ
れるほど,暑さが大きく後押し。7月は主要各社
増となった。一部地域で豪雨や梅雨の戻りなどが
がプラスで11%増と急伸。梅雨明けが7月上旬
あったものの,稼働日増や例年よりも早い梅雨明
に発表され,特にスポーツ・機能性飲料のコカ・
け,昨年の大幅減(7%減)の裏返しもあり,各
コーラシステム〈アクエリアス〉,大塚製薬〈ポ
社大きく数字を伸ばした。上位社は全社プラス。
カリスエット〉,サントリー食品インターナショ
なかでも,カルピス25%増,大塚グループ23%増,
ナル〈グリーンダカラ〉などが軒並み急伸した。
アサヒ飲料21%増,キリンビバレッジ20%増と
昨年(7%減)の裏返しにせよ高い伸び率で,7
4社は20%超の増加。サントリーも18%増と高
月そして単月出荷の最高数量を記録。一方8月は
い伸び。カテゴリー別ではミネラルウォーターの
第1表 平成25年1~8月の主要各社の清涼飲料出荷実績前年対比(単位:%)
業界平均
サントリー
伊藤園
アサヒ飲料
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
103
99
102
104
104
103
111
101
107
102
100
109
104
108
118
106
109
105
108
106
109
108
106
101
109
103
109
105
104
90
121
99
キリン
ビバレッジ
111
101
103
106
109
107
120
102
1~2月累計
1~3月累計
1~4月累計
1~5月累計
1~6月累計
1~7月累計
1~8月累計
101
102
102
102
103
104
103
104
102
104
104
105
107
107
107
107
107
107
108
107
106
106
107
106
106
102
105
104
105
104
105
106
106
108
107
大塚
113
101
103
109
109
103
123
87
107
105
106
107
106
111
106
ポッカ
サッポロ
91
87
96
93
100
97
101
92
89
90
90
92
94
95
94
108
112
109
124
102
104
125
106
コカ・コーラ
合計
97
95
101
100
100
102
102
99
110
109
113
110
109
112
111
96
97
98
99
100
100
100
カルピス
注)コカ・コーラ合計は醸造産業新聞社推計。ポッカサッポロはポッカサッポロフード&ビバレッジ。
食品と容器
640
2013 VOL. 54 NO. 10
伸びが目立った。〈サントリー天然水〉は42%増,
における SOT 缶の販売は「90%台,80%台まで
アサヒ〈おいしい水〉39%増,キリンビバレッ
下がっている商品もある」(メーカー筋)との声
ジ〈アルカリイオンの水〉40%増など軒並み高
もきかれる。一時の導入が相次いだ時期よりは影
い数字で各社の数字を牽引した。「一部,渇水や
響は薄まってきたが,これから秋冬商戦を迎える
天候による水の需要がみられた」(メーカー関係
にあたり,機械の台数を拡充するメーカーもあり,
者)ことに加え,流通関係者からは「NBのミネ
予断を許さない状況だ。その中で,今年は,ブラ
ラルウォーターの価格が一段下がった」との見方
ンドのステージを上げる商品が登場しているのが
もきかれ競合関係は厳しさを増している。炭酸飲
特徴。例えば,コカ・コーラ〈ジョージア・ヨー
料や茶系飲料は順調な荷動き。梅雨明けが早く,
ロピアン・プレミアムブレンド〉やサントリー
月初を中心に連日の熱中症報道もあり,スポー
〈ボス・グランアロマ〉,165gと小容量のJT
ツ・機能性飲料は〈ポカリスエット〉34%増な
〈ルーツ・アロマステージ〉,ビード缶をすべての
商品に採用したポッカサッポロF&B〈ポッカ
ど各社絶好調で一部品薄感が広がった。
8月:高い前年数字上回り1%増,8月で最大
コーヒー・テイスティーブレンド〉なども新たな
8月は前年比1%増と8月単月の過去最高を更
価値観を訴求する。これまで微糖が中心だった市
新。昨年が1カ月間通して好天が続いたのに対し,
場も,砂糖・ミルクの「スタンダード」の落ち込
今年は上旬と下旬に再び不安定な日が続き,前年
み幅が大きく,この部分のテコ入れがみられる。
ボリュームとの差が出た日が多かった。また,地
微糖に力を入れないわけではないが,相対的に静
域別でも上下旬で豪雨の影響を受けた地域もあり,
かにみえる。一方で注目されるのがPET入り。
「地域差が大きい月となった」(メーカー関係者)。
コカのノンシュガー〈ルアーナ〉は駅売店で好調
主要各社が前年に近い数字となった中,最も高い
な動きで,今後さらなる交通系の市場での定着を
伸びはサントリー,カルピスの6%増。カテゴ
目指す。キリンビバレッジ〈ファイア・カフェデ
リー別では,スポーツ・機能性飲料,炭酸飲料が
リ〉はフレーバードコーヒーを中心に市場で存在
堅調だったほか,国産ミネラルウォーターは,流
感を高めている。SOT 缶が全体的に厳しくなる
通の防災の日に向けた需要喚起などが拡大し市場
中で,ボトル缶を含めたリキャップ容器の動きが
底上げの一因に。コーヒーはリニューアルや新製
どこまで消費者を掴めるか。さらにはサントリー
品発売のタイミングで大きく差がでた。
のセブンイレブンで10月下旬から先行販売されるマ
夏場の3カ月(6~8月)の総市場は7月の
イボトルドリンク〈drop〉の動きにも注目される。
「ホット炭酸」どこまで支持されるか
11%増の大きな伸びもあり,5%増と大きな伸
ホット飲料は自販機と CVS 店頭のホット什器
びとなった。6~8月合計の数字としては過去最
高を更新。早い梅雨明けや今でこそ少し落ち着
が中心で,カテゴリーも茶系や缶コーヒーが中心
いたが「1000年に一度の猛暑」と言われた7月,
で,一部果汁がある程度だった。ここに今年は
8月にも最高気温が40℃を上回る地域がでるな
ホット炭酸飲料が登場,10月下旬から11月上旬
ど,記録的な高い気温が大きな追い風になった。
にかけコカが〈カナダドライ・ホットジンジャ
カウンターコーヒーの影響,各社「見極め」
エール〉を,キリンビバレッジが〈キリンの泡・
例年この時期に缶コーヒーを中心とした秋冬商
ホット芳醇アップル&ホップ〉を発売し,コール
戦を展望しているが,今年は少し様相が異なる。
ドでの炭酸の勢いを,どこまで生かせるか注目だ。
CVS 各社で昨年来進むレジ脇で展開されるカウ
他のホット飲料の牙城をどこまで崩せるか。他の
ンターコーヒーが無視できなくなっているから
メーカーは追随を予定していないようだが,「先
だ。CVS 各社の大本営発表では「缶コーヒー含
行社の状況をみて,いつでもいけるように」(複
め,影響はない」「女性を中心に新たな消費者を
数社)との話もきかれる。市場性があるのかを含
掴めている」との声がきかれるが,実際の CVS
めて今年の状況に注目が集まっている。
食品と容器
641
2013 VOL. 54 NO. 10
8月の数量としてはこれまでで最も少なかった一
▉ビール系酒類の最新市場動向
昨年(51万8,785kL)をわずかに下回り,最低数
夏場3カ月の出荷,今年も10年間で最低
量を更新した。旧盆入り頃までは全国的な猛暑で
夏場3カ月間(6~8月)のビール系酒類の課
出荷も順調だったが,下旬以降の気温低下が響き
税数量は,前年同期と比べて1.2%の減少となっ
最終的にマイナスとなった。
「暑すぎると売れない」を証明?
