Educational Contents Services in Titech Global Scientific

 東京工業大学学術国際情報センターの情報蓄積・活用
— 教育コンテンツの統合とその手法 —
横田 治夫
[email protected]
東京工業大学
学術国際情報センター
〒 152–8552 東京都目黒区大岡山 2–12–1
あ ら ま し 東京工業大学では、平成 13 年 4 月 1 日に改組により学術国際情報センターが設置された。現
在、同センターにおいて情報の蓄積および活用に関するサービスを開始すべく、提供すべき機能等につ
いて検討を行っている。その一環として、講義ビデオ、講義用プレゼンテーション資料等を統合した教
育コンテンツの提供を考えている。本報告では、インタネットを介した教育コンテンツ提供の国内外の
動向について述べると共に、教育コンテンツを有機的に統合するための我々のアプローチと、そのため
の同期ブロックを用いたインデックス手法やシステム構成について述べる。
キーワード
情報統合, 教育コンテンツ、WBT, E-Learning, インデックス、同期ブロック
Educational Contents Services in
Titech Global Scientific Information and Computing Center
Haruo YOKOTA
[email protected]
Global Scientific Information and Computing Center
Tokyo Institute of Technology
2–12–1 Oookayama, Meguro,
Tokyo 152–8552, Japan
Abstract Titech Global Scientific Information and Computing Center (GSIC) was established on the
1st of April, 2001. We are now start to consider services of the center. As a service, we plan to
provide integrated educational contents such as videos of lectures and presentation materials. In this
paper, we first overview current global trends of providing educational contents. Then, we propose
our approach to integrate educational contents, our indexing method for them using synchronization
blocks, and our system configuration for the approach.
key words
information integration, educational contents, WBT(web based training), e-learning,
indexing, synchronization blocks
1
1
はじめに
東京工業大学では、平成 13 年 4 月 1 日に学術国際
情報センター1 が新たに設置された。同センターは、
これまで東工大にあった総合情報処理センターと理
工学国際交流センターを統合・発展した形で改組され
たものである。学術国際情報センターでは、これまで
総合情報処理センターと理工学国際交流センターが
それぞれに行ってきた高性能な計算能力の提供、ネッ
トワークサービス、国際協力といった業務に加え、情
報の蓄積・活用、遠隔マルチメディア教育、超並列
計算、グローバルコンピューティング・グリッド計
算に関する研究・開発、あるいは情報インフラを用
いた国際共同研究等も対象とすることになった。
この中で、情報の蓄積・活用および遠隔マルチメ
ディア教育に関連した内容として、各種の教育素材
を蓄積・活用する研究開発は、国内外の多くの大学等
でも熱心に検討されているものであり、今後同セン
ターにおける研究開発の中心課題の一つとして重要
な位置付けとなっている。データベースの研究分野
としても、インターネットを前提とした教育素材の
提供は、コンテンツサービスの具体的なアプリケー
ションとして重要性が認識されている。我々は、特
