9課 形容詞の補足PDF

Lektion 9 形容詞
形容詞は、直接、名詞を修飾する場合(付加語的用法)には、冠詞類と名詞の間に置き、後の名詞の性・数・格に
応じた、何らかの語尾が付きます。これを付加語形容詞の格変化語尾といいます。この語尾は、前に冠詞類がある
かないか、ある場合には、その冠詞類の種類に応じて変化します。本文の各表を参照しながらお読みください。
①定冠詞類+形容詞+名詞
ここで、定冠詞類とは、der, die, das 等の定冠詞と、5 課で学習した dieser, jeder などの定冠詞と同じような変化
をするものを指します。
この場合は、男性の 1 格と女性・中性の1・4格の 5 ヶ所だけ-e、それ以外では、全て-en という語尾を、形容詞
に付けます。
後ろの名詞の性・数・格は、定冠詞類だけで、十分表されているため、形容詞は、それが付加語であることを表す
ための語尾を付けるだけで、あまり極端な変化はしません。
この変化語尾を付加語形容詞の弱変化語尾といいます。
②不定冠詞類+形容詞+名詞
不定冠詞類とは、ein, eine 等の不定冠詞と、これも 5 課で学習した mein, dein, sein などの所有冠詞、kein 否定冠
詞を指しています。
男性の 1 格で-er、(女性の1・4格は-e、)中性の1・4格で-es となる他は、①と同じ語尾を形容詞に付けます。
これは、不定冠詞類が男性の 1 格と、中性の1・4 格では、後の名詞の格を表す語尾を持たないため、代わりに形
容詞が、その役目を果たしているわけです。この変化語尾は、下の③の強変化語尾と、①の弱変化語尾が混じり合
った形のため、付加語形容詞の混合変化語尾と呼びます。
所有冠詞 unser, euer の-er は格を表す語尾ではないので、形容詞の変化語尾に注意してください。
unser alter Vater
③(冠詞類なし)形容詞+名詞
なにも冠詞類がない場合は、後の名詞の性・数・格を表示するものがないので、形容詞が、その役割を引き受けま
す。
男性・中性の 2 格だけ-en、その他は定冠詞類 dieser などと同じ語尾を形容詞に付けます。
2 ヶ所だけ-en になるのは、男性名詞と中性名詞は、通常 2 格で-(e)s を付けて、名詞自体が格を表示しているため、
形容詞は弱変化語尾でも問題はないからです。Student などの男性弱変化名詞は、2 格でも-(e)s は付けませんが、
このような名詞は、人や動物を表すものが多く、単数形を無冠詞で使うことは少ないため、実際上は問題はありま
せん。この変化語尾を、付加語形容詞の強変化語尾といいます。
以上が、付加語形容詞の格変化語尾の概要ですが、定冠詞(類)、不定冠詞(類)のところで学習したように、名詞の前
に付いているものは、後の名詞の性・数・格を、なんらかの形で(語尾で格変化語尾で)、表示しなければならな
い!という原則を思い出していただければ、理解するのは難しくありません。また規則自体は 1 行に納まるような
ものですから、覚えるのも簡単なので、作文する時などは、名詞の性・数・格や、冠詞類の種類を、一つ一つ確認
しながら進めていけば自動的に正しい語尾に到達できるはずです。
逆に、ドイツ語の文を読んだり、聞いたりしている時は、名詞を直接修飾している形容詞には、何らかの語尾が付
いているということを意識して、辞書を引く時には、その語尾を取った形で引いてください。
ein netter Junge なら-er は付加語形容詞の語尾ですから、それを取った nett の形で辞書を引く。
☆母音-a で終わっている形容詞は、この格変化語尾を付けないで使います。lila, rosa, prima などですが、orange
も語尾を付けないで使うこともあります。
ein rosa Hemd, das prima Zeugnis, ein orange(s) Kleid usw.
-el, -er で終わる形容詞の変化語尾
-el で終わる形容詞は、付加語として使い格変化語尾を付ける場合、語幹の-e-が省略されます。
ein eitler Mann (<eitel), die plausible Theorie (<plausibel), dunkles Bier (<dunkel)
-er で終わる形容詞は、多くはそのまま格変化語尾を付ければ良いのですが、sauer, teuer, ungeheuer などは例外
的に、やはり語幹の-e-が省略されます。
ein heiterer Tag, eine finstere Nacht, ein leckeres Gericht
(bitter, düster, finster, heiter, lecker, mager, minder, sicher, tapfer)
saure Milch (<sauer), ein teures Auto (<teuer)
☆hoch は語幹が変化する
これも例外的な変化ですが、よく使われる単語なので、ここで覚えておきましょう。
der hohe Turm (< Der Turm ist hoch.)
発音も当然変わります!
なお、人の背が「高い」と言う場合には、hoch ではなく groß を使います。
der sehr große Student (<Der Student ist sehr groß.)