た。3年連続の前年割れ。一昨年の夏場3カ月間
昨年の夏は全国的に猛暑が続き,ビール類の消
の数量は最近10年間で最低数量を記録,昨年は
さらにそれを下回り最低数量を更新したが,今年
費にも好影響を与えることが期待されたが,実際
もまたまた最低数量を更新した。最近10年間の
には低調な出荷に止まり,近年指摘されている
推移をみると,この10年間でほぼ2割減少して
「あまり暑すぎてもビール類は売れない」との見
いる。分野別にみると,ビールと発泡酒は毎年減
方を裏づける形となった。今年の夏も,梅雨明け
少しているが,新ジャンルは逆に毎年増加している。
が例年より早く,さらに最高気温を更新する地域
6月 総計は前年比4.1%減。数量は,東日本
が相次ぐなど,昨年を上回るような猛暑で「千年
大震災の影響もあって6月の数量としては最近
猛暑」との言葉もささやかれた。
10年間で最も少なかった一昨年(52万3,367kL)
しかし,昨年同様に猛暑でよく売れたのは清涼
をさらに下回り,最低数量を更新した。西日本を
飲料。熱中症対策として水分補給の重要性が指摘
中心とした大雨の影響も大きい。
され,励行する人が増えた。「日中に水分をたく
7月 前年比3.3%増となったものの,昨年7
さん摂取すると,夕方にビール類を飲む意欲が低
月は例年より気温が低かったことや,西日本を
下する」との説を今年も証明する結果となった。
中心に大雨があったことの影響で9.3%減の54万
また,今年の夏は西日本を中心に大雨の被害が目
3,933kL と,7月としては最近10年間で最も少
立ち,これもビール類消費に響いたとみられる。
ビアガーデン,今年も人気続く
ない数量だったことを考えると,実質的にはかな
近年,女性や若者を中心にビアガーデンの人気
りの低調。数量は10年間で昨年に次ぎ2番目に
少ない。
が高まっている。昨年は,8月に雨が少なかった
8月 前年比2.8%減で,数量は最近10年間の
こともあり,記録的な売上げを達成したという。
第2表 平成25年夏場3カ月のビール系酒類課税数量
ビール
発泡酒
国 産
輸 入
計
国 産
輸 入
計
その他の
醸造酒
リキュール
計
総 計
ビール÷総計
発泡酒÷総計
新ジャンル÷総計
新ジャン
ル
6月
7月
8月
数量
前年比
数量
前年比
数量
前年比
(kL)
(%)
(kL)
(%)
(kL) (%)
262,653
94.5 301,986
105.5 261,556
94.0
746
142.4
900
134.4
535
83.6
263,399
94.6 302,885
105.6 262,091
94.0
64,656
89.5
71,771
97.4
68,871
94.8
144
96.1
217
113.4
154
76.7
64,801
89.5
71,989
97.4
69,024
94.8
60,544
94.0
133,616
103.2
194,160
100.2
522,359
95.9
50.4%(51.1%)
12.4%(13.3%)
37.2%(35.6%)
57,193
86.3
129,709
111.0
186,902
102.0
561,776
103.3
53.9%(52.7%)
12.8%(13.6%)
33.3%(33.7%)
59,304
87.6
6~8月
1~8月
数量
前年比
数量
前年比
(kL) (%)
(kL) (%)
826,195
98.1 1,775,866
98.6
2,181
119.0
4,822
111.0
828,375
98.1 1,780,688
98.6
205,298
93.9 491,407
94.3
515
95.0
1,204
110.0
205,814
93.9 492,612
94.4
177,041
89.2
402,990
90.6
128,131
112.6 391,456
108.7 927,102
109.0
187,435
103.2 568,497
101.8 1,330,092
102.7
518,550
97.2 1,602,686
98.8 3,603,391
99.5
50.5%(52.3%)
51.7%(52.1%)
49.4%(49.8%)
13.3%(13.7%)
12.8%(13.5%)
13.7%(14.4%)
36.1%(34.0%)
35.5%(34.4%)
36.9%(35.7%)
注)ビールはビール酒造組合,発泡酒は発泡酒の税制を考える会が発表した数値。新ジャンルは発泡酒の税制を考える会が参考とし
て発表。6~8月分は醸造産業新聞社が算出。カッコ内の数値は前年。
食品と容器
642
2013 VOL. 54 NO. 10
今年は当初,
「前年実績を上回る可能性は低い」
第3表 夏場3カ月のビール類課税数量の10年間推移
との見方もあったが,梅雨明けが例年より早く猛
暑日も多かったことから人気が高く,週末の予約
平成16年
が取れない状況が続出した。8月には首都圏で雨
天により営業日数減となったところもあるが,8
17年
月末時点では前年並みかややプラスの売上げ状況
となっているところが多い。好調を受け,営業期
18年
間を延長するところもみられ,9月の状況次第で
19年
は過去最高の売上げを更新するところが多く出て
きそうだ。
20年
一昨年の夏は,原発事故に伴う節電対応で「暑
21年
「冷たさの競演」,昨年以上に
い夏」対策が注目を集めた。昨年も同様に「冷た
22年
さ」の訴求が各方面でみられ,ビール類では,ア
サヒビールが2010年から展開している「(氷点下
23年
のスーパードライ)エクストラコールド」に加え,
キリンビールが新たに〈一番搾り〉の上にマイナ
ス5℃の凍った泡を乗せた「一番搾り・フローズ
ン生」を提案,「冷たさの競演」が話題を集めた。
今年の夏は,両社の「冷たさの競演」がさらに
24年
25年
ビール
(kL)
1,197,878
(100.9%)
1,117,616
(93.3%)
1,082,301
(96.8%)
1,055,393
(97.5%)
975,829
(92.5%)
899,317
(92.2%)
895,328
(99.6%)
851,472
(95.1%)
844,285
(99.2%)
828,375
(98.1%)
発泡酒
新分野
合計
(kL)
(kL)
(kL)
680,250
104,600 1,982,728
(97.6%)
(−) (102.3%)
478,711
334,221 1,930,548
(70.4%) (319.5%) (97.4%)
443,877
335,745 1,861,923
(92.7%) (100.4%) (96.4%)
422,039
364,653 1,842,085
(95.1%) (108.6%) (98.9%)
390,514
425,459 1,791,802
(92.5%) (116.7%) (97.3%)
327,052
487,158 1,713,527
(83.7%) (114.5%) (95.6%)
279,631
550,105 1,725,064
(85.5%) (112.9%) (100.7%)
240,203
550,184 1,641,859
(85.9%) (100.0%) (95.2%)
219,139
558,556 1,621,980
(91.2%) (101.5%) (98.8%)
205,814
568,497 1,602,685
(93.9%) (101.8%) (98.8%)
注)6~8月3カ月間の課税数量合計。カッコ内は前年比。
ヒートアップした観があり,両社が全国の大都市
量は,ビール4社の6商品合計で前年同期比7%
で展開している情報発信店舗の来店客数は昨年を
増の543万箱(大瓶換算)となった。ただ,6,7
上回って推移している。
月は11%の2ケタ増だったが,8月はほぼ前年
夏場3カ月のノンアルビール7%増
並みに止まった。伸びが一段落してきた兆しなの
依然として市場拡大が続いているアルコール分
か,それとも一時的な停滞なのか,今後の動きが
0.00%ノンアルビールの夏場3カ月間の出荷数
注目されるところだ。
(醸造産業新聞社 編集部)
研究例会のご案内
食品膜・分離技術研究会 MRC 第25回秋季研究例会
◇日 時:2013年11月8日(金)
◇場 所:川口総合文化センター 川口リリア
〒332-0015 埼玉県川口市川口3-1-1
TEL:048-258-2000 FAX:048-258-2100
◇主 催:食品膜・分離技術研究会(MRC)
◇協力機関:東京農工大学農学部付属硬蛋白質利用研
究施設
◇参加費(円 / 人):民間会社・特例会員=20,000円
/人,民間会社非会員=30,000円/人,当会顧
問・国公立研究機関・大学等教育機関:会員=
12,000 /人,非会員=18,000円/人(10 / 18
以降の申し込みは +5,000円)
◇参加申し込みおよび問い合わせ
食品膜・分離技術研究会(MRC)本部事務局