に教育素材を前提にした統合の手法と、そのための
インデックス機構をその特徴と考えている。
ンター長の下に置かれ、センターとしての業務の他
に研究開発を行う。各部門・分野の業務内容と研究
開発の関係を図 1 に示す。
各部門は互いに協力しあい研究開発を進める。例
えば情報蓄積・活用分野、遠隔マルチメディア教育分
野、国際交流分野で、センター内に蓄えた教育素材
を国内外に発信することも考えられる。また、セン
ター長の下には運営委員会が置かれ、その下に、ネッ
トワークシステム専門委員会、データベース専門委
員会、研究システム専門委員会、教育システム専門
委員会、国際交流専門委員会、国際共同研究企画調
査専門委員会、広報専門委員会が置かれる。それぞ
れの専門委員会では、センター外の教官も含めて、業
務内容や研究内容に関して検討を行う。
本センターにより、学内の教職員・学生のみでな
く、社会人や外国人、高校生など幅広い学習者・研
究者を対象とした研究・教育に関する情報化モデル
大学の基盤としての役割を果たすと同時に、東京医
科歯科大学、東京外国語大学、一橋大学との四大学
連合構想のもので、連合授業、共同授業、学際的な
共同研究プロジェクトなどの円滑な実施を可能とす
ることを目指している。
以下では、本センターの研究開発の対象の中で、情
報の蓄積・活用および遠隔マルチメディア教育に関
連した部分に焦点を絞り、教育素材の提供に関する
動向と本センターのアプローチを紹介する。
本稿では、東京工業大学学術国際情報センターの
教育素材を対象とした情報の蓄積・活用に関して、
我々が現在考えている構想を紹介し、それに関して
広く意見を求めるためのものである。以下、東工大 3
学術国際情報センターの構成、教育素材提供の国内
外の動向、我々のアプローチの順に述べる。
3.1
2
教育素材提供の国内外の動向
大学等の教育情報提供サービス
インターネットを用いた教育素材の提供は、現在
大変に注目を浴びている。例えば、インターネットを
介して大学の全講義資料を無料で配布することを決
めた MIT の OpenCourseWare[1] や、スタンフォー
ド大学が大学院の講義を日本にネットワーク配信し
修士号を与えようというプログラム [2] 等が新聞で紹
介され、議論を呼んでいる。欧米では、これ以外に
も、同様のインターネットを介した教材提供の動き
が盛んで、多くの大学で色々な講義の講義資料等を
公開している。例えばデータベース分野でも、スタ
ンフォード大学の Ullman と Widom の講義資料 [3]
や UCB の Stonebraker と Hellerstein の講義資料
[4] 等を簡単に見ることが可能である。
学術国際情報センターの構成
本センターは、情報基盤部門、研究・教育基盤部
門、学術国際交流部門の 3 部門からなる。さらに、情
報基盤部門は、情報流通分野、情報蓄積・活用分野
の 2 分野から、研究・教育基盤部門は問題解決支援環
境分野、遠隔マルチメディア教育分野の 2 分野、学
術国際交流部門は国際交流分野、国際共同研究分野
の 2 分野からなり、全体として計 6 分野で構成され
る。これらの部門は、センター長および二人の副セ
1
英語名:Global Scientific Information and Computing
Center、英語名略称:GSIC
2
業務
学術国際交流部門
国際共同研究
情報蓄積・ 活用分野
遠隔・マルチメディア教育分野
マルチメディア蓄積技術
データベース構築支援
・・・
マルチメディア
教材作成技術
マルチメディア検索技術
学内ネットワーク運用管理
・・・
問題解決支援環境 分野
高速・高信頼
ネットワーク方式
グローバル
コンピューティング
大規模計算システム運用管理
情報セキュリティ
技術
・・・
遠隔教育支援
・・・
・・・
情報 流通分野
マルチメディア教材作成支援
超並列計算方式
・・・
・・・
・・・
研究開発
情報基盤部門
研究・教育基盤部門
図 1: 東京工業大学学術国際情報センターの業務と研究開発
日本においても、本学同様に大型計算機センター
等をメディア教育センター等に改組した大学で、遠隔
講義等の検討が進められている。大阪大学サイバー
メディアセンターではオンラインドイツ語講座 [5] 等
が公開されているし、名古屋大学情報メディア教育セ
ンターでは計算機リテラシや計算機プログラミング
の講義資料を公開している [6]。また、京都大学総合
情報メディアセンターでは、講義内容を公開している