☆発音に注意
語尾の上での例外ではないのですが、語尾が付くと発音が変化する形容詞もあるので注意しましょう。
Der Student ist fleißig.
der fleißige Student
(-ig は ich のように)
([g]の音はきちんと出す)
-ig で終わる形容詞は多いので、間違えないように。-ig を ich のように発音するのは、語末(綴り末)だけですか
ら、語尾が付けば、語末ではなくなるのは当然ですね。-ig 以外に-b (gelb, lieb, trüb usw.), -d (mild, rund usw.)な
どで終わる形容詞でも、語尾が付いた場合の発音に気をつけてください。
Das Hemd ist gelb. ([p])
das gelbe Hemd ([b])
Der Ball ist rund. ([t])
der runde Ball ([d])
☆地名+er は、語尾変化しない
多くの地名は-er を付けることで、その土地の人を表す名詞として使えますが JapanJapaner(in)、都市名の場合
は、そのままの形で名詞を修飾する形容詞のように使うこともできます。その場合、格変化語尾を付けることはあ
りません。最初の文字は常に大文字で書きます。
Berliner Philharmoniker
Wiener Knabenchor
同じ地名なのに違う形になるものもあり、Halle は Haller と Hallenser のように、地域により Westfalen 州と
Sachsen-Anhalt 州では異なっています。Münsteraner (<Münster), Tokioter (<Tokio)のような作り方もあり、ま
た der Kölner Dom だが、オーデコロンは Kölnisch(es) Wasser だったりするので、一度調べてみることをお薦め
します。
☆基数詞も語尾変化しない
基数詞?見慣れない言葉ですが、一個、二個とか、一人、二人という時の「数」ですね。ひとつ(ひとり)の場合
は不定冠詞があり、格変化語尾がついて使われますが、2 以上の基数詞は、付加語として使うと、原則として語尾
変化しません。
zwei Männer, drei Frauen, vier Kinder
さらに他の付加語形容詞を入れる場合には、基数詞の後ろに置かれ、
(基数詞が格変化語尾を持たないので)形容詞
が強変化します。
sechs hübsche Mädchen, mit sieben bösen Hexen, die Errettung acht armer Männer
このような強変化は、他にも疑問代名詞 2 格 wessen、関係代名詞 2 格 dessen, deren または、manch, solch, welch,
viel などとともに付加語形容詞が使われた場合にも起こります。
Wessen rotes Auto ist das?
manch guter Freund
「80(歳)代の」
「80 年代生まれの」
「80 という数のついた」等の意味を表わす achtziger (80er)なども、無変化で
す。zehner (10er), zwanziger (20er), usw.
ein achtziger Mann, eine achtziger Frau
eine achtziger Briefmarke 80 Cent の切手
achtzig Briefmarken 80 枚の切手
基数詞に対して、
「~番目の」を表わす序数詞(S.40)は、格変化語尾が必要です。
die erste Dame, der zweite Herr, das dritte Kind, am 20.(zwanzigsten) Juni
二つ以上の形容詞を付加語として使う場合は、全てに同じ語尾を付けるのが原則です。
Rapunzel hat lange prächtige Haare.
Die schwarzen, roten und goldenen Hemden verkaufen sich gut bei der Fußball-Weltmeisterschaft.
Die schwarz-rot-goldenen Hemden verkaufen sich gut. ハイフンで結んである場合は、最後だけ
逆に、名詞の前にあるのに、格変化語尾が付いていないものは、名詞を直接修飾しているのではないこともありま
す。
ein verrostetes rotes Auto 錆びた、赤い自動車
ein rot verrostetes Auto 赤く錆びた自動車
形容詞の名詞化
形容詞は、最初の文字を大文字で書き、付加語形容詞と同じ格変化語尾を付けることで、名詞として使うことがで
きます。男性・女性と複数の変化形の場合は、そういう性質を持った「人」を表します。
der Alte
ein Alter
die Alte
eine Alte
die Alten
Alte
des Alten
eines Alten
der Alten
einer Alten
der Alten
Alter
dem Alten
einem Alten
der Alten
einer Alten
den Alten
Alten
den Alten
einen Alten
die Alte
eine Alte
die Alten
Alte
不定冠詞(類)が付いた場合の、男性1格形に注意してください。よく使われるものは、辞書にも記載されています
が、辞書では、これらの形を一括して、男性単数1格、定冠詞類がついた時の形で登録してあるのが一般的です。
また、「形容詞的変化」などの注記をつけ、名詞ではあるが、付加語形容詞と同じ変化をすることを示しています。
Abgeordnete, Angestellte, Bekannte, Fremde, Gelehrte, Kranke, Reisende, Vorsitzende などを、辞書で確認して
みましょう。同じような変化をするものとして Beamte がありますが、後に女性形 Beamtin が作られたため、男
性と複数の変化形しか使いません。女性形 Beamtin は普通の女性名詞の変化です。
辞書によっては、Bekannte(r)のような表記をしているものもあります。
国籍を表す、
「その国の人」という言い方は、上述のように JapanJapaner(in), EnglandEngländer(in)のよう
に作られますが、
「ドイツ人」は、deutsch という形容詞が名詞化した形で表します。
der Deutsche, des/dem/den Deutschen; ein Deutscher, eines/einem/einen Deutschen 男性形
die Deutsche, der Deutschen; eine Deutsche, einer Deutschen 女性形
die/der/den Deutschen 複数形
中性の変化の場合は、そういう性質を持った「物・事」を表し、定冠詞つきか無冠詞の形で使うのが一般的です。
das Neue
Neues
des Neuen
Neues (無冠詞2格形は形としては可能だが稀)
dem Neuen
Neuem
das Neue
Neues
無冠詞2格の形が使われないのは、元々etwas Neues, nichts Neues のような形は、2 格形で、
「新しいことの何か」
というような意味であったものが、etwas や nichts なしでも 1・4 格形として使われ、後に補うような形で3格形
Neuem が作られたという事情があり、中性の強変化 2 格も 19 世紀以降に-es ではなく-en になってしまったためで
す。
alles, etwas, nichts などの後では、最初の文字を大文字で書いた、この名詞化された形容詞が使われます。
alles Mögliche (alles が強変化しているため、möglich は弱変化)
etwas Neues
nichts anderes (ander は最初の文字は小文字でも良い)
中性の変化の場合、普通は事物を表すのですが、人や動物の子どもなどを表すのに、中性形を使うこともあります。
das Junge
ein Junges
das Neugeborene
ein Neugeborenes