〒332−0015 川口市川口1−1−3−3211
食品と容器
TEL/FAX:048−224−3336(事務局 渡辺敦夫)
e-mail:[email protected]
◇プログラム:12:45 ~ 16:55
①固液分離における膜利用の展開
入谷英司(名古屋大学大学院)
②膜技術開発への挑戦・40有余年 ―明日を支
える若き研究者・技術者に送る言葉―
横山文郎(筑波大学)
③サメの丸ごと活用による東日本大震災からの
復興支援 ~気仙沼での取り組み~
野村義宏(東京農工大学)
④高濃度液状食品を対象とした透過流束の予測
―チーズホエイ・牛乳を例として―
山川洋亮(森永乳業(株))
◇交流会:(17:05 ~ 19:00)
643
2013 VOL. 54 NO. 10
業界の話題
日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より
ヤクルト本社,乳酸菌摂取で乳
向紹介 ファベックス関西で
自の基準で認証ルールが作られ
上で35%減
日本ハラール協会・ハラール
グローバルスタンダード策定
監査人(食品技術)の伊藤健氏
を急ぐイスラム諸国会議機構
子どものころを含めた過去の
が,9月12日午後1時半から
(OIC)。 参 加57カ 国 の う ち22
食習慣で,乳酸菌「ラクトバチ
ファベックス主催者特別セミ
カ国がすでに署名を済ませ,順
ルス カゼイ シロタ株」を習
ナー「ハラールマーケットの展望」
次署名国が増えていく見込み。
慣的に取り入れた人に,乳がん
で世界の最新動向を紹介する。
またトルコもこの主導権争いに
発症リスクの低減効果が認めら
イスラム圏の宗教の戒律「ハ
加わると見られている。
れた。週4回以上の同株摂取に
ラール」
(ハラル)は神が許し
より発症リスクが35%減ると
た以外のものを食してはならぬ
いう。
という厳しいもの。これを守る
ヤクルト本社が協力した,乳
ムスリム教徒19億人(アジア
酸菌摂取と乳がん発症の検討疫
地域7億人)に提供する食品(ハ
ミツカンが魚料理の喫食や調
学研究で分かった。
ラール食品)など巨大市場の争
理に関する実態・意識を探った
今回の結果は,食行動パター
奪が始まっている。
調 査( 首 都 圏・ 関 西 圏 に 住む
ンを決める重要な成長期や,乳
親日派の多いインドネシアな
30 ~ 40代の子どもを持つ主婦
がんにかかった人が増加を始め
ど一部の国を除き,イスラム国
412人を対象)によると,「魚
る20 ~ 30代に乳酸菌を摂取す
家と距離を置いてきた日本は,
料理を食べるのが好きな人は約
ることが,乳がん発症リスクの
情報不足や未知の宗教に関わる
8割」,「よく食べる」「まあま
低減に影響することを示す有効
戸惑いもあって,中国・台湾な
あ食べる」人のうち約8割が,
な成果となった。加えて,同研
ど近隣国に比べ認証が遅れてい
週2日以上魚料理を家で作って
究から大豆イソフラボン摂取と
る。一方で,胃袋の小さくなっ
食べる。魚料理を作らない理由
の相加効果も示された。
た日本をあとに海外に進出し,
のトップ3は「レパートリーが
これまでの乳がん予防に関す
ムスリムを相手にビジネスに取
あまりない」「調理が面倒」「調
る研究では,子どものころも含
り組もうとする企業もある。認
理後の掃除が面倒」など,魚料
めた過去の食習慣との関連調査
証国政府や大使館主導で開催さ
理は好きだがレパートリーが少
が数例しかなかった。
れるハラール専門展示会やセミ
ない,面倒,という主婦の悩み
同研究は,公益財団法人パブ
ナーに参加し情報を集めている
が作らない理由として浮き彫り
リックヘルスリサーチセンター
姿も見られる。中でも最も認証
になった。
のがん臨床研究支援事業の一環
基準が厳しいとされるマレーシ
11年度の水産白書によると
である,研究者主導・疫学研究
アで認証を取得し,世界に打っ
06年に国民1人当たりの肉の
「乳酸菌摂取と乳がんの関連を
て出ようとする勇気のある日本
摂取量が魚の摂取量を上回って
検討するケース・コントロール
企業もある。日本国内では日本
以降,年々その差は拡大してお
研究」の結果。同社はこの事業
ムスリム協会,日本ハラール協
り,水産庁は魚をもっと手軽
に賛同して協力してきた。
会が認証機関の活動をしている。
においしく食べる施策として
これまでインドネシア,マ
“ ファストフィッシュ ” を提唱
レーシアが世界をリードし,独
している。一方で,回転寿司や
がん発症リスク回避 週4回以
(日食 2013/08/23 日付)
日本ハラール協会・伊藤健氏,
流動するハラール市場の最新動
食品と容器
(日食 2013/08/23 日付)
644
てきた。そこに,参入したのが
30 ~ 40代主婦,8割が魚料
理好き 調理簡単なら試したい
ミツカン調べ
(日食 2013/08/30 日付)
2013 VOL. 54 NO. 10
海鮮丼が人気になっているなど
理が面倒」(41.6%),「調理後
ベツは健康に良いというイメー
の事象がある。
の掃除が面倒」
(35.0%)であっ
ジで特に50・60代の男性の支
調査によると,魚料理を食べ
た が, 全 体 の59.7 %, 魚 料 理
持を集めた。「ジャガイモ」は
るのが好きな人は,「好き」「や
を「作らない」
「あまり作らない」
男女差なく人気で,おいしいだ
や好き」を合わせて83.5%で,
人 の67.9 % が「 火 を 使 わ ず 手
けでなく「調理」への活用利便
「 嫌 い 」「 や や 嫌 い 」 は5.1 %。
間のかからない魚料理なら作り
性で女性の評価が高かった。
たい」と回答した。
嫌 い な 野 菜 の ト ッ プ 3 は,
79.9%が魚料理を「よく食べ
る」「まあまあ食べる」と回答
好きな野菜1位「トマト」 2
「ゴーヤ」
「セロリ」
「春菊」だっ
カルビー「大人の野菜に関する
が独特の苦みが苦手との回答が
人に1人が「野菜不足」認識 た。 嫌 い な 理 由 は,「 ゴ ーヤ」
意識調査」
多く,食卓でなじみになったの
(73.5 %),「 美 味 し い か ら 」
カルビーは,8月31日の “ 野
子どものころから食べ慣れてい
(70.9%),
「ごはんに合うから」
菜の日 ” を前に「大人の野菜に
る若者より高齢者層が苦手とし
(43.7%)であった。
関する意識調査」の結果を公表
ている。「セロリ」「春菊」は独
好きな人に限定すると「美味
した。大人が好きな野菜のトッ
特の「味」と「香り」が要因で,
しいから」(82.6%)がトップ
プは「トマト」で嫌いな野菜の
20 ~ 40代の若年層では「味」
で,嫌いな人に限定すると「健
トップは「ゴーヤ」で,2人に
で,50 ~ 60代の高齢者層では,
康に良いから」
(66.7%)がトッ
1人は「野菜不足」を感じてお
プであった。
り, そ の 割 合 は,20・30代 で
いう結果が出た。
好きな魚料理のトップは,大
6割以上におよぶことがわかっ
「普段野菜不足を感じていま
人 が「 焼 き 魚 」( 自 分85.2 %,
た。さらに野菜不足解消は,野
す か 」 と の 質 問 に は,53.5 %
夫81.1%),子どもは「にぎり
菜ジュースやサプリメントが上
が 不 足 し て い る と 回 答。20・
寿司」
(79.1%)で62.6%が「子
位も,「野菜チップス」も野菜
30代 が 回 答 者 の 半 数 を 占 め,
どもが骨のある魚を嫌がる」と
の代わりに購入してることもわ
それぞれ6割以上が野菜不足を
回答した。
かった。同調査は,5月22 ~
実感するなど若い人ほど野菜不
家で作って食べる魚料理は,
23日,20 ~ 69歳の大人400人
足を意識している。また,野菜
「 焼 き 魚 」(97.5 %),「 煮 魚 」
を対象にインターネット調査で
不足を感じている人に野菜が不
(70.3 %),「 ソ テ ー・ ム ニ エ
実施した。
足するとどんな不安を感じるか
ル」(62.0%)で,外食の際に
同調査で好きな野菜と嫌いな
聞いたところ,「栄養バランス」
食べる魚料理は,「にぎり寿司」
野菜を10種選んでもらったと
75.2 %,「 健 康 」57.9 %,「 ビ
ころ,好きな野菜のトップ3は
タミン・ミネラル不足」56.1%
「トマト」「キャベツ」「ジャガ
で,いずれも5割以上の回答と
した。
ま た, そ の う ち79.0 % が 週
2日以上家で作って食べ,そ
の 理 由 は「 健 康 に 良 い か ら 」
(90.5%),「海鮮丼・海鮮ちら
し」
(42.8%),
「刺身」
(40.9%)
(日食 2013/08/30 日付)
は沖縄料理ブーム以降のため,
「味」プラス「香り」が苦手と
であった。
イモ」だった。理由は,
「トマト」
なった。特に20 ~ 40代女性で
魚料理を家庭で調理するかに
が美味で健康に良くて食べやす
は,
「体の老化や酸化」
「美容」
「太
ついては「よく作る」
(12.1%),
い三拍子揃った野菜として人気