教官のページへのポインタを提供している [7]。更に、
京都大学総合情報メディアセンターでは、UCLA と
の共同講義における講義内容も公開している [8]。上
記以外にも国私立を問わず多くの大学で同様の試み
が行われている。また、大学以外でも文部科学省の大
学共同利用機関であるメディア教育開発センターで
は、放送大学で蓄積した教育的コンテンツを蓄積し
公開している [9]。あるいは、WIDE プロジェクトの
SOIWG (School On the Internet Working Group)
では、WIDE 大学という名前で講義風景を公開して
いる [10]。
ただ、上に紹介した大学等におけるサービスは、現
在のところ、それぞれの教育素材をそのまま提供し
3
ているものに近い。後で述べるように、WIDE 大学
のプロジェクトでは、講義ビデオと講義資料を同時
に見せるように構成しているが、それだけでは提供
する機能としてまだ十分とは言えない。逆に、蓄積さ
れた素材を有機的に統合し、魅力的な利用者ビュー
とその上での検索を提供することができれば、利用
者に取って非常に有用な教育環境を提供することが
できる。
3.2
オーサリングツール
一方、教育素材のオーサリングツールとして、ビ
デオとプレゼンテーション資料の内容を統合し、新
たな素材を作る LiveCreator や Click2Learn のよう
なソフトウェアも既に多数ある。そのようなツール
を使うことで、魅力的な利用者ビューを構築するこ
とは可能である。しかし、そのようなアプローチで
は、新たな教育素材を作るに等しい作成コストがか
かることになる。一般の大学のような環境で網羅的
なコンテンツを揃えるためには、実際に講義を行う
多数の教官の協力が重要となるため、コンテンツを
用意するためのコストがかかることは好ましくない。 い。一方、パーソナルコンピュータや投射型ディス
また、統合したビューを提供しても、元々の素材 プレイ等が手軽に利用できるようになり、プレゼン
が残っており、元の素材としても扱えることが重要 テーションソフトウェア等で作成した講義資料を用
である。例えば、以前の講義資料に手を加えて内容 いて講義をすることが多くなってきて、今後益々そ
を更新しようと思っても、オーサリングツール用の の傾向は高まると思われる。
フォーマットに改変されてしまっていては、自由に
講義資料を変更することが出来なくなってしまう。
そこで、講義プレゼンテーション資料のページと
それを用いている場面の講義ビデオの位置が相互に
関連付けされていれば、講義ビデオを途中から開始
してもそれと同期してプレゼンテーション資料を表
示することができたり、プレゼンテーション資料を
キーワードで検索し、講義ビデオでその資料を使っ
ている対応シーンを出力する等の機能を提供するこ
とができる。あるいは、プレゼンテーション資料は出
力せずに講義ビデオのシーンだけを資料のキーワー
ドから検出することすらできる。また、キーワード
に関連する関連する情報のインターネット検索およ
びその結果との統合も可能とする。
更に、必要な情報を効率よく検索し提供するため
には、インデックス構造が必要である。インデック
スとしては、コンテンツ内部での位置(ビデオ等の
場面)を示すものと、多くのコンテンツの中で必要
な情報が含まれているコンテンツを探し出すための
ものが必要であり、可能であればそれらインデック
スも統合されていることが望ましい。オーサリング
ツールレベルでそのようなインデックスを提供すの
は容易ではない。
以上まとめると、素材を統合するためのコストを
できるだけ少なくし、元々の素材をそのまま使いな
がら、高速な検索をサポートする形で統合されるこ
とが望ましい。ただし、従来の紙の教育素材を容易
に電子化したり、構造化のための XML のタグの自
動生成や、要約作成、国際化のための自動翻訳など
の機能は、コンテンツを電子化、改善するために有
用な手段と言える。そのような場合にも、元の素材
が1対1で変換されることが前提で、利用者ビュー
としては、変換されたコンテンツを統合することに
なる。
4
4.1
3.1 で紹介した WIDE 大学では、既に講義ビデオ
と講義のプレゼンテーション資料をクライアント側
で同時に見られるようになってはいる。しかし、そ
れは同時に始まり同時に終わる画像として提供され
ている(広い意味でのビデオの一部としてのプレゼ
ンテーション資料の提示)だけであって、プレゼン