りそう」「風邪をひきやすそう」
「まあまあ作る」(54.6%),
「あ
が高く,男女比は男性43.9%,
などさまざまな項目にも2~4
まり作らない」(32.3%),「作
女性56.1%だった。
「キャベツ」
割の回答が得られた。
らない」
(1.0%)となっており,
は, 男 女 比 が 男 性58.3 %, 女
野菜不足を感じている人に野
作らない理由は,
「レパートリー
性41.7%でやや男性人気が高
菜不足を補うための食品を聞い
があまりない」(55.5%),「調
いことがわかった。また,キャ
たところ,「野菜ジュース」が
食品と容器
645
2013 VOL. 54 NO. 10
最も多く,「サプリメント」「フ
き出す問題があったが,泡をコ
割がアジア市場を中心に輸出さ
レッシュフルーツ」がトップ3
ントロールすることと,ホット
れている。恵まれたアグリビジ
で,次いで「野菜チップス」も
炭酸専用の品質基準設計とする
ネスの環境に加え,労働コスト
4位となり,野菜の代わりの補
ことで課題をクリアした。
や不動産価格が安いというコス
助食品として定着しつつあるこ
同品は,ジンジャーフレー
ト的な利点,豪州の交通ネット
とがうかがえる。
バーに炭酸を組み合わせること
ワークの中心に位置し,アジア
コカ・コーラシステム,ホット
で,体を温めながらおいしくリ
各国との時差も2時間以内とい
フレッシュできるホット炭酸体
う地理的条件にも恵まれてい
冬場需要創出へ
験を提供していく。今後,投資
る。また,同州政府の積極的な
をして,一つのカテゴリーとし
投資への支援策もその魅力のひ
コカ・コーラシステムは,世
て育成していく考えだ。また,
とつとなっている。特にアグリ
界初となるホット炭酸飲料「カ
ホット炭酸カテゴリーの確立に
ビジネスに最も大きい影響を及
ナダドライ ホットジンジャー
向け,新商品も検討していく。
ぼす気候変動についてはさまざ
エール」を10月21日から国内
30 ~ 40代の男女をターゲット
まな方向からの研究を行い,そ
で販売する。同品は,冬季の炭
として展開する。飲用シーンは,
の予防や対処法,品質改良につ
酸飲料の需要拡大と,新しいカ
リラックス時にオフィスや移動中
いて専門的情報提供や教育啓蒙
テゴリーの商品を作るというア
の気分転換などを訴求していく。
を行っている。
炭酸飲料を世界に先駆け発売 (日食 2013/09/06 日付)
イデアをもとに,炭酸は冷たい
ものという常識を覆す発想で開
発した。180ml 缶を120円で提
南オーストラリア州政府,セミ
ガーゴ大臣は「世界中の消費
資を
ストラリアは持続可能な漁業,
ナー開催 アグリビジネスに投
者が安全を求めている。南オー
(日食 2013/09/06 日付)
穀物においては遺伝子組み換え
CVS,SM で,いずれも温めて
南オーストラリア州政府は,
禁止措置がとられている。国と
販売する。コカ・コーラからの
ゲイル・ガーゴ農業大臣の来日
しても政治・経済が安定し,生
新たなイノベーションとして
に伴い8月27日,東京都千代
産性への信用も高い。州政府と
“ ホット炭酸飲料 ” というカテ
田区の帝国ホテルで「南オース
しても,さまざまなプログラム
ゴリーの確立を目指していく。
トラリア州アグリビジネス投資
を用意しているので,安心して
4日,都内で商品発表会を開き,
概況セミナー」を開催した。会
アグリビジネスへの投資を検討
ティム・ブレット社長が「ホッ
場には商社,メーカーほか,農
してほしい」とアピールした。
ト炭酸飲料は画期的な飲料とし
業関連の研究開発・インフラな
南オーストラリア州への投資
て,日本でも世界でも受け入れ
どに興味のある企業,銀行関係
については,オーストラリア大
られるだろう」と商品への自信
者ら約50人が招かれ,ガーゴ
使館マーケティング事務所が窓
を語った。
大臣やスコット・アシュビー農
口となる。
同品の開発に当たって,味覚
林水産省 CEO らによる,具体
面と自販機での販売という二つ
的な投資状況や同州政府の手厚
の課題があった。味覚面は,ジ
い支援などについての説明に耳
ンジャーエールベースにジン
を傾けた。
食品缶詰市場は震災後,急速
ジャーエキスを配合し,フルー
同州は,ミナミマグロなどの
に見直しが進み,昨年度の国内
ツやスパイスのフレーバーを加
水 産 物 と 牛 肉, ワ イ ン, 穀 物
生産量は飲料を除く丸缶合計で
えることでまろやかな味わいに
類などを主な産物としている。
32年ぶりの増加となった。震
仕上げた。一方,自販機でホッ
オーストラリアの全農業生産の
災復興による供給回復も大き
ト炭酸を販売すると,中身が吹
2割を産出しており,全体の6
かったが,備蓄需要の増加や味
供する。販売チャネルは自販機,
食品と容器
646
缶詰・瓶詰・レトルト食品特集:
缶詰動向=見直し進み需要好調
(日食 2013/09/13 日付)
2013 VOL. 54 NO. 10
覚,利便性など市場価値の再評
化。水産缶詰では昨年から,主
出・海外展開の実態を調べた結
価が後押しした。今年度は特に
原料の原魚価格が漁獲規制や急
果を公表した。海外市場の開拓・
調理缶が依然好調に推移,特に
激な円安で高騰,食用油などの
販路の拡大などを目的に,半分
サバ缶が情報番組の影響で品薄
副材料価格も高騰した。夏前に
近くの企業がすでに,または今
状態になるほど売れている。一
大手数社が値上げに着手した
後輸出・海外展開するかに関心
方で原料事情は依然厳しく,特
が,コスト増は依然続きそうな
を示した。業種別では,食品製
に水産缶はツナ・青物・ホタテ
気配にある。また,水温上昇で
造業や飲食業ではすでに輸出・
(貝類)などを中心に厳しい環
青物漁獲も大幅に遅れ,特にサ
海外展開を進めて積極的だが,
境が見込まれている。
バは需要に対する原料手当てが
小売業はあまり関心を持ってい
国産缶詰は80年以降,為替
重要となっている。青物缶につ
ない。
面などでの競争力低下や他国が
いては収益バランスが非常に悪
輸出・海外展開で製造業,飲
内製化を加速させたことに伴
化していることから,価格改定
食業は「すでに取り組んでいる」
い,輸出量が減少。また,レト
の正式発表も可能性としては考
とする実績の回答率は,食品企
ルトへの移行などで国内生産量
えられる。
業全体の平均よりも高かった。
は年々減少し,昨年の前年比増
輸入缶詰については円安の流
「検討または計画」「検討してい
は32年ぶりとなる。一昨年の
れで SKU が減少。ただし,為
ないが関心」などの意欲を示す
震災による供給減からの反動が
替コストを考慮しても国産品と
回答率で製造業では平均よりも
最大の要因だが,防災意識に伴
比べればコスト優位性がまだ高
高かったが,飲食業は低かっ
う備蓄需要の増加,テレビなど
いため,引き続き国産 NB との
た。また,卸売業は実績はない
での露出拡大による市場特性へ
競合が続いている。店頭では付
が,意欲を示す企業は多かっ
の見直しも生産増に影響した。
加価値商材を積極訴求する動き
た。小売業は実績も意欲も低い
各ジャンルを丸缶ベースで見
もあることや,震災直後の特需
結果となった。日本公庫は「食
た場合,生産増の最大要因と
で販売された商品の賞味期限が
肉,青果などの卸売業で意欲が
なったのは,ボリュームの大き
近づくこと,消費税導入前の駆
ある」「小売業にとって海外展
い水産缶が9%増と伸長したこ
け込み需要が予想されることな
開はハードルが高く,進出でき
とにある。未曽有の原料危機に
どを背景に,年末から来春にか
る企業はほぼ一巡」と分析して
あるツナ関連は軒並み減少した
けての需要が強まることは確実
いる。
が,サバが28%増と大きく増
だ。
輸出・海外展開では国産の農
加,単一カテゴリーでは「まぐ
需要に対応するための原料調
畜産物の需要拡大につながると
ろ・かつお類」に肉薄するレベ
達に参入メーカーは追われ,今
みられているが,日本公庫は海
ルにまで拡大したことが大きい。
秋の鍵を握るとみられる。
外法人に出資。現地に店舗展開
企業の約半数,海外展開に意欲
などで実績や意欲がある企業
庫調べ
物使用の有無を調べたところ,
求が順調な焼鳥缶,道産原料が
食品企業の約半分が輸出・海
日本酒の販売・提供,味噌,醤
堅調だったスイートコーンな
外展開に意欲を示していること
油などを原材料として使うなど
どがいずれも前年を超え,全
がわかった。日本政策金融公庫
限定的だ。日本公庫はもう少し
ジャンルの合計生産量は24万
(日本公庫)は11日,13年上半
高いと予想していたが,比率を
2,187t(丸缶のみ)となった。
期食品産業動向調査の一環とし
どのように高めていくかが今後
一方で周辺環境は歴史的に悪
て食品企業2701社を対象に輸
の課題と位置付けている。
また,果実・野菜・食肉など
各ジャンルでのボリュームゾー
ンが好調に推移。原料生産が好
調だったミカン缶,メーカー訴
食品と容器
製造・飲食業が積極的 日本公
(日食 2013/09/13 日付)
647
約150社を対象に国産の農畜産
32.6%しか使っていなかった。
2013 VOL. 54 NO. 10
今月の統計
(本)
200
(キリンビール株式会社調)
194
※ 日本の消費量については,ビール,発泡酒,新ジャンルの合計。
170.9
170
150
100
159.7
147.9
157.4
136.6 129.4
144.6
123.8 122.6 118.8
113.6 111
133.1 126.4
123.2 121
116.9 113.1
大びん(633mL)換算本数
110.4 108.4 105.4
103.2
111
110.4
106.2 104.4
94.7
98.8
91.5
86.1
94.5
91
83.5 69.2
52.6
50
中国
日本 ※
スウェーデン
アンゴラ
ボスニア・ヘルツェゴビナ
スイス
南アフリカ
第1図 2011年国別一人当たりビール消費量
メキ シ コ
ロシ ア
ウクライナ
ブラジル
デン マ ー ク
カナダ
ニュージーランド
ラトビア
スロ バ キ ア
ハンガリー
スペイン
ブルガリア
イギリス
リトアニア
アメリカ
オランダ
ルーマニア
ベルギー
パナマ
ベネズエラ
スロベニア
オーストラリア
クロアチア
ポーランド
フィンランド
アイルランド
エストニア
ドイ ツ
チェコ
オーストリア
0
(千kL)
200
2011年
2012年
(財団法人 日本清涼飲料検査協会調)
2013年
150
100
50
0
1
2
3
4
5
6
7
8
(月)
第2図 炭酸飲料のJAS格付実績・月別推移
第1表 炭酸飲料のJAS格付実績(2013年1~8月累計)
炭酸水
クリームソーダ
果汁5%未満
果汁10%未満
フレーバー系
コーラ
透明飲料
炭酸入りドリンク
その他
合計
容器別構成比(%)
前年容器別構成比(%)
缶
2,804
28,926
1,018
51,540
138,142
80,987
10,958
9,812
324,187
31.0
32.2
格付数量(kL)
ビン・PET
計
15,829
18,633
40,291
69,217
21,437
22,455
121,011
172,551
256,415
394,557
198,255
279,242
32,025
42,983
36,982
46,794
722,245
1,046,432
69.0
100.0
67.8
100.0
缶
111
108
56
101
97
97
94
108
99
-
(財団法人 日本清涼飲料検査協会調)
前年同期比(%)
品種別構成比(%)
ビン・PET
計
缶
ビン・PET
計
116
115
0.9
2.3
1.8
142
126
8.8
5.8
6.8
69
0.3
3.1
2.2
102
102
15.7
17.5
16.9
109
104
42.1
37.0
38.6
99
98
24.7
28.6
27.3
116
109
3.3
4.6
4.2
100
102
3.0
5.3
4.6
104
102
98.7
104.2
102.5
-
容器別構成比は昨年,一昨年に続き,缶が減少しビン・PETが
増加の傾向を示している。
食品と容器
648
2013 VOL. 54 NO. 10
今月の統計
第2表
順位
2012
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
国 名
中国
アメリカ
ブラジル
ロシア
ドイツ
メキシコ
日本※
イギリス
ポーランド
スペイン
南アフリカ
ウクライナ
ベトナム
オランダ
ナイジェリア
タイ
コロンビア
ベネズエラ
カナダ
インド
フランス
韓国
ベルギー
チェコ共和国
ルーマニア
世界総合計
2012年
(千kL)
44,348
22,952
13,400
9,740
9,462
8,250
5,591
4,205
3,780
3,300
3,150
3,005
2,980
2,427
2,400
2,370
2,255
2,147
1,953
1,950
1,900
1,888
1,875
1,861
1,790
190,701
2012年国別ビール生産量
構成比
(%)
23.3
12.0
7.0
5.1
5.0
4.3
2.9
2.2
2.0
1.7
1.7
1.6
1.6
1.3
1.3
1.2
1.2
1.1
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
0.9
100.0
対前年
増減(%)
-1.2
1.3
1.5
-2.1
-1.0
-9.8
-0.7
-8.0
5.0
-1.7
1.7
-1.5
7.2
2.6
22.5
15.0
7.4
-8.6
0.1
5.4
-0.6
2.1
1.0
0.1
5.9
0.9
5年前
増減(%)
14.0
-1.4
29.1
-15.1
-9.0
1.9
-11.4
-18.1
6.5
-3.9
18.7
-4.8
65.6
-11.0
77.8
9.2
18.7
-18.2
-18.4
116.7
25.8
5.6
1.0
-0.1
-7.8
6.6
10年前
増減(%)
89.0
-2.1
53.7
38.6
-12.1
29.5
-20.0
-26.0
45.4
18.4
29.1
101.7
231.5
-2.9
242.9
89.3
87.9
34.2
-8.6
225.0
4.5
0.2
19.4
3.5
56.1
32.2
(キリンビール株式会社調)
2007年
(千kL)
38,907
23,288
10,380
11,469
10,397
8,100
6,309
5,132
3,550
3,435
2,653
3,156
1,800
2,726
1,350
2,170
1,900
2,625
2,392
900
1,510
1,789
1,857
1,863
1,942
178,961
構成比
(%)
21.7
13.0
5.8
6.4
5.8
4.5
3.5
2.9
2.0
1.9
1.5
1.8
1.0
1.5
0.8
1.2
1.1
1.5
1.3
0.5
0.8
1.0
1.0
1.0
1.1
100.0
順位 2002年 構成比
2002 (千kL) (%)
1
23,468
16.3
2
23,456
16.3
4
8,720
6.0
5
7,025
4.9
3
10,760
7.5
7
6,370
4.4
6
6,986
4.8
8
5,680
3.9
10
2,600
1.8
9
2,786
1.9
12
2,440
1.7
20
1,490
1.0
28
899
0.6
11
2,499
1.7
34
700
0.5
23
1,252
0.9
24
1,200
0.8
18
1,600
1.1
13
2,137
1.5
35
600
0.4
15
1,818
1.3
14
1,885
1.3
19
1,570
1.1
16
1,798
1.2
25
1,147
0.8
144,219 100.0
※日本の生産量については,ビール,発泡酒,新ジャンルの合計。
2012年の世界ビール生産量を10年前と比較すると,増加量は約4,648万kL(32.2%増)となった。
増加量が最も多いのは中国で約2,088万kL,ブラジル468万kL,ロシア271万kLと続く。
第3表 平均気温,降水量,日照時間
平均気温(℃)
降水量(mm)
平年比
前年比
平年差 前年差
2012年 9月
10月
11月
12月
2013年 1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
月間
月間
月間
月間
月間
月間
月間
月間
月間
月間
月間
下旬
月間
9月 上旬
中旬
26.2
19.4
12.7
7.3
5.5
6.2
12.1
15.2
19.8
22.9
27.3
28.2
29.2
27.1
25.8
+2.4
+0.9
-0.6
-1.4
-0.6
-0.3
+2.7
+0.6
+0.9
+0.8
+1.5
+1.1
+1.8
+1.1
+1.9
+1.1
-0.1
-2.2
-0.2
+0.7
+0.8
+3.3
+0.7
+0.2
+1.5
+0.9
-1.6
+0.1
-0.6
-2.3
(%)
214.5
154.5
154.0
69.0
70.0
30.0
44.5
99.5
56.0
159.0
115.5
78.0
99.0
85.0
98.0
注)平年値は1981年~2010年の月,旬平均値
食品と容器
102
78
166
135
134
53
38
80
41
95
75
133
59
150
47
(8月中旬まで・東京)
日照時間(h)
前年比
平年比
(%)
91
129
137
116
140
32
31
84
24
86
89
-
396
181
183
(%)
164.4
156.6
153.3
166.9
212.5
173.7
190.1
196.0
227.1
123.9
163.4