テーション資料をキーワードで検索する等の以下で
述べるような機能はまだ提供されていない。
前述したように、素材そのものに手を加えて新し
い素材を生成するのは、コストの面と素材の再利用
性の面から必ずしも好ましくない。我々は、統一的
な枠組みとして XML を利用することを前提に考え
ている。XML から各素材へのリンクを用意すること
で、各素材そのものには手を加えない。しかし、そ
れだけでは対応するビデオ画面へ移動する等の機能
が実現できなくなってしまうので、素材と同時に素
材の中身に対するインデックスを用意することが重
要となる。
アプローチ
教育コンテンツの統合
我々は、単に教育素材を生のまま公開するだけで
なく、蓄積された素材を有機的に統合し、魅力的な
利用者ビューを提供することを目標としたいと考え
ている。そうすることで、場合によっては実際に講
義を受ける以上の教育効果を得ることも可能となり、
4.2
遠隔教育や個人学習での有用性が期待できる。
例えば、講義ビデオと講義用のプレゼンテーショ
ン資料の統合が考えらる。特に、講義等のビデオは、
ニュース番組やスポーツ番組のビデオ等と異なり、場
面の切り替えや画面の動きが少なく、これまで研究
されてきたようなシーン切り出し手法等を使っても
有用な切り分けができずに、索引付けも容易ではな
4
コンテンツ統合のためのインデックス
ここでは、まず最初に、講義のプレゼンテーショ
ン資料と講義ビデオに対するインデックスについて
考える。第一に、キーワードを与えて、プレゼンテー
ション資料中でのその位置(ページとその中の位置)
を知る必要があるが、これは特に難しいことではな
い。実際、プレゼンテーション資料がパワーポイン
キーワード:国際
講義間インデックス
複数講義で出現
( 国際)
講義内インデックス
( 国際)
複数ページで出現
ページ内 アドレス
ページ内 アドレス
同期ブロックへの ポインタ
同期ブロック
・・・
表示ページへの ポインタ
ビデオフレームへの ポインタ
・・・
国際交流の ...
・・・
プレゼンテーション資料
講義ビデオ
図 2: コンテンツ統合のためのインデックスのイメージ
トや PDF、HTML 等で書かれている場合には、現
状でも検索は可能である。しかし、明らかに、単に
キーワードから当該プレゼンテーション資料中の位
置を知るだけでは不十分である。
繰ることも考えられる。また、検索するキーワード
が当該のページの中のどの位置にあるかに関する情
報(ページ内アドレス)は、同期ブロックへのポイ
ンタと組で用意する。なお、あるキーワードは 1 つ
の講義の中でも複数のプレゼンテーションページに
現れることがあるので、同期ブロックとページ内ア
ドレスの組をリスト構造でつなげる。
そもそも元の素材に手を加えないことを前提にし
ていることから、キーワードで検出されたページか
らそのページが開かれていた講義のビデオフレーム
へのポインタをプレゼンテーション資料中に埋め込
むのは適当でない。埋め込むこと自体はハイパーリ
ンクを用いれば可能ではあるが、それではコンテン
ツを作成し直すコストが大きくなり、再利用性も低
下する。
上述したインデックスは、ある 1 つの講義に対す
るインデックスであるが、利用者は講義を特定せず
に複数の講義の中から、与えたキーワードに関する
情報を引き出したい場合も多いと思われる。そのた
めには、各講義用のインデックスを統合して、全体
そのため、インデックスはキーワードから制御用 のインデックスを準備することも重要となる。つま
の特別な構造体である同期ブロックへのポインタを り、講義間インデックスと講義内インデックスで階
持つことにする。1 つの同期ブロックの構造は、キー 層構造を構成する。このようなインデックスはハッ
ワードに対応するプレゼンテーション資料のページ シュを用いて実現する方法もあるし、Btree のよう
のアドレスを示すポインタと、そのページが使われ な木構造を用いて実現しても良い。木構造を用いる
た場面を撮影したビデオフレームへのポインタとな 場合には、構造自体を XML で記述しておくことも
る。プレゼンテーション資料のページが使われるの 考えられ、その場合には柔軟性が増すと思われる。
以上のコンテンツ統合のためのインデックスに関
がそのビデオ中で 1 回だけとは限らないことから、
対応するビデオフレームへのポインタはリスト構造 する全体のイメージを図 2 に示す。
プレゼンテーション資料の中からキーワードを抽
となり、利用者の要求に従ってそのリスト構造を手