56.2
210.6
40.7
71.2
140
117
105
95
113
104
117
112
132
101
114
95
120
86
194
(%)
99
111
107
89
116
117
127
121
116
99
90
51
89
70
98
☆2012年8月号から新平年値を使用(気象庁調査)
649
2013 VOL. 54 NO. 10
最近の技術雑誌から
~食肉分野の ISO,SQF,自治体認証の実践事例~
月刊 HACCP,19(9)19 ~ 35(’13)
○ SQF で国産食肉の安全性・品質管理徹底/ JA 全農
ミートフーズの取り組み
○配合飼料メーカーで国内初の ISO22000 取得/重要性
増す食の安全性確保に全社体制で臨む……土橋裕司
○食品衛生7Sをベースに「金沢市 HACCP」の認証取
得/ソフト面の充実を図り,現場の衛生管理を劇的
に改善…………………………………………中田吉則
国 内 編
分 析 ・ 測 定
〔解説〕特集-理化学分析による食品の起源判別技術
(「フード・フォラム・つくば」より)
食品と開発,48(9)4 ~24(’13)
○元素分析及び DNA 分析による食品の産地判別技術
………………………………………………井口 潤
○軽元素安定同位体比分析による食品の原料・原産地判
別……………………………………………鈴木彌生子
○無機元素分析による調製粉乳製造地判別の可能性
………………………………………………藤崎浩二
○わかめ製品における原料産地判別への取り組み
………………………………………………絵面智宏
○コンドロイチン硫酸塩の安定同位体比率分析による起
源動物種判定
……成谷和政・下尾克也・長尾淳二・大崎幸彦・
Dr.C Granier・Dr.E Jamin・Ing.F Thomas
○工業用アルコールの起源推定技術について…浦永 誠
○安定同位体比分析を用いた酒類原料の起源推定
……………………………………………和佐野成亮
○食品の産地判別技術の現状,最前線および今後の展望
………………………………………………有山 薫
〔解説〕年間特集―食品の品質保証技術/微生物による
食品の変敗と汚染源の解明―
吉田信一郎・食品機械装置,50(9)54~60(’13)
〔解説〕特集―異物混入防止対策―
食品機械装置,50(9)61~72(’13)
○テーブルマーク ( 株 ) における異物混入防止対策
………………………………………………松村伸康
○気流制御技術を利用した防虫エアカーテンについて
………………………………………………浦田浩作
添 加 物 ・ 副材料
〔解説〕FFI Reports
FFI ジャーナル,218(3)276~295(’13/8)
○ジェランガムの基礎と食品への応用
………………………………栃本剛宏・長谷川 潤
○明色化したクチナシ青色素アートブルー ® シリーズ
…………………………………細見保史・西山浩司
○ DHA(ドコサヘキサエン酸)
…………………宮本可南子・坂田 慎・笹田誠治
○魚肉を使用した新しいスイーツの紹介
…………………………………岩井和美・河合卓也
栄 養 ・ 健 康
〔解説〕特集―新開発の機能性食品/長生きを支える機
能性食品―
酒井重男:食品と科学,55(9)66~76(’13)
〔解説〕フラボノイド配糖体の吸収機構
井上勝央:FFI ジャーナル,218(3)251~257(’13/8)
〔解説〕特集-食品素材・改良剤-
食品工業,56(18)41 ~ 68(’13.9/30)
○きのこエルゴチオネインの食品への応用-抗酸化,退
色防止-……………大島敏明・長阪玲子・小山智之
○機能性香料のさまざまな効果と食品への応用
………………………………………………佐治 仁
○ベーカリー製品向け酢酸ナトリウム製剤『ミカクファ
イン BK』の開発……………………………津田謙太郎
○ネスレのクリーミングパウダー VEEKREME®G 製
品作りをサポート………………………………編集部
〔解説〕ポリフェノールの酸化的変化,生成物の構造と
その機能
増 田 晃 子・ 増 田 俊 哉:FFI ジ ャ ー ナ ル,218(3)
258 ~ 265(’13/8)
〔解説〕特集―高齢者向け食品の開発―
ジャパンフードサイエンス,52(9)33~52(’13)
○摂食回復支援食「あいーと」の開発…………北村 研
○高齢者食品への水溶性食物繊維の利用………東谷 守
○咀嚼力コントロール食品開発のための食感の定量評価
……………………………………………佐久間 淳
○これからの介護食品をめぐる論点
食
品
衛
〔解説〕特集―天然調味料の近況と技術動向―
ジャパンフードサイエンス,52(9)15~31(’13)
○天然調味料の近況と今後の動向………………勝又佳彦
○天然調味料の近況とその利用分野
………………………………佐藤食品工業株式会社
MD - 400」
○ D -アミノ酸に着目した「こく味調味料 PD - 400,
生
〔解説〕特集―フードチェーンで広がる HACCP 認証
食品と容器
650
2013 VOL. 54 NO. 10
最近の技術雑誌から
の開発と応用………井上 裕・竹中実里・田嶋靖子
○各社の調味料紹介
農
○主要飲料メーカーの動向
○ 2013 年上半期会社別新発売品一覧
産
缶びん詰・レトルト食品
〔解説〕特集―人気高まるオリーブオイルの世界―
食品工業,56(17)33~58(’13.9/15)
○香川県のオリーブオイル生産の概要…………柴田英明
○オリーブジャパンと国際オリーブオイルコンテスト
(上)……………………………………………多田俊哉
○世界品質のオリーヴオイルを瀬戸内・小豆島から
………………………………………………野村充史
○オリーブオイルにおけるスペインでの最新情報
………………………………………………田中富子
〔解説〕即席食品特集―反動局面から円安へシフト/急
変する市場環境をにらみ秋冬商戦に臨む即席食品
メーカー-
総合食品,37(3)37~48(’13.8)
食
一
般
〔解説〕特集1-イチからわかるおいしさの評価―
フードケミカル,29(8)37~71(’13)
○どうやっておいしさを評価するか?-官能評価と機器
分析-…………………………………………上田玲子
○おいしさを評価するための言葉-テクスチャーの官能
評価用語を中心に-…………………………早川文代
○飲料の新製品開発における機器分析の活用方法
………………………………………………黒野昌洋
○粒子径分布による食感の「見える化」…………木下 健
○スマートセンシングシステムを用いた食品の客観的な
「おいしさ」評価… ……………………………池濱清治
○特別インタビュー/食肉加工品の開発とおいしさ評価
………………………………………………嘉屋 博
〔解説〕連載-食品のおいしさと改質/第3回 小麦・
穀類加工品のおいしさと栄養(その1)
山﨑勝利:食品工業,56(17)65~72(’13.9/15)
水 産 ・ 畜 産
〔解説〕特集1―新しいステージにおける BSE 対策―
川島俊郞:日本食肉加工情報,758(8)2~6(’13)
〔解説〕特集2―BSE対策の見直し―
今西 保:日本食肉加工情報,758(8)7~12(’13)
〔解説〕特集2-“持続系”食品のトレンドを追う―
フードケミカル,29(8)85 ~ 101(’13)
○特別インタビュー/ガム開発のトレンド-過去・現在・
未来-…………………………………………岡林一登
○おいしさを持続させる技術-甘味料を中心に-
………………………………………………竹村優子
○ネオテーム製剤「ミラスィー ®」を利用したフレーバー
および甘味の持続……………………………小野雄介
〔解説〕特集4―食肉加工品の生産動向 第3回(最終
回)―
武内祐司:日本食肉加工情報,758(8)18~20(’13)
飲 料 ・ 醸 造
〔解説〕おいしいお米「コシヒカリ」の酒
古 川 幸 子:New Food Industry,
55(9)16~24(’13)
〔解説〕リポート/オーガニック・コミュニケーターの
すすめ
丸山 豊:食品と科学,55(9)16 ~ 20(’13)
〔解説〕生乳生産9年ぶりプラスも,飲用は減少基調/
10 月以降の牛乳類値上げの影響は必至
酒類食品統計月報,55(6)25 ~ 31(’13.8)
食 品 加 工・保 蔵
〔解説〕日本茶飲料市場,緑茶飲料が復調/麦茶,混合
茶などカフェインゼロ傾向も強まる
酒類食品統計月報,55(6)44 ~ 49(’13.8)
〔解説〕総説 新規納豆の開発-高齢者向け納豆の開発
を中心に-
村松芳多子・三星沙織:日本食品科学工学会誌,
60(8)381~386(’13)
〔解説〕特集―清涼飲料市場の上期総括と下期戦略―
Beverage Japan,36(8)32~84(’13.9)
○天候を追い風に成長続く飲料市場
○ 2013 年上期は茶系飲料,炭酸飲料市場が活性化
○コーヒー戦略と激化する競合
○老舗ブランドへの集中とリスク
○通期では過去最高を更新する?
食品と容器
品
〔解説〕特集1-食と包装のロングライフ事情 2013 -
食品包装,57(9)17~24(’13)
○備蓄用商品から考える長期保存の価値/「購入価格」
と「消費者の啓蒙」が今後の課題では重要に
………………………………………………木島豊希
651
2013 VOL. 54 NO. 10
最近の技術雑誌から
○アクティブバリアが可能にする長期保存/機能性を持
つ成形容器が人気コンビーフ製品で適用へ
………………………………………………伊福威人
○常温 66 カ月保管可能なレトルトカレー/年4回の受
注生産を中心に“非常食需要”へ柔軟対応
……………………………………………ハウス食品
機
○小袋の充塡包装における超音波式充塡物噛み込み防止
装置の開発……………………………………鈴木雅芳
○「エコらくパック」の開発-缶に代わる,新しい粉ミ
ルク容器として-
…………………福本康洋・亀田克巳・中川浩二郎
○防炎段ボール「RAFEP」の開発
……………………梶塚孝士・半田雅之・池田 耕
械 ・ 設 備
〔解説〕輸送包装の今・・・(その 16)/「言い,伝え
たいこと」/―保管・在庫を考える―
橋爪文彦:包装技術,51(9)71~74(’13)
〔解説〕食品・飲料における加熱・非加熱殺菌技術~高
品質化,省エネ,コスト削減などで進展する装置開
発~
編集部:食品と開発,48(9)26~34(’13)
〔解説〕特集2-未来を彩る食品包装 part Ⅱ -
食品包装,57(9)25~31(’13)
○デジタル印刷は包装の“次なるステップ”/小ロット
を経済的に加工可能な柔軟性のメリットに期待大
………………………………ケイト アシェポール
○高度な印刷技術が魅せる日本の意匠をまとったウイス
キーボトル/「ガラスにこだわり 50 年」のプリン
容器は,よりエコ志向へ進化
………………………… ガラスびんアワード 2012
市 場 調 査・流 通
〔解説〕有機酸の市場動向
編集部:食品と開発,48(9)46~50(’13)
〔解説〕消臭,呈味改善・マスキング素材の市場動向
編集部:食品と開発,48(9)51~57(’13)
〔解説〕スーパーフル-ツ素材の市場動向
編集部:食品と開発,48(9)58~64(’13)
容
環
問
題
〔解説〕特集―食品の放射性物質汚染―
FFI ジャーナル,218(3)212~233(’13/8)
○福島第一原発事故による食品の放射性物質汚染
………………………………………………米谷民雄
○水産物の放射性物質濃度…………横田瑞郎・吉川貴志
○茶の放射性物質汚染と放射線に対する防護効果
……増田修一・島村裕子・下位香代子・木苗直秀
器 ・包 装
〔解説〕特集―容器包装の環境対応―
包装技術,51(9)3~40(’13)
○紙製容器包装の環境対応………………………藤井 均
○缶詰用金属容器における環境配慮技術………土谷展生
○ガラス容器再資源化の動向……………………藤本直行
○環境配慮型包材「バイオマテック」について
………………………………………………平井裕一
○メカニカルリサイクル PET フィルムを使用したサス
テナブルパッケージ…………………………中川善博
○燃焼時に CO2 を削減する世界初のラベル「エコナノ」
………………………………………………井口政浩
○国産最軽量2L・550mLPET ボトルの開発
………………………………………………菊池大輔
○廃ポリエチレンの国内循環型リサイクル…長谷部 茜
法
規 ・ 法 令
〔解説〕特集3―「食品表示法」の制定について―
道免昭仁:日本食肉加工情報,758(8)13~17(’13)
〔解説〕特集―食品表示法,課題と期待―
食品と科学,55(9)57 ~ 65(’13)
○どうなる食品表示-食品表示法と課題-……中村幹雄
○消費者の利益の〝保護〟から〝増進〟へ-食品表示法
に期待すること-……………………………戸部依子
〔解説〕第 37 回木下賞受賞論文
包装技術,51(9)41~74(’13)
○新詰め替えスタンディングパウチ「注ぎ上手 ®」
………………………………………………栄 賢治
○長期保存可能な樹脂カップ詰めコンビーフ- MY コ
ンビーフ類 スマートカップ ® -
……………………笹川 譲・福井智文・稲葉正一
○開栓後も鮮度を保持できるしょうゆ容器の開発
…………………………………福本将士・桑垣傳美
食品と容器
境
〔解説〕特集1-一元化でわかりやすい新食品表示法―
伊藤麻子:食と健康,57(9)8~15(’13)
そ
の
他
〔解説〕特集2―調理器具の活用ポイント―
飯田範子・佐川敦子:食と健康,57(9)52~64(’13)
652
2013 VOL. 54 NO. 10
最近の技術雑誌から
○健康的で手頃な価格の全粒穀物食品
海 外 編
Delivering Healthy and Affordable : Whole Grain
Foods
邦文の題名は内容に従って付けてありま
すので,原題と異なる場合があります。
L. F. Marquart et al.… ………………………… 52~61
○新興食材の状況
ご興味のある雑誌・記事がございました
らいつでも閲覧できますので,当会宛ご
連絡ください。
A First Time for Everything
D. E. Pszczola … ……………………………… 65~81
○エナジードリンクの各種成分
Awake, Alert, and Energized
L. M. Ohr………………………………………… 83~88
○アーモンドとクルミの安全と品質
Almonds & Walnuts : Shaking Out Quality
N. H. Mermelstein……………………………… 91~96
The World of Food Ingredients (NLD) Jun.(2013)
○各種のマイクロ膜技術
Membranes, Microfiltration, Microsieves, and More
○クリーンラベルテクノロジー
Clean Label Technologies
J. P. Clark…………………………………………98~103
J. Diaz… ………………………………………… 10~14
○今年のベスト食品包装
And the Winners Is・・・The Year’s Best Food
○原材料のシナジーに注目
Eyeing Ingredient Synergies
Packaging
R. Wyers… ……………………………………… 16~20
A. L. Brody… ………………………………… 104~108
○悪役:砂糖をターゲット
Targeting the Sugar “Baddy”
Prepared Foods (USA) Vol.182 Jul. (2013)
S. Osborn………………………………………… 22~24
○小児肥満と体重管理食品
Just Weight
○ソースのトレンドはトラディショナル
Sauces Take Traditional Path
W. A. Roberts, Jr.… …………………………… 21~27
M. Hilliam………………………………………… 26~28
○次世代の栄養補助食品
Next Generation Nutraceuticals
○酵素の奇跡
The Wonder of Enzymes
M. Anthony,Ph.D.… ……………………… NS3~ NS13
Dr. T. Coultate…………………………………… 62~65
○アーモンドとチョコレートの組み合わせ
Almonds and Chocolate - A Dynamic Duo
○本物の原料かどうかの試験
K. Shelke,Ph.D.… ……………………………… 59~60
The Authenicity Test
R. Griffiths & B. Hirst… ……………………… 66~68
○本格的なフレーバーのパスタとソース
Dressing Up Pasta
○監視下におかれるカフェイン
R. Zemser………………………………………… 63~75
Caffeine Under Scrutiny
E. Leontopoulou………………………………… 70~73
○グルテンフリーパスタ
The Long and Short of Gluten-Free Pasta
○食品と医薬品のギャップを橋渡しする
Rebuilding the Pharma Bridge
D. Hoffpauer… ………………………………… 77~78
Dr. R. Child……………………………………… 74~77
○うま味:グルタミン酸ナトリウムはフレーバーを強化
Umami : Facts and Fiction
Food Technology (USA) Vol.67 Jul. (2013)
C. Koetke………………………………………… 81~84
○消費者動向に適応する外食産業の状況
○ナチュラルフード素材の課題と克服
Foodservice Adapts to the ‘New Normal’
Growing Pains
K. Hensel………………………………………… 24~35
J. Litwin… ……………………………………… 87~99
○世代別の食事と健康の傾向
○減塩課題とソリューション
Demographic Redirection
Taking on Sodium - Challenges and Solutions
A. E. Sloan… …………………………………… 38~49
食品と容器
………………………………… 101~107
653
2013 VOL. 54 NO. 10
最近の技術雑誌から
Food Processing (USA) Vol.74 Jul. (2013)
L. Cuneo… ……………………………………… 20~26
○食品産業従事者の年収リポート
○再利用可能なジッパー付きパウチ入りシリアル製品
Finally! The $100,000 Pyramid
Cereal Launches in a Reusable Zippered Pouch
K. T. Higgins… ………………………………… 30~37
L. Cuneo… …………………………………………… 32
○2013年キャンディ-トレンド
New Tricks for Old Favorites
Packaging World (USA) Vol.20 Jul. (2013)
D. Phillips………………………………………… 41~48
○医療用複合パッケージの展開
Stirring the Pot of Package Innovation
○パン工場における衛生設計と効果的なクリーニング
Clean As a Whistle
J. Butschli………………………………………… 36~40
K. T. Higgins… ………………………………… 63~66
○スペイン乳製品の無菌「カートンボトル」
Spanish Dairy Debuts First Aseptic ‘Carton Bottle’
○高級食品や飲料にクリアーで幾何学形状の容器
The (Clear) Shape of Things to Come
A. M. Mohan… ………………………………… 54~60
K. B. Connolly…………………………………… 70~74
Packaging World (USA) Vol.20 Jul. (2013)
Food Engineering (USA) Vol.85 Jul. (2013)
○モダナイズされる日本の伝統品(酒,焼酎)
Modernizing Japanese Classics
○第11回交換部品の調査報告
11th Annual Replacement Parts Survey :
J. Cirillo………………………………………… 14~16
Advancing Inventory Practices
Beverage Industry (USA) Vol.104 Jul. (2013)
M. Knights… …………………………………… 16~24
○家飲みに便利な缶入り RTD カクテル
Food Manufacture (GBR) Vol.88 Jul. (2013)
Convenience for At-Home Enjoyment
J. Jacobsen… ………………………………………… 12
○持続可能なパッケージと消費者行動分析
Waste of Breath?