5
Outside of Titech
(Class Rooms)
Cache
Server
Camera / Projector
Gateway
Network Switch
VOD Server
Video Data
MPEG/Real
Web
Search Engine
Web Server
Web
Search Data
Backup
System
Web Contents
Authoring
Tools
図 3: システムのハードウェア構成のイメージ
出して上述したようなインデックスを作成すること
は、対象をプレゼンテーション資料と絞り込むこと
で、比較的容易に可能であろうと予想できる。特に、
タイトルや項目の階層構造が明示的に示されている
PPT のようなプレゼンテーション資料や XML 記述
の場合には、キーワードの重要度を推定して絞り込
むことも可能であろう。
サービスを提供する必要がある。このため、これら
のハードウェアはネットワークスイッチによって結合
される。なお、Web サーバと Web 検索エンジンを
用意するのは、検索処理の負荷によって Web サーバ
の性能が低下することを防ぐためである。また、コ
ンテンツを準備するためのオーサリングツールとも
ネットワークスイッチを経由して結合する。更にク
なお、利用者に対する教育効果を考えた場合には、 ライアント数が増えた場合に性能を維持するために
そのプレゼンテーション資料のページが提示される 複数のキャッシュサーバも用意する。Web サーバ、
少し前からビデオを再生した方が良い場合もありう Web 検索エンジン、および動画サーバはそれぞれに
る。そこで、ビデオフレームのポインタは、多少負 コンテンツを格納するのに十分な容量のハードディ
のオフセットを持った形で格納した方がよいかも知 スクを持つ必要がある。以上のイメージをまとめた
れない。その場合に、どの程度のオフセットが適当 ものを図 3 に示す。
かは、実際に評価してみた後の変更パラメタとなる
上記の構成では、講義内および講義間インデック
と思われる。
スは、基本的に Web 検索エンジンの中に置かれるこ
4.3
とを前提とする。つまり、同期ブロックは検索エン
ジン内に置かれ、その中から動画サーバ内の画像フ
レームと Web サーバ内のプレゼンテーション資料の
ページを指すポインタを持つ。各素材は、基本的に素
材を作成した利用者が修正すること等が可能なよう
に、提供されたままで格納することを前提とする。例
えば、プレゼンテーション資料は、PDF や PPT で
提供された場合に、その内容まで無理やり XML に
変更するようなアプローチは取らない。動画に関し
システム構成
上述したような機能を実現するためのハードウェ
アとしては、まず Web サーバと Web 検索エンジ
ン、および動画サーバを前提とする。特に、Web と
の連係のためには、動画サーバは Web サーバ、およ
び Web 検索エンジンと密に結合され、任意の位置
からビデオ再生が可能な VOD (Video On Demand)
6
ては、利用者側のバンド幅等を考慮して、MPEG2、
MPEG4、Real 等のフォーマットの異なる動画を準備
することも重要であろう。なお、動画のサーチには前
述のインデックスを用いるだけでなく、MPEG7[11]
を併用したり、XML を用いてアノテーションや付加
情報等を記述することを考える。この他、次に述べ
る関連研究で既に行われている手法等も、出来る限
り有効利用する方向でシステムを構成する。
れる画像等は、一般の画像に比べると特徴を抽出し
やすい部分が多いように思われることから、適用し
た場合に効果が期待できる。
遠隔講義に関した研究に関しては、Web に Q&A
やアノテーションを加える研究 [16] や、ビデオでは
なくデータベースを元にした遠隔講義の研究 [17] も
行われており、XML による情報統合の研究と同様に
我々のアプローチと組み合わせることが可能である
と考えている。
ビスを検討している情報の蓄積・活用および遠隔マ
ルチメディア教育に関連した教育コンテンツの統合
に関して述べた。
さらに、有益な教材を手軽に準備できるような環
境や、蓄積データを容易に改善する機能等について
も統合を前提にしたシステムをベースに検討する。
例えば、既存の紙製教育素材の OCR による電子化
や、講義内容の要約自動生成、XML タグの自動付
加、アノテーション(構造付加情報)の付加、デー