○ ABA(米国飲料協会)の積極的な取り組み
L. Gibbons… …………………………………… 46~47
Being Part of the Solution
J. Jacobsen… …………………………………… 18~20
○フルーツの機能性成分の利点と研究
Ripe for Sucess
○飲みながらやせる―肥満と闘う体重管理食材
G. Seattergood…………………………………… 62~63
Drinking Away the Pounds
S. Cernivec… …………………………………… 58~62
○貯蔵寿命延長のための酸化防止剤市場
Natural Demand
The Canmaker (GBR) Vol.26 Jul. (2013)
M. Knott… ……………………………………… 64~65
○タンパク質の栄養効率の評価システム
○各社による設備の効率化
Protein Shake-Up
Hot Savings
P. Gander………………………………………… 66~67
D. Searle… ……………………………………… 36~37
○米国ビール会社各社が新しい蓋を採用
Packaging Digest (USA) Vol.50 Jul. (2013)
A Vent Horizon
D.Searle…………………………………………… 38~40
○アメリスターパッケージ賞2013受賞製品
Ameristar 2013 Awards Highlight the Best
Packaging in North America
Journal of Food Science (USA) Vol.78 Jul. (2013)
K. B. Connolly…………………………………… 22~25
○グレープトマト上の 大腸菌 O157:H7とサルモネラ
○発泡スチロール包装資材のリサイクル技術の進化
菌の不活化に及ぼす紫外線と低線量ガンマ線照射の統
Getting More out of Recycled EPS
合的処理の有効性
J. Timm…………………………………………… 26~27
Efficacy of Integrated Treatment of UV light and
Low-Dose Gamma Irradiation on Inactivation
Food & Beverage Packaging (USA) Vol.77 Jul. (2013)
of Escherichia coli O157 : H7 and Salmonella
enterica on Grape Tomatoes
○食品メーカートップ50社(飲料除く)
Top 50 Food Packaging Companies
食品と容器
S. Mukhopadhyay et al.… ………… M1049〜 M1056
654
2013 VOL. 54 NO. 10
だけである。加熱の程度によって,ゼリーの硬さが
野菜・果物を巡って
(第五十八話)
調節できることも手作りならではの楽しみであろう。
パッションフルーツを知ったのは,30年近く
前になる。鹿児島県の知人からこの果物知ってい
る?と渡された。これが果物の仲間なのかと少々
パッションフルーツジュースの魅力
驚いた。テニスボール位の大きさのつるつるした
硬い赤紫色の実であった。切ると硬い1cm 程度
よし だ
き
よ
の厚みがある皮で,内側にスポンジ状のものがつ
こ
吉 田 企 世 子
いており,中に黄色いゼリーに包まれた種子が幾
(女子栄養大学名誉教授)
粒も入っている。ゼリーはわずかな甘味もあるが,
かなり酸味が強く,しかし香りが大変よかった。
ことのほか暑かった今年の夏は9月に入って
も厳しい残暑の日が続き,地球規模での温暖化に
ジュースはこのゼリーの部分から作るのであるが,
よるものかと不安を感じた。テレビの天気予報を
液汁がないその果物からジュースを作ることは全
見ていると,高齢者は熱中症予防のために頻繁に
く考えられなかったが,ゼリー部の芳香から想像
水分補給を心掛けるようにとの報道がなされるの
すると多分美味しいジュースなのであろうと,い
で,積極的に水を飲むことに努めた。
まだに味わっていないだけに魅力を感じるのであ
る。
若い時代と異なって水分不足になっても喉の
知人から頂いた折には,酸味のつよいゼリー
渇きが鈍感になっているように感じ,心して水分
の部分を掬い取って味わった。廃棄しようと思っ
を摂取したのである。
ある暑い日,水分の補給をかねて,くつろぐた
た硬い皮の部分は,その色がアントシアニン系の
めに,高級果物店が経営するフルーツパーラーに
色素であろうと予想されたので,水と共に加熱し
入った。高級店を選んだのは一つの目的があった
て砂糖とレモン汁を加え,シラップを作ってみた。
からなのである。
時間をかけてゆっくり加熱すると,硬い果皮もほ
フィリピンに長く在住していた友人に会うと
どほどに軟らかくなり,赤紫の色が冴え,シラッ
果物のお話で盛り上がるのであるが,パッション
プの方も美しい色に仕上がった。飲物として色と
フルーツが話題になった折,そのジュースが大変
味を楽しんだことを思い出す。それ以後パッショ
美味しいとのことであった。是非味わいたいと何
ンフルーツを購入することもなく,利用する機会
軒かの喫茶店に入ったが,どこも扱っておらず,
が全くないままに過ぎてきた。
その機会がないままに過ごしてきた。今日こそは
専門書には果実が熟したときに黄色になる品
念願のジュースをと,楽しみにそのフルーツパー
種と紫色になるものがあると記されている。この
ラーを選んだのである。しかし,残念ながらここ
他にフィリピンにはオレンジ色で,皮は硬いが,
のメニューにもなかった。ということで,いまだ
手でパリッと割ることができる品種もあり,これ
に味わってはいない。
はゼリーが穏やかな酸味と甘味でそのまま果物と
友人がフィリピン在住の折には自分で簡単に
して食べやすいとのことである。また熱帯産で大
作ってその味を楽しんだとのこと。パッションフ
パッションとよばれるものがあり,これはパパイ
ルーツ6個を用いて,果実の中からゼリー部を取
ヤ大の大きな実をつける品種で,フィリピンでは
り出して種子ごと裏ごしにかける。またはガーゼ
つるパパイヤと呼ばれているという。皮の色から
の袋に入れて絞るだけ。この果物が容易に豊かに
形まで,パパイヤに似ている果物である。切って
入手できる地域ならではのジュースである。また,
みると2~3cm の厚さに白い果肉があり,この
このジュースから簡単にフルーツゼリーを作った
果肉はすいかに似ていてシャキシャキした歯触り
とのこと。水,砂糖,ペクチンを加えて加熱する
がある。よく熟したものは甘味があるのでそのま
食品と容器
655
2013 VOL. 54 NO. 10
ま果物として食べるとのこと。中心にはパッショ
酸味は主にクエン酸によるもので,全酸味成分の
ンフルーツよりやや大型の平たい種子が,淡黄色
88% を占める。リンゴ酸が7%前後,その他フ
のゼリーに包まれて詰まっている。この種子が硬
マル酸などが含まれると報告されている。このよ
く,口に触るので一般にはジュースとして用いら
うな成分をみると,ジュースとしては甘酸っぱい
れるようである。
味がはっきりしていて,爽やかな美味しさがある
と推察される。
パッションと聞くと,英語の情熱という意味が
思い浮かぶので,情熱の果物とはどこからの発想
ゼリー部が黄色を呈しているので,β-カロテ
なのかと考えていた。ところが辞書を辿ると「十字
ンが多いであろうと推察はされるが,100g中に
架上のキリストの受難」との意味がある。かの大
1,100 µg の含量と示されており,その供給源と
航海時代,南米ではじめてパッションフルーツの
しての働きが大きいことがわかる。一般に果物に
花を見たキリスト教団のスペイン人は雌しべの形
多く含有するビタミンCは16mg で柑橘類より少
が十字架にかけられたキリストに見えたので,
「おお,
ないが,供給源として期待できる含量である。葉
パッションフラワー(受難の花)
!」と口走った
酸が多いのが特徴的で,86mg 含まれる。果物の
そうである。それ以来,その実をパッションフ
中で葉酸含量が多いのは以下に示す数種のみであ
ルーツと名付けたと伝えられている。大きな花で,
る。いちご90mg,アボカド84mg,チェリモヤ
直5~7cm,淡紫色で美しく,時計のような形
90mg,ドリアン150mg,マンゴー 84mg。
をしているので,日本では時計草と呼ばれる。
芳香成分は主に,エステル類であり,その他芳
原産地はブラジル,パラグアイで,トケイソウ
香族アルコール,揮発性有機酸などによる。
科に属する多年生常緑つる性の植物である。オー
かつて,鹿児島県指宿のパッションフルーツ
ストラリア,ハワイなどが主産地であるが,わが
ジュースを製造する工場で,作業員の手が荒れる
国でも暖地の無霜地帯(九州南部,南西諸島,八
という訴えがあった。その原因はたんぱく分解酵
丈島など)や沖縄で栽培されている。
素によるものであることが確認されている。した
「日本食品標準成分表2010」に収載されている
がって,肉や魚などたんぱく質を主成分とする料
パッションフルーツ果汁は炭水化物16.2% と多
理とパッションフルーツの組み合わせは,消化に
いのであるが,ゼリー部を食べた時にはそれほ
よい食べ方なのである。食前にパッションフルー
どには甘味を感じなかった。これは酸味が強い
ツジュースを飲むのもよし,デザートの果物とし
ためであろうか。甘味成分の糖組成はブドウ糖
て添えるのもよい。加熱すると酵素作用は失われ
が37.1%,果糖が33.5%,蔗糖が29.4%であり,
てしまう。
編
集
後
記
●2020年東京五輪決定! 獲得した票数の多さは日本に
FOOD & PACKAGING
対する信頼と期待の表れだろう。集まる大勢の人たちに,
成熟し活気溢れる日本(そうなることを願う)と底に流
れる文化や伝統の良さを体感してもらい,世界中に日本
発行所 缶
ファンが増えるのを期待したい。
東北被災地の復興や福島原発の汚染水対策が欠かせない。
景気回復の追い風だと浮かれているばかりでは済まさ
れない。大変だろうが,でも嬉しいことに変わりはな
い。7年後,私はもう70歳の一歩手前だが,年にめげず
詰 技 術 研 究 会
発 行 人 に,健康と暇に任せて見物に駆け回ろう。まだまだ冥土
食品と容器
平成25年10月 1 日発行
〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町 1−8−4
TEL 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1
定 価
FAX 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3
1部 800円
Eメール:[email protected]
年間 8,000円
郵便振替 0 0 1 5 0 − 0 − 4 2 2 1 5
(消費税・送料込)
井 俊 夫
編 集 人 荒
●オリンピックの成功には,運営にかかわることは勿論,
の土産には早過ぎる。
第54巻 第 10 号
−禁無断転載−
(山)
田
嶋
一
乱丁・落丁本はお取り替えいたします。
656
雄
印 刷 所 大和サービス株式会社
2013 VOL. 54 NO. 10