タの自動構造化を行うトランスコーディングの手法
5 関連研究
[23]、あるいは、Web Mining のアプローチを講義用
Web に適用して、学生のアクセスを解析し、教育コ
我々のアプローチに近い研究としては、Web と
ンテンツの改善を図る手法 [24] 等も利用を検討する
XML を用いて、インタラクティブなビデオを管理し
対象である。東工大の学術国際情報センターの特徴
たりパーソナライズする研究がある [12]。また、XML
の一つでもある学術国際交流や海外への遠隔講義を
を用いた Web の統合については、問い合わせと統
考えた場合には、コンテンツの自動翻訳も重要な案
合を XML で行うフレームワークに関するもの [13]、
件である。この他にも、利用可能な各種の手法を積
XML 問い合わせ言語の拡張に注目したもの [14]、関
極的に取り入れていきたいと考えている。
係データベースの問い合わせと GUI の統合に注目
したもの [15] 等々、既に活発に研究が行われている。
学術国際情報センターとしては、教育コンテンツに
6 まとめ
注目してはいるが、これまでに培われてきた XML
ベースのビデオ管理や情報統合の手法を有効に組み
東京工業大学に新たに設置された学術国際情報セ
込んでいきたいと考えている。
ンターの位置づけと、今後同センターにおいてサー
国内外の大学等でも同様に教育コンテンツの公開・
提供を積極的に行なわれているが、まだ統合されて
使いやすい利用者ビューを提供するまでには至って
それ以外にも、動画像に対する検索手法に関する いない。本稿では、個々の素材に手を加えることな
研究として、ニュース番組やスポーツ番組のシーン く統合し、かつ統合されたビューを前提に効率の良
を自動抽出し、シーン毎にキーワード等を割り付け い検索機能を提供することを目標に、インデックス
る研究等が盛んである [18, 19, 20]。前述したように、 に工夫を加えながら、統合ビューを提供する手法に
講義ビデオの場合には画面の切り替えや動きが少な ついて検討を行った。素材に変更を加えずにビデオ
く、シーンの自動抽出等はニュースやスポーツ番組 とプレゼンテーション資料の同期を取るために、同
ほど旨くいかない可能性はあるが、我々のアプロー 期ブロックインデックスを用意し、プレゼンテーショ
チである講義用プレゼンテーション資料のインデッ ン資料が出されたときの対応するビデオフレームを
クス手法と自動抽出したシーン切出を併用すること 提供することを可能にしている。また、講義内のイ
も可能であろう。
ンデックスと講義間のインデックスの階層構造も用
また、形容詞等を与えてそのイメージにあう画像 意する。
を検出の研究も行われている [21, 22]。一般的な画像
まだまだ検討を始めたばかりのところであり、考
に対するイメージによる検索は、人間の持つイメー 察が十分でない部分が多々ある。今後、これまで培
ジと実際の画像との食い違い等から困難を伴う場合 われてきた関連研究成果を有効に利用するための機
もあるが、講義用のプレゼンテーション資料に含ま 構を検討すると同時に、多くの参考意見を取り入れ、
7
[13] David Konopnicki and Oded Shmueli. A Comprehensive Framework for Querying and Integrating
WWW Data and Service. In Proc. of CoopIS’99,
1999.
利用者にとって教育効果の高いコンテンツ提供の枠
組みを構築したいと考えている。また、それに関連
して利用制限やセキュリティ対策に関しても今後検
討していく予定である。
[14] 北川博之 石川佳治 倉垣公一, 品川徳秀. Xml に基づ
く www アプリケーション統合支援環境の構築. In 電
子情報通信学会データ工学研究会第 12 回データ工学
ワークショップ (DEWS2001), 2001.
謝辞
本稿をまとめるにあたり、学術国際情報センター
の馬越庸恭教授、大学院社会理工学研究科の赤間啓
之助教授との議論が大変参考になった。ここに感謝
の意を表す。
[15] 小泉清一, 森嶋厚行, 高野智, and 北川博之. 例示
オブジェクトを用いたマルチメディア web ビュー構
築ツールの設計, 実装, 評価. In 電子情報通信学会
データ工学研究会第 12 回データ工学ワークショップ
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